説明

微小導電性物質の分離方法、微小導電性物質及び微小導電性物質の分離装置

【課題】インダクタンスを含めたインピーダンスの大きさに応じてナノマテリアルを分離すること。
【解決手段】複数の微小導電性物質から成る集合体を添加した溶媒に、互いに同一又は奇数倍の関係の周波数を有する電界と磁界とを同期して加えて前記各微小導電性物質を各インピーダンス値に対応した各位置に分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばナノマテリアル等の微小導電性物質をそのインピーダンスの大きさに応じて分散させる微小導電性物質の分離方法、微小導電性物質及び微小導電性物質の分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノマテリアルは、少なくとも一次元の大きさが100nmよりも小さな材料を総称する。ナノマテリアルは、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、フラーレン等に代表されるナノカーボンや、金属又は非金属からなるナノ粒子、ナノファイバー等を含む。
ナノマテリアルは、既に様々な分野で応用されており、その応用分野を広げる研究が盛んである。ナノマテリアルの物理的な大きさを利用した例としては、例えばカーボンナノチューブを先端に有するカンチレバーがある。このカンチレバーは、製品化されている。
【0003】
ナノマテリアルを集めると、限られた空間内で大きな表面積が得られるので、例えば金属ナノ粒子を触媒として利用する製品がある。導電性を有するナノマテリアルについては、その物理的な大きさと電荷を移動できるという2つの特徴を有することから、より高度な利用方法が研究されている。例えば、電子デバイスやマイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ(MEMS)用の電気回路素子として、1個又は少量のカーボンナノチューブをチャネルや配線として利用する研究や、カーボンナノコイルをコイルとして利用する研究がされている。
【0004】
大量のカーボンブラックやカーボンナノチューブを高分子材料に添加することで、高分子材料が有する加工の容易さを維持したまま、導電性を有する材料が開発されている。ここで言う導電性は、半導体性、制電性を含む。最近では、携帯電話内部の部品やパーソナルコンピュータ等のように外部の電磁波から保護することが望ましい電子機器や、ディスプレイやオーディオ機器等のように外部への電磁波の漏洩を防止することが望ましい電子機器の用途としてカーボンナノチューブやカーボンナノコイルを高分子材料に添加した電磁波シールド材、電磁波吸収材の研究が盛んである。
【0005】
このようにナノマテリアルを電気回路素子や電磁波シールド材等の製品に利用する場合、当該製品に使用するナノマテリアルの電気抵抗やインダクタンス等で決まるインピーダンスが製品の性能に大きく影響する。例えば、1個又は少量のナノマテリアルを利用する電気回路素子では、使用するナノマテリアルのインピーダンスのばらつきが直接的に電気回路素子の特性のばらつきに影響する。大量のナノマテリアルを利用する電磁波シールド材等においても、電気抵抗の大きいナノマテリアルが混在すると、平均の電気抵抗が大きくなるので、電磁波シールド材等での電磁波吸収量が低下することになる。電気回路素子や電磁波シールド材等に含まれる個々のナノマテリアルのインダクタンスのばらつきが特定の周波数帯に対する吸収効率を低下させる要因になる。
【0006】
しかしながら、同じ名称のナノマテリアルであっても、一般的に個々にナノマテリアルのインピーダンスが著しく異なるので、ナノマテリアルの物理的な大きさのみを利用する場合に比ベて、インピーダンスを利用するナノマテリアルは、その実用化が大きく遅れている。
【0007】
例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイル等に代表される繊維状のナノマテリアルは、その等価回路を電気抵抗素子とインダクタンス素子(コイル)との直列回路により表すことができる。インピーダンスZ[Ω]は、電気抵抗R[Ω]とインダクタンスL[H]等を用いて次式(1)により表される。
=R+ω …(1)
ω[ラジアン/s]は角周波数であり、周波数f[Hz]を用いてω=2πfにより表される。
【0008】
一般的に、電気抵抗Rは、カイラリティの違いや欠陥の量によって変化する。インダクタンスLは、繊維長やコイル形状を規定する各種寸法の違いによって変化すると考えられる。従って、ナノマテリアルは、上記式(1)に示す関係から電気抵抗R及びインダクタンスLの各値からインピーダンスの違いとして現れる。
【0009】
カーボンナノチューブは、例えば、一般的に金属型のものと半導体型のものとが含まれるので、それぞれ電気抵抗Rが異なり、インピーダンスZに大きなばらつきが生じる。ナノマテリアルは、大きさが微小であるがゆえに、僅かな寸法の違いや原子レベルの欠陥が存在すると、大きなインピーダンスZの違いとして現れる。このため、ある装置で同時に作製されたナノマテリアルであっても、個々のナノマテリアルが有するインピーダンスは大きくばらついている。
【0010】
このような状況からナノマテリアルをそのインピーダンスによって詳細に分離する方法が要求されている。
【0011】
このような課題に対して例えば特許文献1は、複数のカーボンナノチューブを集めた集合体中から金属型カーボンナノチューブを分離する方法を開示する。特許文献1は、その他の公知例が多数開示する。
特許文献2は、ゲルを通電するゲル電気泳動法によってカーボンナノチューブを金属型と半導体型とに分離する実用的な方法を開示する。この特許文献2は、金属型、半導体型という大まかな電気抵抗の違いによる分離しかできない。
カーボンナノチューブをカイラリティのタイプによって分離する方法として特許文献3がある。この特許文献3は、カーボンナノチューブの集合体に電界を加える方法を開示する。この特許文献3は、インピーダンスの値に基づく分離は不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】再公表2006−013788号公報
【特許文献2】特開2008−285387号公報
【特許文献3】特許第4208722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のようにナノマテリアルをそのインピーダンスの値によって詳細に分離するための有効な方法がなかった。特に電磁波シールド材等においては、カーボンブラックやカーボンナノチューブを利用する場合よりも、カーボンナノコイルを利用することで、高い周波数の電磁波を効率よく吸収できると期待されている。カーボンナノコイルは、その形がコイル状であるため、特にインダクタンスによる分類が重要となるが、インダクタンスにより分離することを実現する技術が見当たらない。
【0014】
そこで、本発明は上記実情に基づきなされたもので、その目的とするところは、インダクタンスを含めたインピーダンスの大きさに応じてナノマテリアルを分離する微小導電性物質の分離方法、微小導電性物質及び微小導電性物質の分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の主要な局面に係る微小導電性物質の分離方法は、複数の微小導電性物質から成る集合体を添加した溶媒に、互いに同一又は奇数倍の関係の周波数を有する電界と磁界とを同期して加えて前記各微小導電性物質を各インピーダンス値に対応した各位置に分散させる。
【0016】
本発明の主要な局面に係る微小導電性物質は、複数の微小導電性物質から成る集合体を添加した溶媒に、互いに同一又は奇数倍の関係の周波数を有する電界と磁界とを同期して加えて前記各微小導電性物質を各インピーダンス値に対応した各位置に分散させることにより取得される。
【0017】
本発明の主要な局面に係る微小導電性物質の分離装置は、複数の微小導電性物質から成る集合体を添加した溶媒を収容する容器と、前記溶媒に電界を加える電界発生部と、前記溶媒に磁界を加える磁界発生部と、前記電界発生部により発生する前記電界と前記磁界発生部により発生する前記磁界とを互いに同一又は奇数倍の関係の周波数に制御し、当該制御された前記電界と前記磁界とを同期して前記溶媒に加えて前記各微小導電性物質を各インピーダンス値に対応した各位置に分散させる制御部とを具備する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、インダクタンスを含めたインピーダンスの大きさに応じてナノマテリアルを分離する微小導電性物質の分離方法、微小導電性物質及び微小導電性物質の分離装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】本発明に係る微小導電性物質の分離装置の一実施の形態を示す正面構成図。
【図1B】同装置を示す側面構成図。
【図2】同装置における高周波回路を示すブロック構成図。
【図3】同装置の等価回路を示す図。
【図4】同装置における水槽内の有機媒体に加わる高周波電界と高周波磁界とナノマテリアルに加わる電磁力とを示す摸式図。
【図5】同装置におけるナノマテリアルに働く電磁力の発生原理を説明するための図。
【図6】同装置におけるナノマテリアルのインピーダンス値に応じた移動速度による分散の状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1Aは微小導電性物質の分離装置の正面構成図を示し、図1Bは同装置の側面構成図を示す。XY平面は水平面方向に一致し、Z軸は高さ方向である。水槽1は、長方体の形状に形成され、開口部2を上方に向けて設置されている。水槽1の開口部2には、蓋が設けられ、開口部2を閉じるようになっている。この水槽1は、例えば長手方向をY方向に一致させて設置されている。水槽1内には、例えば水、エタノール等の有機媒体3が収容されている。この有機媒体3中には、微小導電性物質として例えばコイル状に形成された微小なカーボン、具体的には複数のナノマテリアル4の粉末状の集合体5を有機媒体3に分散させたサンプル液6が滴下される。このサンプル液6は、水槽1内における同水槽1の長手方向の中央部に滴下される。サンプル液6を滴下する位置は、水槽1の長手方向の一端側又は他端側でもよい。
【0021】
水槽1の両側面1a、1bの各外側には、図1Aに示すようにそれぞれ一対の高周波電極10a、10bが設けられている。これら高周波電極10a、10bは、高周波電界を発生し、この高周波電界を水槽1内の有機媒体3に加えるためのものである。これら高周波電極10a、10bは、水槽1を挟んで水平方向(X方向)に対向配置されている。これら高周波電極10a、10bは、それぞれ長方形状の平板状に形成され、その大きさは、水槽1の各側面1a、1bよりも大きく形成されている。一方の高周波電極10aは、高周波回路11に接続されている。他方の高周波電極10bは、接地されている。
【0022】
水槽1の開口部2の上方と底面1cの下方とには、図1Bに示すようにそれぞれ一対の電磁石12a、12bが設けられている。これら電磁石12a、12bは、水槽1を挟んで上下方向(Z方向)に対向配置されている。これら電磁石12a、12bは、高周波磁界を発生し、この高周波磁界を水槽1内の有機媒体3に加えるためのものである。これら電磁石12a、12bは、ヨークと、このヨークの外周に設けられたコイルとから成る。これら電磁石12a、12bの大きさは、それぞれ水槽1の開口部2及び底面の大きさよりも大きく形成されている。これら電磁石12a、12bの一端は、高周波回路11に接続され、他端は共通接続されて接地されている。
【0023】
高周波回路11は、一対の高周波電極10a、10bと一対の電磁石12a、12bとに高周波電力を供給する。この高周波電力の周波数は、例えば1kHz〜100MHzの範囲で可変可能である。この高周波電力の周波数は、例えば13.56MHzに代表されるRF周波数に設定される。図2は高周波回路11のブロック構成図を示す。この高周波回路11は、高周波電源11−1と整合回路11−2とから成る。高周波電源11−1は、整合回路11−2を介して一対の高周波電極10a、10bと一対の電磁石12a、12bとに接続されている。整合回路11−2は、高周波電源11−1と一対の高周波電極10a、10b及び一対の電磁石12a、12bとの間のインピーダンスの整合を取る。高周波電源11−1は、例えば1kHz〜100MHzの周波数範囲内で可変可能な高周波電力を発生する。
【0024】
制御部13が高周波回路11に接続されている。この制御部13は、高周波電源11−1から発生する高周波電力の周波数を例えば1kHz〜100MHzの範囲で可変する。この制御部13は、例えばナノマテリアル4の種類に応じて高周波電源11−1から発生する高周波電力の周波数を可変する機能を有する。ナノマテリアル4の種類に応じた高周波電力の周波数は、例えば操作部を介してオペレータの操作指示を受けて可変設定される。この制御部13は、一対の高周波電極10a、10bによる高周波電界の発生と一対の電磁石12a、12bによる高周波磁界の発生とを同期させる。この制御部13は、一対の高周波電極10a、10bにより発生する高周波電界と一対の電磁石12a、12bにより発生する高周波磁界とを互いに同一の周波数に制御する、又は互いに奇数倍の関係の周波数に制御する。
図3は同装置の等価回路を示す。同装置は、高周波回路11に各電磁石12a、12bの各インダクタンス12a−L、12b−Lと、各高周波電極10a、10bから成るキャパシタンス10Cとが並列接続されている。
【0025】
次に、上記の如く構成された装置によるナノマテリアル4の分離作用について説明する。
複数のナノマテリアル4の粉末状の集合体5を有機媒体3に分散させたサンプル液6が作製される。このサンプル液6は、水槽1内に収容されている例えば水、エタノール等の有機媒体3内に滴下される。サンプル液6の滴下の位置は、例えば水槽1内における長手方向の中央部である。
【0026】
高周波回路11は、一対の高周波電極10a、10bと一対の電磁石12a、12bとに共に、例えば高周波数1kHz〜100MHzの範囲内の1つの高周波数を有する電力を供給する。これにより、一対の高周波電極10a、10b間には、図4に示すように高周波電界Eが発生する。この高周波電界Eは、水槽1の長手方向に対して垂直な水平方向(X方向)に発生し、水槽1内の有機媒体3に加わる。この高周波電界Eの発生に同期して一対の電磁石12a、12b間には、図4に示すように高周波磁界Bが発生する。この高周波磁界Bは、水槽1に対して上下方向(Z方向)に発生し、水槽1内の有機媒体3に加わる。
【0027】
水槽1内の有機媒体3に高周波電界Eが加わると、有機媒体3内に存在する各ナノマテリアル4にそれぞれ交流電流が流れる。この交流電流は、当該各ナノマテリアル4の各インピーダンス値に応じた各電流量である。このとき、水槽1内の有機媒体3には、高周波電界Eに同期して高周波磁界Bが加わるので、各ナノマテリアル4に流れる各電流量と高周波磁界Bとによって各ナノマテリアル4には、それぞれ図5に示すような電磁力Fが働く。各ナノマテリアル4は、それぞれ電磁力Fを受けて、当該電磁力Fに応じた移動速度で水槽1内を移動する。
【0028】
高周波磁界Bの磁束密度Ba[T]、ナノマテリアル4の長さl、高周波磁界Bとナノマテリアル4とのなす角度θ、ナノマテリアル4に流れる電流I[A]とすると、電磁力Fは、
F=I・Ba・lsinθ[N/m] …(1)
により表される。この電磁力Fは、高周波磁界Bの発生方向とナノマテリアル4に流れる電流Iの方向との両方に直角な方向に働く。
【0029】
高周波電界Eと高周波磁界Bとは交流であるので、半周期毎に高周波電界Eの発生方向と高周波磁界Bの発生方向とが変化するが、高周波電界Eと高周波磁界Bとは同期しているので、高周波電界Eの発生方向と高周波磁界Bの発生方向とも同期して変化する。従って、各ナノマテリアル4に働く電磁力Fの方向は、常に一定の方向である。電磁力Fは、ナノマテリアル4に流れる電流Iの大きさに比例するので、電磁力Fの大きさは、ナノマテリアル4のインピーダンス値に応じて変わる。各ナノマテリアル4の水槽1中での移動速度は、各ナノマテリアル4のインピーダンス値に依存する。
【0030】
水槽1内の有機媒体3に高周波電界Eと高周波磁界Bとが加わった状態で所定時間経過すると、各ナノマテリアル4は、それぞれ移動速度に応じた各位置まで移動する。例えば図6(a)に示すように水槽1内における長手方向の中央部に存在した各ナノマテリアル4は、それぞれの移動速度に応じた距離だけ移動し、略同一のインピーダンス値を有する各ナノマテリアル4毎に分散して略同一位置に集まる。なお、図6(b)は各インピーダンス値別の各ナノマテリアル4の集まりが分かりやすいように例えば5箇所の各位置4−1〜4−5に各ナノマテリアル4が集まったことを示す。
【0031】
従って、上記所定時間経過後、高周波電源11−1を遮断(OFF)すると、各ナノマテリアル4の移動が停止するので、各ナノマテリアル4は、それぞれ各インピーダンス値別の各位置4−1〜4−5に集った状態になる。
この後、水槽1は、本分離装置から取り出される。水槽1内から各位置4−1〜4−5別に各ナノマテリアル4を含む有機媒体3が取り出される。これらナノマテリアル4を含む有機媒体3は、例えば乾燥によって有機溶媒3を除去する。この結果、例えば4種類のインピーダンス値別に分離した各ナノマテリアル4の各集合体を得ることができる。
【0032】
このように上記一実施の形態によれば、複数のナノマテリアル4から成る集合体を添加した有機媒体3中に、互いに同一の高周波周波数を有する高周波電界Hと高周波磁界Bとを同期して加えて各ナノマテリアル4を各インピーダンス値に対応した各位置に分散させるので、各インピーダンス値別のナノマテリアル4の各集合体に分離できる。
【0033】
電磁波シールド材等においては、カーボンナノコイルを利用することで、高い周波数の電磁波を効率よく吸収できると期待されているので、電磁波シールド材等に利用する当該カーボンナノコイルをインダクタンスの値別に分離することができる。又、電磁波シールド材では、電気抵抗が小さいナノマテリアル4だけを選択的に使用できれば、遮蔽効率を向上できる。さらに、特定のインダクタンスを有するナノマテリアル4を選択的に使用できれば、特定の帯域の電磁波を遮蔽するといった性能を期待できる。従って、電磁波シールド材に利用する部材の要求、すなわち特定のインダクタンスを有するナノマテリアル4を得ることができる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
上記一実施の形態では、一対の高周波電極10a、10bと一対の電磁石12a、12bとを同一の高周波電源11−1に接続しているが、これに限らず、一対の高周波電極10a、10bと一対の電磁石12a、12bとをそれぞれ別々の各高周波電源に接続してもよい。この場合、別々の各高周波電源は、それぞれの高周波電力の位相差を制御し、各高周波電源間の位相が同一位相となるようにする。
【0035】
上記一実施の形態では、複数のナノマテリアル4から成る集合体を添加した有機媒体3中に、高周波電界Hと高周波磁界Bとを一回加えて各ナノマテリアル4を分散させているが、これら分散された各ナノマテリアル4の集まり別にさらに、高周波電界Hと高周波磁界Bとを再度加えて各ナノマテリアル4を各インピーダンス値別に分離してもよく、同分離を複数回実施してもよい。ナノマテリアルのインピーダンス値別の分離を複数回実施することで、ナノマテリアルのインピーダンス値別の分離の精度を高くできる。
上記一実施の形態は、ナノマテリアル4の分離について説明したが、これに限らず、微小導電性物質として金属材料でも各インピーダンス値別に分離可能である。この場合、制御部13は、例えばナノマテリアル4の種類に限らず、微小導電性物質として金属材料やカーボン等に応じて高周波電源11−1から発生する高周波電力の周波数を可変する。
【符号の説明】
【0036】
1:水槽、1a,1b:水槽の両側面、1c:水槽の底面、2:開口部、3:有機媒体、4:ナノマテリアル、4−1〜4−5:各位置、5:集合体、6:サンプル液、10a,10b:一対の高周波電極、10C:各高周波電極から成るキャパシタンス、11:高周波回路、11−1:高周波電源、11−2:整合回路、12a,12b:一対の電磁石、12a−L,12b−L:電磁石のインダクタンス、13:制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の微小導電性物質から成る集合体を添加した溶媒に、互いに同一又は奇数倍の関係の周波数を有する電界と磁界とを同期して加えて前記各微小導電性物質を各インピーダンス値に対応した各位置に分散させることを特徴とする微小導電性物質の分離方法。
【請求項2】
前記電界と前記磁界と前記各微小導電性物質に流れる当該各微小導電性物質のインダクタンスに応じた電流とにより発生する電磁力により前記各微小導電性物質が移動して分散することを特徴とする請求項1記載の微小導電性物質の分離方法。
【請求項3】
前記各微小導電性物質は、ナノマテリアルを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の微小導電性物質の分離方法。
【請求項4】
複数の微小導電性物質から成る集合体を添加した溶媒に、互いに同一又は奇数倍の関係の周波数を有する電界と磁界とを同期して加えて前記各微小導電性物質を各インピーダンス値に対応した各位置に分散させることにより取得されることを特徴とする微小導電性物質。
【請求項5】
複数の微小導電性物質から成る集合体を添加した溶媒を収容する容器と、
前記溶媒に電界を加える電界発生部と、
前記溶媒に磁界を加える磁界発生部と、
前記電界発生部により発生する前記電界と前記磁界発生部により発生する前記磁界とを互いに同一又は奇数倍の関係の周波数に制御し、当該制御された前記電界と前記磁界とを同期して前記溶媒に加えて前記各微小導電性物質を各インピーダンス値に対応した各位置に分散させる制御部と、
を具備することを特徴とする微小導電性物質の分離装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−190121(P2011−190121A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54910(P2010−54910)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】