説明

形状解析装置、形状解析方法、および、形状解析プログラム

【課題】形状データに対する亀裂解析を効率的に実施すること。
【解決手段】形状解析装置1の評価ラインデータ登録部22は、形状データ31cを表示装置91に表示し、入力装置92を介して、表示された形状データ31cから節点データ31aの中の複数の要素データ31bを選択させ、選択された複数の要素データ31bを評価ラインデータ32として記憶装置94に格納し、評価点データ登録部23は、評価ラインデータ32の平面に対する法線ベクトルを計算し、変位投影部25は、評価ラインデータ32の各要素データ31bについて、形状データの要素データ31bに対応する部分の解析結果を、評価点データ33の法線ベクトル上に射影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状解析装置、形状解析方法、および、形状解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在製品設計において3次元CAE(Computer Aided Engineering)ソフトウェアを用いた構造解析を用いた設計が、一般的になってきている。例えば、3次元の形状モデルデータに対して亀裂解析を行うことにより、製品の材料劣化の診断や予測を、製品の製造前に把握することができる。
【0003】
特許文献1には、解析形状を投影する技術が、開示されている。
特許文献2には、解析評価を自動化する技術が、開示されている。
【特許文献1】特開2006−155131号公報
【特許文献2】特開平5−288635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3次元の形状モデルデータの一部を構成する平面に対して、垂直な成分応力・変位量が大きいときに、その平面は亀裂が発生しやすい亀裂面であると考えられる。そこで、例えば、平面の定亀裂先端部の応力拡大係数を算出することで、亀裂の発生度合いを計算する。
【0005】
ここで解析対象となる製品形状は複雑化しており、想定した亀裂面も自由曲面形状が多く存在する。亀裂面ごとに局所座標系を定義すると、その複雑化した製品形状の想定亀裂先端部を解析するには、応力拡大係数算出ポイント数など、応力・変位の抽出量が膨大となってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、形状データに対する亀裂解析を効率的に実施することを、主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、解析対象の形状を3次元で示す形状データの解析結果を、亀裂解析に適するように処理する形状解析装置であって、
前記形状解析装置が、記憶装置を有するとともに、解析モデル登録部と、評価ラインデータ登録部と、評価点データ登録部と、投影部とを備える制御装置、を有し、
前記解析モデル登録部が、入力装置を介して、3次元の前記形状データをメッシュ状にした三角形の平面集合の入力を受け付け、各三角形を示す要素データと、その三角形を構成する各頂点を示す節点データと、を対応づけて前記形状データとして前記記憶装置に格納し、
前記評価ラインデータ登録部が、前記形状データを表示装置に表示し、前記入力装置を介して、表示された前記形状データから複数の前記要素データを選択させ、選択された複数の前記要素データを評価ラインデータとして前記記憶装置に格納し、
前記評価点データ登録部が、前記評価ラインデータの前記各要素データについて、その要素データが示す三角形の2辺のベクトルの外積を計算することで、平面に対する法線ベクトルを計算し、三角形の頂点の座標と対応づけて評価点データとして前記記憶装置に格納し、
前記投影部が、前記評価ラインデータの各前記要素データについて、前記形状データの前記要素データに対応する部分の解析結果を、前記評価点データの法線ベクトル上に射影し、その射影結果を出力すること、を特徴とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、形状データに対する亀裂解析を効率的に実施することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明による形状解析装置1の一例を示す構成図である。
形状解析装置1は、演算処理装置93、記憶装置94、および、メモリ95を含めて構成され、表示装置91と、入力装置92と、それぞれ接続されている。
表示装置91は、例えば、液晶ディスプレイ装置などにより構成される。
入力装置92は、例えば、キーボードやマウスなどにより構成される。
演算処理装置93は、CPU(Central Processing Unit)として構成され、メモリ95上の各処理部を実行する。
記憶装置94は、ハードディスクとして構成され、メモリ95上に読み込まれる各処理部を構成するためのプログラムを格納する。
メモリ95上には、CAE(Computer Aided Engineering)システムを実現するための、プリプロセッサ部11と、ソルバ部12と、ポストプロセッサ部13と、が処理部として構成されている。
【0011】
プリプロセッサ部11は、ソルバ部12の前処理に相当する処理部であり、解析対象の形状データの入力を受け付ける。さらに、プリプロセッサ部11は、ソルバ部12による解析処理に必要な各種パラメータの入力を受け付ける。各種パラメータとは、例えば、解析対象の材料特性、加重条件、境界条件などのパラメータである。
【0012】
ソルバ部12は、プリプロセッサ部11が受け付けた解析対象の形状データに対して、演算処理を行うことにより、亀裂解析などの解析を実施する。例えば、ソルバ部12は、解析対象を変形させるような力が作用したときに、解析対象に発生する応力や、解析対象の変形度合いを示す変位を解析する。
【0013】
ポストプロセッサ部13は、ソルバ部12の後処理に相当する処理部であり、ソルバ部12の解析結果に対して加工処理などを行い、解析に適した形で出力する。例えば、ポストプロセッサ部13は、解析対象の形状データから亀裂が発生しやすい箇所(境界面など)が、評価ラインとして入力されると、その評価ラインに沿った解析結果(応力や変位)について、解析対象の形状データから形成される平面への法線ベクトルに射影して表示する。
【0014】
図2は、形状解析装置1のポストプロセッサ部13の詳細を示す構成図である。
まず、ポストプロセッサ部13は、処理部として、解析モデル登録部21と、評価ラインデータ登録部22と、評価点データ登録部23と、線分データ出力部24と、変位投影部25と、応力投影部26と、を有する。これらの各処理部の詳細は、後記する。
次に、ポストプロセッサ部13は、処理部の処理対象のデータとして、解析モデルデータ31(節点データ31aおよび要素データ31b)と、形状データ31cと、評価ラインデータ32と、評価点データ33と、線分データ34と、変位投影データ35aと、応力投影データ35bと、をメモリ95上に格納する。以下、処理対象の各データについて、図表を参照して詳細に説明する。
【0015】
図3(a)は、形状データ31cとその評価ラインの一例を示す立体図である。プリプロセッサ部11が入力を受け付ける解析対象の形状データ31cは、複数の要素がメッシュ状に隣接する形状として表現される。このメッシュは、三角形の平面が集まって形成されたものであり、各三角形は、隣接する別の三角形と、頂点を共有する。よって、本実施形態では、以下の用語を定義する。
【0016】
「要素」とは、解析対象のメッシュを構成する1つの三角形を指す。
「接点」とは、「要素」を構成する各頂点を指す。つまり、1つの「要素」は、3つの「接点」を有する。
「評価点」とは、「要素」を評価するための位置を指す。例えば、「評価点」は、「接点」と同じ座標を示す。
「評価ライン」とは、複数の「評価点」を順に接続することで形成される、解析対象上の直線または折れ線の線分を指す。
【0017】
図3(b)は、図3(a)の評価ライン上の評価方向ベクトルの一例を示す立体図である。
「評価方向ベクトル」とは、「評価点」を起点とするベクトルであり、「要素」を評価するためのベクトルである。具体的には、「評価方向ベクトル」は、「要素」の平面に対する法線ベクトルである。
なお、評価方向ベクトルの上下方向は、立体図が見やすいように、ユーザが上方向または下方向を指定することとしてもよい。例えば、図3(b)の評価方向ベクトルは、上方向に指定すると形状データ31c(図3(a)参照)と重なって見づらくなってしまうので、太線の評価ラインからみて下方向に指定することが、望ましい。
【0018】
【表1】

【0019】
表1は、節点データ31aの一例を示す。節点データ31aは、接点ごとに、その接点を一意に特定するための接点番号と、その接点の3次元上での位置を示す接点座標と、を対応づけて構成する。これらの節点データ31aは、プリプロセッサ部11が、入力装置92を介して、入力を受け付ける。
【0020】
【表2】

【0021】
表2は、要素データ31bの一例を示す。要素データ31bは、要素ごとに、その要素を一意に特定するための要素番号と、その要素を構成する各頂点となる3つの接点番号(第1接点番号〜第3接点番号)と、を対応づけて構成する。3つの接点番号の割り当て方法は、例えば、第1接点番号から第3接点番号まで、順に反時計回りに割り当てる方法がある。なお、要素データ31bの接点番号と、節点データ31aの接点番号とは、同じ番号が同じ接点として互いに対応する。
【0022】
【表3】

【0023】
表3は、形状データ31cの一例を示す。形状データ31cは、解析モデルデータ31を、STL(Stadard Triangulation Language)データ形式に変換したものである。STLデータ形式とは、光造形装置などに応用されるデータ形式であり、立体の形状が、三角形の頂点座標と三角形の法線ベクトルとで表現される。
2行目の「facet normal」から8行目の「endfacet」までが1つの要素(三角形)に該当し、9行目の「facet normal」から15行目の「endfacet」までが別の要素に該当する。各要素内の3行の「vertex」が、その要素を構成する各頂点の座標を示す。
三角形の法線ベクトル(X成分,Y成分,Z成分)は、「facet normal」の後につづく3つの数値により、X,Y,Zの順で示される。この数値における「E」以降は、数値の指数部を示す。
三角形の各頂点の位置(X座標,Y座標,Z座標)は、4行目〜6行目などの「vertex」の後につづく3つの数値により、X,Y,Zの順で示される。1行が1頂点分に対応する。この「vertex」行の順序は、例えば、各頂点の位置を反時計回りに列挙することにより決定される。
【0024】
【表4】

【0025】
表4は、評価ラインデータ32の一例を示す。評価ラインデータ32は、3つの評価点を1組として、その組を特定する組番号と、評価点を特定する評価点番号と、評価点座標と、を対応づけて構成する。
組番号「1」の評価点番号「18」と、評価点番号「24」とが、評価ライン上の評価点であり、評価点番号「98」は、評価点番号「18」と評価点番号「24」との評価方向を定義するために必要とする評価点である。
つまり、評価点番号「18」と評価点番号「24」との評価方向は、評価点番号「18」、評価点番号「24」、および、評価点番号「98」の3点で定義する平面の法線方向とする。
組番号「2」の3つの評価点は、評価点番号「24」、評価点番号「25」、および、評価点番号「98」である。組番号「1」の2番目の評価点番号「24」と、組番号「2」の1番目の評価点番号「24」と、は、互いに重複している。
このように重複した評価点について、評価方向がそれぞれの組で計算されるため、複数の評価方向が計算される。よって、重複した評価点について、それぞれの組で計算された評価方向を平均化することにより、1つの評価方向を特定すればよい。
【0026】
【表5】

【0027】
表5は、評価点データ33の一例を示す。評価点データ33は、評価点番号と、登録数と、評価点座標と、評価方向ベクトルと、を対応づけて構成する。
「登録数」は、対応する「評価点番号」の評価ラインデータ32における登録されているレコードの数を示す。例えば、評価点番号=24について、評価ラインデータ32の組番号=1,2にそれぞれ1つずつ、合計2つ登録されているため、評価点データ33の「登録数」は「2」である。
【0028】
【表6】

【0029】
表6は、線分データ34の一例を示す。
1行目の「POLYLINE」は、線分を示すキーワードである。
2行目の「5」は、線分を構成する点数が5つであることを示す。
3〜7行目は、線分を構成する点の座標(X座標,Y座標,Z座標)をスペースで区切って示す。
【0030】
【表7】

【0031】
表7は、変位投影データ35aを示す。変位投影データ35aは、接点番号と、変位と、評価方向変位と、を対応づけて構成する。変位は、ソルバ部12による解析結果であり、XYZ直交座標系の物理量として表現される。評価方向変位は、変位投影部25による「変位」の評価方向ベクトルへの投影結果である。
【0032】
【表8】

【0033】
表8は、応力投影データ35bを示す。応力投影データ35bは、接点番号と、垂直応力と、せん断応力と、評価方向応力と、を対応づけて構成する。垂直応力、および、せん断応力は、ソルバ部12による解析結果であり、XYZ直交座標系の物理量として表現される。評価方向応力は、変位投影部25による「垂直応力」、および、「せん断応力」の評価方向ベクトルへの投影結果である。
【0034】
図2に戻って、各処理部を説明する。
【0035】
解析モデル登録部21は、節点データ31aおよび要素データ31bを読み込み、表示装置91で表示可能なSTLデータ形式の形状データ31cとして出力する。
評価ラインデータ登録部22は、入力装置92を介して、評価ラインデータ32の1組ごとに、その3つの評価点の入力を受け付けると、その3つの評価点で定義される面の法線方向を1点目の節点と2点目の節点の評価方向として計算する。
評価点データ登録部23は、評価ラインデータ32の各評価点の節点番号、節点座標、および、評価方向を、評価点データ33に登録する。
線分データ出力部24は、評価ラインデータ32の評価点および評価方向を、表示装置91で表示可能な形状データである線分データ34として出力する。
【0036】
変位投影部25は、ソルバ部12の計算結果である変位を、評価点の評価方向に座標変換することで投影し、その投影結果を変位投影データ35aに登録する。
応力投影部26は、ソルバ部12の計算結果である応力(垂直応力、せん断応力)を、評価点の評価方向に座標変換することで投影し、その投影結果を応力投影データ35bに登録する。
【0037】
図4は、評価ラインデータ登録部22が計算する、要素の法線ベクトルの計算方法を詳細に説明するための説明図である。
【0038】
図4(a)は、1つの要素を構成する平面(三角形)と、その平面に対する法線ベクトルと、を立体的に表記する説明図である。
三角形の3つの頂点(評価点)は、ベクトル(N,N,N)で示される。
三角形の2つの辺は、ベクトル(A,B)で示される。
三角形の平面に対する法線ベクトルは、ベクトル(C)で示される。
法線ベクトルの単位ベクトルは、ベクトル(U)で示される。
【0039】
図4(b)は、図4(a)で示される各変数の内容と計算方法を示す表である。
各頂点(評価点)は、解析モデルデータ31(節点データ31a)として入力される。
三角形の2つの辺は、各頂点の差分ベクトルとして計算される。
三角形の平面に対する法線ベクトルは、三角形の2つの辺の外積として計算される。
法線ベクトルの単位ベクトルは、法線ベクトルの各成分を法線ベクトルの長さで除算して計算される。
【0040】
図5(a)は、形状解析装置1のポストプロセッサ部13による解析後処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、プリプロセッサ部11の解析前処理と、ソルバ部12の解析処理と、が順に実行された後、実行される。
【0041】
S11において、解析モデル登録部21は、解析モデルデータ31(節点データ31aおよび要素データ31b)を読み込み、STL形式の形状データ31cとして出力する。
S12において、評価ラインデータ登録部22は、形状データ31c上の評価ライン(図3(a)参照)を示す評価ラインデータ32を、記憶装置94からメモリ95に読み込む。そして、評価点データ登録部23は、評価ラインデータ32の3点で定義する面の法線方向を1点目の節点と2点目の節点の評価方向として計算する。その計算結果を評価方向ベクトルとして評価点データ33に登録する。
【0042】
S13において、線分データ出力部24は、読み込んだ評価ラインデータ32の評価ラインと、評価点データ33の評価方向ベクトルと、を折れ線形式の線分データ34として出力する(図3(b)参照)。
そのため、線分データ出力部24は、評価ラインデータ32の全評価点の点座標を接続することで、折れ線データを作成する。
次に、線分データ出力部24は、折れ線データを構成する全評価点の座標について、評価点の座標と、評価方向ベクトルに任意の長さを掛けた座標とを接続する線分データを作成し、全評価点の折れ線データに追加することで、線分データ34を作成する。
【0043】
S14において、変位投影部25は、各評価点について、ソルバ部12の解析結果である変位を変位投影データ35aから読み込み、評価点データ33の評価方向ベクトルに変位を投影し、その投影結果を変位投影データ35aに評価方向変位として登録する。
S15において、応力投影部26は、各評価点について、ソルバ部12の解析結果である応力(垂直応力、せん断応力)を応力投影データ35bから読み込み、評価点データ33の評価方向ベクトルに応力を投影し、その投影結果を応力投影データ35bに評価方向応力として登録する。
【0044】
そして、S14およびS15でそれぞれ登録された、評価方向の射影結果(変位、応力)は、解析担当者に対して、出力される。例えば、評価方向の射影結果は、表示装置91を介して、形状データ31cの表示上に、ベクトルとして表示される。これにより、解析担当者は、評価ラインデータ32が示す評価ラインに沿って、射影されたベクトルを参照することができる。よって、解析担当者は、評価ラインから、特に弱点となる(亀裂が生じやすい)箇所を、直観的に把握することができる。なお、S14およびS15のうち、片方の処理は、省略してもよい。
【0045】
図5(b)は、解析モデル登録部21が実行する、S11の処理の詳細を示すフローチャートである。
【0046】
S101において、プリプロセッサ部11を介して節点の入力を受け付け、入力されていない節点が存在するか否かを判定する。この判定を満たすときにはS102へ、満たさないときにはS103へ、それぞれ移行する。
S102において、S101で入力された接点の節点番号と、節点座標と、を対応づけて節点データ31aに登録する。
S103において、節点データ31aに登録されている3つの接点番号を組として指定することにより、要素の入力を受け付け、入力されていない要素が存在するか否かを判定する。この判定を満たすときにはS104へ、満たさないときにはS105へ、それぞれ移行する。
S104において、S103で入力された要素番号と、3つの接点番号と、を対応づけて要素データ31bに登録する。
S105において、S104で登録された各要素について、その3つの接点から形成される面の法線ベクトルを計算し、その3つの接点番号と対応づけて、STL形式の形状データ31cとして出力する。
【0047】
図6(a)は、評価ラインデータ登録部22および評価点データ登録部23が実行する、S12の処理の詳細を示すフローチャートである。
このフローチャートが行われる前準備として、評価ラインデータ登録部22は、S11で入力された解析モデルデータ31(節点データ31aおよび要素データ31b)から、評価ラインデータ32を作成する処理を実行する。
評価ラインデータ32の作成処理は、まず、要素タイプおよび評価ライン上の各要素の入力を受け付ける。
要素タイプが「一次」のときには、1つの接点を1つの評価点としてそのまま対応づける。つまり、要素データ31bの評価ライン上の各要素について、要素データ31bの1つの要素を評価ラインデータ32の1つの組とし、要素データ31bの3つの接点(第1接点番号〜第3接点番号)を、評価ラインデータ32の接点番号とする。
要素タイプが「二次」のときには、要素(三角形)を構成する3つの接点に加え、その接点間の中点(3つ)をあわせて、合計6点の評価点とする。
なお、評価ライン上の各要素の入力は、例えば、S11で出力されるSTL形式の形状データ31cを3Dで画面表示し、その画面表示からドラッグ操作などにより範囲指定された要素を、入力される評価ライン上の各要素とすることとしてもよい。
【0048】
S201において、評価ラインデータ登録部22は、3つの評価点の組の読み込み処理(S202)がまだ行われていない組が評価ラインデータ32に存在するか否かを判定する。この判定を満たすときにはS202へ、満たさないときにはS207へ、それぞれ移行する。
【0049】
S202において、評価ラインデータ登録部22は、評価ラインデータ32から、まだ読み込まれていない組を構成する3つの評価点の評価点番号と評価点座標(図4(b)のN,N,N)とを読み込む。
S203において、評価点データ登録部23は、読み込んだ3つの評価点の1点目(N)から2点目(N)へのベクトル(A)を計算する。このベクトルは、読み込んだ3つの評価点から形成される平面(三角形)の一辺に該当する。
S204において、評価点データ登録部23は、読み込んだ3つの評価点の2点目(N)から3点目(N)へのベクトル(B)を計算する。このベクトルは、平面(三角形)のS203とは別の一辺に該当する。
【0050】
S205において、評価点データ登録部23は、S203で求めたベクトルAと、S204で求めたベクトルBとの外積を計算し、その計算結果を平面(三角形)の法線ベクトル(C)とする。この法線ベクトル(C)は、評価点Nおよび評価点Nの評価方向ベクトルである。
S206において、評価点データ登録部23は、S202で読み込んだ3つの評価点の1点目(N)と2点目(N)とを、それぞれ評価点データ33に登録する(詳細は、図6(b))。
S207において、評価点データ登録部23は、評価点データ33から「登録数」が2以上の行を検索し、検索した行の「評価方向ベクトル」を「登録数」で割ることにより、評価方向ベクトルを平均化する。さらに、評価方向ベクトル(C)をその長さ(Clength)で割ることにより、単位ベクトル(U)を求める。
【0051】
図6(b)は、評価点データ登録部23が実行する、S206の処理の詳細を示すフローチャートである。
【0052】
S211において、登録対象の評価点の評価点番号が、評価点データ33に登録済か否かを判定する。この判定を満たすときにはS212へ、満たさないときにはS213へ、それぞれ移行する。
S212において、評価点データ33に登録されている行を修正し、既に存在する行について、行の「登録数」に1を加算し、行の「評価方向ベクトル」に登録対象の評価点の評価方向ベクトルを加算する。
S213において、評価点データ33に新規に行を追加し、追加する行の評価点番号と、評価点座標と、登録数=1と、登録対象の評価点の評価方向ベクトルと、を評価点データ33に書き込む。
【0053】
図7(a)は、変位投影部25が実行する、S14の詳細な処理を示すフローチャートである。このフローチャートが開始される前に、変位投影データ35aには、接点ごとに、プリプロセッサ部11により入力を受け付けた接点番号と、ソルバ部12により解析された変位(X成分,Y成分,Z成分)と、が記録されている。そして、このフローチャートを実行することにより、変位投影データ35aの「評価方向変位」が接点ごとに求まる。本フローチャートで使用される各パラメータ、および、各計算式は、以下の通りである。
【0054】
【数1】

【0055】
S311において、変位投影データ35aに登録されている接点の中から、評価点データ33に登録されている評価点に適合する接点に絞り込む。そして、S312以下の処理では、変位投影データ35aの接点のうち、絞り込まれた接点を対象とする。
これにより、評価ラインとは関係ない接点を計算対象から除外することができるので、計算量を削減することができる。
【0056】
S312において、接点読み込み処理(S313)がまだ行われていない接点が変位投影データ35aに存在するか否かを判定する。この判定を満たすときにはS313へ移行し、満たさないときには、このフローチャートを終了する。
S313において、変位投影データ35aからまだ読み込まれていない接点の接点番号と変位(d,d,d)とを1接点分読み込む。
S314において、読み込んだ節点の変位(d,d,d)を、評価点データ33の評価方向ベクトル(U,U,U)上の投影点(D,D,D)に投影する。
S315において、S314の投影点(D,D,D)の原点からの距離を、投影後の変位Dとする。そして、投影後の変位Dを、変位投影データ35aに書き込む。そして、処理をS312に戻す。
【0057】
図7(b)は、応力投影部26が実行する、S15の詳細な処理を示すフローチャートである。このフローチャートが開始される前に、応力投影データ35bには、接点ごとに、プリプロセッサ部11により入力を受け付けた接点番号と、ソルバ部12により解析された垂直応力(X成分,Y成分,Z成分)と、せん断応力(X成分,Y成分,Z成分)と、が記録されている。そして、このフローチャートを実行することにより、応力投影データ35bの「評価方向応力」が接点ごとに求まる。本フローチャートで使用される各パラメータ、および、各計算式は、以下の通りである。
【0058】
【数2】

【0059】
S321において、応力投影データ35bに登録されている接点の中から、評価点データ33に登録されている評価点に適合する接点に絞り込む。そして、S322以下の処理では、応力投影データ35bの接点のうち、絞り込まれた接点を対象とする。
これにより、評価ラインとは関係ない接点を計算対象から除外することができるので、計算量を削減することができる。
【0060】
S322において、接点読み込み処理(S323)がまだ行われていない接点が応力投影データ35bに存在するか否かを判定する。この判定を満たすときにはS323へ移行し、満たさないときには、このフローチャートを終了する。
S323において、応力投影データ35bからまだ読み込まれていない接点の接点番号と、垂直応力(s,s,s)と、せん断応力(t,t,t)と、を1接点分読み込む。
S324において、読み込んだ節点の垂直応力(s,s,s)と、せん断応力(t,t,t)と、をもとに、投影後の応力Sを計算し、応力投影データ35bに書き込む。そして、処理をS322に戻す。
【0061】
以上説明した本実施形態によれば、ソルバ部12の解析結果である変位や応力を、3点で指定して定義する面の法線方向に投影することにより、面に対して亀裂が想定されるか否かを容易に判断させることができる。よって、亀裂解析を効率的に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に関する形状解析装置1の一例を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に関する形状解析装置1のポストプロセッサ部13の詳細を示す構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に関する形状データ31cとその評価ラインの一例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に関する評価ラインデータ登録部22が計算する、要素の法線ベクトルの計算方法を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に関する形状解析装置1のポストプロセッサ部13による解析後処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に関する評価方向ベクトルの計算処理の詳細を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に関する解析結果を評価方向ベクトル上に投影する処理の詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 形状解析装置
11 プリプロセッサ部
12 ソルバ部
13 ポストプロセッサ部
21 解析モデル登録部
22 評価ラインデータ登録部
23 評価点データ登録部
24 線分データ出力部
25 変位投影部
26 応力投影部
31 解析モデルデータ
31a 節点データ
31b 要素データ
31c 形状データ
32 評価ラインデータ
33 評価点データ
34 線分データ
35a 変位投影データ
35b 応力投影データ
91 表示装置
92 入力装置
93 演算処理装置
94 記憶装置
95 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析対象の形状を3次元で示す形状データの解析結果を、亀裂解析に適するように処理する形状解析装置であって、
前記形状解析装置は、記憶装置を有するとともに、解析モデル登録部と、評価ラインデータ登録部と、評価点データ登録部と、投影部とを備える制御装置、を有し、
前記解析モデル登録部は、入力装置を介して、3次元の前記形状データをメッシュ状にした三角形の平面集合の入力を受け付け、各三角形を示す要素データと、その三角形を構成する各頂点を示す節点データと、を対応づけて前記形状データとして前記記憶装置に格納し、
前記評価ラインデータ登録部は、前記形状データを表示装置に表示し、前記入力装置を介して、表示された前記形状データから複数の前記要素データを選択させ、選択された複数の前記要素データを評価ラインデータとして前記記憶装置に格納し、
前記評価点データ登録部は、前記評価ラインデータの前記各要素データについて、その要素データが示す三角形の2辺のベクトルの外積を計算することで、平面に対する法線ベクトルを計算し、三角形の頂点の座標と対応づけて評価点データとして前記記憶装置に格納し、
前記投影部は、前記評価ラインデータの各前記要素データについて、前記形状データの前記要素データに対応する部分の解析結果を、前記評価点データの法線ベクトル上に射影し、その射影結果を出力すること、を特徴とする
形状解析装置。
【請求項2】
前記投影部は、前記形状データの解析結果として、前記形状データに対して力が加わった結果として前記形状データの変形度合いを示す、前記節点データごとの変位を、前記評価点データの法線ベクトル上に射影し、その射影結果を出力すること、を特徴とする
請求項1に記載の形状解析装置。
【請求項3】
前記投影部は、前記形状データの解析結果として、前記形状データに対して力が加わった結果として前記形状データに発生する応力を示す、前記節点データごとの垂直応力およびせん断応力の組を、前記評価点データの法線ベクトル上に射影し、その射影結果を出力すること、を特徴とする
請求項1に記載の形状解析装置。
【請求項4】
解析対象の形状を3次元で示す形状データの解析結果を、亀裂解析に適するように処理する形状解析装置による形状解析方法であって、
前記形状解析装置は、記憶装置を有するとともに、解析モデル登録部と、評価ラインデータ登録部と、評価点データ登録部と、投影部とを備える制御装置、を有し、
前記解析モデル登録部は、入力装置を介して、3次元の前記形状データをメッシュ状にした三角形の平面集合の入力を受け付け、各三角形を示す要素データと、その三角形を構成する各頂点を示す節点データと、を対応づけて前記形状データとして前記記憶装置に格納し、
前記評価ラインデータ登録部は、前記形状データを表示装置に表示し、前記入力装置を介して、表示された前記形状データから複数の前記要素データを選択させ、選択された複数の前記要素データを評価ラインデータとして前記記憶装置に格納し、
前記評価点データ登録部は、前記評価ラインデータの前記各要素データについて、その要素データが示す三角形の2辺のベクトルの外積を計算することで、平面に対する法線ベクトルを計算し、三角形の頂点の座標と対応づけて評価点データとして前記記憶装置に格納し、
前記投影部は、前記評価ラインデータの各前記要素データについて、前記形状データの前記要素データに対応する部分の解析結果を、前記評価点データの法線ベクトル上に射影し、その射影結果を出力すること、を特徴とする
形状解析方法。
【請求項5】
請求項4に記載の形状解析方法を、コンピュータである前記形状解析装置に実行させるための形状解析プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−3191(P2010−3191A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162688(P2008−162688)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】