説明

微小多孔質の電解質層を有するガスセンサ

本発明は、水性測定媒体中に溶解したガス検体を測定するための電気化学センサ、前記センサを作製する方法、及びこの電気化学センサを使用して水性測定媒体中に溶解したガス検体を測定する方法に関する。センサの電解質層は、多孔性の非膨潤性骨格構造をともに形成する少なくとも一つの粒子材料及び少なくとも一つのバインダを含み、この骨格構造中の孔は、液体電解質を受け取る、又は液体電解質を含むように意図されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性測定媒体中に溶解したガス検体を測定するための電気化学センサ、その電気化学センサを製造する方法、更にはその電気化学センサを使用して水性測定媒体中に溶解したガス検体を測定する方法に関する。本発明は、具体的には、気体浸透性且つイオン不浸透性のカバー層によって水性測定媒体から空間的に分離された電気化学センサの反応空間に関する。
【背景技術】
【0002】
体液を分析するための測定システムは、臨床的に関連する分析法の重要な構成要素である。このシステムの特に注目すべき点は、ポイントオブケアパラメータとして知られているものが調べられる、検体の迅速で正確な測定である。一方では専門医の分析室へサンプルを移送する必要性がなく、他方では分析室の時間的尺度を考慮に入れる必要性がないので、ポイントオブケア検査には、ほんの短時間の後に結果が入手可能であるという利点がある。ポイントオブケア検査は、主として集中治療室及び麻酔法において行なわれるが、外来患者診療室でも行なわれる。これらの「緊急パラメータ」には、血液ガス値(pCO2、pO2)、pH、電解質値(例えばNa+、K+、Ca2+、Cl-)及び特定の代謝物質値も含まれる。
【0003】
多目的センサを有する検査ストリップ又はその他の医療分析器は、例えばこのタイプのポイントオブケア検査を行なうのに使用され得て、したがって人手によって実施する労力が最小限になる。ポイントオブケア用途向けの測定器は、一般にほぼ完全に自動化されており、試料の準備から検査の結果まで、ユーザ側に必要とされるのは少数回の簡単な介在だけである。それらは、測定するべきパラメータの一回限りの測定及び繰り返し測定のどちらに対しても実施され得る。
【0004】
電気化学センサは、例えば、全血若しくは他の水性媒体中に溶解した酸素又は二酸化炭素などのガス検体を測定するのに特に適当であると判明している。電気化学センサによって、電極のうち少なくとも一つは測定するべき検体が電気化学的に変更される(例えば酸化又は低減される)作用電極である、二つ以上の電極による検体の測定が可能になる。
【0005】
水性測定媒体中の酸素又はその分圧(pO2)の測定は、例えば少なくとも一つの作用電極及び少なくとも一つの対電極を含む電流測定センサを使用して実行され得る。クラーク型電極では、気体浸透性であって主としてイオン及び液体に対して不浸透性の膜が、サンプル空間を内部電解質空間から一般に空間的に分離する。内部電解質空間は、作用電極及び対電極を含む電解質溶液で充填される。
【0006】
液体若しくは気体中の二酸化炭素又はその分圧(pCO2)の測定は、例えば少なくとも一つの測定電極及び少なくとも一つの照合電極を備える電位差測定センサを使用して実行され得る。セバリングハウス型電極では、CO2分圧の測定値はpH測定値に換算される。これには、気体浸透性であって主としてイオン不浸透性の膜によって水性測定媒体から空間的に分離された反応空間が一般には必要となる。測定するべき試料のそれぞれのpCO2値によって求められるpHは、この反応空間の中で求められる。反応空間(内部電解質)内の緩衝液の所定の温度及び濃度では、反応空間のpHは、もっぱら試料のCO2分圧次第である。pHは、広範囲のやり方、例えばイオン選択性ガラス電極又はイオン感応電界効果トランジスタ若しくはイオン選択電界効果トランジスタ(ISFET)を使用する電気化学的測定の連鎖、pH感応固体系(例えば貴金属/貴金属酸化物系)、酸化還元系(キンヒドロン電極)などによる電位差測定で検出することができる。
【0007】
電気化学センサを設置する際の重要な基準は、その耐用寿命である。この点に関して、センサが動作に入る前の長い保存寿命及び使用中の長い耐用寿命の両方を達成する必要がある。長い保存寿命を保証するために、電気化学センサ内に配置された電極は、乾燥して、すなわち実質的に水分なしで、また、センサが動作に入る直前まで液体の内部電解質と接触させずに保存するべきである。少なくとも500回の測定又は3週間から4週間の使用中の耐用寿命を達成するために、センサの様々な層が互いに適合することも必要である。例えば膨潤の結果として、それらが互いから切り離されたり、亀裂を形成したりしてはならない。
【0008】
ポイントオブケア検査用の電気化学センサを設置する際の更に重要な基準は、その寸法である。緊急パラメータを測定するのに入手可能な試料は、一般に少量(例えば100μl以下)である。少量の試料を用いて多数のパラメータを測定することになる場合、個別電極は、できるだけ小さくする必要があり、できるだけ近づけて配置しなければならない。
【0009】
欧州特許第0805973B1号は、試料中の気体の濃度を測定するためのデバイスと、方法も開示している。使用されるデバイスは、作用電極、対電極すなわち照合電極、電解質層及び気体浸透性膜を備える電気化学センサであり、電解質層は、光形成された(photoformed)タンパク質のゼラチンから成る。マイナスに分極した金製の作用電極(カソード)が、銀製の対電極(アノード)から生じるプラスに帯電した銀イオンによって早期に汚染されるのを避けるために、ゼラチン層によって電気的に接触する二つの電極間の距離は、少なくとも1mmでなければならない。
【0010】
米国特許第5,387,329号は、平面状の電気化学的酸素センサを説明しており、これでは、その膨張値が乾燥体積の2倍未満である膨潤性ポリマーが吸湿性電解質として用いられ、この場合、水分及びカチオンによって浸透性になる親水性電解質層を形成する。この文献の中で好ましいとされる膨潤性ポリマーは、スルホン酸化テトラフロオルエチレンポリマーのナフィオン(登録商標)であり、それらのリチウムを帯電したスルホン酸塩群は、ポリマーにイオノマー的特性を与え、リチウムイオンを銀イオンと交換する。銀の対電極を有する電流測定の酸素センサでは、これによって、銀イオンの作用電極への移動の実効速度が低下する。
【0011】
欧州特許第0805973B1号及び米国特許第5,387,329号で用いられる電解質層には、いくつかの欠点がある。したがって、例えば、膨潤性ポリマー(例えば欧州特許第0805973B1号における光形成されたタンパク質のゼラチン)の非常に薄い(約1μm)層の製造は非常に高くつく。
【0012】
さらに、非常に薄い層及び非常に小さい電解質体積の場合、酸素センサの動作中に放出された銀イオンが、ほどなく妨害信号をもたらす。一方、多層構成においてより厚い(約10〜50μm)膨潤層が用いられる場合、層構成における漏れ孔の形成が助長される。これによって、センサの所望の長寿命を達成するのが困難になる。
【0013】
また、水分を含む薄いポリマー層の主な欠点に、二つの電極間に電界が印加された後、妨害銀イオンがポリマーを通って直通経路上に移動し、したがって比較的短い動作期間の後に作用電極に達して汚染するという事実がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の基をなす目的は、ガス検体を測定するための電気化学センサを提供し、それによって従来技術の欠点を少なくとも部分的に解消することである。具体的には、センサを長期間保存することによってセンサの働きを失うことなくセンサを長期間保存することが可能になるはずであり、また、動作に入った後のセンサが長い使用中の耐用寿命を有するはずである。さらに、センサを簡単に、費用対効果を高く製造することが可能になるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、この目的は、水性測定媒体中に溶解したガス検体を測定するための電気化学センサであって、
(a)作用電極及び対電極と、
(b)作用電極と対電極との間に配置された電解質層と、
(c)作用電極、対電極及び電解質層を水性測定媒体から空間的に分離するように働く気体浸透性カバー層とを備える電気化学センサにおいて、
電解質層が、多孔性の非膨潤性骨格構造をともに形成する少なくとも一つの粒子材料及び少なくとも一つのバインダを含み、非膨潤性骨格構造の孔が、液体電解質を吸収するように設けられる、又は液体電解質を含むことを特徴とする電気化学センサによって達成された。
【0016】
本出願の中で用いられる「水性媒体中に溶解したガス検体を測定する」などの表現は、水性媒体中に溶解したガス成分の存在又は濃度を測定すること及び水性媒体中に溶解したガス成分の気体分圧を測定することの両方を含む。
【0017】
本発明によれば、非膨潤性骨格構造の孔は、少なくとも一つの粒子材料の粒子間に配置される。純粋なポリマー層又はゼラチン若しくはゲルの層と比較して、このようにして形成された孔の迷路により、電極間を動くイオンが及ぶ必要がある距離が増加し、したがってセンサの耐用寿命が向上する。
【0018】
本発明の電気化学センサで用いられる粒子材料は、本来無機又は有機のものでよく、具体的には密な無機材料又は密な(非可塑化)有機ポリマーを含んでよい。適切な無機の粒子材料は、管理された多孔質ガラス(CPG)、シリカゲル、ケイ酸塩及びアルモシリケート(アルミノケイ酸塩とも称される)を含み、これらは、主としてテクトケイ酸塩及びフィロケイ酸塩から成る群から選択される。本発明によって粒子材料として用いられ得る有機ポリマーは、例えば、ポリスチレンの微粒子、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリル及びその共重合体も含むが、これらには限定されない。
【0019】
粒子材料として、自然に発生するアルモシリケート、又は合成アルモシリケート、より好ましくは合成アルモシリケートを用いると、本発明の範囲内では有利であると判明した。本発明の範囲内で用いられる用語「合成アルモシリケート」は、完全な合成アルモシリケート及び自然に発生するアルモシリケートの人工的(例えば化学的)変更によって得られるアルモシリケートの両方を含む。自然に発生するアルモシリケート又は合成アルモシリケートの例には、長石、マイカ、ムライト、珪線石及びゼオライトが含まれるが、これらには限定されない。
【0020】
本発明による電気化学センサの好ましい変形形態では、粒子材料は、チャンネル、具体的には約0.1nmと約10nmとの間の直径を有するチャンネルを有し、任意選択でイオン交換体群を有する。より好ましい実施形態では、粒子材料は、ゼオライト、例えばフォージャサイト、菱沸石、多面体を含むモルデン沸石又はソーダ沸石、チャンネルが横断するアニオンの3次元ネットワークを形成する、隅が連結された[(Al,Si)O4]四面体の層又は連鎖である。ゼオライトのタイプ次第で、チャンネルは、約0.5nmから約5.0nmまで、好ましくは約0.7nmから約2.0nmまでの直径を有し、チャンネルの内面及び外面に、イオン交換体群、具体的にはカチオン交換体群を含む。内部チャンネル構造及びイオン交換体群を有するゼオライトの使用が有利であり、具体的にはクラーク型電流測定電極において特に有利であると判明した。特に好ましい実施形態では、本発明によるセンサは、フォージャサイト、最も好ましくはフォージャサイト-Naを粒子材料として含む。
【0021】
ゼオライトがチャンネルを含む構成であることの結果として、ゼオライトは、液体電解質と接触することができる大きな内面を有する。一方、電解質液中に含まれる適切なサイズのイオンがゼオライトのチャンネルを通って移動することができるので、望ましくないイオンの量が低減され得る。したがって、銀含有対電極を含む電気化学センサでは、センサが動作に入るときに、対電極から銀イオンが放出されて作用電極の方へ移動し、作用電極を不動態化したとき銀元素として作用電極上に堆積するという特有の問題がある。類似のプロセスが、電極材として用いられる他の金属、例えば鉛でも生じ、鉛が電解質液と接触すると、妨害カチオンとして同様に作用する恐れがある鉛イオンを放出することがある。その電解質層が好ましくは少なくとも一つのゼオライトを含む本発明による電気化学センサを使用すると、対電極と作用電極との間の実効距離を増加させることが可能になり、したがって作用電極の急速なパッシベーションのリスクを低下することができ、センサの耐用寿命が改善する。
【0022】
一方、ゼオライトのアニオンの骨格構造により、ゼオライトは、イオン交換体として作用することも可能である。したがって、例えば、対電極から放出されて作用電極の方へ移動する銀イオンは、ゼオライトによって吸収され、適切な、それほど危険でないカチオン、例えばナトリウムイオンと交換され得て、その結果として、電解質中の自由銀イオンの量が低減し、作用電極のパッシベーションが抑制され得て、このこともセンサの耐用寿命を改善する。
【0023】
あらゆる所与の場合において、必要に応じて粒子材料の粒子のサイズを変化させることができる。本発明の範囲内では、粒子材料の粒子は、通常、約0.1μmから約10μmまでの平均粒径を有し、約1.0μmから約5.0μmまでの平均粒径が好ましい。いずれにせよ、多孔性材料の粒径は、常に電解質層の厚さ未満にするべきであり、電解質層の厚さは、約5μmから約30μmまでの範囲内にあって、好ましくは約10μmから約20μmまでの範囲内にある。
【0024】
電解質層は、粒子材料に加えて、さらなる成分として少なくとも一つのバインダを含む。好ましくは、バインダは有機バインダであり、例えば架橋又は非架橋の、直線状有機ポリマー又は分岐有機ポリマーである。より好ましくは、電解質層中に含まれる有機バインダは、好ましくはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、PVC共重合体、二成分のエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂系及びUV硬化可能なポリアクリレートモノマー混合物から成る群から選択された任意の所望の架橋又は非架橋の合成ポリマーを含む。特に好ましくは、用いられる架橋又は非架橋の合成ポリマーはフェノール樹脂であり、具体的には架橋フェノール樹脂である。
【0025】
好ましくは非膨潤性であるバインダの量は、バインダが無機又は有機の粒子材料の粒子を結合して多孔性の非膨潤性骨格構造を形成するほどである。これは、バインダが粒子材料の粒子間の中間空間を完全には充填せず、したがって約500nmから約5μmまで、好ましくは約1μmから約3μmまでの直径の孔を有する非膨潤性骨格構造を形成することを意味する。本発明によれば、多孔性の非膨潤性骨格構造は、多孔性の非膨潤性骨格構造の乾燥重量に基づいて、約20重量%から約50重量%まで、好ましくは約26重量%から約44重量%までの、液体の相対的吸収を引き起こす。
【0026】
必要なバインダの量は、用いられる粒子材料のタイプ及び量並びに所望の孔径次第で変化させることができ、当業者によりいかなる所与の状況の必要条件にも適合させることができる。図1A及び図1Bは、それぞれ本発明によるセンサの電解質層の電子顕微鏡写真を示し、粒子材料の層粒子がバインダを用いて結合されて多孔性の非膨潤性骨格構造を形成する。多孔性の非膨潤性骨格構造は、一様な孔の分布を示し、一般に約一つから三つの粒子幅でチェーン状に結合されたユニットから成る。
【0027】
本発明によれば、電解質層は、少なくとも一つの粒子材料及び少なくとも一つのバインダに加えて、一つ又は複数の補助物を更に含むことができる。この目的に用いることができる補助物は、具体的には合成セルロースの派生物、例えばアルキルセルロースを含み、用語「アルキル」は、1個から6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐の炭化水素ラジカルを表す。本発明の意味での好ましいアルキルセルロースは、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、エチルメチルセルロース及びプロピルメチルセルロースから成る群から選択される。液体電解質を有する構造体の面の湿潤性(wetting ability)は、これらのアルキルセルロースを小量添加することにより改善することができる。さらなる適切な補助物は、例えば消泡剤を含む。
【0028】
本発明による電気化学センサにおいて作用電極と対電極との間の導電性電解質接続を保証する液体電解質は、任意の所望の電解質、例えば電圧を印加したときイオンの導かれた移動の結果として電荷担体を移送する水性電解質でよい。本発明の範囲内では、液体電解質がアルカリ金属塩化物及びpH緩衝液系を含むのは好ましいことである。
【0029】
ナトリウム及び/又は塩化カリウムは、具体的には本発明による電気化学センサにおいて液体電解質の導電性塩成分として働くアルカリ金属塩化物として用いられ得る。電解質の主成分としてナトリウム及び/又は塩化カリウムを用いると、銀含有対電極を使用したとき対電極から放出される銀イオンが、塩化銀の沈殿の結果として作用電極の方へ移動するのが付加的に防止され、その結果、作用電極上の銀元素の堆積が低減され得るという利点がある。
【0030】
液体電解質溶液に用いることができるpH緩衝液系は、専門家分野で既知の、液体媒体中のpHを安定させる働きをする任意の所望の緩衝液系を含む。例示的pH緩衝液系は、重炭酸塩緩衝液、リン酸緩衝液などを含むが、これらに限定されない。
【0031】
好ましい実施形態では、液体電解質は、アルカリ金属塩化物及びpH緩衝液系に加えて、少なくとも一つの水溶性ポリマーを更に含む。用いられる水溶性ポリマーは任意の所望のポリマーでよく、上に説明された液体電解質溶液中に導入されたとき液体の粘性を増加させ、したがって、放出されたイオン、例えば放出された銀イオンの移動速度を低下させるのにも役立つことができる。本発明の範囲内で用いることができる水溶性ポリマーは、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、並びに水溶性ポリマーとして好ましくはポリエチレングリコール及び/又はポリビニルピロリドンを含む電解質液であるアルキルポリグリコシドである。このタイプの電解質液は、酸素を測定するためのセンサで特に有利に用いることができる。
【0032】
代替実施形態では、電解質液は、アルカリ金属塩化物及びpH緩衝液系に加えて、所望の反応、例えば所定の基体の水和を促進する酵素を更に含むことができる。本発明の範囲内で特に好まれる酵素は炭酸脱水酵素であり、これは、水分が存在する状態で、二酸化炭素の水和が炭酸水素塩になる際に触媒の働きをする。このタイプの電解質は、二酸化炭素の測定が内部電解質のpH測定値に基づくものであるセバリングハウス型電極向けに特に適切である。
【0033】
本発明の範囲内では、電気化学センサが動作に入る前に、電解質層が液体電解質の不揮発性成分を含むことが更に好ましい。この目的のために、液体電解質の揮発性成分の蒸発を可能にするために、25℃を上回る温度、例えば65℃の温度で、数時間の期間、例えば48時間以上、例えば軽打することによって電解質液の上澄みを除去した後に、好ましくは液体電解質であるこれらの成分を含む液体を、例えば非膨潤性骨格構造の孔の中に滴下することによって導入し、且つ保存することができる。このようにして、乾燥ステップの後、電気化学センサの電解質層が、例えばアルカリ金属塩化物である電解質の不揮発性成分、pH緩衝液系の成分、及びとりわけ水溶性ポリマー又は酵素を含むさらなる物質も含むのを保証することが可能である。
【0034】
或いは、多孔性の非膨潤性骨格構造が形成される前にさえ、少なくとも一つの粒子材料、少なくとも一つのバインダ、及び適切であればさらなる物質を含み、例えばペーストの形である混合物へ、不揮発性電解質成分を含む液体を添加することができる。このようにして得られた混合物は、次に硬化させることができ、したがって多孔性の非膨潤性骨格構造を形成し、その孔は液体電解質の不揮発性成分を含む。この手順には、前述の方法に対して、すなわち既存の骨格構造の孔の中へ液体電解質を導入する方法に対して、本発明によるセンサの多孔性の非膨潤性骨格構造の中に、液体電解質の様々な成分を、より容易に、より均一に、より高い再現可能性で導入することができるという利点がある。
【0035】
気体浸透性カバー層により、(通常の条件下で)気体の検体を電気化学センサに浸透させることが可能になるが、このカバー層は、水性測定媒体のイオン及び/又は不揮発性成分が入るのを防止するように特に意図されている。好ましい実施形態では、気体浸透性カバー層は、したがって水性測定媒体のイオン及び不揮発性成分に対して不浸透性である。
【0036】
気体浸透性カバー層は、このタイプの目的向けと考えることができる任意の所望の材料で作製することができる。好ましくは、気体浸透性カバー層は、少なくとも一つのポリマー材料、シロキサン、ポリスルホン及び/又は特に有利であると判明しているポリテトラフルオロエチレンを含む。本発明の範囲内で有利である、用いられるシロキサンは、例えばDELO-GUM(登録商標)SI480という商品名で市販されているもの(ドイツのデロ(DELO)社製)などのオキシム架橋シリコーンゴムであってよい。適切なポリスルホンには、具体的には比較的長いアルキル鎖、例えばC16アルキル鎖を有するポリスルホンが含まれる。このタイプの製品は、BIOBLANDという商品名(米国のアナトレース(ANATRACE)社製)で知られている。
【0037】
気体浸透性カバー層は、別のやり方で作製することができる。好ましい方法は、電気化学センサに取り付けられている作製済みのカバー層を使用することにある。この膜は、この点に関して任意の所望のプロセスによってセンサに固定することができ、接着結合又はレーザ溶接が好ましいと見なされることになる。
【0038】
或いは、適切な気体浸透性ポリマー又はプレポリマーの溶液が電気化学センサに加えられ、続いて乾燥されるという点において、in situで気体浸透性カバー膜を生成することが可能である。ポリマーは、好ましくは、ポリマー又はプレポリマーの好ましくは希釈液を、噴霧、浸漬被覆、散布又はスクリーンプリントすることによって電気化学センサに加えられるが、本出願はこれらの方法に限定されない。用いられる溶剤は、好ましくは、有機溶剤、特に100℃以下の沸点を有する有機溶剤であり、当業者なら、基本的に、用いられるポリマー若しくはプレポリマーの特性及び/又は塗布プロセス次第で適切な溶剤を選択することができる。
【0039】
このようにして得られ、本発明による電気化学センサにおいて用いられる気体浸透性カバー層は、通常、約5.0μmから約30μmまで、好ましくは約8.0μmから約15μmまでの厚さを有する。
【0040】
本発明による電気化学センサの作用電極及び対電極は、本発明の目的に適当な任意の所望の材料で作製することができる。作用電極は、金又は酸化ルテニウムをベースとする複合材料、電流測定で酸素を測定するためのセンサ向けに特に適切な金をベースとする複合材料、及びセバリングハウスの原理によりpH電極によって二酸化炭素を電位差測定するためのセンサ向けに特に適切な酸化ルテニウムをベースとする複合材料で好ましくは作製される。反対に、本発明によるセンサの対電極は、銀又は銀/塩化銀ベースの複合材料で好ましくは作製される。この点に関して、銀ベースの複合材料は、酸素を測定するためのセンサにおける対電極向けに特に有利であると判明しているのに対し、銀/塩化銀ベースの複合材料は、好ましくは二酸化炭素を測定するためのセンサにおける対電極向けに用いることができる。専門家分野で一般に用いられるものなどの「作用電極」及び「測定電極」という用語、或いは「対電極」及び「照合電極」という用語は、主に電流測定の電極又は電位差測定の電極のいずれかの場合において、本出願の範囲内で同義的に用いられる。
【0041】
電極マトリクスを作製することになる導電性電極材料は、例えばペーストの形で与えることができ、金属又は金属酸化物に加えて、作用電極又は測定電極の場合及び対電極又は照合電極の場合の両方において、好ましくは非導電性ポリマーのバインダを含み、ビニル樹脂が特に好ましい。
【0042】
好ましくは、本発明による電気化学センサは、測定する検体の複数の測定のために具現化される。このことは、センサが、多くの試料を測定するのに使用される用途、或いは、持続的な、すなわち連続的又は不連続的な、検体の存在及び/又は量の監視が、比較的長い期間、例えば1日以上、具体的には1週間以上行なわれることになる用途において特に望ましい。好ましい実施形態では、したがって、本発明は測定セルとして実施される電気化学センサを提供し、この測定セルは、ガス検体を含むサンプル液を通し、例えば分析器の一部分である。
【0043】
本発明による電気化学センサは、任意の所望の発生源から生じ得る水性測定媒体中に溶解したガス検体を測定するために使用することができる。好ましい実施形態では、この電気化学センサは、全血、血漿、血清、リンパ液、胆汁流体、脳脊髄液、細胞外の組織液、尿、及び腺分泌、例えば唾液又は汗も含むがこれらに限定されない体液(全血、血漿、及び血清が特に好ましいと見なされている)に溶解したガス検体を測定するのに役立つ。質的及び/又は量的に測定されることになるガス検体は、好ましくは酸素及び二酸化炭素から選択される。
【0044】
さらなる態様では、本発明は、本発明による電気化学センサを製造する方法に関し、この方法は、
(a)少なくとも一つの粒子材料を用意するステップと、
(b)粒子材料を、少なくとも一つのバインダと混合し、適切であればさらなる物質と混合するステップと、
(c)ステップ(b)で得られた混合物をペーストに加工するステップと、
(d)ステップ(c)で得られたペーストを支持体に加えるステップと、
(e)支持体に加えられたペーストを硬化させて、多孔性の非膨潤性骨格構造を形成するステップと、
(f)ステップ(e)で得られた多孔性の非膨潤性骨格構造を電解質層として含み、作用電極、対電極及び気体浸透性カバー層も含む電気化学センサを作製するステップとを含む。
【0045】
本発明による電気化学センサを製造するために、少なくとも一つの無機又は有機の粒子材料が少なくとも一つの無機又は有機のバインダと混合され、これらは上に述べたようにそれぞれが定義され、また適切であれば、さらなる物質と混合され且つ加工されてペーストを形成する。ペーストを支持体に加え、続いてペーストを硬化した後、本発明による電気化学センサで電解質層として使用することができる多孔性の非膨潤性骨格構造が形成される。電気化学センサは、多孔性電解質層に加えて、作用電極、対電極及び気体浸透性カバー層を含む。
【0046】
上に説明された方法を実行するために、ペーストは、例えばスクリーンプリント法又はドクター法によって支持体に加えることができる。したがって、本発明の一実施形態では、支持体は、ペーストが加えられる前にさえ、例えば作用電極及び対電極の両方を備えることができる。或いは、しかし、一旦ペーストが加えられて硬化されただけで、支持体に作用電極及び対電極を加えることが同様に可能である。本発明による製造方法は、スクリーンプリントにより、したがって薄く且つ規定された層の厚さで支持体にペースト及び電極の両方を加えることができるので、この点で有利であると判明した。
【0047】
本発明による方法は、好ましくは、不揮発性電解質成分、例えば液体電解質を含む液体を多孔性の非膨潤性骨格構造の中に導入し、続いてその揮発性成分を蒸発させるステップを更に含む。これらの不揮発性成分から、本発明によるセンサにおける作用電極と対電極との間の電気的導電接続を保証する液体電解質を形成することが可能である。この場合、電気化学センサの説明に関して述べられたプロセスなどを用いて、非膨潤性骨格構造の孔の中にこの液体を導入することができる。
【0048】
或いは、多孔性の非膨潤性骨格構造の形成の前にさえ、不揮発性電解質成分を含む液体を、少なくとも一つの粒子材料とともに少なくとも一つのバインダ及び適切であればさらなる物質を含む混合物の中に導入することが可能であり、その結果として、混合物の硬化後に得られる多孔性の非膨潤性骨格構造において、電解質の固体成分の一様な分布を簡単なやり方で達成することが可能である。本発明の好ましい実施形態では、本発明による方法は、ペーストの中に液体を導入するステップを含み、具体的にはペーストが適切な支持体に加えられる以前にペーストに液体を添加することが可能である。この実施形態は、好ましくはバインダと混合できる溶剤の中に不揮発性電解質成分を含む液体を添加するステップを含む。この溶剤は、例えばグリコールでよく、例えば、適切であれば20%(v/v)以内の水分を含むことができるエチレングリコール、プロピレングリコール、又はそれらの混合物である。
【0049】
好ましい実施形態では、本発明による電気化学センサを動作させることは、適切な手段を用いた電気化学センサの事前の活性化を更に含む。活性化は、センサを、例えば適切な液体、具体的には水性液体と接触させることにより引き起こすことができる。このプロセスを通じて、センサを活性化させる働きをする液体、具体的には水分が、例えば等温蒸留の結果として電気化学センサの気体浸透性カバー層を通過して非膨潤性骨格構造の孔の中に凝縮し、先に導入された電解質液の固体成分が溶解される。
【0050】
センサを活性化させるために好ましい液体は、センサの多孔性の非膨潤性骨格構造の中に吸収された電解質液の浸透圧に一致又は類似する浸透圧を有し、また、特に、例えば緩衝液系又は約100から約200mmol/lまでの塩濃度若しくは約200mosmol/lから約500mosmol/lまでの浸透圧モル濃度値を有する食塩水である、水性の較正及び制御の液体を含む。測定される検体が水性液体中に含まれている場合、センサも、適切であれば水性測定媒体によって活性化させることができる。
【0051】
この方法を用いて、電気化学センサの長い保存寿命及び長い使用中の耐用寿命を保証することができる。しかし、その代わりに、本発明は、電気化学センサが動作に入る前に電解質を既に液体の形で含んでいる電解質層も提供する。
【0052】
よりさらなる態様では、本発明は、水性測定媒体中に溶解したガス検体を測定する方法に関し、この方法は、
(a)水性測定媒体を本発明による電気化学センサと接触させるステップと、
(b)電気化学センサによって生成された信号を測定することにより、水性測定媒体中に溶解したガス検体を測定するステップと、を含む。
【0053】
ガス検体を測定するために、本発明による電気化学センサは、電気化学センサと水性測定媒体との間の接触を可能にする任意の所望のやり方で構成することができる。したがって、センサは、例えばガス検体を含む水性測定媒体が通る測定セルとして実施することができる。さらに、本発明によるセンサは、さらなる諸センサと一緒に実施することができ、それらのセンサは、例えば交換可能な測定チャンバ(センサカートリッジ)内の別のポイントオブケアパラメータを測定するのに役立つ。
【0054】
検体の存在及び/又は量次第で、センサは測定可能な信号を生成する。好ましくは、この信号は電気信号、例えば電流、電圧、抵抗などであり、これは適切な手段を用いて評価される、又は読み取られる。好ましくは、電気化学センサは、例えば酸素センサの場合には電流測定センサであり、或いは例えば二酸化炭素センサの場合には電位差測定センサである。
【0055】
本発明を、以下の図及び実施例としてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1A及び図1Bは、本発明による電気化学センサにおける多孔性電解質層の電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明による電気化学pO2センサにおけるチャンネル領域を通る断面図である。使用されている支持体(1)は、Al/Mg合金で作製されたプレートであってポリカーボネートの薄層でコーティングされており、支持体(1)には、存在する側で、ポリカーボネート層の中への気体の拡散若しくはポリカーボネート層からの気体の拡散を最小限にする、又は完全に防止する働きをするガスバリア層(2a)が取り付けられる。ガスバリア層(2a)に、液体接点に対する電位差/電流の干渉を防止するために設けられた絶縁層(2b)が加えられる。気体浸透性カバー層(7)で閉じられたウィンドウが、測定領域内に形成される。電気化学pO2センサは、それ自体が、作用電極(3)と、対電極(5)と、測定チャンネルに沿って延び、且つ作用電極(3)及び対電極(5)の両方の能動面を完全に覆う多孔性電解質層(6)と、多孔性電解質層(6)を完全に覆う気体浸透性カバー層(7)とから成る。
【図3A】本発明による電気化学pO2センサにおける作用電極を通る長手方向の断面図である。作用電極(3)は、好ましくはポリマー成分を更に含む金ベースの複合材料で作製される。作用電極放出ライン(4)の一つの端は作用電極(3)と平面接触し、その第2の端は、電気的プラグイン接続用の開いた接点を形成し、作動電極放出ライン(4)は、例えば薄く延びた銀ベースの複合材料で作製され得る。残りの参照数字は、それぞれ図2で示された意味を有する。
【図3B】本発明による電気化学pO2センサにおける、代替の銀架橋層及び銀/塩化銀導体を有する作用電極を通る長手方向の断面図である。この場合、図3Aからの唯一の変更は、測定領域の外側を銀/塩化銀導体(4b)に変換する架橋層(2a)である。導体(4b)は、例えば、対応するスクリーンプリントペーストからのスクリーンプリントによって作製することができる。残りの参照数字は、それぞれ図2で示された意味を有する。
【図4】本発明による電気化学O2センサにおける対電極を通る長手方向の断面図である。対電極(5)は、例えばスクリーンプリントによって作製することができ、好ましくはポリマーの成分を更に含む銀ベースの複合材料で作製される。残りの参照数字は、それぞれ図2で示された意味を有する。
【図5】本発明による電気化学CO2センサにおけるチャンネル領域を通る断面図である。電気化学CO2センサは、それ自体が、作用電極(8)(pH感応性測定電極)と、架橋層(8a)と、対電極(照合電極)(10)と、多孔性電解質層(11)と、更には気体浸透性カバー層(7)とから成る。作動電極すなわちpH電極(8)は、例えばスクリーンプリントによって生成することができ、好ましくはポリマーの成分を更に含む酸化ルテニウムベースの複合材料で作製される。この層は、例えば黒鉛ペーストから生成された架橋層(8a)によって、直接測定領域から電気的に伝導される。層のようなやり方で構成される対電極(10)は、具体的にはスクリーンプリントによって生成され、好ましくは銀/塩化銀ベースの複合材料で作製される。残りの参照数字は、それぞれ図2で示された意味を有する。
【発明を実施するための形態】
【0057】
(実施例)
【実施例1】
【0058】
スクリーンプリント可能なペーストの製造
【0059】
12.0gのエチルセルロース粉末N 50及び192.0gのテルピネオールを、閉鎖できるガラスの中へ量り分け、この混合物をエチルセルロースが完全に溶解するまで室温で2週間撹拌した。すぐに用いることができる、100gの量のスクリーンプリント可能なペーストを作製するために、得られた25.6gのエチルセルロース溶液、32.3gのフェノール樹脂PR 373、1.0gの消泡剤Byk 051(ビーワイケーケミー(Byk Chemie)社製)、5.0gのベンジルアルコール及び2.9gのブチルジグリコールを、続いてビーカーガラスの中へ量り分け、この混合物を強く撹拌した。この混合物に43.2gのゼオライトLZ-Y 52(シグマオールドリッチ(Sigma-Aldrich)社の製品番号第334448号)を添加し、充てん剤が均質的に分散するまでこの混合物を強く撹拌して、スクリーンプリント可能なペーストを得た。
【実施例2】
【0060】
実施例1によって作製され硬化されたペーストの液体の相対的吸収の測定
【0061】
実施例1によって作製されたペーストの液体の相対的吸収を測定するために、複数のスライド(76×26mm、ISO規格8038/I、ロス(Roth)社製)を、化学てんびん上で量り分けた(msupport)。続いて、80μmの螺旋形の剥ぎ取りドクターブレード(stripping doctor blade)を使用して、実施例1によって作製されたペーストをスライドに加えることにより、スライドに試験層を加えた。加えられたペーストは、約60×18mmの矩形領域を覆った。この領域は可変であるので、ペーストが硬化したとき一度だけ正確に測定された。ペーストを加えてから10〜15分後に、試験片を乾燥キャビネットの中で110℃で4時間硬化させた。続いて、試験片を測定までデシケータの中(CaOの上)に保存した。硬化ペーストを有するスライドの重さを量り直し(mdry)、その後直ちに、それぞれの場合に100mlの容積を有するねじ留め可能なプラスチックボックスの中に配置された約40mlの液体の中へ浸漬した。測定を行なう間、浸漬された試験片を有するボックスは閉じたままにしておいた。定義された時点で、試験片をボックスから取り出し、軽打し、吸収された液体の量を測定するために重さを量った。吸収された液体の量、したがって質量(mwet)が一定のままになったとき測定を終了した。測定は、室温及び常圧で行なった。収集された測定値から、各試験片に関する液体の相対的吸収を、少なくとも三つの試験片に対応する測定値の平均値として高々1%の標準偏差で計算した。
【0062】
それぞれの場合で、液体のそれぞれの相対的吸収が、以前に測定された硬化ペーストの乾燥重量(それぞれの場合においてスライドの重量を除く)と相互に関連づけられた(液体の相対的吸収[%]=[(mwet- msupport)/(mdry-msupport)-1]×100である)。液体の相対的吸収の値は、硬化ペーストの空隙率によって変化する。望ましくない高空隙率を有する硬化ペーストは、50%と70%との間の液体の相対的吸収を有し、望ましくない低空隙率を有する硬化ペーストは、20%未満の液体の相対的吸収を有する。本発明の範囲内で使用される硬化ペーストは、20重量%と50重量%との間、好ましくは26重量%と44重量%の間の液体の相対的吸収を引き起こす空隙率を有する。
【実施例3】
【0063】
多孔性電解質層を有するセンサ半完成品の製造
【0064】
本発明による電気化学センサの構成要素として使用することができるセンサ半完成品を作製するために、実施例1によって作製したペーストを、スクリーンプリントによってスクリーンに加え、作用電極及び対電極を備える適切な支持体に加えて高温で硬化させた。硬化層の厚さは10〜20μmであった。
【実施例4】
【0065】
O2センサに適切な電解質の、実施例3によって作製したセンサ半完成品の孔の中への導入
【0066】
本発明による電気化学O2センサ用の100gの内部電解質を作製するために、0.098gのNa2HPO4(p.a.)、0.094gのKH2PO4(p.a.)、0.257gのNaCl(p.a.)、0.060gのポリエチレングリコール6000(合成用)及び0.744gのグリセリン(p.a.)を、98.75gの脱イオン化水の中に溶解して、pH緩衝された電解質溶液を得た。過剰法によって、多孔性電解質層の中に塩類を導入した。この目的のために、電解質溶液を導入する前に、実施例3によって作製したセンサ半完成品を、先ず容器の中で、脱イオン化水の上に空気の相対湿度100%で1時間保存した。続いて、過剰な電解質溶液を、上方へ開いたセンサの多孔性層上に分配し、ろ紙を使用して過剰分を除去した。閉じた容器の中でこのように処理したセンサ半完成品を、続いて、多孔性層の孔が電解質溶液で充填されるまで、水の上に空気の相対湿度100%で(約2時間)保存した。ろ紙を使用して電解質溶液の上澄みを除去した後、揮発性成分を蒸発させるために、センサ半完成品を65℃で72時間保存した。
【実施例5】
【0067】
CO2センサに適切な電解質の、実施例3によって作製したセンサ半完成品の孔の中への導入
【0068】
本発明による電気化学CO2センサ用の100gの内部電解質溶液を作製するために、0.252gのNaHCO3(p.a.)及び0.559gのKCl(p.a.)を、0.15gの酵素炭酸脱水酵素(セルバ(Serva)社の製品番号15880)と一緒に99.04gの脱イオン化水の中へ溶解した。実施例4のように、過剰法により実施例3によって作製された多孔性層の中に電解質溶液を導入した。
【実施例6】
【0069】
O2センサに適切な多孔性電解質層を有するセンサ半完成品の製造
【0070】
実施例3及び4の代替実施形態は、スクリーンプリント可能なペーストの中へ適切な溶剤中の不揮発性電解質成分を前に導入するステップを含む。
【0071】
本発明による電気化学O2センサの構成要素として使用することができるセンサ半完成品を作製するために、0.120gのNa2HPO4(p.a.)、0.110gのKH2PO4(p.a.)、0.310gのNaCl(p.a.)及び0.066gのポリエチレングリコール6000(合成用)を、1.6gの脱イオン化水の中へ溶解した。このようにして得られた溶液を、続いて23.15gのエチレングリコール中の0.900gのグリセリン(p.a.)の溶液と混合し、透明な溶液が得られるまで撹拌した。
【0072】
センサ半完成品を作製するために、4.2gの水性エチレングリコール溶液を実施例1によって作製した100gのペーストの中で撹拌し、そこで、液体電解質を含むペーストをスクリーンプリントによって適切な支持体に加え、高温で硬化させた。後続の分配するステップは不要である。
【実施例7】
【0073】
CO2センサに適切な多孔性電解質層を有するセンサ半完成品の製造
【0074】
実施例3及び5の代替実施形態は、スクリーンプリント可能なペーストの中へ適切な溶剤中の不揮発性電解質成分を前に導入するステップを含む。
【0075】
本発明による電気化学CO2センサの構成要素として使用することができるセンサ半完成品を作製するために、0.150gのNa2CO3(p.a.)及び0.250gのKCl(p.a.)を、1.6gの脱イオン化水の中へ溶解した。次いで、この溶液を8gのエチレングリコールと混合して、透明な溶液が得られるまで撹拌した。
【0076】
センサ半完成品を作製するために、2.69gの水性エチレングリコール溶液を実施例1によって作製した100gのペーストの中で撹拌し、そこで、液体電解質を含むペーストをスクリーンプリントによって適切な支持体に加え、高温で硬化させた。後続の分配するステップは不要である。
【実施例8】
【0077】
実施例4〜7のうち一つによって作製されたセンサ半完成品への気体浸透性カバー層の塗布、及びすぐに使用することができるセンサプレートのパッケージ化
【0078】
実施例4〜7のうち一つによって作製されたセンサ半完成品に対して、スクリーンプリントによってカバー層を加えた。この目的のために、オキシム劈開シリコーンをスクリーンプリントによってセンサ半完成品に加え、高温で硬化させた。硬化層の厚さは約10μmであった。このようにして得られたセンサプレートを、続いて、使用するまで保存するために、適切な容器の中へ気密のやり方でパッケージ化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性測定媒体中に溶解したガス検体を測定するための電気化学センサであって、
(a)作用電極及び対電極と、
(b)前記作用電極と前記対電極との間に配置された電解質層と、
(c)前記作用電極、前記対電極及び前記電解質層を前記水性測定媒体から空間的に分離するように働く気体浸透性カバー層と、を備える電気化学センサにおいて、
前記電解質層が、多孔性の非膨潤性骨格構造をともに形成する少なくとも一つの粒子材料及び少なくとも一つのバインダを含み、前記非膨潤性骨格構造の孔が、液体電解質を吸収するように設けられる、又は液体電解質を含むことを特徴とする電気化学センサ。
【請求項2】
前記粒子材料が、管理された多孔質ガラス(CPG)、シリカゲル、ケイ酸塩及びアルモシリケートから成る群から選択された無機粒子材料であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学センサ。
【請求項3】
前記粒子材料が、自然に発生するアルモシリケート、又は合成アルモシリケート、具体的には合成アルモシリケートであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気化学センサ。
【請求項4】
前記粒子材料が、チャンネル、具体的には約0.1nmと約10nmとの間の直径を有するチャンネルを有し、任意選択でイオン交換体群を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項5】
前記粒子材料が、ゼオライト、具体的にはフォージャサイトであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項6】
前記粒子材料の粒子が、約0.1μmから約10μmまで、具体的には約1.0μmから約5.0μmまでの平均粒径を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項7】
前記バインダが有機バインダであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項8】
前記有機バインダが架橋又は非架橋の合成ポリマーを含むことを特徴とする請求項7に記載の電気化学センサ。
【請求項9】
前記架橋又は非架橋の合成ポリマーが、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、PVC共重合体、二成分のエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂系及びUV硬化可能なポリアクリレートモノマー混合物から成る群から選択される化合物であり、具体的にはフェノール樹脂であることを特徴とする請求項8に記載の電気化学センサ。
【請求項10】
前記非膨潤性骨格構造の孔が、約500nmから約5μmまで、具体的には約1μmから約3μmまでの直径を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項11】
前記多孔性の非膨潤性骨格構造が、前記多孔性の非膨潤性骨格構造の乾燥重量に基づいて、約20重量%から約50重量%まで、好ましくは約26重量%から約44重量%までの、液体の相対的吸収を引き起こすことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項12】
前記電解質層が、約5μmから約30μmまで、具体的には約10μmから約20μmまでの厚さを有することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項13】
前記液体電解質が、アルカリ金属塩化物及びpH緩衝液系を含むことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項14】
前記液体電解質が水溶性ポリマー、具体的にはポリエチレングリコール及び/又はポリビニルピロリドンを更に含むことを特徴とする請求項13に記載の電気化学センサ。
【請求項15】
前記液体電解質が、酵素、具体的には炭酸脱水酵素を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の電気化学センサ。
【請求項16】
前記センサが動作に入る前に、前記電解質層が前記液体電解質の不揮発性成分を含むことを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項17】
前記気体浸透性カバー層が、前記水性測定媒体のイオン及び不揮発性成分に対して不浸透性であることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項18】
前記気体浸透性カバー層が、シロキサン、ポリスルホン及び/又はポリテトラフルオロエチレンを含むことを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項19】
前記気体浸透性カバー層が、約5.0μmから約30μmまで、好ましくは約8.0μmから約15μmまでの厚さを有することを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項20】
前記作用電極が、金又は酸化ルテニウムをベースとする複合材料で作製されることを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項21】
前記対電極が、銀又は銀/塩化銀をベースとする複合材料で作製されることを特徴とする請求項1から20のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項22】
前記水性測定媒体中に溶解された前記ガス検体の複数の測定のために具現化されることを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項23】
体液、具体的には全血、血漿又は血清の中のガス検体を測定するための、請求項1から22のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項24】
酸素を測定するための、請求項1から14のいずれか一項又は請求項16から23のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項25】
二酸化炭素を測定するための、請求項1から23のいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか一項に記載の電気化学センサを製造する方法であって、
(a)少なくとも一つの粒子材料を用意するステップと、
(b)前記粒子材料を、少なくとも一つのバインダと混合し、適切であればさらなる物質と混合するステップと、
(c)ステップ(b)で得られた混合物をペーストに加工するステップと、
(d)ステップ(c)で得られた前記ペーストを支持体に加えるステップと、
(e)前記支持体に加えられた前記ペーストを硬化させて、多孔性の非膨潤性骨格構造を形成するステップと、
(f)ステップ(e)で得られた前記多孔性の非膨潤性骨格構造を電解質層として含み、作用電極、対電極及び気体浸透性カバー層も含む電気化学センサを作製するステップとを含む方法。
【請求項27】
前記多孔性の非膨潤性骨格構造の中に不揮発性電解質成分を含む液体を導入し、続いて前記液体の前記揮発性成分を蒸発させるステップを更に含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(c)で得られた前記ペーストの中に不揮発性電解質成分を含む液体を導入するステップを更に含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記電気化学センサを活性化させるステップであって、前記電気化学センサを液体、具体的には水性の液体と接触させることによって前記活性化を引き起こすステップを更に含むことを特徴とする請求項27又は請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記液体が、多孔性の非膨潤性骨格構造の中に吸収された液体電解質の浸透圧に一致する浸透圧を有することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
水性測定媒体中に溶解したガス検体を測定する方法であって、
(a)前記水性測定媒体を、請求項1から25のいずれか一項に記載の電気化学センサと接触させるステップと、
(b)前記電気化学センサによって生成された信号を測定することにより、前記水性測定媒体中に溶解した前記ガス検体を測定するステップと、を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−510280(P2011−510280A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542588(P2010−542588)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000273
【国際公開番号】WO2009/090094
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT