説明

引紐スイッチ

【課題】警報器の引紐に対する保持力がどの製品でも一定になるようにする。
【解決手段】引紐8と、引紐8と連結され該引紐の操作によって可動する作動部材11と、作動部材11によって作動するスイッチとで構成され、引紐8は、その一端に、引紐8と一体にストッパー10が取り付けられており、作動部材11には、引紐挿通部11aが形成され、そこに引紐8を挿通させることで、引紐8はストッパー10ーによって作動部材11に抜け止め係止された構造にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば住宅用警報器、あるいは照明器具等に用いられる引紐スイッチの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような引紐スイッチを有した警報器においては、引紐の一端に結び目を形成して、警報停止スイッチなどに連動する作動部材に抜け出しがないように係止させたものが従来から公知である。また次の特許文献1には、本体の開口部から外部に突出するように本体に収納されたフックを備え、本体の適所に設けた凸部に係合させた引紐が引かれたときには、引紐に掛けられたフックが移動して回路基板上のスイッチを作用させる構成が記載されており、引紐に作られた結目を本体の凸部に係合させている。
【特許文献1】特開2006-244408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の警報器では、引き紐に大きな力が加わった場合は、引紐の結び目が凸部より外れることで、引紐が過大な力で引かれたときの警報器の落下を防止する等によって引紐スイッチの安全性を確保しているが、結び目は製品毎に微妙に形状や大きさが異なり、そのため凸部の引紐に対する保持力にも違いが生じるので、期待した安全性が必ずしも確保されるわけではない。また、従来、引紐を引くためのつまみは、引紐に結び目を作り、その結び目によって抜け止め係止していた。しかしながら、結び目は基本的に手作業であるため、製造が容易でなかった。そこで、本発明は、引紐スイッチの引き紐に対する保持力がどの製品でも一定になるような新規な構成を提案すると共に、つまみを引紐に簡単に抜け止め係止できるように更に改良した構成をあわせて提案する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、本願発明は、次のような特徴を有した住宅用警報器を提案している。すなわち、本発明による引紐スイッチは、引紐と、前記引紐と連結され該引紐の操作によって可動する作動部材と、前記作動部材によって作動するスイッチとで構成され、前記引紐は、その一端に、前記引紐と一体にストッパーが取り付けられており、前記作動部材には、引紐挿通部が形成され、そこに前記引紐を挿通させることで、前記引紐は前記ストッパーによって前記作動部材に抜け止め係止された構造にしている。なお、前記作動部材は、前記引紐を張力の作用方向に挿通させることが望ましい。
【0005】
前記引紐挿通部は、一方が開口し、引紐の移動方向に交叉する溝部として形成してもよいし、また、引紐の移動方向に貫通する孔部として形成してもよい。
【0006】
また、前記住宅用警報器のヘッド部には、前記引紐の移動方向を、前記作動部材に対して一定に規制するための規制ガイド部を設けてもよい。
【0007】
前記ストッパーは、所定の径を有し、かつ前記作動部材に近接する側を先細りのテーパ面にしていることが望ましい。
【0008】
また、前記作動部材で押釦を構成してもよい。
【0009】
更に改良した構成として、前記引紐は、他端に、前記引紐と一体につまみストッパーが更に取り付けられ、前記引紐に挿通させたつまみ部を、前記つまみストッパーによって抜け止め係止してもよい。
【0010】
そして、前記ストッパー、および前記つまみストッパーは、同一の材料からなり同一形状としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、引紐は、樹脂で引紐の一端を包み込んで一体成型された、所定形状のストッパーを設けているので、従来のような結び目とは異なり、ストッパーを常に一定の形状寸法に製造することが可能である。一方、作動部材に形成された引紐挿通部は、引紐の張力に対抗して、一定の形状寸法のストッパーを所定の保持力で係止保持し、張力が保持力を超えたときには、弾性変形してストッパーを解放する。従って、引紐に何物かが引っかかる等により、引紐が過度の力で引かれたときには、引紐が警報器から抜けてしまうので、警報器の脱落を未然に防止でき、安全である。
【0012】
ストッパーが所定の径を有し、かつ作動部材に近接する側を先細りのテーパ面にした構成では、引紐挿通部がスムーズに弾性変形し、その弾性変形が特定のレベルに達したときに、引紐挿通部がストッパーを解放するようにできるので、引紐に対する保持力を精密に設計できる。
【0013】
引紐の他端に、引紐を包み込んで一体成型されたつまみストッパーが更に固着されており、引紐に挿通させたつまみ部を、つまみストッパーによって抜け止め係止した構成では、つまみ部を抜け止め係止するために、引紐に結び目を作らなくて済むので、手間が掛からず製造が容易になる。また、ストッパー、およびつまみストッパーは、同一の樹脂で同一形状に成型する構成では、簡単な装置で製造できるのでコストを押されられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図に従って説明する。本発明による引紐スイッチは、例えば、火災要因として例えば煙を検知すると警報を出力し、その警報を出力している間に、押釦が押圧される、あるいは引紐が引かれると、警報の出力を所定時間停止する基本機能を有した住宅用火災警報器のスイッチとして好適に適用できるが、引紐を備えた他の警報器、例えばガス漏れ警報器、あるいは照明器具等にも適用可能である。
【0015】
図1は、本発明を適用した警報器の内部構造を示した分解斜視図、図2は、本発明を適用した警報器の内部構造を示した縦方向破断図、図3は、ストッパーの形状を説明する引紐の部分拡大図である。
【0016】
この警報器1は、壁面あるいは天井面にネジ等によって固定されるベース部1aと、ベース部1aに着脱自在に装着されるヘッド部1bとからなる。ヘッド部1bには、警報器1の制御処理を行うマイクロコントローラ、警報音声をスピーカから再生出力させる音声IC、警報停止操作等の操作を検知するスイッチ7等を搭載した回路基板2と、電源となる電池3と、火災要因として例えば煙を検知する検知部4とが設けられており、回路基板2や電池3が、検知部4および押釦を露出させる開口が形成された保護カバー6によって覆われた構造になっている。
【0017】
スイッチ7は、引紐8を操作することで可動する作動部材11によって押圧されるようになっている。
【0018】
引紐8は、例えばポリアミド系合成繊維等による太さ1ミリ程度、長さ80センチ程度の編紐(あみひも)あるいは組紐(くみひも)からなり、一端には操作し易いようにつまみ部9が設けられ、もう一端には、強度を有した樹脂により、引紐8を包み込んで成型されたストッパー10が固着されている。
【0019】
ストッパー10は、金型に引紐8を通した状態で、例えばPC、ABS等の樹脂を射出成型する等によって形成できるが、その寸法は、例えば、全長4.5ミリ、直径2ミリ、先端径1ミリ、先端角45°〜60°とし、紐の余長2ミリ以下とすることが望ましい。なお、ストッパー10の前端側を上記直径としておけば、後端側(図中の破線で囲まれた部分)は、その直径を超えない範囲で任意形状として構わない。このように、ストッパー10が所定の径を有し、かつ作動部材11に近接する側を先細りのテーパ面にした構成では、引紐挿通部11aがスムーズに弾性変形し、その弾性変形が特定のレベルに達したときに、引紐挿通部11aがストッパーを解放するようにできるので、引紐8に対する保持力を精密に設計できる。なお、ストッパー10は、金属を紐にかしめたものであってもよい。
【0020】
作動部材11は、押釦を構成しており、更に押し釦から略90度方向に突設された引紐挿通部11aが形成されている。この例では、引紐挿通部11aは、一方が開口した溝部11bを有しており、そこに引紐8を挿通させることで、引紐8はストッパー10によって作動部材11に抜け止め係止される。引紐挿通部11aを、一方が開口した溝部11bとして形成した場合には、引紐8をその開口から押し込むようにして引紐挿通部11aに挿通させることができるので、引紐8を作動部材11に組み付ける工程が容易になる利点がある。
【0021】
作動部材11は、回動軸11dを有しており、保護カバー6に形成された軸受6bによって回動可能に保持される。引紐8は保護カバー6に形成された切欠部6aからヘッド部1bの外側に導出される。この切欠部6aは、引紐8の移動方向を、作動部材11に対して一定に規制するための規制ガイド部を構成する。これによって、警報器1の設置方向に関わらず、引紐8の移動方向が引紐挿通部11aに対して常に一定になるので、引紐8に対する保持力が安定する。作動部材11は、押釦が押圧されたとき、あるいは引紐8が引かれたときには、回動軸11dに従って回動して、スイッチ7を押圧する。
【0022】
引紐挿通部11aは、引紐8の張力に対抗して、一定の形状寸法のストッパー10を所定の保持力で係止保持し、張力が保持力を超えたときには、弾性変形してストッパー10を解放する。従って、引紐8に何物かが引っかかる等により、引紐8が過度の力で引かれたときには、引紐8が警報器1から抜けてしまうので、警報器1の脱落を未然に防止でき、安全である。なお、引紐挿通部11aの引紐8に対する保持力は、10kg重〜15kg重とすることが望ましい。なお、保護カバー6の切欠部6a周辺は、作動部材11に対するストッパーとして機能するため、引紐8が過大な力で引かれたときに破損しないだけの強度が必要である。
【0023】
本発明では、引紐8のストッパー10を樹脂により形成しているので、ストッパー10の形状を常に一定にすることが可能である。その結果、引紐8に対する保持力が一定した製品を量産することができ、
【0024】
また、上記構成では、作動部材11で押釦を構成しており、押釦が押圧されたとき、あるいは引紐8が引かれたときには、作動部材11が回転移動し、スイッチ7を押圧する。従って、引紐8と押釦とに対してスイッチ7が1つで済むのでコストが抑えられるという利点がある。
【0025】
図4(a)、図4(b)は、引紐挿通部11aに設けられた溝部11bの2種類の形状を示した斜視図である。図4(a)に示した作動部材11では、引紐挿通部11aは、縦方向に形成された溝部11bを有しているが、図4(b)に示した作動部材11では、引紐挿通部11aは、斜め向に形成された溝部11bを有している。このように、本発明では、特に溝部11bの形成、方向に制限はない。
【0026】
図5は、引紐挿通部11aの他の形状を示した斜視図である。この図に示した作動部材11では、引紐挿通部11aは、引紐8の移動方向に貫通する孔部11cを有している。この場合、引紐8を作動部材11に結合させるために、引紐8を孔部11cに通す作業が必要になり手間が掛かるが、形状が単純であるため製造が容易、また、引紐挿通部11aの弾性がより強くなるため、所与の保持力を発揮させるのに、少ない材料で製造できるという利点がある。
【0027】
図6(a)は、本発明による引紐スイッチにおける引紐の更に改良した例を示した図面、図6(b)は、その引紐に付加されるつまみ部の縦破断図である。この引紐8は、一端にストッパー10が、他端につまみストッパー12が固着されており、引紐8に挿通させたつまみ部9を、つまみストッパー12によって抜け止め係止したものである。構成では、つまみ部9を抜け止め係止するために、引紐8に結び目を作らなくて済むので、手間が掛からず製造が容易になる。つまみ部9とつまみストッパー12とは、同一の材料かつ同一形状としても、異なる材料で異なる形状としてもよい。つまみ部9は、例えば、底面に引紐8を挿通させる挿通孔を形成した中空の筒形状としてもよい。この場合は、つまみストッパー12を内部に収容して隠すことができるので、美観に優れる。また引紐8が長すぎる場合は、つまみ部9からつまみストッパー12を引き出して、引紐8の適所に結び目を作り、引紐8の余分な部分を切り取れば、その結び目をつまみストッパー12の替わりとして、つまみ部9を抜け止め係止することも可能である。
【0028】
図7は、図6に示した引紐8の製造方法を示した図面である。図に示しているように、引紐8は、連続した長い紐材に対して、ストッパー10とつまみストッパー12とを、例えば数センチ間隔に並んだ2つの金型20によって同時に一体成型し、その後、紐材を図中の破線部分で切断することにより作製できる。引紐8の中間部分には、引紐8を挿通させた状態となるようにして、つまみ部9が成型されるが、つまみ部9の成型は、紐材を切断する前に行ってもよいし、後に行ってもよい。なお、この例では、ストッパー10とつまみストッパー12とを、同一の樹脂で同一形状に成型しているが、このようにすれば、簡単な装置、金型でそれらを製造できるので、コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用した警報器の内部構造を示した分解斜視図である。
【図2】本発明を適用した警報器の内部構造を示した縦方向破断図である。
【図3】ストッパーの形状を説明する引紐の一端の部分拡大図である。
【図4】(a)、(b)は、引紐挿通部に設けられた溝部の2種類の形状を示した斜視図である。
【図5】引紐挿通部の他の形状を示した斜視図である。
【図6】(a)は、本発明による引紐スイッチにおける引紐の更に改良した例を示した図面、(b)は、つまみ部の縦破断図である。
【図7】引紐8の製造方法を示した図面である。
【符号の説明】
【0030】
1 警報器
6a 切欠部(規制ガイド部)
7 スイッチ
8 引紐
9 つまみ部
10 ストッパー
11 作動部材(押釦)
11a 引紐挿通部
11b 溝部
11c 孔部
12 つまみストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引紐と、前記引紐と連結され該引紐の操作によって可動する作動部材と、前記作動部材によって作動するスイッチとで構成され、
前記引紐は、その一端に、前記引紐と一体にストッパーが取り付けられており、
前記作動部材には、引紐挿通部が形成され、そこに前記引紐を挿通させることで、前記引紐は前記ストッパーによって前記作動部材に抜け止め係止された構造にしている引紐スイッチ。
【請求項2】
請求項1において、
前記ストッパーは、所定の径を有し、かつ前記作動部材に近接する側を先細りのテーパ面にしている引紐スイッチ。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記引紐は、他端に、前記引紐と一体につまみストッパーが更に取り付けられ、
前記引紐に挿通させたつまみ部を、前記つまみストッパーによって抜け止め係止した引紐スイッチ。
【請求項4】
請求項3において、
前記ストッパー、および前記つまみストッパーは、同一の材料からなり同一形状である引紐スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−50031(P2010−50031A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215315(P2008−215315)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】