説明

微孔性濾材、それを含有する濾過システム、その製造法および使用法

【課題】微生物学的遮断機能を有する濾材、このような濾材を含有する濾過システム、その製造方法の提供。
【解決手段】約2ミクロン未満の平均流路を有し、活性粒子配列からなる微孔性構造の微生物学的遮断が強化された濾材に関し、微孔性構造の表面の少なくとも一部でカチオン性物質を生物学的に活性な金属と組合せた微生物学的遮断強化剤が生成する。本発明の微生物学的遮断が強化された濾材は約4logより大きいウイルス遮断および6logより大きいバクテリア遮断をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微生物学的遮断機能を有する濾材、このような濾材を含有する濾過システム、その製造法および使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の一般浄水器は粒子、重金属、毒性有機化学物質の減少、および選択的な微生物脅威を含む“健康強調表示”を提示していることが多い。これらの濾過システムは約1.0ミクロンの構造を使用してクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)およびジアルジア(Giardia)のような微生物を遮断することができる。しかしながら、ウイルスのような非常に小さい微生物脅威を微生物学的に遮断するためにはサブミクロンの微孔性構造を有する濾材が必要とされる。従来の濾過システムはしばしば細孔の大きさが不十分に小さく、不良な物理的結合性を有する濾材を使用して幅広い微生物学的遮断を達成しようと試みている。好結果の微生物学的遮断および良好な濾過性能に要求される必要な細孔構造間のバランスが達成されていない。
【発明の概要】
【0003】
最初の見地において、本発明は約2ミクロン未満の平均フローパスを有し、活性粒子の配列を含む微孔性構造;並びに前記微孔性構造の少なくとも一部に吸着された、中位ないし高い電荷密度と約5000ダルトンより大きい分子量を有するカチオン性物質、および直接カチオン性物質に近接し、さらに前記微孔性構造の少なくとも一部にある生物学的に活性な金属を含む微生物学的遮断強化剤を含む濾材に関する。
【0004】
他の見地において、本発明は流入口および流出口を有するハウジング;並びに
流入口および流出口と流体で連絡する前記ハウジング内に位置する濾材を含む濾過システムであって、前記濾材は活性炭、活性アルミナ、ゼオライト、珪藻土、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、チタン酸塩、骨炭、カルシウムヒドロキシアパタイト、酸化マンガン、酸化鉄、マグネシア、パーライト、タルク、ポリマー粒子、クレー、沃素化樹脂、イオン交換樹脂、セラミックスまたはこれらの組合せの活性粒子を含む約2ミクロン未満の平均フローパスを有する微孔性構造;並びに
高い電荷密度、約5000ダルトンより大きい分子量および会合したカウンターイオンを有し、さらに微孔性構造の少なくとも一部に吸着されたカチオン性物質を含む、生物学的に活性な金属がカチオン性物質と会合したカウンターイオンの少なくとも一部で沈殿する微生物学的遮断強化剤を含み、
前記ハウジングを通って流れ、前記濾材と接触する微生物学的に汚染された流入液は前記ハウジングから流れる流出液中の微生物学的汚染物について少なくとも約4logの対数減少を示す前記システムに関する。
【0005】
さらに他の見地において、本発明は約0.1ミクロン〜約5000ミクロンの平均粒度を有する活性粒子を用意し;
高い電荷密度および約5000ダルトンより大きい分子量を有するカチオン性物質を生物学的に活性な金属と組合せたものを含む微生物学的遮断強化剤で該活性粒子を処理し;そして
処理した活性粒子を約2ミクロン未満の平均フローパスを有する微孔性構造に成形する工程を含む強化された微生物学的遮断機能を有する濾材の製造法に関する。
【0006】
さらに他の見地において、本発明は約0.1ミクロン〜約5000ミクロンの平均粒度を有する活性粒子を用意し;
活性粒子を約2ミクロン未満の平均フローパスを有する微孔性構造に融合させ;そして
高い電荷密度および約5000ダルトンより大きい分子量を有するカチオン性物質を生物学的に活性な金属と組合せたものを含む微生物学的遮断強化剤で該微孔性構造を処理する工程を含む強化された微生物学的遮断機能を有する濾材の製造法に関する。
【0007】
別の見地において、本発明は活性粒子を含み、約2ミクロン未満の平均フローパスを有する微孔性構造;並びに
前記微孔性構造の少なくとも一部に吸着された、中位ないし高い電荷密度および約5000ダルトンより大きい分子量を有するカチオン性物質を生物学的に活性な金属と組合せたものを含む微生物学的遮断強化剤を含む濾材を用意し;
微生物学的に汚染された流体を濾材と約12秒以下の間接触させ;そして
微生物学的汚染物の対数減少が約4logより大きい流出液を得る工程を含む微生物学的汚染物を流体から除去する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】空床接触時間に対する微生物学的遮断が強化された本発明の活性炭濾材のMS2バクテリオファージの対数減少値をプロットしたグラフを示す。
【0009】
新規であると考えられる本発明の特徴および本発明の要素の特性を特に添付した特許請求の範囲に関連して記載する。図面は単に例示するためのものであり、縮尺で描いたものではない。しかしながら、本発明そのものは構成および実施の方法に関して、次の好ましい態様の説明を添付図面と共に参照することにより最も良く理解することができる。図1は空床接触時間に対する微生物学的遮断が強化された本発明の活性炭濾材のMS2バクテリオファージの対数減少値をプロットしたグラフである。
【0010】
好ましい態様の詳細な説明
本発明の好ましい態様を説明するために、図面の図1を参照する。
【0011】
定義
本明細書で使用される「吸収剤」なる用語はある物質をその内部構造に引き込むことができる物質を意味する。
【0012】
本明細書で使用される「吸着剤」なる用語はある物質を物理的手段により共有結合なしでその表面に引き付けることができる物質を意味する。
【0013】
本明細書で使用される「結合剤」なる用語は主に他の物質を互いに結合させるために使用される物質を意味する。
【0014】
本明細書で使用される「汚染物減少」なる用語は例えば人間に使用するべく、または工業的用途でより有用であるように流体をより安全なものにするために化学的、機械的または生物学的に遮断され、除去され、そして/または不活性なものにされる流体中の不純物の減衰を意味する。
【0015】
本明細書で使用される「空床接触時間」または「EBCT」なる用語は例えば活性炭のような粒子と流体の間で流体が粒子床を通過する時にどれだけの接触が生じるかの尺度を意味する。
【0016】
本明細書で使用される「繊維」なる用語は例えば数百対1の長さと直径の高いアスペクト比を特徴とする固体を意味する。繊維に関する論述にはホイスカーもまた包含するものとする。
【0017】
本明細書で使用される「濾材」なる用語は流体の濾過を行なう物質を意味する。
【0018】
本明細書で使用される「流体」なる用語は液体、気体、またはこれらの組合せを意味する。
【0019】
本明細書で使用される「遮断する」または「遮断」なる用語は妨害する、すなわち通過を停止して作用する、除去する、不活性にする、または影響を与えることを意味する。
【0020】
本明細書で使用される「対数減少値」または「LRV」なる用語は濾材を通過した後の流出液中の微生物の数で割った流入液中の微生物の数のlog10を意味する。
【0021】
本明細書で使用される「金属」なる用語は所定の金属元素の塩、コロイド、沈殿、卑金属、および他のすべての形態を包含することを意味する。
【0022】
本明細書で使用される「微生物学的遮断が強化された濾材」なる用語は微孔性構造の少なくとも一部が微生物学的遮断強化剤で処理される微孔性構造を有する濾材を意味する。
【0023】
本明細書で使用される「微生物学的遮断強化剤」なる用語はそれと会合したカウンターイオンを有し、生物学的に活性な金属と組合せたカチオン性物質を意味する。
【0024】
本明細書で使用される「微生物」なる用語は流体中で懸濁することができる生体、例えばバクテリア、ウイルス、菌類、原生動物、および嚢胞や胞子を含むこれらの生殖形態を意味するが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で使用される「微孔性構造」なる用語は約2.0ミクロン未満、大抵は約1.0ミクロン未満の平均フローパスを有する構造を意味する。
【0026】
本明細書で使用される「天然有機物」または「NOM」なる用語は飲料水または飲料不適水中に多く存在し、その一部は陽電荷の濾材の流動電位、すなわちゼータ電位を低下または阻害する有機物を意味する。NOMの例はフミン酸およびフルボ酸のようなポリアニオン酸であるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書で使用される「不織布」なる用語は個々の繊維が編物または織物のように極めて組織的にではなく層間に入る構造を有するウェブまたは織物または他の媒体を意味する。不織ウェブは一般に当該技術分野でよく知られている方法により製造することができる。このような方法の例はメルトブローン法、スパンボンド法、カーディング法およびエアーレイド法であるが、これらは単なる例示であり、これらに限定されない。
【0028】
本明細書で使用される「粒子」なる用語は特に形状については限定していないが、一般に長さ対幅の比が制限されたコロイドからマクロまでの大きさを有する固体を意味する。
【0029】
本明細書で使用される「前置フィルター」なる用語は一般に他の濾過層、構造または装置の上流側に取り付けられ、流入液が次の濾過層、構造または装置と接触する前に粒子状汚染物を減少させることができる濾材を意味する。
【0030】
本明細書で使用される「ホイスカー」なる用語は粒子と繊維のアスペクト比の中間である制限されたアスペクト比を有するフィラメントを意味する。繊維に関する考察はホイスカーもまた包含するものとする。
【0031】
微生物学的遮断が強化された濾材
本発明の濾材は適当な細孔構造および化学的処理の組合せを使用して微生物学的遮断機能を与える微孔性構造を有する。微孔性構造は吸着性および/または吸収性だけでなく、特定の細孔構造を有する活性粒子の配列を含む。配列は固体複合ブロック、モノリス、セラミックキャンドル、結合剤または支持繊維などを使用して凝集性媒体に成形された接着または固定化粒子の平板複合体である。これらの粒子配列は当該技術分野で知られている方法、例えば押出、一次成形またはスリップキャスティングにより製造することができる。微孔性構造の表面を処理するために使用される化学的処理法はカチオン性物質および生物学的に活性な金属間の相乗作用を利用し、それらは組合されると接触時に広域スペクトルの微生物学的汚染物の減少をもたらす。濾材に対してカチオン性物質により付与される電荷は微生物学的汚染物の動電学的遮断を助け、堅い細孔構造は短い拡散路、したがって微孔性構造の表面に対する流動体中の微生物学的汚染物の急速な拡散運動を与える。微孔性構造はまた、補助的に微生物学的汚染物の直接的な機械的遮断をもたらす。極めて小さい粒子を遮断するのに拡散が主要な役割を果たすため、濾材の厚さに依存するというより、ウイルス粒子の対数減少値と濾材中の流入液の接触時間の間に直接的な相互関係がある。
【0032】
微生物学的遮断が強化された濾材の特性
完全な微生物学的遮断機能を与えるために、本発明の微生物学的遮断が強化された濾材は約2ミクロン未満、より好ましくは約1ミクロン以下の平均フローパスを有する。平均フローパスが約2ミクロンより大きい場合、ウイルス粒子の拡散効率は急速に低下し、効果的な生物学的遮断が機能しなくなる。濾材を通過する流体の流量と比較した本発明の微生物学的遮断が強化された濾材の容量は汚染物が濾材の表面を拡散するのに十分な接触時間を与える程十分な量でなければならない。その大部分が負電荷である微生物の強化された動電学的遮断をもたらすために、微孔性構造の少なくとも一部はこのような微孔性構造の少なくとも一部に正電荷を生じさせるカチオン性物質で被覆される。カチオン性物質は活性粒子のミクロ孔およびメソ孔の汚れを防止するのに十分な大きさの分子である。
【0033】
微生物学的遮断が強化された濾材の電荷を低下または除去することができる天然有機物(NOM)、例えばポリアニオン酸、すなわちフミン酸またはフルボ酸は好ましくはNOMを実質的に除去する吸着性前置フィルターを使用して帯電した微孔性構造と接触するのが防止される。NOMを除去する物質を微生物学的遮断が強化された濾材に直接組み込むことができ、それにより別の吸着性前置フィルターの必要がなくなる。また、使用する活性粒子のタイプに応じて、微生物学的遮断が強化された濾材の上流部分それ自体が自然にNOMを減少または除去し、微生物学的遮断が強化された濾材の上流部分の性能の低下を防止することができる。
【0034】
重力流水濾過システムで使用される場合、微生物学的遮断が強化された濾材は親水性物質で製造するか、または湿潤剤で処理して良好で自然な湿潤性を与えるのが好ましい。別法として、他の用途において、微生物学的遮断が強化された濾材は必要に応じて親水性または疎水性を付与するために処理することができる。微生物学的遮断が強化された濾材は正電荷および負電荷の領域、非帯電領域、および/または親水性および疎水性領域を有することができる。例えば、負電荷の領域を使用してあまり一般的ではない正電荷の汚染物の遮断を強化することができ、また非帯電の疎水性領域を使用して疎水性表面に引き付けられる汚染物の遮断を強化することができる。
【0035】
活性粒子
本発明の強化された微生物学的遮断機能を有する微生物学的遮断が強化された濾材は約20%〜約24%のpan(−325メッシュより小さい粒子)で80×325メッシュの粒度分布を有する吸着性および/または吸収性活性粒子の配列を含む。活性粒子には活性炭、活性アル
ミナ、ゼオライト、珪藻土、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、チタン酸塩、骨炭、カルシウムヒドロキシアパタイト、酸化マンガン、酸化鉄、マグネシア、パーライト、タルク、ポリマー粒子、クレー、沃素化樹脂、イオン交換樹脂、セラミックス、高吸水性ポリマー(SAP)およびこれらの組合せがあるが、これらに限定されない。必要な特性を有する微生物学的遮断が強化された濾材は1種以上のこれらの活性粒子を組合せることにより得られる。
【0036】
好ましい微孔性構造は自然にNOMによる汚れに抵抗し、内部領域を保護しながら微孔性構造の周辺領域で潜在的に干渉するNOMを吸着するのに効果的な活性炭の活性粒子を含む。好ましくは、活性炭は酸洗浄した瀝青炭から作られる活性炭である。本発明で使用するのに適した商業的に入手できる活性炭はペンシルバニア州ピッツバーグのカルゴンカーボン社から商標名TOG−NDSで、またはカリフォルニア州ウイルミントンのカリフォルニアカーボン社から商標名1240ALCで得られる。最も好ましくは、活性炭はカルゴンカーボン社製の酸洗浄した瀝青炭から作られる活性炭であり、次のような粒度分布を有する:約3%〜約7%、好ましくは約5%、80メッシュの大きさの粒子;約12%〜約18%、好ましくは約15%、100メッシュ;約44%〜約50%、好ましくは47%、200メッシュ;約8%〜約14%、好ましくは約11%、325メッシュ;および約20%〜約24%のpan、好ましくは約22%のpan。
【0037】
微生物学的遮断強化剤
微孔性構造の活性粒子は活性粒子の表面に正電荷を生じさせることができる微生物学的遮断強化剤で化学的に処理される。化学的処理は流動電位分析を使用して測定すると強い正電荷を処理表面に生じさせ、この正電荷は10未満のpH値で維持される。カチオン性金属複合体は活性粒子をカチオン性物質で処理することにより活性粒子の表面の少なくとも一部に生成する。カチオン性物質は小さい帯電分子、あるいはポリマー鎖の長さに沿って正電荷の原子を有する直鎖状または分枝状ポリマーである。
【0038】
カチオン性物質がポリマーである場合、その電荷密度は好ましくは分子の長さが約20オングストローム毎に約1より大きい帯電原子、好ましくは約10オングストローム毎に約1より大きい帯電原子、より好ましくは約5オングストローム毎に約1より大きい帯電原子である。カチオン性物質の電荷密度が高い程、それと会合したカウンターイオンの濃度は高い。高濃度の適当なカウンターイオンを使用して金属複合体の沈殿を促進することができる。高い電荷密度のカチオン性ポリマーはカーボンのような活性粒子の通常の負電荷を吸着し、有意に反転させる能力を付与する。カチオン性物質は高いまたは低いpH環境下で流動電位またはゼータ電位計測器により測定して高い正電荷の表面を微孔性構造に常に付与する。
【0039】
十分に高い分子量のポリマーの使用は活性粒子のメソ孔およびミクロ孔の吸着機能に深刻な影響を与えることなく活性粒子の表面の処理を可能にする。カチオン性物質は約5000ダルトン以上、好ましくは100,000ダルトン、より好ましくは約400,000ダルトン以上の分子量を有し、さらに約5,000,000ダルトン以上であってよい。
【0040】
カチオン性物質には第四級アミン、第四級アミド、第四級アンモニウム塩、第四級イミド、ベンズアルコニウム化合物、ビグアニド、カチオン性アミノシリコン化合物、カチオン性セルロース誘導体、カチオン性スターチ、第四級ポリグリコールアミン縮合物、第四級コラーゲンポリペプチド、カチオン性キチン誘導体、カチオン性グアールガム;カチオン性メラミン−ホルムアルデヒド酸コロイド、無機処理シリカコロイドのようなコロイド;ポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂、カチオン性アクリルアミド、そのポリマーおよびコポリマー、これらの組合せなどがあるが、これらに限定されない。この用途に使用される帯電分子は単一帯電ユニットを有し、微孔性構造の少なくとも一部に付着することが
できる小分子である。カチオン性物質は好ましくはそれと会合したカウンターイオンを1個以上有し、それらは生物学的に活性な金属塩溶液にさらされると優先的にカチオン性表面付近の金属の沈殿を引き起こしてカチオン性金属沈殿複合体を生成する。
【0041】
アミンの例はピロール、エピクロロヒドリン誘導アミン、そのポリマーなどである。アミドの例は国際特許出願番号WO 01/07090に開示されているポリアミドなどである。第四
級アンモニウム塩の例はハロゲン化ジアリルジメチルアンモニウムのホモポリマー、エピクロロヒドリン誘導ポリ第四級アミンポリマー、ジアミンおよびジハロゲン化物から誘導される第四級アンモニウム塩、例えば米国特許第2,261,002号、第2,271,378号、第2,388,614号および第2,454,547号(これらはすべて参照により組み込まれる)に開示されているものであり、国際特許出願番号WO 97/23594(これもまた参照により組み込まれる)に開示されている臭化ポリヘキサメチレンジメチルアンモニウムなどである。カチオン性物質はそれ自体および/または活性粒子に化学的に結合し、吸着し、または架橋する。
【0042】
さらに、カチオン性物質として使用するのに適した他の物質にはジョージア州ノルクロスのバイオシールドテクノロジー社から入手できるBIOSHIELD(登録商標)がある。BIOSHIELD(登録商標)は約5重量%の塩化オクタデシルアミノジメチルトリメトキシシリルプロピルアンモニウムおよび3%未満のクロロプロピルトリメトキシシランを含有する有機シラン生成物である。使用することができる他の物質はマサチューセツ州チングズバロのサーファシン開発会社から入手できるSURFACINE(登録商標)である。SURFACINE(登録商標)はポリ(ヘキサメチレンビグアニド)(PHMB)を架橋剤の4,4'−メチレン−ビス−N,N−ジリシジルアニリン(MBGDA)と反応させてPHMBをポリマー表面に共有結合させることにより得られる三次元的網状重合体を含む。沃化銀形態の銀が網状構造に導入され、サブミクロンの大きさの粒子として捕捉される。この組合せは有効な殺生物剤であり、本発明で使用することができる。活性粒子に応じて、MBGDAはPHMBを微孔性構造と架橋させることができたり、できなかったりする。
【0043】
カチオン性物質は少なくとも一部の活性粒子の表面の少なくとも一部で金属複合体が沈殿するように生物学的に活性な金属塩溶液にさらされる。このためには生物学的に活性である金属が好ましい。このような生物学的に活性な金属には銀、銅、亜鉛、カドミウム、水銀、アンチモン、金、アルミニウム、白金、パラジウムおよびこれらの組合せがあるが、これらに限定されない。最も好ましい生物学的に活性な金属には銀および銅である。生物学的に活性な金属塩溶液は好ましくは金属とカチオン性物質のカウンターイオンが金属複合体の沈殿を促進する水性環境下で実質的に不溶性であるように選択される。好ましくは、金属は全組成物の約0.01重量%〜約2.0重量%の量で存在する。
【0044】
特に有用な微生物学的遮断強化剤は銀−アミン−ハロゲン化物複合体である。カチオン性アミンは好ましくは約400,000ダルトンの分子量を有するハロゲン化ジアリルジメチルアンモニウムのホモポリマーまたは同様の電荷密度および分子量を有する他の第四級アンモニウム塩である。本発明において有用な塩化ジアリルジメチルアンモニウムのホモポリマーはイリノイ州ネーパービルのナルコ化学薬品会社から商品名MERQUAT(登録商標)100で商業的に入手できる。塩化物カウンターイオンは臭化物または沃化物カウンターイオンと置換可能である。硝酸銀溶液と接触すると、微生物学的遮断が強化された濾材の微孔性構造の活性粒子の少なくとも一部で銀−アミン−ハロゲン化物複合体が沈殿する。
【0045】
活性粒子が活性炭を含む場合、カチオン性物質は好ましくは高い電荷密度および十分に高い分子量を有し、活性炭の負電荷の表面領域との強い引力および高い配位エネルギーを生じさせる。また、活性炭の帯電表面を使用して強化される遮断は生物学的に活性な金属のコロイドの存在下で活性炭の疎水性吸着機構により補完される。この疎水性機構は一般にNOMによる汚れの影響に対して抵抗力があり、実際に高いイオン強度の条件下でより効
果的である。酸素を豊富に含む化学的性質の炭素表面の未処理部分は正電荷の粒子を吸着し続ける負電荷を有する傾向がある。陽性、陰性および疎水性表面の組合せは小粒子が行き来するには殆んど乗り越えられない障壁をもたらす。炭素を微生物学的遮断強化剤で処理した後、活性粒子上の生物学的に活性な金属およびその会合したカウンターイオンの存在はX線蛍光を使用して検出することができる。
【0046】
微生物学的遮断が強化された濾材の製造法
本発明の微生物学的遮断が強化された濾材は当業者に知られている方法に従って製造することができる。このような方法には支持体上の活性粒子を押出、一次成形、スリップキャスティング、固定化する方法などがある。典型的な方法は米国特許第5,019,311号および第5,792,513号に開示されている。
【0047】
活性粒子は当業者に知られている手段、例えば吹付け塗装を使用してカチオン性物質で処理される。好ましくは、活性粒子は微生物学的遮断が強化された濾材の全重量の約0.5重量%〜約3重量%、より好ましくは約1重量%のカチオン性物質で被覆される。カチオン性物質が活性粒子の少なくとも一部に塗布されると、それらの粒子は生物学的に活性な金属塩にさらされる。金属塩の溶液は粒子中に浸透して活性粒子の表面の少なくとも一部で生物学的に活性な金属の沈殿を引き起こす。この塗膜と会合したカウンターイオンは加えた金属と反応してコロイド状粒子を生成するため、沈殿工程ではカチオン性塗膜に直接隣接する金属コロイドの大部分を正確に付着する。金属塩は処理した粒子に吹き付けられるか、または当業者に知られている方法を使用して塗布される。
【0048】
カチオン性物質および金属塩の溶液は好ましくはカチオン性物質と会合したカウンターイオンが処理した活性粒子のカチオン性表面にしっかりと引き付けられるように、カチオン性表面から遠く離れた位置での生物学的に活性な金属の制御されていない沈殿を引き起こす望ましくないイオンを除去するために殆んどイオンを含まない水で製造される。
【0049】
次に、所望の含水量まで過剰の水分が一般に加熱しながら、または真空下で粒子から除去される。好ましくは、その後で粒子が熱可塑性結合剤を使用して押出または一次成形される場合、含水量は約10%未満、より好ましくは約5%未満である。
【0050】
微生物学的遮断強化剤を活性粒子の少なくとも一部に塗布した後、活性粒子を所望の大きさに粉砕し、結合剤物質と強く混合して均質な混合物を生成してから活性粒子を固定化して必要な微孔性構造を有する所望の最終形態にする。結合剤物質の融点が活性粒子の融点より十分に低いために微生物学的遮断が強化された濾材を加熱して結合剤物質を活性化することができるが、その間に微孔性構造が溶融して多孔性を失わないように結合剤が選択される。結合剤粒子は好ましくは後で微孔性構造への変換により結合剤粒子が実質的にすべての活性粒子を閉じ込める、またはそれと結合するように活性粒子全体に十分均一に分配される。
【0051】
本発明において活性粒子を微孔性構造に融合させるのに有用な結合剤物質には潜在的に繊維、粉末または粒子形態の当該技術分野で知られている熱可塑性または熱硬化性物質がある。有用な結合剤物質にはポリオレフィン、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルスルフェート、ポリビニルホスフェート、ポリビニルアミン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオキシジアゾール、ポリトリアゾール、ポリカルボジイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリアリーレンオキシド、ポリエステル、ポリアリーレート、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ホルムアルデヒド−尿素、エチル−ビニルアセテートコポリマー、これらのコポリマーおよびブロック共重合体のような物質、並びにこれらの組合せがあるが、これらに限定されない。上記物質の変種および他の有用なポリマーにはヒドロキシ
ル、ハロゲン、低級アルキル基、低級アルコキシ基、単環式アリール基などのような基の置換体がある。
【0052】
本発明で有用な結合剤のより詳細なリストにはエンドキャップされたポリアセタール、例えばポリ(オキシメチレン)またはポリホルムアルデヒド、ポリ(トリクロロアセトアルデヒド)、ポリ(n−バレルアルデヒド)、ポリ(アセトアルデヒド)、およびポリ(プロピオンアルデヒド);アクリル酸ポリマー、例えばポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アクリル酸エチル)、およびポリ(メタクリル酸メチル);フルオロカーボンポリマー、例えばポリ(テトラフルオロエチレン)、ペルフルオロ化エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン)、およびポリ(フッ化ビニル);ポリアミド、例えば ポリ(6−アミノカプロン酸)またはポリ(ε−カプロラクタム)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)、およびポリ(11−アミノウンデカン酸);ポリアラミド、例えばポリ(イミノ−1,3−フェニレンイミノイソフタロイル)またはポリ(m−フェニレンイソフタルアミド);パリーレン、例えばポリ−2−キシリレン、およびポリ(クロロ−1−キシリレン);ポリアリールエーテル、例えばポリ(オキシ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)またはポリ(p−フェニレンオキシド);ポリアリ−ルスルホン、例えばポリ(オキシ−1,4−フェニレンスルホニル−1,4−フェニレンオキシ−1,4−フェニレンイソプロピリデン−1,4−フェニレン)、およびポリ(スルホニル−1,4−フェニレン−オキシ−1,4−フェニレンスルホニル4,4'−ビフェニレン);ポリカーボネート、例えばポリ−(ビスフェノールA)またはポリ(カルボニルジオキシ−1,4−フェニレンイソプロピリデン−1,4−フェニレン);ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(テトラメチレンテレフタレート)、およびポリ(シクロヘキシレン−1,4−ジメチレンテレフタレート)またはポリ(オキシメチレン−1,4−シクロヘキシレンメチレンオキシテレフタロイル);ポリアリールスルフィド、例えばポリ(p−フェニレンスルフィド)またはポリ(チオ−1,4−フェニレン);ポリイミド、例えばポリ(ピロメリチミド−1,4−フェニレン);ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(2−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(2−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、およびポリ(4−メチル−1−ペンテン);ビニルポリマー、例えばポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、およびポリ(塩化ビニル);ジエンポリマー、例えば 1,2−ポリ−1,3−ブタジエン、1,4−ポリ−1,3−ブタジエン、ポリイソプレン、およびポリクロロプレン;ポリスチレン;およびこれらのコポリマー、例えばアクリロニトリルブタジエン−スチレン(ABS)コポリマーが含まれる。有用なポリオレフィンにはポリエチレン、低密度の線状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(2−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(2−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などがある。
【0053】
他の潜在的に適用可能な物質にはポリマー、例えばポリスチレンおよびアクリロニトリル−スチレンコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、並びに他の非結晶性または非晶質ポリマーおよび構造体がある。
【0054】
好ましい結合剤物質にはポリエチレン、ポリ(エチレンビニルアセテート)、およびナイロンがある。結合剤として特に好ましいのはイリノイ州タスコラのエキスター化学薬品会社から商標名MICROTHENE(登録商標)Fで商業的に入手できるFN 510グレードの極微小ポリエチレンである。
【0055】
結合剤は約0.1ミクロン〜約250ミクロン、好ましくは約1ミクロン〜約100ミクロン、より好ましくは約5ミクロン〜約20ミクロンの平均粒度を有する。結合剤物質は活性粒子の軟化点より有意に低い軟化点を有するために微生物学的遮断が強化された濾材を加熱して結合剤物質を活性化することができるが、その間に微孔性構造が溶融して多孔性を失わ
ないのが好ましい。
【0056】
使用される結合剤物質の量は微孔性構造が押出、一次成形または他の方法の何れによって成形されるかに依存する。例えば、活性粒子が固体複合ブロックに押出または一次成形される場合、結合剤物質は好ましくは微生物学的遮断が強化された濾材の約15重量%〜約22重量%、より好ましくは約17重量%〜約19重量%である。活性粒子が例えば不織布のような支持体に固定化される場合、結合剤物質は好ましくは全組成物の約5重量%〜約20重量%、好ましくは約9重量%〜約15重量%の量で存在する。
【0057】
さらに粒子、繊維、ホイスカーまたは粉末形態の1種以上の添加剤を活性粒子と混合して他の汚染物の吸着または吸収を手助けし、あるいは微孔性構造の成形および微生物学的汚染物の遮断に関与することができる。有用な添加剤には金属粒子、活性アルミナ、活性炭、シリカ、ポリマー粉末および繊維、ガラスビーズまたは繊維、セルロース繊維、イオン交換樹脂、工業用樹脂、セラミックス、ゼオライト、珪藻土、活性ボーキサイト、フーラー土、硫酸カルシウム、他の吸着性または吸収性物質、あるいはこれらの組合せがあるが、これらに限定されない。添加剤はまた、特定の用途に応じて微生物学的遮断機能を付与するために化学的に処理することができる。このような添加剤は好ましくは濾過用途で使用される時に得られる微生物学的遮断が強化された濾材中の流量が実質的に阻害されないように十分な量で存在する。添加剤の量は濾過システムの特定の使用に依存する。
【0058】
別法として、最終の微孔性構造は粒子または繊維またはこのような混合物のスリップキャスティングまたは湿式成形により成形し、次に結合剤または粒子を互いに焼結させることができる。ある場合には、粒子は二成分繊維または低融点樹脂としてそれら独自の結合剤になる。ある場合には、結合剤は乾燥させる、または加熱する、または反応させると必要な結合を形成する水溶性または架橋性の樹脂または塩である。特定のホスフェート塩のような沈殿した結合剤だけでなく、化学結合剤もまた使用することができる。
【0059】
微生物学的遮断が強化された濾材を使用する濾過システム
本発明の微生物学的遮断が強化された濾材は固体複合ブロック、平板、螺旋またはプリーツシート、モノリスまたはキャンドルとして固定化された粒子状濾材を使用する従来の濾過システムに容易に組込むことができる。好ましくは、粒子状前置フィルターは微生物学的遮断が強化された濾材と共に使用され、微生物学的遮断が強化された濾材の上流側に位置し、微生物学的遮断が強化された濾材と流入液が接触する前にできるだけ多くの粒子状汚染物を流入液から除去する。
【実施例】
【0060】
次の実施例により本発明を詳しく説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
【0061】
ニューヨーク州イサカのポーラスマテリアル社から入手できる自動細管流ポロメーターを使用してポロメトリー研究を行なった。機器メーカーにより公開された標準法を使用して測定されるパラメーターには平均流孔径および気体(空気)透過性がある。風量を乾式および湿式の微生物学的遮断が強化された濾材において可変圧で測定した。
【0062】
微生物学的遮断が強化された濾材のバクテリアチャレンジを行なった。バクテリアチャレンジに対する反応を評価するためにアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)No.11775の大腸菌(Escherichia coli)の懸濁液を使用して行なった。MS2 バクテリオファージ ATTC No.15597−Biを使用してウイルスチャレンジに対する反応を評価した。試験した他の微生物にはブレバンディモナス・ディミニュータ(Brevundimonas diminuta) ATCC No.4335、BGとしても知られている枯草菌(Bacillus subtilis) ATCC No.9375がある。バ
クテリアおよびバクテリオファージを増殖するためにATCCの標準操作手順を使用し、微生物の懸濁液でチャレンジしたフィルターの流入液および流出液において微生物を調製し、定量するために当該技術分野でよく知られているような標準微生物学的手順を使用した。NSF 国際標準 53 シスト縮小試験プロトコルの変法を使用して個々のフィルターを各微生物について二重に試験した。このプロトコルは、汚れの蓄積をシミュレートする微粒子への促進暴露中におけるフィルターの性能を評価するように設計されている。フィルターを逆浸透/脱イオン水(RO/DI)でフラッシし、0.5〜1.0ガロン/分(gpm)の初期流量に較正した。濾材の平均フローパスはすべて約0.9ミクロン〜1.1ミクロンであった。
【0063】
試験の間、不適切に消毒した試験装置からのバックグラウンドの干渉がないことを確実にするために起動システムのフラッシング期間中の流入液および流出液サンプリング口から最初の試料を採取した。次に、フィルターを微生物の懸濁液でチャレンジし、試料を最小限の2Lチャレンジ溶液の後に採取し、サンプリングの前にチャレンジ水が全試験台を通過するのを確実にした。
必要に応じて流入液および流出液の全試料を連続して希釈し、三重に培養した。特定の場合、所定のデザインのカーボンブロックを幾つかの流量で試験して流量の変化に対する反応を確認した。
【0064】
強化された微生物学的遮断機能を有する活性カーボンブロックフィルターを次のようにして製造した。カルゴンカーボン社から入手した20ポンドの12×40メッシュの酸洗浄した瀝青炭を基材とする活性炭を脱イオン水中で3%MERQUAT(登録商標)100の溶液と穏やかに混合して完全に炭素粒子を被覆し、確実にMERQUAT(登録商標)100を炭素粒子の少なくとも一部に吸着させた。その後、1.0Lの脱イオン水中における硝酸銀、70gの結晶性硝酸銀の溶液をMERQUAT(登録商標)で処理した炭素に加えて炭素粒子の表面の少なくとも一部で銀を塩化銀コロイドの形態で沈殿させた。処理した炭素粒子を炭素粒子中に存在する水分が5%未満になるまで135℃で乾燥した。乾燥時間は約3〜約5時間であった。乾燥した炭素をダブルロールグラインダーで粉砕して約14重量%の−325メッシュのパンで80×325メッシュの大きさにし、約17重量%のFN510、低密度ポリエチレン結合剤物質と混合した。混合物を米国特許第5,019,311号に記載のようにして適当な熱、圧力および温度条件下で押出した。得られる様々な大きさのカーボンブロックフィルターを使用して当該技術分野でよく知られているようにしてホットメルト樹脂を使用する適当なエンドキャップを適用して水濾過システムを構成した。
【0065】
フィルターを最初のきれいな状態で、次に汚れが蓄積した後に元のきれいなフィルターで測定した流量と比較して流量が25%、50%および75%減少する間隔で微生物学的遮断機能について試験した。
【0066】
必要な流量減少を達成するために、“ノミナル”試験ダストチャレンジ水を使用した。ノミナル試験ダストは直径が約0〜5.0ミクロンの粒子を有し、この範囲の粒子が96重量%であり、2.5ミクロンより大きい粒子が20重量%〜40重量%であるケイ酸塩粉末である。必要な流量減少を達成してから、ノミナル試験ダストチャレンジを縮小し、フィルターを4.0Lの逆浸透/脱イオン水(RO/DI)でフラッシして流入液および流出液ラインから残留の試験ダストを除去した。次に、フィルターを上記のようにして微生物の懸濁液でチャレンジした。
【0067】
本発明の微生物学的遮断が強化された濾材の有効性を下記の表IおよびIIに示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
本発明の微生物学的遮断が強化された活性カーボンブロック濾材はブレバンディモナス・ディミニュータ、大腸菌および枯草菌のような大きい微生物に対して8logより大きい対数減少を示す。実際に、これらの微生物の遮断はすべての場合において試験プロトコルの感度を超えた。MS2侵入の結果から遮断の肉厚とレベルに明らかな相互関係はないことがわかる。このことは従来の機械的遮断機構がMS2遮断と無関係であることを示唆している。しかしながら、フィルターの対数遮断と空床接触時間(EBCT)には直接の因果関係がある。図1は最初のきれいなフィルターによるMS2対数減少とフィルターのEBCTの間に実質的な直線関係があり、約0.9〜約1.1ミクロンの平均フローパスを有する微生物学的遮断が強化された濾材でこのバクテリオファージの効果的な減少を達成するのに約6秒のEBCTが必要である拡散性遮断機構を示している。このため、より低い流量で作動するより大きいフィルターの方が高い流量で作動する小さいフィルターよりも効果的に機能する。
【0071】
本発明を特定の好ましい態様に関連して詳しく説明したが、前記説明に照らして多くの代替、変更および変形が当業者にとって自明であることは明らかである。したがって、添付した特許請求の範囲は本発明の範囲および精神の範囲に入るような代替、変更および変形を包含すると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約2ミクロン未満の平均フローパス(mean flow path)を有し、活性粒子の配列を含む微孔性構造;並びに
該微孔性構造の少なくとも一部に吸着された、中位ないし高い電荷密度と約5000ダルトンより大きい分子量を有するカチオン性物質、および直接カチオン性物質に近接し、さらに該微孔性構造の少なくとも一部にある生物学的に活性な金属を含む微生物学的遮断強化剤を含む濾材。
【請求項2】
活性粒子は活性炭、活性アルミナ、ゼオライト、珪藻土、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、チタン酸塩、骨炭、カルシウムヒドロキシアパタイト、酸化マンガン、酸化鉄、マグネシア、パーライト、タルク、ポリマー粒子、クレー、沃素化樹脂、イオン交換樹脂、セラミックスまたはこれらの組合せからなるものであり、さらに結合剤を含有する請求項1記載の濾材。
【請求項3】
微孔性構造は約1ミクロン以下の平均フローパスを有する請求項1記載の濾材。
【請求項4】
微生物学的に強化された遮断剤は、微孔性構造の少なくとも一部をそれと会合したカウンターイオンを有するカチオン性物質で処理し、次にカチオン性物質と会合したカウンターイオンの少なくとも一部で生物学的に活性な金属を沈殿させることにより生成する請求項1記載の濾材。
【請求項5】
カチオン性物質は約400,000ダルトン以上の分子量を有するジアリルジメチルアンモニウムクロライドのホモポリマーを含む請求項4記載の濾材。
【請求項6】
微孔性構造は活性粒子の固体複合ブロック、または固定化活性粒子の平板構造を含む請求項1記載の濾材。
【請求項7】
微孔性構造は活性粒子の押出、造型、スリップキャスティング、粉体塗装、湿式成形または乾式成形により成形される請求項1記載の濾材。
【請求項8】
流入液が濾材との空床接触時間が約12秒未満である時、該濾材による流入液中の微生物学的汚染物の対数減少は約6logより大きい請求項1記載の濾材。
【請求項9】
流入口および流出口を有するハウジング;並びに
流入口および流出口と流体で連絡する該ハウジング内に位置する濾材を含む濾過システムであって、
該濾材は活性炭、活性アルミナ、ゼオライト、珪藻土、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、チタン酸塩、骨炭、カルシウムヒドロキシアパタイト、酸化マンガン、酸化鉄、マグネシア、パーライト、タルク、ポリマー粒子、クレー、沃素化樹脂、イオン交換樹脂、セラミックスまたはこれらの組合せの活性粒子を含む約2ミクロン未満の平均フローパスを有する微孔性構造;並びに
高い電荷密度、約5000ダルトンより大きい分子量およびそれと会合したカウンターイオンを有し、さらに微孔性構造の少なくとも一部に吸着されたカチオン性物質を含み、生物学的に活性な金属がカチオン性物質と会合したカウンターイオンの少なくとも一部で沈殿する微生物学的遮断強化剤を含む濾過システムであり、
ハウジングを通って流れ、該濾材と接触する微生物学的に汚染された流入液は該ハウジングから流れる流出液中の微生物学的汚染物について少なくとも約4logの対数減少を示す上記濾過システム。
【請求項10】
微孔性構造の活性粒子は固体複合ブロック、または固定化活性粒子の平板構造である請求項9記載の濾過システム。
【請求項11】
微孔性構造の活性粒子はスリップキャスト成形、湿式成形または乾式成形される請求項9記載の濾過システム。
【請求項12】
約0.1ミクロン〜約5000ミクロンの平均粒度を有する活性粒子を用意し;
高い電荷密度および約5000ダルトンより大きい分子量を有するカチオン性物質を生物学的に活性な金属と組合せたものを含む微生物学的遮断強化剤で活性粒子を処理し;そして
処理した活性粒子を約2ミクロン未満の平均フローパスを有する微孔性構造に成形する工程を含む、強化された微生物学的遮断機能を有する濾材の製造法。
【請求項13】
約0.1ミクロン〜約5000ミクロンの平均粒度を有する活性粒子を用意し;
活性粒子を約2ミクロン未満の平均フローパスを有する微孔性構造に融合させ;そして
微孔性構造を、高い電荷密度および約5000ダルトンより大きい分子量を有するカチオン性物質を生物学的に活性な金属と組合せた微生物学的遮断強化剤で処理する工程を含む、強化された微生物学的遮断機能を有する濾材の製造法。
【請求項14】
活性粒子を用意する工程は、活性炭、活性アルミナ、ゼオライト、珪藻土、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、骨炭、カルシウムヒドロキシアパタイト、酸化マンガン、マグネシア、パーライト、タルク、ポリマー粒子、クレーまたはこれらの組合せを用意すること、およびさらに結合剤を加える工程を含有することを含む請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
処理工程は、微孔性構造の少なくとも一部または活性粒子を会合したカウンターイオンを有するカチオン性物質で被覆し;そして
生物学的に活性な金属の沈殿を少なくとも微孔性構造のまたは活性粒子の一部の上でカチオン性物質と会合したカウンターイオンの少なくとも一部と生じる工程を含む請求項12または13記載の方法。
【請求項16】
処理工程において、カチオン性物質はアミン、第四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム化合物、ビグアニド、アミノシリコン化合物、そのポリマーおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項12または13記載の方法。
【請求項17】
処理工程において、生物学的に活性な金属は銀、銅、亜鉛、カドミウム、水銀、アンチモン、金、アルミニウム、白金、パラジウムおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項12または13記載の方法。
【請求項18】
活性粒子を微孔性構造に成形するまたは融合させる工程は押出、スリップキャスティング、または活性粒子を平板構造に固定化することを含む請求項12または13記載の方法。
【請求項19】
活性粒子を含み、約2ミクロン未満の平均フローパスを有する微孔性構造;並びに
該微孔性構造の少なくとも一部に吸着された、中位ないし高い電荷密度および約5000ダルトンより大きい分子量を有するカチオン性物質を生物学的に活性な金属と組合せたものを含む微生物学的遮断強化剤
を含む濾材を用意し;
微生物学的に汚染された流体を濾材と約12秒以下の間接触させ;そして
微生物学的汚染物の対数減少が約4logより大きい流出液を得る
工程を含む微生物学的汚染物を流体から除去する方法。
【請求項20】
濾材を用意する工程において、微孔性構造は活性炭を含有する活性粒子を含む請求項19記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−279945(P2010−279945A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−161245(P2010−161245)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【分割の表示】特願2003−563962(P2003−563962)の分割
【原出願日】平成15年1月2日(2003.1.2)
【出願人】(507280608)ケーエックス・テクノロジーズ・エル・エル・シー (3)
【Fターム(参考)】