説明

強化ハロブチルエラストマーコンパウンドの製造方法

【課題】牽引力、転がり抵抗等に優れた特性を有する充填剤入りハロブチルエラストマーコンパウンドを得ること。
【解決手段】本発明はハロブチルエラストマー;少なくとも1種の他のエラストマー;無機充填剤;及びシラン化合物と、1つ以上のヒドロキシル基及び塩基性アミン含有官能基を有する化合物から誘導された添加剤との混合改質剤系;を含むハロブチルエラストマーコンパウンドに関する。ハロブチルエラストマーがクロロブチルエラストマー又はブロモブチルエラストマーから選ばれ、他のエラストマーがBR、SBR、NR又はそれらの混合物から選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ハロブチルエラストマー;少なくとも1種の他のエラストマー;無機充填剤;及びシラン化合物と、1つ以上のヒドロキシル基及び塩基性アミン含有官能基を有する化合物から誘導された添加剤との混合改質剤系を含むハロブチルエラストマーコンパウンドに関する。
また本発明は、ハロブチルエラストマー;少なくとも1種の他のエラストマー;無機充填剤;及びシラン化合物と、1つ以上のヒドロキシル基及び塩基性アミン含有官能基を有する化合物から誘導された添加剤とを含有する混合改質剤系を添加混合する、強化エラストマーの製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
イソブチレンとイソプレンとのランダム共重合体であるブチルゴム(IIR)は、周知のように、優れた熱安定性、耐オゾン性及び所望の制動(dampening)特性を有する。IIRは、ベヒクルとして塩化メチレンと、重合開始剤としてフリーデルクラフト触媒を用いるスラリー法で工業的に製造される。塩化メチレンは、イソブチレン及びイソプレンのコモノマーと同様、比較的安価な触媒であるフリーデルクラフト触媒を溶解できる利点がある。更に、ブチルゴム重合体は、塩化メチレンに不溶であり、溶液から微細粒子として沈殿させる。重合は一般に約−90〜−100℃の温度で行われる。USP 2,356,128及びUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry,A23巻,1993年,288〜295頁参照。このように低い重合温度は、ゴムを利用する際、十分な高分子量を得るために必要である。
【0003】
IIRの第一の主な用途は、タイヤチューブである。主鎖の飽和レベルが低いにも拘わらず(約0.8〜1.8モル%)、IIRはチューブ用として十分な加硫活性を有する。タイヤ内張りの発展により、IIRの硬化反応性をブタジエンゴム(BR)又はスチレン−ブタジエンゴム(SBR)のような従来のジエンベースのエラストマーで通常、見られるレベルまで高めることが必要となった。この目的のため、ブチルゴムのハロゲン化グレードが開発された。有機IIR溶液を元素状塩素又は臭素で処理すると、クロロブチルゴム(CIIR)やブロモブチルゴム(BIIR)のようなハロブチルゴム(HIIR)が単離される。これらの材料は、他のゴムコンパウンドと共に同時(co)加硫を起こす重合体主鎖に平行する反応性ハロゲン化アリル(allylic halide)の存在により特徴付けられる。
【0004】
自動車による温室ガス放出が次第に綿密に検査されてくるのに従って、業界ではタイヤの重量を低下させ、転がり抵抗を向上する動きが出てきた。タイヤトレッドは、タイヤカーカスに対し加硫されるので、ハロブチルゴムコンパウンドの硬化反応性については、非ハロゲン化ブチルよりも優先される。タイヤトレッドに使用されるハロブチルゴムコンパウンドは、転がり抵抗が低く、かつ耐摩耗性が高いことが望ましい。硬質ゴムコンパウンドでは、これら両特性を付与することは可能であるが、牽引力に対しては、悪影響を与える。したがって、タイヤ用の好ましいブチルゴム含有コンパウンドは、低い転がり抵抗、現存のトレッドコンパウンドと少なくとも同等の耐摩耗性、及び湿潤牽引力を組合わせた動的特性を示すものである。しかし、所望の特性を得ることは、事実上困難であることが判り、現在、市販のハロブチルトレッドコンパウンドには存在しない。
【0005】
DMAEのような添加剤を使用して製造したBIIRベースのトレッド配合物は、特定の動的特性が向上することが当業界で知られている。Resendes,R;Hopkins,W;Niziolek,T;Braubach,W“Cost Effective Modifiers for the Preparation of BIIR Based Tire Tread Formulations”,Rubber World,September,2003,pp.46−51。しかし、シランをDMAEと併用することは、大きく探究されていない状態であり、トレッド配合物に望ましい動的特性の組合わせを付与できる相乗効果があるかどうか不明である。
【特許文献1】USP 2,356,128
【特許文献2】USP 4,704,414
【特許文献3】ヨーロッパ特許出願公開0,670,347 A1
【特許文献4】ドイツ特許出願公開4435311 A1
【非特許文献1】Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry,A23巻,1993年,288〜295頁
【非特許文献2】Resendes,R;Hopkins,W;Niziolek,T;Braubach,W“Cost Effective Modifiers for the Preparation of BIIR Based Tire Tread Formulations”,Rubber World,September,2003,pp.46−51
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明はブロモブチルエラストマー(BIIR)のような充填剤入りハロブチルエラストマーに関する。配合中、混合改質剤を用いると、相乗効果がハロブチルエラストマーコンパウンドに生じ、予期しない優れた特性を有するコンパウンドが得られることが意外にも発見された。
本発明は、ブチルエラストマー;少なくとも1種の他のエラストマー;無機充填剤;及びシラン化合物と、1つ以上のヒドロキシル基及び塩基性アミン含有官能基を有する化合物から誘導された添加剤との混合改質剤系;を含むハロブチルエラストマーコンパウンドに関する。
【0007】
また本発明は、ハロブチルエラストマー;少なくとも1種の他のエラストマー;充填剤;及びシラン化合物と、1つ以上のヒドロキシル基及び塩基性アミン含有官能基を有する化合物から誘導された添加剤との混合改質剤系;を添加混合することを特徴とする強化エラストマーの製造方法にも関する。
【0008】
図面の簡単な説明
図1は、充填剤入りブチルエラストマーコンパウンドのtanδ応答対温度を示す。
図2は、充填剤入りブチルエラストマーコンパウンドのtanδ応答対温度を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の詳細な説明
ここで使用する語句“ハロブチルエラストマー”とは、塩素化又は臭素化ブチルエラストマーを言う。臭素化ブチルエラストマーが好ましく、本発明では、このようなブロモブチルエラストマーを一例として説明する。しかし、本発明は塩素化ブチルエラストマーまで拡がるものと理解すべきである。
【0010】
本発明で使用するのに好適なハロブチルエラストマーとしては、限定されるものではないが、臭素化ブチルエラストマーがある。このようなエラストマーは、ブチルゴム(イソオレフィン、通常、イソブチレンと、通常、C〜C共役ジオレフィンであるコモノマー、好ましくはイソプレンとの共重合体)の臭素化により得られ、臭素化イソブテン−イソプレン共重合体(BIIR)であってよい。共役ジオレフィン以外のコモノマーも使用でき、例えばC〜C−アルキル置換スチレンのようなアルキル置換ビニル芳香族コモノマーが挙げられる。市販品として入手できるこの種のエラストマーの一例は、コモノマーがp−メチルスチレンである臭素化イソブチレンメチルスチレン共重合体(BIMS)である。
【0011】
臭素化ブチルエラストマーは、通常、ジオレフィン、好ましくはイソプレンから誘導された繰り返し単位を0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の範囲及びイソオレフィン、好ましくはイソブチレンから誘導された繰り返し単位を90〜99.9重量%、好ましくは95〜99.5重量%の範囲(重合体の炭化水素含有量に対し)及び臭素を0.1〜9重量%、好ましくは0.75〜2.3重量%、更に好ましくは0.75〜2.3重量%の範囲(ブロモブチル重合体に対し)含有する。通常のブロモブチル重合体の分子量は、DIN 53523(ML 1+8(125℃で))によるムーニー粘度として、25〜60の範囲である。
【0012】
臭素化ブチルエラストマーには、安定剤を添加してよい。好適な安定剤としては、ステアリン酸カルシウム及びエポキシ化大豆油があり、好ましくは、臭素化ブチルゴム100重量部当り0.5〜5部(phr)の範囲で使用される。
【0013】
好適な臭素化ブチルエラストマーの例としては、Bayer Corporationから市販されているBayer Bromobutyl 2030、 Bayer Bromobutyl 2040(BB2040)及びLANXESS Bromobutyl X2がある。Bayer BB2040は、ムーニー粘度(ML 1+8@125℃)39±4、臭素含有量2.0±0.3重量%、概略分子量500,000g/モルのものである。
【0014】
本発明方法で使用される臭素化ブチルエラストマーは、臭素化ブチルゴムと共役ジオレフィンベースのポリマーとのグラフト共重合体であってもよい。同時係属カナダ特許出願2,279,085は、固体臭素化ブチルゴムを、若干のC−S−(S)−C(但し、nは1〜7の整数である)結合も有する共役ジオレフィンモノマーをベースとする固体ポリマーと混合することによる、このようなグラフト共重合体の製造方法に向けたものである。混合は、50℃を超える温度でグラフト化を生じるのに十分な時間行う。グラフト共重合体のブロモブチルエラストマーは、前述のエラストマーのいずれでもよい。グラフト共重合体に取り込める共役ジオレフィンは、一般に構造式:
【化1】

を有する。
【0015】
式中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基であり、R及びR11は、同一でも異なっていてもよく、水素原子及び炭素原子数1〜4のアルキル基から選ばれる。好適な共役ジオレフィンの非限定的な幾つかの例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、4−ブチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、2,3−ジブチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。炭素原子数4〜8の共役ジオレフィンモノマーが好ましく、1,3−ブタジエン及びイソプレンが更に好ましい。
共役ジエンモノマーベースのポリマーは、ホモポリマーでも、2種以上の共役ジエンモノマーの共重合体でも、或いはビニル芳香族モノマーとの共重合体でもよい。
【0016】
任意に使用できるビニル芳香族モノマーは、使用される共役ジオレフィンモノマーと共重合可能でなければならない。一般に、有機アルカリ金属開始剤で重合することが知られている、いずれのビニル芳香族モノマーも使用できる。このようなビニル芳香族モノマーは、通常、炭素原子数8〜20、好ましくは8〜14の範囲のものである。好適なビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、及びp−メチルスチレンを含む各種アルキルスチレン、p−メトキシスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−ビニルトルエン等が挙げられる。スチレンは、1,3−ブタジエン単独との共重合用又は1,3−ブタジエン及びイソプレンの両方との三元共重合用に好ましい。
【0017】
本発明ではハロブチルエラストマーは、他のエラストマーと組合せて使用される。好適なエラストマーとしては、BR、SBR及びNRのようなジエンベースのエラストマーが挙げられる。
本発明ではハロブチルエラストマーコンパウンドは、充填剤で強化される。本発明による好適な充填剤は無機粒子で構成され、シリカ、シリケート、粘土(例えばベントナイト)、石膏、アルミナ、二酸化チタン、タルク等、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0018】
好適な充填剤の別の例は、以下のとおりである。
・モンモリロナイト及びその他の天然産粘土のような天然粘土。
・親有機的に変性したモンモリロナイト粘土(例えばSouthern Clay Productsから入手できるCloisite(登録商標)Nanoclays)及びその他の親有機的に変性した天然産粘土のような親有機的に変性した粘土。
・例えばシリケート溶液の沈殿、又はハロゲン化珪素の火炎加水分解により製造した高分散シリカで、比表面積(BET比表面積)は5〜1000m/g、好ましくは20〜400m/gの範囲、主な粒度は10〜400nmの範囲である。このシリカは、任意に、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr及びTiのような他の金属の酸化物との混合酸化物として存在してもよい。
・珪酸アルミニウム、及びアルカリ土類金属シリケートのような合成シリケート。
・BET比表面積が20〜400m/gで、主な粒度が10〜400nmである、珪酸マグネシウム又は珪酸カルシウム。
・カオリン及びその他の天然産シリカのような天然シリケート。
・ガラスファイバー及びガラスファイバー製品(マット、押出品)又は微小ガラス球。
・酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムのような金属酸化物。
・炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び炭酸亜鉛のような金属炭酸塩。
・金属水酸化物、例えば水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム又はそれらの組合わせ。
【0019】
これらの無機粒子は、表面にヒドロキシル基を有し、粒子を親水性兼疎油性にするので、充填剤粒子とブチルエラストマーとの相互作用を良好にすることは困難である。多くの目的から、好ましい無機物はシリカ、特に珪酸ナトリウムの二酸化炭素沈澱で製造したシリカである。
【0020】
本発明で使用するのに好適な乾燥非晶質シリカ粒子の平均凝集物粒度は、1〜100μの範囲、好ましくは10〜50μの範囲、更に好ましくは10〜25μの範囲である。凝集物粒子の10容量%未満は、5μ未満か、或いは50μを超える粒度が好ましい。好適な非晶質乾燥シリカは、更に通常、DIN(ドイツ工業規格)66131に従って測定したBET表面積が50〜450m/gの範囲であり、DIN 53601に従って測定したDBP吸収量が、150〜400g/100gシリカの範囲であり、またDIN ISO 787/11に従って測定した乾燥減量が、0〜10重量%の範囲である。好適なシリカ充填剤は、PPG Industries Inc.から商品名HiSil 210、HiSil 233及びHiSil 243で得られる。またBayer AGから市販されているVulkasil S及びVulkasil Nも好適である。
【0021】
無機充填剤は、以下のような公知の非無機充填剤と組合わせて使用できる。
・カーボンブラック。好適なカーボンブラックは、好ましくはランプブラック法、ファーネスブラック法又はガスブラック法で製造され、BET比表面積は20〜200m/gで、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF又はGPFカーボンブラックである。
・ゴムゲル、好ましくはポリブタジエン、ブタジエン/スチレン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体及びポリクロロプレンをベースとするゴムゲル。
【0022】
非無機充填剤は、通常、本発明のハロブチルエラストマー組成物に充填剤として使用されないが、幾つかの実施態様では60phr以下の量で存在してもよい。無機充填剤は、充填剤全量に対し、好ましくは35重量%以上を構成しなければならない。本発明のハロブチルエラストマー組成物を他のエラストマー組成物とブレンドする場合、他の組成物は、無機及び/又は非無機の充填剤を含有してよい。
【0023】
本発明の混合改質剤系はシラン化合物を含有する。本発明の混合改質剤系に有用なシラン化合物は硫黄含有シランである。シラン化合物は硫黄含有シラン化合物であってよい。好適な硫黄含有シランとしては、USP 4,704,414、ヨーロッパ特許出願公開0,670,347 A1、ドイツ特許出願公開4435311 A1(これらの特許はここに援用する)に記載されるものが挙げられる。好適な一化合物は、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]モノスルファン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルファン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]トリスルファン及びビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]テトラスルファンの混合物、及び商標Si−69(平均スルファン 3.5)、商標Silqest A−1589(CK Witcoから)又は商標Si−75(平均スルファン 2.0)(Degussaから)で得られる高級スルファン同族体である。他の一例は、商標Silqest RC−2で得られるビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]テトラスルファンである。
【0024】
好適な硫黄含有シランの例としては、式
SiR10
の化合物が挙げられる。式中、R、R、Rの中の少なくとも1つ、好ましくはR、R、Rの中の2つ、最も好ましくはR、R、Rの中の3つは、ヒドロキシル又は加水分解性基である。これらの基R、R、Rは珪素原子に結合している。基Rは、ヒドロキシルであってもOC2p+1(但し、pは1〜10であり、炭素鎖は酸素原子で中断されて、例えば式CH3OCH2O-, CH3OCH2OCH2O-, CH3 (OCH2) 4O-, CH3OCH2CH2O-, C2H5OCHO-, C2H5OCH2OCH2O-又はC2H5OCH2CH2O-となってもよい)であってもよい。或いはRはフェノキシであってもよい。基RはRと同じであってよい。RはC〜C10アルキル基、或いはC〜C10モノ−又はジ−不飽和アルケニルル基であってもよい。更にRは下記基R10と同じであってよい。
【0025】
はRと同じであってよいが、R、R及びRは必ずしも全てがヒドロキシルではないことが好ましい。RはC〜C10アルキル、フェニル、C〜C10モノ−又はジ−不飽和アルケニルルであってもよい。更にRは下記R10と同じであってよい。
【0026】
珪素原子に結合した基R10は、架橋の形成に寄与するか、さもなければ架橋に関与することにより、不飽和重合体と共に架橋反応に関与できるような基である。R10は下記構造:
【化2】

【0027】
式中、R、R及びRは前記定義したとおりである。alkは、炭素原子数1〜6の二価直鎖炭化水素基又は炭素原子数2〜6の分岐炭化水素基である。Arは、フェニレン-C6H4-、ビフェニレン-C6H4-C6H4-又は-C6H4-OC6H4-基のいずれかであり、e、f、g及びhは0、1又は2のいずれかであり、iは2〜8の整数(但し、eとfとの合計は常に1以上であり、gとhとの合計も常に1以上である)である。或いはR10は、構造(alk)e(Ar)fSH又は(alk)e(Ar) fSCN(但し、e、fは前記定義したとおりである)で表してもよい。
【0028】
好ましくはR、R及びRはいずれもOCH3、OC2H5又はOC3H8基であり、更に好ましくはいずれもOCH3又はOC2H5基である。一実施態様では、硫黄含有シランは、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]テトラスルファン(Si−168)である。
その他の硫黄含有シランの非限定的例としては、以下のものが挙げられる。
・3−オクタノニルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン(Silane(商標NXT)
・ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルファン
・ビス[2−(トリメトキシシリル)エチル]テトラスルファン
・ビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]トリスルファン
・ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ジスルファン
・3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
・3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン
・3−メルカプトエチルプロピルエトキシメトキシシラン
【0029】
その他の好ましい硫黄含有シランとしてはドイツ特許出願公開4435311 A1(2〜3頁)に記載のものがあり、下記一般式の硫黄含有オルガノオキシシランのオリゴマー及び重合体が開示されている。一般式:
【化3】

【0030】
式中、R11は、飽和又は不飽和で、分岐又は非分岐で、かつ置換又は非置換の炭化水素基であり、該炭化水素基は少なくとも三価で、炭素原子数2〜20であるが、少なくとも2つの炭素−硫黄結合がある。R12及びR13は、互いに独立に飽和又は不飽和で、分岐又は非分岐で、かつ置換又は非置換の炭化水素基であり、該炭化水素基は炭素原子数1〜20で、ハロゲン、ヒドロキシ又は水素を有する。nは、1〜3、mは1〜1000、pは1〜5、qは1〜3、xは1〜8である。
【0031】
他の硫黄含有シランは、一般式
【化4】

【0032】
式中、R12、m及びxは前記意味を有し、R12は好ましくはメチル又はエチルである。特に好ましい硫黄含有シランは、以下の一般式を有するものである。
【化5】

(但し、R=−CH又は−C、x=1〜6、n=1〜10)
【化6】

(但し、R=−CH又は−C、x=1〜6、n=1〜10)
【0033】
【化7】

(但し、R=−CH、−C又は−C、n=1〜10、x=1〜6)
【化8】

(但し、R=−CH、−C又は−C、n=1〜10、x=1〜6)
【化9】

(但し、R=−CH、−C又は−C、n=1〜10、x=1〜6)
【0034】
【化10】

(但し、R=−CH、−C又は−C、n=1〜10、x=1〜6)
【化11】

(但し、R=−CH、−C又は−C、n=1〜10、x=1〜6)
【0035】
【化12】

(但し、R=−CH、−C又は−C、R=−CH、−C、−C、−C、−OCH、−OC、−OC又は−OC、n=1〜10、x=1〜8)
【0036】
【化13】

(但し、R=−CH、−C又は−C、r+p=2〜10、x=1〜6)

下記式の硫黄含有シランも挙げられる。
【化14】

(但し、xは1〜6であり、nは1〜4である)
【0037】
シランが硫黄含有シランであれば、下記式のビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルファンが好ましい。
【化15】

【0038】
この化合物は、商標Si−69で市販品として入手できる。実際にはSi−69は、上記化合物の混合物、即ち、このテトラスルファンと、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]モノスルファン及びビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]トリスルファンとの混合物(平均スルファン 3.5)である。
他の好ましい硫黄含有シランは、商標Silquest 1589で入手できる。この商標で得られる材料は、スルファンの混合物であるが、主成分(約75%)は、ジスルファン、即ち、単に−S−S−であること以外は、テトラスルファンSi−69の−S−S−S−S−に構造が類似する。
【0039】
この混合物の残部は、−Sから−S−化合物で構成される。Silquest(商標)A1589は、CK Witcoから入手できる。同様な材料は、Degussaから商標Si−75で入手できる。
なお好ましい他の硫黄含有シランは、商標Silquest RC−2で入手できるビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]テトラスルファンである。
これらトリエトキシ化合物に対応するトリメトキシ化合物も使用できる。
【0040】
混合改質剤系中の添加剤は、少なくとも1つのヒドロキシル基と、塩基性アミン含有官能基とを含有し、好ましくは、分岐してよいメチレン橋で分離された、第一アルコール基及びアミン基も含有する。このような化合物は、一般式HO−B−NR1415(但し、Bは、線状であっても或いは分岐していてもよいC〜C20アルキレン基であり、R14及びR15は、独立にH、C〜C11アルキル又はアリール基である。これら2つの官能基間のメチレン基の数は好ましくは1〜4の範囲でなければならない。好ましい添加剤の例としては、モノエタノールアミン及びN,N−ジメチルアミノエタノールがある。
【0041】
ハロブチルエラストマーコンパウンドに取入れる充填剤の量は、広範な限界内で変化できる。充填剤の量は、エラストマー100部当り、通常、20〜250部(重量)、好ましくは30〜100部、更に好ましくは40〜80部の範囲である。無機充填剤を約30phr含有するコンパウンドの場合、混合改質剤に存在する添加剤の量は、約0.1〜2.0phr、更に好ましくは約0.3〜1.7phr、なお更に好ましくは約0.5〜1.5phrの範囲であり、混合改質剤に存在するシラン化合物の量は、約0.1〜6.0phr、更に好ましくは約0.8〜5.0phr、なお更に好ましくは約1.6〜4.2phrの範囲である。混合物中の改質剤の量は、コンパウンド中のシリカ量によって、直接増加する。例えばコンパウンド中のシリカ量が30phrから60phrと2倍になれば、混合改質剤中の添加剤及びシランも2倍になってよい。追加の無機充填剤を例えば80phrに増量すれば、添加剤及びシランの量も例えば2phr及び6phr程度に調節する必要があるかも知れない。
【0042】
本発明では、充填剤;及びシラン化合物と、少なくとも1つのヒドロキシル基及び塩基性アミン含有官能基を有する添加剤とを含む混合改質剤系は、好適には25〜200℃の範囲の温度で、一緒に混合する。混合時間は、普通は1時間を超えない。混合は、2本ロールミルミキサー、Banburyミキサー又はミニチュア密閉式ミキサーで行なうことができる。
【実施例】
【0043】
試験:
硬度及び応力歪特性を、ASTM D−2240の要件に従ってA2型ジュロメーターを用いて測定した。この応力歪データは、ASTM D−412法Aの要件に従って、23℃で得られた。2mm厚の引張りシート(160℃でtc90+5分間硬化)から切断したダイCダンベルを用いた。DIN耐磨耗性を、DIN 53516試験法に従って測定した。DIN耐磨耗性分析用のサンプルボタンを160℃でtc90+10分間硬化させた。GABOサンプルを160℃でt90+5分間硬化させ、周波数10Hz及び動応答0.1%を用いて、動応答を−100℃〜+100℃で測定した。ムーニースコーチを、ASTM 1646に従ってAlpha Technologies MV2000を用いて130℃で測定した。Tc90時間を、振動周波数1.7Hz、170℃での弧度(arc)1°で合計運転時間30分間用いる可動ダイ流動計(Moving Die Rheometer)(MDR 2000E)でASTM D−5289に従って測定した。硬化は、Alan−Bradleyプログラマブルコントローラーを備えた電気プレスを用いて行った。
【0044】
標準的混合法を用いてコンパウンドを製造した。噛み合い式ローターを備えた1.5リットルBR−82 Banbury密閉型ミキサーを用い、第1表に示す配合に従ってこれらの例を製造した。温度を、まず30℃で安定化させた。77rpmにセットしたローター速度で、成分1Aをミキサーに導入し、次いで0.5分後、成分1Bを導入した。3分後、成分1Cをミキサーに加えた。4分後、清掃を行った。4.5分後、成分1Dをミキサーに加え、次いで6.0分で最終清掃を行った。合計混合時間7.0分後、コンパウンドを降ろした(dump)。次いで硬化剤2AをRT2本ロールミル上で加えた。
【0045】
例1〜4(DMEAとSi−69との混合物)
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
例1、例2は比較用コンパウンドである。例1は、BIIRトレッドコンパウンド用シリカ改質剤としてDMAEのみ使用したが、例2は、DMAE及びHMDZの両改質剤を使用した。これらの改質剤は、充填剤の分散改良にも強化性(reinforcement)レベルの改良にも役立つ。例3〜7は、コンパウンド特性を向上するため、DMAEとSi−69との組合せを使用した。
【0049】
例3〜5について物理的データ(第2表参照)の分析から、強化性の程度は、Si−69量と共に増大し、DMAEのみ使用したが、例2は、DMAE/HMDZコンパウンドの強化性と釣り合っていることが判る。この1つの重要な効果は、コンパウンドの硬度が例2の対照コンパウンドに比べて高いまま維持されることである。更に耐摩耗性は、全てのコンパウンドについてのDIN磨耗値で示されるように、改良されたものと思われる。また最も重要なことは、例5では予想転がり抵抗が50%と著しく低下しながら、−20℃及び0℃でtanδ値(牽引力特性向上の指標)が維持されている。この効果は、Si−69又はDMAEのいずれかの単独の場合よりも、このようなブレンドでは一層明確である。更に、充填剤との相互作用を向上しようとして、DMAEレベルを増大させると、得られるコンパウンドにはスコーチや著しい加工困難性が生じる。DMAE/Si−69混合改質剤系では、DMAE(/HMDZ)又はSi−69含有コンパウンドに比べて、このような加工性の損失もなく、磨耗値が増大する(図1参照)。
【0050】
改質剤を増量すると、これら効果の根本原因となる可能性があると推測されるかも知れないが、これは事実ではない。例6を調べれば明らかなように、例2で使用した改質剤のモル当量よりも少量使用して、動的特性と共に物性が大幅に向上したことが観察される(図2、第2表参照)。
以上の実験データから判るように、シラン改質剤と、1つ以上のヒドロキシル基及び塩基性アミン含有官能基を有する化合物から誘導された添加剤とを含有する本発明のコンパウンドは、従来技術のコンパウンドに比べて、牽引力を向上すると共に、転がり抵抗を低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例で製造した充填剤入りブチルエラストマーコンパウンドのtanδ応答と温度との関係図である。
【図2】実施例で製造した充填剤入りブチルエラストマーコンパウンドのtanδ応答と温度との関係図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロブチルエラストマー;少なくとも1種の他のエラストマー;無機充填剤;及びシラン化合物と、1つ以上のヒドロキシル基及び塩基性アミン含有官能基を有する化合物から誘導された添加剤とを含有する混合改質剤;を含むハロブチルエラストマーコンパウンド。
【請求項2】
ハロブチルエラストマーがクロロブチルエラストマー又はブロモブチルエラストマーから選ばれる請求項1に記載のハロブチルエラストマーコンパウンド。
【請求項3】
他のエラストマーがBR、SBR、NR又はそれらの混合物から選ばれる請求項1に記載のハロブチルエラストマーコンパウンド。
【請求項4】
充填剤がシリカである請求項1に記載のハロブチルエラストマーコンパウンド。
【請求項5】
シラン化合物が、アミノシラン又は硫黄含有シランである請求項1に記載のハロブチルエラストマーコンパウンド。
【請求項6】
シラン化合物が、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]テトラスルファン、−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン(シランTM NXT)、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルファン、ビス[2−(トリメトキシシリル)エチル]テトラスルファン、ビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]トリスルファン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルファン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトエチルプロピルエトキシメトキシシラン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルファン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]モノスルファン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]トリスルファン、ビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]テトラスルファン、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる請求項1に記載のハロブチルエラストマーコンパウンド。
【請求項7】
添加剤が式:
HO−B−NR1415
(式中、Bは線状又は分岐C〜C20アルキレン基であり、R14はH、C〜C11アルキル又はC〜C11アリールであり、R15はH、C〜C11アルキル又はC〜C11アリールである)
である請求項1に記載のハロブチルエラストマーコンパウンド。
【請求項8】
添加剤がモノエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる請求項1に記載のハロブチルエラストマーコンパウンド。
【請求項9】
ハロブチルエラストマー;少なくとも1種の他のエラストマー;充填剤;及びシラン化合物と、1つ以上のヒドロキシル基及び塩基性アミン含有官能基を有する化合物から誘導された添加剤とを含有する混合改質剤;を添加混合することを特徴とするハロブチルエラストマーコンパウンドの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−126659(P2007−126659A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294633(P2006−294633)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(506183100)ランクセス・インク. (13)
【Fターム(参考)】