微小物体が固定化された固相体の製造方法及びその利用
【課題】 微小物体を固定化する固定化要素を含む固相材料との直接的な相互作用を回避又は抑制して微小物体を固相材料に固定化する方法を提供する。
【解決手段】微小物体4を固相材料10に固定化するとき、微小物体4と固相材料10との間に、少なくとも微小物体4と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質20を微小物体4と固相材料10とに固有の固定化原理を妨げない程度に存在させた状態で、固有の固定化原理に基づき微小物体4を固相材料10に固定化する。固相材料10及び微小物体3の間に所定の仲介分子20を存在させることで、固相材料10と微小物体4とを直接接触させなくても、固有の固定化原理に基づく固定化が可能である。
【解決手段】微小物体4を固相材料10に固定化するとき、微小物体4と固相材料10との間に、少なくとも微小物体4と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質20を微小物体4と固相材料10とに固有の固定化原理を妨げない程度に存在させた状態で、固有の固定化原理に基づき微小物体4を固相材料10に固定化する。固相材料10及び微小物体3の間に所定の仲介分子20を存在させることで、固相材料10と微小物体4とを直接接触させなくても、固有の固定化原理に基づく固定化が可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小物体を固相材料に固定化する技術に関し、詳しくは、仲介物質を介して微小物体を固定する方法及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質などの微小物体を固相材料に固定して用いて、診断用途、分析用途、反応リアクター用途及びセンサ用途に適用することが試みられてきている。ここで、タンパク質等が機能を発揮するために、触媒部位などの部位が露出された状態で固定化されていないと実質的な相互作用効率は低下してしまう。そこで、タンパク質などの微小物体を、一定の方向性を付与して、すなわち、配向して固相材料表面に固定化することが試みられている。
【0003】
例えば、物理的吸着を利用して配向固定する技術として、微小物体であるタンパク質のC末端側に遺伝子組換えによりカルボキシル基を含む複数個のアミノ酸を導入する一方、固相材料表面にはポリリジン等で処理してタンパク質を配向固定する方法がある(特許文献1)。また、遺伝子組換えによりN末端又はC末端に疎水性ポリペプチドを導入し、こうしたタンパク質を基板表面に固定化する方法もある(特許文献2)。さらに、固相材料表面との化学結合によるものとしては、微小物体であるタンパク質に非天然アミノ酸を導入し、この非天然アミノ酸と反応する反応基を固相材料に導入してタンパク質を配向して固定化する方法がある(特許文献3)。
【0004】
一方、本発明者らは、既に、物理的吸着や化学結合によらないで微小物体を固相材料に固定化する光固定化法を開発している(特許文献4)。光固定化法は、タンパク質などの微小物体を、光により変形する光応答性成分を含有する固相材料の表面に配し、光照射によって微小物体近傍の固相材料表面近傍に変形を生じさせて微小物体を固定(光固定)する方法である。
【0005】
【特許文献1】特開2004−347317号公報
【特許文献2】特開平2−79975号公報
【特許文献3】特表2006−511797号公報
【特許文献4】特開2003−329682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に開示されるいずれの方法においても、微小物体を固定化するための、官能基や化合物等の固定化要素の一部は固相材料に含まれている。そして、上記特許文献に開示されるいずれの方法であっても、微小物体を固相材料に固定化するには、固相材料との直接の相互作用が必要であり、直接微小物体と固相材料との接触は避けることはできない。このため、微小物体が固相材料、それに含まれる固定化のための要素及び固定化の相互作用の影響を受けやすくなる傾向があり、微小物体がタンパク質などの生体分子の場合には、活性や環境耐性の低下、保存安定性の低下等を引き起こすおそれがあった。特に、物理的吸着や化学結合による配向固定の場合には、固相材料と微小物体との強い相互作用が必要であり、固定化要素及び相互作用による微小物体への悪影響が生じるおそれがあった。
【0007】
また、上記特許文献1〜3に示されるように、微小物体を配向して固定するためにその一部に特定のアミノ酸等を導入するのには、遺伝子組換え等の手法を用いるのが合理的である。しかしながら、本来の機能が確保された改変タンパク質を得るには、固定化するタンパク質の遺伝子の取得、遺伝子導入操作、得られたタンパク質の活性化等、多くの技術的課題を解決する必要がある。
【0008】
したがって、現状において、微小物体と固相材料との直接の相互作用を回避して微小物体を固相材料に配向する試みは一部特殊な場合に限定され、かつ操作も煩雑であり実用上一般的ではなかった。また、微小物体の配向を実現する特別の要素を微小物体に導入することなく、微小物体を配向固定する試みもなされていない。
【0009】
そこで、本発明は、微小物体を固定化する固相材料との直接的な相互作用を回避又は抑制して微小物体を固相材料に配向して固定化する方法及びその利用を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、微小物体の配向等を実現する特別の要素を微小物体に導入することなく、微小物体を固定化する方法及びその利用を提供することを他の一つの目的とする。さらに、本発明は、微小物体を固相材料に固定化するのに適した仲介物質を提供することを他の一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、固相材料の表面に微小物体と相互作用する要素を有する仲介物質を存在させ、この仲介物質と微小物体との間に微小物体の配向のための相互作用を発現させた状態で、固相材料及び微小物体の間の固定化原理に基づいて微小物体を固相材料に固定化できるという知見を得た。また、このとき、微小物体と仲介物質との間の相互作用によって微小物体が固相材料に対して配向された状態で固定化されるという知見を得た。固定化が可能であるという知見を得た。本発明者らは、これらの知見に基づき発明を完成した。本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0011】
本発明によれば、微小物体が固相材料に固定化された固相体の製造方法であって、少なくとも前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質を表面に備える前記固相材料を準備する工程と、前記固相材料上において、前記仲介物質の前記相互作用を発現させた状態で前記微小物体を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程、を備える、方法が提供される。本発明の方法において前記微小物体はポリペプチド鎖を含むことが好ましく、抗体であることがより好ましい。
【0012】
本発明の方法においては、前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料であり、前記微小物体固定化工程は、前記微小物体を前記固相材料の表面又はその近傍に配した状態で光照射することにより前記固相材料に固定化する工程とすることができる。また、前記微小物体固定化工程に先立って、前記仲介物質を前記固相材料の表面に固定化する仲介物質固定化工程を備えることができる。さらに、前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料であり、
前記仲介物質固定化工程は、前記仲介物質を前記固相材料の表面又はその近傍に配した状態で光照射することにより前記固相材料に固定化する工程とすることができる。
【0013】
また、前記仲介物質の前記第1の要素は非共有結合性の相互作用とすることができ、好ましくは、前記非共有結合性相互作用は静電的相互作用又は親水性相互作用とすることができる。また、前記仲介物質は、前記微小物体の分子量よりも十分に小さい分子量を有することが好ましい。さらに、前記仲介物質は、前記微小物体の差し渡し径よりも十分に小さい厚みの層厚で前記固相材料の表面に準備されることが好ましい。
【0014】
また、前記仲介物質は、前記固相材料と相互作用可能な第2の要素を備えることができる。第2の要素の前記相互作用は、疎水性相互作用とすることができる。
【0015】
また、前記仲介物質は、ポリペプチド鎖を含むことができる。前記ポリペプチド鎖は、少なくとも片面側に優位に疎水性アミノ酸残基が配列される疎水性のα−へリックス構造を有することが好ましい。また、前記ポリペプチド鎖は、N末端領域又はC末端領域に前記第1の要素を備えることが好ましい。さらに、前記第1の要素は、前記ポリペプチド鎖のN末端領域にあってN末端の非酸性アミノ酸残基を含むことが好ましい。さらにまた、前記仲介物質はアミノ酸残基数が12以上20以下のポリペプチド鎖を含み、アミノ酸残基数が12以上20以下であり、疎水性アミノ酸酸残基を50%以上含むα−へリックス構造を有することが好ましい。
【0016】
本発明によれば、固相材料に固定化しようとする微小物体と相互作用可能な第1の要素を少なくとも有し、前記微小物体を固相材料に固定化するために前記固相材料の表面に固定される、微小物体の固定化用仲介物質が提供される。本発明の仲介物質においては、前記微小物体はポリペプチド鎖を有することが好ましく、より好ましくは抗体である。
【0017】
本発明の仲介物質は、その分子量が好ましくは5000以下である。また、鎖状構造を有する有機分子であることが好ましく、より好ましくはポリペプチド鎖を含んでいる。また、ポリペプチド鎖は、N末端領域又はC末端領域に第1の要素を備えることができる。さらに、第1の要素は前記ポリペプチド鎖のN末端領域にあってN末端の非酸性アミノ酸残基を含むことが好ましい。さらに、前記第1の要素は、前記ポリペプチド鎖のN末端から2番目又は3番目にセリン又はトレオニンを有することが好ましい。また、前記第1の要素は、そのN末端の3残基又は2残基が、表1から選択されるいずれかであることが好ましい。さらに、前記ポリペプチド鎖は、α-へリックス構造を有することが好ましい。
【0018】
本発明の仲介物質は、前記固相材料と相互作用可能な第2の要素を備えることができる。また、本発明の仲介物質はポリペプチド鎖を含み、疎水性アミノ酸残基を50%以上含むα−へリックス構造を有することができる。前記疎水性アミノ酸残基は、アラニン及びイソロイシンから選択されていてもよい。また、前記α−へリックス構造は、8個以上の疎水性アミノ酸残基が連続するアミノ酸配列からなる疎水性へリックス構造を有していてもよい。前記疎水性へリックス構造は、表2に示すアミノ酸配列から選択されるいずれかを有することができる。また、前記ポリペプチド鎖は、アミノ酸残基が12残基以上20残基以下であることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、微小物体が固定化された固相体であって、固相材料と、上記いずれに記載の仲介物質と、前記仲介物質を介して固相材料に固定化された微小物体と、を備える、固相体が提供される。前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料であり、前記微小物体は、前記微小物体を前記固相材料の表面又はその近傍に配した状態で光照射することにより前記固相材料に固定化されていることが好ましい。また、前記微小物体はポリペプチド鎖を含むことができ、抗体であってもよい。
【0020】
本発明によれば、微小物体を固定化するための固相担体であって、固相材料と、前記固相材料の表面に固定化される請求項16〜31のいずれかに記載の仲介物質と、を備える、固相担体が提供される。この固相担体において、前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料とすることができ、前記光応答性材料は、アゾ色素含有ユニットを備える(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ウレタン−アクリル系ポリマーのいずれかとすることができる。
【0021】
本発明によれば、微小物体を固定化するための固定化用固相担体の製造方法であって、固相材料を準備する準備工程と、上記いずれかに記載の仲介物質を前記固相材料の表面に固定化する仲介物質固定化工程と、を備える方法が提供される。
【0022】
本発明によれば、微小物体と他の成分との相互作用の検出方法であって、上記いずれかに記載の固相体上の前記微小物体に対して前記他の成分を供給して前記相互作用を発現させる工程と、前記他の成分と前記微小物体との前記相互作用を検出する工程と、を備える、方法が提供される。
【0023】
本発明によれば、微小物体を固相材料に固定化するための仲介物質のスクリーニング方法であって、前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質の候補としての2種類以上の試験化合物が表面に固定化された固相材料を準備する工程と、前記固相材料上の前記2種類以上の試験化合物の前記相互作用が発現可能な状況下で所定の微小物体を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程と、前記2種類以上の試験化合物の前記微小物体の固定化能を評価する工程と、を備える、方法が提供される。また、本発明によれば、微小物体を固相材料に固定化するための仲介物質のスクリーニング用固相担体であって、固相材料と、前記固相材料の表面に固定化され前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質の候補としての2種類以上の試験化合物と、を備える、固相担体も提供される。
【0024】
本発明によれば、微小物体のスクリーニング方法であって、前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する所定の仲介物質が表面に固定化された固相材料を準備する工程と、前記固相材料上の前記仲介物質の前記相互作用を発現可能な状況下で前記微小物体の候補としての2種類以上の試験化合物を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程と、前記2種類以上の試験化合物の固定化量及び/又は配向性を評価する工程と、を備える、方法が提供される。また、本発明によれば、微小物体のスクリーニング用固相担体であって、固相材料と、前記固相材料の表面に固定化され前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する所定の仲介物質と、を備える、固相担体も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の固相体の製造方法によれば、微小物体との相互作用を発現する第1の要素を有する仲介物質を固相材料表面に存在させることで、前記相互作用を発現させた状態で微小物体を固相材料に固定化することが可能となる。すなわち、仲介物質が微小物体と相互作用可能な第1の要素を有するため、微小物体の固定化量の増加や微小物体の配向を実現する特別の要素を微小物体にも固相材料にも導入することなく、微小物体の固定化量を増大したりその配向を促進して固定化したりできる。
【0026】
また、本発明の製造方法によれば、微小物体は仲介物質と相互作用すると同時に固相材料に固定化される。したがって、微小物体を、配向制御のための固相材料との直接的な接触や相互作用を回避し固相材料に固定化することができる。したがって、微小物体に対する固相材料に含まれる固定化のための要素の影響及び固相材料への固定化そのもの影響を低減することができる。
【0027】
本発明は、微小物体を固定化した固相体の製造方法、微小物体が固定化された固相担体、微小物体を固定化するための固相担体、固相担体の製造方法、各種固相担体や固相体の利用及び微小物体の固定化に用いる仲介物質に関する。以下、本発明の実施の形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1には、本発明の微小物体の固定化方法の一例を示し、図2には、光固定化用固相担体を例示し、図3には、本発明の固相体を例示する。
【0028】
(微小物体が固相材料に固定化された固相体の製造方法)
本発明の固相体の製造方法は、換言すれば、微小物体の固相材料への固定化方法でもある。以下の説明においては、本発明の固相体の製造方法を微生物の固定化方法として説明する。
【0029】
図1に示すように、本発明の微小物体の固定化方法は、固相材料10の固相材料準備工程と、微小物体4を固相材料10に固定化する微小物体固定化工程とを備えることができる。以下、まず、微小物体4、固相材料10及び仲介物質20について説明し、次いで、微小物体4の固定化のための工程について説明する。
【0030】
(微小物体)
微小物体は、有形である限り、その種類は特に限定されない。例えば、(1)金属、金属酸化物、半導体、セラミックス、ガラスなどの無機材料、(2)いわゆるプラスチックなどの有機材料、(3)タンパク質、核酸、糖類、脂質などの生体分子材料、(4)上記した(1)〜(3)の各種材料から選択される2種以上の材料を複合化した複合材料などから選ばれる1種又は2種以上の材料を用いることができる。好ましくは、生体分子材料である。
【0031】
(生体分子材料)
本発明の対象とする生体分子材料は、一分子のみを意味するものではなく、二分子以上からなる同種分子の集合体であってもよいし、異種分子との複合体であってもよい。さらに、多数の同種又は異種の分子から構成される、例えば自己組織体などの組織体であってもよい。
【0032】
生体分子材料としては、特に限定しないで、動物、植物、微生物、ウイルス等生物体に存在する、生物体が生産する又は生物体が代謝する天然由来の分子、これらを人工的に改変した分子であってもよいし、天然分子に依存しないで人工的に設計した分子であってもよい。また、生物から採取した分子のみならず、人工的に本来的にその分子が存在する生物体以外の生物において生産させた分子であってもよいし、生物体外で人工的に化学合成又は酵素等によって合成した分子であってもよい。
【0033】
生体分子材料としては、典型的には、ポリペプチド、核酸、糖類、脂質、骨形成材料などの生体材料、各種の生物細胞及びその一部、組織及び生物体自体などの生物材料が挙げられる。また、生体分子材料は、固相に固定化されるのに際して、他の有機材料及び/又は無機材料等と複合化されていてもよい。これらのうち、本固相材料に固定化する生体分子材料はポリペプチド鎖を含むことが好ましい。
【0034】
本明細書において、ポリペプチドとは、任意のサイズ、構造又は機能のポリペプチドを意味している。したがって、アミノ酸残基が30程度以下のオリゴペプチドも含まれる。ポリペプチドとしては、例えば、各種タンパク質、酵素、抗原、抗体、レクチン又は細胞膜レセプターが挙げられる。ポリペプチド鎖を含む微小物体4としては、抗体を好ましく用いることができる。なお、抗体は、天然の又は全体的若しくは部分的に合成的に産生された免疫グロブリンを意味する。特異的結合能を保持するその全ての誘導体も包含される。核酸は、1本鎖であっても、2本鎖であってもよい。人工及び天然を問わず、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、DNA−RNAキメラ及び塩基やその他の修飾体を含んでいてもよい。さらに、その鎖長も特に限定しない。
【0035】
なお、本発明において使用可能な光応答性成分及び微小物体としては、特開2003−329682号公報、特開2004−93996号公報、特開2004−251801号公報及び特開2007−51998号広報に記載の担体や光固定化材料を用いることができる。また、本明細書には、特開2003−329682号公報、特開2004−93996号公報、特開2004−251801号公報、特開2006−233004号、特開2006−321719号及び特開2007−51998号公報に記載されるすべての事項が引用により取り込まれるものとする。
【0036】
(固相材料)
本発明の固定化方法並びに後述する固相担体、微小物体固定化固相体等において用いる固相材料10としては、固定化しようとする微小物体4を、固相材料10を固定化できるものであればよい。微小物体4を固相材料10に固定化するための固定化原理としては、水素結合、疎水性相互作用、親水性相互作用、静電的相互作用等の非共有結合性相互作用、共有結合及び光照射による光変形に基づく光固定が挙げられる。
【0037】
固相材料10は、微小物体4を固相材料10に固定化する固定化原理に利用する要素を備えていることが好ましい。前記固定化原理として静電的相互作用を用いる場合には、例えば、固相材料10の表面にポリリジンやリジンなどのアミノ酸由来の正電荷を固相材料10の表面に備えることができる。
【0038】
前記固定化原理として、共有結合を用いる場合には、固相材料10は、その表面に微小物体4が有する官能基と共有結合可能な官能基を備えることができる。例えば、固相材料10は、微小物体4の備える官能基と架橋反応可能な架橋性官能基を備えていてもよい。架橋性官能基の種類は、固定化しようとする微小物体4の備える官能基や用いる手法によって選択することができる。例えば、微小物体4がアミノ基を備える場合には、NHS基、アルデヒド基、エポキシ基等の各種の架橋性官能基が挙げられる。さらに、微小物体4がチオール基を有する場合には、マレイミド基等の架橋性官能基が挙げられる。さらにまた、微小物体4が芳香族基を備える場合には、ジアゾニウム基等が挙げられる。
【0039】
また、微小物体4を固相材料10に固定化する固定化原理として共有結合を用いる場合であっても、上述のように固相材料10自身が微小物体4と共有結合可能な官能基を必ずしも備えている必要はない。微小物体4と固相材料10との間を架橋する多価架橋性のポリマーなどの多価架橋性化合物と官能基を備えていれば、微小物体4の備える官能基と共有結合が可能である。このような多価架橋性化合物が備える架橋性官能基としては、例えば、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基及びエポキシ基が挙げられ、これらの架橋サイトに対応する多価架橋性化合物としては、マルチアームPEG(日本油脂製)、EMCS、SPDP(以上、同仁化学製)、BS3、DMS、SMCC(以上、ピアス社製)が挙げられる。
【0040】
なお、このような微小物体4と固相材料10との共有結合による固定化のための上記した官能基等の要素は微小物体4の活性等を損なわない範囲で、このような官能基を本来的に備えていない微小物体4に付与されていてもよい。
【0041】
微小物体4への影響を考慮する観点、特に、微小物体4が生体分子材料である場合の活性確保の観点からは、微小物体4の固定化原理として光固定化を用いることが好ましい。光固定を固定化原理とすることは、微小物体4に配向等のための特別の要素を付与する必要がない点においても好ましい。
【0042】
ここで、光固定とは、光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料を固相材料10として用い、微小物体4を固相材料10の表面又はその近傍に配した状態で光照射することにより固相材料10に固定化するものである。光固定における光照射と光応答性成分と微小物体4の固定との関係は、必ずしも明らかになっているわけではないが、光固定は、少なくとも、光照射することにより、微小物体4の固相材料10への吸着量を増大可能な固定手法であると定義できる。
【0043】
光固定を利用する固相材料10は、固相材料10を構成するマトリックスに光応答性成分を有している。固相材料10のマトリックス(母相)は、光固定化可能に光応答性成分を保持できる限り、その材料は特に限定しない。例えば、低分子材料又は高分子材料を含む各種の有機材料、ガラスなどの無機材料、有機−無機複合材料等を用いることができる。光応答性成分のマトリックス中における分散性や保持能力等を考慮すると、高分子材料又は高分子材料を含む複合材料であることが好ましい。
【0044】
マトリックスを構成する高分子材料としては、特に限定しないで各種の熱可塑性又は熱硬化性ポリマーを用いることができる。例えば、(1)オレフィン系ポリマー、ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー、メタクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ジエン系ポリマーなどの炭素多重結合系モノマーの重合体、(2)環状エーテル系ポリマーなどの環状モノマーの重合体、(3)エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ウレア系ポリマーなどの2官能性モノマーの重合体などが挙げられる。これらのうち、共重合の簡便性を考慮すると、オレフィン系ポリマー、アクリル系ポリマー、メタクリル系ポリマーなどといった二重結合を有するモノマー(以下、二重結合性モノマーともいう)の重合体や、ウレタン系ポリマーが好ましい。より好ましくは、二重結合性モノマーである。特に、アクリル系ポリマーやメタクリル系ポリマー、アクリル−メタクリルコポリマーは、抗体等のタンパク質を固定化する際の非特異吸着が少ないため、抗体チップやマイクロリアクターなどにおいてバックグラウンドシグナルを効果的に抑制することができる。また、ウレタン系ポリマーやウレタン−(メタ)アクリル系ポリマーは、光変形量を増大させることができる点で本発明に好ましく用いることができるほか、アクリル系ポリマーより極性に富む表面が必要な場合にも好ましく用いることができる。
【0045】
マトリックスは、光応答性成分の分子構造変化等によって結果として形状変形(以下、光変形ともいう)を生じるように構成されていることが好ましい。本明細書において光変形とは、通常のマクロな意味での形状変化のほか、分子レベルでの運動による微小物体と固相材料表面との絡み合いなどによる変形も含む。このような変形の中には、変形量や変形形態の問題から通常の観察手段によっては明瞭に観察できないものもある。光変形は、光応答性成分がマトリックス材料中に存在することにより、光照射時に、例えば、マトリックス材料又は光応答性成分の体積、密度、自由体積などが変化することにより誘起されることにより生じると考えられる。
【0046】
(光応答性成分)
光応答性成分は、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる成分である。光により分子構造の変化が生じる現象は、フォトクロミズムと一般にいわれている。本発明で用いる光応答性成分としては、一般にフォトクロミック化合物といわれる化合物を用いることができるが、なかでも、光異性化を生じる化合物を用いることが好ましい。なお、光異性化等の分子構造変化を伴って又は光異性化等の分子構造変化を伴わないで光誘起配向、光会合等の分子配列の変化(特に異方的な変化)を生じる化合物も、固相材料表面での光固定化が可能である限り、本発明の光応答性成分として用いることができる。
【0047】
光応答性成分としては、こうした光固定にこれまで用いられてきている各種成分を用いることができる。光応答性成分としては、例えば、トランス−シス光異性化を生じる成分等の光異性化化合物等があり、例えば、アゾ化合物、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、ジアリールエテン化合物などの有機化合物、カルコゲナイトガラスと総称される無機材料などが挙げられる。
【0048】
光応答性成分としては、アゾ基(−N=N−)を有する色素構造を有する化合物(アゾ化合物)であることが好ましい。アゾ化合物は、光照射等によりシス−トランス異性化を起こし、この異性化による分子レベルの運動がマトリックス材料を可塑化させて変形を容易にする。なかでも、アミノアゾベンゼンやその誘導体の構造を持つアミノ型アゾベンゼン化合物が好ましい。アミノ型アゾベンゼン化合物は、典型的には、式(1)で表すことができる。
【化1】
【0049】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、置換基を表し、Xは、水素原子、電子吸引性置換基又は電子供与性置換基を表す。
【0050】
R1及びR2における置換基としては、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、アリール基、アリル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、アルキルアミノ基、アルキルアミド基、イソシアネート基、エポキシ基等を例示することができる。特に、R1及びR2における前記置換基の一方が、末端に重合性の二重結合等を有するアクリル酸や(メタ)アクリル酸等のアクリル系化合物及びその他の二重結合性成分であるときには、式(1)は、二重結合性モノマーを表すことができるほか、前記二重結合性成分に由来する重合基を備える光応答性ポリマーを表す。また、R1及びR2における前記置換基の一方が、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基等の重縮合又は重付加性の重合性成分であるときには、式(1)は、重合性モノマーを表すほか、前記重合性成分に由来する重合基を備える光応答性ポリマー(アゾ色素含有ユニットを有するポリマー)を表す。光応答性材料の変形性を考慮すると、光応答性材料のポリマー骨格が(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー又はウレタン-アクリル系ポリマーであることが好ましいことから、本発明の光応答性成分としては、(メタ)アクリル系モノマーやウレタン系モノマー又はこれらを含むポリマー((メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー又はウレタン−アクリル系ポリマー)であることが好ましい。
【0051】
また、Xにおける電子吸引性置換基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基、スルホ基等が挙げられる。また、電子供与性置換基としては、例えば、アミノ基、ジメチルアミノ基、アルキル基等が挙げられる。こうした置換基が結合したものは、光照射中にシス−トランスの異性化を繰り返すことによりマトリックス材料が大きな可塑化作用を有するものと考えられるため好ましい。なお、アゾ化合物である光応答性成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
このような光応答性成分は、マトリックス材料とは別個の成分としてマトリックス中に添加されていてもよいが、マトリックス材料の一部(主鎖又は側鎖)に化学的な結合を介して存在することが好ましい。また、光応答性成分は、マトリックスに均一に存在することが好ましい。こうすることで、固相材料の表面の所望の部位に微小物体を光固定化することができる。
【0053】
なお、微小物体4の固定化原理として、水素結合、疎水性相互作用、親水性相互作用等を利用する場合には、それぞれ適当な官能基や処理を固相材料10に施すことができる。このための手法は当業者において周知である。また、固相材料10における固有の固定化原理を発現する部分は、固相材料10の少なくとも表層側にあればよい。こうした固定化のための層は適当な担体上に担持されていてもよい。
【0054】
固相材料10の三次元形態は特に限定しない。フィルム状体、シート状体、板状体のほか、球状体、不定形状体、針状体、棒状体、薄片状体などの各種の形状を採ることができる。担体の表層への固定化層の付与は、スピンコート、ディップコート、インクジェットなどの既知の方法により行うことができる。
【0055】
固相材料10は、微小物体4を固定化するための固定化原理のための要素のほか、以下に説明する仲介物質20を固相材料10に固定化するための要素を備えていてもよい。こうした要素は、既に説明した微小物体3を固定化するために固相材料10が備えることのできる要素から選択して採用することができる。仲介物質20を固定するための要素は、仲介物質20の種類によっても異なるが、微小物体4を固定化するための固有の固定化原理のそれと同一であっても異なっていてもよい。
【0056】
したがって、固相材料10は、微小物体4を固定化するための要素と仲介物質20を固定化するための要素との2種類以上の異なる固定化原理のための要素を備えることもできる。例えば、固相材料10は、微小物体4を固定化するためのある種の架橋性官能基と仲介物質20を固定化するための他の種類の架橋性官能基とを備えることができる。微小物体4と仲介物質20とを異なる固定化原理で固定化できると、仲介物質20で微小物体4を配向させた後、微小物体4を固相材料10に固定化するとき、微小物体4の固定化操作が仲介物質20の固定状態に影響を及ぼすことがなく、微小物体4の意図した配向状態を容易にまた確実に得ることができる。
【0057】
また、固相材料10は、微小物体4と仲介物質20と同一の固定化原理で固定する要素を備えることもできる。例えば、微小物体4も仲介物質20も光固定により固相材料10に固定化するとき、固相材料10はこれらの固定化要素のために単一種類の光応答性成分を備えていればよい。なお、2種類以上の光応答性成分を固相材料10に含ませることにより、異なる波長域の光照射で微小物体4と仲介物質20とを固定化することもできる。
【0058】
なお、固相材料10は、仲介物質20を固定化するための要素を必ずしも備えていなくてもよい。例えば、固相材料10に対して単なるコーティング等で仲介物質20を固定化することもできるし、熱や圧力等を用いることで仲介物質20を固相材料10に固定化することもできる。
【0059】
(仲介物質)
仲介物質20は、少なくとも微小物体4と相互作用可能な第1の要素を有している。仲介物質20が第1の要素を備えていることで、微小物体4との相互作用による結合が可能となり、微小物体4の配向固定及び固定化量の増大が可能となる。
【0060】
(第1の要素)
第1の要素が微小物体4との間で発揮する相互作用は、特に限定
しないが、静電的相互作用、イオン性結合、水素結合、双極子相互作用、疎水性相互作用、親水性相互作用等の非共有結合性の相互作用であればよい。また、相互作用は、抗原−抗体、基質−酵素、リガンド−レセプター、核酸ハイブリダイゼーション、核酸−タンパク質の各種物質間における相互作用等の生体内における相互作用であってもよい。第1の要素における相互作用は、こうした各種相互作用のうち単独の相互作用であってもよいし、2種類以上を組み合わせた相互作用であってもよい。また、第1の要素は、仲介物質20において、1個であってもよいし、2個以上あってもよい。第1の要素が発現する相互作用は、静電的相互作用又は親水性相互作用を好ましく用いることができる。これらの相互作用は、特に微小物体4としてポリペプチド鎖などを有する生体分子材料との間において発現されるのに有利である。
【0061】
第1の要素は、好ましくは、静電的相互作用を発現する要素である。静電的相互作用を発現する要素は、例えば、負電荷を有していてもよいし、正電荷を有していてもよい。このような第1の要素としては、負の電荷を発生する酸性の官能基や正の電荷を発生する塩基性の官能基が挙げられる。酸性の官能基としては、特に限定しないが、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基等が挙げられる。好ましくは、カルボキシル基である。塩基性の官能基としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基などのアミノ基や第4級アンモニウム基が挙げられる。好ましくは、第1級アミノ基などのアミノ基である。
【0062】
(第2の要素)
仲介物質20は、固相材料10と相互作用可能な第2の要素を備えていてもよい。第2の要素を備えることで、固相材料10と相互作用による結合が可能となり、仲介物質20自身を固相材料10に対して配向固定することが可能となり、結果としてより確実に微小物体4を固相材料10に対して配向固定することが可能となる。また、仲介物質20を固相材料10に対して配向させることができることで、第1の要素を微小物体4に対して容易に露出させることができるため、微小物体4の固定化量を増大させることもできる。特に、仲介物質20を固相材料10に固定化するための原理が、光固定やコーティング等であって、特定の部位において固相材料10と固定させるものではない場合には、このような第2の要素を備えることで固相材料10の表面において仲介物質20を配向固定しやすくなる。
【0063】
第2の要素が固相材料10との間で発揮する相互作用は、特に限定しないで、第1の要素が発揮するのと同様の相互作用から適宜選択することができる。第2の要素の発揮する相互作用は、第1の要素が発揮する相互作用と同一であっても異なっていてもよいが、仲介物質20自身及び微小物体4を配向制御する観点からは異なっていることが好ましい。また、第2の要素における相互作用は、こうした各種相互作用のうち単独の相互作用であってもよいし、2種類以上を組み合わせた相互作用であってもよい。さらに、第2の要素は、仲介物質20において、1個であってもよいし、2個以上あってもよい。
【0064】
第2の要素は、一般的な固相材料10の性質等を考慮すると、疎水性相互作用を発現する要素であることが好ましい。このような第2の要素としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基、あるいは、フェニル基、ナフチル基等の芳香族官能基などの炭化水素基によって構成することができる。
【0065】
仲介物質20が第2の要素を備えるとき、仲介物質20における第1の要素と第2の要素との組み合わせは、どのようなものであってもよい。親水性相互作用と疎水性相互作用との組み合わせであってもよいし、静電的相互作用と疎水性相互作用との組み合わせであってもよい。これらの要素の組み合わせも微小物体4と固相材料10との関係によって適宜決定されればよい。
【0066】
(親水性領域及び疎水性領域)
仲介物質20は、親水性領域及び/又は疎水性領域を備えていることが好ましい。これらの領域は、第1の要素及び第2の要素またはいずれか一方として備えられていてもよいし、これらの要素とは別個の領域として備えられていてもよい。例えば、親水性領域は、仲介物質20において第1の要素であってもよいし第2の要素であってもよく、双方であってもよい。また、疎水性領域は、第1の要素でも第2の要素でも双方であってもよい。親水性領域及び疎水性領域は、それぞれ微小物体4や固相材料10との間で親水性相互作用及び疎水性相互作用を発揮できるほか、固相材料10に微小物体4を固定化する固定化環境や微小物体4を固定化した固相体の使用環境における仲介物質20の安定性や仲介物質20自体の固相材料10や微小物体4への配向性等に寄与することができる。また、仲介物質20における第1の要素及び第2の要素のそれぞれの配置や相互の位置関係を安定化して、微小物体4の配向制御を容易にすることが期待できる。
【0067】
既に説明したように、固相材料10に仲介物質20を固定化するための要素を備えることができるが、仲介物質20が、それ自身を固相材料10に固定化するための要素を備えることもできる。このような要素としては、既に説明した微小物体4と固相材料10との間の固定化原理のために固相材料10又は微小物体4が備えることができる要素を採用することができる。仲介物質20が備えるこのような要素は、微小物体4の固定化原理のために固相材料10や微小物体4が備えることのできる要素と同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、仲介物質20を固定するための固定化原理として共有結合を採用する場合には、仲介物質20を固定化するための要素として他の種類の架橋性化合物による共有結合を採用することが好ましく、仲介物質20はこのための要素を備えることができる。
【0068】
なお、固相材料10及び仲介物質20の双方に特別な要素を付与しなくても、仲介物質20及び固相材料10がそれぞれ備える官能基等の種類に応じて、これらの間に架橋等により共有結合を導入する化合物を供給して、両者を結合することもできる。
【0069】
仲介物質20は、第1の要素を備えており、微小物体4と相互作用しつつも固相材料10との間の固有の固定化原理で固相材料10に対して固定化できる限り、その構成材料は特に限定されない。仲介物質20としては、炭素原子間共有結合及び/又は炭原子−窒素原子間共有結合を有する有機分子、無機分子、複合分子(有機−無機複合材料)を適宜選択して用いることができる。
【0070】
有機分子としては、例えば、天然のポリペプチド鎖又は修飾したアミノ酸を含むポリペプチド鎖の各種誘導体、DNA、RNA等の核酸及び修飾塩基等を含む各種誘導体、脂質、多糖類、界面活性剤、有機ポリマーのほか各種の有機化合物が挙げられる。また、無機分子としては、金属単体、金属クラスター、金属化合物等が挙げられる。仲介物質20は、微小物体4及び第1の要素に発揮させる相互作用に応じて、さらに第2の要素に発揮させる相互作用に応じて適宜選択される。仲介物質20としては、好ましくは、有機分子を用いる。有機分子によれば、第1の要素や第2の要素を発現しやすいからである。
【0071】
仲介物質20の構造は、直鎖状又は分岐状の鎖状構造を取ることができることが好ましい。こうした仲介物質20によれば、分子に異方性を付与することが容易であり、この結果、第1の要素と第2の要素とを容易に付与できる。例えば、仲介物質20が直差状の鎖状構造を備えることで、一つの端部又は端部側に第1の要素を付与し、他の一つの端部又は端部側に第2の要素を付与することができる。また、直鎖状の鎖状骨格の異なる部分から分岐して複数個の第1の要素や第2の要素を付与することもできる。さらに、分岐状の鎖状構造の複数個の末端に第1の要素や第2の要素を付与することもできる。好ましくは、仲介物質20は、直鎖状の鎖状構造を有する。
【0072】
仲介物質20は、鎖状構造を有する有機分子であることが好ましい。すなわち、ポリペプチド鎖及び修飾したアミノ酸を含むポリペプチドの各種誘導体、DNA、RNA等の核酸及び修飾塩基等を含む各種誘導体、脂質、多糖類、界面活性剤、有機ポリマー等が挙げられる。鎖状構造は、直鎖状であってもよいし分枝状であってもよいが、好ましくは、直鎖状の構造であり、もっとも好ましくは1本鎖の構造である。有機分子であってかつ直鎖状構造を有する場合、仲介物質20において第1の要素の位置、範囲及び相互作用の種類並びに第2の要素の位置、範囲及び相互作用の種類に関して自由度が高くなる。例えば、一つの端部又は端部側に静電的相互作用に基づく第1の要素を付与し、他の一つの端部又は端部側に異なる相互作用、例えば、疎水性相互作用に基づく第2の要素を付与することも容易にできる。
【0073】
仲介物質20は、有機分子として少なくともポリペプチド鎖を有していることが好ましい。すなわち、仲介物質20は、ポリペプチド鎖単体又はポリペプチド鎖と他の分子との複合体であることが好ましい。ポリペプチド鎖は、鎖状構造、具体的には、直鎖状構造を有する典型的な有機分子である。ポリペプチド鎖は、各種のアミノ酸残基の有する特性に基づき、静電的相互作用、水素結合、疎水性相互作用、親水性相互作用などを発揮する第1の要素及び第2の要素を容易に仲介物質20に付与できる。また、ポリペプチド鎖のアミノ酸残基組成により親水性領域及び疎水性領域を容易に構築できる。さらに、ポリペプチド鎖は、ペプチド結合によりα−へリックスなどのヘリックス構造やβ−シート等のシート構造など剛直な二次構造を構築でき、当該二次構造に基づき双極子相互作用等を発現して、微小物体4や固相材料10に対してより選択的な相互作用を発現可能となり、微小物体4の固定量や配向性を高めることができる。
【0074】
なお、仲介物質20は、微小物体4と同種材料であってもよいし異種材料であってもよい。例えば、微小物体4がポリペプチド鎖を含むとき、仲介物質20にポリペプチド鎖を含めることができるし、仲介物質20をポリペプチド鎖を含まない界面活性剤としてもよい。
【0075】
(分子量)
仲介物質20の分子量は5000以下であることが好ましい。分子量が5000以下であると、固相材料10による微小物体4の固定化能を維持しつつ、仲介物質20による効果を得ることができるからである。より好ましくは3000以下である。また、微小物体4の分子量との関係においては、微小物体4の分子量の10分の1以下であることが好ましい。仲介物質20の分子量が微小物体4の分子量の10分の1を大きく超えると、固定化が妨げられやすくなるからである。微小物体4の分子量にもよるが、仲介物質20の分子量は、微小物体4の分子量の20分の1以下であることがより好ましい。
【0076】
仲介物質20は、微小物体4と同種材料であってもよいし異種材料であってもよい。例えば、微小物体4がポリペプチド鎖を含むとき、仲介物質20をポリペプチドとすることができるし、界面活性剤とすることもできる。
【0077】
以上説明した仲介物質20の各種態様に基づき、仲介物質20としての好ましい実施態様をより具体的に説明する。以下に説明する仲介物質20は、ポリペプチド鎖からなる又はポリペプチド鎖を有する微小物体4を固定化するのに好ましく用いることができるが、特に、固定化対象を限定するものではない。また、固相材料10は、ポリペプチドの特性等を考慮すると疎水性材料であることが好ましいが、これに限定するものではない。微小物体4を安定的に固定化できる観点からは、固相材料10及び固定化原理としては、光応答性材料及び光固定化であることが好ましい。
【0078】
仲介物質20がポリペプチド鎖を有するとき、第1の要素は、ポリペプチド鎖のN末端領域にあってもよいしC末端領域にあってもよい。双方にあってもよい。また、仲介物質20は、第1の要素として、微小物体4との間で静電的相互作用を発現可能な要素又は親水性相互作用を発現可能な要素を備えていることが好ましい。第1の要素が静電的相互作用を発現可能であるとき、電荷を備える微小物体4、特にポリペプチド鎖を備える微小物体4を効果的に配向することができるとともにその固定化量を増大することができる。また、第1の要素が親水性相互作用を発現可能であるとき、親水性側鎖を表面に露出した酵素や抗体などの微小物体4を効果的に配向することができる。より好ましくは第1の要素は静電的相互作用を発現可能な要素である。
【0079】
静電的相互作用を発現可能な第1の要素は、好ましくは正電荷を備えている。正電荷は、好ましくは、アミノ基(NH3+)によって付与されている。正電荷は、仲介物質20の端部に備えられていることが好ましい。仲介物質20が第2の要素を備える場合には、第2の要素とは反対側の端部に備えられていることが好ましい。
【0080】
ポリペプチド鎖を有する仲介物質20がアミノ基を静電的相互作用を発現する第1の要素として有するとき、アミノ基は、仲介物質20の一部を構成する有機基として備えられていてもよいが、好ましくはペプチド鎖の一部、好ましくはそのN末端のアミノ酸残基として仲介物質20に備えられている。N末端のアミノ酸残基のアミノ基は、ペプチド結合に関与しないため、周囲のpHに応じて陽イオンに解離し正に荷電する。通常は中性近傍で陽イオンに解離した状態となっている。
【0081】
正電荷を供与するアミノ酸残基としては、正電荷を相殺しない観点から、グルタミン酸やアスパラギン酸のように追加のカルボキシル基を有する酸性アミノ酸残基でないことが好ましい。すなわち、これらの酸性アミノ酸残基以外の非酸性アミノ酸残基であることが好ましい。
【0082】
また、正電荷を供与するアミノ酸残基は、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニンから選択される疎水性アミノ酸残基のいずれかであることが好ましい。微小物体4の配向制御の観点からは、より好ましくは、イソロイシン、バリン、アラニン、フェニルアラニン及びトリプトファンから選択されるいずれかである。微小物体4の配向制御及び固定化能の観点からは、イソロイシンが好ましい。
【0083】
さらに、N末端に正電荷を備える場合には、当該N末端から3残基以内(2残基目又は3残基目(好ましくは3残基目))にセリン、トレオニン、イソロイシン、アラニン、チロシン及びトリプトファンから選択されるいずれかであることが好ましく、より好ましくは、セリン、アラニン及びトレオニンのいずれかであり、さらに好ましくは、水酸基を備えるセリン及びトレオニンのいずれかであり、最も好ましくはトレオニンである。さらに、正電荷を備えるN末端及びその近傍(好ましくは、N末端から2残基目)には、グルタミン酸やアスパラギン酸などの追加のカルボキシル基を備える酸性アミノ酸残基がないことが好ましい。すなわち、当該部位には非酸性アミノ酸残基が配置されていることが好ましい。
【0084】
このようなN末端構造は、特に、微小物体4がポリペプチド鎖を含むときに効果的であり、さらに抗体であるときにおいてより効果的である。
【0085】
微小物体4が、抗体などポリペプチド鎖を含むときに好ましいN末端アミノ酸配列を表3に示す。表3において上段に記載の配列は配向性及び固定化を促進する配列であり、中段に記載の配列は上段に示す配列のなかでも高配向性の配列であり、下段に示す配列は、上段に示す配列のなかでも高い固定化能を呈する配列である。
【表3】
【0086】
仲介物質20が後述する疎水性領域を備えるとき、第1の要素は、これらの疎水性領域の一部としてその端部を構成していてもよいし、疎水性領域の端部に連結されていてもよい。例えば、疎水性領域が疎水性アミノ酸残基を有するα−へリックス構造を有するとき、第1の要素は、これらのポリペプチド鎖とともにα−へリックス構造を形成してそのN末端を構成していてもよいし、α−へリックス構造のN末端に連結されていてもよい。
【0087】
仲介物質20は、疎水性領域を有していることが好ましい。疎水性領域を有していることで、表面に疎水性を発現した固相材料10と疎水性相互作用が可能となり、光応答性材料などの固相材料10への仲介物質20の疎水性相互作用による配向や固定化が促進される。また、仲介物質20における親水性相互作用や静電的相互作用を発揮する第1の要素の配置を安定化することもできる。固相材料10の表面が疎水性であるときには、以下に説明する仲介物質20の疎水性領域は、第2の要素として固相材料10と相互作用して、仲介物質20を介した微小物体4の配向や固定化に寄与することができる。
【0088】
仲介物質20がポリペプチド鎖を含むとき、疎水性領域は、疎水性アミノ酸残基(イソロイシン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン、グリシン、トリプトファン、プロリン)の個数が、構成アミノ酸残基組成において優位であるアミノ酸配列とすることができる。すなわち、疎水性領域は、構成アミノ酸残基総数の50%以上が上記疎水性アミノ酸残基であるアミノ酸配列を有していることが好ましい。より好ましくは、疎水性アミノ酸残基比率が60%以上であり、さらに好ましくは70%以上であり、一層好ましくは80%以上であり、最も好ましくは90%以上である。なお、後述するように、α−へリックス構造の形成を考慮すると、疎水性アミノ酸残基として、イソロイシン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン及びトリプトファンから選択されるアミノ酸の酸残基を用いることが好ましく、アラニン及びイソロイシンをより多く含むことがより好ましい。
【0089】
また、疎水性アミノ酸残基以外のアミノ酸残基としては、システイン、トレオニン、セリン、チロシン、グルタミン及びアスパラギンなどの中性アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基がより多く含まれていることが好ましい。
【0090】
こうした疎水性領域は、後述するα−へリックス構造の形成を考慮すると、アミノ酸残基数で9残基以上であることが好ましい。また、この疎水性領域は、構成アミノ酸残基をアミノ酸として換算したとき合計分子量(アミノ酸換算合計分子量)が700以上であることが好ましい。
【0091】
また、仲介物質20のこのような疎水性領域は、ポリペプチド鎖としての性質上、α−へリックスやβシートなどの二次構造を採ることができるが、好ましくは、α−へリックス構造を有している。仲介物質20が、非常に安定な二次構造を伴うことで、第1の要素を安定配置することができるとともに、疎水性相互作用を確実に保持し発揮させることができる。また、疎水性領域としてのα−へリックス構造は、α−へリックスの片面側において疎水性アミノ酸残基に富んでいることが好ましい。α−へリックス構造の片面側に疎水性アミノ酸残基が優位に配列されていることで、安定した疎水性相互作用が発揮され、仲介物質20を固相材料10に対する配向性を高めることができる。
【0092】
ここで、ポリペプチドのα−へリックス構造においては、α−へリックス2回転分を一つのwheelとみなしたとき、図5(b)に示すWheel modelを構築することができる。例えば、このモデルにおいて、α−へリックスの片面、図においては下側(a,b,e,f)又は上側(c,d,g)の位置に配位されるアミノ酸残基組成において疎水性アミノ酸残基(イソロイシン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン、トリプトファン)が80%以上であること、より好ましくは90%以上であるアミノ酸配列を有する疎水性領域としてのα−へリックス構造であることが好ましい。疎水性のα−へリックス構造を構成するアミノ酸配列における疎水性アミノ酸残基は、α−へリックス構造を構成しやすいアラニン、ロイシン及びイソロイシンを優位に用いられていることがより好ましい。さらに好ましくは、アラニン及びイソロイシンを優位に用い、もっとも好ましくはアラニン及びイソロイシンのみを用いる。
【0093】
疎水性領域としてのα−へリックス構造としては、最も好ましくは、連続して7個以上、好ましくは8個以上、さらに好ましくは9個以上のアラニン残基及びイソロイシン残基のみから構成されるへリックス構造部分を備えることがさらに好ましい。
【0094】
仲介物質20がポリペプチド鎖を有する場合の好ましい疎水性領域としては、アミノ酸8個又は9個からなる以下の配列が挙げられる。最も好ましくは、AIAAIAAAIである。
【表4】
【0095】
こうした疎水性領域は、仲介物質20の第1の要素の反対側端部を構成していることが好ましい。仲介物質20がポリペプチド鎖を含むときには、このような疎水性領域は、当該ポリペプチド鎖のC末端領域に備えられていることが好ましく、より好ましくは、ポリペプチド鎖のC末端を構成している。
【0096】
なお、仲介物質20としてのポリペプチド鎖は、少なくともその一部に上記した疎水性領域としてα−へリックス構造を有することができるが、第1の要素を含んで全体としてα−へリックス構造を構成していてもよい。
【0097】
仲介物質20が、このような第1の要素と疎水性領域とを備えることができるが、全体がポリペプチドであってこうした第1の要素と疎水性領域を備えるとき、より好ましくは第1の要素と疎水性領域とからなるとき、全体としてアミノ酸残基数が12残基数以上であることが好ましい。また、上限は特に限定しないが、化学合成の場合の合成効率の観点及び光固定をする場合立体障害を抑制するため分子量5000以下とすることが好適であるとの観点から、20残基以下であることが好ましい。このような仲介物質20としては以下のアミノ酸配列を有するポリペプチドを好ましく用いることができる。
【表5】
【0098】
なお、ポリペプチド鎖を有する仲介物質20は、疎水性領域でないα−へリックス構造を備えていてもよい。
【0099】
次に、微小物体4の固相材料10への固定化工程について説明する。なお、以下の説明においては、これらの工程を、固相材料の準備工程、仲介物質の固定化工程、微小物体の固定化工程に分けて説明する。
【0100】
(固相材料の準備工程)
仲介物質20を介在させた状態で微小物体4を固相材料10に固定化するには、図1(a)に示すように、まず、固相材料10を準備する。図1(a)に示す例では、固相材料10は、基板状の担体12の表層に層状の固定化層として形成されている。
【0101】
(仲介物質の固定化工程)
次いで、図1(b)に示すように、固相材料10と微小物体4との間に仲介物質20を存在させることができるように、仲介物質20を固相材料10の表面に供給する。好ましくは、仲介物質20を固相材料10の表面に固定化する。
【0102】
仲介物質20は、固相材料10の表面に分散して固定化してもよいし、固相材料10表面の非特定領域、換言すれば固相材料10の表面全体に固定化してもよい。あるいは、特定のパターンに従って固定化してもよい。仲介物質20を固相材料10表面に供給する手法としては、従来公知の各種のコーティング法や印刷法(インクジェットも含む)を用いることができる。また、仲介物質20をパターニングするにも、従来公知の手法を採用できる。パターニングの一例としては、仲介物質20の液滴のスポットをアレイ状に供給することができる。
【0103】
仲介物質20を固相材料10の表面に固定化するには、固相材料10の種類や仲介物質20が備えることのある固相材料10への固定化のための要素の種類に応じて適切な手法を選択することができる。単に、乾燥や溶媒の留去に伴う固着であってもよいし、圧力を伴っていてもよい。また、仲介物質20及び/又は固相材料10が備えるこれらの固定化ための要素を用いてもよい。さらに、別途適当なバインダ成分を用いるものであってもよい。
【0104】
仲介物質20が第2の要素を備える場合には、仲介物質20は、固相材料10に対して固定化されやすくなっている。また、第2の要素を備えることで、容易に仲介物資20そのものを配向させて固定化することができる。
【0105】
仲介物質20を、微小物体4を固相材料10に固定化するのと同一の固定化原理で固相材料10に固定化してもよい。こうすることで工程を簡素化することができるとともに固相材料10が備えるべき仲介物質20の固定化のための要素を省略できる。このような固定化原理としては、光固定が好ましい。光固定であると、仲介物質20及び微小物体4のそれぞれの固定化時において光照射をするだけで固定化できるとともに仲介物質20及び微小物体4への固定化の際に生じる悪影響が低減できる。
【0106】
(光固定による仲介物質の固定化工程)
固相材料10として光応答性材料を用いる場合には、仲介物質20を光固定化することが好ましい。光固定化では、光応答性材料である固相材料10の表面又はその近傍に仲介物質20を供給し、光照射により仲介物質20を固相材料10の表面に固定化する。
【0107】
なお、仲介物質20の光固定に際し、仲介物質20の固相材料10の表面への供給に際しては、特に限定されないが、液状媒体を介して液状媒体に溶解又は懸濁させた状態で適用することが好ましい。液状媒体を利用すると、固相材料10の表面に仲介物質20を容易に展開させることができ、かつ、仲介物質20をその構造(例えば、仲介物質20がポリペプチドの場合など、その二次構造等)を維持して固定化することが可能であるからである。
【0108】
なお、液状媒体としては、水又は水を主媒体とする組成液が特に好ましい。水を主媒体とする組成液としては、仲介物質20の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、水、緩衝液、pHを調整した緩衝液等が挙げられる。また、液状媒体は、仲介物質20と固相材料10との相互作用を高めるようなものを選択することもできる。例えば、液状媒体のpH、電解質濃度、極性などを調整することにより相互作用を高めることができる。こうした液状媒体としては、水、水と相溶性のある有機溶媒である水性溶媒、非水性溶媒を単独であるいは組み合わせるなどしてもよい。また、固相材料10と仲介物質20との相互作用を高めるための上記液性を付与するのに必要な成分を添加してもよい。さらに、例えば、界面活性剤が液状媒体に添加されていてもよい。
【0109】
固相材料10に対して仲介物質20を供給後、固相材料10の表面上の仲介物質20に光照射することで仲介物質20を固相材料10の表面に固定化できる。光固定のための光照射の方法は特に限定しない。各種の伝播光、近接場光又はエバネッセント光などの任意の光が仲介物質20存在する固相材料10の表面又はその近傍に到達するように照射すればよい。さらに、光照射は公知の手法を用いて固相材料10上の一部に対して選択的に行うこともできる。また、レーザートラッピングを利用することもできる。
【0110】
光固定に用いる波長域は、光応答性成分において分子構造又は分子配列の変化を生じさせる波長域であればよい。こうした波長域に関する情報は、各種の入手可能な光応答性成分について容易に取得できるか又は使用に際して確認することができる。
【0111】
なお、光固定のための光照射については、特開2003−329682号公報、特開2004−93996号公報及び特開2004−251801号公報に既に記載される照射光や光照射方法を採用することができる。光固定化については、特開2003−329682号公報、特開2004−93996号公報及び特開2004−251801号公報において本出願人が開示しており、これらの方法を本発明における光固定化についても適用することができる。
【0112】
なお、仲介物質20の光固定化後、固相材料10の表面を洗浄して、固定化されない仲介物質20等を除去しておくことが好ましい。
【0113】
(微小物体の固定化工程)
次に、図1(c)に示すように、固相材料10の表面の仲介物質20が配置された領域に微小物体4を供給して、微小物体4と固相材料10との固定化原理に基づいて微小物体4を固相材料10に固定化する。このとき、仲介物質20が微小物体4と相互作用する第1の要素を備えているため、微小物体4は、仲介物質20が存在する領域に接近しやすくなっている。また、微小物体4は、仲介物質20の第1の要素と相互作用して一定の配向性を備えることができるようになっている。こうした状態で両者間の固定化原理、例えば、共有結合、静電的相互作用、光固定等により微小物体4を固相材料10の表面に固定化する。こうすることで、図1(d)に示すように、微小物体4は、固相材料10の影響が回避又は抑制された状態で固相材料10に固定化される。すなわち、固相材料10に仲介物質20を介して微小物体4が固定化された固相体2を得ることができる。
【0114】
また、微小物体4は、仲介物質20の有する第1の要素による相互作用の結果、微小物体4を固相材料10表面において一定の配向を付与されて固定化される。特に、仲介物質20が第2の要素を備える場合には、仲介物質20が一定の配向性で固相材料10に固定化されているため、より高精度に微小物体4を固相材料10に対して配向制御することができる。さらに、第1の要素のために、微小物体4の固相材料10に対する固定化量も増大されている。本発明方法によれば、第1の要素を備える仲介物質20を用いるため、配向制御のための要素を微小物体4に追加することが回避されている。このため、微小物体4を容易に配向でき、また、微小物体4の活性や安定性にこうした追加の要素が影響することが低減されている。
【0115】
なお、仲介物質20は、微小物体4と固相材料10との固定化を妨げない程度に微小物体4と固相材料10との間に存在されている。これは仲介物質20自体の分子量や微小物体4の分子量との関係で実現されるほか、仲介物質20の固相材料10への固定化の際の層厚を、微小物体4の差し渡し径よりも十分に小さくすることでも実現することができる。仲介物質20の固定化層の厚みが微小物体4の直径など差し渡し径よりも十分に小さければ、仲介物質20により微小物体4と固相材料10との直接の接触を回避又は抑制しても、固有の固定化原理により固定化を確保することができる。例えば、固定化された仲介物質20の固定化層の層厚が微小物体4の直径の1/2以下であることが好ましい。より好ましくは、仲介物質20の固定化層の層厚は約1nm以下である。
【0116】
この固定化工程において、固相材料10が光応答性材料であり、固有の固定化原理が光固定の場合、仲介物質20を光固定し、さらに仲介物質20とこれと相互作用している微小物体4とを併せて固相材料10に光固定化することができる。特に、このような2段階で光固定を利用する場合、仲介物質20の存在によって、仲介物質20を使用しない場合に比較して微小物体4の配向性を高めることができる。また、光固定によれば、本来的に微小物体4側に特別な固定化のための要素を必要としないが、仲介物質20を用いることにより、配向のための要素も微小物体4に導入する操作を排除することができる。さらに、このため、簡易に微小物体4の配向が可能となるとともに、配向のための要素を微小物体4に導入することによる微小物体4の活性低下や安定性低下などの不都合を排除できる。
【0117】
微小物体4の光固定は、仲介物質20の光固定の場合と同様に実施することができる。すなわち、微小物体4を仲介物質20又はその近傍に対して供給し、その後光照射すればよい。なお、仲介物質20を光固定したときでも、この仲介物質20を利用して微小物体4を光固定することができる。このことは、光応答性材料の表面に仲介物質20を存在させたときにも、当該仲介物質20を介して及び/又は仲介物質20とともに重ねて微小物体4を光固定することができることを意味している。このような光照射の繰り返しによって、2以上の微小物体(ここでは仲介物質20と微小物体4に相当する)を2段階以上に光固定化できることは、従来全く知られておらず、予想されていなかった。
【0118】
以上説明したように、本発明の微小物体の固定化方法によれば、微小物体4を固相材料10に配向して固定化するのに際して、固相材料10に存在させた仲介物質20に微小物体4を配向する第1の要素を備えるため、微小物体4に配向のための要素を別途導入することなく微小物体4を容易にかつ微小物体4の活性を維持して固相材料4に配向固定することができる。また、微小物体4と固相材料10との間の配向のための直接的な相互作用を回避又は抑制して微小物体4を固相材料10に配向固定化することができる。以上のことから、微小物体4を固相材料10に配向させることによる微小物体4に対する悪影響を低減することができる。さらに、仲介物質20によりまた微小物体4の固定化量を増大することができる。
【0119】
また、微小物体4を、仲介物質20を介して固定化することで、微小物体4は、固相材料10に直接接触することによって活性や保存安定性等が低下することが抑制又は回避され、配向性の付与によってより微小物体4の活性が確保された状態で固定化することができる。すなわち、活性周辺が固定化による悪影響(固定化による活性部位の消滅や固定化による機能実現のために必要な立体構造変化の妨害)を受けることなく固定化される。
【0120】
さらに、微小物体4を光固定化により固定化する場合には、固相材料10の光変形によって微小物体4が固定化されるため、微小物体4は固相材料10の影響を大きく受ける可能性があったが、仲介物質20を介在させること及びそれによる配向固定によって、一層、微小物体4の安定性や活性を向上させた状態で固相材料10に固定化することができる。
【0121】
(微小物体の固定化用固相担体)
本発明の固相担体は、固相材料と、少なくとも微小物体と相互作用可能な第1の要素を有して固相材料の表面に固定化された仲介物質と、を備えることができる。本発明の固相担体は、微小物体の固定化用とすることができる。本発明の固相担体によれば、仲介物質によって微小物体を配向固定ができるようになるとともに、微小物体と固相材料との直接の接触を回避又は抑制した状態で微小物体を固相材料に固定化できる。このため、微小物体の安定性や活性を向上させた状態で微小物体を固相材料に配向して固定化できる。
【0122】
本発明の固相担体において、固相材料は光応答性材料であることが好ましい。固相材料10が光応答性材料であると、仲介物質を光固定化できるとともに微小物体4も光固定できる。また、光応答性材料は、アゾ色素含有ユニットを備える(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ウレタン−アクリル系ポリマーのいずれかであることが好ましい。さらに、微小物体4がポリペプチドであるとき、仲介物質20はポリペプチドを含むことが好ましい。仲介物質20がポリペプチドであるとき、α−ヘリックス構造を備えることが好ましく、より好ましくは、このα−ヘリックス構造は構成アミノ酸残基の50%以上が疎水性アミノ酸残基である。さらに、α−ヘリックス構造のN末端又は当該N末端に連結して正電荷を備えることが好ましい。また、仲介物質20であるポリペプチドは、全体としてアミノ酸残基が12残基以上20残基以下であることが好ましい。
【0123】
本発明の固相担体を、図2(a)を参照して説明する。固相担体32は、例えば、図2(a)に示すように、固相材料10の表面にドット状に仲介物質20を備えることもできるし、図2(b)に示すように、固相材料10の表面に全体に仲介物質20を備えることもできる。なお、固相担体32は、図2に示す形態に限定するものではなく、本発明の微小物体の固定化方法において説明した固相材料が取りうる形態及び好ましい形態を全て適用することができる。同様に、固相担体32における仲介物質20及び微小物体4には、本発明の固定化方法において説明した仲介物質及び微小物体が取りうる形態及び好ましい形態を全て適用することができる。
【0124】
(固定化用固相担体の製造方法)
本発明の固定化用固相担体の製造方法は、固相材料を準備する準備工程と、少なくとも前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質を前記固相材料の表面に固定化する仲介物質固定化工程と、を備えることができる。この製造方法によれば、微小物体への活性等の低下を回避又は抑制しながら微小物体を配向固定や固定化量の増加を実現可能な固相担体を提供できる。この製造方法における固相材料、仲介物質微小物体及び仲介物質の固定化については、本発明の微小物体の固定化方法における固相材料、仲介物質及びその固定化並びに微小物体が取りうる形態及び好ましい形態を全て適用することができる。
【0125】
本発明の製造方法は、例えば、本発明の微小物体の固定化方法における、固相材料の準備工程(図1(a))と、仲介物質の固定化工程(図1(b))として実施することができる。仲介物質の固定化工程は、光照射により仲介物質を固相材料表面に固定化することが好ましい。仲介物質と微小物体とを2段階で光固定化することで、微小物体4に対して一層緩和された条件でかつ活性発現に有効な状態で微小物体4を固相材料10に固定化できる。
【0126】
(微小物体が固定化された固相体)
本発明の固相体は、固相材料と、少なくとも微小物体と相互作用可能な第1の要素を有して固相材料の表面に固定化された仲介物質と、仲介物質を介して固相材料に固定化された微小物体とを備えることができる。本発明の固相体によれば、微小物体が仲介物質により配向制御され、かつ、微小物体は仲介物質を介して固相材料に固定化されているため、微小物体の活性や安定性等が確保されつつ配向されている。
【0127】
本発明の固相体を、図3(a)及び図3(b)を参照して説明する。固相体2は、例えば、図3(a)に示すように、固相材料10の表面にドット状に仲介物質20を備え、さらに、こうした個々の仲介物質20に対して個別に微小物体4が固定化されていてもよいし、図3(b)に示すように、固相材料10の表面に全体に固定化された仲介物質20の表面に、異なる微小物体4が固定化されていてもよい。
【0128】
本発明の固相体は、図3に示す形態に限定するものではなく、本発明の固相体における固相材料、仲介物質及びその固定化、微小物体については、本発明の光固定化方法における固相材料、仲介物質及びその固定化並びに微小物体のうち光固定化を目的として使用できる形態及び好ましい形態を全て適用することができる。
【0129】
このような固相体においては、微小物体がポリペプチドであることが好ましい。ポリペプチドは、活性発現のために活性部位の露出及び活性発現のための立体構造変化が重要であり、これらは、配向制御により始めて確保されるからである。また、ポリペプチドは、固相材料によっても活性や安定性が大きく影響を受けるからである。
【0130】
固相体2は、微小物体4を活性や安定性等に有利な状態で固定されているため、分析や診断用途に適している。また、光固定は、抗体を含むタンパク質、糖鎖、核酸及び細胞等の生体材料及び生物材料の固定化に適している。したがって、本発明の固相体30は、タンパク質、酵素、抗体チップ、糖鎖チップ、DNA等の核酸チップ、細胞チップ等の分析ないし診断用デバイスに好適である。また、酵素、細胞などを固相担体2に固定化したバイオリアクターにも好適である。光学的検出特性が優れるために、リアクターの設計や制御が容易であり、また、微小物体4の保持安定性に優れるからである。したがって、高効率なバイオリアクター、特にマイクロリアクターを作製することができる。
【0131】
(微小物体と他の成分との相互作用の検出方法)
本発明の微小物体と他の成分との相互作用の検出方法は、本発明の固相体に固定化された微小物体に対して他の成分を供給して相互作用を発揮させる工程と、前記他の成分と前記微小物体との相互作用を検出する工程と、を備えることができる。本発明の検出方法によれば、相互作用などの活性や安定性確保のために有利な状態で微小物体が固定化されているため、精度、感度等の良好な相互作用の検出が可能である。ここでいう相互作用とは、静電的結合性相互作用、イオン結合性相互作用、水素結合性相互作用、疎水性相互作用、親水性相互作用等が挙げられる。また、例えば、リガンドと該リガンドに対するレセプター間における相互作用、特定のアミノ酸配列や構造を有するタンパク質とこのタンパク質と親和性を有するタンパク質などの物質との間の相互作用、酵素と該酵素に対する基質との相互作用、抗原と該抗原に対する抗体との相互作用、特定塩基配列を有する核酸又は修飾核酸と、該核酸又は修飾核酸の特定塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する核酸又は修飾核酸との相互作用等をあげることができる。本検出方法においては、微小物体20は生体材料や生物材料等の生体分子材料であることが好ましく、また、こうした相互作用を光学的シグナルで検出することが好ましい。
【0132】
(仲介物質のスクリーニング方法及び仲介物質スクリーニング用固相体)
本発明の仲介物質のスクリーニング方法は、微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質の候補としての2種類以上の試験化合物が表面に固定化された固相材料を準備する工程と、前記固相材料上の前記2種類以上の試験化合物の前記相互作用が発現可能な状況下で所定の微小物体を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程と、前記2種類以上の試験化合物の前記微小物体の固定化能を評価する工程と、を備えることができる。このスクリーニング方法によれば、微小物体の配向を制御して固相材料に固定化するのに適した仲介物質をスクリーニングすることができる。
【0133】
スクリーニング対象となる試験化合物は、特に限定しないが、本発明の固定化方法において説明した仲介物質が取りうる態様を備えることができる。すなわち、第1の要素、第2の要素、疎水性領域、親水性領域等についての各種実施態様を備えることができる。試験化合物は、好ましくはポリペプチドである。試験化合物をポリペプチドとするとき、試験化合物は、分子量(5000以下);アミノ酸残基数;疎水性領域の有無(好ましくはC末端領域);疎水性領域のアミノ酸残基換算分子量(700以上)及びアミノ酸残基数、ヘリックス構造の有無、そのアミノ酸残基組成;静電的相互作用部位(好ましくは正電荷であり好ましくはN末端領域、より好ましくはN末端)の有無、静電的作用部位のアミノ酸残基組成に関して、既に説明した各種形態に基づいて設計することができる。具体的には、ポリペプチドのアミノ酸残基組成(配列)を決定する。アミノ酸配列の決定には、上記要件のうち一部又は全部を充足するアミノ酸配列を探索するアルゴリズムを指示するプログラムを用い、コンピュータにこのプログラムを実行させることが好ましい。また、2種類以上の試験化合物は、固定化しようとする微小物体の特性を考慮して、その構造や組成が選択されることが好ましい。
【0134】
こうしたアルゴリズムは、例えば、探索要件となるポリペプチドの分子量等に関する要件情報を取得するステップと、取得した要件情報に基づいてこれらの要件を充足するアミノ酸配列を創出するステップと、を備えることができる。要件情報取得ステップは、各種要件を操作者が任意にあるいは予め設定された範囲から選択してキーボード等から入力等させることで、コンピュータ、すなわち、CPUが要件情報を取得するステップである。このため、要件情報取得ステップは、各種要件の問い合わせ画面をディスプレイ等に表示するステップを包含していてもよい。一部の要件は、予め固定されていてもよい。
【0135】
アミノ酸配列創出ステップは、取得した要件情報に基づいてCPUがアミノ酸配列を創出する工程である。アミノ酸配列を創出する具体的アルゴリズムは特に限定しないが、公知のアクセルリス社Insght II等のアルゴリズムやプログラムを利用できる。なお、アミノ酸配列の創出にあたっては、上記した要件情報以外にヘリックス構造の形成しやすさ、各種アミノ酸の性質(疎水性、親水性、酸性、塩基性等)に関する情報を利用することが好ましい。このようなポリペプチドからなる試験化合物は、コンビナトリアルケミストリーにより取得することで準備することができる。
【0136】
このスクリーニング方法においては、固相材料は光応答性材料であることが好ましく、試験化合物は光固定により前記固相材料に固定化されていることが好ましい。こうすることで、光固定による微小物体の二段階固定(仲介物質の固定及び微小物体の固定)に適した仲介物質を試験化合物からスクリーニングすることができる。
【0137】
試験化合物及び所定の微小物体を固定化する工程については、既に説明した本発明の固定化方法における仲介物質及び微小物体の固定化において取りうる各種実施態様を適用することができる。また、固定化する微小物体は、1種類であってもよいし2種類以上であってもよい。
【0138】
試験化合物による微小物体の固定化能を評価するには、微小物体の固定化量を評価できるようにしておくことが好ましい。例えば、微小物体に光学的シグナルなどのシグナル発生要素を予め付与し、このシグナルを検出することができる。例えば、Cy3、Cy5等の蛍光色素によって標識しておくことが挙げられる。なお、微小物体にシグナル発生要素を付与しない場合には、微小物体を認識する標識抗体を用いて、固定化した微小物体の固定化量を評価することもできるし、微小物体を何らかの反応、呈色反応、発光反応等により定量的に検出することもできる。
【0139】
本スクリーニング方法の固定化能の評価工程においては、試験化合物による配向制御を伴う微小物体の固定化能を評価することもできる。このためには、固定化する微小物体の特定部位とのみ反応する成分を固定化した微小物体に供給して、その反応生成物の量を検出すればよい。配向制御を伴う固定化能の評価には、固定化した微小物体の活性(機能)の評価を用いることができる。例えば、微小物体として抗体を使用し、反応成分として抗体の抗原認識部位によって認識され捕捉される標識抗体、標識酵素などの標識化合物を使用できる。また、微小物体として酵素を使用し、反応成分としてこの酵素の基質や補酵素を使用し、反応生成物を定量的に検出してもよい。
【0140】
なお、固相材料と、固相材料の表面に固定化され微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質の候補としての2種類以上、好ましくは10種類以上の試験化合物と、を備える、固相体は、所定の微小物体の固定化のための仲介物質用のスクリーニング用固相体として利用できる。このスクリーニング用固相体は、仲介物質の固定化能を一挙に一覧して効率的に評価できるように基板状の固相材料を備えていることが好ましく、より好ましくは、試験化合物をアレイ状に備えている。さらに好ましくは、固相材料は光応答性材料であり、試験化合物及び/又は微小物体を光固定により固相材料に固定化される。こうしたスクリーニング用固相体に利用できる固相材料及びポリペプチド並びに固相体の製造法に関しては、既に本発明の微小物体の固定化法や本発明の光固定化用光固相担体について開示されている各種態様及び好ましい態様をそのまま適用できる。
【0141】
(微小物体のスクリーニング方法及び微小物体のスクリーニング用固相体)
本発明の微小物体のスクリーニング方法は、前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する所定の仲介物質が表面に固定化された固相材料を準備する工程と、前記固相材料上の前記仲介物質の前記相互作用を発現可能な状況下で前記微小物体の候補としての2種類以上の試験化合物を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程、前記2種類以上の試験化合物の固定化量及び/又は配向性を評価する工程と、を備えることができる。このスクリーニング方法によれば、所定の仲介物質を利用して配向を制御して固相材料に固定化するのに適した微小物体を試験化合物からスクリーニングすることができる。
【0142】
スクリーニング対象となる試験化合物は、特に限定しないが、本発明の固定化方法において説明した微小物体が取りうる態様を備えることができる。試験化合物は、好ましくは、ポリペプチドである。また、所定の仲介物質としては、本発明の固定化方法で説明した仲介物質のほか、仲介物質のスクリーニング方法によって選抜された試験化合物を用いることもできる。
【0143】
なお、本発明のスクリーニング方法においても、固相材料は光応答性材料であることが好ましく、試験化合物は光固定により前記固相材料に固定化されていることが好ましい。こうすることで、光固定による微小物体の二段階固定(仲介物質の固定及び微小物体の固定)に適した微小物体を試験化合物からスクリーニングすることができる。
【0144】
所定の仲介物質及び試験化合物を固定化する工程については、既に説明した本発明の固定化方法における仲介物質及び微小物体の固定化において取りうる各種実施態様を適用することができる。また、固定化する所定の仲介物質は、1種類であってもよいし2種類以上であってもよい。
【0145】
微小物体の固定化量や配向性を評価するには、仲介物質のスクリーニング方法において説明下のと同様の方法を採用することができる。すなわち、スクリーニング対象である試験化合物に対して予めシグナル発生要素を付与したりすることができる。
【0146】
なお、固相材料と、前記固相材料の表面に固定化され前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する所定の仲介物質と、を備える、固相担体は、微小物体用のスクリーニング用固相体として利用できる。このスクリーニング用固相体も、仲介物質のスクリーニング用固相体と同様、基板状の固相材料を備えていることが好ましく、より好ましくは、所定の仲介物質をアレイ状に備えている。さらに好ましくは、固相材料は光応答性材料であり、試験化合物及び/又は微小物体を光固定により固相材料に固定化される。こうしたスクリーニング用固相体に利用できる固相材料及びポリペプチド並びに固相体の製造法に関しては、既に本発明の微小物体の固定化法や本発明の光固定化用光固相担体について開示されている各種態様及び好ましい態様をそのまま適用できる。
【0147】
以下、本発明を、具体例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0148】
(仲介分子の設計:合成ペプチド)
仲介分子として、図4に示す20残基のαへリックス型のペプチド(配列番号:46〜101)を設計し、ペプチドライブラリーを化学合成した。これらのペプチドは、図5(a)に示すように、αへリックスを形成した場合、少なくとも半面に疎水性アミノ酸残基が優位に配列されており疎水性となっている。すなわち、図5(b)に示すように、αヘリックス構造の2回転分をWheelとするWheel modelを構築し、αヘリックスの回転方向に沿ったアミノ酸配列(a,b,c,d,e,f,g)のa,b,e,fに疎水性アミノ酸残基を配位した。なお、これらの合成ペプチドは、いずれもアミノ酸残基が20個以下であり、分子量は5000以下(700〜2200)であった。
【実施例2】
【0149】
(固定化能の評価)
100μg/mLの合成ペプチド水溶液1μLをアゾフィルムに滴下し、真空乾燥した後、0.5時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)した。その後、さらにTPBSにて5分間、3回の洗浄を行い、合成ペプチドを光固定化した。これに1μg/mLのCy5-標識 Goat anti mouse IgG (CHEMICON社製、AP127S)/ TPBS溶液50μLを滴下し、ギャップカバーグラスで覆った上で、これを17時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)して抗体を光固定化した。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しペプチドを滴下したスポットの蛍光量を測定した。結果を図6に示す。
【0150】
図6に示すように、ペプチドを固定化したスポット(1〜56)のうち一部のスポットの蛍光強度は、ペプチドを固定化していない領域の蛍光強度に対して、有意に高かった。このことは、仲介分子である合成ペプチドが溶液中の抗体に対し親和力を持ち抗体をアゾフィルム表面上に吸着させることができることを支持している。
【0151】
なお、本実施例及び以下の実施例で用いたアゾフィルムは、以下の式に示すアゾポリマー(m:n=15:85)を用いたものである。アゾフィルムは、このアゾポリマー200mgをピリジン溶液16mlで溶解後、0.22μmのフィルタでろ過し、アセトン含浸コットンで拭いたスライドガラスを乾燥した後、スピンキャスト機にて80μlのポリマー溶液を滴下し、4000rpmで10秒間回転させた後、60℃で2時間乾燥後、遮光下真空乾燥して作製した。
【化2】
【実施例3】
【0152】
(光照射の効果の評価)
実施例2の実験操作において光照射(25℃、17時間)を行った場合と行わなかった場合の光固定化量の差を評価した。結果を図7に示す。
【0153】
図7に示すように、複数のペプチド(No.1,2,6,8,9,12,14,21,30,31,32,33,34,35,40,41,45,46,50,52,53,54,55,56)で抗体の存在下、光照射することによって蛍光量が増加した。このことは、アゾフィルムは、仲介分子である合成ペプチドを介した状態においても抗体を固定化する作用を有することを強く支持している。仲介物質が存在した状態における光照射による固定化能の維持は、光固定の固定化原理が表面変形によるものであることに関連しており、微小物体と担体とが直接相互作用していると考えられた。
【実施例4】
【0154】
(20残基αへリックスペプチドを用いた場合の固定化抗体と配向性の評価)
(1)固定化抗体の評価
実施例2に記載したのと同様の方法で合成ペプチドをコーティングした。これに1μg/mLのanti goat IgG rabbit-IgG(Bethyl社製、A50-100A)/ TPBS溶液50μLを滴下し、これを17時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)して、抗体を光固定した。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。これに対して、1μg/mLのCy5-標識 Goat anti mouse IgG (CHEMICON社製、AP127S) / TPBS溶液50μLを滴下し30分間、25℃で反応させた。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しペプチドを滴下したスポットの蛍光量を測定し、固定化抗体能を評価した。各ペプチドに関して、固定化能(実施例2)と本実施例で評価した固定化抗体能の関係を図8に示す。図8には、抗体溶液をアゾフィルムに滴下し乾燥後光固定をした場合(従来法)を併せて示す。
【0155】
図8に示すように、抗体溶液をアゾフィルムに滴下し乾燥後光固定をした場合(従来法)と比較して、固定化抗体能が高いものペプチド (ペプチドNo.50, 53) は、抗体の活性部位が溶液側に向く傾向にあり、抗体の配向性を改善していると考えられた。一方で固定可能に対して固定化抗体能が低いペプチド(ペプチドNo.3, 30, 40)は、抗体の活性部位がアゾフィルム側に配向していると考えられた。このことは、二段階固定化法が固定化抗体の配向性を制御することができることを支持している。
【実施例5】
【0156】
(N末端認識型ペプチドを用いた場合の固定化抗体能と配向性)
100μg/mLの合成ペプチド(図9)をアゾフィルムに0.1μL滴下し、真空乾燥した後、0.5時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)した。その後、TPBSにて5分間、3回の洗浄を行い、合成ペプチドを固定化した。ペプチドを滴下し固定した各位置に対し0-400ng/mLのRabbit anti goat IgG / TPBS溶液1μL 滴下した。これを17時間、25℃で25℃で光照射(20 mW/cm2)しつつインキュベートした。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。
【0157】
(固定化能の評価)
ペプチドを固定化したアゾフィルム上に1μg/mLのCy5-標識 Mouse anti Rabbit IgG (AP188S) / TPBS 溶液を滴下して、25℃にて30分間反応させ、その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しCy5の蛍光量を測定し、ペプチドを滴下したスポットの蛍光量を定量した。
【0158】
(固定化抗体能の評価)
また、ペプチドを固定化したアゾフィルム上のペプチド上に1μg/mLのCy5-標識 Mouse anti Goat IgG (AP127S)/ TPBS 溶液を滴下し、25℃にて30分間反応させ、その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しCy5の蛍光量を測定し、ペプチドを滴下したスポットの蛍光量を定量した。
【0159】
なお、従来法は、合成ペプチドを滴下する工程に合成ペプチドに替えて0-400ng/mLのRabbit anti goat IgG / TPBS溶液0.1μL 滴下し、光固定した。
【0160】
配向性は、固定化能あたりの固定化抗体活性を指標とし、従来法を1として各ペプチドを固定化した場合の値を算出した。その結果を図9に示す。
【0161】
図9に示すように、ペプチドを二段階で光固定することにより、従来法と比較して、2.3倍から5倍の高い値が得られた。このことは、二段階固定化法が固定化抗体の配向性を制御することができる可能性があることを支持している。また、ペプチドを介することにより抗体に対する保護作用が働いていることも支持している。
【実施例6】
【0162】
アゾフィルムにStabilGuard Biomolecule Stabilizer (SurModics社 SG01-0125)の原液を50μL滴下し、30分間、室温で反応させ、その後TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。この処理により、アゾフィルムの表面は親水化し、ポリマー成分(蛋白成分は不含)がコーティングされていることが推測された。
【0163】
(固定化能の評価)
このポリマー成分上に、100-500ng/mLの濃度のCy5-標識 Mouse anti Goat IgG (AP127S)/ TPBS 溶液1μLを基板に滴下し、これを真空乾燥し、0.5時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)した。その後、これをTPBS溶液に浸し、5分間振とうすることによって洗浄した。これに1μg/mLのCy5-標識 Mouse anti Goat IgG (AP127S)/ TPBS 溶液を滴下し、25℃にて30分間反応させ、その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーに設置しCy5の蛍光量を測定した。
【0164】
(固定化抗体能の評価)
また、同様に、0-400ng/mLのRabbit anti goat IgG (A50-100A)/ TPBS溶液 1μLを基板に滴下し、これを真空乾燥した。その後、これをTPBS溶液に浸し、5分間震とうすることによって洗浄した。これに1μg/mLのCy5-標識 Mouse anti Goat IgG (AP127S)/ TPBS 溶液を滴下し、25℃にて30分間反応させ、その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーに設置しCy5の蛍光量を測定した。
【0165】
スポットの蛍光強度と抗体溶液の滴下濃度からその傾き(slope)を算出した。StabilGuard Biomolecule Stabilizerを処理した場合としない場合の結果を図10に示す。
【0166】
図10に示すように、コーティング後においても抗体が固定化されることが分かった。またその固定化量は半減したが配向性は向上した。以上のことから、ペプチド以外の有機ポリマーであっても、微小物体の配向制御が可能であることがわかった。
【実施例7】
【0167】
(疎水性へリックス構造の評価)
(ペプチド固定量の評価)
図11に示す各種合成ペプチドを、実施例2と同様の方法でアゾフィルム上に固定した。固定化後、1μg/mLのCy5 mono-reactive-dye (GEヘルスケアバイオサイエンス社 PA25001)/ PBS溶液50μLを滴下し30分間室温で反応させた。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行い、このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しペプチドを滴下したスポットの蛍光量を測定した。
【0168】
(固定化能の評価)
合成ペプチドをコーティングした後のスライドグラスに対し、1μg/mLのCy5-標識 Goat anti mouse IgG / TPBS溶液50μLを滴下し、これを17時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)した[抗体の固定化]。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しペプチドを滴下したスポットの蛍光量を測定した
【0169】
これらのペプチドを評価した結果を図12に示す。図12に示すように、ペプチドIAT, IAT(A9), IAT(G)では、ペプチドがアゾフィルム上に固定化されていることが分かった。一方でペプチドIAT(A7), IAT(A5), IAT(I>G)は、アゾフィルム上に固定化されていないことが分かった。ペプチドIAT, IAT(A9), IAT(G)では、CDスペクトル測定によりほぼ100%ヘリックス構造を形成していることが確認されている。図12には、ペプチド名称の左側に模式的にペプチド構造を示している。図12に示すペプチド構造のジグザグはα−へリックス構造を示しており、IAT(G)及びIATのペプチド表示のジグザグ構造から下方を指向して付加された楕円状体はイソロイシンの疎水性基を表している。以上のことから仲介物質としてのペプチドの固定化には疎水性領域、特に疎水性へリックス構造が重要であることがわかった。また、固定化能の結果は、ペプチド固定量に依存していることから、Cy5 mono-reactive-dyeによるペプチドの固定化量の評価は、実際の固定化量を反映していることをよく支持していると考えられる。
【実施例8】
【0170】
(1)合成ペプチドの抗体固定化能の評価
図13に示す、100μg/mLの合成ペプチドをアゾフィルムに1μL滴下し、真空乾燥した後、2時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)した。その後、TPBSにて5分間、3回の洗浄を行い、合成ペプチドを光固定化した。これに1μg/mLのCy5-標識 Goat anti mouse IgG / TPBS溶液を滴下し、これを17時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)しつつインキュベートした。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行い、抗体を光固定化した。このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しCy5の蛍光量を測定し、ペプチドを滴下したスポットの蛍光量を定量した。結果を図13に示す。
【0171】
(2)固定化抗体活性の評価
(1)合成ペプチドの抗体固定化能の評価と同様の方法で図13に示す各種合成ペプチドを光固定した。これに1μg/mLのRabbit anti goat IgG / TPBS溶液を滴下し、これを17時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)しつつインキュベートした。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行い、抗体を固定化した。1μg/mLのCy5-標識 Goat anti mouse IgG / TPBS溶液を滴下し、25℃にて30分間反応させ、その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しCy5の蛍光量を測定し、ペプチドを滴下したスポットの蛍光量を定量した。結果を図13に示す。
【0172】
なお、比較例1として、(1)において合成ペプチド溶液の代わりに水のみを滴下し、比較例2として、(2)において合成ペプチド溶液の代わりに10μg/mLのRabbit anti goat IgG / TPBS溶液を滴下し、比較例3として、(1)及び(2)において合成ペプチドとして配列EATAIAAIAAAIを用い、比較例4として、(1)及び(2)において合成ペプチドとして配列EAAAIAAIAAAIを用いた。
【0173】
また、各合成ペプチドの配向性は、(1)で得られた固定化能に対する(2)で得られた固定化抗体活性の比を用い、比較例2における10μg/mLのRabbit anti goat IgGを乾燥光固定した場合の固定化能に対する固定化抗体活性の比を1として算出した。結果を図13に併せて示す。
【0174】
図13に示すように、合成ペプチド1〜33の固定化能は、比較例1の場合に比べ10倍以上に増加した。これは、図13に挙げたペプチドが抗体の吸着性を飛躍的に高めたと考えられる。一方で、比較例3及び4において、固定化能は著しく減少した。これはN末端のアミノ基が抗体の分子表面と相互作用していることを示しており、この現象はN末端に位置したグルタミン酸(E)のカルボキシル基がN末端のアミノ基と抗体分子の相互作用を阻害しているためと考えられた。
【0175】
合成ペプチドを介して担体に吸着した抗体の活性(固定化抗体活性)は、直接光固定化された抗体(比較例2)の場合に比べ3-20倍増加した。固定化された抗体あたりの活性を示す値(配向性)は直接光固定化された抗体(比較例2)の場合に比べ3-6倍となった。これは、(1)固定化された抗体の抗原認識部位が担体(もしくはペプチド)と相互作用しておらず、水溶液側に配向した状態であること、(2)直接固定化された場合に比べ抗体が本来の立体構造を保った状態になっていることを支持している。
【0176】
固定化能や配向性を指標にスクリーニングした合成ペプチド1〜33のN末端側3残基のアミノ酸配列から、N末端のアミノ基が修飾されていないことが重要であり、N末端側3残基内にスレオニンまたはセリンが含まれていることが好ましいことがわかった。
【0177】
また、固定化抗体能が高くかつ配向性が3倍以上のN末端側3残基は、 IAA, VAA, FAA, PAA, AAA, LAA, QAA, IAT, ATA, FAT, WAT, VAT, LAT, AAT, PAT, IHT, IPT, IIT, IMT, IST, ITT, IQT, IAS, IGS, IVS, ISS, ITS, IQS, INS, IAY, IAE, IAIであることがわかった。なかでも、配向性が5倍以上のN末端3残基は、IAT, ITT, ITS, IASであり、固定化抗体能が特に高く配向性が3倍以上のN末端3残基は、IPT, IMT, IST, IQT, IQS, INSであることがわかった。
【配列表フリーテキスト】
【0178】
配列番号1〜101:微小物体の固定化のためのポリペプチド
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】本発明の固定化方法の一例を示す図である。
【図2】本発明の固相担体の例を示す図である。
【図3】本発明の固相体の例を示す図である。
【図4】実施例1における合成ペプチドのアミノ酸配列を示す図である。
【図5】実施例1における合成ペプチドのα−へリックス構造を示す図(a)と、アミノ酸配位位置を示す図(b)である。
【図6】実施例2における抗体固定化能を評価結果を示す図である。
【図7】実施例3における光照射効果の評価結果を示す図である。蛍光量の増加は、繰り返しの光照射により抗体の固定化量が増大することを示しており、抗体の固定化量の増加は、光照射によるものであることを強く支持する結果である。
【図8】実施例4における合成ペプチドによる抗体の配向制御の評価結果を示す図である。
【図9】実施例5で用いる合成ペプチドのアミノ酸配列と配向性の評価結果とを示す図である。
【図10】実施例6における非ペプチド性の有機ポリマーを仲介物質としたときの、抗体の固定化能、固定化抗体能及び配向性の評価結果を示す図である。
【図11】実施例7で用いる合成ペプチドのアミノ酸配列を示す図である。
【図12】実施例7における合成ペプチドの評価結果を示す図であり、上段の図はペプチド固定量を示す図であり、下段の図は抗体固定化能を示す図である。上段の図のペプチド名称の左側にはペプチドの立体構造を模式的に表示する。
【図13】実施例8で用いる合成ペプチドのアミノ酸配列を示すとともに、これらの各合成ペプチドの固定化能、固定化抗体活性及び配向性の評価結果を示す図である。
【符号の説明】
【0180】
2 固相体、4 微小物体、10 固相材料、12 担体、20 仲介物質、32 固相担体
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小物体を固相材料に固定化する技術に関し、詳しくは、仲介物質を介して微小物体を固定する方法及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質などの微小物体を固相材料に固定して用いて、診断用途、分析用途、反応リアクター用途及びセンサ用途に適用することが試みられてきている。ここで、タンパク質等が機能を発揮するために、触媒部位などの部位が露出された状態で固定化されていないと実質的な相互作用効率は低下してしまう。そこで、タンパク質などの微小物体を、一定の方向性を付与して、すなわち、配向して固相材料表面に固定化することが試みられている。
【0003】
例えば、物理的吸着を利用して配向固定する技術として、微小物体であるタンパク質のC末端側に遺伝子組換えによりカルボキシル基を含む複数個のアミノ酸を導入する一方、固相材料表面にはポリリジン等で処理してタンパク質を配向固定する方法がある(特許文献1)。また、遺伝子組換えによりN末端又はC末端に疎水性ポリペプチドを導入し、こうしたタンパク質を基板表面に固定化する方法もある(特許文献2)。さらに、固相材料表面との化学結合によるものとしては、微小物体であるタンパク質に非天然アミノ酸を導入し、この非天然アミノ酸と反応する反応基を固相材料に導入してタンパク質を配向して固定化する方法がある(特許文献3)。
【0004】
一方、本発明者らは、既に、物理的吸着や化学結合によらないで微小物体を固相材料に固定化する光固定化法を開発している(特許文献4)。光固定化法は、タンパク質などの微小物体を、光により変形する光応答性成分を含有する固相材料の表面に配し、光照射によって微小物体近傍の固相材料表面近傍に変形を生じさせて微小物体を固定(光固定)する方法である。
【0005】
【特許文献1】特開2004−347317号公報
【特許文献2】特開平2−79975号公報
【特許文献3】特表2006−511797号公報
【特許文献4】特開2003−329682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に開示されるいずれの方法においても、微小物体を固定化するための、官能基や化合物等の固定化要素の一部は固相材料に含まれている。そして、上記特許文献に開示されるいずれの方法であっても、微小物体を固相材料に固定化するには、固相材料との直接の相互作用が必要であり、直接微小物体と固相材料との接触は避けることはできない。このため、微小物体が固相材料、それに含まれる固定化のための要素及び固定化の相互作用の影響を受けやすくなる傾向があり、微小物体がタンパク質などの生体分子の場合には、活性や環境耐性の低下、保存安定性の低下等を引き起こすおそれがあった。特に、物理的吸着や化学結合による配向固定の場合には、固相材料と微小物体との強い相互作用が必要であり、固定化要素及び相互作用による微小物体への悪影響が生じるおそれがあった。
【0007】
また、上記特許文献1〜3に示されるように、微小物体を配向して固定するためにその一部に特定のアミノ酸等を導入するのには、遺伝子組換え等の手法を用いるのが合理的である。しかしながら、本来の機能が確保された改変タンパク質を得るには、固定化するタンパク質の遺伝子の取得、遺伝子導入操作、得られたタンパク質の活性化等、多くの技術的課題を解決する必要がある。
【0008】
したがって、現状において、微小物体と固相材料との直接の相互作用を回避して微小物体を固相材料に配向する試みは一部特殊な場合に限定され、かつ操作も煩雑であり実用上一般的ではなかった。また、微小物体の配向を実現する特別の要素を微小物体に導入することなく、微小物体を配向固定する試みもなされていない。
【0009】
そこで、本発明は、微小物体を固定化する固相材料との直接的な相互作用を回避又は抑制して微小物体を固相材料に配向して固定化する方法及びその利用を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、微小物体の配向等を実現する特別の要素を微小物体に導入することなく、微小物体を固定化する方法及びその利用を提供することを他の一つの目的とする。さらに、本発明は、微小物体を固相材料に固定化するのに適した仲介物質を提供することを他の一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、固相材料の表面に微小物体と相互作用する要素を有する仲介物質を存在させ、この仲介物質と微小物体との間に微小物体の配向のための相互作用を発現させた状態で、固相材料及び微小物体の間の固定化原理に基づいて微小物体を固相材料に固定化できるという知見を得た。また、このとき、微小物体と仲介物質との間の相互作用によって微小物体が固相材料に対して配向された状態で固定化されるという知見を得た。固定化が可能であるという知見を得た。本発明者らは、これらの知見に基づき発明を完成した。本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0011】
本発明によれば、微小物体が固相材料に固定化された固相体の製造方法であって、少なくとも前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質を表面に備える前記固相材料を準備する工程と、前記固相材料上において、前記仲介物質の前記相互作用を発現させた状態で前記微小物体を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程、を備える、方法が提供される。本発明の方法において前記微小物体はポリペプチド鎖を含むことが好ましく、抗体であることがより好ましい。
【0012】
本発明の方法においては、前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料であり、前記微小物体固定化工程は、前記微小物体を前記固相材料の表面又はその近傍に配した状態で光照射することにより前記固相材料に固定化する工程とすることができる。また、前記微小物体固定化工程に先立って、前記仲介物質を前記固相材料の表面に固定化する仲介物質固定化工程を備えることができる。さらに、前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料であり、
前記仲介物質固定化工程は、前記仲介物質を前記固相材料の表面又はその近傍に配した状態で光照射することにより前記固相材料に固定化する工程とすることができる。
【0013】
また、前記仲介物質の前記第1の要素は非共有結合性の相互作用とすることができ、好ましくは、前記非共有結合性相互作用は静電的相互作用又は親水性相互作用とすることができる。また、前記仲介物質は、前記微小物体の分子量よりも十分に小さい分子量を有することが好ましい。さらに、前記仲介物質は、前記微小物体の差し渡し径よりも十分に小さい厚みの層厚で前記固相材料の表面に準備されることが好ましい。
【0014】
また、前記仲介物質は、前記固相材料と相互作用可能な第2の要素を備えることができる。第2の要素の前記相互作用は、疎水性相互作用とすることができる。
【0015】
また、前記仲介物質は、ポリペプチド鎖を含むことができる。前記ポリペプチド鎖は、少なくとも片面側に優位に疎水性アミノ酸残基が配列される疎水性のα−へリックス構造を有することが好ましい。また、前記ポリペプチド鎖は、N末端領域又はC末端領域に前記第1の要素を備えることが好ましい。さらに、前記第1の要素は、前記ポリペプチド鎖のN末端領域にあってN末端の非酸性アミノ酸残基を含むことが好ましい。さらにまた、前記仲介物質はアミノ酸残基数が12以上20以下のポリペプチド鎖を含み、アミノ酸残基数が12以上20以下であり、疎水性アミノ酸酸残基を50%以上含むα−へリックス構造を有することが好ましい。
【0016】
本発明によれば、固相材料に固定化しようとする微小物体と相互作用可能な第1の要素を少なくとも有し、前記微小物体を固相材料に固定化するために前記固相材料の表面に固定される、微小物体の固定化用仲介物質が提供される。本発明の仲介物質においては、前記微小物体はポリペプチド鎖を有することが好ましく、より好ましくは抗体である。
【0017】
本発明の仲介物質は、その分子量が好ましくは5000以下である。また、鎖状構造を有する有機分子であることが好ましく、より好ましくはポリペプチド鎖を含んでいる。また、ポリペプチド鎖は、N末端領域又はC末端領域に第1の要素を備えることができる。さらに、第1の要素は前記ポリペプチド鎖のN末端領域にあってN末端の非酸性アミノ酸残基を含むことが好ましい。さらに、前記第1の要素は、前記ポリペプチド鎖のN末端から2番目又は3番目にセリン又はトレオニンを有することが好ましい。また、前記第1の要素は、そのN末端の3残基又は2残基が、表1から選択されるいずれかであることが好ましい。さらに、前記ポリペプチド鎖は、α-へリックス構造を有することが好ましい。
【0018】
本発明の仲介物質は、前記固相材料と相互作用可能な第2の要素を備えることができる。また、本発明の仲介物質はポリペプチド鎖を含み、疎水性アミノ酸残基を50%以上含むα−へリックス構造を有することができる。前記疎水性アミノ酸残基は、アラニン及びイソロイシンから選択されていてもよい。また、前記α−へリックス構造は、8個以上の疎水性アミノ酸残基が連続するアミノ酸配列からなる疎水性へリックス構造を有していてもよい。前記疎水性へリックス構造は、表2に示すアミノ酸配列から選択されるいずれかを有することができる。また、前記ポリペプチド鎖は、アミノ酸残基が12残基以上20残基以下であることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、微小物体が固定化された固相体であって、固相材料と、上記いずれに記載の仲介物質と、前記仲介物質を介して固相材料に固定化された微小物体と、を備える、固相体が提供される。前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料であり、前記微小物体は、前記微小物体を前記固相材料の表面又はその近傍に配した状態で光照射することにより前記固相材料に固定化されていることが好ましい。また、前記微小物体はポリペプチド鎖を含むことができ、抗体であってもよい。
【0020】
本発明によれば、微小物体を固定化するための固相担体であって、固相材料と、前記固相材料の表面に固定化される請求項16〜31のいずれかに記載の仲介物質と、を備える、固相担体が提供される。この固相担体において、前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料とすることができ、前記光応答性材料は、アゾ色素含有ユニットを備える(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ウレタン−アクリル系ポリマーのいずれかとすることができる。
【0021】
本発明によれば、微小物体を固定化するための固定化用固相担体の製造方法であって、固相材料を準備する準備工程と、上記いずれかに記載の仲介物質を前記固相材料の表面に固定化する仲介物質固定化工程と、を備える方法が提供される。
【0022】
本発明によれば、微小物体と他の成分との相互作用の検出方法であって、上記いずれかに記載の固相体上の前記微小物体に対して前記他の成分を供給して前記相互作用を発現させる工程と、前記他の成分と前記微小物体との前記相互作用を検出する工程と、を備える、方法が提供される。
【0023】
本発明によれば、微小物体を固相材料に固定化するための仲介物質のスクリーニング方法であって、前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質の候補としての2種類以上の試験化合物が表面に固定化された固相材料を準備する工程と、前記固相材料上の前記2種類以上の試験化合物の前記相互作用が発現可能な状況下で所定の微小物体を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程と、前記2種類以上の試験化合物の前記微小物体の固定化能を評価する工程と、を備える、方法が提供される。また、本発明によれば、微小物体を固相材料に固定化するための仲介物質のスクリーニング用固相担体であって、固相材料と、前記固相材料の表面に固定化され前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質の候補としての2種類以上の試験化合物と、を備える、固相担体も提供される。
【0024】
本発明によれば、微小物体のスクリーニング方法であって、前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する所定の仲介物質が表面に固定化された固相材料を準備する工程と、前記固相材料上の前記仲介物質の前記相互作用を発現可能な状況下で前記微小物体の候補としての2種類以上の試験化合物を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程と、前記2種類以上の試験化合物の固定化量及び/又は配向性を評価する工程と、を備える、方法が提供される。また、本発明によれば、微小物体のスクリーニング用固相担体であって、固相材料と、前記固相材料の表面に固定化され前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する所定の仲介物質と、を備える、固相担体も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の固相体の製造方法によれば、微小物体との相互作用を発現する第1の要素を有する仲介物質を固相材料表面に存在させることで、前記相互作用を発現させた状態で微小物体を固相材料に固定化することが可能となる。すなわち、仲介物質が微小物体と相互作用可能な第1の要素を有するため、微小物体の固定化量の増加や微小物体の配向を実現する特別の要素を微小物体にも固相材料にも導入することなく、微小物体の固定化量を増大したりその配向を促進して固定化したりできる。
【0026】
また、本発明の製造方法によれば、微小物体は仲介物質と相互作用すると同時に固相材料に固定化される。したがって、微小物体を、配向制御のための固相材料との直接的な接触や相互作用を回避し固相材料に固定化することができる。したがって、微小物体に対する固相材料に含まれる固定化のための要素の影響及び固相材料への固定化そのもの影響を低減することができる。
【0027】
本発明は、微小物体を固定化した固相体の製造方法、微小物体が固定化された固相担体、微小物体を固定化するための固相担体、固相担体の製造方法、各種固相担体や固相体の利用及び微小物体の固定化に用いる仲介物質に関する。以下、本発明の実施の形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1には、本発明の微小物体の固定化方法の一例を示し、図2には、光固定化用固相担体を例示し、図3には、本発明の固相体を例示する。
【0028】
(微小物体が固相材料に固定化された固相体の製造方法)
本発明の固相体の製造方法は、換言すれば、微小物体の固相材料への固定化方法でもある。以下の説明においては、本発明の固相体の製造方法を微生物の固定化方法として説明する。
【0029】
図1に示すように、本発明の微小物体の固定化方法は、固相材料10の固相材料準備工程と、微小物体4を固相材料10に固定化する微小物体固定化工程とを備えることができる。以下、まず、微小物体4、固相材料10及び仲介物質20について説明し、次いで、微小物体4の固定化のための工程について説明する。
【0030】
(微小物体)
微小物体は、有形である限り、その種類は特に限定されない。例えば、(1)金属、金属酸化物、半導体、セラミックス、ガラスなどの無機材料、(2)いわゆるプラスチックなどの有機材料、(3)タンパク質、核酸、糖類、脂質などの生体分子材料、(4)上記した(1)〜(3)の各種材料から選択される2種以上の材料を複合化した複合材料などから選ばれる1種又は2種以上の材料を用いることができる。好ましくは、生体分子材料である。
【0031】
(生体分子材料)
本発明の対象とする生体分子材料は、一分子のみを意味するものではなく、二分子以上からなる同種分子の集合体であってもよいし、異種分子との複合体であってもよい。さらに、多数の同種又は異種の分子から構成される、例えば自己組織体などの組織体であってもよい。
【0032】
生体分子材料としては、特に限定しないで、動物、植物、微生物、ウイルス等生物体に存在する、生物体が生産する又は生物体が代謝する天然由来の分子、これらを人工的に改変した分子であってもよいし、天然分子に依存しないで人工的に設計した分子であってもよい。また、生物から採取した分子のみならず、人工的に本来的にその分子が存在する生物体以外の生物において生産させた分子であってもよいし、生物体外で人工的に化学合成又は酵素等によって合成した分子であってもよい。
【0033】
生体分子材料としては、典型的には、ポリペプチド、核酸、糖類、脂質、骨形成材料などの生体材料、各種の生物細胞及びその一部、組織及び生物体自体などの生物材料が挙げられる。また、生体分子材料は、固相に固定化されるのに際して、他の有機材料及び/又は無機材料等と複合化されていてもよい。これらのうち、本固相材料に固定化する生体分子材料はポリペプチド鎖を含むことが好ましい。
【0034】
本明細書において、ポリペプチドとは、任意のサイズ、構造又は機能のポリペプチドを意味している。したがって、アミノ酸残基が30程度以下のオリゴペプチドも含まれる。ポリペプチドとしては、例えば、各種タンパク質、酵素、抗原、抗体、レクチン又は細胞膜レセプターが挙げられる。ポリペプチド鎖を含む微小物体4としては、抗体を好ましく用いることができる。なお、抗体は、天然の又は全体的若しくは部分的に合成的に産生された免疫グロブリンを意味する。特異的結合能を保持するその全ての誘導体も包含される。核酸は、1本鎖であっても、2本鎖であってもよい。人工及び天然を問わず、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、DNA−RNAキメラ及び塩基やその他の修飾体を含んでいてもよい。さらに、その鎖長も特に限定しない。
【0035】
なお、本発明において使用可能な光応答性成分及び微小物体としては、特開2003−329682号公報、特開2004−93996号公報、特開2004−251801号公報及び特開2007−51998号広報に記載の担体や光固定化材料を用いることができる。また、本明細書には、特開2003−329682号公報、特開2004−93996号公報、特開2004−251801号公報、特開2006−233004号、特開2006−321719号及び特開2007−51998号公報に記載されるすべての事項が引用により取り込まれるものとする。
【0036】
(固相材料)
本発明の固定化方法並びに後述する固相担体、微小物体固定化固相体等において用いる固相材料10としては、固定化しようとする微小物体4を、固相材料10を固定化できるものであればよい。微小物体4を固相材料10に固定化するための固定化原理としては、水素結合、疎水性相互作用、親水性相互作用、静電的相互作用等の非共有結合性相互作用、共有結合及び光照射による光変形に基づく光固定が挙げられる。
【0037】
固相材料10は、微小物体4を固相材料10に固定化する固定化原理に利用する要素を備えていることが好ましい。前記固定化原理として静電的相互作用を用いる場合には、例えば、固相材料10の表面にポリリジンやリジンなどのアミノ酸由来の正電荷を固相材料10の表面に備えることができる。
【0038】
前記固定化原理として、共有結合を用いる場合には、固相材料10は、その表面に微小物体4が有する官能基と共有結合可能な官能基を備えることができる。例えば、固相材料10は、微小物体4の備える官能基と架橋反応可能な架橋性官能基を備えていてもよい。架橋性官能基の種類は、固定化しようとする微小物体4の備える官能基や用いる手法によって選択することができる。例えば、微小物体4がアミノ基を備える場合には、NHS基、アルデヒド基、エポキシ基等の各種の架橋性官能基が挙げられる。さらに、微小物体4がチオール基を有する場合には、マレイミド基等の架橋性官能基が挙げられる。さらにまた、微小物体4が芳香族基を備える場合には、ジアゾニウム基等が挙げられる。
【0039】
また、微小物体4を固相材料10に固定化する固定化原理として共有結合を用いる場合であっても、上述のように固相材料10自身が微小物体4と共有結合可能な官能基を必ずしも備えている必要はない。微小物体4と固相材料10との間を架橋する多価架橋性のポリマーなどの多価架橋性化合物と官能基を備えていれば、微小物体4の備える官能基と共有結合が可能である。このような多価架橋性化合物が備える架橋性官能基としては、例えば、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基及びエポキシ基が挙げられ、これらの架橋サイトに対応する多価架橋性化合物としては、マルチアームPEG(日本油脂製)、EMCS、SPDP(以上、同仁化学製)、BS3、DMS、SMCC(以上、ピアス社製)が挙げられる。
【0040】
なお、このような微小物体4と固相材料10との共有結合による固定化のための上記した官能基等の要素は微小物体4の活性等を損なわない範囲で、このような官能基を本来的に備えていない微小物体4に付与されていてもよい。
【0041】
微小物体4への影響を考慮する観点、特に、微小物体4が生体分子材料である場合の活性確保の観点からは、微小物体4の固定化原理として光固定化を用いることが好ましい。光固定を固定化原理とすることは、微小物体4に配向等のための特別の要素を付与する必要がない点においても好ましい。
【0042】
ここで、光固定とは、光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料を固相材料10として用い、微小物体4を固相材料10の表面又はその近傍に配した状態で光照射することにより固相材料10に固定化するものである。光固定における光照射と光応答性成分と微小物体4の固定との関係は、必ずしも明らかになっているわけではないが、光固定は、少なくとも、光照射することにより、微小物体4の固相材料10への吸着量を増大可能な固定手法であると定義できる。
【0043】
光固定を利用する固相材料10は、固相材料10を構成するマトリックスに光応答性成分を有している。固相材料10のマトリックス(母相)は、光固定化可能に光応答性成分を保持できる限り、その材料は特に限定しない。例えば、低分子材料又は高分子材料を含む各種の有機材料、ガラスなどの無機材料、有機−無機複合材料等を用いることができる。光応答性成分のマトリックス中における分散性や保持能力等を考慮すると、高分子材料又は高分子材料を含む複合材料であることが好ましい。
【0044】
マトリックスを構成する高分子材料としては、特に限定しないで各種の熱可塑性又は熱硬化性ポリマーを用いることができる。例えば、(1)オレフィン系ポリマー、ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー、メタクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ジエン系ポリマーなどの炭素多重結合系モノマーの重合体、(2)環状エーテル系ポリマーなどの環状モノマーの重合体、(3)エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ウレア系ポリマーなどの2官能性モノマーの重合体などが挙げられる。これらのうち、共重合の簡便性を考慮すると、オレフィン系ポリマー、アクリル系ポリマー、メタクリル系ポリマーなどといった二重結合を有するモノマー(以下、二重結合性モノマーともいう)の重合体や、ウレタン系ポリマーが好ましい。より好ましくは、二重結合性モノマーである。特に、アクリル系ポリマーやメタクリル系ポリマー、アクリル−メタクリルコポリマーは、抗体等のタンパク質を固定化する際の非特異吸着が少ないため、抗体チップやマイクロリアクターなどにおいてバックグラウンドシグナルを効果的に抑制することができる。また、ウレタン系ポリマーやウレタン−(メタ)アクリル系ポリマーは、光変形量を増大させることができる点で本発明に好ましく用いることができるほか、アクリル系ポリマーより極性に富む表面が必要な場合にも好ましく用いることができる。
【0045】
マトリックスは、光応答性成分の分子構造変化等によって結果として形状変形(以下、光変形ともいう)を生じるように構成されていることが好ましい。本明細書において光変形とは、通常のマクロな意味での形状変化のほか、分子レベルでの運動による微小物体と固相材料表面との絡み合いなどによる変形も含む。このような変形の中には、変形量や変形形態の問題から通常の観察手段によっては明瞭に観察できないものもある。光変形は、光応答性成分がマトリックス材料中に存在することにより、光照射時に、例えば、マトリックス材料又は光応答性成分の体積、密度、自由体積などが変化することにより誘起されることにより生じると考えられる。
【0046】
(光応答性成分)
光応答性成分は、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる成分である。光により分子構造の変化が生じる現象は、フォトクロミズムと一般にいわれている。本発明で用いる光応答性成分としては、一般にフォトクロミック化合物といわれる化合物を用いることができるが、なかでも、光異性化を生じる化合物を用いることが好ましい。なお、光異性化等の分子構造変化を伴って又は光異性化等の分子構造変化を伴わないで光誘起配向、光会合等の分子配列の変化(特に異方的な変化)を生じる化合物も、固相材料表面での光固定化が可能である限り、本発明の光応答性成分として用いることができる。
【0047】
光応答性成分としては、こうした光固定にこれまで用いられてきている各種成分を用いることができる。光応答性成分としては、例えば、トランス−シス光異性化を生じる成分等の光異性化化合物等があり、例えば、アゾ化合物、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、ジアリールエテン化合物などの有機化合物、カルコゲナイトガラスと総称される無機材料などが挙げられる。
【0048】
光応答性成分としては、アゾ基(−N=N−)を有する色素構造を有する化合物(アゾ化合物)であることが好ましい。アゾ化合物は、光照射等によりシス−トランス異性化を起こし、この異性化による分子レベルの運動がマトリックス材料を可塑化させて変形を容易にする。なかでも、アミノアゾベンゼンやその誘導体の構造を持つアミノ型アゾベンゼン化合物が好ましい。アミノ型アゾベンゼン化合物は、典型的には、式(1)で表すことができる。
【化1】
【0049】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、置換基を表し、Xは、水素原子、電子吸引性置換基又は電子供与性置換基を表す。
【0050】
R1及びR2における置換基としては、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、アリール基、アリル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、アルキルアミノ基、アルキルアミド基、イソシアネート基、エポキシ基等を例示することができる。特に、R1及びR2における前記置換基の一方が、末端に重合性の二重結合等を有するアクリル酸や(メタ)アクリル酸等のアクリル系化合物及びその他の二重結合性成分であるときには、式(1)は、二重結合性モノマーを表すことができるほか、前記二重結合性成分に由来する重合基を備える光応答性ポリマーを表す。また、R1及びR2における前記置換基の一方が、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基等の重縮合又は重付加性の重合性成分であるときには、式(1)は、重合性モノマーを表すほか、前記重合性成分に由来する重合基を備える光応答性ポリマー(アゾ色素含有ユニットを有するポリマー)を表す。光応答性材料の変形性を考慮すると、光応答性材料のポリマー骨格が(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー又はウレタン-アクリル系ポリマーであることが好ましいことから、本発明の光応答性成分としては、(メタ)アクリル系モノマーやウレタン系モノマー又はこれらを含むポリマー((メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー又はウレタン−アクリル系ポリマー)であることが好ましい。
【0051】
また、Xにおける電子吸引性置換基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基、スルホ基等が挙げられる。また、電子供与性置換基としては、例えば、アミノ基、ジメチルアミノ基、アルキル基等が挙げられる。こうした置換基が結合したものは、光照射中にシス−トランスの異性化を繰り返すことによりマトリックス材料が大きな可塑化作用を有するものと考えられるため好ましい。なお、アゾ化合物である光応答性成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
このような光応答性成分は、マトリックス材料とは別個の成分としてマトリックス中に添加されていてもよいが、マトリックス材料の一部(主鎖又は側鎖)に化学的な結合を介して存在することが好ましい。また、光応答性成分は、マトリックスに均一に存在することが好ましい。こうすることで、固相材料の表面の所望の部位に微小物体を光固定化することができる。
【0053】
なお、微小物体4の固定化原理として、水素結合、疎水性相互作用、親水性相互作用等を利用する場合には、それぞれ適当な官能基や処理を固相材料10に施すことができる。このための手法は当業者において周知である。また、固相材料10における固有の固定化原理を発現する部分は、固相材料10の少なくとも表層側にあればよい。こうした固定化のための層は適当な担体上に担持されていてもよい。
【0054】
固相材料10の三次元形態は特に限定しない。フィルム状体、シート状体、板状体のほか、球状体、不定形状体、針状体、棒状体、薄片状体などの各種の形状を採ることができる。担体の表層への固定化層の付与は、スピンコート、ディップコート、インクジェットなどの既知の方法により行うことができる。
【0055】
固相材料10は、微小物体4を固定化するための固定化原理のための要素のほか、以下に説明する仲介物質20を固相材料10に固定化するための要素を備えていてもよい。こうした要素は、既に説明した微小物体3を固定化するために固相材料10が備えることのできる要素から選択して採用することができる。仲介物質20を固定するための要素は、仲介物質20の種類によっても異なるが、微小物体4を固定化するための固有の固定化原理のそれと同一であっても異なっていてもよい。
【0056】
したがって、固相材料10は、微小物体4を固定化するための要素と仲介物質20を固定化するための要素との2種類以上の異なる固定化原理のための要素を備えることもできる。例えば、固相材料10は、微小物体4を固定化するためのある種の架橋性官能基と仲介物質20を固定化するための他の種類の架橋性官能基とを備えることができる。微小物体4と仲介物質20とを異なる固定化原理で固定化できると、仲介物質20で微小物体4を配向させた後、微小物体4を固相材料10に固定化するとき、微小物体4の固定化操作が仲介物質20の固定状態に影響を及ぼすことがなく、微小物体4の意図した配向状態を容易にまた確実に得ることができる。
【0057】
また、固相材料10は、微小物体4と仲介物質20と同一の固定化原理で固定する要素を備えることもできる。例えば、微小物体4も仲介物質20も光固定により固相材料10に固定化するとき、固相材料10はこれらの固定化要素のために単一種類の光応答性成分を備えていればよい。なお、2種類以上の光応答性成分を固相材料10に含ませることにより、異なる波長域の光照射で微小物体4と仲介物質20とを固定化することもできる。
【0058】
なお、固相材料10は、仲介物質20を固定化するための要素を必ずしも備えていなくてもよい。例えば、固相材料10に対して単なるコーティング等で仲介物質20を固定化することもできるし、熱や圧力等を用いることで仲介物質20を固相材料10に固定化することもできる。
【0059】
(仲介物質)
仲介物質20は、少なくとも微小物体4と相互作用可能な第1の要素を有している。仲介物質20が第1の要素を備えていることで、微小物体4との相互作用による結合が可能となり、微小物体4の配向固定及び固定化量の増大が可能となる。
【0060】
(第1の要素)
第1の要素が微小物体4との間で発揮する相互作用は、特に限定
しないが、静電的相互作用、イオン性結合、水素結合、双極子相互作用、疎水性相互作用、親水性相互作用等の非共有結合性の相互作用であればよい。また、相互作用は、抗原−抗体、基質−酵素、リガンド−レセプター、核酸ハイブリダイゼーション、核酸−タンパク質の各種物質間における相互作用等の生体内における相互作用であってもよい。第1の要素における相互作用は、こうした各種相互作用のうち単独の相互作用であってもよいし、2種類以上を組み合わせた相互作用であってもよい。また、第1の要素は、仲介物質20において、1個であってもよいし、2個以上あってもよい。第1の要素が発現する相互作用は、静電的相互作用又は親水性相互作用を好ましく用いることができる。これらの相互作用は、特に微小物体4としてポリペプチド鎖などを有する生体分子材料との間において発現されるのに有利である。
【0061】
第1の要素は、好ましくは、静電的相互作用を発現する要素である。静電的相互作用を発現する要素は、例えば、負電荷を有していてもよいし、正電荷を有していてもよい。このような第1の要素としては、負の電荷を発生する酸性の官能基や正の電荷を発生する塩基性の官能基が挙げられる。酸性の官能基としては、特に限定しないが、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基等が挙げられる。好ましくは、カルボキシル基である。塩基性の官能基としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基などのアミノ基や第4級アンモニウム基が挙げられる。好ましくは、第1級アミノ基などのアミノ基である。
【0062】
(第2の要素)
仲介物質20は、固相材料10と相互作用可能な第2の要素を備えていてもよい。第2の要素を備えることで、固相材料10と相互作用による結合が可能となり、仲介物質20自身を固相材料10に対して配向固定することが可能となり、結果としてより確実に微小物体4を固相材料10に対して配向固定することが可能となる。また、仲介物質20を固相材料10に対して配向させることができることで、第1の要素を微小物体4に対して容易に露出させることができるため、微小物体4の固定化量を増大させることもできる。特に、仲介物質20を固相材料10に固定化するための原理が、光固定やコーティング等であって、特定の部位において固相材料10と固定させるものではない場合には、このような第2の要素を備えることで固相材料10の表面において仲介物質20を配向固定しやすくなる。
【0063】
第2の要素が固相材料10との間で発揮する相互作用は、特に限定しないで、第1の要素が発揮するのと同様の相互作用から適宜選択することができる。第2の要素の発揮する相互作用は、第1の要素が発揮する相互作用と同一であっても異なっていてもよいが、仲介物質20自身及び微小物体4を配向制御する観点からは異なっていることが好ましい。また、第2の要素における相互作用は、こうした各種相互作用のうち単独の相互作用であってもよいし、2種類以上を組み合わせた相互作用であってもよい。さらに、第2の要素は、仲介物質20において、1個であってもよいし、2個以上あってもよい。
【0064】
第2の要素は、一般的な固相材料10の性質等を考慮すると、疎水性相互作用を発現する要素であることが好ましい。このような第2の要素としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基、あるいは、フェニル基、ナフチル基等の芳香族官能基などの炭化水素基によって構成することができる。
【0065】
仲介物質20が第2の要素を備えるとき、仲介物質20における第1の要素と第2の要素との組み合わせは、どのようなものであってもよい。親水性相互作用と疎水性相互作用との組み合わせであってもよいし、静電的相互作用と疎水性相互作用との組み合わせであってもよい。これらの要素の組み合わせも微小物体4と固相材料10との関係によって適宜決定されればよい。
【0066】
(親水性領域及び疎水性領域)
仲介物質20は、親水性領域及び/又は疎水性領域を備えていることが好ましい。これらの領域は、第1の要素及び第2の要素またはいずれか一方として備えられていてもよいし、これらの要素とは別個の領域として備えられていてもよい。例えば、親水性領域は、仲介物質20において第1の要素であってもよいし第2の要素であってもよく、双方であってもよい。また、疎水性領域は、第1の要素でも第2の要素でも双方であってもよい。親水性領域及び疎水性領域は、それぞれ微小物体4や固相材料10との間で親水性相互作用及び疎水性相互作用を発揮できるほか、固相材料10に微小物体4を固定化する固定化環境や微小物体4を固定化した固相体の使用環境における仲介物質20の安定性や仲介物質20自体の固相材料10や微小物体4への配向性等に寄与することができる。また、仲介物質20における第1の要素及び第2の要素のそれぞれの配置や相互の位置関係を安定化して、微小物体4の配向制御を容易にすることが期待できる。
【0067】
既に説明したように、固相材料10に仲介物質20を固定化するための要素を備えることができるが、仲介物質20が、それ自身を固相材料10に固定化するための要素を備えることもできる。このような要素としては、既に説明した微小物体4と固相材料10との間の固定化原理のために固相材料10又は微小物体4が備えることができる要素を採用することができる。仲介物質20が備えるこのような要素は、微小物体4の固定化原理のために固相材料10や微小物体4が備えることのできる要素と同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、仲介物質20を固定するための固定化原理として共有結合を採用する場合には、仲介物質20を固定化するための要素として他の種類の架橋性化合物による共有結合を採用することが好ましく、仲介物質20はこのための要素を備えることができる。
【0068】
なお、固相材料10及び仲介物質20の双方に特別な要素を付与しなくても、仲介物質20及び固相材料10がそれぞれ備える官能基等の種類に応じて、これらの間に架橋等により共有結合を導入する化合物を供給して、両者を結合することもできる。
【0069】
仲介物質20は、第1の要素を備えており、微小物体4と相互作用しつつも固相材料10との間の固有の固定化原理で固相材料10に対して固定化できる限り、その構成材料は特に限定されない。仲介物質20としては、炭素原子間共有結合及び/又は炭原子−窒素原子間共有結合を有する有機分子、無機分子、複合分子(有機−無機複合材料)を適宜選択して用いることができる。
【0070】
有機分子としては、例えば、天然のポリペプチド鎖又は修飾したアミノ酸を含むポリペプチド鎖の各種誘導体、DNA、RNA等の核酸及び修飾塩基等を含む各種誘導体、脂質、多糖類、界面活性剤、有機ポリマーのほか各種の有機化合物が挙げられる。また、無機分子としては、金属単体、金属クラスター、金属化合物等が挙げられる。仲介物質20は、微小物体4及び第1の要素に発揮させる相互作用に応じて、さらに第2の要素に発揮させる相互作用に応じて適宜選択される。仲介物質20としては、好ましくは、有機分子を用いる。有機分子によれば、第1の要素や第2の要素を発現しやすいからである。
【0071】
仲介物質20の構造は、直鎖状又は分岐状の鎖状構造を取ることができることが好ましい。こうした仲介物質20によれば、分子に異方性を付与することが容易であり、この結果、第1の要素と第2の要素とを容易に付与できる。例えば、仲介物質20が直差状の鎖状構造を備えることで、一つの端部又は端部側に第1の要素を付与し、他の一つの端部又は端部側に第2の要素を付与することができる。また、直鎖状の鎖状骨格の異なる部分から分岐して複数個の第1の要素や第2の要素を付与することもできる。さらに、分岐状の鎖状構造の複数個の末端に第1の要素や第2の要素を付与することもできる。好ましくは、仲介物質20は、直鎖状の鎖状構造を有する。
【0072】
仲介物質20は、鎖状構造を有する有機分子であることが好ましい。すなわち、ポリペプチド鎖及び修飾したアミノ酸を含むポリペプチドの各種誘導体、DNA、RNA等の核酸及び修飾塩基等を含む各種誘導体、脂質、多糖類、界面活性剤、有機ポリマー等が挙げられる。鎖状構造は、直鎖状であってもよいし分枝状であってもよいが、好ましくは、直鎖状の構造であり、もっとも好ましくは1本鎖の構造である。有機分子であってかつ直鎖状構造を有する場合、仲介物質20において第1の要素の位置、範囲及び相互作用の種類並びに第2の要素の位置、範囲及び相互作用の種類に関して自由度が高くなる。例えば、一つの端部又は端部側に静電的相互作用に基づく第1の要素を付与し、他の一つの端部又は端部側に異なる相互作用、例えば、疎水性相互作用に基づく第2の要素を付与することも容易にできる。
【0073】
仲介物質20は、有機分子として少なくともポリペプチド鎖を有していることが好ましい。すなわち、仲介物質20は、ポリペプチド鎖単体又はポリペプチド鎖と他の分子との複合体であることが好ましい。ポリペプチド鎖は、鎖状構造、具体的には、直鎖状構造を有する典型的な有機分子である。ポリペプチド鎖は、各種のアミノ酸残基の有する特性に基づき、静電的相互作用、水素結合、疎水性相互作用、親水性相互作用などを発揮する第1の要素及び第2の要素を容易に仲介物質20に付与できる。また、ポリペプチド鎖のアミノ酸残基組成により親水性領域及び疎水性領域を容易に構築できる。さらに、ポリペプチド鎖は、ペプチド結合によりα−へリックスなどのヘリックス構造やβ−シート等のシート構造など剛直な二次構造を構築でき、当該二次構造に基づき双極子相互作用等を発現して、微小物体4や固相材料10に対してより選択的な相互作用を発現可能となり、微小物体4の固定量や配向性を高めることができる。
【0074】
なお、仲介物質20は、微小物体4と同種材料であってもよいし異種材料であってもよい。例えば、微小物体4がポリペプチド鎖を含むとき、仲介物質20にポリペプチド鎖を含めることができるし、仲介物質20をポリペプチド鎖を含まない界面活性剤としてもよい。
【0075】
(分子量)
仲介物質20の分子量は5000以下であることが好ましい。分子量が5000以下であると、固相材料10による微小物体4の固定化能を維持しつつ、仲介物質20による効果を得ることができるからである。より好ましくは3000以下である。また、微小物体4の分子量との関係においては、微小物体4の分子量の10分の1以下であることが好ましい。仲介物質20の分子量が微小物体4の分子量の10分の1を大きく超えると、固定化が妨げられやすくなるからである。微小物体4の分子量にもよるが、仲介物質20の分子量は、微小物体4の分子量の20分の1以下であることがより好ましい。
【0076】
仲介物質20は、微小物体4と同種材料であってもよいし異種材料であってもよい。例えば、微小物体4がポリペプチド鎖を含むとき、仲介物質20をポリペプチドとすることができるし、界面活性剤とすることもできる。
【0077】
以上説明した仲介物質20の各種態様に基づき、仲介物質20としての好ましい実施態様をより具体的に説明する。以下に説明する仲介物質20は、ポリペプチド鎖からなる又はポリペプチド鎖を有する微小物体4を固定化するのに好ましく用いることができるが、特に、固定化対象を限定するものではない。また、固相材料10は、ポリペプチドの特性等を考慮すると疎水性材料であることが好ましいが、これに限定するものではない。微小物体4を安定的に固定化できる観点からは、固相材料10及び固定化原理としては、光応答性材料及び光固定化であることが好ましい。
【0078】
仲介物質20がポリペプチド鎖を有するとき、第1の要素は、ポリペプチド鎖のN末端領域にあってもよいしC末端領域にあってもよい。双方にあってもよい。また、仲介物質20は、第1の要素として、微小物体4との間で静電的相互作用を発現可能な要素又は親水性相互作用を発現可能な要素を備えていることが好ましい。第1の要素が静電的相互作用を発現可能であるとき、電荷を備える微小物体4、特にポリペプチド鎖を備える微小物体4を効果的に配向することができるとともにその固定化量を増大することができる。また、第1の要素が親水性相互作用を発現可能であるとき、親水性側鎖を表面に露出した酵素や抗体などの微小物体4を効果的に配向することができる。より好ましくは第1の要素は静電的相互作用を発現可能な要素である。
【0079】
静電的相互作用を発現可能な第1の要素は、好ましくは正電荷を備えている。正電荷は、好ましくは、アミノ基(NH3+)によって付与されている。正電荷は、仲介物質20の端部に備えられていることが好ましい。仲介物質20が第2の要素を備える場合には、第2の要素とは反対側の端部に備えられていることが好ましい。
【0080】
ポリペプチド鎖を有する仲介物質20がアミノ基を静電的相互作用を発現する第1の要素として有するとき、アミノ基は、仲介物質20の一部を構成する有機基として備えられていてもよいが、好ましくはペプチド鎖の一部、好ましくはそのN末端のアミノ酸残基として仲介物質20に備えられている。N末端のアミノ酸残基のアミノ基は、ペプチド結合に関与しないため、周囲のpHに応じて陽イオンに解離し正に荷電する。通常は中性近傍で陽イオンに解離した状態となっている。
【0081】
正電荷を供与するアミノ酸残基としては、正電荷を相殺しない観点から、グルタミン酸やアスパラギン酸のように追加のカルボキシル基を有する酸性アミノ酸残基でないことが好ましい。すなわち、これらの酸性アミノ酸残基以外の非酸性アミノ酸残基であることが好ましい。
【0082】
また、正電荷を供与するアミノ酸残基は、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニンから選択される疎水性アミノ酸残基のいずれかであることが好ましい。微小物体4の配向制御の観点からは、より好ましくは、イソロイシン、バリン、アラニン、フェニルアラニン及びトリプトファンから選択されるいずれかである。微小物体4の配向制御及び固定化能の観点からは、イソロイシンが好ましい。
【0083】
さらに、N末端に正電荷を備える場合には、当該N末端から3残基以内(2残基目又は3残基目(好ましくは3残基目))にセリン、トレオニン、イソロイシン、アラニン、チロシン及びトリプトファンから選択されるいずれかであることが好ましく、より好ましくは、セリン、アラニン及びトレオニンのいずれかであり、さらに好ましくは、水酸基を備えるセリン及びトレオニンのいずれかであり、最も好ましくはトレオニンである。さらに、正電荷を備えるN末端及びその近傍(好ましくは、N末端から2残基目)には、グルタミン酸やアスパラギン酸などの追加のカルボキシル基を備える酸性アミノ酸残基がないことが好ましい。すなわち、当該部位には非酸性アミノ酸残基が配置されていることが好ましい。
【0084】
このようなN末端構造は、特に、微小物体4がポリペプチド鎖を含むときに効果的であり、さらに抗体であるときにおいてより効果的である。
【0085】
微小物体4が、抗体などポリペプチド鎖を含むときに好ましいN末端アミノ酸配列を表3に示す。表3において上段に記載の配列は配向性及び固定化を促進する配列であり、中段に記載の配列は上段に示す配列のなかでも高配向性の配列であり、下段に示す配列は、上段に示す配列のなかでも高い固定化能を呈する配列である。
【表3】
【0086】
仲介物質20が後述する疎水性領域を備えるとき、第1の要素は、これらの疎水性領域の一部としてその端部を構成していてもよいし、疎水性領域の端部に連結されていてもよい。例えば、疎水性領域が疎水性アミノ酸残基を有するα−へリックス構造を有するとき、第1の要素は、これらのポリペプチド鎖とともにα−へリックス構造を形成してそのN末端を構成していてもよいし、α−へリックス構造のN末端に連結されていてもよい。
【0087】
仲介物質20は、疎水性領域を有していることが好ましい。疎水性領域を有していることで、表面に疎水性を発現した固相材料10と疎水性相互作用が可能となり、光応答性材料などの固相材料10への仲介物質20の疎水性相互作用による配向や固定化が促進される。また、仲介物質20における親水性相互作用や静電的相互作用を発揮する第1の要素の配置を安定化することもできる。固相材料10の表面が疎水性であるときには、以下に説明する仲介物質20の疎水性領域は、第2の要素として固相材料10と相互作用して、仲介物質20を介した微小物体4の配向や固定化に寄与することができる。
【0088】
仲介物質20がポリペプチド鎖を含むとき、疎水性領域は、疎水性アミノ酸残基(イソロイシン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン、グリシン、トリプトファン、プロリン)の個数が、構成アミノ酸残基組成において優位であるアミノ酸配列とすることができる。すなわち、疎水性領域は、構成アミノ酸残基総数の50%以上が上記疎水性アミノ酸残基であるアミノ酸配列を有していることが好ましい。より好ましくは、疎水性アミノ酸残基比率が60%以上であり、さらに好ましくは70%以上であり、一層好ましくは80%以上であり、最も好ましくは90%以上である。なお、後述するように、α−へリックス構造の形成を考慮すると、疎水性アミノ酸残基として、イソロイシン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン及びトリプトファンから選択されるアミノ酸の酸残基を用いることが好ましく、アラニン及びイソロイシンをより多く含むことがより好ましい。
【0089】
また、疎水性アミノ酸残基以外のアミノ酸残基としては、システイン、トレオニン、セリン、チロシン、グルタミン及びアスパラギンなどの中性アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基がより多く含まれていることが好ましい。
【0090】
こうした疎水性領域は、後述するα−へリックス構造の形成を考慮すると、アミノ酸残基数で9残基以上であることが好ましい。また、この疎水性領域は、構成アミノ酸残基をアミノ酸として換算したとき合計分子量(アミノ酸換算合計分子量)が700以上であることが好ましい。
【0091】
また、仲介物質20のこのような疎水性領域は、ポリペプチド鎖としての性質上、α−へリックスやβシートなどの二次構造を採ることができるが、好ましくは、α−へリックス構造を有している。仲介物質20が、非常に安定な二次構造を伴うことで、第1の要素を安定配置することができるとともに、疎水性相互作用を確実に保持し発揮させることができる。また、疎水性領域としてのα−へリックス構造は、α−へリックスの片面側において疎水性アミノ酸残基に富んでいることが好ましい。α−へリックス構造の片面側に疎水性アミノ酸残基が優位に配列されていることで、安定した疎水性相互作用が発揮され、仲介物質20を固相材料10に対する配向性を高めることができる。
【0092】
ここで、ポリペプチドのα−へリックス構造においては、α−へリックス2回転分を一つのwheelとみなしたとき、図5(b)に示すWheel modelを構築することができる。例えば、このモデルにおいて、α−へリックスの片面、図においては下側(a,b,e,f)又は上側(c,d,g)の位置に配位されるアミノ酸残基組成において疎水性アミノ酸残基(イソロイシン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン、トリプトファン)が80%以上であること、より好ましくは90%以上であるアミノ酸配列を有する疎水性領域としてのα−へリックス構造であることが好ましい。疎水性のα−へリックス構造を構成するアミノ酸配列における疎水性アミノ酸残基は、α−へリックス構造を構成しやすいアラニン、ロイシン及びイソロイシンを優位に用いられていることがより好ましい。さらに好ましくは、アラニン及びイソロイシンを優位に用い、もっとも好ましくはアラニン及びイソロイシンのみを用いる。
【0093】
疎水性領域としてのα−へリックス構造としては、最も好ましくは、連続して7個以上、好ましくは8個以上、さらに好ましくは9個以上のアラニン残基及びイソロイシン残基のみから構成されるへリックス構造部分を備えることがさらに好ましい。
【0094】
仲介物質20がポリペプチド鎖を有する場合の好ましい疎水性領域としては、アミノ酸8個又は9個からなる以下の配列が挙げられる。最も好ましくは、AIAAIAAAIである。
【表4】
【0095】
こうした疎水性領域は、仲介物質20の第1の要素の反対側端部を構成していることが好ましい。仲介物質20がポリペプチド鎖を含むときには、このような疎水性領域は、当該ポリペプチド鎖のC末端領域に備えられていることが好ましく、より好ましくは、ポリペプチド鎖のC末端を構成している。
【0096】
なお、仲介物質20としてのポリペプチド鎖は、少なくともその一部に上記した疎水性領域としてα−へリックス構造を有することができるが、第1の要素を含んで全体としてα−へリックス構造を構成していてもよい。
【0097】
仲介物質20が、このような第1の要素と疎水性領域とを備えることができるが、全体がポリペプチドであってこうした第1の要素と疎水性領域を備えるとき、より好ましくは第1の要素と疎水性領域とからなるとき、全体としてアミノ酸残基数が12残基数以上であることが好ましい。また、上限は特に限定しないが、化学合成の場合の合成効率の観点及び光固定をする場合立体障害を抑制するため分子量5000以下とすることが好適であるとの観点から、20残基以下であることが好ましい。このような仲介物質20としては以下のアミノ酸配列を有するポリペプチドを好ましく用いることができる。
【表5】
【0098】
なお、ポリペプチド鎖を有する仲介物質20は、疎水性領域でないα−へリックス構造を備えていてもよい。
【0099】
次に、微小物体4の固相材料10への固定化工程について説明する。なお、以下の説明においては、これらの工程を、固相材料の準備工程、仲介物質の固定化工程、微小物体の固定化工程に分けて説明する。
【0100】
(固相材料の準備工程)
仲介物質20を介在させた状態で微小物体4を固相材料10に固定化するには、図1(a)に示すように、まず、固相材料10を準備する。図1(a)に示す例では、固相材料10は、基板状の担体12の表層に層状の固定化層として形成されている。
【0101】
(仲介物質の固定化工程)
次いで、図1(b)に示すように、固相材料10と微小物体4との間に仲介物質20を存在させることができるように、仲介物質20を固相材料10の表面に供給する。好ましくは、仲介物質20を固相材料10の表面に固定化する。
【0102】
仲介物質20は、固相材料10の表面に分散して固定化してもよいし、固相材料10表面の非特定領域、換言すれば固相材料10の表面全体に固定化してもよい。あるいは、特定のパターンに従って固定化してもよい。仲介物質20を固相材料10表面に供給する手法としては、従来公知の各種のコーティング法や印刷法(インクジェットも含む)を用いることができる。また、仲介物質20をパターニングするにも、従来公知の手法を採用できる。パターニングの一例としては、仲介物質20の液滴のスポットをアレイ状に供給することができる。
【0103】
仲介物質20を固相材料10の表面に固定化するには、固相材料10の種類や仲介物質20が備えることのある固相材料10への固定化のための要素の種類に応じて適切な手法を選択することができる。単に、乾燥や溶媒の留去に伴う固着であってもよいし、圧力を伴っていてもよい。また、仲介物質20及び/又は固相材料10が備えるこれらの固定化ための要素を用いてもよい。さらに、別途適当なバインダ成分を用いるものであってもよい。
【0104】
仲介物質20が第2の要素を備える場合には、仲介物質20は、固相材料10に対して固定化されやすくなっている。また、第2の要素を備えることで、容易に仲介物資20そのものを配向させて固定化することができる。
【0105】
仲介物質20を、微小物体4を固相材料10に固定化するのと同一の固定化原理で固相材料10に固定化してもよい。こうすることで工程を簡素化することができるとともに固相材料10が備えるべき仲介物質20の固定化のための要素を省略できる。このような固定化原理としては、光固定が好ましい。光固定であると、仲介物質20及び微小物体4のそれぞれの固定化時において光照射をするだけで固定化できるとともに仲介物質20及び微小物体4への固定化の際に生じる悪影響が低減できる。
【0106】
(光固定による仲介物質の固定化工程)
固相材料10として光応答性材料を用いる場合には、仲介物質20を光固定化することが好ましい。光固定化では、光応答性材料である固相材料10の表面又はその近傍に仲介物質20を供給し、光照射により仲介物質20を固相材料10の表面に固定化する。
【0107】
なお、仲介物質20の光固定に際し、仲介物質20の固相材料10の表面への供給に際しては、特に限定されないが、液状媒体を介して液状媒体に溶解又は懸濁させた状態で適用することが好ましい。液状媒体を利用すると、固相材料10の表面に仲介物質20を容易に展開させることができ、かつ、仲介物質20をその構造(例えば、仲介物質20がポリペプチドの場合など、その二次構造等)を維持して固定化することが可能であるからである。
【0108】
なお、液状媒体としては、水又は水を主媒体とする組成液が特に好ましい。水を主媒体とする組成液としては、仲介物質20の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、水、緩衝液、pHを調整した緩衝液等が挙げられる。また、液状媒体は、仲介物質20と固相材料10との相互作用を高めるようなものを選択することもできる。例えば、液状媒体のpH、電解質濃度、極性などを調整することにより相互作用を高めることができる。こうした液状媒体としては、水、水と相溶性のある有機溶媒である水性溶媒、非水性溶媒を単独であるいは組み合わせるなどしてもよい。また、固相材料10と仲介物質20との相互作用を高めるための上記液性を付与するのに必要な成分を添加してもよい。さらに、例えば、界面活性剤が液状媒体に添加されていてもよい。
【0109】
固相材料10に対して仲介物質20を供給後、固相材料10の表面上の仲介物質20に光照射することで仲介物質20を固相材料10の表面に固定化できる。光固定のための光照射の方法は特に限定しない。各種の伝播光、近接場光又はエバネッセント光などの任意の光が仲介物質20存在する固相材料10の表面又はその近傍に到達するように照射すればよい。さらに、光照射は公知の手法を用いて固相材料10上の一部に対して選択的に行うこともできる。また、レーザートラッピングを利用することもできる。
【0110】
光固定に用いる波長域は、光応答性成分において分子構造又は分子配列の変化を生じさせる波長域であればよい。こうした波長域に関する情報は、各種の入手可能な光応答性成分について容易に取得できるか又は使用に際して確認することができる。
【0111】
なお、光固定のための光照射については、特開2003−329682号公報、特開2004−93996号公報及び特開2004−251801号公報に既に記載される照射光や光照射方法を採用することができる。光固定化については、特開2003−329682号公報、特開2004−93996号公報及び特開2004−251801号公報において本出願人が開示しており、これらの方法を本発明における光固定化についても適用することができる。
【0112】
なお、仲介物質20の光固定化後、固相材料10の表面を洗浄して、固定化されない仲介物質20等を除去しておくことが好ましい。
【0113】
(微小物体の固定化工程)
次に、図1(c)に示すように、固相材料10の表面の仲介物質20が配置された領域に微小物体4を供給して、微小物体4と固相材料10との固定化原理に基づいて微小物体4を固相材料10に固定化する。このとき、仲介物質20が微小物体4と相互作用する第1の要素を備えているため、微小物体4は、仲介物質20が存在する領域に接近しやすくなっている。また、微小物体4は、仲介物質20の第1の要素と相互作用して一定の配向性を備えることができるようになっている。こうした状態で両者間の固定化原理、例えば、共有結合、静電的相互作用、光固定等により微小物体4を固相材料10の表面に固定化する。こうすることで、図1(d)に示すように、微小物体4は、固相材料10の影響が回避又は抑制された状態で固相材料10に固定化される。すなわち、固相材料10に仲介物質20を介して微小物体4が固定化された固相体2を得ることができる。
【0114】
また、微小物体4は、仲介物質20の有する第1の要素による相互作用の結果、微小物体4を固相材料10表面において一定の配向を付与されて固定化される。特に、仲介物質20が第2の要素を備える場合には、仲介物質20が一定の配向性で固相材料10に固定化されているため、より高精度に微小物体4を固相材料10に対して配向制御することができる。さらに、第1の要素のために、微小物体4の固相材料10に対する固定化量も増大されている。本発明方法によれば、第1の要素を備える仲介物質20を用いるため、配向制御のための要素を微小物体4に追加することが回避されている。このため、微小物体4を容易に配向でき、また、微小物体4の活性や安定性にこうした追加の要素が影響することが低減されている。
【0115】
なお、仲介物質20は、微小物体4と固相材料10との固定化を妨げない程度に微小物体4と固相材料10との間に存在されている。これは仲介物質20自体の分子量や微小物体4の分子量との関係で実現されるほか、仲介物質20の固相材料10への固定化の際の層厚を、微小物体4の差し渡し径よりも十分に小さくすることでも実現することができる。仲介物質20の固定化層の厚みが微小物体4の直径など差し渡し径よりも十分に小さければ、仲介物質20により微小物体4と固相材料10との直接の接触を回避又は抑制しても、固有の固定化原理により固定化を確保することができる。例えば、固定化された仲介物質20の固定化層の層厚が微小物体4の直径の1/2以下であることが好ましい。より好ましくは、仲介物質20の固定化層の層厚は約1nm以下である。
【0116】
この固定化工程において、固相材料10が光応答性材料であり、固有の固定化原理が光固定の場合、仲介物質20を光固定し、さらに仲介物質20とこれと相互作用している微小物体4とを併せて固相材料10に光固定化することができる。特に、このような2段階で光固定を利用する場合、仲介物質20の存在によって、仲介物質20を使用しない場合に比較して微小物体4の配向性を高めることができる。また、光固定によれば、本来的に微小物体4側に特別な固定化のための要素を必要としないが、仲介物質20を用いることにより、配向のための要素も微小物体4に導入する操作を排除することができる。さらに、このため、簡易に微小物体4の配向が可能となるとともに、配向のための要素を微小物体4に導入することによる微小物体4の活性低下や安定性低下などの不都合を排除できる。
【0117】
微小物体4の光固定は、仲介物質20の光固定の場合と同様に実施することができる。すなわち、微小物体4を仲介物質20又はその近傍に対して供給し、その後光照射すればよい。なお、仲介物質20を光固定したときでも、この仲介物質20を利用して微小物体4を光固定することができる。このことは、光応答性材料の表面に仲介物質20を存在させたときにも、当該仲介物質20を介して及び/又は仲介物質20とともに重ねて微小物体4を光固定することができることを意味している。このような光照射の繰り返しによって、2以上の微小物体(ここでは仲介物質20と微小物体4に相当する)を2段階以上に光固定化できることは、従来全く知られておらず、予想されていなかった。
【0118】
以上説明したように、本発明の微小物体の固定化方法によれば、微小物体4を固相材料10に配向して固定化するのに際して、固相材料10に存在させた仲介物質20に微小物体4を配向する第1の要素を備えるため、微小物体4に配向のための要素を別途導入することなく微小物体4を容易にかつ微小物体4の活性を維持して固相材料4に配向固定することができる。また、微小物体4と固相材料10との間の配向のための直接的な相互作用を回避又は抑制して微小物体4を固相材料10に配向固定化することができる。以上のことから、微小物体4を固相材料10に配向させることによる微小物体4に対する悪影響を低減することができる。さらに、仲介物質20によりまた微小物体4の固定化量を増大することができる。
【0119】
また、微小物体4を、仲介物質20を介して固定化することで、微小物体4は、固相材料10に直接接触することによって活性や保存安定性等が低下することが抑制又は回避され、配向性の付与によってより微小物体4の活性が確保された状態で固定化することができる。すなわち、活性周辺が固定化による悪影響(固定化による活性部位の消滅や固定化による機能実現のために必要な立体構造変化の妨害)を受けることなく固定化される。
【0120】
さらに、微小物体4を光固定化により固定化する場合には、固相材料10の光変形によって微小物体4が固定化されるため、微小物体4は固相材料10の影響を大きく受ける可能性があったが、仲介物質20を介在させること及びそれによる配向固定によって、一層、微小物体4の安定性や活性を向上させた状態で固相材料10に固定化することができる。
【0121】
(微小物体の固定化用固相担体)
本発明の固相担体は、固相材料と、少なくとも微小物体と相互作用可能な第1の要素を有して固相材料の表面に固定化された仲介物質と、を備えることができる。本発明の固相担体は、微小物体の固定化用とすることができる。本発明の固相担体によれば、仲介物質によって微小物体を配向固定ができるようになるとともに、微小物体と固相材料との直接の接触を回避又は抑制した状態で微小物体を固相材料に固定化できる。このため、微小物体の安定性や活性を向上させた状態で微小物体を固相材料に配向して固定化できる。
【0122】
本発明の固相担体において、固相材料は光応答性材料であることが好ましい。固相材料10が光応答性材料であると、仲介物質を光固定化できるとともに微小物体4も光固定できる。また、光応答性材料は、アゾ色素含有ユニットを備える(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ウレタン−アクリル系ポリマーのいずれかであることが好ましい。さらに、微小物体4がポリペプチドであるとき、仲介物質20はポリペプチドを含むことが好ましい。仲介物質20がポリペプチドであるとき、α−ヘリックス構造を備えることが好ましく、より好ましくは、このα−ヘリックス構造は構成アミノ酸残基の50%以上が疎水性アミノ酸残基である。さらに、α−ヘリックス構造のN末端又は当該N末端に連結して正電荷を備えることが好ましい。また、仲介物質20であるポリペプチドは、全体としてアミノ酸残基が12残基以上20残基以下であることが好ましい。
【0123】
本発明の固相担体を、図2(a)を参照して説明する。固相担体32は、例えば、図2(a)に示すように、固相材料10の表面にドット状に仲介物質20を備えることもできるし、図2(b)に示すように、固相材料10の表面に全体に仲介物質20を備えることもできる。なお、固相担体32は、図2に示す形態に限定するものではなく、本発明の微小物体の固定化方法において説明した固相材料が取りうる形態及び好ましい形態を全て適用することができる。同様に、固相担体32における仲介物質20及び微小物体4には、本発明の固定化方法において説明した仲介物質及び微小物体が取りうる形態及び好ましい形態を全て適用することができる。
【0124】
(固定化用固相担体の製造方法)
本発明の固定化用固相担体の製造方法は、固相材料を準備する準備工程と、少なくとも前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質を前記固相材料の表面に固定化する仲介物質固定化工程と、を備えることができる。この製造方法によれば、微小物体への活性等の低下を回避又は抑制しながら微小物体を配向固定や固定化量の増加を実現可能な固相担体を提供できる。この製造方法における固相材料、仲介物質微小物体及び仲介物質の固定化については、本発明の微小物体の固定化方法における固相材料、仲介物質及びその固定化並びに微小物体が取りうる形態及び好ましい形態を全て適用することができる。
【0125】
本発明の製造方法は、例えば、本発明の微小物体の固定化方法における、固相材料の準備工程(図1(a))と、仲介物質の固定化工程(図1(b))として実施することができる。仲介物質の固定化工程は、光照射により仲介物質を固相材料表面に固定化することが好ましい。仲介物質と微小物体とを2段階で光固定化することで、微小物体4に対して一層緩和された条件でかつ活性発現に有効な状態で微小物体4を固相材料10に固定化できる。
【0126】
(微小物体が固定化された固相体)
本発明の固相体は、固相材料と、少なくとも微小物体と相互作用可能な第1の要素を有して固相材料の表面に固定化された仲介物質と、仲介物質を介して固相材料に固定化された微小物体とを備えることができる。本発明の固相体によれば、微小物体が仲介物質により配向制御され、かつ、微小物体は仲介物質を介して固相材料に固定化されているため、微小物体の活性や安定性等が確保されつつ配向されている。
【0127】
本発明の固相体を、図3(a)及び図3(b)を参照して説明する。固相体2は、例えば、図3(a)に示すように、固相材料10の表面にドット状に仲介物質20を備え、さらに、こうした個々の仲介物質20に対して個別に微小物体4が固定化されていてもよいし、図3(b)に示すように、固相材料10の表面に全体に固定化された仲介物質20の表面に、異なる微小物体4が固定化されていてもよい。
【0128】
本発明の固相体は、図3に示す形態に限定するものではなく、本発明の固相体における固相材料、仲介物質及びその固定化、微小物体については、本発明の光固定化方法における固相材料、仲介物質及びその固定化並びに微小物体のうち光固定化を目的として使用できる形態及び好ましい形態を全て適用することができる。
【0129】
このような固相体においては、微小物体がポリペプチドであることが好ましい。ポリペプチドは、活性発現のために活性部位の露出及び活性発現のための立体構造変化が重要であり、これらは、配向制御により始めて確保されるからである。また、ポリペプチドは、固相材料によっても活性や安定性が大きく影響を受けるからである。
【0130】
固相体2は、微小物体4を活性や安定性等に有利な状態で固定されているため、分析や診断用途に適している。また、光固定は、抗体を含むタンパク質、糖鎖、核酸及び細胞等の生体材料及び生物材料の固定化に適している。したがって、本発明の固相体30は、タンパク質、酵素、抗体チップ、糖鎖チップ、DNA等の核酸チップ、細胞チップ等の分析ないし診断用デバイスに好適である。また、酵素、細胞などを固相担体2に固定化したバイオリアクターにも好適である。光学的検出特性が優れるために、リアクターの設計や制御が容易であり、また、微小物体4の保持安定性に優れるからである。したがって、高効率なバイオリアクター、特にマイクロリアクターを作製することができる。
【0131】
(微小物体と他の成分との相互作用の検出方法)
本発明の微小物体と他の成分との相互作用の検出方法は、本発明の固相体に固定化された微小物体に対して他の成分を供給して相互作用を発揮させる工程と、前記他の成分と前記微小物体との相互作用を検出する工程と、を備えることができる。本発明の検出方法によれば、相互作用などの活性や安定性確保のために有利な状態で微小物体が固定化されているため、精度、感度等の良好な相互作用の検出が可能である。ここでいう相互作用とは、静電的結合性相互作用、イオン結合性相互作用、水素結合性相互作用、疎水性相互作用、親水性相互作用等が挙げられる。また、例えば、リガンドと該リガンドに対するレセプター間における相互作用、特定のアミノ酸配列や構造を有するタンパク質とこのタンパク質と親和性を有するタンパク質などの物質との間の相互作用、酵素と該酵素に対する基質との相互作用、抗原と該抗原に対する抗体との相互作用、特定塩基配列を有する核酸又は修飾核酸と、該核酸又は修飾核酸の特定塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する核酸又は修飾核酸との相互作用等をあげることができる。本検出方法においては、微小物体20は生体材料や生物材料等の生体分子材料であることが好ましく、また、こうした相互作用を光学的シグナルで検出することが好ましい。
【0132】
(仲介物質のスクリーニング方法及び仲介物質スクリーニング用固相体)
本発明の仲介物質のスクリーニング方法は、微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質の候補としての2種類以上の試験化合物が表面に固定化された固相材料を準備する工程と、前記固相材料上の前記2種類以上の試験化合物の前記相互作用が発現可能な状況下で所定の微小物体を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程と、前記2種類以上の試験化合物の前記微小物体の固定化能を評価する工程と、を備えることができる。このスクリーニング方法によれば、微小物体の配向を制御して固相材料に固定化するのに適した仲介物質をスクリーニングすることができる。
【0133】
スクリーニング対象となる試験化合物は、特に限定しないが、本発明の固定化方法において説明した仲介物質が取りうる態様を備えることができる。すなわち、第1の要素、第2の要素、疎水性領域、親水性領域等についての各種実施態様を備えることができる。試験化合物は、好ましくはポリペプチドである。試験化合物をポリペプチドとするとき、試験化合物は、分子量(5000以下);アミノ酸残基数;疎水性領域の有無(好ましくはC末端領域);疎水性領域のアミノ酸残基換算分子量(700以上)及びアミノ酸残基数、ヘリックス構造の有無、そのアミノ酸残基組成;静電的相互作用部位(好ましくは正電荷であり好ましくはN末端領域、より好ましくはN末端)の有無、静電的作用部位のアミノ酸残基組成に関して、既に説明した各種形態に基づいて設計することができる。具体的には、ポリペプチドのアミノ酸残基組成(配列)を決定する。アミノ酸配列の決定には、上記要件のうち一部又は全部を充足するアミノ酸配列を探索するアルゴリズムを指示するプログラムを用い、コンピュータにこのプログラムを実行させることが好ましい。また、2種類以上の試験化合物は、固定化しようとする微小物体の特性を考慮して、その構造や組成が選択されることが好ましい。
【0134】
こうしたアルゴリズムは、例えば、探索要件となるポリペプチドの分子量等に関する要件情報を取得するステップと、取得した要件情報に基づいてこれらの要件を充足するアミノ酸配列を創出するステップと、を備えることができる。要件情報取得ステップは、各種要件を操作者が任意にあるいは予め設定された範囲から選択してキーボード等から入力等させることで、コンピュータ、すなわち、CPUが要件情報を取得するステップである。このため、要件情報取得ステップは、各種要件の問い合わせ画面をディスプレイ等に表示するステップを包含していてもよい。一部の要件は、予め固定されていてもよい。
【0135】
アミノ酸配列創出ステップは、取得した要件情報に基づいてCPUがアミノ酸配列を創出する工程である。アミノ酸配列を創出する具体的アルゴリズムは特に限定しないが、公知のアクセルリス社Insght II等のアルゴリズムやプログラムを利用できる。なお、アミノ酸配列の創出にあたっては、上記した要件情報以外にヘリックス構造の形成しやすさ、各種アミノ酸の性質(疎水性、親水性、酸性、塩基性等)に関する情報を利用することが好ましい。このようなポリペプチドからなる試験化合物は、コンビナトリアルケミストリーにより取得することで準備することができる。
【0136】
このスクリーニング方法においては、固相材料は光応答性材料であることが好ましく、試験化合物は光固定により前記固相材料に固定化されていることが好ましい。こうすることで、光固定による微小物体の二段階固定(仲介物質の固定及び微小物体の固定)に適した仲介物質を試験化合物からスクリーニングすることができる。
【0137】
試験化合物及び所定の微小物体を固定化する工程については、既に説明した本発明の固定化方法における仲介物質及び微小物体の固定化において取りうる各種実施態様を適用することができる。また、固定化する微小物体は、1種類であってもよいし2種類以上であってもよい。
【0138】
試験化合物による微小物体の固定化能を評価するには、微小物体の固定化量を評価できるようにしておくことが好ましい。例えば、微小物体に光学的シグナルなどのシグナル発生要素を予め付与し、このシグナルを検出することができる。例えば、Cy3、Cy5等の蛍光色素によって標識しておくことが挙げられる。なお、微小物体にシグナル発生要素を付与しない場合には、微小物体を認識する標識抗体を用いて、固定化した微小物体の固定化量を評価することもできるし、微小物体を何らかの反応、呈色反応、発光反応等により定量的に検出することもできる。
【0139】
本スクリーニング方法の固定化能の評価工程においては、試験化合物による配向制御を伴う微小物体の固定化能を評価することもできる。このためには、固定化する微小物体の特定部位とのみ反応する成分を固定化した微小物体に供給して、その反応生成物の量を検出すればよい。配向制御を伴う固定化能の評価には、固定化した微小物体の活性(機能)の評価を用いることができる。例えば、微小物体として抗体を使用し、反応成分として抗体の抗原認識部位によって認識され捕捉される標識抗体、標識酵素などの標識化合物を使用できる。また、微小物体として酵素を使用し、反応成分としてこの酵素の基質や補酵素を使用し、反応生成物を定量的に検出してもよい。
【0140】
なお、固相材料と、固相材料の表面に固定化され微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質の候補としての2種類以上、好ましくは10種類以上の試験化合物と、を備える、固相体は、所定の微小物体の固定化のための仲介物質用のスクリーニング用固相体として利用できる。このスクリーニング用固相体は、仲介物質の固定化能を一挙に一覧して効率的に評価できるように基板状の固相材料を備えていることが好ましく、より好ましくは、試験化合物をアレイ状に備えている。さらに好ましくは、固相材料は光応答性材料であり、試験化合物及び/又は微小物体を光固定により固相材料に固定化される。こうしたスクリーニング用固相体に利用できる固相材料及びポリペプチド並びに固相体の製造法に関しては、既に本発明の微小物体の固定化法や本発明の光固定化用光固相担体について開示されている各種態様及び好ましい態様をそのまま適用できる。
【0141】
(微小物体のスクリーニング方法及び微小物体のスクリーニング用固相体)
本発明の微小物体のスクリーニング方法は、前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する所定の仲介物質が表面に固定化された固相材料を準備する工程と、前記固相材料上の前記仲介物質の前記相互作用を発現可能な状況下で前記微小物体の候補としての2種類以上の試験化合物を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程、前記2種類以上の試験化合物の固定化量及び/又は配向性を評価する工程と、を備えることができる。このスクリーニング方法によれば、所定の仲介物質を利用して配向を制御して固相材料に固定化するのに適した微小物体を試験化合物からスクリーニングすることができる。
【0142】
スクリーニング対象となる試験化合物は、特に限定しないが、本発明の固定化方法において説明した微小物体が取りうる態様を備えることができる。試験化合物は、好ましくは、ポリペプチドである。また、所定の仲介物質としては、本発明の固定化方法で説明した仲介物質のほか、仲介物質のスクリーニング方法によって選抜された試験化合物を用いることもできる。
【0143】
なお、本発明のスクリーニング方法においても、固相材料は光応答性材料であることが好ましく、試験化合物は光固定により前記固相材料に固定化されていることが好ましい。こうすることで、光固定による微小物体の二段階固定(仲介物質の固定及び微小物体の固定)に適した微小物体を試験化合物からスクリーニングすることができる。
【0144】
所定の仲介物質及び試験化合物を固定化する工程については、既に説明した本発明の固定化方法における仲介物質及び微小物体の固定化において取りうる各種実施態様を適用することができる。また、固定化する所定の仲介物質は、1種類であってもよいし2種類以上であってもよい。
【0145】
微小物体の固定化量や配向性を評価するには、仲介物質のスクリーニング方法において説明下のと同様の方法を採用することができる。すなわち、スクリーニング対象である試験化合物に対して予めシグナル発生要素を付与したりすることができる。
【0146】
なお、固相材料と、前記固相材料の表面に固定化され前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する所定の仲介物質と、を備える、固相担体は、微小物体用のスクリーニング用固相体として利用できる。このスクリーニング用固相体も、仲介物質のスクリーニング用固相体と同様、基板状の固相材料を備えていることが好ましく、より好ましくは、所定の仲介物質をアレイ状に備えている。さらに好ましくは、固相材料は光応答性材料であり、試験化合物及び/又は微小物体を光固定により固相材料に固定化される。こうしたスクリーニング用固相体に利用できる固相材料及びポリペプチド並びに固相体の製造法に関しては、既に本発明の微小物体の固定化法や本発明の光固定化用光固相担体について開示されている各種態様及び好ましい態様をそのまま適用できる。
【0147】
以下、本発明を、具体例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0148】
(仲介分子の設計:合成ペプチド)
仲介分子として、図4に示す20残基のαへリックス型のペプチド(配列番号:46〜101)を設計し、ペプチドライブラリーを化学合成した。これらのペプチドは、図5(a)に示すように、αへリックスを形成した場合、少なくとも半面に疎水性アミノ酸残基が優位に配列されており疎水性となっている。すなわち、図5(b)に示すように、αヘリックス構造の2回転分をWheelとするWheel modelを構築し、αヘリックスの回転方向に沿ったアミノ酸配列(a,b,c,d,e,f,g)のa,b,e,fに疎水性アミノ酸残基を配位した。なお、これらの合成ペプチドは、いずれもアミノ酸残基が20個以下であり、分子量は5000以下(700〜2200)であった。
【実施例2】
【0149】
(固定化能の評価)
100μg/mLの合成ペプチド水溶液1μLをアゾフィルムに滴下し、真空乾燥した後、0.5時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)した。その後、さらにTPBSにて5分間、3回の洗浄を行い、合成ペプチドを光固定化した。これに1μg/mLのCy5-標識 Goat anti mouse IgG (CHEMICON社製、AP127S)/ TPBS溶液50μLを滴下し、ギャップカバーグラスで覆った上で、これを17時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)して抗体を光固定化した。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しペプチドを滴下したスポットの蛍光量を測定した。結果を図6に示す。
【0150】
図6に示すように、ペプチドを固定化したスポット(1〜56)のうち一部のスポットの蛍光強度は、ペプチドを固定化していない領域の蛍光強度に対して、有意に高かった。このことは、仲介分子である合成ペプチドが溶液中の抗体に対し親和力を持ち抗体をアゾフィルム表面上に吸着させることができることを支持している。
【0151】
なお、本実施例及び以下の実施例で用いたアゾフィルムは、以下の式に示すアゾポリマー(m:n=15:85)を用いたものである。アゾフィルムは、このアゾポリマー200mgをピリジン溶液16mlで溶解後、0.22μmのフィルタでろ過し、アセトン含浸コットンで拭いたスライドガラスを乾燥した後、スピンキャスト機にて80μlのポリマー溶液を滴下し、4000rpmで10秒間回転させた後、60℃で2時間乾燥後、遮光下真空乾燥して作製した。
【化2】
【実施例3】
【0152】
(光照射の効果の評価)
実施例2の実験操作において光照射(25℃、17時間)を行った場合と行わなかった場合の光固定化量の差を評価した。結果を図7に示す。
【0153】
図7に示すように、複数のペプチド(No.1,2,6,8,9,12,14,21,30,31,32,33,34,35,40,41,45,46,50,52,53,54,55,56)で抗体の存在下、光照射することによって蛍光量が増加した。このことは、アゾフィルムは、仲介分子である合成ペプチドを介した状態においても抗体を固定化する作用を有することを強く支持している。仲介物質が存在した状態における光照射による固定化能の維持は、光固定の固定化原理が表面変形によるものであることに関連しており、微小物体と担体とが直接相互作用していると考えられた。
【実施例4】
【0154】
(20残基αへリックスペプチドを用いた場合の固定化抗体と配向性の評価)
(1)固定化抗体の評価
実施例2に記載したのと同様の方法で合成ペプチドをコーティングした。これに1μg/mLのanti goat IgG rabbit-IgG(Bethyl社製、A50-100A)/ TPBS溶液50μLを滴下し、これを17時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)して、抗体を光固定した。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。これに対して、1μg/mLのCy5-標識 Goat anti mouse IgG (CHEMICON社製、AP127S) / TPBS溶液50μLを滴下し30分間、25℃で反応させた。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しペプチドを滴下したスポットの蛍光量を測定し、固定化抗体能を評価した。各ペプチドに関して、固定化能(実施例2)と本実施例で評価した固定化抗体能の関係を図8に示す。図8には、抗体溶液をアゾフィルムに滴下し乾燥後光固定をした場合(従来法)を併せて示す。
【0155】
図8に示すように、抗体溶液をアゾフィルムに滴下し乾燥後光固定をした場合(従来法)と比較して、固定化抗体能が高いものペプチド (ペプチドNo.50, 53) は、抗体の活性部位が溶液側に向く傾向にあり、抗体の配向性を改善していると考えられた。一方で固定可能に対して固定化抗体能が低いペプチド(ペプチドNo.3, 30, 40)は、抗体の活性部位がアゾフィルム側に配向していると考えられた。このことは、二段階固定化法が固定化抗体の配向性を制御することができることを支持している。
【実施例5】
【0156】
(N末端認識型ペプチドを用いた場合の固定化抗体能と配向性)
100μg/mLの合成ペプチド(図9)をアゾフィルムに0.1μL滴下し、真空乾燥した後、0.5時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)した。その後、TPBSにて5分間、3回の洗浄を行い、合成ペプチドを固定化した。ペプチドを滴下し固定した各位置に対し0-400ng/mLのRabbit anti goat IgG / TPBS溶液1μL 滴下した。これを17時間、25℃で25℃で光照射(20 mW/cm2)しつつインキュベートした。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。
【0157】
(固定化能の評価)
ペプチドを固定化したアゾフィルム上に1μg/mLのCy5-標識 Mouse anti Rabbit IgG (AP188S) / TPBS 溶液を滴下して、25℃にて30分間反応させ、その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しCy5の蛍光量を測定し、ペプチドを滴下したスポットの蛍光量を定量した。
【0158】
(固定化抗体能の評価)
また、ペプチドを固定化したアゾフィルム上のペプチド上に1μg/mLのCy5-標識 Mouse anti Goat IgG (AP127S)/ TPBS 溶液を滴下し、25℃にて30分間反応させ、その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しCy5の蛍光量を測定し、ペプチドを滴下したスポットの蛍光量を定量した。
【0159】
なお、従来法は、合成ペプチドを滴下する工程に合成ペプチドに替えて0-400ng/mLのRabbit anti goat IgG / TPBS溶液0.1μL 滴下し、光固定した。
【0160】
配向性は、固定化能あたりの固定化抗体活性を指標とし、従来法を1として各ペプチドを固定化した場合の値を算出した。その結果を図9に示す。
【0161】
図9に示すように、ペプチドを二段階で光固定することにより、従来法と比較して、2.3倍から5倍の高い値が得られた。このことは、二段階固定化法が固定化抗体の配向性を制御することができる可能性があることを支持している。また、ペプチドを介することにより抗体に対する保護作用が働いていることも支持している。
【実施例6】
【0162】
アゾフィルムにStabilGuard Biomolecule Stabilizer (SurModics社 SG01-0125)の原液を50μL滴下し、30分間、室温で反応させ、その後TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。この処理により、アゾフィルムの表面は親水化し、ポリマー成分(蛋白成分は不含)がコーティングされていることが推測された。
【0163】
(固定化能の評価)
このポリマー成分上に、100-500ng/mLの濃度のCy5-標識 Mouse anti Goat IgG (AP127S)/ TPBS 溶液1μLを基板に滴下し、これを真空乾燥し、0.5時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)した。その後、これをTPBS溶液に浸し、5分間振とうすることによって洗浄した。これに1μg/mLのCy5-標識 Mouse anti Goat IgG (AP127S)/ TPBS 溶液を滴下し、25℃にて30分間反応させ、その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーに設置しCy5の蛍光量を測定した。
【0164】
(固定化抗体能の評価)
また、同様に、0-400ng/mLのRabbit anti goat IgG (A50-100A)/ TPBS溶液 1μLを基板に滴下し、これを真空乾燥した。その後、これをTPBS溶液に浸し、5分間震とうすることによって洗浄した。これに1μg/mLのCy5-標識 Mouse anti Goat IgG (AP127S)/ TPBS 溶液を滴下し、25℃にて30分間反応させ、その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーに設置しCy5の蛍光量を測定した。
【0165】
スポットの蛍光強度と抗体溶液の滴下濃度からその傾き(slope)を算出した。StabilGuard Biomolecule Stabilizerを処理した場合としない場合の結果を図10に示す。
【0166】
図10に示すように、コーティング後においても抗体が固定化されることが分かった。またその固定化量は半減したが配向性は向上した。以上のことから、ペプチド以外の有機ポリマーであっても、微小物体の配向制御が可能であることがわかった。
【実施例7】
【0167】
(疎水性へリックス構造の評価)
(ペプチド固定量の評価)
図11に示す各種合成ペプチドを、実施例2と同様の方法でアゾフィルム上に固定した。固定化後、1μg/mLのCy5 mono-reactive-dye (GEヘルスケアバイオサイエンス社 PA25001)/ PBS溶液50μLを滴下し30分間室温で反応させた。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行い、このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しペプチドを滴下したスポットの蛍光量を測定した。
【0168】
(固定化能の評価)
合成ペプチドをコーティングした後のスライドグラスに対し、1μg/mLのCy5-標識 Goat anti mouse IgG / TPBS溶液50μLを滴下し、これを17時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)した[抗体の固定化]。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しペプチドを滴下したスポットの蛍光量を測定した
【0169】
これらのペプチドを評価した結果を図12に示す。図12に示すように、ペプチドIAT, IAT(A9), IAT(G)では、ペプチドがアゾフィルム上に固定化されていることが分かった。一方でペプチドIAT(A7), IAT(A5), IAT(I>G)は、アゾフィルム上に固定化されていないことが分かった。ペプチドIAT, IAT(A9), IAT(G)では、CDスペクトル測定によりほぼ100%ヘリックス構造を形成していることが確認されている。図12には、ペプチド名称の左側に模式的にペプチド構造を示している。図12に示すペプチド構造のジグザグはα−へリックス構造を示しており、IAT(G)及びIATのペプチド表示のジグザグ構造から下方を指向して付加された楕円状体はイソロイシンの疎水性基を表している。以上のことから仲介物質としてのペプチドの固定化には疎水性領域、特に疎水性へリックス構造が重要であることがわかった。また、固定化能の結果は、ペプチド固定量に依存していることから、Cy5 mono-reactive-dyeによるペプチドの固定化量の評価は、実際の固定化量を反映していることをよく支持していると考えられる。
【実施例8】
【0170】
(1)合成ペプチドの抗体固定化能の評価
図13に示す、100μg/mLの合成ペプチドをアゾフィルムに1μL滴下し、真空乾燥した後、2時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)した。その後、TPBSにて5分間、3回の洗浄を行い、合成ペプチドを光固定化した。これに1μg/mLのCy5-標識 Goat anti mouse IgG / TPBS溶液を滴下し、これを17時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)しつつインキュベートした。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行い、抗体を光固定化した。このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しCy5の蛍光量を測定し、ペプチドを滴下したスポットの蛍光量を定量した。結果を図13に示す。
【0171】
(2)固定化抗体活性の評価
(1)合成ペプチドの抗体固定化能の評価と同様の方法で図13に示す各種合成ペプチドを光固定した。これに1μg/mLのRabbit anti goat IgG / TPBS溶液を滴下し、これを17時間、25℃で光照射(20 mW/cm2)しつつインキュベートした。その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行い、抗体を固定化した。1μg/mLのCy5-標識 Goat anti mouse IgG / TPBS溶液を滴下し、25℃にて30分間反応させ、その後、TPBSにて1分間、3回の洗浄を行った。このスライドグラスをアレイスキャナーにて設置しCy5の蛍光量を測定し、ペプチドを滴下したスポットの蛍光量を定量した。結果を図13に示す。
【0172】
なお、比較例1として、(1)において合成ペプチド溶液の代わりに水のみを滴下し、比較例2として、(2)において合成ペプチド溶液の代わりに10μg/mLのRabbit anti goat IgG / TPBS溶液を滴下し、比較例3として、(1)及び(2)において合成ペプチドとして配列EATAIAAIAAAIを用い、比較例4として、(1)及び(2)において合成ペプチドとして配列EAAAIAAIAAAIを用いた。
【0173】
また、各合成ペプチドの配向性は、(1)で得られた固定化能に対する(2)で得られた固定化抗体活性の比を用い、比較例2における10μg/mLのRabbit anti goat IgGを乾燥光固定した場合の固定化能に対する固定化抗体活性の比を1として算出した。結果を図13に併せて示す。
【0174】
図13に示すように、合成ペプチド1〜33の固定化能は、比較例1の場合に比べ10倍以上に増加した。これは、図13に挙げたペプチドが抗体の吸着性を飛躍的に高めたと考えられる。一方で、比較例3及び4において、固定化能は著しく減少した。これはN末端のアミノ基が抗体の分子表面と相互作用していることを示しており、この現象はN末端に位置したグルタミン酸(E)のカルボキシル基がN末端のアミノ基と抗体分子の相互作用を阻害しているためと考えられた。
【0175】
合成ペプチドを介して担体に吸着した抗体の活性(固定化抗体活性)は、直接光固定化された抗体(比較例2)の場合に比べ3-20倍増加した。固定化された抗体あたりの活性を示す値(配向性)は直接光固定化された抗体(比較例2)の場合に比べ3-6倍となった。これは、(1)固定化された抗体の抗原認識部位が担体(もしくはペプチド)と相互作用しておらず、水溶液側に配向した状態であること、(2)直接固定化された場合に比べ抗体が本来の立体構造を保った状態になっていることを支持している。
【0176】
固定化能や配向性を指標にスクリーニングした合成ペプチド1〜33のN末端側3残基のアミノ酸配列から、N末端のアミノ基が修飾されていないことが重要であり、N末端側3残基内にスレオニンまたはセリンが含まれていることが好ましいことがわかった。
【0177】
また、固定化抗体能が高くかつ配向性が3倍以上のN末端側3残基は、 IAA, VAA, FAA, PAA, AAA, LAA, QAA, IAT, ATA, FAT, WAT, VAT, LAT, AAT, PAT, IHT, IPT, IIT, IMT, IST, ITT, IQT, IAS, IGS, IVS, ISS, ITS, IQS, INS, IAY, IAE, IAIであることがわかった。なかでも、配向性が5倍以上のN末端3残基は、IAT, ITT, ITS, IASであり、固定化抗体能が特に高く配向性が3倍以上のN末端3残基は、IPT, IMT, IST, IQT, IQS, INSであることがわかった。
【配列表フリーテキスト】
【0178】
配列番号1〜101:微小物体の固定化のためのポリペプチド
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】本発明の固定化方法の一例を示す図である。
【図2】本発明の固相担体の例を示す図である。
【図3】本発明の固相体の例を示す図である。
【図4】実施例1における合成ペプチドのアミノ酸配列を示す図である。
【図5】実施例1における合成ペプチドのα−へリックス構造を示す図(a)と、アミノ酸配位位置を示す図(b)である。
【図6】実施例2における抗体固定化能を評価結果を示す図である。
【図7】実施例3における光照射効果の評価結果を示す図である。蛍光量の増加は、繰り返しの光照射により抗体の固定化量が増大することを示しており、抗体の固定化量の増加は、光照射によるものであることを強く支持する結果である。
【図8】実施例4における合成ペプチドによる抗体の配向制御の評価結果を示す図である。
【図9】実施例5で用いる合成ペプチドのアミノ酸配列と配向性の評価結果とを示す図である。
【図10】実施例6における非ペプチド性の有機ポリマーを仲介物質としたときの、抗体の固定化能、固定化抗体能及び配向性の評価結果を示す図である。
【図11】実施例7で用いる合成ペプチドのアミノ酸配列を示す図である。
【図12】実施例7における合成ペプチドの評価結果を示す図であり、上段の図はペプチド固定量を示す図であり、下段の図は抗体固定化能を示す図である。上段の図のペプチド名称の左側にはペプチドの立体構造を模式的に表示する。
【図13】実施例8で用いる合成ペプチドのアミノ酸配列を示すとともに、これらの各合成ペプチドの固定化能、固定化抗体活性及び配向性の評価結果を示す図である。
【符号の説明】
【0180】
2 固相体、4 微小物体、10 固相材料、12 担体、20 仲介物質、32 固相担体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小物体が固相材料に固定化された固相体の製造方法であって、
少なくとも前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質を表面に備える前記固相材料を準備する工程と、
前記固相材料上において、前記仲介物質の前記相互作用を発現させた状態で前記微小物体を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程、
を備える、方法。
【請求項2】
前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料であり、
前記微小物体固定化工程は、前記微小物体を前記固相材料の表面又はその近傍に配した状態で光照射することにより前記固相材料に固定化する工程である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微小物体固定化工程に先立って、
前記仲介物質を前記固相材料の表面に固定化する仲介物質固定化工程を備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料であり、
前記仲介物質固定化工程は、前記仲介物質を前記固相材料の表面又はその近傍に配した状態で光照射することにより前記固相材料に固定化する工程である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記仲介物質の前記第1の要素は非共有結合性の相互作用である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記非共有結合性相互作用は静電的相互作用又は親水性相互作用である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記仲介物質は、前記微小物体の分子量よりも十分に小さい分子量を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記仲介物質の分子量が5000以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記仲介物質は、前記微小物体の差し渡し径よりも十分に小さい厚みの層厚で前記固相材料の表面に準備される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記仲介物質は、前記固相材料と相互作用可能な第2の要素を備える、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記相互作用は、疎水性相互作用である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記仲介物質はポリペプチド鎖を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記仲介物質の前記ポリペプチド鎖は、少なくとも片面側に優位に疎水性アミノ酸残基が配列される疎水性のα−へリックス構造を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリペプチド鎖は、N末端領域又はC末端領域に前記第1の要素を備える、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の要素は、前記ポリペプチド鎖のN末端の非酸性アミノ酸残基を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記仲介物質はアミノ酸残基数が12以上20以下のポリペプチド鎖を含み、疎水性アミノ酸酸残基を50%以上含むα−へリックス構造を有する、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記微小物体はポリペプチド鎖を含む、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記微小物体は抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
固相材料に固定化しようとする微小物体と相互作用可能な第1の要素を少なくとも有し、前記微小物体を固相材料に固定化するために前記固相材料の表面に固定される、微小物体の固相材料への固定化用仲介物質。
【請求項20】
鎖状構造を有する有機分子である、請求項19に記載の仲介物質。
【請求項21】
分子量が5000以下である、請求項19又は20に記載の仲介物質。
【請求項22】
ポリペプチド鎖を含む、請求項20又は21に記載の仲介物質。
【請求項23】
前記ポリペプチド鎖は、N末端領域又はC末端領域に前記第1の要素を備える、請求項23に記載の仲介物質。
【請求項24】
前記第1の要素は、前記ポリペプチド鎖のN末端の非酸性アミノ酸残基を含む、請求項23に記載の仲介物質。
【請求項25】
前記第1の要素は、前記ポリペプチド鎖のN末端から2番目又は3番目にセリン又はトレオニンを有する、請求項24に記載の仲介物質。
【請求項26】
前記第1の要素は、そのN末端の3残基又は2残基が、以下の表から選択されるいずれかである、請求項24又は25に記載の仲介物質。
【表1】
【請求項27】
前記ポリペプチド鎖は、α-へリックス構造を有する、請求項22〜26のいずれかに記載の仲介物質。
【請求項28】
前記仲介物質は、固相材料と相互作用可能な第2の要素を備える、請求項22〜27のいずれかに記載の仲介物質。
【請求項29】
前記仲介物質はポリペプチド鎖を含み、疎水性アミノ酸残基を50%以上含むα−へリックス構造を有する、請求項19〜28のいずれかに記載の仲介物質。
【請求項30】
前記疎水性アミノ酸残基は、アラニン及びイソロイシンから選択される、請求項29に記載の仲介物質。
【請求項31】
前記α−へリックス構造は、8個以上の疎水性アミノ酸残基が連続するアミノ酸配列からなるα−へリックス構造を有する、請求項29又は30に記載の仲介物質。
【請求項32】
前記α−へリックス構造は、以下の表に示すアミノ酸配列から選択されるいずれかを有する、請求項29〜31のいずれかに記載の仲介物質。
【表2】
【請求項33】
前記微小物体はポリペプチド鎖を有する、請求項19〜32のいずれかに記載の仲介物質。
【請求項34】
前記微小物体は抗体である、請求項33に記載の仲介物質。
【請求項35】
微小物体が固定化された固相体であって、
固相材料と、
請求項19〜34のいずれかに記載の仲介物質と、
前記仲介物質を介して固相材料に固定化された微小物体と、
を備える、固相体。
【請求項36】
前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料であり、
前記微小物体は、前記微小物体を前記固相材料の表面又はその近傍に配した状態で光照射することにより前記固相材料に固定化されている、請求項35に記載の固相体。
【請求項37】
前記微小物体はポリペプチド鎖を含んでいる、請求項35又は36に記載の固相体。
【請求項38】
前記微小物体は抗体である、請求項37に記載の固相体。
【請求項39】
微小物体を固定化するための固相担体であって、
固相材料と、
前記固相材料の表面に固定化される請求項19〜34のいずれかに記載の仲介物質と、
を備える、固相担体。
【請求項40】
前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料である、請求項39に記載の固相担体。
【請求項41】
前記光応答性材料は、アゾ色素含有ユニットを備える(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ウレタン−アクリル系ポリマーのいずれかである、請求項39又は40に記載の固相担体。
【請求項42】
微小物体を固定化するための固定化用固相担体の製造方法であって、
固相材料を準備する準備工程と、
請求項19〜34のいずれかに記載の仲介物質を前記固相材料の表面に固定化する仲介物質固定化工程と、
を備える、方法。
【請求項43】
微小物体と他の成分との相互作用の検出方法であって、
請求項35〜38のいずれかに記載の固相体上の前記微小物体に対して前記他の成分を供給して前記相互作用を発現させる工程と、
前記他の成分と前記微小物体との前記相互作用を検出する工程と、
を備える、方法。
【請求項44】
微小物体を固相材料に固定化するための仲介物質のスクリーニング方法であって、
前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質の候補としての2種類以上の試験化合物が表面に固定化された固相材料を準備する工程と、
前記固相材料上の前記2種類以上の試験化合物の前記相互作用が発現可能な状況下で所定の微小物体を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程と、
前記2種類以上の試験化合物の前記微小物体の固定化能を評価する工程と、
を備える、方法。
【請求項45】
微小物体を固相材料に固定化するための仲介物質のスクリーニング用固相担体であって、
固相材料と、
前記固相材料の表面に固定化され前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質の候補としての2種類以上の試験化合物と、
を備える、固相担体。
【請求項46】
微小物体のスクリーニング方法であって、
前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する所定の仲介物質が表面に固定化された固相材料を準備する工程と、
前記固相材料上の前記仲介物質の前記相互作用を発現可能な状況下で前記微小物体の候補としての2種類以上の試験化合物を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程と、
前記2種類以上の試験化合物の固定化量及び/又は配向性を評価する工程と、
を備える、方法。
【請求項47】
微小物体のスクリーニング用固相担体であって、
固相材料と、
前記固相材料の表面に固定化され前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する所定の仲介物質と、
を備える、固相担体。
【請求項1】
微小物体が固相材料に固定化された固相体の製造方法であって、
少なくとも前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質を表面に備える前記固相材料を準備する工程と、
前記固相材料上において、前記仲介物質の前記相互作用を発現させた状態で前記微小物体を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程、
を備える、方法。
【請求項2】
前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料であり、
前記微小物体固定化工程は、前記微小物体を前記固相材料の表面又はその近傍に配した状態で光照射することにより前記固相材料に固定化する工程である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微小物体固定化工程に先立って、
前記仲介物質を前記固相材料の表面に固定化する仲介物質固定化工程を備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料であり、
前記仲介物質固定化工程は、前記仲介物質を前記固相材料の表面又はその近傍に配した状態で光照射することにより前記固相材料に固定化する工程である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記仲介物質の前記第1の要素は非共有結合性の相互作用である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記非共有結合性相互作用は静電的相互作用又は親水性相互作用である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記仲介物質は、前記微小物体の分子量よりも十分に小さい分子量を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記仲介物質の分子量が5000以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記仲介物質は、前記微小物体の差し渡し径よりも十分に小さい厚みの層厚で前記固相材料の表面に準備される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記仲介物質は、前記固相材料と相互作用可能な第2の要素を備える、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記相互作用は、疎水性相互作用である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記仲介物質はポリペプチド鎖を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記仲介物質の前記ポリペプチド鎖は、少なくとも片面側に優位に疎水性アミノ酸残基が配列される疎水性のα−へリックス構造を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリペプチド鎖は、N末端領域又はC末端領域に前記第1の要素を備える、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の要素は、前記ポリペプチド鎖のN末端の非酸性アミノ酸残基を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記仲介物質はアミノ酸残基数が12以上20以下のポリペプチド鎖を含み、疎水性アミノ酸酸残基を50%以上含むα−へリックス構造を有する、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記微小物体はポリペプチド鎖を含む、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記微小物体は抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
固相材料に固定化しようとする微小物体と相互作用可能な第1の要素を少なくとも有し、前記微小物体を固相材料に固定化するために前記固相材料の表面に固定される、微小物体の固相材料への固定化用仲介物質。
【請求項20】
鎖状構造を有する有機分子である、請求項19に記載の仲介物質。
【請求項21】
分子量が5000以下である、請求項19又は20に記載の仲介物質。
【請求項22】
ポリペプチド鎖を含む、請求項20又は21に記載の仲介物質。
【請求項23】
前記ポリペプチド鎖は、N末端領域又はC末端領域に前記第1の要素を備える、請求項23に記載の仲介物質。
【請求項24】
前記第1の要素は、前記ポリペプチド鎖のN末端の非酸性アミノ酸残基を含む、請求項23に記載の仲介物質。
【請求項25】
前記第1の要素は、前記ポリペプチド鎖のN末端から2番目又は3番目にセリン又はトレオニンを有する、請求項24に記載の仲介物質。
【請求項26】
前記第1の要素は、そのN末端の3残基又は2残基が、以下の表から選択されるいずれかである、請求項24又は25に記載の仲介物質。
【表1】
【請求項27】
前記ポリペプチド鎖は、α-へリックス構造を有する、請求項22〜26のいずれかに記載の仲介物質。
【請求項28】
前記仲介物質は、固相材料と相互作用可能な第2の要素を備える、請求項22〜27のいずれかに記載の仲介物質。
【請求項29】
前記仲介物質はポリペプチド鎖を含み、疎水性アミノ酸残基を50%以上含むα−へリックス構造を有する、請求項19〜28のいずれかに記載の仲介物質。
【請求項30】
前記疎水性アミノ酸残基は、アラニン及びイソロイシンから選択される、請求項29に記載の仲介物質。
【請求項31】
前記α−へリックス構造は、8個以上の疎水性アミノ酸残基が連続するアミノ酸配列からなるα−へリックス構造を有する、請求項29又は30に記載の仲介物質。
【請求項32】
前記α−へリックス構造は、以下の表に示すアミノ酸配列から選択されるいずれかを有する、請求項29〜31のいずれかに記載の仲介物質。
【表2】
【請求項33】
前記微小物体はポリペプチド鎖を有する、請求項19〜32のいずれかに記載の仲介物質。
【請求項34】
前記微小物体は抗体である、請求項33に記載の仲介物質。
【請求項35】
微小物体が固定化された固相体であって、
固相材料と、
請求項19〜34のいずれかに記載の仲介物質と、
前記仲介物質を介して固相材料に固定化された微小物体と、
を備える、固相体。
【請求項36】
前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料であり、
前記微小物体は、前記微小物体を前記固相材料の表面又はその近傍に配した状態で光照射することにより前記固相材料に固定化されている、請求項35に記載の固相体。
【請求項37】
前記微小物体はポリペプチド鎖を含んでいる、請求項35又は36に記載の固相体。
【請求項38】
前記微小物体は抗体である、請求項37に記載の固相体。
【請求項39】
微小物体を固定化するための固相担体であって、
固相材料と、
前記固相材料の表面に固定化される請求項19〜34のいずれかに記載の仲介物質と、
を備える、固相担体。
【請求項40】
前記固相材料は光照射により変形する光応答性成分を含有する光応答性材料である、請求項39に記載の固相担体。
【請求項41】
前記光応答性材料は、アゾ色素含有ユニットを備える(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ウレタン−アクリル系ポリマーのいずれかである、請求項39又は40に記載の固相担体。
【請求項42】
微小物体を固定化するための固定化用固相担体の製造方法であって、
固相材料を準備する準備工程と、
請求項19〜34のいずれかに記載の仲介物質を前記固相材料の表面に固定化する仲介物質固定化工程と、
を備える、方法。
【請求項43】
微小物体と他の成分との相互作用の検出方法であって、
請求項35〜38のいずれかに記載の固相体上の前記微小物体に対して前記他の成分を供給して前記相互作用を発現させる工程と、
前記他の成分と前記微小物体との前記相互作用を検出する工程と、
を備える、方法。
【請求項44】
微小物体を固相材料に固定化するための仲介物質のスクリーニング方法であって、
前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質の候補としての2種類以上の試験化合物が表面に固定化された固相材料を準備する工程と、
前記固相材料上の前記2種類以上の試験化合物の前記相互作用が発現可能な状況下で所定の微小物体を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程と、
前記2種類以上の試験化合物の前記微小物体の固定化能を評価する工程と、
を備える、方法。
【請求項45】
微小物体を固相材料に固定化するための仲介物質のスクリーニング用固相担体であって、
固相材料と、
前記固相材料の表面に固定化され前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する仲介物質の候補としての2種類以上の試験化合物と、
を備える、固相担体。
【請求項46】
微小物体のスクリーニング方法であって、
前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する所定の仲介物質が表面に固定化された固相材料を準備する工程と、
前記固相材料上の前記仲介物質の前記相互作用を発現可能な状況下で前記微小物体の候補としての2種類以上の試験化合物を前記固相材料に固定化する微小物体固定化工程と、
前記2種類以上の試験化合物の固定化量及び/又は配向性を評価する工程と、
を備える、方法。
【請求項47】
微小物体のスクリーニング用固相担体であって、
固相材料と、
前記固相材料の表面に固定化され前記微小物体と相互作用可能な第1の要素を有する所定の仲介物質と、
を備える、固相担体。
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図10】
【図11】
【図13】
【図1】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図12】
【図3】
【図4】
【図7】
【図10】
【図11】
【図13】
【図1】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図12】
【公開番号】特開2009−109453(P2009−109453A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284783(P2007−284783)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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