説明

弱毒寄生虫生ワクチン

本発明は特にアピコンプレックス門及びトリパノソーマ科の生きた弱毒寄生虫と、ワクチン及び前記ワクチンの製造における前記生きた弱毒寄生虫の使用に関する。更に、本発明は前記生きた弱毒寄生虫を含有するワクチンと、前記ワクチンの製造方法に関する。最後に、本発明は特定tetリプレッサー融合蛋白質と、前記tetリプレッサー融合蛋白質を含む本発明の生きた弱毒寄生虫に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアピコンプレックス(Apicomplexa)門及びキネトプラスト(Kinetoplastida)目の生きた弱毒寄生虫、ワクチン及び前記ワクチンの製造における前記生きた弱毒寄生虫の使用、前記生きた弱毒寄生虫を含有するワクチン、前記ワクチンの製造方法、特定tetリプレッサー融合蛋白質並びに前記tetリプレッサー融合蛋白質を含む生きた弱毒寄生虫に関する。
【背景技術】
【0002】
原生生物界内でアピコンプレックス門とキネトプラスト目、より具体的にはトリパノソーマ(Trypanosomatidae)科には数種の有害な病原寄生虫が存在することが知られている。
【0003】
トリパノソーマ科には例えばリーシュマニア(Leishmania)属やトリパノソーマ(Trypanosoma)属に属する寄生虫が存在する。
【0004】
リーシュマニア症はリーシュマニアに起因する種々の症状を表す用語である。この疾患はイヌとヒトで最も一般に発生する。寄生虫はサシチョウバエにより哺乳動物宿主に伝播され、世界の全熱帯及び亜熱帯地域に蔓延している。宿主の体内で寄生虫はマクロファージに取込まれて滞留増殖し、慢性炎症プロセスを生じる。臨床面では、イヌの疾患は体重減少、貧血、発熱及びリンパ節障害を特徴とする。皮膚障害が観察されることも多い。ヒトでは複数のリーシュマニア種が感染性であり、そのうちで最も病原性が高いものはL.infantumであり、脾臓、肝臓及び骨髄を冒し、治療せずにおくと死に至る重症内臓リーシュマニア症(Kala azarとして知られる)を生じる。他の病原性リーシュマニア種としては例えばL.majorやL.mexicanが挙げられる。
【0005】
ヒト及び動物の両者で多種多様の疾患の原因となる複数のトリパノソーマ種が公知である。特に、Trypanosoma bruceiとTrypanosoma cruziの2種のトリパノソーマ種が病原性であるとして知られている。
【0006】
T.brucei種はアフリカ諸国に存在し、ヒトの睡眠障害と動物(ウシ、ウマ、ブタ)のナガナ病の原因となる。T.bruceiはトリポマスティゴート形態を宿主に送達するツェツェバエにより伝播される。
【0007】
T.cruzi種は主に南米に存在し、この寄生虫は宿主範囲が広い(家畜と野生動物を含む)が、ヒトのシャーガス病の原因となることで有名である。この寄生虫は頭部が円錐形の害虫(例えばRhodnius種やTriatoma種)により伝播される。メタサイクリック型トリポマスティゴート段階で宿主に感染し、T.bruceiとは異なり、各種細胞型の宿主細胞質内で増殖する。宿主細胞の破壊後に新規トリポマスティゴート形態が放出され、再び頭部が円錐形の害虫により摂取される。
【0008】
アピコンプレックス門には例えばアイメリア科の寄生虫が存在する。多種多様のアイメリア種が多種多様の哺乳動物と鳥類に存在する。ニワトリの胃腸管に感染する主要な7種としてEimeria tenella、E.necatrix、E brunetti、E.maxima、E.acervulina、E.praecox及びE.mitisが挙げられる。これらのアイメリア種はいずれも家禽のコクシジウム症に関与している。従って、アイメリアは家禽の最重要寄生虫病の原因であり、農家に多大な経済的損失をもたらす。アイメリアは腸の上皮細胞と粘膜下組織に感染して重症出血性腸炎を誘発し、若鶏に高死亡率をもたらす。
【0009】
この疾患は世界中に広がっており、現代の家禽産業で飼育されている家禽を冒す疾患として最高頻度で記録されている。
【0010】
トキソプラズマ、サルコシスティス及びネオスポラを含むサルコシスティス(Sarcocystidae)科にも病原性種が存在することが知られている。
【0011】
トキソプラズマは広範囲の寄生虫感染であり、ほぼ全哺乳動物、特にヤギ、ヒツジ及びブタに加え、ヒトにも存在する。ヒト罹病率は全人口の70%にも及ぶ。感染は寄生虫に汚染した肉を十分に加熱せずに摂取して生じることが多いが、最終宿主であるネコの糞便に放出されたオーシストの摂取により生じることもある。動物又はヒトが妊娠中に感染すると、自然流産や発生中の胎児に先天性トキソプラズマ症を生じる場合がある。その結果、神経後遺症や眼病になる恐れがある。免疫不全患者では慢性致死性感染(脳炎)を生じる恐れがある。
【0012】
ネオスポラ、特にN.caninumはトキソプラズマに非常によく似たコクシジウム寄生虫である。しかし、トキソプラズマとは対照的に、ネオスポラはイヌを最終宿主とする。N.caninumはその中間宿主に流産を誘発し、ウシに重度急性流産を生じることがある。別のネオスポラ種であるN.hughesiはウマでウマ原虫性脊髄脳炎の原因ではないかと推測されている。
【0013】
ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びウマには多数のサルコシスティス種が存在する。経済的観点では、Sarcocystis neuronaがウマの臨床ウマ原虫性脊髄脳炎の最も一般的な原因として認められている。米国ではウマの50%がS.neuronaに血清反応陽性である。
【0014】
プラスモジウムは住血胞子虫類に属し、例えば蚊に伝播されるマラリアの原因として知られている。ヒトでは、4種のプラスモジウム種が報告されており、そのうち、P.falciparumが最も病原性と致死性が高い。400,000,000人が感染していると推定され、毎年2,000,000人が死亡している。初期臨床症状は周期的発熱である。初期感染後、プラスモジウムは赤血球に寄生し、多くの場合には貧血を生じる。寄生された赤血球は内臓の毛細血管で詰まり、組織酸素欠乏を生じる。これは脳の場合に特に深刻であり、多発性点状出血を生じ、浮腫や昏睡をもたらし、死に至る場合もある。プラスモジウム種は主にヒトで報告されているが、他のプラスモジウム種も多様な脊椎動物に感染すると考えられる。
【0015】
バベシアとタイレリアはいずれもピロプラズマに属しており、多数の哺乳動物種に多様な疾患をもたらす寄生虫種を含む。バベシア種はダニにより伝播され、多様な脊椎動物に感染してバベシア症なる疾患を生じる。この疾患は脱力、貧血及び寄生虫症を特徴とし、感染動物の多臓器不全をもたらす。進行段階ではヘモグロビン尿症を生じる。ウシで重要なバベシア種としてはB.bovis、B.divergens、B.major及びB.bigeminaが挙げられる。イヌではB.canis、B.rossi、B.microti及びB.gibsoni種が主にバベシア症の原因となり、一般的な死因である。B.divergensやB.microti等の所定のバベシア種はヒトにも感染することが報告されている。
【0016】
タイレリアはダニにより伝播される疾患であり、反芻動物に感染し、主にウシで問題となる。タイレリアは白血球と赤血球に感染して成長する。疾病は主に白血球内段階に起因する。ウシではT.parvaとT.annulataの2種の主要タイレリア種を特筆すべきである。T.parvaはアフリカ諸国に特有の致命的ウシ疾患である東海岸熱の原因となる。東海岸熱は高熱、リンパ節障害、重度肺水腫及び消耗を特徴とする。T.annulataはウシと水牛に感染し、まずリンパ系の細胞に侵入し、やがて赤血球内形態として末梢血に現れる。T.annulata感染は一般に熱帯タイレリア症と呼ばれる。この疾患はまず高熱とリンパ節膨張が起こり、その後、脱力、脈拍と呼吸速度の増加及び食欲不振を生じる。疾患の最終段階では貧血が観察され、最終的に死に至る。ウマではBabesia equi(Theileria equiと改名)も主要病原体である。
【0017】
当然のことながら、これらの寄生虫に対する種々の防除方法が多年来研究されている。
【0018】
寄生虫感染防除経路の1つは医薬成分の使用であり、例えば現在家禽コクシジウム症の治療に非常に一般的な治療剤である抗コクシジウム剤の長期使用が挙げられる。別の経路は間違いなくワクチン接種である。特に抗生物質の使用を嫌う傾向が高まっていることから、新規で有効なワクチン、特に広範な防御を提供するワクチンが必要とされていることは明白である。
【0019】
現在、寄生虫感染に対するワクチン接種には弱毒生ワクチンと不活化(死滅)ワクチンの2種の異なるアプローチが使用されている。どちらのアプローチにも以下に要約するように利点と欠点がある。
【0020】
弱毒ワクチンの主要な利点は自然感染に非常によく似ているという点であり、免疫系の全段階を活性化し、体液性IgGと局所IgAを誘導することができ、多数の防御抗原に対して免疫応答を誘導し、より長期間の免疫を提供し、交差反応性が高い。更に、低コストで殆どの場合に迅速な免疫が得られる。
【0021】
弱毒ワクチンの欠点は正しい弱毒レベルを見いだすのが困難であり、病原性復帰の可能性があり(これらは重大な欠点である)、被接種者から接触感染し、免疫不全のヒト及び動物では問題がある。
【0022】
不活化ワクチンの利点はブースター投与するならば十分な体液性免疫が得られ、突然変異又は復帰突然変異を示さず(大きな利点)、免疫不全患者でも使用することができ、原則として安全である点である。
【0023】
不活化ワクチンの欠点は(細胞性)免疫を誘発しないことが多く、ブースターが必要であり、局所免疫が得られず(重要)、高価であり、不活化が100%未満の場合には使用が危険であるという点である。
【0024】
しかし、寄生虫に対するワクチンの開発は寄生虫自体が複雑であるという理由にせよ、他の微生物に比較して複雑である。更に、種々の寄生虫はアピコンプレックス門内やトリパノソーマ科内であっても、近縁であるにも拘わらずその遺伝子構成に十分な類似性がないため、これらの全寄生虫に等しく適用可能な共通の弱毒部位又は不活化方法を割り当てることができない。更に、弱毒生ワクチンを製造するには全寄生虫に適切な弱毒ターゲットを配置する必要がある。死滅ワクチンを製造するには全寄生虫についてどの抗原を不活化方法により改変せずにおくべきかを知る必要がある。更に、多くの不活化寄生虫ワクチンは従来有効ではないことが示されている。最後に、感染経路、宿主、宿主内の宿主細胞が多種多様であり、大半の寄生虫に特徴的な生活環の期間で宿主が異なることも多く、更には寄生虫毎に生活環が異なる場合もある。この点もワクチンの開発を困難にしている。
【0025】
従って、寄生虫感染防除用ワクチンの開発は従来困難であり、時間がかかり、あまり成功していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の目的はアピコンプレックス門とトリパノソーマ科の寄生虫に起因する感染の防除用ワクチンとして、死滅ワクチンと弱毒生ワクチンの利点の殆どを兼備すると共にこれらのワクチンの欠点をほぼ完全に解消したワクチンを提供することである。更に、このようなワクチンの製造方法はアピコンプレックス門とトリパノソーマ科の寄生虫に広く適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0027】
アピコンプレックス門とトリパノソーマ科の全寄生虫の生活環には、所定段階が宿主の細胞に感染して分裂を開始する少なくとも1時点が存在する。この感染時点又はその付近でリボソーム合成を停止できるならば寄生虫は宿主細胞に侵入せず、既存リボソームプールを使用して数回分裂することにより自然感染と完全に同様になることが今回意外にも判明した。しかし、最終的に数回分裂後に子孫寄生虫はリボソームの欠乏により死滅する。
【0028】
これは毒性感染が生じたかのように感染後の免疫応答の誘導が最も自然な方法で誘発されるが、天然状態とは異なり、寄生虫は所定時間後に不可避的に消滅するという利点がある。この目的はリボソーム蛋白質遺伝子を誘導性プロモーターの制御下におくことにより達成された。
【0029】
誘導性プロモーターは故意にオン・オフ転換することができるプロモーターである。このようなプロモーターの例は後段に挙げる。
【0030】
安定な完全に機能的なリボソームの合成には原則として全リボソーム蛋白質が必要であるので、原則として各リボソーム蛋白質遺伝子をターゲットとして使用することができる。アピコンプレックス門とトリパノソーマ科の全寄生虫は細胞質リボソームをもち、その殆どはプラスチドリボソーム及び/又はミトコンドリアリボソームをもつ。これらはいずれも寄生虫の正常な発生に必要である。従って、本発明の生きた弱毒寄生虫は、リボソーム蛋白質遺伝子がプラスチド、ミトコンドリア又は細胞質リボソームのいずれに組込むリボソーム蛋白質をコードするかに関係なく、リボソーム蛋白質遺伝子を誘導性プロモーターの制御下におくことにより獲得することができる。
【0031】
リボソーム蛋白質配列は種々の寄生虫間で高度に保存されている。従って、アピコンプレックス門とトリパノソーマ科の寄生虫の各々で類似のリボソーム蛋白質を検出するためには以下に示すリボソーム配列のDNAプローブを使用することができる。更に、NCBI蛋白質データベース(http://www.ncbi.nim.nih.gov)には多種多様の寄生虫の多数のリボソーム蛋白質遺伝子の配列が掲載されている。
【0032】
1個のリボソーム蛋白質が欠失するだけで安定なリボソームの形成が妨げられるという事実は種々の植物、動物及び微生物で立証されている。1例を挙げると、ショウジョウバエでは80個のリボソーム蛋白質のうちの一部の突然変異の結果として例えば細く短い剛毛、遅い成長、ヘテロ接合体における雌準不妊及びホモ接合致死性等の典型的表現型となることが示されている。この表現型はMinute表現型と呼ばれ、例えばリボソーム蛋白質S13及びL9の突然変異で観察されている(Schmidt,A.,Hollmann,M.,Schafer,U.,Mol.Gen Genet.251:381−387(1996),Saeboe−Larssen & S.,Lambertsson,A.,Genetics 143:877−885(1996))。別の例は酵母リボソーム蛋白質S3をコードする酵母のリボソーム蛋白質遺伝子YS3である。その分裂の結果、Saccharomyces cerevisiaeの非生存性半数体胞子を生じる(Finken−Eigen,M.,Domdey,H.,Kohrer,K.,Biochemical and Biophysical research communications 223,397−403(1996))。これらの研究は、単一リボソーム蛋白質をダウンレギュレートするだけでリボソーム複合体の形成及び/又は適正な機能が妨げられることを立証している。
【0033】
リボソーム蛋白質遺伝子の転写制御のために本発明の寄生虫で使用するプロモーターはただ1つの前提条件を満足するだけでよい。即ち、寄生虫の増殖中はプロモーターをオンにしなければならない。これは当然のことながら正常増殖に必要な天然量のリボソームを本発明の寄生虫に与えるために必要である。他方、寄生虫をワクチンとして受容するレシピエント宿主ではプロモーターをオフ転換しなければならない。プロモーターは制御下の遺伝子の転写を開始する場合にオン転換されるとみなされる。本発明では、この遺伝子はリボソーム蛋白質遺伝子である。プロモーターは制御下の遺伝子の転写がオン状態の少なくとも2分の1となる場合にオフ転換されるとみなされる。転写レベルは少なくとも3分の1が好ましく、4分の1がより好ましく、5分の1が更に好ましく、6分の1又は7分の1が更に好ましい。転写の完全な阻害は必要ないことに留意すべきである。低レベルのリボソーム蛋白質転写の結果、寄生虫が消滅するまでの寿命が最終的に延びる。従って、多少長期間にわたって免疫系が活性化される。
【0034】
原則として2つの異なる可能性があり、プロモーターはプロモーターをオフ転換する所定条件が適用されない限りオンであるか、又はプロモーターはプロモーターをオン転換する所定条件が適用されない限りオフである。
【0035】
プロモーターは寄生虫をワクチンとして受容するレシピエント宿主に存在しない所定条件が適用されない限り、オフ転換状態であることが好ましい。
【0036】
必要に応じて2個以上のリボソーム蛋白質遺伝子を誘導性プロモーターの制御下におくことができる。これはプロモーターで使用する誘導性プロモーターを十分にオフ転換できない場合、例えば誘導性プロモーターがリーキープロモーターである場合や、1個の特定リボソーム蛋白質の欠失ではリボソームを脱安定化するのに不十分であるという例外的な場合に好ましい選択である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、例を挙げて本発明を説明する。
【0038】
Toxoplasma gondiiはネコを最終宿主とし、草食動物及び雑食動物と肉食動物を夫々順次中間宿主とする。トキソプラズマの場合には、寄生虫のオーシスト/組織嚢胞段階が最終的にヒトに感染する。ヒト及び温血動物がワクチン接種のターゲット哺乳動物であるので、生きた弱毒寄生虫を必要とする寄生虫段階はトキソプラズマタキゾイトである。従って、本発明によりリボソーム蛋白質遺伝子を誘導性プロモーターの制御下におく寄生虫段階はタキゾイトである。こうして作製した組換え寄生虫(生きた弱毒寄生虫とも言う)はプロモーターをオン転換する条件下で従来通りに増殖させることができる。このような状態では、リボソーム数は天然状態と同一であるか又は近似する。ワクチン目的に十分な寄生虫が増殖したならば、生きた弱毒寄生虫を回収し、ワクチンとして投与する。ワクチン接種する宿主には、プロモーターをオン転換する条件は存在しないので、プロモーターはオフ転換状態のまま維持される。リボソームプールは天然状態と同様であるのでワクチン接種時に寄生虫は野生型寄生虫として挙動する。従って、宿主の感染及び侵入プロセスは自然感染プロセスと全く同様である。寄生虫は宿主で分裂を開始するや否や、リボソームプールもその子孫に分配する。しかし、リボソーム蛋白質遺伝子の(少なくとも)1個のプロモーターは宿主細胞ではオフ転換位置にあるので、リボソームのde novo合成は低下するか又は全く生じない。従って、子孫はゆっくりと消滅する。他方、感染プロセス、従って免疫系の誘発は野生型寄生虫感染の場合と同様に継続している。従って、毒性野生型寄生虫感染が生じたかのように最終的に免疫は増進するが、免疫の誘導に使用される生きた弱毒寄生虫は1又は数回感染後に消滅する。以下、例を挙げて更に詳細に説明する。
【0039】
Neospora caninumの生活環はネオスポラがイヌを最終宿主とし、例えばウシ、イヌ、ヒツジ及びウマの流産の原因となる点を除いてトキソプラズマと同様である。従って、ネオスポラワクチンのアプローチは上記トキソプラズマワクチンのアプローチと密接な関係がある。トキソプラズマでは、本発明によりリボソーム蛋白質遺伝子を誘導性プロモーターの制御下におく寄生虫段階はタキゾイトである。ネオスポラの分子遺伝学ツールの開発は例えばHowe,D.K.and Sibley,L.D.METHODS:13(2):123−33(1997)に記載されている。
【0040】
生きた弱毒アイメリア寄生虫を作製するためには、本発明によりリボソーム蛋白質遺伝子を誘導性プロモーターの制御下におく寄生虫段階はメロゾイトである。しかし、この場合には、ワクチンにはメロゾイトではなく胞子形成オーシストを加える。これは、この寄生虫がニワトリにより通常摂取される形態が胞子形成オーシストであるためである。しかし、本発明により作製した初代組換えメロゾイトを複製させるには、ニワトリの消化管に導入すれば十分である。その後、ニワトリにより排泄される組換えオーシストを単離し、コクシジウム症ワクチン、例えば飲料水投与用経口ワクチンで生きた弱毒寄生虫として直接使用することができる。ニワトリ糞からのオーシストの単離は当分野で周知の標準方法である。アイメリアの遺伝子組換えは例えばKelleher,M.and Tomley,F.M.(Mol.Biochem.Parasitol.97(1−2):21−31(1998))により記載されている。
【0041】
本発明の弱毒生マラリアワクチンは例えばプラスモジウム寄生虫の赤血球期であるプラスモジウム組換えスポロゾイトから出発して作製することができる。スポロゾイトは雌蚊により(ヒト)血流中に注入される寄生虫の段階である。スポロゾイトは注入後2分以内に肝臓に感染し、シゾントとメロゾイトを生成する。メロゾイトは赤血球に感染して複製する。この時点でリボソームプールを多数の子孫寄生虫に分配しなければならず、この時点で子孫寄生虫は消滅する。この時点で既に完全免疫防御系が完全に誘発される。この例からも本発明の組換え寄生虫をベースとするワクチンの利点は明らかであり、生ワクチンの全利点と不活化ワクチンの利点を兼備している。ワクチン接種は組換え赤血球期プラスモジウム寄生虫又は(あまり実用的ではないが)組換えスポロゾイトで実施することが好ましい。プラスモジウムの組換えDNA技術は例えばCrabb,B.S.ら,(Mol.Biochem.Parasitol.90:131−144(1997))とWu,Y.ら,(Proc.Natl.Acad.Sci.,93:1130−1134(1996),及びProc.Natl.Acad.Sci.,92:973−977(1995))により記載されている。
【0042】
本発明の弱毒生タイレリアワクチンも組換えメロゾイトをベースにすることができる。これらのメロゾイトはリンパ球で増殖維持することができる。メロゾイトはリンパ球でリンパ球の分裂と同調して分裂を開始するが、少数の遊離子孫寄生虫は他のリンパ球に感染し、野生型様免疫を誘導するが、他の例と同様にリボソームの欠乏がゆっくりと増すので最終的に子孫は消滅する。タイレリアは主にリンパ細胞で増殖培養することができる。例えばShkapV.ら,Vet.Parasitol.65:11−20(1996)とHulliger,L.J.Protozool.12:649−655(1965)参照。
【0043】
弱毒生バベシアワクチンはメロゾイト及び/又はトロフォゾイトを組換えに使用して作製することができる。これらは赤血球で培養することができる。アプローチ全体はタイレリアについて上述したアプローチと同様である。例えばLevy,M.G and Ristic,M.Science 207:1218−1220(1980)参照。
【0044】
S.suihominisやS.neurona等のサルコシスティス種では、スポロゾイトとメロゾイトの両者が本発明の組換えのターゲットである。この場合も原理は同様であり、組換えスポロゾイトから組換えメロゾイトが得られ、これらのメロゾイトはde novoリボソーム蛋白質合成の不在下でリボソームの欠乏によりゆっくりと消滅する。組換えメロゾイトをワクチンで直接使用することができる。例えばMurphy,A.J.and Mansfield,L.S.J.Parasitol.85:979−981(1999)及びEllison,S.P.ら,Vet.Parasitol.95:251−261(2001)参照。
【0045】
キネトプラスト(Kinetoplastida)目に関しては、Trypanosoma brucei(Wirtz,E.and Clayon,C.,Science 268:1179−1183(1995)及びBiebinger,S.ら,Mol.& Biochem.Parasitol.85:99−112(1997))、Trypanosoma congolese(Inoue N.ら,Mol.& Biochem.Parasitol.120:309−313(2002))及びLeishmania donovani(Yan,S.ら,Mol.& Biochem.Parasitol.112:61−69(2001))についてテトラサイクリンの制御下の遺伝子発現が記載されており、リボソーム蛋白質遺伝子転写を制御するために次のように調節することができる。簡単に言えば、寄生虫のプロサイクリック形態がトランスフェクションのターゲットである。異種遺伝子(この場合には非リボソーム遺伝子)をテトラサイクリン依存的に制御できるようにテトラサイクリンリプレッサーをリボソームRNA反復配列の非転写スペーサーに組込む。 キネトプラスト目の本発明の生きた弱毒寄生虫を構築するには、まず1個以上のテトラサイクリンオペレーターエレメントを含むプロモーターと共にリボソーム蛋白質遺伝子の付加コピーを挿入する。次に、内在遺伝子コピーを寄生虫ゲノムから欠失させる。これは相同組換えにより容易に実施することができ、組換え用マーカーの存在下に実施することが好ましい。これは下記アピコンプレックスの方法と同様である。リーシュマニアとトリパノソーマの大半の遺伝子は同一DNA鎖で隣接遺伝子の大きな(>100〜500kb)ポリシストロンクラスターとして構成されるため、リーシュマニアとトリパノソーマでは内在リボソーム蛋白質遺伝子の直接ターゲティングは実施できない。即ち、1個の遺伝子を阻害すると、下流に配置された全遺伝子の転写が阻害される(Myler,P.J.ら,Med.Microbiol.Immunol.190:9−12(2001))。
【0046】
以上の例は実際に単に例示に過ぎない。これらの例により本発明の範囲を限定するものではない。アピコンプレックス門とトリパノソーマ科の全種寄生虫の例とその生活環はEncyclopaedic Reference of Parasitology,Heinz Mehlhorn,Springer Verlag(2001)(ISBN 3−540−66829−2)に記載されている。従って、当業者は上記例とEncyclopaedic Reference of Parasitologyを使用してアピコンプレックス門とトリパノソーマ科の各寄生虫について本発明の生きた弱毒寄生虫を作製するための出発点としてどの段階が好ましい段階であるかを完全に決定することができる。
【0047】
上記科に属する寄生虫の多くは多種多様の宿主をもつ。単に1例を挙げると、イヌに感染するB.canis、ウマ、ラバ及びロバに感染するB.caballi、ウシ、野生反芻動物及びヒトに感染するB.divergens等のバベシア種が挙げられる。しかし、いずれの場合にも寄生虫の生活環は同様である。従って、例えばバベシアに対する本発明のワクチンが組換えメロゾイトをベースにすることができるという上記記載は全バベシア種に当てはまる。ある科の種々の種の生活環に関する詳細も上記Encyclopaedic Reference of Parasitology,Heinz Mehlhorn,Springer Verlag(2001)(ISBN 3−540−66829−2)に記載されている。
【0048】
従って、本発明の1態様は誘導性プロモーターの制御下にリボソーム蛋白質遺伝子を含むことを特徴とするアピコンプレックス門又はトリパノソーマ科の生きた弱毒寄生虫に関する。
【0049】
誘導性プロモーターの概念は上記に要約した通りである。誘導性プロモーターとは外部因子の作用下にオン・オフ転換することができるプロモーターである。このような転換因子は例えば熱等の物理的因子とすることができ、数十年来当分野で周知の多数の熱ショックプロモーターはいずれも熱により活性化される。このような因子は化学種でもよい。このような多くの因子も当分野で周知である。当分野で公知の誘導性プロモーターは枚挙にいとまがない。少数の例を以下に挙げる。IPTG誘導性Lacプロモーターは恐らく最も多用されている誘導性プロモーターの1種である。他の誘導性プロモーターシステムとしては例えばテトラサイクリンにより制御される転写活性化システム(Baron,U.ら,Oxford University Press 25:2723−2729(1995))やエクジソン誘導性発現システム(Invitrogen)(Yao,T.P.ら,Cell 71:63−72(1992))が挙げられる。
【0050】
原則として、ある条件の存在下にオン転換されるものと、ある条件の存在下にオフ転換されるものの2種の誘導性プロモーターが存在する。この条件は化学物質の存在でもよい。
【0051】
本発明のこの態様の好ましい1形態では、使用するプロモーターは宿主に天然では存在しない条件の存在下にオン転換される。このようなプロモーターを使用すると、寄生虫の天然宿主に投与するや否や自動的にオフ転換位置になる(又は転換する)という利点がある。従って、本発明の生きた弱毒寄生虫を複製させるためには「人工」条件下、即ち天然宿主には存在しない条件下で増殖させることが好ましい。
【0052】
好ましい型の誘導性プロモーターはオペレーター部位と前記オペレーター部位と可逆的に結合することが可能なリプレッサーをベースとする型の誘導性プロモーターである。この場合、リプレッサー蛋白質の結合と分離は上記のように適用される「条件」、即ち熱、化学物質等の有無により制御することができる。
【0053】
本発明の生きた弱毒寄生虫で非常に有効に使用することができる誘導性プロモーター、又はより厳密にはプロモーター/オペレーター/リプレッサー複合体の非常に適切な例はtetプロモーター/tetオペレーター複合体(tetRシステムとも言う)である。
【0054】
tetRシステム自体は既に記載されており、T.brucei(Wirtzら,Science 268:1179−1183(1995),Biebingerら(Mol.Biochem.Paras.85:99−112(1997))やEntamoeba hystolitica(Hamannら,Mol.Biochem.Paras.84:83−91(1997))等の多種多様の原虫寄生虫で機能することが立証されている。tetRシステムはミオシンAの発現を調節するためにトキソプラズマで使用するのにも成功している(Meissner Mら,Nucleic Acids Res.29(22):E115(2001))。更に、テトラサイクリンの制御下の発現もGiardia lambliaやLeishmania donovaniで立証されており、原虫におけるその汎用性が示されている(Yan Sら,Mol Biochem Parasitol.112(1):61−9(2001),Sun,C.H.and Tai,Mol.Biochem.Parasitol.105(1):51−60(2000))。
【0055】
この複合体は以下に簡単に記載し、実施例で更に詳細に説明するように作用する。
【0056】
原則として、リボソーム蛋白質をテトラサイクリンの制御下に発現させるためには、1.テトラサイクリンリプレッサー(tetR)遺伝子の組込みと発現、及び2.転写開始部位の近傍のリボソーム蛋白質遺伝子のプロモーターへの1個以上のテトラサイクリンオペレーターエレメントの組込みの2段階を実施する必要がある。
【0057】
tetリプレッサー遺伝子はtetオペレーター部位と結合して隣接遺伝子の転写を阻止することが可能な蛋白質をコードする遺伝子である。この遺伝子を構成的プロモーター(即ち組換え寄生虫で構成的なプロモーター)の制御下におき、組換えDNA技術を使用して寄生虫に導入する。こうして組換え寄生虫はtetリプレッサー蛋白質を合成する。tetオペレーターはSTSの上流の1個以上のリボソーム蛋白質遺伝子の転写開始部位の近傍、好ましくは内在プロモーターに導入することが好ましい。従って、tetリプレッサー蛋白質はtetオペレーターと結合し、下流のリボソーム蛋白質遺伝子の転写を阻止する。他方、テトラサイクリンの存在下では、リプレッサーはtetオペレーター部位から分離し、下流の遺伝子の転写を可能にする。従って、テトラサイクリンの存在下では、組換え寄生虫は天然状態と同様に複製することができる。上記例の寄生虫の大半を含む多くの寄生虫の場合のように組換え寄生虫をin vitro増殖できる場合には、テトラサイクリンを容易に増殖培地に添加することができる。例えばアイメリア寄生虫の場合のように天然宿主で寄生虫を増殖させる必要がある場合には、テトラサイクリンを宿主(この場合にはニワトリ)に容易に経口又は注射により投与することができる。テトラサイクリンは細胞外及び細胞内寄生虫により取込まれることに留意すべきである。薬剤がリボソーム蛋白質の発現の調節に作用するために宿主細胞の細胞破壊は必要ない。
【0058】
ステップ1におけるテトラサイクリンリプレッサー遺伝子(tetR)の組込みと発現は上記文献に記載されているように実施することができる。テトラサイクリンリプレッサー遺伝子の安定な形質転換と場合により組込みを指示する適切な周知選択マーカーは例えばCAT遺伝子である(Kim,K.ら,Science 262(5135):911− 4(1993))。安定なトランスフェクションの選択に適切な他のマーカーも当分野で公知であり、例えばDHFR−TS(Donald,R.G.and Roos,D.S.,Proc.Natl.Acad.Sci.U S A 90(24):11703−11707(1993),Roos,D.S.ら,METHODS 13:112−122(1997))やHXGPRT(Donald,R.G.ら,J.Biol.Chem.271:14010−14019(1996),Donald,R.G.and Roos,D.S.,Mol.Biochem.Parasitol.91(2):295−305(1998))が挙げられる。
【0059】
Cre−loxシステムも適切な選択システムである(例えばHardy,S.ら,Journ.Virol.71:1842−1849(1997)参照)。
【0060】
tetRシステムを誘導性プロモーターシステムとして使用する場合には、リボソーム蛋白質遺伝子の上流のプロモーターは例えばtetオペレーターを転写開始部位の近傍にクローニングすることにより誘導可能な内在プロモーターとすることができる(tetオペレーター配列と好適挿入部位の詳細については下記参照)。言うまでもなく、リボソーム蛋白質遺伝子の十分に高い転写レベルを提供することが可能な他の任意プロモーターも適切である。
【0061】
別の誘導性プロモーターシステムを使用する場合には、このような誘導性プロモーターを使用して内在プロモーターを欠失させることは容易である。他方、tetオペレーターと同様の原理の別の調節エレメントを使用する場合には、プロモーター自体も内在プロモーターとすることができる。この場合にも言うまでもなく、下流にクローニングしたリボソーム蛋白質遺伝子の十分に高い転写レベルを提供することが可能な他の任意プロモーターも適切である。
【0062】
ステップ2においてSTSの近傍に1個以上のtetO部位(=tetオペレーター部位)を含むリボソーム蛋白質遺伝子で野生型リボソーム蛋白質遺伝子を置換するには選択リボソーム蛋白質遺伝子のプロモーターと遺伝子自体の間にtetオペレーター部位を挿入する必要がある。tetオペレーターはYan Sら(Mol.Biochem.Parasitol.112(1):61−9(2001))、Wirtz,E and Clayon,C.(Science 268(5214):1179−83(1995))及びMeissner Mら(Nucleic Acids Res.29(22):E115(2001))により記載されている。
【0063】
単一tetオペレーター(tetO)部位の配列は5’−TCCCTATCAGTGATAGAGATC−3’である。
【0064】
原則として、選択リボソーム蛋白質遺伝子の手前に単一tetオペレーター部位を挿入すれば十分である。しかし、tetRシステムは全生物システムと同様に厳密に0%から100%活性まで誘導可能ではなく、またその逆も可能ではない。従って、高レベルの制御が必要な場合には、2個以上のオペレーター部位を挿入することが好ましい。
【0065】
tetオペレーターは下流遺伝子を転写するRNAポリメラーゼの結合を妨げる。従って、tetオペレーターは転写開始部位(本明細書ではSTSと言う)に対してヌクレオチド−100〜+3の領域の所定位置に挿入することが好ましい。更に、このようなSTSの決定方法については実施例に詳しく説明する。
【0066】
1個以上のtetオペレーター部位を含む組換え遺伝子で野生型リボソーム蛋白質遺伝子を置換する段階は例えばDonald,R.G.and Roos,D.S.(Mol.Biochem.Parasitol.91(2):295− 305(1998))に記載されているヒットエンドランストラテジーを用いて実施することができる。
【0067】
当業者は陽性及び陰性選択マーカーの他の組み合わせを使用して代替方法を見いだすことができよう。例えばHSVチミジンキナーゼを陰性選択マーカーとして使用することができる。(LeBowitz,J.H.ら,Mol.Biochem.Parasitol.51(2):321−5(1992),Fox,B.A.ら,Mol.Biochem.Parasitol.116(1):85−8(2001))。
【0068】
本発明の組換えトキソプラズマ寄生虫の構築に使用される分子ツールはネオスポラでも同様に良好に利用できる(Howe,D.K.and Sibley,L.D.METHODS 13(2):123−133(1997))。
【0069】
アイメリアでも同一方法を適用することができる。単に1例として、E.tenellaでβ−ガラクトシダーゼを一過的に発現できることがKelleher,M.and Tomley,F.M.により報告されている(Mol Biochem Parasitol.97(1−2):21−31(1998))。
【0070】
タイレリアについては、例えば感染性単核Theileria annulataスポロゾイトを一過的にトランスフェクトする方法がAdamson,R.らにより開発されている(Mol.Biochem.Parasitol.114(1):53−61(2001))。
【0071】
プラスモジウムでは、ピリメタミン耐性を付与するように突然変異させたジヒドロ葉酸レダクターゼ−チミジル酸シンターゼ(dhfr−ts)コーディング配列、又はピューロマイシン−N−アセチルトランスフェラーゼ、又はアスペルギルスのブラスチシジンSデアミナーゼ(BSD)遺伝子、又はトランスポゾンTn5由来ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NEO)遺伝子が選択マーカーとして記載されている(Wu,Y.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.U S A.93(3):1130−4(1996),Wang,P.ら,Mol.Biochem.Parasitol.123(1):1−10(2002),de Koning−Ward,T.F.ら(Mol.Biochem.Parasitol.117(2):155−60.(2001))。
【0072】
バベシアでも同様の選択マーカーを利用できる。
【0073】
従って、当業者はアピコンプレックス(Apicomplexa)門とトリパノソーマ(Trypanosomatidae)科に属する全範囲の寄生虫に本発明を適用することができよう。
【0074】
この態様の好ましい1形態はコクシジウム(Coccidia)、ピロプラズマ(Piroplasmida)又は住血胞子虫(Haemosporida)に属する本発明の生きた弱毒寄生虫に関する。
【0075】
この態様のより好ましい1形態では、生きた弱毒寄生虫はアイメリア(Eimeridiidae)科、クリプトスポリジウム(Cryptosporidiidae)科又はサルコシスティス(Sarcocystidae)科に属する。
【0076】
この態様の更に好ましい1形態では、生きた弱毒寄生虫はアイメリア(Eimeria)属、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)属、トキソプラズマ(Toxoplasma)属、サルコシスティス(Sarcocystis)属又はネオスポラ(Neospora)属に属する。
【0077】
この態様の別のより好ましい形態では、生きた弱毒寄生虫はバベシア(Babesiidae)科又はタイレリア(Theileriidae)科に属する。
【0078】
この態様の更に好ましい1形態では、生きた弱毒寄生虫はバベシア(Babesia)属又はタイレリア(Theileria)属に属する。
【0079】
この態様の別のより好ましい形態では、生きた弱毒寄生虫はプラスモジウム(Plasmodium)属に属する。
【0080】
この態様の更に別のより好ましい形態では、生きた弱毒寄生虫はトリパノソーマ(Trypanosoma)属又はリーシュマニア(Leishmania)属に属する。
【0081】
更に好ましい1形態では、弱毒寄生虫はLeishmania mexicana、L.infantumもしくはL.major種又はTrypanosoma bruceiもしくはT.cruzi種に属する。
【0082】
この態様の別の好ましい1形態では、本発明の生きた弱毒寄生虫のリボソーム蛋白質遺伝子を抗生物質により誘導可能な誘導性プロモーターの制御下におく。
【0083】
これらの抗生物質はテトラサイクリン又は無水テトラサイクリン、又はその誘導体がより好ましい。
【0084】
この態様の別の好ましい形態では、選択リボソーム蛋白質遺伝子はL9、S3、プラスチド−S9又はS13、好ましくはToxoplasma gondiiのL9、S3、プラスチド−S9又はS13をコードする遺伝子である。
【0085】
ラージサブユニットリボソーム蛋白質番号9(L9)をコードする遺伝子のヌクレオチド配列と、プロモーター領域を含む上流配列を配列番号1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
プラスチドスモールサブユニットリボソーム蛋白質番号9(S9)をコードする遺伝子のヌクレオチド配列と、プロモーター領域を含む上流配列を配列番号2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
スモールサブユニットリボソーム蛋白質番号13(S13)をコードする遺伝子のヌクレオチド配列と、プロモーター領域を含む上流配列を配列番号3に示す。
【0090】
【表3】

【0091】
スモールサブユニットリボソーム蛋白質番号3(S3)をコードする遺伝子のヌクレオチド配列と、プロモーター領域を含む上流配列を配列番号4に示す。
【0092】
【表4】

本発明の生きた弱毒寄生虫はワクチンで使用するのに非常に適している。これは、上記に詳細に説明したように、弱毒生ワクチンと不活化ワクチンの利点を兼備し、欠点を解消したためである。従って、本発明の別の態様はワクチンで使用するための本発明の生きた弱毒寄生虫に関する。
【0093】
本発明の更に別の態様は、本発明の生きた弱毒寄生虫と医薬的に許容可能なキャリヤーを含有する寄生虫感染防除用ワクチンに関する。
【0094】
医薬的に許容可能なキャリヤーは例えば滅菌水又は滅菌生理食塩水とすることができる。より複雑な形態では、キャリヤーは例えば当分野で周知の緩衝液(例えばPBS)とすることができる。
【0095】
本発明のワクチンは好ましい形態では更に免疫刺激物質(所謂アジュバント)を添加することができる。アジュバントは一般に非特異的に宿主の免疫応答を刺激する物質を含む。多種多様のアジュバントが当分野で公知である。ウシワクチンで多用されているアジュバントの例はムラミルジペプチド、リポ多糖、数種のグルカン及びグリカン並びにCarbopol(登録商標)(ホモポリマー)である。
【0096】
ワクチンは更に所謂「ビークル」を加えることができる。ビークルは蛋白質が共有結合せずに接着する化合物である。このようなビークルは例えば脂質小胞、ISCOM(登録商標)、デンドロマー、ニオソーム、微粒子、特にキトサン系微粒子、多糖マトリックス等、バイオマイクロカプセル、アルギン酸マイクロカプセル、リポソーム及びマクロゾルであり、いずれも当分野で公知である。ワクチンビークルとしては特に経口ワクチン接種用微粒子、より具体的にはキトサンをベースとする微粒子が非常に適切である。
【0097】
抗原をビークルに部分的に埋込んだこのようなビークルの特殊形が所謂ISCOM(EP 109.942,EP 180.564,EP 242.380)である。
【0098】
更に、ワクチンは1種以上の適切な表面活性化合物又は乳化剤(例えばSpan(登録商標)又はTween(登録商標))を添加することができる。更に、1種以上の免疫刺激剤(例えばインターフェロン等のサイトカイン)もワクチンに添加することができる。
【0099】
上記生きた弱毒組換え寄生虫をベースとするワクチンは感染中に自己増殖するので不活化寄生虫に比較して比較的少量を投与することができる。従って、非常に適切な量は寄生虫10〜10匹/用量である。10匹/用量未満の量ではワクチン接種した全動物に必ずしも十分なレベルの防御を保証できない。10〜10匹/用量でもよいが、経済的観点だけから考えるとあまり実用的ではない。
【0100】
本発明の更に別の態様はアピコンプレックス門又はトリパノソーマ科の寄生虫に起因する感染の防除用ワクチンの製造における本発明の生きた弱毒寄生虫の使用に関する。
【0101】
本発明の更に別の態様は本発明の生きた弱毒寄生虫と医薬的に許容可能なキャリヤーを混合する段階を含む本発明のワクチンの製造方法に関する。
【0102】
本発明のワクチンは例えば皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、又は粘膜表面(例えば経口又は鼻腔内)投与することができる。
【0103】
tetリプレッサー遺伝子は原核起源の遺伝子である。従って、この遺伝子のコドン使用は本発明の生きた弱毒寄生虫等の真核生物では次善の選択である。従って、当業者は真核細胞のコドン使用に対応するようにtetリプレッサー遺伝子のコーディング配列を改変し、合成tetリプレッサー遺伝子を得ようと考えるであろう。これはMeissner Mら(Nucleic Acids Res.29(22):E115(2001))により実施されている。当然のことながら、この合成tetリプレッサー遺伝子は既に真核細胞に完全に適応しているのでそれ以上最適化できないと予想される。更に、この「合成」tetリプレッサー蛋白質は真核細胞で最適なリプレッサー蛋白質であると予想される。この蛋白質は原則として天然蛋白質と同一蛋白質であるので、tetオペレーター部位との相互作用に最適であると定義されている。
【0104】
しかし、天然即ち原核tetリプレッサーのN末端部分に融合した異種遺伝子(の部分)を含む組換え遺伝子によりコードされる融合蛋白質が完全に真核生物に適応する「合成」tetリプレッサー遺伝子によりコードされるtetリプレッサー蛋白質よりも著しく良好にtetオペレーターを調節できることが今回意外にも発見された。
【0105】
従って、このような融合蛋白質は本発明の生きた弱毒寄生虫で使用する選択肢の一つのリプレッサー蛋白質である。tetリプレッサー蛋白質の3D構造研究によると、N末端融合はDNA結合を妨げると予想されていたのでこれは全く予想外の発見であった。意外にも実際にはそうでなかったのである。
【0106】
異種遺伝子はtetリプレッサー蛋白質以外の蛋白質をコードする任意遺伝子である。異種蛋白質はtetリプレッサー蛋白質以外の任意蛋白質である。組換え遺伝子はtetリプレッサー蛋白質のN末端をコードするtetリプレッサー遺伝子の側に融合した異種遺伝子(の部分)を含む任意人工遺伝子である。
【0107】
融合蛋白質はtetオペレーターと相互作用するために核に到達できなければならない。従って、tetリプレッサー融合蛋白質は多数の前提条件を満たす必要があり、モノマーtetリプレッサー融合蛋白質の最終分子量は<60kDでなければならず、融合蛋白質の異種部分はtetリプレッサー蛋白質のN末端側になければならず、融合蛋白質はGPIアンカー、分泌/排泄シグナル及び膜貫通領域を欠損していなければならない。原則として、これらの前提条件を満たし、(その結果として)核にターゲティングすることが可能な全蛋白質又はその部分をtetリプレッサー蛋白質とのN末端融合に使用することができる。
【0108】
融合には全長異種蛋白質を使用する必要はない。このような異種蛋白質の一部を使用すれば十分である。一部とは異種融合蛋白質として少なくとも10アミノ酸、好ましくは少なくとも20アミノ酸のフラグメントとみなされる。この部分は異種蛋白質のN末端側に由来するものが好ましい。選択異種蛋白質は例えば緑色、赤色及び黄色蛍光蛋白質やCAT蛋白質である。
【0109】
従って、本発明の別の態様はtetリプレッサー蛋白質と、tetリプレッサー蛋白質のN末端側に融合した異種蛋白質又はその一部を含むことを特徴とするtetリプレッサー融合蛋白質をコードするDNAフラグメントに関し、融合蛋白質のモノマー形態が<60kDのサイズであり、融合蛋白質はGPIアンカー、分泌/排泄シグナル及び膜貫通領域をもたない。
【0110】
本発明の更に別の態様はtetリプレッサー蛋白質と、tetリプレッサー蛋白質のN末端側に融合した異種蛋白質又はその一部を含むことを特徴とするtetリプレッサー融合蛋白質自体に関し、融合蛋白質のモノマー形態が<60kDのサイズであり、融合蛋白質はGPIアンカー、分泌/排泄シグナル及び膜貫通領域をもたない。
【0111】
「膜貫通領域」なる用語における膜とは細胞の細胞質と外界の間に位置する膜である。これらの膜は特に核と細胞質の間の膜を除外する。本発明のtetリプレッサー融合蛋白質は融合蛋白質を核に特異的に誘導する所定シグナルをもつことが好ましい。これは当然のことながら、tetリプレッサー融合蛋白質は(天然tetリプレッサー遺伝子に要求されるように)その制御下の遺伝子の転写を制御できるようにするためには核に侵入しなければならないからである。
【0112】
その汎用性により、tetRシステムとtetリプレッサー融合蛋白質の組み合わせは本発明の生きた弱毒寄生虫のみならず、当然のことながら他の寄生虫や、他の真核細胞及び生物でも使用することができる。この組み合わせは任意遺伝子の発現を制御するために真核細胞で広く適用可能である。
【0113】
従って、本発明の生きた弱毒寄生虫はtetオペレーターと上記tetリプレッサー融合蛋白質(をコードする遺伝情報)を併有する場合にワクチンの基盤として更に適切である。その結果、リボソーム遺伝子の転写を更に良好に阻害及び誘導することができる。
【0114】
従って、より好ましい1形態では、テトラサイクリン、無水テトラサイクリン又はその誘導体により遺伝子の誘導が制御される本発明の生きた弱毒寄生虫はtetオペレーターと上記tetリプレッサー融合蛋白質をコードする遺伝情報を含む。
【0115】
下記実施例に示すように、上記のようなtetリプレッサー融合蛋白質の予想外の特徴は2個以上のtetオペレーター部位をタンデムクローニングした場合に一層顕著になる。「タンデム」なる用語はtetオペレーター部位を直接相互に隣接させてクローニングしてもよいし、2個以上のtetオペレーター部位の間にスペーサー配列を挟んでクローニングしてもよいという意味で広義に解釈すべきである。上述のように、tetオペレーター部位はSTSに対して−100〜+3の領域にクローニングすることが好ましい。
【0116】
従って、より好ましい形態では、本発明の生きた弱毒寄生虫はtetRシステムと上記のようなtetリプレッサー融合蛋白質に加え、1個でなく2個以上のtetオペレーター部位を含む。
【実施例1】
【0117】
実験中に使用したプライマー:
挿入した制限部位を下線で示す。
【0118】
【表5】


【0119】
TubYFP/TR−sagCAT(9332bp)の構築。
【0120】
プラスミドptubYFP/TR−sagCATを以下のように段階的に構築した。まず、プライマーSAG3FW(#1,配列番号5)及びTUB5RV(#2,配列番号6)を使用してptubYFP/YFP−sagCAT構築物(Llopis,J.ら,PNAS 97(8):4363−4368(2000))からToxoplasma gondiiチューブリンA(tub)プロモーターを増幅することにより構築物ptubCAT/GFPを作製した。PCR産物とプラスミドpdhfrCAT/GFP(Striepen,B.ら,Molecular and Biochemical Parasitology 92:325−338(1998))をHindIIIとBglIIで消化し、相互にライゲーションした。こうしてdhfrプロモーターをtubプロモーターで置換したptubCAT/GFPを得た。得られたプラスミドはBluescript pKS+(登録商標)(Stratagene,La Jolla,CA)をベースとし、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードする配列と緑色蛍光蛋白質をコードする配列の融合体からBglII部位により分離されたα−チューブリンプロモーターを含む。
【0121】
ptubYFP/TR構築物を得るために、CATをコードする配列を黄色蛍光蛋白質(YFP)で置換し、GFPをコードする配列をtetリプレッサーコーディング配列(tetR)で置換した。YFP遺伝子はptubYFP/YFP−sagCAT構築物からBglIIとAvrIIで切り出し、ptubCAT/GFP構築物のBglII−AvrII部位間にライゲーションし、CATをコードする配列に置換した。tetRコーディング配列はプライマーTETAVR5−FW(#3,配列番号7)及びTETPST3−RV(#4,配列番号8)を使用して大腸菌Tn10(Hillen,W.and Berens,C.,Annu.Rev.Microbiol.48:345−369(1994))からPCR増幅し、AvrIIとPstIで消化し、GFPコーディング配列をtetRコーディング配列で置換することにより構築物にライゲーションした。得られたプラスミドをptubYFP/TRと命名した。
【0122】
最後に、CAT選択カセットをtubプロモーターの上流に挿入し、ptubYFP/TR−sagCATプラスミドを得た。これはプライマーT3(#5,配列番号9)及びSAG1/1634RV(#6,配列番号10)を使用して上記ptubYFP/YFP−sagCAT構築物からCATカセットを増幅することにより実施し、HindIIIで消化し、ptubYFP/TR構築物のユニークHindIII部位にライゲーションした。
【0123】
TubYFP/TR−sagCATの構築とその完全配列を図1に示す。
【実施例2】
【0124】
Toxoplasma gondiiのリボソーム蛋白質遺伝子S13の転写開始部位の決定
リボソーム蛋白質遺伝子S13の転写開始部位を決定するために、ベロ細胞で増殖させたToxoplasma gondii RHΔHXGPRTタキゾイトからRNAを単離した。GeneRacer(登録商標)キット(Invitrogen)を使用して全RNAから遺伝子特異的全長cDNAを得た。このキットを使用してRNAオリゴを全長mRNAの両末端にライゲーションした。オリゴdTによる逆転写を実施した後に、RNAオリゴと結合するGeneRacerプライマーを遺伝子特異的プライマーと併用してPCR増幅し、産物を得た。その後、転写開始部位(STS)を決定することができた。これはプライマーREV13A(#7,配列番号11)及びREV13B(#8,配列番号12)を使用してリボソーム蛋白質遺伝子S13について実施した。プライマー#7をGeneRacerプライマーと併用して産物を得た後にプライマー#8をネステッドPCRに使用した。PCR産物は2個の弱いバンドと1個の強いバンドの3個のバンドを示した。最高産物量を示すバンドを単離し、STSを決定し、0位とした。図3A及び3Bには開始コドンに対するSTSの位置関係も示す。
【実施例3】
【0125】
S13/LZ構築物
tetリプレッサーによる誘導発現を試験するために、単一tetO部位の存在下又は不在下でS13プロモーターの制御下にlacZ遺伝子から数種のレポーター構築物を作製した。まず、プラスミドS13/lacZ(最終構築物の構成と配列については図2参照)を作製した後、このプラスミドを使用して以下のようにtetO部位の配列を挿入又は置換した。
【0126】
プライマーS13PROMFUS FW(#9,配列番号13)及びS13PROMFUS RV(#10,配列番号14)を使用してToxoplasma gondii RH/ΔHXGPRT株のゲノムDNAからS13のプロモーター領域をPCR増幅した。プライマーLACZ−AVRII FW(#11,配列番号15)及びLACZ−PSTI RV(#12,配列番号16)を使用してBL21細菌のゲノムDNAからlacZコーディング配列をPCR増幅した。次に、S13 PCR産物をHindIIIとXbaIで消化し、lacZ PCR産物をAvrIIとPstIで消化した。プラスミドptubYFP/YFP−sagCATを使用してptubYFP部分とCAT選択カセットをS13プロモーター部分で置換した。残りのYFP遺伝子をlacZ遺伝子で置換し、S13/lacZプラスミドを得た。S13/lacZプラスミドを使用して部位特異的突然変異誘発により単一tetオペレーター(tetO)部位の配列(5’−TCCCTATCAGTGATAGAGATC−3’)を挿入又は置換した。これはQuickChange(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)を使用して実施した。tetOは決定したSTSの近傍に挿入又は置換した。プライマーS13INSTETO+3 FW(#13,配列番号17)及びS13INSTETO+3 RV(#14,配列番号18)を使用し、STSを0として+3位にtetO部位を挿入した。プライマーS13SUBTETO−23 FW(#15,配列番号19)及びS13SUBTETO−23 RV(#16,配列番号20)を使用し、STSに対して−43位と−23位の間にtetO部位を挿入した。これらの2種の構築物S13instetO+3/lacZ及びS13subtetO−23/lacZとS13/lacZ構築物をToxoplasma gondii株RHΔHXGPRT、REP1/2(Meissner,M.ら,Nucleic Acids Research 29(22),E115(2001))及びtubYFP/TRでtetR及び(無水)テトラサイクリンの不在下又は存在下にCPRGアッセイ(Seeber,F.ら,Gene 169:39−45(1996))により試験した。
【0127】
S13/lacZ構築物を図2に示し、S13/lacZ構築物におけるtetオペレーターの置換又は挿入部位を図3Aに示す。
【0128】
L9/LZ構築物
rp−L9プロモーターへのtetO挿入/置換を図3Bに示す。
【実施例4】
【0129】
pTub−YFP−TR−sagCATを導入した安定なトランスフェクタントトキソプラズマ寄生虫の選択。
【0130】
Roos,D.S.ら(“Methods in Microbial Pathogenesis”In Methods in Cell Biology(1994),D.G.Russell,editor)により記載されているようにトキソプラズマ寄生虫のエレクトロポレーションを実施した。
【0131】
Kim,K.ら(Science 262(5135):911−4(1993))に従って安定なトランスフェクタントの選択を実施した。
【0132】
再びRoos,D.S.ら(1994,前出)に従ってS13/LZ、S13i+3/lacZ及びS13s−23/lacZ構築物のエレクトロポレーションを実施した。
【0133】
実施例4の結果
tub−YFP−TR株にエレクトロポレーションした場合に単一tetオペレーターを含むS13プロモーターにより誘導されるLacZ発現の測定。
【0134】
以下の構築物を試験した:
a)S13/LZ:これはS13リボソーム蛋白質遺伝子プロモーターの制御下にLacZ遺伝子を一過的にトランスフェクトしたtub−YFP−TRトランスフェクタントトキソプラズマ株である。この構築物にはtetオペレーター部位が存在しない。
【0135】
b)S13i+3/lacZ:これはS13リボソーム蛋白質遺伝子プロモーターの制御下にLacZ遺伝子を一過的にトランスフェクトしたtub−YFP−TRトランスフェクタントトキソプラズマ株であり、STSに対して+3位にtetオペレーター部位を挿入した(図3A参照)。
【0136】
c)S13s−23/lacZ:これはS13リボソーム蛋白質遺伝子プロモーターの制御下にLacZ遺伝子を一過的にトランスフェクトしたtub−YFP−TRトランスフェクタントトキソプラズマ株であり、STSに対して−23位にtetオペレーター部位を挿入した(図3A参照)。
【0137】
rp−L9プロモーターにtetOを挿入/置換した同様の構築物を図3Bに示す。
【0138】
図4から明らかなように、tub−YFP−TRは予想通り、無水テトラサイクリンとテトラサイクリンの存在下及び不在下のいずれでも同一レベルのLacZを産生する。
【0139】
構築物S13i+3/lacZのトランスフェクションの結果、無水テトラサイクリンとテトラサイクリンの不在下のLacZ産生量は無水テトラサイクリンとテトラサイクリンの存在下のLacZ産生量の2分の1になる。これはこの株におけるLacZ転写の誘導性を明白に示すものである。
【0140】
構築物S13s−23/lacZのトランスフェクションの結果、無水テトラサイクリンとテトラサイクリンの不在下のLacZ産生量は無水テトラサイクリンとテトラサイクリンの存在下のLacZ産生量の約1/3になる。これもこの株におけるLacZ転写の誘導性を明白に示すものである。
【0141】
これらの結果は更にSTSに対してtetオペレーター部位を配置する部位がさほど重要ではないことを立証している。更に、挿入と置換のどちらでもtetオペレーター部位を導入できることも立証している。
【0142】
単一tetオペレーター又は二重tetオペレーターを含むS13プロモーターにより誘導されるLacZ遺伝子を含む構築物をエレクトロポレーションした一過的トランスフェクタントのCPRGアッセイ。
【0143】
本アッセイでは以下の構築物を比較した:
a)上記S13/LZ
b)上記S13s−23/lacZ(I)(=S13s−23/lacZ)
c)S13s−23/lacZ(II):これは第1のtetオペレーターのすぐ下流に付加tetオペレーター部位をクローニングした以外はS13s−23/lacZと同一である。この構築物はS13s−23/lacZ(I)と同様の方法を使用して構築した。
【0144】
図5から明らかなように、上記合成tetリプレッサー遺伝子(Meissner)と本発明の融合tetリプレッサー遺伝子(tub−YFP−TR)はテトラサイクリンの不在下でLacZの転写を阻害することが可能である。更に注目すべき点として、隣接する2個のtetオペレーター部位を使用すると、単一tetオペレーターを使用した場合に比較して発現阻害は3〜4倍良好になることも明らかである。
【0145】
上記合成tetリプレッサー遺伝子(Meissner)を含む株と、本発明の融合tetリプレッサー遺伝子を含む株におけるLacZ発現を比較する一過的トランスフェクタントのCPRGアッセイ。
【0146】
驚くべきことに図5から明らかなように、本発明の融合tetリプレッサー蛋白質は上記のような合成tetリプレッサー蛋白質(Meissner)で観察される阻害に比較してLacZの転写を著しく良好に阻害する。また、驚くべきことに、本発明の融合tetリプレッサー遺伝子では上記合成tetリプレッサー遺伝子(Meissner)で観察される誘導に比較して著しく良好なLacZ転写の誘導が観察される。
【実施例5】
【0147】
相同組換えとヒットエンドラン突然変異誘発法を使用したリボソーム蛋白質S13遺伝子座へのtetオペレーターエレメントの挿入。
【0148】
特定遺伝子座、この場合にはリボソーム蛋白質S13遺伝子座(S13)のゲノムにtetオペレーター部位を組込むためには相同組換えが必要である。相同組換えには、非相同組換えではなく相同組換えを得るために組込み部位の上流と下流に大きい配列部分(この場合には〜1200bp)が必要である。Donaldら(Mol.Biochem.Paras.91:295−305(1998))により記載されているように、ヒポキサンチン−キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HXGPRT)遺伝子を選択マーカーとして使用して2段階で配列エレメントを特定遺伝子座に組込むことが可能である。
【0149】
詳細に説明すると、HXGPRTカセットに続く組込み部位の近傍にS13遺伝子座の部分を含むトランスフェクトプラスミドは相同ゲノムDNA S13遺伝子座と1回相同組換えし、I又は11型偽二倍体を形成する(図6)。これは文献(Donaldら,1998,前出)に記載されているようにミコフェノール酸とキサンチンによるHXGPRTの正の選択下に実施される。次に、6−チオキサンチンでHXGPRTに対して2回目の相同組換えを選択し、その結果、偽二倍体が減少し、S13遺伝子座に組込まれたtetオペレーター部位の存在下又は不在下でタキゾイトが形成される(〜1:1比)。この方法をヒットエンドラン突然変異誘発と言う。
【0150】
この方法を実施するために、まずDHFRプロモーターの制御下にHXGPRT選択カセットを含むプラスミドを作製した。Toxoplasma gondii RHタキゾイトからRNAを単離した。このRNAを使用し、SUPERSCRIPT(登録商標)II RnaseH−Reverse Transcriptase(Gibco BRL)と標準分子生物学手順(Sambrook & Russell:“Molecular cloning:a laboratory manual”(2001),Cold Spring Harbor Laboratory Press;ISBN:0879695773)を使用してcDNAを作製した。HXGPRTコーディング配列はプライマーHXGPRT/BGLII−FW(配列番号28)及びHXGPRT/PSTI−RV(配列番号29)を使用してT.gondii RHタキゾイトのcDNAから増幅し、スプライス変異体−Iをその後の使用に選択した(Donaldら,J.Biol.Chem.271:14010−14019(1996))。PCR産物とプラスミドpdhfrCAT/GFP(Striepen,B.ら,Mol.Biochem.Paras.92:325−338(1998))の両者をBglIIとPstIで消化した後に、CAT/GFPコーディング配列をHXGPRTコーディング配列で置換し、pminiHXGPRTと呼ぶdhfrHXGPRT構築物を得た。
【0151】
次に、プライマーS13NOTI−FW(配列番号21)及びS13SACI−RV(配列番号22)を使用してtetオペレーター組込み部位(STSに対して−43/−23)の上流(〜1200bp)と下流(〜1200bp)の両者の領域を含むDNA部分をT.gondii RHタキゾイトのゲノムDNAからPCR増幅した。このPCR産物とpminiHXGPRTの両者をNotIとSacIで消化した後にPCR産物をHXGPRTカセットの下流にライゲーションした。最後に、実施例3に記載したような部位特異的突然変異誘発を使用してプライマーS13SUBTETO−23FW(配列番号19)及びプライマーS13SUBTETO−23RV(配列番号20)を使用して置換によりtetオペレーターを挿入し、pS13s−23/pminiHXGPRTを形成した。
【0152】
環状pS13s−23/pminiHXGPRTプラスミドを従来記載されているように(実施例4)RHΔHXGPRTタキゾイトにエレクトロポレーションした。ベロ細胞単層に感染後に、Donaldら(1998,前出)により記載されているようにミコフェノール酸/キサンチン選択を開始した。
【0153】
Kim,K.ら(Science 262(5135):911−4(1993))に従って安定なトランスフェクタントを作製した後に、数個のクローン寄生虫株を採取した。これらのクローンの各々からゲノムDNAを単離した。プライマーM13−REV(配列番号23)、S13CL FW3(配列番号24)、HRCHECKII 5 S13−FW(配列番号25)、HRCHECKII S13−RV(配列番号26)、及びT7(配列番号27)を使用してこれらのゲノムDNAサンプルでPCR分析を実施し、これらのトランスフェクタントに偽二倍体形態が存在するか否かを確認した。4個のクローン(c4,c5,c6及びc9)を詳細に分析し、RHΔHXGPRT株とベロ細胞のゲノムDNAを陰性対照として使用した。各種プライマー組み合わせ(図6)を使用してこれらのサンプルのゲノムDNAをPCR増幅し、これらを配列番号23及び24のプライマーの組み合わせ等の意味で23/24、25/26、23/26、及び25/27と記載する。結果を図7に示す。
【0154】
プライマー組み合わせ23/24は各種クローンにおけるプラスミドの有無を示す。プライマーM13−REV(配列番号23)はトランスフェクトしなかった寄生虫(RHΔHXGPRT)には不在のベクター部分とアニールする。トランスフェクトした全クローンは正しいサイズ(2.8kb)のバンドを示し、安定な全トランスフェクタントがエレクトロポレーション後にプラスミドを取込んでおり、選択中に維持していることが分かった。次に、プライマー組み合わせ25/26はクローンにおける偽二倍体形態の有無を示す。ゲノムではどちらのプライマーもベクターに存在するS13部分の上流(プライマーHRCHECK II 5 S13−FW(配列番号25))又は下流(プライマーHRCHECK II S13−RV(配列番号26))に位置する。偽二倍体が存在しないならば、「野生型」S13状態はPCR増幅され、その結果、クローンc4と野生型寄生虫RHΔHXGPRTで観察できるような〜2.6kbの産物が得られる。これはクローンc4が偽二倍体を含まない安定なトランスフェクタントであることを示し、非相同組換えが生じなかったことを示唆している。クローンc5、c6及びc9には2.6kb PCR産物が存在しないのでこれらのクローンは偽二倍体形態を含むと思われる。更に、クローンc5及びc9には偽二倍体が存在する場合に予想されるような約10kbの産物を観察することができる。クローンc6には10kb産物を検出できなかった。プライマー組み合わせ23/26とプライマー組み合わせ25/27を使用してPCRを実施した処、p13s−23/pminiHXGPRTベクターの両側にS13遺伝子座が存在することが判明した。プライマーM13−REV(配列番号23)はベクター配列内に位置し、プライマーHRCHECK II S13−RV(配列番号26)はベクターの相同S13部分の下流のゲノムに位置する。プライマーT7(配列番号27))はベクター配列内に位置し、プライマーHRCHECK II 5 S13−FW(配列番号25)はベクターの相同S13部分の上流のゲノムに位置する。野生型状態では、プライマー組み合わせ23/27はDNAとアニールしないので、PCR産物を増幅することができない。偽二倍体の場合には、プライマー組み合わせ23/26により4.6kbの産物が得られ、組み合わせ25/27により2.6kbのPCR産物が得られる。図7に示すデータから明らかなように、実際に陽性クローンはどちらの組み合わせでも正しいバンドを示すが、陰性サンプルでは産物は観察されなかった。
【0155】
従って、このPCR分析はヒットエンドラン突然変異誘発法により例えばS13遺伝子座への相同組換えに成功したかどうかを確認するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1A−1】TubYFP/TR−sagCAT構築物を示す。図1Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図1A−2】TubYFP/TR−sagCAT構築物を示す。図1Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図1A−3】TubYFP/TR−sagCAT構築物を示す。図1Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図1A−4】TubYFP/TR−sagCAT構築物を示す。図1Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図1A−5】TubYFP/TR−sagCAT構築物を示す。図1Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図1A−6】TubYFP/TR−sagCAT構築物を示す。図1Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図1A−7】TubYFP/TR−sagCAT構築物を示す。図1Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図1A−8】TubYFP/TR−sagCAT構築物を示す。図1Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図1A−9】TubYFP/TR−sagCAT構築物を示す。図1Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図1B】TubYFP/TR−sagCAT構築物を示す。図1BはTubYFP/TR−sagCAT構築物の該当特徴及び領域を示す。
【図1C】TubYFP/TR−sagCAT構築物を示す。図1CはTubYFP/TR−sagCAT構築物のマップである。
【図2A−1】S13/lacZ構築物を示す。図2Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図2A−2】S13/lacZ構築物を示す。図2Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図2A−3】S13/lacZ構築物を示す。図2Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図2A−4】S13/lacZ構築物を示す。図2Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図2A−5】S13/lacZ構築物を示す。図2Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図2A−6】S13/lacZ構築物を示す。図2Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図2A−7】S13/lacZ構築物を示す。図2Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図2A−8】S13/lacZ構築物を示す。図2Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図2A−9】S13/lacZ構築物を示す。図2Aは完全配列を示し、該当領域を配列の下に示し、制限酵素認識部位を配列の上に示す。
【図2B】S13/lacZ構築物を示す。図2BはS13/lacZ構築物の該当特徴及び領域を示す。
【図2C】S13/lacZ構築物を示す。図2CはS13/lacZ構築物のマップである。
【図3A】図3Aはrp−S13プロモーターにおけるtetO挿入/置換を示す。リボソーム蛋白質S13−プロモーターの部分配列を示し、STSに対する+3挿入部位と−23置換部位も示す。コーディング領域の最初から3個のアミノ酸も示す。
【図3B】図3Bはrp−L9プロモーターにおけるtetO挿入/置換を示す。
【図4】抗生物質の不在下、無水テトラサイクリン(Atc)1μg/mlの存在下又はテトラサイクリン(Tc)1μg/mlの存在下に構築物S13/LZ、S13i+3/lacZ及びS13s−23/IacZをエレクトロポレーションしたtubYFP/TR安定トランスフェクタントによるLacZ発現レベルの測定。ODはLacZ発現レベルの指標である。横軸の表示はタキゾイト1.25×10個(初期作製量の50%)を使用したことを示す。
【図5】構築物S13/LZ、S13s−23/lacZ(I)及びS13s−23/lacZ(II)をエレクトロポレーションした各種株(RH,REP,tubYFP/TR)におけるLacZ発現レベルの測定。RHはtetリプレッサー遺伝子をもたない株を表す。REPは合成tetリプレッサー遺伝子(Meissner)をもつ株を表す。TYTは融合tetリプレッサー遺伝子(tub−YFP−TR)をもつ株を表す。これらの比較実験では等量の細胞を使用した。図に指定するようにテトラサイクリンの不在下又は存在下で実験を行った。
【図6】第1段階のヒットエンドラン突然変異誘発後のI及びII型偽二倍体形態の形成。
【図7】偽二倍体形態の有無を試験するための各種クローンのゲノムDNAでのPCR。
【配列表】
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導性プロモーターの制御下にリボソーム蛋白質遺伝子を含むことを特徴とするアピコンプレックス(Apicomplexa)門又はトリパノソーマ(Trypanosomatidae)科の生きた弱毒寄生虫。
【請求項2】
前記寄生虫がコクシジウム(Coccidia)、ピロプラズマ(Piroplasmida)又は住血胞子虫(Haemosporida)に属することを特徴とする請求項1に記載の生きた弱毒寄生虫。
【請求項3】
前記寄生虫がアイメリア(Eimeridiidae)科、クリプトスポリジウム(Cryptosporidiidae)科又はサルコシスティス(Sarcocystidae)科に属することを特徴とする請求項2に記載の生きた弱毒寄生虫。
【請求項4】
前記寄生虫がアイメリア(Eimeria)属、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)属、トキソプラズマ(Toxoplasma)属、サルコシスティス(Sarcocystis)属又はネオスポラ(Neospora)属に属することを特徴とする請求項3に記載の生きた弱毒寄生虫。
【請求項5】
前記寄生虫がバベシア(Babesiidae)科又はタイレリア(Theileriidae)科に属することを特徴とする請求項2に記載の生きた弱毒寄生虫。
【請求項6】
前記寄生虫がバベシア(Babesia)属又はタイレリア(Theileria)属に属することを特徴とする請求項5に記載の生きた弱毒寄生虫。
【請求項7】
前記寄生虫がプラスモジウム(Plasmodium)属に属することを特徴とする請求項2に記載の生きた弱毒寄生虫。
【請求項8】
前記寄生虫がトリパノソーマ(Trypanosoma)属又はリーシュマニア(Leishmania)属に属することを特徴とする請求項1に記載の生きた弱毒寄生虫。
【請求項9】
前記誘導性プロモーターがオペレーター部位と前記オペレーター部位と可逆的に結合することが可能なリプレッサー蛋白質をベースとすることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の生きた弱毒寄生虫。
【請求項10】
前記誘導性プロモーターが抗生物質により誘導可能であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の生きた弱毒寄生虫。
【請求項11】
前記誘導性プロモーターがテトラサイクリン又は無水テトラサイクリン又はその誘導体により誘導可能であることを特徴とする請求項10に記載の生きた弱毒寄生虫。
【請求項12】
tetRシステムを誘導性プロモーターとして使用することを特徴とする請求項11に記載の生きた弱毒寄生虫。
【請求項13】
前記リボソーム蛋白質遺伝子がL9、S3、プラスチド−S9又はS13、好ましくはトキソプラズマ・ゴンジイ(Toxoplasma gondii)のL9、S3、プラスチド−S9又はS13をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の生きた弱毒寄生虫。
【請求項14】
ワクチンで使用するための請求項1から13のいずれか一項に記載の生きた弱毒寄生虫。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の生きた弱毒寄生虫と医薬的に許容可能なキャリヤーを含有することを特徴とする寄生虫感染防除用ワクチン。
【請求項16】
アピコンプレックス門又はトリパノソーマ科の寄生虫に起因する感染の防除用ワクチンの製造における請求項1から13のいずれか一項に記載の生きた弱毒寄生虫の使用。
【請求項17】
請求項1から13のいずれか一項に記載の生きた弱毒寄生虫と医薬的に許容可能なキャリヤーを混合する段階を含む請求項15に記載のワクチンの製造方法。
【請求項18】
tetリプレッサー蛋白質と異種蛋白質又はその一部を含むtetリプレッサー融合蛋白質をコードするDNAフラグメントであって、前記異種蛋白質又はその一部がtetリプレッサー蛋白質のN末端側に融合しており、前記融合蛋白質のモノマー形態が分子量60kD未満であり且つGPIアンカー、分泌/排泄シグナル及び膜貫通領域をもたない前記DNAフラグメント。
【請求項19】
前記寄生虫がtetオペレーター部位と請求項18に記載のtetリプレッサー融合蛋白質をコードするDNAフラグメントを含むことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の生きた弱毒寄生虫。
【請求項20】
前記寄生虫が2個以上のtetオペレーター部位を含むことを特徴とする請求項19に記載の生きた弱毒寄生虫。

【図1A−1】
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【図1A−2】
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【図1A−3】
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【図1A−4】
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【図1A−5】
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【図1A−6】
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【図1A−7】
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【図1A−8】
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【図1A−9】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A−1】
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【図2A−2】
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【図2A−3】
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【図2A−4】
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【図2A−5】
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【図2A−6】
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【図2A−7】
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【図2A−8】
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【図2A−9】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−518184(P2006−518184A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537149(P2004−537149)
【出願日】平成15年9月19日(2003.9.19)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010696
【国際公開番号】WO2004/026903
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(394010986)アクゾ・ノベル・エヌ・ベー (31)
【Fターム(参考)】