説明

復調装置、復調方法、情報再生装置およびコンピュータプログラム

【課題】隣接トラックからのクロストークによる位相変動が生じても十分に復調でき、アドレスエラーレートを低減させることが可能な復調装置を提供すること。
【解決手段】入力信号に含まれる所定の変調信号に対する搬送波を発生させて出力する搬送波発生回路と、入力信号に搬送波を乗じて出力する乗算器と、乗算器の出力を所定の期間加算して出力する加算器と、加算器の出力に所定のオフセット値を加算または減算して出力するスライスレベル調整部と、スライスレベル調整部の出力の正負を判定して判定結果を出力する正負判定回路と、を含み、スライスレベル調整部は、少なくとも加算器の出力の最小値を用いて所定のオフセット値を決定する、復調装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、復調装置、復調方法、情報再生装置およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルデータを記録・再生するための技術として、例えば、CD(Compact Disk)、MD(Mini Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)などの、光ディスク(光磁気ディスクを含む)を記録メディアに用いたデータ記録技術がある。近年においては、かかる光ディスクの高密度化や大容量化が進んでおり、高精細な映像データの記録・再生に広く用いられている。
【0003】
かかる光ディスクに対してデータを記録するには、データトラックに対するトラッキングを行うための案内手段が必要となる。かかる案内手段として、プリグルーブとして予め溝(グルーブ)を形成し、そのグルーブもしくはランド(グルーブとグルーブに挟まれる断面台地状の部位)をデータトラックとする手法が行われている。また、データトラック上の所定の位置にデータを記録することができるようにアドレス情報を記録する必要もある。かかるアドレス情報は、グルーブをウォブリング(蛇行)させることで記録される手法がある。
【0004】
データを記録するトラックが例えばプリグルーブとして予め形成されるが、この形成されたプリグルーブの側壁をアドレス情報に対応してウォブリングさせる。このようにすることで、記録時や再生時に、反射光情報として得られるウォブリング情報からアドレスを読み取ることができ、例えばアドレスを示すピットデータ等を予めトラック上に形成しておかなくても、所望の位置にデータを記録再生することができる。
【0005】
このようにウォブリンググルーブとしてアドレス情報を付加することで、例えばトラック上に離散的にアドレスエリアを設けて例えばピットデータとしてアドレスを記録することが不要となり、そのアドレスエリアが不要となる分、実データの記録容量を増大させることができる。なお、このようなウォブリングされたグルーブにより表現される絶対時間(アドレス)情報は、ATIP(Absolute Time In Pregroove)又はADIP(Address In Pregroove)と呼ばれる。
【0006】
光ディスクの中には、MSK変調とSTW変調を組み合わせた変調波形に基づいてグルーブがウォブリングされる光ディスクが存在する。MSK変調は、位相が連続したFSK変調のうちの変調指数が0.5のものである。またSTW変調は、ウォブル基本波に対して2倍の高調波を加算又は減算することで、鋸歯状波形のような変調波形を生成する変調方式である。かかる光ディスクに記録された情報を再生するディスクドライブ装置では、このようなADIP情報を再生するために、MSK復調器、STW復調器が搭載されることになる。
【0007】
ところで、隣接トラックからのクロストーク、記録前と記録後の出力振幅の違い、ディスクの品質ばらつきなどにより、ウォブル信号は変動している。このウォブルの振幅変化を避ける方式としてAGC回路方式やウォブル信号の振幅を制限させる方式(例えば、特許文献1、特許文献2参照)が考えられている
【0008】
【特許文献1】特開平11−306686号公報
【特許文献2】特開2002−74660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ウォブル信号波形は振幅だけでなく、時間軸(位相)方向にも外乱を受けている。この位相外乱を避ける方式として第2ウォブル(STW)では、復調器の検波基本信号の位相を調整する目的でリファレンス信号が設けられ、位相調整を行っている。このSTWの位相値をMSK位相調整に加算する方法も考案されているが、回路規模が大きくなる問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、隣接トラックからのクロストークによる位相変動のためにMSK復調信号が低減しても十分に復調でき、アドレスエラーレートを低減させることが可能な、新規かつ改良された復調装置、復調方法、情報再生装置およびコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、入力信号に含まれる所定の変調信号に対する搬送波を発生させて出力する搬送波発生回路と、入力信号に搬送波を乗じて出力する乗算器と、乗算器の出力を所定の期間加算して出力する加算器と、加算器の出力に所定のオフセット値を加算または減算して出力するスライスレベル調整部と、スライスレベル調整部の出力の正負を判定して判定結果を出力する正負判定回路と、を含み、スライスレベル調整部は、少なくとも加算器の出力の最小値を用いて所定のオフセット値を決定する、復調装置が提供される。
【0012】
かかる構成によれば、搬送波発生回路は入力信号に含まれる所定の変調信号に対する搬送波を発生させて出力し、乗算器は入力信号に搬送波を乗じて出力し、加算器は乗算器の出力を所定の期間加算して出力する。また、スライスレベル調整部は加算器の出力に所定のオフセット値を加算または減算して出力し、正負判定回路はスライスレベル調整部の出力の正負を判定して判定結果を出力する。そして、スライスレベル調整部は、少なくとも加算器の出力の最小値を用いて所定のオフセット値を決定する。その結果、少なくとも、加算器の出力の最小値を用いて所定のオフセット値を決定することで、MSK復調信号が低減しても十分に復調でき、アドレスエラーレートを低減させることができる。
【0013】
スライスレベル調整部は、加算器の出力の最大値と最小値の平均値を所定のオフセット値としてもよい。この場合に、スライスレベル調整部は、加算器の出力の最大値と最小値の平均値が復調波の中心値から離れている場合に、離れている方向に所定のオフセット値を設定してもよい。
【0014】
スライスレベル調整部は、加算器の出力の最小値に復調エラーレートを勘案した所定量を加算した値を所定のオフセット値としてもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、入力信号に含まれる所定の変調信号に対する搬送波を発生させて出力する搬送波発生ステップと、入力信号に搬送波を乗じて出力する乗算ステップと、乗算ステップの出力を所定の期間加算して出力する加算ステップと、加算ステップの出力に所定のオフセット値を加算または減算して出力するスライスレベル調整ステップと、スライスレベル調整ステップの出力の正負を判定して判定結果を出力する正負判定ステップと、を含み、スライスレベル調整ステップは、少なくとも加算ステップの出力の最小値を用いて所定のオフセット値を決定する、復調方法が提供される。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、記録媒体から情報を読み取って得られる入力信号に含まれる所定の変調信号に対する搬送波を発生させて出力する搬送波発生回路と、入力信号に搬送波を乗じて出力する乗算器と、乗算器の出力を所定の期間加算して出力する加算器と、加算器の出力に所定のオフセット値を加算または減算して出力するスライスレベル調整部と、スライスレベル調整部の出力の正負を判定して判定結果を出力する正負判定回路と、を含み、スライスレベル調整部は、少なくとも加算器の出力の最小値を用いて所定のオフセット値を決定する、情報再生装置が提供される。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、入力信号に含まれる所定の変調信号に対する搬送波を発生させて出力する搬送波発生ステップと、入力信号に搬送波を乗じて出力する乗算ステップと、乗算ステップの出力を所定の期間加算して出力する加算ステップと、加算ステップの出力に所定のオフセット値を加算または減算して出力するスライスレベル調整ステップと、スライスレベル調整ステップの出力の正負を判定して判定結果を出力する正負判定ステップと、をコンピュータに実行させ、スライスレベル調整ステップは、少なくとも加算ステップの出力の最小値を用いて所定のオフセット値を決定する、コンピュータプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、隣接トラックからのクロストークによる位相変動のためにMSK復調信号が低減しても十分に復調でき、アドレスエラーレートを低減させることが可能な、新規かつ改良された復調装置、復調方法、情報再生装置およびコンピュータプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
また、以下の順序に従って本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
〔1〕本発明の第1の実施形態
〔2〕本発明の第2の実施形態
〔3〕本発明の第3の実施形態
〔4〕本発明の第4の実施形態
【0021】
〔1〕本発明の第1の実施形態
<光ディスク装置の構成>
まず、本発明の第1の実施形態にかかる光ディスク装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態にかかる光ディスク装置100の構成について説明する説明図である。以下、図1を用いて本発明の第1の実施形態にかかる光ディスク装置100の構成について説明する。
【0022】
図1に示した光ディスク装置100は、光ディスク1の記録面に対して情報を記録したり、光ディスク1の記録面に記録された情報を、光ディスク1の記録面から読み出して再生したりするものである。光ディスク1としては、例えばDVD−RやBlu−ray Disc(登録商標)その他の記録/再生が可能な光ディスクがある。
【0023】
図1に示したように、本発明の第1の実施形態にかかる光ディスク装置100は、スピンドルサーボ回路102と、スピンドルドライバ104と、スピンドルモータ106と、光学ブロックサーボ回路108と、スレッドドライバ110と、スレッド機構112と、2軸ドライバ114と、光学ブロック116と、レーザパワー制御部118と、記録パルス変換回路120と、ECCエンコーダ/デコーダ122と、マトリクス回路124と、PLL回路126と、データ復調回路128と、ADIP復調回路130と、アドレスデコーダ132と、CPU134と、を含んで構成される。
【0024】
ディスク1は、ターンテーブル(図示せず)に積載され、記録/再生動作時においてスピンドルモータ106によって一定線速度(CLV)や一定回転(CAV)で回転駆動される。そして光学ブロック116によってディスク1上のグルーブトラックのウォブリングとして埋め込まれたADIP情報が読み出される。なお、ディスク1上には、再生専用の管理情報として例えばディスクの物理情報等がエンボスピット又はウォブリンググルーブによって記録されるが、これらの情報の読出も光学ブロック116により行われる。
【0025】
光ディスク1へのデータ記録時には光学ブロック116によってトラックにユーザーデータがフェイズチェンジマークとして記録され、光ディスク1からのデータ再生時には光学ブロック116によって記録されたマークの読出が行われる。
【0026】
光学ブロック116内には、レーザ光源となるレーザダイオードや、反射光を検出するためのフォトディテクタ、レーザ光の出力端となる対物レンズ、対物レンズを介してレーザ光を光ディスク1の記録面に照射し、またその反射光をフォトディテクタに導く光学系(図示せず)が形成される。レーザダイオードは、例えば波長405nmのいわゆる青色レーザを出力する。また光学系によるNA(Numerical Aperture;開口数)は0.85である。
【0027】
光学ブロック116内において対物レンズは二軸機構によってトラッキング方向及びフォーカス方向に移動可能に保持されている。光学ブロック116全体はスレッド機構112によりディスク半径方向に移動可能とされている。また、光学ブロック116におけるレーザダイオードはレーザパワー制御部118からのドライブ信号(ドライブ電流)によってレーザ発光駆動される。
【0028】
光ディスク1からの反射光情報は光学ブロック116内部のフォトディテクタによって検出され、受光光量に応じた電気信号とされてマトリクス回路124に供給される。マトリクス回路124は、フォトディテクタとしての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備えており、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
【0029】
例えば、マトリクス回路124は、再生データに相当する高周波信号(再生データ信号)、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号などを生成する。さらに、グルーブのウォブリングに係る信号、即ちウォブリングを検出する信号としてプッシュプル信号を生成する。マトリクス回路124から出力されるデータ信号はデータ復調回路128、ADIP復調回路130およびPLL回路126へ、それぞれ供給される。
【0030】
データ復調回路128は、再生時におけるデコード処理として、再生クロックに基づいてランレングスリミテッドコードの復調処理を行う。復調処理されたデータはECCエンコーダ/デコーダ122に供給される。
【0031】
ECCエンコーダ/デコーダ122は、データ記録時にエラー訂正コードを付加するECCエンコード処理と、データ再生時にエラー訂正を行うECCデコード処理を行う。データ再生時には、データ復調回路128で復調されたデータを内部メモリに取り込んで、エラー検出/訂正処理及びデインターリーブ等の処理を行い、再生データを得る。ECCエンコーダ/デコーダ122で再生データにまでデコードされたデータは、CPU134の指示に基づいて読み出され、後段のシステム(図示せず)に転送される。
【0032】
グルーブのウォブリングに係る信号としてマトリクス回路124から出力されるプッシュプル信号はデジタル化されることでウォブルデータとなり、ウォブルデータはADIP復調回路130でMSK復調およびSTW復調され、ADIPアドレスを構成するデータストリームに復調されてアドレスデコーダ132に供給される。アドレスデコーダ132は、供給されるデータについてのデコードを行い、アドレス値を得て、当該アドレス値をCPU134に供給する。
【0033】
データを光ディスク1に記録する時には、システム(図示せず)から記録データが転送されてくるが、その記録データはECCエンコーダ/デコーダ122におけるメモリに送られてバッファリングされる。この場合、ECCエンコーダ/デコーダ122は、バファリングされた記録データのエンコード処理として、エラー訂正コード付加やインターリーブ、サブコード等の付加を行う。また、ECCエンコーダ/デコーダ122でエンコードされたデータは、記録パルス変換回路120においてRLL(1−7)PP方式(RLL;Run Length Limited、PP:Paritypreserve/Prohibitrmtr(repeated minimum transitionrunlength))の変調が施される。なお、データ記録時においてこれらのエンコード処理のための基準クロックとなるエンコードクロックはウォブル信号から生成したクロックを用いる。
【0034】
記録パルス変換回路120でのエンコード処理により生成された記録データは、レーザパワー制御部118で、記録補償処理として、記録層の特性、レーザ光のスポット形状、記録線速度等に対する最適記録パワーの微調整やレーザドライブパルス波形の調整などが行われる。そして、レーザパワー制御部118は、記録補償処理したレーザドライブパルスを光学ブロック116内のレーザダイオードに与えてレーザ発光駆動を実行させる。これにより光ディスク1に記録データに応じたピット(フェイズチェンジマーク)が形成されることになる。
【0035】
なお、レーザパワー制御部118は、いわゆるAPC回路(Auto Power Control)を備え、光学ブロック116内に設けられたレーザパワーのモニタ用ディテクタの出力によりレーザ出力パワーをモニタしながら、レーザの出力が温度などによらず一定になるように制御する。記録時及び再生時のレーザ出力の目標値はCPU134から与えられ、記録時及び再生時にはそれぞれレーザ出力レベルが、その目標値になるように制御される。
【0036】
光学ブロックサーボ回路108は、マトリクス回路124からのフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号から、フォーカス、トラッキング、スレッドの各種サーボドライブ信号を生成しサーボ動作を実行させる。即ち、光学ブロックサーボ回路108はフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号に応じてフォーカスドライブ信号、トラッキングドライブ信号を生成し、2軸ドライバ114により光学ブロック116内の二軸機構のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することになる。この駆動によって、光学ブロック116、マトリクス回路124、光学ブロックサーボ回路108、2軸ドライバ114、二軸機構によるトラッキングサーボループ及びフォーカスサーボループが形成される。
【0037】
また、光学ブロックサーボ回路108は、CPU134からのトラックジャンプ指令に応じて、トラッキングサーボループをオフとし、ジャンプドライブ信号を出力することで、トラックジャンプ動作を実行させる。
【0038】
また、光学ブロックサーボ回路108は、トラッキングエラー信号の低域成分として得られるスレッドエラー信号や、CPU134からのアクセス実行制御などに基づいてスレッドドライブ信号を生成し、スレッドドライバ110によりスレッド機構112を駆動させる。スレッド機構112には、図示しないが、光学ブロック116を保持するメインシャフト、スレッドモータ、伝達ギア等による機構を有し、スレッドドライブ信号に応じてスレッドモータを駆動させることで、光学ブロック116における所要のスライド移動が行なわれる。
【0039】
スピンドルサーボ回路102はスピンドルモータ106をCLV回転(Constant Linear Velocity;線速度一定)やCAV回転(Constant Angular Velocity;回転数一定)させるよう制御する。スピンドルサーボ回路102は、ウォブル信号に対するPLL処理で生成されるクロックを、現在のスピンドルモータ106の回転速度情報として得て、その回転速度情報を所定のCLV基準速度情報と比較することで、スピンドルエラー信号を生成する。
【0040】
データ再生時においては、PLL回路126によって生成される再生クロック(デコード処理の基準となるクロック)が、現在のスピンドルモータ106の回転速度情報となるため、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成することもできる。
【0041】
そして、スピンドルサーボ回路102は、スピンドルエラー信号に応じて生成したスピンドルドライブ信号を出力し、スピンドルドライバ104によりスピンドルモータ106のCLV回転を実行させる。また、スピンドルサーボ回路102は、CPU134からのスピンドルキック/ブレーキ制御信号に応じてスピンドルドライブ信号を発生させ、スピンドルモータ106の起動、停止、加速、減速などの動作も実行させる。
【0042】
以上のようなサーボ系及び記録再生系の各種動作はCPU134により制御される。CPU134は、システム(図示せず)からのコマンドに応じて各種処理を実行する。例えば、システムから書込命令(ライトコマンド)が送出されると、CPU134は、まず書き込むべきアドレスに光学ブロック116を移動させる。そして、ECCエンコーダ/デコーダ122、および記録パルス変換回路120により、システムから転送されてきたデータ(例えばMPEG2その他の方式によるビデオデータや、オーディオデータ等)について上述したようにエンコード処理を実行させる。そして、上述したようにエンコードされたデータに応じてレーザパワー制御部118が光学ブロック116からのレーザ発光駆動を制御することで、光ディスク1への記録が実行される。
【0043】
また例えば、システムから光ディスク1に記録されているデータ(例えばMPEG2その他の方式のビデオデータや、オーディオデータ等)の転送を求めるリードコマンドがCPU134に送出された場合は、まず指示されたアドレスを目的アドレスとしてシーク動作制御を行う。即ち、光学ブロックサーボ回路108に指令を出し、シークコマンドにより指定されたアドレスをターゲットとして、光学ブロック116のアクセス動作を実行させる。その後、指示されたデータ区間のデータをシステムに転送するために必要な動作制御を行う。即ち、光ディスク1からのデータ読出を行い、マトリクス回路124、データ復調回路128、ECCエンコーダ/デコーダ122におけるデコード/バファリング等を実行させ、要求されたデータを転送する。
【0044】
なお、これらのフェイズチェンジマークによるデータの記録再生時には、CPU134は、ADIP復調回路130およびアドレスデコーダ132によって検出されるADIPアドレスを用いてアクセスや記録再生動作を制御する。
【0045】
以上、図1を用いて本発明の第1の実施形態にかかる光ディスク装置100の構成について説明した。次に、本発明の第1の実施形態にかかる光ディスク装置100の、ADIP復調回路130の構成について説明するが、説明に入る前に、Blu−ray Disc(登録商標)で用いられている、MSK変調信号およびSTW変調信号が重畳された光ディスクのウォブル構造と、MSK変調波およびSTW変調波の信号波形について説明する。
【0046】
<光ディスクのウォブル構造>
図2は、MSK変調信号およびSTW変調信号が重畳された光ディスク1のウォブル構造ついて説明する説明図である。図2に示したように、光ディスクのウォブル構造は凸状のランドと、凹状のグルーブとが交互に形成されている構造をとっており、光ディスクのウォブル構造は接線方向に対して蛇行形成されている。このグルーブの蛇行形状は、ウォブル信号に応じた形状となっている。そのため、光ディスク装置では、グルーブに照射したレーザスポット2の反射光からそのグルーブの両エッジ位置を検出し、レーザスポットを記録トラックに沿って移動させていった際におけるその両エッジ位置のディスク半径方向に対する変動成分を抽出することにより、ウォブル信号を再生することができる。
【0047】
このウォブル信号には、当該記録位置における記録トラックのアドレス情報(物理アドレスその他の付加情報等)が変調されている。そのため、光ディスクドライブでは、このウォブル信号からアドレス情報等を復調することによって、データの記録や再生の際のアドレス制御等を行うことができる。
【0048】
<MSK変調波の波形>
図3は、MSK変調波の波形について説明する説明図である。図3においては、モノトーンウォブルMWに挟まれた3ウォブル周期の領域にMSK変調波形(MM1、MM2、MM3)が存在している状態を示している。また、図3では、縦軸の上側がディスクの内側(inner side of disc)に相当し、下側がディスクの外側(outer side of disc)に相当する。なお、何らデータの変調がされておらず、基準キャリア信号の周波数成分だけが現れる無変調部分のことをモノトーンウォブルと称する。
【0049】
図3のようにモノトーンウォブルをCos(ωt)と表現すると、MSK変調に用いられる2つの周波数は、一方を基準キャリア信号と同一の周波数とし、他方を基準キャリア信号の1.5倍の周波数とするため、MSK変調に用いられる信号波形は、一方がCos(ωt)又は−Cos(ωt)となり、他方がCos(1.5ωt)又は−Cos(1.5ωtとなる。
【0050】
そして図3に示したMSK変調波の波形では、2つのモノトーンウォブルと、MSK変調領域と、2つのモノトーンウォブルを示しており、その場合、MSKストリームの信号波形は、1ウォブル周期毎に、Cos(ωt),Cos(ωt),Cos(1.5ωt),−Cos(ωt),−Cos(1.5ωt),Cos(ωt)といった波形となる。なお図3では、モノトーンウォブルのCos(ωt)=cos{2π・(fwob)・t}として示しており(fwobは基準キャリア周波数)、従って、MSK変調領域としての3ウォブル期間は、MM1=cos{2π・(1.5・fwob)・t}、MM2=−cos{2π・(fwob)・t}、MM3=−cos{2π・(1.5・fwob)・t}となる。
【0051】
このように1個目のウォブル周期期間(MM1)はモノトーンウォブルの1.5倍の周波数、2個目(MM2)はモノトーンウォブルと同じ周波数、3個目(MM3)はモノトーンウォブルの1.5倍の周波数とされ、この3ウォブル期間で位相が戻る。つまり前後のモノトーンウォブルと位相が連続した状態であり、しかも2個目のウォブル(MM2)はモノトーンウォブルに対して極性が反転したものとなる。
【0052】
光ディスク1では、ウォブル信号を以上のようなMSKストリームとすることによって、ウォブル信号にアドレス情報を変調しており、このMSK変調信号は以下の理由により同期検波が可能なものとなる。すなわち、光ディスク1のウォブル信号にMSK変調方式で被変調データを挿入する場合、まず、被変調データのデータストリームに対して、ウォブル周期に対応するクロック単位で差動符号化処理をする。すなわち、被変調データのストリームと、基準キャリア信号の1周期分遅延させた遅延データとを差分演算する。この差動符号化処理をしたデータを、プリコードデータとする。続いて、このプリコードデータをMSK変調して、上記のようなMSKストリームを生成する。
【0053】
上記差動符号化データ(プリコードデータ)は、被変調データの符号変化点でビットが立つ(“1”となる)。被変調データの符号長がウォブル周期の2倍以上とされているので、被変調データの符号長の後半部分には、必ず基準キャリア信号(Cos(ωt))又はその反転信号(−Cos(ωt))が挿入されることとなる。プリコードデータのビットが“1”となると、基準キャリア信号に対して1.5倍の周波数の波形が挿入され、さらに、符号の切り換え点においては位相を合わせて波形が接続される。従って、被変調データの符号長の後半部分に挿入される信号波形は、被変調データが“0”であれば、必ず基準キャリア信号波形(Cos(ωt))となり、被変調データが“1”であれば必ずその反転信号波形(−Cos(ωt))となる。同期検波出力は、キャリア信号に対して位相が合っていれば、プラス側の値になり、位相が反転していればマイナス側の値となるので、以上のようなMSK変調した信号を基準キャリア信号により同期検波すれば、被変調データの復調が可能となるものである。
【0054】
<STW変調波の波形>
図4はSTW変調波の波形について示す説明図である。STW変調は、正弦波のキャリア信号に対して偶数次の高調波信号を付加し、当該高調波信号の極性を被変調データの符号に応じて変化させることによってデジタル符号を変調する変調方式である。図4でも、縦軸の上側がディスクの内側(inner side of disc)に相当し、下側がディスクの外側(outer side of disc)に相当する。光ディスク1では、STW変調のキャリア信号は、上記MSK変調のキャリア信号である基準キャリア信号(Cos(ωt))と同一周波数及び位相の信号としている。付加する偶数次の高調波信号は、基準キャリア信号(Cos(ωt))の2次高調波であるSin(2ωt)、−Sin(2ωt)とし、その振幅は、基準キャリア信号の振幅に対して−12dBの振幅としている。被変調データの最小符号長は、ウォブル周期(基準キャリア信号の周期)の2倍としている。そして、被変調データの符号が“1”のときにはSin(2ωt)をキャリア信号に付加し、“0”のときには−Sin(2ωt)をキャリア信号に付加して変調を行うものとする。このようにウォブル信号を変調した際の波形が図4に示した波形である。
【0055】
中央のウォブル期間に基準キャリア信号(Cos(ωt))のモノトーンウォブルMWの信号波形を示している。そしてその前の2つのウォブル期間において、基準キャリア信号(Cos(ωt))に対してSin(2ωt)が付加された信号波形、即ち、被変調データが“1”のときの信号波形を示している。またモノトーンウォブルMWの後の2ウォブル期間において、基準キャリア信号(Cos(ωt))に対して−Sin(2ωt)が付加された信号波形、即ち、被変調データが“0”のときの信号波形を示している。
【0056】
なお図面では、モノトーンウォブルのCos(ωt)=cos{2π・(fwob)・t}として示しており、従って、STW変調信号は、被変調データが“1”の場合、cos{2π・(fwob)・t}+a・sin{2π・(2・fwob)・t}となり、被変調データが“0”の場合、cos{2π・(fwob)・t}−a・sin{2π・(2・fwob)・t}となるとして示している。
【0057】
図4からわかるように、このSTW信号波形は、ディスク外周側に急峻に立ち上がり、内周側に緩やかに戻る波形と、その逆にディスク外周側に緩い傾斜で立ち上がって急峻に戻る波形となり、これによって「1」「0」の値が表現される。またどちらの波形の場合も、破線で示すモノトーンウォブルMWと共通のゼロクロスポイントを有するものとなる。従ってMSK方式のモノトーンウォブルMWの部分と共通の基本波成分からクロックを抽出するに当たって、その位相に影響を与えない。
【0058】
そしてこのように基準キャリア信号に対して正負の偶数次の高調波信号を付加した場合
には、その生成波形の特性から、この高調波信号により同期検波して、被変調データの符
号長時間その同期検波出力を積分することによって、被変調データを復調することが可能
である。
【0059】
Blu−ray Disc(登録商標)の記録再生装置では、ディスクの記録面上のウォブルに位置を示すMSK変調とSTW変調の2つの方式で記録されたアドレスを読み取り、目標とした場所にピックアップまたはディスクを移動させている。MSK変調とSTW変調とを含んだウォブル信号を、復調器で2値化して、アドレスデコーダでさらに意味あるビット列に変換する。変換されたビット列はECC訂正処理され、CPUでアドレスとして判断されている。その後、目標としたアドレスに移動するために、CPUはサーボコントロール回路に指示を伝え、光学ブロックは光ピックアップを指示位置に移動させる。光ピックアップが目標アドレスに到着した後、光ディスクからデータを読み取ったり、ピックアップ部から照射されるレーザを変調することで光ディスクにデータを記録したりすることができる。
【0060】
以上、MSK変調信号およびSTW変調信号が重畳された光ディスクのウォブル構造と、MSK変調波およびSTW変調波の信号波形について説明した。次に、従来の光ディスク装置に設けられている、MSK変調された信号を復調するためのMSK復調回路の構成の一例について説明する。
【0061】
<従来のMSK復調回路の構成の一例>
図5は、従来のMSK復調回路の構成の一例について説明する説明図である。図5に示したように、従来のMSK復調回路10は、A/D変換器11と、PLL回路12と、ディレイユニット13と、搬送波発生回路14と、乗算器15と、加算器16と、正負判定回路17と、を含んで構成される。
【0062】
A/D変換器11は、MSK復調回路10に入力されてくるアナログのウォブル信号をデジタルの信号に変換して出力するものである。PLL回路12は、MSK復調回路10に入力されてくるウォブル信号と同じ位相、同じ周波数で発振する発振器を備えている。かかる位相および周波数で発振するマスタークロックは、ウォブルサイクル(Wobble Cycle)として、PLL回路12からA/D変換器11、搬送波発生回路14および加算器16に送られる。ディレイユニット13は、PLL回路12で作られたマスタークロック(ウォブルクロック信号)を遅延させることで、復調用の基本波の位相を入力ウォブルと一致させるためのものである。
【0063】
搬送波発生回路14は、ディレイユニット13からの信号をスタートパルスとして、PLL回路12から送られるマスタークロックに従ってSin波の信号波形を発生させるものである。乗算器15は、A/D変換器11の出力と、搬送波発生回路14で発生させたSin波とを乗算して出力する。加算器16は、ディレイされたウォブルクロックの区間で、乗算器15で得られたデータを積分するものである。
【0064】
正負判定回路17は、加算器16から出力されるデータの正負を判定するものである。ディレイユニット13における位相調整ディレイを適切に選択すると、加算器16から出力されるデータはMSK波が含まれる部分で負の値となる。そのため、正負判定回路17は加算器16の出力のMSB(Most Significant Bit;最上位ビット)を出力している。
【0065】
以上、従来のMSK復調回路の構成の一例について説明した。かかるMSK復調回路は、隣接トラックからのクロストークによる位相変動のため、MSK復調信号が低減すると十分に復調できないという問題があった。そのためにアドレスエラーレートが増加し、ばらつきの大きい記録再生メディアに対しては安定した記録再生ができないという問題があった。次に、かかる問題を解決した、本発明の第1の実施形態にかかる光ディスク装置100の、ADIP復調回路130の構成について説明する。
【0066】
<ADIP復調回路の構成>
図6は、本発明の第1の実施形態にかかるADIP復調回路130の構成について説明する説明図である。以下、図6を用いて本発明の第1の実施形態にかかるADIP復調回路130の構成について説明する。
【0067】
図6に示したように、本発明の第1の実施形態にかかるADIP復調回路130は、A/D変換器141と、ディレイユニット143と、搬送波発生回路144と、乗算器145と、加算器146と、正負判定回路147と、スライスレベル調整部148と、を含んで構成される。
【0068】
A/D変換器141は、PLL回路142から送られてくるクロックに応じて動作し、ADIP復調回路130に入力されてくるアナログのウォブル信号をデジタルの信号に変換して出力するものである。A/D変換器141で変換されたデジタルのウォブル信号は、PLL回路142および乗算器145に送られる。
【0069】
PLL回路142は、図1に示したPLL回路126に含まれるPLL回路であり、ADIP復調回路130に入力されてくるウォブル信号と同じ位相、同じ周波数で発振する回路である。PLL回路142には、図示しないが、ADIP復調回路130に入力されてくるウォブル信号と同じ位相、同じ周波数で発振するための発振器を備えていてもよい。PLL回路142から出力されるマスタークロックは、ウォブルサイクル(Wobble Cycle)としてA/D変換器141、搬送波発生回路144および加算器146に送られる。
【0070】
ディレイユニット143は、PLL回路142で作られたマスタークロック(ウォブルクロック信号)を遅延させることで、復調用の基本波の位相をADIP復調回路130に入力されるウォブル信号と一致させるためのものである。なお、ディレイユニット143は、フリップフロップとセレクタで構成されていてもよく、デジタルカウンタを用いてもよい。またディレイユニット143は、キャパシタおよび抵抗を用いたアナログ回路を用いてもよく、バッファとセレクタを用いた遅延回路を用いてもよい。
【0071】
搬送波発生回路144は、ディレイユニット143からの信号をスタートパルスとして、PLL回路142から送られるマスタークロック(ウォブルクロック信号)に従ってSin波の信号波形を発生させるものである。なお、搬送波発生回路144としては、Sin波の信号を発生させるものであれば、ROMテーブル回路を用いてもよく、RAMを用いてCPUから設定してもよく、発振器を用いたアナログ回路でもあってもよい。また、搬送波発生回路144で発生させる信号は復調するための基準信号を発生するものであればSin波以外のものであってもよく、例えばCos波であってもよく、矩形波であってもよい。
【0072】
乗算器145は、A/D変換器141の出力と、搬送波発生回路144で発生させたSin波とを乗算して出力するものである。乗算器145における乗算結果は加算器146に送られる。加算器146は、ディレイユニット143で遅延されたウォブルクロックの区間で、乗算器145で得られたデータを積分するものである。なお、加算器146としては、積分する回路であればデジタル回路またはアナログ回路を用いてもよい。
【0073】
スライスレベル調整部148は、加算器146の出力にオフセットを加えて出力するものである。スライスレベル調整部148は、MPU(Micro Processing Unit)151と、AND回路152と、加算器153と、を含んで構成される。
【0074】
MPU151は、加算器153において、加算器146から出力される値に加算する値(スライスレベル)を設定するものである。加算器146に加算する値としては、正負いずれの値もとることができる。
【0075】
AND回路152は、MPU151からの出力と、アドレスデコーダ132から送られてくるBit Sync LOCK信号とが入力される回路であり、Bit Sync LOCK信号がHIGH状態である場合に、MPU151からの出力を加算器153に供給する。アドレスデコーダ132は、正負判定回路147から送られてきたビット列(MSK Mark Bit)からからフォーマットに従って、Sync UnitおよびData Unitを検出する。アドレスデコーダ132は、一旦Sync Markを見つけると、次に来るMarkの位置を予想して、Mark位置以外の位置にMarkを受信しても無視する機能を有している。この無視する機能が有効になったことを示す信号をBit Sync LOCK信号と称している。
【0076】
なお、本実施形態では、Bit Sync LOCK信号がHIGH状態である場合に、MPU151からの出力を加算器153に供給するように構成したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもなく、MPU151からの出力を加算器153に供給するように構成してもよい。
【0077】
正負判定回路147は、加算器146から出力され、スライスレベル調整部148でオフセットが加えられたデータの正負を判定するものである。ディレイユニット143における位相調整ディレイを適切に選択すると、加算器146から出力されるデータはMSK波が含まれる部分で負の値となる。そのため、正負判定回路147は加算器16の出力のMSB(Most Significant Bit;最上位ビット)を出力している。なお、位相ディレイ値と入力ウォブルの極性の組み合わせで、MSK波が含まれている部分において正の値を用いて、正負判定回路147で正負を判定してもよい。
【0078】
以上、本発明の第1の実施形態にかかるADIP復調回路130の構成について説明した。次に、本発明の第1の実施形態にかかるADIP復調回路130の動作について説明する。
【0079】
<ADIP復調回路130の動作>
トラックピッチとウォブル周期の関係で、隣接トラックからのビートの影響によってウォブル信号が変化する場合がある。図7および図8は、隣接トラックからビートが加わった場合のウォブル信号を示す説明図である。図7の(a)〜(c)に示したグラフは、隣接トラックからのビートによって振幅に変調が加わったようにウォブル信号が変化したことを示しており、図8の(a)〜(c)に示したグラフは、隣接トラックからのビートによって位相に変調が加わったようにウォブル信号が変化したことを示している。
【0080】
例えば、DVD+RWのフォーマットの場合、ビートは振幅に影響を及ぼす。また、Blu−ray(登録商標)フォーマットの場合ビートは位相に影響を及ぼす関係になっている。つまり、Blu−ray(登録商標)フォーマットの場合、ウォブル信号に同期したクロックを生成するPLL(ウォブルPLL)はビートに追従した波形に同期しており、ビートの影響が大きい部分においては、Markの検出を行なう乗算回路の搬送波の位相とは異なってしまったり、Mark部の振幅が小さくなったりする。
【0081】
隣接トラックからのウォブル信号によるビートの周波数は以下のように計算される。
Fbeat:ビート周波数
Fwbl:ウォブル周波数
Tp:トラックピッチ
r:該当半径
とした場合に、
Fbeat≒Tp/r × Fwbl
【0082】
その時の各種ディスクにおける、半径25mm付近のビート周期は以下の通りとなる。
CD 1.6 / 25 × 22.05 = 1.4 [Hz]
DVD- 0.74/ 25 × 140.6 = 4.1 [Hz]
DVD+ 0.74/ 25 × 818 = 24.2 [Hz]
BD 0.32/ 25 × 957 = 12.2 [Hz]
【0083】
図9は、ADIP復調回路130に入力されるウォブル信号が、隣接トラックからのビートの影響を受けていない場合における、ADIP復調回路130での復調波形の一例を示す説明図である。隣接トラックからのビートの影響が無ければ、図9に示したように、ADIP復調回路130に入力されるウォブル信号の反転区間(図9の(1)で示した区間)において加算器146の積分結果は負の値を示し、当該反転区間がMark部であると認識することができる。
【0084】
しかし、ADIP復調回路130に入力されるウォブル信号が、隣接トラックからのビートの影響を受けた場合において、何ら対策を施さないと上記反転区間がMark部であると認識することができないおそれがある。図10は、ADIP復調回路130に入力されるウォブル信号が、隣接トラックからのビートの影響を受けている場合における、ADIP復調回路130での復調波形の一例を示す説明図である。図10では、隣接トラックからのビートの影響により、ADIP復調回路130に入力されるウォブル信号の振幅が減少し、位相がずれてしまった場合における、ADIP復調回路130での復調波形について示している。
【0085】
図10に示したように、ADIP復調回路130に入力されるウォブル信号の反転区間(図10の(1)で示した区間)において、隣接トラックからのビートの影響があると、Mark部の復調値が減少し、当該反転区間がMark部であると認識することができなくなってしまう場合がある。
【0086】
そこで、本実施形態においては、ADIP復調回路130において、Mark部を検出しやすくなるために、スライスレベルを変える機構としてスライスレベル調整部148を設けたことを特徴とする。
【0087】
本発明の第1の実施形態にかかるADIP復調回路130においては、上述したようにMPU151でスライスレベルを設定する。設定されたスライスレベルは、AND回路152を経由して、加算器153において、加算器146の出力と加算(または減算)される。このように、スライスレベル調整部148において加算器146の出力に対して加算(または減算)処理を行うことで、ADIP復調回路130において、Mark部の検出が容易になる。
【0088】
以上、本発明の第1の実施形態にかかるADIP復調回路130の動作について説明した。なお、Mark部の検出を容易にした場合、ノイズの影響でMark部ではない場所をMark部と誤検出してしまう場合がある。そのため、誤検出を避けるためにアドレスデコーダ132からのBit Sync LOCK信号が有効である間だけ、スライスレベル調整部148においてスライスレベルを変化させるようにしてもよい。Bit Sync LOCK信号が有効である場合に、アドレスデコーダ132はMark部のあるべき位置のみMark信号を検出することで、Markの欠落を低減することが可能となる。
【0089】
〔2〕本発明の第2の実施形態
続いて、本発明の第2の実施形態にかかるADIP復調回路の構成について説明する。本発明の第1の実施形態では、MPU151でスライスレベルを設定していたが、本発明の第2の実施形態では、復調振幅の最大と最小との中心を用いてスライスレベルを設定するADIP復調回路について説明する。
【0090】
図11は、本発明の第2の実施形態にかかるADIP復調回路230の構成について説明する説明図である。図11に示した本発明の第2の実施形態にかかるADIP復調回路230は、本発明の第1の実施形態にかかるADIP復調回路130に置き換えられるものであり、図5に示した本発明の第1の実施形態にかかるADIP復調回路130と比較して、スライスレベル調整部248の構成が異なっている。図11に示したADIP復調回路230におけるスライスレベル調整部248は、MPU251と、更新間隔調整部252と、ピーク検出部253と、ボトム検出部254と、加算器255と、平均化部256と、AND回路257と、減算器258と、を含んで構成される。
【0091】
MPU251は、更新間隔調整部252に対して、ピーク検出部253およびボトム検出部254におけるデータの更新間隔の情報を送出する。更新間隔調整部252は、MPU251から更新間隔の情報を受け取ると、PLL回路からのクロックに基づいて、MPU251から受け取った更新間隔で、加算器246における積分結果のピーク及び底(ボトム)をピーク検出部253およびボトム検出部254に検出させる。
【0092】
ピーク検出部253は、所定の更新間隔で加算器246における積分結果のピークを検出するものである。ボトム検出部254は、所定の更新間隔で加算器246における積分結果の底を検出するものである。ピーク検出部253およびボトム検出部254における検出結果は加算器255に送られて加算され、加算結果は平均化部256で平均化される。平均化部256で平均化された結果が、減算器258において加算器246の積分結果から減算されることで、スライスレベルを調整することができる。
【0093】
なお、本実施形態における更新間隔としては、例えば1/20秒(20Hz)程度であってもよい。また、本実施形態ではハードウェア的にスライスレベルの調整を行っていたが、ハードウェア的な処理だけでなく、ソフトウェア的な処理によってスライスレベルを調整してもよい。例えば、ピーク検出部253およびボトム検出部254においてピークの値とボトムの値を検出し、検出した値をMPU251に渡して、MPU251で計算処理してからスライスレベルを制御してもよい。
【0094】
〔3〕本発明の第3の実施形態
続いて、本発明の第3の実施形態にかかるADIP復調回路の構成について説明する。本発明の第2の実施形態では、復調振幅の最大と最小との中心を用いてスライスレベルを設定するADIP復調回路について説明したが、本発明の第3の実施形態では、復調振幅の最大と最小との中心がずれていた場合に、ずれている方向にスライスレベルを調整するADIP復調回路について説明する。
【0095】
図12は、本発明の第3の実施形態にかかるADIP復調回路330の構成について説明する説明図である。図12に示した本発明の第3の実施形態にかかるADIP復調回路330は、本発明の第1の実施形態にかかるADIP復調回路130または本発明の第2の実施形態にかかるADIP復調回路230に置き換えられるものであり、図11に示した本発明の第2の実施形態にかかるADIP復調回路230と比較して、加算器255以降の構成が異なっている。図12に示したADIP復調回路330におけるスライスレベル調整部348は、MPU351と、更新間隔調整部352と、ピーク検出部353と、ボトム検出部354と、加算器355と、オペアンプ356と、スライスレベル設定部357と、フリップフロップ回路358と、AND回路359と、減算器360と、を含んで構成される。
【0096】
図12に示した本発明の第3の実施形態にかかるADIP復調回路330は、ピーク検出部353およびボトム検出部354で、加算器346の積分結果のピークの値とボトムの値を検出する。そして、ピーク検出部353およびボトム検出部354で検出したピークの値とボトムの値に差が生じているかどうかを、オペアンプ356、スライスレベル設定部357およびフリップフロップ回路358を用いて検出する。
【0097】
そして、ピーク検出部353およびボトム検出部354で検出したピークの値とボトムの値に差が生じていた場合には、スライスレベル設定部357によってずれている方向にスライスレベルを+1(または−1)変化させる。スライスレベル設定部357によってスライスレベルを少しずつ調整することで、応答速度を遅くかつ滑らかにすることができる。
【0098】
なお、本実施形態における更新間隔としては、例えば1/20秒(20Hz)程度であってもよい。また、本実施形態ではハードウェア的にスライスレベルの調整を行っていたが、ハードウェア的な処理だけでなく、ソフトウェア的な処理によってスライスレベルを調整してもよい。例えば、ピーク検出部353およびボトム検出部354において、加算器346の積分結果のピークの値とボトムの値を検出し、検出した値をMPU351に渡して、MPU351で計算処理してからスライスレベルを制御してもよい。
【0099】
このように、本発明の第3の実施形態にかかるADIP復調回路330によれば、ピーク検出部353およびボトム検出部354によって加算器346の積分結果のピークの値とボトムの値とを検出する。そして、検出したピークの値とボトムの値に差が生じているかどうかをオペアンプ356、スライスレベル設定部357およびフリップフロップ回路358で検出し、差が生じていた場合にスライスレベル設定部357でスライスレベルを変化させることで、Mark部の検出が容易になる。
【0100】
〔4〕本発明の第4の実施形態
続いて、本発明の第4の実施形態にかかるADIP復調回路の構成について説明する。本発明の第2の実施形態では、復調振幅の最大と最小との中心を用いてスライスレベルを設定するADIP復調回路について説明したが、本発明の第4の実施形態では、復調振幅のボトムのみを検出してスライスレベルを設定するADIP復調回路について説明する。
【0101】
図13は、本発明の第4の実施形態にかかるADIP復調回路430の構成について説明する説明図である。図13に示した本発明の第4の実施形態にかかるADIP復調回路430は、本発明の第1の実施形態にかかるADIP復調回路130、本発明の第2の実施形態にかかるADIP復調回路230または本発明の第3の実施形態にかかるADIP復調回路330に置き換えられるものであり、図11に示した本発明の第2の実施形態にかかるADIP復調回路230と比較して、加算器446の積分結果のボトムの値のみを検出している点が異なっている。図13に示したADIP復調回路430におけるスライスレベル調整部448は、MPU451と、更新間隔調整部452と、ボトム検出部453と、加算器454と、AND回路455と、減算器456と、を含んで構成される。
【0102】
図13に示したADIP復調回路430では、ボトム検出部453で検出した加算器446の積分結果のボトムの値に、MSKのエラーレートを勘案してMPU451から固定値を送出し、加算器454において両者を加算して出力している。本発明の第4の実施形態にかかるADIP復調回路430は、復調振幅のボトムのみを検出して、MSKのエラーレートを勘案した固定値を加算することによってスライスレベルを設定することができる。
【0103】
このように、本発明の第4の実施形態にかかるADIP復調回路430によれば、ボトム検出部453で検出した加算器446の積分結果のボトムの値に、MSKのエラーレートを勘案してMPU451から固定値を送出し、加算器454において両者を加算して出力することで、Mark部の検出が容易になる。
【0104】
以上説明したように、上記各実施形態によれば、スライスレベルを調整する機構をADIP復調回路の内部に設け、加算器の出力値を用いてスライスレベルを調整することで、Mark部の検出を容易にできる。その結果、隣接トラックからのクロストークによる位相変動のためにMSK復調信号が低減しても十分復調でき、アドレスエラーレートを低減させることができる。
【0105】
また、上記の第2〜第4の実施形態によれば、加算器の出力値の内、少なくとも最小値を用いてスライスレベルを調整している。少なくとも、加算器の出力値の最小値を用いることでMark部の検出を容易にし、アドレスエラーレートを低減させることができる。
【0106】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、復調装置、復調方法、情報再生装置およびコンピュータプログラムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる光ディスク装置100の構成について説明する説明図である。
【図2】MSK変調信号およびSTW変調信号が重畳された光ディスクのウォブル構造ついて説明する説明図である。
【図3】MSK変調波の波形について説明する説明図である。
【図4】STW変調波の波形について示す説明図である。
【図5】従来のMSK復調回路の構成の一例について説明する説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態にかかるADIP復調回路130の構成について説明する説明図である。
【図7】隣接トラックからビートが加わった場合のウォブル信号を示す説明図である。
【図8】隣接トラックからビートが加わった場合のウォブル信号を示す説明図である。
【図9】ADIP復調回路130での復調波形の一例を示す説明図である。
【図10】ADIP復調回路130での復調波形の一例を示す説明図である。
【図11】本発明の第2の実施形態にかかるADIP復調回路230の構成について説明する説明図である。
【図12】本発明の第3の実施形態にかかるADIP復調回路330の構成について説明する説明図である。
【図13】本発明の第4の実施形態にかかるADIP復調回路430の構成について説明する説明図である。
【符号の説明】
【0109】
100 光ディスク装置
102 スピンドルサーボ回路
104 スピンドルドライバ
106 スピンドルモータ
108 光学ブロックサーボ回路
110 スレッドドライバ
112 スレッド機構
114 2軸ドライバ
116 光学ブロック
118 レーザパワー制御部
120 記録パルス変換回路
122 ECCエンコーダ/デコーダ
124 マトリクス回路
126 PLL回路
128 データ復調回路
130 ADIP復調回路
132 アドレスデコーダ
134 CPU
141 A/D変換器
142 PLL回路
143 ディレイユニット
144 搬送波発生回路
145 乗算器
146 加算器
147 正負判定回路
148 スライスレベル調整部
151 MPU
152 AND回路
153 加算器
230、330、430 ADIP復調回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に含まれる所定の変調信号に対する搬送波を発生させて出力する搬送波発生回路と、
入力信号に前記搬送波を乗じて出力する乗算器と、
前記乗算器の出力を所定の期間加算して出力する加算器と、
前記加算器の出力に所定のオフセット値を加算または減算して出力するスライスレベル調整部と、
前記スライスレベル調整部の出力の正負を判定して判定結果を出力する正負判定回路と、
を含み、
前記スライスレベル調整部は、少なくとも前記加算器の出力の最小値を用いて前記所定のオフセット値を決定する、復調装置。
【請求項2】
前記スライスレベル調整部は、前記加算器の出力の最大値と最小値の平均値を前記所定のオフセット値とする、請求項1に記載の復調装置。
【請求項3】
前記スライスレベル調整部は、前記加算器の出力の最大値と最小値の平均値が復調波の中心値から離れている場合に、離れている方向に前記所定のオフセット値を設定する、請求項2に記載の復調装置。
【請求項4】
前記スライスレベル調整部は、前記加算器の出力の最小値に復調エラーレートを勘案した所定量を加算した値を前記所定のオフセット値とする、請求項1に記載の復調装置。
【請求項5】
記録媒体から情報を読み取って得られる入力信号に含まれる所定の変調信号に対する搬送波を発生させて出力する搬送波発生ステップと、
入力信号に前記搬送波を乗じて出力する乗算ステップと、
前記乗算ステップの出力を所定の期間加算して出力する加算ステップと、
前記加算ステップの出力に所定のオフセット値を加算または減算して出力するスライスレベル調整ステップと、
前記スライスレベル調整ステップの出力の正負を判定して判定結果を出力する正負判定ステップと、
を含み、
前記スライスレベル調整ステップは、少なくとも前記加算ステップの出力の最小値を用いて前記所定のオフセット値を決定する、復調方法。
【請求項6】
入力信号に含まれる所定の変調信号に対する搬送波を発生させて出力する搬送波発生回路と、
入力信号に前記搬送波を乗じて出力する乗算器と、
前記乗算器の出力を所定の期間加算して出力する加算器と、
前記加算器の出力に所定のオフセット値を加算または減算して出力するスライスレベル調整部と、
前記スライスレベル調整部の出力の正負を判定して判定結果を出力する正負判定回路と、
を含み、
前記スライスレベル調整部は、少なくとも前記加算器の出力の最小値を用いて前記所定のオフセット値を決定する、情報再生装置。
【請求項7】
入力信号に含まれる所定の変調信号に対する搬送波を発生させて出力する搬送波発生ステップと、
入力信号に前記搬送波を乗じて出力する乗算ステップと、
前記乗算ステップの出力を所定の期間加算して出力する加算ステップと、
前記加算ステップの出力に所定のオフセット値を加算または減算して出力するスライスレベル調整ステップと、
前記スライスレベル調整ステップの出力の正負を判定して判定結果を出力する正負判定ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記スライスレベル調整ステップは、少なくとも前記加算ステップの出力の最小値を用いて前記所定のオフセット値を決定する、コンピュータプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−49746(P2010−49746A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213098(P2008−213098)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】