形状記憶ファスナーおよび使用方法
【課題】開口部の体腔側を閉鎖するために構成された、ファスナーおよびファスナー挿入器具を提供する。
【解決手段】中心軸を規定するベースから延びる少なくとも1対のレッグ20,30であって、レッグの各々が、ベース部分12および組織係合部分26,36を備え、第一の位置において、組織係合部分の各々は、挿入方向を規定するように配置され、そして第二の位置において、組織係合部分の各々は、中心軸Xに向かって内向きに延びる、レッグ、を備える、外科手術用ファスナー10であって、外科手術用ファスナーは、少なくとも部分的に、ポリジオキサノンとポリ(L−ラクチド)との組み合わせ、またはトリメチレンカーボネートとポリ(L−ラクチド)との組み合わせが挙げられる形状記憶材料から形成されており、そしてレッグの対は、形状記憶材料の活性化の際に、第一の位置から第二の位置へと移動する構成とする。
【解決手段】中心軸を規定するベースから延びる少なくとも1対のレッグ20,30であって、レッグの各々が、ベース部分12および組織係合部分26,36を備え、第一の位置において、組織係合部分の各々は、挿入方向を規定するように配置され、そして第二の位置において、組織係合部分の各々は、中心軸Xに向かって内向きに延びる、レッグ、を備える、外科手術用ファスナー10であって、外科手術用ファスナーは、少なくとも部分的に、ポリジオキサノンとポリ(L−ラクチド)との組み合わせ、またはトリメチレンカーボネートとポリ(L−ラクチド)との組み合わせが挙げられる形状記憶材料から形成されており、そしてレッグの対は、形状記憶材料の活性化の際に、第一の位置から第二の位置へと移動する構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2009年10月8日に出願された米国特許出願番号61/249,642(発明の名称「Shape Memory Fasteners and Method of Use」)の利益および優先権を主張する。この米国特許出願の開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、外科手術用ファスナーに関する。より特定すると、本開示は、患者の組織の穿孔創傷または切開を閉鎖するための、外科手術用ファスナーおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
外科手術用アクセスデバイス(トロカールおよびポートアセンブリが挙げられる)は、これらのデバイスを介して実施され得る多数の手順と同様に、公知である。代表的に、アクセスデバイスは、ハウジング、およびこのハウジングから延びるカニューレを備える。このハウジングは、弁、シールおよび患者の体腔内に器具を方向付けるための他の機構を備え得る。カニューレは、代表的に、刃付き先端の使用によってかまたは予め作製された切開を介してかのいずれかでの、患者の皮膚を通り体腔(すなわち、腹)内への通過のために構成される。
【0004】
手順の完了の際に、患者の体腔にアクセスするために使用された1つ以上のアクセスデバイスが取り除かれ、これによって、1つ以上の穿孔創傷または切開を作製する。切開のサイズは、体腔にアクセスするために使用されるカニューレのサイズに依存して変動し得る。特定の手順は、この手順を完了するために、体腔内へのより大きい通路を必要とする。従来の方法(すなわち、ステープルまたは縫合糸)を使用して切開の腹側を閉鎖することは、この切開を通して縫合糸またはステープル留めデバイスを操作することを可能にするために、切開に内側からアクセスすること、または切開の寸法を増加させることのいずれかを必要とする。体腔は、閉鎖されるべき切開を通してアクセスされるので、身体内から切開にアクセスすることは、代表的に、選択肢ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、開口部の体腔側を閉鎖するために構成された、ファスナーおよびファスナー挿入器具を有することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
中心軸を規定するベース;
該ベースから延びる少なくとも1対のレッグであって、該レッグの各々が、ベース部分および組織係合部分を備え、第一の位置において、該組織係合部分の各々は、挿入方向を規定するように配置され、そして第二の位置において、該組織係合部分の各々は、該中心軸に向かって内向きに延びる、レッグ、
を備える、外科手術用ファスナーであって、該外科手術用ファスナーは、少なくとも部分的に、ポリジオキサノンとポリ(L−ラクチド)との組み合わせ、またはトリメチレンカーボネートとポリ(L−ラクチド)との組み合わせが挙げられる形状記憶材料から形成されており、そして該レッグの対は、該形状記憶材料の活性化の際に、該第一の位置から該第二の位置へと移動するように構成されている、外科手術用ファスナー。
(項目2)
前記形状記憶材料が、15%のポリジオキサノンと85%のポリ(L−ラクチド);20%のポリジオキサノンと80%のポリ(L−ラクチド);15%のトリメチレンカーボネートと85%のポリ(L−ラクチド);または20%のトリメチレンカーボネートと80%のポリ(L−ラクチド)からなる、上記項目に記載のファスナー。
(項目3)
前記ファスナーが、熱の付与の際に前記第一の位置から前記第二の位置へと変化する、上記項目のうちのいずれかに記載のファスナー。
(項目4)
挿入部材が、前記ベースと一体的に形成されている、上記項目のうちのいずれかに記載のファスナー。
(項目5)
前記組織係合部分が、組織を係合するための棘を備える、上記項目のうちのいずれかに記載のファスナー。
(項目6)
前記ベースが、挿入器具との作動可能な係合のために構成された、開口部または突出部のうちの1つを備える、上記項目のうちのいずれかに記載のファスナー。
(項目7)
壊れやすい接続が、挿入部材と前記ベースとの間に形成される、上記項目のうちのいずれかに記載のファスナー。
(項目8)
第二の対のレッグをさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載のファスナー。
(項目9)
挿入器具であって、
細長シャフト;および
該細長シャフトの遠位端から延びる延長部であって、該延長部は、ファスナーとの作動可能な係合のために構成された遠位端を備え、該延長部は、1つ以上の通気口を規定し、該通気口を通して、吸引が提供されて組織を該延長部の周りで引き得る、延長部、
を備える、挿入器具;ならびに
少なくとも1対のレッグを有するファスナーであって、該レッグは、第一の開位置から第二の閉位置へと移動可能であり、該ファスナーは、少なくとも部分的に、形状記憶材料から形成されており、該レッグは、該形状記憶材料の活性化の際に、該第一の位置から該第二の位置へと移動する、ファスナー、
を備える、創傷閉鎖装置。
(項目10)
上記レッグの各々が弓形の形状を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の創傷閉鎖装置。
(項目11)
各レッグが挿入方向を規定する尖端を備える、上記項目のうちのいずれかに記載の創傷閉鎖装置。
(項目12)
外科手術用ファスナーを挿入して組織の開口部を閉鎖する方法であって、
挿入器具の遠位端に解放可能に固定された外科手術用ファスナーを備える挿入器具を提供する工程であって、該外科手術用ファスナーが、開構成を有し、そして閉鎖可能である、工程;
該挿入器具の遠位端を該開口部に挿入する工程;
該組織または該器具の遠位端のうちの少なくとも一方を、該器具の遠位端または該組織のうちの他方の方へと近接させる工程;
該外科手術用ファスナーのレッグが組織を係合するように、該挿入器具を該切開に通して近位に引き込む工程;
該外科手術用ファスナーを該組織の周りで閉鎖する工程;
該挿入器具を該外科手術用ファスナーから脱係合させる工程;ならびに
該挿入器具を該切開から引き抜く工程、
を包含する、方法。
(項目13)
上記組織に減圧を付与する工程をさらに包含する、上記項目に記載の方法。
(項目14)
上記外科手術用ファスナーが、形状記憶材料から少なくとも部分的に形成されており、そして上記ファスナーが、該形状記憶材料の活性化により閉鎖される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目15)
上記外科手術用ファスナーが1対のレッグを有し、そして上記方法が、上記挿入器具の遠位端を前記開後部に挿入した後に、該ファスナーを約90°回転させる工程をさらに包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0007】
(摘要)
組織の開口部を閉鎖するように構成された外科手術用ファスナーが提供される。この外科手術用ファスナーは、中心軸を規定するベースを備え、少なくとも1対のレッグが、このベースから延びている。これらのレッグの各々は、ベース部分および組織係合部分を備える。第一の位置にある場合に、これらの組織係合部分の各々は、挿入方向を規定するように配置され、そして第二の位置にある場合に、これらの組織係合部分の各々は、中心軸に向かって内向きに延びる。この外科手術用ファスナーは、少なくとも部分的に、形状記憶材料(ポリジオキサノンとポリ(L−ラクチド)との組み合わせ、またはトリメチレンカーボネートとポリ(L−ラクチド)との組み合わせが挙げられる)から形成される。このレッグの対は、この形状記憶材料の活性化の際に、第一の位置から第二の位置へと移動するように構成される。
【0008】
(要旨)
従って、組織の開口部を閉鎖するように構成された外科手術用ファスナーが提供される。この外科手術用ファスナーは、中心軸を規定するベースを備え、少なくとも1対のレッグが、このベースから延びている。これらのレッグの各々は、ベース部分および組織係合部分を備える。このファスナーが第一の位置にある場合に、これらの組織係合部分の各々は、挿入方向を規定するように配置され、そして第二の位置にある場合に、これらの組織係合部分の各々は、中心軸に向かって内向きに延びる。この外科手術用ファスナーは、少なくとも部分的に、形状記憶材料(ポリジオキサノンとポリ(L−ラクチド)との組み合わせ、またはトリメチレンカーボネートとポリ(L−ラクチド)との組み合わせが挙げられる)から形成される。このレッグの対は、この形状記憶材料の活性化の際に、第一の位置から第二の位置へと移動するように構成される。
【0009】
1つの実施形態において、この形状記憶材料は、15%のポリジオキサノンと85%のポリ(L−ラクチド)、20%のポリジオキサノンと80%のポリ(L−ラクチド)、15%のトリメチレンカーボネートと85%のポリ(L−ラクチド)、および20%のトリメチレンカーボネートと80%のポリ(L−ラクチド)のうちの1つを含有する。この形状記憶材料は、99%もの多くのラクチドコポリマーを含有し得ることが想定される。このファスナーは、熱の付与の際に、第一の位置から第二の位置へと変化し得る。挿入部材が、ベースと一体的に形成され得る。組織係合部分は、組織を係合するための棘を備え得る。ベースは、挿入器具と作動可能に係合するために構成された、開口部または突出部のうちの1つを備え得る。壊れやすい接続が、挿入部材とベースとの間に形成され得る。1つの実施形態において、このファスナーは、第二の対のレッグを備える。
【0010】
創傷閉鎖装置もまた提供される。この装置は、挿入器具を備え、この挿入器具は、細長シャフト、およびこの細長シャフトの遠位端から延びる延長部を有する。この延長部は、外科手術用ファスナーとの作動可能な係合のために構成された遠位端を備える。この延長部は、1つ以上の通気口を規定し、この通気口を通して、吸引が適用されて組織を周囲で引き得る。この装置は、少なくとも1対のレッグを有し、これらのレッグは、第一の開位置から第二の閉位置へと移動可能である。このファスナーは、少なくとも部分的に、形状記憶材料から形成される。これらのレッグは、この形状記憶材料の活性化の際に、第一の位置から第二の位置へと移動する。これらのレッグの各々は、弓形の形状を有し得る。各レッグは、挿入方向を規定する尖端を備え得る。
【0011】
さらに、外科手術用ファスナーを挿入して組織の開口部を閉鎖する方法が提供される。この方法は、挿入器具を提供する工程を包含し、この挿入器具は、その遠位端に解放可能に固定された外科手術用ファスナーを備える。この外科手術用ファスナーは、開構成を有し、そして閉鎖可能である。この方法は、この挿入器具の遠位端を開口部に挿入する工程、この組織をこの挿入器具の遠位端の方へと引く工程、この外科手術用ファスナーのレッグが組織を係合するように、この切開を通してこの挿入器具を近位に引き込む工程、この外科手術用ファスナーをこの組織の周りで閉じる工程、この挿入器具をこの外科手術用ファスナーから脱係合させる工程、およびこの挿入器具をこの切開から引き抜く工程をさらに包含する。
【0012】
1つの実施形態において、この方法は、減圧を組織に付与する工程を包含する。この外科手術用ファスナーは、少なくとも部分的に、形状記憶材料から形成され得、そしてこのファスナーは、この形状記憶材料の活性化により閉じられる。この外科手術用ファスナーは、1対のレッグを備え得る。この方法は、この挿入器具の遠位端を開口部に挿入した後に、このファスナーを約90°回転させる工程をさらに包含し得る。
【0013】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本開示の実施形態を説明し、そして上に与えられた本開示の一般的説明および以下に与えられる実施形態の詳細な説明と一緒になって、本開示の原理を説明する役に立つ。
【発明の効果】
【0014】
開口部の体腔側を閉鎖するために構成された、ファスナーおよびファスナー挿入器具を有すること。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、第一の位置または開位置にある、本開示によるステープルの1つの実施形態の斜視図である。
【図2】図2は、第二の位置または閉位置にある、図1のステープルの斜視図である。
【図3】図3は、第一の位置または開位置にある、本開示によるステープルの代替の実施形態の斜視図である。
【図4】図4は、第二の位置または閉位置にある、図3のステープルの斜視図である。
【図5】図5は、加熱流体の供給源および減圧源に作動可能に接続され、そして図3および図4のファスナーが取り付けられている、挿入器具の遠位部分の斜視図である。
【図6】図6〜図10は、図3および図4のファスナーを適用する工程の、進行的な部分断面側面図である。
【図7】図6〜図10は、図3および図4のファスナーを適用する工程の、進行的な部分断面側面図である。
【図8】図6〜図10は、図3および図4のファスナーを適用する工程の、進行的な部分断面側面図である。
【図9】図6〜図10は、図3および図4のファスナーを適用する工程の、進行的な部分断面側面図である。
【図10】図6〜図10は、図3および図4のファスナーを適用する工程の、進行的な部分断面側面図である。
【図11】図11は、第一の位置または開位置にある、本開示によるファスナーの別の実施形態の斜視図である。
【図12】図12は、第二の位置または閉位置にある、図11のファスナーの斜視図である。
【図13】図13は、第一の位置または開位置にある、本開示によるファスナーのなおさらに別の実施形態の斜視図である。
【図14】図14は、第二の位置または閉位置にある、図13のファスナーの斜視図である。
【図15】図15は、本開示によるファスナーのなお別の実施形態の上面図である。
【図16】図16は、挿入器具の代替の実施形態と作動可能に係合している、本開示によるファスナーの1つの実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示のファスナーの実施形態が、ここで図面を参照しながら詳細に説明される。図面において、同じ番号は、数枚の図の各々における同一の要素または対応する要素を表す。当該分野において一般的であるように、用語「近位」とは、使用者または操作者(すなわち、外科医または医師)に近い方の部品または構成要素をいい、一方で、用語「遠位」とは、使用者から遠い方の部品または構成要素をいう。本開示の実施形態は、組織を通って体腔内への切開を閉鎖する際の使用について記載されるが、本開示のファスナーおよびファスナー挿入器具は、切開以外の組織開口部(すなわち、裂傷、穿孔、または身体の他の領域)を閉鎖する際に使用するために改変され得る。
【0017】
最初に図1および図2を参照すると、本開示の1つの実施形態による形状記憶ファスナーが、一般にファスナー10として示されている。ファスナー10は、形状記憶材料から構成され、この形状記憶材料は、第一の温度(すなわち、室温)において第一の構成を規定し、そして第二の温度(すなわち、体温)において第二の構成を規定する。
【0018】
ファスナー10を形成するために利用される形状記憶ポリマー材料は、第一相および第二相を有する。第一相(図1)は、ファスナー10を患者の身体の組織に挿入することを容易にする構成である。第二相(図2)は、熱(例えば、身体の熱)の付与の際に呈され、組織内へのファスナー10の保持を容易にする構成である。以下でさらに詳細に議論されるように、ファスナー10のレッグ20および30は、整列した第一相(組織への挿入を容易にする)および湾曲した第二相(組織を係合して切開の側部を閉鎖するように構成される)を有する。
【0019】
本開示の外科手術用ファスナーにおいて利用され得る適切な形状記憶ポリマー材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリ(スチレン−ブタジエン)ブロックコポリマー、ポリノルボルネン、カプロラクトン、ジオキサノン、ジオールエステル(オリゴ(ε−カプロラクトン)ジオールが挙げられる)、乳酸、ラクチド、グリコール酸、グリコリド、エーテル−エステルジオール(オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールが挙げられる)、カーボネート(トリメチレンカーボネートが挙げられる)、これらの組み合わせなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、この形状記憶ポリマーは、異なる熱特性を有する2つの成分のコポリマーであり得る。
【0020】
他の実施形態において、生体吸収性材料のブレンドが利用され得、これらの材料としては、乳酸および/またはグリコール酸、これらのホモポリマーまたはコポリマーとブレンドされたウレタン、ならびにカプロラクトンとブレンドされたアクリレート(例えば、ポリカプロラクトンジメタクリレートポリ(アクリル酸ブチル)ブレンド)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
米国特許第5,324,307号(その内容は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載される数種の組成物は、形状記憶効果を示すことが見出されている。表1は、アニーリングされたワイヤ形態の各系のブロックコポリマー、提唱されるソフトセグメントおよびハードセグメント、ならびにガラス転移温度(Tg)(示差走査熱量測定法により測定され、TTransに等しい)を示す。列挙される材料は、最大85%のラクチドコポリマーを含有するが、この材料は、99%もの多くのラクチドコポリマーを含有し得るので、依然として、形状記憶特徴を示すことが予測される。
【0022】
【表1】
以下に提供される予備的なデータは、Tgに近付く場合に表1のポリマー系が部分的な形状シフトを起こすこと、およびこれらの材料が水溶液中にある場合にTTransが低下することを示唆する。これらのポリマーは、水の吸収および塊の加水分解によって分解することが公知であるので、これらのポリマーマトリックスに侵入する水分子は、可塑剤として働き、乾燥空気中においてよりも低い温度で、ソフトセグメントを軟化させることが提唱される。水溶液中でTTransの低下を示すポリマーは、移植物デバイスとして特に有利である。なぜなら、搬送中および貯蔵中に、乾燥状態において、温度の逸脱によるデバイスの二次形状を維持することを可能にし、依然として、移植の際に体温でのシフトを可能にするはずだからである。
【0023】
種々の合成方法および加工方法を使用して、TTransを調整し得る(ブロックセグメントのモル比、ポリマーの分子量、およびハードセグメント形成のための時間の変更が挙げられる)。TTransはまた、ソフトセグメントドメイン材料の様々な量の低分子量オリゴマーを、親コポリマーにブレンドすることによって、調整され得る。このようなオリゴマーは、ソフトドメインに対する可塑剤として働き、そしてTTransの下方シフトを引き起こすことが仮定される。TTransが重合反応パラメータを調整することによって制御される、文献にしばしば記載されるアプローチとは異なり、TTransは、ブレンド方法を使用して、再現可能かつ正確に、容易に制御され得る。さらに、可塑剤としてのトリメチレンカーボネート(TMC)の使用は、自己強化デバイスの利点を提供し得、これは、移植後により強く、より硬くなる。なぜなら、TMCモノマーおよび低分子量TMCオリゴマーが、水性環境中に容易に拡散するからである。
【0024】
いくつかの実施形態において、成形プロセスが、ファスナー10を製造するために利用される。プラスチック成形方法は、当業者の知識の範囲内であり、そして溶融成形、溶液成形などが挙げられるが、これらに限定されない。射出成形、押し出し成形、圧縮成形および他の方法もまた、溶融成形技術として使用され得る。
【0025】
図1および図2をなお参照すると、ファスナー10は、ベース12、ならびにベース12から延びる1対のレッグ20および30を備える。ファスナー10は、このファスナーを通って延びる中心軸「X」を規定し、この中心軸はまた、挿入方向「A」を規定する(図1)。以下でさらに詳細に議論されるように、ベース12は、挿入器具との作動可能な係合のために構成された、開口部または移動止め13を備える。図1に示されるものにおいては、ファスナー10は2つのレッグを備えるが、ファスナー10は、2より多いかまたは2つより少ないレッグ(例えば、4つのレッグ(図3)または6つのレッグ(図11))を有してもよいことが想定される。レッグ20、30の各々は、それぞれ、ベース部分22、32、接続部分24、34、および組織係合部分26、36を備える。ベース部分22、32は、同じ長さであっても異なる長さであってもよく、そしてファスナー10が患者の体腔内に切開またはカニューレを通して挿入され得るように構成される。接続部分24、34は、同じ長さであっても異なる長さであってもよく、そしてファスナー10が組織に受容される場合に、それぞれのレッグ20、30の組織係合部分26、36が組織を完全に通っては延びないように構成される。代替の実施形態において、接続部分24、34は、組織係合部分26、36が、第一の位置または開位置において、組織を完全に通って延びるように構成される。組織係合部分26、36は、示されるような拡大棘付きヘッドを備え得るか、または組織を穿孔および/もしくは係合するために他の様式で適切に構成され得る。いくつかの実施形態において、組織係合部分26、36は、少なくとも挿入方向にわずかに、テーパ状であり、湾曲しており、角度が付いており、そして/または尖っており、組織へのファスナー10の挿入を容易にする。
【0026】
図1を参照すると、第一相において、ファスナー10は、組織への挿入のために構成された第一の位置または開位置を有する。この第一の位置または開位置において、それぞれのレッグ20、30の組織係合部分26、36は、中心軸「X」に対して実質的に平行に維持される。この様式で、それぞれのレッグ20、30の接続部分24、34は、それぞれベース部分22、32に対して、それぞれ角度α2、α3を規定する。1つの実施形態において、示されるように、角度α2、α3は、90°の角度を規定する。角度α2、α3は、示されるように各々同じであり得るか、またはその代わりに、角度α2とα3とは異なり得る。1つの実施形態において、レッグ20、30のそれぞれのベース部分22、32および接続部分24、34は、湾曲した部材を形成する。
【0027】
ここで図2を参照すると、第二相において、ファスナー10は、組織を係合して保持するために構成された、第二の位置または閉位置を有する。この閉位置において、それぞれのレッグ20、30の組織係合部分26、36は、半径方向内向きに延びる。1つの実施形態において、組織係合部分26、36は、中心軸「X」に対して実質的に垂直に維持される。あるいは、組織係合部分26、36は、ベース12に向かって、半径方向内向きに下向きに延び得る。それぞれのレッグ20、30のベース部分22、32および接続部分24、34の各々は、湾曲した構造を維持して、間にそれぞれ角度δ2、δ3を規定する。角度δ2、δ3は示されるように同じであり得るか、またはその代わりに、角度δ2とδ3とは異なり得る。他の実施形態において、レッグ20、30は、互いに実質的に平行であり、例えば、このファスナーは、実質的に「H」字型の構成を有し得る(図15)。
【0028】
図1および図2を参照すると、第一相または第二相のいずれかにおいて、レッグ20、30のベース部分22、32は、間に角度β2、β3を規定する。1つの実施形態において、示されるように、角度β2、β3は、180°の角度を規定する。角度β2、β3は、示されるように、各々同じであり得るか、またはその代わりに、角度β2とβ3とは異なり得る。
【0029】
ここで図3および図4を参照すると、ファスナー110は、本明細書中で上に記載されたファスナー10と実質的に類似である。ファスナー110は、ベース112、およびベース112から延びる2対のレッグ120、130、140、150を備える。ファスナー110は、このファスナーを通って延びる中心軸「X」を規定し、この中心軸はまた、挿入方向「A」を規定する。ベース112は、挿入器具との作動可能な係合のために構成された、開口部または移動止め113を備える。レッグ120、130、140、150の各々は、それぞれ、ベース部分122、132、142、152、接続部分124、134、144、154、および組織係合部分126、136、146、156を備える。ベース部分122、132、142、152は、同じ長さであっても異なる長さであってもよく、そしてファスナー110が患者の体腔内に切開またはカニューレを通して挿入され得るように構成される。接続部分124、134、144、154は、同じ長さであっても異なる長さであってもよく、そしてファスナー110が組織に受容される場合に、それぞれのレッグ120、130、140、150の組織係合部分126、136、146、156が組織を完全に通っては延びないように構成される。代替の実施形態において、接続部分124、134、144、154は、組織係合部分126、136、146、156が、第一の位置または開位置において、組織を完全に通って延びるように構成される。
【0030】
ファスナー10に関して上で議論されたように、第一相において、ファスナー110は、組織への挿入のために構成された第一の位置または開位置を有する(図3)。この第一の位置または開位置において、それぞれのレッグ120、130、140、150の組織係合部分126、136、146、156は、中心軸「X」に対して平行に維持される。第二相において、ファスナー110は、組織を係合して保持するために構成された、第二の位置または閉位置を有する(図4)。この閉位置において、それぞれのレッグ120、130、140、150の組織係合部分126、136、146、156は、半径方向内向きに延びる。1つの実施形態において、組織係合部分126、136、146、156は、中心軸「X」に対して実質的に垂直に維持される。あるいは、組織係合部分126、136、146、156は、ベース112に向かって、半径方向内向きに下向きに延び得る。
【0031】
ここで図5を参照すると、ファスナー110が、挿入器具60に作動可能に接続されて示されている。挿入器具60は、細長シャフト62を備え、この細長シャフトから延長部64が作動可能に延びている。延長部64は、示されるようにテーパ状であり得るか、または円筒形、実質的に平坦、もしくは切開を通しての挿入のために他の様式の構成であり得る。延長部64は、細長シャフト62と一体的に形成され得るか、しっかりと接続されるか、または解放可能に接続され得る。テーパ状の延長部64は、ファスナー110との作動可能な係合のために構成された遠位端64bを備える。示されるように、テーパ状端部64の遠位端64bは、ファスナー110と一体的に形成され、そして所定の時間において(すなわち、ファスナー110の開位置から閉位置への変形の際に)ファスナー110から外れるように構成される。あるいは、ファスナー110は、開口部113(図3)を備え、この開口部を通して、ファスナー110が挿入器具60によって選択的に係合される。この様式で、ファスナー110は、使用者の動作によって、挿入器具60から解放される。ファスナー110と遠位端64bとの間の取り付け点は、壊れやすい接続であり得ることが想定される。
【0032】
図5をなお参照すると、テーパ状の延長部64は、1つ以上の通気口65を備える。通気口65は、吸引源70に作動可能に接続される。以下でさらに詳細に議論されるように、吸引は、吸引源70から通気口65を通して提供されて、切開「I」(図6)の両側をテーパ状の延長部64の周りに引く。テーパ状の延長部64は、遠位端64bの近くに形成された開口部67をさらに備え得、この開口部は、加熱流体の供給源80に作動可能に接続される。以下でまたさらに詳細に議論されるように、テーパ状の延長部64の開口部67を通しての加熱流体(図示せず)の排出は、ファスナー110をこの加熱流体に浸け、これによって、ファスナー110を開位置から閉位置へと変形させる。代替の実施形態において、ファスナー110は、中空の構成を有し、これを通って加熱流体が流れ、ファスナー110の変形を引き起こす。なお別の実施形態において、ファスナー110は、ファスナー110を加熱し得る誘導コアを備え得る。この様式で、加熱流体源80は、電気エネルギー源で置き換えられ、そして電気エネルギーがこの誘導コアに提供されて、ファスナー110を加熱し、これによって、第一の位置から第二の位置へのファスナー110の変形を引き起こす。あるいは、ファスナー110は、赤外光、化学薬剤、熱または他の適切な活性化因子の適用の際に変形するように構成され得る。
【0033】
ここで図6〜図10を参照して、ファスナー110を使用して切開「I」を閉鎖する方法が詳細に記載される。アクセスアセンブリの受容のために作製された切開に関連して示されるが、本開示の局面は、体腔内へのほとんどの切開を閉鎖するように適合され得る。最初に図6を参照すると、ファスナー110は、挿入器具60のテーパ状の延長部64の遠位端64bに作動可能に受容される。上で議論されたように、ファスナー110は、テーパ状の延長部64と一体的に形成され得るか、またはテーパ状の延長部64に他の様式で機械的に固定され得る。挿入器具60を使用して適用されるように示されているが、他の器具および/または方法を使用してファスナー110を適用し得ることが理解されるべきである。さらに、挿入器具60は、他のファスナー(すなわち、ファスナー10)を適用するために使用され得る。ファスナー110は、患者の組織「T」の切開「I」を通して挿入されたカニューレまたはスリーブ「S」を通して、矢印「A」により示されるように受容されるように構成される。代替の実施形態において、ファスナー110および器具60は、互いに独立して体腔に挿入され、引き続いて、体腔内で一緒に固定される。一旦、ファスナー110がスリーブ「S」を通して挿入されて患者の体腔内に受容されたら(図6)、スリーブ「S」は、矢印「B」により示されるように、組織「T」から取り除かれる。この様式で、組織「T」は、細長シャフト62およびテーパ状の延長部64の周りですぼまる(図7)。組織「T」は、テーパ状の延長部64に形成された開口部65を通して吸引源70(図5)から提供される吸引によって、テーパ状の延長部64の周りにさらに引かれる。
【0034】
ここで図8を参照すると、一旦、組織「T」が挿入器具60のテーパ状の延長部64の周りに引かれると、挿入器具60は、矢印「C」により示されるように組織「T」を通して近位に引かれ、これによって、ファスナー110の組織係合部分126、136、146、156を、切開「I」の周りで組織「T」内に受容させる。挿入器具60のさらなる引き込みは、組織係合部分126、136、146、156と組織「T」との間の引き続く係合を引き起こす。1つの実施形態において、一旦、ファスナー110のレッグ120、130、140、150が組織「T」と完全に係合したら、組織「T」により提供される熱が、ファスナー110を開位置から閉位置へと変形させ得る。あるいは、組織「T」は、通常の体温より高い温度に一時的に加熱されて、ファスナー110の変形を引き起こし得る。この様式で、組織「T」は、Tg(体温より高温)まで加熱されて、ファスナー110を変形させる。ポリマーは、Tgより高温においてより柔軟に、より可撓性になるので、Tgを体温より高くすることによって、一旦、組織「T」が体温まで冷却すると、ファスナー110は、より堅く、より強くなる。別の実施形態において、加熱流体が、延長部64の開口部67を通して提供されて、ファスナー110をこの加熱流体に浸け得、これによって、ファスナー110を変形させる。なお別の実施形態において、この加熱流体は、ファスナー110の中空部分(図示せず)内、および/またはこの中空部分を通して方向付けられて、このファスナーの変形を引き起こす。なおさらに別の実施形態において、電気エネルギーの供給源が作動されて、ファスナー110内の熱誘導コア(図示せず)にエネルギーを供給し、この熱誘導コアの加熱、および従って、ファスナー110の変形を引き起こし得る。
【0035】
図9を参照すると、開位置から閉位置へのファスナー110の変形前または変形中に、挿入器具60のテーパ状の延長部64が、ファスナー110から分離される。上で議論されたように、テーパ状の延長部64は、剥離接続(break−away connection)によってファスナー110に接続され得、この接続は、ファスナー110の変形中に破壊される。あるいは、挿入器具60は、この挿入器具からファスナー110を解放するための解放機構(図示せず)を備える。テーパ状の延長部64からのファスナー110の解放の際に、挿入器具60は、切開「I」から完全に取り除かれる。
【0036】
ここで図10を参照すると、閉位置において、ファスナー110は、切開「I」の内側または腹側の周りで、組織「T」をしっかりと係合し、これによって、切開「I」を閉鎖する。切開「I」の外側は、従来の様式で閉鎖され得る。あるいは、この挿入器具は、創傷閉鎖材料を分配するように構成され得る(例えば、創傷閉鎖材料が分散開口部分に運ばれるように通路を備えることによって)。米国特許第7,717,313号および同第7,455,682号(これらの全開示は、本明細書中に参考として援用される)の創傷閉鎖材料が使用され得る。上で議論されたように、ファスナー110は、その代わりに、組織「T」を完全に通って延びるように構成され得、この場合には、切開「I」の外側の閉鎖は必要ではないかもしれない。1つ以上のさらなるファスナー110が、上記様式で組織「T」に適用され得る。
【0037】
図11および図12を参照すると、本開示による形状記憶ファスナーの代替の実施形態が、一般にファスナー210として示されている。ファスナー210は、本明細書中で上に記載されたファスナー10、110と実質的に類似であるので、これらの間の違いに関してのみが記載される。ファスナー210は、組織に形成された切開をよりしっかりと閉鎖するために、6つのレッグ220、230、240、250、260、270を備える。レッグ220、230、240、250、260、270のそれぞれの組織係合部分226、236、246、256、266、276は、組織への挿入を容易にするために、テーパ状であるかまたは尖っている。
【0038】
図13および図14を参照すると、本開示による形状記憶ファスナーのなお別の実施形態が、一般にファスナー310として示されている。ファスナー310は、本明細書中で上に記載されたファスナー10、110、210と実質的に類似である。ファスナー310は、第一の対のレッグ320および第二の対のレッグ340を備える。第一の対のレッグ320および第二の対のレッグ340の各々は、異なる長さである。示されるように、各対のレッグ320、340は、閉位置において異なる構成を呈する(図14)。この様式で、ファスナー310は、組織をよりしっかりと係合するように構成される。
【0039】
本開示の例示的な実施形態が、添付の図面を参照しながら本明細書中に記載されたが、本開示は、これらの正確な実施形態に限定されないこと、ならびに他の種々の変更および改変が、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく当業者によりなされ得ることが、理解されるべきである。例えば、ファスナー10は、レッグ120、130を閉じた第一の位置にし、所定の温度未満に冷却されると開いた第二の位置を呈するような材料から形成され得る。この様式で、ファスナー110は、冷却された第二の位置にある場合に組織「T」に挿入され、そして高温の身体「T」との係合の際に、ファスナー110は、閉じた第一の位置に戻る。別の実施形態において、ファスナー10は、皮膚、筋肉層などを閉鎖するために、外側から組織内に押されるように構成される(図16)。
【符号の説明】
【0040】
10 ファスナー
12 ベース
20、30 レッグ
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2009年10月8日に出願された米国特許出願番号61/249,642(発明の名称「Shape Memory Fasteners and Method of Use」)の利益および優先権を主張する。この米国特許出願の開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、外科手術用ファスナーに関する。より特定すると、本開示は、患者の組織の穿孔創傷または切開を閉鎖するための、外科手術用ファスナーおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
外科手術用アクセスデバイス(トロカールおよびポートアセンブリが挙げられる)は、これらのデバイスを介して実施され得る多数の手順と同様に、公知である。代表的に、アクセスデバイスは、ハウジング、およびこのハウジングから延びるカニューレを備える。このハウジングは、弁、シールおよび患者の体腔内に器具を方向付けるための他の機構を備え得る。カニューレは、代表的に、刃付き先端の使用によってかまたは予め作製された切開を介してかのいずれかでの、患者の皮膚を通り体腔(すなわち、腹)内への通過のために構成される。
【0004】
手順の完了の際に、患者の体腔にアクセスするために使用された1つ以上のアクセスデバイスが取り除かれ、これによって、1つ以上の穿孔創傷または切開を作製する。切開のサイズは、体腔にアクセスするために使用されるカニューレのサイズに依存して変動し得る。特定の手順は、この手順を完了するために、体腔内へのより大きい通路を必要とする。従来の方法(すなわち、ステープルまたは縫合糸)を使用して切開の腹側を閉鎖することは、この切開を通して縫合糸またはステープル留めデバイスを操作することを可能にするために、切開に内側からアクセスすること、または切開の寸法を増加させることのいずれかを必要とする。体腔は、閉鎖されるべき切開を通してアクセスされるので、身体内から切開にアクセスすることは、代表的に、選択肢ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、開口部の体腔側を閉鎖するために構成された、ファスナーおよびファスナー挿入器具を有することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
中心軸を規定するベース;
該ベースから延びる少なくとも1対のレッグであって、該レッグの各々が、ベース部分および組織係合部分を備え、第一の位置において、該組織係合部分の各々は、挿入方向を規定するように配置され、そして第二の位置において、該組織係合部分の各々は、該中心軸に向かって内向きに延びる、レッグ、
を備える、外科手術用ファスナーであって、該外科手術用ファスナーは、少なくとも部分的に、ポリジオキサノンとポリ(L−ラクチド)との組み合わせ、またはトリメチレンカーボネートとポリ(L−ラクチド)との組み合わせが挙げられる形状記憶材料から形成されており、そして該レッグの対は、該形状記憶材料の活性化の際に、該第一の位置から該第二の位置へと移動するように構成されている、外科手術用ファスナー。
(項目2)
前記形状記憶材料が、15%のポリジオキサノンと85%のポリ(L−ラクチド);20%のポリジオキサノンと80%のポリ(L−ラクチド);15%のトリメチレンカーボネートと85%のポリ(L−ラクチド);または20%のトリメチレンカーボネートと80%のポリ(L−ラクチド)からなる、上記項目に記載のファスナー。
(項目3)
前記ファスナーが、熱の付与の際に前記第一の位置から前記第二の位置へと変化する、上記項目のうちのいずれかに記載のファスナー。
(項目4)
挿入部材が、前記ベースと一体的に形成されている、上記項目のうちのいずれかに記載のファスナー。
(項目5)
前記組織係合部分が、組織を係合するための棘を備える、上記項目のうちのいずれかに記載のファスナー。
(項目6)
前記ベースが、挿入器具との作動可能な係合のために構成された、開口部または突出部のうちの1つを備える、上記項目のうちのいずれかに記載のファスナー。
(項目7)
壊れやすい接続が、挿入部材と前記ベースとの間に形成される、上記項目のうちのいずれかに記載のファスナー。
(項目8)
第二の対のレッグをさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載のファスナー。
(項目9)
挿入器具であって、
細長シャフト;および
該細長シャフトの遠位端から延びる延長部であって、該延長部は、ファスナーとの作動可能な係合のために構成された遠位端を備え、該延長部は、1つ以上の通気口を規定し、該通気口を通して、吸引が提供されて組織を該延長部の周りで引き得る、延長部、
を備える、挿入器具;ならびに
少なくとも1対のレッグを有するファスナーであって、該レッグは、第一の開位置から第二の閉位置へと移動可能であり、該ファスナーは、少なくとも部分的に、形状記憶材料から形成されており、該レッグは、該形状記憶材料の活性化の際に、該第一の位置から該第二の位置へと移動する、ファスナー、
を備える、創傷閉鎖装置。
(項目10)
上記レッグの各々が弓形の形状を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の創傷閉鎖装置。
(項目11)
各レッグが挿入方向を規定する尖端を備える、上記項目のうちのいずれかに記載の創傷閉鎖装置。
(項目12)
外科手術用ファスナーを挿入して組織の開口部を閉鎖する方法であって、
挿入器具の遠位端に解放可能に固定された外科手術用ファスナーを備える挿入器具を提供する工程であって、該外科手術用ファスナーが、開構成を有し、そして閉鎖可能である、工程;
該挿入器具の遠位端を該開口部に挿入する工程;
該組織または該器具の遠位端のうちの少なくとも一方を、該器具の遠位端または該組織のうちの他方の方へと近接させる工程;
該外科手術用ファスナーのレッグが組織を係合するように、該挿入器具を該切開に通して近位に引き込む工程;
該外科手術用ファスナーを該組織の周りで閉鎖する工程;
該挿入器具を該外科手術用ファスナーから脱係合させる工程;ならびに
該挿入器具を該切開から引き抜く工程、
を包含する、方法。
(項目13)
上記組織に減圧を付与する工程をさらに包含する、上記項目に記載の方法。
(項目14)
上記外科手術用ファスナーが、形状記憶材料から少なくとも部分的に形成されており、そして上記ファスナーが、該形状記憶材料の活性化により閉鎖される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目15)
上記外科手術用ファスナーが1対のレッグを有し、そして上記方法が、上記挿入器具の遠位端を前記開後部に挿入した後に、該ファスナーを約90°回転させる工程をさらに包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0007】
(摘要)
組織の開口部を閉鎖するように構成された外科手術用ファスナーが提供される。この外科手術用ファスナーは、中心軸を規定するベースを備え、少なくとも1対のレッグが、このベースから延びている。これらのレッグの各々は、ベース部分および組織係合部分を備える。第一の位置にある場合に、これらの組織係合部分の各々は、挿入方向を規定するように配置され、そして第二の位置にある場合に、これらの組織係合部分の各々は、中心軸に向かって内向きに延びる。この外科手術用ファスナーは、少なくとも部分的に、形状記憶材料(ポリジオキサノンとポリ(L−ラクチド)との組み合わせ、またはトリメチレンカーボネートとポリ(L−ラクチド)との組み合わせが挙げられる)から形成される。このレッグの対は、この形状記憶材料の活性化の際に、第一の位置から第二の位置へと移動するように構成される。
【0008】
(要旨)
従って、組織の開口部を閉鎖するように構成された外科手術用ファスナーが提供される。この外科手術用ファスナーは、中心軸を規定するベースを備え、少なくとも1対のレッグが、このベースから延びている。これらのレッグの各々は、ベース部分および組織係合部分を備える。このファスナーが第一の位置にある場合に、これらの組織係合部分の各々は、挿入方向を規定するように配置され、そして第二の位置にある場合に、これらの組織係合部分の各々は、中心軸に向かって内向きに延びる。この外科手術用ファスナーは、少なくとも部分的に、形状記憶材料(ポリジオキサノンとポリ(L−ラクチド)との組み合わせ、またはトリメチレンカーボネートとポリ(L−ラクチド)との組み合わせが挙げられる)から形成される。このレッグの対は、この形状記憶材料の活性化の際に、第一の位置から第二の位置へと移動するように構成される。
【0009】
1つの実施形態において、この形状記憶材料は、15%のポリジオキサノンと85%のポリ(L−ラクチド)、20%のポリジオキサノンと80%のポリ(L−ラクチド)、15%のトリメチレンカーボネートと85%のポリ(L−ラクチド)、および20%のトリメチレンカーボネートと80%のポリ(L−ラクチド)のうちの1つを含有する。この形状記憶材料は、99%もの多くのラクチドコポリマーを含有し得ることが想定される。このファスナーは、熱の付与の際に、第一の位置から第二の位置へと変化し得る。挿入部材が、ベースと一体的に形成され得る。組織係合部分は、組織を係合するための棘を備え得る。ベースは、挿入器具と作動可能に係合するために構成された、開口部または突出部のうちの1つを備え得る。壊れやすい接続が、挿入部材とベースとの間に形成され得る。1つの実施形態において、このファスナーは、第二の対のレッグを備える。
【0010】
創傷閉鎖装置もまた提供される。この装置は、挿入器具を備え、この挿入器具は、細長シャフト、およびこの細長シャフトの遠位端から延びる延長部を有する。この延長部は、外科手術用ファスナーとの作動可能な係合のために構成された遠位端を備える。この延長部は、1つ以上の通気口を規定し、この通気口を通して、吸引が適用されて組織を周囲で引き得る。この装置は、少なくとも1対のレッグを有し、これらのレッグは、第一の開位置から第二の閉位置へと移動可能である。このファスナーは、少なくとも部分的に、形状記憶材料から形成される。これらのレッグは、この形状記憶材料の活性化の際に、第一の位置から第二の位置へと移動する。これらのレッグの各々は、弓形の形状を有し得る。各レッグは、挿入方向を規定する尖端を備え得る。
【0011】
さらに、外科手術用ファスナーを挿入して組織の開口部を閉鎖する方法が提供される。この方法は、挿入器具を提供する工程を包含し、この挿入器具は、その遠位端に解放可能に固定された外科手術用ファスナーを備える。この外科手術用ファスナーは、開構成を有し、そして閉鎖可能である。この方法は、この挿入器具の遠位端を開口部に挿入する工程、この組織をこの挿入器具の遠位端の方へと引く工程、この外科手術用ファスナーのレッグが組織を係合するように、この切開を通してこの挿入器具を近位に引き込む工程、この外科手術用ファスナーをこの組織の周りで閉じる工程、この挿入器具をこの外科手術用ファスナーから脱係合させる工程、およびこの挿入器具をこの切開から引き抜く工程をさらに包含する。
【0012】
1つの実施形態において、この方法は、減圧を組織に付与する工程を包含する。この外科手術用ファスナーは、少なくとも部分的に、形状記憶材料から形成され得、そしてこのファスナーは、この形状記憶材料の活性化により閉じられる。この外科手術用ファスナーは、1対のレッグを備え得る。この方法は、この挿入器具の遠位端を開口部に挿入した後に、このファスナーを約90°回転させる工程をさらに包含し得る。
【0013】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本開示の実施形態を説明し、そして上に与えられた本開示の一般的説明および以下に与えられる実施形態の詳細な説明と一緒になって、本開示の原理を説明する役に立つ。
【発明の効果】
【0014】
開口部の体腔側を閉鎖するために構成された、ファスナーおよびファスナー挿入器具を有すること。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、第一の位置または開位置にある、本開示によるステープルの1つの実施形態の斜視図である。
【図2】図2は、第二の位置または閉位置にある、図1のステープルの斜視図である。
【図3】図3は、第一の位置または開位置にある、本開示によるステープルの代替の実施形態の斜視図である。
【図4】図4は、第二の位置または閉位置にある、図3のステープルの斜視図である。
【図5】図5は、加熱流体の供給源および減圧源に作動可能に接続され、そして図3および図4のファスナーが取り付けられている、挿入器具の遠位部分の斜視図である。
【図6】図6〜図10は、図3および図4のファスナーを適用する工程の、進行的な部分断面側面図である。
【図7】図6〜図10は、図3および図4のファスナーを適用する工程の、進行的な部分断面側面図である。
【図8】図6〜図10は、図3および図4のファスナーを適用する工程の、進行的な部分断面側面図である。
【図9】図6〜図10は、図3および図4のファスナーを適用する工程の、進行的な部分断面側面図である。
【図10】図6〜図10は、図3および図4のファスナーを適用する工程の、進行的な部分断面側面図である。
【図11】図11は、第一の位置または開位置にある、本開示によるファスナーの別の実施形態の斜視図である。
【図12】図12は、第二の位置または閉位置にある、図11のファスナーの斜視図である。
【図13】図13は、第一の位置または開位置にある、本開示によるファスナーのなおさらに別の実施形態の斜視図である。
【図14】図14は、第二の位置または閉位置にある、図13のファスナーの斜視図である。
【図15】図15は、本開示によるファスナーのなお別の実施形態の上面図である。
【図16】図16は、挿入器具の代替の実施形態と作動可能に係合している、本開示によるファスナーの1つの実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示のファスナーの実施形態が、ここで図面を参照しながら詳細に説明される。図面において、同じ番号は、数枚の図の各々における同一の要素または対応する要素を表す。当該分野において一般的であるように、用語「近位」とは、使用者または操作者(すなわち、外科医または医師)に近い方の部品または構成要素をいい、一方で、用語「遠位」とは、使用者から遠い方の部品または構成要素をいう。本開示の実施形態は、組織を通って体腔内への切開を閉鎖する際の使用について記載されるが、本開示のファスナーおよびファスナー挿入器具は、切開以外の組織開口部(すなわち、裂傷、穿孔、または身体の他の領域)を閉鎖する際に使用するために改変され得る。
【0017】
最初に図1および図2を参照すると、本開示の1つの実施形態による形状記憶ファスナーが、一般にファスナー10として示されている。ファスナー10は、形状記憶材料から構成され、この形状記憶材料は、第一の温度(すなわち、室温)において第一の構成を規定し、そして第二の温度(すなわち、体温)において第二の構成を規定する。
【0018】
ファスナー10を形成するために利用される形状記憶ポリマー材料は、第一相および第二相を有する。第一相(図1)は、ファスナー10を患者の身体の組織に挿入することを容易にする構成である。第二相(図2)は、熱(例えば、身体の熱)の付与の際に呈され、組織内へのファスナー10の保持を容易にする構成である。以下でさらに詳細に議論されるように、ファスナー10のレッグ20および30は、整列した第一相(組織への挿入を容易にする)および湾曲した第二相(組織を係合して切開の側部を閉鎖するように構成される)を有する。
【0019】
本開示の外科手術用ファスナーにおいて利用され得る適切な形状記憶ポリマー材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリ(スチレン−ブタジエン)ブロックコポリマー、ポリノルボルネン、カプロラクトン、ジオキサノン、ジオールエステル(オリゴ(ε−カプロラクトン)ジオールが挙げられる)、乳酸、ラクチド、グリコール酸、グリコリド、エーテル−エステルジオール(オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールが挙げられる)、カーボネート(トリメチレンカーボネートが挙げられる)、これらの組み合わせなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、この形状記憶ポリマーは、異なる熱特性を有する2つの成分のコポリマーであり得る。
【0020】
他の実施形態において、生体吸収性材料のブレンドが利用され得、これらの材料としては、乳酸および/またはグリコール酸、これらのホモポリマーまたはコポリマーとブレンドされたウレタン、ならびにカプロラクトンとブレンドされたアクリレート(例えば、ポリカプロラクトンジメタクリレートポリ(アクリル酸ブチル)ブレンド)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
米国特許第5,324,307号(その内容は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載される数種の組成物は、形状記憶効果を示すことが見出されている。表1は、アニーリングされたワイヤ形態の各系のブロックコポリマー、提唱されるソフトセグメントおよびハードセグメント、ならびにガラス転移温度(Tg)(示差走査熱量測定法により測定され、TTransに等しい)を示す。列挙される材料は、最大85%のラクチドコポリマーを含有するが、この材料は、99%もの多くのラクチドコポリマーを含有し得るので、依然として、形状記憶特徴を示すことが予測される。
【0022】
【表1】
以下に提供される予備的なデータは、Tgに近付く場合に表1のポリマー系が部分的な形状シフトを起こすこと、およびこれらの材料が水溶液中にある場合にTTransが低下することを示唆する。これらのポリマーは、水の吸収および塊の加水分解によって分解することが公知であるので、これらのポリマーマトリックスに侵入する水分子は、可塑剤として働き、乾燥空気中においてよりも低い温度で、ソフトセグメントを軟化させることが提唱される。水溶液中でTTransの低下を示すポリマーは、移植物デバイスとして特に有利である。なぜなら、搬送中および貯蔵中に、乾燥状態において、温度の逸脱によるデバイスの二次形状を維持することを可能にし、依然として、移植の際に体温でのシフトを可能にするはずだからである。
【0023】
種々の合成方法および加工方法を使用して、TTransを調整し得る(ブロックセグメントのモル比、ポリマーの分子量、およびハードセグメント形成のための時間の変更が挙げられる)。TTransはまた、ソフトセグメントドメイン材料の様々な量の低分子量オリゴマーを、親コポリマーにブレンドすることによって、調整され得る。このようなオリゴマーは、ソフトドメインに対する可塑剤として働き、そしてTTransの下方シフトを引き起こすことが仮定される。TTransが重合反応パラメータを調整することによって制御される、文献にしばしば記載されるアプローチとは異なり、TTransは、ブレンド方法を使用して、再現可能かつ正確に、容易に制御され得る。さらに、可塑剤としてのトリメチレンカーボネート(TMC)の使用は、自己強化デバイスの利点を提供し得、これは、移植後により強く、より硬くなる。なぜなら、TMCモノマーおよび低分子量TMCオリゴマーが、水性環境中に容易に拡散するからである。
【0024】
いくつかの実施形態において、成形プロセスが、ファスナー10を製造するために利用される。プラスチック成形方法は、当業者の知識の範囲内であり、そして溶融成形、溶液成形などが挙げられるが、これらに限定されない。射出成形、押し出し成形、圧縮成形および他の方法もまた、溶融成形技術として使用され得る。
【0025】
図1および図2をなお参照すると、ファスナー10は、ベース12、ならびにベース12から延びる1対のレッグ20および30を備える。ファスナー10は、このファスナーを通って延びる中心軸「X」を規定し、この中心軸はまた、挿入方向「A」を規定する(図1)。以下でさらに詳細に議論されるように、ベース12は、挿入器具との作動可能な係合のために構成された、開口部または移動止め13を備える。図1に示されるものにおいては、ファスナー10は2つのレッグを備えるが、ファスナー10は、2より多いかまたは2つより少ないレッグ(例えば、4つのレッグ(図3)または6つのレッグ(図11))を有してもよいことが想定される。レッグ20、30の各々は、それぞれ、ベース部分22、32、接続部分24、34、および組織係合部分26、36を備える。ベース部分22、32は、同じ長さであっても異なる長さであってもよく、そしてファスナー10が患者の体腔内に切開またはカニューレを通して挿入され得るように構成される。接続部分24、34は、同じ長さであっても異なる長さであってもよく、そしてファスナー10が組織に受容される場合に、それぞれのレッグ20、30の組織係合部分26、36が組織を完全に通っては延びないように構成される。代替の実施形態において、接続部分24、34は、組織係合部分26、36が、第一の位置または開位置において、組織を完全に通って延びるように構成される。組織係合部分26、36は、示されるような拡大棘付きヘッドを備え得るか、または組織を穿孔および/もしくは係合するために他の様式で適切に構成され得る。いくつかの実施形態において、組織係合部分26、36は、少なくとも挿入方向にわずかに、テーパ状であり、湾曲しており、角度が付いており、そして/または尖っており、組織へのファスナー10の挿入を容易にする。
【0026】
図1を参照すると、第一相において、ファスナー10は、組織への挿入のために構成された第一の位置または開位置を有する。この第一の位置または開位置において、それぞれのレッグ20、30の組織係合部分26、36は、中心軸「X」に対して実質的に平行に維持される。この様式で、それぞれのレッグ20、30の接続部分24、34は、それぞれベース部分22、32に対して、それぞれ角度α2、α3を規定する。1つの実施形態において、示されるように、角度α2、α3は、90°の角度を規定する。角度α2、α3は、示されるように各々同じであり得るか、またはその代わりに、角度α2とα3とは異なり得る。1つの実施形態において、レッグ20、30のそれぞれのベース部分22、32および接続部分24、34は、湾曲した部材を形成する。
【0027】
ここで図2を参照すると、第二相において、ファスナー10は、組織を係合して保持するために構成された、第二の位置または閉位置を有する。この閉位置において、それぞれのレッグ20、30の組織係合部分26、36は、半径方向内向きに延びる。1つの実施形態において、組織係合部分26、36は、中心軸「X」に対して実質的に垂直に維持される。あるいは、組織係合部分26、36は、ベース12に向かって、半径方向内向きに下向きに延び得る。それぞれのレッグ20、30のベース部分22、32および接続部分24、34の各々は、湾曲した構造を維持して、間にそれぞれ角度δ2、δ3を規定する。角度δ2、δ3は示されるように同じであり得るか、またはその代わりに、角度δ2とδ3とは異なり得る。他の実施形態において、レッグ20、30は、互いに実質的に平行であり、例えば、このファスナーは、実質的に「H」字型の構成を有し得る(図15)。
【0028】
図1および図2を参照すると、第一相または第二相のいずれかにおいて、レッグ20、30のベース部分22、32は、間に角度β2、β3を規定する。1つの実施形態において、示されるように、角度β2、β3は、180°の角度を規定する。角度β2、β3は、示されるように、各々同じであり得るか、またはその代わりに、角度β2とβ3とは異なり得る。
【0029】
ここで図3および図4を参照すると、ファスナー110は、本明細書中で上に記載されたファスナー10と実質的に類似である。ファスナー110は、ベース112、およびベース112から延びる2対のレッグ120、130、140、150を備える。ファスナー110は、このファスナーを通って延びる中心軸「X」を規定し、この中心軸はまた、挿入方向「A」を規定する。ベース112は、挿入器具との作動可能な係合のために構成された、開口部または移動止め113を備える。レッグ120、130、140、150の各々は、それぞれ、ベース部分122、132、142、152、接続部分124、134、144、154、および組織係合部分126、136、146、156を備える。ベース部分122、132、142、152は、同じ長さであっても異なる長さであってもよく、そしてファスナー110が患者の体腔内に切開またはカニューレを通して挿入され得るように構成される。接続部分124、134、144、154は、同じ長さであっても異なる長さであってもよく、そしてファスナー110が組織に受容される場合に、それぞれのレッグ120、130、140、150の組織係合部分126、136、146、156が組織を完全に通っては延びないように構成される。代替の実施形態において、接続部分124、134、144、154は、組織係合部分126、136、146、156が、第一の位置または開位置において、組織を完全に通って延びるように構成される。
【0030】
ファスナー10に関して上で議論されたように、第一相において、ファスナー110は、組織への挿入のために構成された第一の位置または開位置を有する(図3)。この第一の位置または開位置において、それぞれのレッグ120、130、140、150の組織係合部分126、136、146、156は、中心軸「X」に対して平行に維持される。第二相において、ファスナー110は、組織を係合して保持するために構成された、第二の位置または閉位置を有する(図4)。この閉位置において、それぞれのレッグ120、130、140、150の組織係合部分126、136、146、156は、半径方向内向きに延びる。1つの実施形態において、組織係合部分126、136、146、156は、中心軸「X」に対して実質的に垂直に維持される。あるいは、組織係合部分126、136、146、156は、ベース112に向かって、半径方向内向きに下向きに延び得る。
【0031】
ここで図5を参照すると、ファスナー110が、挿入器具60に作動可能に接続されて示されている。挿入器具60は、細長シャフト62を備え、この細長シャフトから延長部64が作動可能に延びている。延長部64は、示されるようにテーパ状であり得るか、または円筒形、実質的に平坦、もしくは切開を通しての挿入のために他の様式の構成であり得る。延長部64は、細長シャフト62と一体的に形成され得るか、しっかりと接続されるか、または解放可能に接続され得る。テーパ状の延長部64は、ファスナー110との作動可能な係合のために構成された遠位端64bを備える。示されるように、テーパ状端部64の遠位端64bは、ファスナー110と一体的に形成され、そして所定の時間において(すなわち、ファスナー110の開位置から閉位置への変形の際に)ファスナー110から外れるように構成される。あるいは、ファスナー110は、開口部113(図3)を備え、この開口部を通して、ファスナー110が挿入器具60によって選択的に係合される。この様式で、ファスナー110は、使用者の動作によって、挿入器具60から解放される。ファスナー110と遠位端64bとの間の取り付け点は、壊れやすい接続であり得ることが想定される。
【0032】
図5をなお参照すると、テーパ状の延長部64は、1つ以上の通気口65を備える。通気口65は、吸引源70に作動可能に接続される。以下でさらに詳細に議論されるように、吸引は、吸引源70から通気口65を通して提供されて、切開「I」(図6)の両側をテーパ状の延長部64の周りに引く。テーパ状の延長部64は、遠位端64bの近くに形成された開口部67をさらに備え得、この開口部は、加熱流体の供給源80に作動可能に接続される。以下でまたさらに詳細に議論されるように、テーパ状の延長部64の開口部67を通しての加熱流体(図示せず)の排出は、ファスナー110をこの加熱流体に浸け、これによって、ファスナー110を開位置から閉位置へと変形させる。代替の実施形態において、ファスナー110は、中空の構成を有し、これを通って加熱流体が流れ、ファスナー110の変形を引き起こす。なお別の実施形態において、ファスナー110は、ファスナー110を加熱し得る誘導コアを備え得る。この様式で、加熱流体源80は、電気エネルギー源で置き換えられ、そして電気エネルギーがこの誘導コアに提供されて、ファスナー110を加熱し、これによって、第一の位置から第二の位置へのファスナー110の変形を引き起こす。あるいは、ファスナー110は、赤外光、化学薬剤、熱または他の適切な活性化因子の適用の際に変形するように構成され得る。
【0033】
ここで図6〜図10を参照して、ファスナー110を使用して切開「I」を閉鎖する方法が詳細に記載される。アクセスアセンブリの受容のために作製された切開に関連して示されるが、本開示の局面は、体腔内へのほとんどの切開を閉鎖するように適合され得る。最初に図6を参照すると、ファスナー110は、挿入器具60のテーパ状の延長部64の遠位端64bに作動可能に受容される。上で議論されたように、ファスナー110は、テーパ状の延長部64と一体的に形成され得るか、またはテーパ状の延長部64に他の様式で機械的に固定され得る。挿入器具60を使用して適用されるように示されているが、他の器具および/または方法を使用してファスナー110を適用し得ることが理解されるべきである。さらに、挿入器具60は、他のファスナー(すなわち、ファスナー10)を適用するために使用され得る。ファスナー110は、患者の組織「T」の切開「I」を通して挿入されたカニューレまたはスリーブ「S」を通して、矢印「A」により示されるように受容されるように構成される。代替の実施形態において、ファスナー110および器具60は、互いに独立して体腔に挿入され、引き続いて、体腔内で一緒に固定される。一旦、ファスナー110がスリーブ「S」を通して挿入されて患者の体腔内に受容されたら(図6)、スリーブ「S」は、矢印「B」により示されるように、組織「T」から取り除かれる。この様式で、組織「T」は、細長シャフト62およびテーパ状の延長部64の周りですぼまる(図7)。組織「T」は、テーパ状の延長部64に形成された開口部65を通して吸引源70(図5)から提供される吸引によって、テーパ状の延長部64の周りにさらに引かれる。
【0034】
ここで図8を参照すると、一旦、組織「T」が挿入器具60のテーパ状の延長部64の周りに引かれると、挿入器具60は、矢印「C」により示されるように組織「T」を通して近位に引かれ、これによって、ファスナー110の組織係合部分126、136、146、156を、切開「I」の周りで組織「T」内に受容させる。挿入器具60のさらなる引き込みは、組織係合部分126、136、146、156と組織「T」との間の引き続く係合を引き起こす。1つの実施形態において、一旦、ファスナー110のレッグ120、130、140、150が組織「T」と完全に係合したら、組織「T」により提供される熱が、ファスナー110を開位置から閉位置へと変形させ得る。あるいは、組織「T」は、通常の体温より高い温度に一時的に加熱されて、ファスナー110の変形を引き起こし得る。この様式で、組織「T」は、Tg(体温より高温)まで加熱されて、ファスナー110を変形させる。ポリマーは、Tgより高温においてより柔軟に、より可撓性になるので、Tgを体温より高くすることによって、一旦、組織「T」が体温まで冷却すると、ファスナー110は、より堅く、より強くなる。別の実施形態において、加熱流体が、延長部64の開口部67を通して提供されて、ファスナー110をこの加熱流体に浸け得、これによって、ファスナー110を変形させる。なお別の実施形態において、この加熱流体は、ファスナー110の中空部分(図示せず)内、および/またはこの中空部分を通して方向付けられて、このファスナーの変形を引き起こす。なおさらに別の実施形態において、電気エネルギーの供給源が作動されて、ファスナー110内の熱誘導コア(図示せず)にエネルギーを供給し、この熱誘導コアの加熱、および従って、ファスナー110の変形を引き起こし得る。
【0035】
図9を参照すると、開位置から閉位置へのファスナー110の変形前または変形中に、挿入器具60のテーパ状の延長部64が、ファスナー110から分離される。上で議論されたように、テーパ状の延長部64は、剥離接続(break−away connection)によってファスナー110に接続され得、この接続は、ファスナー110の変形中に破壊される。あるいは、挿入器具60は、この挿入器具からファスナー110を解放するための解放機構(図示せず)を備える。テーパ状の延長部64からのファスナー110の解放の際に、挿入器具60は、切開「I」から完全に取り除かれる。
【0036】
ここで図10を参照すると、閉位置において、ファスナー110は、切開「I」の内側または腹側の周りで、組織「T」をしっかりと係合し、これによって、切開「I」を閉鎖する。切開「I」の外側は、従来の様式で閉鎖され得る。あるいは、この挿入器具は、創傷閉鎖材料を分配するように構成され得る(例えば、創傷閉鎖材料が分散開口部分に運ばれるように通路を備えることによって)。米国特許第7,717,313号および同第7,455,682号(これらの全開示は、本明細書中に参考として援用される)の創傷閉鎖材料が使用され得る。上で議論されたように、ファスナー110は、その代わりに、組織「T」を完全に通って延びるように構成され得、この場合には、切開「I」の外側の閉鎖は必要ではないかもしれない。1つ以上のさらなるファスナー110が、上記様式で組織「T」に適用され得る。
【0037】
図11および図12を参照すると、本開示による形状記憶ファスナーの代替の実施形態が、一般にファスナー210として示されている。ファスナー210は、本明細書中で上に記載されたファスナー10、110と実質的に類似であるので、これらの間の違いに関してのみが記載される。ファスナー210は、組織に形成された切開をよりしっかりと閉鎖するために、6つのレッグ220、230、240、250、260、270を備える。レッグ220、230、240、250、260、270のそれぞれの組織係合部分226、236、246、256、266、276は、組織への挿入を容易にするために、テーパ状であるかまたは尖っている。
【0038】
図13および図14を参照すると、本開示による形状記憶ファスナーのなお別の実施形態が、一般にファスナー310として示されている。ファスナー310は、本明細書中で上に記載されたファスナー10、110、210と実質的に類似である。ファスナー310は、第一の対のレッグ320および第二の対のレッグ340を備える。第一の対のレッグ320および第二の対のレッグ340の各々は、異なる長さである。示されるように、各対のレッグ320、340は、閉位置において異なる構成を呈する(図14)。この様式で、ファスナー310は、組織をよりしっかりと係合するように構成される。
【0039】
本開示の例示的な実施形態が、添付の図面を参照しながら本明細書中に記載されたが、本開示は、これらの正確な実施形態に限定されないこと、ならびに他の種々の変更および改変が、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく当業者によりなされ得ることが、理解されるべきである。例えば、ファスナー10は、レッグ120、130を閉じた第一の位置にし、所定の温度未満に冷却されると開いた第二の位置を呈するような材料から形成され得る。この様式で、ファスナー110は、冷却された第二の位置にある場合に組織「T」に挿入され、そして高温の身体「T」との係合の際に、ファスナー110は、閉じた第一の位置に戻る。別の実施形態において、ファスナー10は、皮膚、筋肉層などを閉鎖するために、外側から組織内に押されるように構成される(図16)。
【符号の説明】
【0040】
10 ファスナー
12 ベース
20、30 レッグ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を規定するベース;
該ベースから延びる少なくとも1対のレッグであって、該レッグの各々が、ベース部分および組織係合部分を備え、第一の位置において、該組織係合部分の各々は、挿入方向を規定するように配置され、そして第二の位置において、該組織係合部分の各々は、該中心軸に向かって内向きに延びる、レッグ、
を備える、外科手術用ファスナーであって、該外科手術用ファスナーは、少なくとも部分的に、ポリジオキサノンとポリ(L−ラクチド)との組み合わせ、またはトリメチレンカーボネートとポリ(L−ラクチド)との組み合わせが挙げられる形状記憶材料から形成されており、そして該レッグの対は、該形状記憶材料の活性化の際に、該第一の位置から該第二の位置へと移動するように構成されている、外科手術用ファスナー。
【請求項2】
前記形状記憶材料が、15%のポリジオキサノンと85%のポリ(L−ラクチド);20%のポリジオキサノンと80%のポリ(L−ラクチド);15%のトリメチレンカーボネートと85%のポリ(L−ラクチド);または20%のトリメチレンカーボネートと80%のポリ(L−ラクチド)からなる、請求項1に記載のファスナー。
【請求項3】
前記ファスナーが、熱の付与の際に前記第一の位置から前記第二の位置へと変化する、請求項1に記載のファスナー。
【請求項4】
挿入部材が、前記ベースと一体的に形成されている、請求項1に記載のファスナー。
【請求項5】
前記組織係合部分が、組織を係合するための棘を備える、請求項1に記載のファスナー。
【請求項6】
前記ベースが、挿入器具との作動可能な係合のために構成された、開口部または突出部のうちの1つを備える、請求項1に記載のファスナー。
【請求項7】
壊れやすい接続が、挿入部材と前記ベースとの間に形成される、請求項1に記載のファスナー。
【請求項8】
第二の対のレッグをさらに備える、請求項1に記載のファスナー。
【請求項9】
挿入器具であって、
細長シャフト;および
該細長シャフトの遠位端から延びる延長部であって、該延長部は、ファスナーとの作動可能な係合のために構成された遠位端を備え、該延長部は、1つ以上の通気口を規定し、該通気口を通して、吸引が提供されて組織を該延長部の周りで引き得る、延長部、
を備える、挿入器具;ならびに
少なくとも1対のレッグを有するファスナーであって、該レッグは、第一の開位置から第二の閉位置へと移動可能であり、該ファスナーは、少なくとも部分的に、形状記憶材料から形成されており、該レッグは、該形状記憶材料の活性化の際に、該第一の位置から該第二の位置へと移動する、ファスナー、
を備える、創傷閉鎖装置。
【請求項1】
中心軸を規定するベース;
該ベースから延びる少なくとも1対のレッグであって、該レッグの各々が、ベース部分および組織係合部分を備え、第一の位置において、該組織係合部分の各々は、挿入方向を規定するように配置され、そして第二の位置において、該組織係合部分の各々は、該中心軸に向かって内向きに延びる、レッグ、
を備える、外科手術用ファスナーであって、該外科手術用ファスナーは、少なくとも部分的に、ポリジオキサノンとポリ(L−ラクチド)との組み合わせ、またはトリメチレンカーボネートとポリ(L−ラクチド)との組み合わせが挙げられる形状記憶材料から形成されており、そして該レッグの対は、該形状記憶材料の活性化の際に、該第一の位置から該第二の位置へと移動するように構成されている、外科手術用ファスナー。
【請求項2】
前記形状記憶材料が、15%のポリジオキサノンと85%のポリ(L−ラクチド);20%のポリジオキサノンと80%のポリ(L−ラクチド);15%のトリメチレンカーボネートと85%のポリ(L−ラクチド);または20%のトリメチレンカーボネートと80%のポリ(L−ラクチド)からなる、請求項1に記載のファスナー。
【請求項3】
前記ファスナーが、熱の付与の際に前記第一の位置から前記第二の位置へと変化する、請求項1に記載のファスナー。
【請求項4】
挿入部材が、前記ベースと一体的に形成されている、請求項1に記載のファスナー。
【請求項5】
前記組織係合部分が、組織を係合するための棘を備える、請求項1に記載のファスナー。
【請求項6】
前記ベースが、挿入器具との作動可能な係合のために構成された、開口部または突出部のうちの1つを備える、請求項1に記載のファスナー。
【請求項7】
壊れやすい接続が、挿入部材と前記ベースとの間に形成される、請求項1に記載のファスナー。
【請求項8】
第二の対のレッグをさらに備える、請求項1に記載のファスナー。
【請求項9】
挿入器具であって、
細長シャフト;および
該細長シャフトの遠位端から延びる延長部であって、該延長部は、ファスナーとの作動可能な係合のために構成された遠位端を備え、該延長部は、1つ以上の通気口を規定し、該通気口を通して、吸引が提供されて組織を該延長部の周りで引き得る、延長部、
を備える、挿入器具;ならびに
少なくとも1対のレッグを有するファスナーであって、該レッグは、第一の開位置から第二の閉位置へと移動可能であり、該ファスナーは、少なくとも部分的に、形状記憶材料から形成されており、該レッグは、該形状記憶材料の活性化の際に、該第一の位置から該第二の位置へと移動する、ファスナー、
を備える、創傷閉鎖装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−78790(P2011−78790A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229072(P2010−229072)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】
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