説明

弛度調整金具

【課題】送電線を把持する圧縮クランプと鉄塔に支持された碍子連との間で、その送電線の弛度を調整する弛度調整金具に関し、高付加価値を持ちながら低コストな弛度調整金具を提供する。
【解決手段】圧縮クランプ側および碍子連側のうちのいずれか一方の側に接続されその一方に対する他方に向かって延在した一対の外板110と、その一方の側が一対の外板110の間で外板110の延在方向に進退可能に配置された中板130と、その他方の側に接続され中板130のその他方の側を挟み込んだ一対の取付板120とを備え、中板130が、その他方の側の先端面に凹み131を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線を把持する圧縮クランプと鉄塔に支持された碍子連との間で、その送電線の弛度を調整する弛度調整金具に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔への緊線作業が終了すると、緊線された送電線の弛度を測定し、測定した弛度が設計値から外れていれば、緊線した送電線の弛度を調整する必要が生じる。また、多導体の場合には、複数の導体間における弛度のバラツキがあれば、そのバラツキを抑えるために、緊線した送電線の弛度を調整する必要が生じる。このため、鉄塔に支持された碍子連と送電線の先端を把持した圧縮クランプとの間に弛度調整金具が設けられている(例えば、特許文献1、2等参照)。
【0003】
緊線された送電線の弛度調整では、送電線を張る場合には、油圧等の動力によって送電線を引っ張る。このため、弛度調整金具には、動力を発生する調整工具が取り付けられる。弛度調整金具では、この調整工具で発生した動力を余すことなく利用する必要がある。また、この調整工具を、足場の悪い送電線に跨って取り付けたり、取り外したりしなくてはならない。さらに、弛度調整金具自身の作業性も、高いものが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−102152号公報
【特許文献2】特開2008−253061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、弛度調整金具には様々な要求が課されるが、基本的には、弛度調整金具は、送電線を緊線した後に1度だけ使用されるものであり、低コストであることが強く望まれる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、高付加価値を持ちながら低コストな弛度調整金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の弛度調整金具は、送電線を把持する圧縮クランプと鉄塔に支持された碍子連との間で、該送電線の弛度を調整する弛度調整金具において、
前記圧縮クランプ側および前記碍子連側のうちのいずれか一方の側に接続され該一方に対する他方に向かって延在した一対の外板と、
前記一方の側が前記一対の外板の間で該外板の延在方向に進退可能に配置された中板と、
前記他方の側に接続され前記中板の該他方の側を挟み込んだ一対の取付板とを備え、
前記中板が、前記他方の側の先端面に凹みを有するものであることを特徴とする。
【0008】
本発明の弛度調整金具では、上記一対の外板、上記中板、および上記一対の取付板は、曲げ加工を必要としないストレートタイプのものであってもよく、さらに、必要な箇所に孔開け加工を施すだけで済む場合もある。このため、低コストな弛度調整金具を提供することができる。また、上記凹みを利用して、高付加価値を与えることができる。
【0009】
また、本発明の弛度調整金具において、この弛度調整金具は、前記中板を相対的に前記一方の側に向けて進出させる動力を発生する調整工具が前記一対の外板と前記一対の取付板それぞれに、垂直方向に延在した取付金具を介して取り付けられるものであり、
前記一対の外板が、前記取付金具を取り付ける、板厚方向に貫通した取付孔を有するものであり、
前記一対の取付板が、前記取付金具を取り付ける、板厚方向に貫通した取付孔を有するものであってもよい。
【0010】
この態様では、上記一対の外板と上記一対の取付板との2箇所で取付孔を用いてボルト締めすれば、上記調整工具が取り付けられ、それら2箇所でボルト締めしたボルトを緩めれば、上記調整工具を取り外すことができ、作業性が良好である。
【0011】
さらに、本発明の弛度調整金具において、この弛度調整金具は、前記中板を相対的に前記一方の側に向けて進出させる動力を発生する調整工具が前記一対の外板と前記一対の取付板それぞれに、水平方向に延在した取付金具を介して取り付けられるものであり、
前記一対の外板が、水平方向に延在した前記取付金具を取り付ける際に、この一対の外板の間に垂直方向にボルトが挿入され、該一対の外板の間に、前記他方側から該ボルトに接する接触部材を有するものであり、
前記一対の取付板が、水平方向に延在した前記取付金具を取り付ける際に、この一対の取付板の間に垂直方向にボルトが挿入されるものであり、
前記中板の凹みが、前記一対の取付板の間に垂直方向に挿入されたボルトに前記一方側から接するものであることが好ましい。
【0012】
こうすることで、上記調整工具を水平面に沿って取り付けることができる。しかも、上記調整工具を水平面に沿って取り付けることに対応させる場合であっても、上記一対の外板、上記中板、および上記一対の取付板には、コストが大きくかかる加工を施す必要がなく、孔開け加工等によって対応させることができる。また、上記中板の凹みが、上記調整工具で発生した動力を余すことなく送電線に伝えることに貢献する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高付加価値を持ちながら低コストな弛度調整金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の弛度調整金具を示す図である。
【図2】図1に示す弛度調整金具に、垂直方向に延在した取付アームを介して調整工具を取り付けた様子を示す正面図である。
【図3】図1に示す弛度調整金具に、水平方向に延在した取付アームを介して調整工具である油圧シリンダを取り付けた様子を示す上面図である。
【図4】接触ピンにアダプタを設けた例を示す図である。
【図5】取付アームの形状を変更した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の弛度調整金具の一実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の弛度調整金具を示す図である。この図1では、図の右側が鉄塔側(碍子連側)になる。同図(a)は、弛度調整金具の正面図であり、図の左右方向が延線方向であり、この同図(a)には、その延線方向に対して側方から弛度調整金具を見たときの様子が示されている。一方、同図(b)は弛度調整金具の上面図であり、この同図(b)には、上方から弛度調整金具を見たときの様子が示されている。
【0017】
本実施形態の弛度調整金具100は、一対の外板110と、一対の取付板120と、1枚の中板130を有する。これらの構成部材110〜130は、曲げ加工を施していないストレートタイプの板材であり、本実施形態の弛度調整金具100は、低コストな弛度調整金具である。この弛度調整金具100は、延線方向に延在したものであり、両端それぞれには、直角クレビスリンク金具101,102が設けられている。この弛度調整金具100の一端は、碍子連側の水平2連ヨーク200に直角クレビスリンク金具101によって連結され、他端は、送電線を把持した不図示の圧縮スリーブの先端に設けられたカマレス金具300に直角クレビスリンク金具102によって連結されている。
【0018】
図1(b)に示すように、水平2連ヨーク200に取り付けられた直角クレビスリンク金具101のアイ部(リンク部)1010は、不図示の圧縮クランプ側(カマレス金具300側)に向かって延在した一対の外板110によって挟み込まれており、直角クレビスリンク金具101と一対の外板110は、水平方向に挿通したボルト111によって連結されている。
【0019】
一対の外板110それぞれには、直角クレビスリンク金具101を連結する連結用ボルト孔1101の他、図1(a)に示すように、カマレス金具300側に、所定ピッチで複数の調整ボルト孔1102が設けられている。また、連結用ボルト孔1101の、カマレス金具300側近傍には、兼用ボルト孔1103が設けられている。これらのボルト孔1101〜1103はいずれも、外板110を板厚方向に貫通した孔である。図1に示す兼用ボルト孔1103には、接触ピン112が挿入されている。この接触ピン112については、詳しくは後述する。
【0020】
また、図1(b)に示すように、カマレス金具300に取り付けられた直角クレビスリンク金具102のアイ部(リンク部)1020は、水平2連ヨーク200側に向かって延在した一対の取付板120によって挟み込まれており、この直角クレビスリンク金具102と一対の取付板120も、水平方向に挿通したボルト121によって連結されている。一対の取付板120それぞれには、この直角クレビスリンク金具102を連結する連結用ボルト孔1201の他、碍子連側(水平2連ヨーク200側)にも、取付板120を板厚方向に貫通した連結用ボルト孔1202が設けられている。また、両端の連結用ボルト孔1201,1202の間にも、取付板120を板厚方向に貫通した取付用ボルト孔1203が設けられている。
【0021】
一対の外板110の間と一対の取付板120の間には、1枚の中板130が設けられている。この中板130の不図示の圧縮クランプ側1には、溝1301が設けられている。また、溝1301の、碍子連側の近傍には、中板130を板厚方向に貫通した連結用ボルト孔1302が設けられている。図1では、一対の取付板120に設けられた連結用ボルト孔1202と、この中板130に設けられた連結用ボルト孔1302とを一致させた状態で、両ボルト孔1202,1302に水平方向に挿入されたボルト122によって、中板130が、一対の取付板120に連結されている。こうして中板130が一対の取付板120に連結された状態では、図1(b)に示すように、一対の取付板120に設けられた取付用ボルト孔1203に、中板130に設けられた溝1301が対応している。。また、中板130の、碍子連側の部分は、一対の外板110の間の調整空間Sで外板110の延在方向に進退可能(図1(b)に示した矢印参照)に配置されている。中板130の、碍子連側の部分にも、外板110に複数設けられた隣り合う調整ボルト孔1102のピッチとは異なるピッチで複数の調整ボルト孔1303が設けられている。中板130に複数設けられた調整ボルト孔1303も、中板130の板厚方向に貫通した孔である。さらに、中板130の、圧縮クランプ側の先端面には、凹み131が設けられている。この凹み131については後述する。
【0022】
送電線が緊線された状態では、弛度調整金具100の中板130は、常に圧縮クランプ側に引っ張られており、弛度調整金具100の中板130に複数設けられた調整ボルト孔1303のうちのいずれか一つの調整ボルト孔1303に一致した、外板110に設けられた調整ボルト孔1102に、不図示のボルトを差し込み、中板130が圧縮クランプ側に後退することを規制しておく。この状態で、緊線された送電線の弛度を測定し、弛度調整が必要な場合には、図1に示す弛度調整金具100に調整工具を取り付けて弛度調整作業を行う。
【0023】
調整工具は、図1に示す中板130を相対的に碍子連側に向けて進出させる動力を発生する油圧シリンダであるが、これに限られるものではない。この調整工具は、一対の外板110と一対の取付板120それぞれに取付アームを介して取り付けられる。取付アームは、一対の外板110や一対の取付板120を水平方向に挟み込むものである。
【0024】
図2は、図1に示す弛度調整金具に、垂直方向に延在した取付アームを介して調整工具を取り付けた様子を示す正面図であり、図1(a)と同じく、延線方向に対して側方から見たときの様子が示されている。この図2でも、図の右側が碍子連側になり、左側が圧縮クランプ側になる。
【0025】
図2に示すように、碍子連側に設けられた取付アーム510と、圧縮クランプ側に設けられた取付アーム510は、それぞれの取付アーム510の延在方向中央部分で、支持ロッド530によって結ばれている。取付アーム510は、支持ロッド530に接続する箇所521を中心にその支持ロッド530に対して回動自在である。また、垂直方向(図2の上下方向)に延在した取付アーム510の上部には、アーム金具501を介して調整工具である油圧シリンダ500が取り付けられている。さらに、取付アーム510の下部には取付孔511が設けられている。碍子連側に設けられた取付アーム510の取付孔511と外板110に設けられた兼用ボルト孔1103(図1参照)とを一致させた状態で、両孔511,1103にボルト520を水平方向(図2の紙面に対して垂直な方向)に挿入し、碍子連側に設けられた取付アーム510は弛度調整金具100に固定される。一方、圧縮クランプ側に設けられた取付アーム510の取付孔511と、図1(b)を用いて説明した、一直線状につながった一対の取付板120に設けられた取付用ボルト孔1203(図1参照)および中板130に設けられた溝1301(図1参照)とを対応させた状態で、これらの孔511,1203,溝1301に同じくボルト520を水平方向に挿入し、圧縮クランプ側に設けられた取付アーム510も弛度調整金具100に固定される。取付アーム510は、本発明にいう取付金具の一例に相当する。
【0026】
こうして、取付アーム510が弛度調整金具100に固定されると、油圧シリンダ500が弛度調整金具100に取り付けられたことになる。図2に示す油圧シリンダ500は、弛度調整金具100の真上に取り付けられている。本実施形態の弛度調整金具100では、一対の外板110と一対の取付板120との2箇所でボルト締めすれば、油圧シリンダ500が取り付けられ、それら2箇所でボルト締めしたボルトを緩めれば、油圧シリンダ500を取り外すことができ、作業性が良好である。
【0027】
弛度調整金具100に油圧シリンダ500が取り付けられると、中板130の後退を規制していたボルトを抜き、油圧シリンダ500のピストンロッドを伸ばす。こうすることで、取付アーム510が回動し、碍子連側に設けられた取付アーム510は、一対の外板110に直接ボルト締めされており、圧縮クランプ側に設けられた取付アーム510は、中板130に直接連結しているため、油圧シリンダ500で発生した動力を余すことなく利用することができ、弛度調整金具100の中板130が相対的に碍子連側に向けて進出する。
【0028】
送電線の弛度が所望の弛度に調整されると、中板130の調整ボルト孔1303に一致した、外板110の調整ボルト孔1102に、不図示のボルトを差し込み、ボルト締めを行ってから、油圧シリンダ500のピストンロッドを元に戻す。その後、弛度調整金具100から油圧シリンダ500を取り外し、弛度調整作業が終了する。
【0029】
ところで、4導体の場合には、2導体ずつ上線と下線に分けて送電線を張架する。6導体の場合には、2導体ずつ上線と中線と下線に分けて送電線を張架する。4導体では、下線の送電線の弛度調整作業を行おうとすると、上線の送電線が邪魔をして、油圧シリンダ500を弛度調整金具100の真上に取り付けることが困難な場合がある。また、6導体では、下線の送電線の弛度調整作業を行おうとすると中線の送電線が邪魔をして、油圧シリンダ500を弛度調整金具100の真上に取り付けることが困難な場合がある。これらの場合には、弛度調整金具100の真下に油圧シリンダ500を取り付ければよい。弛度調整金具100の真下に油圧シリンダ500を取り付ける場合にも、垂直方向に延在した取付アーム510を介して油圧シリンダ500を取り付ければよく、真上に油圧シリンダ500を取り付ける場合と同じようにして、油圧シリンダ500を真下に取り付けることができる。
【0030】
しかしながら、6導体では、中線の送電線の弛度調整作業を行おうとすると、上線や下線の送電線が邪魔をして、油圧シリンダ500を弛度調整金具100の真上にも真下にも取り付けることが困難な場合がある。また、重量のある油圧シリンダ500を真下から取り付けることは、作業者にとって負担が大きい。
【0031】
本実施形態の弛度調整金具100には、水平方向に延在した取付アーム510を介して油圧シリンダ500を取り付けることができる。
【0032】
図3は、図1に示す弛度調整金具に、水平方向に延在した取付アームを介して調整工具である油圧シリンダを取り付けた様子を示す上面図であり、図1(b)と同じく、上方から見たときの様子が示されている。この図3でも、図の右側が碍子連側になり、左側が圧縮クランプ側になる。また、ここでの取付アーム510は、一対の外板110や一対の取付板120を垂直方向に挟み込むものである。
【0033】
碍子連側に設けられた取付アーム510の取付孔511から垂直方向に挿入したボルト520を、水平2連ヨーク200への連結に用いたボルト111と、接触ピン112との間の空間を貫通させて、碍子連側に設けられた取付アーム510は弛度調整金具100に固定される。この空間は一対の外板110の間の空間の一部である。接触ピン112は、円柱状のピンであり、こうして挿入されたボルト520に圧縮クランプ側から接するものであり、本発明にいう接触部材の一例に相当する。
【0034】
また、水平方向に延在した取付アーム510を介して油圧シリンダ500を取り付けることができる。
【0035】
圧縮クランプ側に設けられた取付アーム510の取付孔511から垂直方向に挿入したボルト520を、一対の取付板120間に挿入させて、圧縮クランプ側に設けられた取付アーム510は弛度調整金具100に固定される。
【0036】
中板130の、圧縮クランプ側の先端面に設けられた凹部131は、平坦な垂直面を蒲鉾状に窪ませたもの、言い換えれば、垂直方向に延びる半円状の溝であり、凹部131の形状は、取付用ボルト孔1203を通るボルト520の周面に沿った形状である。すなわち、中板130の凹部131は、一対の取付板120の間に垂直方向に挿入されたボルト520に碍子連側から面接触するものである。
【0037】
こうして、水平方向に延在した取付アーム510が弛度調整金具100に固定されると、油圧シリンダ500が弛度調整金具100の真横に取り付けることができる。図2に示す油圧シリンダ500は、弛度調整金具100の真上に取り付けられている。油圧シリンダ500を真横に取り付けるにあたっても、本実施形態の弛度調整金具100では、一対の外板110と一対の取付板120との2箇所でボルト締めすれば、油圧シリンダ500が取り付けられ、それら2箇所でボルト締めしたボルトを緩めれば、油圧シリンダ500を取り外すことができ、作業性が良好である。しかも、油圧シリンダ500を弛度調整金具100の真横に取り付けることができるため、足場の不安定な送電線の上で、重量のある油圧シリンダ500を下から引き上げる作業が省け、作業性が向上しかつ安全に作業を行うことができる。
【0038】
弛度調整作業において、油圧シリンダ500のピストンロッドを伸ばすと、碍子連側に設けられた取付アーム510はボルト520を介して接触ピン112を押し、圧縮クランプ側に設けられた取付アーム510はボルト520を介して中板130の、圧縮クランプ側の先端面を押す。ここで、ボルト520と接触ピン112は線接触しており、ボルト520とその先端面に設けられた凹部131は面接触していることから、油圧シリンダ500で発生した動力を余すことなく利用することができ、弛度調整金具100の中板130が相対的に碍子連側に向けて進出する。
【0039】
ここで、碍子連側の取付アーム510のボルト520と接触ピン112の接触は、点接触よりも有効な線接触であるが、圧縮クランプ側の取付アーム510のボルト520のように面接触となる態様を採用することもできる。
【0040】
図4は、接触ピンにアダプタを設けた例を示す図である。
【0041】
一対の外板110の間の、兼用ボルト孔1103をつなぐ部分に、兼用ボルト孔1103に1直線でつながる貫通孔1150を設けたアダプタ115を配置する。兼用ボルト孔1103に挿入された接触ピン112はアダプタ115の貫通孔1150を通過し、アダプタ115は接触ピン112によって保持される。このアダプタ115は、碍子連側の取付アームのボルト520に圧縮クランプ側から接するものであり、アダプタ115の、そのボルト520に接する面には、垂直方向に延びる半円状の溝1151が形成されている。この溝1151の形状は、ボルト520の周面に沿った形状である。したがって、このアダプタ115が、一対の外板110の間に垂直方向に挿入されたボルト520に圧縮クランプ側から面接触する。
【0042】
また、取付アーム510を、中板130の垂直方向の回動をより効果的に防止する形状に改良することもできる。
【0043】
図5は、取付アームの形状を変更した例を示す図である。
【0044】
図5に示す取付アーム550は、一対の取付板120を垂直方向に挟み込むものである。この取付アーム550には、取付孔551よりも碍子連側に、中板130の圧縮クランプ側の端部137を押さえる押さえ部5501が設けられている。中板130が垂直方向に回動しようとすると、中板130の圧縮クランプ側の端部137が一対の取付板120から突出しようとするが、この押さえ部5501があることにより、中板130の端部137は突出することができず、中板130の垂直方向の回動がより効果的に防止される。
【0045】
なお、中板130の、圧縮クランプ側の先端面に設けられた凹部131は、垂直方向に延びる半円状の溝であったが、水平方向に延びる溝や、中板130の、圧縮クランプ側の先端部分の上3/4を切欠いた窪み(側面から見るとL字状)であってもよい。すなわち、中板130が、圧縮クランプ側(本発明にいう他方の側)の先端面に、この中板130を相対的に碍子連側(本発明にいう一方の側)に向けて進出させる動力を伝える、一対の取付板120の間に挿入された伝達部材(例えば、圧縮クランプ側の取付アーム510のボルト520)に係合する係合部を有する態様であってもよい。こうすることで、弛度調整金具100の真上に油圧シリンダ500を取り付ける場合であっても、水平方向に延びる溝や上半分を切欠いた窪みに、圧縮クランプ側の取付アーム510のボルト520が係合し、中板130の碍子連側の端部が下方に著しく垂れ下がることを防止することができ、作業者が手作業で中板130を引き上げる必要がなくなり、中板130を軽く支える程度で済み、作業性が向上しかつ安全に作業を行うことができる。
【0046】
以下、これまで説明したことも含めて付記する。
【0047】
(付記1)
送電線を把持する圧縮クランプと鉄塔に支持された碍子連との間で、該送電線の弛度を調整する弛度調整金具において、
前記圧縮クランプ側および前記碍子連側のうちのいずれか一方の側に接続され該一方に対する他方に向かって延在した一対の外板と、
前記一方の側が前記一対の外板の間で該外板の延在方向に進退可能に配置された中板と、
前記他方の側に接続され前記中板の該他方の側を挟み込んだ一対の取付板とを備え、
前記中板における、前記他方の側の先端面が、この中板を相対的に前記一方の側に向けて進出させる動力を伝える、前記一対の取付板の間に挿入された伝達部材(例えば、圧縮クランプ側の取付アーム510のボルト520)に前記一方の側から線接触あるいは面接触するものであることを特徴とする弛度調整金具。
【0048】
付記1記載の弛度調整金具によれば、上記中板における、上記他方の側の先端面には、凹部を必ずしも設ける必要はなく、線接触あるいは面接触することで、調整工具(例えば油圧シリンダ500)で発生した動力を余すことなく利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
100 弛度調整金具
110 外板
1103 兼用ボルト孔
112 接続ピン
120 取付板
1201,1202 連結用ボルト孔
1203 取付用ボルト孔
130 中板
131 凹み
1301 溝
1302 連結用ボルト孔
200 水平2連ヨーク
300 カマレス金具
500 油圧シリンダ
510 取付アーム
511 取付孔
520 ボルト
530 支持ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線を把持する圧縮クランプと鉄塔に支持された碍子連との間で、該送電線の弛度を調整する弛度調整金具において、
前記圧縮クランプ側および前記碍子連側のうちのいずれか一方の側に接続され該一方に対する他方に向かって延在した一対の外板と、
前記一方の側が前記一対の外板の間で該外板の延在方向に進退可能に配置された中板と、
前記他方の側に接続され前記中板の該他方の側を挟み込んだ一対の取付板とを備え、
前記中板が、前記他方の側の先端面に凹みを有するものであることを特徴とする弛度調整金具。
【請求項2】
この弛度調整金具は、前記中板を相対的に前記一方の側に向けて進出させる動力を発生する調整工具が前記一対の外板と前記一対の取付板それぞれに、垂直方向に延在した取付金具を介して取り付けられるものであり、
前記一対の外板が、前記取付金具を取り付ける、板厚方向に貫通した取付孔を有するものであり、
前記一対の取付板が、前記取付金具を取り付ける、板厚方向に貫通した取付孔を有するものであることを特徴とする請求項1記載の弛度調整金具。
【請求項3】
この弛度調整金具は、前記中板を相対的に前記一方の側に向けて進出させる動力を発生する調整工具が前記一対の外板と前記一対の取付板それぞれに、水平方向に延在した取付金具を介して取り付けられるものであり、
前記一対の外板が、水平方向に延在した前記取付金具を取り付ける際に、この一対の外板の間に垂直方向にボルトが挿入され、該一対の外板の間に、前記他方側から該ボルトに接する接触部材を有するものであり、
前記一対の取付板が、水平方向に延在した前記取付金具を取り付ける際に、この一対の取付板の間に垂直方向にボルトが挿入されるものであり、
前記中板の凹みが、前記一対の取付板の間に垂直方向に挿入されたボルトに前記一方側から接するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の弛度調整工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−125094(P2012−125094A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275612(P2010−275612)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000116873)旭テック株式会社 (144)
【Fターム(参考)】