説明

循環式硝化脱窒装置および方法

【課題】 循環式硝化脱窒プロセスにおいて、改良された濾過装置を組み込み、最終沈澱池の負荷を低減あるいは最終沈澱池自体を省略し、且つ処理水質を向上させる。
【解決手段】 被処理水の流入側に無酸素域を、処理済水の流出側に好気域を有する反応槽を用い、該好気域内の硝化混合液の一部を該無酸素域へ循環させて該被処理水中の窒素を除去する循環式硝化脱窒プロセスにおいて、分離粒径20μm以上の目開きを持ち厚さが2mm以下である通水性の支持材で周囲壁の少なくとも一部を構成した中空状の濾過体を、該好気域内または後続の最終沈澱池内の少なくとも一方に浸漬配置し、該支持材上に硝化汚泥及び濁質からなる濾過膜を形成させ、後続槽との水頭差により該濾過膜を介して該濾過体内へ処理済水を流入させ且つ該濾過体内から該処理済水を引き抜く。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、汚水処理装置および汚水処理方法に関し、特に循環式硝化脱窒装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図1に、従来の硝化脱窒装置の典型例を示す。図示した硝化脱窒装置は、最初沈澱池1、反応槽2、および最終沈澱池3をこの順に配設し、反応槽2内には図示しないエアレーション用の水中エアレータや曝気管、撹拌機等が配置されている。反応槽2は、上流側の無酸素タンク(脱窒タンク)21と下流側の好気タンク(硝化タンク)22とから成り、これらタンクは堰23で隔てられていて、無酸素タンク21から好気タンク22への流入は堰23の上端を越えるオーバーフローAにより行われる。
【0003】原水(汚水)は図の左端から最初沈澱池1に流入し、最初沈澱池1内で粗大な固形分を沈澱除去する。循環式硝化脱窒プロセスは、最初沈澱池1からの流入水と最終沈澱池3からの返送汚泥とを無酸素タンク21に流入させる一方、続く好気タンク22の硝化混合液の一部を導管Bにより無酸素タンク21へ循環するという処理方式である。好気タンク22では、流入するアンモニア性窒素が亜硝酸性もしくは硝酸性の窒素に酸化され、無酸素タンク21では、これらの酸化態の窒素が流入水中の有機物の酸化反応によって窒素ガスに還元される。反応槽2で硝化脱窒後、最終沈澱池3で沈降分離した上澄を処理済水として排出する。
【0004】標準的な都市下水であれば、脱窒のための水素供与体(メタノールなど)やpH調整用のアルカリ剤(水酸化ナトリウムなど)の添加は必要としないが、流入水の水質によっては、これらを考慮する必要がある。下水中の有機物の一部は、脱窒反応で分解除去されるため、硝化促進型活性汚泥法と比べてBOD除去のための酸素供給量を少なくすることができる。
【0005】なお、窒素除去率を向上させるために、二段循環方式がある。この方式では、無酸素タンクおよび好気タンクの組を二段直列に配置して、流入水を各段の無酸素タンクにステップ流入させることにより、高いMLSS濃度と長いSRTを可能にしたものである。このような操作により、前段の硝化タンクからの流出水を後段の無酸素タンクで受け入れることが可能となり、高い窒素除去率を得ることができる。
【0006】しかし、上記従来の循環式硝化脱窒プロセスには下記の(1) 〜(4) の点で問題があった。
(1) 反応タンクのMLSS濃度を活性汚泥法よりも高く2,000〜3,000mg/Lに保つ必要があり、したがって最終沈澱池の流入固形物負荷が大きくなるため、水面積負荷を小さくとる必要がある。
【0007】そのため、既存の最終沈澱池を用いてこのプロセスを適用することは、負荷が過剰になるため不可能であった。
(2) 処理水SSが多い場合には、反応タンクの後段に濾過機を設置する必要がある。
(3) 最終沈澱池での返送汚泥操作を必要とする。
【0008】(4) 最終沈澱池で、脱窒ガスによる汚泥の浮上が発生する。
これら従来の問題を解決すべく、特開平5−185078号公報には、間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた通水性シートの周囲を密封して形成した袋状の濾過体を曝気槽内に曝気部の上方に配置して処理水中に浸漬配設し、前記濾過体内より低い水頭差により濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記曝気槽の外部に導出させた曝気槽の濾過装置が提案されている。
【0009】上記提案された濾過装置は、従来の循環式硝化脱窒プロセスに不可避であった上記の問題(1) 〜(4) を解消するものとして有効であるが、膜の種類によっては早期に目詰まりを起こしてしまうという。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、循環式硝化脱窒プロセスに上記提案の濾過装置を改良して組み込み、最終沈澱池の負荷を低減あるいは最終沈澱池自体を省略し、且つ処理水質を向上させた循環式硝化脱窒装置および方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、本発明によれば、被処理水の流入側に無酸素域を、処理済水の流出側に好気域を有する反応槽を備え、該好気域内の硝化混合液の一部を該無酸素域へ循環させて該被処理水中の窒素を除去する循環式硝化脱窒装置において、分離粒径20μm以上の目開きを持ち厚さが2mm以下である通水性の支持材で周囲壁の少なくとも一部を構成した中空状の濾過体を、該好気域内または後続の最終沈澱池内の少なくとも一方に浸漬配置し、該支持材上に硝化汚泥及び濁質からなる濾過膜を形成させ、後続槽との水頭差により該濾過膜を介して該濾過体内へ処理済水を流入させ且つ該濾過体内から該処理済水を引き抜くことを特徴とする循環式硝化脱窒装置によって達成される。
【0012】上記の目的は、本発明によれば、被処理水の流入側に無酸素域を、処理済水の流出側に好気域を有する反応槽を用い、該好気域内の硝化混合液の一部を該無酸素域へ循環させて該被処理水中の窒素を除去する循環式硝化脱窒方法において、分離粒径20μm以上の目開きを持ち厚さが2mm以下である支持材で周囲壁の少なくとも一部を構成した中空状の濾過体を、該好気域内または後続の最終沈澱池内の少なくとも一方に浸漬配置し、該支持材上に硝化汚泥及び濁質からなる濾過膜を形成させ、後続槽との水頭差により該濾過膜を介して該濾過体内へ処理済水を流入させ且つ該濾過体内から該処理済水を引き抜くことを特徴とする循環式硝化脱窒方法によっても達成される。
【0013】上記の方法において、濾過体を反応槽の好気域内に浸漬配置し、一定水量を前記処理済水として濾過体から引き抜くと共に、一定水量より負荷変動する水量を反応槽の好気域から濾過体を介さずに最終沈澱池に送水して処理するようにしてもよい。このようにすると、本発明を適用するために既存の設備を改造する際に、既存の最終沈澱池が有効に活用できるし、処理水の全量を濾過体で処理するよりも濾過体の負担が軽減するので濾過体の規模や設置個数が低減でき、設備改造費を低減できるという利点がある。
【0014】本発明の濾過体に用いる通水性の支持材として、金属製、合成樹脂製あるいはセラミックス製の網、不織布、織布、膜、多孔体を用いることが便利である。その中でも特に金属網、合成樹脂製の不織布をシート状にして用いることが好ましい。
【0015】
【作用】本発明の循環式硝化脱窒装置および方法においては、上記の濾過体を、反応槽の好気域内および最終沈澱池内の少なくとも一方に浸漬配置し、従来は最終沈澱池で行っていた固液分離の一部または全部を濾過体により行う。後続槽との水頭差により該流出口を介して該濾過体から処理済水を引き抜くことにより濾過を行うので、被処理水を駆動するための動力を特に必要としない。
【0016】本発明は、反応槽または最終沈澱池のうち少なくとも一方において濾過により固液分離を行うことにより、最終沈澱池への負荷が低減または解消されるので、最終沈澱池に伴う前記従来の問題(1) 〜(4) を全て解消することができる。本発明の特徴は、濾過体に用いる支持材の目開き(分離粒径)を20μm以上、厚さを2mm以下とした点にある。濾過膜の目開きおよび厚さの少なくとも一方がこの範囲外であると、汚泥フロックにより濾過膜が早期に閉塞してしまうため、実用的な固液分離機能を安定して得ることができない。
【0017】
【実施例】以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
〔実施例1〕図2に、本発明による循環式硝化脱窒装置の一例を示す。図1の従来装置と対応する部分については同一の参照符号を付した。
【0018】図示した硝化脱窒装置は、最初沈澱池1、反応槽2、および緩衝槽4をこの順に配設し、反応槽2内には図示しないエアレーション用の水中エアレータや曝気管、撹拌機等が配置されている。反応槽2は、上流側の無酸素タンク(脱窒タンク)21と下流側の好気タンク(硝化タンク)22とから成り、これらタンクは堰23で隔てられていて、無酸素タンク21から好気タンク22への流入は堰23の上を越えるオーバーフローAにより行われる。
【0019】更に、反応槽2の好気タンク22内には、本発明による濾過体5が浸漬配置されている。原水(汚水)は図の左端から最初沈澱池1に流入し、最初沈澱池1内で粗大な固形分を沈澱除去する。最初沈澱池1からの流入水と最終沈澱池3からの返送汚泥とを無酸素タンク21に流入させる一方、続く好気タンク22の硝化混合液の一部を導管Bにより無酸素タンク21へ循環する。好気タンク22では、流入するアンモニア性窒素が亜硝酸性もしくは硝酸性の窒素に酸化され、無酸素タンク21では、これらの酸化態の窒素が流入水中の有機物の酸化反応によって窒素ガスに還元される。硝化脱窒後の被処理水は、好気タンク22内に浸漬配置された濾過体5で濾過により固液分離された後、緩衝槽4を経て処理済水として排出される。緩衝槽4内の水位により、濾過に必要な水頭差が安定して維持される。
【0020】図3〜図6に、本発明の循環式硝化脱窒装置の反応槽2における1組の濾過体5の配置を示す。図3R>3は平面図、図4は図3の線IV−IVにおける断面図、図5R>5は図3の線V −V における断面図、図6は図3の線VI−VIにおける断面図である。なお、図3〜図6においては、循環用の導管Bは図示を省略した。反応槽2は、長さのほぼ中央にある堰23によって、無酸素タンク21と好気タンク22とに仕切られており、更に幅の中央にある中間隔壁2Aによって上層部と下層部を除く中間深さの範囲が左右に分離されている。最初沈澱池1から導入管1Aにより無酸素タンク21内に導入された被処理水が、堰23の上端によって、中間隔壁2Aの上端2AUより高い水位2W1に維持されている(図4,図5R>5)。また堰23を越えてオーバーフローAにより好気タンク22内に流入した被処理水は、中間隔壁2Aの上端2AUより高いが無酸素タンク21内の水位2W1よりは低い水位2W2に維持されている。すなわち、槽2は、無酸素タンク21内でも好気タンク22内でも、被処理水の水位2W1または2W2と隔壁2Aの上端2AUとの間の上層部は被処理水が連通している。また、隔壁2Aの下端2ALと槽2の底面2Bとの間でも被処理水が連通している。
【0021】槽2の中間隔壁2Aより右の区域(図6)には、無酸素タンク21内には機械的攪拌機7が、好気タンク22内には多数の曝気管6が浸漬配置されている(図3,図5)。濾過体5はその厚さ方向に4個を並立させて1組としてあり、好気タンク22内において、中間隔壁2Aを挟んで曝気管6とは反対側になる左の区域(図6)の、下流部分(図3,図4で右側)に浸漬配置されている。
【0022】図2に示した最初沈澱池1からの被処理水は、導入管1A(図3,図5)を通り、無酸素タンク21の上流端(図3,図5で左側)の右区域(図6)に導入され、攪拌機7により右区域内で上昇流(図5の矢印F11)となり、隔壁2Aの上を図3の矢印F12方向に越え、左区域に入って下降流(図4の矢印F13)となり、隔壁2Aの下を潜って右区域に戻るサイクルの旋回流を形成する。好気タンク22内においても同様に、曝気管6により右区域内で上昇流(図5の矢印F21)となり、隔壁2Aの上を図3の矢印F22方向に越え、濾過体5のある左区域に入って下降流(図4の矢印F23)となり、隔壁2Aの下を潜って右区域に戻るサイクルの旋回流(図6のF2)を形成する。
【0023】このように濾過体5は好気タンク22内において旋回流の下降流F23の部分に配置されるが、これは、後に詳細に説明するように、濾過体5の構成部材である濾過膜を安定して形成および維持するためである。図7に、図4の濾過体5の部分の拡大断面図を示す。図7の矢印F23は図4に示した被処理水の下降流を示す。1組を成す4個の濾過体5はそれぞれ、構造部材51の側面に所定範囲の目開きおよび厚さを持つ支持材52を密着固定したものである。構造部材51は、偏平な中空体であり、上端は閉鎖され下端は流出口54として開口しており、側面には多数の流入口51Aが開口している。支持材52上には、後に詳細に説明する濾過膜が形成される。被処理水は支持材52を透過する際に上記の濾過膜により固液分離され、透過部分が構造部材51側面の流入口51Aを通って濾過体5の内部に流入し、下端の流出口54から排出管55に集まって、後続の槽または導管へ導かれる。
【0024】図8に示すように、支持材52上には活性汚泥及び濁質が濃縮して濾過膜が形成される。図示を簡単にするために図8では構造部材51は省略してある。支持材52が本発明の範囲内の目開き及び厚さであるときには、長期間に亘り安定した濾過膜が維持される。支持材の目開きまたは厚さの少なくとも一方が本発明の範囲外であるときは、目詰まりが早期に起こる。
【0025】本実施例においては、好気タンク22内において濾過体5を被処理水の旋回流Fの下降流部分F23に配置した。図9および図10に、支持材52の目開き(分離粒径)および膜厚と目詰まり発生までの運転日数(目詰まり日数)との関係をそれぞれ示す。いずれも、T−N30mg/L,SS120mg/Lの下水を原水として処理を行った結果である。図に示したように、支持材の目開き(分離粒径)が20μm未満の場合または支持材の厚さが2mmを越える場合には、目詰まり日数が2日あるいはそれ以下である。これに対し、本発明により目開きを20μm以上とし且つ厚さを2mm以下とすることにより、目詰まり日数が10日以上と著しく改善されることが分かる。なお、図9は厚さを本発明の範囲内である2mm(一定)として目開きのみを変化させた結果であるが、本発明の範囲内の他の厚さについても同様の結果が得られた。また、図10は目開きを本発明の範囲内である20μm(一定)として厚さのみを変化させた結果であるが、本発明の範囲内の他の目開きについても同様の結果が得られた。
【0026】支持材52の目開き(分離粒径)の上限は特に限定せず、適正な濾過膜53が形成維持できる範囲であればよい。例えば、図11に示した例では、目開き53が分離粒径400μmを越えると、処理済水中のSS濃度が急激に増加するので、この場合には分離粒径400μm以下の目開きとすることが適切である。濾過膜の目詰まりが発生したら、逆洗により支持材から活性汚泥を除去する。逆洗により脱落した汚泥フロックは容易に再懸濁するので、特別な操作は必要ない。逆洗直後、濾過膜が形成されるまでは、多少のSSの漏出があるが、逆洗を濾過体全体について同時に行わず、1組の濾過体を複数部分に分割して行うことにより、漏出SSが希釈され全体としてのSS濃度を低い値に抑えることができる。それには、図3,図4で示した4個1組の濾過体5が占める体積を複数ユニットに分割し、各ユニット毎に独立の排出管55を持つ1組の濾過体5を割り当てて配置することが望ましい。すなわち、図3,図4では濾過体5を4個並立させ同一排出管55を共有する1組として示したが、例えば2個並立させて1ユニットとして図3,図4と同じ並べ方で2ユニット配置し、各ユニット毎に独立の排出管55を設けてもよいし、あるいは濾過体5を厚さ方向の切断面で縦横にそれぞれ2等分して側面面積が4分の1の濾過体5を図3,図4に示した1組と同じ並べ方で並立させて1ユニットとし、これを縦横に2ユニットづつ並べ、各ユニット毎に独立の排出管55を設けてもよいし、更に、前者のような並立方向での分割と、後者のような側面面積の分割とを組み合わせてもよい。
【0027】また、反応槽2の規模(特に好気タンク22の規模)あるいは必要な処理容量に応じて、厚さ方向の並立個数を例えば30〜40個と多数にすることもできるし、側面面積を大きくすることもできる。その際にも、適宜上記のようなユニット分割はもちろん適用できる。なお、本実施例では偏平な濾過体5を、その側面が反応槽2の長手軸(図3〜図5の左右方向)と直角になる向きに配置したが、濾過体5の向きは特にこれに限定する必要はなく、側面が反応槽2の長手軸と平行あるいは長手軸に対して傾斜した向きにすることもできる。ただし、濾過体5の向きは、旋回流の流れを妨げず、網目膜上への活性汚泥の堆積が不均等にならず、それと関連して濾過作用が不均等にならないように配慮する必要がある。
【0028】更に、本実施例では濾過体5は偏平状としたが、濾過体5の形状は特に偏平状に限定する必要はなく、用いる処理槽の形状や特性あるいは配管の都合等に応じて他の形状とすることができる。また、本実施例では濾過膜を形成する支持材の設置位置を濾過体5の側面としたが、これは濾過体5を偏平状としたときに、濾過膜の安定形成および維持とそれによる濾過作用の安定確保にとって、側面配置が好ましいからであり、支持材の最適な設置位置は濾過体の形状に応じて配慮すべきである。
【0029】次に、図2に示した配置の本実施例の装置により処理を行った結果の一例を説明する。原水は、T−N30mg/L、SS120mg/Lの下水であった。実効容量1m3 の反応槽2を前段400L分を無酸素タンク21、後段600L分を好気タンク22とした。好気タンク22内の、被処理水旋回流の下降流部分に、側面面積30cm×30cmの濾過体を浸漬配置し、1m/日の透過流速で、自然流下で処理済水を取り出した。濾過体の支持材としては、目開きが分離粒径20μmで厚さが0.4mmのポリエステル製不織布を用いた。水頭差(損失水頭)は20cmであった。その結果、得られた処理水質はT−N6mg/L、SS8mg/Lであった。
【0030】比較として、最初沈澱池1および反応槽2は上記と同じであるが、本発明の濾過体は用いず最終沈澱池3を用いた図1の装置により、上記と同様な条件で処理を行った。その結果、得られた処理水質はT−N10mg/L、SS15mg/Lであった。
〔実施例2〕図12に、本発明により反応槽の好気域内に配置した濾過体と、最終沈澱池とを併用して汚水処理を行うための装置の一例を示す。この装置は、図2に示した実施例1の装置に、図1に示した最終沈澱池を付加した構成である。図1,2と対応する部分は図1,2中と同じ参照番号を付してある。
【0031】すなわち図12の硝化脱窒装置は、最初沈澱池1、反応槽2、および緩衝槽4をこの順に配設し、反応槽2内には図示しないエアレーション用の水中エアレータや曝気管、撹拌機等が配置された図2の構成に、図1に示した最終沈澱池3を加えた構成である。反応槽2は、上流側の無酸素タンク(脱窒タンク)21と下流側の好気タンク(硝化タンク)22とから成り、これらタンクは堰23で隔てられていて、無酸素タンク21から好気タンク22への流入は堰23の上を越えるオーバーフローAにより行われる。
【0032】更に、反応槽2の好気タンク22内には、本発明による濾過体5が浸漬配置されている。原水(汚水)は図の左端から最初沈澱池1に流入し、最初沈澱池1内で粗大な固形分を沈澱除去する。最初沈澱池1からの流入水と最終沈澱池3からの返送汚泥とを無酸素タンク21に流入させる一方、続く好気タンク22の硝化混合液の一部を導管Bにより無酸素タンク21へ循環する。好気タンク22では、流入するアンモニア性窒素が亜硝酸性もしくは硝酸性の窒素に酸化され、無酸素タンク21では、これらの酸化態の窒素が流入水中の有機物の酸化反応によって窒素ガスに還元される。
【0033】そして、硝化脱窒後の被処理水のうち一定水量は、好気タンク22内に浸漬配置された濾過体5で濾過により固液分離された後、緩衝槽4を経て処理済水Aとして排出される。緩衝槽4内の水位により、濾過に必要な水頭差が安定して維持される。一方、脱窒後の被処理水のうち一定水量より負荷変動する水量は、濾過体5を介さず好気タンク22から直接に最終沈澱池3に送水され、最終沈澱池3にてSSを沈澱分離して処理済水Vとして排出される。
【0034】このようにすると、本発明を適用するために図1のような構成の既存設備を改造する際に、既存の最終沈澱池3が有効に活用できるし、処理水の全量を濾過体5で処理するよりも濾過体5の負担が軽減するので濾過体5の規模や設置個数が低減でき、設備改造費を低減できるという利点がある。次に、図12に示した配置の本実施例の装置により処理を行った結果の一例を説明する。原水は、BOD180mg/L、SS120mg/L、T−N35mg/Lの下水であった。実効容量1m3 の反応槽2を前段500L分を無酸素タンク21、後段500L分を好気タンク22とした。好気タンク22内の、被処理水旋回流の下降流部分に、側面面積40cm×40cmの濾過体を浸漬配置し、一定水量のみを1m/日の透過流速で、自然流下で処理済水を取り出した。濾過体の支持材としては、目開きが分離粒径20μmで厚さが0.4mmのポリエステル製不織布を用いた。水頭差(損失水頭)は20cmであった。一方、一定水量からの負荷変動分は実効容量500Lの最終沈澱池に送水して処理し、被処理水Vとして取り出した。その結果、得られた処理水質はBOD8mg/L、SS5mg/L、T−N7mg/Lであった。
【0035】比較として、最初沈澱池1および反応槽2は上記と同じであるが、本発明の濾過体は用いず最終沈澱池3を用いた図1の装置により、上記と同様な条件で処理を行った。その結果、得られた処理水質はBOD20mg/L、SS20mg/L、T−N12mg/Lであった。本実施例のように、反応槽の好気域内の濾過体と、最終沈澱池とを併用することにより、既存設備を活用しながら格段に処理水質を向上させることができ、特に流入負荷の変動時、冬場の生物機能低下時、合流式処理設備での流入負荷増加時、バルキング時等においても、良好な処理水質を確保することができる。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、循環式硝化脱窒プロセスに上記提案の濾過装置を改良して組み込み、最終沈澱池の負荷を低減あるいは最終沈澱池自体を省略し、且つ処理水質を向上させた循環式硝化脱窒装置および方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、従来の循環式硝化脱窒装置を示す配置図である。
【図2】図2は、本発明の循環式硝化脱窒装置の一例を示す配置図である。
【図3】図3は、本発明の循環式硝化脱窒装置の反応槽における濾過体の配置を示す平面図である。
【図4】図4は、図3の線IV−IVにおける断面図である。
【図5】図5は、図3の線V −V における断面図である。
【図6】図6は、図3の線VI−VIにおける断面図である。
【図7】図7は、図4の濾過体の部分の拡大断面図である。
【図8】図8は、支持材を模式的に示す断面図である。
【図9】図9は、支持材の目開き(分離粒径)と目詰まり発生までの運転日数との関係を示すグラフである。
【図10】図10は、支持材の厚さと目詰まり発生までの運転日数との関係を示すグラフである。
【図11】図11は、支持材の目開き(分離粒径)と処理済水中のSS濃度との関係を示すグラフである。
【図12】図12は、本発明の循環式硝化脱窒装置の別の一例を示す配置図である。
【符号の説明】
1…最初沈澱池
1A…最終沈澱池からの被処理水導入管
2…生物反応槽
21…無酸素タンク
22…好気タンク
23…堰
2A…中間隔壁
2AU…隔壁2Aの上端
2AL…隔壁2Aの下端
2B…反応槽2の底面
2W1…無酸素タンク21内の水位
2W2…好気タンク22内の水位
3…最終沈澱池
4…緩衝槽
5…濾過体
51…構造部材
51A…流入口
52…支持材
53…濾過膜
54…流出口
55…排出管
6…曝気管
7…機械的攪拌機
F11,F21…旋回流の上昇流部分
F13,F23…旋回流の下降流部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被処理水の流入側に無酸素域を、処理済水の流出側に好気域を有する反応槽を備え、該好気域内の硝化混合液の一部を該無酸素域へ循環させて該被処理水中の窒素を除去する循環式硝化脱窒装置において、分離粒径20μm以上の目開きを持ち厚さが2mm以下である通水性の支持材で周囲壁の少なくとも一部を構成した中空状の濾過体を、該好気域内または後続の最終沈澱池内の少なくとも一方に浸漬配置し、該支持材上に硝化汚泥及び濁質からなる濾過膜を形成させ、後続槽との水頭差により該濾過膜を介して該濾過体内へ処理済水を流入させ且つ該濾過体内から該処理済水を引き抜くことを特徴とする循環式硝化脱窒装置。
【請求項2】 該支持材が、金属網または不織布から成ることを特徴とする請求項1記載の循環式硝化脱窒装置。
【請求項3】 被処理水の流入側に無酸素域を、処理済水の流出側に好気域を有する反応槽を用い、該好気域内の硝化混合液の一部を該無酸素域へ循環させて該被処理水中の窒素を除去する循環式硝化脱窒方法において、分離粒径20μm以上の目開きを持ち厚さが2mm以下である通水性の支持材で周囲壁の少なくとも一部を構成した中空状の濾過体を、該好気域内または後続の最終沈澱池内の少なくとも一方に浸漬配置し、該支持材上に硝化汚泥及び濁質からなる濾過膜を形成させ、後続槽との水頭差により該濾過膜を介して該濾過体内へ処理済水を流入させ且つ該濾過体内から該処理済水を引き抜くことを特徴とする循環式硝化脱窒方法。
【請求項4】 該支持材が、金属網または不織布から成ることを特徴とする請求項3記載の循環式硝化脱窒方法。
【請求項5】 前記濾過体を前記反応槽の好気域内に浸漬配置し、一定水量を前記処理済水として該濾過体から引き抜くと共に、該一定水量より負荷変動する水量を該反応槽の好気域から該濾過体を介さずに最終沈澱池に送水して処理することを特徴とする請求項3または4記載の循環式硝化脱窒方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図12】
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【公開番号】特開平10−128390
【公開日】平成10年(1998)5月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−289987
【出願日】平成8年(1996)10月31日
【出願人】(596155258)
【出願人】(596155269)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)