説明

弾性波探査用の横波発生装置

【課題】 弾性波探査用の横波発生装置を提供する。
【解決手段】 地盤に形成された探査用試錐孔に挿入される本体と、試錐孔壁に接近及び離隔する方向に沿って移動可能に本体に設けられて、試錐孔壁に密着されることによって本体を試錐孔壁に固定させる固定体と、本体を第1方向に打撃して振動を発生させる第1打撃体と、本体を第1方向と反対方向である第2方向に打撃して振動を発生させる第2打撃体と、を備え、第1打撃体と第2打撃体とは、順次に本体を打撃して横波を発生させることを特徴とする弾性波探査用の横波発生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波を利用して岩盤及び地盤調査を行う弾性波探査装置に係り、特に、横波を主要弾性波として発生させる横波発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の剛性度計測など岩盤及び地盤を調べるための目的で弾性波探査が使われている。弾性波探査において、ダウンホール探査法とアップホール探査法とは一つの試錐孔を利用したものであって、特にダウンホール探査法は、試錐孔内に弾性波発生装置を挿入して試錐孔壁に衝撃を加えることによって弾性波を発生させ、地表面では地盤を通じて伝播された弾性波を、複数の受信機を利用して受信する方式で行われる。そして、クロスホール探査法では試錐孔を平行に二つ形成した後、一側の試錐孔には弾性波発生装置を挿入し、他の試錐孔には複数の受信機を挿入して弾性波を発信及び受信する。
【0003】
前記のような弾性波探査で使われる弾性波は実体波であって、自然では縦波(P波)と横波(S波)とが存在する。縦波と横波とは互いに相反しつつも互いに補完関係にある。すなわち、縦波は粒子の振動方向が波の進行方向と同一であり、固体、液体、機体のあらゆる媒質で伝えられうる一方、横波は粒子の振動方向が波の進行方向と垂直であり、固体中のみで伝えられる。
【0004】
一般的に岩盤、地盤の特性を把握するに当って、縦波を利用した探査が行われてきたが、これは、縦波が横波に比べて発生させやすく、伝播が容易であるためである。しかし、横波は岩石の色々な物性と相関度が高くて、縦波と共に横波を利用すれば、調査対象になる岩盤の性質と関連した多くの情報を得ることができる。例えば、せん断弾性率(shear modulus)、ポアソン比ヤング率及び縦波−横波速度比などの地盤についての情報を、弾性波探査を通じて獲得できる。
【0005】
一方、せん断弾性率のような情報は、縦波と横波の速度を変数として活用するところ、弾性波探査で縦波と横波の速度を測定することが非常に重要な要素であるが、一般的に縦波の到達時間の判読は容易である一方、横波は、縦波以後に現れる地層の不均質体による反射波、回転波及びP−S変換波により識別されるため、到達時間の判読が非常に困難である。これに、横波を利用した弾性波探査では、試錐孔壁に衝撃を加える時に上方向に打撃した後、下方向に再び打撃して位相が正反対になる横波を順次に発生させる。受信機では順次に発生した信号をそれぞれ受信し、受信した二つの信号を重畳させることによって位相差発生地点をピッキングでき、これを通じて横波の到達時点を明確に判別できる。
【0006】
従来の横波発生装置では、逆位相と弾性波を発生させるために、装置を試錐孔壁に固定させた後、人が直接打撃バーを装置に向けて自由落下させて下向き打撃を行い、上向き打撃は、打撃バーを縄に連結した後、装置の下部に配置させた状態で打撃バーを直接引き寄せて装置を打撃する方式で行われた。
【0007】
これに上向き打撃と下向き打撃とを同じ条件で行えないので、周波数と振幅が同一であり、位相のみ正反対である弾性波が発生せず、横波の初動抜すいに限界があった。また、打撃バーが縄に連結されていて縄と試錐孔壁との間に摩擦音が多く発生して、信号対ノイズ比を顕著に落とす問題点があった。
【0008】
また、従来のように縄に連結された打撃バーを人が直接打撃する方式は、試錐孔が垂直に形成された場合のみに使用可能であり、試錐孔が横方向に形成された場合、使用が不可能であるという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の問題点を解決するためのものであり、横波の初動抜すいを精密かつ容易に行え、試錐孔の形成方向に関係なく容易に使用できるように構造が改善された弾性波探査用の横波発生装置を提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明による横波発生装置は、地盤に形成された探査用試錐孔に挿入される本体と、前記試錐孔壁への接近及び離隔方向に沿って移動可能に前記本体に設けられて、前記試錐孔壁に密着されることによって前記本体を前記試錐孔壁に固定させる固定体と、前記本体を第1方向に打撃して振動を発生させる第1打撃体と、前記本体を前記第1方向と反対方向である第2方向に打撃して振動を発生させる第2打撃体と、を備え、前記第1打撃体と第2打撃体とは、順次に前記本体を打撃して横波を発生させることを特徴とする。
【0011】
また本発明によれば、付勢前記第1方向に沿って前記第1打撃体に対して接近及び離隔自在に設けられる第1移動板と、前記第1打撃体と第1移動板との間に配され、前記第1打撃体と第1移動板とが相互接近時に圧縮されて前記第1打撃体を前記第1方向に付勢する第1バネと、前記第2方向に沿って前記第2打撃体に対して接近及び離隔自在に設けられる第2移動板と、前記第2打撃体と第2移動板との間に配され、前記第2打撃体と第2移動板とが相互接近時に圧縮されて前記第2打撃体を前記第2方向に付勢する第2バネと、をさらに備えることが望ましく、前記第1バネと第2バネとは、バネ定数が同一であり、前記第1バネと第2バネとが圧縮された後、前記第1打撃体及び第2打撃体に加える力は同じであることがさらに望ましい。
【0012】
また本発明によれば、前記第1打撃体と第2打撃体との間に配されるシリンダーと、前記シリンダーに往復動自在に設けられ、一端と他端とがそれぞれ前記第1移動板及び第2移動板に結合されるピストンをさらに備え、前記第1バネ及び第2バネは、前記ピストンの一側と他側とにそれぞれ挟み込まれて設けられ、前記シリンダーの作動によって前記第1移動板が前記本体に接近及び離隔する時、前記第2移動板は前記第1移動板とは逆に前記本体に離隔及び接近することがさらに望ましい。
【0013】
また本発明によれば、前記第1打撃体と第2打撃体との各端部にそれぞれ結合される第1フック及び第2フックと、前記第1フック及び第2フックに係止及び係止解除自在に、前記第1移動板及び第2移動板の端部にそれぞれ設けられる第1係止爪及び第2係止爪をさらに備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による弾性波探査用の横波発生装置は、上向き打撃と下向き打撃とを同じ力で行って、上向き打撃と下向き打撃によって発生する横波に類似した範囲で振幅と振動数などを持たせることによって、対比する二つの横波を利用して横波の到達時間を容易に測定でき、これを通じて横波の媒質内の伝達速度を正確に測定できるという長所がある。
【0015】
また、本発明による弾性波探査用の横波発生装置は、坑道の形成方向が垂直な場合はもとより水平な場合にも容易に適用できるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の望ましい実施形態による弾性波探査用の横波発生装置の概略的な斜視図である。
【図2】図1に図示された弾性波探査用の横波発生装置の概略的な分離斜視図である。
【図3】図2のIII−III線の概略的な断面図である。
【図4】図2のIV−IV線の概略的な断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による弾性波探査用の横波発生装置の一連の動作過程を説明するための図である。
【図6】本発明の一実施形態による弾性波探査用の横波発生装置の一連の動作過程を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態による弾性波探査用の横波発生装置の一連の動作過程を説明するための図である。
【図8】本発明の一実施形態による弾性波探査用の横波発生装置の一連の動作過程を説明するための図である。
【図9】本発明の一実施形態による弾性波探査用の横波発生装置の一連の動作過程を説明するための図である。
【図10】本発明の一実施形態による弾性波探査用の横波発生装置の一連の動作過程を説明するための図である。
【図11】アップホール探査法で本発明の一実施形態による弾性波探査用の横波発生装置が設けられた状態を示す図である。
【図12】図11に設けられた弾性波探査用の横波発生装置を通じて取得した弾性波受信信号を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照して本発明の望ましい実施形態による弾性波探査用の横波発生装置についてさらに詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の望ましい実施形態による弾性波探査用の横波発生装置の概略的な斜視図であり、図2は、図1に図示された弾性波探査用の横波発生装置の概略的な分離斜視図であり、図3は、図2のIII−III線の概略的な断面図であり、図4は、図2のIVV−IVV線の概略的な断面図であり、図11は、アップホール探査法において、本発明の一実施形態による弾性波探査用の横波発生装置が設けられた状態を示す図である。
【0019】
本発明による弾性波探査用の横波発生装置は、岩盤及び地盤調査に使われるものであって、アップホール探査法、ダウンホール探査法及びクロスホール探査法などにいずれも適用でき、横波を主要弾性波として使用する探査法はもとより、縦波と横波とを共に利用する探査法にも適用できる。
【0020】
図1ないし図4及び図11を調べれば、本発明の望ましい実施形態による弾性波探査用の横波発生装置100は、本体10、固定体20、第1打撃体30及び第2打撃体40を備える。
【0021】
本体10は、円筒状に形成されて調査対象になる地盤に形成された試錐孔hに挿入される。一般的に弾性波探査に使われる試錐孔の直径は75mmほどであるので、本実施形態で本体10の直径は、概ね50mm内外に製造される。また本体10は、後述する第1打撃体30及び第2打撃体40によってその上面及び下面が打撃されるところ、剛性の強い金属素材からなる。
【0022】
一方、本体10は、半径方向に沿って二部分に分けられ、一部には、後述する固定体20及び固定体20を駆動させるための装着シリンダー21が装着され、他の一部には、それ自体が後述する打撃シリンダーとして機能する部分であって、流体が充填される空間部11が形成されている。
【0023】
また本体10の上部には、金属素材の4個の上部ガードフレーム12、13、14、15が形成される。上部ガードフレーム12ないし15は、垂直に配されて後述する第1移動板54の移動をガイドする機能を行いつつ、パイプ形状になって流体の移送通路としても機能する。すなわち、ガードフレーム12ないし15のうち2つ(12、13)は、後述する装着シリンダー21を駆動させるための油圧ライン112、113と連結され、残りの2つ(14、15)は、後述する打撃シリンダーを駆動させるための油圧ライン114、115と連結される。油圧ライン112ないし115は、試錐孔hの外部の油圧装置と連結されて流体を流出・流入させる。
【0024】
そして、本体10の下部にも、上部ガードフレーム12ないし15と同様に下部ガードフレーム16、17、18、19が形成される。下部ガードフレーム16ないし18は、後述する第2移動板55の直進往復動をガイドする作用のみを行い、上部ガードフレームのように流体の移送通路として機能するのではない。
【0025】
固定体20は、本体10を試錐孔壁wに固定させるためのものであって、本体10に設けられる。固定体20は、一定厚さの板状に本体10の長手方向に沿って長く形成され、試錐孔壁wと接触する外側面には、試錐孔壁wとの摩擦を高めるために表面にデコボコな凹凸部21が形成されている。
【0026】
固定体20は、本体10に挿入される基本位置と、本体10から突出して試錐孔壁wに接近及び密着される固定位置との間で、本体10の半径方向に沿って移動可能である。
【0027】
固定体20を移動させるために、本体10の内側一部には3個の装着シリンダー22、23、24が設けられる。装着シリンダー22ないし24は、本体10の長手方向に沿って互いに離隔して配され、各装着シリンダー22ないし24に対して往復動する各ピストン22a、23a、24aは、固定体20の背面にねじによって結合されている。
【0028】
参照番号112で表示された油圧ライン112及びガードフレーム12を通じて流入された流体は、本体10の内部で分岐されて各装着シリンダー22ないし24の流入ポート(図示せず)に連結され、参照番号113で表示された油圧ライン113は、分岐されて各装着シリンダー22ないし24の排出ポート(図示せず)に連結される。装着シリンダー22ないし24への油圧の印加及び解除によって、ピストン22aないし24aが固定体20を基本位置と固定位置との間で往復動させる。図11に示したように、固定位置では、固定体20と本体10とはそれぞれ試錐孔壁wの一側と他側とにそれぞれ密着されることによって、本体10が試錐孔壁wに固定される。未説目の参照番号25、26は、固定体20の往復動をガイドするガイドレールである。
【0029】
第1打撃体30及び第2打撃体40は、本体10を打撃してその応力が試錐孔壁wに伝達されることによって弾性波を発生させるものである。打撃方向が試錐孔hの半径方向ではなく試錐孔hの長手方向に形成されるので、打撃によって発生する弾性波は縦波に比べて横波が優勢である。すなわち、縦波は、波の進行方向と波の振動方向とが同一であり、横波は、波の進行方向と振動方向とが垂直に形成される。衝撃方向が試錐孔hの半径方向に形成されるならば、縦波が優勢に発生するが、本実施形態のように打撃方向が試錐孔hの長手方向に形成されれば、弾性波の伝播方向と振動方向とが垂直に形成されて横波が優勢に発生する。
【0030】
第1打撃体30と第2打撃体とは、それぞれ本体10の上部と下部とに配されてそれぞれ第1方向と第2方向とに沿って本体10を打撃する。ここで、第1方向と第2方向とは正反対の方向であって、本実施形態で第1打撃体30は、垂直下方に本体10を打撃し、第2打撃体40は、垂直上方に本体10を打撃する。このように第1打撃体30と第2打撃体40とが正反対の方向に本体10を打撃する理由は、第1打撃体30によって発生する第1横波と、第2打撃体40によって発生する第2横波との位相差を正反対(180゜)にして、横波の到達時点を精密に測定するためであるが、詳細な説明は後述する。
【0031】
一方、第1打撃体30と第2打撃体40とは順次に本体10を打撃するが、第1、2打撃体30の駆動メカニズムについて説明する。
【0032】
前記のように、本体10は、第1打撃体30と第2打撃体40とを駆動するための打撃シリンダーとして機能する。すなわち、本体10の内部には流体が充填される空間部11が形成され、分離膜51は、空間部11に配されて空間部11を2個の部分に分離する。ただし、分離膜51は油圧の印加及び解除によって空間部11内で位置移動可能であるので、相互分離された部分の体積は変更される。空間部11の各端部には、流体が出入りする出入りポート(図示せず)が形成されており、流体の移動通路として作用するガードフレーム14、15は、それぞれ出入りポート(図示せず)に連結されて、油圧の印加及び解除によって空間部11に流体を注入及び排出させる。
【0033】
すなわち、分離膜51の一側に流体が注入されれば、分離膜51は他側に移動し、逆に分離膜51の他側に流体が注入されれば、分離膜51は一側に移動するように構成される。
【0034】
分離膜51の両側には、それぞれ1対の第1ピストン52と第2ピストン53とが結合される。第1及び第2ピストン52、53は分離膜51に固定されているので、分離膜51の移動時に垂直の方向に沿って共に往復動する。
【0035】
また第1ピストン52の端部には第1移動板54が結合され、第2ピストン53の端部には第2移動板55が結合されて、第1ピストン52と第2ピストン53の移動時に共に垂直の方向に沿って往復動する。
【0036】
一方、第1打撃体30は、第1ピストン52に挟み込まれて第1移動板54と本体10の上部との間で垂直の方向に沿って移動可能であり、第2打撃体40は、第2ピストン53に挟み込まれて第2移動板55と本体10の下部との間で垂直の方向に沿って移動可能である。
【0037】
また、第1打撃体30と第2打撃体40との各端部には、鉤状に形成された第1フック56と第2フック57とが設けられる。そして、図5を参照すれば、第1移動板54と第2移動板55とには、それぞれ第1フック56と第2フック57とに係止及び係止解除自在に鉤状に形成された第1係止爪58、59が設けられる。特に、第1係止爪58及び第2係止爪59は、各回動ポイントa、bを中心に回転自在に設けられる。
【0038】
第1打撃体30と第1移動板54との間及び、第2打撃体40と第2移動板55との間には、それぞれ1対の第1バネ35及び1対の第2バネ45が設けられる。1対の第1バネ35と1対の第2バネ45とは、それぞれ第1ピストン52及び第2ピストン53に挟み込まれる。打撃シリンダーに油圧が印加されて、第1移動板54と第1打撃体30または第2移動板55と第2打撃体40が相互接近すれば、第1バネ35または第2バネ45が圧縮され、圧縮された第1バネ35と第2バネ45とは、それぞれ第1打撃体30と第2打撃体40とを本体10側に付勢する。第1バネ35と第2バネ45とは同じ長さを持ち、かつバネ定数も同一であるので、第1バネ35と第2バネ45とが最大圧縮された状態で、それぞれ第1打撃体30と第2打撃体40とを付勢する力は同一である。
【0039】
一方、第1移動板54の上部と第2移動板55の下部とには、それぞれ第1押圧板62と第2押圧板63とが配される。第1押圧板62は、上部ガードフレーム12ないし15に挟み込まれて固定され、第2押圧板63は、下部ガードフレーム16ないし19に挟み込まれて固定される。第1押圧板62の下面及び第2押圧板63の上面にはそれぞれ第1突出部64及び第2突出部65が形成されている。これに第1移動板54が第1押圧板62に接近すれば、第1移動板54に回転自在に設けられた第1係止爪58の端部が第1突出部64に接触して第1係止爪58は回転し、同様に、第2移動板55が第2押圧板63に接近すれば、第2移動板55に回転自在に設けられた第2係止爪59の端部が第2突出部65に接触して、第2係止爪59も回転する。
【0040】
第1係止爪58と第2係止爪59との内部にはバネ(図示せず)が設けられて、第1係止爪58と第2係止爪59とが、図5に示したような垂直の姿勢を維持するように付勢する。
【0041】
以下、図5ないし図10を参考にして、前記の構成で形成された弾性波探査用の横波発生装置100の作動について詳細に説明する。
【0042】
まず前記構成の弾性波探査用の横波発生装置100を、図11に示したように、垂直に形成された試錐孔hに設置する。すなわち、油圧ライン112ないし115に吊り下げられている本体10を一定深さに試錐孔hに挿入させた後、装着シリンダー22、23、24を作動させてピストン23a、24a、25aを突出させる。固定体20と本体10とは、装着シリンダー22、23、24の作動によりそれぞれ試錐孔壁wに密着して、図11のように試錐孔壁wに固定される。固定体20の外側面に形成された凹凸部21は、試錐孔壁wとの摩擦を高めて本体10を試錐孔壁wに固く密着させる。
【0043】
前記の状態で打撃シリンダーの分離膜51は、図5に示したように打撃シリンダーの正中央に配されており、第1及び第2バネ35、45も完全に伸びた状態を維持している。
【0044】
打撃シリンダーの分離膜51の上部に油圧を印加すれば、分離膜51は、図6に示したように下側に移動し、第1ピストン52と第2ピストン53とは分離膜51に連動して垂直下方に移動する。第1移動板54が下部に引き寄せられることによって、第1バネ35は第1打撃体30の上面と第1移動板54の下面との間で圧縮される。しかし、第2バネ45は、第2打撃体40の自重のみによって押圧されるだけであり、打撃シリンダーによって圧縮されるものではない。
【0045】
また第1移動板54が下部に接近すれば、第1移動板54の第1係止爪58と第1打撃体30の第1フック56とが互いに接触し、第1係止爪58は回転しつつ図6に示したように、第1係止爪58と第1フック56とは互いに係止される。
【0046】
図6のような状態で、打撃シリンダーの分離膜51の下部に油圧を印加すれば、分離膜51は図7のように上部に移動し、第1係止爪58と第1フック56とが係止されているので、第1打撃体30も第1ピストン52上で共に上部に移動する。前記のように、第1係止爪58の内部にはバネ(図示せず)が設けられて、第1係止爪58が第1フック56との連結を維持する方向に付勢しているので、フック連結が解除される方向に回転することを防止するところ、フック連結が固く維持されうる。第1打撃体30と第1移動板54との間隔がそのまま維持されるところ、圧縮されている第1バネ35は圧縮された状態をそのまま維持する。
【0047】
しかし、第1移動板54が上昇し続けて第1押圧板62まで移動すれば、第1係止爪58の端部が第1押圧板62の第1突出部64に接触して回転することによって、図7に示したように、第1係止爪58と第1フック56との間のフック連結が解除される。また図7の状態では、第2移動板55が上部に引き寄せられつつ第2バネ45は圧縮され、第2係止爪59と第2フック57とは互いにフック連結され、第2係止爪59の内部に設けられたバネ(図示せず)は、フック連結が解除される方向に第2係止爪59が回転することを防止して、フック連結が固く維持されうる。
【0048】
図7のようにフック連結が解除されれば、第1打撃体30を垂直下方に付勢していた第1バネ35は、第1打撃体30を下側に押し出し、第1打撃体30は、図8に示したように本体10の上面を打撃する。第1打撃体30によって打撃された本体10は、試錐孔壁wと摩擦すれば、これを通じて横波が発生し、横波は地盤を通じて伝えられる。
【0049】
一方、第1打撃体30が本体10を打撃する時には第1及び第2ピストン52、53の位置移動がないところ、第2打撃体40と第2バネ45とは図7の状態をそのまま維持している。
【0050】
図8の状態のように第1打撃体30による下向き打撃が終了すれば、打撃シリンダーを再び作動して分離膜51を図9のように下部に移動させる。第2移動板55は第2押圧板63まで移動し、第2移動板55の第2係止爪59は、第2押圧板63の第2突出部65に押さえられて回転することによって、第2係止爪59と第2フック57との係止は解除される。この時、第1打撃体30の第1フック56と第1係止爪58とは再びフック連結される。
【0051】
一方、図9のように第2フック57と第2係止爪59との係止が解除される瞬間、圧縮されていた第2バネ45は第2打撃体40を上方に押し出すことによって、第2打撃体40は、図10に示したように本体10の下面を打撃する。第2打撃体40によって打撃された本体10は、固定体20と共に試錐孔壁wを振動させることによって横波を発生させる。
【0052】
第2打撃体40による打撃は、第1打撃体30の打撃方向と正反対方向に行われるところ、第1打撃体30によって発生した横波と第2打撃体40によって発生した横波とは、180゜の位相差を持つ。しかし、第1バネ35の圧縮力と第2バネ45の圧縮力とは完全に同じところ、第1打撃体30と第2打撃体40とによって発生した横波は、振幅、振動数などの物理的大きさにおいては完全に同一であり、位相のみ正反対に形成される。
【0053】
図12は、図11に設けられた弾性波探査用の横波発生装置を通じて実際に取得した弾性波受信信号を示すグラフである。本実施形態による弾性波探査用の横波発生装置100では横波が優勢に発生するが、縦波も一部発生する。受信機では速度が速い縦波が先ず受信され、以後に横波が受信される。
【0054】
横波は、縦波以後に現れる地層の不均質体による反射波、回転波及びP−S変換波により識別されるため、到達時間の判読が非常に困難である。受信機では順次に入る信号をそれぞれ受信し、受信された信号が、位相のみ反対であって振幅と振動数などが一致するか、または類似していれば、受信した二つの信号を重畳させることによって位相差発生地点をピッキングでき、これを通じて横波の到達時点を明確に判別できる。
【0055】
本発明では同じバネ定数を持っている第1バネ35と第2バネ45とが、同じ力で第1打撃体30と第2打撃体40とを本体10側に押し出すので、第1打撃体30と第2打撃体40とによって発生する横波の振幅、振動数は同一である。しかし、図12に示したように、第1打撃体30と第2打撃体40とにより発生した横波が互いに同一であるというのは、横波が同じ振幅、振動数などを持って互いに完全に対称になることを意味するものではなく、対比する二つの横波が互いに類似した振幅と振動数とを持ちながら位相が反対になる場合も含む。
【0056】
例えば、同じ第1バネ35と第2バネ45とが同じバネ定数を持っている場合であっても、試錐孔hが垂直に形成された場合、上向き打撃をする第2バネ45は第2打撃体40の自重を支える力が消耗されるところ、さらに詳細にいえば、下向き打撃をする第1バネ35に比べて第2打撃体40を押し出す力が小さいしかないので、発生する横波のプロファイルも若干変わりうる。しかし、対比する横波間の若干の差は、当業者ならば十分に認識できる。重要なのは、類似したエネルギーとプロファイルを持ちながら位相が正反対である二つの横波が時間差をおいて受信されれば、これらを通じて横波が媒質を伝播した速度を正確に測定できるということである。
【0057】
従来には位相車が正反対である横波を発生させるために、作業者が直接打撃体を自由落下させて下向き打撃を行い、打撃体を縄に吊って引き寄せることで上向き打撃を行うことによって、上向き打撃と下向き打撃とのエネルギー大きさの精度などが全く担保されていない。また、打撃体を縄に吊って使用するので、縄と試錐孔壁wとが摩擦されて信号対ノイズ比が非常に落ちた。これにより、上向き打撃と下向き打撃とを時間差をおいて行っても、これらによって発生した横波を正確に抜すいできないので、横波の伝播速度を精密に測定できなかった。
【0058】
しかし、本発明では上向き打撃と下向き打撃とを行う過程が、シリンダーとバネなどの機械的手段によって行われ、これらの機械的手段は打撃エネルギーなどを正確に制御できるので、上向き打撃と下向き打撃とにより発生する横波のエネルギー、振動数などを一定範囲内で一致させることができ、これを通じて横波の伝達速度を容易かつ精密に測定できるようになった。
【0059】
本発明は、添付した図面に図示された一実施形態を参考にして説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の保護範囲は特許請求の範囲のみによって定められねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、弾性波探査装置関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0061】
100 弾性波探査用の横波発生装置
10 本体
20 固定体
22、23、24 装着シリンダー
30 第1打撃体
35 第1バネ
40 第2打撃体
45 第2バネ
51 分離膜
52 第1ピストン
53 第2ピストン
54 第1移動板
55 第2移動板
62 第1押圧板
63 第2押圧板
h 試錐孔
w 試錐孔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に形成された探査用試錐孔に挿入される本体;
前記試錐孔壁への接近及び離隔方向に沿って移動可能に前記本体に設けられて、前記試錐孔壁に密着されることによって前記本体を前記試錐孔壁に固定させる固定体と、
前記本体を第1方向に打撃して振動を発生させる第1打撃体と、
前記本体を前記第1方向と反対方向である第2方向に打撃して振動を発生させる第2打撃体と、を備え、
前記第1打撃体と第2打撃体とは、順次に前記本体を打撃して横波を発生させることを特徴とする弾性波探査用の横波発生装置。
【請求項2】
前記第1方向に沿って前記第1打撃体に対して接近及び離隔自在に設けられる第1移動板と、
前記第1打撃体と第1移動板との間に配され、前記第1打撃体と第1移動板とが相互接近時に圧縮されて前記第1打撃体を前記第1方向に付勢する第1バネと、
前記第2方向に沿って前記第2打撃体に対して接近及び離隔自在に設けられる第2移動板と、
前記第2打撃体と第2移動板との間に配され、前記第2打撃体と第2移動板とが相互接近時に圧縮されて前記第2打撃体を前記第2方向に付勢する第2バネと、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の弾性波探査用の横波発生装置。
【請求項3】
前記第1バネと第2バネとは、バネ定数が同一であり、前記第1バネと第2バネとが圧縮された後、前記第1打撃体及び第2打撃体に加える力は同じであることを特徴とする請求項2に記載の弾性波探査用の横波発生装置。
【請求項4】
前記第1打撃体と第2打撃体との間に配されるシリンダーと、
前記シリンダーに往復動自在に設けられ、一端と他端とがそれぞれ前記第1移動板及び第2移動板に結合されるピストンをさらに備え、
前記第1バネ及び第2バネは、前記ピストンの一側と他側とにそれぞれ挟み込まれて設けられ、
前記シリンダーの作動によって前記第1移動板が前記本体に接近及び離隔する時、前記第2移動板は前記第1移動板とは逆に前記本体に離隔及び接近することを特徴とする請求項2に記載の弾性波探査用の横波発生装置。
【請求項5】
前記第1打撃体と第2打撃体との各端部にそれぞれ結合される第1フック及び第2フックと、
前記第1フック及び第2フックに係止及び係止解除自在に、前記第1移動板及び第2移動板の端部にそれぞれ設けられる第1係止爪及び第2係止爪をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の弾性波探査用の横波発生装置。
【請求項6】
前記第1移動板及び第2移動板の後方には、それぞれ第1押圧板と第2押圧板とが固設され、
前記第1係止爪及び第2係止爪は、それぞれ第1移動板及び第2移動板に回転自在に設けられて、前記第1移動板及び第2移動板が前記第1押圧板及び第2押圧板に接近する時、前記第1係止爪及び第2係止爪は、前記第1押圧板及び第2押圧板に押圧されて回転することによって、係止が解除されることを特徴とする請求項5に記載の弾性波探査用の横波発生装置。
【請求項7】
前記第1移動板が前記第1打撃体に接近して、前記第1フックと第1係止爪とが互いに係止されて前記第1移動板と第1打撃体とが連結された状態で、前記第1移動板と第1打撃体とが前記本体から離隔する方向に移動する時、前記第2移動板が前記第2打撃体に接近して前記第2フックと第2係止爪とが互いに係止されて連結されることを特徴とする請求項5に記載の弾性波探査用の横波発生装置。
【請求項8】
前記第1打撃体と第2打撃体とは、それぞれ前記第1ピストン及び第2ピストンに挟み込まれて直線往復動することを特徴とする請求項4に記載の弾性波探査用の横波発生装置。
【請求項9】
前記本体は円筒状に形成され、
前記固定体は板状であって、前記本体の半径方向に沿って移動して前記本体に挿入及び突出し、外側面には凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性波探査用の横波発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−17687(P2011−17687A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280451(P2009−280451)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(509340872)韓國地質資源研究院 (4)