説明

微小凹部の作製方法、切断方法、及び微小凹部作製装置

【課題】 材料を限定することなく、表面粗さが平坦で高精度な凹部微細形状を作製する手法を提供する。
【解決手段】 被加工物12の表面に任意形状のマスクを設けておき、その被加工物12の表面へガスクラスターイオンビーム10を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工技術に関し、特に、微小凹部の作製や被加工物の切断に好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
微小凹部を作製する技術として、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように、エッチングによって溝を作成する技術や、例えば特許文献3に開示されているように、ホログラフイック露光法形状を製作し、表面凹凸による反射光の錯乱の損失を低減させるために、ブレーズド型の斜面をイオンビーム加工により平坦化させる技術は従来から知られている。また、例えば特許文献4に開示されているように、ICP(誘導結合型プラズマエッチング)技術と結晶異方性エッチングとを用いて作製する技術も知られている。
【0003】
また、この他にも、化学気相法でオーバーコートを施し、熱処理した後に湿式エッチングによって再び表面を削りながら最適な形状に仕上げる技術や、図19に示すような、リソグラフィーを用いる技術も知られている。
【特許文献1】特開2004−59329号公報
【特許文献2】特開2000−121819号公報
【特許文献3】特開平6−250007号公報
【特許文献4】特開2004−58265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のひとつである湿式エッチングでは、これらの技術を金属材料等の導電性を有する材料に適用することは困難であった。また、マスクの下側までもエッチングされてしまうため、より精密なパターンをつくる際には問題となっていた。
【0005】
更に、リソグラフィーでは、図19に示すように、露光(光源)110と、露光用のマスク111と、レジスト膜112とを用意する必要がある。レジスト膜112をつけた基材(被加工物)113は、現像工程114においてレジスト膜が任意形状になり、その形状に基づいて凹部が作製される。凹部が作製されたあとには、不要なレジスト膜を除去する除去工程115があり、その工程の後、116に示すように、微小凹部の作製が完了するという複雑な工程を要する。
【0006】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、材料を限定することなく、表面粗さが平坦で高精度な凹部微細形状を作製する手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様のひとつである微小凹部の作製方法は、被加工物の表面に微小な凹部を作製する方法であって、当該表面に任意形状のマスクを設け、当該マスクが設けられた当該表面へガスクラスターイオンビームを照射する、ことを特徴とするものであり、この特徴によって前述した課題を解決する。
【0008】
なお、上述した本発明に係る微小凹部の作製方法において、当該マスクの材料は、金属膜、酸化膜、樹脂膜、及びハイブリッド膜(複合膜)のうちの少なくともいずれかであるとしてもよい。
【0009】
なお、このとき、当該材料を、当該マスクと当該被加工物との選択比に応じて選択するようにしてもよい。
また、前述した本発明に係る微小凹部の作製方法において、当該マスクを構成する膜を当該表面で積層するようにしてもよい。
【0010】
なお、このとき、当該膜の積層数を、当該マスクと当該被加工物との選択比に応じて調整するようにしてもよい。
また、本発明の別の態様のひとつである切断方法は、被加工物を切断する方法であって、当該被加工物の表面に任意の幅の線状の開口部が作製されているマスクを設け、当該マスクの設けられた当該表面へガスクラスターイオンビームを照射する、ことを特徴とするものであり、この特徴によって前述した課題を解決する。
【0011】
また、本発明の更なる別の態様のひとつである切断方法は、被加工物を切断する方法であって、任意の幅の線状の開口部が作製されているアパーチャーを通過させて当該被加工物の表面へガスクラスターイオンビームを照射する、ことを特徴とするものであり、この特徴によって前述した課題を解決する。
【0012】
また、前述した本発明に係る微小凹部の作製方法において、当該被加工物と同一の材料に対してガスクラスターイオンビームを照射したときの除去量を予め計測しておき、当該計測の結果に基づいて算出される照射時間に従って当該表面へガスクラスターイオンビームを照射するようにしてもよい。
【0013】
また、前述した本発明に係る微小凹部の作製方法において、当該表面へガスクラスターイオンビームを照射したときに当該被加工物において検出されるイオン電流を計測しておき、後の加工における被加工物の表面へのガスクラスターイオンビームの照射時間を当該計測の結果に基づいて制御するようにしてもよい。
【0014】
また、前述した本発明に係る微小凹部の作製方法において、任意形状のマスクを有する当該被加工物の表面に対してガスクラスターイオンビームが常に垂直に照射されるように当該被加工物の姿勢を制御するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明の更なる別の態様のひとつである微小凹部作製装置は、被加工物の表面に微小な凹部を作製するための装置であって、任意形状のマスクを有する当該被加工物の表面へガスクラスターイオンビームを照射する照射手段と、当該表面における加工部分に対してガスクラスターイオンビームが常に垂直に照射されるように当該被加工物の姿勢を制御する制御手段と、を有することを特徴とするものであり、この特徴によって前述した課題を解決する。
【0016】
また、本発明の更なる別の態様のひとつである微小凹部の作製方法は、被加工物の表面に微小な凹部を作製する方法であって、被加工物の表面に任意形状のマスクの作製を行うと共に当該被加工物に改質部の作製を行い、当該マスク及び当該改質部の作製がなされた後の被加工物の表面へガスクラスターイオンビームを照射する、ことを特徴とするものであり、この特徴によって前述した課題を解決する。
【0017】
また、前述した本発明に係る微小凹部の作製方法において、非金属元素ガスを用いたソースガスから当該ガスクラスターイオンビームを生成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以上のようにすることにより、材料を限定せずに、形状精度の高く、表面粗さが数ナノメートルレベルの微小凹部を作製することができるようになるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明では、被加工物との衝突で壊れ、その際にクラスター構成原子又は分子と被加工物の構成原子又は分子とで多体衝突を生じさせることで、被加工物表面に対して水平な方向の運動が顕著になることにより表面の凸部が主に削られて原子サイズでの平坦な超精密研磨を可能とするガスクラスターイオンビームの加工原理を用い、任意形状のマスクを予め作製しておき、ガスクラスターイオンビームを照射することによって、材料を限定せずに、少ない工程で高精度な形状の微小凹部を作製することを可能とする。
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず図1について説明する。同図は、後述する本発明の各実施例において使用するガスクラスターイオンビーム加工装置の構成を示している。
【0021】
図1に示すガスクラスターイオンビーム加工装置は、ソース部1と差動排気部2とイオン化部3との3つのチャンバーを備えて構成されており、被加工物12の表面へガスクラスターイオンビームを照射する照射手段として機能する。
【0022】
差動排気部2には、ガスクラスターイオンビーム10を開閉するシャッター18を配している。差動排気部2のチャンバー内は、照射前の準備として、不純物ガス、水、酸素、及び窒素をできるだけ排除するために、不図示のポンプにて所望の真空度まで減圧される。
【0023】
ノズル4には、不図示のガスボンベより、0.6〜1.0MPa程度の高圧ガスが供給される。このガスは、例えば、アルゴンガス、酸素ガス、窒素ガス、SF6 (六フッ化硫黄)ガス、ヘリウムガスであり、この他にも、化合物の炭酸ガスあるいは2種類以上のガスを混合させたものも使用できる。なお、このうちヘリウムは、単独ではクラスターを生成できないので、他のガスと混合して用いることとなる。
【0024】
このような高圧ガスがノズル4から超音波で噴射する瞬間に断熱膨張によってクラスターが生成される。このクラスターはスキマー5を通過してビーム径が整えられる。このときのガスクラスターのビームはまだ中性子ビームであるが、差動排気部2を経由してイオン化部3に入ると、タングステンフィラメント6での熱電子との衝突によってイオン化される。このノズル4でのガスクラスター生成とタングステンフィラメント6の熱電子の衝突によるイオン化とが照射手段を少なくとも構成する。
【0025】
その後、ガスクラスターイオンビーム10は、加速電極7で加速される。このとき、ガスクラスターイオンビーム10の径は、数ミリメートル程度の大きさがあるため、グランド電極8の形状、及び第三電極9とグランド電極8との間の距離を調整して、ガスクラスターイオンビーム10の径を安定して絞ることのできる最適条件に設定する。
【0026】
その後、加速電極7を通過したガスクラスターイオンビーム10は、アパーチャー11を通過することによって、そのスポット径が所望のものとされる。
アパーチャー11と被加工物12との間にはニュートライザー19が設置されている。これは、樹脂やガラス等の絶縁体の被加工物ヘガスクラスターイオンビーム10を照射した場合に発生するチャージアップに起因する微細凹部形状の変形を防止するためのものである。
【0027】
アパーチャー11の先には被加工物12が配置される。被加工物12は、ガスクラスターイオンビーム10の入斜方向に対して垂直になるように配置する。なお、被加工物12は、回転移動が可能な回転ステージ13と、図1の紙面に対して長手方向に前後する移動が可能なZ軸ステージ16と、紙面に対して前後方向に移動可能なX軸ステージ14と、X軸ステージ14の下に固設されていてX軸ステージ14に対して垂直なY軸方向に位置調整ができるY軸ステージ15とからなる載置台上に搭載されている。この載置台は、ブラケットを含む本装置のベース17上に搭載されている。
【0028】
X軸ステージ14には、不図示のサーボモータあるいはステッピングモータが搭載されており、制御手段としての制御部100にてX軸ステージ14を自在に制御することが可能である。
【0029】
ガスクラスターイオンビーム10の高さ位置についてはY軸ステージ15で調整する。Y軸ステージ15は不図示のネジにて手動調整が可能である。また、サーボモータあるいはステッピングモータで自動駆動させて微調整を行うこともできる。
【0030】
制御部100は、算出手段としての算出部103と、記憶部104とを有しており、制御プログラムの作成を行う。この制御プログラムによって、各ステージを駆動させることができるので、被加工物12の任意の位置へガスクラスターイオンビーム10を照射することが可能となる。
【0031】
この他、図1の装置には、干渉計101及び三次元形状測定器102が接続されているが、これらは必要に応じて用いられる。
次に、金属膜、酸化膜、樹脂膜、ハイブリッド膜(複合膜)等を用いて、被加工物である被加工物表面に任意の線幅や形状を作製するためのマスクを作製し、このマスクを利用して微小凹部形状を作製する手順について説明する。
【0032】
まず、図2Aにおける(a)に示すように、被加工物21表面に任意形状のマスク20を作製する。その後、(b)に示すように、例えばレーザー加工22によって、マスク20から不要な部分を除去する。図2Bは、このようにしてマスク20から不要な部分が除去された様子を示している。なお、図2Bにおいては、20aはレーザー加工により除去された部分を示している。このようにして、任意形状の微小凹部を作製するためのマスク20が作製される。
【0033】
次に、図2Aの(c)に示すように、所定のマスク20が作製されている被加工物21を図1に示したガスクラスターイオンビーム装置内の被加工物12として設置し、そして、図2Aの(c)に示すように、所定の照射条件にてガスクラスターイオンビーム23を被加工物12へ照射し、所望の凹部溝深さを得る。なお、このときのガスクラスターイオンビーム23の照射条件は、図3に示すように、マスク20の基礎データと、ワーク(被加工物21)の材料の基礎データベースと、マスク20除去の基礎データとを利用して、微小凹部の仕様(具体的には、(1)ワーク(被加工物21)の材料、(2)溝深さ、(3)溝幅)に基づいて演算装置でなされる演算結果に従って決定される。
【0034】
以上のようにして、図2Aの(d)に24として示す微小凹部形状が完成する。なお、この後に、図2Aの(e)に示すように、微小凹部を根元25から切断すれば、26として示す微細ピラーが得られる。
【0035】
以下、図1に示したクラスターイオンビーム加工装置を使用して微小凹部を作製する各種の実施例について説明する。
【実施例1】
【0036】
本実施例では、任意形状のマスクを有した被加工物表面にガスクラスターイオンビームを垂直に照射することによって、微細な凹部を作製する。なお、被加工物表面が複雑な形状等を持つ場合によっては、ガスクラスターイオンビームの照射方向は被加工表面に対して、必ずしも垂直に照射されるとは限られない。
【0037】
なお、ここでは、石英基板表面にアスペクト比(図2A(d)の微小凹部24の幅と深さとの比)5の微小凹部(深さ0.1μm)を作製した例を説明する。但し、被加工物としては、金属、半導体、ガラス、結晶材料、生体材料、樹脂材料などでも実施可能である。
【0038】
まず、石英基板(被加工物21)表面に所望の微細凹部を図2Aのようにして作製するためのマスク20として、予め算出した基礎データをもとにして、白金の蒸着膜を選択した。但し、マスク20についても、酸化膜、金属膜、樹脂膜、ハイブリッド膜などを代わりに使用することも可能である。
【0039】
被加工物21であるガラス(石英)基板とマスク20の材料に用いた白金の蒸着膜との選択比(マスクの厚さに対する被加工物の加工深さ)は10である。従って、所望の深さ0.1μmを得るために、白金の蒸着膜の膜厚は10nmとした。ここで、選択比はマスク20の材料により異なるので、マスク20の材料を選択比に応じて選択することにより、マスク20の厚さを変化させることなく所望の深さの凹形状を被加工物21に作製することができる。
【0040】
次に、図2Aの(b)のように、レーザー加工22によってマスク20から凹形状の開口部を20nm除去し、任意形状のマスク20を被加工物21の表面に作製した。
そして、この被加工物21を図1に示すガスクラスターイオンビーム照射装置に被加工物12として取り付け、図2Aの(c)に示すように、その表面にガスクラスターイオンビーム23を垂直に照射した。
【0041】
なお、この照射の際には、従来の基礎データをもとに作製したデータベースを用いて最適な照射条件を演算により算出し、その算出結果を採用した。その算出結果によれば、今回の実験に最適な照射ドーズ量は、3.0×1016ions/cm2 であった。
【0042】
なお、ソースガス(照射するガス)としては、ヘリウム95%とSF6 ガス5%とを混合した混合ガスを用いた。また、アパーチャー11の径は、直径φ1mmを使用した。
この結果、図2Aの(d)に示すような微小凹部24が得られた。
【0043】
照射後の被加工物21の底面を原子間力顕微鏡で測定した結果を図4に示す。この測定の結果、表面粗さRaは0.67nm(測定範囲:4.7μm)であった。
このように、表面粗さが極めて平坦な微小凹部を作製することができた。
【0044】
以上のように、本実施例では、任意形状のマスクを有した被加工物の表面にガスクラスターイオンビームを垂直に照射することにより、表面粗さが平坦な微細な凹部を作製することができる。
【実施例2】
【0045】
本実施例では、多数の膜を重ね合わせることによって選択比の微調整を行う手法を説明する。
マスクとして膜を作製する場合、通常は金属膜、酸化膜、樹脂膜、ハイブリッド膜(複合膜)を単層にして用いる。
【0046】
しかし、所望の選択比を得るためには、予め測定した基礎データを元にした計算によって膜厚を得たとしても、実際にはその膜厚の作製が不可能な場合がある。
そこで、このような場合には、図5に示すように、金属膜27、酸化膜28、樹脂膜29、ハイブリッド膜(複合膜)30を、被加工物31の表面に積層して微調整を行う。なお、これらの膜の積み重ねの順番は、この限りでなくてもよい。また、これらの膜のうちのいくつかのみを選択して積み重ねてもよい。
【0047】
このように、金属膜、酸化膜、樹脂膜、ハイブリッド膜(複合膜)を積み重ねることによって、単層のマスクでは作製できない深さの制御が可能になる。
【実施例3】
【0048】
本実施例では、任意の幅の線状の開口部を有するマスク、若しくは切断幅の形状の開口部を有するアパーチャーを作製し、表面にガスクラスターイオンビームを照射することで被加工物を切断する手法を説明する。なお、ここでは、厚さ19μmの石英基板を0.4mm角のチップ形状に切断するために、石英基板表面に任意形状のマスクを作製したのちガスクラスターイオンビームを用いて切断した場合の具体例を説明する。
【0049】
まず、図6の(a)に示すように、固定物34上の被加工物33として石英基板を用い、その表面にマスク32としての白金の蒸着膜を作製した。なお、被加工物33としては、金属、半導体、ガラス、結晶材料、生体材料、樹脂材料などでも実施可能であり、また、マスク32として、酸化膜、金属膜、樹脂膜、ハイブリッド膜(複合膜)などを使用することも可能である。
【0050】
次に、図6の(b)に示すように、マスク32である白金の蒸着膜を0.4mm角残し、切断時の取りしろ部分として0.1μmの線幅をレーザー加工35により除去した。なお、切断時の取りしろ幅はこの数値に限定されるものではない。
【0051】
このようにして表面に線状の開口部を有するマスク32を作製したのち、この被加工物33を図1に示すガスクラスターイオンビーム照射装置に被加工物12として取り付けた。そして、図6の(c)に示すように、その表面にガスクラスターイオンビーム36を照射した。
【0052】
なお、この照射の際には、従来の基礎データをもとに作製したデータベースを用いて最適な照射条件を演算により算出し、その算出結果を採用した。その算出結果によれば、19μmの厚さの石英基板を切断するための照射ドーズ量としては、5.0×1017ions/cm2 であった。
【0053】
なお、ソースガスとしては、ヘリウム95%とSF6 ガス5%とを混合した混合ガスを用いた。
この照射により、図6(d)に示すように、0.4mm角のチップ状に切断された石英基板である被加工物37が得られた。その後、固定物34から外すことによりチップ38が得られた。
【0054】
また、図1に示すガスクラスターイオンビーム加工装置のアパーチャー11についての、切断加工用に好適な形状を図7に示す。
図7に示した形状の線状開口部を有するアパーチャーを用いてガスクラスターイオンビーム10を照射すると、この切断幅40のアパーチャー形状39を通過したガスクラスターイオンビーム10のみが図6の被加工物33に作用するので、照射ドーズ量を制御することにより任意形状の切断加工が可能となる。
【0055】
以上のように、本実施例では、ガスクラスターイオンビーム加工を用いて切断を行うことにより、ナノメータレベルの表面粗さと形状精度を得ることができる。また、切断時の取りしろ幅を小さくすることができるので、基板からチップを効率的に取り出すことが可能となる。
【実施例4】
【0056】
本実施例では、マスクを設ける被加工物と同じ材料へガスクラスターイオンビームを照射したときの除去量を予め計測しておき、その計測結果に基づいて、被加工物ヘのガスクラスターイオンビームの照射時間を算出し、その照射時間に従って被加工物ヘガスクラスターイオンビームを照射することによる加工の手法を説明する。
【0057】
なお、本実施例においては、被加工物としてガラス(BK7ガラス)を用いる場合に、その被加工物と同じ材質のガラスに対して照射ドーズ量を変えながらガスクラスターイオンビームを照射し、単位時間あたりのスパッタリングの深さを除去量として算出した例を示す。なお、ここでは、被加工物として、ガラス(BE7)を用いたが、その代わりに、金属、半導体、ガラス、結晶材料、生体材料、樹脂材料などでも実施可能でありこれに限定されるものではない。
【0058】
まず、φ20mmのガラス(BK7)を被加工物12として図1に示すガスクラスターイオンビーム照射装置に取り付けた。このときには、ソースガスとして、ヘリウム95%とSF6 ガス5%とを混合した混合ガスを用い、アパーチャー11の径は、直径φ1mmとした。
【0059】
そして、このとき、照射ドーズ量を、1.0×1015〜5.0×1015ions/cm2 まで、1.0×1015ずつ5段階に変化させた。
そして、加工痕5個の照射を終了した後に、被加工物12を図1のイオンビーム照射装置から取り出し、それぞれの加工痕のスパッタリングの深さを干渉計101で測定した。このときの干渉計101での測定結果をプロットしたグラフを図8に示す。
【0060】
この図8を参照すると明らかなように、照射ドーズ量毎に異なる加工痕深さになって、その加工痕深さの変化は線形であり、スパッタリングの深さが相似倍的に照射ドーズ量の大小により変化していた。
【0061】
照射ドーズ量は、単位面積あたりのイオン量(ions/cm2 )であるので、スパッタリングの深さを深くするには、イオン量を多くするために長い照射時間が必要となる。
次に、照射ドーズ量と加工痕深さとの関係の測定結果に基づいて、任意の凹部溝深さを得るための照射条件を設定する。
【0062】
このようにして得られた照射ドーズ量を変化させた場合の結果を、材料別にまとめたものが、図9のグラフである。これを基礎データとして、微小凹部の作製に必要な照射条件を設定する。
【0063】
例えば、図9に示す材料1を被加工物として用い、凹部の深さ50nmの形状を得る場合を考える。ここでソースガスとしてアルゴンを用いると、その照射ドーズ量は2.0×1017ions/cm2 である。そこで、図9における材料1の照射条件からアルゴンガスの照射ドーズ量に対応するスパッタリングの深さを求めると、単位時間に打とうする時間の照射を行うことにより微細凹部の深さを50nmとすることができ、凹部の溝深さを制御することができる。
【0064】
また、任意形状を得るためのマスクを被加工物の表面に作製する場合には、図10に示すような、マスクの選択比の基礎データを用いる。
図10は、被加工物として石英基板を用い、マスクとして白金の蒸着膜を選択した場合の例を示している。この場合の選択比は10であるので、0.1μmの溝深さを得るためには、石英基板に、10nmの白金の蒸着膜を用いてマスクを作製すればよい。そして、前述の実施例と同様、不要な部分をレーザ加工などで除去した後、ガスクラスターイオンビームを照射することで、溝深さが0.1μmの微細凹部形状を作製することができる。
【0065】
以上のように、本実施例によれば、予め取得しておいた基礎データに基づいて照射条件を算出することにより、微細な凹部の溝深さを制御することができる。
【実施例5】
【0066】
本実施例では、導電性を有している被加工物の表面にマスクを作製し、ガスクラスターイオンビームを照射する加工の手法を説明する。なお、ここでは、被加工物として金の蒸着膜を用いることとし、それと同じ材料である蒸着膜へ、照射ドーズ量を変えながらガスクラスターイオンビームを照射して単位時間あたりの除去量を算出する例を示す。
【0067】
なお、ここでは、被加工物として金の蒸着膜を用いたが、金属、半導体、ガラス、結晶材料、生体材料、樹脂材料などでも実施可能でありこれに限定されるものではない。
本実施例では、図1に示す構成を有するガスクラスターイオンビーム加工装置における被加工物12の設置部分に、不図示のイオン電流測定の装置を設けたものを使用する。
【0068】
まず、はじめに、φ20mmの金の蒸着膜を、図1に示すガスクラスターイオンビーム照射装置の被加工物12として取り付けた。なお、ソースガスにはアルゴンを用い、アパーチャー11の径は直径φ1mmとし、照射ドーズ量は1.0×1016ions/cm2 、2.0×1016ions/cm2 、4.0×1016ions/cm2 、6.0×1016ions/cm2 、8.0×1016ions/cm2 、1.0×1017ions/cm2 とした。
【0069】
このときに被加工物12において検出されるイオン電流値を測定すると、200nAであった。
また、照射後の単一加工痕の加工深さを、干渉計101でそれぞれ測定した結果、図11に示すように、照射条件ごとに深さが異なっていた。この結果をプロットすると、図12に示すように、照射ドーズ量に対する加工痕深さは線形であることが確認できた。つまり、照射ドーズ量の大小によって除去形状が相似倍的に変化することが判明した。
【0070】
ここで、照射ドーズ量とイオン電流値との間には下記の式が成り立つ。
(照射時間)=(照射ドーズ量)×(照射面積)×(電気素量e)÷(イオン電流値)
従って、検出されるイオン電流値を変化させることにより、ガスクラスターイオンビームの照射時間を制御することができる。例えば、照射条件を調整して、イオン電流値を200nAから100nAへと半減させた場合には、200nAのときと同じ加工痕深さを得るためには、加工時間を2倍とすればよい。
【0071】
また、ガスクラスターイオンビームの照射と並行してイオン電流値を常時監視するようにすれば、放電などの異常事態の発生を認識することが可能となる。
以上のように、本実施例によれば、イオン電流を測定するようにし、その電流値に基づいて所望の凹部溝深さを得るためのガスクラスターイオンビームの照射量(すなわち照射時間)を制御することにより、予め測定した基礎データより、任意の微小凹部深さを高精度に作製することができる。
【実施例6】
【0072】
本実施例では、最適なドーズ照射量を算出するための照射条件の基礎データが被加工物の材料別に蓄積されているデータベースを用いてガスクラスターイオンビーム加工を行うというものである。
【0073】
本実施例においては、図1における干渉計101、三次元形状測定器102、記憶部104、及び算出部103でデータベースを構成する。ここで、記憶部104には、干渉計101を用いて測定した、材料毎の照射条件を変化させた場合のスパッタリングの深さ等の基礎データを予め蓄積させておく。この基礎データをもとに、算出部103で照射時間が算出される。
【0074】
まず、三次元形状測定器102を用いて被加工物12全体の形状を測定する。そして、この測定により得られた、当該形状を現しているX、Y、Zの座標データは、被加工物12の表面に対し、垂直にガスクラスターイオンビームを照射できるように姿勢制御するために用いられる。
【0075】
このときのスパッタリングの深さは干渉計101で測定する。以降は、これらの測定部(干渉計101及び三次元形状測定器102)、記憶部104、算出部103を用いて、前述した実施例と同様にして最適な照射ドーズ量を設定する。
【0076】
以上のように、本実施例によれば、予め測定した基礎データに基づいて照射ドーズ量が算出されるので、任意の微小凹部深さを高精度に作製することができる。
【実施例7】
【0077】
本実施例では、微細凹部を作製する工程において、任意形状のマスクを有する被加工物表面に対し、ガスクラスターイオンビームが常に垂直に照射されるように被加工物の姿勢を保つというものである。
【0078】
本実施例では、ガスクラスターイオンビーム加工装置は、図1に示した構成のものを使用するが、その中に、図13に示す、被加工物12を姿勢制御可能な構造を含んでいる。
図13A及び図13Bを用いてこの姿勢制御を説明する。
【0079】
図13Aは、姿勢制御を行う前の被加工物の姿勢を示しており、ガスクラスターイオンビームの照射方向に対し、底面が垂直になるように設置した被加工物45に対するA部へのガスクラスターイオンビーム照射41とB部へのガスクラスターイオンビーム照射42との様子を示している。なお、図中、46は被加工物45を固定するための固定部である。
【0080】
同図に示すように、A部へのガスクラスターイオンビームの照射角度43が垂直となるように被加工物45を配置しても、B部へのガスクラスターイオンビームの照射角度44は被加工物45に対して斜めになってしまう。
【0081】
そこで、姿勢制御機構を図1に示したガスクラスターイオンビーム加工装置に装備する。この機構は、X軸ステージ14、Y軸ステージ15、Z軸ステージ16、回転ステージ13とからなる。これらの可動ステージの動作は制御部100によって制御される。
【0082】
被加工物45のB部へガスクラスターイオンビームを照射する際には、制御部100は、図13Bに示すように、回転ステージ13を動作させて固定部46を角度48だけ回転させると共に、X軸ステージ14を矢印49の方向へ、更に、Z軸ステージ16を矢印50の方向へ移動させる。これらの位置制御により、B部へのガスクラスターイオンビームの照射角度47は、被加工物45表面に対し垂直となる。
【0083】
ここで、回転ステージ13及びX軸ステージ14を移動させるだけでなく、Z軸ステージ16をも移動させるのは、アパーチャー11と被加工物45との間の距離(照射距離)の変化を無くし、被加工物表面の各部での品質を均質に保つためである。
【0084】
以上のように、この姿勢制御機構は、被加工物45の表面における加工部分に対してガスクラスターイオンビームが常に垂直に照射されるように被加工物45の姿勢を制御する制御手段として機能する。
【0085】
以下、本実施例に係る加工方法の具体的な手順を説明する。
まず、被加工物12を図1のガスクラスターイオンビーム照射装置に設置し、その形状を三次元測定器102で測定する。
【0086】
次に、被加工物12の傾斜面、シリンドリカル形状の球面、あるいは曲面においても、ガスクラスターイオンビームを常に垂直に照射するため、三次元測定器102での測定結果に基づき、回転ステージ13を用いて被加工物12の角度を傾斜させると共に、X軸ステージ14及びZ軸ステージ16、更には必要に応じてY軸ステージ15を、手動で、若しくは不図示のサーボモータやステッピングモータなどを用いることによる自動で、駆動させて被加工物12の位置を制御する。
【0087】
なお、図13A及び図13Bに示した被加工物45は凹形状のものであったが、本実施例の姿勢制御機構を用いることで、凸形状の被加工物45であっても姿勢制御を行うことができる。このような形状の被加工物の例として、石英表面で溝深さ0.1μmの凹部を作製する例について、図14を参照しながら説明する。
【0088】
まず、図14の(a)に示すように、被加工物52である石英表面に、膜厚10nmの白金蒸着膜(選択比10)でマスク51を作製する。そして、任意形状を作製するため、図14の(b)に示すように、マスク51の余分な部分をレーザー加工53等によって除去する。
【0089】
次に、この被加工物52を、図1のガスクラスターイオンビーム照射装置に被加工物12として設置する。なお、ソースガスとしては、ヘリウム95%とSF6 ガス5%とを混合した混合ガスを用いる。
【0090】
ここで、図14の(c)に示すように、ガスクラスターイオンビーム54を照射した。このとき、ガスクラスターイオンビーム54が被加工物52の表面のいずれの部分においても垂直に照射されるように、被加工物52の角度55の調整を行った。なお、角度の調整は、図13A及び図13Bを用いて説明したようにして行った。
【0091】
この角度55の調整を実施した部分の拡大図を図15に示す。同図は、図14の(c)において、マスク51を有する被加工物52表面へ、ガスクラスターイオンビーム54が垂直になるように姿勢制御を行っている様子を示している。
【0092】
このように、姿勢制御の機構を用いることによって、図14の56に示すように、凸形状表面に微小凹部が作製される。
なお、ここでは、被加工物として石英を用いる例を説明したが、被加工物としては、金属、半導体、ガラス、結晶材料、生体材料、樹脂材料などでも実施可能でありこれに限定されるものではない。
【0093】
以上のように、本実施例によれば、被加工物に対するX軸、Y軸、Z軸、及び回転軸、の移動制御を行うことにより、斜面、球面、あるいは、シリンドリカル形状の表面に対して常に垂直且つ常に一定の距離を保ちながらガスクラスターイオンビームを照射することができるので、球面の表面にも微細な凹部を精度良く作製できる。
【実施例8】
【0094】
本実施例では、微細パターンマスクの作製と基材(被加工物)への表面近傍の改質を行うことによりスパッタレートを制御してガスクラスターイオンビームのスパッタを行う加工の手法を説明する。
【0095】
図16に本手法を得るための加工フローを示す。
まず、図16の(a)に示すように、マスク59を施された被加工物(基材)61に対し、超短パルスレーザー57を集光レンズ58で集光し、微細パターン描画による任意形状のマスク59の作製と被加工物(基材)への微小な改質部60の作製とを行う。
【0096】
その後、図16の(b)に示すように、ガスクラスターイオンビーム62を照射し、マ図16の(c)に示すように、マスク59の除去と被加工物(基材)61への微細パターンの転写とを行う。
【0097】
なお、本実施例では被加工物(基材)61としてガラスを用いたが、金属、半導体、ガラス、結晶材料、生体材料、樹脂材料などでも実施可能でありこれに限定されるものではない。また、マスク59の材料は本実施例では酸化膜を用いたが、酸化膜、金属膜、樹脂膜、ハイブリツト膜(複合膜)などこれに限定されるものではない。
【0098】
また、マスクヘの微細パターン作製と被加工物(基材)への表面近傍の改質を行う方法として、本実施例では超短パルスレーザー加工を用いた。超短パルスレーザー加工は様々な材料へのアブレーションと改質が可能なレーザー加工である。同様の効果を得るものとしては、収束イオンビームとイオン注入を利用する方法、紫外線レーザー用いたパターン加工と改質作製法などがあり、これに限定されるものではない。
【0099】
超短パルスレーザーはパルス幅10fs〜100ps程度とするが望ましく、繰返し周期は1Hz〜10MHz程度とすることが望ましい。また、超短パルスレーザーの波長は材料の吸収波長に依存せず、限定されるものではないが、吸収の必要エネルギーを鑑みると、100nm〜2000nm程度の波長を利用することが望ましい。本実施例においては、パルスの繰り返し周波数を1kHz、レーザー波長800nm、パルス幅は150fsの超短パルスレーザーを用いた。
【0100】
超短パルスレーザーにより微細パターンの刻印と改質部作製を行った加工結果を図17の(a)に示す。同図において、マスク材料63と被加工物(基材)64にはエネルギーに対する加工閾値差があり、マスク63の部分はアブレーションにより除去され、被加工物(基材)64には多光子吸収過程による表面近傍での改質部(密度増加、結合状態の解離)65が得られる。
【0101】
また、ガスクラスターイオンビームを照射したときの加工結果を図17の(b)に示す。同図のマスク63と改質部65と被加工物(基材)64とではガスクラスターイオンビーム62よる除去能率差がある。ここで、除去能率がマスク63<被加工物(基材)64<改質部65である場合には、深さ方向へのアスペクト比の高い構造物が作製される。つまり、マスク、被加工物(基材)、改質状態を制御することにより様々なアスヘクト比をもつ構造物を作製することができる。
【0102】
以上のように、本実施例によれば、マスクヘの微細パターン作製と被加工物(基材)への表面近傍の改質とをまず行い、その後にガスクラスターイオンビームを照射することにより、深さ方向のアスペクト比の高い構造物を得ることができる。
【実施例9】
【0103】
本実施例では、ソースガスとして非金属元素(ハロゲン)ガスを用いることによって除去能率を向上させる加工の手法について説明する。
本実施例では、図1に示すガスクラスターイオンビーム加工装置において、ソース部1の内部に配置されているノズル4に、不図示のガスボンベから0.6〜1.0MPa程度の高圧ガスを供給する。このガスとして、フッ素(F)ガスや塩素(Cl)などの非金属元素(ハロゲン)を用いる。
【0104】
希ガス単体と、希ガスに非金属元素を加えた場合のスパッタリングの深さを比較するために、石英基板を用意し、図1に示すガスクラスターイオンビーム装置に被加工物12として取り付け、ガス種を変えてガスクラスターイオンビームを照射する実験を行った。
【0105】
このとき、1枚目の被加工物12には、希ガスとしてアルゴン(Ar)単体を照射し、2枚目の被加工物には、ヘリウム95%とSF6 ガス5%とを混合した混合ガスを照射した。なお、このときの照射ドーズ量は、両方とも、5.0×1016ions/cm2 とし、アパーチャー11の径はφ1mmとした。
【0106】
そして、このガスクラスターイオンビームの照射を終了した後に、被加工物12をガスクラスターイオンビーム装置から取り出し、干渉計101にて、スパッタリングの深さを測定した。その結果を図18に示す。
【0107】
同図に示すように、Arを照射した場合のスパッタリングの深さが100nmであったのに対し、上述の混合ガスを照射した場合には、2000nmであった。つまり、希ガスに非金属元素を加えた混合ガスでは、希ガス単体(Ar)に比べ、20倍の高いスパッタリング深さが得られた。
【0108】
このように、ソースガスの種類を変えることによって、スパッタリングの深さ(除去量)を変化させることができるので、ソースガスの種類を選択することにより加工効率を向上させることができる。
【0109】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】ガスクラスターイオンビーム加工装置の構成を示す図である。
【図2A】微小凹部の作製の様子を示す図である。
【図2B】マスクの作製の様子を示す図である。
【図3】ガスクラスターイオンビームの照射条件の決定の流れを示す図である。
【図4】作製された微小凹部についての原子間力顕微鏡での測定結果を示す図である。
【図5】膜の積層によって作製されたマスクの例を示す概略図である。
【図6】マスク使用による被加工物の切断の手順を示す図である。
【図7】切断加工に使用するアパーチャーの形状を示す概略図である。
【図8】BK7ガラスにおける照射ドーズ量とスパッタリングの深さとの関係をグラフで示した図である。
【図9】照射ドーズ量とスパッタリングの深さとの関係のグラフを材料別に示した図である。
【図10】石英基板に白金の蒸着膜のマスクを作製した選択比を表しているグラフである。
【図11】金の蒸着膜に対する加工痕の加工深さについての干渉計での測定結果を示す図である。
【図12】金の蒸着膜における照射ドーズ量とスパッタリングの深さとの関係をグラフで示した図である。
【図13A】姿勢制御を行う前の被加工物の姿勢を説明する図である。
【図13B】姿勢制御機構の動作を説明する図である。
【図14】姿勢制御機構を用いての微小凹部の作製の手順を説明する図である。
【図15】図14における微小凹部の形成部分の拡大図である。
【図16】表面改質を行う微小凹部の作製の手順を説明する図である。
【図17】表面改質を行って微小凹部を作製する様子を示す図である。
【図18】ソースガスの種類とスパッタリングの深さとの関係を示す図である。
【図19】リソグラフィーによる加工を説明する図である。
【符号の説明】
【0111】
1 ソース部
2 差動排気部
3 イオン化部
4 ノズル
5 スキマー
6 タングステンフィラメント
7 加速電極
8 グランド電極
9 第三電極
10、23、36、54、62 ガスクラスターイオンビーム
11 アパーチャー
12、21、31、33、45、52、61、64 被加工物
13 回転ステージ
14 X軸ステージ
15 Y軸ステージ
16 Z軸ステージ
17 ベース
18 シャッター
19 ニュートライザー
20、32、51、59、63 マスク
20a レーザー加工による除去部分
22、35、53 レーザー加工
24、56 微小凹部形状
25 根元
26 微細ピラー
27 金属膜
28 酸化膜
29 樹脂膜
30 ハイブリッド膜(複合膜)
34、46 固定部
37 切断された被加工物
38 チップ
39 アパーチャー形状
40 切断幅
41 A部へのガスクラスターイオンビーム
42 B部へのガスクラスターイオンビーム
43 A部の照射角度
44、47 B部の照射角度
48 回転ステージの回転角度
49 X軸ステージの移動方向
50 Z軸ステージの移動方向
55 被加工物の角度
57 長短パルスレーザー
58 集光レンズ
60、65 改質部
100 制御部
101 干渉計
102 三次元形状測定器
103 算出部
104 記憶装置
110 露光(光源)
111 マスク
112 レジスト膜
113 基材(被加工物)
114 現像工程
115 除去工程
116 微小凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の表面に微小な凹部を作製する方法であって、
前記表面に任意形状のマスクを設け、
前記マスクが設けられた前記表面へガスクラスターイオンビームを照射する、
ことを特徴とする微小凹部の作製方法。
【請求項2】
前記マスクの材料は、金属膜、酸化膜、樹脂膜、及びハイブリッド膜(複合膜)のうちの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の微小凹部の作製方法。
【請求項3】
前記材料を、前記マスクと前記被加工物との選択比に応じて選択することを特徴とする請求項2に記載の微小凹部の作製方法。
【請求項4】
前記マスクを構成する膜を前記表面で積層することを特徴とする請求項1に記載の微小凹部の作製方法。
【請求項5】
前記膜の積層数を、前記マスクと前記被加工物との選択比に応じて調整することを特徴とする請求項4に記載の微小凹部の作製方法。
【請求項6】
被加工物を切断する方法であって、
前記被加工物の表面に任意の幅の線状の開口部が作製されているマスクを設け、
前記マスクの設けられた前記表面へガスクラスターイオンビームを照射する、
ことを特徴とする切断方法。
【請求項7】
被加工物を切断する方法であって、
任意の幅の線状の開口部が作製されているアパーチャーを通過させて前記被加工物の表面へガスクラスターイオンビームを照射する、
ことを特徴とする切断方法。
【請求項8】
請求項1に記載の作製方法であって、
前記被加工物と同一の材料に対してガスクラスターイオンビームを照射したときの除去量を予め計測しておき、
前記計測の結果に基づいて算出される照射時間に従って前記表面へガスクラスターイオンビームを照射する、
ことを特徴とする微小凹部の作製方法。
【請求項9】
請求項1に記載の作製方法であって、
前記表面へガスクラスターイオンビームを照射したときに前記被加工物において検出されるイオン電流を計測しておき、
後の加工における被加工物の表面へのガスクラスターイオンビームの照射時間を前記計測の結果に基づいて制御する、
ことを特徴とする微小凹部の作製方法。
【請求項10】
請求項1に記載の作製方法であって、
任意形状のマスクを有する前記被加工物の表面に対してガスクラスターイオンビームが常に垂直に照射されるように当該被加工物の姿勢を制御する、
ことを特徴とする微小凹部の作製方法。
【請求項11】
被加工物の表面に微小な凹部を作製するための装置であって、
任意形状のマスクを有する前記被加工物の表面へガスクラスターイオンビームを照射する照射手段と、
前記表面における加工部分に対してガスクラスターイオンビームが常に垂直に照射されるように当該被加工物の姿勢を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする微小凹部作製装置。
【請求項12】
被加工物の表面に微小な凹部を作製する方法であって、
被加工物の表面に任意形状のマスクの作製を行うと共に当該被加工物に改質部の作製を行い、
前記マスク及び前記改質部の作製がなされた後の被加工物の表面へガスクラスターイオンビームを照射する、
ことを特徴とする微小凹部の作製方法。
【請求項13】
非金属元素ガスを用いたソースガスから前記ガスクラスターイオンビームを生成することを特徴とする請求項1に記載の微小凹部の作製方法。


【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図9】
image rotate

【図14】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2006−326633(P2006−326633A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153140(P2005−153140)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(598067717)
【出願人】(502100345)
【Fターム(参考)】