説明

復水器冷却水システム

【課題】逆洗時の冷却水量の減少に伴う冷却水温度上昇を抑制できる復水器冷却水システムを提供すること。
【解決手段】蒸気タービンの復水器に冷却水を供給するための復水器冷却水システムにおいて、復水器2に冷却水を供給するための冷却水ポンプ1と、復水器2を迂回するためのバイパス配管5と、バイパス配管5を流通する冷却水流量を調節するための弁装置6と、冷却水ポンプ1の吐出圧を検出するための圧力計8と、圧力計8で検出される圧力が設定値Poに近づくように弁装置6の開度を制御する制御装置9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気タービンの復水器に冷却水を供給するための復水器冷却水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
復水器は、蒸気タービンで仕事を終えた排気蒸気を、冷却管の内部を通過する冷却水(海水やクリ−ングタワーからの水)によって凝縮させて復水とし、再び系統内に戻すためのものである。復水器は、複数の冷却管を収容する箱形容器である胴を備えており、火力発電プラントや原子力発電プラント等に設置されている。冷却管は、当該冷却管の長手方向に間隔を介して配置された複数の管板に設けた貫通孔に挿入されており、当該複数の管板によって胴内で支持されている。
【0003】
復水器冷却水システムは、ポンプ(冷却水ポンプ)で汲み上げた冷却水を復水器に供給するためのものである。発電プラントでは、復水器の冷却水に関する種々の条件が立地条件に応じて課せられる。例えば、冷却水として海水を用いる場合には、環境保全の観点から、冷却水の上昇温度の上限に制約がある(冷却水温度上昇制限)。すなわち取水時の水温に対する排水時の水温上昇値(ΔT)が制限されている。そのため、冷却水に課せられる種々の制約を遵守しながら復水器へ供給する冷却水流量を制御することが求められる。
【0004】
冷却水流量を制御する技術としては、復水器に冷却水を供給するための可動翼式の冷却水ポンプ(CWP)と、復水器を迂回するバイパス配管と、当該バイパス配管に設けられた弁と、冷却水ポンプの翼開度とバイパス配管の弁開度を制御するための制御装置(CWP制御装置)とを備えた復水器冷却システムがある(特開2002−340483号公報参照)。このシステムにおける制御装置は、最適真空度要求流量(復水器最適真空度から決定される冷却水要求流量)を発電機出力から予測演算するとともに、海水温度上昇値要求流量(冷却水温度上昇制限から決定される冷却水要求流量)を発電機出力及び取水口温度から予測演算し、当該2つの演算値のうち大きい値に基づいて冷却水ポンプの可動翼開度(復水器とバイパス配管の合計流量)を制御するとともに、当該2つ演算値の差に相当する流量の冷却水がバイパス配管に導入されるようにバイパス配管の弁開度(バイパス配管の流量)を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−340483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、復水器へ供給される冷却水流量は、復水器の出口弁の開度調整又は冷却水ポンプが可動翼式の場合にはその翼開度調整によって略一定に保持されている。一方、復水器内の冷却管は海生物付着等により汚れ熱交換性能が低下することから、通常(正洗)とは逆方向に復水器に冷却水を流す逆洗浄(逆洗)やボール洗浄が定期的に行われる。このように逆洗を行った場合には、系統に圧力損失が発生するので、正洗時と比較して復水器に導入される冷却水量が減少する。そのため、正洗時よりも排水時の冷却水温度が上昇し、冷却水温度上昇の制限値に近づいてしまう。例えば、復水器は一般的に1つの胴の内部に2つの水室(管巣)を有する1胴2水室の構成となっており、通常時(正洗時)は異なる方向から冷却水が各水室に供給され、胴内では互いに対向した流れが形成されている。逆洗浄時には逆洗する水室の出入口弁を閉止し、隣り合う水室同士を連通するための水室連絡弁を開操作することにより、隣りの水室から冷却水を流すことにより逆方向の流れを形成する。この場合、復水器水室出入口配管に通常の約2倍流量が流れることになり、系統損失が増加し冷却水量が減少する。
【0007】
この点に関して、上記の特開2002−340483号公報に記載された復水器冷却システムは、発電機出力や取水口温度に基づいて海水温度上昇値要求流量を演算しているため、逆洗時に流量が減少する際にはやはり冷却水温度上昇の制限値に近づいてしまう。この種のシステムでは、逆洗時の流量減少に対応するために、発電機出力や取水口温度から算出される要求流量(海水温度上昇値要求流量)よりも相対的に大きな値に補正することで対応することが考えられるが、この対応では冷却水流量が常に多めの設定となってしまうので、冷却水ポンプ動力が大きくなってしまう。冷却水ポンプの動力である電力は発電所の発電機から供給されることが多いが、冷却水ポンプの消費電力の増加はプラントの発電効率の低下につながってしまう。また、原子力発電プラントでは、原子炉の熱出力を年間通じて一定に保持する運用(定格原子炉熱出力運用)が実施されることがあるが、海水温度が上昇する夏場には、復水器真空度が低下して復水器熱負荷が増加することから、冷却水温度上昇の制限値に対する余裕が特に小さくなる。また、このような場合には、逆洗時の冷却水量の低下に起因した原子炉熱出力の制限も考慮する必要があり、本来の発電能力が制限されることもある。
【0008】
本発明の目的は、逆洗時の冷却水量の減少に伴う冷却水温度上昇を抑制できる復水器冷却水システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、上記目的を達成するために、蒸気タービンの復水器に冷却水を供給するための復水器冷却水システムにおいて、前記復水器に冷却水を供給するための冷却水ポンプと、前記復水器を迂回するためのバイパス配管と、前記バイパス配管を流通する冷却水流量を調節するための流量調節手段と、前記冷却水ポンプの吐出圧を検出するための圧力検出手段と、前記圧力検出手段で検出される圧力が設定値に近づくように、前記バイパス配管の冷却水量を前記流量調節手段によって制御する制御装置とを備えることを特徴とするものとする。
【0010】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記制御装置は、前記復水器の入口と出口における冷却水温度の偏差と、前記蒸気タービンのための蒸気を発生する蒸気発生手段の熱出力と、前記蒸気タービンによって駆動される発電機の出力とから前記復水器を流通する冷却水量を算出し、当該冷却水量と前記冷却水ポンプの流量/揚程特性とから前記冷却水ポンプの吐出圧力を算出し、当該吐出圧力と前記設定値の偏差が小さくなるように前記設定値を補正するものとする。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)において、好ましくは、他の復水器をさらに備え、前記バイパス配管における下流側端部は、前記復水器及び前記他の復水器の出口配管のうち少なくとも一方に接続されており、前記流量調節手段の下流側で前記バイパス配管に設置され、前記出口配管に導入される冷却水流量を調節するための他の流量調節手段をさらに備えるものとする。
【0012】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、好ましくは、前記蒸気タービンのための蒸気を発生する蒸気発生手段は原子炉であるものとする。
【0013】
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、好ましくは、前記流量調節手段は、前記バイパス配管に設置された弁装置であるものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、逆洗時の冷却水量の減少に伴う冷却水温度上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る復水器冷却システムの概略系統図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る復水器冷却システムの概略系統図。
【図3】図2の復水器冷却システムにおける制御装置の処理フロー。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る復水器冷却システムの概略系統図。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る復水器冷却システムの概略系統図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る復水器冷却システムの概略系統図である。この図に示す復水器冷却システムは、冷却水ポンプ1と、復水器2と、ボール捕集器3と、放水槽4と、バイパス配管5と、弁装置6と、オリフィス7と、圧力計8と、制御装置9を備えている。なお、ここで説明する復水器冷却システムは、原子力発電プラントにおける蒸気タービンからの蒸気を復水するためのものとし、蒸気タービンの作動流体である蒸気は原子炉の反応熱によって発生されているものとする(例えば、沸騰水型原子炉(BWR)では原子炉圧力容器で蒸気が発生し、加圧水型原子炉(PWR)では蒸気発生器で発生する)。しかし、蒸気発生手段としてボイラを備える火力発電プラントの復水器冷却システムとしても利用可能である。
【0017】
冷却水ポンプ1は、取水口(図示せず)から汲み上げた冷却水(海水)を入口配管41を介して復水器2に供給するためのもので、図に示したシステムには3機の冷却水ポンプ1が設置されている。なお、冷却水ポンプ1としては、固定翼式のものや可動翼式のものが利用可能である。
【0018】
入口配管41における冷却水ポンプ1の下流側には、冷却水ポンプ1の吐出圧を検出するための圧力計8が設置されている。また、1機の冷却水ポンプ1に接続された入口配管41は、他の入口配管41に連絡するための連絡配管43と圧力計8の設置位置の下流側で接続されており、当該連絡配管43との接続部の下流側で2つに分岐して入口弁33を介して復水器2の2つの入口水室31に接続されている。
【0019】
復水器2は、胴に対して互いに斜向かいに設置された2つの入口水室31及び出口水室32を備えている。各復水器2において隣り合う入口水室31と出口水室32は、水室連絡弁35が設置された水室連絡配管を介して接続されている。各出口水室32には出口配管42が接続されており、出口配管42には出口弁34が設置されている。出口配管42は復水器2の出口水室32と放水槽4を接続しており、加熱された冷却水を海洋に放出している。また、出口配管42の途中にはボール捕集器3が設けられている。ボール捕集器3では、冷却管内のスライムや異物等を除去するために冷却水とともに復水器2内に投入される洗浄用ボール(スポンジボール)が捕集される。
【0020】
上記のように構成される復水器2において、通常時(正洗時)は、2組の入口弁33及び出口弁34を開放するとともに全ての水室連絡弁35を閉止することで、復水器2内の2つの管巣(図示せず)に対して入口水室31から出口水室32に向かって冷却水を流す。これにより復水器2内の2つの管巣には互いに対向する向きに冷却水が流れる。一方、逆洗時は、1組の入口弁33及び出口弁34を閉止するとともに全ての水室連絡弁35を開放することで、1の管巣に対して出口水室32から入口水室31に向かって冷却水を流す。これにより復水器2内の2つの管巣には同じ向きに冷却水が流れる。
【0021】
バイパス配管5は、各入口配管41における入口水室31への分岐部の上流側と放水槽4とを接続することで復水器2を迂回するためのものである。本実施の形態におけるバイパス管5は、連絡配管43と放水槽4を接続することで復水器2を迂回している。バイパス配管5には、バイパス配管5を流通する冷却水量を調節するための流量調節手段として弁装置6及びオリフィス7が設置されている。弁装置6は流量制御用の駆動装置付きのものであり、弁装置6の開度は操作信号に基づいて制御可能である。本実施の形態では、弁装置6のキャビテーション抑制及び適正開度での運用という観点に着目してオリフィス7を設置しているが、オリフィス7は省略しても良い。
【0022】
制御装置9は、圧力計8で検出される圧力が設定値Poに近づくように弁装置6の開度を制御するためのものである。なお、定格原子炉熱出力運用を実施する場合には、設定値Poは、正洗時に復水器2の熱負荷が最大となる条件(例えば夏場)で冷却水温度が冷却水温度上昇の制限値以内に保持される流量に基づいて設定することが好ましい。
【0023】
圧力計8から制御装置9には圧力計8で検出された圧力(検出信号)が入力されており、制御装置9から弁装置6の駆動装置には弁装置6の開度を制御するための操作信号が出力される。なお、本実施の形態では、3つの圧力計8によって各冷却水ポンプ1の吐出圧を検出しているが、全ての冷却水ポンプ1の吐出圧を設定値Poに保持することを前提としているので、いずれか1つの圧力計8の検出値を利用して弁装置6の開度を制御すれば良い。
【0024】
上記のように構成される復水器冷却水システムにおいて、冷却水ポンプ1の吐出圧が設定値Poに保持された正洗時から逆洗を開始すると、系統の圧力損失が増加するので、冷却水流量が低下するとともに冷却水ポンプ1の吐出圧力がPoから大きくなる。しかし、本実施の形態では、制御装置9が、冷却水ポンプ1の吐出圧力の変化を圧力計8で検知し、当該圧力変化に応じて弁装置6の開度を自動的に制御することでバイパス配管5の流量が増加するので、冷却水ポンプ吐出圧力は設定値Poに保持される。冷却水ポンプ1の吐出圧力が一定であれば、ポンプ流量は一定流量となるため、復水器2の冷却水流量とバイパス配管の冷却水流量の和は正洗時と同じ値に保持される。すなわち、系全体の冷却水量が逆洗時にも保持されるので、冷却水温度上昇を抑制することができる。したがって、本実施の形態によれば、冷却水ポンプ1の動力増加を抑制することができるとともに、プラントの発電効率の低下を抑制することができる。
【0025】
なお、本実施の形態では、逆洗による圧力損失の影響を直接受ける冷却水ポンプ1の吐出圧力をパラメータとして系全体の冷却水量を制御している。そのため、圧力損失に対して追従性に優れた冷却水流量制御が可能であり、逆洗への移行時における系統運転状態の変化に対して瞬時に追従できるため、制御性の面で顕著なメリットを奏する。系全体の冷却水流量を制御する他の手段としては、例えば、逆洗時に復水器2から排出される冷却水の温度変化に基づいて冷却水流量を制御するものが考えられるが、この方法では排水の温度変化が現れるまでに時間を要する。すなわち、排水の温度変化が現れるまでの間の流量減少には対応することができず、逆洗に伴う温度変化を抑制する方法としては追従性が悪く不十分であることが指摘できる。
【0026】
図2は本発明の第2の実施の形態に係る復水器冷却システムの概略系統図であり、図3は図2の復水器冷却システムにおける制御装置の処理フローである。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明は省略することがある(後の図も同様とする)。
【0027】
図2に示す復水器冷却水システムは、復水器2による冷却水の温度上昇を監視するための入口温度計10及び放水槽温度計11と、原子炉熱出力及び発電機出力を演算するためのプラント性能監視用計算機12とを備えている点で図1に示したものと主に異なる。入口温度計10は、復水器2の上流側における冷却水温度を検出するためのもので、入口配管41に設置されている。入口温度計10で検出された冷却水温度(検出信号)は制御装置9Aに出力される。放水槽温度計11は、放水槽4に排出されたときにおける冷却水温度を検出するためのもので、放水槽4に設置されている。放水槽温度計11で検出された冷却水温度(検出信号)は制御装置9Aに出力される。また、プラント性能監視用計算機12で演算された原子炉熱出力及び発電機出力は制御装置9Aに出力される。
【0028】
このように構成される復水器冷却水システムにおいて、制御装置9Aは、図3の処理フローに示すように、まず、入口温度計10から入口温度Tiを入力し(S13)、放水槽温度計11から放水槽温度Toを入力する(S14)。そして、S13,14で入力した放水槽温度Toから入口温度Tiを減算することで、復水器2の入口と出口における冷却水温度の偏差である冷却水温度上昇(ΔT)を演算する(S15)。また、制御装置9Aは、プラント性能監視用計算機12から原子炉熱出力Qrと発電機出力Qwを入力し(S16,17)、原子炉熱出力Qrから発電機出力Qwを減算することで復水器熱負荷ΔQの演算する(S18)。
【0029】
制御装置9Aは、S15で算出した冷却水温度上昇ΔTとS18で算出した復水器熱負荷ΔQとから復水器2を流通する冷却水量Wを演算し(S19)、冷却水ポンプ1の初期値として予め設定されている流量/揚程特性(QH特性)とS19で算出した冷却水流量Wとに基づいて冷却水ポンプ1の吐出圧力Pを演算する(S21)。
【0030】
そして、制御装置9Aは、S21で演算した吐出圧力Pから設定値Poを減じた値(偏差)を求め、その偏差(P−Po)が設定された閾値α以内であるか否かの判定を行う(S23)。S23の判定の結果、偏差が閾値αを越えた場合には冷却水ポンプ1の吐出圧力設定値Poから所定値βを減じる補正演算を行い、吐出圧力Pと設定値Poの偏差が小さくなるように設定値Poを補正する。そして、補正後の値を新たな設定値Poと設定し(S24)、一連の処理を終了する。一方、S23の判定の結果、偏差が閾値α以下の場合には設定値Poに補正を加えることなく一連の処理を終了する。
【0031】
なお、処理の終了後は、すぐに最初に戻って上記の各処理を繰り返し実行しても良いし、所定の間隔をおいて上記の各処理を実行しても良い。また、上記ではS23の判定で利用した閾値αとS24の補正で利用した所定値βは異なる値としたが、両処理で共通の値(例えばα)を利用しても良い。さらに、図3の例では、S13〜15までの処理とS16〜18までの処理とを並列処理するように示したが、両者は任意の順番で行っても良い。
【0032】
第1の実施の形態では、冷却水ポンプ1の流量/揚程特性(QH特性)に基づいて設定した設定値Poで冷却水流量を設定しているが、流量/揚程特性は経年変化していく。これに対して、上記のように構成した本実施の形態に係る復水器冷却水システムによれば、冷却水ポンプ1の流量/揚程特性が経年変化しても、プラント運転時の原子炉熱出力と発電機出力の差から算出される復水器熱負荷ΔQと、冷却水温度上昇ΔTとから冷却水流量Wを算出し、ポンプ吐出圧力の設定値Poを補正することができるので、冷却水量を適正に制御できる。
【0033】
図4は本発明の第3の実施の形態に係る復水器冷却システムの概略系統図である。この図に示す復水器冷却水システムは、各復水器2の出口配管42とバイパス配管5とを連絡配管25を介して接続し、バイパス配管5の冷却水を放水槽4に直接放出することなく出口配管42を介して放出している点で第1の実施の形態と異なっている。各連絡配管25には、接続先の出口配管42に導入される冷却水流量を調節するための流量調節手段として弁装置26が設置されている。図3に示す例では、連絡配管25の数は、復水器2及び出口配管42の数と同じ3本ある。また、バイパス配管5と各連絡配管25は、弁装置6及びオリフィス7の下流側で接続している。
【0034】
一般的に、復水器2の出口側の温度は、放水槽4の途中に設置される接合槽で計測するが、バイパス配管5を流れる冷水を放水槽4に均等に排出し、復水器2を流れた温水と適正に混合することが好ましい。本実施の形態によれば、複数の復水器2から構成される復水器冷却システムにおいて、バイパス配管5を流れる冷却水(冷水)を各復水器2の出口配管42に配分することができるので、バイパス管5を通過した冷水と復水器2を通過した温水を放水槽4に放出する前に効率良く混合できる。これにより放水槽4以降の下流側において温度ムラが発生することを抑制することができ、計測位置に応じて温度が変化するという事態の発生を抑制できる。
【0035】
なお、各出口配管42に配分する冷水の水量は、各出口配管42から放水槽4に排出される冷却水の温度が均等に近づくように各配管42内の水温の高低に応じて適宜配分しても良いし、各出口配管42内の水温に関わらず各出口配管42に均等に配分しても良い。
【0036】
図5は本発明の第4の実施の形態に係る復水器冷却システムの概略系統図である。この図に示す復水器冷却水システムは、系内の一部の出口配管42とバイパス配管5とを連絡配管25を介して接続している点で第3の実施の形態と異なっている。このように系内に複数の出口配管42がある場合には、その中のうちの少なくとも1つと連絡配管25を介して接続すれば放水槽4以降の温度ムラを抑制することができる。
【0037】
なお、図5に示した放水槽4は、中央部に仕切44を有する水路(2分割放水路)を備えており、3つの復水器2のうち中央に配置された復水器2の出口配管42は仕切44と略等しい位置に開口している。このような場合には中央の出口配管42から放出される冷却水は、仕切44を分水嶺として2つの水路に対して略均等に放出されるので、その他の2つの出口配管42から放出される冷却水と比較して温度ムラの原因となりにくい。そのため、本実施の形態では、両端に配置された2つの出口配管42のみに冷水が供給されるようにバイパス管5と連絡配管25を接続している。
【0038】
なお、上記の各実施の形態の説明に利用した復水器冷却システムでは、3つの復水器2が備えられていたが、本発明は復水器の数では限定されず、復水器はその他の数でも良い。
【0039】
また、上記の各実施の形態では、バイパス配管5が1本のみの場合について説明したが、弁装置6を備えるバイパス配管5を複数設置し、当該複数の弁装置6を冷却水ポンプ1の吐出圧力に応じて制御するように構成しても良い。
【0040】
さらに、上記の各実施の形態では、3機の冷却水ポンプ1の吐出口のすべてに圧力計8を設置したが、少なくとも1機の冷却水ポンプ1の吐出口に圧力計8を設け、当該圧力計8の検出値を利用すれば本発明は構成することができる。また、複数の圧力計8の検出値の利用方法については具体的に触れなかったが、システムの信頼性を向上する観点から、3つの検出値の平均値を利用して弁装置6の制御を行っても良い。また、他の2つの検出値と大きく異なる値が検出された場合には、当該異なる値を検出した圧力計8に異常が発生しているものとみなして、当該圧力計8からの検出値によっては弁装置6を制御しないように構成しても良い。
【符号の説明】
【0041】
1…冷却水ポンプ、2…復水器、3…ボール捕集器、4…放水槽、5…バイパス配管、6…駆動機構付き弁装置、7…流量調整用オリフィス、8…圧力計、9…制御装置、10…入口温度計、11…放水槽温度計、12…プラント性能監視用計算機、25…復水器出口配管への連絡管、26…流量調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンの復水器に冷却水を供給するための復水器冷却水システムにおいて、
前記復水器に冷却水を供給するための冷却水ポンプと、
前記復水器を迂回するためのバイパス配管と、
前記バイパス配管を流通する冷却水流量を調節するための流量調節手段と、
前記冷却水ポンプの吐出圧を検出するための圧力検出手段と、
前記圧力検出手段で検出される圧力が設定値に近づくように、前記バイパス配管の冷却水量を前記流量調節手段によって制御する制御装置とを備えることを特徴とする復水器冷却水システム。
【請求項2】
請求項1に記載の復水器冷却水システムにおいて、
前記制御装置は、
前記復水器の入口と出口における冷却水温度の偏差と、前記蒸気タービンのための蒸気を発生する蒸気発生手段の熱出力と、前記蒸気タービンによって駆動される発電機の出力とから前記復水器を流通する冷却水量を算出し、
当該冷却水量と前記冷却水ポンプの流量/揚程特性とから前記冷却水ポンプの吐出圧力を算出し、
当該吐出圧力と前記設定値の偏差が小さくなるように前記設定値を補正することを特徴とする復水器冷却水システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の復水器冷却水システムにおいて、
他の復水器をさらに備え、
前記バイパス配管における下流側端部は、前記復水器及び前記他の復水器の出口配管のうち少なくとも一方に接続されており、
前記流量調節手段の下流側で前記バイパス配管に設置され、前記出口配管に導入される冷却水流量を調節するための他の流量調節手段をさらに備えることを特徴とする復水器冷却水システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の復水器冷却水システムにおいて、
前記蒸気タービンのための蒸気を発生する蒸気発生手段は原子炉であることを特徴とする復水器冷却水システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の復水器冷却水システムにおいて、
前記流量調節手段は、前記バイパス配管に設置された弁装置であることを特徴とする復水器冷却水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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