説明

強化マイクロテープを含む血管内カテーテル

本発明は、長さ方向に予備配向された管状支持体と、支持体を取り囲むように且つ支持体に接触しそして支持体に巻きつけられた強化手段、および支持体に対して強制的に押し付けられかつ支持体に巻きつけられた強化手段を維持している強化手段を取り囲む管上層部を含み、前記強化手段は幅が0.5mmより小さい幅を持ち且つ横断面のアスペクト比(幅/高さ)が2〜20であるフィラメント層を含むマイクロテープからなり、そしてそのフィラメントは硬化もしくは固化された樹脂またはワックスによって固着されておりそしてマイクロテープの2〜40wt%を占めることを特徴とする、カテーテル、好ましくは血管内カテーテルに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化手段を含んでなる血管内カテーテルに関する。強化手段を含んでなるカテーテルは知られている。カテーテルは医療の診断手順において患者の体内に挿入して使用される。カテーテルを挿入するにはカテーテルが通路に順応して屈曲するに十分な柔軟性がなければならないが、その一方、トルク伝達、およびよじれを最小限にするための支持構造を備えるための十分な堅さがなければならない。
【背景技術】
【0002】
US4,425,919に、薄壁管状支持体に巻きつけられた平らな金属線ブレードを含む薄壁強化手段によって取り囲まれた、長さ方向に予備配向された薄壁管状支持体を含むトルク伝達カテーテル器具が記載されている。金属線はカテーテル支持体に対する良好な支持を与えるが、しかし金属のため、そのようなカテーテルは患者の透視検査やMRI走査には用いることはできない。
EP0517075に、管内側部材として熱硬化ポリウレタンで浸漬された編まれた重合繊維製ストランドを有し、且つ前記の編まれた管部材に固定された熱可塑性ポリウレタンの外皮またはコーティングを有する、複合構造の誘導カテーテルのような血管内カテーテルが開示されている。上記カテーテルは金属製強化材料を全く含んでおらず、それゆえに透視検査とMRI走査に適している。しかしながら、前記強化重合繊維ストランドは、カテーテルを患者の動脈内に挿入したときにカテーテルのよじれを十分に防ぐほど満足のいく堅さがないことがわかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的はしたがって、経皮的透視的冠状血管形成術(PTCA)のような血管内処置に使用するための誘導カテーテルを提供することであり、該カテーテルは良好なトルク伝達装置とよじれを最小限にするための適切な支持構造を提供する金属製強化手段に匹敵する剛性を有しており、それにもかかわらずカテーテルが挿入された患者に対しMRI走査を行うことができるマイクロ波不活性である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的のために本発明では、長さ方向に予備配向された管状支持体と、支持体を取り囲むように且つ支持体と接触しそして支持体に巻かれた強化手段および支持体に対して強制的に押し付けられた強化手段を取り囲み且つ支持体に強化手段を巻きつけられたままに維持している管上層部を含んでなる血管内カテーテルであって、前記強化手段は幅が0.5mmより小さいマイクロテープであり、横断面のアスペクト比(幅/高さ)は2〜20であるフィラメント層を含み、そして該フィラメントは硬化もしくは固体化された樹脂またはワックスによって固着されており、そしてそのマイクロテープの2〜40wt%を占めることを特徴とする血管内カテーテルに関する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
カテーテル挿入は患者の通路の血管壁に外傷を引き起こしうる。この外傷を最小限にするため、本発明では平らな横断面の合成繊維強化マイクロテープは、0.5mmより小さい、好ましくは0.1mmより小さい小さな全外径を有する。横断面のアスペクト比(幅/高さ)が2〜20であることでマイクロテープは平らになる。アスペクト比は2〜10の範囲にあるのが好ましい。
通路に順応して曲がるという本発明の高度に柔軟なカテーテルは、外傷を最小限にする。他方前記カテーテルは適切なトルク伝達を与えるに足るほど十分に堅くなければならない。適切なトルク伝達がなければ、前記カテーテルは目的の体内器官内で正確に回転することができない。さらには、貧弱なトルク伝達は、よじれ、巻き込みやむち打ちを引き起こし、通路に外傷を引き起こし、そして患者に対し痛みや不快感を引き起こす。したがって、これまで医師は、ねじれに対して適切に機能することができない高柔軟性カテーテル器具と非常に多数の外傷を引き起こす堅いカテーテルのどちらかを妥協しながら選択するという難問に直面してきた。アラミド、高弾性ポリエチレン(HMPE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、もしくはポリエステル−ポリアリレート繊維を含む熱互換性液晶ポリマー(TLCP)繊維のような高機能繊維から製造されたマイクロテープは、最適トルク伝達とねじれ抵抗が最良のバランスを示していることがわかった。
【0006】
本発明は、平らな合成繊維マイクロテープを含む薄壁強化手段を提供することによってこの難問を解決するものである。前記マイクロテープは、強化手段を適切に支持する長さ方向に予備配向された支持体に編組されもしくはらせん状に巻かれうる。前記編組とらせんは取り囲む上層部によってその場に維持される。前記構造を使用することで、本発明は優れた柔軟性とねじれ抵抗を維持しながらも極めて良好なトルク伝達性能を有している。本発明は予備配向支持体を含んでいるので、極めて薄い壁とすることが可能である。このことは、内径を最大化しつつ全外径を最小化することとを同時に可能にしている。一例として、このことは、適切な診断液体を支持体を通して流すことを可能とし、それにX線装置もしくはMRI装置もしくはこれに類する装置が所望の通路を適切な写真にとることを可能にする。
【0007】
アラミドの例としてはTwaron(登録商標)やKevlar(登録商標)として販売されているポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)およびTechnora(登録商標)として販売されている共重合(パラフェニレン/3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド)がある。例えばCl−PPD、MeO−PPD、DAPBIおよびこれらに類似するものを含むPPDモノマーから製造されたPPTA共重合体もまた、アラミドフィラメントとして適している。Zylon(登録商標)として販売されているPBOおよびM5としても知られているPIPDのような他の剛性棒状ポリマーもまた適している。
HMPEの例としては、Dyneema(登録商標)、Marlex(登録商標)、Plexar(登録商標)、Dowlex(登録商標)、Ethylux(登録商標)、Halene(登録商標)、Hiplex(登録商標)、Hostalen(登録商標)、Spectra(登録商標)等の商標名で入手できる高弾性ポリエチレンがある。
PEEKの例としては、Victrex(登録商標)、Gatone(登録商標)、Ketron(登録商標)、Ketaspire(登録商標)等の商標名で入手できるポリエーテルエーテルケトンがある。
【0008】
ポリエステル−ポリアリレートの例としてはVectran(登録商標)という商標名で知られている。本発明で使用される支持体および上層部はカテーテルに一般的に使用されている支持体と上層部である。好ましい支持体および上層部は、これに限ることはないが、例えば、ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリウレタンのような重合材料から製造されている。
【0009】
本発明のマイクロテープは硬化または固体化された樹脂によって固着されたフィラメントからなり、そのマイクロテープの幅/高さ比は2〜20、好ましくは2〜10である。
本発明のマイクロテープは、共係属している特許出願EP07023191.5中に記載されているようにして製造できる。したがって前記方法によって、マイクロテープの重量を基準として60〜98wt%の繊維を含む柔軟な繊維マイクロテープは、次の工程からなるマルチフィラメントヤーンから製造される。:
a1)横断面アスペクト比(幅/高さ)が2〜20のフィラメント層を得るためヤーンのフィラメントを拡げる。そして
b1)拡げたフィラメントを硬化性樹脂もしくは液体熱可塑性樹脂もしくはワックスで処理する;または
a2)ヤーンを硬化可能な樹脂もしくは液体熱可塑性樹脂またはワックスで処理する;そして
b2)横断面アスペクト比(幅/高さ)が2〜20のフィラメント層を得るためヤーンのフィラメントを拡げる;続いて
c)樹脂を硬化または固化することによってフィラメントを固着して前記マイクロテープを得る。
【0010】
フィラメントを拡げる工程を経た繊維は、フィラメントがからまったり毛羽立ったりすることを防ぐため、そしてその要求される寸法特性(幅と高さのような)を維持するため、できるだけ早く固着されることが重要である。この目的は、他の硬化可能な、液体熱可塑性樹脂または液体ワックスを使用することによって達成され、そして硬化または固化された後はフィラメントは永久に固着(固定)されるだろう。それゆえに硬化または固化の工程はできるだけすばやくなされることが重要である。先行技術の樹脂のほとんどはこのように迅速な固着化には適していない。硬化可能な樹脂は迅速に固くなりそれによって固着化する際フィラメントをトラップするのでとりわけ好ましい。原則的に熱および放射硬化(紫外線および電子ビーム硬化のような)の両方が用いられる。熱硬化は、熱硬化性樹脂(とりわけ適した例としてエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびフェノール樹脂がある)を用いて行うのが好ましい。便利な方法では、拡げられたフィラメントは硬化性樹脂が入った槽、ダイ、またはアプリケーターに通され、その後熱せたれたローラー、熱気オーブン、ホットプレートまたはこれらの組み合わせに送られ、そこで前記樹脂は迅速に硬化され、それによってフィラメントが固着される。液体熱可塑性樹脂を使用したときの他の具体例では、拡げられたフィラメントは槽、ダイもしくはアプリケーターに通され、それから樹脂を迅速に固化するため冷却ローラーに通される。もし必要とされる場合は、例えばb1)もしくはa2)の工程を経た後前記ヤーンが乾燥される。
【0011】
放射線硬化性樹脂を拡げられたフィラメントの上に塗布する方法はさらにより便利である。放射線硬化性樹脂に適しているものは例えばアリル、ビニル、もしくは(メタ)アクリレート官能基を含む樹脂である。これらの樹脂処理フィラメントは、直ちに、例えば紫外線ランプのある区域あるいは電子ビーム区域内のごとき照射区域内に送られ、それらの条件で前記樹脂は瞬間的に硬化する。敏速な硬化は処理スピードを速くし、それは紫外線硬化を商業的に魅力的なものにする。例えば、インラインアプリケーションおよび紫外線硬化は700m/minに達する高速紡績ラインにおける後処理工程として考慮されうる。
【0012】
他の便利な方法では、ヤーンの束は液体熱可塑性樹脂もしくはワックスを用いて処理される。液体熱可塑性樹脂もしくはワックスとは、その融点超の状態に置かれ、または溶剤中に溶解もしくは乳化されることによって液体である熱可塑性樹脂もしくはワックスをいう。これらの物質は、温度をそれらの融点よりも低く下げることで、あるいは例えばエバポレーションによって溶剤を除去することによって固化する。溶剤として適するのは、水もしくはトルエン、イソヘキサデカン、エタノール、アセトン、エーテル等の普通の有機溶剤である。より便利には、ヤーンの束を熱可塑性樹脂もしくはワックスの低粘性水溶液、もしくは分散液で処理する方法である。低粘性水分散液は迅速にヤーンの束に浸透しそして前記樹脂またはワックスをフィラメント上に拡げる。次に、その水相は、例えば熱気オーブン中で非接触的に熱せられることによって、完全にもしくは部分的に除去され、そして前記ヤーンの束は1つもしくはそれ以上の数のロッドを用いて拡げられる。ロッドを用いた後直ちに、拡げられたヤーンは残存量の水を蒸発させるために、および/または例えば熱いゴデットのような熱いローラーの表面で熱可塑性樹脂を固着させるために、さらに熱せられる。2番目のゴデットは柔軟性のあるマイクロテープを容易に巻きつかせるために使用される。溶融ワックスもしくは熱可塑性樹脂の分散液が使用された場合には、ロッドで拡げる工程を経た後、上記ヤーンはマイクロテープにフィラメントを固着させるため冷却ローラー上に送られるのが好ましい。
【0013】
最大の圧縮弾性率を有する柔軟なマイクロテープを得るためにはできるだけ少量の樹脂を用いることが重要である。上記マイクロテープは、少なくとも60wt%の繊維を、さらに好ましくは少なくとも70wt%(マイクロテープの重量を基準として)を含んでおり、そして紫外線硬化樹脂もしくはワックスが使用されるときには好ましくは少なくとも80wt%の繊維を含んでいる。熱可塑性樹脂を使用する場合はさらに多くの繊維量が満足であり、好ましくは少なくとも90wt%の繊維すなわち10wt%未満の樹脂もしくはワックスが用いられる。これらのフィラメントマイクロテープの引張強さおよび圧縮剛性はスケール線を含むテープよりも優れている。
【実施例】
【0014】
本発明はさらに下記の非制限的実施例によって説明される。
【0015】
実施例1
Technora(登録商標)HMYT242(61dtex/f25)が下記の処理に付された。ヤーンは回転しては巻かれていない。上記ヤーンはそれから、丸まっていないヤーンによって引き起こされる引張変動を取り除くため湿気を与える装置を通過する。引き続き、上記ヤーンは、ヤーンテンションモニターF1,非加熱ゴデット1、ヤーンテンションモニターF2、プレート、ヤーンテンションモニターF3、非加熱ゴデット2およびヤーンテンションモニターF4を通過する。テストされた水性仕上げ処理の塗布(表5参照)はテンションモニターF4の後および最初のチューブオーブンの入口の前になされる。上記テストされた水性仕上げ剤はガラスシリンジポンプによって供給されるセラミックアプリケーターによって塗布される。上記加熱された最初のチューブオーブン(溶剤を蒸発させることを意図して)を経た後、非加熱ゴデット2およびヤーンテンションメーターF5を通過させる。次に仕上げ処理されたヤーンは(非加熱の)チューブオーブン2および非加熱ゴデット3を通過する。高いテンションヤーン(テンションモニターF6)を与えることによって非加熱ゴデット4と加熱ゴデット5の間で上記ヤーンは熱いゴデット5上でテープ形状に形作られる。加熱ゴデット5を通過した後、上記ヤーンは巻かれる前に冷却処理(張力下で(モニターF7))される。
【0016】
表1および2には、それぞれに用いられた仕上げ処理剤および工程条件/特性が記載されている。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に予備配向された管状支持体と、支持体を取り囲むように且つ支持体に接触しそして支持体に巻きつけられた強化手段、および支持体に対して強制的に押し付けられかつ支持体に巻きつけられた強化手段を維持している強化手段を取り囲む管上層部を含むカテーテルであって、前記強化手段は幅が0.5mmより小さい幅を持ち且つ横断面のアスペクト比(幅/高さ)が2〜20であるフィラメント層を含むマイクロテープからなり、そしてそのフィラメントは硬化もしくは固化された樹脂またはワックスによって固着されておりそしてマイクロテープの2〜40wt%を占めることを特徴とする前記カテーテル。
【請求項2】
血管内カテーテルである請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
マイクロテープが支持体にブレードとして巻かれている請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
マイクロテープが支持体にらせん状に巻かれている請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項5】
マイクロテープが0.1mmより小さい幅を有する請求項1〜4のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項6】
フィラメントがアラミド、高弾性ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトンまたはポリエステル−ポリアリレートである請求項1〜5のいずれかに記載のカテーテル。

【公表番号】特表2011−519282(P2011−519282A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537385(P2010−537385)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066749
【国際公開番号】WO2009/074502
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(501469803)テイジン・アラミド・ビー.ブイ. (48)
【Fターム(参考)】