説明

引裂き開封性に優れるフィルム状逆止ノズルおよびその引裂き誘導線形成方法

【課題】フィルム状逆止ノズルの開封に要する引裂力を有効に低減してなお、ノズルの引張強度を維持できると共に、ノズルの裂け目の進行方向を正確に誘導することのできる引裂き性に優れるフィルム状逆止ノズルを提供すること。
【解決手段】ベースフィルム層および、このベースフィルム層の両側を挟むように積層してなる内表面側シーラント層および外表面側シーラント層とからなる、重なり合う表裏で一対の積層プラスチックフィルムの、そのフィルムの内表面側シーラント層相互間に液状物を介在させることで外気の袋内への侵入を阻止するようにした、液状物充填用軟質包装袋のための平坦なフィルム状逆止ノズルにおいて、ノズルを構成している表裏で一対の前記積層プラスチックフィルムの、ノズル先端部寄りの引裂き予定位置の、内表面側シーラント層表面にそれぞれ、注出通路を横断して延びる1もしくは複数本からなる引裂き誘導線を設けたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わせた表裏2枚の平坦な軟質のプラスチック製積層フィルムによって構成される、外気の袋内への侵入を自動的に阻止するセルフシール逆止機能つきのフィルム状逆止ノズル(液体注出ノズル)に関し、とくに、引裂き開封性に優れるフィルム状逆止ノズルについて提案するものである。
【背景技術】
【0002】
軟質積層プラスチックフィルムからなるセルフシール逆止機能つきのフィルム状逆止ノズルとしては、発明者らの提案に係る特許文献1、2に開示されたものがある。
【0003】
これらの文献に開示されているフィルム状逆止ノズルは、熱可塑性のベースフィルム層、たとえば二軸延伸PET層もしくはNY層からなるベースフィルム層と、そのベースフィルム層の両側の面にそれぞれ積層した無延伸のPE層もしくはPP層からなるシーラント層との3層で構成される、表裏2枚で一対の積層プラスチックフィルムを、該シーラント層の相互の対向姿勢で、基端辺を除く各辺部分で、好ましくはヒートシールによって相互に融着させることによって形成される。
【0004】
そして、上記フィルム状逆止ノズルは、重なり合う表裏2枚の積層プラスチックフィルム相互間に形成される注出通路に、毛細管作用によって液状物が常時介在し、このときフィルム相互間に生じている分子間力に由来する高い密着力によって、外気の侵入を阻止するセルフシール逆止機能を発揮することができる。
【特許文献1】特開2005−15029号公報
【特許文献2】特開2010−18323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のフィルム状逆止ノズルでは、特許文献1に記載されているように、ノズルの開封予定位置のベースフィルム層に、レーザ光線の照射等によって横断溝を設け、これを引裂き誘導疵として機能させている。しかしながら、ベースフィルム層は、フィルム状逆止ノズルの支持基材であり、このベースフィルム層に横断溝を形成してしまうと引張強度が低下し、取り扱い時などに誤って破断してしまうおそれがある。
【0006】
また、近年、飲食品衛生の観点から、包装袋に充填する際に、飲食品を加熱殺菌し、該飲食品を高温状態を維持したまま包装袋内に充填包装(ホットパック)することや、飲食品を食する際に高温ボイルすることを想定したレトルトパックが広く流通している。
【0007】
このようなホットパックやレトルトパック用として上記特許文献1および2に開示のフィルム状逆止ノズルを備える包装袋を適用する場合、該包装袋は、包装袋本体のみならず、フィルム状逆止ノズルもまた十分な耐熱性を有することが必要となる。このような耐熱性を有するフィルム状逆止ノズルは、延伸ベースフィルム層と、高密度のポリエチレンやポリプロピレン等からなる無延伸シーラント層とを積層した積層プラスチックフィルムによって形成されたものが一般的である。しかしながら、このような積層プラスチックフィルムは、通常、耐熱性を有するような無延伸のシーラント層は、伸びやすいという特性があるため、ノズル先端寄りの位置に設けられたIノッチやVノッチ等の開封手段を始点として手指で引裂いて開封しようとすると、その引裂力によって開封位置のフィルムが伸びてしまい、簡単には引き裂けないという問題点がある。
とくに、大容量の大袋の場合には、ノズル先端近傍における引裂き距離も長くなるため、きれいに引き裂くことができなくなると共に、ノズル開封位置での裂け目の進行方向を、確実に(真っ直ぐに)誘導することができないおそれがあった。
【0008】
しかも、その開封位置の積層プラスチックフィルムは、上記のようにフィルム状逆止ノズルの先端を無理やり引裂き開封しようとすると、伸びて波を打ったような状態となる。そのため、フィルム状逆止ノズルを構成する表裏2枚の積層プラスチックフィルムの内面同士のフラット性が悪くなって、密着力が低下し、ひいてはセルフシール逆止機能を有効に発揮できないという問題点もある。
【0009】
さらに、従来のフィルム状逆止ノズルでは、先端注出口から被包装物を吐出した後、ノズルの逆止機能によって注出通路内表面が相互に密着する際、該ノズルを構成する積層プラスチックフィルムのスプリングバックによって注出口から被包装物が押し出され、液だれが発生しやすくなるという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、従来技術が抱えている上述したような問題点を解決することを課題とするものであり、それの目的とすることは、フィルム状逆止ノズルの開封に要する引裂力を有効に低減してなお、ノズルの引張強度を維持できること、ノズルの裂け目の進行方向を正確に誘導すること、および液だれの発生を抑制すること、のできる引裂き開封性に優れるフィルム状逆止ノズルと、その引裂き誘導線の形成方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を実現するために鋭意研究した結果、発明者は、下記の要旨構成に係る本発明を開発するに到った。即ち、本発明は、ベースフィルム層および、このベースフィルム層の両側を挟むように積層してなる内表面側シーラント層および外表面側シーラント層とからなる、重なり合う表裏で一対の積層プラスチックフィルムの、そのフィルムの内表面側シーラント層相互間に液状物を介在させることで外気の袋内への侵入を阻止するようにした、液状物充填用軟質包装袋のための平坦なフィルム状逆止ノズルにおいて、ノズルを構成している表裏で一対の前記積層プラスチックフィルムの、ノズル先端部寄りの引裂き予定位置の、内表面側シーラント層表面にそれぞれ、注出通路を横断して延びる1もしくは複数本からなる引裂き誘導線を設けたことを特徴とする引裂き開封性に優れるフィルム状逆止ノズルである。
【0012】
なお、本発明において、上記フィルム状逆止ノズルは
(1)前記外表面側シーラント層表面の、内表面側シーラント層表面上の前記引裂き誘導線の形成位置に対応する位置に、注出通路を横断して延びる1もしくは複数本からなる引裂き誘導線を設けたこと、
(2)前記引裂き誘導線は、前記内表面側シーラント層および/または外表面側シーラント層の表面に対して、減肉ロール歯を押し付けて連続的または間欠的に形成した条溝からなること、
(3)前記減肉加熱ロール歯は、40〜180℃に加熱すること、
(4)前記引裂き誘導線は、前記内表面側シーラント層および/または外表面側シーラント層の表面へのレーザ光線の照射によって連続的または間欠的に形成した溶融溝からなること、
(5)前記引裂き誘導線の幅は、1μm〜2mm/1本であること
(6)前記引裂き誘導線の形成位置の積層プラスチックフィルムの厚みが、その他の部分の厚みの1/2以下であること、
がより好ましい解決手段となる。
【0013】
また、本発明は、ベースフィルム層と、そのベースフィルム層の両側を挟むようにして積層してなる内表面側シーラント層および外表面側シーラント層と、を具える表裏で一対の軟質積層プラスチックフィルムを、該内表面側シーラント層の対向姿勢で相互に重ね合わせ、袋本体の側部に接続される基端部および、液状物の注出通路を形造る中央部分を除き、外周縁部分を相互に融着させてフィルム状逆止ノズルを形成するに先立ち、ノズルを構成している表裏一対の前記積層プラスチックフィルムの、ノズル先端部寄りの位置の、内表面側シーラント層表面にそれぞれ、注出通路を横断して延びる1もしくは複数本の引裂き誘導線を形成することを特徴とするフィルム状逆止ノズルの引裂き誘導線形成方法である。
【0014】
なお、本発明において、上記フィルム状逆止ノズルの引裂き誘導線形成方法は
(1)前記外表面側シーラント層表面の、内表面側シーラント層表面上の前記引裂き誘導線の形成位置に対応する位置に、注出通路を横断して延びる1もしくは複数本からなる引裂き誘導線を形成すること、
(2)前記引裂き誘導線は、前記内表面側シーラント層および/または外表面側シーラント層の表面に対して、減肉ロール歯を押し付けることによって形成すること、
(3)前記減肉加熱ロール歯は、40〜180℃に加熱すること、
(4)前記引裂き誘導線は、前記内表面側シーラント層および/または外表面側シーラント層の表面へのレーザ光線の照射によって形成すること、
がより好ましい解決手段となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、フィルム状逆止ノズルを構成する積層プラスチックフィルムの内表面側シーラント層表面、好ましくは内表面側および外表面側シーラント層の表面にそれぞれ、1もしくは複数本の引裂き誘導線を設けたことにより、引裂き誘導線の形成位置における積層プラスチックフィルムの厚みが薄くなり、逆止ノズルの開封に要する引裂力が小さくなって手指での引裂きを円滑かつ容易に行うことができる。しかも、フィルム状逆止ノズルは、フィルム状逆止ノズルの注出通路を横断するように設けられた引裂き誘導線に沿って開封されるため、たとえ、大袋であっても、その裂け目の進行方向を正確に誘導することができる。
【0016】
また、本発明では、引裂き誘導線を、フィルム状逆止ノズルの形成(外周縁部分の融着)に先立ち、積層プラスチックフィルムの内・外表面側シーラント層表面に対して形成することにより、引裂き誘導線の両端部は、ノズルの形成時の外周縁部分の融着によって溶解して潰れることになるため、取り扱い時に引裂き誘導線の端部が切れてノズルが誤開封するおそれがなく、またフィルム状逆止ノズルのシール強度が低下することもない。なお、引裂き誘導線の端部は、上記したようにノズル外周縁の融着によって誘導線が潰れてしまうが、該部分は一度、誘導線を形成させたことで、他の部分(初めから誘導疵を入れていない部分)よりもフィルムの抵抗力が小さくなっているため、ノズル外周縁部分にVノッチ等の引裂き誘導疵等を設けなくても、手指等で簡単に引裂き開封することができる。
【0017】
また、本発明では、1もしくは複数本の引裂き誘導線が設けられた部分は、積層プラスチックフィルムの剛性が小さくなるため、被包装物の吐出後に、該フィルムのスプリングバックによって注出口から被包装物が押し出されて液だれが発生することがない。さらに、引裂き痕が波打つことがなく、直線となると共に、開封位置の積層プラスチックフィルムを十分に平滑にすることができるので、表裏2枚の積層プラスチックフィルムのフラット性が向上し、該フィルム同士が強く密着して逆止機能を有効に発揮することができる。
【0018】
また、本発明では、積層プラスチックフィルムの内・外表面側シーラント層表面に、減肉加熱ロール歯あるいはレーザ光線の照射によって引裂き誘導線を形成することが好ましく、これによれば、引裂き誘導線の幅や長さ、深さを調整することができると共に、積層プラスチックフィルムのシーラント層のみに引裂き誘導線が形成されることで、フィルム状逆止ノズルの引張強度が低下することがなく、取扱いに際して、逆止ノズルが誤って開封するようなおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のフィルム状逆止ノズルの一実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明のフィルム状逆止ノズルを構成する積層プラスチックフィルムのフィルム構成を例示する断面図である。
【図3】図1のII-II線に沿う拡大断面図の一実施形態である。
【図4】図1のII-II線に沿う拡大断面図の他の実施形態である。
【図5】フィルム状逆止ノズルの引裂き開封位置の断面を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
外気の袋内への侵入を自身が自動的に阻止する、セルフシール逆止機能を有する本発明に係るフィルム状逆止ノズルは、熱可塑性の、一軸もしくは二軸延伸ベースフィルム層と、その両側を挟むように積層してなるシーラント層(以下、内表面側シーラント層、外表面側シーラント層と言う。)とからなる3層の軟質積層プラスチックフィルムを、内表面側シーラント層が相互に対向するように表裏として重ね合わせ、それぞれの側の軟質積層プラスチックフィルム、たとえば、2枚で一対の軟質積層プラスチックフィルムにおける対面する前記内表面側シーラント層どうし、または半幅に折返してなる1枚の軟質積層プラスチックフィルムの、互いに対向する内表面側シーラント層どうしを、包装袋の袋本体に接続される基端部および、液状物の注出通路となる中央部分を除く外周縁部分について、所定の幅、たとえば0.5〜3.0mmの幅、好ましくは1.0〜2.0mmの幅にわたってヒートシール、高周波シールまたは、インパルスシール等によって相互に皺が寄らないように平坦に融着させて、全体として略楔形を呈するように形成したものである。
【0021】
このような本発明のフィルム状逆止ノズルは、その基端部分において、このノズルの外表面側シーラント層、たとえば、無延伸のPE層、PP層、EVA層、メタロセン触媒ポリエチレン層等のオレフィン系樹脂層、エチレン酢酸ビニル共重合体層、エチレンアクリル酸エチル共重合体層、アイオノマー層、PVDC層、EVOH層等の熱可塑性樹脂層を介して、軟質積層プラスチックフィルム(主として2層)からなる包装袋本体の内表面のシーラント層(好ましくは、同種のシーラント層)に、たとえばヒートシールによって融着させることにより、該包装袋本体に突出した状態で簡易、迅速に、しかも確実に融着接合され包装袋として構成される。そして、この包装袋内に充填した液状の液状被包装物の注出は、前記フィルム状逆止ノズルの先端部寄りに形成される開封予定部分を手指によって切り取って開封することによって行う。
【0022】
フィルム状逆止ノズルの開封後は、液状被包装物は、当該包装袋の本体部分を、フィルム状逆止ノズルの開口部(注ぎ口)が下方に向く姿勢となるように傾動させることにより所要の注出が行われ、この場合、軟質の積層プラスチックフィルムからなるフィルム状逆止ノズルは、液状被包装物の水頭圧の作用や手指によって包装袋の本体部分胴部を加圧することにより、液状物が常時介在することにより生ずる、フィルム−液体−フィルム間の分子間力が抗して表・裏の側に離隔して大きな隙間を作り、注出通路を開放し、該液状被包装物の注出を許容する態勢となる。
【0023】
フィルム状逆止ノズルの開口部(注ぎ口)を通じて、液状被包装物を注出する際、軟質の積層フィルムからなる袋本体部分は、液状被包装物の注出にもかかわらず、該逆止ノズルのもつセルフシール逆止機能(注ぎ出された液状被包装物に代わって、空気が袋本体内に侵入しないこと)により、外気の吸い込み(逆流)が行われないので、袋本体部分は、その注出体積分に相当する量だけ順次に収縮ないしは潰れ変形することになる。
【0024】
包装袋内に液状物を充填した後は、フィルム状逆止ノズルの開封下で、それを傾動させることによって、所要量の液状被包装物を袋内から注出され、そして、フィルム状逆止ノズルの開口部からの該液状被包装物の流出は、この包装袋を元の起立姿勢に復帰させることにより停止する。この流出の停止により、該フィルム状逆止ノズルの注出通路内および袋本体内の非液体部分は、袋本体内に充填されている液状物が毛細管現象によって、これらの部分が常時、液状被包装物が介在して濡れた状態になるため、その停止と同時に、フィルム状逆止ノズルの積層プラスチックフィルムの内面どうしは相互に強く密着し、したがって、フィルム状逆止ノズルの先端部に設けた前記開口部もまた、密着したままとなるため、外気の、袋本体部内への侵入を確実に阻止することができる。
【0025】
このようなフィルム状逆止ノズルを備える包装袋において、袋内に充填されている液状被包装物は、それの注出前はもちろん、注出中および注出後においても、外気から一切遮断されて保護されることになり、袋内液状被包装物の酸化、汚損等が有効に防止されることになる。
【0026】
即ち、このフィルム状逆止ノズルを構成する2枚の積層プラスチックフィルムの内表面(注出通路)には、袋本体内に液状物が残っている限り、毛細管現象によって常時液状物が介在することになる。即ち、このフィルムどうしが密着することによる外側逆止機能は、フレキシブル包装袋の起立復帰によって、該フィルム状逆止ノズルが水頭圧の作用から解放されて製造時の元形状に復帰することに加え、フィルム状逆止ノズル内の液状被包装物の一部が、袋本体部内へ還流するに際して、減圧により液状被包装物によって濡れた表裏一対のフィルムどうしの内表面(注出通路)が、相互に吸着し合うこと等によって自動的に行われる(セルフシール)。そして、このような密着は、包装袋からの液状被包装物の注出に伴って、収縮ないしは潰れ変形された袋本体部分が、それに固有の弾性復元力に基づいて、その内部を減圧傾向へと作用するときに、より確実になる。
【0027】
かくしてフィルム状逆止ノズルは、特別の操作等なしに、包装袋の起立復帰と、それの切り裂き開口である注出口の自動的な密着封止(セルフシール)により、優れたセルフシール逆止機能を発揮することになる。
【0028】
この一方で、液状被包装物の再度の注出は、包装袋を、上述したようにして傾動させ、好ましくはさらに袋本体部の胴部を加圧することにより行うときに、より効果的となり、その停止も上述したように包装袋の起立復帰により行うことができる。そしてこの場合もまた、該フィルム状逆止ノズルは、自動的な密着封止に基いて、外気の侵入に対してすぐれた逆止機能を発揮することができる。
【0029】
以上の説明から明らかなように、フィルム状逆止ノズルにおいて、その逆止機能を有効に発揮させるためには、これを構成する表裏一対の積層プラスチックフィルムが相互に強く密着できることが重要であり、そのためには、該積層プラスチックフィルム同士のフラット性が高く、濡れ性が高いことが必要となる。
【0030】
しかしながら、上記のような機能を有するフィルム状逆止ノズルを、ホットパックやレトルトパウチ等、高温で処理される包装袋に利用しようとすると、これを構成する積層プラスチックフィルムとしてはフィルムの厚みが大きく、剛性があり、とくに内表面側および外表面側シーラント層としては、耐熱性を有する高密度のポリエチレン層やポリプロピレン層を用いる必要がある。ところが、このような高密度ポリエチレン層やポリプロピレン層からなるシーラント層は、一般に伸びやすい性質があり、ノズルを手指で引裂いて開封しようとすると、その引裂き力によって開口部のフィルムが伸びて、積層プラスチックフィルム同士のフラット性が低下するという問題があった。
【0031】
また、従来技術では、フィルム状逆止ノズルの引裂き開封性を向上させるため、開封予定位置のベースフィルム層に誘導疵を形成することが開示されているが、支持基材となるベースフィルム層を薄くしてしまうと、その部分の引張強度が低下してしまい、とくにホットパックやレトルトパウチ等に利用した際には、取り扱い時に破断してしまうおそれがあった。
【0032】
このような問題点を解決するため、本発明のフィルム状逆止ノズルでは、ノズル内表面側のシーラント層(内表面側シーラント層)の、ノズル先端寄りの開封予定位置に、ノズルの注出通路を横断して延びる1もしくは複数本の引裂き誘導線を設けたところに特徴があり、これによれば、引裂き誘導線の形成位置におけるシーラント層の厚みが薄くなり、フィルム状逆止ノズルの開封に要する引裂力を十分に小さくすることができると共に、支持基材となるベースフィルム層はそのままの厚みを維持することができるため、ノズル自体の引張強度は維持することができる。そのため、本発明によれば、内表面側および外表面側シーラント層に、耐熱性を有する、伸びやすい無延伸のポリエチレンやポリプロピレン等を積層した積層プラスチックフィルムを用いて形成したフィルム状逆止ノズルであっても、小さい引裂き力によって簡単に開封することができるという効果が期待できる。
【0033】
また、本発明では、前記引裂き誘導線を内表面側シーラント層表面のみならず、ノズルの外表面となるシーラント層(外表面側シーラント層)の表面にも形成することが好ましく、これによれば上記効果を一層高めることができる。このとき、外表面側シーラント層表面に形成される引裂き誘導線は、内表面側シーラント層表面上の引裂き誘導線の形成位置に対応する位置とすることが好ましく、これによって引裂き誘導線の形成位置におけるフィルム厚み(内・外表面側シーラント層厚み)がさらに薄くなり、一層簡単に引裂き開封できるようになる。
【0034】
また、本発明では、1もしくは複数本の引裂き誘導線が、フィルム状逆止ノズルの注出通路を横断するように設けられているため、前記引裂き誘導線に沿って開封することで、大容量の大袋のように注出口が大きい(開封距離が長い)ものであっても、フィルム状逆止ノズルの裂け目の進行方向を正確に誘導することができる。
【0035】
とくに、本発明では、引裂き誘導線が形成された部分において、積層プラスチックフィルムの剛性が小さくなるため、被包装物の注出後に、該フィルムのスプリングバックによって被包装物が注出口から押し出されるようなことがなくなり、液だれの発生を抑制することができる。
【0036】
さらに、本発明では、フィルム状逆止ノズルの先端部分を手指で簡単に引裂いて開封することができるため、引裂き痕が波打つようなことがなく、開封位置のフィルムを十分に平滑にすることができるので、表裏2枚の積層プラスチックフィルム同士のフラット性が向上して強く密着し、逆止機能を有効に発揮することができる。
【0037】
なお、前記引裂き誘導線は、上述したように積層プラスチックフィルムの内表面側シーラント層表面のみならず、外表面側シーラント層の表面に設けることができ、使用する積層プラスチックフィルムのフィルム構成や厚み、腰度、被包装物の種類等の条件によって、引裂き誘導線を形成するシーラント層表面や本数等を適宜選択することで、上記効果をさらに有効に発揮することができる。
【0038】
前記引裂き誘導線は、フィルム状逆止ノズルを、表裏一対の積層プラスチックフィルムの外周縁部分の融着によって形成するに先立ち、該積層プラスチックフィルムの、ノズル先端寄りの位置(開封予定位置)の内表面側シーラント層表面、好ましくは内・外表面側シーラント層表面に形成する。これによれば、引裂き誘導線の両端部は、フィルム状逆止ノズルの形成時に、ノズル外周縁融着部分として溶解して潰れることになるため、取り扱い時に、該誘導線の端部が切れてしまうおそれがなく、またフィルム状逆止ノズルのシール強度が低下することもない。
【0039】
しかも、引裂き誘導線の端部は、上記のように誘導線が溶解して潰れてしまうが、一度、引裂き誘導線を形成したことで引裂き抵抗が他の部分よりも低くなっているため、その位置を手指で引っ張ることで、フィルム状逆止ノズルを引裂き開封することができる。これによれば、ノズル外周縁部分にVノッチ等の引裂き開封疵を設ける必要がなくなるという効果が期待できる。
【0040】
なお、前記引裂き誘導線は、減肉ロール歯あるいはレーザ光線の照射によって連続的または間欠的(ミシン目状)に形成することが好ましい。これによれば、引裂き誘導線の幅や長さ、深さを積層プラスチックフィルムの種類や、袋容積、被包装物の種類などに応じて調整することができる。
【0041】
上記減肉ロール歯としては、ダイロールカッター、レーザーカッター、カメロンカッター、レザーカッターなどを用いることができる。これらの減肉ロール歯は、40〜180℃に加熱して用いることが好ましく、その加熱された減肉ロール歯をフィルム状逆止ノズル先端の引裂き開封位置に押し当てることにより、該部分の積層プラスチックフィルムの内・外表面側シーラント層のみを減肉して薄くすることができる。なお、加熱温度が40℃未満の場合には、内・外表面側シーラント層を十分に溶融させることができず、一方、180℃超の場合には、内・外表面側シーラント層がロール歯に溶着したり、ベースフィルム層まで溶融されてしまうおそれがある。
【0042】
また、積層プラスチックフィルムの内・外表面側シーラント層表面に形成する上記引裂き誘導線の幅は、1μm〜2mm/本であることが好ましい。これは、本発明のフィルム状逆止ノズルは、表裏2枚の積層プラスチックフィルムの所要の位置にそれぞれ、予め引裂き誘導線を形成し、その後、それらの誘導線が重なり合うように表裏2枚のフィルムを重ね合わせて外周縁部を相互に融着することにより形成される。そのため、引裂き誘導線の幅は、表側の引裂き誘導線と、裏側の引裂き誘導線とが常に重ね合わされるように、重ね合わせる際の誤差やヒートシール時の熱歪などの影響を考慮し、1μm以上とすることが好ましく、一方、引裂き誘導線の幅が2mmを超えると、引張強度が低下し、取り扱い時などに破断してしまうおそれがある。
【0043】
また、本発明では、前記のようにして内・外表面側シーラント層表面に引裂き誘導線を形成した部分の、シーラント層の厚みを、その他の部分の1/2以下、好ましくは2/3以下の厚みまで薄くすることが好ましく、さらに引裂き誘導線を、ベースフィルム層に食い込む深さまで形成してもよい。これは、引裂き誘導線を形成した部分の内・外表面側シーラント層の厚みが、その他の部分の1/2超の場合、引裂き抵抗を十分に低減することができず、開封時に、積層プラスチックフィルムが伸びて切れ難くなり、2枚の積層プラスチックフィルム同士のフラット性が低下して、逆止機能を有効に発揮することができないからである。
【0044】
以下、本発明のフィルム状逆止ノズルの実施の形態を、図面に基いて説明する。
図1は、この発明に係るフィルム状逆止ノズルの一実施形態を示す平面図である。
図中の1は、フィルム状逆止ノズルを示し、この注出ノズル1は、図に仮想線で示す、包装袋本体2のたとえば側部の融着部で、それの内表面のシーラント層に、最外層のシーラント層、好ましくは、包装袋本体2のシーラント層と同種の樹脂材料からなるシーラント層によって基端部を融着接合される。
【0045】
ここで、フィルム状逆止ノズル1、例えば、楔形のフィルム状逆止ノズル1の基端部外表面を、たとえばフレキシブル包装袋の包装袋本体2側部上部の内表面に、融着接合するに当っては、該フィルム状逆止ノズル1の内表面側シーラント層どうしの相互融着を防止するために、注出通路につながるノズルの基端部内側に、より高融点のまたは熱溶融しない離型シートを差し込むことや、フィルム状逆止ノズル1の内外表面のそれぞれのシーラント層の融着温度を、たとえば、材質の変更、あるいは押出しラミネート条件の変更等によって相互に異ならしめる方法により、または、フィルム状逆止ノズル1内表面側シーラント層フィルムの融点を、フィルム状逆止ノズルの外表面シーラント層フィルムより高くすること等によって達成することができる。
【0046】
例えば、フィルム状逆止ノズル1を構成する積層プラスチックフィルムが、図2に示されるように、熱可塑性のベースフィルム層5、たとえば10〜15μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート層、ナイロン層等と、その両側にそれぞれ積層した内表面側シーラント層6、外表面側シーラント層7、たとえば20〜25μmの無延伸ポリプロピレン層、ポリエチレン層等との3層からなる場合、内表面側[裏材]シーラント層6としては、望ましくは、外表面側[表材]シーラント層7の融点よりも高い融点をもち、該外表面側[表材]シーラント層7には、包装袋本体2のシーラント層のヒートシール温度よりも高い温度でヒートシール可能なフィルムを用いることが好ましい。これは、フィルム状逆止ノズルと包装袋本体とをヒートシールによって融着接合する際に、フィルム状逆止ノズルの内表面側シーラント層6どうしがヒートシールされることを防止するためである。
【0047】
なお、フィルム状逆止ノズル1は、例えば図2に示す構成からなる積層プラスチックフィルム4を、表裏として2枚、または、1枚を中央部で表裏に折返して、いずれも内表面側シーラント層6が相互に対向するように重ね合わせたのち、基端辺を除く各辺部分で、好ましくはヒートシールによって、図1に斜線を施して示すように相互に融着させることによって構成することができる。
【0048】
このようなフィルム状逆止ノズル1においては、積層プラスチックフィルム4のほぼ幅方向(上下方向)に延びる前記フィルム状逆止ノズル1の開口先端部、即ち、注ぎ口縁部の長さが、その積層プラスチックフィルム4の積層数にかかわらず、5〜100mm程度とすることが好ましいが、ここにおける「ほぼ幅方向」とは、引裂き方向、ひいては、逆止ノズル開口縁部の延在方向を、積層プラスチックフィルム4の幅方向に対して0〜15°の範囲の角度で傾斜させることがあることを考慮したものである。フィルム状逆止ノズル1の開口部の長さが5mm未満では、袋本体部の容積との関連において注出量が少なすぎる一方で、それが100mmを越えると注出方向の正確な特定が難しくなるからである。
【0049】
そして、本発明のフィルム状逆止ノズル1は、図1の一実施形態を示したように、先端部寄りに、フィルム状逆止ノズル1の注出通路3を横断するように引裂き誘導線8を有し、その引裂き誘導線8が、図1のII−II線に沿う拡大断面図(図3)に示したように、フィルム状逆止ノズル1を構成する表裏の積層プラスチックフィルム4、4’の内表面側シーラント層6、6’表面に、表側の引裂き誘導線8と裏側の引裂き誘導線8’とが対向するように(同位置に)設けられている。
【0050】
引裂き誘導線8、8’を形成した部分の積層プラスチックフィルム4、4’の厚みは、図3に示したように、他の部分よりも薄くなるため、その位置を手指で引っ張ることにより簡単に引き裂いて開封できると共に、基材となるベースフィルム層5は疵つくことがないため、引張強度が低下することがなく、取り扱い時等に、誤って開封されてしまうこともない。
【0051】
また、引裂き誘導線8、8’が形成された部分は、引き裂き痕が伸びることがないため、開封位置における表裏の積層プラスチックフィルム4、4’同士のフラット性が向上して、相互に強く密着することができるため、フィルム状逆止ノズル1の逆止機能を有効に発揮することができる。
【0052】
なお、図3では、引裂き誘導線8、8’が内表面側シーラント層6、6’の表面のみに形成されているが、図4の実施形態に示すように、内面側シーラント層6、6’および外面側シーラント層7、7’の両方にそれぞれ引裂き誘導線8、8’を設けた場合には、開封位置における積層プラスチックフィルム4、4’の厚みがさらに薄くなり、小さい引裂き力で簡単に開封することができると共に、裂け目の進行方向を確実に誘導することができようになる。なお、この場合、内表面側シーラント層6表面上の引裂き誘導線8、8’と、外表面側シーラント層7表面上の引裂き誘導線8、8’の形成位置がほぼ同じ位置になるようにする。
【0053】
また、引裂き誘導線8、8’は、図3および図4に示す実施形態において、各表面にそれぞれ3本づつ設けられているが、積層プラスチックフィルム4、4’の種類や厚み、腰度等に合わせて、1〜複数本形成することが好ましい。
【0054】
ところで、レトルトパック用の包装袋に用いられる逆止ノズル1において、該ノズル1を構成する積層プラスチックフィルム4の内・外表面側シーラント層6、7として耐熱性を有するポリプロピレンを用いた場合、ポリプロピレンは、ポリエチレンよりも結晶度が高く、結合力が強いため、伸びやすく切れ難いという特性がある。このような積層プラスチックフィルム4に対しても、上記のように引裂き誘導線8を内表面側シーラント層6表面、好ましくは内・外表面側シーラント層6、7表面に形成し、積層プラスチックフィルム4の厚みを薄くすることで、引裂き時に、内・外表面側シーラント層6、7が伸びることがなく、小さな引裂き力によって簡単に開封することができるようになる。
【0055】
また、逆止ノズル1は、被包装物を注出した後、内面側シーラント層6,6’が密着して逆止機能を発揮するが、本発明では、引裂き誘導線8,8’を形成した部分の積層プラスチックフィルム4、4’の剛性が小さくなるため、該フィルム4、4’のスプリングバックによってノズル1の注出通路3内に残存する被包装物が押し出されることがなく、液だれが発生することがない。
【0056】
なお、本発明では、引裂き誘導線8、8’を、フィルム状逆止ノズル1を形成するに先立ち、表裏の積層プラスチックフィルム4、4’の内表面側シーラント層6、好ましくは内・外表面側シーラント層6、7表面に形成した後、引裂き誘導線8、8’が重なるように、表裏の積層プラスチックフィルム4、4’を重ね合わせ、さらに外周縁を相互に融着させることによりフィルム状逆止ノズル1を形成する。そのため、図1に示すように引裂き誘導線8、8’の端部は、フィルム状逆止ノズル1の外周縁シール部分12となり、その部分の誘導線8、8’は溶融して潰れることになる。そのため、引裂き誘導線8、8’の形成によって、外周縁シール部分12の強度が低下することがなく、また、包装袋の取り扱い時に、引裂き誘導線8、8’が誤って切れてしまうおそれもない。
【0057】
このように、引裂き誘導線8、8’の端部は、外周縁シール部分12として融着されてしまうが、その部分の積層プラスチックフィルムの引裂き抵抗は、一度、引裂き誘導線8、8’を形成したことにより、他の部分よりも弱くなっている。そのため、本発明では、引裂き誘導線8、8’の端部位置の外周縁シール部分12を手指で引っ張ることで、フィルム状逆止ノズル1を簡単に開封することができ、従来のように、外周縁シール部分12の開封予定位置にVノッチ等の誘導疵を設ける必要がなくなる。
【0058】
また、引裂き誘導線8、8’は、フィルム状逆止ノズルの形成前の積層プラスチックフィルムに対し、減肉加熱ロール歯やレーザ光線の照射等によって連続的あるいは間欠的(ミシン目状)に形成することができる。これによって積層プラスチックフィルム4、4’の種類や厚み、腰度等に合わせて、誘導線8、8’の幅、長さおよび深さ等を自由に選択することができる。なお、引裂き誘導線8、8’は、図3に示した幅(A)が1μm〜2mm、その深さは、引裂き誘導線8、8’形成後の残りのシーラント層の厚み(d)が、シーラント層厚み(D)の1/2以下になるように形成することが好ましい。
【0059】
なお、このようなフィルム状逆止ノズルにおいて、その逆止機能を発揮するためには、フィルム状逆止ノズルを構成する表裏2枚の積層プラスチックフィルムの密着力をより確実にすることが好ましく、そのためには、逆止ノズルを構成する積層プラスチックフィルムの注出通路3内面に濡れ処理を施すことが有効となる。
【0060】
この濡れ処理とは、積層プラスチックフィルム相互間に働く密着力をより確実なものとし、上述した外側逆止機能(外気の袋内への侵入阻止)を有効に発揮させる処理であり、例えば、PEやPP、EAV、アイオノマーなどからなる積層プラスチックフィルムのシーラントフィルムの表面に、コロナ放電処理、UVオゾン処理、樹脂コーティング処理、金属蒸着処理、無電解めっき処理、金属低温溶射処理、プラズマエッチング処理、火炎処理等を好適例とする濡れ処理を施すことによって、フィルム表面の物理的な表面改質と極性官能基生成による化学的な表面改質との相乗効果により、フィルムの濡れ性を向上させることができる。
【0061】
とくに、本発明では、少なくとも引裂き誘導線8、8’の形成位置を含むその近傍の注出通路3内表面に濡れ処理を形成することが好ましい。これによれば、フィルム状逆止ノズル1の開口からの被包装物の吐出終了後において、ノズル開口先端に介在する被包装物が、その内側の濡れ処理層に吸い込まれるように液戻りするため、液だれの発生を効果的に防ぐことができる。
【0062】
また、この実施形態のフィルム状逆止ノズル1では、その下縁部の、引裂き誘導線8、8’の形成位置より基端部側に幾分寄った位置に、液だれ防止用の尖塔状の突起9が設けられている。この突起9により、フィルム状逆止ノズル1の注出口から発生した液だれは、包装袋の下方側に位置することとなる辺部分に達する前に、該突起部分を伝い落ちることになり、袋本体部分2や、これを包囲する外容器内等が汚れることがなく、液だれの意図しない個所への伝い落ちるおそれを効果的に取り除くことができる。
【0063】
なお、本発明では、このようなフィルム状逆止ノズル1の少なくとも開口部(注ぎ口)の外表面、すなわち、開口予定部を含むその近傍の外表面および前記液だれ防止用突起9に、撥水性物質・撥油性物質の塗布層10を設けることが好ましい。フィルム状逆止ノズル1に対し、このような処理を施した場合には、包装袋を起立姿勢に復帰させて液状被包装物の注出を停止するに際しての、いわゆる液切れ性が高まり、液状被包装物の不測の垂れ落ちを有効に防止することができる。
【0064】
上記撥水物質としては、シリコーンオイルやフッ素系樹脂、アクリル系樹脂もしくはアミド系樹脂からなる撥水コート剤を用い、撥油物質としては、シリコン樹脂やテフロン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂などの撥油コート剤を用い、これらにウレタン系、アクリル系、エステル系、硝化綿系、アミド系、塩ビ系、ゴム系、スチレン系、オレフィン系、塩酸ビ系、セルロース系、フェノール系などの樹脂をバインダとして添加する。
【0065】
本発明において、このような撥水・撥油塗布層を設ける理由は、例えば、液状被包装物が醤油や酒のような低粘度のものである場合、その液状被包装物の、食品へのかけ過ぎを防ぐべく、注出口形成後の、多くは平面形状が方形の包装袋をわずかずつ傾けてそれを注出すると、液状の被包装物が、包装袋のその傾動姿勢で、形成された注出口より高さレベルの低い、即ちそれの下方側に位置することとなる辺部分を伝わって意図しない個所に滴下することがしばしばあり、ときには、液状被包装物によって着衣を汚損することがあり、これを防止するためである。
【0066】
これにより、液状被包装物が、油性のドレッシングやサラダオイル等の高粘度のものであっても、注出姿勢において、フィルム状逆止ノズルの先端部寄りに開口した注出口より下方側に位置することとなる辺部分の外表面に撥油層を設けることにより、包装袋をわずかずつ傾けて、注出口から、液状被包装物の徐々なる注出を行うときの、その撥油層による液切れ性を向上させて、包装袋の下方側に位置することとなる辺部分の、オイル等による濡れを瞬時に防止して、粘稠状液体の、意図しない個所への伝い落ちのおそれを効果的に取り除くことができる。
【0067】
本発明の場合、こうした撥水・撥油塗布層と、液状被包装物、例えば醤油やオイルとの接触角は100〜170°の範囲とすることが好適であり、これにより、注出口の近傍部分へのこうした液状物の回り込みを十分に防止して、それの注出の的確性をより一層高めることができる。
【0068】
また、本実施形態のフィルム状逆止ノズル1では、図1に示すように、フィルム状逆止ノズル1の下縁部、とくにノズル取付基端部側(包装袋本体側)に隣接した場所に、注出量制御用液溜め部11を設け、吐出流が一時的に、この帯域で滞留するようにして、意図しない過剰な注ぎ出しを防止し、安定した定量吐出をもたらすようにすることが好ましい。
【0069】
このような液溜め部11の採用によって、包装袋本体2からフィルム状逆止ノズル1の注出通路3に導かれた液状の被包装物は、かかる液溜め部11にて一時滞留し、吐出流速が一般的に低下した上で、注出口に向うようになるので、被包装物の過剰な流出を避けることができるようになる。
【実施例】
【0070】
本実施例では、内表面側シーラント層(高密度PE10μm)−ベースフィルム層(NY15μm)−外表面側シーラント層(高密度PE15μm)の3層構造の表裏2枚の積層プラスチックフィルムからなるフィルム状逆止ノズルに対し、ノズル先端部近傍の内表面側シーラント層表面に引裂き誘導線を形成し、これを手指で引き裂いて開封した際の、開封位置(注出口端部)の断面をレーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK9700)を用いて観察した。
また、比較例として、同じフィルム構成からなるフィルム状逆止ノズルの外周縁シール部分にIノッチを設け、該Iノッチを始点として手指で引裂き開封した際の開封位置(注出口端部)の断面を観察した。その結果を図5に示す。
【0071】
図5の結果より、比較例のフィルム状逆止ノズルでは、開封した際の引張り力によって開封位置の、内・外表面側シーラント層が大きく伸びて波を打ったような状態となっていた。この状態では、積層プラスチックフィルム同士の開封位置におけるフラット性が低下し、逆止機能を有効に発揮することができず、外気の侵入や、液だれなどの問題が生じるおそれがある。
【0072】
一方、本発明例では、内・外表面側シーラント層がほどんど伸びず、小さい引裂き力で簡単に引裂き開封できたことがわかる。これによれば、注出口端部(引裂き痕)が直線状となり、積層プラスチックフィルムの開封位置においてフラット性を保つことができ、逆止機能を有効に発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の技術は、一般的な液状物充填包装体の注出ノズル、とりわけ、高温条件で利用される液状物充填包装体の注出ノズルとして利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 フィルム状逆止ノズル
2 包装袋本体
3 注出通路
4、4’ 積層プラスチックフィルム
5、5’ ベースフィム層
6、6’ 内側シーラント層
7、7’ 外側シーラント層
8 引裂き誘導線
9 液だれ防止用突起
10 撥水・撥油塗布層
11 液溜め部
12 ノズル外周縁シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム層および、このベースフィルム層の両側を挟むように積層してなる内表面側シーラント層および外表面側シーラント層とからなる、重なり合う表裏で一対の積層プラスチックフィルムの、そのフィルムの内表面側シーラント層相互間に液状物を介在させることで外気の袋内への侵入を阻止するようにした、液状物充填用軟質包装袋のための平坦なフィルム状逆止ノズルにおいて、
ノズルを構成している表裏で一対の前記積層プラスチックフィルムの、ノズル先端部寄りの引裂き予定位置の、内表面側シーラント層表面にそれぞれ、注出通路を横断して延びる1もしくは複数本からなる引裂き誘導線を設けたことを特徴とする引裂き開封性に優れるフィルム状逆止ノズル。
【請求項2】
前記外表面側シーラント層表面の、内表面側シーラント層表面上の前記引裂き誘導線の形成位置に対応する位置に、注出通路を横断して延びる1もしくは複数本からなる引裂き誘導線を設けたことを特徴とする請求項1に記載の引裂き開封性に優れるフィルム状逆止ノズル。
【請求項3】
前記引裂き誘導線は、前記内表面側シーラント層および/または外表面側シーラント層の表面に対して、減肉ロール歯を押し付けて連続的または間欠的に形成した条溝からなることを特徴とする請求項1または2に記載の引裂き開封性に優れるフィルム状逆止ノズル。
【請求項4】
前記減肉加熱ロール歯は、40〜180℃に加熱することを特徴とする請求項3に記載の引裂き開封性に優れるフィルム状逆止ノズル。
【請求項5】
前記引裂き誘導線は、前記内表面側シーラント層および/または外表面側シーラント層の表面へのレーザ光線の照射によって連続的または間欠的に形成した溶融溝からなることを特徴とする請求項または2に記載の引裂き開封性に優れるフィルム状逆止ノズル。
【請求項6】
前記引裂き誘導線の幅は、1μm〜2mm/1本であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の引裂き開封性に優れるフィルム状逆止ノズル。
【請求項7】
前記引裂き誘導線の形成位置の積層プラスチックフィルムの厚みが、その他の部分の厚みの1/2以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の引裂き開封性に優れるフィルム状逆止ノズル。
【請求項8】
ベースフィルム層と、そのベースフィルム層の両側を挟むようにして積層してなる内表面側シーラント層および外表面側シーラント層と、を具える表裏で一対の軟質積層プラスチックフィルムを、該内表面側シーラント層の対向姿勢で相互に重ね合わせ、袋本体の側部に接続される基端部および、液状物の注出通路を形造る中央部分を除き、外周縁部分を相互に融着させてフィルム状逆止ノズルを形成するに先立ち、ノズルを構成している表裏一対の前記積層プラスチックフィルムの、ノズル先端部寄りの位置の、内表面側シーラント層表面にそれぞれ、注出通路を横断して延びる1もしくは複数本の引裂き誘導線を形成することを特徴とするフィルム状逆止ノズルの引裂き誘導線形成方法。
【請求項9】
前記外表面側シーラント層表面の、内表面側シーラント層表面上の前記引裂き誘導線の形成位置に対応する位置に、注出通路を横断して延びる1もしくは複数本からなる引裂き誘導線を形成することを特徴とする請求項8に記載のフィルム状逆止ノズルの引裂き誘導線形成方法。
【請求項10】
前記引裂き誘導線は、前記内表面側シーラント層および/または外表面側シーラント層の表面に対して、減肉ロール歯を押し付けることによって形成することを特徴とする請求項8または9に記載のフィルム状逆止ノズルの引裂き誘導線形成方法。
【請求項11】
前記減肉加熱ロール歯は、40〜180℃に加熱することを特徴とする請求項10に記載のフィルム状逆止ノズルの引裂き誘導線形成方法。
【請求項12】
前記引裂き誘導線は、前記内表面側シーラント層および/または外表面側シーラント層の表面へのレーザ光線の照射によって形成することを特徴とする請求項8または9に記載のフィルム状逆止ノズルの引裂き誘導線形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−162294(P2012−162294A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23562(P2011−23562)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(307028493)株式会社悠心 (31)
【Fターム(参考)】