説明

徐放性土壌病害防除剤

【課題】 土壌混和処理等によって土壌に添加でき、植物生育阻害活性が低く且つ青枯病や放線菌病などの難防除土壌病害を効果的に防除できる徐放性土壌病害防除剤を提供する。
【解決手段】 エチレン―酢ビ樹脂エマルションなどの接着性化合物の水溶液を没食子酸エチルなどの式(I)で表される化合物に加えて、乳鉢で混練し、さらにこれにシリカなどの無機微粒子を加えて、混練し、これを乾燥させて、乳鉢で解砕して粉粒状の徐放性土壌病害防除剤を得た。


(式(I)中、RはC1〜6アルキル基または水素原子を示す。nは水酸基の置換数を示し、2〜5の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徐放性土壌病害防除剤に関する。より詳細に、本発明は、土壌混和処理等によって土壌に添加でき、植物生育阻害活性が低く且つ青枯病や植物放線菌病などの難防除土壌病害を効果的に防除できる徐放性土壌病害防除剤に関する。
【背景技術】
【0002】
青枯病は、トマト、タバコ、ナス、ピーマン、ジャガイモ、トウガラシなどの茄子科植物などにおいて、多く発生する。青枯病原菌に感染すると、先ず先端葉がしおれ、その後、植物全体が急速に萎縮し、最終的に枯死する。青枯病が発生した土壌では、土壌消毒剤や太陽熱等による土壌消毒を実施しても、青枯病原菌の根絶は難しい。青枯病原菌は地中深くに何年も生残し、適当な宿主植物が植えられると再び青枯病を発生する。
【0003】
放線菌は堆肥製造に用いられるなど植物に無害な場合が多い。ところが、難防除土壌病害の一つであるそうか病と呼ばれる病害を引き起こす放線菌がある。そうか病はジャガイモなどで発症する。
その他に、土壌伝染性植物ウイルス病(線虫媒介のウイルス病、菌媒介のウイルス病など)、土壌伝染性植物細菌病(根こぶ病など)、Aphanomyces属菌病、Phytophthora属菌病、Phythium属菌病、Cylindrocladium属菌病、Fusarium属菌病、Macrophomina phaseolinaによる病害、Rhizoctonia属菌病、Verticillium属菌病、Rosellinia necatrixによる自紋羽病、ならたけ病、Heterobasidion annosumによる根株心腐病などの土壌病害があり、これらに対する新規な防除剤の開発が要望されている。
【0004】
没食子酸エステルを含有する製剤を、抗癌剤、健康食品製剤、医薬部外品製剤(ドリンク剤、石鹸、歯磨き粉など)に利用することが特許文献1に提案されており、木質資材加害節足動物防除剤に利用することが特許文献2に提案されており、シロアリ防除用ベイト剤に利用することが特許文献3に提案されている。このように没食子酸エステルなどのヒドロキシ安息香酸またはそのアルキルエステルに抗菌活性があることは知られていた。
非特許文献1は、アメリカフウロの乾燥物や生草を土壌に混和すると青枯病や植物放線菌病の防除に有効であったことを報告している。ところが、アメルカフウロに含有されるポリフェノールの一種である没食子酸エチルを抽出し、それを土壌に混和したが十分な抗菌活性が得られず、青枯病や植物放線菌病の防除効果が認められなかったと報告している。この非特許文献1の報告では、没食子酸エチルは、土壌中で吸着反応または変換反応を起して不活性化するのであろうと推察している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−281164号公報
【特許文献2】特開2006−45219号公報
【特許文献3】特開2006−22041号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】大城篤「植物と微生物の生物機能を利用した土壌病害防除技術に関する研究」沖縄県農業研究センター研究報告 2: 30−80(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、土壌混和処理等によって土壌に添加でき、植物生育阻害活性が低く且つ青枯病や植物放線菌病などの難防除土壌病害を効果的に防除できる徐放性土壌病害防除剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のように、抗菌活性があるといわれる没食子酸エステルでは、土壌病害の効果的な防除は難しいと考えられていた。
ところが、本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、式(I)で表される化合物を徐放化して成る徐放性土壌病害防除剤を土壌に混和すると、青枯病や植物放線菌病などの難防除土壌病害を効果的に防除できることを見出した。本発明はこの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を含むものである。
〈1〉 式(I)で表される化合物を含有する徐放性土壌病害防除剤。
【0010】

(式(I)中、RはC1〜6アルキル基または水素原子を示す。nは水酸基の置換数を示し、2〜5の整数である。)
〈2〉 接着性化合物をさらに含有する前記〈1〉に記載の徐放性土壌病害防除剤。
〈3〉 無機微粒子をさらに含有する前記〈1〉または〈2〉に記載の徐放性土壌病害防除剤。
【0011】
〈4〉 前記〈1〉〜〈3〉のいずれか1項に記載の徐放性土壌病害防除剤を土壌に混和することを含む、土壌病害の防除方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る徐放性土壌病害防除剤は、これを土壌に混和すると、土壌中の病原菌を殺滅することができる。その結果、土壌病害の発生を効果的に防止できる。特に、難防除土壌病害と言われる青枯病や放線菌病などの防除に高い効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る徐放性土壌病害防除剤は、式(I)で表される化合物を含有するものである。
式(I)中、RはC1〜6アルキル基または水素原子を示す。
C1〜6アルキル基は、1〜6個の炭素原子を有する飽和脂肪族炭化水素基である。C1〜6アルキル基は、直鎖であってもよいし、分岐鎖であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基等を挙げることができる。
【0014】
C1〜6アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基となり得る基としては、ニトロ基;塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基;フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2−クロロエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロポキシ基等のハロアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基;フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基等のアリールチオ基;アミノ基、シアノ基等を例示することができる。
式(I)中、nは水酸基の置換数を示し、2〜5の整数である。
【0015】
式(I)で表される化合物の具体例としては、3,5−ジヒドロキシ安息香酸およびそれのアルキルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸およびそれのアルキルエステル、2,6−ジヒドロキシ安息香酸およびそれのアルキルエステル、2,3−ジヒドロキシ安息香酸およびそれのアルキルエステル、2,4−ジヒドロキシ安息香酸およびそれのアルキルエステル;3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸およびそれのアルキルエステル、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸およびそれのアルキルエステル、2,3,4‐トリヒドロキシ安息香酸およびそれのアルキルエステル、2,4,5−トリヒドロキシ安息香酸およびそれのアルキルエステル、2,3,5−トリヒドロキシ安息香酸およびそれのアルキルエステル、2,3,6−トリヒドロキシ安息香酸およびそれのアルキルエステルなどが挙げられる。これらのうち、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸およびそれのアルキルエステルが好ましい。
徐放性土壌病害防除剤にする際には、式(I)で表される化合物を、体積平均粒径が、好ましくは100nm〜1000μm、より好ましくは500nm〜300μmの粉末で供することができる。
本発明の徐放性土壌病害防除剤における式(I)で表される化合物の量は、通常、防除剤全体に対して、好ましくは0.01〜90重量%、より好ましくは0.05〜85重量%である。
【0016】
本発明に係る徐放性土壌病害防除剤は、式(1)で表される化合物を用いて、公知の徐放化技術によって製造することができる。
徐放化技術としては、大粒化法、マトリックス法、毛細管現象法、放出制御膜法、マイクロカプセル法、薄膜コーティング法、フィルム法、チューブ法、多孔質膜法、シクロデキストリン法、リポソーム、化学的溶解速度低下法、蒸発速度の低下法、ドラッグデリバリーシステムなどが挙げられる。
【0017】
本発明に係る徐放性土壌病害防除剤は、無機微粒子または/および接着性化合物を用いて徐放化してなるものが好ましい。
【0018】
本発明に係る徐放性土壌病害防除剤に用いられる接着性化合物は、乾燥状態において撥水性を示す化合物である。
接着性化合物としては、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、オゾケライトワックス、セレシンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、石油ワックス、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸メチル重合体などが挙げられる。これらのうち、ポリビニルアルコール、メタクリル酸メチル重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、石油ワックスが好ましい。市販品としては、日本合成化学工業社製の「モビニール」若しくは「ゴーセノール」、根上工業社製の「ハイパール」、日本精鑞社製の「Luvax」、またはサートマージャパン社製の「SMA」が挙げられる。
接着性化合物の含有量は、式(I)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは5〜500質量部、より好ましくは10〜350質量部である。
【0019】
本発明に係る徐放性土壌病害防除剤に用いられる無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、フェライト、シリカチタニア、活性炭、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、硫酸バリウム、珪藻土、ベントナイト、パーライト、燐灰石、石こう、タルク、パイロフィライト、クレーなどが挙げられる。これらのうち、湿式法シリカまたはホワイトカーボンが好ましい。市販品としては、エボニックデグサジャパン社製「カープレックス」または「シパーナット」が挙げられる。
無機微粒子は、その体積平均粒径が、好ましくは1nm〜2000μm、より好ましくは3nm〜1000μmである。
無機微粒子の含有量は、式(I)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜50質量部である。
【0020】
本発明の徐放性土壌病害防除剤には、上記以外の添加剤および担体を含有させることができる。例えば、大豆粉、小麦粉等の植物性粉末;安息香酸ソーダ、尿素、芒硝等の有機および無機化合物などが挙げられる。さらに、均一かつ安定な製剤形態をとるために、必要に応じ界面活性剤を添加することができる。添加することができる界面活性剤は特に限定されない。
【0021】
本発明の徐放性土壌病害防除剤は薬害が少なく、魚類や温血動物への毒性が低く、安全性の高い薬剤である。本発明の徐放性土壌病害防除剤は、粒剤、粉剤等の形態で使用することができる。
【0022】
本発明の徐放性土壌病害防除剤は土壌に混和して使用される。混和方法は公知の手法によって行うことができる。
本発明に係る徐放性土壌病害防除剤の施用量は、気象条件、製剤形態、施用時期、施用方法、施用場所、防除対象病害、対象作物等により異なるが、通常10アール当たり式(I)で表される化合物量にして1〜1000g、好ましくは5〜100gである。
【0023】
本発明の徐放性土壌病害防除剤は、他の殺菌剤や殺虫・殺ダニ剤、共力剤などと混合して使用することができる。混合して使用できる他の殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、植物生長調節剤の代表例を以下に示す。
【0024】
殺菌剤:
ベノミル、カルベンダジム、フベリダゾール、チアベンダゾール、チオファネート メチル等のベンゾイミダゾール系; クロゾリネート、イプロジオン、プロシミドン、ビンクロゾリン等のジカルボキシイミド系; イマザリル、オキスポコナゾール、ペフラゾエート、プロクロラズ、トリフルミゾール、トリホリン、ピリフェノックス、フェナリモル、ヌアリモル、アザコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、エポキシコナゾール、フェンブコナゾール、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホル、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、トリチコナゾール、エタコナゾール、ファーコナゾールシス、イプコナゾール、イミベンコナゾール、等のDMI−殺菌剤; ベナラキシル、フララキシル、メタラキシル、メタラキシル−M、オキサジキシル、オフラセ等のフェニルアミド系; アルジモルフ、ドデモルフ、フェンプロピモルフ、トリデモルフ、フェンプロピジン、ピペラリン、スピロキサミン等のアミン系; EDDP、イプロベンホス、ピラゾホス等のホスホロチオレート系; イソプロチオラン等のジチオラン系; ベノダニル、ボスカリド、カルボキシン、フェンフラン、フルトラニル、フラメトピル、メプロニル、オキシカルボキシン、ペンチオピラド、チフルザミド等のカルボキサミド; ブピリメート、ジメチリモル、エチリモル等のヒドロキシ−(2−アミノ)ピリミジン;
【0025】
シプロジニル、メパニピリム、ピリメタニル等のAP殺菌剤 (アニリノピリミジン); ジエトフェンカルブ等のN−フェニルカーバメート;アゾキシストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、クレソキシム−メチル、トリフロキシストロビン、ジモキシストロビン、メトミノストロビン、オリザストロビン、ファモキサドン、フルオキサストロビン、フェンアミドン、メトミノフェン、ピリベンカルブ等のQoI−殺菌剤 (Qo阻害剤); フェンピコニル、フルジオキソニル等のPP殺菌剤 (フェニルピロール) ; キノキシフェン等のキノリン系 ; ビフェニル、クロロネブ、ジクロラン、キントゼン、テクナゼン、トルクトフォス−メチル等のAH殺菌剤 (芳香族炭化水素); フサライド、ピロキロン、トリシクラゾール等のMBI−R; カルプロパミド、ジクロシメット、フェノキサニル等のMBI−D; フェンヘキサミド、ピリブチカルブ、タービナフィン等のSBI剤; ペンシクロン等のフェニルウレア; シアゾファミド等のQiI−殺菌剤(Qi阻害剤); ゾキサミド等のベンズアミド; ブラストサイジン、ミルディオマイシン等のエノピランウロン; カスガマイシン等のへキソピラノシル; ストレプトマイシン、バリダマイシン等のグルコピラノシル; シモキサニル等のシアノアセトアミド; プロパモカルブ、プロチオカルブ、ポリカーバメート等のカーバメート; ビナパクリル、ジノカップ、フェリムゾン、フルアジナム等の脱共役剤; 酢酸トリフェニルスズ、塩化トリフェニルスズ、水酸化トリフェニルスズ等の有機スズ化合物;
【0026】
亜リン酸、トルクロホスメチル、ホセチル等のリン酸エステル; テクロフタラム等のフタルアミド酸; トリアゾキシド等のベンゾトリアジン; フルスルファミド等のベンゼンスルフォナミド; ジクロメジン等のピリダジノン; ジメトモルフ、フルモルフ、ベンチアバリカルブ、イプロバリカルブ、マンジプロパミド等のCAA殺菌剤 (カルボン酸アミド); オキシテトラサイクリン等のテトラサイクリン; メタスルホカルブ等のチオカーバメート; エトリジアゾール、ポリオキシン、オキソリニック酸、ヒドロキシイソキサゾール、オクチノリン、シルチオファム、ジフルメトリム、アシベンゾラルSメチル、プロベナゾール、チアジニル、エタボキサム、シフルフェナミド、プロキナジド、メトラフェノン、フルオピコリド、水酸化第二銅、有機銅、硫黄、ファーバム、マンゼブ、マンネブ、メチラム、プロピネブ、チウラム、ジネブ、ジラム、キャプタン、カプタホール、フォルペット、クロロタロニル、ジクロフルアニド、トリルフルアニド、ドジン、グアザチン、イミノクタジン、アニラジン、ジチアノン、クロロピクリン、ダゾメット、メタムナトリウム塩、キノメチオネート、シプロフラム、シルチオファム、アグロバクテリウム、フルオルイミド等のその他の化合物。
【0027】
殺虫・殺ダニ剤:
有機燐およびカーバメート系殺虫剤:
フェンチオン、フェニトロチオン、ダイアジノン、クロルピリホス、ESP、バミドチオン、フェントエート、ジメトエート、ホルモチオン、マラソン、トリクロルホン、チオメトン、ホスメット、ジクロルボス、アセフェート、EPBP、メチルパラチオン、オキシジメトンメチル、エチオン、サリチオン、シアノホス、イソキサチオン、ピリダフェンチオン、ホサロン、メチダチオン、スルプロホス、クロルフェンビンホス、テトラクロルビンホス、ジメチルビンホス、プロパホス、イソフェンホス、エチルチオメトン、プロフェノホス、ピラクロホス、モノクロトホス、アジンホスメチル、アルディカルブ、メソミル、チオジカルブ、カルボフラン、カルボスルファン、ベンフラカルブ、フラチオカルブ、プロポキスル、BPMC、MTMC、MIPC、カルバリル、ピリミカーブ、エチオフェンカルブ、フェノキシカルブ、EDDP等。
ピレスロイド系殺虫剤: ペルメトリン、シペルメトリン、デルタメスリン、フェンバレレート、フェンプロパトリン、ピレトリン、アレスリン、テトラメスリン、レスメトリン、ジメスリン、プロパスリン、フェノトリン、プロトリン、フルバリネート、シフルトリン、シハロトリン、フルシトリネート、エトフェンプロクス、シクロプロトリン、トロラメトリン、シラフルオフェン、ブロフェンプロクス、アクリナスリン等。
ベンゾイルウレア系その他の殺虫剤:
ジフルベンズロン、クロルフルアズロン、ヘキサフルムロン、トリフルムロン、テトラベンズロン、フルフェノクスロン、フルシクロクスロン、ブプロフェジン、ピリプロキシフェン、メトプレン、ベンゾエピン、ジアフェンチウロン、アセタミプリド、イミダクロプリド、ニテンピラム、フィプロニル、カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップ、硫酸ニコチン、ロテノン、メタアルデヒド、機械油、BTや昆虫病原ウイルス等の微生物農薬等。
【0028】
殺線虫剤:
フェナミホス、ホスチアゼート等。
殺ダニ剤:
クロルベンジレート、フェニソブロモレート、ジコホル、アミトラズ、BPPS、ベンゾメート、ヘキシチアゾクス、酸化フェンブタスズ、ポリナクチン、キノメチオネート、CPCBS、テトラジホン、アベルメクチン、ミルベメクチン、クロフェンテジン、シヘキサチン、ピリダベン、フェンピロキシメート、テブフェンピラド、ピリミジフェン、フェノチオカルブ、ジエノクロル等。
植物生長調節剤:
アブシジン酸、インドール酪酸、ウニコナゾール、エチクロゼート、エテホン、クロキシホナック、クロルメコート、クロレラ抽出液、過酸化カルシウム、シアナミド、ジクロルプロップ、ジベレリン、ダミノジッド、デシルアルコール、トリネキサパックエチル、メピコートクロリド、パクロブトラゾール、パラフィン、ワックス、ピペロニルブトキシド、ピラフルフェンエチル、フルルプリミドール、プロヒドロジャスモン、プロヘキサジオンカルシウム塩、ベンジルアミノプリン、ペンディメタリン、ホルクロルフェニュロン、マレイン酸ヒドラジドカリウム、1−ナフチルアセトアミド、4−CPA、MCPB、コリン、硫酸オキシキノリン、エチクロゼート、ブトルアリン、1−メチルシクロプロペン、アビグリシン塩酸塩。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例および比較例を示して、より具体的に本発明を説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0030】
本実施例および比較例において使用した資材等は以下のとおりである。
LUVAX2191:日本精鑞社製 石油ワックス
モビニール180E:日本合成化学工業社製 エチレン―酢ビ樹脂エマルション
ゴーセノールNL−05:日本合成化学工業社製 ポリビニルアルコール
SMA17352P:サートマー・ジャパン社製 スチレン―無水マレイン酸共重合体
ハイパールM−4006L−A:根上工業社製 メタクリル酸メチル重合体
カープレックス#67:エボニックデグサジャパン社製 非晶質二酸化ケイ素
カープレックス#1120:エボニックデグサジャパン社製 非晶質二酸化ケイ素
SipernatD17:エボニックデグサジャパン社製 ホワイトカーボン
没食子酸エチル:岩手ケミカル社製 粉末
没食子酸n−プロピル:岩手ケミカル社製 粉末
【0031】
実施例1
モビニール180E 0.14gを、蒸留水0.16gで希釈した。没食子酸エチル0.69gに該希釈液を加えて、乳鉢で混練した。次に、カープレックス#67を0.05g加えて、混練した。これを70℃で乾燥した後、乳鉢で解砕して粉粒剤を得た。
【0032】
実施例2
没食子酸エチル0.69gとLUVAX2191 0.26gを混合した。該混合物を100℃に加温して、LUVAX2191を融解させた。これを、混練しながら徐冷して、均一に混ぜた。これにカープレックス#67を0.14g加えて、混練しながら、室温まで徐冷して、粉粒剤を得た。
【0033】
実施例3
蒸留水8gを撹拌しながらゴーセノールNL−05を2g投入した。直ちに昇温し、撹拌し続けながら80〜90℃で、30分〜60分間保ち溶解して、15%の水溶液Aを得た。
次に、没食子酸エチル0.69gに水溶液A 0.42gを徐々に投入しながら乳鉢で混合した。これを70℃で乾燥した。乾燥物を乳鉢で解砕して粉粒剤を得た。
【0034】
実施例4
300ml容ナス形フラスコに没食子酸n−プロピル2.2gおよびSMA17352P 7.3gを投入した。次いで、1.5〜2倍量のアセトンを投入して、溶解させた。さらに、SipernatD17 0.5gを投入して、分散させた。40℃の温浴中で、エバポレーターによりアセトンを除去した。ナス形フラスコから取り出して、40℃の真空乾燥機で乾燥させた。乾燥物を乳鉢で粉砕して、粉粒剤を得た。
【0035】
実施例5
500ml容ナス形フラスコに没食子酸エチル15.4gおよびSMA17352P 51.1gを投入した。次いで、アセトン70gを投入して、溶解させた。さらに、SipernatD17 3.5gを投入して、分散させた。40℃の温浴中で、エバポレーターによりアセトンを除去した。ナス形フラスコから取り出して、40℃の真空乾燥機で乾燥させた。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き105μmの篩で篩分して、粉粒剤を得た。
【0036】
実施例6
100ml容ナス形フラスコに没食子酸エチル1.0gおよびSMA17352P 1.0gを投入した。次いで、アセトン30gを投入して、溶解させた。40℃の温浴中で、エバポレーターによりアセトンを除去した。ナス形フラスコから取り出し、粉粒剤を得た。
【0037】
実施例7
100ml容ナス形フラスコに没食子酸エチル1.0gおよびハイパールM−4006L−A 1.0gを投入した。次いで、アセトン40gを投入して、溶解させた。40℃の温浴中で、エバポレーターによりアセトンを除去した。ナス形フラスコから取り出し、粉粒剤を得た。
【0038】
実施例8
100ml容ナス形フラスコに没食子酸エチル1.4gおよびカープレックス#1120 0.6gを投入した。次いで、アセトン30gを投入して、溶解させた。40℃の温浴中で、エバポレーターによりアセトンを除去した。ナス形フラスコから取り出し、粉粒剤を得た。
【0039】
実施例9
100ml容ナス形フラスコに没食子酸メチル1.0gおよびSMA17352P 1.0gを投入した。次いで、アセトン30gを投入して、溶解させた。40℃の温浴中で、エバポレーターによりアセトンを除去した。ナス形フラスコから取り出し、粉粒剤を得た。
【0040】
実施例10
100ml容ナス形フラスコに没食子酸1.0gおよびSMA17352P 1.0gを投入した。次いで、アセトン30gを投入して、溶解させた。40℃の温浴中で、エバポレーターによりアセトンを除去した。ナス形フラスコから取り出し、粉粒剤を得た。
【0041】
比較例1
500ml容ナス形フラスコにSMA17352P 51.1gを投入した。次いで、アセトン70gを投入して、溶解させた。さらに、SipernatD17 3.5gを投入して、分散させた。40℃の温浴中で、エバポレーターによりアセトンを除去した。ナス形フラスコから取り出して、40℃の真空乾燥機で乾燥させた。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き105μmの篩で篩分して、粉粒剤を得た。
【0042】
比較例2〜5
没食子酸n−プロピル、没食子酸エチル、没食子酸メチル、および没食子酸をそれぞれそのまま粉粒剤として供した。
【0043】
〔防除効果の確認試験〕
ビニール袋に乾燥土壌(国頭マージ,pH6.2)100gを入れた。これにRalstonia solanacearum biovar 4の菌液(8.5×107cfu mL-1)200μLを滴下し、混和した。
各試験区に上記実施例1〜10および比較例1〜5で得られた粉粒剤をそれぞれ0.095gで上記青枯病接種土壌に混和した。1試験区につき3反復行った。
処理された各土壌をビニールポットに入れ、該ビニールポットを水受け内に置いた。
上記ビニールポットの水受けには試験期間中、随時蒸留水を補充した。
各試験区のビニールポットを25℃のインキュベーター内に2週間置いた。
ビニールポットに1ポット当たり2株のミニトマト(品種名「ちびっこ」)を移植した。それらをガラス室内で管理した。
移植から11週間経過した日に、各株の発病程度を下記の基準で調査し指数化し、発病度を下記の式で算出した。
発病度=(Σ(程度別発病株数×指数)/調査株数×4)×100
【0044】
調査基準
0:発病を認めない。
1:茎頂の萎れが観察される。
2:葉に萎れが観察される。
3:株全体が青枯れ状となる。
4:枯死している。
【0045】
11週間経過した日に、外部病徴が現れなかったすべてのミニトマトの地際部から上位約1cmの茎を切り出し、切片を縦に切断調製した。該切片を原・小野培地に置床した。60分間経過した後、該切片を取り除いた。該培地を28℃で5日間培養した。青枯病菌検出の有無を調査した。
【0046】
その結果、無処理区では、移植2週間後から青枯病の発病が確認された。移植から11週間経過した日における無処理区の青枯病発病率が66.7%、発病度が66.7で、感染株率が100%となり、甚発生する条件下での試験となった。
比較例1で得られた粉粒剤で処理した試験区では、青枯病発病率が100%、発病度が100となった。
また、比較例2〜5の粉粒剤で処理した試験区では、青枯病発病率が100%、発病度が66.7となった。没食子酸アルキルエステルそのもの(比較例2〜5)は防除効果が認められなかった。
実施例1〜10で得られた粉粒剤で処理した試験区では、いずれも、移植から11週間経過後においても青枯病の発病および感染が確認されなかった。
本発明の徐放性土壌病害防除剤は、高い病害防除効果を有することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物を含有する徐放性土壌病害防除剤。

(式(I)中、RはC1〜6アルキル基または水素原子を示す。nは水酸基の置換数を示し、2〜5の整数である。)
【請求項2】
接着性化合物をさらに含有する請求項1に記載の徐放性土壌病害防除剤。
【請求項3】
無機微粒子をさらに含有する請求項1または2に記載の徐放性土壌病害防除剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の徐放性土壌病害防除剤を土壌に混和することを含む、土壌病害の防除方法。

【公開番号】特開2011−126789(P2011−126789A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283797(P2009−283797)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】