説明

引込み式医療用採血装置

【課題】 本発明の目的は、一手でも容易にカニューレを引込むことができる操作の便利な引込み式医療用採血装置を提供する。
【解決手段】 バレルと、カニューレ座と、カニューレと、前ニードル部を保持し、カニューレ座が前記前保持位置にある時、前ニードル部がバレルの前開口端から露出する使用状態にさせ、カニューレ座が後保持位置にある時、前ニードル部がバレルの前開口端内に没入する引込み状態にさせるようにカニューレ座の連結部に配置されたハブと、大径部の壁面に形成されている保持孔と、カニューレ座が前保持位置にある時、保持孔内に係止させられると共に、カニューレ座を係止し、前保持位置にあるカニューレ座の後方への摺動を阻止することができる係止手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用採血装置に関し、更に詳しくは、使用後に、カニューレをさらさずにバレル内に収納することができる引込み式医療用採血装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5810775号に開示されている開閉可能なキャップ付き引込み式医療用具1は、図1及び図2に示すように、外管11と、摺動管12と、引込み座13と、カニューレ14と、ばね15とを備えている。外管11は、前端開口111と後端開口112とを有し、後端開口112にキャップ16が後端開口112を閉鎖することができるように取付けられている。また、摺動管12は、前端開口121と後端開口122とを有し、前端開口121が引込み座13を介して外管11の前端開口に設けられているストッパ113近くに密嵌されている。このようにして引込み座13が摺動管12の前端開口121に保持されている。また、カニューレ14が前後両端142,141を有し、その前端142が前記外管の前端開口外に露出するように、引込み座13に挿着されている。ばね15が摺動管12と引込み座13との間に圧縮されている。
【0003】
この医療用具1を使用して採血する際、先ず、カニューレ14の前端142を患者の血管に穿刺する。そして、その先端にストッパーが付いている採血管(図示せず)を外管11の後端開口111から外管11内に挿入し、続いて前方へ押して摺動管12内に挿入し、カニューレ14の後端がまずゴム鞘17、そして前記採血管の前記ストッパーを突き通した後、採血を行う。採血が完了した後、前記採血管を外管11から取出す。そして、キャップ16を閉めて摺動管12の後端開口122に当接し、摺動管12をストッパー112の方へ押付けて摺動させることにより、引込み座13の摺動管12に対する係止を解除し、引込み座13を摺動管12から脱出すると同時に、ばね15の圧縮を釈放し、引込み座13を押してカニューレ14をつれて摺動管12内に引込むことができる。
【0004】
しかしながら、このような医療用具では、採血が完了した後、一手で前記外管を保持しながら、他の手でキャップ16を閉めながら摺動管12を押してカニューレ14を摺動管12内に引込まなければならないので、操作上にはかなり不便である。また、前記採血管の外径が摺動管12の内径よりある程度小さいので、前記採血管と前記摺動管との間にかなりの隙間が生じ、採血中、前記採血管が揺れ、患者に疼痛を感じさせるという欠点もある。
【0005】
また、図3に示すのは、静脈内カテーテル挿入装置の一例である。この静脈内カテーテル挿入装置9は、その前端にハブ911がついているカニューレ座91と、カニューレ座91に固定されているカニューレ92と、カニューレ座91に外嵌されているカテーテルハブ93と、カテーテルハブ93に固定され、カニューレ92を挿通してその針先が外部に露出している可撓性カテーテル94とを備えている。
【0006】
このような静脈内カテーテル挿入装置を使用する際、まずカニューレ92の針先で患者の血管を穿刺してから可撓性カテーテル94をカニューレ92と共に患者の血管に挿入する。それに引き続いて、一手でカニューレ92をカテーテル94から抜出しながら、他の手でカテーテル94に圧力を与えてカテーテル94を血管に留置する。そして、輸液器具または中空バレルをカテーテルハブ93に接続して薬剤の注射または採血を行う。カニューレ92をカテーテル94から抜出した直後に、輸液または採血を行わなければならないので、カニューレ座91及びカニューレ92を身近な場所に置くが、外部に露出しているカニューレ92の針先が誤って医療人員を傷つける事故が起こることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑みて、本発明の主な目的は、一手でも容易にカニューレを引込むことができる操作の便利な引込み式医療用採血装置を提供しようとすることにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、静脈内カテーテル挿入装置として使用され、採血や薬剤の注射を行うことができ、誤刺し事故を避けることができる医療用採血装置を提供しようとすることにある
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、前端開口と該前端開口を封じていて針で突き通されるストッパとを有する採血管を挿入して血液を採集するための引込み可能なカニューレ付き医療用採血装置において、
その軸方向上に互いに対向している前後2つの開口端と、該前後2つの開口端の間に延伸して該2つの開口端の開口を連通する通路を形成し、且つ、前記前開口端に近接している小径部と前記後開口端に近接している大径部とからなった周壁とを有するバレルと、
前後両端を有する直管状で、その後端が開口していて前記採血管の前端が挿入される周縁部と、該周縁部の前端縁から前方へ延伸しながら縮小し、前方の外界への小通路があるような連結部を形成してなっており、且つ、前記バレルの後開口端から、前記大径部の通路内に、前記軸方向に沿って前記小径部に近接した前保持位置と前記後開口端に近接した後保持位置との間に前後摺動可能に挿入保持されているカニューレ座と、
前記軸方向に沿っている一直線上に前後2つのニードル部がそれぞれ延伸してなり、且つ、その全体の前後両端がそれぞれ針先とされた上、該後ニードル部が前記カニューレ座の連結部の小通路を経由して前記カニューレ座内に延伸していて、前記採血管の前端が前記周縁部内に挿入されると、前記ストッパを前記後ニードル部の針先で突破するカニューレと、
前記前ニードル部を保持し、前記カニューレ座が前記前保持位置にある時、前記前ニードル部が前記バレルの前開口端から露出する使用状態にさせ、前記カニューレ座が前記後保持位置にある時、前記前ニードル部が前記バレルの前開口端内に没入する引込み状態にさせるように前記カニューレ座の連結部に配置されたハブと、
前記大径部の壁面に形成されている保持孔と、前記カニューレ座が前記前保持位置にある時、前記保持孔内に係止させられると共に、前記カニューレ座を係止し、前記前保持位置にあるカニューレ座の後方への摺動を阻止することができる係止手段とからなる保持機構と、
外部から操作されるように構成され、操作されると、前記係止手段の係止を解除すると同時に、前記カニューレ座を前記後保持位置に摺動させる作動手段と、
前後延伸し且つ前後両端開口を有するダクトが形成してあり、且つ、前記後端開口が脱着可能に前記小径部に外嵌しており、前記前端開口が前記後端開口から前方へ先細に延長してなったカテーテルハブと、
前後2端部を有する直線的な細管状で、その後端部が前記カテーテルハブの前記前端開口から挿入固定されて前記ダクトと連通しているカテーテルとを有し、
前記前ニードル部は、その針先が前記カテーテルの前端部から前方へ露出するように前記カテーテル内を挿通していることを特徴とする引込み式医療用採血装置を提供する。
【0010】
上記構成による本発明の引込み式医療用採血装置は、一手で前記バレルを保持しながら、その手指で前記作動手段を操作すると、前記係止手段の係止を解除して前記カニューレ座を前記後保持位置に摺動させると同時に、前記カニューレを前記カニューレ座の摺動に従って前記バレル内に引込みすることができるので、一手でも容易に前記カニューレを前記バレル内に引込むことができる。
【0011】
また、前記バレルにおける大径部の前記後開口端に近い内壁面に、複数の突起が周方向に沿って前記バレル内に形成されていることが好ましい。それにより、採血前に、予め前記採血管を前記バレルに挿入し、前記複数の突起で前記採血管を保持することができるので、採血中、採血管の揺れにより、患者に疼痛を感じさせることを避けることができる。
【0012】
更に、本発明の引込み式医療用採血装置は、前後延伸し且つ前後両端開口を有するダクトが形成してあり、且つ、前記後端開口が脱着可能に前記小径部に外嵌しており、前記前端開口が前記後端開口から前方へ先細に延長してなったカテーテルハブと、前後2端部を有する直線的な細管状で、その後端部が前記カテーテルハブの前記前端開口から挿入固定されて前記ダクトと連通しているカテーテルとを更に備えており、前記前ニードル部は、その針先が前記カテーテルの前端部から前方へ露出するように前記カテーテル内を挿通している。
【発明の効果】
【0013】
この構成によると、採血や薬剤の注射の時、前記ニードル部の針先で患者の血管を穿刺してから前記カテーテルをカニューレ92と共に患者の血管に挿入する。このようにして従来のように、採血または薬剤の注入を行うことができる上、一手で前記作動手段を操作すると、前記係止手段の係止を解除すると同時に、前記カニューレ座を前記後保持位置に摺動させることができるので、前記カニューレが前記カニューレ座の摺動に従い、前記バレル内に引込みすることができるので、従来のような誤刺し事故を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の引込み式医療用採血装置の好ましい実施形態を説明する。
【0015】
まず、図4乃至図7を参照しながら、本発明の引込み式医療用採血装置の第1の実施形態を説明する。本実施形態における引込み式医療用採血装置は、前端開口52と前端開口52を封じていて針で突き通されるストッパ51とを有する採血管5(図6参照)を挿入して血液を採集するためのものであり、バレル2と、カニューレ座3と、カニューレ41と、ハブ40と、保持機構231,232と、作動手段34とを備えている。
【0016】
バレル2は、その軸方向上に互いに対向している前後2つの開口端224,223と、前後2つの開口端224,223の間に延伸して該2つの開口端の開口を連通する通路21を形成し、且つ、前開口端224に近接している小径部225と後開口端223に近接している大径部229とからなった周壁22とを有する。
【0017】
カニューレ座3は、バレル2の後開口端223から、大径部22の通路21内に、前記軸方向に沿って小径部225に近接した前保持位置と後開口端223に近接した後保持位置との間に前後摺動可能に挿入保持されている。このカニューレ座3は、前後両端を有する直管状で、その後端が開口していて採血管5の前端52が挿入される周縁部324と、周縁部324の前端縁から前方へ延伸しながら縮小し、前方の外界への小通路325があるような連結部322とを形成してなる。
【0018】
カニューレ41は、前記軸方向に沿っている一直線上に前後2つのニードル部413,411が一体的に形成されるようにそれぞれ延伸してなっている。且つ、カニューレ41の全体の前後両端414,412がそれぞれ針先とされた上、後ニードル部411がカニューレ座3の連結部322の小通路325を経由してカニューレ座3内に延伸していて、採血管5の前端52が周縁部324内に挿入されると、ストッパ51を後ニードル部411の針先412で突破することができる。また、周縁部324内にゴム鞘42が後ニードル部411を覆うように設けられている。
【0019】
ハブ40は前記軸方向に沿って延伸してなっていて連結部324の小通路325と連通しているカニューレ保持空間401を有し、カニューレ保持空間401内に前ニードル部413を保持し、カニューレ座3が前記前保持位置にある時、前ニードル部413がバレル2の前開口端224から露出する使用状態にさせ、カニューレ座3が前記後保持位置にある時、前ニードル部413がバレル2の前開口端224内に没入する引込み状態にさせるように、カニューレ座3の連結部322に一体的に配置されている。なお、小径部225の内壁面が大径部229から前開口端224へ徐々に先細に伸びている。従って、ハブ40はバレル2における小径部225内に制限されていてバレル2の前端開口224から外すことを防止することができる上、採血時、皮膚及び皮下の血管を接近しやすい。
【0020】
前記保持機構は、大径部229の壁面に形成されている保持孔231と、カニューレ座3が前記前保持位置にある時、保持孔231内に係止させられると共に、カニューレ座3を係止し、前記前保持位置にあるカニューレ座3の後方への摺動を阻止することができる係止手段232とからなる。
【0021】
本実施形態において、保持孔231は通孔であり、且つ、バレル2における大径部229の壁面に、保持孔231から長形通孔24が後方へ延伸してからその末端に前記後保持位置と対応する後保持孔233が形成されてなっている。また、長形通孔24はそれぞれ保持孔231及び後保持孔233と前収縮部25及び後収縮部26を経由して連通している。
【0022】
そして、係止手段232は、周縁部324の外壁面から突起してから長形通孔24を経由して作動端として露出しており、カニューレ座3が前記前保持位置から前記後保持位置へ摺動する場合に、カニューレ座3の摺動に従い、長形通孔24に沿って保持孔231から後保持孔233まで摺動することができる。従って、カニューレ座3がそれぞれ前記前保持位置及び前記後保持位置にある時、係止手段232が前後2収縮部25,26に制限され、保持孔231及び後保持孔233に係止されてその摺動を阻止される。
【0023】
なお、大径部229の壁面に、更にスリット27が後保持孔233からバレル2の後開口端223まで延伸するように形成されている。それにより、大径部229の可撓性がある程度増加させられたので、係止手段232が前後2つの保持孔231,233から前後2収縮部25,26を通過して長形通孔24に入ることが容易になる上、スリット27を経由して長形通孔24内に押入され装置されることもできる。
【0024】
また、作動手段34は、外部から操作されるように構成され、操作されると、係止手段232の係止を解除すると同時に、カニューレ座3を前記後保持位置に摺動させるものである。本実施形態において、作動手段34は、バレル2の周壁22の外面222にあるように、係止手段232の作動端に連結されていて、操作されて長形通孔24に沿って摺動すると、係止手段232もカニューレ座3をつれてそれに従って摺動することができる。
【0025】
なお、小径部225の外周面に、複数の係止リブ226が前記軸方向に沿って延伸するように形成されている。小径部225に、前記複数の係止リブと係止して前端開口224外に露出している前ニードル部413を覆うプロテクター45が外嵌している。
【0026】
本実施形態の引込み式医療用採血装置は、最初、図5に示すように、係止手段232が保持孔231に係止されてカニューレ座3が前記前保持位置に保持されている状態にある。この採血装置を使用しようとする時、まず、プロテクター45をバレルの小径部45から取り外した後、前ニードル部413の針先414で患者の血管を穿刺する。この時、血液はカニューレ41を経由してゴム鞘42内に流れる。それから、図6に示すように、採血管5を前記バレル内に挿入し、続いて前方へ押してカニューレ座3内に挿入し、カニューレ41の後ニードル部411の針先にまずゴム鞘42、そして採血管5のストッパー51を突き通させた後、採血を行う。
【0027】
採血が完了した後、採血管5を取出す。そして、指で作動手段34を操作し、係止手段232を長形通孔24に沿って後保持孔233へ摺動させ、カニューレ座3をつれて前記後保持位置へ摺動させる。このようにして、図7に示すように、カニューレ41をバレル2内に引込むことができる。
【0028】
次に、図8及び図9に示すのは前記第1の実施形態の変形例である。本変形例において、前記第1の実施形態と異なる点は、バレル2における大径部229の後開口端224に、外からその内外壁面を挟んでいる内外環面を有し、且つ、前記内環面に複数の突起282が周方向に沿ってそれぞれ突出した環状リング28が嵌接していることにある。それにより、採血前に、予め採血管5をバレル2に挿入し、複数の突起282で前記採血管を保持することができるので、採血中、採血管の揺れにより、患者に疼痛を感じさせることを避けることができる。
【0029】
また、図10に示すのは本発明の第2の実施形態である。本実施形態において、前記第1の実施形態と異なる点は、カニューレ4の前ニードル部413と後ニードル部411とが別体であり、カニューレ保持空間401がそれぞれ前ニードル部413及び後ニードル部411を保持する前後2エリア4013,4011と、前後2エリア4013,4011に連結され、そこを経由する血液を外から視認することができる表示可能な中間エリア402とからなっていることにある。それにより、前ニードル部413と前記後ニード部とはそれぞれ前後2エリア4013,4011に保持され、且つ、それらが中間エリア402を介して互いに連通することができるので、採血時、中間エリア402によりカニューレ41が確実に患者の血管に穿刺されると確認することができる。
【0030】
次に、図11及び図12に示すのは本発明の第3の実施形態である。本実施形態において、前記第2の実施形態と異なる点は前記作動手段の要素としては、バレル2の外壁面222に枢支されているトリガ63を有する他、更に、カニューレ座3の周縁部324の外壁面とバレル2の内壁面221との間に、弾性附勢手段61がカニューレ座3が前記後位置の方へ附勢するように介設されていることにある。更に詳しく説明すると、トリガ63は、バレル2の外壁面222に嵌設されているCクリップ6)を介してバレル2の外壁面222に枢支され、係止手段632と一体的に連結されている荷重端631と、作動されると、係止手段632を保持孔231による係止から釈放させることができる作動端633とを有する。
【0031】
更に、バレル2における大径部22の小径部225に近接した内壁面に環状肩部227が形成され、カニューレ座3の周縁部324の外壁面に前方へ環状肩部227と対面するように環状フランジが突出形成されている。また、弾性附勢手段61はコイルばねであり、カニューレ座3が前記前保持位置にある時、それが環状肩部227と環状フランジ323との間に強制的に挟まれて前記附勢力を生じるとことができる。
【0032】
採血が完了した後、トリガ63の作動端633が指で押圧されると、係止手段632が保持孔231による係止から釈放されると同時に、前記弾性附勢手段の附勢力が釈放され、カニューレ座3が前記後保持位置へ押し付けられ、カニューレ41をバレル2内に引込むことができる。
【0033】
図13に示すのは前記第3の実施形態の変形例である。本変形例において、前記第3の実施形態と異なる点は、保持孔231が2個あり、左右対称的にバレルにおける大径部の壁面に形成され、係止手段632もトリガ63もそれに応じてそれぞれ2個あることにある。それにより、前記弾性附勢手段61の附勢力を平衡にさせることができるので、前記カニューレ41を穏やかに前記バレル内に引込むことができる。
【0034】
図14及び図15に示すのは本発明の第4の実施形態である。本実施形態において、前記第2の実施形態と異なる点は、保持孔231は長形通孔24の前端から周方向に延伸してなっていて、長形通孔24に近接した近端部241と、長形通孔24を遠ざかった遠端部242とを有し、前収縮部25が近端部241と遠端部242との間に形成されており、作動手段34の一構成要素として、他にカニューレ座3の周縁部の外壁面とバレル2の内壁面との間に、前記第3の実施形態と同様に、カニューレ座3にカニューレ座3を前記後保持位置の方へ移動させる附勢力を与える弾性附勢手段61が介設されていることにある。それにより、係止手段232が遠端部242に置かれる時、その後方への摺動及びそれに伴うカニューレ座3の後方へ摺動が保持孔231の形状で完全に阻止されるので、そこに穏やかに係止されることができる。
【0035】
また、図16及び図17に示すのは本発明の第5の実施形態である。本実施形態において、前記第4の実施形態と異なる点は、カニューレ座3の周縁部324の外壁面に環状突縁36が突出形成され、バレル2の大径部229の内壁面に環状エッジ220が前方へ環状突縁36と対面するように形成さ、且つ、弾性附勢手段7がその前後両端71,72でそれぞれ環状突縁36及びエッジ220に引っ掛けていることにある。このようにして、弾性附勢手段7は、前記カニューレ座が前記前保持位置にある時、その前後両端71,72が引っ張られてカニューレ座3にカニューレ座3を前記後保持位置の方へ移動させる附勢力を与えることができる。
【0036】
図18及び図19に示すのはそれぞれ本発明の第6の実施形態及び第7の実施形態である。この2つの実施形態において、前述した実施形態と異なる点は、更にカテーテルハブ431とカテーテル432とを備えていることにある。更に詳しく説明すると、カテーテルハブ431の中には、前後延伸し且つ前後両端開口436,435を有するダクト433が形成してある。後端開口435が脱着可能に小径部225の先端228に外嵌している。前端開口436が後端開口435から前方へ先細に延長してなった。
【0037】
また、カテーテル432は前後2端部438,437を有する直線的な細管状で、その後端部437がカテーテルハブ431の前端開口436から挿入固定されてダクト433と連通している。前ニードル部413は、その針先414がカテーテル432の前端部438から前方へ露出するようにカテーテル432内を挿通している。
【0038】
採血時、前ニードル部413の針先が患者の血管を穿刺すると同時に、前記カテーテルの前端部も患者の血管を穿刺する。そして、採血が完了した後、前ニードル部413をバレル2内に引込んでから、カテーテルハブ431の後端開口から小径部225の先端228が抜出されてカテーテル432がそのまま患者の血管に留置される。従って、続いてカテーテルハブ431に輸液器具が接続され、薬剤の注入を行うことができる。
【0039】
また、図20に示すのは本発明の第8の実施形態である。本実施形態において、前述した実施形態と異なる点は、ハブ40がバレル2の前開口端224から脱着可能に連結部322に外嵌し、且つ、そこを経由する血液を外から視認することができる嵌め部404と、嵌め部404から前方へ延伸していて前ニードル部413を保持することができる保持部405とからなることにある。それにより、必要に応じて、適当な管径を有する前ニードル部413を使用することができる。
【0040】
図21に示すのは、本発明の第9の実施形態である。本実施形態において、前記第8の実施形態と異なる点はカテーテルハブ431とカテーテル432とを備えることにある。
【0041】
更に詳しく説明すると、カテーテルハブ431の中には前後延伸し且つ前後両端開口436,435を有するダクト433が形成してあり、且つ、後端開口435が脱着可能にハブ40の保持部405に外嵌している。前端開口436が後端開口435から前方へ先細に延長してなった。
【0042】
また、カテーテル432は前後2端部438,437を有する直線的な細管状で、その後端部437がカテーテルハブ431の前端開口436から挿入固定されてダクト433と連通している。前ニードル部413は、その針先414がカテーテル432の前端部438から前方へ露出するようにカテーテル432内を挿通している。
【0043】
上記のように、本発明の引込み式医療用採血装置は、一手で前記バレルを保持しながら、その手指で前記作動手段を操作すると、前記係止手段の係止を解除して前記カニューレ座を前記後保持位置に摺動させると同時に、前記カニューレを前記カニューレ座の摺動に従って前記バレル内に引込みすることができるので、一手でも容易に前記カニューレを前記バレル内に引込むことができる。
【0044】
また、本発明の引込み式医療用採血装置は、前記バレルにおける大径部の前記後開口端に近い内壁面に、複数の突起が周方向に沿ってそれぞれ前記バレル内に突出するように形成されている実施形態であれば、採血前に、予め前記採血管を前記バレルに挿入し、前記複数の突起で前記採血管を保持することができるので、採血中、採血管の揺れにより、患者に疼痛を感じさせることを避けることができる。
【0045】
更に、本発明の引込み式医療用採血装置は、前後延伸し且つ前後両端開口を有するダクトが形成してあり、且つ、前記後端開口が脱着可能に前記小径部に外嵌しており、前記前端開口が前記後端開口から前方へ先細に延長してなったカテーテルハブと、前後2端部を有する直線的な細管状で、その後端部が前記カテーテルハブの前記前端開口から挿入固定されて前記ダクトと連通しているカテーテルとを更に備えており、前記前ニードル部は、その針先が前記カテーテルの前端部から前方へ露出するように前記カテーテル内を挿通している実施形態であれば、採血や薬剤の注射の時、前記ニードル部の針先で患者の血管を穿刺してから前記カテーテルを前記カニューレと共に患者の血管に挿入する。このようにして従来のように、採血または薬剤の注入を行うことができる上、一手で前記作動手段を操作すると、前記係止手段の係止を解除すると同時に、前記カニューレ座を前記後保持位置に摺動させることができるので、前記カニューレが前記カニューレ座の摺動に従い、前記バレル内に引込みすることができるので、従来のような誤刺し事故を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
上記のように、本発明は一手でも容易にカニューレを引込むことができる操作の便利な引込み式医療用採血装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】米国特許第5810775号に開示されている引込み式医療用具を示す断面図である。
【図2】前記図1の医療用具におけるカニューレが外管内に引込んだ状態を示す断面図である。
【図3】従来の静脈内カテーテル挿入装置を示す分解図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における引込み式医療用採血装置を示す分解図である。
【図5】前記第1の実施形態における引込み式医療用採血装置を示す断面図である。
【図6】前記第1の実施形態におけるカニューレ座が前保持位置にある状態を示す断面図である。
【図7】前記第1の実施形態におけるカニューレ座が後保持位置にある状態を示す断面図である。
【図8】前記第1の実施形態の変形例における引込み式医療用採血装置を示す断面図である。
【図9】前記変形例における環状リングを示す側面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態におけるカニューレ座が前保持位置にある状態を示す断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態におけるカニューレ座が前保持位置にある状態を示す断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態におけるカニューレ座が後保持位置にある状態を示す断面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態の変形例におけるカニューレ座が前保持位置にある状態を示す断面図である。
【図14】本発明の第4の実施形態におけるカニューレ座が前保持位置にある状態を示す断面図である。
【図15】本発明の第4の実施形態におけるカニューレ座が後保持位置にある状態を示す断面図である。
【図16】本発明の第5の実施形態におけるカニューレ座が前保持位置にある状態を示す断面図である。
【図17】本発明の第5の実施形態におけるカニューレ座が後保持位置にある状態を示す断面図である。
【図18】本発明の第6の実施形態における引込み式医療用採血装置を示す部分断面図である。
【図19】本発明の第7の実施形態における引込み式医療用採血装置を示す部分断面図である。
【図20】本発明の第8の実施形態における引込み式医療用採血装置を示す部分断面図である。
【図21】本発明の第9の実施形態における引込み式医療用採血装置を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0048】
2 バレル
21 通路
22 周壁
220 環状エッジ
221 内壁面
222 外壁面
223 後開口端
224 前開口端
225 小径部
226 係止リブ
227 環状肩部
228 先端
229 大径部
231 保持孔
232 係止手段
233 後保持孔
24 長形通孔
241 近端部
242 遠端部
25 前収縮部
26 後収縮部
27 スリット
28 環状リング
282 突起
3 カニューレ座
322 連結部
323 環状フランジ
324 周縁部
325 小通路
34 作動手段
36 環状突縁
40 ハブ
401 カニューレ保持空間
4011 後エリア
4013 前エリア
402 中間エリア
404 嵌め部
405 保持部
41 カニューレ
411 後ニードル部
412 針先
413 前ニードル部
414 針先
42 ゴム鞘
431 カテーテルハブ
432 カテーテル
435 後端開口
436 前端開口
437 後端部
438 前端部
45 プロテクター
5 採血管
51 ストッパー
52 前端開口
61 弾性附勢手段
62 Cクリップ
63 トリガ
631 荷重端
632 係止手段
633 作動端
7 弾性附勢手段
71 前端
72 後端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端開口と該前端開口を封じていて針で突き通されるストッパとを有する採血管を挿入して血液を採集するための引込み可能なカニューレ付き医療用採血装置において、
その軸方向上に互いに対向している前後2つの開口端と、該前後2つの開口端の間に延伸して該2つの開口端の開口を連通する通路を形成し、且つ、前記前開口端に近接している小径部と前記後開口端に近接している大径部とからなった周壁とを有するバレルと、
前後両端を有する直管状で、その後端が開口していて前記採血管の前端が挿入される周縁部と、該周縁部の前端縁から前方へ延伸しながら縮小し、前方の外界への小通路があるような連結部を形成してなっており、且つ、前記バレルの後開口端から、前記大径部の通路内に、前記軸方向に沿って前記小径部に近接した前保持位置と前記後開口端に近接した後保持位置との間に前後摺動可能に挿入保持されているカニューレ座と、
前記軸方向に沿っている一直線上に前後2つのニードル部がそれぞれ延伸してなり、且つ、その全体の前後両端がそれぞれ針先とされた上、該後ニードル部が前記カニューレ座の連結部の小通路を経由して前記カニューレ座内に延伸していて、前記採血管の前端が前記周縁部内に挿入されると、前記ストッパを前記後ニードル部の針先で突破するカニューレと、
前記前ニードル部を保持し、前記カニューレ座が前記前保持位置にある時、前記前ニードル部が前記バレルの前開口端から露出する使用状態にさせ、前記カニューレ座が前記後保持位置にある時、前記前ニードル部が前記バレルの前開口端内に没入する引込み状態にさせるように前記カニューレ座の連結部に配置されたハブと、
前記大径部の壁面に形成されている保持孔と、前記カニューレ座が前記前保持位置にある時、前記保持孔内に係止させられると共に、前記カニューレ座を係止し、前記前保持位置にあるカニューレ座の後方への摺動を阻止することができる係止手段とからなる保持機構と、
外部から操作されるように構成され、操作されると、前記係止手段の係止を解除すると同時に、前記カニューレ座を前記後保持位置に摺動させる作動手段と、
前後延伸し且つ前後両端開口を有するダクトが形成してあり、且つ、前記後端開口が脱着可能に前記小径部に外嵌しており、前記前端開口が前記後端開口から前方へ先細に延長してなったカテーテルハブと、
前後2端部を有する直線的な細管状で、その後端部が前記カテーテルハブの前記前端開口から挿入固定されて前記ダクトと連通しているカテーテルとを有し、
前記前ニードル部は、その針先が前記カテーテルの前端部から前方へ露出するように前記カテーテル内を挿通していることを特徴とする引込み式医療用採血装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2007−7444(P2007−7444A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247504(P2006−247504)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【分割の表示】特願2004−67887(P2004−67887)の分割
【原出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【出願人】(502455898)
【出願人】(502455902)
【出願人】(503238858)
【Fターム(参考)】