説明

弾力性靴下

【課題】多くの使用者の適切な靴下サイズ選択を容易とし、又、靴下を装着した所定の位置に適切な圧迫圧を与えることで、下肢静脈還流障害等の疾患予防又は治療等が効果的に行えるようにし、さらに製造上も在庫管理上も経済性の良い弾力性靴下群を提供する。
【解決手段】少なくとも足首部、ふくらはぎ部を覆い、足首部からふくらはぎ部へと順次圧迫圧が弱くなる圧迫圧分布を備える複数のサイズ群からなる弾力性靴下において、前記サイズ群は、少なくとも足首部周囲長A(cm)と、ふくらはぎ部周囲長C(cm)とに基づいて定めた5サイズ(SS、S、M、L、LL)からなり、SS、S、M、L、LLの足首部周囲長A(cm)及びふくらはぎ部周囲長C(cm)を、それぞれ、ASS、AS、AM、AL、ALL及びCSS、CS、CM、CL、CLLとしたとき、これらの各サイズの足首部周囲長A(cm)及びふくらはぎ部周囲長C(cm)を、所定の寸法範囲に定める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾力性を有する靴下、特に、下肢の静脈還流障害やリンパ浮腫等の疾患の予防又は治療に使用する医療用、あるいは日常生活における下肢の疲れやむくみの予防又は軽減に使用する生活用の弾力性靴下に関する。本発明の対象となる弾力性靴下の形態は、腰から足部までを覆うパンティーストッキング、大腿上部から足部までを覆うストッキング、膝から足部までを覆うハイソックス等がある。なお、前記各種形態において、踵部、足先部、又は足首部より下の足部を部分的に覆わないものであっても良い。
【背景技術】
【0002】
従来から下肢に対する圧迫が静脈環流の促進に有効であることが知られており、水中で下肢にかかる圧力、すなわち静水圧と同様に、足首部から大腿上部に向けて段階的に圧力が減少するように設計した治療用靴下が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
又、静水圧の理論に基づき足首部における圧迫圧を100%としたときに、膝下部(腓骨頭頂部)70%、大腿中央部50%、大腿上部40%となることを特徴とした治療用弾力性靴下のガイドラインが西ドイツで制定されており(RAL−GZ387,1972)、同様の理論に基づき足首部における圧迫圧を100%としたときに、ふくらはぎ部70%、大腿中央部49%となることを特徴とした弾力性靴下が英国でも標準規格化されている(BS6612,1985)。
【0004】
ところで、従来の弾力性靴下は、少ないデータや経験的に得られた下肢の太さ、欧米人の体型データに基づき得られた下肢の太さに基づいて各部の張力が設計されており、日本人の体型では、適正な圧迫圧を得ることができない。また、さまざまなサイズの製品を作る場合、一般的に、標準的なサイズを設計して、他のサイズは標準的なサイズを拡大または縮小して設計されている。
【0005】
しかしながら、生物界では、小さな生物には小さな生物特有のプロポーション、大きな生物には大きな生物特有のプロポーションというように、大きさの変化にともなってプロポーションがかわるアロメトリーという現象が知られており、標準的なサイズを単に拡大、縮小しただけでは、適切なサイズは得られない問題がある。従って、このようなサイズ設計で得られた弾力性靴下では、サイズが合わない人の群が多く存在する問題があり、靴下に施した前記圧迫圧分布が装着時に有効に発揮されない問題があった。
【0006】
又、前記のような単にサイズを拡大、縮小するといったサイズ調整に基づくサイズ展開であれば、仮に多くの靴下サイズを用意したとしても、効率的に多くの人たちの装着時のフィット性を向上させることは望めず、在庫規模の増大や製造上の歩留まりが悪くなるという問題が発生する。
【0007】
【特許文献1】実開平3−85025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、本発明の課題は、多くの使用者の適切な靴下サイズ選択を容易とし、又、靴下を装着した所定の位置に適切な圧迫圧を与えることで、下肢静脈還流障害等の疾患の予防又は治療等が効果的に行える弾力性靴下群を提供することにある。さらに製造上も在庫管理上も経済性の良い弾力性靴下群を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明は、少なくとも足首部、ふくらはぎ部を覆い、前記足首部から前記ふくらはぎ部へと順次圧迫圧が弱くなる圧迫圧分布を備える複数のサイズ群からなる弾力性靴下において、前記サイズ群は、少なくとも足首部周囲長A(cm)と、ふくらはぎ部周囲長C(cm)とに基づいて定めた5サイズ(SS、S、M、L、LL)からなり、前記SS、S、M、L、LLの足首部周囲長A(cm)及びふくらはぎ部周囲長C(cm)を、それぞれ、ASS、AS、AM、AL、ALL及びCSS、CS、CM、CL、CLLとしたとき、これらの各サイズの足首部周囲長A(cm)及びふくらはぎ部周囲長C(cm)を、以下のとおりに定めたことを特徴とする(請求項1)。
サイズSS :ASS=17.0±2.0、 CSS=27.0±3.0
サイズS :AS =19.0±2.0、 CS =31.0±3.0
サイズM :AM =21.0±2.0、 CM =35.0±3.0
サイズL :AL =23.0±2.0、 CL =39.0±3.0
サイズLL :ALL=25.0±2.0、 CLL=43.0±3.0
【0010】
また、前記請求項1の発明の実施態様としては、下記請求項2ないし9の発明が好ましい。即ち、前記請求項1に記載の弾力性靴下において、前記足首部、ふくらはぎ部に加えて、少なくとも、膝部、大腿上部を覆い、前記足首部から大腿上部へと順次圧迫圧が弱くなる圧迫圧分布を備え、膝部周囲長K(cm)及び大腿上部周囲長T(cm)を、それぞれ、KSS、KS、KM、KL、KLL及びTSS、TS、TM、TL、TLLとしたとき、これらの各サイズの膝部周囲長K(cm)及び大腿上部周囲長T(cm)を、以下のとおりに定めたことを特徴とする(請求項2)。
サイズSS :KSS=30.5±3.5、 TSS=44.5±4.5
サイズS :KS =33.5±3.5、 TS =48.5±4.5
サイズM :KM =35.0±4.0、 TM =51.5±4.5
サイズL :KL =37.5±4.5、 TL =54.5±4.5
サイズLL :KLL=39.5±4.5、 TLL=59.5±4.5
【0011】
さらに、前記請求項1に記載の弾力性靴下において、日本人の人体計測に関するデータにおける足首部周囲長及びふくらはぎ部周囲長の分布を5つに区分し、この区分された分布範囲内に、前記計測対象の日本人が90%以上網羅されるように、前記ASS、AS、AM、AL、ALL及びCSS、CS、CM、CL、CLLの各サイズの足首部周囲長及びふくらはぎ部周囲長を、統計処理した結果に基づいて定めたことを特徴とする(請求項3)。
【0012】
また、前記請求項2に記載の弾力性靴下において、請求項1に記載したサイズSS、サイズS、サイズM、サイズL、サイズLLの該当者を抽出し、前記該当者の膝部周囲長及び大腿上部周囲長の分布を、前記計測対象の日本人が前記サイズごとに75%以上ずつ網羅されるように、前記KSS、KS、KM、KL、KLL及びTSS、TS、TM、TL、TLLの各サイズの膝部周囲長及び大腿上部周囲長を、日本人の人体計測に関するデータから統計処理した結果に基づいて定めたことを特徴とする(請求項4)。
【0013】
さらに、前記請求項1に記載の弾力性靴下において、下記足型にそれに対応するサイズの弾力性靴下を装着させた時に、足首部の圧迫圧が18〜67hPa、ふくらはぎ部の圧迫圧が足首部の50〜80%の範囲となるように5サイズを構成したことを特徴とする(請求項5)。
サイズSSの足型:足首部周囲長17.0cm、ふくらはぎ部周囲長27.0cm、膝部周囲長30.5cm、大腿上部周囲長44.5cmを有する足型。
サイズSの足型:足首部周囲長19.0cm、ふくらはぎ部周囲長31.0cm、膝部周囲長33.5cm、大腿上部周囲長48.5cmを有する足型。
サイズMの足型:足首部周囲長21.0cm、ふくらはぎ部周囲長35.0cm、膝部周囲長35.0cm、大腿上部周囲長51.5cmを有する足型。
サイズLの足型:足首部周囲長23.0cm、ふくらはぎ部周囲長39.0cm、膝部周囲長37.5cm、大腿上部周囲長54.5cmを有する足型。
サイズLLの足型:足首部周囲長25.0cm、ふくらはぎ部周囲長43.0cm、膝部周囲長39.5cm、大腿上部周囲長59.5cmを有する足型。
【0014】
また、前記請求項2に記載の弾力性靴下において、下記足型にそれに対応するサイズの弾力性靴下を装着させた時に、足首部の圧迫圧が18〜67hPa、ふくらはぎ部の圧迫圧が足首部の50〜80%、膝部の圧迫圧が足首部の50〜80%、大腿上部の圧迫圧が足首部の20〜60%の範囲となるように5サイズを構成したことを特徴とする(請求項6)。
サイズSSの足型:足首部周囲長17.0cm、ふくらはぎ部周囲長27.0cm、膝部周囲長30.5cm、大腿上部周囲長44.5cmを有する足型。
サイズSの足型:足首部周囲長19.0cm、ふくらはぎ部周囲長31.0cm、膝部周囲長33.5cm、大腿上部周囲長48.5cmを有する足型。
サイズMの足型:足首部周囲長21.0cm、ふくらはぎ部周囲長35.0cm、膝部周囲長35.0cm、大腿上部周囲長51.5cmを有する足型。
サイズLの足型:足首部周囲長23.0cm、ふくらはぎ部周囲長39.0cm、膝部周囲長37.5cm、大腿上部周囲長54.5cmを有する足型。
サイズLLの足型:足首部周囲長25.0cm、ふくらはぎ部周囲長43.0cm、膝部周囲長39.5cm、大腿上部周囲長59.5cmを有する足型。
【0015】
前記請求項1ないし6の発明によれば、従来のように、単にサイズを拡大、縮小するといったサイズ調整に基づくサイズ展開とは異なり、高い網羅性により、多くの人たちの装着時のフィット性を向上させることができる。従って、靴下を装着した所定の位置に適切な圧迫圧を与えることができ、下肢静脈還流障害等の疾患の予防又は治療等が効果的に行える弾力性靴下群を提供することができる。
【0016】
なお、本発明において、足首部とは、内果及び外果の上方における下腿の最小水平周囲部分であり、その周囲長が足首部周囲長である。ふくらはぎ部とは、下腿の最大水平周囲部分であり、その周囲長がふくらはぎ部周囲長である。又、膝部とは、膝蓋骨中心を通る下肢の水平周囲部分であり、その周囲長が膝部周囲長である。大腿上部とは、臀溝以下における大腿の最大水平周囲部分であり、その周囲長が大腿上部周囲長である。また、前記本発明の作用効果については、前記各発明が互いに密接に関連するので、後述する[発明を実施するための最良の形態]の項において、体系的に詳述する。
【0017】
さらに、疾患の予防又は治療対象に応じて、適切な圧迫圧を選択することが望ましく、この観点から、下記請求項7ないし9の発明が好ましい。即ち、請求項5又は6に記載の弾力性靴下において、その用途が、静脈血栓症予防用又は静脈瘤予防用の場合、足首部の圧迫圧を18〜27hPaの範囲とする(請求項7)。また、静脈瘤治療用の場合であって病態が比較的軽度の場合、足首部の圧迫圧を26〜54hPaの範囲とする(請求項8)。さらに、静脈瘤治療用であって病態が比較的重度の場合、もしくはリンパ浮腫治療用の場合、足首部の圧迫圧を53〜67hPaの範囲とする(請求項9)。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、多くの使用者の適切な靴下サイズ選択を容易とし、又、靴下を装着した所定の位置に適切な圧迫圧を与えることで、下肢静脈還流障害等の疾患の予防又は治療等が効果的に行える弾力性靴下群を提供することができ、さらに製造上も在庫管理上も経済性の良い弾力性靴下群を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、図1〜6に基づき、本発明の実施形態について述べる。
本発明は、請求項1の発明のように、少なくとも足首部、ふくらはぎ部を覆い、前記足首部から前記ふくらはぎ部へと順次圧迫圧が弱くなる圧迫圧分布を備える複数のサイズ群からなる弾力性靴下において、前記サイズ群は、少なくとも足首部周囲長Aと、ふくらはぎ部周囲長Cとに基づいて定めた所定の5サイズ(SS、S、M、L、LL)からなるものとし、また、請求項2の発明のように、前記足首部、ふくらはぎ部に加えて、少なくとも、膝部、大腿上部を覆い、前記足首部から大腿上部へと順次圧迫圧が弱くなる圧迫圧分布を備え、所定の膝部周囲長K及び大腿上部周囲長Tを定めたものとする。
【0020】
また、請求項6の発明のように、後述する圧迫圧測定方法に基づく圧迫圧が、足首部で18〜67hPa、ふくらはぎ部で足首部の50〜80%の範囲となるように5サイズの靴下群を構成することが好ましく、さらにストッキングタイプの弾力性靴下の場合には、膝部で足首部の50〜80%、大腿上部で足首部の20〜60%の範囲となるように5サイズの靴下群を定めることが好ましい。特に、足首部の圧迫圧が18〜27hPaの範囲となるように5サイズの靴下群を構成することで静脈血栓症予防又は静脈瘤予防に効果的な弾力性靴下が得られる。また、足首部の圧迫圧が26〜54hPaの範囲となるように5サイズの靴下群を構成することで、比較的軽度の静脈瘤治療に効果的な弾力性靴下が得られる。また、足首部の圧迫圧が53〜67hPaの範囲となるように5サイズの靴下群を構成することで、比較的重度の静脈瘤治療又はリンパ浮腫治療に効果的な弾力性靴下が得られる。
【0021】
前記圧迫圧測定方法は、圧力測定器MST(Salzmann AG社製)を使用し、次の手順で測定する。先ず、硬質の木製又はプラスチック製の足型の足首部、ふくらはぎ部、膝部、大腿上部の各部位に測定器のプローブを設置する。足型群(下記)は、以下のような周囲長の円筒断面を有する5サイズ群で、周囲長の設定方法については後述する。測定の際は、この足型群に対応するサイズの弾力性靴下を足型に装着し、前記各部位の圧力を測定し、この値を圧迫圧とする。
【0022】
(足型群)
サイズSSの足型:足首部周囲長17.0cm、ふくらはぎ部周囲長27.0cm、膝部周囲長30.5cm、大腿上部周囲長44.5cmを有する足型。
サイズSの足型:足首部周囲長19.0cm、ふくらはぎ部周囲長31.0cm、膝部周囲長33.5cm、大腿上部周囲長48.5cmを有する足型。
サイズMの足型:足首部周囲長21.0cm、ふくらはぎ部周囲長35.0cm、膝部周囲長35.0cm、大腿上部周囲長51.5cmを有する足型。
サイズLの足型:足首部周囲長23.0cm、ふくらはぎ部周囲長39.0cm、膝部周囲長37.5cm、大腿上部周囲長54.5cmを有する足型。
サイズLLの足型:足首部周囲長25.0cm、ふくらはぎ部周囲長43.0cm、膝部周囲長39.5cm、大腿上部周囲長59.5cmを有する足型。
【0023】
前記SS、S、M、L、LLの5サイズの各部位の周囲長(周囲長範囲)、およびそれに対応する足型の各部位の周囲長は、例えば、以下のように定めることができる。まず、人の足首部とふくらはぎ部の周囲長を集計し、縦軸にふくらはぎ部の周囲長、横軸に足首部の周囲長をとった図1に示すような分布図を作成する。次に、足首部およびふくらはぎ部に前記した好適な圧迫圧範囲が付与可能であるとともに、少ないサイズ数で多くの人を網羅できるように5サイズの周囲長範囲を区分する。さらに、各サイズの足首部とふくらはぎ部の周囲長範囲の中央値に基づいて足型群の足首部およびふくらはぎ部の周囲長を定めることができる。図1では、日本人約1万人の足首部とふくらはぎ部の周囲長分布と、その人数の97.8%を網羅する長方形の囲いで区画された5サイズの周囲長範囲を示している。このように、日本人の人体計測に関するデータを使用する場合、足首部周囲長(周囲長範囲)及びふくらはぎ部周囲長(周囲長範囲)は、前述のように区分された周囲長の分布範囲内に、計測対象の日本人が90%以上網羅されるように、統計処理してその範囲を定めることが好ましい。
【0024】
次に、大腿上部周囲長および膝部周囲長の定め方について説明する。足首部周囲長とふくらはぎ部周囲長から定めた前記各サイズの該当者を抽出し、その人たちの大腿上部および膝部における周囲長の分布をサイズごとに作成し、膝部および大腿上部に前記した好適な圧迫圧範囲が付与可能であるとともに、できるだけ多くの人を網羅できるように周囲長範囲を区分する。さらに、各サイズに該当する人の膝部と大腿上部の周囲長範囲の中央値に基づいて、足型群の膝部および大腿上部の周囲長を定めることができる。図2では、図1の計測データから抽出した足首部とふくらはぎ部がSSサイズに該当する人の大腿上部と膝部の周囲長分布と、その人数の85%を網羅する周囲長範囲を長方形の囲いで示している。同様に、図3〜6では、図1の計測データから抽出した足首部とふくらはぎ部がそれぞれS、M、L、LLサイズに該当する人の大腿上部と膝部の周囲長分布と、各サイズの人数をそれぞれ83%、82%、81%、78%ずつ網羅する周囲長範囲を長方形の囲いで示している。このように、日本人の人体計測に関するデータを使用する場合、膝部周囲長(周囲長範囲)及び大腿上部周囲長(周囲長範囲)は、各サイズに該当する人の周囲長の分布範囲内に、計測対象の日本人がサイズごとに75%以上網羅されるように、統計処理してその範囲を定めることが好ましい。
【0025】
本発明では、前記のような方法に基づき各サイズの各部における周囲長を決定し足型を作成することで、単に、ある特定サイズの足型を拡大、縮小した場合と比較して、より多くの人に適切にフィットする靴下群を比較的少ないサイズ群で提供することが可能になる。さらに、本発明では、足首部、ふくらはぎ部、膝部、大腿上部の4箇所の周囲長データを足型に反映させているので、治療に有効な圧迫圧をより適切な位置に付与することができる。このような、各部位の周囲長データは、日本人1万人以上のデータを使用することが好ましく、例えば、日本人の人体計測データ1992〜1994(社団法人 人間生活工学研究センター)からランダムに抽出された20歳〜80歳の男女10191名(男性5033名・女性5158名)のデータを使用することができる。
【0026】
次に、弾力性靴下の構造について述べる。本発明の弾力性靴下における編構造は、従来と同様の編構造を採用でき、例えば、平編み、ゴム編、パール編等が利用できる。又、使用する糸も従来と同様のものを採用でき、編構造の編目を構成する糸にナイロンマルチフィラメント、その編目に横方向から挿入する糸としてポリウレタン弾性糸が使用できる。この横方向に挿入する弾性糸としては、ポリウレタン弾性糸を芯糸としその周囲に他の糸を巻きつけたカバードヤーンが特に好ましい。靴下の圧迫圧は、糸の密度、編み目の大きさ、弾性糸の伸張度をコントロールすることで、所定の値を付与することができる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明の実施例について以下に述べる。
【0028】
本発明のサイズ設定に基づくストッキングタイプの弾力性靴下を5サイズ編成し、各サイズともに前記足型の足首部で18〜27hPa、ふくらはぎ部で9〜21.6hPa、膝部で9〜21.6hPa、大腿上部で3.6〜16.2hPaの圧迫圧が得られたことを確認した。尚、この弾力性靴下は、50デニールのナイロンマルチフィラメントで構成した平編み組織に、ポリウレタン弾性糸を芯糸として2本のナイロンフィラメントでダブルカバリングした520デニールのダブルカバリング糸をインレイ糸として挿入することで編成したものである。
【0029】
次に、ランダムに選んだ男女50人に、この5サイズの弾力性靴下群のなかからサイズを選定してもらったところ、すべての人が各部位の周囲長範囲に適合するサイズを選択することができた。これにより、すべての部位で静脈血栓症予防用、静脈瘤予防用として好ましい圧迫圧(足首部で18〜27hPa、ふくらはぎ部で9〜21.6hPa、膝部で9〜21.6hPa、大腿上部で3.6〜16.2hPa)が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】足首部とふくらはぎ部の周囲長分布を示す図。
【図2】SSサイズ該当者の膝部と大腿上部の周囲長分布を示す図。
【図3】Sサイズ該当者の膝部と大腿上部の周囲長分布を示す図。
【図4】Mサイズ該当者の膝部と大腿上部の周囲長分布を示す図。
【図5】Lサイズ該当者の膝部と大腿上部の周囲長分布を示す図。
【図6】LLサイズ該当者の膝部と大腿上部の周囲長分布を示す図。
【符号の説明】
【0031】
なし


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも足首部、ふくらはぎ部を覆い、前記足首部から前記ふくらはぎ部へと順次圧迫圧が弱くなる圧迫圧分布を備える複数のサイズ群からなる弾力性靴下において、
前記サイズ群は、少なくとも足首部周囲長A(cm)と、ふくらはぎ部周囲長C(cm)とに基づいて定めた5サイズ(SS、S、M、L、LL)からなり、前記SS、S、M、L、LLの足首部周囲長A(cm)及びふくらはぎ部周囲長C(cm)を、それぞれ、ASS、AS、AM、AL、ALL及びCSS、CS、CM、CL、CLLとしたとき、これらの各サイズの足首部周囲長A(cm)及びふくらはぎ部周囲長C(cm)を、以下のとおりに定めたことを特徴とする弾力性靴下。
サイズSS :ASS=17.0±2.0、 CSS=27.0±3.0
サイズS :AS =19.0±2.0、 CS =31.0±3.0
サイズM :AM =21.0±2.0、 CM =35.0±3.0
サイズL :AL =23.0±2.0、 CL =39.0±3.0
サイズLL :ALL=25.0±2.0、 CLL=43.0±3.0
【請求項2】
前記足首部、ふくらはぎ部に加えて、少なくとも、膝部、大腿上部を覆い、前記足首部から大腿上部へと順次圧迫圧が弱くなる圧迫圧分布を備え、膝部周囲長K(cm)及び大腿上部周囲長T(cm)を、それぞれ、KSS、KS、KM、KL、KLL及びTSS、TS、TM、TL、TLLとしたとき、これらの各サイズの膝部周囲長K(cm)及び大腿上部周囲長T(cm)を、以下のとおりに定めたことを特徴とする請求項1に記載の弾力性靴下。
サイズSS :KSS=30.5±3.5、 TSS=44.5±4.5
サイズS :KS =33.5±3.5、 TS =48.5±4.5
サイズM :KM =35.0±4.0、 TM =51.5±4.5
サイズL :KL =37.5±4.5、 TL =54.5±4.5
サイズLL :KLL=39.5±4.5、 TLL=59.5±4.5
【請求項3】
日本人の人体計測に関するデータにおける足首部周囲長及びふくらはぎ部周囲長の分布を5つに区分し、この区分された分布範囲内に、前記計測対象の日本人が90%以上網羅されるように、前記ASS、AS、AM、AL、ALL及びCSS、CS、CM、CL、CLLの各サイズの足首部周囲長及びふくらはぎ部周囲長を、統計処理した結果に基づいて定めたことを特徴とする請求項1に記載の弾力性靴下。
【請求項4】
請求項1に記載したサイズSS、サイズS、サイズM、サイズL、サイズLLの該当者を抽出し、前記該当者の膝部周囲長及び大腿上部周囲長の分布を、前記計測対象の日本人が前記サイズごとに75%以上ずつ網羅されるように、前記KSS、KS、KM、KL、KLL及びTSS、TS、TM、TL、TLLの各サイズの膝部周囲長及び大腿上部周囲長を、日本人の人体計測に関するデータから統計処理した結果に基づいて定めたことを特徴とする請求項2に記載の弾力性靴下。
【請求項5】
下記足型にそれに対応するサイズの弾力性靴下を装着させた時に、足首部の圧迫圧が18〜67hPa、ふくらはぎ部の圧迫圧が足首部の50〜80%の範囲となるように5サイズを構成したことを特徴とする請求項1記載の弾力性靴下。
サイズSSの足型:足首部周囲長17.0cm、ふくらはぎ部周囲長27.0cm、膝部周囲長30.5cm、大腿上部周囲長44.5cmを有する足型。
サイズSの足型:足首部周囲長19.0cm、ふくらはぎ部周囲長31.0cm、膝部周囲長33.5cm、大腿上部周囲長48.5cmを有する足型。
サイズMの足型:足首部周囲長21.0cm、ふくらはぎ部周囲長35.0cm、膝部周囲長35.0cm、大腿上部周囲長51.5cmを有する足型。
サイズLの足型:足首部周囲長23.0cm、ふくらはぎ部周囲長39.0cm、膝部周囲長37.5cm、大腿上部周囲長54.5cmを有する足型。
サイズLLの足型:足首部周囲長25.0cm、ふくらはぎ部周囲長43.0cm、膝部周囲長39.5cm、大腿上部周囲長59.5cmを有する足型。
【請求項6】
下記足型にそれに対応するサイズの弾力性靴下を装着させた時に、足首部の圧迫圧が18〜67hPa、ふくらはぎ部の圧迫圧が足首部の50〜80%、膝部の圧迫圧が足首部の50〜80%、大腿上部の圧迫圧が足首部の20〜60%の範囲となるように5サイズを構成したことを特徴とする請求項2記載の弾力性靴下。
サイズSSの足型:足首部周囲長17.0cm、ふくらはぎ部周囲長27.0cm、膝部周囲長30.5cm、大腿上部周囲長44.5cmを有する足型。
サイズSの足型:足首部周囲長19.0cm、ふくらはぎ部周囲長31.0cm、膝部周囲長33.5cm、大腿上部周囲長48.5cmを有する足型。
サイズMの足型:足首部周囲長21.0cm、ふくらはぎ部周囲長35.0cm、膝部周囲長35.0cm、大腿上部周囲長51.5cmを有する足型。
サイズLの足型:足首部周囲長23.0cm、ふくらはぎ部周囲長39.0cm、膝部周囲長37.5cm、大腿上部周囲長54.5cmを有する足型。
サイズLLの足型:足首部周囲長25.0cm、ふくらはぎ部周囲長43.0cm、膝部周囲長39.5cm、大腿上部周囲長59.5cmを有する足型。
【請求項7】
足首部の圧迫圧を18〜27hPaの範囲とすることを特徴とする請求項5又は6に記載の静脈血栓症予防用又は静脈瘤予防用の弾力性靴下。
【請求項8】
足首部の圧迫圧を26〜54hPaの範囲とすることを特徴とする請求項5又は6に記載の静脈瘤治療用の弾力性靴下。
【請求項9】
足首部の圧迫圧を53〜67hPaの範囲とすることを特徴とする請求項5又は6に記載の静脈瘤治療用又はリンパ浮腫治療用の弾力性靴下。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−45729(P2006−45729A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230305(P2004−230305)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】