説明

弦楽器

【課題】 テーパーあり溝を利用する、弦楽器の棹と胴の接合構造において、より高い剛性を実現する。
【解決手段】 テーパーあり溝の軸線を木目と略平行とすることにより、木目が長手方向に通るので、形状設計時に期待される剛性を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弦楽器の棹と胴を接合する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
弦楽器の棹と胴を接合する構造において、テーパーあり溝の嵌め合いを利用するものは、最も強度・剛性の面で有利とされている。
従来、当該テーパーあり溝の軸線が、当該棹の長手方向と略直角となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術によれば、この場合、弦楽器の棹の多くは木製であり、木目は当該棹の長手方向と略平行となるので、テーパーあり溝の軸線は木目と略直角となるため、製造された棹の接合部分は木目が短く分断されるため、形状設計時に期待されるより剛性が低く、ここに改善の余地がある。
さらにまた、この構造による棹は長手方向と略直角な突起部があるため、稠密な木取りができない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するため、本発明では当該テーパーあり溝の軸線を、当該棹の長手方向と略平行とする構造を採用する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の構造によれば、テーパーあり溝の軸線は木目と略平行となるため、製造された棹の接合部分は、木目が長手方向に通るので、形状設計時に期待される剛性を実現できるため、演奏時の優秀な発音特性および調弦の安定性が期待できる。
また、この構造による棹は長手方向と略直角な突起部がないため、稠密な木取りが可能となるため、良質木材の有効利用を通し、経済性および環境保護上の効果が期待できる。
さらにまた、この構造による弦楽器は、従来構造による場合に棹の根元に具備されていた長手方向と略直角の突起部がないため、当該突起部付近に手を添える際の余裕が増し、演奏技巧の行使が容易となることが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本発明の実施のさまを、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】は、本発明の構造による弦楽器の、当該接合部分の長手方向断面図である。
【図2】は、図1部分の幅方向断面図(断面B−B)である。
【図3】は、図1部分の横方向断面図(断面C−C)である。
【符号の説明】
【0008】
(1)棹
(2)胴
(3)テーパーあり溝接合面
(4)棹の木目方向
(5)従来方法による場合の突起部形状
【実施例】
【0009】
(1)棹は、(2)胴と(3)テーパーあり溝接合面上の接着によって固定されている。図に明らかなように、(1)棹は(4)棹の木目方向に準じた形状をなしており、(5)従来方法による場合の突起部形状をもたない。
また、(3)テーパーあり溝接合面が(1)棹の延長部分の一部となっていることで、(1)棹の木目は、ほぼ全長にわたって切断されることなく連続し、強度・剛性部材として、極めて効率的に利用されることが、容易に類推できる。
同時に、(5)従来方法による場合の突起部形状のある場合と比較すると、図面上下方向の寸法が大幅に減少し、稠密な木取りが可能となることが容易に類推される。
(3)テーパーあり溝接合面近傍においては、(1)棹の側はホゾ、(2)胴の側はミゾとなり、双方を同一の回転刃物で成形することにより、現在の木工技術によれば極めて高い接触率を得る継ぎ手を形成できる。
また、当該接合構造が(1)棹の延長部分の一部として(2)胴の内部に位置することにより、破線で示した(5)従来方法による場合の突起部形状がなくなり、当該突起部付近に手を添える際の空間的余裕が増し、演奏技巧の行使が容易となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦楽器の棹と胴を接合する構造のうち、テーパーあり溝の嵌め合いを利用するものにおいて、当該テーパーあり溝の軸線を、当該棹の長手方向と略平行とする構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−271677(P2010−271677A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140570(P2009−140570)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(596012087)
【Fターム(参考)】