説明

彩色された木の葉模様を焼き付けた陶磁器及びその製造方法

【目的】遷移金属イオン特有の色を呈する木の葉模様が浮き出る新しい加飾技術を開発し、趣味の製作意欲等のニーズに応えることを課題としている。

【構成】葉脈化した木の葉を各種遷移金属によりメッキしたものを釉薬上にのせて焼成することにより、焼成中に木の葉が燃えたり、変形したりすることを防ぐとともに、透明釉を用いることにより、遷移金属イオン特有の色を呈する木の葉模様が浮き出る新しい加飾技術を開発した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、彩色された木の葉模様を焼き付けた陶磁器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天目茶碗の1つに、自然の木の葉が焼き付いた「木の葉天目」という焼き物がある。木の葉天目は、黒色の天目釉の上に白色の木の葉模様が浮き出た茶碗の銘品で、中国宋代に作製されたものが伝わり、陶芸の世界ではこれを再現させることが試みられてきた。その製造技術は、偶然性を期待して、天然の葉を陶磁器に置くだけで本焼きをする方法であり、いまだ陶芸家個人のノウハウの固まりと言ってよく、誰にでも簡単にできる技術とはなっていない。
【0003】
従来、特許文献1に上記問題を解決するために、葉脈化した木の葉に水ガラスを付着させるとともに、銀メッキを施すことを行うものが開示されている。
【特許文献1】特開2002−167260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の製造方法は、黒色の天目釉に白色の木の葉模様を浮き出させる技術に関したもので色調に限界があるという問題点があった。
天目茶碗は、焼成中に、窯の中の熱の対流や木の葉の水分などが影響して、移動、離脱、縮み、曲が生じるため、意図的に確実に焼き付けることが困難で、歩留まりが悪く、稀で高価な製品となっている。また、陶芸家は黒色の天目釉に白色の木の葉模様が浮き出たものにこだわり、欅、椋などの特定の植物に限って使用されているので、その成分による色調に限界がある。これらの欠点のため、きれいな木の葉模様が現れた茶碗を製造することは難しく、趣味の陶芸家の興味関心や制作意欲のニーズに応えられていないなどの問題を有していた。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、遷移金属イオン特有の色を呈する木の葉模様が浮き出る新しい加飾技術を開発し、趣味の製作意欲等のニーズに応えることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の陶磁器は、各種遷移金属によってメッキした葉脈が、陶磁器の釉薬上にのせられて焼成され、その金属イオンの色を呈した木の葉の模様を発現していることを特徴とする。
第1発明の陶磁器は、次のように作製される。木の葉をアルカリで煮ることにより葉脈化を行い、市販の無電界メッキ溶液に浸漬することにより葉脈に金属メッキを行う。金属メッキにより葉脈が強化され、これを陶磁器の釉薬上にのせて該当する原料及び釉薬の焼成温度にて焼成を行うことにより陶磁器にそれらの金属イオンの色を呈した木の葉の模様が再現性よく発現する。葉脈化した木の葉を各種遷移金属によりメッキしたものを釉薬上にのせて焼成することにより、焼成中に木の葉が燃えたり、変形したりすることを防ぐとともに、透明釉を用いることにより、遷移金属イオン特有の色を呈する木の葉模様が浮き出る新しい加飾技術として開発し、趣味の製作意欲等のニーズに応えるものである。
木の葉の種類によらず、どんな木の葉でも用いることができる(図1)。
第2発明の陶磁器は、第1発明の陶磁器においてクロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、及び銅の少なくとも一種を各種遷移金属によってメッキした葉脈が、陶磁器の釉薬上にのせられて焼成され、その金属イオンの色を呈した木の葉の模様を発現していることを特徴とする(図2、図3)。
第3発明の陶磁器の製造方法は、葉脈化した木の葉に遷移金属でメッキを施す工程と、メッキした葉脈を陶磁器の釉薬上にのせて焼成する工程とを備え、メッキした金属を釉薬ガラスと反応させ、彩色された木の葉模様を陶磁器に焼き付けることを特徴とする(図4)。
木の葉の葉脈化及び木の葉に遷移金属でメッキを施す工程は、上記第1発明で述べたとおり木の葉をアルカリで煮ることにより葉脈化を行い、市販の無電界メッキ溶液に浸漬することにより葉脈に金属メッキを施すことにより行う。メッキした葉脈を陶磁器の釉薬上にのせて焼成する工程も上記第1発明で述べたように行い、該当する原料及び釉薬の焼成温度にて焼成を行うことにより、メッキした金属を釉薬ガラスと反応させ、彩色された木の葉模様が再現性よく陶磁器に焼き付けられる。
第4発明の陶磁器の製造方法は、第3発明の製造方法において葉脈化した木の葉に遷移金属でメッキを施す工程においてクロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、及び銅の少なくとも一種のメッキを施すことを特徴とする(図1)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施例を図に基づいて説明するが、もとより本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0008】
図1及び図4は、本発明に係る陶磁器の作製方法を示している。木の葉をアルカリで煮ることにより葉脈化を行い、市販の無電界メッキ溶液に浸漬することにより葉脈に銅、コバルト、ニッケル等の金属メッキを行う。金属メッキにより葉脈が強化され、これを陶磁器の釉薬上にのせて1250℃で24時間焼成を行うことにより陶磁器にそれらの金属イオンの色を呈した木の葉の模様が再現性よく発現した。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る陶磁器の作製方法を示した説明図である。
【図2】各種遷移金属によってメッキした各種木の葉の葉脈を用いた本発明に係る陶磁器の木の葉の模様を示した図である。
【図3】木の葉釉作品例を示す図である。
【図4】本発明に係る陶磁器の製造方法の行程を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種遷移金属によってメッキした葉脈が、陶磁器の釉薬上にのせられて焼成され、その金属イオンの色を呈した木の葉の模様を発現していることを特徴とする陶磁器。
【請求項2】
遷移金属として、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、及び銅の少なくとも一種を用いたことを特徴とする請求項1の陶磁器。
【請求項3】
葉脈化した木の葉に遷移金属でメッキを施す工程と、メッキした葉脈を陶磁器の釉薬上にのせて焼成する工程とを備え、メッキした金属を釉薬ガラスと反応させ、彩色された木の葉模様を陶磁器に焼き付けることを特徴とする陶磁器の製造方法。
【請求項4】
遷移金属として、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅の少なくとも一種を用いたことを特徴とする請求項3の陶磁器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−240903(P2006−240903A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56785(P2005−56785)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)