説明

復元性フィルターユニット

【課題】フィルターサイズより狭い間口であっても一度圧縮して装着可能であり、装着後もリークを生じず低圧損で捕集効率に優れたプリーツフィルターユニットを提供する。
【解決手段】繊維シートをひだ折りして形成したプリーツフィルター1の周囲を枠材で囲んだフィルターユニットにおいて、プリーツフィルター周囲4面のうち、少なくともひだ折り幅方向の1面が開放されてなり、そのプリーツフィルターのひだ折り方向の長さ(L0)に対し、75%の長さ(L1)となるよう圧縮して1分間保持した後に応力を開放した時の長さ(L2)が、L2/L0>0.9となることを特徴とするプリーツフィルターユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気中の塵埃等を除去する際に用いて好適なエアフィルターに関し、より詳細には、カーエアコン、空気清浄機、エアーコンディショナー等に装着されるキャビンエアフィルター、空気清浄フィルターに用いて特に用いて好適な復元性フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーエアコン、空気清浄機、エアーコンディショナー等のエアフィルターは、圧力損失を少なくし、長寿命化および高効率化を計るためにひだ折り加工したプリーツフィルターが広く用いられている。すなわち、プリーツフィルターを使用すると、使用される機器自体の濾過開口面積(空気吸入面積)の10倍以上の濾過有効面積を有するようにでき、濾過効率を高めることができるためである。
プリーツフィルターは濾材を一定のプリーツ高さにひだ折り加工し、プリーツ間隔を一定に保持するために通常プリーツ固定処理がなされる。プリーツ間隔の固定方法は、図1に示すようにプリーツ濾材の両側面に枠材1を接着する方法(例えば、特許文献1)、図2に示すように濾材の頂点間を樹脂2で固定する方法(例えば、特許文献2)、さらにはプリーツの間に一定厚みのスペーサーを設ける方法等が挙げられる。
【0003】
一方でカーエアコン等では、車のコンパクト化と共に居住空間確保の観点からカーエアコン中のフィルター装着スペースが縮小されつつあり、エアコンにフィルターを挿入する間口も十分に取れなくなってきている。
従来のプリーツ間隔が固定されたプリーツフィルターでは、フィルターをエアコンに装着する際、プリーツ固定処理がなされている為フィルター形状の自由度がなく、フィルターサイズと同一以上の装着用間口が必要であった。たとえ外圧をかけフィルターを変形させて間口から挿入できても、リークを生じフィルター捕集効率が低下するという問題があった。
【0004】
プリーツ固定処理を施さない場合は、プリーツを一度折りたたむことにより狭い間口からでも挿入可能であるが、フィルター挿入後にプリーツ間隔が復元せず、リークを生じてフィルター捕集効率が低下するという問題があった。
上記の様に、現状ではフィルターサイズより狭い間口に装着できるような復元性に優れたプリーツフィルターが得られていない状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−233909号公報
【特許文献2】特開平1−63012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の課題を背景になされたもので、プリーツを圧縮しても復元性に富み、フィルターサイズより狭い間口であっても装着可能であり、装着後もリークを生じず低圧損で捕集効率に優れたプリーツフィルターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明は、(1)繊維シートをひだ折りして形成したプリーツフィルターにおいて、そのひだ折り方向の長さ(L0)に対し、75%の長さ(L1)となるよう圧縮して1分間保持した後に応力を開放した時の長さ(L2)が、L2/L0>0.9となる復元性を有することを特徴とするプリーツフィルター。
(2)繊維シートのJIS―L―1096剛軟性試験B法による剛軟度が1.0以上である前記(1)記載のプリーツフィルター。
(3)繊維シートのJIS−B−9908形式3による通過風速30cm/secにおける初期圧力損失が100Pa以下、かつ初期圧力損失+150PaにおけるJIS―Z−8901の15種粉体の粒子捕集効率が60%以上であることを特徴とする前記(1)または(2)記載のプリーツフィルター。
(4)ひだ折りピッチ(P)と折り高さ(H)の関係が、H/P=2〜20の範囲であることを特徴とする前記(1)〜(3)記載のプリーツフィルター。
(5)繊維シートをひだ折りして形成したプリーツフィルターの周囲を枠材で囲んだフィルターユニットにおいて、そのプリーツフィルターのひだ折り方向の長さ(L0)に対し、75%の長さ(L1)となるよう圧縮して1分間保持した後に応力を開放した時の長さ(L2)が、L2/L0>0.9となることを特徴とするプリーツフィルターユニット。(6)枠材が可撓性材料であることを特徴とする前記(5)記載のプリーツフィルターユニット。
(7)プリーツフィルター周囲4面のうち、少なくとも1面が開放されてなることを特徴とする前記(5)または(6)記載のプリーツフィルターユニット。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプリーツフィルターは、低圧損かつ高捕集効率であり、プリーツ形状を圧縮した際の復元性に優れるため、フィルターサイズより狭い間口から挿入して装着できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来フィルターの斜視図
【図2】従来フィルターの斜視図
【図3】本発明プリーツフィルターの平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明のプリーツフィルターは図3に示すように繊維シートをひだ折りして濾過面積を高めた構造を有する。繊維シートをひだ折り加工する事により、使用される機器自体の濾過開口面積(空気吸入面積)以上の濾過有効面積を有するようにでき、濾過効率を高めることができる。
【0011】
繊維シートは、濾材として通気性と捕集効率に優れるものであれば不織布、織布が広く使用でき、シート材質も合成繊維、天然繊維等、特に限定されないが、汎用性、コスト、濾過性能のバランスからポリエステル、ポリオレフィン系の不織布を1層あるいは複数層積層した物が好適に用いられる。
【0012】
繊維シートをひだ折り形成したプリーツフィルターにおいて、そのひだ折り方向の長さをL0とし、そのL0の75%の長さL1となるよう圧縮して1分間保持した後に、応力を開放した時の長さL2が、L2/L0>0.9となるような復元性を有することが必要である。近年のエアコン、特にカーエアコンでは、コンパクト化の要求が高くフィルター装着スペースが限られており、フィルターを挿入する間口がフィルターサイズより小さい場合がある。このような場合は、プリーツフィルターを一度間口サイズまで圧縮変形させて挿入し、挿入後は所定の濾過開口面積までフィルター形状を復元する必要がある。この際、L2/L0>0.9であればフィルターを圧縮して挿入しても、挿入後は十分にプリーツフィルター形状を復元するので、非処理空気は繊維シートを通過するので有効に清浄濾過される。L2/L0≦0.9であると、フィルター形状の復元が十分でないので繊維シートを通過しない非処理空気が大きくなり、ダストリークが発生し、フィルターの捕集効率が著しく低下する。
【0013】
本発明のプリーツフィルターにおいて、繊維シートのJIS―L―1096剛軟性試験B法による剛軟度は1.0以上である事が好ましい。圧縮後の復元性は濾材の腰の強さの指標である剛軟性が重要であり、1.0以上である事が好ましく、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上である。剛軟度が1.0以下であると、復元性が大きく低下するばかりか、プリーツフィルターに非処理空気を流した際にプリーツ形状が維持できなくなり、プリーツ同士の密着やプリーツ変形を引き起こすので好ましくない。
【0014】
本発明のプリーツフィルターにおいて、繊維シートのJIS−B−9908形式3による通過風速30cm/secにおける初期圧力損失が100Pa以下、かつ初期圧力損失+150PaにおけるJIS―Z−8901の15種粉体の粒子捕集効率が60%以上であることが好ましい。圧力損失が100Pa以上であると清浄空気の風量が十分でなく、エアコンシステムのブロアーにも多大な負荷がかかり好ましくない。圧力損失はより好ましくは80Pa以下、さらに好ましくは60Pa以下である。粒子捕集効率は60%以上が好ましく、より好ましくは65%以上である。60%を下回ると、室内、キャビン内の汚染が目立ち、空気浄化効果が低くなる。
【0015】
本発明のプリーツフィルターのひだ折りピッチ(P)と折り高さ(H)の関係が、H/P=2〜20の範囲であることが好ましく、より好ましくは2〜10,さらに好ましくは2〜8である。H/P<2であると濾材折り込み量が十分でなく、圧力損失が高く、捕集効率が低くなり好ましくない。一方、H/P>20であると折り込みピッチが小さくなりすぎてプリーツフィルターの構造圧力損失が大きくなり好ましくない。
【0016】
本発明のプリーツフィルターユニットは、繊維シートをひだ折りして形成したプリーツフィルターの周囲を枠材で囲んだフィルターユニットにおいて、そのプリーツフィルターのひだ折り方向の長さ(L0)に対し、75%の長さ(L1)となるよう圧縮して1分間保持した後に応力を開放した時の長さ(L2)が、L2/L0>0.9となることが必要である。先述の復元性に加えて、プリーツフィルターの周囲を枠材で囲むことにより、ひだ折りピッチが固定化されると共に、取り扱い性に優れ、プリーツフィルターをケースへ装着した際のフィルターとケース間でのリークを防止する事ができる。
【0017】
プリーツフィルターユニットの枠材は、可撓性材料であることが好ましい。プリーツフィルターユニットを圧縮して装着する際、枠が可撓性であると圧縮が容易であり、またプリーツフィルターの復元力も枠材の可撓性により助長され、より復元性に優れたフィルターユニットとなる。可撓性枠材の材質は、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の高分子の樹脂、不織布、エラストマー、発泡体等、柔軟性を有する材料を広く使用する事ができる。
【0018】
プリーツフィルターユニットにおいて、周囲4面のうち、少なくとも1面が開放されてなると、より圧縮する際の柔軟性に富み好ましい。周囲4面のうち、ひだ折り幅方向の1面が開放されていると、ひだ折り方向の圧縮が容易で、圧縮効果が高くなり好ましい。ひだ折り幅方向の1面とそれに隣接するひだ折り方向の1面がともに開放されていると、さらに高度に圧縮可能であり好ましい。残る2面に枠材が存在する事で、ひだ折りピッチは維持され、フィルターを装着する際のハンドリング性も十分である。
【実施例】
【0019】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に沿って設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
尚、実施例中の数値は以下のような方法で測定した値である。
【0020】
(剛軟度)
JIS―L―1096剛軟性試験B法による。
【0021】
(通気抵抗、捕集効率)
JIS―B―9908 形式3に従って測定した。使用粉塵はJIS−Z−8901の15種粉塵、終圧は初期圧力損失+150Paとした。通過風速は、濾材の試験については30cm/secとし、プリーツフィルターについては3m/secとした。
【0022】
(実施例1)
濾材の剛軟度25、圧力損失が6Pa、捕集効率が60%である平均繊維径18μm、目付100g/m、厚み0.7mm、幅200mmのポリエステルサーマルボンド不織布をプリーツ高さ15mmで20山ひだ折り加工を施した後、プリーツ間隔が10mmとなるようにプリーツ濾材を引き延ばして、200mm×200mmサイズのプリーツフィルターを得た。この時、L2/L0=0.97であった。
【0023】
(実施例2)
濾材の剛軟度22、圧力損失が8Pa、捕集効率が66%である平均繊維径18μm、目付110g/m、厚み0.7mm、幅200mmのポリエステルサーマルボンド不織布をプリーツ高さ20mmで20山ひだ折り加工を施した後、プリーツ間隔が10mmとなるようにプリーツ濾材を引き延ばし、インサート成型にてポリプロピレンからなる樹脂枠(厚み1mm)をひだ折り方向の1側面、およびひだ折り幅方向の1面に接着した。フィルターの4側面のうち2側面に枠を有する200mm×200mmサイズのプリーツフィルターユニットを得た。このフィルターユニットのL2/L0=0.99であった。
【0024】
(比較例1)
剛軟度0.8、圧力損失が7Pa、捕集効率が60%である平均繊維径10μm、目付80g/m、厚み0.5mm、幅200mmのポリエステルサーマルボンド不織布をプリーツ高さ20mmで20山ひだ折り加工を施した後、プリーツ間隔が10mmとなるようにプリーツ濾材を引き延ばして、200mm×200mmサイズのプリーツフィルターを得た。この時、L2/L0=0.78であった。
【0025】
上記、実施例、比較例で作成したプリーツフィルターを、ひだ折り方向に200mmの75%長さとなるよう1分間圧縮した後に、開口面積200mm×200mmのフィルター試験装置に設置し、性能評価した結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1からも明らかなように、実施例1および2ではL2/L0が1に近く、元のフィルターサイズまで十分に復元している為、濾材全体にわたって有効に風が通過しておりダストリークも無く、捕集効率が高い。一方、比較例ではL2/L0が低く、プリーツの復元が小さい為、ダストがフィルター濾材を通過しない部分を生じ、これがリークとなって大きな捕集効率の低下を生じる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のプリーツフィルターは、プリーツ形状を圧縮した際の復元性に優れるため、フィルターサイズより狭い間口から挿入して装着でき、低圧損かつ高捕集効率であるため、自動車用キャビンフィルタ、空調用エアフィルターなどの用途に広く利用することができ、産業化に寄与すること大である。
【符号の説明】
【0029】
1: プリーツフィルター
2: 繊維シート
3: 枠材
4: ピッチ固定樹脂


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維シートをひだ折りして形成したプリーツフィルターの周囲を枠材で囲んだフィルターユニットにおいて、プリーツフィルター周囲4面のうち、少なくともひだ折り幅方向の1面が開放されてなり、そのプリーツフィルターのひだ折り方向の長さ(L0)に対し、75%の長さ(L1)となるよう圧縮して1分間保持した後に応力を開放した時の長さ(L2)が、L2/L0>0.9となることを特徴とするプリーツフィルターユニット。
【請求項2】
プリーツフィルター周囲4面のうち、ひだ折り幅方向の1面とそれに隣接するひだ折り方向の1面がともに開放されている請求項1に記載のプリーツフィルターユニット。
【請求項3】
繊維シートのJIS―L―1096剛軟性試験B法による剛軟度が1.0以上である請求項1または2に記載のプリーツフィルターユニット。
【請求項4】
繊維シートのJIS−B−9908形式3による通過風速30cm/secにおける初期圧力損失が100Pa以下、かつ初期圧力損失+150PaにおけるJIS―Z−8901の15種粉体の粒子捕集効率が60%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のプリーツフィルターユニット。
【請求項5】
プリーツ間隔(P)とプリーツ高さ(H)の関係が、H/P=2〜20の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載のプリーツフィルターユニット。
【請求項6】
枠材が可撓性材料である請求項1〜5のいずれかに記載のプリーツフィルターユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−121056(P2011−121056A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22401(P2011−22401)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【分割の表示】特願2005−211352(P2005−211352)の分割
【原出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】