説明

弾性表面波センサ

【課題】SH波SAWを利用して加速度等を高感度に検出するSAWセンサを実現する。
【解決手段】SAWセンサ11は、厚板支持部16aとそれから延長する薄板部16cとその反対側に設けられた厚板部16bとを有する圧電基板14にSAW共振子15を形成したSAWセンサ素子13を、ベース12に厚板支持部を接着剤17で固定して片持ちに支持する。SH波SAWを励振するSAW共振子はSAW伝搬方向を、加速度等により厚板部が変位して薄板部が撓む際にその表面に生じる引張又は圧縮応力の作用方向と直交する向きに整合させて、圧電基板の薄板部上に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電基板上に形成したIDT(すだれ状トランスデューサ)により励振される弾性表面波(SAW)を利用して、加速度、外力、変位等を検出する弾性表面波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、SAWを利用して加速度、外力又は変位等を測定する様々なセンサが提案されている(特許文献1乃至4)。例えば、特許文献1記載の外力センサは、圧電材料からなる長板状のビームを片持ちに支持し、該ビームの表裏両面にそれぞれSAWを励振する送信電極及び受信電極と増幅器とからなる発振器を設けた構成を有する。前記ビームが外力の作用により撓むと、その表面に生じた歪みによりSAWの伝搬速度が変化して両発振器の発振周波数が変化するので、それら発振周波数の差をローパスフィルタで取り出して、外力の大きさを測定する。更に特許文献2記載の傾斜センサは、カンチレバーの両面に形成したSAW共振器の送信電極及び受信電極の電極パターンを互いに相似パターンとすることにより、両SAW共振器の温度特性の相違に起因する差周波数の温度ドリフトを抑えて計測精度の向上を図っている。
【0003】
特許文献3記載の外力センサは、同様に片持ちに支持したカンチレバーの表面にそれぞれ櫛形電極からなる送信部及び受信部を有するSAW共振器が配置されている。送信部及び受信部を前記カンチレバーの長さ方向に配置した実施例では、該レバーの長さ方向即ち上下の変位を検出でき、該レバーの長さ方向と垂直に即ち幅方向に配置した実施例では、ねじれ即ち幅方向の変位を検出することができる。更に、前記カンチレバーの表面に2つの平行に配置した受信部と共通の送信部とを設けた実施例では、各受信部の信号の和と差とから長さ方向の変位及びねじれ変位を同時に検出することができる。
【0004】
また、特許文献4記載のトルクセンサは、トーションバーのねじれ部上に貼り付けたSAW素子を構成を有する。このSAW素子は、圧電素子板の表面にすだれ状電極を、それにより発生するSAWの伝搬方向が回転軸の軸方向と平行になるように配置される。回転軸にトルクが作用してねじれ部がねじれ、圧電素子板内にひずみが生じると、該圧電素子板上のSAWの横波速度が変化して発振周波数が変化するので、その変化量を測定することにより、トルクの大きさが求められる。
【0005】
【特許文献1】特開平2−228530号公報
【特許文献2】特開平5−141969号公報
【特許文献3】特開平9−133691号公報
【特許文献4】特開平5−215621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図15(A)、(B)は、加速度センサとして使用される従来の一般的なSAWセンサの構成を例示している。このSAWセンサ1は、水平なベース2に支持されたSAWセンサ素子3を備える。SAWセンサ素子3は、水晶等からなる矩形平板状の圧電基板4とその上側主面に形成されたSAW共振子5とを有する。圧電基板4は、一方の長さ方向端部4a側に厚板支持部6aと、反対側の長さ方向端部4b側に厚板部6bと、それらの間の中央領域の下面に凹部を形成して設けた薄板部6cとを有する。SAWセンサ素子3は、圧電基板4の厚板支持部6aをベース2に接着剤7で固定しかつ厚板部6b及び薄板部6cをベース2にから浮かせて、概ね水平に片持ちに支持される。
【0007】
SAW共振子5は、SAW伝搬方向に沿って1対の交差指電極8a,8bからなるIDT8とその両側に各1つの反射器9,9とを有する。IDT8及び反射器9,9は、該IDTにより励振するSAWの伝搬方向を圧電基板4の長さ方向に整合させて配置されている。IDT8の交差指電極8a,8bは、それぞれバスバーから引き出した配線を介して厚板支持部6a上の電極パッド10a,10bに接続されている。
【0008】
圧電基板4の長さ方向、幅方向及び厚さ方向をそれぞれX,Y,Z方向とする。図16において、SAWセンサ素子3は、加速度等による外力Fが厚板部6bにその主面に関して垂直下向きに作用すると、薄板部6cを下方へ撓ませながら、自由端の長さ方向端部4bが下向きに変位する。これにより薄板部6cの上側主面には、圧電基板4の長さ方向に引張応力が発生し、かつ下面には圧縮応力が発生する。逆向きに外力Fが作用して圧電基板4が上方へ撓むと、薄板部6cの上側主面には、圧電基板の長さ方向に圧縮応力が発生し、かつ下面には引張応力が発生する。尚、錘として上下に変位する厚板部6bの上下面には、実質的に引張及び圧縮応力が発生しない。この薄板部6c上側主面の引張又は圧縮応力によるSAW伝搬速度の変化が、SAWセンサ1から出力される発振周波数の変化として検出され、それを演算処理して外力Fの大きさ及び/又は向きを測定する。
【0009】
通常このような電極構成のSAWセンサ素子3において、IDT7が励振するSAWはレイリー波である。レイリー波は、基板表面内で波の伝搬方向に沿う縦波成分と基板表面に垂直な厚さ方向の横波成分とを含む。図17は、36°回転Yカット水晶基板上に図15と同様のSAW共振子を形成してレイリー波SAWを励振した場合に、該基板表面付近に生じるX方向の変位U1、Y方向の変位U2、及びZ方向の変位U3を基板表面からの深さに関して相対的に表したものである。同図から分かるよう、レイリー波は、その振動エネルギがZ方向に大きく分散している。圧電基板表面に生じる歪みの一部(X方向)だけを外力Fの測定に利用するので、高感度なSAWセンサの実現が制限される。例えば、外力Fが小さい場合に、SAWセンサ素子の発振周波数の変化が小さ過ぎて検出できなかったり、ノイズとして除去される虞がある。
【0010】
他方、SAWの中でSH波(horizontal shear wave)と呼ばれる波は、基板表面内でSAW伝搬方向に垂直な向きに振動する横波の成分のみを持つことが知られている。図18は、同じ36°回転Yカット水晶基板上に図15と同様のSAW共振子を、そのIDT及び反射器の向きを基板主面の面内で90°回転させて形成し、SH波SAWを励振した場合に、該基板表面付近に生じるX方向の変位U1、Y方向の変位U2、及びZ方向の変位U3を基板表面からの深さに関して相対的に表したものである。同図から分かるように、SH波は、大部分の振動エネルギが基板表面のY方向に集中している。
【0011】
そこで本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、その目的は、SH波SAWを利用することによって、高感度に加速度、外力、変位等を測定し得るSAWセンサ及びそれに使用するのに適したSAWセンサ素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、上記目的を達成するために、圧電基板と該圧電基板上に形成されたIDTとを有するSAWセンサ素子と、該SAWセンサ素子を支持するベースとを備え、圧電基板が、支持部と、該支持部から延長する薄板部と、該薄板部を挟んで支持部の反対側に設けられた厚板部とを有し、SAWセンサ素子が、圧電基板の薄板部及び厚板部を浮かせて、かつ厚板部が薄板部を撓ませるように変位可能な状態にして、支持部をベースに固定して支持され、前記IDTがSH型SAWを励振し、かつ厚板部の変位による薄板部の撓みで該薄板部表面に生じる引張応力又は圧縮応力の作用方向と直交する向きにSAWの伝搬方向を整合させて、圧電基板の薄板部上に配置されていることを特徴とするSAWセンサが提供される。
【0013】
ここで、SH型SAWは、SH波SAWに限定するものではなく、同様に横波成分(U2)が縦波成分(U1)及び厚さ方向成分(U3)よりも相対的に大きいタイプのSAWを包括的に含むものである。このようなSAWには、例えばSTW、SSBW、ラブ波、リーキーSAW等がある。
【0014】
或る実施例では、IDTがその両側にSAW伝搬方向に沿って配置した反射器と共に、SAW共振子を構成する。また、IDTは少なくとも2つの交差指電極対からなり、SAWフィルタ又は2ポート型SAW共振子を構成することができる。
【0015】
SAWセンサ素子に加速度や外力等が作用し、圧電基板の厚板部が錘となって変位して薄板部が撓むと、撓みの向き及び大きさに対応した引張応力又は圧縮応力が薄板部表面に発生する。IDTにより励振されるSH型SAWは、横波成分が十分に大きく、かつその振動変位の向きが薄板部表面の引張応力又は圧縮応力の作用方向に一致しているので、該引張応力又は圧縮応力の全部又は大部分が、効率良くSAWセンサ素子の発振周波数に作用してその変動に反映される。従って、加速度や外力、変位等を従来よりも高感度に検出し得るSAWセンサを実現することができる。
【0016】
或る実施例では、圧電基板が、一方の長さ方向端部に支持部を、他方の長さ方向端部に厚板部を、支持部と厚板部との間に薄板部を有する矩形平板状をなすことにより、1軸方向の高感度なSAWセンサが得られる。
【0017】
別の実施例では、圧電基板が、両方の長さ方向端部にそれぞれ支持部を、長さ方向の中央に厚板部を、各支持部と厚板部との間にそれぞれ薄板部を有する矩形平板状をなし、各薄板部にそれぞれIDTを配置することにより、2軸方向の高感度なSAWセンサが得られる。
【0018】
更に別の実施例によれば、SAWセンサ素子が、各薄板部にそれぞれ少なくとも2つのIDTを互いに引張応力又は圧縮応力の作用方向に並列に配置することにより、より高精度な2軸方向のSAWセンサが得られる。
【0019】
或る実施例では、SAWセンサ素子が、各薄板部にそれぞれ4つのIDTをSAWの伝搬方向に沿って少なくとも2つずつ直列にかつ互いに引張応力又は圧縮応力の作用方向に並列に配置することにより、3軸方向の高感度なSAWセンサが得られる。
【0020】
別の実施例では、SAWセンサ素子が、各薄板部にレイリーSAWを励振する少なくとも2つの追加のIDTを更に有し、この追加のIDTが、SH型SAWを励振するIDTのSAW伝搬方向の両側に、そのSAW伝搬方向をSH型SAWの伝搬方向と直交する向きに整合させて配置することにより、同様に3軸方向の高感度なSAWセンサが得られる。
【0021】
更に別の実施例によれば、SAWセンサ素子が、各薄板部にそれぞれ2つのIDTをそのSAW伝搬方向に直列に配置し、かつそれらの間にレイリーSAWを励振する2つの追加のIDTを更に有し、追加のIDTが、そのそのSAW伝搬方向をSH型SAWの伝搬方向と直交する向きに整合させかつ互いに直列に配置することにより、同様に3軸方向の高感度なSAWセンサが得られる。
【0022】
或る実施例では、圧電基板が、その外周に沿って矩形枠状の支持部と、中央に厚板部と、支持部と厚板部との間に薄板部を有する矩形平板状をなし、薄板部に圧電基板の長さ方向及び幅方向の中心線に沿って複数のIDTを配置することにより、3軸方向に等しく高精度なSAWセンサが得られる。
【0023】
別の実施例では、圧電基板が、その中央に支持部と、外周に沿って矩形枠状の厚板部と、支持部と厚板部との間に薄板部を有する矩形平板状をなし、薄板部に圧電基板の長さ方向及び幅方向の中心線に沿って複数のIDTを配置することにより、3軸方向により高感度なSAWセンサが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。各図において、同一又は類似の構成要素には、同一又は類似の参照符号を付して表示する。
【0025】
図1(A)、(B)は、本発明によるSAWセンサの第1実施例の構成を概略的に示している。本実施例のSAWセンサ11は、水平なベース12に支持されたSAWセンサ素子13を備える。SAWセンサ素子13は、例えば水晶材料からなる矩形平板状の圧電基板14と、その上側主面に形成されたSAW共振子15とを有する。
【0026】
圧電基板14は、一方の長さ方向端部14aに厚板支持部16aを、反対側の長さ方向端部14bに厚板部16bを、それらの間の中央領域に下面に凹部を形成して設けた薄板部16cを有する。SAWセンサ素子13は、圧電基板14の厚板支持部16aをベース12に接着剤17で固定して、概ね水平に片持ちに支持される。これにより厚板部16bは、薄板部16cと共にベース12から浮かせて、かつ前記薄板部を撓ませるように上下に変位可能な状態に保持される。本実施例では、厚板支持部16aを厚板部16bと同じ厚さに形成したが、異なる厚さに例えば薄板部16cと同じ厚さにすることもでき、別個の支持部材を用いてベース12に固定することができる。
【0027】
SAW共振子15は、圧電基板14の薄板部16cの上側主面に形成される。前記SAW共振子は、1対の交差指電極18a,18bからなるIDT18と、その両側にそれぞれ反射器9,9とを、該IDTにより励振されるSAWの伝搬方向に沿って有する。本実施例では、IDT18が、横波成分のみを有するSH波のSAWを励振する。前記IDTは、SAW伝搬方向を圧電基板14の幅方向に整合させて、該IDTにより励振されるSH波の振動変位の向きが前記圧電基板の長さ方向に一致するように配置する。従って、前記SAW伝搬方向は、厚板部16bが変位して薄板部16cが撓むことにより該薄板部表面に生じる引張応力又は圧縮応力の作用方向と直交する向きに整合する。IDT8の各交差指電極18a,18bは、それぞれバスバーから引き出した配線を介して厚板支持部16a上の電極パッド20a,20bに接続されている。
【0028】
圧電基板14の長さ方向、幅方向及び厚さ方向をそれぞれX,Y,Z方向として、図1(B)に矢印で示すように、加速度等による外力FがZ方向に、厚板部16bの主面に垂直下向きに作用する場合を考える。SAWセンサ素子13は、従来技術に関連して図16に例示したように、前記圧電基板の薄板部16cを下方へ撓ませながら、自由端の長さ方向端部14bが下向きに変位する。これにより、薄板部16cの上側主面には、圧電基板14の長さ方向即ちX方向に引張応力が発生し、かつ下面には圧縮応力が発生する。このとき、厚板部16bは錘として作用するので、前記圧電基板が一定の厚さを有する場合に比して、薄板部16cには、同じ大きさの外力Fに対してより大きな撓みが生じる。
【0029】
外力Fが逆向きに厚板部16b主面の垂直上向きに作用すると、SAWセンサ素子13は、薄板部16cを上方へ撓ませながら、自由端の長さ方向端部14bが下向きに変位する。これにより、薄板部16cの上側主面には、圧電基板14の長さ方向即ちX方向に圧縮応力が発生し、かつ下面には引張応力が発生する。また、薄板部16cが大きく撓むので、厚板部16bの上下表面には、実質的に引張又は圧縮応力が発生しない。
【0030】
薄板部16cの上側主面を伝搬するSH波SAWの速度は、該主面に発生する引張応力又は圧縮応力及びその大きさにより変化する。SAWセンサ11は、図示しない発振回路によりSAW共振子15の共振周波数に基づく所定の周波数を発振させる。SAWセンサ素子13に外力が全く作用しない無負荷状態における発振周波数を基準として、外力Fが作用している負荷状態での発振周波数との差分(及び/又は和分)を取り出して演算処理することにより、作用した外力Fの大きさ及び/又は向きが測定される。
【0031】
本実施例によれば、SH波SAWを励振するIDT18を圧電基板14の薄板部16c上に形成し、かつSAW伝搬方向と直交する向き即ちSH波の振動変位の向きを、前記薄板部表面に生じる引張及び/又は圧縮応力の作用方向に整合させて配置するので、前記引張又は圧縮応力の全部又は大部分を効率良く発振周波数の変動に反映させることができる。従って、SAWセンサ11は、SAWセンサ素子13に作用する加速度や外力、変位等を従来よりも高感度に検出することができる。
【0032】
本実施例は、SH波SAWを励振するために、1対の交差指電極からなる1つのIDT18と反射器19,19とからなる1ポート型のSAW共振子15を使用しているが、これに限定するものではない。別の実施例では、例えば各1対の交差指電極からなる2つのIDTをSAW伝搬方向に配置しかつそれらの両側に反射器を設けた2ポート型のSAW共振子を用いることができる。更に別の実施例では、トランスバーサル型のSAWフィルタを用いて、所定の周波数を発振させることができる。
【0033】
また、本発明のSAWセンサ及びSAWセンサ素子は、SH波SAWを励振するものに限定するものではない。別の実施例では、SH波と同様に、横波成分(U2)が縦波成分(U1)及び厚さ方向成分(U3)よりも相対的に大きいSH型のSAWであれば、上記実施例に適用でき、同様の効果を得ることができる。このようなSAWには、例えばSTW、SSBW、ラブ波、リーキーSAW等がある。
【0034】
図2(A)、(B)は、本発明によるSAWセンサの第2実施例の構成を概略的に示している。本実施例のSAWセンサ21は、加速度等の外力をZ方向、X方向の2軸方向に検出するためのもので、水平なベース22に支持されたSAWセンサ素子23を備える。SAWセンサ素子23は、例えば水晶材料からなる矩形平板状の圧電基板24と、その上側主面に形成された2つのSAW共振子25,25とを有する。
【0035】
圧電基板24は、両方の長さ方向端部24a,24bにそれぞれ厚板支持部26a,26aを、長さ方向の中央に厚板部26bを、該厚板部と前記各厚板支持部との間にそれぞれ下面に凹部を形成して設けた薄板部26c,26cを有する。SAWセンサ素子23は、前記圧電基板の厚板支持部26a,26aをベース22にそれぞれ接着剤27,27で固定して、概ね水平に支持される。厚板部26bは、両薄板部26c,26cと共にベース22から浮かせて、かつ前記両薄板部を撓ませるように変位可能な状態に保持される。各厚板支持部26a,26aは、必ずしも前記厚板部と同じ厚さに形成しなくても良く、異なる厚さに例えば前記薄板部と同じ厚さに形成し、その上下から別個の支持部材で挟むように固定することもできる。
【0036】
前記圧電基板の各薄板部26c,26cには、それぞれ1つのSAW共振子25,25が形成されている。前記SAW共振子は、それぞれSAWの伝搬方向に沿って1対の交差指電極からなるIDT28,28と、その両側に各1つの反射器29,29,29,29とを有する。IDT28,28は、横波成分のみを有するSH波のSAWを励振する。各IDT28,28は、それぞれSAW伝搬方向を圧電基板24の幅方向に整合させて、該IDTにより励振されるSH波の振動変位の向きが前記圧電基板の長さ方向に一致するように配置する。従って、前記各SAW伝搬方向は、厚板部26bが変位して両薄板部26c,26cが撓むことにより該薄板部表面に生じる引張応力又は圧縮応力の作用方向と直交する向きに整合する。図示していないが、IDT28,28の前記各交差指電極は、それぞれバスバーから引き出した配線を介して、近接する前記各厚板支持部上の電極パッドに接続されている。
【0037】
圧電基板24の長さ方向、幅方向及び厚さ方向をそれぞれX,Y,Z方向として、加速度等による外力がZ方向に即ち厚板部26bの主面に垂直に作用する場合を考える。図3(A)に矢印で示すように、外力Fが前記厚板部の主面に垂直上向きに作用すると、SAWセンサ素子23は、両薄板部26c,26cを上向き凸に撓ませながら、前記厚板部が上方へ変位する。これにより、前記各薄板部の上側主面には、圧電基板24の長さ方向即ちX方向に引張応力が発生し、かつ下面には圧縮応力が発生する。逆に、外力Fが厚板部26b主面に垂直下向きに作用すると、SAWセンサ素子23は、前記両薄板部を下向き凸に撓ませながら、前記厚板部が下方へ変位する。これにより、前記各薄板部の上側主面には、X方向に圧縮応力が発生し、かつ下面には引張応力が発生する。
【0038】
次に、加速度等による外力がX方向に即ち圧電基板24の長さ方向に作用する場合を考える。厚板部26bは、その重心Cが両薄板部26c,26cよりも下方にずらした高さ位置となるように設けられている。従って、図3(B)に矢印で示すように、外力Fが図中左方に即ち−X方向に作用すると、SAWセンサ素子23は、前記圧電基板の図中左側の薄板部26cを上向き凸にかつ右側の薄板部26cを下向き凸に撓ませながら、前記厚板部が時計回りに変位する。これにより、一方の薄板部26cの上側主面には、圧電基板24の長さ方向即ちX方向に引張応力が発生し、かつ下面には圧縮応力が発生する。また、他方の薄板部26cの上側主面には、X方向に圧縮応力が発生し、かつ下面には引張応力が発生する。
【0039】
逆に、外力Fが図中右方に即ち+X方向に作用すると、SAWセンサ素子23は、図中左側の薄板部26cを下向き凸にかつ右側の薄板部26cを上向き凸に撓ませながら、前記厚板部が反時計回りに変位する。これにより、一方の薄板部薄板部26cの上側主面には、X方向に圧縮応力が発生し、かつ下面には引張応力が発生する。また、他方の薄板部26cの上側主面には、X方向に引張応力が発生し、かつ下面には圧縮応力が発生する。
【0040】
本実施例では、厚板部26bを、重心Cの高さ位置を両薄板部26c,26cより下側にずらして形成した。別の実施例では、重心の高さ位置を上側にずらして、厚板部26bを形成することもできる。その場合、X方向の外力による前記厚板部の変位及び前記各薄板部の撓みは本実施例と逆向きになる。
【0041】
いずれの場合も、厚板部26bが錘として作用するので、前記各薄板部には、前記圧電基板が一定の厚さを有する場合に比して、同じ大きさの外力Fに対してより大きな撓みが生じる。また、前記各薄板部が大きく撓むので、厚板部26bの上下表面には、実質的に引張又は圧縮応力が発生しない。
【0042】
本実施例においても、薄板部26c,26cの上側主面を伝搬するSH波SAWの速度は、該主面に発生する引張応力又は圧縮応力及びその大きさにより変化する。SAWセンサ21は、図示しない発振回路により各SAW共振子25,25の共振周波数に基づいて2つの発振周波数を出力する。これらの発振周波数は、外力が全く作用しない無負荷状態における発振周波数を基準として、前記薄板部表面に引張応力が作用すると、低周波側に即ち−側にシフトし、圧縮応力が作用すると、高周波側に即ち+側にシフトする。
【0043】
従って、厚板部26bに作用する外力の向きは、両SAW共振子25,25からの発振周波数が−側にシフトすると、+Z方向であると判定され、+側にシフトすると、−Z方向であると判定される。また、前記厚板部への外力の向きは、図中左側のSAW共振子25からの発振周波数が−側にシフトしかつ右側のSAW共振子25からの発振周波数が+側にシフトすると、−X方向であると判定され、左側のSAW共振子25からの発振周波数が+側にシフトしかつ右側のSAW共振子25からの発振周波数が−側にシフトすると、+X方向であると判定される。
【0044】
更に、厚板部26bに作用する外力の大きさは、外力が作用している負荷状態において各SAW共振子25,25からの発振周波数を取り出し、それぞれ無負荷状態での発振周波数との差分及び/又は和分を演算処理することにより、測定することができる。ここで、無負荷状態におけるSAW共振子25,25からの発振周波数をf10,f20とし、負荷状態における発振周波数をf11,f21とする。Z方向の外力の大きさは、例えばそれぞれの発振周波数の差分(f10−f11)、(f20−f21)から算出される。更に、各発振周波数の和分の差{(f10+f20)−(f11+f21)}を用いると、より高精度に算出できる。X方向の外力の大きさは、例えばそれぞれの発振周波数の差分の和{(f10−f11)+(f20−f21)}とシフト後の発振周波数の差分(f11−f21)とから算出される。
【0045】
本実施例においても、SH波SAWを励振する各IDT28,28を圧電基板24の各薄板部26c,26c上に形成し、かつそれらのSAW伝搬方向と直交する向き即ちSH波の振動変位の向きを、前記薄板部表面に生じる引張及び/又は圧縮応力の作用方向に整合させて配置するので、前記引張又は圧縮応力の全部又は大部分を効率良く発振周波数の変動に反映させることができる。従って、SAWセンサ素子23に作用するZ方向、X方向の加速度や外力、変位等を従来よりも高感度に検出し得る2軸方向のSAWセンサを実現できる。
【0046】
図4(A)、(B)は、第2実施例のSAWセンサの変形例を概略的に示している。本実施例のSAWセンサ21は、圧電基板24の各薄板部26c,26cにそれぞれ2つのSAW共振子2511,2512,2521,2522が形成されている点において、図3の実施例と異なる。前記各SAW共振子は、それぞれSAWの伝搬方向に沿って1対の交差指電極からなるIDT2811,2812,2821,2822と、その両側にそれぞれ各1つの反射器2911,2911,2912,2912,2921,2921,2922,2922を有する。前記各薄板部の2つの前記SAW共振子は、それぞれSAW伝搬方向を圧電基板24の幅方向に整合させかつ互いに並列に配置されている。
【0047】
各薄板部26c,26cは、図3(A)、(B)と同様の撓みを生じる。この撓みは、その大きさが圧電基板24の長さ方向に沿って厚板支持部26a,26a側と厚板部26b側とで異なる場合があり得る。本実施例によれば、各薄板部26c,26c上に2つのSAW共振子を圧電基板24の長さ方向に並列に配置したので、前記薄板部毎に出力される2つの発振周波数を検出して演算処理することによって、Z方向及びX方向の加速度等をより高精度に検出する2軸方向のSAWセンサを実現することができる。
【0048】
図5(A)、(B)は、本発明によるSAWセンサの第3実施例の構成を概略的に示している。本実施例のSAWセンサ31は、加速度等の外力をZ方向、X方向、Y方向の3軸方向に検出するためのもので、水平なベース32に支持されたSAWセンサ素子33を備える。SAWセンサ素子33は、例えば水晶材料からなる矩形平板状の圧電基板34と、その上側主面に形成された8つのSAW共振子3511,3512,3513,3514,3521,3522,3523,3524とを有する。
【0049】
圧電基板34は、第2実施例と同様に、両方の長さ方向端部34a,34bにそれぞれ厚板支持部36a,36aを、長さ方向の中央に厚板部36bを、該厚板部と前記各厚板支持部との間にそれぞれ下面に凹部を形成して設けた薄板部36c,36cを有する。SAWセンサ素子33は、前記圧電基板の厚板支持部36a,36aをベース32にそれぞれ接着剤37,37で固定して、概ね水平に支持される。厚板部36bは、両薄板部36c,36cと共にベース32から浮かせて、かつ前記両薄板部を撓ませるように変位可能な状態に保持される。各厚板支持部36a,36aは、必ずしも前記厚板部と同じ厚さに形成しなくても良く、異なる厚さに例えば前記薄板部と同じ厚さに形成し、その上下から別個の支持部材で挟むように固定することもできる。
【0050】
前記圧電基板の各薄板部36c,36cには、それぞれ4つのSAW共振子3511,3512,3513,3514,3521,3522,3523,3524が形成されている。前記SAW共振子は、それぞれSAWの伝搬方向に沿って1対の交差指電極からなるIDT3811,3812,3813,3814,3821,3822,3823,3824と、その両側にそれぞれ各1つの反射器3911,3912,3913,3914,3921,3922,3923,3924とを有する。前記各IDTは、横波成分のみを有するSH波のSAWを励振する。図示していないが、前記各IDTの交差指電極は、それぞれバスバーから引き出した配線を介して、近接する前記各厚板支持部上の電極パッドに接続されている。
【0051】
前記各薄板部の4つの前記SAW共振子は、それぞれ圧電基板34の幅方向にSAW伝搬方向を整合させて、2つずつが互いに並列に配置されている。これにより、前記各IDTは、該IDTにより励振されるSH波の振動変位の向きが前記圧電基板の長さ方向に一致する。従って、前記各SAW伝搬方向は、厚板部36bの変位により両薄板部36c,36cが圧電基板の長さ方向に撓む際に該薄板部表面に生じる引張応力又は圧縮応力の作用方向と直交する向きに整合する。
【0052】
加速度等による外力が厚板部36bの主面に対して垂直方向に作用するとき、SAWセンサ素子33には、第2実施例の図3(A)と同様の撓みが生じる。厚板部36bは、外力が垂直上向きに作用すると、両薄板部36c,36cを上向き凸に撓ませながら上方へ変位し、逆に外力が垂直下向きに作用すると、前記両薄板部を下向き凸に撓ませながら下方へ変位する。前記各薄板部の上側主面には、上向き凸に撓むと圧電基板34の長さ方向即ちX方向に引張応力が発生し、下向き凸に撓むと圧縮応力が発生する。
【0053】
加速度等の外力が圧電基板34の長さ方向即ちX方向に作用するとき、SAWセンサ素子33には、第2実施例の図3(B)と同様の撓みが生じる。厚板部36bも、第2実施例と同様に、重心Cが両薄板部36c,36cからずらした高さ位置となるように設けられている。外力が−X方向に作用すると、SAWセンサ素子33は、図中左側の薄板部36cを上向き凸にかつ右側の薄板部36cを下向き凸に撓ませながら、前記厚板部が時計回りに変位する。外力が逆向きに+X方向に作用すると、SAWセンサ素子33は、図中左側の薄板部36cを下向き凸にかつ右側の薄板部36cを上向き凸に撓ませながら、前記厚板部が反時計回りに変位する。前記各薄板部の上側主面には、上向き凸に撓むと圧電基板34の長さ方向即ちX方向に引張応力が発生し、下向き凸に撓むと圧縮応力が発生する。
【0054】
加速度等の外力が圧電基板34の幅方向即ちY方向に作用するとき、SAWセンサ素子33は、両薄板部36c,36cがY方向に撓みを生じる。例えば、外力が−Y方向に作用すると、厚板部36bは、前記各薄板部を図5(C)に示すように、その−Y方向側を上向き凸にかつ+Y方向側を下向き凸に撓ませながら、Z方向に関して時計回りに変位する。このとき、前記各薄板部の上側主面には、+Y方向側の領域に圧縮応力が発生し、−Y方向側の領域に引張応力が発生する。
【0055】
外力が逆向きに+Y方向に作用すると、両薄板部36c,36cはY方向に、図5(C)とは逆の撓みを生じる。厚板部36bは、前記各薄板部の−Y方向側を下向き凸にかつ+Y方向側を上向き凸に撓ませながら、Z方向に関して反時計回りに変位する。このとき、前記各薄板部の上側主面には、+Y方向側の領域に引張応力が発生し、−Y方向側の領域に圧縮応力が発生する。
【0056】
SAWセンサ31は、図示しない発振回路により各SAW共振子3511,3512,3513,3514,3521,3522,3523,3524の共振周波数に基づいて8つの発振周波数を出力する。これらの発振周波数は、外力が全く作用しない無負荷状態における発振周波数を基準として、前記各SAW共振子が形成されている前記薄板部の表面に引張応力が作用すると、低周波側に即ち−側にシフトし、圧縮応力が作用すると、高周波側に即ち+側にシフトする。
【0057】
外力の向きは、両薄板部36c,36cの全部の前記SAW共振子からの発振周波数が−側にシフトすると、+Z方向であると判定され、+側にシフトすると、−Z方向であると判定される。前記各薄板部において全部の前記SAW共振子からの発振周波数がそれぞれ同じ向きにシフトし、かつそのシフトの向きが前記薄板部間で逆の場合には、外力の向きがX方向であると判定される。このとき、図中左側の薄板部36c上の前記SAW共振子からの発振周波数が−側にシフトし、かつ右側の薄板部36c上の前記SAW共振子からの発振周波数が+側にシフトすると、外力の向きは−X方向である。逆に、図中左側の薄板部36c上の前記SAW共振子からの発振周波数が+側にシフトし、かつ右側の薄板部36c上の前記SAW共振子からの発振周波数が−側にシフトすると、外力の向きは+X方向である。
【0058】
更に本実施例では、前記両薄板部の+Y方向側のSAW共振子3511,3512,3521,3522からの発振周波数が全て同じ向きにシフトし、かつ−Y方向側のSAW共振子3513,3514,3523,3524からの発振周波数が全て逆の向きにシフトすると、外力の向きがY方向であると判定される。このとき、+Y方向側の前記SAW共振子からの発振周波数が+側にシフトし、かつ−Y方向側の前記SAW共振子からの発振周波数が−側にシフトすると、外力の向きは−Y方向である。逆に、+Y方向側の前記SAW共振子からの発振周波数が−側にシフトし、かつ−Y方向側の前記SAW共振子からの発振周波数が+側にシフトすると、外力の向きは+Y方向である。
【0059】
厚板部36bに作用する外力の大きさは、8つの前記各SAW共振子からの発振周波数を、外力が作用している負荷状態において取り出し、それぞれ無負荷状態での発振周波数との差分及び/又は和分を演算処理することにより、算出することができる。本実施例においても、SH波SAWを励振する各IDT3811,3812,3813,3814,3821,3822,3823,3824を圧電基板34の各薄板部36c,36c上に形成し、かつそれらのSAW伝搬方向と直交する向き即ちSH波の振動変位の向きを、前記薄板部表面に生じる引張及び/又は圧縮応力の作用方向に整合させて配置するので、前記引張又は圧縮応力の全部又は大部分を効率良く発振周波数の変動に反映させることができる。従って、SAWセンサ素子33に作用するZ方向、X方向及びY方向の加速度や外力、変位等を従来よりも高感度に検出し得る3軸方向のSAWセンサを実現できる。
【0060】
図6(A)、(B)は、第3実施例のSAWセンサの変形例を概略的に示している。本実施例のSAWセンサ41は、第3実施例と同様に、加速度等の外力をZ方向、X方向、Y方向の3軸方向に検出するためのもので、水平なベース42に支持されたSAWセンサ素子43を備える。SAWセンサ素子43は、第3実施例と同じ矩形平板状の圧電基板34を有し、その各薄板部36c,36cの上側主面に各4つのSAW共振子4411,4412,4413,4414,4421,4422,4423,4424が形成されている。前記各SAW共振子は、それぞれSAW伝搬方向に沿って1対の交差指電極からなるIDT4511,4512,4513,4514,4521,4522,4523,4524と、その両側にそれぞれ各1つの反射器4611,4612,4613,4614,4621,4622,4623,4624とを有する。図示していないが、前記各IDTの交差指電極は、それぞれバスバーから引き出した配線を介して、近接する前記各厚板支持部上の電極パッドに接続されている。
【0061】
薄板部36cには、SH波SAWを励振する2つのSAW共振子4411,4412が圧電基板34の幅方向の中央に、それぞれSAW伝搬方向を圧電基板34の幅方向に整合させて、互いに並列に配置されている。これにより、励振されるSH波の振動変位の向きが前記圧電基板の長さ方向に一致する。更に薄板部36cには、それぞれレイリー波のSAWを励振するSAW共振子4413,4414が、前記圧電基板の長さ方向に沿ってSAW共振子4411,4412の両側に、それぞれSAW伝搬方向を前記圧電基板の長さ方向に整合させて配置されている。
【0062】
同様に薄板部36cには、SH波のSAWを励振する2つのSAW共振子4421,4422が圧電基板34の幅方向の略中央に、それぞれSAW伝搬方向を圧電基板34の幅方向に整合させて、互いに並列に配置されている。これにより、励振されるSH波の振動変位の向きが前記圧電基板の長さ方向に一致する。更に薄板部36cには、それぞれレイリー波のSAWを励振するSAW共振子4423,4424が、前記圧電基板の長さ方向に沿ってSAW共振子4421,4422の両側に、それぞれSAW伝搬方向を前記圧電基板の長さ方向に整合させて配置されている。
【0063】
薄板部36c,36cの中央に2つずつ配置されたSAW共振子4411,4412及びSAW共振子4421,4422は、Z方向及びX方向の加速度等を検出するために使用される。これらの動作は、図4の実施例と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0064】
薄板部36c,36cの幅方向両側にそれぞれ配置されたSAW共振子4413,4414及びSAW共振子4423,4424は、Y方向に作用する加速度等を検出するために使用される。第3実施例の場合と同様に、SAWセンサ素子43は、外力が−Y方向に作用すると、図6(C)に示すように、前記薄板部の−Y方向側を上向き凸にかつ+Y方向側を下向き凸に撓ませながら、厚板部36bがZ方向に関して時計回りに変位する。外力が逆向きに+Y方向に作用すると、前記薄板部は逆向きの撓みを生じる。
【0065】
前記薄板部が図6(C)に示すように撓むと、その+Y方向側の領域には圧縮応力が発生して、該領域のSAW共振子4413,4423からの発振周波数は+側にシフトし、−Y方向側の領域には引張応力が発生して、該領域のSAW共振子4414,4424からの発振周波数は−側にシフトする。前記薄板部が図6(C)とは逆の向きに撓むと、その+Y方向側の領域には引張応力が発生して、該領域のSAW共振子4413,4423からの発振周波数は−側にシフトし、−Y方向側の領域には圧縮応力が発生して、該領域のSAW共振子4414,4424からの発振周波数は+側にシフトする。
【0066】
従って、SAW共振子4413,4414,4423,4424からの発振周波数に基づいて、Y方向に作用する外力の向きが判定される。Y方向に作用する外力の大きさは、これら4つのSAW共振子からの発振周波数を、外力が作用している負荷状態において取り出し、それぞれ無負荷状態での発振周波数との差分及び/又は和分を演算処理することにより、算出することができる。
【0067】
図7(A)、(B)は、第3実施例の別の変形例を概略的に示している。本実施例のSAWセンサ51は、第3実施例と同様に、加速度等の外力をZ方向、X方向、Y方向の3軸方向に検出するためのもので、水平なベース52に支持されたSAWセンサ素子53を備える。SAWセンサ素子53は、第3実施例と同じ矩形平板状の圧電基板34を有し、その各薄板部36c,36cの上側主面に各4つのSAW共振子5411,5412,5413,5414,5421,5422,5423,5424が形成されている。前記各SAW共振子は、それぞれSAW伝搬方向に沿って1対の交差指電極からなるIDT5511,5512,5513,5514,5521,5522,5523,5524と、その両側にそれぞれ各1つの反射器5611,5612,5613,5614,5621,5622,5623,5624とを有する。図示していないが、前記各IDTの交差指電極は、それぞれバスバーから引き出した配線を介して、近接する前記各厚板支持部上の電極パッドに接続されている。
【0068】
薄板部36cには、レイリーSAWを励振する2つのSAW共振子5413,5414が圧電基板34の幅方向の略中央に、SAW伝搬方向を前記圧電基板の長さ方向に整合させかつ互いにSAW伝搬方向に沿って直列に配置されている。更に薄板部36cには、SH波SAWを励振するSAW共振子5411,5412が、圧電基板34の幅方向にSAW共振子5413,5414の両側に、それぞれSAW伝搬方向を圧電基板34の幅方向に整合させて、励振されるSH波の振動変位の向きが前記圧電基板の長さ方向に一致するように配置されている。
【0069】
同様に薄板部36cには、レイリーSAWを励振する2つのSAW共振子5423,5424が圧電基板34の幅方向の略中央に、SAW伝搬方向を前記圧電基板の長さ方向に整合させかつ互いにSAW伝搬方向に沿って直列に配置されている。更に薄板部36cには、SH波SAWを励振するSAW共振子5421,5422が、圧電基板34の幅方向にSAW共振子5423,5424の両側に、それぞれSAW伝搬方向を圧電基板34の幅方向に整合させて、励振されるSH波の振動変位の向きが前記圧電基板の長さ方向に一致するように配置されている。
【0070】
薄板部36c,36cの中央に2つずつ配置されたSAW共振子5413,5414及びSAW共振子5423,5424は、上述した従来のSAWセンサと同様に、Z方向及びX方向の加速度等を検出するために用いる。同じ大きさの外力であっても、Z方向及びX方向に作用する場合には、前記薄板部表面に発生する応力が比較的大きいので、従来と同じレイリーSAWを励振するSAW共振子であっても、検出することができる。
【0071】
外力が−Y方向に作用すると、SAWセンサ素子53は、図7(C)に示すように前記薄板部が撓みを生じる。薄板部36c,36cの幅方向両側に配置されたSAW共振子5411,5412及びSAW共振子5421,5422は、Y方向に作用する加速度等を検出するために用いる。これらの動作は、基本的に第3実施例と同じであるので、詳細な説明は省略する。Y方向の外力は、その大きさに対して前記薄板部表面に発生する応力が比較的小さいので、本発明のSH波SAWを励振するSAW共振子を用いることによって、精度良く検出することができる。
【0072】
図8(A)〜(C)は、本発明によるSAWセンサの第4実施例の構成を概略的に示している。本実施例のSAWセンサ61は、加速度等の外力を3軸方向に、X方向、Y方向及びZ方向のいずれもより精度良く検出するためのもので、水平なベース62に支持されたSAWセンサ素子63を備える。SAWセンサ素子63は、例えば水晶材料からなりかつ縦横比が比較的1に近い矩形平板状の圧電基板64と、その上側主面に形成された8つのSAW共振子6511,6512,6521,6522,6531,6532,6541,6542とを有する。
【0073】
圧電基板64は、外周に沿って所定幅の矩形枠状をなす厚板支持部66aと、中心位置に設けられた矩形の厚板部66bと、それらの間の領域に下面に凹部を形成して設けた矩形枠状の薄板部66cとを有する。SAWセンサ素子63は、圧電基板64の厚板支持部66aをベース62に接着剤67で固定支持される。これにより厚板部66bは、薄板部66cと共にベース62から浮かせて、かつ前記薄板部を撓ませるように上下に変位可能な状態に保持される。本実施例では、厚板支持部66aを厚板部66bと同じ厚さに形成したが、異なる厚さに例えば薄板部66cと同じ厚さにすることもでき、別個の支持部材を用いてベース62に固定することができる。
【0074】
薄板部66cの上側主面には、圧電基板64の長さ方向及び幅方向の中心線に沿って薄板部66c上に、厚板部66bと厚板支持部66aとの間にそれぞれ2つの前記SAW共振子が配置される。前記各SAW共振子は、それぞれSAWの伝搬方向に沿って1対の交差指電極からなるIDT6811,6812,6821,6822,6831,6832,6841,6842と、その両側にそれぞれ各1つの反射器6911,6912,6921,6922,6931,6932,6941,6942とを有する。前記各IDTは、横波成分のみを有するSH波のSAWを励振する。本実施例では、前記各IDTが、それぞれSAW伝搬方向を圧電基板64の長さ方向に整合させて、該IDTにより励振されるSH波の振動変位の向きが前記圧電基板の幅方向に一致するように配置する。
【0075】
外力がZ方向に作用すると、SAWセンサ素子63は、厚板部64bが上下方向に変位し、全部の前記SAW共振子からの発振周波数が同じ向きにシフトする。外力がX方向に作用すると、SAWセンサ素子63は、薄板部66cが図9(B)に示す長さ方向の断面において、第2実施例の図3(B)に示すような撓みを生じる。従って、圧電基板64の長さ方向に前記厚板部を挟んで一方の側から出力される発振周波数と他方の側から出力される発振周波数とは、互いに逆向きにシフトする。外力がY方向に作用すると、SAWセンサ素子63は、薄板部66cが図9(C)に示す幅方向の断面において、同様に第2実施例の図3(B)に示すような撓みを生じる。従って、圧電基板64の幅方向に前記厚板部を挟んで一方の側から出力される発振周波数と他方の側から出力される発振周波数とは、互いに逆向きにシフトする。
【0076】
Z方向に作用する外力の大きさは、8つ全部又はそのいくつかの前記SAW共振子からの発振周波数を、外力が作用している負荷状態において取り出し、それぞれ無負荷状態での発振周波数との差分及び/又は和分を演算処理することにより算出される。X方向に作用する外力の大きさは、図9(B)に示すようにX方向の撓みが生じる薄板部66cの領域に配置された前記SAW共振子からの発振周波数を同様に取り出すことによって算出できる。Y方向に作用する外力の大きさは、同様に、図9(C)に示すようにY方向の撓みが生じる薄板部66cの領域に配置された前記SAW共振子からの発振周波数を取り出すことによって算出できる。本実施例によれば、このようにX方向、Y方向及びZ方向の3軸方向について、加速度等を精度良く検出することができる。
【0077】
図9(A)〜(C)は、第4実施例のSAWセンサの変形例を概略的に示している。本実施例のSAWセンサ61は、圧電基板64の長さ方向即ちX方向における厚板部66bの中心から薄板部66cの中心までの距離dxが、Y方向における前記厚板部の中心から前記薄板部の中心までの距離dyよりも大きくなるように設定した点において、図8の第4実施例と異なる。
【0078】
圧電基板64の長さ方向の中心線に沿ってSAW共振子6511,6512,6521,6522を配置した薄板部66cの領域では、これらSAW共振子により励振されるSH波SAWの振動変位の方向が該薄板部66c領域の表面に発生する応力の作用方向と直交するので、感度が低下する虞がある。本実施例は、この薄板部領域に、同じ大きさの外力に対してより大きな応力が発生するように、薄板部66cと厚板部66bとの寸法を調整したしたものである。これにより、X方向、Y方向及びZ方向の3軸方向全てについて、加速度等を安定して精度良く検出することができる。
【0079】
図10(A)〜(E)は、第4実施例のSAWセンサの別の変形例を概略的に示している。本実施例のSAWセンサ61は、図9の実施例における圧電基板64の薄板部66cに貫通部分64aを形成し、該圧電基板の長さ方向及び幅方向の中心線に沿ってSAW共振子6511,6512,6521,6522,6531,6532,6541,6542を形成するのに十分な所定幅の領域を残すように、厚板部66bと厚板支持部66aとの間に薄板部66c´を十字状に形成した点が異なる。これにより、SAWセンサ素子63に外力が作用して厚板部66bが変位したとき、それにより生じる応力を、前記SAW共振子を形成した薄板部66c´に集中させることができる。従って、X方向、Y方向及びZ方向の3軸方向全てについて、加速度等をより高感度に検出することができる。
【0080】
図11(A)〜(C)は、本発明によるSAWセンサの第5実施例の構成を概略的に示している。本実施例のSAWセンサ71は、加速度等の外力を3軸方向に、X方向、Y方向及びZ方向のいずれもより精度良く検出するためのもので、水平なベース72に支持されたSAWセンサ素子73を備える。SAWセンサ素子73は、例えば水晶材料からなりかつ縦横比が比較的1に近い矩形平板状の圧電基板74と、その上側主面に形成された8つのSAW共振子7511,7512,7521,7522,7531,7532,7541,7542とを有する。
【0081】
圧電基板74は、中心位置に設けられた矩形の厚板支持部76aと、外周に沿って所定幅の矩形枠状をなす厚板部76bと、それらの間の領域に下面に凹部を形成して設けた矩形枠状の薄板部76cとを有する。SAWセンサ素子73は、圧電基板74の厚板支持部76aをベース72に接着剤77で固定支持される。これにより厚板部76bは、薄板部76cと共にベース72から浮かせて、かつ前記薄板部を撓ませるように上下に変位可能な状態に保持される。本実施例では、厚板支持部76aを厚板部76bと同じ厚さに形成したが、異なる厚さに例えば薄板部76cと同じ厚さにすることもでき、別個の支持部材を用いてベース72に固定することができる。
【0082】
薄板部76cの上側主面には、圧電基板74の長さ方向及び幅方向の中心線に沿って薄板部76c上に、厚板部76bと厚板支持部76aとの間にそれぞれ2つの前記SAW共振子が配置される。前記各SAW共振子は、それぞれSAWの伝搬方向に沿って1対の交差指電極からなるIDT7811,7812,7821,7822,7831,7832,7841,7842と、その両側にそれぞれ各1つの反射器7911,7912,7921,7922,7931,7932,7941,7942とを有する。前記各IDTは、横波成分のみを有するSH波のSAWを励振する。本実施例では、前記各IDTが、それぞれSAW伝搬方向を圧電基板64の幅方向に整合させて、該IDTにより励振されるSH波の振動変位の向きが前記圧電基板の長さ方向に一致するように配置する。
【0083】
外力がZ方向に作用すると、SAWセンサ素子73は、矩形枠状の厚板部76b全体が上下方向に変位する。その結果、全部の前記SAW共振子からの発振周波数が同じ向きにシフトする。Z方向に作用する外力の大きさは、8つ全部又はそのいくつかの前記SAW共振子からの発振周波数を、外力が作用している負荷状態において取り出し、それぞれ無負荷状態での発振周波数との差分及び/又は和分を演算処理することにより算出することができる。
【0084】
前記厚板部は、図11(B)、(C)に示す断面において、その重心Cが薄板部76cよりも下方にずらした高さ位置となるように設けられている。従って、図11(B)において、外力が図中左方に即ち−X方向に作用すると、SAWセンサ素子73は、厚板部76bのX方向両端部分が厚板支持部76aを支点に時計回りに変位して、薄板部76cの図中右側即ち+X方向側の部分を上向き凸に、図中左側即ち−X方向側の部分を下向き凸に撓ませる。これにより、薄板部76cの+X方向側部分の上側主面には、圧電基板24の長さ方向即ちX方向に引張応力が発生し、−X方向側部分の上側主面には、X方向に圧縮応力が発生する。
【0085】
外力が逆向きに、図中右方に即ち+X方向に作用すると、SAWセンサ素子73は、厚板部76bのX方向両端部分が厚板支持部76aを支点に反時計回りに変位して、薄板部76cの図中右側即ち+X方向側の部分を下向き凸に、図中左側即ち−X方向側の部分を上向き凸に撓ませる。これにより、薄板部76cの+X方向側部分の上側主面には、圧電基板24の長さ方向即ちX方向に圧縮応力が発生し、−X方向側部分の上側主面には、X方向に引張応力が発生する。
【0086】
外力がY方向に作用する場合、SAWセンサ素子73には、X方向に外力が作用した場合と同様の変形が生じる。即ち、図11(C)において、外力が−Y方向に作用すると、SAWセンサ素子73は、厚板部76bのY方向両端部分が厚板支持部76aを支点に時計回りに変位して、薄板部76cの図中右側即ち+Y方向側の部分を上向き凸に、−Y方向側の部分を下向き凸に撓ませる。これにより、薄板部76cの+Y方向側部分の上側主面には、圧電基板24の長さ方向即ちY方向に引張応力が発生し、−Y方向側部分の上側主面には、Y方向に圧縮応力が発生する。
【0087】
外力が逆向きに+Y方向に作用すると、SAWセンサ素子73は、厚板部76bのY方向両端部分が厚板支持部76aを支点に反時計回りに変位して、薄板部76cの図中右側即ち+Y方向側の部分を下向き凸に、−Y方向側の部分を上向き凸に撓ませる。これにより、薄板部76cの+Y方向側部分の上側主面には、圧電基板24の幅方向即ちY方向に圧縮応力が発生し、−Y方向側部分の上側主面には、Y方向に引張応力が発生する。
【0088】
その結果、外力がX方向又はY方向に作用する場合には、圧電基板64の長さ方向又は幅方向に前記厚板支持部を挟んで一方の側から出力される発振周波数と他方の側から出力される発振周波数とは、互いに逆向きにシフトする。X方向又はY方向に作用する外力の大きさは、それによりX方向又はY方向に撓みを生じる薄板部76cの領域に配置された前記SAW共振子からの発振周波数を取り出すことによって算出することができる。本実施例によれば、このようにX方向、Y方向及びZ方向の3軸方向について、加速度等を精度良く検出することができる。
【0089】
図12(A)〜(C)は、第5実施例のSAWセンサの変形例を概略的に示している。本実施例のSAWセンサ71は、圧電基板74の長さ方向即ちX方向において厚板支持部76aの両側でそれぞれ薄板部76cの中心から隣接する厚板部76bの中心までの距離dxが、該圧電基板の幅方向即ちY方向において前記厚板支持部の両側でそれぞれ前記薄板部の中心から隣接する前記厚板部の中心までの距離dyよりも大きくなるように設定した点において、図11の第5実施例と異なる。
【0090】
圧電基板74の長さ方向の中心線に沿ってSAW共振子7511,7512,7521,7522を配置した薄板部76cの領域では、これらSAW共振子により励振されるSH波SAWの振動変位の方向が該薄板部76c領域の表面に発生する応力の作用方向と直交するので、感度が低下する虞がある。本実施例は、この薄板部領域に、同じ大きさの外力に対してより大きな応力が発生するように、薄板部76cと厚板部76bとの寸法を調整したものである。これにより、X方向、Y方向及びZ方向の3軸方向全てについて、加速度等を安定して精度良く検出することができる。
【0091】
図13(A)〜(E)は、第5実施例のSAWセンサの別の変形例を概略的に示している。本実施例のSAWセンサ71は、図12の実施例における圧電基板74の薄板部76cに貫通部分74aを形成し、該圧電基板の長さ方向及び幅方向の中心線に沿ってSAW共振子7511,7512,7521,7522,7531,7532,7541,7542を形成するのに十分な所定幅の領域を残すように、厚板部76bと厚板支持部76aとの間に薄板部76c´を十字状に形成した点が異なる。これにより、SAWセンサ素子73に外力が作用して厚板部76bが変位したとき、それにより生じる応力を、前記SAW共振子を形成した薄板部76c´に集中させることができる。従って、X方向、Y方向及びZ方向の3軸方向全てについて、加速度等をより高感度に検出することができる。
【0092】
図14(A)〜(E)は、第5実施例のSAWセンサの更に別の変形例を概略的に示している。本実施例のSAWセンサ71は、圧電基板74の幅方向の中心線に沿う薄板部76c´に形成したSAW共振子7531,7532,7541,7542が、SH波SAWではなく、レイリー波のSAWを励振するように形成され、かつそのIDT7831,7832,7841,7842がSAW伝搬方向を圧電基板74の長さ方向即ちX方向に整合させて配置した点において、図13の実施例と異なる。これらのY方向に沿って配置したSAW共振子は、第5実施例で説明したように、Y方向の加速度等を検出するためのものである。本実施例によれば、SH波SAWを励振するSAW共振子とレイリーSAWを励振するSAW共振子とを組み合わせても、同様にX方向、Y方向及びZ方向の3軸方向全てについて、加速度等を精度良くに検出することができる。
【0093】
本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、SAWセンサ素子の圧電基板には、水晶以外に、リチウムタンタレートやリチウムニオベート等の様々な公知の圧電材料を用いることができる。リチウムタンタレート及びリチウムニオベートの圧電基板には、横波成分を有するSAWとして、例えばリーキーSAWを利用することが好ましい。また、圧電基板の薄板部に形成するIDTは、SAWセンサの用途及び/又は使用条件に対応して、上記実施例以外に様々な配置した構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】(A)図は本発明によるSAWセンサの第1実施例を示す概略平面図、(B)図はその側面図。
【図2】(A)図は本発明によるSAWセンサの第2実施例を示す概略平面図、(B)図はその側面図。
【図3】(A)(B)図は、それぞれZ方向、X方向の加速度による第2実施例のSAWセンサ素子の変形を示す側面図。
【図4】(A)図は第2実施例の変形例を示す概略平面図、(B)図はその側面図。
【図5】(A)図は本発明によるSAWセンサの第3実施例を示す概略平面図、(B)図はその側面図。
【図6】(A)図は第3実施例の変形例を示す概略平面図、(B)図はその側面図、(C)図はY方向の加速度によるSAWセンサ素子の変形を示す(A)図のVI−VI線における断面図。
【図7】(A)図は第3実施例の別の変形例を示す概略平面図、(B)図はその側面図、(C)図はY方向の加速度によるSAWセンサ素子の変形を示す(A)図のVII−VII線における断面図。
【図8】(A)図は本発明によるSAWセンサの第4実施例を示す概略平面図、(B)図はそのVIIIb−VIIIb線における断面図、(C)図はVIIIc−VIIIc線における断面図。
【図9】(A)図は第4実施例の変形例を示す概略平面図、(B)図はそのIXb−IXb線における断面図、(C)図はIXc−IXc線における断面図。
【図10】(A)図は第4実施例の別の変形例を示す概略平面図、(B)図はそのXb−Xb線における断面図、(C)図はXc−Xc線における断面図、(D)図はXd−Xd線における断面図、(E)図はXe−Xe線における断面図。
【図11】(A)図は本発明によるSAWセンサの第5実施例を示す概略平面図、(B)図はそのXIb−XIb線における断面図、(C)図はXIc−XIc線における断面図。
【図12】(A)図は第5実施例の変形例を示す概略平面図、(B)図はそのXIIb−XIIb線における断面図、(C)図はXIIc−XIIc線における断面図。
【図13】(A)図は第5実施例の別の変形例を示す概略平面図、(B)図はそのXIIIb−XIIIb線における断面図、(C)図はXIIIc−XIIIc線における断面図、(D)図はXIIId−XIIId線における断面図、(E)図はXIIIe−XIIIe線における断面図。
【図14】(A)図は第5実施例の更に別の変形例を示す概略平面図、(B)図はそのXIVb−XIVb線における断面図、(C)図はXIVc−XIVc線における断面図、(D)図はXIVd−XIVd線における断面図、(E)図はXIVe−XIVe線における断面図。
【図15】(A)図は従来の一般的なSAWセンサを示す概略平面図、(B)図はその側面図。
【図16】図15の従来例におけるZ軸方向の加速度によるSAWセンサ素子の変形を示す側面図。
【図17】36°回転Yカット水晶基板でのレイリー波SAWの相対変位を示す線図。
【図18】36°回転Yカット水晶基板でのSH波SAWの相対変位を示す線図。
【符号の説明】
【0095】
1,11,21,31,41,51,61,71…SAWセンサ、2,12,22,32,42,52,62,72…ベース、3,13,23,33,43,53,63,73…SAWセンサ素子、4,14,24,34,64,74…圧電基板、4a,4b,14a,14b,24a,24b,34a,34b,,,…長さ方向端部、5,15,25,25,2511,2512,2521,2522,3511,3512,3513,3514,3521,3522,3523,3524,4411,4412,4413,4414,4421,4422,4423,4424,5411,5412,5413,5414,5421,5422,5423,5424,6511,6512,6521,6522,6531,6532,6541,6542,7511,7512,7521,7522,7531,7532,7541,7542…SAW共振子、6a,16a,26a,36a,36a,66a,76a…厚板支持部、6b,16b,26b,36b,66b,76b…厚板部、6c,16c,26c,26c,36c,36c,66c,66c´,76c,76c´…薄板部、7,17,27,37,67,77…接着剤、8,18,28,28,2811,2812,2821,2822,3811,3812,3813,3814,3821,3822,3823,3824,4511,4512,4513,4514,4521,4522,4523,4524,5511,5512,5513,5514,5521,5522,5523,5524,6811,6812,6821,6822,6831,6832,6841,6842,7811,7812,7821,7822,7831,7832,7841,7842…IDT、8a,8b,18a,18b,28a,28b,28a,28b…交差指電極、9,19,29,29,2911,2912,2921,2922,3911,3912,3913,3914,3921,3922,3923,3924,4611,4612,4613,4614,4621,4622,4623,4624,5611,5612,5613,5614,5621,5622,5623,5624,6911,6912,6921,6922,6931,6932,6941,6942,7911,7912,7921,7922,7931,7932,7941,7942…反射器、10a,10b,20a,20b…電極パッド、64a,74a…貫通部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と前記圧電基板上に形成されたIDTとを有する弾性表面波センサ素子と、前記弾性表面波センサ素子を支持するベースとを備え、
前記圧電基板が、支持部と、前記支持部から延長する薄板部と、前記薄板部を挟んで前記支持部の反対側に設けられた厚板部とを有し、
前記弾性表面波センサ素子が、前記圧電基板の前記薄板部及び前記厚板部を浮かせて、かつ前記厚板部が前記薄板部を撓ませるように変位可能な状態にして、前記支持部を前記ベースに固定して支持され、
前記IDTがSH型弾性表面波(SAW)を励振し、かつ前記厚板部の変位による前記薄板部の撓みで該薄板部表面に生じる引張応力又は圧縮応力の作用方向と直交する向きに前記SAWの伝搬方向を整合させて、前記圧電基板の前記薄板部上に配置されていることを特徴とする弾性表面波センサ。
【請求項2】
前記圧電基板が矩形平板状をなし、その一方の長さ方向端部に前記支持部を、他方の長さ方向端部に前記厚板部を、前記支持部と前記厚板部との間に前記薄板部を有することを特徴とする請求項1記載の弾性表面波センサ。
【請求項3】
前記圧電基板が矩形平板状をなし、その両方の長さ方向端部にそれぞれ前記支持部を、長さ方向の中央に前記厚板部を、前記各支持部と前記厚板部との間にそれぞれ前記薄板部を有し、前記各薄板部にそれぞれ前記IDTを配置したことを特徴とする請求項1記載の弾性表面波センサ。
【請求項4】
前記弾性表面波センサ素子が、前記各薄板部にそれぞれ少なくとも2つの前記IDTを互いに前記引張応力又は圧縮応力の作用方向に並列に配置したことを特徴とする請求項3記載の弾性表面波センサ。
【請求項5】
前記弾性表面波センサ素子が、前記各薄板部にそれぞれ4つの前記IDTをSAWの伝搬方向に沿って少なくとも2つずつ直列にかつ互いに前記引張応力又は圧縮応力の作用方向に並列に配置したことを特徴とする請求項3記載の弾性表面波センサ。
【請求項6】
前記弾性表面波センサ素子が、前記各薄板部にレイリーSAWを励振する少なくとも2つの追加のIDTを更に有し、前記追加のIDTが、SH型SAWを励振する前記IDTのSAW伝搬方向の両側に、そのSAW伝搬方向をSH型SAWの伝搬方向と直交する向きに整合させて配置されていることを特徴とする請求項4記載の弾性表面波センサ。
【請求項7】
前記弾性表面波センサ素子が、前記各薄板部にそれぞれ2つの前記IDTをそのSAW伝搬方向に直列に配置し、かつそれらの間にレイリーSAWを励振する2つの追加のIDTを更に有し、前記追加のIDTが、そのそのSAW伝搬方向をSH型SAWの伝搬方向と直交する向きに整合させかつ互いに直列に配置されていることを特徴とする請求項3記載の弾性表面波センサ。
【請求項8】
前記圧電基板が矩形平板状をなし、その外周に沿って矩形枠状の前記支持部と、中央に前記厚板部と、前記支持部と前記厚板部との間に前記薄板部を有し、前記薄板部に前記圧電基板の長さ方向及び幅方向の中心線に沿って複数の前記IDTを配置したことを特徴とする請求項1記載の弾性表面波センサ。
【請求項9】
前記圧電基板が矩形平板状をなし、その中央に前記支持部と、外周に沿って矩形枠状の前記厚板部と、前記支持部と前記厚板部との間に前記薄板部を有し、前記薄板部に前記圧電基板の長さ方向及び幅方向の中心線に沿って複数の前記IDTを配置したことを特徴とする請求項1記載の弾性表面波センサ。
【請求項10】
前記弾性表面波センサ素子が、弾性表面波共振子を構成するように前記SAW伝搬方向に沿って前記IDTの両側に配置した反射器を更に有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか記載の弾性表面波センサ。
【請求項11】
前記IDTが、弾性表面波フィルタ又は2ポート型弾性表面波共振子を構成するように少なくとも2つの交差指電極対からなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか記載の弾性表面波センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−243981(P2009−243981A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88869(P2008−88869)
【出願日】平成20年3月29日(2008.3.29)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)