説明

復水濾過装置

【課題】実機の復水濾過装置本体と同等の運用条件を模擬でき、容易に中空糸膜サンプリングを行うことが可能な模擬ユニットを有する復水濾過装置を提供する。
【解決手段】復水濾過装置本体に対して併設され、同種の中空糸膜のモジュールを収容したカラムを備えた中空糸膜物性評価用ユニットと、復水濾過装置本体内の中空糸膜と中空糸膜物性評価用ユニット内の中空糸膜の膜面積比率に対応する量の復水を中空糸膜物性評価用ユニットに導入するユニット復水導入ラインと、復水濾過装置本体内の中空糸膜モジュールの中空糸膜集合部における単位横断面積当たりのスクラビング用空気供給量と中空糸膜物性評価用ユニット内の中空糸膜モジュールの中空糸膜集合部における単位横断面積当たりのスクラビング用空気供給量が等しくなるようにスクラビング用空気を中空糸膜物性評価用ユニットに導入するユニットスクラビング用空気導入ラインとを有することを特徴とする復水濾過装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、復水濾過装置に関し、とくに、火力、原子力発電所に設置される中空糸膜式復水濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸膜式復水濾過装置に使用されている中空糸膜モジュールの寿命は、通常5年から10年程度である。中空糸膜モジュールの継続使用可否の判断をするためには、中空糸膜のサンプルを採取し、その引張伸度を始めとする物性調査が必要だが、そのために従来は以下に示す作業が必要であった。
【0003】
・濾過装置の上部鏡板を取り外し実際に使用されているモジュールを塔外に取り出す。
・当該モジュールの保護外筒の一部を切り取って採取作業用窓を作り、中空糸膜採取後に窓を塞ぐ。
・濾過装置上部鏡板を取り付ける。その際ガスケットは全て新品に取り替える。
・濾過装置の耐圧漏洩試験を実施する。
【0004】
このような従来の方法では、濾過装置を開放するためにサンプリング作業時には濾過装置が系統から隔離されている必要があるのに対して、当該装置は復水中の懸濁物質を除去し、後段の重要機器類を保護するという重要な役割を果たしているため、事実上サンプリング作業は発電所の停止期間に限定されていた。また、前述の作業を実施するためには数日の期間を要し、コストがかかる他、放射線管理区域に当該装置が設置されている場合には作業者の被爆に対する防護も考慮する必要がある。
【0005】
本発明に関連する技術として、膜濾過装置における膜劣化等を把握するために、膜濾過装置本体に対しミニ膜モジュールを並列に設置し、そのミニ膜モジュールに被処理水を通水して本体の膜の劣化等を模擬できるようにした技術が知られている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、この特許文献1に開示の技術は、復水の濾過処理の模擬を対象としておらず、単に、本体の膜の閉塞状態の模擬や、薬品洗浄の適切性の判断のみを対象としたものである。より具体的には、火力、原子力発電所に設置される中空糸膜式復水濾過装置では前述の如く、中空糸膜モジュールの寿命は通常5年から10年程度であり、長期間にわたって復水濾過、空気スクラビング洗浄、洗浄廃液排出、洗浄後の満水操作が繰り返されるが、特許文献1に開示の技術はこのような使用状態の模擬を対象としていない。復水濾過装置の場合、この種の技術を適用するには、とくに空気スクラビング洗浄、それに付随する操作の模擬が重要であると考えられるが、そのような技術思想に基づいた模擬装置は見当たらない。
【特許文献1】特開2003−340245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の課題は、前述の従来の中空糸膜サンプリング作業における問題点に着目するとともに、従来のミニ膜モジュールが復水濾過装置を対象としていないことに鑑み、実機の復水濾過装置本体と同等の運用条件を模擬でき、容易に中空糸膜サンプリングを行うことが可能な模擬ユニットを有する復水濾過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る復水濾過装置は、復水の濾過、空気スクラビング洗浄が繰り返される中空糸膜のモジュールを収容した復水濾過装置本体に対して併設され、同種の中空糸膜のモジュールを収容したカラムを備えた中空糸膜物性評価用ユニットと、
前記復水濾過装置本体への復水導入ラインから分岐され、前記復水濾過装置本体内の中空糸膜と前記中空糸膜物性評価用ユニット内の中空糸膜の膜面積比率に対応する量の復水を前記中空糸膜物性評価用ユニットに導入するユニット復水導入ラインと、
前記復水濾過装置本体へのスクラビング用空気導入ラインから分岐され、前記復水濾過装置本体内の中空糸膜モジュールの中空糸膜集合部における単位横断面積当たりのスクラビング用空気供給量と前記中空糸膜物性評価用ユニット内の中空糸膜モジュールの中空糸膜集合部における単位横断面積当たりのスクラビング用空気供給量とが実質的に等しくなる量のスクラビング用空気を前記中空糸膜物性評価用ユニットに導入するユニットスクラビング用空気導入ラインと、
を有することを特徴とするものからなる。
【0009】
このような復水濾過装置においては、中空糸膜物性評価用ユニットには、復水濾過装置本体内の中空糸膜と中空糸膜物性評価用ユニット内の中空糸膜の膜面積比率に対応する量の復水が通水されることにより、中空糸膜物性評価用ユニット内の中空糸膜に関して、復水濾過装置本体におけるのと同等の条件で復水の濾過処理が行われ、復水濾過装置本体内の中空糸膜モジュールの中空糸膜集合部における単位横断面積当たりのスクラビング用空気供給量と中空糸膜物性評価用ユニット内の中空糸膜モジュールの中空糸膜集合部における単位横断面積当たりのスクラビング用空気供給量とが実質的に等しくなるようにスクラビング用空気が中空糸膜物性評価用ユニット内に流通されることにより、中空糸膜物性評価用ユニット内の中空糸膜に関して、復水濾過装置本体におけるのと同等の条件で空気スクラビング洗浄が行われ、復水濾過装置本体と同等の運用条件が、中空糸膜物性評価用ユニットに対して正確に模擬される。したがって、この中空糸膜物性評価用ユニットから中空糸膜サンプリングを行えば、復水濾過装置本体内の中空糸膜の状態が正確に把握されることになる。この中空糸膜物性評価用ユニットは小型の装置でよく、その中の中空糸膜のサンプリングも極めて容易に行われ得るから、サンプリング作業の容易化、時間短縮、コスト低減が確実に達成される。
【0010】
この本発明に係る復水濾過装置においては、上記カラム内の中空糸膜モジュールの周囲に、着脱可能な孔付き保護筒が設けられていることが好ましい。この保護筒設置により、とくにスクラビング用空気を復水濾過装置本体と同等の条件で容易に中空糸膜モジュールに供給できるようになるので、復水濾過装置本体と同等の空気スクラビング洗浄がより確実に模擬される。この保護筒は、中空糸膜モジュール側に取り付けられることもできるし、カラム側に取り付けられることもできる。サンプリング作業時には保護筒を外す必要があるので、保護筒の着脱の容易性を考慮して、いずれの側に取り付けるかを決定すればよい。
【0011】
また、復水濾過装置本体と同等の空気スクラビング洗浄をより確実に模擬するために、スクラビング用空気の少なくとも一部が(望ましくは全部が)、保護筒内に導入されるように構成されていることが好ましい。また、保護筒の容量が、カラムの容量の50%以下であることが好ましい。このような容量比としておくことにより、少量のスクラビング用空気に対してカラム内に比較的大容量の水を保有しておくことが可能になるので、スクラビング用空気によって保有水が系外に押し出されることを防止できる。
【0012】
上記中空糸膜物性評価用ユニットには、上述の各導入ラインに加え、洗浄廃液排出ライン、スクラビング用空気排出ライン、洗浄後カラム内満水用排気ラインをそれぞれ接続することができる。スクラビング用空気排出ラインと、洗浄後カラム内満水用排気ラインは、共用のラインに構成することが可能である。
【0013】
上記中空糸膜物性評価用ユニット内への導入量調整手段としては、上記膜面積比率に対応する量の復水に調整する復水の流量調整手段、上記単位横断面積当たりの量のスクラビング用空気に調整する流量調整手段をそれぞれ有することが好ましい。各流量調整手段による膜面積比率に対応する量への調整、単位横断面積当たりの量への調整により、より正確に復水濾過装置本体と同等の運用条件が模擬される。
【0014】
また、中空糸膜物性評価用ユニット内の上記中空糸膜モジュールは、物性評価用サンプリングのために取り出された中空糸膜が取り付けられていた部位を閉止可能に構成されていることが好ましい。このように構成すれば、サンプリング後にも、残りの中空糸膜によって復水濾過装置本体と同等の運用条件の模擬の継続が可能となる。ただし、サンプリングのために取り出された中空糸膜に相当する分、上記膜面積比率、中空糸モジュール断面積比率を再調整する必要がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る復水濾過装置によれば、中空糸膜物性評価用ユニットに、復水濾過装置本体内の中空糸膜と中空糸膜物性評価用ユニット内の中空糸膜の膜面積比率に対応する量の復水、復水濾過装置本体内の中空糸膜モジュールの中空糸膜集合部における単位横断面積当たりのスクラビング用空気供給量と中空糸膜物性評価用ユニット内の中空糸膜モジュールの中空糸膜集合部における単位横断面積当たりのスクラビング用空気供給量とが実質的に等しくなる量のスクラビング用空気を流通でき、復水濾過装置本体と同等の運用条件が、中空糸膜物性評価用ユニットに対して正確に模擬されるので、中空糸膜物性評価用ユニットからの中空糸膜サンプリングにより、復水濾過装置本体内の中空糸膜の経過状態を正確に把握することができる。小型の中空糸膜物性評価用ユニットからのサンプリングでよいので、サンプリング作業を容易に短時間のうちに低コストで行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る復水濾過装置を示している。図1に示す復水濾過装置1は、多数の中空糸膜2が収容された中空糸膜モジュール3(図示例では外筒付きモジュール)が複数収容された復水濾過装置本体4を有しており、通常の復水濾過処理時には、復水は復水導入ライン5から復水濾過装置本体4内に導入され、中空糸膜2で濾過された後、復水濾過装置本体4から復水導出ライン6へ排出され、復水系内を循環される。洗浄時には、中空糸膜2表面の濾滓を剥離除去するための空気スクラビング洗浄が行われる。スクラビング用空気は、空気源7からスクラビング用空気導入ライン8を介して復水濾過装置本体4内に導入され、図示例では空気ディストリビュータ9a、空気導入孔9bを介して中空糸膜モジュール3の周囲やその外筒内に供給され、スクラビング用空気排出ライン10から排出される。図示例では、このスクラビング用空気排出ライン10は、洗浄後復水濾過装置本体4内満水用の排気ラインを兼ねている。洗浄廃液は、洗浄廃液排出ライン11を介して排出される。長期間にわたって、復水濾過装置本体4に対し、このような復水の濾過、空気スクラビング洗浄、洗浄廃液の排出、洗浄後の満水操作が繰り返される。
【0017】
上記の復水濾過装置本体4に対して、中空糸膜2と同種の中空糸膜12を複数(例えば、100本程度)有するモジュール13を収容したカラム14を備えた中空糸膜物性評価用ユニット15が併設される。中空糸膜モジュール13の周囲には着脱可能な孔付き保護筒が設けられるが、これについては後述する。中空糸膜物性評価用ユニット15は、フランジ16、17、18を介して接続されており、必要に応じてこれらフランジ部分で切り離しできるようになっている。
【0018】
復水濾過装置本体4への復水導入ライン5からは、復水を中空糸膜物性評価用ユニット15に導入するユニット復水導入ライン19が分岐され、バルブ20、21の操作を介して、中空糸膜物性評価用ユニット15内に復水が導入される。導入された復水は、中空糸膜モジュール13の中空糸膜12で濾過された後、バルブ22、23、流量調整手段としての流量制御弁24を備えたユニット復水導出ライン25から排出され、復水導出ライン6に合流されて復水循環系に戻されるか、排液系に排出される。中空糸膜物性評価用ユニット15内への復水の導入量は、復水濾過装置本体4内の中空糸膜2と中空糸膜物性評価用ユニット15内の中空糸膜12の膜面積比率に対応する量に調整され、この調整は流量制御弁24によって行われる。流量調整手段としての流量制御弁24は、ユニット復水導入ライン19側に設けてもよい。
【0019】
中空糸膜物性評価用ユニット15には、復水濾過装置本体4へのスクラビング用空気導入ライン8から分岐され、スクラビング用空気を中空糸膜物性評価用ユニット15に導入するユニットスクラビング用空気導入ライン26も接続されており、バルブ27、28によって導入が操作されるとともに、流量調整手段としての流量制御弁29により、復水濾過装置本体4内の中空糸膜モジュール3の中空糸膜集合部における単位横断面積当たりのスクラビング用空気供給量と中空糸膜物性評価用ユニット15内の中空糸膜モジュール13の中空糸膜集合部における単位横断面積当たりのスクラビング用空気供給量とが実質的に等しくなる量のスクラビング用空気の導入量に調整される。導入されたスクラビング用空気は、中空糸膜物性評価用ユニット15内でスクラビング動作を行った後、ユニットスクラビング用空気排出ライン30からバルブ31の操作を介して排出される。このユニットスクラビング用空気排出ライン30は、洗浄後カラム内満水用排気ラインを兼ねている。なお、復水濾過装置本体4内の中空糸膜モジュール3に対してはその外筒と中空糸膜2のみの集合部との横断面積比から、また、中空糸膜物性評価用ユニット15内の中空糸膜モジュール13はカラム14や後述の保護筒と中空糸膜12のみの集合部との横断面積比から、スクラビング用空気の流通状態は変化する可能性があるが、各中空糸膜モジュールの中空糸膜集合部においてそれらの単位横断面積当たりのスクラビング用空気供給量が等しくなるように、中空糸膜物性評価用ユニット15全体に対してのスクラビング用空気導入量が調整されることにより、復水濾過装置本体4における空気スクラビング洗浄条件を中空糸膜物性評価用ユニット15において正確に模擬することが可能になる。
【0020】
また、中空糸膜物性評価用ユニット15には、洗浄廃液排出ライン32が接続されており、バルブ33の操作を介して、カラム14内の洗浄後の廃液がシンク34へと排出される。
【0021】
中空糸膜物性評価用ユニット15は、例えば、図2や図3に示すように構成される。図2に示す中空糸膜物性評価用ユニット15aにおいては、心棒41周りに配置された中空糸膜42の束の下端が部材43によって固定され、上端が部材44によって固定されてモジュール45に構成され、該中空糸膜モジュール45が部材44を介してカラム46に接続されている。中空糸膜モジュール45の周囲には、上部に小孔47を有する保護筒48が配置されており、保護筒48は部材49を介して着脱可能に部材44に、さらには部材44を介して中空糸膜モジュール45へと接続、固定されている。中空糸膜物性評価用ユニット14aの上部に設けられたサポートプレート50は、O−リング51を介してフランジ52、53間に着脱可能に固定されている。下部側は、ガスケット54を介してフランジ55、56間で固定されており、フランジ55、56間で切り離し可能となっている。
【0022】
復水の通水操作には、入口水はポート57からカラム46内に入り、中空糸膜42の外面で濾過処理され、ポート58から排出される。スクラビング用空気はポート57からカラム46内の保護筒48内に導入され、中空糸膜42の表面を洗浄した後、保護筒48の上部小孔47から保護筒48外へ、さらにポート59を介してカラム46外に排出される。洗浄廃液はポート57からカラム46外に排出される。また、洗浄後の満水用水はポート57から導入される。一連の操作における吸排気はポート59を介して行われる。
【0023】
図3に示す中空糸膜物性評価用ユニット15bにおいては、心棒61周りに配置された中空糸膜62の束の下端が部材63によって固定され、上端が部材64によって固定されてモジュール65に構成され、該中空糸膜モジュール65が部材64を介してカラム66に接続されている。中空糸膜モジュール65の周囲には、上部に小孔67を有する保護筒68が配置されており、本例では、保護筒68はカラム66側に接続されている。中空糸膜物性評価用ユニット14bの上部は、ソケット69、コネクタ70を介して外部配管に接続可能に構成されており、かつ、ガスケット71を介してフランジ72、73間で着脱可能に固定されている。下部側は、ガスケット74を介してフランジ75、76間で固定されており、フランジ75、76間で切り離し可能となっている。
【0024】
復水の通水操作には、入口水はポート77からカラム66内に入り、中空糸膜62の外面で濾過処理され、ポート78から排出される。スクラビング用空気はポート79からカラム66内の保護筒68内に導入され、中空糸膜62の表面を洗浄した後、保護筒68の上部小孔67から保護筒68外へ、さらにポート80を介してカラム66外に排出される。洗浄廃液はポート77からカラム66外に排出される。また、洗浄後の満水用水はポート77から導入される。一連の操作における吸排気はポート80を介して行われる。なお、ポート77はポート79と兼用することができる。
【0025】
上記のような構成を有する復水濾過装置においては、図1に示したように、中空糸膜物性評価用ユニット15に、復水濾過装置本体4内の中空糸膜2と中空糸膜物性評価用ユニット15内の中空糸膜12の膜面積比率に対応する量の復水、復水濾過装置本体4内の中空糸膜モジュール3の中空糸膜集合部における単位横断面積当たりのスクラビング用空気供給量と中空糸膜物性評価用ユニット15内の中空糸膜モジュール13の中空糸膜集合部における単位横断面積当たりのスクラビング用空気供給量とが等しくなる量のスクラビング用空気を流通させるので、復水濾過装置本体4と同等の運用条件が、中空糸膜物性評価用ユニット15に対して正確に模擬される。したがって。この中空糸膜物性評価用ユニット15からの中空糸膜サンプリングにより、復水濾過装置本体4内の中空糸膜2の経過状態を正確に把握することができるようになる。小型の中空糸膜物性評価用ユニット15からのサンプリングで済むので、サンプリング作業を容易に短時間のうちに低コストで行うことが可能になる。
【0026】
とくに、図2や図3に示したように、中空糸膜物性評価用ユニット15a、15bに保護筒48、68を設けることにより、より正確な模擬が可能となる。すなわち、中空糸膜物性評価用ユニットが復水濾過装置本体4を模擬すべき点で重要なのは、通水状態と中空糸膜の洗浄空気接触状態である。前者は流量の調整のみで可能だが、後者は保護筒が無ければ実現が困難である。空気の接触状態を模擬するためには中空糸膜が収納されている外筒断面積当たりの空気流量を復水濾過装置本体4に合わせる必要があるが、保護筒が無い場合には、復水濾過装置本体4の中空糸モジュール3において中空糸2が収納されている外筒が中空糸膜物性評価用ユニットにおけるカラム本体に相当することになるので、カラム断面積に対して空気流量を設定することになってしまう。スクラビング用空気を中空糸膜に確実に接触させるためにはカラム径はなるべく小さいほうが望ましいが、この場合空気の流入に伴って小径カラム内の比較的少量の保有水が洗浄空気により系外に押し出されてしまうため、スクラビング動作が復水濾過装置本体3における動作と大きく異なってしまう。逆に大径のカラムとした場合には、復水濾過装置本体3と同条件で中空糸膜に空気を接触させることが困難である。
【0027】
これに対し保護筒がある場合には、保護筒断面積に対して空気流量の設定が可能となるため、空気流量が小さくて済む他、カラムへの空気流入箇所を保護筒の直下とすることで導入空気が確実に中空糸膜に接触することができるようになる。また、少量の空気流量に対してカラム内には比較的大容量の保有水があるため、系外に押し出されることもない。このカラム全容量に対する保護筒容量の比率は50%以下が望ましい。このように、保護筒を設けておくことにより、中空糸膜物性評価用ユニット内における中空糸モジュール、中空糸に対してより正確に復水濾過装置本体における空気スクラビング洗浄状態を模擬できるようになる。
【0028】
中空糸膜物性評価用ユニット15a、15bにおける中空糸膜のサンプリング方法としては、図2に示したユニット15aの場合、上部フランジ53を取り外し、サポートプレート50を中空糸膜モジュール45が接続された状態でカラム46から引き抜く。中空糸膜モジュール45を取り外し、次いで保護筒48を取り外すことで中空糸膜42が露出する。必要数を中空糸膜42の束から切り取り(例えば、トータル100本中の5本を切り取り)、上記と逆の手順でカラムに再装着する。このとき、物性評価用サンプリングのために取り出された中空糸膜42が取り付けられていた部位を、例えば針を刺して閉止しておき、次のサンプリングまでその状態で復水濾過装置本体4と同条件で通水、空気スクラビングを行う。ただし、サンプリングのために取り出された中空糸膜42の膜面積に相当する分、およびその横断面積に相当する分は、再調整する。
【0029】
図3に示したユニット15bの場合、上部ソケット69を中空糸膜モジュール上部ニップルジョイントからなる部材64から取り外す。中空糸膜モジュール65をカラム66から引き抜くことで中空糸膜62の束が露出する。必要数の中空糸膜62を中空糸束から切り取り、上記と逆の手順でカラムに再装着する。このときにも、サンプリングのために取り出された中空糸膜62の膜面積に相当する分、およびその横断面積に相当する分は、再調整する。
【0030】
サンプリングされた中空糸膜は、復水濾過装置本体4と同条件の状態で使用されたものであるから、この物性を評価することで、復水濾過装置本体4内の中空糸膜の状態を正確に把握できる。物性の評価は、例えば引張試験によって行うことができる。引張試験は、JIS−L−1013(対応国際規格:ISO 2062)に準拠して行えばよい。
【0031】
本発明における中空糸膜物性評価用ユニットを用いて実際に試験した結果、従来の中空糸膜物性評価用ユニットを併設しない方法に比べ、次のような良好な結果が得られた。
・従来方法による作業時間:3日間(8時間×3日=24時間)
・本発明による作業時間:3時間
すなわち、作業時間として1/8に低減された。コストについては物性調査費用のほとんどが作業労務費であることから同様に1/8に低減される。また、放射線管理区域での作業のケースでは被曝量も作業時間に応じて低減されることから、1/8になり、被爆対策も容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、火力、原子力発電所に設置される、あらゆる中空糸膜式復水濾過装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施態様に係る復水濾過装置の機器系統図である。
【図2】図1の中空糸膜物性評価用ユニットの一例を示す縦断面図である。
【図3】図1の中空糸膜物性評価用ユニットの別の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 復水濾過装置
2 中空糸膜
3 中空糸膜モジュール
4 復水濾過装置本体
5 復水導入ライン
6 復水導出ライン
7 空気源
8 スクラビング用空気導入ライン
9a 空気ディストリビュータ
9b 空気導入孔
10 スクラビング用空気排出ライン
11 洗浄廃液排出ライン
12 中空糸膜
13 中空糸膜モジュール
14 カラム
15、15a、15b 中空糸膜物性評価用ユニット
19 ユニット復水導入ライン
24 流量調整手段としての流量制御弁
25 ユニット復水導出ライン
26 ユニットスクラビング用空気導入ライン
29 流量調整手段としての流量制御弁
30 ユニットスクラビング用空気排出ライン
32 洗浄廃液排出ライン
34 シンク
41、61 心棒
42、62 中空糸膜
45、65 中空糸膜モジュール
46、66 カラム
47、67 小孔
48、68 保護筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
復水の濾過、空気スクラビング洗浄が繰り返される中空糸膜のモジュールを収容した復水濾過装置本体に対して併設され、同種の中空糸膜のモジュールを収容したカラムを備えた中空糸膜物性評価用ユニットと、
前記復水濾過装置本体への復水導入ラインから分岐され、前記復水濾過装置本体内の中空糸膜と前記中空糸膜物性評価用ユニット内の中空糸膜の膜面積比率に対応する量の復水を前記中空糸膜物性評価用ユニットに導入するユニット復水導入ラインと、
前記復水濾過装置本体へのスクラビング用空気導入ラインから分岐され、前記復水濾過装置本体内の中空糸膜モジュールの中空糸膜集合部における単位横断面積当たりのスクラビング用空気供給量と前記中空糸膜物性評価用ユニット内の中空糸膜モジュールの中空糸膜集合部における単位横断面積当たりのスクラビング用空気供給量とが実質的に等しくなる量のスクラビング用空気を前記中空糸膜物性評価用ユニットに導入するユニットスクラビング用空気導入ラインと、
を有することを特徴とする復水濾過装置。
【請求項2】
前記カラム内の前記中空糸膜モジュールの周囲に、着脱可能な孔付き保護筒が設けられている、請求項1に記載の復水濾過装置。
【請求項3】
前記保護筒が前記中空糸膜モジュール側に取り付けられている、請求項2に記載の復水濾過装置。
【請求項4】
前記保護筒が前記カラム側に取り付けられている、請求項2に記載の復水濾過装置。
【請求項5】
前記スクラビング用空気の少なくとも一部が、前記保護筒内に導入される、請求項2〜4のいずれかに記載の復水濾過装置。
【請求項6】
前記保護筒の容量が、前記カラムの容量の50%以下である、請求項2〜5のいずれかに記載の復水濾過装置。
【請求項7】
前記中空糸膜物性評価用ユニットに、洗浄廃液排出ラインが接続されている、請求項1〜6のいずれかに記載の復水濾過装置。
【請求項8】
前記中空糸膜物性評価用ユニットに、スクラビング用空気排出ラインが接続されている、請求項1〜7のいずれかに記載の復水濾過装置。
【請求項9】
前記中空糸膜物性評価用ユニットに、洗浄後カラム内満水用排気ラインが接続されている、請求項1〜8のいずれかに記載の復水濾過装置。
【請求項10】
前記中空糸膜物性評価用ユニット内への導入量調整手段として、前記膜面積比率に対応する量の復水に調整する流量調整手段、前記単位横断面積当たりの量のスクラビング用空気に調整する流量調整手段をそれぞれ有する、請求項1〜9のいずれかに記載の復水濾過装置。
【請求項11】
前記中空糸膜モジュールは、物性評価用サンプリングのために取り出された中空糸膜が取り付けられていた部位を閉止可能に構成されている、請求項1〜10のいずれかに記載の復水濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−253923(P2008−253923A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99638(P2007−99638)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】