説明

弱分配クロマトグラフィー方法

本発明は、1つ以上の不純物を含むロード流体からの産物の精製のための、弱分配クロマトグラフィーを使用する方法に関する。さらに本発明は、媒体1mLあたり少なくとも1mgの産物を媒体に結合させる作動条件によって規定されるか、あるいは少なくとも部分係数0.1によって規定される、弱分配クロマトグラフィー方法に関する。他の実施形態において、作動条件は、媒体1mLあたり少なくとも5mgの産物を媒体に結合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、1つ以上の不純物を含むロード流体から精製産物を回収する方法に関する。本発明の特定の実施形態において、本方法は、媒体1mLあたり少なくとも1mgの産物を媒体に結合させる作動条件において、ロード流体を媒体に通過させる工程、ならびにロードサイクルおよび本質的に無勾配(isocratic)の任意の洗浄の間のカラム溶出物中の精製産物を回収する工程、を包含する。本発明の他の実施形態において、本方法は、少なくとも0.1の分配係数により規定される作動条件において、ロードを媒体に通過させる工程を包含する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
バイオテクノロジー産業において、商用規模でのタンパク質の精製は、治療目的および診断目的の組換えタンパク質の開発に向けた重要な課題である。問題は、収率、純度、および製造部門の処理能力の災害に関する。組換えタンパク質技術の出現に伴い、目的のタンパク質が、そのタンパク質をコードする遺伝子を発現するように操作された、培養した真核細胞または原核細胞の宿主細胞株を使用して生産され得る。しかしながら、宿主細胞の培養プロセスより生じるものは、所望のタンパク質と、そのタンパク質自体に由来する不純物(例えば、タンパク質変異体)または宿主細胞に由来する不純物(例えば、宿主細胞のタンパク質)のいずれかと一緒になった混合物である。薬学的利用のための所望の組換えタンパク質の使用は、これらの不純物から適切なレベルでそのタンパク質を確実に回収できることにかかっている。
【0003】
従来のタンパク質精製方法は、サイズ、電荷、溶解度および疎水性の程度における差異に基づき、不純物から目的のタンパク質を分離するように設計される。このような方法としては、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー、およびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーが挙げられる。これらの方法はしばしば、目的のタンパク質または不純物のいずれかを選択的に接着するように設計され得る分離媒体を使用する。結合−溶出様式において、所望のタンパク質は選択的に分離媒体に結合し、そして異なる溶媒によってその媒体から示差的に溶出される。フロースルー様式において、不純物は分離媒体に特異的に結合し、一方、目的のタンパク質は結合せず、これによって「フロースルー」中での所望のタンパク質の回収を可能にする。
【0004】
タンパク質(例えば、抗体)の精製のための現在の方法としては、2つ以上のクロマトグラフィー工程が挙げられる。例えば、タンパク質精製プロトコルにおける第一工程は、しばしば、目的のタンパク質と固定化された捕捉試薬との間の特異的相互作用を利用する、アフィニティークロマトグラフィー工程を含む。プロテインA吸着体はFc領域を含むタンパク質(例えば、抗体)のアフィニティー捕捉に特に有用である。しかしながら、タンパク質精製のためにプロテインAクロマトグラフィーを使用することの欠点としては、プロテインA捕捉因子の漏れが挙げられ、溶出されるタンパク質産物の混入を導く。さらに、アフィニティー捕捉は、目的のタンパク質からタンパク質変異体(例えばタンパク質の凝集形態)を分離しない。
【0005】
研究者は、培養プロセスから生じる不純物および精製プロセス自体の可能性ある前工程から生じる不純物を両方とも含まないタンパク質を回収するために苦心して、結合−溶出方法、フロースルー方法および置換方法を使用してきた。アフィニティー捕捉工程の後にタンパク質を精製することに関する代表的な第二工程として結合−溶出工程を使用する群の例としては、以下が挙げられる:特許文献1(混合物からプロテインAを低減させる結合−溶出イオン交換方法を記載する);特許文献2(プロテインA不純物を含む混合物からIgG抗体を精製するための結合−溶出疎水性相互作用クロマトグラフィー方法を記載する);および特許文献3(精製IgG抗体調製物を得るための3工程プロセス(プロテインA工程、結合−溶出イオン交換工程、およびサイズ排除工程を包含する)を記載する)。他の群は、アフィニティークロマトグラフィー工程の後にフロースルー工程を使用している。例えば、特許文献4は、プロテインA工程クロマトグラフィー工程、その後のフロースルーイオン交換工程によって精製された抗体から、漏れたプロテインAを除去するための方法を記載する。特許文献5は、アフィニティークロマトグラフィーの後、フロースルーヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー工程にサンプルを供する工程を含む、サンプル中のタンパク質を精製するための方法を記載する。
【0006】
他の群は、精製工程前に関係する問題を避けるため、単回の仕上げ工程の精製スキームを使用している。例えば、特許文献6は、生物学的サンプルから凝集物を除去するため、単回工程のフロースルーイオン交換方法を記載し、ここで、サンプルのpHがその生物学的サンプルの等電点より低い0.2 logに調整される。特許文献7は、単回工程の結合−溶出イオン交換方法を記載し、ここで、タンパク質粗混合物のpHが分離されるべきタンパク質画分の等電点の範囲の間の1点に調整される。特許文献8は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを使用する、抗体調製物からの高分子量凝集物の除去のための、単回の置換方法を記載する。
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,983,722号明細書
【特許文献2】米国特許第5,429,746号明細書
【特許文献3】米国特許第5,644,036号明細書
【特許文献4】国際公開第04/076485号明細書
【特許文献5】国際公開第03/059935号明細書
【特許文献6】米国特許第6,177,548号明細書
【特許文献7】米国特許第5,451,662号明細書
【特許文献8】国際公開第05/044856号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術における既往の結合−溶出用法またはフロースルー方法は、いずれも、スループット、収率および生成物の純度の全ての要望の点で、バイオテクノロジー産業の要求に合致し得ない。結合−溶出方法および置換方法は、とりわけ、所望のタンパク質に対する分離媒体の吸収力限界によって制限される。一方、フロースルー方法は、結合−溶出方法よりも高いロードチャレンジを実際に可能にするが、不純物に対する媒体の分離能力により制限される。フロースルー方法に関して、カラムに対するタンパク質の結合は実質的に発生しない;産物の実質的な結合はいずれも産物の回収に負に影響するとみなされる。治療利用および診断利用に必要な純度および収率に対する必要性に合致する、ハイスループットで精製タンパク質を回収する方法の必要性が依然として存在する。さらに、商用の製造プロセスは、安定性、大規模かつコストに効果的な精製スキームに対する必要性を加える。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、媒体1mLあたり少なくとも1mgの産物を媒体に結合させる作動条件において、ロード流体を媒体に通過させる工程、ならびにロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の精製産物を回収する工程によって、1つ以上の不純物を含むロード流体から精製産物を回収する方法に関する。他の実施形態において、作動条件は、媒体1mLあたり少なくとも5mgの産物を媒体に結合させる。別の実施形態において、作動条件は、媒体1mLあたり少なくとも10mgの産物を媒体に結合させる。他の実施形態において、作動条件は、媒体1mLあたり少なくとも20mg、30mg、40mg、50mgまたは60mgの産物を媒体に結合させる。
【0010】
本発明はまた、少なくとも0.1の分配係数により規定される作動条件においてロード流体を媒体に通過させる工程、ならびにロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の精製産物を回収する工程によって、1つ以上の不純物を含むロード流体から精製産物を回収する方法に関する。1実施形態において、分配係数は約0.2〜約20.0の範囲である。別の実施形態において、分配係数は約0.2〜約10.0の範囲である。別の実施形態において、分配係数は約1.0〜約5.0の範囲である。別の実施形態において、分配係数は約0.5〜約5.0の範囲である。さらなる実施形態において、分配係数は約0.5〜約1.5の範囲である。
【0011】
本発明はまた、媒体1mLあたり少なくとも1mg〜約70mgの産物を媒体に結合させる作動条件、および0.3〜20の分配係数によって規定される作動条件において、ロード流体を媒体に通過させる工程、ならびにロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の精製産物を回収する工程によって、1つ以上の不純物を含むロード流体から精製産物を回収する方法に関する。
【0012】
本発明はまた、スクリーニング工程において、媒体1mLあたり少なくとも1mgの産物を媒体に結合させる作動条件、あるいは少なくとも分配係数0.1によって規定される作動条件を識別することをもたらす。スクリーニング工程は、バッチの結合調査(batch binding studies)またはカラム結合調査(column binding studies)(例えば、勾配溶出調査または無勾配溶出調査)を使用し得る。
【0013】
作動条件としては、媒体の選択に依存して、pHレベル、イオン強度、塩濃度、添加物(excipient)濃度(例えば、リン酸濃度、カルシウム濃度、アルギニン濃度、グリシン濃度、およびHEPES濃度)、およびカウンターリガンド濃度(例えば、イミダゾール濃度)が挙げられる。
媒体は、任意の型のクロマトグラフィー樹脂または分離媒体であり得、荷電したイオン交換媒体、(例えば、陰イオン交換媒体または陽イオン交換媒体)、疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂、ヒドロキシアパタイト樹脂、または固定化金属アフィニティークロマトグラフィー樹脂が挙げられる。
本発明を使用して回収され得る精製産物としては、融合タンパク質、Fc含有タンパク質、免疫結合体、サイトカイン、インターロイキン、ホルモンおよび治療酵素が挙げられる。
本発明を使用して除去され得る不純物としては、宿主細胞タンパク質、核酸、産物変異体、内毒素、プロテインA、およびウイルスが挙げられる。
【0014】
1実施形態において、媒体は、宿主細胞タンパク質、核酸、産物変異体、内毒素、およびプロテインAを含むロード流体中の不純物のうち少なくとも99.9%を除去する。
別の実施形態において、精製産物中の産物変異体の濃度は約2%以下である。
さらなる実施形態において、媒体上へのロードは、媒体1mLあたり少なくとも500mgまたは少なくとも1000mgの産物のロードチャレンジであり得る。
本発明の1局面において、精製産物は、荷電したイオン交換媒体に媒体1mLあたり少なくとも1mgを結合させるpHレベルおよびイオン強度を含む作動条件、あるいは少なくとも0.1の分配係数により規定される作動条件において、その媒体にロードを通過させることによって、1つ以上の不純物を含むロード流体から回収される。
【0015】
本発明の別の局面において、精製産物は、疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂に媒体1mLあたり少なくとも1mgの産物を結合させるpHレベル、イオン強度および塩濃度を含む作動条件、あるいは少なくとも0.1の分配係数によって規定される作動条件において、ロード流体をその媒体に通過させることによって、1つ以上の不純物を含むロード流体から回収される。
本発明の別の局面において、精製産物は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー樹脂に媒体1mLあたり少なくとも1mgの産物を結合させるpHレベル、イオン強度、リン酸濃度、カルシウム濃度、アルギニン濃度、グリシン濃度、HEPES濃度およびイミダゾール濃度を含む作動条件、あるいは少なくとも0.1の分配係数によって規定される作動条件において、ロード流体をその媒体に通過させることによって、1つ以上の不純物を含むロード流体から回収される。
【0016】
本発明のなお別の局面において、精製産物は、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー樹脂に媒体1mLあたり少なくとも1mgの産物を結合させるカウンターリガンドレベルおよびpHレベルを含む作動条件、あるいは少なくとも0.1の分配係数によって規定される作動条件において、ロード流体をその媒体に通過させることによって、1つ以上の不純物を含むロード流体から回収される。
本発明の方法は、必要に応じて、1つ以上の精製工程と組み合わされ得る。任意の工程が、本発明の方法の実施の前または後のいずれかに実施され得る。例えば、本発明の方法は、必要に応じて、初期工程としてプロテインAクロマトグラフィー工程と組み合わされ得る。
【0017】
本発明の1実施形態において、産物含有流体は、低イオン強度の溶出緩衝液を使用して、プロテインAカラムから溶出され;産物含有流体のpHおよび電導度は、中和緩衝液を使用して調整されてその産物含有流体のイオン強度20mM以下を生じてロード流体を生じ;そしてロード流体は、本発明の作動条件下で陰イオン交換媒体に通される。
いくつかの実施形態において、溶出緩衝液は、pKa6.5〜10を有する荷電した陽イオン基を有する分子を含む。他の実施形態において、溶出緩衝液はさらに、pKa2〜5を有する荷電した陰イオン基を有する分子を含む。特定の実施形態において、溶出緩衝液は、pH7〜9の間の双生イオンである分子を含む。
本発明はまた、本発明の方法によって調製される精製産物(精製タンパク質、および精製抗体が挙げられる)をもたらす。
【0018】
本発明のさらなる目的および利点は、以下の説明に部分的に記されておりこの記載から部分的に明らかであるか、または本発明の実施によって学ばれ得る。本発明の目的および利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘される要素および組み合わせによって、実現され、達成される。
前述の一般的な記載および以下の詳細な記載の両方は、例示であって説明のみのためであり、特許請求される本発明について限定的ではないことが理解されるべきである。
添付の図面は、本明細書に組み込まれかつ本明細書の一部を形成し、そしてその説明と一緒に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
(A.定義)
本発明がより容易に理解され得るように、特定の用語が最初に定義される。さらなる定義は、詳細な説明全体にわたって記載される。
用語「フロースルー様式」とは、産物の調製の分離技術を指し、ここで、調製物中に含まれる少なくとも1つの産物がクロマトグラフィー樹脂または媒体を通って流れることが意図され、一方、少なくとも1つの可能性ある混入物または不純物はそのクロマトグラフィー樹脂または媒体に結合する。一般的に、フロースルー様式に関する産物の分配係数は0.1未満であり、結合する産物濃度は1mg/mL未満である。「フロースルー様式」は、無勾配の作動である。
用語「結合−溶出様式」とは、産物の調製の分離技術を指し、ここで、調製物中に含まれる少なくとも1つの産物がクロマトグラフィー樹脂または媒体に結合する。一般的に、結合−溶出様式に関する産物の分配係数は20より大きく、結合する産物濃度は1〜20mg/mLの間である。この様式で結合する産物は、溶出期間の間に溶出される。
【0020】
用語「弱分配様式」とは、産物の調製の分離技術を指し、ここで、調製物中に含まれる少なくとも1つの産物と、少なくとも1つの混入物または不純物との両方がクロマトグラフィー樹脂または媒体に結合する。弱分配様式での産物の結合は、クロマトグラフィー樹脂または媒体1mLあたり少なくとも1mgの産物である。一般的に、弱分配様式に関する産物分配係数は、少なくとも0.1である。「弱分配様式」は無勾配の作動である。
用語「分配係数(Kp)」とは、pHおよび溶液組成の特定の条件下での、樹脂に吸収される産物の濃度(Q) 対 溶液中の産物の濃度(C)の平衡の割合を指す。分配係数Kpはまた、図1に示されるように産物の吸着等温線に関係する。分配係数Kpは、非常に低い溶液濃度での産物の吸着等温線の傾きに対応する。これは、以下のような最大の吸収力に関する:
【0021】
【数1】

ここで、Qmaxは産物に対する樹脂の最大吸収力であり、kdは「樹脂−産物」相互作用に関する解離定数である。分配係数は、代表的にバッチ結合技術により測定されるが、他の技術(例えば、無勾配クロマトグラフィー)が使用され得る。
【0022】
用語「結合産物」(Q)とは、供給流と平衡である場合に樹脂に結合する産物の量を指す。
用語「抗体」とは、任意の免疫グロブリンまたはそのフラグメントを指し、そして抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを含む。この用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単価(monospecific)抗体、多価(polyspecific)抗体、非特異的抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド抗体、変異導入された抗体、グラフト抗体、およびインビトロで作製された抗体を含むが、これらに限定されない。用語「抗体」はまた抗体フラグメントを含み、例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、dAb、および抗原結合機能を保持する他の抗体フラグメントである。代表的に、このようなフラグメントは抗原結合ドメインを含む。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、抗体はCH2/CH3領域を含むものであり、従ってプロテインAクロマトグラフィーによる精製が可能である。用語「CH2/CH3領域」とは、免疫グロブリン分子のFc領域中のアミノ酸残基を指し、これがプロテインAと相互作用する。いくつかの実施形態において、CH2/CH3領域は、完全なCH2領域の後に完全なCH3領域を含み、そして他の実施形態において、免疫グロブリンのFc領域を含む。CH2/CH領域含有タンパク質の例としては、抗体、免疫接着物(immunoadhesion)およびCH2/CH3領域と融合または結合体化された目的のタンパク質を含む融合タンパク質が挙げられる。
【0024】
用語「ロード」とは、清澄にされた細胞培養物もしくは培養器の馴化培地のいずれかに由来する産物、またはクロマトグラフィー工程より導かれる部分的に精製された中間体を含む、任意のロード材料を指す。用語「ロード流体」とは、本発明の作動条件下で媒体を通過するための、ロード材料を含む液体を指す。
用語「不純物」は、任意の外部分子または障害性(objectionable)分子を指し、精製される目的タンパク質のサンプル中にも存在する、精製される目的タンパク質以外の生物学的高分子(例えば、DNA、RNAまたはタンパク質)が挙げられる。不純物としては、例えば、タンパク質変異体(例えば、凝集タンパク質、高分子量種、低分子量種およびフラグメント、ならびに脱アミド化種);精製されるタンパク質を分泌する宿主細胞由来の他のタンパク質(宿主細胞タンパク質);先の精製工程の間にサンプル中に混入し得る、アフィニティークロマトグラフィーのために使用される吸収物の一部(例えば、プロテインA);内毒素;およびウイルス、が挙げられる。
【0025】
用語「本質的に無勾配の洗浄」とは、組成またはpHに関してロード流体から僅かにのみ変化する溶液を指す。
用語「カラム溶出物」とは、ロードサイクルまたはロードが投入されている期間の間に媒体またはカラムから出る液体を指す。
用語「ロードチャレンジ」とは、クロマトグラフィー工程のロードサイクル中にカラム上にロードされるか、またはバッチ結合において樹脂に適用される産物の総質量を指し、樹脂の単位容量あたりの産物の質量の単位で測定される。
用語「対数除去値(LRV)」とは、精製工程のロード中の不純物の質量 対 産物プール中の不純物の質量の比を、対数(底10)指す。
用語「無勾配クロマトグラフィー」とは、目的の期間の間に強度を変更しない溶媒を用いた、クロマトグラフィーカラムの作動を指す。
【0026】
(B.方法の説明)
本発明は、1つ以上の不純物を含むロード流体から精製産物を回収するための方法を提供する。本方法は、治療目的および診断目的のためのタンパク質の大規模分離への利用を有する。
(1.弱分配様式)
発明者らは、驚くべきことに、従来の結合−溶出様式およびフロースルー様式の間の領域に位置するクロマトグラフィー様式において操作することによって、高度の不純物低減ならびに産物の高いロードチャレンジおよび産物の回収率が得られ得ることを見出した。発明者らは、この中間の産物結合様式を「弱分配様式」と名付けた。
【0027】
弱分配様式において、目的の産物と1つ以上の不純物とを含むロード流体は、クロマトグラフィー媒体を通され、その産物と1つ以上の不純物との両方がその媒体に結合する。しかしながら、不純物はその媒体に産物よりもより強固に結合し、ローディングが続くにつれて、未結合の産物は媒体を通過し、カラム溶出物から回収される。媒体は、必要に応じてその後、無勾配条件下で洗浄され、弱く結合した産物をその媒体からさらに回収し、本質的に無勾配の任意の洗浄物から精製された産物が、ロードサイクルの間のカラム溶出物からの精製産物と共にプールされる。
【0028】
本発明に従って、弱分配様式は、媒体1mLあたり少なくとも1mgの産物を媒体に結合させる作動条件によって定義される。1実施形態において、作動条件は、媒体1mLあたり少なくとも5mgの産物を媒体に結合させる。別の実施形態において、作動条件は、媒体1mLあたり少なくとも10mgの産物を媒体に結合させる。別の実施形態において、作動条件は、媒体1mLあたり少なくとも20mgの産物を媒体に結合させる。
本発明の特定の実施形態において、媒体に結合した産物の総質量は、媒体にロードされた産物の総質量の少なくとも10%である。いくつかの実施形態において、媒体に結合した産物の総質量は、媒体にロードされた産物の総質量の少なくとも20%である。他の実施形態において、媒体に結合した産物の総質量は、媒体にロードされた産物の総質量の少なくとも30%である。
【0029】
本発明に従って、弱分配様式はまた、少なくとも0.1の分配係数によって定義される。いくつかの実施形態において、弱分配様式における作動は、約0.2〜約20.0の範囲の分配係数によって定義される条件下で作動することを含む。特定の実施形態において、弱分配様式における作動は、約0.2〜約10.0の範囲の分配係数によって定義される条件下で作動することを含む。他の実施形態において、弱分配作動における作動は、約1.0〜約5.0の範囲の分配係数によって定義される条件下で作動することを含む。他の実施形態において、弱分配作動における作動は、約0.5〜約5.0の範囲の分配係数によって定義される条件下で作動することを含む。なお他の実施形態において、弱分配作動における作動は、約0.5〜約1.5の範囲の分配係数によって定義される条件下で作動することを含む。
【0030】
本発明の少なくとも1つの実施形態は、媒体1mLあたり少なくとも1mg〜約70mgの産物を媒体に結合させ、そして0.3〜20の分配係数によって定義される、弱分配様式の作動条件を提供する。
図1は、結合−溶出様式、フロースルー様式、および弱分配様式についての産物の吸着等温線を示し、弱分配様式についての産物の結合が、結合−溶出様式およびフロースルー様式と比較して明らかに中間にある。産物の分配係数(Kp)の値は吸着した産物濃度 対 溶液中の産物濃度の比であるので、弱分配様式についてのKpもまた、結合−溶出様式およびフロースルー様式についての値に対して中間にある。
【0031】
図2Aは、結合−溶出についての分配領域、弱分配様式についての分配領域、およびフロースルー様式についての分配領域を、イオン強度の関数として示し、Kimpがフロースルー様式よりも弱分配様式においてより高いことを示す。弱分配様式のよりストリンジェントな結合条件下で、より高い産物の吸収力が達成され得、フロースルー様式よりも高く(不純物はより強固に結合するため)、そして結合−溶出様式よりも高い(産物は不純物と比較して非常に弱く結合し、そして樹脂の収容の大部分を占めないため)。不純物の分配係数(Kimp)は、よりストリンジェントな結合条件においてより高い。このことは、フロースルー様式の産物プールと比較して、弱分配様式の産物プール中により低濃度の残留不純物を生じる。ヒドロキシアパタイトにおけるフロースルー領域、弱分配領域、および結合−溶出領域は、リン酸濃度およびNaCl濃度の関数として、図2Bに示される。
表Aは、3つの結合様式:結合−溶出様式(B−E)、弱分配様式(WP)およびフロースルー様式(FT)の間の特徴の差異をまとめる。
【0032】
【表A】

【0033】
弱分配様式はまた、図3に示されるように、結合−溶出様式およびフロースルー様式から、クロマトグラムによって区別され得る。第一に、フロースルー様式および弱分配様式についてのクロマトグラムはかなり類似であるように見られ得る。産物は、無勾配条件下でカラム溶出物および洗浄物中から回収される。しかしながら、図4に示されるように、これらの様式を区別するために使用され得る、僅かではあるが明確な差異がクロマトグラム中に存在する。フロースルー様式と比較した弱分配様式について、最初のブレークスループロフィール(breakthrough profile)において遅延が存在する(0.1未満のカラム容量(すなわちCV))。弱分配様式について、より遅延した洗い落とし(washout)のプロフィールが存在する。産物を含む小さなストリップ(strip)のピークが存在し得(これは、洗浄段階後にロードの産物濃度10〜50%を依然として結合する樹脂に対応する)、これは、ロードサイクルの間、カラム溶出物の回収に続いて、無勾配条件下でロードの後1〜5CVの洗浄を適用することによって、樹脂から回収され得る。
【0034】
図5Aは、種々のレベルの産物分配係数の値に対する混入物LRV中の一般的な傾向を示す。混入物LRVは、フロースルー作動に対応するKp条件において比較的低い。漸増性のKpの条件下での作動は、混入物のブレークスルーより前のカラム溶出画分中のLRVを有意に増加させる。例に示すように、より高いKp値における作動は、標準的なフロースルー条件に対応する値から、混入LRVを2logほど改善する。
Kpを増加させることは、代表的に、樹脂に結合する産物および混入物の両方を増加させる。より高いKpにおける混入物のより強固な結合は、混入物のブレークスルーより前のカラム溶出物画分中のLRVをより大きくすることに繋がる。しかしながら、混入物のブレークスルー時点におけるロードチャレンジは、Kpの増加に伴って減少する。なせなら、図5Aにおいて高いKpカーブによって模式的に示されるように、産物は樹脂上の結合部位に対して混入物と競合し始めるからである。従って、弱分配領域は、混入物LRVにおける改善と、所定の分離に対するカラム吸収力の要求とのバランスをとる操作ウインドウに対応する。
【0035】
弱分配クロマトグラフィーに対する上限のKpはまた、図5Bに示されるようにカラムロードチャレンジに依存する。分配係数は、フロースルー条件と境界を画す値では産物回収率に影響しない。産物の回収は、高いKp値において落ち込み始め、このKp値では、無勾配洗浄は、妥当な数の洗浄容量においてカラムから結合産物を洗い落とすには効果的でない。非効率的な洗い落としに起因する産物損失の範囲はロードチャレンジ、ならびにロード中の混入物の性質および割合に敏感である。従って、WP領域の下限は、混入物の除去の必要性によって規定され、一方、所定のロードチャレンジの上限は産物の回収率または吸収力の制約によって規定される。
【0036】
本発明の1実施形態において、最適な弱分配条件は、図6に示されるように、以下の一連の実験を使用して識別される:
(i)HTSスクリーニング(または標準的なバッチ結合実験)を実施して、産物分配係数Kpを作動条件の関数として決定する。これらの実験から、弱分配領域(0.1<Kp<20)に対応する操作ウインドウを識別する。
(ii)好ましくは、弱分配領域の識別の後、標準的なフロースルー作動(約50mg/mL)について使用したものと同様のロードチャレンジにて、小規模のカラムにおいて探索の実行を実施し得る。さらに、これらの実験からの混入物除去値および回収率の値に基づき、弱分配操作ウインドウをさらに洗練し得る。
(iii)より好ましくは、次いで、弱分配領域内でいくつかのKp条件についての混入物ブレークスルーのデータを作成し得る。これらの結果に基づき、許容可能なロードチャレンジにおいて混入物の最高の除去をもたらす最適な分配係数を、弱分配領域において選択する。
(iv)次いで最も好ましくは、最適なKp条件下で弱分配クロマトグラフィーの実行を実施し得、最適な回収率および混入物除去を得ることが必要とされる場合、ロードチャレンジおよび洗浄容量をさらに洗練し得る。
【0037】
当業者は、これらのガイドラインまたはそのバリデーションを使用して、カラム作動の標準的なフロースルー様式または結合/溶出様式に匹敵するかまたはそれよりも高いロードチャレンジにおける混入物の増強を提供する、弱分配クロマトグラフィー工程を容易に規定する。上記に考察された一般的な骨子は、場合によって僅かな調節を伴い、イオン交換系、疎水性相互作用系、ヒドロキシアパタイト系またはこれらの相互作用の任意または全ての要素を組み合わせた多様式系における精製工程を開発するために適用され得る。
【0038】
(2.分離技術)
弱分配様式は、不純物からの産物の分離のため、任意のクロマトグラフィー樹脂または媒体と組み合わせて使用され得る。1実施形態において、媒体は荷電したイオン交換媒体である。イオン交換は、正味の電荷に従って分離するクロマトグラフィーの形態である。分子の分離は、目的の荷電した産物と反対に荷電したリガンド基に対するカウンターイオンとの間の競合の結果として、イオン交換媒体上で起こる。産物とイオン交換媒体との間の結合相互作用は、その産物の正味の電荷に依存する。正味の電荷は、媒体のpHおよびイオン強度に依存し、このことは、目的の産物分子の表面上に晒されたアミノ酸または他成分の異なる荷電特徴に影響を与える。
【0039】
本発明において使用され得るイオン交換樹脂としては、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂が挙げられる。陰イオン交換樹脂は、ジエチルアミノエチル(DEAE)基、トリメチルアミノエチル(TMAE)基、四級化アミノエチル(QAE)基、および四級化アミン(Q)基のような置換基を使用し得る。陽イオン交換は、カルボキシメチル(CM)、スルホエチル(SE)、スルホプロピル(SP)、リン酸(P)、およびスルホン酸(S)のような置換基を使用し得る。セルロースイオン交換樹脂(例えば、DE23、DE32、DE52、CM−23、CM−32およびCM−52)は、Whatman Ltd.Maidstone,Kent,U.K.より入手可能である。セファデックスベースのイオン交換体および架橋イオン交換体もまた公知である。例えば、DEAE−セファデックス、QAE−セファデックス、CM−セファデックスおよびSP−セファデックス、ならびにDEAE−セファロース、Q−セファロース、CM−セファロースおよびS−セファロース、ならびにセファロースは全て、Amersham Biosciences,Piscataway,NJより入手可能である。さらに、DEAEとCMとの両方より誘導されたエチレングリコールメタクリル酸コポリマー(例えば、TOYOPEARL(商標) DEAE−650SまたはDEAE−650M、およびTOYOPEARL(商標) CM−650SまたはCM−650Mは、Toso Haas Co.,Philadelphia,PAより入手可能である。
【0040】
本発明の特定の実施形態において、弱分配様式は、産物の精製のため、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂を用いて使用される。HICは、疎水性に基づき分子を分離するための技術である。一般的に、高塩緩衝液中のサンプル分子はがHIC樹脂にロードされる。緩衝液中の塩は水分子と相互作用して、溶液中の分子の溶解度を低下させ、これによってサンプル分子中の疎水性領域が露出され、この分子は結果としてHIC媒体によって吸収される。分子の疎水性が高いほど、結合を促進するために必要とされる塩はより少ない。従って、産物分子とHIC媒体との間の結合相互作用は、媒体のpH、イオン強度、および塩濃度のような条件に依存する。
【0041】
本発明において使用され得る種々の市販のHIC樹脂としては、疎水性リガンド(例えば、アルキル基またはアリール基)が結合された基材マトリクス(例えば、架橋アガロースまたは合成コポリマー物質)を含む樹脂が挙げられる。例としては、以下が挙げられる:Phenyl SEPHAROSE(商標)6 FAST FLOW(商標)(Pharmacia LKB Biotechnology、AB、スウェーデン);Phenyl SEPHAROSE(商標) High Performance(Pharmacia LKB Biotechnology、AB、スウェーデン);Octyl SEPHAROSE(商標) High Performance(Pharmacia LKB Biotechnology,AB、スウェーデン);Fractogel(商標) EMD PropylまたはFRACTOGEL(商標) EMD Phenyl(E.Merck、ドイツ);MACRO−PREP(商標) Metyl SupportまたはMACRO−PREP(商標) t−Butyl Support(Bio−Rad、CA);WP HI−Propyl(C3)(商標) (J.T.Baker、NJ);およびTOYOPEARL(商標)エーテル、TOYOPEARL(商標)フェニルまたはTOYOPEARL(商標)ブチル(TosoHaas、PA)。
【0042】
本発明の他の実施形態において、弱分配様式は、生成物の精製のため、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを用いて使用される。ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーは、マトリクスおよびリガンドの両方として、式[Ca10(PO46(OH)2]の不溶性ヒドロキシル化リン酸カルシウムを利用する技術である。官能基は、正に荷電したカルシウムイオン(C部位)と負に荷電したリン酸基(P部位)との対からなる。産物とヒドロキシアパタイト媒体との間の結合相互作用は、pH、イオン強度および補助剤濃度(例えば、媒体のリン酸濃度、カルシウム濃度、アルギニン濃度、グリシン濃度およびHEPES濃度)のような条件に依存する。種々のヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー樹脂が市販されており、本発明において使用され得る。
【0043】
本発明のさらなる実施形態において、弱分配様式は、産物の精製のため、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)樹脂を用いて使用され得る。IMACは、樹脂上に固定化したキレート化遷移金属イオンと、タグ付けされた目的産物上のヒスチジン残基のイミダゾール側鎖とのあいだの相互作用に基づく。分子の分離は、タグ付けされた目的産物とIMAC樹脂上の金属基に対するカウンターリガンドとの間の競合の結果として起こる。産物と金属が荷電したIMAC媒体との間の結合相互作用は、カウンターリガンドのレベル(例えば、イミダゾール濃度)、および媒体のイオン強度のような条件に依存する。種々のIMAC樹脂が利用可能であり、本発明において使用され得る。
【0044】
(3.精製のための産物)
本発明は、種々の目的産物(天然に存在するタンパク質、融合タンパク質、Fc含有タンパク質、免疫結合体、サイトカイン、インターロイキン、ホルモン、および治療酵素が挙げられる)の商用規模の精製のために使用され得る。1実施形態において、精製を受けるタンパク質は、抗体免疫グロブリンの定常ドメインを1つ以上含み得る。1実施形態において、タンパク質はまた、抗体免疫グロブリンの可変領域を1つまたは複数含み得る。別の実施形態において、Fc含有タンパク質は、抗体を含み得る。タンパク質は、種々の供給源に由来し得、培養の組換えの原核細胞生物または真核細胞生物の宿主細胞株が挙げられる。
【0045】
本発明の抗体調製物は、多くの供給源から単離され得、免疫動物の血清、腹水流体、ハイブリドーマまたはミエローマの上清、抗体分子を発現する組換え細胞株を培養することから導かれる馴化培地および抗体産生細胞の細胞抽出物全てから導かれる馴化培地が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の1実施形態において、抗体を産生する種々の組換え細胞株の馴化培養物の培地由来の抗体が精製される。本明細書中の開示に基づき、細胞株毎の変異型および種々の抗体間の変異型がいくつか考えられ得るが、抗体タンパク質と産生細胞株との特定の組み合わせに対して本明細書中の発明を適合させることは、十分に当業者の技量内である。
例示のみの目的のため、本発明はIgGアイソタイプのいくつかの抗体の精製に適用された。より具体的には、本発明は、ヒト化抗Aβモノクローナル抗体、抗GDF−8抗体、およびヒト化抗IL−13モノクローナル抗体の精製に適用された。
【0046】
(4.ローディング条件および吸収力)
産物および不純物を含む流体を媒体にロードする前に、その媒体に媒体1mLあたり少なくとも1mgの産物を結合させる作動条件を見出すことによって弱分配領域を識別する必要があり得る。1実施形態において、見出された作動条件は、媒体1mLあたり少なくとも5mgの産物を媒体に結合させる。別の実施形態において、見出された作動条件は、媒体1mLあたり少なくとも10mgの産物を媒体に結合させる。他の実施形態において、見出された媒体1mLあたり少なくとも20mgの産物を媒体に結合させる。あるいは、弱分配領域は、少なくとも0.1の分配係数によって規定される作動条件を見出すことによって識別される。特定の実施形態において、見出された作動条件は、約0.2〜約20.0の範囲の分解係数によって規定される。他の実施形態において、見出された作動条件は、約0.2〜約10.0の範囲の分解係数によって規定される。なお他の実施形態において、見出された作動条件は、約1.0〜約5.0の範囲、約0.5〜約5.0の範囲、または約0.5〜1.5の範囲の分解係数によって規定される。さらなる実施形態において、弱分配領域は、媒体1mLあたり少なくとも1mg〜約70mgの産物を媒体に結合させる作動条件、および0.3〜20の分配係数によって規定される作動条件を見出すことによって識別される。
【0047】
当業者は、適切な作動条件が産物の精製のために選択される媒体の選択に依存することを理解する。、特定の実施形態において、作動条件はpHレベルおよびイオン強度を含む。他の実施形態において、作動条件はさらに、塩濃度を含む。なお他の実施形態において、作動条件はさらに補助剤のレベル(例えば、リン酸濃度、およびカルシウム濃度)を含む。いくつかの実施形態において、作動条件は、カウンターリガンドレベル(例えば、イミダゾール濃度)およびpHレベルを含む。
【0048】
スクリーニング工程は、弱分配様式のための作動条件を識別するために使用され得る。このようなスクリーニング工程としては、バッチ結合調査またはカラム結合調査が挙げられ得る。カラム結合調査としては、勾配溶出調査または無勾配溶出調査が挙げられ得る。例えば、当業者は、精製される特定のタンパク質に対して、そして識別される作動条件に対して、どの溶媒またはどの塩が適当であるかを決定し得る。次いで、選択された緩衝液または塩の最適濃度が、例えば、選択された緩衝液または塩の勾配を、カラムを通して流す(run)ことによって決定され得、このカラムに対して精製されるべき産物および不純物を含むロード流体が注がれる。カラムの溶出物の画分を収集しそして分析して、産物の結合が媒体1mLあたり少なくとも1mgであるか、あるいは産物の分配係数が少なくとも0.1である、緩衝液濃度または塩濃度を決定し得る。本発明の特定の実施形態において、分配係数は、1〜10mg/mLの間のロードチャレンジに測定され、バッチ結合実験におけるその相の比(液量 対 樹脂量)は、3:6である。
【0049】
一旦、作動条件が決定されると、ロード流体および/または媒体の条件がそれによって調節され得る。例えば、媒体は、弱分配様式に必要な作動条件にさせる溶液を用いて洗浄することによって、平衡化され得る。ロード流体はまた、弱分配様式のため、調製して適切な緩衝液またはロード緩衝液に交換された、緩衝液であり得る。ロード緩衝液は、平衡化緩衝液と同じ緩衝液であっても異なる緩衝液であってもよい。
【0050】
1実施形態において、ロード流体のイオン強度は、100mM以下である。別の実施形態において、ロード流体のイオン強度は50mM以下である。別の実施形態において、ロード流体のイオン強度は25mM以下である。なお別の実施形態において、ロード流体のイオン強度は10mM以下である。
ロード流体は、カラム床にパックされる分離媒体を通過され得、固体相マトリクスを含んで流動化/拡大されたカラム床にパックされる分離媒体を通過され得、そして/または固相マトリクスが一定時間ロード流体と混合されるバッチ形式で分離媒体を通過され得る。ロード流体がその媒体を通過した後、媒体は必要に応じて、本質的に無勾配の洗浄物1容量により洗浄される。精製産物は、本質的に無勾配の任意の洗浄物から得られ得、そしてロードサイクルの間のカラム溶出物からの精製産物と共にプールされ得る。任意の洗浄工程の後、媒体は必要に応じてストリップおよび再生され得る。この手順は代表的に、固相表面上の不純物の形成を最小にするため、および/または微生物による産物の混入を避けるための媒体の滅菌のため、規則的に実施される。
【0051】
高いロード濃度およびロード容量は、弱分配様式を用いて可能である。1実施形態において、ロード流体中の産物濃度はロード流体1mLあたり少なくとも1mgであり、別の実施形態において、ロード流体中の産物濃度はロード流体1mLあたり少なくとも5mgであり、別の実施形態において、ロード流体1mLあたり少なくとも50mgであり、そして別の実施形態において、ロード流体1mLあたり少なくとも100mgである。精製産物は、媒体を通されるロード流体50CV以下から回収され得る。
高いロードチャレンジもまた弱分配様式を用いて可能である。1実施形態において、媒体上へのロードは、媒体1mLあたり少なくとも10mgの産物のロードチャレンジであり得る。他の実施形態において、媒体への産物のローディングは、媒体1mLあたり少なくとも50mgの産物である。特定の実施形態において、媒体上への産物のローディングは、媒体1mLあたり少なくとも100mgの産物である。他の実施形態において、媒体上へのロードは、媒体1mLあたり少なくとも500mgの産物のロードチャレンジであり得る。なお他の実施形態において、媒体上へのロードは、媒体1mL当たり少なくとも1000mgの産物のロードチャレンジであり得る。
【0052】
(5.不純物の除去)
弱分配様式は、産物調製物から全ての方の不純物(宿主細胞タンパク質の混入、核酸の混入、産物の変異体(凝集産物および高分子量種が挙げられる)の混入、内毒素の混入、ウイルスの混入、および先の精製工程からのプロテインAの混入が挙げられる)を除去するのに有用であることが示されている。
本発明の1実施形態において、精製産物中に存在する宿主細胞タンパク質の濃度は、産物1mgあたり約500ng以下の宿主細胞タンパク質である。他の実施形態において、宿主細胞タンパク質濃度は、産物1mgあたり250ng以下に、そして他の実施形態において、産物1mgあたり100ng以下に、低減され得る。特定の実施形態において、宿主細胞タンパク質の対数除去値は少なくとも1.0であり、他の実施形態において、宿主細胞タンパク質の対数除去値は少なくとも2.0であり、そして他の実施形態において、宿主細胞タンパク質の対数除去値は少なくとも3.0である。
【0053】
本発明の1実施形態において、精製産物中に存在するプロテインAの濃度は、産物1mgあたり約100ng以下のプロテインAである。いくつかの実施形態において、プロテインAの濃度は、産物1mgあたり50ng以下に低減され得、そして他の実施形態において、産物1mあたり10ng以下に低減され得る。特定の実施形態において、プロテインAの対数除去値は、少なくとも1.0であり、そして他の実施形態において、プロテインAの対数除去値は少なくとも2.0であり、そして他の実施形態において、プロテインAの対数除去値は少なくとも3.0である。
本発明の別の実施形態において、ウイルス不純物が精製産物から除去される。特定の実施形態において、ウイルスの対数除去値は1.0より大きく、他の実施形態において2.0より大きく、そして他の実施形態において3.0より大きい。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態において、核酸不純物が精製産物から除去され得る。特定の実施形態において、精製産物中に存在する核酸の量は、産物1mgあたり1ng以下の核酸に低減され得る。
さらなる実施形態において、精製産物中のタンパク質変異体の濃度は、約10%以下である。いくつかの実施形態において、タンパク質変異体の濃度は約5%以下に低減され得、いくつかの実施形態において2%以下に低減され得、そしていくつかの実施形態において0.5%以下に低減され得る。
弱分配様式のストリンジェントな結合条件下で、分離媒体は、宿主細胞タンパク質不純物、核酸不純物、変異体不純物、内毒素不純物、およびプロテインA不純物のうちの少なくとも90%を除去する。いくつかの実施形態において、媒体は少なくとも99%の不純物を除去し、そして他の実施形態において、媒体は少なくとも99.9%の不純物を除去する。
【0055】
(6.さらなる任意の工程)
本発明の精製方法は、他のタンパク質精製工程と組み合わせて使用され得る。本発明の1実施形態において、弱分配工程に先行する1つ以上の工程が、ロードチャレンジを低減するために所望され得る。本発明の別の実施形態において、弱分配工程の後に1つ以上の精製工程が、さらなる混入物または不純物を除去するために所望され得る。
記載される弱分配精製手順は、必要に応じて、他の精製工程と組み合わされ得、プロテインAクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ダイアフィルトレーション、限外ろ過、ウイルス除去ろ過および/またはイオン交換クロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない。弱分配工程の前および/またはその後の任意の精製工程もまた、弱分配様式または他の様式(例えば、結合−溶出様式またはフロースルー様式)で作動され得る。
【0056】
1実施形態において、弱分配精製工程の前に、収集した培地は必要に応じて、最初にプロテインAクロマトグラフィー工程により精製され得る。例えば、PROSEP−A(商標)(Millipore、U.K.)(これは、制御された孔のガラスに共有結合したプロテインAからなる)が使用され得る。他の有用なプロテインA処方物としては、Protein A Sepharose FAST FLOW(商標)(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)、TOYOPEARL(商標) 650M Protein A(TosoHaas Co.,Philadelphia,PA)およびMABSELECT(商標)カラム(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)が挙げられる。
【0057】
(7.プロテインAクロマトグラフィーとイオン交換クロマトグラフィーとのタンデムにおいて使用される双生イオン緩衝液)
特定の実施形態において、産物含有流体は、低イオン強度の溶出緩衝液を使用してプロテインAカラムから溶出される。次いで、産物含有流体のpHおよび電導度は中和緩衝液を使用して調節され、この緩衝液は、その産物含有流体のイオン強度を20mM以下にする。次いで、得られたロード流体は、弱分配様式の条件下で作動して、陰イオン交換媒体またはヒドロキシアパタイト媒体に通される。特定の実施形態において、ロード流体は、ダイアフィルトレーションの必要なしに陰イオン交換媒体に通される。いくつかの実施形態において、産物含有流体のpHおよび電導度は中和緩衝液を使用して調節され、この緩衝液はその産物含有流体のイオン強度を40mM以下にする。他の実施形態において、産物含有流体のpHおよび電導度は中和緩衝液を使用して調節され、この緩衝液はその産物含有流体のイオン強度を60mM以下にする。なお他の実施形態において、産物含有流体のpHおよび電導度は中和緩衝液を使用して調節され、この緩衝液はその産物含有流体のイオン強度を80mM以下にする。
【0058】
プロテインAカラムからの溶出物に対して使用され得る緩衝液としては、pKa2〜5に荷電した陰イオン基を有する分子を含む緩衝液が挙げられる。このような溶出緩衝液はさらに、pKa6.5〜10に荷電した陽イオン基を有する分子を含み得る。1実施形態において、溶出緩衝液はpH4〜9の間の双生イオンである分子を含み、例えば、グリシン;1,4−ピペラジンビス−(エタンスルホン酸);グリシルグリシン;シクロペンタンテトラ−1,2,3,4−カルボン酸;N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸;2−(N−モルホリノ)プロパン−スルホン酸;N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸;N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸;4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸;N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン;グリシンアミド;N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン;N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノプロパンスルホン酸;またはN−グリシル−グリシンである。
【0059】
双生イオン緩衝液を用いたプロテインAの溶出は、ある程度の中和の際に低イオン強度の利点をもたらす。低イオン強度の緩衝液は、その後のイオン交換カラム(ヒドロキシアパタイトカラムを含む)の作動に対して悪影響しない。高レベルのイオン強度は、イオン交換カラムへの不純物の結合を低下させ、このことは精製の最終効率を低下させ得る。より低イオン強度の溶液がイオン交換カラムへのロードに対して好ましい。なぜなら、イオン強度は濃縮した塩緩衝液の添加により容易に上昇され、溶液のイオン強度を低下させることは容易ではないからである。驚くべきことに、プロテインA溶出工程において有用な低pHレベルでの使用を可能にする低いpKaを有するが、イオン交換クロマトグラフィーにおいて有用なより高いpHレベルでの使用を可能にする第二のpKaもまた有する緩衝液が存在する;これらの緩衝液は、適切な第二のpHにおいて使用される場合、プロテインA工程の後のイオン交換工程の作動の間にはほとんど効果的でない電荷を有する。
【0060】
プロテインAに好ましい溶出pH(pH2〜5の間、好ましくはpH2.5〜4.0の間)のpKaに近いpKaを有する双生イオン緩衝液は、使用される緩衝液がその緩衝液のpIに近いpHを維持すること、およびカラムから溶出することを可能にする。その後のイオン交換カラムの作動のpKa(pH5.5〜11)に近いpKaもまた有する双生イオン緩衝液は、この緩衝液が、そのpH範囲およびプロテインAの溶出pH範囲内でpHを制御することを可能にする。低pHにおけるプロテインAカラムの溶出とイオン交換クロマトグラフィーに有用なより高いpHの維持との両方のために単一の化合物を使用することは、両工程の作動を単純化し、そして中和後の産物プールの組成も単純化する。
【0061】
本発明のさらなる実施形態において、pKa1とpKa2とを有する双生イオン緩衝液は、1つのpH単位pKa1以内のpHレベルでプロテインAカラムを溶出させ得る。さらに、その双生イオン緩衝液の塩基性溶液を用いて、プロテインAのプールが1つのpH単位pKa2以内の第二のpHに中和される。その双生イオン緩衝液は、溶液のこのpHを維持し得る。第二のpHがpKa2のものより低い場合、緩衝液は双生イオンのままであり、その溶液の総イオン強度にほとんど寄与しない。例えば、pKa2に等しいpHにおいて濃度xを有する双生イオン緩衝液は、総イオン強度に対してx/2のみ寄与する。緩衝液のpKa2より低い1pH単位において濃度xを有する双生イオン緩衝液は、xの1/10のイオン強度を有する。イオン強度のこの低減は、イオン交換クロマトグラフィーの作動に大いに有用である。
【0062】
プロテインAカラムの溶出に有用なpKa1と、イオン交換クロマトグラフィーの作動に有用なpKa2とを有する緩衝液の存在は、明らかでない。なぜなら、これらの緩衝液のpKa1が一般には報告されないからである。緩衝液は一般に、pKa2のpHレベルに近いpHレベルで使用され、プロテインAカラムからの溶出物に有用ではないとクロマトグラフィーの当業者に公知である。さらに、プロテインAクロマトグラフィーカラムからの溶出物のためのこれら緩衝液の利用は一般的に実現されず、一方、これら双生イオン緩衝液がプロテインAカラムの後のイオン交換カラムのための緩衝液としてさらなる利用を有することもまた実現されない。なぜなら、これら双生イオン緩衝液は中和されるプロテインAプールに、より低いイオン強度を与えるからである。
【実施例】
【0063】
(C.実施例)
以下の実施例は、例示の目的のみのために提供される。
実施例は、3つの異なるモノクローナル抗体を使用して、3つの様式のクロマトグラフィー(陰イオン交換、疎水性相互作用、およびヒドロキシアパタイト)に対して提供される。4つの別々の一連の実験が記載され、各々は、クロマトグラフィー様式と精製されるモノクローナル抗体との異なる対の形成を表す。初期のスクリーニング調査が最初に提供され、これは、分配係数、および/または種々の溶液条件下で樹脂に結合した産物の濃度を決定し、これによって弱分配(WP)様式およびフロースルー(FT)様式の作動範囲を規定する。次いで、産物の回収および不純物の除去に関して、いくつかのカラム調査がまとめられる。産物の回収は、WPカラムの実行については優れており、対応するFT調査よりも不純物レベルが低い。WPの実行は、樹脂に対してFT調査よりも高いロードチャレンジで行われた。
【0064】
試験サンプル中のプロテインAの残分のレベルを、プロテインAの固相酵素免疫測定法(ELISA)を使用して測定した。高分子量凝集物の量を、分析型サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)アッセイを使用して測定した。宿主細胞タンパク質(HCP)のレベルを、HCP ELISAを使用して測定した。すべてのスクリーニング調査およびカラム調査は、室温で行った。
【0065】
(シリーズ1−TMAE−HiCAP(M)およびMab−AABを用いた陰イオン交換)
(実験1.1−WP条件およびFT条件を確立するための高スループットスクリーニング)
高スループットスクリーニング(HTS)を実施して、TMAE−HiCAP(M)媒体を用いたMab−AABについての弱分配条件およびフロースルー条件を識別した。このスクリーニングは、塩化ナトリウム濃度およびpHを変動させ、MAB−AABの結合の程度、およびTMAE媒体に対するプロセス関連不純物(プロテインAおよびHCP)に対するそれらの効果を決定した。
50μLのTMAE HiCap媒体を、96ウェルフィルタープレートの各ウェルに添加した。各ウェルを、50mM グリシンおよびTris緩衝液の変動量(表1.1.1に特定されるpHに対する中和に必要とされる量に依存する)および塩化ナトリウム(表1.1.2に特定される)から作製される溶液で平衡化した。pHは7.6〜9.0の範囲であり、塩化ナトリウムは0mM〜80mMの範囲であった。
【0066】
各行にて使用される緩衝溶液を、自動化ピペッティングシステム(Tecan 100RST)にて希釈した。緩衝液のためのストック溶液を、HClによりpH3.0に酸性化し、続いて表1.1.1に示されるpHレベルに2M Tris塩基により中和した、500mMグリシンから作製した。この滴定は、緩衝液のpHに依存するTrisレベルを生じた。緩衝液のpHを、ストック緩衝液濃度の1〜10倍希釈で測定した。これらは、自動化ピペッティングシステムにより作製した希釈物に対応した。pH3.0へのグリシンの酸性化の結果、緩衝液は最終溶液に約10mMのイオン強度を与えた。2つのロードチャレンジをその樹脂に対して行った:分配係数Kを測定するための5mg/mL、およびカラムロード濃度にほぼ等しい濃度においてタンパク質溶液と平衡した結合産物と不純物との除去についての樹脂の吸収力Qを測定するための122mg/mL。
【0067】
【表1.1.1】

【0068】
【表1.1.2】

【0069】
HTS実験の第1段階において、各ウェルを、表1.1.1および1.1.2に記載されるNaClおよびpHの条件で、相の容量比6:1(300μLの溶液:50μLの樹脂)において平衡化した。プレートを20分間振盪して、平衡化に到達させた。次いで、フィルタープレートを遠心分離することによりこの溶液を除いた。この平衡化サイクルを3回繰り返した。
【0070】
第2段階において、各ウェルの樹脂を、適切なNaCl濃度およびpHにおいて、濃縮したMAb−AAB溶液 対 5mg/mLの樹脂を容量比6:1(300μLの溶液:50μLの樹脂)にて用いて、チャレンジした。300ppmのプロテインAを添加した1mM HEPES、10mM NaCl(pH7.0)中のMab−AABの36mg/mL溶液を、ストック溶液として使用した。ロードしたプレートを20分間振盪して、樹脂と溶液とを平衡化させた。遠心分離によってフィルタープレートから上清を除去し、収集プレートに収集した。各ウェルの上清中のタンパク質濃度を、A280nmにおける吸収により決定した。
【0071】
第3段階において、樹脂を、表1.1.2に列挙される特定のNaCl条件およびpH条件の溶液を添加することによって洗浄した。20分間振盪した後、上清を除去した。第4段階において、2M NaClを添加して、樹脂に結合する残留タンパク質を除去した。段階3および段階4から溶出された質量と、二段階からの産物濃度とを使用して、各ウェルに対して分配係数を計算し、表1.1.3に示す。分配係数の対数の等高線プロットを、pHおよび塩化物の関数として、図7に示す。
【0072】
【表1.1.3】

【0073】
表1.1.3に示されるように、Kp値を使用して、MAB−AABが異なる強度でTMAE媒体に結合する領域を記載し得る。これらの領域は、図7により明確に視認される。MAB−AABがTMAE媒体に結合する強度は、pH条件と、フロースルー域への塩化物濃度条件(K≦0.1)、弱分配域への塩化物濃度条件(0.1<K<20)、および結合域への塩化物濃度条件(K≧20)とを変動させることによって作動し得る。
【0074】
各域からの全てのウェルのロード段階からの上清をサンプリングして、プロテインA分析に供した。これらのサンプルのアッセイ結果は、表1.1.4に要約される。pHおよび電導度について、TMAEクロマトグラフィー工程が、樹脂に対して損失タンパク質を制限しながら、プロテインAの非常に有意な除去をもたらす領域が、存在する。この領域は、分配係数値Kpと密に相関しており、特定のpHにも塩化物濃度に相関しないことが見出された(図8を参照のこと)。
【0075】
【表1.1.4】

【0076】
(実験1.2−フロースルー条件下でのカラムの実行)
以下の実験を、フロースルー(FT)様式において実施した。ここで、Mab−AABはカラムとは非常に弱く相互作用するのみである。110mg/mlのロードチャレンジおよび200mg/mlの樹脂を用いて、2つの実行を実施した。
【0077】
シリーズ1の実験に記載した全てのTMAE(HiCapM)陰イオン交換クロマトグラフィーの実行について、以下の条件を使用した(例外は個々の実験の記載中に注記される)。
作動流速 − 150〜300cm/時
平衡化1 − 50mM Tris、2.0M NaCl、pH7.5(5カラム容量)
平衡化2 − 記載されるとおりであり、ロードのpHおよび塩化物含量とほぼ同値
ロード後の洗浄 − 記載されるとおりであり、ロードのpHおよび塩化物含量とほぼ同値
ストリップ緩衝液 − 50mM Tris、2.0M NaCl、pH7.5(5カラム容量)。
【0078】
(Mabselect プロテインAクロマトグラフィー)
モノクローナル抗体を含む培養物を、Millipore K−prime 400クロマトグラフィーシステムに接続したMabSelectカラム(2,389mL)を使用して、パイロットスケールにおいて精製した。MabSelectプロテインAカラムを、5カラム容量の50mM Tris/150mM NaCl、pH7.5を用いて、流速300cm/時にて平衡化した。次いで、樹脂1mlあたり産物約40mgのロードにてこのカラムにロードした。このカラムに、5CVの洗浄(1M NaCl 50mM Triss、pH7.5)、および5CVの洗浄(10mM Tris、75mM NaCl、pH7.5)を続けた。次いで、50mM グリシン、75mM NaCl(pH3.0)を使用してカラムを溶出させた。産物のプールを、2M Tris(pH8.5)を使用してpH7.6に中和した。中和したピーク物は、塩化物濃度約90mMを有した。
【0079】
(TMAE HiCap(M)クロマトグラフィー)
中和したプロテインAプールをさらに、pH7.5の平衡化溶液、ロード溶液および洗浄溶液(50mM Trisおよび75mM NaCl)をおいて用いて、TMAEにより精製した。5カラム容量の洗浄を使用した。これら2つの調査のカラムの寸法およびロードチャレンジは:実行1:直径7.0cm×床高さ20.6cm(容量793mL)およびロード濃度11.9mg/mL、ならびに実行2:直径7.0cm×床高さ13cm(容量500mL)およびロード濃度17.6mg/mL。
【0080】
これらのロード条件は、フロースルー(FT)領域(表2.1.1)中である。バッチ結合調査を使用して分配係数(Kp)を測定し、そして結合産物を、UV吸収を使用することによるカラムストリップ中のタンパク質によって決定した。結合産物を決定するこの方法は、代表的に、洗浄の間の産物の無勾配溶出のため、ロードの間に結合した産物の量を過小に評価する。ロード中のおよび産物プール中のプロテインAレベル、HCPレベルおよびHMWレベルを測定し、そして除去の程度を計算した。結果を表1.2.1に示す。プロテインAおよびHMWについてはほとんど除去されず、HCPレベルについて僅かな低下である。
【0081】
【表1.2.1】

*不純物レベルは、38.5ppm ProAおよび51,943ppm HCP(実行1)、8.8ppm ProAおよび25,398ppm HCP(実行2)であった。
【0082】
(実験1.3−弱分配条件下でのカラムの実行(高い産物チャレンジ))
(TMAE(HiCapM)陰イオン交換クロマトグラフィー)
MabselectプロテインAのいくつかの実行を、これらの実行のためのロード材料を作製するため、本質的に実験1.2に示されるように実施した。プロテインA工程からの部分精製された抗体プールをさらにTMAEカラムにて精製した。TMAEカラムへのロードは、50mM Tris(pH8.2)であった。カラム径は0.5cmであり、床高さは10cm(容量2.0mL)の床高さであった。このカラムに、樹脂1mLあたり500mlのロードを、ロード濃度27.7mg/mLをチャレンジした。
【0083】
このカラムを、50mM Tris、2M NaCl(pH7.5)を含む5カラム容量の溶液、その後の別の平衡化工程(50mM Tris(pH8.2)の溶液を含む)により平衡化した。次いで、このカラムに、樹脂1mlあたり産物500mg、および先の工程からの中和したプロテインAピーク物をロードし、そして産物を、ロードサイクル間のカラム溶出物中および数カラム容量の洗浄画分中に回収した。
これらのロード条件は、弱分配領域に存在する。バッチ結合調査を使用して、高タンパク質濃度における分配係数(Kp)および結合する産物を測定した。pH8.2および12mMの適切な塩化物含量において、分配係数Kpは1.9であると見積もられる(HTSスクリーンからのデータ集合の中間補正より)。
【0084】
ローディング段階の間の3つの画分において、HCPレベルおよびプロテインAレベルを測定し、樹脂1mlあたり約250mg、約375mgおよび約500mgのロードチャレンジを示す。実験1.3からの結果を表1.3.1に示す。これらの結果は、非常に高いチャレンジが弱分配様式において不純物のブレークスルーなしに達成され得ることを実証する。HMW含量を50%低減させながら、HCPおよびプロテインAのすばらしい低減を達成した。表1.2.1のフロースルー様式における作動についての結果と比較して、不純物の除去は、弱分配様式においてずっと良好であった。
【0085】
【表1.3.1】

*ロード中の不純物は、25,398ppmのHCP、99.5ppmのプロテインAおよび2.3%のHMWであった。
【0086】
(実験1.4−弱分配条件でのカラムの実行(強固さの調査))
弱分配領域におけるTMAEカラムの性能をさらに確認するため、ロード中のpHおよびNaCl濃度を変動させるいくつかの実行を設計して、プロセスの強固さを試験した。全ての実行は、樹脂1mlあたり250mgのロードチャレンジにおいて実施した。MabselectプロテインAのいくつかの実行を、これらの実行のためのロード材料を作製するため、本質的に実験1.2に記載されるように実施した。これらの実行において変化した唯一の要因は、プロテインA溶出物中の塩化ナトリウム濃度であった。この濃度は変化して、特定の実験についてのTMAEへのロード中のNaCl濃度と一致した。カラムを平衡化2緩衝液により平衡化し、そしてロードとほぼ同じpHおよび塩化ナトリウム濃度を有した洗浄緩衝液で洗浄した。
【0087】
これらのロード条件は、弱分配領域に存在する。バッチ結合調査を使用して、分配係数(Kp)を測定した。これらの実行は、表1.4.1に列挙される分配係数により並べられる。結合産物は、UV吸収を使用してカラムストリップ中のタンパク質を測定することによって決定し、7.8〜25.3mg/mLの範囲であった。これらの実験からのプロテインA、HCPおよびHMWの結果もまた表1.4.1に示される。全ての不純物の除去は、総塩化物13.5〜38.8mMおよびpH7.8〜8.4に広がる作動範囲において強固であることを見出された。
【0088】
【表1.4.1】

*不純物レベルは、38.5ppm ProAおよび51,943ppm HCP(実行1)、8.8ppm ProAおよび25,398ppm HCP(実行2)であった。
+NaCl、緩衝液および滴定物(titrant)からのCl−イオンの寄与を含む。
【0089】
(要約)
この調査から、プロテインAの除去(LRV)がKpにより強く変動し、一方でHCP LRVはKp2.6以上の値全てで優れているが、Kp=0.17(フロースルー条件下)において大きく低減することが認められ得る。宿主細胞タンパク質の除去は、低いロードチャレンジについても、弱分配条件と比較すると、フロースルー条件について1log超低い。樹脂およびモノクローナル抗体のこの組み合わせにおけるこれらの弱分配条件に対して、結合産物は7.8〜25mg/mLの範囲である。分配係数は、0.41<Kp<5.4の間で最適であるようである。これは、Kp=0.17および1.4〜3.3mg/mLの結合産物(実験1.2の条件)においては最適ではないようである。
【0090】
(シリーズ2−TMAE−HiCapMおよびMab−IMAを用いる陰イオン交換)
(実験2.1−WPおよびFT条件を確立するための高スループットスクリーニング)
高スループットスクリーニング(HTS)を、TMAE−HiCAP(M)媒体を用いたMab−IMAについての弱分配条件およびフロースルー条件を識別するために実施した。このスクリーニングは、塩化ナトリウム濃度およびpHを変動させ、MAB−IMAの結合の程度、およびTMAE媒体に対するプロセス関連不純物(プロテインAおよびHCP)に対するそれらの効果を決定した。100μLのTMAE HiCap媒体を、96ウェルフィルタープレートの各ウェルに添加した。各ウェルを、25mMの緩衝液(その緩衝液のpKaから1pH単位以下離れている:表2.1.1)および適切なレベルの塩化ナトリウム(表2.1.2)から作製された溶液中で平衡化した。pHは7.00〜8.75の範囲であり、塩化ナトリウム濃度は1mM〜190mMの範囲であった。
【0091】
全ての緩衝液を、12M HClを使用して標的pHに滴定した。異なるレベルの滴定物に必要とされる異なる緩衝種の結果として、塩化物濃度は、そのウェルにどの緩衝液が使用されかに依存して、ウェル毎に変動した。標的pHに緩衝液を滴定するために必要とされるCl−量を、Henderson−Hasselbachの方程式を使用して計算し、そしてロード材料中のNaClおよびその量の両方から寄与される総Cl−に加算した。この実験における全てのウェルに対して計算されるCl−レベルを、表2.1.3に列挙する。
【0092】
【表2.1.1】

【0093】
【表2.1.2】

【0094】
【表2.1.3】

【0095】
HTS実験の第1段階において、各ウェルを、表2.1.1および2.1.2に記載されるNaClおよびpHの条件で、相の容量比3:1(300μLの溶液:100μLの樹脂)にて平衡化した。プレートを20分間振盪して、平衡化に到達させた。次いで、フィルタープレートを遠心分離することによりこの溶液を除いた。この平衡化サイクルを3回繰り返した。
【0096】
第2段階において、各ウェルの樹脂を、適切なNaCl濃度およびpHにおいて、濃縮したMAb−IMA溶液 対 樹脂1mLあたり3mgを容量比3:1(300μLの溶液:100μLの樹脂)にて用いて、チャレンジした。300ppmのプロテインAを添加した1mM Mes、15mM NaCl(pH6.5)中のMab−IMAの30mg/mL溶液を、ストック溶液として使用した。ロードしたプレートを20分間振盪して、樹脂と溶液とを平衡化させた。遠心分離によってフィルタープレートから上清を除去し、収集プレートに収集した。各ウェルの上清中のタンパク質濃度を、A280nmにおける吸収により決定した。プロテインAレベルおよび/またはHCPレベルにおける減少はいずれも精製に対する状態電導度を示す。
【0097】
第3段階において、樹脂を、表2.1.2に列挙される特定のNaCl条件およびpH条件の溶液を添加することによって洗浄した。20分間振盪した後、上清を除去した。第4段階において、2M NaClを添加して、樹脂に結合する残留タンパク質を除去した。段階3および段階4から溶出された質量と、段階2からの産物濃度とを使用して、各ウェルに対して分配係数を計算し、表2.1.4に示す。分配係数の対数の等高線プロットを、pHおよび塩化物の関数として、図9に示す。
【0098】
【表2.1.4】

【0099】
表2.1.4に示されるように、Kp値を使用して、MAB−IMAが異なる強度でTMAE媒体に結合する領域を記載し得る。これらの領域は、図9により明確に視認される。MAb−IMAがTMAE媒体に結合する強度は、pH条件と、フロースルー域への塩化物濃度条件(Kp≦0.1)、弱分配域への塩化物濃度条件(0.1<Kp<20)、および結合域への塩化物濃度(Kp≧20)とを変動させることによって作動し得る。
【0100】
各域からの全てのウェルのロード段階からの上清をサンプリングして、プロテインA分析に供した。ロードは300ppmのプロテインAを有した。これらのサンプルのアッセイ結果は、表2.1.5に要約される。pHおよび電導度の領域が存在し、ここで、TMAEクロマトグラフィー工程は、樹脂に対して損失タンパク質を制限しながら、ほぼかなりの量のプロテインAの除去をもたらす。この領域は、分配係数値Kpと密に相関しており、特定のpHにも塩化物濃度にも相関しないことが見出された。
【0101】
【表2.1.5】

予想されるKp値は、HTSスクリーニングに対する応答面近似から導かれ、その後、この回帰モデルに基づきKpが予想される。
【0102】
(実験2.2−TMAE−HiCapMおよびMab−IMAを使用するFT条件下でのカラムの実行)
以下の実験を、フロースルー(FT)様式において実施した。ここで、Mab−IMAはカラムとは非常に弱く相互作用するのみである。樹脂1mlあたり109〜275mgの産物チャレンジを用いて、4つの実行を実施した。
【0103】
(TMAE(HiCapM)陰イオン交換クロマトグラフィー)
実験2のシリーズに記載した全てのTMAE(HiCapM)陰イオン交換クロマトグラフィー工程の実行について、以下の条件を使用した(例外は個々の実験の記載中に注記した)。
作動流速 − 150〜300cm/時
平衡化1 − 50mM Tris、2.0M NaCl、pH7.5または8.0(5カラム容量)
平衡化2 − 75mM NaCl、50mM Tris、pH7.5(実行3および実行4は50mM グリシンを含んだ)
ロード後の洗浄 − 75mM NaCl、50mM Tris、pH7.5(実行3および実行4は50mM グリシンを含んだ)
ストリップ緩衝液 − 50mM Tris、2.0M NaCl、pH7.5または8.0(5カラム容量)。
【0104】
MabselectプロテインAのいくつかの実行を、これらの実行のためのロード材料を作製するため、本質的に実験1.2に示されるように実施した。先に記載したプロテインA工程からの部分精製された抗体プールをさらに陰イオン交換カラムにてフロースルー(FT)様式で精製した。カラム径は1.0〜3.2cmであり、カラム高さは7.2〜8.5cmであった。
このカラムを、50mM Tris、2M NaCl(pH7.5)を含む5カラム容量の溶液、その後の別の平衡化工程(50mM Tris、pH7.5の溶液を含む)により平衡化した。次いで、このカラムに、部分精製したプロテインAピーク物を109mg/mL〜275mg/mLの間でロードし、そして産物を、ロードサイクル間のカラム溶出物中および数カラム容量の洗浄画分中に回収した。
【0105】
これらのロード条件は、フロースルー(FT)領域に存在する。実験2.1に記載される高スループットスクリーニングは、pHおよび塩化物濃度のこれらの条件下での分配係数(Kp)の値についての見積もりを提供する。これらの実行を、表2.2.1に列挙される分配係数によって並べた。結合産物を、UV吸収を使用してカラムストリップ中のタンパク質を測定することにって、決定した。結合産物の量を決定するこの方法は、代表的に、洗浄物中の産物の無勾配溶出のため、結合した産物の量を過小に評価する。これらの実験からのプロテインA除去の結果、HCP除去の結果、HMW除去の結果、およびLMW除去の結果もまた、表2.2.1に示される。HCPについては比較的弱くかつ変動性のある除去があり、プロテインAおよび産物異性体(HMW種およびLMW種)については除去が全くない。
【0106】
【表2.2.1】

【0107】
(実験2.3−Mab−IMAに対する弱分配条件下でのカラムの実行)
以下のカラム実験を、HTSスクリーニング(実験2.1)により識別された条件下で弱分配様式において実施した。部分精製したプロテインAプールから、TMAEカラムにて7種の実行を実施した。
【0108】
(TMAE HiCap(M)クロマトグラフィー)
本質的に先に記載した工程と同じプロテインA工程から部分精製した抗体を、以下に記載されるpHおよび塩化物含量の弱分配(WP)条件下でTMAE工程にてさらに精製した。カラム径は0.5〜3.2cmの範囲であり、カラム高さは9.4〜9.5cmであった。
このカラムを、50mM Tris、2M NaCl、pH7.5または8.0を含む5カラム容量の溶液、その後の別の平衡化工程(50mM グリシン、50mM Tris、pH7.5または8.0の溶液を含む)により平衡化した。次いで、このカラムに、部分精製したプロテインAピーク物を124mg/mL〜303mg/mLの間でロードし、そして産物を、ロードサイクル間のカラム溶出物中および数カラム容量の洗浄画分中に回収した。この実験からの結果を表2.3.1に示す。
【0109】
これらのロード条件は、弱分配(WP)領域に存在する。実験2.1に記載される高スループットスクリーニングは、分配係数(Kp)の値についての見積もりを提供する。これらの実行を、表2.3.1に列挙される分配係数によって並べた。結合産物を、UV吸収を使用してカラムストリップ中のタンパク質を測定することによって、決定した。結合産物の量を決定するこの方法は、代表的に、洗浄中の産物の無勾配溶出のため、結合産物の総量を過小評価する。これらの実験からのプロテインAの結果、HCPの結果、HMWの結果、およびLMWの結果もまた、表2.2.1に示される。HCPについては一貫した高い除去があり、プロテインAについては優れた除去があり、そして産物異性体(HMW種およびLMW種)については有益な低減がある。
表2.2.1と表2.3.1に示されるデータの比較は、フロースルー様式の条件下(Kp値0.3以下)でのHCP、プロテインA、HMWおよびLMWの除去が、ロードチャレンジが300mg/mLを超える場合であっても、弱分配条件下(Kp値0.3超)で達成され得る除去よりもずっと低いことを確認する。
【0110】
【表2.3.1】

【0111】
(実験2.4:パイロットスケールおよび臨床製造スケールにおける弱分配カラム実行の性能)
弱分配領域において作動されるMab−IMA精製のTMAEプロセス工程を、パイロットプラントおよび臨床製造までスケールアップした。モノクローナル抗体を含む培養物を、最初に、パイロットにおいて3Lまたは5LのMabSelectカラムを使用して、臨床製造の間では28LのMabSelectカラムを使用して精製した。このMabSelectカラムを、本質的に実験1.2に記載されるように作動した。これらの実行からの中和したプロテインAピーク物プールを、パイロットにおいては1.5LのTMAEカラムにて、臨床製造設備においては7LのTMAEカラムにて、さらに精製した。3つのパイロットでの実行の結果および9つの臨床製造での実行の結果を、それぞれ表2.4.1および表2.4.2にまとめる。工程の性能は実行にわたって一貫しており、HCP、プロテインAについての優れた低減、産物関連のHMW種およびLMW種については良好な除去があった。産物回収率は全ての実行で87%超であった。パイロット実行の間に樹脂に結合した産物の見積もりをカラムストリップ中の産物から取得し、これは樹脂1mLあたり6〜14mgの範囲であった。
【0112】
【表2.4.1】

【0113】
【表2.4.2】

*TMAEのピーク物プール中のHCPレベルおよびプロテインAレベルは、定量限界未満であった。
【0114】
(要約)
HTSはWP作動およびFT作動に対する条件を識別した。FT様式は、HCPおよびLMW種の僅かな低減のみをもたらし、プロテインA残留物もHMW種の低減をもたらさなかった。WP様式における作動は、産物収率を犠牲にすることなく全ての不純物の除去を改善した。このプロセス工程をパイロットプラントにスケールアップし、3回の実行の間に一貫して作動し、HCPおよびプロテインAについては非常に高いLRVがあり、HMW種およびLMW種については良好な低減があった。
【0115】
(シリーズ3−TMAE−HiCapMおよびMab−AABを使用する陰イオン交換)
(実験3.1−WP条件およびFT条件を確立するための高スループットスクリーニング)
実験3.1を、実験1.1に記載されるような手順を使用して実施した。
【0116】
(実験3.2−変動性の分配係数に対応する条件下でのカラム吸収力の実行)
5つのクロマトグラフィー実験を、HTSスクリーニング(実験3.1)により識別される分配係数の範囲に対応する条件下で実施した。TMAEカラムに高ロードチャレンジ(1000g/L超)をロードし、弱分配条件下でのAEX工程の優れた性能を特に強調させた。
【0117】
以下の条件を、シリーズ3において実施されたAEX実行に使用した(例外は個々の実験の記載中に注記される)。
作動流速 − 150〜300cm/時
平衡化1 − 50mM Tris、2.0M NaCl、pH7.5(5カラム容量)
平衡化2 − 記載されるとおりであり、ロードのpHおよび塩化物含量とほぼ同値
ロード後の洗浄 − 記載されるとおりであり、ロードのpHおよび塩化物含量とほぼ同値
ストリップ緩衝液 − 50mM Tris、2.0M NaCl、pH7.5(5カラム容量)。
【0118】
このカラムを、5カラム容量の平衡化1緩衝液、その後5カラム容量の平衡化2の工程によって平衡化した。次いで、適切な平衡化2緩衝液に調節したプロテインAピーク物プール(シリーズ1、実験1.1を参照のこと)を樹脂1mlあたり産物940〜2144mgの間で、このカラムにロードした。
カラム溶出画分を収集し、続いてHCPレベルおよび残留のプロテインAレベルについてアッセイした。これらの実験に使用したロード条件は、フロースルー領域および弱分配(WP)領域におよぶ漸増性の分配係数に対応する。実験3.1に記載される高スループットスクリーニングは、分配係数(Kp)の値の見積もりを提供する。この例における結合産物の値を、ストリップ中に溶出された産物に基づき計算した。これらの実験からの結果を、表3.2.1ならびに図10Aおよび図10Bに示す。
【0119】
【表3.2.1】

*質量の収支計算に基づく。
【0120】
Kp0.1に対応する実行の結合産物値は0に近かった。これは代表的なフロースルー作動にて予想されるとおりである。弱分配領域において実施された実験の結合産物の値は、全ての場合で12.0mg/ml超であった。実際に、Kp7に対応する実行の産物結合値は、71mg/mlほどであった。しかしながら、全ての場合において、ロード溶出物および洗浄画分の組み合わせにおける産物回収率は93%超であった。
HCPおよびプロテインAの除去を、ロードチャレンジの関数として、図10Aおよび図10Bに示す。以前に考察したように、HCP除去は、フロースルーから弱分配へと条件を移動させるにつれて、有意に増加する。フロースルー条件下での作動は、約1.5logのHCPクリアランスを提供し、一方、HCPの対数除去値は、弱分配領域においてKp7で作動した場合、樹脂1mあたり450mgより多いロードチャレンジにおいて3.8logほどであった。弱分配領域におけるKp0.8において、2.8logのHCPクリアランスを樹脂1mあたり1000mg以下のロードチャレンジについて得、そして弱分配領域におけるKp2.7において、3log超のHCPクリアランスを樹脂1mあたり800mgまでのロードチャレンジについて得た。
【0121】
HCPの場合に関して、プロテインAの除去は、条件をフロースルーから弱分配条件へと移動させるにつれて、有意に増加する。図10Aおよび図10Bに示される結果はまた、フロースルー領域から分配領域への作動によりKpを増加させることは、混入のブレークスルーより前に得られるHCPの対数クリアランス値とプロテインA対数クリアランス値との両方、およびブレークスルー点に対応するロードチャレンジを増加させる、という事実を強調する。Kpのさらなる増加は、混入のブレークスルーより前のHCPおよびプロテインAのLRVを増加し続ける。しかしながら、ブレークスルー点は比較的低いロードチャレンジにおいて発生する。なぜならこの時、結合産物がその結合部位について混入物と競合するからである。それにもかかわらず、ここに示される実行についてのカラム吸収力は、高いKpの実行に対してすら非常に高かった。
【0122】
(要約)
この例において、プロテインAおよびHCPの除去が、弱分配条件下でAEX工程を作動することによって、そして樹脂1mあたり1000mgを超えるロードチャレンジにおいて、有意に改善され得る。この例は、弱分配クロマトグラフィーと結合条件下での標準的な作動との間の1つの根本的な差異を強調する。弱分配条件は、産物回収率およびロードチャレンジが依然高いまま、混入物クリアランスが有意に改善される点以下でのみ産物の結合の制限を推し進める。結合条件に対応するKp値は、AEXにおいて20超である;これらの条件下で、産物と混入物との間の競合効果は非常に強力であり、弱分配クロマトグラフィーと比較して低減した吸収力を導く。
【0123】
(シリーズ4−Phenyl ToyopearlおよびMab−AABを使用する疎水性相互作用)
(実験4.1−WP条件およびFT条件を確立するバッチ結合調査)
Tosoh BiosciencesからのPhenyl Toyopearl媒体を用いてMab−AABに対する弱分配条件およびフロースルー条件を識別するため、バッチ結合調査を行った。産物と樹脂との相互作用の強度を調節する塩はNa2SO4であり、これを0.20〜0.90Mまで変動させた。この溶液を、pH7.5に制御するために緩衝化した。45μmのフィルタープレートを使用して、この樹脂と液体とをインキュベートし、そして遠心分離を介して上清をデカントした。8つのTris/Na2SO4緩衝液を、異なる濃度(0.2M〜0.9M)のNa2SO4を用いて作製した。プロテインAクロマトグラフィーにより部分精製されたMab−AABを、終濃度0.87mg/mlにTris/Na2SO4緩衝液中に希釈した。50μlの樹脂を、緩衝液300μlを用いて平衡化し、次いで各Tris/Na2SO4緩衝液条件について上清をデカントした;この平衡化を3回繰り返した。平衡化の後、同じ塩濃度およびpHにおいてデカントした樹脂を産物と混合し、そして穏やかに振盪しながら30分間インキュベートした。ロードチャレンジは、全ての条件に対して樹脂1mあたり産物5.2mgであった。次いでUVプレートをフィルタープレートの底に固定して、遠心分離により上清を収集した。続いて、300μlの50mM Tris(pH7.5)の緩衝液を樹脂に注ぎ、結合産物をストリップした。20分のインキュベーション後、遠心分離を介してストリップ物を別のUVプレートに収集した。各画分中の産物濃度を、UV吸収およびこのMAbについての消衰係数により測定した。この計算を、段階間の持ち越し容量29μl(これは、別の組の実験を介して決定した)について調節した。この実験を、各塩条件下で4回繰り返し、平均の分配係数を報告する。
表4.2.1は、この実験からの分配係数を要約する。最も高濃度のNa2SO4は、強力な産物の結合を引き起こし、一方、0.40〜0.55の範囲の塩濃度は、弱分配条件を示した。
【0124】
(実験4.2−弱分配条件、フロースルー条件および結合条件の下でのカラムの実行(高い産物チャレンジの調査))
カラムの実行を、フロースルー条件、弱分配条件および強結合条件の下で実施した。シリーズ4の実験に記載したPhenyl Toyopearlの疎水性相互作用クロマトグラフィーのすべての実行について、以下の条件を使用した(例外は個々の実験の記載中に注記される)。
カラム寸法:直径0.5cm、床高さ9.5〜10.5cm
平衡化 − 50mM Tris(pH7.5)およびロードとほぼ等価の[Na2SO4
ロード − 以下に記載される[Na2SO4
洗浄 − ロードと等しい[Na2SO4](以下に例外を注記する)
ストリップ − 50mM Tris(pH7.5)。
【0125】
2つの異なるロードを使用した:i)先に記載した実行と本質的に同じプロテインA工程の実行から部分精製された抗体プール、またはii)FT様式作動からのより高純度のTMAE Q Sepharose FF産物プール。
【0126】
(実験4.2.1−ロードとしてプロテインAピーク物プールを使用するカラムの実行)
ここに論じられる実験を実施して、弱分配条件下でのHICの優れた性能を強調する。フロースルー条件、弱分配条件および強結合条件に対応する分配係数の範囲を含む変動性の塩濃度の下で、カラムの実行を実施した。実験4.1に記載されるバッチ結合スクリーニングは、分配係数(Kp)の値についての見積もりを提供する。カラムを、50mM Tris(pH7.5)および適切な特定濃度の[Na2SO4]を含む溶液5カラム容量により平衡化した。最初に、プロテインAのピークを10倍濃縮し、続いて適切な塩濃度で14.77mg/mlに希釈した。ロード材料中の宿主細胞タンパク質(HCP)レベルおよび残留のプロテインAレベルは、それぞれ30911ppmおよび17.1ppmであった。全てのカラムの実行を、樹脂1mあたり100mgのロードチャレンジにて実施した。ロードサイクル分画の間のカラム溶出物中の産物を収集した。産物が流れ抜けた後、ロードと同じ塩濃度の洗浄緩衝液10カラム容量をカラムに注ぎ、続いて50mM Tris(pH7.5)を含むストリップ緩衝液5カラム容量を注いだ。続いて、ロード溶出物および洗浄サンプル中のHCP含量およびプロテインA含量をELISAにより分析した。ロード溶出物と洗浄画分との両方における合わせた不純物レベルを、表4.2.1に報告される。
【0127】
これらの実行を分配係数によって並べた。UV吸収を使用してカラムストリップ中のタンパク質を測定することによって結合産物を決定した。結合産物を決定するこの方法は、代表的に、洗浄間の産物の漸次の脱着のため、ロードの間に結合した産物の量を過小評価する。
【0128】
【表4.2.1】

(分配係数Kpは、50μlの樹脂および300μlの溶液から相容量比6について計算する)
【0129】
表4.2.1に示されるデータから明らかであるように、混入物の低減に関してHIC工程の性能は、フロースルー条件から弱分配条件へと移動させるにつれて、産物回収率は同等のまま、有意に改善する。作動塩濃度のさらなる増加は、強結合条件に対応する分配係数を導く。繰り返すと、表4.2.1に示されるデータから、混入物の低減および産物回収率の両方に関して、弱分配条件から強結合条件へと移動させる場合にHIC工程の性能が低下することが明らかである。従って、この分離の最適な操作ウインドウは、弱分配クロマトグラフィーのものに対応する。弱分配条件下で、HIC工程は、HCPの1logの低減およびプロテインAの3.4倍の低減をもたらす。この例において、弱分配条件下での結合産物レベルは、樹脂1mあたり2.8〜5mgの間であった。
【0130】
(実験4.2.2−ロードとしてQ−Sepharoseのピーク物プールを使用するカラムの実行)
これらの実験の組においてQ Sepharose FFピーク物プールを使用して、最適な弱分配クロマトグラフィー条件下でのHIC工程の性能が、クリーナー供給ストックを用いてさらに改善され得るという事実を強調した。この場合のロード材料は、2880ppmのHCPを含んでおり、そしてQ−Sepharose FFカラムにてプロテインAピーク物プールを精製することによって作製された。2つの実験(一方は弱分配条件下、他方は代表的なフロースルー条件下)を行って、不純物の除去に関してカラムの性能を比較した。Q−Sepharoseのピーク物を、550mMのNa2SO4にて3.27mg/mlに希釈し、そして弱分配条件下での作動のため、樹脂1mあたり100mgのロードチャレンジをカラムにロードした。続いてこのカラムを、ロードと同じ塩濃度を含む緩衝液の10CVにより洗浄し、そして50mM Tris緩衝液(pH7.5)の6CVによりストリップした。第二の実験をフロースルー条件下で行った。ロードを、200のNa2SO4中で3.03mg/mlに調節し、そして樹脂1mあたり90mgのロードチャレンジをカラムにロードした。次いでこのカラムを、ロードと同じ塩濃度を含む緩衝液6CVにより洗浄し、続いて50mM Tris緩衝液(pH7.5)の6CVによりストリップした。両方の実行において、フロースルー画分および洗浄画分を、回収率および不純物の分析のために収集した。これらの実行からの結果を表4.2.2に報告する。
【0131】
【表4.2.2】

【0132】
弱分配条件下での産物回収率の値は、フロースルー作動に匹敵し、そしてまたこれらの実験において使用した供給ストックには依存しなかった。HCPの除去に関するこれらの工程の性能は、フロースルー作動と比較すると、弱分配条件下では有意により高かった。
いずれかの供給ストックを用いたHIC工程にわたって、HCP LRVはフロースルー条件下で同等であった(約0.4〜0.5LRV)。しかしながら、弱分配条件下で実施した実験についてのHCP LRV値は、プロテインAロード材料を用いた1LRVから、プロテインAおよびQ−Sepharose FFカラムを通して精製されたロード材料を用いた2LRV超へと増加した。
【0133】
(要約)
別の様式のクロマトグラフィー(HIC)は、弱分配様式において首尾よく作動することを示された。弱分配条件下でのHIC工程の性能は、産物の回収率およびHCP/プロテインAの除去に関して、フロースルー条件とより強固な結合条件下での作動の両方よりも優れていることを示された。樹脂1mあたり100mgについての高ロードチャレンジの吸収力は、弱分配条件下で良好に保持された。ここで、(ロード濃度が3.27mg/mLであったとしても)3mg/mL超の産物が樹脂に結合していた。最適な弱分配条件に対応する分配係数は、陰イオン交換クロマトグラフィーの分配係数よりも僅かに高いようである。
【0134】
(シリーズ5−セラミックヒドロキシアパタイトI型およびMab−MYAを使用するヒドロキシアパタイト)
(実験5.1−WP条件およびFT条件を確立するための高スループットスクリーニング)
高スループットスクリーニング(HTS)を実施して、セラミックヒドロキシアパタイト媒体を用いたMab−MYAについての弱分配条件およびフロースルー条件を識別した。このスクリーニングは、塩化ナトリウムおよびリン酸ナトリウムの濃度を変動させて、ヒドロキシアパタイト媒体に対するMAB−MYAの結合の程度についての効率を決定した。
【0135】
50μLのセラミックヒドロキシアパタイト媒体を、96ウェルフィルタープレートの30ウェルに添加した。各々のウェルを、100mMのアルギニンを含むpH7.2の100mM HEPES緩衝液中の適切な塩化ナトリウム濃度および適切なリン酸ナトリウム濃度から作製された溶液中で、平衡化した。この溶液中の2つの塩濃度を、表5.1.1および表5.1.2に示す。各々の条件は2連で実施した。これらの各ウェルにおけるMAB−MYAのロードチャレンジは、樹脂1mLあたり5.0mgであった。
【0136】
【表5.1.1】

【0137】
【表5.1.2】

【0138】
HTS実験の第1段階において、表5.1.1および表5.1.2に記載される塩化ナトリウムおよびリン酸ナトリウムの条件で、相容量比6:1(溶液300μL:樹脂50μL)にて、各ウェルを平衡化した。プレートを20分間振盪し、平衡に到達させた。次いで、このフィルタープレートを遠心分離することによって溶液を除いた。この平衡化サイクルを3回繰り返した。
【0139】
第2段階において、各ウェルの樹脂を、適切な塩化ナトリウム濃度およびリン酸ナトリウム濃度にて、容量比6:1(溶液300μL:樹脂50μL)での適切なタンパク質ロードチャレンジに濃縮されたMAb−MYA溶液を用いて、チャレンジした。50mM NaCl、100mM HEPES、100mM アルギニン(pH7.2)中のMab−MYAの7.0mg/mL溶液を、ストック溶液として使用した。ロードしたプレートを20分間振盪し、樹脂と溶液とを平衡化させた。遠心分離によりフィルタープレートから上清を除去し、収集プレートに収集した。各ウェルの上清中のタンパク質濃度を、A280nmにおける吸収により決定した。
【0140】
第3段階において、表5.1.1および表5.1.2に列挙される特定の塩化ナトリウム条件およびリン酸ナトリウム条件の溶液を添加することによって、樹脂を洗浄した。20分間振盪した後、上清を除去した。
第4段階において、100mMのリン酸ナトリウム、1M NaCl(pH7.2)を含む緩衝液を添加して、樹脂に結合した残留タンパク質を除去した。
段階4において溶出された質量および段階2からのタンパク質濃度を使用して、各ウェルについて分配係数を計算し、表5.1.3に示す。
【0141】
【表5.1.3】

【0142】
表5.1.3に示されるように、Kp値を使用して、MAB−MYAが異なる強度でヒドロキシアパタイト媒体に結合する領域を説明し得る。セラミックヒドロキシアパタイト媒体へのMAB−MYAの結合強度を、塩化物濃度およびリン酸濃度の条件をフロースルー区域(Kp≦0.1)、弱分配区域(0.1<Kp<20)、および結合区域(Kp≧20)へと変動させることによって、作動し得る。
【0143】
(実験5.2−WP条件下でのカラムの実行)
ここに論じられる実験を特に実行して、弱分配条件下でのcHA工程の優れた性能を強調した。従って、これらの実験は、HTSスクリーニング(実験5.1)によって識別される分配係数の範囲に対応する条件下で実施した。12種の実行を行い、樹脂1mlあたり100mgの産物ロードチャレンジを用いた。
【0144】
(Mabselectタンパク質Aクロマトグラフィー)
モノクローナル抗体を含む培養物を、MabSelectカラムを使用して精製した。MabselectプロテインAカラムを、50mM Tris/150mM NaCl(pH7.5)の5カラム容量を用いて流速300cm/時にて平衡化した。次いで、樹脂1mlあたり産物約40mgのロードにてこのカラムをロードした。これに、1M アルギニン、50mM Tris(pH7.5)の10CVの洗浄、および10mM Tris、75mM NaCl(pH7.5)を含む5CVの洗浄を続けた。次いで、100mM アルギニン、50mM NaCl(pH3.0)を使用して、カラムを溶出させた。産物のプールを、2M HEPES(pH8.0)を使用してpH7.2に中和した。
【0145】
(セラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)
プロテインA工程から部分精製された抗体プールを、ヒドロキシアパタイトにてさらに精製した。カラム径は0.5cmであり、カラム高さは10cmであった。
実験5のシリーズに記載される全てのヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー工程について、以下の条件を使用した(例外は個々の実験の説明に注記される)。
作動流速 − 150〜240cm/時
平衡化1 300mM リン酸ナトリウム、1.0M NaCl、pH6.8(3カラム容量)
平衡化2 5〜30mM リン酸ナトリウム、50〜760mM NaCl、100mM Arg、100mM HEPES、pH7.2(5カラム容量)
洗浄 5〜30mM リン酸ナトリウム、50〜760mM NaCl、100mM Arg、100mM HEPES、pH7.2(5〜10カラム容量)。
【0146】
このカラムを、5カラム容量の平衡化緩衝液1、その後別の平衡化2の工程により、平衡化した。次いで、このカラムに先の工程からのプロテインAピーク物(適切な平衡化2緩衝液に調節した)を樹脂1mlあたり産物100mgにてロードし、そしてロードサイクルの間のカラム溶出物および数カラム容量の洗浄画分中の産物を、回収した。これらの実験からの結果を表5.2.1および図11に示す。
これらのロード条件は、フロースルー領域、弱分配(WP)領域および結合領域に存在した。実験5.1に記載される高スループットスクリーニングは、塩化物濃度およびリン酸濃度についてのこれらの条件下での、分配係数(Kp)および結合産物(樹脂1mLあたりのmg)の値についての見積もりを提供する。結合産物を、カラムの実行からの産物ブレークスルー容量から決定した。これらの実験からのHCPおよびプロテインAの結果を、表5.2.1および図11に示す。
【0147】
【表5.2.1】

【0148】
表5.2.1および図11に示されるデータから、cHA工程の性能が、フロースルー条件から弱分配条件へと移動させた場合、産物の回収率が同等のまま、混入物の低減に関して有意に改善することが明らかである。分配係数のさらなる増加に対応する条件下での作動(すなわち、結合領域での作動)は、混入物の除去に関してさらなる利益はもたらさない。しかしながら、この工程にわたる産物回収率は、強結合条件下では落ち込み始める。従って、この分離についての最適な操作ウインドウは、弱分配クロマトグラフィーのものと一致する。これらの条件下で、プロテインAの2log超の低減および宿主細胞タンパク質の1.2log超の低減を、樹脂1mlあたり産物100mgのチャレンジにおいて得た。この例において、弱分配条件下での結合産物レベルは、樹脂1mLあたり3.0〜10.2mgであった。
【0149】
(要約)
第三形態のクロマトグラフィー(ヒドロキシアパタイト)が、弱分配様式において首尾よく作動することを示す。プロテインAおよびHCPは、セラミック樹脂に対して産物抗体よりも強固に結合することを示し、そしてWP条件下でより強く保持される。WP領域においてより高いKp値は、いくつかの場合10〜20の間であり、これは依然として良好な回収率(90%超)をもたらす。従って、より低いレベルのKpはより高い回収率をもたらす。
【0150】
この例において、カラムを実行するのに使用される分配係数の選択を主として介して、カラム工程の性能が最適化され得ることを示した。ヒドロキシアパタイトにおける分配係数は、pH、塩(型および濃度)、リン酸および緩衝液組成の複雑な関数である。これら全ての変数は一般に、カラム工程の性能に影響する。ここに示されたアプローチは、カラム性能に対するこれら変数のいずれか1つを変更することの影響に関係する、単純な手段を提供する。この例において示される統合的な「分配係数」アプローチは、以前になされてきたものよりも、このクロマトグラフィー様式のより広い作動空間における作動の可能性を広げる。最適な性能のための弱分配条件は、上記のHTS方法を使用して容易に識別され得る。
【0151】
(シリーズ6−セラミックヒドロキシアパタイトI型およびMab−A5Tを使用するヒドロキシアパタイト)
(実験6.1−WP条件およびFT条件を確立するための高スループットスクリーニング)
高スループットスクリーニング(HTS)を実施して、セラミックヒドロキシアパタイト媒体を用いたMab−A5Tについての弱分配条件およびフロースルー条件を識別した。このスクリーニングは、pH、塩化ナトリウム濃度およびリン酸ナトリウム濃度を変動させて、ヒドロキシアパタイト媒体に対するMAB−A5Tの結合の程度についての効率を決定した。
【0152】
50μLのセラミックヒドロキシアパタイト媒体を、96ウェルフィルタープレートの36ウェルに添加した。各々のウェルを、50mMのアルギニンを含むpH7.0またはpH8.0いずれかの50mM HEPES緩衝液中の適切な塩化ナトリウム濃度および適切なリン酸ナトリウム濃度から作製された溶液中で、平衡化した。この溶液中の2つの塩濃度を、表6.1.1および表6.1.2に示す。1〜3行に示される条件をpH7.0において実施し、4〜6行に示される条件をpH8.0において実施した。これらの各ウェルにおけるMAB−A5Tのロードチャレンジは、樹脂1mLあたり5.0mgであった。
【0153】
【表6.1.1】

【0154】
【表6.1.2】

【0155】
HTS実験の第1段階において、表6.1.1および表6.1.2に記載される塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムおよびpHの条件で、相容量比6:1(溶液300μL:樹脂50μL)にて、各ウェルを平衡化した。プレートを20分間振盪し、平衡に到達させた。次いで、このフィルタープレートを遠心分離することによって溶液を除いた。この平衡化サイクルを3回繰り返した。
第2段階において、各ウェルの樹脂を、適切なpHおよび塩化ナトリウム濃度およびリン酸ナトリウム濃度にて、容量比6:1(溶液300μL:樹脂50μL)での適切なタンパク質ロードチャレンジに濃縮されたMAb−A5T溶液を用いて、チャレンジした。1mM HEPES、100mM NaCl、pH7.0中のMab−A5Tの6.9mg/mL溶液を、ストック溶液として使用した。ロードしたプレートを20分間振盪し、樹脂と溶液とを平衡化させた。遠心分離によりフィルタープレートから上清を除去し、収集プレートに収集した。各ウェルの上清中のタンパク質濃度を、A280nmにおける吸収により決定した。
【0156】
第3段階において、表6.1.1および表6.1.2に列挙される特定の塩化ナトリウム条件、リン酸ナトリウム条件pH条件の溶液を添加することによって、樹脂を洗浄した。20分間振盪した後、上清を除去した。
第4段階において、100mMのリン酸ナトリウム、1M NaCl、pH7.2を含む緩衝液を添加して、樹脂に結合した残留タンパク質を除去した。段階4において溶出された質量および段階2からのタンパク質濃度を使用して、各ウェルについて分配係数を計算し、表6.1.3に示す。
【0157】
【表6.1.3】

【0158】
表6.1.3に示されるように、Kp値を使用して、MAB−A5Tが異なる強度でヒドロキシアパタイト媒体に結合する領域を識別し得る。セラミックヒドロキシアパタイト媒体へのMAB−A5Tの結合強度を、NaCl、リン酸およびpHの条件をフロースルー区域、弱分配区域および結合区域へと変動させることによって、作動し得る。
【0159】
(実験6.2−WP条件下でのカラムの実行)
実験を実施して、弱分配条件下でのcHA工程の優れた性能を強調する。従って、これらの実験は、HTSスクリーニング(実験6.1)によって識別される分配係数の範囲に対応する条件下で実施した。8種の実行を行い、樹脂1mlあたり110mgの産物ロードチャレンジを用いた。
【0160】
(Mabselectタンパク質Aクロマトグラフィー)
モノクローナル抗体を含む培養物を、MabSelectカラムを使用して精製した。MabselectプロテインAカラムを、50mM Tris/150mM NaCl、pH7.5の5カラム容量を用いて流速300cm/時にて平衡化した。次いで、樹脂1mlあたり産物約40mgのロードにてこのカラムをロードした。これに、1M NaCl、50mM Tris(pH7.5)の5CVの洗浄、および10mM Tris、75mM NaCl(pH7.5)を含む5CVの洗浄を続けた。次いで、100mM アルギニン、50mM NaCl(pH3.0)を使用して、カラムを溶出させた。産物のプールを、2M HEPES(pH8.0)を使用してpH7.2に中和した。
【0161】
(セラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)
プロテインA工程から部分精製された抗体プールを、ヒドロキシアパタイトにてさらに精製した。カラム径は0.5cmであり、カラム高さは10cmであった。
実験6のシリーズに記載される全てのヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー工程について、以下の条件を使用した(例外は個々の実験の説明に注記される)。
作動流速 − 150〜240cm/時
平衡化1 300mM リン酸ナトリウム、1.0M NaCl、pH6.8(3カラム容量)
平衡化2 2〜32mM リン酸ナトリウム、50〜400mM NaCl、5mM イミダゾール、50mM グリシン、10mM HEPES、pH7.0(5カラム容量)
洗浄 平衡化2と同じもの。
【0162】
このカラムを、5カラム容量の平衡化1緩衝液、その後別の平衡化2の工程により、平衡化した。次いで、このカラムに先の工程からのプロテインAピーク物(適切な平衡化2緩衝液に調節した)を樹脂1mlあたり産物110mgにてロードし、そしてロードサイクルの間のカラム溶出物および数カラム容量の洗浄画分中の産物を、回収した。これらの実験からの結果を表6.2.1および図12に示す。
【0163】
【表6.2.1】

【0164】
これらの実験における作動条件は、フロースルー領域、弱分配(WP)領域および結合領域に対応する。実験6.1に記載されるHTS実験は、pH、塩化物濃度およびリン酸濃度についてのこれらの条件下での、分配係数(Kp)の値についての見積もりを提供する。表6.2.1における実行は、分配係数によって並べられる。結合産物を、UV吸収を使用してカラムストリップ中のタンパク質を測定することによって決定した。結合産物の量を決定するこの方法は、代表的に、洗浄の間の産物の漸進性の脱着のため、ロードの間に結合した産物の量を過小に評価する。これらの実験からのHCPおよび産物に関連するHMW除去の結果、ならびに産物の回収率を、図12に示す。
【0165】
図12に示されるデータから、フロースルー条件から弱分配条件へと移動させる場合、HCPおよびHMWの低減に関して、回収率を80%超に維持したままでcHA工程の性能が有意に改善することが明らかである。分配係数のさらなる増加に対応する条件下での作動(すなわち、結合領域における作動)は、混入物の除去関してさらなる利益をもたらさない。しかしながら、この工程にわたる産物回収率は、強結合条件下では落ち込み始める。従って、この分離についての最適な操作ウインドウは、弱分配クロマトグラフィーのものと一致する。これらの条件下で、産物関連のHMW種について4分の1への低減、およびHCPについて1.4log超の低減を、樹脂1mlあたり産物110mgのチャレンジにおいて得た。この例において、弱分配条件下での結合産物レベルは、樹脂1mlあたり1.6〜6.7mgであった。
【0166】
(要約)
第二の例がヒドロキシアパタイトにおいて示され、この例において、弱分配クロマトグラフィーにおける作動が、HCP低減およびHMW低減ならびに産物回収率(80%超)に関して改善した性能をもたらすことを示された。先の例のように、この工程の性能は、カラムを実行するために使用される分配係数の選択を主として介して最適化された。ここに示されるアプローチは、カラム性能に対するいくつかの変数(pH、塩、リン酸、イミダゾール、グリシン、HEPESなど)のいずれか1つを変更することの影響に関係する、単純な手段を提供する。最適な性能のための弱分配条件は、この例において示されるHTS方法を使用して、容易に識別され得る。ここに示されるアプローチは、以前になされてきたものよりも、このクロマトグラフィー様式のより広い作動空間における作動の可能性を広げる。この例における最適なWP領域は、分配係数2〜20の間と一致する。
【0167】
(シリーズ7−セラミックヒドロキシアパタイトI型およびMab−MYOを使用するヒドロキシアパタイト)
(実験7.1−WP条件、FT条件および強結合条件を確立するための高スループットスクリーニング)
高スループットスクリーニング(HTS)を実施して、セラミックヒドロキシアパタイト媒体を用いたMab−MYOについてのフロースルー条件、弱分配条件および結合条件を識別した。このスクリーニングは、pH、アルギニン/グリシン、HEPES、リン酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムの濃度を変動させて、ヒドロキシアパタイト媒体に対するMAB−MYOの結合の程度についての効果を決定した。
この例において使用したHTS手順は、シリーズ5およびシリーズ6に記載される手順と同様であり、ここでは論じられない。HTSデータに対する応答表面近似から導かれた予想Kp値を使用して、カラム実験についての特定の条件を選んだ。
【0168】
(実験7.2−WP条件下でのカラムの実行)
ここに論じられる実験を、HTS実験により識別された分配係数の範囲に対応する条件下で実施した。これらの実験を実施して、HCPおよび産物関連のHMW種の除去に関して、弱分配条件下でのcHA工程の優れた性能を特に強調する。樹脂1mlあたり55mgの産物ロードチャレンジを用いて4種の実行を行った。これらの実験において使用したロードチャレンジは、弱分配クロマトグラフィーに対しては低いが、フロースルー条件に対しては代表的である。弱分配クロマトグラフィーに対してロードチャレンジを最適化することを、これらの実験においては企図しなかった。
プロテインA工程から部分精製された抗体プールを、これらの実験において使用した。カラム径は0.5cmであり、カラム高さは10cmであった。
【0169】
実験7のシリーズに記載される全てのヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー工程について、以下の条件を使用した(例外は個々の実験の説明に注記される)。
作動流速 − 150〜240cm/時
平衡化1 300mM リン酸ナトリウム、1.0M NaCl、pH6.8(2〜5カラム容量)
平衡化2 1〜8mM リン酸ナトリウム、50〜1750mM NaCl、12〜50mM Arg、20〜50mM HEPES、pH7.0(5カラム容量)
洗浄 平衡化2と同じもの。
【0170】
このカラムを、2〜5カラム容量の平衡化緩衝液1、その後5カラム容量の平衡化2により、平衡化した。次いで、このカラムにプロテインAピーク物(適切な平衡化2緩衝液に調節した)を樹脂1mlあたり産物55mgにてロードし、そしてロードサイクルの間のカラム溶出物および数カラム容量の洗浄画分中の産物を、回収した。これらの実験からの結果を表7.2.1および図13に示す。
【0171】
【表7.2.1】

*最適なKp条件、図13を参照のこと。
【0172】
これらの実験における作動条件は、フロースルー領域、弱分配(WP)領域および結合領域に対応する。実験7.1に記載されるHTS実験は、pH、塩化物濃度、リン酸濃度、グリシン/アルギニン濃度およびHEPES濃度についてのこれらの条件下での、分配係数(Kp)の値についての見積もりを提供する。表7.2.1における実行は、分配係数によって並べられる。結合産物を、UV吸収を使用してカラムストリップ中のタンパク質を測定することによって決定した。結合産物を決定するこの方法は、代表的に、洗浄の間の産物の漸進性の脱着のため、ロードの間に結合した産物の量を過小に評価する。これらの実験からの、産物関連の高分子量(HMW)除去の結果および産物の回収率をまた、図13に示す。
【0173】
図13に示されるデータから、フロースルー条件から弱分配条件へと移動させる場合、HMWの低減に関して、回収率を80%超に維持したままでcHA工程の性能が有意に改善することが明らかである。分配係数のさらなる増加に対応する条件下での作動(すなわち、結合領域における作動)は、混入物の除去に関してさらなる利益をもたらさない。しかしながら、この工程にわたる産物回収率は、強結合条件下では落ち込み始める。従って、この分離についての最適な操作ウインドウは、弱分配クロマトグラフィーのものと一致する。これらの条件下で、産物関連のHMW種について20倍の低減を得た。この例において、弱分配条件下での結合産物レベルは、樹脂1mlあたり5.1〜9.5mgであった。
【0174】
(要約)
第二の例がヒドロキシアパタイトにおいて示され、この例において、弱分配クロマトグラフィーにおける作動が、HMWの低減に関して、良好な産物回収率(80%超)のまま改善した性能をもたらすことを繰り返し示した。産物関連のHMW種およびHMW種は、産物の抗体よりも強固にセラミック樹脂に結合し、そしてWP条件下でも強いままであった。この例におけるWP領域は、分配係数8〜20の間と一致する。
カラム工程の性能が、カラムを実行するために使用される分配係数の選択を主として介して最適化され得ることを、もう一度示した。ここに示されるアプローチは、カラム性能に対するいくつかの変数(pH、塩、リン酸、アルギニン、HEPESなど)のいずれか1つを変更することの影響に関係する、単純な手段を提供する。最適な性能のための弱分配条件は、この例において示されるHTS方法を使用して、容易に識別され得る。ここに示されるアプローチは、以前になされてきたものよりも、このクロマトグラフィー様式のより広い作動空間における作動の可能性を広げる。
【0175】
また、弱分配クロマトグラフィーの概念が電荷の相互作用単独によっては駆動されない系においてもまた機能することも、注意する価値がある。本出願に記載される一般的なアプローチは、HICおよびヒドロキシアパタイトなどのような複雑な系に首尾よく適用され得る。例えば、pHを作動することに加えて、いくつかの他の変数(例えば、NaCl、リン酸塩、アルギニン/グリシン、緩衝化種)および樹脂の型が全てヒドロキシアパタイトにおいて工程の性能に影響を与え得る。それにもかかわらず、目的の産物単独を用いて単純なバッチの結合実験を実施することによって、WPウインドウを容易に識別し得る。
【0176】
(シリーズ8−プロテインA溶出およびその後のイオン交換工程のための双生イオン緩衝液)
モノクローナル抗体を含む培養物を、MabSelect樹脂を使用して精製した。MabselectプロテインAカラムを、50mM Tris/150mM NaCl、pH7.5の5カラム容量を用いて平衡化した。次いで、このカラムに樹脂1mlあたり約40mgの産物のロードにてロードした。この後、1M BNaCl、50mM Tris、pH7.5の5CVの洗浄、および10mM Tris、75mM NaCl、pH7.5の5CVの洗浄を行った。次いで、30mM HEPES(pH3.1)を使用して、カラムを溶出させた。産物のプールを、1M HEPES(pH8.0)を使用してpH7.2に中和し、HEPES総濃度55mMを生じた。pH7.2において、HEPESは緩衝液に17mMのイオン強度を寄与する。
【0177】
本明細書中に掲載される全ての参考文献は、個々の刊行物または特許または特許出願の各々が、あらゆる目的のためにその全体が参考として援用されることを具体的かつ個別に示される場合と同程度に、その全体が参考としてかつあらゆる目的のため、本明細書中で援用される。参考として援用される刊行物および特許または特許出願が本明細書中に含まれる開示を否定するのであれば、本明細書は、そのような否定材料のいずれにも勝ること、および/または優位性をとることが、意図される。
本明細書および特許請求の範囲において使用される、成分の量、反応条件などを表す全ての数字は、用語「約」によって全ての例が修飾されているように理解されるべきである。従って、反対であると説明しない限り、明細書および添付の特許請求の範囲において記載される数値パラメータは概算値であり、これは、本発明によって獲得することが求められる所望の特性に依存して、変動し得る。特許請求の範囲に対する均等論の原則の適用を制限することを少しも企図しないので、各々の数値パラメータは、有効数字の数および通常の四捨五入アプローチに照らし合わせて考慮されるべきである。
【0178】
当業者に明らかであるように、本発明の多くの改変および変形が、本発明の本質および範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書中に記載される特定の実施形態は、単なる例として提供され、いかようにも限定するものではないように意味される。本明細書および実施例が単なる例示とみなされ、本発明の真の範囲および本質が添付の特許請求の範囲によって示されることが、意図される。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1−A】図1は、(A)分配係数と産物吸着等温線との間の関係、および(B)3つの作動様式(結合−溶出様式、弱分配様式およびフロースルー様式)に関する、樹脂に結合する産物の吸着等温線、を示す。
【図1−B】図1は、(A)分配係数と産物吸着等温線との間の関係、および(B)3つの作動様式(結合−溶出様式、弱分配様式およびフロースルー様式)に関する、樹脂に結合する産物の吸着等温線、を示す。
【図2−A】図2は、(A)イオン交換クロマトグラフィーにおける3つの作動様式(結合−溶出様式、弱分配様式およびフロースルー様式)についての分配領域、および(B)ヒドロキシアパタイトでの3つの作動様式に関する分配領域、を示す。
【図2−B】図2は、(A)イオン交換クロマトグラフィーにおける3つの作動様式(結合−溶出様式、弱分配様式およびフロースルー様式)についての分配領域、および(B)ヒドロキシアパタイトでの3つの作動様式に関する分配領域、を示す。
【図3】図3は、3つの作動様式(結合−溶出様式、弱分配様式、およびフロースルー様式)に関する模式的なクロマトグラムを示す。
【図4】図4は、弱分配クロマトグラムとフロースルークロマトグラムとの間の比較である。
【図5】図5は、(A)代表的な混入物除去プロフィールをKpの関数として、ならびに(B)回収率をロードチャレンジおよびKpの関数として、示す。
【図6】図6は、弱分配クロマトグラフィー工程の開発の代表的な進行を示し、1)Kpを決定するためのハイスループットスクリーン、2)低ロードチャレンジの実行、3)高チャレンジ吸収力の実行、および4)最適な弱分配クロマトグラフィーの実行、を示す。
【0180】
【図7】図7は、実験1.1に記載されるように、低濃度のデータ集合から、Kp 対 pHおよび総塩化物濃度、の等高プロットを示す。
【図8】図8は、実験1.1に記載されるように、プロテインAの除去を分配係数Kpの関数として示す。対数除去値は、Kpと共に増加する。フロースルー様式は、「FT」を付した破線のボックスにより示され、一方、弱分配様式は「WP」を付した破線のボックスにより示される。
【図9】図9は、実験2.1に記載されるように、log10Kp 対 pHおよび総塩化物濃度、の等高プロットを示す。
【図10】図10は、(A)Mab−AABについて、イオン交換クロマトグラフィーにおける宿主細胞タンパク質のブレークスループロフィールをKpの関数として;そして(B)Mab−AABについて、イオン交換クロマトグラフィーにおけるプロテインAのブレークスルーをKpの関数として、示す。
【図11】図11は、Mab−MYAについて、ヒドロキシアパタイトにおける弱分配クロマトグラフィーに関する最適作動ウインドウを示す。この例における最適Kpは、1.5〜20の間である。
【図12】図12は、Mab−A5T4について、ヒドロキシアパタイトにおける弱分配クロマトグラフィーに関する最適作動ウインドウを示す。この例における最適Kpは、2〜20の間である。
【図13】図13は、Mab−MYOについて、ヒドロキシアパタイトにおける弱分配クロマトグラフィーに関する最適作動ウインドウを示す。この例における最適Kpは、5〜20の間である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製産物を回収する方法であって、以下の工程:
媒体1mLあたり少なくとも1mgの産物を媒体に結合させる作動条件において、該ロード流体を該媒体に通過させる工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製産物を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項2】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製産物を回収する方法であって、以下の工程:
少なくとも0.1の分配係数により規定される作動条件において、該ロード流体を媒体に通過させる工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製産物を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項3】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製産物を回収する方法であって、以下の工程:
媒体1mLあたり少なくとも1mg〜約70mgの産物を媒体に結合させる作動条件、および0.3〜20の分配係数によって規定される作動条件において、該ロード流体を該媒体に通過させる工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製産物を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項4】
前記作動条件がスクリーニング工程において識別される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記作動条件がpHレベルおよびイオン強度を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記作動条件が塩濃度をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記作動条件が添加物濃度をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記作動条件が、リン酸濃度、カルシウム濃度、アルギニン濃度、グリシン濃度およびHEPES濃度をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記作動条件がカウンターリガンドレベルおよびpHレベルを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記作動条件がイミダゾール濃度をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記スクリーニング工程がバッチ結合調査を使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記スクリーニング工程がカラム結合調査を使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記カラム結合調査が勾配溶出調査である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記カラム結合調査が無勾配溶出調査である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記作動条件が媒体1mLあたり少なくとも5mgの産物を前記媒体に結合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記作動条件が媒体1mLあたり少なくとも10mgの産物を前記媒体に結合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記作動条件が媒体1mLあたり少なくとも20mgの産物を前記媒体に結合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記作動条件が媒体1mLあたり少なくとも30mgの産物を前記媒体に結合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記作動条件が媒体1mLあたり少なくとも40mgの産物を前記媒体に結合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記作動条件が媒体1mLあたり少なくとも50mgの産物を前記媒体に結合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記作動条件が媒体1mLあたり少なくとも60mgの産物を前記媒体に結合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記分配係数の値が約0.2〜約20.0の範囲にある、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
前記分配係数の値が約0.2〜約10.0の範囲にある、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
前記分配係数の値が約1.0〜約5.0の範囲にある、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記分配係数の値が約0.5〜約5.0の範囲にある、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
前記分配係数の値が約0.5〜約1.5の範囲にある、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
前記産物が、融合タンパク質、Fc含有タンパク質、免疫結合体、サイトカイン、インターロイキン、ホルモン、および治療酵素からなる群より選択されるタンパク質である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記Fc含有タンパク質が抗体である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記媒体が荷電したイオン交換媒体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記荷電したイオン交換媒体が陰イオン交換樹脂である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記荷電したイオン交換媒体が陽イオン交換樹脂である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記媒体が疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記媒体がヒドロキシアパタイト樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記媒体が固定化金属アフィニティークロマトグラフィー樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記1つ以上の不純物が、宿主細胞タンパク質、核酸、産物変異体、内毒素およびプロテインAからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記不純物がウイルスをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記不純物が、前記精製産物中に宿主細胞タンパク質を、産物1mgあたり約100ng以下の宿主細胞タンパク質の濃度で含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記不純物が、前記精製産物中に宿主細胞タンパク質を、産物1mgあたり約250ng以下の宿主細胞タンパク質の濃度で含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記不純物が、前記精製産物中に宿主細胞タンパク質を、産物1mgあたり約500ng以下の宿主細胞タンパク質の濃度で含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記不純物が、前記精製産物中にプロテインAを、産物1mgあたり約100ng以下のプロテインAの濃度で含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記不純物が、前記精製産物中にプロテインAを、産物1mgあたり約50ng以下のプロテインAの濃度で含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記不純物が、前記精製産物中にプロテインAを、産物1mgあたり約10ng以下のプロテインAの濃度で含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記不純物が、前記精製産物中に核酸を、産物1mgあたり約1ng以下の核酸濃度で含む、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
前記精製産物中の産物変異体濃度が約0.5%以下である、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記精製産物中の産物変異体濃度が約2%以下である、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
前記精製産物中の産物変異体濃度が約5%以下である、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
前記精製産物中の産物変異体濃度が約10%以下である、請求項35に記載の方法。
【請求項48】
前記ウイルスの対数除去値が1.0より大きい、請求項36に記載の方法。
【請求項49】
前記ウイルスの対数除去値が2.0より大きい、請求項36に記載の方法。
【請求項50】
前記ウイルスの対数除去値が3.0より大きい、請求項36に記載の方法。
【請求項51】
前記宿主細胞タンパク質の対数除去値が少なくとも1.0である、請求項35に記載の方法。
【請求項52】
前記宿主細胞タンパク質の対数除去値が少なくとも2.0である、請求項35に記載の方法。
【請求項53】
前記宿主細胞タンパク質の対数除去値が少なくとも3.0である、請求項35に記載の方法。
【請求項54】
前記プロテインAの対数除去値が少なくとも1.0である、請求項35に記載の方法。
【請求項55】
前記プロテインAの対数除去値が少なくとも2.0である、請求項35に記載の方法。
【請求項56】
前記プロテインAの対数除去値が少なくとも3.0である、請求項35に記載の方法。
【請求項57】
産物含有流体が、低イオン強度の溶出緩衝液を使用してプロテインAカラムから溶出され;
該産物含有流体のpHおよび電導度が、該産物含有流体のイオン強度20mM以下を生じる中和緩衝液を使用して調節されて、前記ロード流体を生じ;
そしてここで、該ロード流体がイオン交換媒体を通される、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記ロード流体がダイアフィルトレーションの必要なしに陰イオン交換媒体を通される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記産物含有流体のpHおよび電導度が、該産物含有流体のイオン強度40mM以下を生じる中和緩衝液を使用して調節される、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記産物含有流体のpHおよび電導度が、該産物含有流体のイオン強度60mM以下を生じる中和緩衝液を使用して調節される、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記産物含有流体のpHおよび電導度が、該産物含有流体のイオン強度80mM以下を生じる中和緩衝液を使用して調節される、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記溶出緩衝液がpKa2〜5の荷電陰イオン基を有する分子を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
前記溶出緩衝液がpKa6.5〜10の荷電陽イオン基を有する分子を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記溶出緩衝液がpH4〜9の間で双生イオンである分子を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項65】
前記双生イオンが、グリシン;1,4−ピペラジンビス−(エタンスルホン酸);グリシルグリシン;シクロペンタンテトラ−1,2,3,4−カルボン酸;N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸;2−(N−モルホリノ)プロパン−スルホン酸;N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸;N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸;4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸;N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン;グリシンアミド;N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン;N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノプロパンスルホン酸;およびN−グリシル−グリシンからなる群より選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記双生イオンがグリシンを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記ロード流体のイオン強度が100mM以下である、請求項57に記載の方法。
【請求項68】
前記ロード流体のイオン強度が50mM以下である、請求項57に記載の方法。
【請求項69】
前記ロード流体のイオン強度が25mM以下である、請求項57に記載の方法。
【請求項70】
前記ロード流体のイオン強度が10mM以下である、請求項57に記載の方法。
【請求項71】
前記媒体が、宿主細胞タンパク質、核酸、産物変異体、内毒素、およびプロテインAからなる群より選択される不純物の少なくとも90%を除去する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記媒体が、宿主細胞タンパク質、核酸、産物変異体、内毒素、およびプロテインAからなる群より選択される不純物の少なくとも99%を除去する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記媒体が、宿主細胞タンパク質、核酸、産物変異体、内毒素、およびプロテインAからなる群より選択される不純物の少なくとも99.9%を除去する、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記媒体に結合した産物の総質量が、前記媒体に対してロードされた産物の総質量の少なくとも10%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記媒体に結合した産物の総質量が、前記媒体に対してロードされた産物の総質量の少なくとも20%である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記媒体に結合した産物の総質量が、前記媒体に対してロードされた産物の総質量の少なくとも30%である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記媒体への前記産物のローディングが、媒体1mLあたり少なくとも10mgの産物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記媒体への前記産物のローディングが、媒体1mLあたり少なくとも50mgの産物である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記媒体への前記産物のローディングが、媒体1mLあたり少なくとも100mgの産物である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記媒体への前記産物のローディングが、媒体1mLあたり少なくとも500mgの産物である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記媒体への前記産物のローディングが、媒体1mLあたり少なくとも1000mgの産物である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記ロード流体中の産物濃度が、ロード流体1mLあたり少なくとも1mgの産物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記ロード流体中の産物濃度が、ロード流体1mLあたり少なくとも5mgの産物である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記ロード流体中の産物濃度が、ロード流体1mLあたり少なくとも10mgの産物である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記ロード流体中の産物濃度が、ロード流体1mLあたり少なくとも50mgの産物である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記ロード流体中の産物濃度が、ロード流体1mLあたり少なくとも約100mgの産物である、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
請求項1に記載の方法により調製される、精製産物。
【請求項88】
請求項2に記載の方法により調製される、精製産物。
【請求項89】
請求項3に記載の方法により調製される、精製産物。
【請求項90】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製タンパク質を回収する方法であって、以下の工程;
媒体1mLあたり少なくとも1mgのタンパク質を媒体に結合させる作動条件において、該ロード流体を該媒体に通過させる工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製タンパク質を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項91】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製タンパク質を回収する方法であって、以下の工程;
少なくとも0.1の分配係数により規定される作動条件において、該ロード流体を媒体に通過させる工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製タンパク質を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項92】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製タンパク質を回収する方法であって、以下の工程:
媒体1mLあたり少なくとも1mg〜約70mgのタンパク質を媒体に結合させる作動条件、および0.3〜20の分配係数によって規定される作動条件において、該ロード流体を該媒体に通過させる工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製タンパク質を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項93】
請求項90に記載の方法により調製される、精製タンパク質。
【請求項94】
請求項91に記載の方法により調製される、精製タンパク質。
【請求項95】
請求項92に記載の方法により調製される、精製タンパク質。
【請求項96】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程;
媒体1mLあたり少なくとも1mgの抗体を媒体に結合させる作動条件において、該ロード流体を該媒体に通過させる工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項97】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程:
少なくとも0.1の分配係数により規定される作動条件において、該ロード流体を媒体に通過させる工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項98】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程:
媒体1mLあたり少なくとも1mg〜約70mgの抗体を媒体に結合させる作動条件、および0.3〜20の分配係数によって規定される作動条件において、該ロード流体を該媒体に通過させる工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項99】
請求項96に記載の方法により調製される、精製抗体。
【請求項100】
請求項97に記載の方法により調製される、精製抗体。
【請求項101】
請求項98に記載の方法により調製される、精製抗体。
【請求項102】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製産物を回収する方法であって、以下の工程;
媒体1mLあたり少なくとも1mgの産物を媒体に結合させる作動条件において、該ロード流体を該媒体に通過させ;ここで該作動条件がスクリーニング工程において識別される、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製産物を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項103】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製産物を回収する方法であって、以下の工程:
少なくとも0.1の分配係数により規定される作動条件において、該ロード流体を媒体に通過させ;ここで該作動条件がスクリーニング工程において識別される、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製産物を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項104】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製産物を回収する方法であって、以下の工程:
媒体1mLあたり少なくとも1mg〜約70mgの産物を媒体に結合させる作動条件、および0.3〜20の分配係数によって規定される作動条件において、該ロード流体を該媒体に通過させ;ここで該作動条件がスクリーニング工程において識別される、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製産物を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項105】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製タンパク質を回収する方法であって、以下の工程;
媒体1mLあたり少なくとも1mgの抗体を媒体に結合させる作動条件において、該ロード流体を該媒体に通過させ;ここで該作動条件がスクリーニング工程において識別される、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製タンパク質を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項106】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製タンパク質を回収する方法であって、以下の工程:
少なくとも0.1の分配係数により規定される作動条件において、該ロード流体を媒体に通過させ;ここで該作動条件がスクリーニング工程において識別される、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製タンパク質を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項107】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製タンパク質を回収する方法であって、以下の工程:
媒体1mLあたり少なくとも1mg〜約70mgのタンパク質を媒体に結合させる作動条件、および0.3〜20の分配係数によって規定される作動条件において、該ロード流体を該媒体に通過させ;ここで該作動条件がスクリーニング工程において識別される、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製タンパク質を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項108】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程;
媒体1mLあたり少なくとも1mgの抗体を媒体に結合させる作動条件において、該ロード流体を該媒体に通過させ;ここで該作動条件がスクリーニング工程において識別される、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項109】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程:
少なくとも0.1の分配係数により規定される作動条件において、該ロード流体を媒体に通過させ;ここで該作動条件がスクリーニング工程において識別される、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項110】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程:
媒体1mLあたり少なくとも1mg〜約70mgの抗体を媒体に結合させる作動条件、および0.3〜20の分配係数によって規定される作動条件において、該ロード流体を該媒体に通過させ;ここで該作動条件がスクリーニング工程において識別される、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項111】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程;
媒体1mLあたり少なくとも1mgの抗体を荷電したイオン交換媒体に結合させる作動条件において、該ロード流体を該媒体に通過させ;ここで該作動条件がpHレベルおよびイオン強度を含む、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項112】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程:
少なくとも0.1の分配係数により規定される作動条件において、該ロード流体を荷電したイオン交換媒体に通過させ;ここで該作動条件がpHレベルおよびイオン強度を含む、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項113】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程:
媒体1mLあたり少なくとも1mg〜約70mgの抗体を荷電したイオン交換媒体に結合させる作動条件、および0.3〜20の分配係数によって規定される作動条件において、該ロード流体を該媒体に通過させ;ここで該作動条件がpHレベルおよびイオン強度を含む、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項114】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程;
樹脂1mLあたり少なくとも1mgの抗体を疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂に結合させる作動条件において、該ロード流体を該樹脂に通過させ;ここで該作動条件がpHレベル、イオン強度および塩濃度を含む、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項115】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程:
少なくとも0.1の分配係数により規定される作動条件において、該ロード流体を疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂に通過させ;ここで該作動条件がpHレベル、イオン強度および塩濃度を含む、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項116】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程:
媒体1mLあたり少なくとも1mg〜約70mgの抗体を疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂に結合させる作動条件、および0.3〜20の分配係数によって規定される作動条件において、該ロード流体を該樹脂に通過させ;ここで該作動条件がpHレベル、イオン強度および塩濃度を含む、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項117】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程;
樹脂1mLあたり少なくとも1mgの抗体をヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー樹脂に結合させる作動条件において、該ロード流体を該樹脂に通過させ;ここで該作動条件がpHレベル、イオン強度、リン酸濃度、カルシウム濃度、アルギニン濃度、グリシン濃度およびHEPES濃度を含む、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項118】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程:
少なくとも0.1の分配係数により規定される作動条件において、該ロード流体をヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー樹脂に通過させ;ここで該作動条件がpHレベル、イオン強度、リン酸濃度、カルシウム濃度、アルギニン濃度、グリシン濃度およびHEPES濃度を含む、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項119】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程:
媒体1mLあたり少なくとも1mg〜約70mgの抗体をヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー樹脂に結合させる作動条件、および0.3〜20の分配係数によって規定される作動条件において、該ロード流体を該樹脂に通過させ;ここで該作動条件がpHレベル、イオン強度、リン酸濃度、カルシウム濃度、アルギニン濃度、グリシン濃度およびHEPES濃度を含む、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項120】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程;
樹脂1mLあたり少なくとも1mgの抗体を固定化金属アフィニティークロマトグラフィー樹脂に結合させる作動条件において、該ロード流体を該樹脂に通過させ;ここで該作動条件がカウンターリガンドレベルおよびpHレベルを含む、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項121】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程:
少なくとも0.1の分配係数により規定される作動条件において、該ロード流体を固定化金属アフィニティークロマトグラフィー樹脂に通過させ;ここで該作動条件がカウンターリガンドレベルおよびpHレベルを含む、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。
【請求項122】
1つ以上の不純物を含むロード流体から精製抗体を回収する方法であって、以下の工程:
媒体1mLあたり少なくとも1mg〜約70mgの抗体を固定化金属アフィニティークロマトグラフィー樹脂に結合させる作動条件、および0.3〜20の分配係数によって規定される作動条件において、該ロード流体を該樹脂に通過させ;ここで該作動条件がカウンターリガンドレベルおよびpHレベルを含む、工程;ならびに
ロードサイクルの間のカラム溶出物および本質的に無勾配の任意の洗浄物中の該精製抗体を回収する工程;
を包含する、前記方法。

【図1−A】
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【図1−B】
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【図2−A】
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【図2−B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−533473(P2008−533473A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501028(P2008−501028)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/008919
【国際公開番号】WO2006/099308
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】