説明

弾丸暗渠形成方法

【課題】弾丸暗渠内への疎水材の投入、充填を弾丸暗渠の形成と同時に、効率よくかつ均一に行うことができ、さらに、排水性能に優れた弾丸暗渠を形成することができ、また、弾丸暗渠形成終端位置、例えば、畦畔の極めて近い位置まで弾丸暗渠を形成することができる弾丸暗渠形成方法を提供する。
【解決手段】ブルドーザ31の前部の排土板32に装着支持する作業機装着部12と、該作業機装着部に一体的に設けた疎水材ホッパー13と、該疎水材ホッパーの下部に連設した疎水材投入部14と、該疎水材投入部の弾丸暗渠掘削方向前方に設けた溝形成用のブレード部15と、疎水材投入部の弾丸暗渠掘削方向後方下部に設けた疎水材投入口16と、該疎水材投入口よりも弾丸暗渠掘削方向後方に設けた弾丸17とを備え、ブルドーザ31の前進と排土板32の上下動によって、疎水材を投入充填した溝部の底部に疎水材が存在しない弾丸部52を有する弾丸暗渠56を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾丸暗渠形成方法に関し、詳しくは、湿地での排水用等に設置される弾丸暗渠であって、特に弾丸暗渠内に籾殻のような疎水材を充填した弾丸暗渠を形成するための弾丸暗渠形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水はけの悪い土地に排水暗渠を形成するための装置として、いわゆる弾丸暗渠形成装置が知られている。この弾丸暗渠形成装置は、例えば、下端に弾丸を設けたチゼル(土壌切開部)を地中に進入させた状態でブルドーザー等で牽引することにより、地中に弾丸暗渠を形成するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。また、溝内に暗渠排水パイプを敷設する暗渠排水工事では、排水性能を向上させるため、暗渠排水パイプ上方の溝内の所定深さまで小石や籾殻のような透水層を形成するための疎水材を投入した後、この疎水材の上に表土を投入して溝を埋め戻すことも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭60−17894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、弾丸暗渠においても、暗渠内に籾殻のような疎水材を投入充填した状態とすることにより、排水性能を向上させることが可能ではあるが、通常の弾丸暗渠は、弾丸部より上方の溝幅が狭いため、溝内に疎水材を投入することは極めて困難であった。また、疎水材の投入作業は、一般的に、袋詰めされた状態の疎水材を袋から溝内に投入するようにしており、そのほとんどを手作業に頼っているのが実情である。このため、疎水材を均一に敷き詰めることが困難であり、投入量(深さ)にムラを生じたり、疎水材の無駄が発生したりしていた。さらに、弾丸暗渠の底部まで疎水材を密に充填してしまうと、弾丸暗渠における排水性能が損なわれてしまうおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、弾丸暗渠内への疎水材の投入、充填を弾丸暗渠の形成と同時に、効率よくかつ均一に行うことができ、さらに、排水性能に優れた弾丸暗渠を形成することができ、また、弾丸暗渠形成終端位置、例えば、畦畔の近傍まで、弾丸暗渠を形成することができる弾丸暗渠形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の弾丸暗渠形成方法は、ブルドーザの前部に上下方向に移動可能に設けられている排土板に装着支持された作業機装着部と、該作業機装着部に一体的に設けられた疎水材ホッパーと、該疎水材ホッパーの下部に連設された疎水材投入部と、該疎水材投入部の弾丸暗渠掘削方向前方に設けられた溝形成用のブレード部と、疎水材投入部の弾丸暗渠掘削方向後方下部に設けられた疎水材投入口と、該疎水材投入口よりも弾丸暗渠掘削方向後方に設けられた弾丸とを備えた弾丸暗渠形成装置により弾丸暗渠を形成する方法において、前記排土板を上昇させた前記ブルドーザを弾丸暗渠の形成開始位置より弾丸暗渠掘削方向手前側に位置させ、前記ブルドーザを前進させるとともに前記排土板を下降させて前記疎水材投入部、ブレード部、疎水材投入口及び弾丸を地中に挿入していき、前記ブルドーザの前進と前記排土板の下降とにより、前記ブレード部の先端で溝部を掘削し、該溝部の底部に弾丸による弾丸部を形成しながら前記弾丸暗渠形成装置の下部を地中に進入させ、形成する弾丸暗渠の深さに応じた深さまで前記ブレード部が地中に挿入した状態となったときに前記排土板の下降を停止し、前記疎水材ホッパー内に疎水材を投入し、前記ブルドーザを前進させることにより、前記ブレード部にて溝部を掘削形成するとともに、前記疎水材ホッパー内から前記疎水材投入部に落下した前記疎水材を前記疎水材投入口を通して前記溝部の下部に投入し、前記疎水材投入口の後方から進んでくる前記弾丸により、前記溝部の底部及び前記疎水材の下部を押し拡げ、前記疎水材を投入充填した溝部の底部に疎水材が存在しない弾丸部を有する弾丸暗渠を形成し、弾丸暗渠形成終端位置に、前記弾丸暗渠形成装置が至ったときに、前記ブルドーザを停止させた後、前記排土板を上昇させて前記疎水材投入部、ブレード部及び弾丸を地中から引き抜くことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の弾丸暗渠形成方法によれば、弾丸暗渠形成装置を弾丸暗渠形成終端位置、例えば、畦畔の近くまで押し進めることができるので、弾丸暗渠を畦畔の極めて近い位置まで形成することができる。また、排土板を適度に上昇させながらブルドーザを前進させることにより、弾丸暗渠に適度な水勾配を与えることができる。さらに、疎水材を投入充填した溝部の底部に疎水材が実質的に存在しない弾丸部を有する弾丸暗渠が形成されるので、地中や地上から弾丸暗渠内に流入した水を、溝部から弾丸部を通して速やかに暗渠排水パイプや排水路に流出させることができ、弾丸暗渠における排水性能を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の弾丸暗渠形成方法に用いられる弾丸暗渠形成装置の一形態例を示す正面図である。
【図2】同じく弾丸暗渠形成装置の平面図である。
【図3】同じく弾丸暗渠掘削方向前方から見た弾丸暗渠形成装置の側面図である。
【図4】同じく後方から見た弾丸暗渠形成装置の側面図である。
【図5】本発明の弾丸暗渠形成方法の一形態例を示す、ブルドーザの排土板に弾丸暗渠形成装置を装着したときの弾丸暗渠掘削開始時の状態を示す正面図である。
【図6】同じく、弾丸暗渠掘削方向前方から見た側面図である。
【図7】同じく、弾丸暗渠掘削中の状態を示す正面図である。
【図8】同じく、弾丸暗渠掘削終了時の状態を示す正面図である。
【図9】弾丸暗渠の一形態例を示す断面図である。
【図10】疎水材の落下を規制する遮断手段の一例を示す縦断面図である。
【図11】水田に隣接した畑作地の縁部に弾丸暗渠を形成した例を示す断面図である。
【図12】ブルドーザの排土板への弾丸暗渠形成装置の装着例を示す平面図である。
【図13】弾丸部の周壁に土壌硬化剤を注入した弾丸暗渠の一形態例を示す断面図である。
【図14】土壌硬化剤注入ノズルを設けた弾丸暗渠形成装置の一例を示す要部の正面図である。
【図15】土壌硬化剤注入ノズルを設けた弾丸暗渠形成装置の他の例を示す要部の正面図である。
【図16】土壌硬化剤注入ノズルを設けた弾丸暗渠形成装置の更に他の例を示す要部の正面図である。
【図17】疎水材補給用ホッパーを設けた形態例を示す要部の側面図である。
【図18】同じく要部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1乃至図4は、本発明の弾丸暗渠形成方法に用いられる弾丸暗渠形成装置の一形態例を示すもので、図1は正面図、図2は平面図、図3は弾丸暗渠掘削方向前方から見た側面図、図4は同じく後方から見た側面図である。この弾丸暗渠形成装置11は、後述する作業機の昇降部材に装着支持される作業機装着部12と、該作業機装着部12に一体的に設けられた疎水材ホッパー13と、該疎水材ホッパー13の下部に連設された疎水材投入部14と、該疎水材投入部14の弾丸暗渠掘削方向前方に設けられた溝形成用のブレード部15と、疎水材投入部14の弾丸暗渠掘削方向後方下部に設けられた疎水材投入口16と、該疎水材投入口16よりも弾丸暗渠掘削方向後方に設けられた弾丸17と、疎水材投入部14及びブレード部15の地中への挿入量を規制するガイド板18とを備えている。
【0010】
作業機装着部12及び疎水材ホッパー13は、弾丸暗渠形成装置11を装着する作業機に直接的あるいは間接的に設けられている昇降部材あるいは作業機が押動又は牽引する走行体に設けられている昇降部材の形状や構造に応じて形成されるもので、昇降部材への装着構造は、係止、係合、嵌合、嵌着、ボルト締め等の適宜な固定構造を採用することができる。また、作業機と弾丸暗渠形成装置11とは、専用機として一体的に構成してもよいが、通常は、ブルドーザやトラクタ等の汎用の作業機に着脱交換可能に装着できるように形成することが望ましい。
【0011】
さらに、作業機における昇降部材の位置は、作業機の前進方向前部側及び前進方向後部側のいずれでも可能であり、作業機の性能に応じて選択することができる。例えば、ブルドーザの場合は、前部に昇降可能な状態で排土板が設けられており、前進時に排土板で土砂を押し動かすように形成されているから、この排土板を昇降部材として利用し、弾丸暗渠形成装置11を排土板に装着することにより、ブルドーザの特性を有効に利用することができる。
【0012】
疎水材ホッパー13は、投入する疎水材の量に応じて任意の形状、容積に形成することができるが、弾丸暗渠形成時における一工程分の量、例えば、弾丸暗渠の長さで数十m分の疎水材を投入することができる容積とし、その側壁内面の角度を、投入される疎水材の安息角以上の傾斜角度としておくことにより、弾丸暗渠形成時に疎水材ホッパー13内に投入された疎水材の全量を、途中で目詰まりさせることなく、下方の疎水材投入部14内に確実に落下させることができる。
【0013】
疎水材投入部14は、弾丸暗渠における溝部の幅寸法に対応した幅を有するとともに、弾丸暗渠掘削方向における前後方向にも十分な長さを有しており、弾丸暗渠形成時にその側面で溝部内面を押圧することによって溝形状を安定化させるようにしている。この疎水材投入部14の前方に設けられたブレード部15は、弾丸暗渠掘削方向先端部分を先鋭化させるとともに、下部を弾丸暗渠掘削方向後方側に傾斜させた板状体を鉛直方向に向けて配置したものであって、ブレード部15の後端は疎水材投入部14と同幅に形成されている。また、ブレード部15は、疎水材投入部14の下端よりも長く形成されており、疎水材投入部14より下方に位置する弾丸17が通る部分も含めた深さの溝を掘削するようにしている。
【0014】
前記疎水材投入口16は、弾丸暗渠掘削方向後方側が上昇するように斜めに開口しており、疎水材を疎水材投入部14から疎水材投入口16を通して円滑に溝内に投入できるようにしている。この疎水材投入口16の上下寸法は、適当に設定することが可能であるが、一般的に、弾丸暗渠の深さが40cm程度のときに疎水材の充填高さが25〜30cmになるように設定すればよい。
【0015】
前記弾丸17は、疎水材投入部14の幅寸法よりも大きな直径を有するものであって、ブレード部15の下端にチェーン19を介して連結され、疎水材が投入された後の溝底部を断面円形に押し拡げるように形成されている。この弾丸17は、チェーン19でブレード部15に連結する他、適当なアームを用いたり、また、疎水材投入部14の下部に連結したりすることもできるが、掘削作業中に弾丸17やブレード部15等に無理な力が加わらないように、チェーンのような自在性を有する連結具を用いて連結することが好ましい。
【0016】
ガイド板18は、弾丸暗渠形成時における弾丸暗渠形成装置11の高さ位置の目安として設けられるものであって、形成する弾丸暗渠が過度に深く形成されることを確実に防止するようにしている。なお、このガイド板18は、作業機や昇降部材の構造等の条件により必要に応じて設ければよく、着脱式としておくこともできる。
【0017】
図5乃至図9は、弾丸暗渠形成装置を、昇降部材であるブルドーザの排土板に装着して弾丸暗渠を形成する本発明方法の一形態例を示すもので、図5は弾丸暗渠掘削開始時の状態を示す正面図、図6は弾丸暗渠掘削方向前方から見た側面図、図7は弾丸暗渠掘削中の状態を示す正面図、図8は弾丸暗渠掘削終了時の状態を示す正面図である。また、図9は弾丸暗渠の一形態例を示す断面図である。
【0018】
弾丸暗渠形成装置11は、作業機装着部12を介してブルドーザ31の排土板32に装着され、図示しない固定ボルト等によって排土板32の前方に固定される。弾丸暗渠形成装置11を装着支持したブルドーザ31は、排土板32を上昇させてブレード部15や弾丸17を地上に上げた状態で走行し、弾丸暗渠の形成開始位置より弾丸暗渠掘削方向手前側に位置させる。
【0019】
次に、ブルドーザ31を前進させるとともに排土板32を下降させて弾丸暗渠形成装置11の疎水材投入部14、ブレード部15、疎水材投入口16及び弾丸17を地中に挿入していく。これにより、図5に示すように、弾丸暗渠形成装置11の下部は、ブルドーザ31の前進と排土板32の下降とにより、ブレード部15の先端で溝部51を掘削し、溝部51の底部に弾丸17による断面円形の弾丸部52を形成しながら次第に地中に進入する。形成する弾丸暗渠の深さに応じた深さまで疎水材投入部14やブレード部15が地中に挿入した状態となったときに排土板32の下降を停止する。通常、弾丸暗渠の形成開始位置は、暗渠排水パイプ53を埋設した暗渠排水溝54の位置となるので、暗渠排水溝54の手前でブルドーザ31を一旦停止し、疎水材ホッパー13内に籾殻等の疎水材を所定量投入する。なお、疎水材は、田畑等では籾殻が最適であるが、小石等を使用することもできる。
【0020】
そして、図7に示すように、ブルドーザ31を前進させることにより、ブレード部15が所定深さ、所定幅の溝部51を押し拡げるようにして掘削形成するとともに、疎水材ホッパー13内から疎水材投入部14に落下した疎水材55が疎水材投入口16を通して溝部51の下部に投入される。これにより、溝部51内の疎水材55は、疎水材投入口16の上下寸法に略対応した高さに充填された状態となる。続いて、後方から弾丸17が溝部51の底部を進んでくることにより、溝部51の底部及び疎水材55の下部が押し拡げられ、弾丸17の通過した後に、疎水材が実質的に存在しない弾丸部52が形成され、疎水材55を投入充填した溝部51の底部に疎水材55が実質的に存在しない弾丸部52を有する弾丸暗渠56が形成されたことになる。
【0021】
弾丸暗渠形成装置11が弾丸暗渠形成終端位置、例えば、図8に示すように、畦畔57の近傍に至ったときには、まず、ブルドーザ31を停止させた後、排土板32を上昇させて疎水材投入部14、ブレード部15及び弾丸17を地中から引き抜く。このとき、弾丸暗渠形成装置11を畦畔57の近くまで押し進めることができるので、弾丸暗渠56を畦畔57の極めて近い位置まで形成することができる。また、疎水材ホッパー13内への疎水材の投入量を弾丸暗渠56の長さに応じた量に設定することにより、必要量を溝部51内に充填できるとともに、弾丸暗渠形成前後に地上に落下する疎水材量を最小限とすることができる。さらに、排土板32を適度に上昇させながらブルドーザ31を前進させることにより、弾丸暗渠56に適度な水勾配を与えることができる。
【0022】
図9に示すように、上述のようにして形成された弾丸暗渠56は、疎水材55が充填された溝部51の底部に疎水材55が存在しない弾丸部52を有する形状となる。したがって、従来のように全てに疎水材を充填した弾丸暗渠に比べて溝底部における通水性能が大幅に向上するので、地中や地上から弾丸暗渠56内に流入した水を、溝部51から弾丸部52を通して速やかに暗渠排水パイプ53や排水路に流出させることができ、弾丸暗渠における排水性能を大きく向上させることができる。
【0023】
さらに、図10の縦断面図に示すように、疎水材ホッパー13と疎水材投入部14との間に、疎水材ホッパー13から疎水材投入部14への疎水材の落下を規制する遮断手段21を設けておくこともできる。この遮蔽手段21は、大径管部22と、大径管部22内に同軸に回動可能に挿入された小径管23とで形成されている。大径管部22は、疎水材ホッパー13の下部に連通する上部連通口24と疎水材投入部14の上部に連通する下部連通口25とを有している。小径管23は、その外径が大径管部22の内径と同一か僅かに小さな管体からなるものであって、大径管部22の上部連通口24に対応した上部開口26と、下部連通口25に対応した下部開口27とを有している。また、小径管23には、大径管部22の端部あるいは側壁からレバーのような操作部材(図示せず)が突出させており、この操作部材を操作することにより、小径管23を大径管部22内で回動させることができるように形成されている。
【0024】
したがって、疎水材ホッパー13に疎水材を投入した状態で、図10に示すように、上部開口26が上部連通口24に、下部開口27が下部連通口25に、それぞれ対応した位置になるように小径管23を回動させることにより、疎水材ホッパー13から疎水材投入部14へ疎水材を落下させることができ、疎水材を弾丸暗渠56内に投入することができる。また、小径管23の管壁で上部連通口24や下部連通口25を覆うように小径管23を回動させることにより、疎水材ホッパー13から疎水材投入部14への疎水材の落下を遮断することができる。なお、遮蔽手段の構造は任意であり、板状部材を回動させたり、スライドさせたりして疎水材ホッパー13と疎水材投入部14との間を開閉するようにしてもよい。なお、遮断手段21は、疎水材ホッパー13と疎水材投入部14との間の通路を完全に仕切る必要はなく、通路を狭めるようにするだけでも疎水材を落下させないようにすることができる。
【0025】
図11は、水田に隣接した畑作地(転作田)の縁部に弾丸暗渠を形成した例を示す断面図である。水田71に隣接した畑作地72では、水田71からの浸透水によってぬかるんだ状態になることが多く、畑作物に悪影響を与えることがある。従来は、水田71と畑作地72とを区画する畦畔73の畑作地72側にある程度の幅及び深さを有する溝を形成して対処していたが、このような溝を形成すると、溝形成時の土の処理の問題があり、水田に戻す際には埋め戻すための土を用意しなければならない。また、溝内の草刈りも必要になる。さらに、水田に戻した際には、埋め戻した溝の部分が柔らかいため、トラクターや田植機の走行に支障を生じるという問題もある。
【0026】
このようなときに、畑作地72の縁部に、畦畔73に沿うようにして前述のような弾丸暗渠56を形成することにより、水田71からの浸透水を弾丸暗渠56によって排水路等に排水することができるので、浸透水が畑作地72に浸入してぬかるんだ状態になることを防止できる。この場合も、疎水材55を充填した溝部51の底部に疎水材55が存在しない弾丸部52を有する弾丸暗渠56を形成することにより、畑作地72が水田71より低位置にあっても、水田71からの浸透水を確実に排除することができる。
【0027】
また、従来の溝の形成に比べて土の処理の問題は全く発生せず、特別な草刈りも不要となる。さらに、弾丸暗渠56を形成した畑作地72を水田に戻すときは、弾丸暗渠56をそのままの状態にして排水路側端部のみを塞いで水の流出を抑えればよく、トラクターや田植機の走行にも問題はない。
【0028】
このように畑作地72や水田の縁部に畦畔に沿うように弾丸暗渠を形成する際には、図12の平面図に示すように、ブルドーザ31の排土板32の端部に弾丸暗渠形成装置11を装着することにより、畦畔の直近に弾丸暗渠56を形成することができる。なお、ガイド板を設けた状態としておいてもよいが、少なくとも畦畔側にはガイド板を設けないようにすれば、より畦畔に近い位置に弾丸暗渠を形成することが可能である。
【0029】
また、ブルドーザ31に弾丸暗渠形成装置11を装着したときには、前述のように、走行方向に直交するような方向の畦畔の近傍まで弾丸暗渠56を形成できるので、畑作地72の隅部まで弾丸暗渠56を形成することができ、2方向あるいは3方向が水田71や水路に隣接した畑作地72における2方向あるいは3方向の畦畔73に沿う方向の弾丸暗渠56を隅部で連続させることが可能であり、排水性を更に向上させることができる。
【0030】
さらに、図13に示すように、疎水材55が充填された溝部51の底部に疎水材55が存在しない弾丸部52を有する弾丸暗渠56を形成する際に、弾丸部52の周壁に土壌硬化剤81を注入することにより、弾丸部52の耐久性を向上させることができる。土壌硬化剤81の注入は、図14乃至図16に示す要部正面図に示すようにして行うことができる。
【0031】
まず、図14は、前記疎水材投入部の下方、ブレード部15の後方で、弾丸17の前方に、土壌硬化剤81を溝内に注入するための土壌硬化剤注入ノズル82を設けた例を示している。この土壌硬化剤注入ノズル82は、弾丸暗渠形成装置11の上部あるいは作業機に設けられた土壌硬化剤供給手段(図示せず)にパイプ83を介して接続されている。土壌硬化剤81は、その性状に応じた手段で溝内に注入されもので、例えば、土壌硬化剤81が液状やスラリー状の場合には、自然流下あるいはポンプによる圧送により、土壌硬化剤81を溝内に適当量注入することができる。
【0032】
弾丸17の前方に注入された土壌硬化剤81は、弾丸17の進行に伴って弾丸部52の周囲の地中に圧入され、弾丸部52の周壁が土壌硬化剤81によって固められることになる。
【0033】
図15は、弾丸17の内部に土壌硬化剤81を通すための内部流路84を設けるとともに、弾丸17の後部に土壌硬化剤81を放射状に噴出する複数の噴出ノズル85を設けた例を示している。噴出ノズル85から噴出した土壌硬化剤81は、その噴出力によって弾丸部52の周囲の地中に注入される。また、本例では、噴出ノズル85の後方に土壌硬化剤圧入用の補助弾丸86を設け、噴出ノズル85から噴出した土壌硬化剤81を補助弾丸86によって弾丸部52の周囲の地中に確実に注入するとともに、弾丸部52を所定形状に整形することができる。
【0034】
図16は、弾丸17の内部に土壌硬化剤81を通すための内部流路87を設けるとともに、弾丸17の後方にチェーンのような連結具88を用いて土壌硬化剤圧入用の第二弾丸89を連設した例を示している。土壌硬化剤81は、流路87を通って弾丸17の後端に開口したノズル部から弾丸部52内に注入され、後方の第二弾丸89によって弾丸部52の周囲の地中に注入され、同時に第二弾丸89によって弾丸部52が整形される。
【0035】
土壌硬化剤81には、稲等の作物に悪影響を及ぼさなければ各種のものを使用することが可能であり、例えば、軽焼マグネシアと溶性リン酸肥料又は炭酸塩を主原料とした土壌硬化剤(商品面:マグホワイト)を好適に使用することができる。
【0036】
図17及び図18は、疎水材補給用ホッパーを設けた形態例を示すもので、図17は要部の側面図、図18は要部の正面図である。この形態例は、前記疎水材ホッパー13の上部に、疎水材補給用ホッパー91と、該疎水材補給用ホッパー91内の疎水材55を前記疎水材ホッパー13内に投入する搬送手段92とを設けた例を示している。疎水材補給用ホッパー91は、通常は、疎水材ホッパー13よりも大きな容積を有するものであって、長い距離の弾丸暗渠を形成するのに十分な量の疎水材55を貯留できるように設定されている。
【0037】
また、搬送手段92は、疎水材補給用ホッパー91内の疎水材55を疎水材ホッパー13の上部に搬送するものであって、ベルトコンベヤやスクリューコンベヤを使用することができる。さらに、搬送手段92の作動を弾丸暗渠の形成操作と連動させることにより、必要部分にのみ疎水材55を投入することができ、例えば、図5に示した掘削開始準備時や掘削終了時には疎水材ホッパー13に疎水材55を投入せず、図7に示すように所定位置に弾丸暗渠56を形成するときにのみ疎水材55を疎水材ホッパー13に投入することにより、疎水材55の無駄な消費を抑えることができる。
【0038】
疎水材補給用ホッパー91及び搬送手段92は、両者を一体的に形成してもよく、別々に形成して組み合わせて使用するようにしてもよい。また、ブルドーザの排土板32への装着やトラクタへの装着は、適当なアタッチメントを製作すればよく、任意の手法でこれらを所定位置に装着することができる。さらに、搬送手段の駆動は、作業機から供給する電源や油圧を利用することが可能であり、別途発電機等を用意することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
11…弾丸暗渠形成装置、12…作業機装着部、13…疎水材ホッパー、14…疎水材投入部、15…ブレード部、16…疎水材投入口、17…弾丸、18…ガイド板、19…チェーン、21…遮断手段、22…大径管部、23…小径管、24…上部連通口、25…下部連通口、26…上部開口、27…下部開口、31…ブルドーザ、32…排土板、51…溝部、52…弾丸部、53…暗渠排水パイプ、54…暗渠排水溝、55…疎水材、56…弾丸暗渠、57…畦畔、71…水田、72…畑作地、73…畦畔、81…土壌硬化剤、82…土壌硬化剤注入ノズル、83…パイプ、84…内部流路、85…噴出ノズル、86…補助弾丸、87…内部流路、88…連結具、89…第二弾丸、91…疎水材補給用ホッパー、92…搬送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブルドーザの前部に上下方向に移動可能に設けられている排土板に装着支持された作業機装着部と、該作業機装着部に一体的に設けられた疎水材ホッパーと、該疎水材ホッパーの下部に連設された疎水材投入部と、該疎水材投入部の弾丸暗渠掘削方向前方に設けられた溝形成用のブレード部と、疎水材投入部の弾丸暗渠掘削方向後方下部に設けられた疎水材投入口と、該疎水材投入口よりも弾丸暗渠掘削方向後方に設けられた弾丸とを備えた弾丸暗渠形成装置により弾丸暗渠を形成する方法において、前記排土板を上昇させた前記ブルドーザを弾丸暗渠の形成開始位置より弾丸暗渠掘削方向手前側に位置させ、前記ブルドーザを前進させるとともに前記排土板を下降させて前記疎水材投入部、ブレード部、疎水材投入口及び弾丸を地中に挿入していき、前記ブルドーザの前進と前記排土板の下降とにより、前記ブレード部の先端で溝部を掘削し、該溝部の底部に弾丸による弾丸部を形成しながら前記弾丸暗渠形成装置の下部を地中に進入させ、形成する弾丸暗渠の深さに応じた深さまで前記ブレード部が地中に挿入した状態となったときに前記排土板の下降を停止し、前記疎水材ホッパー内に疎水材を投入し、前記ブルドーザを前進させることにより、前記ブレード部にて溝部を掘削形成するとともに、前記疎水材ホッパー内から前記疎水材投入部に落下した前記疎水材を前記疎水材投入口を通して前記溝部の下部に投入し、前記疎水材投入口の後方から進んでくる前記弾丸により、前記溝部の底部及び前記疎水材の下部を押し拡げ、前記疎水材を投入充填した溝部の底部に疎水材が存在しない弾丸部を有する弾丸暗渠を形成し、弾丸暗渠形成終端位置に、前記弾丸暗渠形成装置が至ったときに、前記ブルドーザを停止させた後、前記排土板を上昇させて前記疎水材投入部、ブレード部及び弾丸を地中から引き抜くことを特徴とする弾丸暗渠形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−281204(P2010−281204A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213651(P2010−213651)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【分割の表示】特願2004−143079(P2004−143079)の分割
【原出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(596029085)株式会社パディ研究所 (28)