説明

形態変化玩具

【課題】従来の形態変化玩具と同様に視覚的には各部材が回動可能に連結されているだけでありながら、自動的に形態を変化させることができる新しい発想の形態変化玩具を提供
【解決手段】第1の基部材1の前端部と第2の基部材8の前端部、第1の基部材1の後端部と第2の基部材8の後端部とをそれぞれ第1のリンク部材4と第2のリンク部材5とで回動可能に連結し、連結部の少なくとも一つには弾性部材30を設け、該弾性部材30の弾性力で上記第2の基部材8が第1の基部材1よりも前方に移動するように付勢し、上記第1の基部材1、第2の基部材8、第1のリンク部材4及び第2のリンク部材5には一つの形態と他の形態とで異なる状態を表現する形象部材Bを連結し、各形象部材Bの連結部には上記弾性部材30の弾性力に抗して作用する第2の弾性部材13、20を設け、該第2の弾性部材13、20の弾性力は上記弾性部材30の弾性力よりも小さく設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物や動物等の一つの形態からロボット等の他の形態に相互に形態を変化する形態変化玩具であって、特に弾性部材の弾性力を利用して自動的に形態を変化させることのできる形態変化玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、形態変化玩具の形態を変化させて遊ぶときには構成部品を一つひとつ手動で操作しなければならず、操作の手順が煩雑であったため簡単な操作で玩具の形態を変化させることができる形態変化玩具が提案されている(例えば、特許文献1)。この形態変化玩具は後部材には前後にスライド自在にスライド部材が設けられ、該スライド部材にはラックが形成されるとともに一部が後部材の上部に露出し操作体が取着されているので、操作体を操作してスライド部材を前方にスライドさせると、該スライド部材に形成されたラックが前方にスライドする。該ラックには連結リンクの端部に形成されたギヤが噛合しているので、連結リンクは回動軸を中心に回動しながら折り畳まれる。この連結リンクには前部材が回動自在に連結されるとともに、該前部材は後部材に折り曲げ可能に連結されているので、前部材は後部材に対して折り曲げられ、例えば他の形態がロボット形態であれば前部材と後部材とで他の形態の一部であるロボット形態における胴体部を構成するようにしたものである。
【特許文献1】特開平9−10442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする問題点は、上述の形態変化玩具はスライド部材にはラックギヤを形成し、連結リンクにはラックギヤに噛み合う歯車を設け、スライド部材のスライド操作で連結リンクを駆動するようにしたものであるため、従来の形態変化玩具にはなかった歯車が必要不可欠なものであり、歯車が露出して外観が損なわれるし、変形部位が多くなればかみ合わせる歯車も多くなり製造、組立のコストがかかる問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決し、従来の形態変化玩具と同様に歯車を用いることなく、視覚的には各部材が回動可能に連結されているだけでありながら、自動的に形態を変化させることができる新しい発想の形態変化玩具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明に係る形態変化玩具は、弾性部材の弾性力を用いて一つの形態から他の形態に形態を変化させる、以下の要件を備えることを特徴とする。
(イ)第1の基部材と、第2の基部材とを所定間隔をおいて配置し、第1の基部材の前端部と第2の基部材の前端部、第1の基部材の後端部と第2の基部材の後端部とをそれぞれ第1のリンク部材と第2のリンク部材とで回動可能に連結したこと
(ロ)上記第1のリンク部材又は第2のリンク部材との少なくともいずれか一方と上記第1の基部材と第2の基部材との少なくともいずれか一方の連結部には弾性部材を設け、該弾性部材の弾性力で上記リンク部材を回動するように付勢し、該リンク部材の回動時には上記第1の基部材と第2の基部材との相対位置が変わるようにしたこと
(ハ)上記第1の基部材、第2の基部材、第1のリンク部材及び第2のリンク部材のいずれか又は全てに一つの形態と他の形態とで異なる状態を表現する形象部材が連結されていること
(ニ)上記形象部材の連結部には上記弾性部材の弾性力に抗して作用する第2の弾性部材を設け、該第2の弾性部材の弾性力は上記弾性部材の弾性力よりも小さく設定したこと
【0006】
なお、前記形態変化玩具は、以下の要件を備えることが好ましい。
(イ)前記形態変化玩具の一つの形態が走行体で、他の形態がロボットであること
(ロ)前記第1の基部材はロボットの形態において腰部を構成し、第2の基部材は背部を構成すること
(ハ)前記第2の基部材の先端にはロボットの頭部を設けたこと
(ニ)前記第1のリンク部材に連結した形象部材は走行体の形態でバンパー部を構成し、該バンパー部の一部は前記第2の基部材に係合し、第2の基部材が前方に移動するときに前記第2の弾性部材に抗して外方に回動させられてロボットの形態で腕部を構成すること
(ホ)前記第1の基部材に連結した形象部材は走行体の形態でフロント部を構成し、前記第2の基部材が前方に移動するときに前記第2の弾性部材に抗して前方に回動させられてロボットの形態における胸部を構成すること
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、全ての部材は歯車などを介さずに単に回動可能に連結したので、形態変化時に歯車などの形態に関係ないものが見えることがなく、従来の形態変化玩具と外観上は同じであっても自動的に形態を変化させることができ、見るものに驚きを与えることができる新しい発想の形態変化玩具を提供することができる。
【0008】
また、弾性部材の弾性力で一つの形態から他の形態に形態を変化させるときは第2の弾性部材の弾性力は発揮されないが、外力を用いて弾性部材の弾性力に抗して第2の基部材を後退させて他の形態から一つの形態に形態を戻すときは、第2の弾性部材の弾性力が発揮され、形象部材を自動的に復帰動作させることができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、走行体の形態からロボットの形態に形態を変化させるとき、第2の基部材が前進する一つの動きが、形象部材の動きを発生させるので、第2の基部材の動きが完了したときには、形象部材の動きも完了してロボットの形態を完成させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1、図2は、本発明に係る形態変化玩具Aの一つの形態の一例の斜視図及び側面図を示し、この一つの形態は走行体の形態をなし、この走行体はトレーラーを牽引するトラクタトレーラーを模して形成され、図3は上記形態変化玩具Aの他の形態を示し、この他の形態はロボットの形態をなしている。
【0011】
図4は、上記形態変化玩具Aの基本部分の構成図を示し、この形態変化玩具Aは第1の基部材(ロボットの形態時に腰部を構成)1と、この第1の基部材1の前後に軸体2、3を介して回動可能に一端がそれぞれ連結された2つのリンク部材4、5と、この2つのリンク部材4、5の他端に軸体6、7を介して回動可能に連結され、第1の基部材1に対して所定間隔をおいて並設された第2の基部材8(ロボットの形態時に背部を構成)とで構成され、リンク部材4、5の回動時には第1の基部材1に対して第2の基部材8が前後方向に移動できるように構成されている。
【0012】
上記第1の基部材1の両側部には連結軸11が突出して形成されている。この連結軸11は、トラクタトレーラーの車台(ロボットの形態時に脚部を構成)模して形成された形象部材B(以下、脚部B1という)と第1の基部材1とを連結する連結部材(ロボットの形態時に大腿部を構成)10を回動可能に連結する為のものである。そして、前部には一つの形態時にトラクタトレーラーの運転席(ロボットの形態時には胸部を構成)を模して形成された形象部材B(以下、胸部B2という)が軸体2により上下に回動可能に連結されている。この胸部B2は第2の弾性部材(以下、復帰バネという)13で第1の基部材1に対して上方に回動するように付勢されている。
【0013】
胸部B2とともに軸体2で第1の基部材1の前部に前後に回動できるように取付けられている第1のリンク部材4の上部は軸体6で第2の基部材8に回動可能に連結され、両側部にはトラクタトレーラーのバンパー(ロボットの形態時には腕部を構成)を模して形成された形象部材B(以下、腕部B3という)を支持する支持部16が形成されている。この支持部16は軸体17で腕部B3の上腕部18を回動可能に支持する支持板19を第1のリンク部材4に対し水平方向に回動できるように支持している。
【0014】
なお、この支持板19は第2の弾性部材(以下、復帰バネという)20で軸体17を中心に内方に回動するように付勢されており、前面には一つの形態時にトラクタトレーラーのフロントバンパー(ロボットの形態時には腕部を構成する)を模した腕部B3の上腕部18を回動可能に連結するための連結軸21が前方に突出して形成され、背面には後述する第2の基部材8に設けられた係合板41に押されて上記支持板19を軸体17を中心に外方に回動させる係合片22が突出して形成されている(図6(a)参照)。
【0015】
第2のリンク部材5は下端が軸体3で第1の基部材1の後端に前後に回動可能に連結され、上端が軸体7で第2の基部材8の後端に回動可能に連結されているので、第2の基部材8は第1の基部材1に対し前後に並行移動できるように構成されている。上記第2のリンク部材5と第2の基部材8との間には強力な弾性部材(バネ部材)30が配置され、このバネ部材30の弾発力によって第2の基部材8と第2のリンク部材5とは軸体7を中心に互いに離反する方向に回動するように付勢されている。
【0016】
実際には第2の基部材8の先端部は第1のリンク部材4の上端に連結されているため、第2の基部材8は上方には回動できないので、第1のリンク部材4を前方に回動させながら第1の基部材1に対して前方に平行移動し、第1の基部材1と第2の基部材8との相対位置が変わることになる。
【0017】
上記第2のリンク部材5の背面にはバネ31で下方に回動するように付勢されたロック部材32が軸体33で取付けられている。このロック部材32は走行形態では屋根を構成するとともに、裏面に形成された嵌合凸部35が第2の基部材8の上面に形成された嵌合溝36に嵌合して第2の基部材8の上面に密着し、バネ部材30の弾性力に抗して第2のリンク5が回動しないように固定するものである。
【0018】
このロック部材32の前部にはレバー37が前後に回動可能に設けられ、図示しないバネで先端の爪38が下方に突出しないように付勢されている(図5(a)参照)。このレバー37をバネに抗して後方に回動させた時には、爪37aの先端が下方に突出して第2の基部材8の上面に当接して、ロック部材32は軸体33を中心に上方に回動させられ、嵌合凸部35と嵌合溝36との嵌合が外れるようになっている(図5(b)参照)。
【0019】
第2の基部材8はロボットの形態時には背部を構成するもので、先端にはロボットの頭部40が固定され、両側部には下方に突出して上記支持板19に係合する係合板41が湾曲して形成されている。この係合板41は、第2の基部材8が停止しているときは、上記支持板19に係合していないが(図6(a)参照)、第2の基部材8が前進する初期には支持板19の背面に直接先端が係合し、これを前方に押して軸17を中心に支持板19を外方に回動させる第1の係合部41a(図6(b)参照)と、前進の後半に支持板19の背面に形成された係合片22に係合し支持板19を第1のリンク4に直交する位置まで回動させる第2の係合部41b(図6(c)参照)とで構成されている。
【0020】
上記構成の形態変化玩具は、図5(a)に示すように、嵌合凸部35と嵌合溝36とが嵌合し、リンク5の回動が阻止されている状態では形態変化玩具は、図1に示すように、走行体の形態をなしている。この状態でロック部材32のレバー37を後方に倒して嵌合凸部35と嵌合溝36との嵌合を解除すると(図5(b)参照)、第2の基部材8はバネ部材30に付勢されて軸体7を中心にと第2のリンク5から離反する方向に回動するが第2の基部材8の前部には第1のリンク4が連結されているので、第2の基部材8は第1のリンク4と第2のリンク5とで支持されて前方に移動を始める(図5(c)参照)。
【0021】
この時、胸部B2は頭部40に押されて復帰バネ13に抗して軸2を中心に下方に回動し、今まで胸部B2に隠れていた頭部40が現れる。さらに、第2のリンク5の回動が進み、第2のリンク5の前面5aが第1の基部材1の上面1aに当接するまで回動すると、胸部B2は90度回転した状態になり、頭部40が胸部B2の前方に突出する状態になる(図5(d)参照)。
【0022】
また、第2の基部材8に形成された係合板41が、第1のリンク部材4に形成された支持部16に支持された支持板19を復帰バネ20に抗して外側に回動させるので、図7に示すように、腕部B3は胸部B2の外側に移動してロボットの腕部を構成するようになる。
【0023】
この状態では、図8の側面図に示すように、頭部40が露出し、胸部B2がロボットの形態における胸部を構成したロボットがうつ伏せになった状態になる。
【0024】
なお、図7、図8の状態では、形態変化玩具はロボットの形態をなしているが、さらに完璧なロボットの形態にするためには、上腕部18に対して前腕部45が横を向いているので、前腕部45を前方に回動し、足部46を手前に90度回動し、後輪47と前輪48とを回動可能に連結している連結部材49を内側に折り畳むことにより、図2に示すような、完全な状態のロボットの形態をなす他の形態に変化させることができる。
【0025】
上述したように、ロック部材33による第2の基部材8の固定状態を解除することにより弾性部材30の強い弾性力で、第2の基部材8が第1の基部材1に対して前方に移動をはじめることになり、この第2の基部材8に取付けられたロボットの頭部40が露出するとともに、運転席を構成していた胸部B3が前方に回動してロボットの胸部を構成するとともに、第2の基部材8に設けられた係合板41が、第1のリンク部材4に設けられた腕部B3を外側に押し広げてロボットの形態における腕部を構成することになり、歯車などの機構を設けることなく弾性部材の弾性力を形態の変化に活用することができ、従来の形態変化玩具と同じように構成する部材を回動可能に連結した構造でありながら自動的に形態を変化させる形態変化玩具を実現させることができる。
【0026】
なお、ロボットの形態から走行体の形態に戻す場合は、第1の基部材1に対し第2の基部材8を弾性部材30に抗して強制的に後方に移動させれば、頭部40による胸部B2の押圧が開放されるとともに、係合板41による支持板19の押圧が開放されるので、胸部B2と腕部B3とはそれぞれ復帰バネ13、20の機能が有効になり、ロボットの胸部から走行体の運転席に、ロボットの腕部から走行体のバンパーにそれぞれ手をかけることなく自動的に復帰させることができるので、ロボットの形態である他の形態から走行体の形態である一つの形態に容易に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の形態変化玩具の一つの形態を説明する斜視図
【図2】上記形態変化玩具の一つの形態を説明する側面図
【図3】上記形態変化玩具が他の形態に変化した状態を説明する斜視図
【図4】基本構成の分解斜視図
【図5】(a)〜(d)は形態の変化の過程の説明図
【図6】(a)〜(c)は腕部の状態の変化の説明図
【図7】弾性部材の弾性力で形態が変化した状態の底面図
【図8】弾性部材の弾性力で形態が変化した状態の側面図
【符号の説明】
【0028】
1 第1の基部材
8 第2の基部材
4 第1のリンク部材
5 第2のリンク部材
13 第2の弾性部材(復帰バネ)
20 第2の弾性部材(復帰バネ)
30 弾性部材
A 形態変化玩具
B 形象部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性部材の弾性力を用いて一つの形態から他の形態に形態を変化させる、以下の要件を備えることを特徴とする形態変化玩具。
(イ)第1の基部材と、第2の基部材とを所定間隔をおいて配置し、第1の基部材の前端部と第2の基部材の前端部、第1の基部材の後端部と第2の基部材の後端部とをそれぞれ第1のリンク部材と第2のリンク部材とで回動可能に連結したこと
(ロ)上記第1のリンク部材又は第2のリンク部材との少なくともいずれか一方と上記第1の基部材と第2の基部材との少なくともいずれか一方の連結部には弾性部材を設け、該弾性部材の弾性力で上記リンク部材を回動するように付勢し、該リンク部材の回動時には上記第1の基部材と第2の基部材との相対位置が変わるようにしたこと
(ハ)上記第1の基部材、第2の基部材、第1のリンク部材及び第2のリンク部材のいずれか又は全てに一つの形態と他の形態とで異なる状態を表現する形象部材が連結されていること
(ニ)上記形象部材の連結部には上記弾性部材の弾性力に抗して作用する第2の弾性部材を設け、該第2の弾性部材の弾性力は上記弾性部材の弾性力よりも小さく設定したこと
【請求項2】
以下の要件を備えることを特徴とする、請求項1記載の形態変化玩具。
(イ)前記形態変化玩具の一つの形態が走行体で、他の形態がロボットであること
(ロ)前記第1の基部材はロボットの形態において腰部を構成し、第2の基部材は背部を構成すること
(ハ)前記第2の基部材の先端にはロボットの頭部を設けたこと
(ニ)前記第1のリンク部材に連結した形象部材は走行体の形態でバンパー部を構成し、該バンパー部の一部は前記第2の基部材に係合し、第2の基部材が前方に移動するときに前記第2の弾性部材に抗して外方に回動させられてロボットの形態で腕部を構成すること
(ホ)前記第1の基部材に連結した形象部材は走行体の形態でフロント部を構成し、前記第2の基部材が前方に移動するときに前記第2の弾性部材に抗して前方に回動させられてロボットの形態における胸部を構成すること

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−189520(P2009−189520A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32549(P2008−32549)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】