説明

循環型血球分離フィルタチップ

【課題】従来用いられてきた血球分離フィルタ(ウェアフィルタ、メンブレンフィルタ、ピラーフィルタ)は、血球分離途中でフィルタが目詰まりし、溶血を起こすという問題があった。これは、フィルタに対して血液が垂直方向に流れるように構成されており、フィルタを透過できない血球成分がフィルタの表面に積層して圧がかかることに起因すると考えられる。
【解決手段】そこで、本発明は、血液を流入するための流入口と、流入口と連結し、流入した血液を循環流通させるための内側円形流路と、血液成分のうち一部の血液成分を透過可能で内側円形流路の外側周を構成するクロスフローフィルタと、クロスフローフィルタを内側周として内側円形流路に隣接する外側円形流路と、外側円形流路と連結しクロスフローフィルタを透過した一部の血液成分を流出する流出口と、からなる循環型血球分離フィルタチップを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形のクロスフローフィルタを利用して、血液が円形流路を循環しながら血球分離を行う循環型血球分離フィルタチップに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査等においては、被検体から採取した血液を血球成分と、血漿成分(もしくは血清成分)とに分離し、そのうち血漿成分のみを利用する。そのため、検査を行う以前に、被検体から採取した血液について、血球分離処理を行っておく必要がある。
血球分離技術は大別して遠心分離法と膜分離法がある。一般的には用いられている血球分離方法としては、遠心分離方法である。しかしながら、遠心分離方法は熟練した技術を要する点や、遠心分離装置が大型でかつ高価である点、比較的大量の血液を必要がある点や、作業に時間がかかる点などの問題があった。一方、膜分離法は機能膜等を用いて血球の粘着・付着作用により全血から血球成分をろ過する方法である。操作が簡単かつ安価であるため、マイクロ化学チップとしていくつか応用されている。具体的には、図11に示すような、(a)ウェアフィルタ、(b)メンブレンフィルタ、(c)ピラーフィルタを用いる方法などがある。しかしながら、これら各種フィルタを用いる方法においては、血球分離途中で当該フィルタが目詰まりし、血球分離ができなくなり、さらに溶血を起こすという問題があった。これは、血球成分がフィルタの表面に積層して圧がかかることに起因すると考えられる。
【0003】
また、血球成分の大きさは数ミクロンからせいぜい数十ミクロンであり(赤血球は略8μm)、当該血球成分を分離するフィルタとなると、その構造は微細かつ複雑で、加工が困難であり、工業的に製造するのは難しい。またたとえ可能であってもコスト面での問題が残る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hong Miao, et al., The 10th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Science., November 5-9, 2006, 323-324
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、フィルタの目詰まりを回避する方法としてクロスフローフィルタが開発された(非特許文献1)。クロスフローフィルタを利用して血球成分を分離方法の概念図を図12に示す。
【0006】
流入口(1201)から流入した血液は、血液流路(1202)を流通する。このとき、血球成分は、クロスフローフィルタ(1203)の表面に積層することなく血液流路(1202)を流通し、透過液のみが透過流路(1204)に流れ出し、流出口(1205)から流出される。つまり当該方法において、血液はクロスフローフィルタ(1203)に対して平行に流れ(1207)、透過液はクロスフローフィルタに対して直角に透過する(1208)。よって、フィルタの目詰まりが起こりにくくすることができる。
【0007】
しかしながら、当該方法でも、血液流路(1202)の終着点(1206)では血液の流通が止まり、当該部分に血球成分が溜まるため圧がかかり、溶血の課題解決には至っていない。また、変形能の高い赤血球に至っては、流通中であってもクロスフローフィルタを通過してしまうものが多くある。
【0008】
更に、かかる方法も従来と同様に、その構造は微細かつ複雑であるため、通常用いられるガラスや剛性の高いプラスチック材料などでは、数ミクロンのフィルタを加工するのは困難であり、たとえ可能であってもコスト面での問題があった。また、血球分離装置そのものを小型化することも困難であった。従って、例えば、本発明者よりなされた特許出願(特願2008−209555)にかかる「マイクロ分注装置」のような小型の分注装置とともに携帯可能で、当該分注装置と合わせて利用することにより手軽に血液検査を行えるようにするのは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明は、クロスフローフィルタを用いて赤血球を含む血球成分を分離し、かつ簡易な構造からなり、小型で携帯可能な循環型血球分離フィルタチップを提供する。
【0010】
(1)本発明は、血液を流入するための流入口と、流入口と連結し、流入した血液を循環流通させるための内側円形流路と、血液成分のうち一部の血液成分を透過可能で内側円形流路の外側周を構成するクロスフローフィルタと、クロスフローフィルタを内側周として内側円形流路に隣接する外側円形流路と、外側円形流路と連結しクロスフローフィルタを透過した一部の血液成分を流出する流出口と、からなる循環型血球分離フィルタチップを提供する。
【0011】
(2)本発明は、血液を流入するための流入口と、流入口と連結し、流入した血液を循環流通させるための内側円形流路と、血液成分のうち一部の血液成分を透過可能で内側円形流路の外側周を構成するクロスフローフィルタと、クロスフローフィルタを内側周として内側円形流路に隣接する外側円形流路と、血液成分のうち一部の血液成分を透過可能で外側円形流路の外側周を構成する第二クロスフローフィルタと、第二クロスフローフィルタを内側周として外側円形流路に隣接する第二外側円形流路と、第二外側円形流路と連結し第二クロスフローフィルタを透過した一部の血液成分を流出する流出口と、からなる循環型血球分離フィルタチップを提供する。
【0012】
(3)本発明は、第二外側円形流路の外側に、さらに前記と同様にクロスフローフィルタと外側円形流路の組み合わせを繰り返し設け、最も外側の外側円形流路を流出口に連結した上記(2)に記載の循環型血球分離フィルタチップを提供する。
【0013】
(4)本発明は、前記流入口は内側円形流路で囲まれる円形領域に配置される上記(1)から(3)のいずれか一に記載の循環型血球分離フィルタチップを提供する。
【0014】
(5)本発明は、前記流入口から流入した血液が内側円形流路内を一方向に循環するように、流入口からの血液が流入する付近の内側円形流路にオリフィスを備えた上記(1)から(4)のいずれか一に記載の循環型血球分離フィルタチップを提供する。
【0015】
(6)本発明は、前記クロスフローフィルタは繰り返し配置される柱と、柱と柱の間に構成される透過穴とからなり、透過穴は赤血球成分が透過できない大きさである上記(1)から(5)いずれか一に記載の循環型血球分離フィルタチップを提供する。
【0016】
(7)本発明は、前記内側円形流路の容積は他の円形流路の容積より大きい上記(1)から(6)のいずれか一に記載の循環型血球分離フィルタチップを提供する。
【0017】
(8)本発明は、前記透過穴は、高さが5μm以下であり、幅が2μm以下である上記(1)から(7)のいずれか一に記載の循環型血球分離フィルタチップを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の循環型血球分離フィルタチップによれば、フィルタの目詰まりを抑制し、短時間でかつ赤血球レベルで分離できる。また非常に簡易な構造であるため、小型化及び低コストで大量生産も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1の循環型血球分離フィルタチップの概念図
【図2】実施形態1のクロスフローフィルタを構成する柱及び透過穴の概念図
【図3】実施形態1のクロスフローフィルタを構成する柱及び透過穴の概念図
【図4】実施形態1の内側円形流路と外側円形流路の概念図
【図5】実施形態2の循環型血球分離フィルタチップの概念図
【図6】実施形態2のクロスフローフィルタを構成する柱及び透過穴の概念図
【図7】実施形態3の循環型血球分離フィルタチップの概念図
【図8】実施形態4の循環型血球分離フィルタチップの概念図
【図9】実施形態4の循環型血球分離フィルタチップの概念図
【図10】実施例2の血球分離を示す図
【図11】従来用いられてきた血球分離フィルタの概念図
【図12】従来用いられてきた血球分離クロスフローフィルタの概念図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本件発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本件発明は、これら実施の形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。なお、実施形態1は請求項1,6乃至8などに関する。実施形態2は請求項2などに関する。実施形態3は請求項3などに関する。実施形態4は請求項4,5などに関する。
<<実施形態1>>
<実施形態1:概要>
【0021】
本実施形態は、流入した血液が内側円形流路を循環しながら、血液成分一部が内側円形流路の外側周を構成するクロスフローフィルタ透過し、当該血液成分の一部が外側円形流路を流れ流出口から流出するように構成された循環型血球分離フィルタチップについて説明する。
【0022】
本実施形態の循環型血球分離フィルタチップは、フィルタの目詰まりによる溶血を抑制し、短時間で血液成分の一部を分離できる。また、非常に簡易な構造であるため小型化が可能であり、また微細加工もでき、更に低コストで工業的製造が可能である。
<実施形態1:構成>
【0023】
図1に本実施形態の概念図を示す。本実施形態の循環型血球分離フィルタチップは、流入口(0101)と、内側円形流路(0102)と、クロスフローフィルタ(0103)
と、外側円形流路(0104)と、流出口(0105)とから構成されている。
【0024】
「循環型血球分離フィルタチップ」とは、後述する流入口(0101)から流入し、クロスフローフィルタ(0103)の透過穴を透過せずに内側円形流路(0102)を流通する血液成分(主に血球成分)が、内側円形流路内を循環するように構成されている。換言するに、前述した図12に示すクロスフローフィルタの血液流路(1202)の終着点(1206)に相当するものがなく、循環し続けるように構成されている。従って、内側円形流路(0102)内を循環流通する血液成分(主に血球成分)が、当該内側円形流路内で停滞するのを防止することができる。よって、血球成分に圧がかかることにより生じる溶血を防止することができる。
【0025】
「流入口」(0101)とは、血液を流入するためのものである。ここで「血液」とは、全血のほか、全血から一部成分が除かれているものも含む。例えば、事前に遠心分離装置や各種フィルタを用いて一部の血液成分を除去したものなどである。かかる場合、事前の処理で主に白血球を除去し、その後発明の循環型血球分離フィルタチップを用いて残っている白血球と赤血球を分離する。
【0026】
また、流入口の端部には、採血するための採血針を装着する採血針装着部を設けてもよい。かかる場合、採取した血液が、採血管等を要せずそのまま流入口に流れ込むため利便性が増し、また血液が汚染されることもない。
【0027】
「内側円形流路」(0102)とは、前記流入口(0101)と連結し、流入口(0101)から流入した血液を循環流通させるための流路である。「流入口と連結し」とは、流入口と内側円形流路が直接的、又は間接的に繋がっていることをいう。「直接的に繋がっている」とは、流入口から流入した血液が直接内側円形流路に流れ込む場合である。また、「間接的に繋がっている」とは、流入口から流入した血液が内側円形流路に流れ込む前に、図1のような略直線の、又は図8、9のような弓状の流路を介して、内側円形流路に流れ込む場合などをいう。間接的に繋がっている場合、血液は方向性を持って内側円形流路内に流れ込むため、内側円形流路内をスムーズに一方向に循環流通できる点で好ましい。その理由は後述する実施形態4に記載する。なお、流入した血液はその一部の血液成分が後述するクロスフローフィルタ(0103)を透過して、後述する外側円形流路(0104)に流れ込むため、当該内側円形流路(0102)には、クロスフローフィルタ(0103)を透過しない血液成分が残る。
【0028】
また、当該内側円形流路の容積は、流入口から流入した血液が、内側円形流路内を循環流通しながら分離する全過程において、血液に圧がかからない程度の大きさが必要である。
これは、内側円形流路内の血液に圧がかかり、クロスフローフィルタ(0103)が目詰まりを起こすのを防止すると同時に、血液が内側円形流路内をスムーズに循環流通できるようにするためである。
【0029】
「クロスフローフィルタ」(0103)とは、血液成分のうち一部の血液成分を透過可能で内側円形流路(0102)の外側周を構成するフィルタである。ここで、「一部の血液成分」とは、前記流入口(0101)から流入した血液成分のうち、当該クロスフローフィルタ(0103)の透過穴を透過できる比較的小さい血液成分(主に血漿成分)のことである。
【0030】
当該「一部の血液成分」は、後述する外側円形流路(0104)を経て流出口(0105)から流出され、血液分析等に用いる。よって、白血球や赤血球などの血球成分を含まない、血漿成分(又は血清成分)のみで構成されるのが好ましい。但し、血液分析等に支障のでない程度であれば、血球成分を含んでいても良い。また、「内側円形流路の外側周を構成する」とは、図1の拡大図が示すとおり、内側円形流路の外側の壁を構成することである。
【0031】
図2にクロスフローフィルタの概念図を示す。(a)は循環型血球分離フィルタチップの横断面図の一部拡大図であり、(b)は(a)の図中0200aで囲まれた部分の斜視断面図である。「クロスフローフィルタ」(0201a、0201b)は、繰り返し配置される柱(0202a、0202b)と、当該柱と柱の間に設けられる透過穴(0203a、0203b)とから構成される。そして当該柱(0202a、0202b)と透過穴(0203a、0203b)とが内側円形流路(0204a、0204b)と外側円形流路(0205a、0205b)に挟まれる形で円形を構成するように繰り返し配置されて、一層のクロスフローフィルタ(0201a、0201b)を構成する。なお、(b)において点線で囲まれた部分は、循環型血球分離フィルタチップの天井面を構成する。以下、図3(b)、4(b)、(c)においても同じである。
【0032】
よって、流入口から流入した血液のうち、「クロスフローフィルタ」(0201a、0201b)の透過穴(0203a、0203b)を透過可能な一部の血液成分のみが外側円形流路(0205a、0205b)に流れ込み、透過穴(0203a、0203b)を透過できない成分が内側円形流路(0204a、0204b)を循環流通する。従って、透過穴(0203a、0203b)は本実施形態の循環型血球分離フィルタチップを利用して分離すべき血球成分が透過できない大きさであればよく、当該分離すべき血球成分の種類に応じて、透過穴(0203a、0203b)の大きさを適宜決定すればよい。例えば、健康診断などの血液検査を行う場合の血球分離においては、白血球とともに赤血球も分離する必要があるため、相対的に小さい赤血球が透過できない大きさの透過穴(0203a、0203b)を構成していればよい。好ましくは、赤血球が圧力により変形することを想定し、高さ(0206b)が略5μm、幅(0207a、0207b)が略2μmの透過穴である。当該大きさの透過穴で構成されるクロスフローフィルタであれば、赤血球も漏れなく分離可能である。より好ましくは透過穴の高さ(0206b)が略2μm、幅(0207a、0207b)が略2μmである。かかる場合、圧がかかり赤血球が変形した場合でも、分離可能な点で有効である。
【0033】
なお、図2(c)は、内側円形流路(0204c)を循環流通する赤血球(0208c)がクロスフローフィルタ(0201c)の透過穴(0203c)に対して横向きにアプローチすることを示す概念図である。赤血球(0208c)は中央部がくぼんだ円盤状の形状をしており、直径は略6〜8μm、厚さは略2μmである。そして、高い変形能を有しており、赤血球の直径よりも細い毛細血管をも通過する。そこで、透過穴(0203c)を上記の大きさにすることにより、赤血球(0208c)が透過穴(0203c)に対して横向きにアプローチするように構成する。これにより、当該円盤状の赤血球のみならず、何らかの作用により変形した赤血球についてもクロスフローフィルタ(0201c)の透過穴(0203c)を透過するのを防ぐ。なお、図中0209cは、循環型血球分離フィルタチップの蓋を示す。
【0034】
なお、透過穴の形状は、分離対象とする血球成分が分離可能であれば図3(a)、(c)に示すようなものであってもよい。(a)は循環型血球分離フィルタチップの横断面図の一部拡大図であり、(b)は(a)の0300で囲まれた部分の斜視断面図である。内側円形流路(0304a、0304b)の流通方向に対して透過方向が90度より小さくなるように柱(0302a、0302b)と透過穴(0303a、0303b)を設けることにより、よりスムーズに一部の血液成分が透過し、短時間で血球分離できる。
【0035】
また、(c)のように柱(0301c)の形状を変形させてもよい。かかる場合、透過穴(0303c)に向かっていた血球成分が当該柱(0301c)に沿うように流れ、内側円形流路(0304c)に戻り循環流通するため、分離すべき血球成分がクロスフローフィルタ(0301c)を透過するのを抑制できる点で有効である。
【0036】
「外側円形流路」(0104)とは、前記クロスフローフィルタ(0103)を内側周として内側円形流路(0102)に隣接する流路である。「クロスフローフィルタを内側周として内側円形流路に隣接する」とは、クロスフローフィルタが当該外側円形流路の内側の壁を構成しており、内側円形流路と外側円形流路はクロスフローフィルタを介して隣接していることをいう。外側円形流路には、前記「一部の血液成分」が流通する。
【0037】
外側円形流路(0104)の容積は、前記内側円形流路(0102)と同程度でもよく、それより小さく構成されていてもよい。これは、内側円形流路には流入口から流入した血液が全て流れ込む流路であり、また当該内側円形流路は排出口を有しないためである。また内側円形流路を循環流通する血液成分は血球成分の割合が大きいため、容積を大きくしてよりスムーズに循環流通させ、クロスフローフィルタの目詰まりを抑制するためである。図4の(a)に本実施形態の循環型血球分離フィルタチップを構成する内側円形流路(0401a)、外側円形流路(0402a)、クロスフローフィルタを構成する柱(0403a)と透過穴(0404a)の一部拡大図を示し、(b)及び(c)は、(a)の0400aで囲まれた部分の斜視断面図を示す。(b)のように、内側円形流路(0401b)の流路高を外側円形流路(0402b)の流路高より大きくし、内側円形流路の容積を大きくするように構成してもよい。かかる場合、流入口から流入できる血液量を増大させることができ、かつクロスフローフィルタの目詰まりも防止し、また、スムーズな循環流通を可能とする。また、(c)のように、内側円形流路(0401c)と外側円形流路(0401c)との流路高は統一し、その幅を変えて、内側円形流路の容積を大きくするように構成してもよい。
【0038】
「流出口」(0105)とは、外側円形流路と連結しクロスフローフィルタを透過した一部の血液成分を流出するためのものである。「外側円形流路と連結し」とは、流出口(0105)と外側円形流路(0104)が直接的、又は間接的に繋がっていることをいう。「直接的に繋がっている」とは、外側円形流路から流出した一部の血液成分が直接流出口に流れ込む場合である。また、「間接的に繋がっている」とは、外側円形流路から流出した一部の血液成分が流出口に流れ込む前に、図1や図8、9のような略直線の流路や、弓上の流路を介して流出口に流れ込む場合などをいう。
【0039】
なお、流出口(0105)は、図1(a)に示すように、流出口(0101a)と反対側に設けられてもよく(0105a)、(b)に示すように、流出口(0101b)と同じ側に設けられてもよく(0105b)。また、これらに限定されることなく、流出口の位置は適宜変更できる。なお、図1(b)の場合、外側円形流路内(0104b)の一部の血液成分の流通方向(図中矢印)と流出方向が同じであるため、より短時間に血球分離が可能となる。
<実施形態1:効果>
【0040】
本実施形態の循環型血球分離フィルタチップによれば、フィルタの目詰まりによる溶血を抑制し、短時間でかつ高精度に血球で分離できる。また非常に簡易な構造であるため、微細加工も可能であり、また低コストで工業的製造が可能である。
<<実施形態2>>
<実施形態2:概要>
【0041】
本実施形態は、流入口から流入した血液が内側円形流路を循環しながら、血液成分の一部が内側円形流路の外側周を構成するクロスフローフィルタ透過し、当該クロスフローフィルタを透過した血液成分のうち、更にその一部が外側円形流路の外側周を構成する第二クロスフローフィルタを透過して第二外側円形流路に流れ込み、流出口から流出するように構成された循環型血球分離フィルタチップについて説明する。
【0042】
本実施形態の循環型血球分離フィルタチップは、クロスフローフィルタを透過した血球を第二クロスフローフィルタで分離し、流出口からの血球成分の流出を回避することができる。
<実施形態2:構成>
【0043】
図5に本実施形態の概念図を示す。本実施形態の循環型血球分離フィルタチップは、流入口(0501)と、内側円形流路(0502)と、クロスフローフィルタ(0503)と、外側円形流路(0504)と、第二クロスフローフィルタ(0505)と、第二外側円形流路(0506)と、流出口(0507)とから構成されている。ここで、外側円形流路(0504)と、第二クロスフローフィルタ(0505)と、第二外側円形流路(0506)、流出口(0507)以外の構成については上記実施形態1に記載したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0044】
なお、本実施形態においては、クロスフローフィルタ(0503)を便宜的に「第一クロスフローフィルタ」とする。また、外側円形流路(0504)を同様に「第一外側円形流路」として説明する。
【0045】
「第二クロスフローフィルタ」(0505)とは、血液成分のうち一部の血液成分を透過可能で外側円形流路(0504)の外側周を構成するクロスフローフィルタをいう。ここで、「外側円形流路の外側周を構成する」とは、図5の拡大図が示すとおり、「第二クロスフローフィルタ」(0505)が第一外側円形流路の外側の壁を構成することである。つまり、本実施形態の循環型血球分離フィルタチップは、第一クロスフローフィルタ(0503)と、その更に外側に第二クロスフローフィルタ(0505)を備えた、二層のクロスフローフィルタを有する。当該構成により、第一クロスフローフィルタを透過した血球成分を、第二クロスフローフィルタで分離できるため、より高精度に血球分離が可能となる。
【0046】
なお、第一クロスフローフィルタの透過穴及び第二クロスフローフィルタの透過穴は、本実施形態の循環型血球分離フィルタチップを利用して分離すべき血球成分が最終的に透過できない大きさであればよく、当該血球成分の種類に応じて、透過穴の大きさを適宜決定すればよい。ここで、「最終的に透過できない」とは、第一クロスフローフィルタを透過した血球成分であっても、第二クロスフローフィルタは透過できないことをいう。従って、例えば、白血球とともに赤血球も分離する場合、少なくとも第二クロスフリーフィルタの透過穴が、相対的に小さい赤血球成分を透過できない大きさで構成されていればよい。好ましくは、赤血球が圧力により変形することを想定し、高さが5μm、幅が2μmの透過穴である。当該大きさの透過穴で構成されるクロスフローフィルタであれば、赤血球も漏れなく分離可能である。より好ましくは透過穴の高さが2μm、幅が2μmである。圧力などにより赤血球が変形した場合でも、分離可能な点で有効である。
【0047】
第一クロスフローフィルタの透過穴と第二クロスフローフィルタの透過穴の大きさ及び/又は形状がそれぞれ異なるように構成されていてもよい。その一例を図6に示す。
【0048】
図6(a)は、第一クロスフローフィルタ(0601a)の透過穴(0603a)が相対的に大きく、第二クロスフローフィルタ(0602a)の透過穴(0604a)が相対的に小さく構成されている。かかる構成の場合、第一クロスフローフィルタ(0601a)で比較的大きい血球成分を分離し、第二クロスフローフィルタ(0602a)で比較的小さい血球成分を分離するように、段階的に血球分離できる。従って、第一クロスフローフィルタから比較的小さい血球成分を分離しようとする場合と比較して、第一及び第二クロスフローフィルタの目詰まりを防ぐことができる。また、より短時間でかつ高精度な血球分離が可能となる。例えば、第一クロスフローフィルタで白血球を分離し、第二クロスフローフィルタで赤血球を分離するような構成が考えられる。
【0049】
また、図6(b)は、第一クロスフローフィルタの透過穴(0603b)を、内側円形流路の流通方向に対して透過方向(0605b)が略90度より小さくなるように設け、第二クロスフローフィルタの透過穴(0604b)は第一外側円形流路の流通方向に対して透過方向(0606b)が略90度になるように設けられている。かかる構成の場合、第一クロスフローフィルタ(0601b)の透過がスムーズに行われ、また第二クロスフローフィルタ(0602b)で着実に分離対象血球成分を分離できる。従って、各クロスフローフィルタの目詰まりを防ぐとともに、より短時間でかつ高精度な血球分離が可能となる。
【0050】
「第二外側円形流路」(0506)とは、第二クロスフローフィルタ(0505)を内側周として第一外側円形流路(0504)に隣接する円形流路をいう。ここで、「第二クロスフローフィルタを内側周として外側円形流路に隣接する」とは、第二クロスフローフィルタ(0505)が当該第二外側円形流路(0506)の内側の壁を構成しており、第一外側円形流路(0504)と第二外側円形流路(0506)は第二クロスフローフィルタ(0505)を介して隣接していることをいう。つまり、本実施形態の循環型血球分離フィルタチップは、内側円形流路(0502)、第一外側円形流路(0504)、第二外側円形流路(0506)の、3つの円形流路を有する。そして、内側円形流路(0502)と第一外側円形流路(0504)とは、第一クロスフローフィルタ(0503)を介して隣接し、第一外側円形流路(0504)と第二外側円形流路(0506)とは、第二クロスフローフィルタ(0505)を介して隣接する。従って、流入口(0501)から流入した血液は、内側円形流路(0502)を循環流通しながらその一部の血液成分が第一クロスフローフィルタ(0503)を透過して第一外側円形流路(0504)に入り、更にそうちの一部が第二クロスフローフィルタ(0505)を透過して第二外側円形流路(0506)に入り、最終的に後述する流出口(0507)から流出する。
【0051】
なお、当該3つの円形流路の容積は、第一及び第二クロスフローフィルタに圧がかからない程度であれば、特に限定せず、同程度に構成されていてもよく、内側円形流路の容積のみが第一及び第二外側円形流路より大きく構成されていてもよく、また内側円形流路、第一外側円形流路、第二外側円形流路の順にその容積が小さく構成されていてもよい。
【0052】
なお、本実施形態の「外側円形流路」(0504)は、「流出口」(0507)に連結せず循環流路であり、それ以外の構成については前記実施形態1と同じである。また、「流出口」(0507)は、第二外側円形流路に連結しており、それ以外の構成については前記実施形態1と同じである。
<実施形態2:効果>
【0053】
本実施形態の循環型血球分離フィルタチップによれば、二層のクロスフローフィルタで構成されているため、より高精度に血球分離できる。また、各クロスフローフィルタの透過穴の大きさ、形状を適宜組合せることにより、フィルタの目詰まりによる溶血を抑制し、かつ短時間血球分離できる。
<<実施形態3>>
<実施形態3:概要>
【0054】
本実施形態は、前記実施形態2の第二外側円形流路その外側に、更にクロスフローフィルタと外側円形流路の組合せを繰り返し設け、最も外側の外側円形流路を流出口に連結するように構成された循環型血球分離フィルタチップについて説明する。
【0055】
本実施形態の循環型血球分離フィルタチップは、より確実に血球分離が可能である。
<実施形態3:構成>
【0056】
「クロスフローフィルタと外側円形流路の組合せを繰り返し設け」とは、一のクロスフローフィルタと一の外側円形流路とを1セットとし、前記実施形態2の第二外側円形流路の更に外側に当該セットを一以上設けることをいう。繰り返し頻度は一以上であればよく、求める分離精度などに応じて適宜決定すればよい。繰り返し頻度が多いほど、装置の小型化、分離の高速化が難しくなるが、分離精度は上がる。他方、繰り返し頻度が少ないほど、分離精度は劣るが、装置の小型化、分離の高速化が図れる。
【0057】
なお、本実施形態においては、クロスフローフィルタを便宜的に「第一クロスフローフィルタ」とする。また、外側円形流路を同様に「第一外側円形流路」とする。また、第二外側円形流路の外側に設けるクロスフローフィルタと外側円形流路について、それぞれ内側から外側に向けて「第三クロスフローフィルタ」、「第四クロスフローフィルタ」、・・・・、又は「第三外側円形流路」、「第四外側円形流路」・・・・、とする。
【0058】
図7に本実施形態の一例として、クロスフローフィルタと外側円形流路の組合せを一つ設けた循環型血球分離フィルタチップの概念図を示す。循環型血球分離フィルタチップは、流入口(0701)と、内側円形流路(0702)と、第一クロスフローフィルタ(0703)と、第一外側円形流路(0704)と、第二クロスフローフィルタ(0705)と、第二外側円形流路(0706)と、第三クロスフローフィルタ(0707)と、第三外側円形流路(0708)と、流出口(0709)とから構成されている。ここで、第三クロスフローフィルタ(0707)と、第三外側円形流路(0708)、流出口(0709)以外の構成については上記実施形態1に記載したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0059】
「第三クロスフローフィルタ」(0707)とは、第一クロスフローフィルタ(0703)及び第二クロスフローフィルタ(0705)と同様に、血液成分のうち一部の血液成分を透過可能で、第二外側円形流路(0706)の外側周を構成するクロスフローフィルタをいう。図7の拡大図が示すとおり、「第三クロスフローフィルタ」(0707)が第二外側円形流路(0706)の外側の壁を構成する。つまり、図7の循環型血球分離フィルタチップは、第一クロスフローフィルタ(0703)及び第二クロスフローフィルタ(0705)の更に外側に第三クロスフローフィルタ(0707)備えた、三層のクロスフローフィルタを有する。当該構成により、第一クロスフローフィルタ及び第二クロスフローフィルタを透過した血球成分も、第三クロスフローフィルタで分離できるため、より高精度に血球分離が可能となる。
【0060】
前記実施形態2と同様に、第一クロスフローフィルタ(0703)の透過穴、第二クロスフローフィルタ(0705)の透過穴及び第三クロスフローフィルタ(0707)の透過穴は、図7の循環型血球分離フィルタチップを利用して分離すべき血球成分が最終的に透過できない大きさであればよく、当該血球成分の種類に応じて、透過穴の大きさを適宜決定すればよい。つまり、少なくとも第三クロスフリーフィルタの透過穴が、分離しようとする血球成分が最終的に透過できない大きさであればよい。
【0061】
なお、その他の構成については、実施形態1及び2に準ずる。
【0062】
「第三外側円形流路」(0708)とは、第三クロスフローフィルタ(0707)を内側周として第二外側円形流路(0706)に隣接する円形流路をいう。ここで、「第三クロスフローフィルタを内側周として第二外側円形流路に隣接する」とは、第三クロスフローフィルタが当該第三外側円形流路の内側の壁を構成しており、第二外側円形流路と第三外側円形流路はクロスフローフィルタを介して隣接していることをいう。つまり、図7の循環型血球分離フィルタチップは、内側円形流路(0702)、第一外側円形流路(0704)、第二外側円形流路(0706)、第三外側円形流路(0708)の、4つの円形流路を有する。そして、内側円形流路(0702)と第一外側円形流路(0704)とは、第一クロスフローフィルタ(0703)を介して隣接し、第一外側円形流路(0704)と第二外側円形流路(0706)とは、第二クロスフローフィルタ(0705)を介して隣接し、第二外側円形流路(0706)と第三外側円形流路(0708)とは、第三クロスフローフィルタ(0707)を介して隣接する。従って、流入口(0701)から流入した血液は、内側円形流路(0702)を循環流通しながらその一部の血液成分が第一クロスフローフィルタ(0703)を透過して第一外側円形流路(0704)に入り、更にそうちの一部が第二クロスフローフィルタ(0705)を透過して第二外側円形流路(0706)に入り、更にそのうちの一部が第三クロスフローフィルタ(0707)を透過して第三外側円形流路(0708)に入り、最終的に後述する流出口(0709)から流出する。
【0063】
なお、当該4つの円形流路の容積は、第一、第二、第三クロスフローフィルタに圧がかからない程度であれば、特に限定せず、同程度に構成されていてもよく、内側円形流路の容積のみが第一、第二、第三外側円形流路より大きく構成されていてもよく、また内側円形流路、第一外側円形流路、第二外側円形流路、第三外側円形流路の順にその容積が小さく構成されていてもよい。なお、その他の構成については、実施形態1及び2に準ずる。
【0064】
なお、図7の「流出口」(0709)は、第三外側円形流路に連結しており、それ以外の構成については前記実施形態1と同じである。
【0065】
なお、クロスフローフィルタと外側円形流路の組合せを二以上繰り返し設ける場合も、上記の組合せを一つ設けた場合に準じればよい。
<実施形態3:効果>
【0066】
本実施形態の循環型血球分離フィルタチップによれば、三層以上のクロスフローフィルタで構成されているため、より高精度に血球分離できる。また、各クロスフローフィルタの透過穴の大きさ、形状を適宜組合せることにより、フィルタの目詰まりによる溶血を抑制し、かつ短時間血球分離できる。
<<実施形態4>>
<実施形態4:概要>
【0067】
本実施形態は、流入口が内側円形流路で囲まれる円形領域に配置された循環型血球分離フィルタチップについて説明する。
【0068】
また、本実施形態は、流入口から流入した血液が内側円形流路内を一方向に循環するように、流入口からの血液が流入する付近の内側円形流路にオリフィスを備えた循環型血球分離フィルタチップについて説明する。
【0069】
本実施形態の循環型血球分離フィルタチップは、流入口から流入した血液が内側円形流路内を一方向に循環流通するため、流通がスムーズに行われ、よってクロスフローフィルタの目詰まりを防止し、また短時間で血球分離できる。
<実施形態4:構成>
【0070】
図8に、本実施形態の循環型血球分離フィルタチップの概念図を示す。流入口(0801)と、内側円形流路(0802)と、クロスフローフィルタ(0803)と、外側円形流路(0804)と、第二クロスフローフィルタ(0805)と、第二外側円形流路(0806)と、流出口(0807)からなる。
なお、流入口(0801)以外の構成については上記実施形態2に記載したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0071】
本実施形態の「流入口」(0801)は、内側円形流路(0802)で囲まれる円形領域に配置される。これは、流入口から流入した血液を内側円形流路内の一方向に流通させるためである。また、流入口と内側円形流路との間に弓状の流路(0808)を設けることにより、当該弓状の流路(0808)から内側円形流路(0802)に流れ込む血液に一定の向き(図中矢印)生じる。かかる場合、弓状の流路から内側円形流路に入った血液は、内側円形流路を両方向に流通せず。図中の矢印方向にスムーズに流通できる。従って、内側円形流路の循環流通がスムーズに行われ、クロスフローフィルタの目詰まりを抑制できる。
【0072】
また、図9に示すように、内側円形流路(0902)にオリフィス(0908)を設けてもよい。当該オリフィス(0908)により、流入口(0901)から流入した血液が、内側円形流路(0902)を両方向に進行するのをより抑制できる。当該オリフィス(0908)は、弓状の流路と内側円形流路が交わる点の近く設けると、よりその効果が大きい。なお、当該オリフィスは、血液を流通させる内側円形流路であって、流入口との合流位置の手前側に設けることは言うまでも無いことである。
<実施形態4:効果>
【0073】
本実施形態の循環型血球分離フィルタチップによれば、血液が内側円形流路をスムーズに循環流通できるため、クロスフローフィルタの目詰まりを防止できる。またより短時間で血球分離できる。
【実施例1】
【0074】
本発明に係る循環型血球分離フィルタチップを、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を材料として、フォトリソフラフィ技術を利用して作成し、全血から血球分離を行った際の分離の様子を図10に示す。なお、作成した循環型血球分離フィルタチップは、上記実施形態2に記載の、二層のクロスフローフィルタを有する構成である(第一クロスフローフィルタ及び第二クロスフローフィルタ)。内側円形流路及びの流路幅を略100μmとし、第一外側円形流路及び第二外側円形流路の流路高は2μmとし、内側円形流路の容積を他の流路より大きくした。
【0075】
図10は(a)から(c)にかけて徐々に血球分離が進む様子を示す。本実施例の循環型血球分離フィルタチップは材料としてPDMSが用いられ、内側円形流路(1001)と、第一クロスフローフィルタ(1002)と、第一外側円形流路(1003)と、第二クロスフローフィルタ(1004)と、第二外側円形流路(1005)からなる、二層のクロスフローフィルタを有する。図中、右から左へ血液は流通している。
【0076】
(a)は、流入口から流入した血液(1006a)が内側円形流路(1001a)内を流通している様子を示す。ここでは、まだ血漿成分が第一又は第二クロスフローフィルタ(1002a、1004a)を透過している様子は確認できない。なお、内側円形流路(1001a)を流通する血液成分は赤血球を含むため赤色を呈している。
【0077】
(b)では、内側円形流路(1001b)を満たした血液(1006b)が循環流通しており、さらに、一部の血液成分(1007b)が第一クロスフローフィルタ(1002b)を透過し、第一外側円形流路(1003b)に流れ込む様子が確認できる。ここで、内側円形流路(1001b)は赤色を呈しており、第一外側円形流路(1003b)に流れ込んだ一部の血液成分はほぼ透明であるため、赤血球は内側円形流路(1001b)内を流通していることが確認できる。
【0078】
(c)では、第一外側円形流路(1003c)を流通する血液成分の更に一部の血液成分(1008c)が、第二クロスフローフィルタ(1004c)を透過し、第二外側円形流路(1005c)に流れ込み流通する様子が確認できる。(b)と同様に、内側円形流路(1001c)は赤色を呈しており、第一外側円形流路(1003c)及び第二外側円形流路(1005c)はほぼ透明であるため、赤血球は二層のクロスフローフィルタ(1002c、1004c)を透過せず、内側円形流路(1001c)内を流通していることが確認できる。
【0079】
以上より、本発明にかかる循環型血球分離フィルタチップは血球分離が可能であることが示された。
【0080】
なお、使用する材料は、微細加工が可能なものであれば特に限定しない。好ましくは、硬化で変形が起こりにくいガラスや剛性の高いプラスチックであるが、本実施例で用いたPDMSなどの利用が可能である。ここで、PDMSは加工が容易である反面変形が生じ易いため、本発明の循環型血球分離フィルタチップの材料として用いた場合、血球分離能に問題があるのではと危惧していたが、本実施例において血球分離能には問題がないことが示された。
【符号の説明】
【0081】
0901 流入口
0902 内側円形流路
0903 クロスフローフィルタ
0904 外側円形流路
0905 第二クロスフローフィルタ
0906 第二外側円形流路
0907 流出口
0908 オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を流入するための流入口と、
流入口と連結し、流入した血液を循環流通させるための内側円形流路と、
血液成分のうち一部の血液成分を透過可能で内側円形流路の外側周を構成するクロスフローフィルタと、
クロスフローフィルタを内側周として内側円形流路に隣接する外側円形流路と、
外側円形流路と連結しクロスフローフィルタを透過した一部の血液成分を流出する流出口と、
からなる循環型血球分離フィルタチップ。
【請求項2】
血液を流入するための流入口と、
流入口と連結し、流入した血液を循環流通させるための内側円形流路と、
血液成分のうち一部の血液成分を透過可能で内側円形流路の外側周を構成するクロスフローフィルタと、
クロスフローフィルタを内側周として内側円形流路に隣接する外側円形流路と、
血液成分のうち一部の血液成分を透過可能で外側円形流路の外側周を構成する第二クロスフローフィルタと、
第二クロスフローフィルタを内側周として外側円形流路に隣接する第二外側円形流路と、
第二外側円形流路と連結し第二クロスフローフィルタを透過した一部の血液成分を流出する流出口と、
からなる循環型血球分離フィルタチップ。
【請求項3】
第二外側円形流路の外側に、さらに前記と同様にクロスフローフィルタと外側円形流路の組み合わせを繰り返し設け、最も外側の外側円形流路を流出口に連結した請求項2に記載の循環型血球分離フィルタチップ。
【請求項4】
前記流入口は内側円形流路で囲まれる円形領域に配置される請求項1から3のいずれか一に記載の循環型血球分離フィルタチップ。
【請求項5】
前記流入口から流入した血液が内側円形流路内を一方向に循環するように、流入口からの血液が流入する付近の内側円形流路にオリフィスを備えた請求項1から4のいずれか一に記載の循環型血球分離フィルタチップ。
【請求項6】
前記クロスフローフィルタは繰り返し配置される柱と、柱と柱の間に構成される透過穴とからなり、透過穴は赤血球成分が透過できない大きさである請求項1から5のいずれか一に記載の循環型血球分離フィルタチップ。
【請求項7】
前記内側円形流路の容積は他の円形流路の容積より大きい請求項1から6のいずれか一に記載の循環型血球分離フィルタチップ。
【請求項8】
前記透過穴は、高さが5μm以下であり、幅が2μm以下である請求項1から7のいずれか一に記載の循環型血球分離フィルタチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−256304(P2010−256304A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109913(P2009−109913)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 : 学校法人 大阪工業大学大学院工学研究科機械工学専攻 修士論文公聴会 主催者名 : 学校法人 大阪工業大学 開催日 : 平成21年2月19日
【出願人】(599016431)学校法人 芝浦工業大学 (109)
【Fターム(参考)】