弾性表面波センサ配設構造
【課題】 気泡に影響されることなく液体の特性を正確にかつ安定的に測定する。
【解決手段】 略水平方向に沿って側方から流入した液流は、SAWセンサ2の反応場としての短絡伝搬路及び開放伝搬路に当たった後、澱むことなく上方へ向けて流れ、液流に含まれ、側方から移動してくる気泡は、収納部本体12内に滞留することなく収納部本体12の内壁面の隅部を通過して内壁面に沿って上昇し、SAWセンサ2の短絡伝搬路及び開放伝搬路に当たることなく上方へ移動して、収納部本体12から排出される。
【解決手段】 略水平方向に沿って側方から流入した液流は、SAWセンサ2の反応場としての短絡伝搬路及び開放伝搬路に当たった後、澱むことなく上方へ向けて流れ、液流に含まれ、側方から移動してくる気泡は、収納部本体12内に滞留することなく収納部本体12の内壁面の隅部を通過して内壁面に沿って上昇し、SAWセンサ2の短絡伝搬路及び開放伝搬路に当たることなく上方へ移動して、収納部本体12から排出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、液体の特性を測定するための被測定物特性測定装置を構成し、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)等の弾性波を励振可能な弾性表面波センサが配管等の液体の流路に配設された弾性表面波センサ配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、メタノールを直接燃料電池に供給して発電を行うDMFC(Direct Methanol Fuel Cell)等の燃料電池が知られている。一般に、燃料電池は、燃料極に燃料を供給し、空気極に酸化剤としての酸素を含む空気を供給して、発電を行う発電装置である。
【0003】
図9に示すように、こうした燃料電池装置101は、セルスタックを含む発電部102と、発電後回収されたメタノール水溶液が貯蔵される回収タンク103と、補充用のメタノール水溶液が貯蔵される補充タンク104と、回収タンク103及び補充タンク104から供給されたメタノール水溶液が混合され、発電部102に供給されるメタノール水溶液が貯蔵される混合タンク105とを有している。
【0004】
混合タンク105には、メタノール水溶液の濃度を測定するためのSAWセンサ106が配設され、測定された濃度に基づいて、発電部102における発電効率が最大になるように、メタノール水溶液の濃度が制御される。
【0005】
ところで、発電部102に流入する際のメタノール水溶液の濃度を正確に測定するためには、SAWセンサ106を、混合タンク105から発電部102へ至る配管の発電部102の直近に配設する(流路に組み込む)必要がある。
【0006】
図10は、流路途中に配設されたSAWセンサ106を側方から見た状態を示している。同図に示すように、混合タンク105から発電部102へ至る流路に配設されたセンサ収納部107にSAWセンサ106が上方から挿入されている。
【0007】
センサ収納部107は、発電部102の直近に配設され、内部にSAWセンサ106の反応場が配置される収納部本体108と、SAWセンサ106が固定されたセンサ固定部材109が取り付けられるセンサ取付部110と、流入側配管111が取り付けられる中空の流入側配管取付部112と、流出側配管113が中空の結合部材114を介して取り付けられる中空の流出側配管取付部115とを有している。
【0008】
メタノール水溶液の濃度を測定するための被測定物特性装置は、SAWセンサ106と、発振器と、分配器と、検出器と、信号処理部とを有している。SAWセンサ106は、圧電基板に形成された第1センサ部と、第2センサ部とを有している。第1センサ部は、入力電極と出力電極とを有し、入力電極と出力電極との間には、反応場としての短絡伝搬路が形成されている。短絡伝搬路は、圧電基板の表面に形成された金属膜上に設けられている。第2センサ部は、入力電極と出力電極とを有し、入力電極と出力電極との間には、反応場としての開放伝搬路が形成されている。開放伝搬路は、圧電基板の表面に形成され、電気的に開放された開放領域を有する金属膜上に設けられている。
【0009】
SAWセンサ106では、圧電基板上に置かれた液体状の被測定物の領域が電気的に開放されている場合と、短絡されている場合とでは、出力電極から出力される出力信号の特性に差異があることを利用している。すなわち、圧電基板上の領域が開放されている場合の出力信号は、電気的相互作用及び力学的相互作用を受けており、圧電基板上の領域が短絡されている場合の出力信号は、力学的相互作用のみを受けている。したがって、両出力信号から力学的相互作用を相殺し、電気的相互作用を抽出することにより、被測定物の比誘電率や導電率、さらに、濃度を求めることができる。
【0010】
被測定物特性測定装置における被測定物の特性の測定は、測定対象の被測定物を、短絡伝搬路及び開放伝搬路に負荷した状態で、発振器からの高周波の電気信号を分配器で分配して、両入力電極に同一の信号を入力し、両出力電極から出力される信号の振幅比及び位相差を検出器で測定することによって行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【0011】
しかしながら、メタノール水溶液を液送する際に、気泡を巻き込んでしまうため、SAWセンサ106が配置されたセンサ収納部107内に気泡が滞留し、対象物の特性を正確かつ安定的に測定できない。発明者が、被測定物測定装置を用いて、被測定物として純水について測定を行ったところ、検出器において検出された信号の上記開放時及び短絡時の振幅比の検出結果として、図11に示すようなデータが得られた。図11において、曲線Laは短絡時のデータ、曲線Lbは開放時のデータを示す。このように、被測定物(例えば、メタノール水溶液)ではなく、空気の測定値を示すデータが得られてしまう。
【0012】
また、同様に検出器において検出された信号の上記開放時及び短絡時の位相差の検出結果として、図12に示すようなデータが得られた。図12において、曲線Lcは開放時のデータ、曲線Ldは短絡時のデータを示す。この場合も、空気の測定値を示すデータが得られてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−267968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、上記従来技術では、液体に含まれる気泡に影響されて液体の特性を正確にかつ安定的に測定することができないという問題がある。
【0015】
この発明は、前記の課題を解決し、気泡に影響されることなく液体の特性を正確かつ安定的に測定することができる弾性表面波センサ配設構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、液体の特性を測定するための被測定物特性測定装置を構成する弾性表面波センサが、前記液体の流路に配設された弾性表面波センサ配設構造であって、内部に前記弾性表面波センサが配置された中空のセンサ収納部本体と、前記液体を前記弾性表面波センサに対して側方から流入させるための流入部と、前記液体を前記弾性表面波センサの上方から流出させるための流出部とを有することを特徴としている。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1記載の弾性表面波センサ配設構造であって、前記弾性表面波センサが配置された前記センサ収納部本体の内部において、少なくとも、前記弾性表面波センサの先端部と前記センサ収納部本体の前記流入部の上部の側の内壁面との間に所定の隙間部が形成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項3の発明は、請求項2記載の弾性表面波センサ配設構造であって、前記センサ収納部本体に、前記弾性表面波センサが鉛直方向に略平行な方向に沿って下方から挿入され、前記センサ収納部本体の内部に、前記弾性表面波センサのうち、少なくとも前記液体が負荷される反応場が配置され、前記流入部は、前記液体を水平方向に略平行な方向に沿って前記反応場の側方から少なくともその一部が前記反応場に当たるように流入させ、前記流出部は、前記液体を鉛直方向に略平行な方向に沿って、前記弾性表面波センサの前記先端部の上方から流出させ、前記液体に気泡が含まれる場合に、前記気泡は、前記隙間部を経由して前記センサ収納部本体から排出されるように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、流入部が、液体を弾性表面波センサに対して側方から流入させ、流出部が、液体を弾性表面波センサの上方から流出させるので、液体に気泡が含まれる場合であっても、少なくとも一部の気泡は、センサ収納部本体のうち、流入部の上部の側の内壁面に沿って移動して、センサ収納部本体から排出されるため、気泡に影響されることなく液体の特性を正確かつ安定的に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施の形態によるSAWセンサの取付構造を説明するための説明図である。
【図2】同SAWセンサによって燃料としてのメタノール水溶液の濃度が測定される燃料電池装置の構成を模式的に示す図である。
【図3】同SAWセンサを含む被測定物特性測定装置の構成を説明するための説明図である。
【図4】同被測定物特性測定装置の振幅比位相差検出器において検出された信号の開放時及び短絡時の振幅比の検出結果の例を示す図である。
【図5】同振幅比位相差検出器において検出された信号の開放時及び短絡時の位相差の検出結果の例を示す図である。
【図6】この発明の一実施の形態の変形例によるSAWセンサの取付構造を説明するための説明図である。
【図7】同SAWセンサを含む被測定物特性測定装置の振幅比位相差検出器において検出された信号の開放時及び短絡時の振幅比の検出結果の例を示す図である。
【図8】同振幅比位相差検出器において検出された信号の開放時及び短絡時の位相差の検出結果の例を示す図である。
【図9】従来技術を説明するための説明図である。
【図10】従来技術を説明するための説明図である。
【図11】従来技術を説明するための説明図である。
【図12】従来技術を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0022】
図1は、この発明の一実施の形態によるSAWセンサの取付構造を説明するための説明図、図2は、同SAWセンサによって燃料としてのメタノール水溶液の濃度が測定される燃料電池装置の構成を模式的に示す図、図3は、同SAWセンサを含む被測定物特性測定装置の構成を説明するための説明図、図4は、同被測定物特性測定装置の振幅比位相差検出器において検出された信号の開放時及び短絡時の振幅比の検出結果の例を示す図、図5は、同振幅比位相差検出器において検出された信号の開放時及び短絡時の位相差の検出結果の例を示す図である。
【0023】
例えば、図3に示すようなこの実施の形態に係る被測定物特性測定装置1は、SAWセンサ2を備え、図2に示すような燃料電池装置3等において、発電部4に供給されるメタノール水溶液の濃度を測定するために用いられる。
【0024】
燃料電池装置3は、図2に示すように、例えば、メタノールを直接燃料電池に供給して発電を行うDMFC(Direct Methanol Fuel Cell)からなり、セルスタックを含む発電部4と、発電後回収されたメタノール水溶液が貯蔵される回収タンク5と、補充用の比較的高濃度のメタノール水溶液が貯蔵される補充タンク6と、回収タンク5及び補充タンク6から供給されたメタノール水溶液が混合され、発電部4に供給されるメタノール水溶液が貯蔵される混合タンク7とを有している。
【0025】
図1は、この実施の形態のSAWセンサ取付構造9を側方から見た状態を示している。同図に示すように、SAWセンサ取付構造9は、混合タンク7から発電部4へ至る流路に配設されたセンサ収納部11にSAWセンサ2が下方から挿入され、液体がSAWセンサ2に対して側方から流入し、SAWセンサ2の反応場としての短絡伝搬路32及び開放伝搬路36(図3参照。)に当たった後、SAWセンサ2の上方から流出するように、かつ、SAWセンサ2の先端部と収納部本体12の流入側の内壁面との間に、液体に含まれる気泡が通過するための隙間部が形成されて概略構成されている。
【0026】
センサ収納部11は、発電部4の直近に配設され、内部にSAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36が配置される中空の収納部本体12と、SAWセンサ2が固定されたセンサ固定部材13が取り付けられるセンサ取付部14と、流入側配管15が取り付けられる中空の流入側配管取付部16と、流出側配管17が中空の結合部材18を介して取り付けられる中空の流出側配管取付部19とを有している。
【0027】
センサ取付部14は、使用時に収納部本体12の下方に配置されるように設けられ、センサ固定部材13が螺着によって取り付けられる。また、流入側配管取付部16は、使用時に収納部本体12の側方に配置されるように設けられ、流入側配管15が螺着によって取り付けられる。また、流出側配管取付部19は、使用時に収納部本体12の上方に配置されるように設けられ、結合部材18が螺着によって取り付けられる。また、結合部材18は、下部で流出側配管取付部19に螺着され、側部で流出側配管17に螺着される。
【0028】
また、流入側配管取付部16、流入側配管15、流出側配管17、及び結合部材18の側部の雌ねじ部は、軸方向が水平方向に略平行となるように配置され、流出側配管取付部19、及び結合部材18の下部の雄ねじ部は、軸方向が鉛直方向に略平行となるように配置される。また、センサ取付部14、及びセンサ固定部材13は、軸方向が鉛直方向に略平行となるように配置される。また、流入側配管取付部16は、その径が流入側配管15の径よりも大きく設定され、流出側配管取付部19は、その径が流出側配管17の径よりも大きく設定されている。
【0029】
なお、図1においては、センサ取付部14、流入側配管取付部16、及び流出側配管取付部19に雌ねじ部が形成され、センサ固定部材13、流入側配管15、及び流出側配管17に雄ねじ部が形成され、結合部材18の下部に雄ねじ部が、側部に雌ねじ部が形成されている場合について例示している。
【0030】
こうして、流入側配管取付部16から略水平方向に沿って収納部本体12に流入した液体(例えば、メタノール水溶液)は、収納部本体12内で略鉛直上方へ向きを変えて、流出側配管取付部19から流出する。
【0031】
センサ取付部14は、SAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36が、流入側配管取付部16から流入してくる液流に当たるように収納部本体12内に配置されるように、収納部本体12に取り付けられる。この実施の形態では、短絡伝搬路32及び開放伝搬路36の面の方向(法線の方向)と、流入側配管15及び流入側配管取付部16の軸方向(すなわち、流入方向)とがなす角度が略45°となるように、SAWセンサ2が配置される。ここで、図1において、SAWセンサ2が、その表面側が見える状態で配置されても、裏面側が見える状態で配置されても良い。
【0032】
また、収納部本体12は、上記のようにSAWセンサ2が配置された状態で、SAWセンサ2と収納部本体12の内壁面(図1中、右斜め上の隅部)との間に、液流に含まれる気泡が通過する隙間部が形成されるように、寸法及び形状が設定されている。
【0033】
これによって、略水平方向に沿って側方から流入した液流は図1において矢印Saに示す経路に沿って、SAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36に当たった後、澱むことなく上方へ向けて流れ、液流に含まれ、側方から移動してくる気泡は、矢印Sbに示す経路に沿って(収納部本体12の内壁面に沿って)、収納部本体12内に滞留することなく通過して内壁面に沿って上昇し、SAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36に当たることなく上方へ移動し、円滑に排出される。
【0034】
したがって、液体に気泡が含まれていたとしも、気泡はSAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36に当たることなく円滑に排出され、気泡に影響されることなく液体の特性が正確にかつ安定的に測定される。
【0035】
被測定物測定装置1は、図3に示すように、弾性表面波素子としてのSAWセンサ2と、発振器22と、分配器23と、振幅比位相差検出器24と、パーソナルコンピュータ等からなる信号処理部(不図示)とを有している。この実施の形態では、被測定物特性測定装置1は、メタノール水溶液の濃度を測定するために用いられる。
【0036】
SAWセンサ2は、圧電基板26に形成された第1センサ部27と、第2センサ部28とを有している。第1センサ部27は、櫛形の入力電極29と出力電極31とを有し、入力電極29と出力電極31との間には、短絡伝搬路32が形成されている。短絡伝搬路32は、圧電基板26の表面に形成された金属膜33上に設けられている。また、第2センサ部28は、櫛形の入力電極34と出力電極35とを有し、入力電極34と出力電極35との間には、開放伝搬路36が形成されている。開放伝搬路36は、圧電基板26の表面に形成され、電気的に開放された開放領域を有する金属膜37上に設けられている。圧電基板26としては、すべり弾性表面波(SH−SAW)が伝搬されれば良いが、特に、36度回転Y板X伝搬LiTaO3を用いることが好ましい。また、金属膜33,37は、圧電基板26上に金等が蒸着されて形成される。
【0037】
被測定物特性測定装置1においては、測定対象の被測定物(例えば、メタノール水溶液)を、短絡伝搬路32及び開放伝搬路36に負荷した状態で、発振器22からの高周波の電気信号を分配器23で分配して、両入力電極29,34に同一の信号を入力し、両出力電極31,35から出力される信号の振幅比及び位相差を振幅比位相差検出器24で測定され、信号処理部に出力されて、信号処理部で被測定物の物理的特性(比誘電率や導電率、濃度等)が求められる。
【0038】
被測定物特性測定装置1を用いて、被測定物として純水について、測定を行ったところ、振幅比位相差検出器24に入力された、短絡伝搬路32が形成された第1センサ部27からの出力信号(短絡時の振幅比)と、開放伝搬路36が形成された第2センサ部28からの出力信号(開放時の振幅比)として、図4に示すようなデータが得られた。図4において、曲線L1は、短絡時のデータ、曲線L2は開放時のデータを示す。このように、被測定物として純水の特性に対応した常時安定的なデータが得られる。なお、曲線L1,L2に示すデータは、所定の基準信号との振幅の比として測定される。
【0039】
また、同様に振幅比位相差検出器24に入力された、短絡伝搬路32が形成された第1センサ部27からの出力信号(短絡時の位相差)と、開放伝搬路36が形成された第2センサ部28からの出力信号(開放時の位相差)として、図5に示すようなデータが得られた。図5において、曲線L3は開放時のデータ、曲線L4は短絡時のデータを示す。この場合も、常時安定的なデータが得られる。なお、曲線L3,L4に示すデータは、上記所定の基準信号との位相の差として測定される。
【0040】
こうして、この実施の形態の構成によれば、液体がSAWセンサ2に対して側方から流入し、SAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36に当たった後、SAWセンサ2の上方から流出し、かつ、液体に含まれる気泡は、収納部本体12内の隙間部を、収納部本体12の内壁面に沿って移動して、SAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36に当たることなく収納部本体12から排出されるので、気泡に影響されることなく液体の特性を正確に測定することができる。
【0041】
また、SAWセンサ2を配管に取り付けるので、測定したい箇所の近傍に配置することができる。これにより、例えば、発電部4に流入する際のメタノール水溶液の濃度を正確に測定することができる。また、例えば、タンクに取り付ける場合と比較して、SAWセンサ2の取付けも容易に行うことができる。
【0042】
以上、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、上述した実施の形態では、SAWセンサ2を略鉛直線に沿って下方から挿入した場合について述べたが、例えば、斜め下方から挿入するようにしても良い。この場合、略鉛直線に対して、SAWセンサ2の挿入方向が、図1において、時計周り又は反時計周りに例えば略45度までの間の角度をなすようにSAWセンサ2を挿入するようにしても良い。
【0043】
また、他の配管等との干渉を回避し、かつ、上記隙間部を確保しつつ、流入方向と反対側の側方からSAWセンサ2を挿入しても良い。この場合、例えば、水平方向に略平行な方向でも良いし、斜め下方(例えば、水平方向に対して略45度まで)からSAWセンサ2を挿入しても良いし、斜め上方(例えば、水平方向に対して略45度まで)からSAWセンサ2を挿入しても良い。
【0044】
また、流入方向を水平方向に略平行な方向とする場合について述べたが、若干斜め下方(例えば、水平方向に対して略45度まで)から流入させるようにしても良いし、若干斜め上方(例えば、水平方向に対して略45度まで)から流入させるようにしても良い。また、流出方向を鉛直方向に略平行な方向とする場合について述べたが、若干斜め上方(例えば、図1において、鉛直線に対して時計周り又は反時計周りに略45度まで)から流出させるようにしても良い。
【0045】
また、短絡伝搬路32及び開放伝搬路36の面の方向(法線の方向)と、流入側配管15及び流入側配管取付部16の軸方向(すなわち、流入方向)とがなす角度が略45°となるように、SAWセンサ2を配置する場合について述べたが、これに限定されず、上記角度は、上方から見て、時計周り又は反時計周りに、例えば略0度から略90度の範囲で、設定されても良い。
【0046】
また、センサ収納部11に対して、SAWセンサ2を下方から挿入し、かつ、側方から流入させ、上方から流出させる場合について述べたが、例えば、図6に示すように、センサ収納部11に対して、SAWセンサ2を側方から挿入し、下方から流入させるようにしても良い。図6は、流路途中に配設されたSAWセンサ2を側方から見た状態を示している。同図に示すように、混合タンク7から発電部4へ至る流路に配設されたセンサ収納部62にSAWセンサ2が側方から挿入されている。
【0047】
センサ収納部62は、発電部4の直近に配設され、内部にSAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36が配置される中空の収納部本体63と、SAWセンサ2が固定されたセンサ固定部材64が取り付けられるセンサ取付部65と、流入側配管66が取り付けられる中空の流入側配管取付部67と、流出側配管68が中空の結合部材69を介して取り付けられる中空の流出側配管取付部71とを有している。
【0048】
この場合に、被測定物特性測定装置1を用いて、被測定物として純水について、測定を行ったところ、振幅比位相差検出器24において検出された信号の開放時及び短絡時の振幅比の検出結果として、図7に示すようなデータが得られた。図7において、曲線L5は短絡時のデータ、曲線L6は開放時のデータを示す。気泡通過に伴うパルス状のデータを含んでいるが、信号処理部23において適切な処理を施すことによって、測定は可能である。
【0049】
また、同様に弾性波検出器36において検出された信号の開放時及び短絡時の位相差の検出結果として、図8に示すようなデータが得られた。図8において、曲線L7は開放時のデータ、曲線L8は短絡時のデータを示す。この場合も、パルス状のデータを含んでいるが、上記信号処理部において適切な処理を施すことによって、測定は可能である。
【0050】
また、収納部本体からの流出方向を、例えば、流入方向に直交する平面(鉛直面)に沿って、水平方向に略平行な方向又は斜め上方としても良い。また、SAWセンサの圧電性基板の材料として、LiTaO3のほか、LiNbO3や、Li2B4O7、水晶等を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
単数のSAWセンサのほか、複数のSAWセンサが同一箇所に、又は近接して配設される場合に適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 被測定物測定装置
2 SAWセンサ(弾性表面波センサ)
9 SAWセンサ取付構造(弾性表面波センサ配設構造)
11 センサ収納部
12 収納部本体(センサ収納部本体)
16 流入側配管取付部(流入部)
19 流出側配管取付部(流出部)
32 短絡伝搬路(反応場)
36 開放伝搬路(反応場)
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、液体の特性を測定するための被測定物特性測定装置を構成し、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)等の弾性波を励振可能な弾性表面波センサが配管等の液体の流路に配設された弾性表面波センサ配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、メタノールを直接燃料電池に供給して発電を行うDMFC(Direct Methanol Fuel Cell)等の燃料電池が知られている。一般に、燃料電池は、燃料極に燃料を供給し、空気極に酸化剤としての酸素を含む空気を供給して、発電を行う発電装置である。
【0003】
図9に示すように、こうした燃料電池装置101は、セルスタックを含む発電部102と、発電後回収されたメタノール水溶液が貯蔵される回収タンク103と、補充用のメタノール水溶液が貯蔵される補充タンク104と、回収タンク103及び補充タンク104から供給されたメタノール水溶液が混合され、発電部102に供給されるメタノール水溶液が貯蔵される混合タンク105とを有している。
【0004】
混合タンク105には、メタノール水溶液の濃度を測定するためのSAWセンサ106が配設され、測定された濃度に基づいて、発電部102における発電効率が最大になるように、メタノール水溶液の濃度が制御される。
【0005】
ところで、発電部102に流入する際のメタノール水溶液の濃度を正確に測定するためには、SAWセンサ106を、混合タンク105から発電部102へ至る配管の発電部102の直近に配設する(流路に組み込む)必要がある。
【0006】
図10は、流路途中に配設されたSAWセンサ106を側方から見た状態を示している。同図に示すように、混合タンク105から発電部102へ至る流路に配設されたセンサ収納部107にSAWセンサ106が上方から挿入されている。
【0007】
センサ収納部107は、発電部102の直近に配設され、内部にSAWセンサ106の反応場が配置される収納部本体108と、SAWセンサ106が固定されたセンサ固定部材109が取り付けられるセンサ取付部110と、流入側配管111が取り付けられる中空の流入側配管取付部112と、流出側配管113が中空の結合部材114を介して取り付けられる中空の流出側配管取付部115とを有している。
【0008】
メタノール水溶液の濃度を測定するための被測定物特性装置は、SAWセンサ106と、発振器と、分配器と、検出器と、信号処理部とを有している。SAWセンサ106は、圧電基板に形成された第1センサ部と、第2センサ部とを有している。第1センサ部は、入力電極と出力電極とを有し、入力電極と出力電極との間には、反応場としての短絡伝搬路が形成されている。短絡伝搬路は、圧電基板の表面に形成された金属膜上に設けられている。第2センサ部は、入力電極と出力電極とを有し、入力電極と出力電極との間には、反応場としての開放伝搬路が形成されている。開放伝搬路は、圧電基板の表面に形成され、電気的に開放された開放領域を有する金属膜上に設けられている。
【0009】
SAWセンサ106では、圧電基板上に置かれた液体状の被測定物の領域が電気的に開放されている場合と、短絡されている場合とでは、出力電極から出力される出力信号の特性に差異があることを利用している。すなわち、圧電基板上の領域が開放されている場合の出力信号は、電気的相互作用及び力学的相互作用を受けており、圧電基板上の領域が短絡されている場合の出力信号は、力学的相互作用のみを受けている。したがって、両出力信号から力学的相互作用を相殺し、電気的相互作用を抽出することにより、被測定物の比誘電率や導電率、さらに、濃度を求めることができる。
【0010】
被測定物特性測定装置における被測定物の特性の測定は、測定対象の被測定物を、短絡伝搬路及び開放伝搬路に負荷した状態で、発振器からの高周波の電気信号を分配器で分配して、両入力電極に同一の信号を入力し、両出力電極から出力される信号の振幅比及び位相差を検出器で測定することによって行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【0011】
しかしながら、メタノール水溶液を液送する際に、気泡を巻き込んでしまうため、SAWセンサ106が配置されたセンサ収納部107内に気泡が滞留し、対象物の特性を正確かつ安定的に測定できない。発明者が、被測定物測定装置を用いて、被測定物として純水について測定を行ったところ、検出器において検出された信号の上記開放時及び短絡時の振幅比の検出結果として、図11に示すようなデータが得られた。図11において、曲線Laは短絡時のデータ、曲線Lbは開放時のデータを示す。このように、被測定物(例えば、メタノール水溶液)ではなく、空気の測定値を示すデータが得られてしまう。
【0012】
また、同様に検出器において検出された信号の上記開放時及び短絡時の位相差の検出結果として、図12に示すようなデータが得られた。図12において、曲線Lcは開放時のデータ、曲線Ldは短絡時のデータを示す。この場合も、空気の測定値を示すデータが得られてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−267968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、上記従来技術では、液体に含まれる気泡に影響されて液体の特性を正確にかつ安定的に測定することができないという問題がある。
【0015】
この発明は、前記の課題を解決し、気泡に影響されることなく液体の特性を正確かつ安定的に測定することができる弾性表面波センサ配設構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、液体の特性を測定するための被測定物特性測定装置を構成する弾性表面波センサが、前記液体の流路に配設された弾性表面波センサ配設構造であって、内部に前記弾性表面波センサが配置された中空のセンサ収納部本体と、前記液体を前記弾性表面波センサに対して側方から流入させるための流入部と、前記液体を前記弾性表面波センサの上方から流出させるための流出部とを有することを特徴としている。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1記載の弾性表面波センサ配設構造であって、前記弾性表面波センサが配置された前記センサ収納部本体の内部において、少なくとも、前記弾性表面波センサの先端部と前記センサ収納部本体の前記流入部の上部の側の内壁面との間に所定の隙間部が形成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項3の発明は、請求項2記載の弾性表面波センサ配設構造であって、前記センサ収納部本体に、前記弾性表面波センサが鉛直方向に略平行な方向に沿って下方から挿入され、前記センサ収納部本体の内部に、前記弾性表面波センサのうち、少なくとも前記液体が負荷される反応場が配置され、前記流入部は、前記液体を水平方向に略平行な方向に沿って前記反応場の側方から少なくともその一部が前記反応場に当たるように流入させ、前記流出部は、前記液体を鉛直方向に略平行な方向に沿って、前記弾性表面波センサの前記先端部の上方から流出させ、前記液体に気泡が含まれる場合に、前記気泡は、前記隙間部を経由して前記センサ収納部本体から排出されるように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、流入部が、液体を弾性表面波センサに対して側方から流入させ、流出部が、液体を弾性表面波センサの上方から流出させるので、液体に気泡が含まれる場合であっても、少なくとも一部の気泡は、センサ収納部本体のうち、流入部の上部の側の内壁面に沿って移動して、センサ収納部本体から排出されるため、気泡に影響されることなく液体の特性を正確かつ安定的に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施の形態によるSAWセンサの取付構造を説明するための説明図である。
【図2】同SAWセンサによって燃料としてのメタノール水溶液の濃度が測定される燃料電池装置の構成を模式的に示す図である。
【図3】同SAWセンサを含む被測定物特性測定装置の構成を説明するための説明図である。
【図4】同被測定物特性測定装置の振幅比位相差検出器において検出された信号の開放時及び短絡時の振幅比の検出結果の例を示す図である。
【図5】同振幅比位相差検出器において検出された信号の開放時及び短絡時の位相差の検出結果の例を示す図である。
【図6】この発明の一実施の形態の変形例によるSAWセンサの取付構造を説明するための説明図である。
【図7】同SAWセンサを含む被測定物特性測定装置の振幅比位相差検出器において検出された信号の開放時及び短絡時の振幅比の検出結果の例を示す図である。
【図8】同振幅比位相差検出器において検出された信号の開放時及び短絡時の位相差の検出結果の例を示す図である。
【図9】従来技術を説明するための説明図である。
【図10】従来技術を説明するための説明図である。
【図11】従来技術を説明するための説明図である。
【図12】従来技術を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0022】
図1は、この発明の一実施の形態によるSAWセンサの取付構造を説明するための説明図、図2は、同SAWセンサによって燃料としてのメタノール水溶液の濃度が測定される燃料電池装置の構成を模式的に示す図、図3は、同SAWセンサを含む被測定物特性測定装置の構成を説明するための説明図、図4は、同被測定物特性測定装置の振幅比位相差検出器において検出された信号の開放時及び短絡時の振幅比の検出結果の例を示す図、図5は、同振幅比位相差検出器において検出された信号の開放時及び短絡時の位相差の検出結果の例を示す図である。
【0023】
例えば、図3に示すようなこの実施の形態に係る被測定物特性測定装置1は、SAWセンサ2を備え、図2に示すような燃料電池装置3等において、発電部4に供給されるメタノール水溶液の濃度を測定するために用いられる。
【0024】
燃料電池装置3は、図2に示すように、例えば、メタノールを直接燃料電池に供給して発電を行うDMFC(Direct Methanol Fuel Cell)からなり、セルスタックを含む発電部4と、発電後回収されたメタノール水溶液が貯蔵される回収タンク5と、補充用の比較的高濃度のメタノール水溶液が貯蔵される補充タンク6と、回収タンク5及び補充タンク6から供給されたメタノール水溶液が混合され、発電部4に供給されるメタノール水溶液が貯蔵される混合タンク7とを有している。
【0025】
図1は、この実施の形態のSAWセンサ取付構造9を側方から見た状態を示している。同図に示すように、SAWセンサ取付構造9は、混合タンク7から発電部4へ至る流路に配設されたセンサ収納部11にSAWセンサ2が下方から挿入され、液体がSAWセンサ2に対して側方から流入し、SAWセンサ2の反応場としての短絡伝搬路32及び開放伝搬路36(図3参照。)に当たった後、SAWセンサ2の上方から流出するように、かつ、SAWセンサ2の先端部と収納部本体12の流入側の内壁面との間に、液体に含まれる気泡が通過するための隙間部が形成されて概略構成されている。
【0026】
センサ収納部11は、発電部4の直近に配設され、内部にSAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36が配置される中空の収納部本体12と、SAWセンサ2が固定されたセンサ固定部材13が取り付けられるセンサ取付部14と、流入側配管15が取り付けられる中空の流入側配管取付部16と、流出側配管17が中空の結合部材18を介して取り付けられる中空の流出側配管取付部19とを有している。
【0027】
センサ取付部14は、使用時に収納部本体12の下方に配置されるように設けられ、センサ固定部材13が螺着によって取り付けられる。また、流入側配管取付部16は、使用時に収納部本体12の側方に配置されるように設けられ、流入側配管15が螺着によって取り付けられる。また、流出側配管取付部19は、使用時に収納部本体12の上方に配置されるように設けられ、結合部材18が螺着によって取り付けられる。また、結合部材18は、下部で流出側配管取付部19に螺着され、側部で流出側配管17に螺着される。
【0028】
また、流入側配管取付部16、流入側配管15、流出側配管17、及び結合部材18の側部の雌ねじ部は、軸方向が水平方向に略平行となるように配置され、流出側配管取付部19、及び結合部材18の下部の雄ねじ部は、軸方向が鉛直方向に略平行となるように配置される。また、センサ取付部14、及びセンサ固定部材13は、軸方向が鉛直方向に略平行となるように配置される。また、流入側配管取付部16は、その径が流入側配管15の径よりも大きく設定され、流出側配管取付部19は、その径が流出側配管17の径よりも大きく設定されている。
【0029】
なお、図1においては、センサ取付部14、流入側配管取付部16、及び流出側配管取付部19に雌ねじ部が形成され、センサ固定部材13、流入側配管15、及び流出側配管17に雄ねじ部が形成され、結合部材18の下部に雄ねじ部が、側部に雌ねじ部が形成されている場合について例示している。
【0030】
こうして、流入側配管取付部16から略水平方向に沿って収納部本体12に流入した液体(例えば、メタノール水溶液)は、収納部本体12内で略鉛直上方へ向きを変えて、流出側配管取付部19から流出する。
【0031】
センサ取付部14は、SAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36が、流入側配管取付部16から流入してくる液流に当たるように収納部本体12内に配置されるように、収納部本体12に取り付けられる。この実施の形態では、短絡伝搬路32及び開放伝搬路36の面の方向(法線の方向)と、流入側配管15及び流入側配管取付部16の軸方向(すなわち、流入方向)とがなす角度が略45°となるように、SAWセンサ2が配置される。ここで、図1において、SAWセンサ2が、その表面側が見える状態で配置されても、裏面側が見える状態で配置されても良い。
【0032】
また、収納部本体12は、上記のようにSAWセンサ2が配置された状態で、SAWセンサ2と収納部本体12の内壁面(図1中、右斜め上の隅部)との間に、液流に含まれる気泡が通過する隙間部が形成されるように、寸法及び形状が設定されている。
【0033】
これによって、略水平方向に沿って側方から流入した液流は図1において矢印Saに示す経路に沿って、SAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36に当たった後、澱むことなく上方へ向けて流れ、液流に含まれ、側方から移動してくる気泡は、矢印Sbに示す経路に沿って(収納部本体12の内壁面に沿って)、収納部本体12内に滞留することなく通過して内壁面に沿って上昇し、SAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36に当たることなく上方へ移動し、円滑に排出される。
【0034】
したがって、液体に気泡が含まれていたとしも、気泡はSAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36に当たることなく円滑に排出され、気泡に影響されることなく液体の特性が正確にかつ安定的に測定される。
【0035】
被測定物測定装置1は、図3に示すように、弾性表面波素子としてのSAWセンサ2と、発振器22と、分配器23と、振幅比位相差検出器24と、パーソナルコンピュータ等からなる信号処理部(不図示)とを有している。この実施の形態では、被測定物特性測定装置1は、メタノール水溶液の濃度を測定するために用いられる。
【0036】
SAWセンサ2は、圧電基板26に形成された第1センサ部27と、第2センサ部28とを有している。第1センサ部27は、櫛形の入力電極29と出力電極31とを有し、入力電極29と出力電極31との間には、短絡伝搬路32が形成されている。短絡伝搬路32は、圧電基板26の表面に形成された金属膜33上に設けられている。また、第2センサ部28は、櫛形の入力電極34と出力電極35とを有し、入力電極34と出力電極35との間には、開放伝搬路36が形成されている。開放伝搬路36は、圧電基板26の表面に形成され、電気的に開放された開放領域を有する金属膜37上に設けられている。圧電基板26としては、すべり弾性表面波(SH−SAW)が伝搬されれば良いが、特に、36度回転Y板X伝搬LiTaO3を用いることが好ましい。また、金属膜33,37は、圧電基板26上に金等が蒸着されて形成される。
【0037】
被測定物特性測定装置1においては、測定対象の被測定物(例えば、メタノール水溶液)を、短絡伝搬路32及び開放伝搬路36に負荷した状態で、発振器22からの高周波の電気信号を分配器23で分配して、両入力電極29,34に同一の信号を入力し、両出力電極31,35から出力される信号の振幅比及び位相差を振幅比位相差検出器24で測定され、信号処理部に出力されて、信号処理部で被測定物の物理的特性(比誘電率や導電率、濃度等)が求められる。
【0038】
被測定物特性測定装置1を用いて、被測定物として純水について、測定を行ったところ、振幅比位相差検出器24に入力された、短絡伝搬路32が形成された第1センサ部27からの出力信号(短絡時の振幅比)と、開放伝搬路36が形成された第2センサ部28からの出力信号(開放時の振幅比)として、図4に示すようなデータが得られた。図4において、曲線L1は、短絡時のデータ、曲線L2は開放時のデータを示す。このように、被測定物として純水の特性に対応した常時安定的なデータが得られる。なお、曲線L1,L2に示すデータは、所定の基準信号との振幅の比として測定される。
【0039】
また、同様に振幅比位相差検出器24に入力された、短絡伝搬路32が形成された第1センサ部27からの出力信号(短絡時の位相差)と、開放伝搬路36が形成された第2センサ部28からの出力信号(開放時の位相差)として、図5に示すようなデータが得られた。図5において、曲線L3は開放時のデータ、曲線L4は短絡時のデータを示す。この場合も、常時安定的なデータが得られる。なお、曲線L3,L4に示すデータは、上記所定の基準信号との位相の差として測定される。
【0040】
こうして、この実施の形態の構成によれば、液体がSAWセンサ2に対して側方から流入し、SAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36に当たった後、SAWセンサ2の上方から流出し、かつ、液体に含まれる気泡は、収納部本体12内の隙間部を、収納部本体12の内壁面に沿って移動して、SAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36に当たることなく収納部本体12から排出されるので、気泡に影響されることなく液体の特性を正確に測定することができる。
【0041】
また、SAWセンサ2を配管に取り付けるので、測定したい箇所の近傍に配置することができる。これにより、例えば、発電部4に流入する際のメタノール水溶液の濃度を正確に測定することができる。また、例えば、タンクに取り付ける場合と比較して、SAWセンサ2の取付けも容易に行うことができる。
【0042】
以上、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、上述した実施の形態では、SAWセンサ2を略鉛直線に沿って下方から挿入した場合について述べたが、例えば、斜め下方から挿入するようにしても良い。この場合、略鉛直線に対して、SAWセンサ2の挿入方向が、図1において、時計周り又は反時計周りに例えば略45度までの間の角度をなすようにSAWセンサ2を挿入するようにしても良い。
【0043】
また、他の配管等との干渉を回避し、かつ、上記隙間部を確保しつつ、流入方向と反対側の側方からSAWセンサ2を挿入しても良い。この場合、例えば、水平方向に略平行な方向でも良いし、斜め下方(例えば、水平方向に対して略45度まで)からSAWセンサ2を挿入しても良いし、斜め上方(例えば、水平方向に対して略45度まで)からSAWセンサ2を挿入しても良い。
【0044】
また、流入方向を水平方向に略平行な方向とする場合について述べたが、若干斜め下方(例えば、水平方向に対して略45度まで)から流入させるようにしても良いし、若干斜め上方(例えば、水平方向に対して略45度まで)から流入させるようにしても良い。また、流出方向を鉛直方向に略平行な方向とする場合について述べたが、若干斜め上方(例えば、図1において、鉛直線に対して時計周り又は反時計周りに略45度まで)から流出させるようにしても良い。
【0045】
また、短絡伝搬路32及び開放伝搬路36の面の方向(法線の方向)と、流入側配管15及び流入側配管取付部16の軸方向(すなわち、流入方向)とがなす角度が略45°となるように、SAWセンサ2を配置する場合について述べたが、これに限定されず、上記角度は、上方から見て、時計周り又は反時計周りに、例えば略0度から略90度の範囲で、設定されても良い。
【0046】
また、センサ収納部11に対して、SAWセンサ2を下方から挿入し、かつ、側方から流入させ、上方から流出させる場合について述べたが、例えば、図6に示すように、センサ収納部11に対して、SAWセンサ2を側方から挿入し、下方から流入させるようにしても良い。図6は、流路途中に配設されたSAWセンサ2を側方から見た状態を示している。同図に示すように、混合タンク7から発電部4へ至る流路に配設されたセンサ収納部62にSAWセンサ2が側方から挿入されている。
【0047】
センサ収納部62は、発電部4の直近に配設され、内部にSAWセンサ2の短絡伝搬路32及び開放伝搬路36が配置される中空の収納部本体63と、SAWセンサ2が固定されたセンサ固定部材64が取り付けられるセンサ取付部65と、流入側配管66が取り付けられる中空の流入側配管取付部67と、流出側配管68が中空の結合部材69を介して取り付けられる中空の流出側配管取付部71とを有している。
【0048】
この場合に、被測定物特性測定装置1を用いて、被測定物として純水について、測定を行ったところ、振幅比位相差検出器24において検出された信号の開放時及び短絡時の振幅比の検出結果として、図7に示すようなデータが得られた。図7において、曲線L5は短絡時のデータ、曲線L6は開放時のデータを示す。気泡通過に伴うパルス状のデータを含んでいるが、信号処理部23において適切な処理を施すことによって、測定は可能である。
【0049】
また、同様に弾性波検出器36において検出された信号の開放時及び短絡時の位相差の検出結果として、図8に示すようなデータが得られた。図8において、曲線L7は開放時のデータ、曲線L8は短絡時のデータを示す。この場合も、パルス状のデータを含んでいるが、上記信号処理部において適切な処理を施すことによって、測定は可能である。
【0050】
また、収納部本体からの流出方向を、例えば、流入方向に直交する平面(鉛直面)に沿って、水平方向に略平行な方向又は斜め上方としても良い。また、SAWセンサの圧電性基板の材料として、LiTaO3のほか、LiNbO3や、Li2B4O7、水晶等を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
単数のSAWセンサのほか、複数のSAWセンサが同一箇所に、又は近接して配設される場合に適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 被測定物測定装置
2 SAWセンサ(弾性表面波センサ)
9 SAWセンサ取付構造(弾性表面波センサ配設構造)
11 センサ収納部
12 収納部本体(センサ収納部本体)
16 流入側配管取付部(流入部)
19 流出側配管取付部(流出部)
32 短絡伝搬路(反応場)
36 開放伝搬路(反応場)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の特性を測定するための被測定物特性測定装置を構成する弾性表面波センサが、前記液体の流路に配設された弾性表面波センサ配設構造であって、
内部に前記弾性表面波センサが配置された中空のセンサ収納部本体と、前記液体を前記弾性表面波センサに対して側方から流入させるための流入部と、前記液体を前記弾性表面波センサの上方から流出させるための流出部とを有する
ことを特徴とする弾性表面波センサ配設構造。
【請求項2】
前記弾性表面波センサが配置された前記センサ収納部本体の内部において、少なくとも、前記弾性表面波センサの先端部と前記センサ収納部本体の前記流入部の上部の側の内壁面との間に所定の隙間部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の弾性表面波センサ配設構造。
【請求項3】
前記センサ収納部本体に、前記弾性表面波センサが鉛直方向に略平行な方向に沿って下方から挿入され、前記センサ収納部本体の内部に、前記弾性表面波センサのうち、少なくとも前記液体が負荷される反応場が配置され、前記流入部は、前記液体を水平方向に略平行な方向に沿って前記反応場の側方から少なくともその一部が前記反応場に当たるように流入させ、前記流出部は、前記液体を鉛直方向に略平行な方向に沿って、前記弾性表面波センサの前記先端部の上方から流出させ、前記液体に気泡が含まれる場合に、前記気泡は、前記隙間部を経由して前記センサ収納部本体から排出されるように構成されていることを特徴とする請求項2記載の弾性表面波センサ配設構造。
【請求項1】
液体の特性を測定するための被測定物特性測定装置を構成する弾性表面波センサが、前記液体の流路に配設された弾性表面波センサ配設構造であって、
内部に前記弾性表面波センサが配置された中空のセンサ収納部本体と、前記液体を前記弾性表面波センサに対して側方から流入させるための流入部と、前記液体を前記弾性表面波センサの上方から流出させるための流出部とを有する
ことを特徴とする弾性表面波センサ配設構造。
【請求項2】
前記弾性表面波センサが配置された前記センサ収納部本体の内部において、少なくとも、前記弾性表面波センサの先端部と前記センサ収納部本体の前記流入部の上部の側の内壁面との間に所定の隙間部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の弾性表面波センサ配設構造。
【請求項3】
前記センサ収納部本体に、前記弾性表面波センサが鉛直方向に略平行な方向に沿って下方から挿入され、前記センサ収納部本体の内部に、前記弾性表面波センサのうち、少なくとも前記液体が負荷される反応場が配置され、前記流入部は、前記液体を水平方向に略平行な方向に沿って前記反応場の側方から少なくともその一部が前記反応場に当たるように流入させ、前記流出部は、前記液体を鉛直方向に略平行な方向に沿って、前記弾性表面波センサの前記先端部の上方から流出させ、前記液体に気泡が含まれる場合に、前記気泡は、前記隙間部を経由して前記センサ収納部本体から排出されるように構成されていることを特徴とする請求項2記載の弾性表面波センサ配設構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−42328(P2012−42328A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183612(P2010−183612)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】
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