説明

循環腫瘍細胞、断片およびデブリスの分析

【課題】CTCによって判断された悪性疾患を含めた循環する稀な細胞、クラスター、断片およびデブリスに基づいて病気を診断、モニター、およびスクリーニングする方法および、これらの方法を用いて生物学的検体をアッセイするためのキットの提供。
【解決手段】イン・ビトロの損傷を制限し、低下させ、排除し、または少なくとも制限して、それが分析に干渉するのを妨げ、フローサイトメトリーおよびCellSpotter(登録商標)蛍光顕微鏡イメージングシステムを含めた多数のプラットフォームで、循環腫瘍細胞、クラスター、断片およびデブリスを分析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の情報
本出願は、2001年8月23日に出願された米国仮出願番号60/314,151および2002年4月3日に出願された60/369,628に対して米国特許法第119条(e)の下で優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
多くの臨床家は、癌はその初期段階においては器官が限定された病気であると考える。しかしながら、この認識は間違いであり、癌は、しばしば、それがまず現在利用可能な方法を用いて検出される時点までは全身病であるようである。原発性癌は、臨床的発現の現れる前に、初期病気段階において新形成細胞を循環系に放出し始める。腫瘍の血管形成に際し、循環系に放出された腫瘍細胞は、離れた部位に付着し、集落化して、転移を形成する。これらの循環腫瘍細胞(CTC)は、健康な個体の細胞では通常は見出されないマーカーを含み、かくして、特定の癌腫の診断および治療のための基礎を形成する。よって、循環系における腫瘍細胞の存在を用いて、乳癌についての乳房造影、または前立腺癌についての前立腺特異的抗原(PSE)の測定のごとき、他のテストの代わりに、またはそれと組み合わせて癌につきスクリーニングすることができる。標的細胞上または中の会合したマーカーに向けられた適当なモノクローナル抗体を使用することによって、または細胞蛋白質発現についての他のアッセイを用いることによって、あるいは細胞mRNAの分析によって、そのような細胞の器官起源、例えば、乳癌、前立腺癌、結腸癌、肺癌、卵巣癌または他の非造血系癌は容易に決定することができる。
【0003】
かくして、癌細胞を検出できる場合、腫瘍の実質的に臨床的兆候はないが、その存在ならびに起源の器官を同定することが可能であろう。もし外科的処置の後にCTCが検出されれば、もしCTCが再発の兆候であれば、アジュバント療法を開始できる。そのような療法のコストに鑑みれば、そのような治療に対する患者に必要性、または効率の予測は、臨床的情報の重要かつ便利なピースである。また、もしCTCの数が変化すれば、それは進行(CTC増加)または応答(CTC減少)を予測することができるのも明らかである。
【0004】
悪性腫瘍は、隣接する組織に侵入できる組成物の能力によって特徴付けられる。一般に、1mmの直径を持つ腫瘍は血管形成され、動物実験は、腫瘍に存在する細胞の4%と多くが24時間以内に循環系に放出され得ることを示す(Butler, TP & Gullino PM, 1975 Cancer Research 35:512-516)。腫瘍の放出能力は、腫瘍の攻撃性にほとんど依存するようである。腫瘍細胞は連続的ベースで循環系に放出されるが、離れた転移を生じるのはほとんどないか、または非常に小さな割合に過ぎないと考えられる(Butler & Gullino, supra)。腫瘍質量の増加は、単細胞、または増加した接着性(およびおそらくはより大きな侵入可能性)を持つ細胞のクラスターとして、CTCの頻度の増加に比例すると予測される。もしこれが当てはまれば、高レベルの感度を持つ利用可能な方法は、離れた転移を持つ患者ならびに局所化された病気を持つ患者における腫瘍負荷の評価を容易とするであろう。局所化された病気を持つ患者の末梢血液中の腫瘍細胞の検出は、初期段階における腫瘍を検出するのみならず、腫瘍の潜在的進入性に関する兆候を供する能力を有する。
【0005】
しかしながら、全血は、特に、24時間を越える延長された貯蔵について、イン・ビボおよびイン・ビトロでの多数の生化学および酵素反応を受けることができる細胞および可溶性成分の種々の集団を含む複雑な体液である。これらの反応のいくつかは、外来性種として認識されるCTCの免疫学的破壊に関連する。患者の免疫応答は、ファゴサイトーシスおよび好中球活性化を含めた通常の防御メカニズムによって腫瘍細胞を弱めたり、または破壊する。化学療法は、同様に、壊死による細胞死滅を誘導することによって、細胞機能および増殖を共に低下させることが意図される。これらの外的破壊因子の他に、ひどい環境で損傷した腫瘍細胞は、プログラムされた死滅またはアポトーシスを受け得る。アポトーシスまたは壊死を受けつつある(CTCを含めた)正常および異常細胞は、変化した膜透過性を有し、これはDNA、RNAおよび他の細胞内成分の逃避を可能とし、損傷した細胞、断片化された細胞、細胞デブリス、および究極的な完全な崩壊の形成に導かれる。そのような腫瘍細胞デブリスは、無傷細胞に特徴的なエピトープまたは決定基を依然として担うことができ、検出された循環癌細胞の数の偽の増加に至り得る。健康な個体からの全血検体もまた、24時間を越える長期の貯蔵で、ここでは減少した血液質と分類される、不安定な血液細胞成分の破壊を受けると観察された。例えば、赤血球は破裂し、ヘモグロビンを放出し、細胞ゴーストを生じる。白血球、特に顆粒球は不安定であって、貯蔵に際して減少することが知られている。そのような変化は、CTCのごとき稀な標的細胞の単離および検出に干渉し得る細胞デブリスの量を増加させる。集合的には、吸取後またはイン・ビトロ損傷と定義される、これらの破壊的プロセスの組合せ効果は、細胞デブリスを実質的に増加させ得、これは、CellSpotter(登録商標)またはCellTracksTMのごときフローサイトメトリーおよび顕微鏡分析で容易に検出できる。
【0006】
顕微鏡イメージングによる循環腫瘍細胞の検出は、分類可能な腫瘍細胞の偽の減少および干渉性の染色可能なデブリスの対応する増加によって、同様に、悪影響される。よって、血液検体の一体性または品質の維持は非常に重要である。というのは、血液吸取および検体処理の間には24時間もの長い遅れがあり得るからである。そのような遅延は予期されるべきである。というのは、このアッセイのために血液処理で用いる技術および器具は、試験場毎に容易に入手できないからである。試料の処理のために試験所に試料が到達するのに必要な時間は、かなり変化し得る。従って、試料を処理することができる時間ウインドウを確立するのが重要である。ルーチン的な血液学分析において、血液試料は24時間以内に分析することができる。しかしながら、稀な血液細胞の分析はより臨界的であるので、血液試料を分析することができる時間ウインドウはより短い。その例は、血液細胞の免疫表現型分けであり、これは、一般に、24時間以内に行われなければならない。癌細胞アッセイにおいて、大容量の血液が処理されなければならず、CTCおよび造血系細胞双方からの細胞を崩壊させることによって放出された物質はバックグラウンドを増加させかねず、従って、腫瘍細胞を検出する能力を低下させるので、血液試料のイン・ビトロ分解はより問題となり得る。
【0007】
観察された小さなデブリスおよび大きな凝塊−様凝集体の起源および性質は十分には理解されないが、標的細胞、非−標的細胞に由来する細胞成分または要素、およびおそらくは血漿成分を含むと考えられる。CTCは免疫学的に外来性種と考えることができるので、宿主の正常な細胞免疫応答は血液吸取前であってもイン・ビボで起こるであろう。また、多数のCTCが腫瘍部位から継続的に放出され得、定常レベルが維持され、ここに、CTCの破壊は放出速度と等しく、それは、腫瘍負荷のサイズに依存する(JG Morenoら,"Changes in Circulating Carcinoma Cells in Patients with Metastatic Prostate Cancer Correlates with Disease State." Urology 58. 2001参照)。
【0008】
種々の方法が、血液から腫瘍細胞を回収するためのこの特定の分野で知られている。例えば、AmCellおよびMiltenyiに対する米国特許第6,190,870号は、免疫磁気単離、続いてのフローサイトメトリーによる計数を教示する。しかしながら、免疫磁気分離の前に、血液試料は密度勾配を用いて予備処理される。さらに、無傷細胞以外の単離または計数の議論はない。また、試料の目に見える形態学的分析もない。
【0009】
米国特許第6,197,523号において、Rimmらは、100μlの血液試料中の癌細胞の計数を記載している。該方法は、見出された細胞の同一性を確認するためにキャピラリー顕微鏡を用いる。該方法は、小さな試料容量のため多数存在するに違いない無傷細胞に対して特異的である。しかしながら、断片またはデブリスのごとき他の単離または計数の議論はない。
【0010】
Immunivestに対する米国特許第6,365,362号において、血液中の腫瘍細胞についての試料を免疫磁気的に豊富化し、それを分析するための方法が記載されている。該方法は無傷細胞の分析に特異的に向けられており、ここに、細胞の数は病気状態と相関する。単離された細胞は核酸およびさらなるマーカーの存在について標識され、これは、分析の間において非−標的試料成分の排除を行う。
【0011】
WO 02/20825において、Chenは、腫瘍細胞を計数するための接着マトリックスの使用を記載している。簡単に述べれば、マトリックスを、推測される転移可能性を持つ生きた癌細胞を結合させるであろう特異的接着分子でコートする。次いで、マトリックスは、捕獲された細胞の存在およびタイプについて分析することができる。また、スクリーニング処理においてマトリックスを用いる方法も記載されている。無傷細胞およびアポトーシスまたは壊死細胞の間を区別する工程が取られるが、アポトーシスまたは壊死細胞は分析から特異的に排除される。
【0012】
Cell WorksからのWO 00/47998において、CTC、末端および増殖について2つの経路が記載されている。形態学的差によって示されるごとく、双方の経路は末端または増殖経路いずれかで進行する「不確定」細胞で開始する。末端経路における細胞は結局は破壊され、増殖経路にある細胞は転移性腫瘍としての新しい転移性コロニーを形成する。この増殖経路(細胞およびクラスター)が潜在的診断としての焦点であるが、細胞断片またはデブリスの重要性を最小化する。これらの2つの経路は、患者試料で観察される形態学的差を説明するように設計された。
【0013】
一般に、より抵抗性で増殖性の細胞が生き残って、二次的または転移性部位を確立する。末梢循環系においては、活性化された好中球およびマクロファージによってCTCがさらにイン・ビボ(イン・ビトロにおいても)攻撃され、その結果、徐々に、膜が開口され、電解質、より小さな分子が漏れ出し、かつ細胞の生存に必須であるDNA、クロマチン等を含めた臨界的細胞エレメントが結局は喪失される。細胞の死滅の臨界的時点において、細胞の破壊はさらにアポトーシスによって支援される。アポトーシスは一連の段階的な遅い細胞内事象によって特徴付けられ、これは、細胞外種、例えば、細胞傷害性抗−腫瘍薬物によってトリガーされまたは媒介される壊死または迅速な細胞死滅とは異なる。これらの破壊的プロセスの全てまたはいくつかは、崩壊しつつあるCTCからの、ならびに薬物療法中の正常な造血細胞の不意な破壊からの染色可能なDNA、DNA断片および「DNAラダー」構造を含めたデブリスおよび/または凝集体の形成に至り得る。なぜならば、ほとんどの細胞傷害性薬物は毒性用量近くで投与されるからである。
【0014】
WO 00/47998、米国特許第6,190,870号および他の刊行物に示されているごとく、CTCは生きた細胞および死滅した細胞双方として循環することができ、ここに、「死滅した」は十分な範囲の損傷したおよび断片化された細胞ならびにCTC−由来デブリスを含む。細胞負荷は、おそらくは、細胞の形態学的特徴を担うが、凝塊および/または凝集体とは区別されるクラスターおよび損傷したCTCを含めた、双方の無傷CTCの合計によって最良に示される。しかしながら、いくつかの損傷した細胞は大きなポアを有することができ、液体および粒子状細胞ゾル内容物の漏出を引き起こし、その結果、約1.06ないし1.08の浮遊密度が1.12を超えるまで変化するか、あるいはRBCの密度を超える(生きたおよび死滅した細胞は、Pharmaciaプロトコルに従うとd=1.12および1.16のグラジエントの界面で分離することができる)。WO 00/47998で用いられている慣用的密度勾配は、約1.08ないし1.11の密度の範囲を有する捨てられたRBC層においてそのような損傷したCTCを喪失するであろう。サイトケラチンについて陽性染色されるCTCデブリスもまたRBCまたはそれより高い範囲に入る密度を有することができる。というのは、(プラズマ−バフィーコート界面近くに位置させることができる親油性膜断片はおそらく除外されるが)ほとんどの細胞内成分は1.15ないし1.3の範囲の密度を有するからである。よって、損傷したCTCおよびCTCデブリスのかなりの割合がバフィーコート層の外に位置し、WO 00/47998におけるもののごとく、密度勾配方法によって観察されないであろう。損傷されたまたは断片化されたCTCのいくつかのイメージが示されるが、サイトスピンまたは引き続いての処理の間に損傷が起こり、かくして、それが人工物となるかなりの可能性がある。ほとんどの無傷腫瘍細胞の密度はWBCの領域に入り得るが、患者試料中の損傷したCTCは、それらをグラジエント技術の範囲外のRBC層に置くほどの、より高い密度を有することもあるだろう。
【0015】
米国特許出願番号2001/0024802は、断片およびデブリスをビーズに結合させるための方法を記載している。その公開された出願は、注目する断片およびデブリスの密度についての多数の可能性を記載していた。遠心に際し、ビーズは、断片および/またはデブリスにカップリングしたビーズの規定の所定の比重(密度)のため、RBC上方の層に位置するであろう。しかしながら、このシステムは、断片およびデブリスをこれらのビーズに正確に結合させることに依存する。もしいずれかの他の試料成分がビーズに結合すれば、それは所望の位置には出現できず、引き続いて、分析に付されない。
【0016】
元のその組織中の上皮細胞は、確立された増殖および発生の「規則」に従う。これらの規則は集団制御を含む。これは、正常な環境下では、細胞の数およびサイズが一定であり、生物の正常な増殖および発生で必要な場合にのみ変化することを意味する。上皮細胞または不滅化細胞の基底細胞のみが分裂し、上皮細胞にとってその機能を行う必要がある場合にそれは分裂し、上皮細胞の性質および位置に常に依存する。ある程度異常ではあるが良性環境下では、細胞は増殖し、基底層は通常よりも分裂し、過形成を引き起こす。いくつかの他の異常ではあるが良性な環境下では、細胞は特定の細胞について正常であるものを超えたサイズまで増大し、葉酸欠乏におけるごとく細胞の巨大発育を引き起こす。
【0017】
上皮組織は、プレ悪性または悪性病巣のため細胞のサイズまたは数が増加し得る。これらの場合、前記したのと同様な変化が、低グレードの上皮内病巣における温和から悪性疾患における重症の範囲の核異常性に伴う。これらの細胞の変化は上皮の厚さの一部に影響し得、それが重傷度を増大させるにつれ、そのような内皮より厚い一部を含むであろう。これらの細胞は接触阻止の制限に従わず、組織制御なくして増殖し続ける。上皮の全厚みが悪性変化によって影響される場合、該状況はイン・サイチュにて癌腫と認識される(CIS)。
【0018】
悪性細胞は、結局は、基底膜を通過することができ、その悪性可能性が増大するにつれ、器官の間質を浸す。間質を浸した後、これらの細胞は血管に到達するためのポテンシャルを有すると考えられる。一旦それらが血管に浸潤すると、細胞はそれらが起源とするのとは完全に異なる環境にいる。
細胞は単一の細胞として、または2以上の細胞のクラスターとして血管に浸潤することができる。循環系を通って循環する上皮起源の単一細胞は、2つの結果のうち1つを有するように運命付けられている。それは、死滅するか、生き残ることができる。
【0019】
単一細胞:
1.該細胞は、内部変化によるアポトーシス、または細胞自体におけるメッセージを介して死滅し得る。これらのメッセージは進入前に細胞で観察されているか、あるいはそれは血液中にある間に受け取ることができるか、あるいは、それが、宿主の免疫系の影響により死滅し、これはこの環境に対して「外来性」のものとしてこれらの細胞を認識し得る。細胞死滅の結果は有核細胞、斑点状細胞または無定形細胞としてCellSpotter(登録商標)で同定することができる。これらの細胞は、細胞分裂またはコロニーまたは転移の確立のポテンシャルを有しない。
・有核細胞は核崩壊および排除の結果である(核崩壊および核溶解)。それらはケラチンにつき陽性であって、核酸につき陰性である。
・斑点状細胞はサイトケラチンおよびDAPIにつき陽性であって、細胞変性および細胞質崩壊の証拠を示す。これらの細胞は、細胞骨格蛋白質が浸出するにつれ、療法または宿主の免疫系に対する応答を示し得る。
【0020】
CellSpotter(登録商標)を用いて同定可能なもう1つの死滅しつつある腫瘍細胞は無定形細胞である。これらの細胞は、おそらくは、調製プロセスの間に損傷され、これらの細胞がより弱く、よりデリケートな細胞であるが、アポトーシスまたは免疫攻撃の結果でもあり得る兆候である。
【0021】
2.生きた悪性上皮細胞は、循環系で生き残り、離れた器官においてコロニーを形成するポテンシャルを有し得る。これらの「生存細胞」は、CellSpotter(登録商標)において、高い核物質/細胞質物質比を有する無傷細胞として出現する。これらの細胞は、おそらくは、未分化であり、潜在的には、血液中で分裂することができ、離れた毛細血管中で浸出することができる小さなクラスターを形成することができ、そこで細胞は新しいコロニーを確立することができるか、あるいはそれが浸出まで単一細胞として存在でき、一旦それがそれ自身を新しい組織中で確立すれば、このようにして新しいコロニーを開始する。
【0022】
クラスター:B Brandtらによって記載されているごとく循環系に入るクラスターを一次腫瘍細胞は放出することができる("Isolation of prostate-derived single cells and cell clusters from human peripheral blood." Cancer Research 56 p4556-4561. 1996)。これらのクラスターは、クラスターとして存在し、離れた組織に侵入することができるか、それは、おそらくは血液における圧力の差または免疫系の介入のため循環系で解離することができるようになる。もしこれらの細胞が単一の細胞に解離すれば、前記単一細胞について記載した2つの経路のうちの1つに従うことができる(1および2参照)。クラスター形成は、内部細胞を免疫系から保護する盾として外部細胞を用いることによって生存において効果を有することができる。
一旦新しいコロニーが新しい器官で確立されれば、いくつかの悪性細胞は、複製して新しい腫瘍を形成し続けるであろう。もしそれが新しい毛細血管に到達すれば、転移ストーリーが繰り返され、二次転移が起こる。
【0023】
公知の癌腫を持つ患者における治療のモニタリング:
腫瘍細胞の数の減少および/または応答指数の増加は、患者療法に対する応答を表すことができる。
・合計腫瘍細胞=死滅しつつある細胞+生存細胞(TTC=DC+SC)
・応答指数=死滅しつつある細胞/合計腫瘍細胞(RI/DC/TTC)
応答指数が高くなれば、療法に対する応答は良好となる。低い応答指数は、患者が治療に応答していないか、あるいは患者の免疫系が腫瘍負荷を取り扱うことができないことを示しえる。
【0024】
予備処理訪問において全てが生存細胞であった50の合計腫瘍細胞を有し(a RI=0/50=0)、かつ(処理後に)追跡で50TTCを有する患者はRIに応じて異なる結果を有し得る。もし全てのTTCがSCであれば、(すなわち、DC=0)、療法に対する応答はなかった。もし50細胞があるが、応答指標が40/50=0.8であれば、免疫系または療法は腫瘍負荷に対して負の効果を有しており、従って、陽性患者応答である。
【0025】
公知のプレ−悪性疾患を持つ患者での追跡における決定:パップ塗抹が異型性または低グレードの上皮内病巣を持つ細胞を有すると診断された場合、常に、よりひどい異常性をこれらの患者が有する確率があり、その細胞がサンプリングエラーとして除かれた。これらの患者は膣顕に付し、バイオプシーに付すことができるか、あるいは反復パップ塗抹のために3ヶ月以内に戻すことができる。もし非典型的な細胞がサンプリングされなかった悪性細胞の小さな焦点領域で同時に存在すれば、患者は3ヶ月待機し、しかる後、いずれかの追跡を受ける。これは、いくつかのプレ−悪性疾患が他のものより早く進行するように見えるのを説明できる(サンプリングエラーにより誤診断し、統計学において人工物を引き起こす)。これらは、通常、より「攻撃的な」プレ−悪性疾患であると説明される。CellSpotter(登録商標)を用いて、これらの患者の判断系統で助けることができる。異常なパップを持つ全ての患者(米国においてパップ塗抹の5ないし10%)は、循環上皮細胞につき直ちにテストすることができる。陽性テストを持つ患者は直ちにかつ攻撃的に追跡されるべきである。陰性結果を持つ患者は、反復パップのために3ヶ月待機することができる。これは、医師および健康専門家のためにプロセスを作成する決定を単純化し、追跡手法を患者が信頼するのを助ける。
【0026】
スクリーニング:CellSpotter(登録商標)イメージ分析は、特別な組織特異的抗体を全ての異常な試料での第2のテストで用いるという条件下で、一般的に集団のスクリーニングで用いることができる。患者におけるCTCの同定は、転移のプロセスを開始してしまったか、あるいは開始しつつある一次悪性疾患があることを示すことができる。もしこれらの細胞が、新しいマーカーで起源の組織に関して同定されれば、CTがガイドした微小針吸引(FNA)のような器官特異的テストを用いてそのような悪性疾患の存在または不存在を証明することができる。一次が同定できない患者は、個々のベースラインを確立した後に反復テストで追跡することができる。
【0027】
まとめると、前記因子の全てまたはいくつかは、本発明に開示したごとく全血からの直接的な豊富化手法によるCTCの検出を混乱させることが観察されたデブリスおよび/または凝集体形成に寄与することが判明した。無傷CTC、損傷したまたは疑われるCTCの数ならびにCTCに対する損傷の程度は、さらに、腫瘍負荷、腫瘍細胞の増殖能力および/または療法の有効性の診断的に重要なインジケーターとして働くことができる。対照的に、先行技術の方法およびプロトコルは、CTCに対する避けることのできないイン・ビボ損傷を、避けることのできるイン・ビトロ貯蔵および処理損傷と組み合わせて、かくして、癌患者においてCTCおよび腫瘍負荷についての誤った情報を生じる。最後に、高度な感度および特異性でもって機能するここに記載する本発明の比較的単純な血液テストは、「全身パイオプシ」と考えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
特許文献1:米国特許第6,190,870号
特許文献2:米国特許第6,197,523号
特許文献3:米国特許第6,365,362号
特許文献4:WO 02/20825
特許文献5:WO 00/47998
特許文献6:米国特許出願番号2001/0024802
【非特許文献】
【0029】
非特許文献1:JG Morenoら,"Changes in Circulating Carcinoma Cells in Patients with Metastatic Prostate Cancer Correlates with Disease State." Urology 58. 2001
非特許文献2:"Isolation of prostate-derived single cells and cell clusters from human peripheral blood." Cancer Research 56 p4556-4561. 1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明で記載される方法および試薬は、循環腫瘍細胞、クラスター、断片およびデブリスを分析するのに用いる。分析は、フローサイトメトリーおよびCellSpotter(登録商標)蛍光顕微鏡イメージング系を含めた多数のプラットフォームで行われる。実施例は、明白なまたは無傷のCTCのみならず、疑われるCTCまたは損傷した断片、CTCのクラスター、およびデブリスを分析する重要性を示す。断片およびデブリスを形成する損傷を模倣するのは可能である。また、安定化剤の使用を介する血液吸取および試料処理の間のCTCのさらなる損傷を阻害するのも可能である。
【0031】
検体の獲得、輸送、貯蔵、処理または分析によって引き起こされたイン・ビトロ損傷およびアポトーシス、壊死、または患者の免疫系によって引き起こされたイン・ビボ損傷の間を区別する能力はここに示されている。事実、イン・ビトロ損傷を制限し、低下させ、排除し、または少なくとも緩和して、それが分析中に干渉するのを防ぐのが望ましい。
【0032】
本明細書中において、CTC、クラスター、断片、およびデブリスによって決定される悪性疾患を含めた、循環する稀な細胞に基づく病気を診断し、モニターし、およびスクリーニングする方法が記載される。また、これらの方法を用いて生物学的検体をアッセイするためのキットが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本明細書中においては、当業者によってよく理解される種々の用語が用いられる。これらの用語の意図された意味は、認められた意味から逸脱しない。
癌腫を持つ患者における最小限残存する病気は臨床的重要性を有するという証拠が得られつつある。最小限残存する病気を効果的にモニターするためには、定性的および定量的評価が必要である。血液または骨髄中の癌腫細胞の頻度は低いので、分析用の試料の調製に関与するわずらわしい手動での試料調整方法は、しばしば、誤った結果に導く。これらの制限を克服するために半自動試料調製システムが開発されており、これは、ここに引用して一体化させる20002年2月20日に出願された共通に所有される同時係属米国出願番号10/081,996に記載されているごとく、可変性を最小化し、より矛盾のない結果を提供する。
【0034】
注目する物質、および標的物質がそれに特異的に結合するもう1つの物質の間での複合体形成に基づいて前記標的物質を分析または分離するために、種々の方法が利用できる。未結合物質からの複合体の分離は、重力により、例えば、標的物質にカップリングした微粉砕粒子またはビーズを沈降させることによって、またはそれを遠心することによって達成することができる。そのような粒子またはビーズは、結合した/遊離した分離工程を容易とするために磁性とすることができる。免疫および他の生物特異的親和性反応で用いられているごとく、磁性粒子は当該分野でよく知られている。一般に、磁気または重力分離を容易とするいずれの物質もこの目的で使用することができる。しかしながら、磁気分離手段が選択すべき方法であるのが明瞭となった。
【0035】
磁性粒子はサイズ;大きな(1.5ないし約50ミクロン)、小さな(0.17ないし1.5ミクロン)またはコロイド状(<200nm)(これは、ナノ粒子とも言う)に基づいて分類することができる。フェロ流体またはフェロ流体−様物質としても知られているナノ粒子は、古典的なフェロ流体の特性の多くを有し、ときどき、コロイド状超常磁性粒子とここでは言う。
【0036】
前記したタイプの小さな磁性粒子は、生物−特異的親和性反応に関係する分析でかなり有用である。というのは、それらが、便宜には、生物機能的ポリマー(例えば、蛋白質)で被覆され、非常に高い表面積を供し、合理的な反応速度を与えるからである。0.7ないし1.5ミクロンの範囲の磁性粒子は、例えば、米国特許第3,970,518号;4,018,886号;4,230,685号;4,267,234号;4,452,773号;4,554,088号および4,659,678号を含めた特許文献に記載されている。これらの粒子のあるものは、免疫学的試薬のための有用な固体支持体であることが開示されている。
【0037】
磁気分離をなすことができる効率ならびに磁気的に標識された細胞の回収および純度は多くの因子に依存するであろう。これらは:
・分離すべき細胞の数
・そのような細胞の受容体またはエピトープ密度
・細胞当たりの磁気的負荷
・磁性材料の非特異的結合(NSB)
・捕獲された非標的細胞の持ち越し
・使用される技術
・血管の性質
・血管表面の性質
・媒体の粘度および
・使用する磁気分離デバイス;
を含む。システムの非特異的結合のレベルが通常当てはまるように実質的に一定であれば標的集団が減少するにつれて純度が減少する。
【0038】
標的化細胞の集団がより小さくなれば、磁気的に標識し、回収するのはより困難となるという事実は明らかではない。さらに標識および回収は、使用される磁性粒子の性質に顕著に依存するであろう。例えば、細胞を、Dynalビーズのごとき大きな磁性粒子と共にインキュベートすると、ビーズが効果的に核酸するのに余りにも大きいので、該システムの混合によって生じた衝突を介して細胞は標識される。かくして、非常に初期の癌における腫瘍細胞の場合に当てはまるごとく、もし細胞が血液1ml当たり1細胞またはそれ未満でさえの頻度で集団に存在すれば、標的細胞を標識化する確率は、該システムに添加された磁性粒子数および混合の時間の長さに関係するであろう。実質的な時間のそのような粒子と細胞との混合は有害であるので、粒子濃度をできる限り増加させることが必要となる。しかしながら、分離に際して多量の磁性粒子と混合された稀な細胞に代えて、他の血液細胞と混合された稀な細胞で置き換えることができるので、加えることができる磁性粒子の量には制限がある。後者の条件は、注目する細胞を数えて、またはそれを調べる能力を顕著には改良しない。
【0039】
本発明を実施するのに用いる好ましい磁性粒子はコロイドとして挙動する粒子である。そのような粒子は、一般には約200nm未満のそのサブミクロン粒子サイズおよび長期間溶液からの重力分離に対するその安定性によって特徴づけられる。多くの他の利点に加え、このサイズの範囲は、個々の粒子が、細胞分析に通常適用される分析技術に対して目に見えなくする。90ないし150nmの範囲内の、かつ70ないし90%の磁性質量を有する粒子は、本発明で用いられると考えられる。適切な磁性粒子は、例えば、磁性コアに結合され、例えば物理的に吸収されるか、あるいはそれに対して共有結合され、かつ安定化コロイド特性を付与する分子によって囲まれた超常磁性材料の結晶性コアよりなる。コーティング材料は、好ましくは、試料で見出される生物学的マクロ分子および磁性コアの間の非特異的相互作用を妨げるのに効果的な量で適用すべきである。そのような生物学的マクロ粒子は、非標的細胞の表面のシアル酸残基、レクチン、糖蛋白質および他の膜成分のごとき炭水化物を含むことができる。加えて、該材料はできる限り多くのナノ粒子当たりの磁性質量を含むべきである。該コアを含む磁性結晶のサイズはそれが完全な磁気ドメインを含まないよう十分に小さい。ナノ粒子のサイズはブラウンエネルギーがその磁気モーメントを超えるように十分に小さい。その結果、北極、南極の整列およびこれらのコロイド磁気粒子の引き続いての相互の引力/反発は、この溶液の安定性に寄与する中程度に強い磁場においてさえ起こるようには見えない。最後に、磁性粒子が、高勾配外部磁場セパレーターで分離できるべきであろう。その特徴は試料の取り扱いを容易とし、強磁性ビーズまたはスチールウールを付加したより複雑な内部グラジエントカラムよりも経済的な利点を提供する。前記した特性を有する磁性粒子は、各々を引用して本明細書の一部とみなす米国特許第4,795,698号、第5,597,531号および第5,698,27号に記載されたベース材料の修飾によって調製することができる。粒子を製造する改良された方法は米国特許第5,698,271号に記載されている。これらの材料はプロセスがコーティングのレベルを顕著に増加させる高温コーティング工程を含む点で、’531特許に開示されたものの改良である。このプロセスを用いるウシ血清アルブミン(BSA)のコーティングで作成されたナノ粒子は’531のDC−BSAと比較した場合、3ないし5倍低い非特異的結合特徴を有する。非特異的結合のこの減少は、BSAコーティング材料の増大したレベルに直接よるものであることが示されている。そのようなナノ粒子をBSAコーティングを除去するように処理した場合、非特異的結合は高レベルに復帰する。かくして、酸化鉄結晶表面にコートされたBSAの量および細胞の非特異的結合の間には直接的な関係が存在すると判断された。典型的には、全血からの細胞とこれらの粒子との非特異的結合は、0.3%であり、これは、’531から生じたものよりも有意に良好である。かくして、全血10mlより、豊富化のために標的化された細胞での単離される約200,000の非標的細胞が存在するであろう。
【0040】
小さなナノ粒子(30ないし70nm)はより容易に拡散するので、それは、より大きなカウンターパートと比較して細胞を優先的に標識するであろう。内部グラジエントカラムにおけるごとく非常に高いグラジエントを用いると、サイズにもかかわらず、これらの材料の効率はほとんど差がない。他方、外部グラジエント、或いはミクロビーズまたはスチールウールカラムで生じることができるよりも低い大きさのグラジエントを用いる場合、細胞上の小さなナノ粒子の占有は有意な効果を有する。これは、結果として、DCナノ粒子を分画し、回収に対する効果を調べることによって当てはまることが示された。これらの実験および他の最適化実験に基づき、過剰に小さいかまたは大きなナノ粒子を欠くベースのコートされた磁性粒子を調製できる場合、磁気を基にまたはカラムで粒子を分画することができる手段が確立された。例えば平均直径100nmのコートされた粒子を生産することができ、これは、80nmより小さなまたは130nmより大きなせいぜい痕跡量の材料を含む。同様に90ないし95nmより小さな、160nmを超える識別可能な材料で、約120nmの材料を作成することができる。回収に際して最善に行ったそのような材料は、60ないし70nmのナノ粒子を含ませることによってサブ最適とすることができよう。本発明を実施するのに用いる好ましい粒子サイズの範囲は、ベースのコートされた磁性粒子、例えば、BSAでコートされたマグネタイトでは90ないし150nmである。
【0041】
これまでの高度に磁気的であり低い非特異的結合を使用する外部場デバイスでの高勾配磁気分離に基づき、コロイド磁気粒子は、特に、もし注目するサブセットが全集団の小さな割合のみを含むならば、真核生物細胞の混合された集団から注目する細胞サブセットを分離するための選択された方法である。そのような材料は、その拡散特性のため、血液中の腫瘍細胞のごとき稀な事象を見出し、それを磁気的に標識する。腫瘍細胞分析のための磁気分離が成功するためには、磁性粒子は造血細胞で存在しないエピトープに対して特異的でなければならない。
【0042】
非常に種々の分析方法および基準を用いて腫瘍細胞を同定し、最初の試みは、何が免疫細胞化学によって腫瘍細胞を構成するかを規定する基準を標準化するためになされる。この実験において前立腺癌患者からの血液試料を、EpCAMを発現した細胞につき、免疫磁気的に豊富化させた。腫瘍細胞は、細胞骨格蛋白質サイトケラチン(CK+)の発現、通常の白血球抗原CD45(CD45−)の不存在、および多色蛍光分析により核酸(NA+)の存在によって同定した。稀な事象または稀な細胞は、フローサイトメトリーおよび顕微鏡によって免疫表現型分けすることができる。フローサイトメトリー分析は、低いレベルの蛍光さえ再現性よく定量する能力に優れており、他方、形態学的特徴は免疫表現型分けで同定された物体の分類を助けることができるので、顕微鏡はより有効な特異性を有する。フローサイトメトリーおよび顕微鏡によって前立腺癌患者の血液中で検出されたCTCの数の間には相関があるが、CK+、CD45−、NA+物体の顕微鏡観察は少数の物体のみが無傷で出現したことを示す。この観察は循環腫瘍細胞の実質的な部分においてアポトーシスを示したという他の報告と合致する。
【0043】
用語「生物学的検体」または「生物学的試料」は相互交換的に用いることができ、注目する細胞を含むことが疑われ、かつ分析すべきヒトテスト対象から採取した小さな割合の流体または組織をいう。生物学的検体は、流体部分、細胞部分、および可溶性物質を含む部分をいう。生物学的検体または生物学的試料は、限定されるものではないが、末梢血液、組織ホモゲネート、乳首吸引物、結腸洗浄液、痰、気管支(歯槽)洗浄液、肋膜液、腹腔液、心臓周辺液、尿、その他ヒトテスト対象から得ることができる細胞の源のごとき体液を含む。例示的な組織ホモゲネートは、乳癌患者における前哨節から得ることができる。
【0044】
用語「稀な細胞」とは、本明細書中においては、通常は生物学的検体に存在しないが、免疫疾患、慢性病、負傷または妊娠のごとき異常な状態のインジケーターとして存在することができる細胞と定義される。また、稀な細胞とは、通常は生物学的検体に存在し得るが、正常な生物学的検体に典型的に存在する細胞よりは数桁小さな頻度で存在する細胞もいう。
【0045】
用語「決定基」は、これまでの標的生物存在のいずれかに言及して用いる場合、免疫応答をしばしば誘導するマクロ分子抗原に存在する化学的モザイクを広くいう。また、決定基は「エピトープ」と相互交換的に用いることができる。本明細書中で相互交換的に用いる「生物特異的リガンド」または「生物特異的試薬」は、決定基に特異的に結合することができる。決定基は、(リガンドまたは試薬のごとき)特異的結合物質への選択的結合、選択的結合が起こるのが必要とされる存在に関与し、かつそれを担う標的生物存在のその部分をいう。基本的な用語において、決定基は、特異的結合対反応において、そのための結合親和性を有する剤、リガンドおよび/または試薬によって認識される標的生物存在での分子接触領域である。
【0046】
本明細書中で用いる用語「特異的結合対」は、抗原−抗体、受容体−ホルモン、受容体−リガンド、アゴニスト−アンタゴニスト、レクチン−炭水化物、核酸(RNAまたはDNA)ハイブリダイジング配列、Fc受容体またはマウスIgG−プロテインA、アビジン−ビオチン、ストレプトアビジン−ビオチン、ウイルス−受容体相互作用を含む。
【0047】
用語「検出可能な標識」は、本明細書中では、物理的または化学的手段による直接的または間接的なその検出または測定が、テスト試料中における標的生物の存在を示すいずれの物質をいうのに用いられる。有用な検出可能な標識の代表的な例は、限定されるものではないが、以下の:光吸収、蛍光、反射、光散乱、リン光、またはルミネセンス特性に基づいて直接的または間接的に検出可能な分子またはイオン;その放射性特性によって検出できる分子またはイオン;その核磁気共鳴または常磁性特性によって検出可能な分子またはイオンを含む。光吸収または蛍光に基づいて間接的に検出可能な分子の群には、例えば、(例えば、非光吸収性から光吸収性分子へ、または非蛍光性から蛍光性分子へ)適当な基質を変換する種々の酵素が含まれる。分析は、マルチパラメーターフローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡、レーザー走査サイトメトリー、明視野ベースイメージ分析、毛細管測容分析、スペクトルイメージング分析、手動細胞分析、CellSpotter(登録商標)分析、CellTracks(商標)分析、および自動細胞分析を含めた多数の通常使用されるプラットフォームのいずれかを用いて行うことができる。
【0048】
フレーズ「の実質的排除まで」とは、生物特異的リガンドまたは生物特異的試薬またはその対応する標的決定基の間の結合反応の特異性をいう。生物特異的リガンドおよび試薬はその標的決定基についての特異的結合活性を有するが、また、他の試料成分への低レベルの非特異的結合も呈し得る。
【0049】
フレーズ「初期段階癌」は、「段階I」または「段階II」癌とここでは相互交換的に用いられ、臨床的に器官−制限されていると判断される癌をいう。また、乳癌患者についての乳房造影、または肺癌患者についてのX−線のごとき慣用的な方法によって検出されるには余りにも小さな腫瘍も含まれる。乳房造影はほぼ2×10細胞を有する腫瘍を検出できるが、本発明の方法は、このサイズあるいはそれ以下に近似される腫瘍からの循環癌細胞の検出を可能とするはずである。
【0050】
用語「豊富化」とは、本明細書中においては、元の生物学的試料における比率と比較して、処理された分析試料中の非特異的物質に対する標的生物存在(例えば、腫瘍細胞)の比率を実質的に増大させるプロセスをいう。末梢血液を出発物質として用いる場合、豊富化の程度を評価する場合には、赤血球細胞はカウントされない。本発明の方法を用い、循環上皮細胞は、少なくとも2,500倍、より好ましくは5,000倍、最も好ましくは10,000倍の程度まで白血球に対して豊富化することができる。
【0051】
用語「抗−凝固剤」または「抗−凝固試薬」は相互交換的に用いることができ、いずれかの望まない天然または人工の凝固を阻害する目的で生物学的検体に添加される組成物をいう。凝固の例は血液凝固であり、通常の抗−凝固剤はキレート剤であり、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸(DCTA)、エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸(EGTA)によって、あるいはヘパリン、およびヘパリン硫酸および低分子量ヘパリンのごときヘパリン種のような錯化剤によって例示される。これは、さらに、集合的に、「凝塊」または「凝塊形成」とも定義できる。しかしながら、そのような凝塊は、もし、それが無傷CTCについての分類基準を満たすならば、単一無傷CTCとカウントされるCTCの「クラスター」または凝集体から区別されなければならない。
【0052】
CTCのクラスターは、単一CTCよりも大きな増殖能力を有すると考えられており、かくして、その存在は診断的にかなり重要である。二次転移性腫瘍部位を確立するための増大された特性についての1つの可能な原因は、その接着性であり得る。よりありそうな原因はCTCクラスターの現実のサイズであり;より大きなクラスターは、小さな直径の毛細管または骨中のポアに入るようになる。一旦そこに入れば、クラスター中の細胞の生存率は、新しい転移部位における生存性の機会を決定するであろう。
【0053】
理想的な(ここで相互交換的使用される)「安定化剤」または「保存剤」は、いずれにせよ、標的細胞の単離、検出および計数を妨げかねない、生物学的検体中の凝集体および細胞デブリスに干渉する形成、および非標的細胞からのその区別を最小化しつつ、生物学的検体に存在する注目する標的細胞を保存することができる組成物と定義される。換言すれば、抗−凝固剤と組み合わせた場合、安定化剤は抗−凝固剤の性能に悪影響しないはずである。逆に、抗−凝固剤は安定化剤の性能に干渉しないはずである。加えて、開示された安定化剤は固定の第3の機能を発揮し、それにより浸透化細胞を安定化し、ここに、表現「浸透化された」または「浸透化」および「固定する」、「固定化された」または「固定」は細胞生物学で慣用的に定義されるように用いられる。安定化剤の記載は、本明細書中では、濃度または量が損傷を引き起こすことなく標的細胞を安定化するのに効果的な場合、細胞生物学における当業者に容易に明らかであろう適切な濃度または量でのこれらの剤を用いることを意味する。稀な細胞を保存する目的で本発明の組成物、方法および装置を用いるものは、これらの同一稀な細胞を損傷し、または破壊する方法でそれを明らかに用いず、従って、適当な濃度または量を固有に選択するであろう。例えば、ホルムアルデヒドドナーであるイミダゾリジニル尿素は、該検体の容量の0.1ないし10%、より好ましくは0.5ないし5%、最も好ましくは約1ないし3%で効果的であることが判明した。ポリエチレングリコールのごときさらなる剤は、検体容量の約0.1%ないし約5%、より好ましくは約0.1%ないし約1%、最も好ましくは約0.1%ないし約0.5%の好ましい濃度で添加した場合に効果的であることが判明した。
【0054】
安定化剤は、少なくとも数時間の間は試料を保存できなければならない。しかしながら、試料は少なくとも72時間まで安定化することができるのが示された。そのような長期安定性は、処理および分析が行われる位置から離れた位置で試料が得られる場合には重要である。さらに、試料は輸送の間に機械的損傷に対して安定化されなければならない。
【0055】
安定化剤は、イン・ビボ腫瘍細胞の崩壊およびイン・ビトロでの試料劣化による崩壊を区別するのに必要である。従って、安定化剤の組成物、ならびにそこで用いる方法および装置は、「分析用の細胞および生物学的検体の安定化」なる発明の名称の同時係属出願に記載されている。その共通に所有された出願を、ここに引用して本明細書の一部とみなす。
【0056】
用語「明白な細胞」または「無傷細胞」は相互交換的に用いることができ、核酸およびサイトケラチンを含有するイメージング分析の間に見出される細胞をいう。これらの細胞は通常肉眼では丸いかまたは卵形であるが、時々は、多角形または細長いものでもあり得、個々の細胞または細胞のクラスターとして出現する。(例えば、核酸色素によって標識される)核酸領域は(例えば、抗−サイトケラチンによって標識される)細胞質領域よりも小さく、細胞質領域によって囲まれる。
【0057】
用語「疑惑細胞」、「疑われる細胞」または「断片」は相互交換的に用いることができ、無傷細胞に似ているが、目では無傷細胞と区別できないイメージング分析の間に見出される細胞をいう。イメージング分析に基づき:
1.明白な細胞のような形状をし、サイトケラチンについて陽性的に染色されるが、核酸については陰性である有核細胞;
2.核酸については陽性的に染色されるが、不規則に染色されたサイトケラチンを有する斑点状または点状細胞;および
3.サイトケラチンおよび核酸についての陽性的に染色されるが形状は不規則であるか、あるいは異常に大きな無定形細胞;
を含めた多数の可能なタイプの疑われる細胞がある。これらの疑惑細胞は、CTCの性質ならびに患者の病気に対するさらなる情報を与えることができるので本発明で興味深い。染色またはイメージ人工物が分析の間に観察され得る可能性がある。例えば、有核細胞は、時々、核が染色されるが、対応する領域は核酸陰性である「ゴースト」領域を有するように見える。これは、標識またはイメージング技術を含めた多数の外的因子によって引き起こされ得る。また、核が「脱着された」細胞が観察された。これは、恐らくは、その核を放出する細胞を示し得るのに対して、これは、イメージングシステムの人工物によるように見える。しかしながら、そのような「人工物」は、真実である場合、無傷細胞に何が起こっているかについての価値ある情報を与える。従って、本発明の一部として、疑惑細胞はより綿密に分析されるであろう。
【0058】
細胞断片は、デブリスが細胞に必ずしも似ていない点で「デブリス」とは異なる。本明細書中で用いる用語デブリスとは、処理の間に特異的または非特異的に標識され、分析の間にイメージとして目に見えるが、無傷および/または疑われる細胞とは区別される、分類されない物体をいう。例えば、損傷した細胞は核物質を放出するであろうと観察されている。処理の間に、この核物質は非特異的に磁気的に標識され、引き続いて、核酸染料で標識され得る。分析の間に、磁気的に標識され、染色された核物質は、それが依然として付着したサイトケラチンを有する場合には観察することができる。同様に磁気的に選択され、染色される他の物体があり、これは、分析の間に出現し、デブリスとして分類される。
【0059】
本明細書中で用いる用語「形態学的分析」とは、サイズ、形状、またはある種の特徴の存在/不存在のごとき、物体についての目に見えて観察可能な特徴をいう。形態学的特徴を可視化するためには、物体は典型的には非特異的に染色される。本明細書中で用いる用語「エピトープ分析」とは、ある種のエピトープにつき標識されている物体でなされる観察をいう。エピトープ特徴を可視化するためには、物体は典型的には特異的に染色されるか、または標識される。形態学的分析は、物体のより完全な分析を供するためにエピトープ分析と組合わせることができる。
【0060】
さらなる視覚による観察の重要性は、断片およびデブリスが、しばしば、「帰属されない事象」または「未帰属化事象」として分類される場合に明らかである。これらの用語はフローサイトメトリーのごとき非可視的分析から生じる。フローサイトメトリーが物体をイメージしないので、(WBCに非特異的に運ばれたものが陰性的に標識される場合に当てはまるごとく)標的細胞、または非標的細胞についての基準を満足する具体的集団に入らないいずれの事象も、これらの集団のいずれかの外にある。しかしながら、本明細書を通じて明らかになるように、これらの未帰属事象は重要である。
【0061】
図1は、放出および転移を含めた種々のCTC段階のモデルである。図1aは細胞、クラスター、断片およびデブリスについてのこれらの段階を示す。図1bはこれらの同一段階における試料からの実際のイメージを示す。細胞クラスター、断片およびデブリスのイメージは、患者試料のCellSpotter(登録商標)分析から取った。組織試料のイメージ(元の部位および転移部位)は、いずれかから取った(Manual of Cytology, American Society of Clinical Pathologies Press. 1983)。
【0062】
簡単に述べれば、一次腫瘍から血液に放出された単細胞は血液中で生き残るか、または死滅するかのいずれかである。もしそれが生き残れば、血液中でそれは分裂するか、あるいは二次部位において集落化し得る。もし細胞が死滅すれば、方法に応じて、細胞は種々のタイプの断片またはデブリスへと分解する。もう1つの可能性は、細胞のクラスターが一次腫瘍から血液へ放出されることであり、そこで、それは単一細胞に解離し、あるいは無傷のままであり、二次部位で集落化する。もしクラスターが解離すれば、それは前記した単細胞と同様に挙動できる。もしクラスターが無傷のままであれば、小さな直径の毛細管中に入るようになる大きな直径のクラスターを含む、前記した理由で二次コロニーを形成するようである。一旦入れば、もし細胞が生きていれば、クラスターは新しい腫瘍を形成するであろう。
【0063】
無傷細胞をほとんど伴わない断片およびデブリスの存在は、転移の機会がほとんどないことを示唆する。断片化された細胞は分裂せず、二次腫瘍を形成することができない。事実、無傷CTCのみが、またはおそらくはCTCクラスターは二次部位を集落化できるであろう。接着および浸透プロセスにおいて役割を演じる抗原の同定は助けとなるであろう。クラスターの有りおよび無しでの患者の転移部位の追跡および評価は、さらなる洞察を提供するであろう。核形態学を用いて、細胞の活性状態および異常性を決定する。クロマチン凝塊、核小体およびクロマチン過剰の存在または不存在は、細胞が良性または悪性であるか、免疫応答に反応するか、または治療に反応するかを判断するのに用いられる。細胞質形態学は、分化のレベル(起源の組織)を判断するのに用いられる基準になる。例えば、細胞質形態学は細胞を鱗状vs腺状として分類することができる。
【0064】
血液の吸取および引き続いての検体処理の間に、末梢循環系に存在する生存する強打された腫瘍細胞は、減圧にした試験管への血液の吸取の間の乱れによって、および検体の処理、例えば、血液試験管の輸送、および分析に先立っての混合によってさらに圧力がかかり、損傷され得る。そのような機械的な損傷は、進行する免疫学的、アポトーシス、および壊死プロセスに対して追加的であり、時間依存的にイン・ビトロで起こるCTCの破壊に至る。我々は、検体をより長く貯蔵すれば、CTCの喪失はより大きくなり、干渉するデブリスおよび/または凝集体の量はより大きくなることを見出した。事実、本明細書中に示すデータ(図2および3)は、室温にて24時間以上貯蔵したいくつかの血液検体におけるCTCカウントの劇的な減少を示し、これは、血液吸取後におけるCTCの実質的なイン・ビトロ破壊を示す。造血細胞の喪失はよく知られた現象であり、かつStreck Labsおよびその他の者による前記引用特許の主題であるが、混合または輸送による機械的損傷の発生は、今日まで、CTCまたは稀な細胞の喪失において認められた因子ではなかった。細胞デブリスの形成およびCTCまたは他の稀な細胞の分析においてデブリスおよび/または凝集体を蓄積する干渉効果は、同様に、今日まで認められていない。それは、比較的大きな血液容量(5ないし50mL)の処理、および容量低下(1mL未満)後の標的細胞の引き続いての顕微鏡検出またはイメージングを必要とするかなり感度の良い豊富化アッセイで非常に明らかであり、かつ問題であるように見える。そのようなデブリスは通常は観察されないか、あるいは、例えば、フローサイトメトリーによる慣用的非−豊富化アッセイ、または密度勾配方法による豊富化で干渉しない。
【0065】
もし患者で観察されたこれらの損傷した上皮細胞および上皮細胞断片が化学療法によって誘導された腫瘍細胞のアポトーシスによって引き起こされ得るかを調べるために、腫瘍細胞の死滅を模倣するモデルを開発した。前立腺細胞系LnCaPの細胞を、パクリタキセルの有りまたは無しにて培養し、健康なドナーの血液にスパイクした。CellSpotter(登録商標)によって分析されたパクリタキセル処理試料の免疫磁気的に選択された細胞は、患者血液試料で観察されたものと似ていた。パクリタキセルで処理した細胞はアポトーシスの兆候を呈した。細胞の点状サイトケラチン染色パターンは、細胞骨格蛋白質の崩壊と対応するように見える(図4B vs.6B)。細胞骨格危機を感知するプロアポトーシス遺伝子Bimを活性化することができるパクリタキセルの微小管安定化効果に由来する配列における初期事象。アポトーシスに由来するカスパーゼ−切断サイトケラチンのさらなる証拠は、初期アポトーシスにおけるカスパーゼ切断に続いて暴露されたに過ぎないサイトケラチン18のエピトープを認識するM30 Cytodeath抗体(Roche Applied Science Mannheim,ドイツ国)で得られた。M30で染色されたパクリタキセル処理LnCaP細胞およびM30で染色されたより薄暗いサイトケラチン細胞であり、これは、アポトーシスを受けつつある細胞と合致する。
【0066】
多数の異なる細胞分析プラットフォームを用いて、豊富化された試料中の細胞を同定し、それを計数することができるのは注意すべきである。そのような分析プラットフォームの例は、実施例IIに記載した細胞の手動観察のための顕微鏡検出を用いるImmuniconのCellSpotter(登録商標)システム、磁性細胞固定化および分析システム、およびCellTracks(商標)システム、より進歩した自動光学走査システムである。これらの2つの分析プラットフォームは、手動または自動の定量的および定性的な細胞分析のための各装置および方法を開示する、ここに引用してその各々を本明細書の一部とみなす米国特許第5,876,593号;第5,985,153号および第6,136,182号に記載されている。
【0067】
他の分析プラットフォームは、レーザー走査サイトメトリー(Compucyte)、明視野ベースイメージ分析(Chromavision)、および毛細管測容分析(Biometric Imaging)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、腫瘍放出および転移のモデルを示す。1aは細胞、クラスターおよび断片の可能な段階を示す。1bは試料からの実際のイメージを持つ同一モデルを示す。
【図2】図2は、7.5ml血液からの免疫磁気的に豊富化された腫瘍細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
【図3】図3は腫瘍細胞につき免疫磁気的に豊富化された転移性前立腺癌患者からの7.5ml血液試料のCellSpotter(登録商標)分析を示す。見本の線は、サイトケラチンPE(緑色)およびDAPI(マゼンタ)で染色された腫瘍候補を示す染色プロセスで用いられた種々の色素に対応する。
【図4】図4は、サイトケラチンPE(緑色)およびDAPI(マゼンタ)で染色された転移性前立腺癌を持つ患者の単一全血試料から単離された腫瘍細胞のCellSpotter(登録商標)分類を示す。A−無傷細胞、B−損傷した腫瘍細胞、C−腫瘍細胞断片
【図5】図5は、20の臨床試料における疑われるCTCの数に対する明白なCTCの数の比較を示す。
【図6】図6は、全血にスパイクされ、単離され、次いで、サイトケラチンPE(緑色)DAPI(マゼンタ)で染色されたパクリタキセル処理LnCaP細胞のCellSpotter(登録商標)分類を示す。A−無傷細胞、B−死滅しつつある腫瘍細胞、C−腫瘍細胞断片
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明の好ましい具体例の方法および組成物を用いる血液中の循環上皮細胞の計数は、血液からの上皮細胞の免疫磁気選択(豊富化)、続いての試料の分析によって達成される。免疫磁気試料の調製は、試料の容量を減少させ、標的(上皮)細胞の10倍豊富化を得るのに重要である。マルチパラメーターフローサイトメトリー分析で用いる試薬は、上皮細胞が、2つの光散乱および3つの蛍光パラメーターのリストモード獲得によって生じた多次元空間中のユニークな位置に位置するように最適化される。これらは:
1.白血球(非腫瘍細胞)を同定するための汎−白血球抗体、CD45に対する抗体;
2.残存する赤血球細胞、血小板および他の非有核事象の排除を可能とする細胞型特異的または核酸色素;および
3.サイトケラチンに対して向けられた生物特異的試薬または抗体、あるいは細胞を免疫磁気的に選択するのに用いられるものとは異なるEpCAMエピトープに対する特異性を有する抗体;
を含む。
【0070】
豊富化された腫瘍細胞集団の分析方法は、本発明の意図した使用に依存することは当業者に認識されるであろう。例えば、以下に記載するごとき癌をスクリーニングする、または病気の再発をモニターするにおいて、循環上皮細胞の数は、非常に少なくできる。ある「正常な」レベルの上皮細胞があるので(静脈注射の間に導入されたらしい)、正常または腫瘍細胞として上皮細胞を同定する分析方法が望ましい。その場合、顕微鏡ベースの分析は最も正確であることが判明するであろう。また、そのような検査は、形態学の検査、既知の腫瘍素質関連分子(例えば癌遺伝子)の同定も含むであろう。
【0071】
患者
患者の年齢の範囲は47ないし91歳であり(平均74歳)、最初の診断は実験に先立って2ないし10年である。治療および段階のために、医療記録をレビューした。患者および健康なボランティアは認可された研究実験下で同意書通知に署名した。血液を10mlのEDTA Vacutainer(商標)試験管(Becton-Dickinson, NJ)に吸い取った。試料を室温で維持し、特に断りのない限り、収集後6時間以内に処理した。
【0072】
試料の調製
上皮細胞接着分子(EpCAM)を同定するモノクローナル抗体で標識された磁性ナノ粒子を用いて、ここに引用して共に本明細書の一部とみなす、共通して所有された米国特許第6,365,362号および2002年2月19日に出願された米国特許出願10/079,939に教示されるごとく、造血細胞からの上皮細胞を磁気的手段によって標識し、分離した。200μlの容量に再懸濁させた磁気的に捕獲された細胞を蛍光標識して、造血細胞および上皮細胞の間を区別する。ピコエリスリン(CK−PE)にコンジュゲートしたケラチン4、5、6、8、10、13および18を認識するモノクローナル抗体を用いて上皮細胞を同定し、CD45を認識するモノクローナル抗体を用いて、白血球を同定し、およびサイトケラチンに非特異的に結合する造血細胞を同定した。
【0073】
多色蛍光顕微鏡(CellSpotter(登録商標))分析のためにCD45をアロフィコシアニン(CD45-APC, Caltag, Ca)にコンジュゲートさせて、他方、フローサイトメトリー分析では、ペリジニンクロロフィル蛋白質がコンジュゲートしたCD45(CD45-PerCP, BDIS San Jose, CA)を用いた。核酸特異的色素DAPI(4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)を用いて、CellSpotter(登録商標)システムにおける核を同定し、それを可視化し、Procountシステム(BDIS, San Jose, CA)における核酸色素を用いて、フローサイトメトリーによって細胞を同定した。インキュベーションの後、過剰の染色試薬を吸引し、捕獲された細胞を再懸濁し、フローサイトメトリー分析用の12×75nm試験管、または2つの磁石の間にチャンバーを保持する磁気ヨークアセンブリ(Captivate, Molecular Probes, OR)内に含まれた(ここに引用して本明細書の一部とみなす2002年2月12日に出願された米国出願10/074,900に記載された)CellSpotter(登録商標)分析チャンバーに移した。
【実施例】
【0074】
実施例1
フローサイトメトリーを介する試料の分析
488nmアルゴンイオンレーザー(BDIS, San Jose, CA)を備えたFACSCaliburフローサイトメーターで試料を分析した。核酸色素の蛍光での閾値を用い、データ獲得をCellQuest(BDIS, San Jose, CA)で行った。8000ビーズまたは試料の80%を分析した後、獲得を停止した。マルチパラメーターデータ解析は、リストモードデータ(Paint-A-GatePro ,BDIS, San Jose, CA)で行った。CTC事象についての解析基準は、順方向光散乱、直交光散乱によって規定される粒度、PE−標識抗−サイテトケラチンMAbでの陽性染色、およびPerCP−標識抗−CD45Mabで染色無しによって規定されるサイズを含む。各試料につき、上皮細胞に典型的な領域に存在する事象の数を1.25倍し、フローサイトメトリーによって分析されていない試料容量を説明した。
【0075】
図2のパネルA、BおよびCは、転移性前立腺癌を持つ患者の血液試料のフローサイトメトリー分析を示す。パネルBにおける2つの垂直線は、白血球の核酸(NAG)含量の低いおよび高い境界を示す(赤色ドット)。CTC候補は、サイトケラチンを発現し(CK+)、CD45を欠き(CD45−),核酸を含む(NAD+).白血球と同等またはそれよりも高いNADを有するCTC候補は細胞と考えられ、黒色で示される。白血球より低いNAD含量のCK+、CD45−、事象は標的細胞とは考えられず、青色で示した。順方向光散乱シグナルによって明らかなように、青色事象は黒色CTCと比較して、明らかに小さかった。NAD染色強度についての閾値は、より低いNAD染色強度にてCK+、CD45−事象の大部分を明らかに排除した。健康なドナーからの血液試料の分析において、そのようなCK+、CD45−事象はほとんど観察されず、これは、この現象が癌に関連することを示唆する。健康なドナーからの血液の分析の典型的な例は図2D、図2Eおよび図2Fに示す。
【0076】
実施例2
CellSpotter(登録商標)を介する試料の分析
CellSpotter(登録商標)システムは水銀アーク灯、10倍対物レンズ、高分解能X、Y、Zステージおよび4−フィルターキューブ交換器よりなる。4つのキューブの各々における励起、二色および発光フィルターはDAPI365nm/400nm/400nmのため、DiOC16480nm/495nm/510nmのため、PE546nm/560nm/580nmのため、およびAPC620nm/660nm/700nmのためであった。イメージは、デジタルフレームグラバーに連結したデジタルカメラで獲得した。チャンバーの表面は80.2mmであり、560のイメージを生じる4フィルターの各々についての4列の35イメージは、完全な表面を被覆するよう獲得されなければならない。CellSpotter(登録商標)獲得プログラムは、イメージが獲得されるべき領域、獲得すべきイメージの数、各イメージの位置および各位置で用いる顕微鏡焦点を決定する。試料からの全てのイメージを、特異的試料同定にユニークなディレクトリーに記録する。DAPIおよびCK−PEにつき染色する位置についてサーチするために、試料から獲得されたイメージの全てにアルゴニズムを適用する。もし染色領域が潜在的腫瘍細胞のそれと合致すれば(DAPI+,CK−PE+)、ソフトウエアはこれらの領域の位置をデータベースに貯蔵する。ソフトウエアはボックスの各々の見本を提示し、使用者は、列に示されたイメージが腫瘍細胞と合致するか、または白血球マーカーCD45で染色されるのを確認することができる。ソフトウエアは各試料につきチェックされたボックスを表とし、情報はデータベースに貯蔵される。
【0077】
図3は、転移性前立腺癌を持つ患者からの血液試料のCellSpotter(登録商標)分析の例を示す。潜在的に腫瘍細胞を含む領域は見本の列に提示される。図面の左下方の隅にある定規は、見本のサイズを示す。左から右にかけ、これらの見本は核(DAPI)、細胞質ケラチン(CK−PE)、膜色素(DiOC16(3))で染色した対照細胞および表面CD45(CD45−APC)染色を表す。左に示されたコンポジットイメージは、紫色核(DAPI)および緑色細胞質(CK−PE)染色の偽の色重なりを示す。コンポジットイメージの他にチェックボックスは、使用者が、列に示されたイメージが腫瘍細胞に合致するのを確認するのを可能とし、CD45−APCイメージの他にチェックボックスが、白血球または腫瘍細胞が非特異的に染色されるのを確認するものである。この患者の試料において、ソフトウエアは、腫瘍細胞と合致する染色を示した2761列の見本を検出した。2761列のうちの18は、1631−1640および1869−1876と表した図面に示される。1631、1636、1638、1640、および1873−1876の数字を付した列をチェックし、4μmよりも大きなサイズ、細胞質サイトケラチン染色によって囲まれた核の存在およびDiOC16(3)およびCD45染色の不存在として定義されるCTCの特徴を呈する。腫瘍細胞の外観の差に注意されたし:列1683における細胞は大きく、列1640における細胞は有意により小さい。列1634および1869中の事象の免疫表現型は腫瘍細胞と合致するが、それらの形態は無傷細胞と合致しない。列1869における見本は、細胞のアポトーシスと合致する細胞骨格蛋白質の後退による大きな核および斑点状の細胞質を示す。列1634における見本は、その核を突き出させるように見える損傷した細胞を示す。列1632に示された見本は、サイトケラチンならびにCD45を共に染色し、CD45に非特異的に結合する腫瘍細胞またはサイトケラチンで非特異的に染色される白血球いずれかである細胞を示す。この例においては、細胞の形態はリンパ球のそれとかなり類似する。列1633、1635、1637、1639、1870および1872に示した見本は、4μmよりも大きいが、細胞に類似しないサイトケラチン染色物体を示す。見本1637、1639および1872におけるサイトケラチン染色物体は白血球に非常に近接する。
【0078】
いくつかの患者試料におけるCTC候補のイメージの観察に基づき、CTCは3つのカテゴリー:無傷CTC、損傷したCTC、およびCTC断片に分類され、全てはCD45で染色されず、DiOC16(3)フィルターに出現しない。図4は、治療を受けつつある転移性前立腺癌を持つ患者の血液の単一試験管から単離された3つのカテゴリーのCTCの例を示す。図3Aに示した無傷腫瘍細胞は、比較的平滑な細胞質膜、細胞質全体の細胞骨格蛋白質、および核内に含まれる無傷核を持つ4μmよりも大きな物体として定義される。図4Bに示された損傷したCTCは、斑点状サイトケラチン染色または欠陥のある細胞質膜、およびサイトケラチン染色に関連する核を持つ4μmよりも大きな物体と定義される。図4Cに示された腫瘍細胞断片は、細胞に対して形態学的類似性を有しない核物質の解離の有りまたは無しにて4μmよりも大きな丸いサイトケラチン染色物体と定義された。
【0079】
実施例3
前立腺癌患者におけるCTC
CTCは、フローサイトメトリーおよびCellSpotter(登録商標)双方によって、前立腺癌患者の18の血液試料および健康な個人からの27の試料で数えた。表1に示された結果は、CellSpotter(登録商標)によって検出された無傷CTCの数を増加させることによって分類された。
【0080】
【表1】

【0081】
CellSpotter(登録商標)分析において、無傷CTCの割合は、最小分率のCTCを明確に構成し、全てのCTCの0%ないし22%の範囲であった(平均4%)。損傷したCTCの割合は1%ないし100%の範囲であり(平均34%)、CTC断片は0%ないし93%(平均62%)の範囲のCTCの大部分を構成した。患者間の3つのカテゴリーにわたるCTCの分布は、無傷CTCおよび損傷したCTC(R=0.20)の間、および無傷CTCおよびCTC断片(R=0.42)の間の相関の欠如および損傷したCTCおよびCTC断片の間のある程度の相関(R=0.88)によって増幅されたごとくかなり変化した。CellSpotter(登録商標)による無傷CTCおよびフローサイトメトリーによって計数したCTCの比較は有意な相関を示さず(R=0.26)、有意な相関は損傷したCTCおよびフローサイトメトリーによるCTCの間(R=0.92)、およびCTC断片およびフローサイトメトリーによるCTCの間(R=0.93)で見出された。フローサイトメトリーおよびCellSpotter(登録商標)によって検出されたCTCの比較は、フローサイトメトリーによって検出されたCTCが無傷CTCならびに損傷されたCTC、およびある程度はCTC断片を含むことを示唆する。
【0082】
実施例4
LnCap細胞におけるアポトーシスのイン・ビトロ誘導による細胞損傷の模倣
CTCのフローサイトメトリーおよびCellSpotter(登録商標)分析における細胞傷害剤によって誘導されたアポトーシスの効果を調べるために前立腺細胞系LnCaPからの細胞を、40nMのパクリタキセルの存在下または不存在下で72時間培養した。インキュベーションに続き、未処理LncaP細胞はトリパンブルー排除によって>95%およびパクリタキセル処理細胞についての33%の生存率を示した。処理されたおよび未処理のLnCaP細胞を健康なドナーの血液にスパイクし、前記したフェロ流体方法によって選択し、CellSpotter(登録商標)システムによって分析した。パクリタキセルで処理されていないLnCaP細胞がスパイクされた実験において、95%を超えるLnCaP細胞は無傷腫瘍細胞として分類された。パクリタキセル処理LnCaP細胞の形態学的外観は、患者試料で観察されたCTCのそれとの密接な類似性を示し、これを図6に示した。パクリタキセル処理で生き残った無傷LnCaP細胞を図6aに示し、そのうち大部分が斑点状のサイトケラチン染色を示す損傷したLnCaPを図6Bに示し、腫瘍断片は図6Cに示す。
パクリタキセル処理および未処理LnCaP細胞でスパイクされた正常な血液試料もまたフローサイトメトリー分析のために調製した。図2G、図2Hおよび図2Iにおいて、50リットルのLnCaP細胞でスパイクされた血液試料のフローサイトメトリー分析を示す。大きな順方向光散乱シグナルによって示されるごとき正常なヒト白血球よりも大きな核酸含有量および比較的大きなサイズを持つ圧倒的に明るいサイトケラチン陽性集団を、図面中に黒色で示す。白血球よりも小さなNAD含有量で、青色で示された、小数のCK+、CD45−事象のみが試料中で検出される。図2J、2Kおよび2Lは血液中にスパイクされたパクリタキセル処理LnCaPのフローサイトメトリー分析を示す。生きたLnCaP細胞とは対照的にサイトケラチン染色体の広い分布が有意な割合の集団で観察された。これは、減少した濃度の核酸含有量を示す。加えて、白血球としての核酸含有量が低い多数の小さなサイトケラチン陽性事象が観察された。患者のパターンは、パクリタキセル処理LnCaP細胞のパターン酷似しており、これは、フローサイトメトリーによって検出されたCTCが、癌患者の血液中の無傷のCTCおよび種々の崩壊する細胞を表すという仮説を裏づける。
前記で示されたデータは前立腺癌を持つ患者の血液においてフローサイトメトリーおよびCellSpotter(登録商標)双方によって検出されたCTCが無傷細胞および崩壊の種々の段階にある細胞よりなることを示す。パクリタキセルによってイン・ビトロで誘導されたアポトーシスは、患者血液試料中の検出されたCTCがアポトーシス、壊死、または治療または療法、血管系を通過させることによる、機械的損傷、または免疫性によって引き起こされた様々な度合いのイン・ビボ損傷を受けつつあることを示唆する。
しかしながら、イン・ビトロで引き起こされた細胞崩壊のもう1つの源は、試料調製またはCTCの安定化の欠如または他の血液成分によって血液吸取後に誘導されよう。損傷を引き起こすことが知られている試料エージングの効果を調べるために、前立腺癌を持つ12人の患者から吸い取った血液試料を処理し、もし十分な血液が入手できれば、2時間以内、24時間後、6時間および18時間後にフローサイトメトリーによって分析した。12人の患者試料の8において、CTCは、正常なドナーで検出されたそれの平均+3SDよりも大きなレベルで検出された。図2に示すごとく。試料エージングでのCTCの喪失は、全ての8つの試料で観察された。
【0083】
【表2】

【0084】
血液処理が遅れた場合に、CTCの数の有意な低下が検出され、これは、CTCの脆性を示し、正確なCTCカウントを得るために、血液吸取後6時間未満に非安定化血液試料を処理することを必要とする。臨床的に関連する情報が腫瘍細胞分解の異なる段階に含まれるかを信頼性よく評価するには、身体内で生じつつあることの正確な反映を得るために、血液吸取の時点でCTCを安定化させる血液保存剤が必要とされる。さらに、CTCにつき豊富化するのに用いられる感度の良いアッセイのための試料調製方法は、CTCの全てのクラスが捕獲され、従って、先行技術おける伝統的な密度勾配分離方法を排除することが必要である。
【0085】
実施例5
明白なCTCおよび疑われるCTCは重要なインジケーターである。
ここに記載したもののごとき感度の良いアッセイにてイン・ビボおよびイン・ビトロ損傷の間を区別することができるのは重要である。これは、イン・ビボ細胞損傷を引き起こすことが知られている治療または療法の有効性を該アッセイが決定しようと試みる場合に、特に明らかである。もし試料の取扱または加工または分析の結果、標的細胞が損傷され、疑われる細胞、断片またはデブリスが形成されれば、該エッセイは意味のある結果を与えない。
【0086】
アッセイを用いて、フローサイトメトリーによるいずれの豊富化方法もなしに100μlの血液中でCTCを直接検出した。100μlのアッセイは、EpCAMのみを検出し、感度は非常に低い。しかしながら、高いCTCカウントを持つ幾人かの進展した段階の癌患者は観察不能であると予測される。このアッセイは操作を含まない直接的なアッセイであるのでCTCの信頼のおける見積もりを描くであろう。データは、いくつかの質問に答えるために、該アッセイを用いて幾人かの患者試料で得られた。
【0087】
100μlのアッセイは、サイズおよび染色強度のごとき特性に基づいて細胞をカテゴリー化する。明白なCTCは(白血球と同様に)明るい核酸染色を有し、陽性EpCAM抗原は染色および白血球と同様のサイズまたはそれ以上を有する。疑われるCTCはEpCAM抗体につき陽性であるいずれかの物体であるが、明白なCTCとして特徴付けられない(すなわち、薄暗い核酸、白血球よりも小さなサイズ)。該アッセイは物体を双方のカテゴリーから同定する。
【0088】
図5は、100μlアッセイによって決定された血液中の明白なおよび疑われるCTCの存在を示す。100μlアッセイは直接的アッセイであって、いずれの分離または洗浄工程も含まないので、疑われるCTCは試料処理の間に生じない(イン・ビトロ損傷)。前記データは、明白なCTCおよび疑われるCTCの数の間に相関があることも示す。疑われるCTCの数は、明白なCTCの数が増加するにつれ増加するようである。疑われるCTC vs 明白なCTCの数をプロットすると、2.92の傾きは、明白なCTCと比較した場合に、試料に存在する疑われるCTCの割合を示す。r=0.097の相関係数は、多数の臨床試料につき、明白なCTCおよび疑われるCTCの間の優れた相関を示す。加えて、疑われるCTCはフェロ流体−選択アッセイで見られ、直接的アッセイによって血液中で検出される疑われるCTCと同様な特性を有する。明白なCTCに加えて疑われるCTCを合計腫瘍細胞カウントに含めるのは重要である。
【0089】
重要な質問は、100μlアッセイからのデータをどのようにしてフェロ流体−選択CTC(豊富化CTC)と比較するかである。フェロ流体アッセイはCTCを定量的に検出するのであろうか?もう1つの質問は、もしフローアッセイデータが正しければ、フェロ流体−選択アッセイにおけるCTCの回収は何であるかである。100μlアッセイにおいてCTCの回収を決定する3つの主な因子は:
・EpCAM密度、
・サイトケラチン陽性、および
・核陽性
である。疑われるCTCは、明白なCTCと比較してより低いEpCAM密度を有し、この重要性は未だよく理解されていない。
【0090】
7mlの血液を用い、フェロ流体−選択アッセイに対して100μlアッセイによって明白なおよび疑われるCTCの比較を行った。このデータは、前立腺患者試料から得られ、フローサイトメトリーによって分析された。明白なおよび疑われるCTCの双方は貯蔵時間と共に増加し、その傾向はフェロ流体−選択アッセイで検出されたCTCと同様であり、それにより、100μlアッセイを確証する。フェロ流体−選択アッセイからのCTCの回収は、100μlの血液中のCTCに基づいて約90%であった。また、この患者からのCTCのMFI(EpCAM密度に相関する平均蛍光強度)は高く(MFI=300)、および全てのEpCAM陽性細胞はサイトケラチン陽性であることも知られていた。しかしながら、いくつかの他の臨床試料からのCTCの回収は20%と低かった。EpCAM陽性/サイトケラチン陰性細胞、サイトケラチン薄暗細胞、および細胞に結合するフェロ流体の能力を阻害する細胞表面のムチンのごとき、より低い回収に寄与するいくつかの因子があり得る。
【0091】
本明細書中に記載したアッセイは2つの時点において患者に行った。応答は病巣の二次元イメージングによって測定した。比率(比率=明白なCTC/合計CTC)は、先に記載した応答指標と同様であり、これは、治療の成功の数字のインジケーターとして用いることができる。結果を表IIIにまとめる。1.0に近い比率は、合計CTCが明白なCTCであることを示し、0.0に近い比率はより多い疑われるCTCまたはデブリスを示す。進行は、サイズが増大する病巣を示し、部分的応答は該比率が比較的低い処理に対する応答を示し、安定化は変化無し、または病巣サイズの低下を示す。陽性変化は、病気の進行に対応する無傷CTCの数の増加を示す。陰性変化は無傷CTCの数の減少、または疑われるCTCおよび/またはデブリスの数の可能な増加を示し、これは処理に対する応答に対応する。
これらの結果は、処理に対する応答を分析した場合の疑われるCTCおよびデブリスを含める重要性を示す。なぜならば、無傷または明白なCTC単独の数は多くの情報を与えないだろうからである。さらに、そのようなインジケーターは治療および療法の短期間モニタリング、または緩和および/または再発についての長期間モニタリングで有用である。
【0092】
【表3】

【0093】
腫瘍細胞デブリスの計数は、大きな増殖細胞クラスターの検出よりも癌の診断および治療で重要であることが判明するであろう。おそらくは約1ないし3μm(血小板のサイズ)のサイズ範囲であるデブリス粒子は無傷細胞よりも多量で存在することが観察されているので、それらは無傷腫瘍細胞よりも別々の、独立したおよび恐らくより感受性の高いマーカーを構成することができる。損傷したCTCの存在は、免疫系が無傷であって最も活性な場合には、初期段階の癌を検出するにおいて特に重要であろう。同様に、療法の間のデブリスの劇的な増加は、循環および組織腫瘍細胞双方の分解(すなわち、治療効果)を示唆し、腫瘍崩壊の間に観察されたカルシウムのような細胞成分のかなりの放出に平行する。可溶性腫瘍マーカーのように、そのようなデブリスは豊富化無しに、またはバフィーコート層の最小限の豊富化にて、検出可能であり、無傷細胞豊富化/分析よりも別のかつ潜在的により単純な診断ツールを構成する。形態学はCTCデブリスでは失われるので、デブリスがサイトケラチンのごとき適当な決定基につき染色される限り、検出はフローサイトメトリーによってなすことができよう。
【0094】
前記したごとく、DNAを伴うまたは伴わない損傷したまたは断片化されたCTCは理論的に予測され、従って、効果的な療法を受けつつある患者からの検体において、および強力な免疫系を持つ未処理患者からの検体において望ましくない事象ではない。合計検出可能事象に対する無傷CTCの比率または%は、患者の免疫系または療法に対する応答を評価するにおいて臨床家にとってより有用なパラメーターであることが判明するであろう。正常な免疫防御、特に活性化された好中球もまた、CTCが好中球よりもたとえ大きくても、「細胞外殺傷」と呼ばれるプロセスによって外来性種としてCTCを損傷、または破壊することができる。免疫系が病気の最終的段階に圧倒するのでなければ、または療法が効果的でないのでなければ、無傷細胞として放出されたCTCの小さなパーセンテイジを見出すに過ぎないのは驚くべきこととは見えない。
【0095】
よって、イン・ビトロ癌検出:無傷循環細胞/クラスターの決定的な検出、および(全および腫瘍特異的RNA/DNA、および慣用的可溶性腫瘍マーカーを含めた)循環腫瘍デブリスのような推理方法のための多数の方法がある。しかしながら、それ自体十分な感度の方法はない。CTC形態学と比較したデブリス検出のより低い特異性は、(例えば、三重標識で)最小化され得るスクリーニングにおいて問題であるが、それはモニタリングではより問題とはならないであろう。正常と比較した患者における無傷CTCおよび診断段階に対するデブリスデータについてのさらなる統計学的解析および相関は、デブリス分析の感度および特異性を評価するにおいて価値があるように見える。
【0096】
本発明の組成物、方法およびキットを用いて検出できる異なるタイプの癌の例には、APUD系細胞種(apudoma)、分離腫、鰓腫、悪性カルチノイド症候群、カルチノイド心疾患、癌、例えば、ウォーカー癌、基底細胞癌、基底有棘細胞癌、ブラウンーピアス(Brown-Pearce)癌、腺管癌、エールリヒ腫瘍、上皮内癌、クレブス2、メルケル細胞癌、粘液性癌腫、非小細胞肺癌、燕麦細胞癌、乳頭状癌、スキルス癌、細気管支癌、気管支原性肺癌、扁平上皮細胞癌および移行細胞細網内皮症、黒色腫、軟骨芽細胞腫、軟骨腫、軟骨肉腫、繊維腫、繊維肉腫、巨細胞腫、組織球腫、脂肪腫、脂肪肉腫、中皮腫、粘液腫、粘液肉腫、骨腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、滑膜腫、腺線維腫、腺リンパ腫、癌肉腫、脊索腫、間葉腫、中腎種、筋肉腫、エナメル上皮腫、セメント質腫、歯牙腫、奇形腫、絨毛腫、腺癌、腺腫、胆管腫、胆脂種、円柱腫、嚢胞腺癌、嚢胞腺腫、顆粒膜細胞腫、卵巣男性胚腫、肝臓癌、汗腺腫、島細胞腫、ライディッヒ細胞腫、乳頭腫、セルトリ細胞腫、卵胞膜細胞腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、筋原細胞腫、筋腫、筋肉腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、脳室上衣腫、節神経腫、神経膠腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、神経鞘腫、神経芽細胞腫、神経症上皮腫、神経繊維腫、神経腫、傍神経節腫、非クロム親和性傍神経節腫、アンチオ角化腫(antiokeratoma)、硬化性血管腫、血管腫症、グロームス血管腫、血管内皮腫、血管腫、血管周囲細胞腫、血管肉腫、リンパ管腫、リンパ管筋腫、リンパ管肉腫、松果体腫、癌肉腫、軟骨肉腫、葉状嚢肉腫、繊維肉腫、血管肉腫、平滑筋肉腫、白血肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、筋肉腫、粘液肉腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、肉腫(カポジ肉腫および肥満細胞肉腫)、新生物(例えば、骨、消化器系、結腸直腸、肝臓、膵臓、脳下垂体、睾丸、眼窩、頭頸部、中枢神経系、聴覚、骨盤、呼吸管および泌尿生殖器)、神経繊維腫症および子宮頚部形成異常が含まれる。
【0097】
しかしながら、本発明は、循環上皮細胞および/またはクラスター、断片またはデブリスの検出に制限されない。例えば、心筋梗塞を有する患者の血液中で内皮細胞が観察されている。上皮細胞のように、内皮細胞、心筋細胞、ウイルス感染細胞は、利用可能なモノクローナル抗体によって認識される細胞型特異的決定基を有する。従って、本発明の方法およびキットは、そのような循環内皮細胞を検出するのに適用することができる。加えて、本発明は、本発明の組成物、方法およびキットを用いて評価することもできる、感染症を持つ患者の末梢血液における細菌細胞負荷の検出を可能とする。これらの稀な細胞が循環系において同様に挙動し、断片および/またはデブリスが前記したのと同様な条件で存在すると予測するのは合理的であろう。
【0098】
本明細書中で開示した発明の好ましい具体例は、癌診断に加えた場および適用で本発明を使用できるようにすると考えられる。本発明の改良された診断対応は好ましい具体例のこれまでの記載によって限定されないことは当業者に明らかであろう。最後に、前記で示したある具体例は詳細な記載を提供するが、以下の請求の範囲は該詳細な記載によってその範囲が限定されない。事実、以下の請求の範囲の精神を逸脱することなく種々の修飾をなすことができる。
【図1a】

【図1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.テスト対象から生物学的検体を得、該検体は無傷の稀な細胞を含有することが疑われる混合された細胞集団を含み、およびさらに
i.稀な細胞に由来する細胞断片、または
ii.稀な細胞に由来する細胞デブリス;
を含み;
b.磁気−標識試料を調製し、ここに、該生物学的試料は、該無傷の稀な細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスと特異的に反応する第1の生物特異的リガンドにカップリングした磁性粒子と、他の検体成分の実質的排除まで、混合され;
c.該磁気−標識試料、該無傷の稀な細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスを特異的に標識する少なくとも1つのさらなる生物特異的リガンドと、他の検体成分の実質的排除まで、接触させ;
d.該標識された稀な細胞、および該標識された細胞断片または該標識された細胞デブリスを分析することを含み、該標識された稀な細胞、該標識された細胞断片、および該標識された細胞デブリスの存在は病気の存在を示す;
ことを特徴とするテスト対象において病気を診断する方法。
【請求項2】
該生物学的検体が血液である請求項1記載の方法。
【請求項3】
該生物学的検体を得た後に、それを、該生物学的検体を安定化することができる剤と接触させる請求項2記載の方法。
【請求項4】
該磁性粒子がコロイド状である請求項1記載の方法。
【請求項5】
該磁気−標識試料を調製する工程の後に、該試料を高勾配磁場に付して、該無傷な稀な細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスが豊富化された、分離された磁気−標識化合物画分を生じさせる請求項1記載の方法。
【請求項6】
該分析がマルチパラメーターフローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡、レーザー走査サイトメトリー、明視野ベースイメージ分析、毛細管測容法、スペクトルイメージング分析、手による細胞分析、および自動細胞分析よりなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項7】
該分析が、形態学的分析およびエピトープ分析よりなる群から選択される少なくとも1つに基づく請求項1記載の方法。
【請求項8】
a.テスト対象から生物学的検体を得、該検体は無傷な稀な細胞および稀な細胞のクラスターを含むことが疑われる混合された細胞集団を含み;
b.磁気−標識試料を調製し、ここに、該生物学的試料は、該無傷な稀な細胞および稀な細胞の該クラスターと特異的に反応する第1の生物特異的リガンドにカップリングした磁性粒子と、他の検体成分の実質的排除まで、混合され;
c.該磁気−標識試料、該無傷の稀な細胞および稀な細胞の該クラスターを特異的に標識する少なくとも1つのさらなる生物特異的リガンドと、他の検体成分の実質的排除まで、接触させ;
d.該標識された稀な細胞および稀な細胞の該標識されたクラスターを分析することを含み、該標識された稀な細胞および稀な細胞の該標識されたクラスターの存在は病気の存在を示す;
ことを特徴とする、テスト対象において病気を診断する方法。
【請求項9】
該生物学的検体が血液である請求項15記載の方法。
【請求項10】
該生物学的検体を得た後、それを、該生物学的検体を安定化することができる剤と接触させる請求項16記載の方法。
【請求項11】
該磁性粒子がコロイド状である請求項15記載の方法。
【請求項12】
該磁気−標識試料を調製する工程の後に、該試料を高勾配磁場に付して、該無傷の稀な細胞および稀な細胞の該クラスターが豊富化された、分離された磁気−標識化合物画分を生じさせる請求項15記載の方法。
【請求項13】
該分析がマルチパラメーターフローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡、レーザー走査サイトメトリー、明視野ベースイメージ分析、毛細管測容法、スペクトルイメージング分析、手による細胞分析、および自動細胞分析よりなる群から選択される請求項15記載の方法。
【請求項14】
a.テスト対象から生物学的検体を得、該検体は無傷な悪性細胞を含むことが疑われる混合された細胞集団を含み、およびさらに
i.悪性細胞に由来する細胞断片、または
ii.悪性細胞に由来する細胞デブリスを含み;
b.磁気−標識試料を調製し、ここに、該生物学的検体は、該無傷の悪性細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスと特異的に反応する第1の生物特異的リガンドにカップリングされた磁性粒子と、他の検体成分の実質的排除まで、混合され;
c.該磁気−標識試料、該無傷の悪性細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスを特異的に標識する少なくとも1つのさらなる生物特異的リガンドと、他の検体成分の実質的排除まで、接触させ;
d.該標識された悪性細胞、および該標識された細胞断片、該標識された細胞デブリスを分析し、該標識された悪性細胞、該標識された細胞断片、および該標識された細胞デブリスの存在は、悪性疾患の存在を示す;
ことを特徴とするテスト対象において悪性疾患を診断する方法。
【請求項15】
該生物学的検体が血液である請求項14記載の方法。
【請求項16】
該生物学的検体を得た後に、それを、該生物学的検体を安定化させることができる剤と接触させる請求項15記載の方法。
【請求項17】
該磁性粒子がコロイド状である請求項14記載の方法。
【請求項18】
該磁気−標識試料を調製する工程の後に、該試料を高勾配磁場に付して、該無傷の悪性細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスが豊富化された、別々の磁気−標識画分を生じさせる請求項14記載の方法。
【請求項19】
該分析がマルチパラメーターフローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡、レーザー走査サイトメトリー、明視野ベースイメージ分析、毛細管測容法、スペクトルイメージング分析、手による細胞分析、および自動細胞分析よりなる群から選択される請求項14記載の方法。
【請求項20】
該分析が、さらに、アポトーシスまたは壊死によって引き起こされるそれらの起源に基づいて細胞断片または該細胞デブリスを分類することを含む請求項14記載の方法。
【請求項21】
分析が、さらに、機械的損傷、薬物−誘導損傷、または免疫学的損傷によって引き起こされるそれらの起源に基づいて細胞断片または該細胞デブリスを分類することを含む請求項20記載の方法。
【請求項22】
該分類が、形態学的分析およびエピトープ分析よりなる群から選択される少なくとも1つをベースとする請求項20記載の方法。
【請求項23】
a.テスト対象から生物学的検体を得、該検体は無傷な悪性細胞および悪性細胞のクラスターを含むことが疑われる混合された細胞集団を含み;
b.磁気−標識試料を調製し、ここに、該生物学的試料は、該無傷の悪性細胞および悪性細胞の該クラスターと特異的に反応する第1の生物特異的リガンドにカップリングした磁性粒子と、他の検体成分の実質的排除まで、混合され;
c.該磁気−標識試料、該無傷の悪性細胞および悪性細胞の該クラスターを特異的に標識する少なくとも1つのさらなる生物特異的リガント、他の検体成分の実質的排除まで、接触させ、
d.該標識された悪性細胞および悪性細胞の該標識されたクラスターを分析することを含み、該標識された悪性細胞および悪性細胞の該標識されたクラスターの存在が、悪性疾患の存在を示す;
ことを特徴とする、テスト対象において悪性疾患を診断する方法。
【請求項24】
該生物学的検体が血液である請求項23記載の方法。
【請求項25】
該生物学的検体を得た後に、それを、該生物学的検体を安定化させることができる剤と接触させる請求項24記載の方法。
【請求項26】
該磁性粒子がコロイド状である請求項23記載の方法。
【請求項27】
該磁気−標識試料を調製する工程の後に、該試料を高勾配磁場に付して、該無傷の悪性細胞および悪性細胞クラスターが豊富化された、分離された磁気−標識画分を生じさせる請求項23記載の方法。
【請求項28】
該分析がマルチパラメーターフローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡、レーザー走査サイトメトリー、明視野ベースイメージ分析、毛細管測容法、スペクトルイメージング分析、手による細胞分析、および自動細胞分析よりなる群から選択される請求項23記載の方法。
【請求項29】
a.テスト対象から生物学的検体を得、該検体は無傷な悪性細胞を含むことが疑われる混合された細胞集団を含み、さらに、
i.悪性細胞に由来する細胞断片、または
ii.悪性細胞に由来する細胞デブリスを含み;
b.磁気−標識試料を調製し、ここに、該生物学的試料は、該無傷の悪性細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスと特異的に反応する第1の生物特異的リガンドとカップリングされた磁性粒子と、他の検体成分の実質的排除まで、混合され;
c.該磁気−標識試料は、該無傷の悪性細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスを特異的に標識する少なくとも1つのさらなる生物特異的リガンドと、他の検体成分の実質的排除まで、接触させ;
d.該標識された悪性細胞、および該標識された細胞断片または該標識された細胞デブリスを分析することを含み、該標識された悪性細胞、該標識された細胞断片、および標識された細胞デブリスの存在は、悪性疾患の存在を示す;
ことを特徴とする、テスト対象において悪性疾患をスクリーニングする方法。
【請求項30】
該生物学的検体が血液である請求項29記載の方法。
【請求項31】
該生物学的検体を得た後に、それを、該生物学的検体を安定化させることができる剤と接触させる請求項30記載の方法。
【請求項32】
該磁性粒子がコロイド状である請求項29記載の方法。
【請求項33】
該磁気−標識試料を調製する工程の後に、該試料を高勾配磁場に付して、該無傷の悪性細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスが豊富化された、分離された磁気−標識画分を生じさせる請求項29記載の方法。
【請求項34】
該分析がマルチパラメーターフローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡、レーザー走査サイトメトリー、明視野ベースイメージ分析、毛細管測容法、スペクトルイメージング分析、手による細胞分析、および自動細胞分析よりなる群から選択される請求項29記載の方法。
【請求項35】
該分析が、さらに、アポトーシスまたは壊死によって引き起こされるそれらの起源に基づいて細胞断片または該細胞デブリスを分類することを含む請求項29記載の方法。
【請求項36】
機械的損傷、薬物−誘導損傷、または免疫学的損傷によって引き起こされるそれらの起源に基づいて細胞断片または該細胞デブリスを分類することを含む請求項35記載の方法。
【請求項37】
該分類が、形態学的分析およびエピトープ分析よりなる群から選択される少なくとも1つに基づく請求項35記載の方法。
【請求項38】
a.テスト対象から生物学的検体を得、該検体は無傷の悪性細胞および悪性細胞のクラスターを含むことが疑われる混合された細胞集団を含み;
b.磁気−標識試料を調製し、ここに、該生物学的試料は、該無傷の悪性細胞および悪性細胞の該クラスターと特異的に反応する第1の生物特異的リガンドにカップリングされた磁性粒子と、他の検体成分の実質的排除まで、混合され;
c.該磁気−標識試料は、該無傷の悪性細胞および悪性細胞の該クラスターを特異的に標識する少なくとも1つのさらなる生物特異的リガンドと、他の検体成分の実質的排除まで、接触させ;
d.該標識された悪性細胞および悪性細胞の該標識されたクラスターを分析することを含み、該標識された悪性細胞および悪性細胞の該標識されたクラスターの存在は悪性疾患の存在を示す;
ことを特徴とする、テスト対象において悪性疾患をスクリーニングする方法。
【請求項39】
該生物学的検体が血液である請求項38記載の方法。
【請求項40】
該生物学的検体を得た後に、それを、該生物学的検体を安定化させることができる剤と接触させる請求項39記載の方法。
【請求項41】
該磁性粒子がコロイド状である請求項38記載の方法。
【請求項42】
該磁気−標識試料を調製する工程の後に、該試料を高勾配磁場に付して、該無傷の悪性細胞および悪性細胞の該クラスターが豊富化された、分離された磁気−標識画分を生じさせる請求項38記載の方法。
【請求項43】
該分析がマルチパラメーターフローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡、レーザー走査サイトメトリー、明視野ベースイメージ分析、毛細管測容法、スペクトルイメージング分析、手による細胞分析、および自動細胞分析よりなる群から選択される請求項38記載の方法。
【請求項44】
a.テスト対象から生物学的検体を得、該検体は無傷な悪性細胞を含むことが疑われる混合された細胞集団を含み、およびさらに
i.悪性細胞に由来する細胞断片、または
ii.悪性細胞に由来する細胞デブリスを含み;
b.磁気−標識試料を調製し、ここに、該生物学的試料は、該無傷の悪性細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスと特異的に反応する第1の生物特異的リガンドとカップリングされた磁性粒子と、他の検体成分の実質的排除まで、混合され;
c.該磁気−標識試料、該無傷の悪性細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスを特異的に標識する少なくとも1つのさらなる生物特異的リガンド、他の検体成分の実施的排除まで、接触させ;
d.該標識された悪性細胞、および標識された細胞断片、該標識された細胞デブリスを分析し、該標識された悪性細胞、該標識された細胞断片、および該標識された細胞デブリスの存在は悪性疾患の存在を示す;
ことを特徴とする、テスト対象において悪性疾患をモニターする方法。
【請求項45】
該生物学的検体が血液である請求項44記載の方法。
【請求項46】
該生物学的検体が得られた後に、それを、該生物学的検体を安定化することができる剤と接触させる請求項45記載の方法。
【請求項47】
該磁性粒子がコロイド状である請求項44記載の方法。
【請求項48】
該磁気的に標識された試料を調製する工程の後に、該試料を高勾配磁場に付して、該無傷悪性細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスが豊富化された、分離された磁気的に標識された画分を得る請求項44記載の方法。
【請求項49】
該分析がマルチパラメーターフローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡、レーザー走査サイトメトリー、明視野ベースイメージ分析、毛細管測容法、スペクトルイメージング分析、手による細胞分析、および自動細胞分析よりなる群から選択される請求項44記載の方法。
【請求項50】
該分析が、さらに、アポトーシスまたは壊死によって引き起こされたその起源に基づいて細胞断片または該細胞デブリスを分類することを含む請求項44記載の方法。
【請求項51】
分析が、さらに、機械的損傷、薬物−誘導損傷、または免疫学的損傷によって引き起こされたその起源に基づいて細胞断片または該細胞デブリスを分類すること含む請求項50記載の方法。
【請求項52】
該分類が、形態学的分析およびエピトープ分析よりなる群の少なくとも1つに基づく請求項50記載の方法。
【請求項53】
a.テスト対象から生物学的検体を得、該検体は、無傷悪性細胞および悪性細胞のクラスターを含有することが疑われる混合された細胞集団を含み;
b.磁気的に標識された試料を調製し、ここに、該生物学的試料は、該無傷悪性細胞および悪性細胞の該クラスターと特異的に反応する第1の生物特異的リガンドにカップリングした磁性粒子と、他の検体成分の実質的排除まで、混合され;
c.該磁気的に標識された試料を、該無傷悪性細胞および悪性細胞の該クラスターを特異的に標識する少なくとも1つのさらなる生物特異的リガンドと、他の検体成分の実質的排除まで、接触させ;
d.該標識された悪性細胞および悪性細胞の該標識されたクラスターを分析し、該標識された悪性細胞および悪性細胞の該標識されたクラスターの存在は悪性疾患の存在を示す;
ことを特徴とする、テスト対象において悪性疾患をモニターする方法。
【請求項54】
該生物学的検体が血液である請求項53記載の方法。
【請求項55】
該生物学的検体が得られた後に、それを、該生物学的検体を安定化することができる剤と接触させる請求項54記載の方法。
【請求項56】
該磁性粒子がコロイド状である請求項53記載の方法。
【請求項57】
該磁気的に標識された試料を調製する工程の後に、該試料を高勾配磁場に付して、該無傷悪性細胞および悪性細胞の該クラスターが豊富化された、分離された磁気的に標識された画分を得る請求項53記載の方法。
【請求項58】
該分析がマルチパラメーターフローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡、レーザー走査サイトメトリー、明視野ベースイメージ分析、毛細管測容法、スペクトルイメージング分析、手による細胞分析、および自動細胞分析よりなる群から選択される請求項53記載の方法。
【請求項59】
a.i.磁性コア材料、
ii.蛋白質ベースのコーティング材料、および
iii.該悪性細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスの第1の特徴的な決定基に特異的に結合する抗体
を含むコートされた磁性ナノ粒子;
b.該悪性細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスの第2の特徴的な決定基に対する結合特異性を有する少なくとも1つの抗体;
c.該悪性細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスのさらなる特徴を染色することができる剤;
を含む、悪性細胞、および悪性細胞に由来する細胞断片または悪性細胞に由来する細胞デブリスの存在につき生物学的検体をアッセイするためのキット。
【請求項60】
さらに、異なる特徴的な決定基につき各々が特異的な抗体のパネルを含む請求項59記載のキット。
【請求項61】
さらに、非−標的存在を標識することができる特異的剤をさらに含む請求項59記載のキット。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−109514(P2009−109514A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11194(P2009−11194)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【分割の表示】特願2003−523961(P2003−523961)の分割
【原出願日】平成14年8月23日(2002.8.23)
【出願人】(399012963)イムニベスト・コーポレイション (10)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNIVEST CORPORATION