説明

微小球

本発明は熱可塑性ポリマーシェル及びその中に閉じ込められた噴射剤を含む熱発泡性微小球を、繊維を含む紙料又は繊維のウェブに添加する工程、前記紙料又はウェブから紙又は不織布を形成する工程、及び熱を適用して前記微小球が発泡するのに充分に前記微小球の温度を上昇させ、それにより前記紙又は不織布の嵩を増大する工程を含み、前記発泡性微小球が約17重量%〜約40重量%の噴射剤を含み、かつ約17μmから約35μmまでの体積平均直径を有することを特徴とする繊維からの紙又は不織布の製造方法に関する。また、本発明は或る種の発泡性微小球及びその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙又は不織布の製造方法及びそれに有益な熱可塑性発泡性微小球に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリマーシェル及びその中に閉じ込められた噴射剤を含む発泡性熱可塑性微小球がトレードマークエクスパンセル(登録商標)として市販されており、多くの異なる応用において発泡剤として使用されている。
このような微小球中で、前記噴射剤は通常、前記熱可塑性ポリマーシェルの軟化温度より高くない沸騰温度を有する液体である。加熱すると、この噴射剤が蒸発して内部圧力を増大すると同時に、前記シェルが軟化して、前記微小球の有意な発泡を生じる。この発泡が開始する温度はTstartと称され、一方、最大発泡に達する温度がTmaxと称される。発泡性微小球は種々の形態で、例えば、乾燥した自由に流動する粒子として、水性スラリーとして、又は部分脱水された湿潤ケーキとして市販される。
【0003】
発泡性微小球は噴射剤の存在下でエチレン性不飽和モノマーを重合することにより製造し得る。種々の発泡性微小球及びそれらの製造の詳細な記載が、例えば、米国特許第3615972号(特許文献1)、米国第3945956号(特許文献2)、米国第5536756号(特許文献3)、米国第6235800号(特許文献4)、米国第6235394号(特許文献5)及び米国第6509384号(特許文献6)、並びにEP486080(特許文献7)に見られる。
微小球を製紙に使用することが、例えば、米国特許第3556934号(特許文献8)及び米国第4133688号(特許文献9)、日本特許第2689787号(特許文献10)並びにO.Soderberg著“World Pulp & Paper Technology 1995/96, The
International Review for the Pulp & Paper Industry”143-145頁(非特許文献1)に開示されていた。
【特許文献1】米国特許第3615972号
【特許文献2】米国第3945956号
【特許文献3】米国第5536756号
【特許文献4】米国第6235800号
【特許文献5】米国第6235394号
【特許文献6】米国第6509384号
【特許文献7】EP 486080
【特許文献8】米国特許第3556934号
【特許文献9】米国第4133688号
【特許文献10】日本特許第2689787号
【非特許文献1】O. Soderberg著“WorldPulp & Paper Technology 1995/96, The International Review for the Pulp& Paper Industry”143-145頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は低い嵩密度を有する紙又は不織布の製造方法を提供することである。
本発明の別の目的は低い嵩密度を有する紙又は不織布の製造に使用し得る発泡性熱可塑性微小球を提供することである。
大きいサイズの発泡性熱可塑性微小球は不十分な発泡特性を有するであろうと従来考えられていた。しかしながら、このような微小球は、また高含量の噴射剤を有する場合に、紙又は不織布の嵩を増大するためにそれらの製造に使用される場合に予想されるよりも高い発泡を生じることが今わかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
こうして、本発明は紙又は不織布の嵩を増大するためのそれらの製造における、熱可塑性ポリマーシェル及び前記ポリマーシェル中に閉じ込められた約17重量%から約40重量%まで、好ましくは約18重量%から約40重量%まで、最も好ましくは約19重量%から約40重量%まで、特に最も好ましくは約20重量%から約35重量%までの噴射剤を含み、かつ約17μmから約35μmまで、好ましくは約18μmから約35μmまで、更に好ましくは約19μmから約35μmまで、最も好ましくは約20μmから約30μmまで、特に最も好ましくは約21μmから約30μmまでの体積平均直径を有する熱発泡性微小球の使用に関する。
本明細書に使用される発泡性微小球という用語は既に発泡されていなかった発泡性微小球、即ち、未発泡の発泡性微小球を表す。
本明細書に示される体積平均直径についてのあらゆる数値はISO
13319:2000,“粒子サイズ分布の測定−電気的検出ゾーン方法”に従って測定することにより得られた値を表す。この測定方法の詳細な記載が、例えば、ストックホルムのスウェーデン規格協会から得られる。
【0006】
更に、本発明は熱可塑性ポリマーシェル及びその中に閉じ込められた噴射剤を含む熱発泡性微小球を、繊維を含む紙料又は繊維のウェブに添加する工程、前記紙料又はウェブから紙又は不織布を形成する工程、及び熱を適用して前記微小球が発泡するのに充分に該微小球の温度を上昇させ、それにより前記紙又は不織布の嵩を増大する工程を含む繊維からの紙又は不織布の製造方法に関する。この発泡性微小球は約17μmから約35μmまで、好ましくは約18μmから約35μmまで、更に好ましくは約19μmから約35μmまで、最も好ましくは約20μmから約30μmまで、特に最も好ましくは約21μmから約30μmまでの体積平均直径を有する。この発泡性微小球中の噴射剤の量は約17重量%から約40重量%まで、好ましくは約18重量%から約40重量%まで、最も好ましくは約19重量%から約40重量%まで、特に最も好ましくは約20重量%から約35重量%までである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施態様は上記発泡性微小球をセルロース繊維を含む紙料に添加する工程、該紙料をワイヤ上で脱水して紙を得る工程、及び熱を適用することにより前記紙を乾燥させ、それによりまた前記微小球が発泡させ、紙の嵩を増大するのに充分に微小球の温度を上昇する工程を含む紙の製造方法に関する。この発泡性微小球は別々に添加されてもよく、又は製紙方法に使用される一種以上のその他の添加剤と一緒に添加されてもよい。
【0008】
前記発泡性微小球はあらゆる形態で添加し得るが、実用的な観点から好ましくは約5重量%から約55重量%まで、最も好ましくは約40重量%から約50重量%までの固形分を有する、水性スラリーの形態でそれらを添加することが最も好ましい。このスラリーは、必要により塩化ナトリウムの如き塩と組み合わせて、抄紙と適合性の増粘剤、例えば、アニオン又はカチオン澱粉を含むことがまた好ましい。澱粉は、例えば、約0.1重量%から約5重量%まで、好ましくは約0.3重量%から約1.5重量%までの量でスラリー中に存在してもよい。塩化ナトリウム、又はその他の塩は、例えば、約0.1重量%から約20重量%まで、好ましくは約1重量%から約15重量%までの量でスラリー中に存在してもよい。
【0009】
前記紙料に添加される発泡性微小球の量は該紙料中の乾燥含量の好ましくは約0.1重量%から約20重量%まで、最も好ましくは約0.2重量%から約10重量%までの乾燥微小球である。
【0010】
本明細書に使用される“紙”という用語は、例えば、ボード、厚紙及び板紙を含む、シート又はウェブ形態のあらゆる型のセルロースをベースとする製品を含むことが意味される。本発明は、特に約50g/m2から約1000g/m2まで、好ましくは約150g/m2から約800g/m2までの基本重量を有する、ボード、厚紙及び板紙の製造に特に有利とわかった。
【0011】
前記紙は単層紙又は多層紙として製造されてもよい。この紙が三層以上を含む場合、前記発泡性微小球は前記二つの外層のいずれかを形成する紙料の部分に添加されないことが好ましい。
【0012】
前記紙料は乾燥材料を基準として、好ましくは約50重量%から約100重量%まで、最も好ましくは約70重量%から約100重量%までのセルロース繊維を含む。脱水前に、前記紙料は発泡性微小球の他にまた一種以上のてん料、例えば、カオリン、チャイナクレー、二酸化チタン、石膏、タルク、チョーク、粉砕大理石又は沈降炭酸カルシウムのような無機てん料、及び必要によりその他の普通に使用される添加剤、例えば、歩留り助剤、サイジング剤、アルミニウム化合物、染料、湿潤強度増強樹脂、蛍光増白剤等を含んでもよい。アルミニウム化合物の例として、ミョウバン、アルミン酸塩及びポリアルミニウム化合物、例えば、ポリ塩化アルミニウム及びポリ硫酸アルミニウムが挙げられる。歩留り助剤の例として、カチオン性ポリマー、有機ポリマーと組み合わせてのアニオン性無機材料、例えば、カチオン性ポリマーと組み合わせてのベントナイト又はカチオン性ポリマーもしくはカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーと組み合わせてのシリカをベースとするゾルが挙げられる。サイジング剤の例として、セルロース反応性サイズ、例えば、アルキルケテン二量体及びアルケニル無水コハク酸、並びにセルロース非反応性サイズ、例えば、ロジン、澱粉並びにスチレンとビニルモノマー、例えば、無水マレイン酸、アクリル酸及びそのアルキルエステル、アクリルアミド等のコポリマーのようなその他のポリマーサイズが挙げられる。
【0013】
乾燥時に、前記紙、ひいてはまた前記微小球が、好ましくは約50℃から約150℃まで、最も好ましくは約60℃から約110℃までの温度に加熱される。これは前記微小球の発泡ひいてはまた紙の嵩増大をもたらす。この嵩増大の大きさは種々の因子、例えば、紙料中のセルロース繊維及びその他の成分の出所に依存するが、殆どの場合には発泡性微小球又はあらゆるその他の発泡剤を添加しないで製造された同じ種類の紙と較べて、乾燥紙中に保持された微小球の重量%当り約5%から約50%までである。この紙に熱を伝えることを伴う乾燥のあらゆる通常の手段、例えば、接触乾燥(例えば、加熱されたシリンダーによる)、強制対流乾燥(例えば、熱空気による)、赤外技術、又はこれらの組み合わせが適用し得る。接触乾燥の場合、接触表面、例えば、シリンダーの温度は好ましくは約20℃から約150℃まで、最も好ましくは約30℃から約130℃までである。この紙は上昇する温度の一連の幾つか、例えば、20以上までのシリンダーを通過してもよい。
【0014】
前記紙料中のセルロース繊維は、例えば、あらゆる種類の植物、好ましくは木材、例えば、広葉樹及び針葉樹からつくられたパルプに由来してもよい。このセルロース繊維はまたリサイクル紙に一部又は全部由来してもよく、その場合に本発明は予期しない程、良好な結果を生じることがわかった。
【0015】
本発明の別の実施態様は繊維のウェブを形成する工程、前記ウェブにバインダー及び上記発泡性微小球を添加する工程、及び不織布を形成する工程並びに前記微小球が発泡し、それにより不織布の嵩を増大するのに充分に熱を適用して該微小球の温度を上昇する工程を含む不織布の製造方法に関する。この発泡性微小球及びバインダーは別々に、又は混合物として添加されてもよい。添加される発泡性微小球の量は好ましくは乾燥製品の約0.1重量%から約30重量%まで、最も好ましくは乾燥製品の約0.5重量%から約15重量%までである。添加されるバインダーの量は好ましくは乾燥製品の約10重量%から約90重量%まで、最も好ましくは乾燥製品の約20重量%から約80重量%までである。
【0016】
本明細書に使用される“不織布”という用語はバインダーにより一緒に結合された繊維からつくられた布を含むことが意味される。
【0017】
前記繊維のウェブはあらゆる通常の方法で、例えば、機械的もしくは空気力学的乾燥方法、水力学的(湿式)方法、又はスパンボンド方法により形成し得る。次いで、好ましくは発泡性微小球と予備混合された、バインダーがまたあらゆる通常の方法で、例えば、あらゆる種類の含浸方法、例えば、バインダーの浴中のウェブの浸漬又はキスロール適用によるウェブの被覆或いはドクターブレード又はフローティングナイフによるナイフコーティングによりウェブに添加し得る。
【0018】
次いでバインダー及び発泡性微小球を含むウェブは該微小球が発泡するのに充分な温度、好ましくは約70℃から約200℃まで、最も好ましくは約120℃から約160℃までに加熱し得る。このバインダーの硬化が同時に起こることが好ましい。前記加熱はあらゆる好適な手段、例えば、接触乾燥(例えば、加熱されたシリンダーによる)、強制対流乾燥(例えば、熱空気による)、赤外技術、又はこれらの組み合わせにより行ない得る。
【0019】
前記繊維はあらゆる種類の市販の繊維、天然繊維、鉱物繊維だけでなく、合成の無機繊維及び有機繊維であってもよい。有益な繊維の例として、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ビスコース繊維、及びポリアミド繊維だけでなく、2種以上の上記ポリマーからつくられた繊維が挙げられる。
【0020】
前記バインダーはあらゆる種類の天然又は合成の接着剤樹脂、例えば、ポリアクリレート及びそれらのコポリマー、ポリメタクリレート及びそれらのコポリマー、ゴムラテックス、例えば、スチレン/ブタジエンコポリマー、アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、ポリ(塩化ビニル)及びそのコポリマー、ポリ(ビニルエステル)、例えば、ポリ(酢酸ビニル)及びそのコポリマー、例えば、エチレンとのコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、ポリウレタン、並びにアミノプラスト及びフェノプラスト初期縮合物、例えば、尿素/ホルムアルデヒド、尿素/メラミン/ホルムアルデヒド又はフェノール/ホルムアルデヒドの樹脂であってもよい。
【0021】
本発明に従って使用されるのに好ましい発泡性微小球が以下に記載される。
【0022】
前記発泡性微小球の熱可塑性ポリマーシェルはエチレン性不飽和モノマーを重合することにより得られたホモポリマー又はコポリマーからつくられることが好適である。これらのモノマーは、例えば、ニトリル含有モノマー、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル又はクロトニトリル;アクリルエステル、例えば、メチルアクリレート又はエチルアクリレート;メタクリルエステル、例えば、メチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート又はエチルメタクリレート;ハロゲン化ビニル、例えば、塩化ビニル;ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、その他のビニルモノマー、例えば、ビニルピリジン;ハロゲン化ビニリデン、例えば、塩化ビニリデン;スチレン類、例えば、スチレン、ハロゲン化スチレン又はα-メチルスチレン;又はジエン、例えば、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンであってもよい。上記モノマーのあらゆる混合物がまた使用されてもよい。
【0023】
好ましくは、これらのモノマーは少なくとも一種のアクリルエステルモノマー又はメタクリルエステルモノマー、最も好ましくはメタクリルエステルモノマー、例えば、メチルメタクリレートを含む。前記ポリマーシェル中のその量はモノマーの合計量の好ましくは約0.1重量%から約80重量%まで、最も好ましくは約1重量%から約25重量%までである。
【0024】
好ましくは、前記モノマーは少なくとも一種のハロゲン化ビニリデンモノマー、最も好ましくは塩化ビニリデンを含む。前記ポリマーシェル中のその量はモノマーの合計量の好ましくは約1重量%から約90重量%まで、最も好ましくは約20重量%から約80重量%までである。
【0025】
前記モノマーは少なくとも一種のアクリルエステルモノマー又はメタクリルエステルモノマーと少なくとも一種のハロゲン化ビニリデンモノマーの両方を含むことが最も好ましい。
【0026】
好ましくは、モノマーは少なくとも一種のニトリル含有モノマー、最も好ましくはアクリロニトリル及びメタクリロニトリルの少なくとも一種、特に最も好ましくは少なくともアクリロニトリルを含む。前記ポリマーシェル中のその量はモノマーの合計量の好ましくは約1重量%から約80重量%まで、最も好ましくは約20重量%から約70重量%までである。
【0027】
有利な実施態様において、前記モノマーは少なくとも一種のアクリルエステルモノマー、少なくとも一種のハロゲン化ビニリデン及び少なくとも一種のニトリル含有モノマーを含む。次いで前記ポリマーシェルは、例えば、モノマーの合計量の約0.1重量%から約80重量%まで、最も好ましくは約1重量%から約25重量%までの好ましい量のメチルメタクリレート、モノマーの合計量の約1重量%から約90重量%まで、最も好ましくは約20重量%から約80重量%までの好ましい量の塩化ビニリデン、及びモノマーの合計量の約1重量%から約80重量%まで、最も好ましくは約20重量%から約70重量%までの好ましい量のアクリロニトリルを含むモノマーから得られたコポリマーであってもよい。
【0028】
前記ポリマーシェルのためのモノマーはまた架橋多官能性モノマー、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジ(エチレングリコール)ジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリアリルホルマールトリアクリレート、トリアリルホルマールトリメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリブタンジオールジアクリレート、トリブタンジオールジメタクリレート、PEG#200ジアクリレート、PEG#200ジメタクリレート、PEG#400ジアクリレート、PEG#400ジメタクリレート、PEG#600ジアクリレート、PEG#600ジメタクリレート、3-アクリロイルオキシグリコールモノアクリレート、トリアシルホルマール又はトリアリルイソシアネート、トリアリルイソシアヌレート等の少なくとも一種を含むことが時折望ましいかもしれない。前記ポリマーシェル中のその量はモノマーの合計量の好ましくは約0.1重量%から約10重量%まで、最も好ましくは約0.1重量%から約1重量%まで、特に最も好ましくは約0.2重量%から約0.5重量%までである。
【0029】
前記噴射剤は通常熱可塑性ポリマーシェルの軟化温度よりも高くない沸騰温度を有する液体であり、炭化水素、例えば、プロパン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ブタン、イソブタン、ヘキサン、イソヘキサン、ネオヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン又はイソオクタン、或いはこれらの混合物を含んでもよい。それらとは別に、その他の炭化水素型、例えば、石油エーテル、又は塩素化もしくはフッ素化炭化水素、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリクロロフルオロメタン、ペルフッ素化炭化水素等が使用し得る。好ましい噴射剤はイソブタンを単独で、又は一種以上のその他の炭化水素との混合物中に含む。大気圧における沸点は好ましくは約-50℃から約100℃まで、最も好ましくは約-20℃から約50℃まで、特に最も好ましくは約-20℃から約30℃までの範囲内である。
【0030】
前記ポリマーシェル及び噴射剤とは別に、前記微小球は、通常約1重量%から約20重量%まで、好ましくは約2重量%から約10重量%までの量の、その製造中に添加される更なる物質を含んでもよい。このような物質の例は固体懸濁剤、例えば、シリカ、チョーク、ベントナイト、澱粉、架橋ポリマー、メチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コロイドクレーの一種以上、及び/又はAl、Ca、Mg、Ba、Fe、Zn、Ni及びMnのような金属の一種以上の塩、酸化物又は水酸化物、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム並びにアルミニウム、鉄、亜鉛、ニッケル又はマンガンの水酸化物の一種以上である。存在する場合、これらの固体懸濁剤は通常、前記ポリマーシェルの外表面に主として配置される。しかしながら、たとえ懸濁剤が前記微小球の製造中に添加されたとしても、これはその後の段階で洗い去られていたかもしれず、こうして最終製品から実質的に不在であり得る。
【0031】
上記微小球の幾つかは新規である。こうして、本発明はまた少なくとも一種のアクリルエステルモノマー又はメタクリルエステルモノマーを含むエチレン性不飽和モノマー及び少なくとも一種のハロゲン化ビニリデンモノマーを重合することにより得られたコポリマーからつくられた熱可塑性ポリマーシェル、及び約17重量%から約40重量%まで、好ましくは約18重量%から約40重量%まで、最も好ましくは約19重量%から約40重量%まで、特に最も好ましくは約20重量%から約35重量%までの前記ポリマーシェルに閉じ込められた噴射剤を含み、前記発泡性微小球が約17μmから約35μmまで、好ましくは約18μmから約35μmまで、更に好ましくは約19μmから約35μmまで、最も好ましくは約20μmから約30μmまで、特に最も好ましくは約21μmから約30μmまでの体積平均直径を有することを特徴とする熱発泡性微小球に関する。この新規な微小球の更に可能かつ好ましい実施態様に関して、紙又は不織布の製造方法の先の記載の適用可能な部分が参考にされる。
【0032】
上記の新規な発泡性微小球は先に記載された米国特許第3615972号、同第3945956号、同第5536756号、同第6235800号、同第6235394号及び同第6509384号、並びにEP
486080に記載されたのと同じ方法で前記モノマーを前記噴射剤の存在下で重合することにより調製し得る。
【0033】
発泡性微小球を製造するのに好ましいバッチ式操作において、前記重合が反応器中で以下に記載されるように行なわれる。モノマー相(好適にはモノマー及び噴射剤を含み、これらの比が最終生成物中の噴射剤の量を決める)100部について、好ましくは約0.1部から約5部までの量の、一種以上の重合開始剤、好ましくは約100部から約800部までの量の、水相、及び好ましくは約1部から約20部までの量の、一種以上の好ましくは固体のコロイド懸濁剤が混合され、均一にされる。得られたモノマー相の液滴のサイズが、例えば、米国特許第3615972号に記載された原理に従って、最終の発泡性微小球のサイズを決め、種々の懸濁剤を用いる全ての同様の製造方法に適用し得る。温度は好適には約40℃から約90℃まで、好ましくは約50℃から約80℃までに維持され、一方、好適なpHは使用される懸濁剤に依存する。例えば、この懸濁剤がAl、Ca、Mg、Ba、Fe、Zn、Ni及びMnのような金属の塩、酸化物又は水酸化物、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、チョーク、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム、及びアルミニウム、鉄、亜鉛、ニッケル又はマンガンの水酸化物の一種以上から選ばれる場合、高いpH、好ましくは約6から約12まで、最も好ましくは約8から約10までが好適である。前記懸濁剤がシリカ、ベントナイト、澱粉、メチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コロイドクレーから選ばれる場合、低いpH、好ましくは約1から約6まで、最も好ましくは約3から約5までが好適である。上記薬剤の夫々一種が、例えば、溶解性データに応じて、異なる最適pHを有する。
【0034】
前記懸濁剤の効果を高めるために、少量、例えば、約0.001重量%から約1重量%までの一種以上の促進剤を添加することがまた可能である。通常、このような促進剤は有機物質であり、例えば、水溶性のスルホン化ポリスチレン、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、水酸化もしくは塩化テトラメチルアンモニウム又は水溶性の複雑な樹脂状アミン縮合生成物、例えば、ジエタノールアミンとアジピン酸の水溶性縮合生成物、エチレンオキサイド、尿素及びホルムアルデヒドの水溶性縮合生成物、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、両性物質、例えば、ゼラチン、グルー、カゼイン、アルブミン、グルチン等のようなタンパク質の物質、メトキシセルロースのようなノニオン性物質、通常乳化剤として分類されるイオン性物質、例えば、石鹸、アルキルスルフェート及びアルキルスルホネート並びに長鎖四級アンモニウム化合物の一種以上から選ばれてもよい。
【0035】
通常のラジカル重合が使用されてもよく、開始剤が有機過酸化物、例えば、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、又はアゾ化合物の一種以上から選ばれることが好適である。好適な開始剤として、ジセチルペルオキシジカーボネート、tert-ブチルシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジオクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、tert-ブチルペルラウレート、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、クメンエチルペルオキシド、ジイソプロピルヒドロキシジカルボキシレート、アゾ-ビスジメチルバレロニトリル、アゾ-ビスイソブチロニトリル、アゾ-ビス(シクロヘキシルカルボニトリル)等が挙げられる。また、この重合を放射線、例えば、高エネルギーイオン化放射線で開始することが可能である。
【0036】
前記重合が実質的に完結する時、微小球が通常水性スラリー又は分散液として得られ、これがあらゆる通常の手段、例えば、床濾過、フィルタープレシング、リーフ濾過、回転濾過、ベルト濾過又は遠心分離により脱水されてそのまま使用し得る所謂湿潤ケーキを得る。しかしながら、前記微小球をあらゆる通常の手段、例えば、噴霧乾燥、シェルフ乾燥、トンネル乾燥、回転乾燥、ドラム乾燥、空気乾燥、ターボシェルフ乾燥、ディスク乾燥又は流動床乾燥により乾燥させることがまた可能である。
【0037】
本発明が今下記の実施例に関して更に記載されるが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。特にことわらない限り、全ての部数及び%は重量部及び重量%を表す。
【実施例1】
【0038】
約180g/m2の基本重量を有する3層板紙を7m/分の機械速度を有し、かつ循環プロセス水を有するパイロット抄紙機中で製造した。このパルプは40重量%の広葉樹パルプ及び60重量%の針葉樹パルプを含み、これを25°SRのショッパー-リーグラー値にこう解し、次いで分散させてパルプスラリー/紙料を得た。発泡性微小球の水性スラリーを混合ポンプの前に紙料中の乾燥物質の約1重量%の乾燥微小球の量で中間層に使用される紙料に添加した。歩留り助剤として、0.1重量%のポリミンTMSKを使用した。乾燥部分中で、紙ウェブを30℃から130℃までの温度プロフィールを有するシリンダーにより加熱した。異なる種類の発泡性微小球を試験し、全てが噴射剤としてのイソブタン及び塩化ビニリデン(VDC)、アクリロニトリル(ACN)及びメチルメタクリレート(MMA)からのポリマーシェルを有していたが、種々の比であった。この微小球の歩留りを測定するために、紙サンプルを微小球の量の測定(GCを使用する)のためにプレス部分の前に採取した。この歩留りを前記微小球添加及び紙中の微小球の含量から計算した。更に、乾燥紙からのサンプルを嵩及び厚さの測定のために採取した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【実施例2】
【0040】
約200g/m2の基本重量を有する単層板紙を4m/分の機械速度を有し、かつ循環プロセス水を有しないパイロット抄紙機中で製造した。このパルプは50重量%の広葉樹パルプ及び50重量%の針葉樹パルプを含み、これを25°SRのショッパー-リーグラー値にこう解し、次いで分散させてパルプスラリー/紙料を得た。発泡性微小球の水性スラリーを混合ポンプの前に紙料中の乾燥物質の約1.75重量%の乾燥微小球の量で紙料に添加した。歩留り助剤として、コンポジル(登録商標)、0.1%のBMA-OTM及び0.75%のライサミルTM135を使用した。乾燥部分中で、紙ウェブを65℃から122℃までの温度プロフィールを有するシリンダーにより加熱した。実施例1と同じ噴射剤及びポリマーシェル中の同じモノマーを含む発泡性微小球を試験した。この微小球の歩留り及び紙の嵩/厚さを実施例1のように測定した。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
この総合の傾向は、多量の噴射剤と大きい粒子直径の組み合わせが紙の嵩の高い増大を与えることであることが明らかである。しかしながら、保持された微小球の量を正確に測定することの困難のために、幾つかの個々の結果が総合の傾向と不一致であるかもしれない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーシェル及びその中に閉じ込められた噴射剤を含む熱発泡性微小球を、繊維を含む紙料又は繊維のウェブに添加する工程、前記紙料又はウェブから紙又は不織布を形成する工程、及び熱を適用して前記微小球が発泡するのに充分に該微小球の温度を上昇させ、それにより前記紙又は不織布の嵩を増大する工程を含む繊維からの紙又は不織布の製造方法であって、前記発泡性微小球が約17重量%〜約40重量%の噴射剤を含み、かつISO13319:2000に従って約17μmから約35μmまでの体積平均直径を有することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記発泡性微小球がISO13319:2000に従って約19μmから約35μmまでの体積平均直径を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記発泡性微小球が約19重量%から約40重量%までの噴射剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーシェルが少なくとも一種のアクリルエステルモノマー又はメタクリルエステルモノマーを含むエチレン性不飽和モノマー及び少なくとも一種のハロゲン化ビニリデンモノマーからのコポリマーからつくられている、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリマーシェルがメチルメタクリレート、塩化ビニリデン及びアクリロニトリルを含むモノマーから得られたコポリマーである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記噴射剤がイソブタンを含む、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に特定された発泡性微小球をセルロース繊維を含む紙料に添加する工程、前記紙料をワイヤ上で脱水して紙を得る工程、及び熱を適用することにより前記紙を乾燥させ、それによりまた前記微小球が発泡し、前記紙の嵩を増大するのに充分に前記微小球の温度を上昇する工程を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の紙の製造方法。
【請求項8】
三つ以上の層を含む紙を製造し、前記発泡性微小球を二つの外層のいずれかを形成する紙料の部分に添加しない、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記セルロース繊維がリサイクル紙に部分的又は完全に由来する、請求項7から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
繊維のウェブを形成する工程、前記ウェブにバインダー及び請求項1から5のいずれか1項に特定された発泡性微小球を添加する工程、及び不織布を形成する工程並びに前記微小球が発泡し、それにより前記不織布の嵩を増大するのに充分に熱を適用して前記微小球の温度を上昇する工程を含む請求項1から6のいずれか1項記載の不織布の製造方法。
【請求項11】
紙又は不織布の嵩を増大するためのこれらの製造における、熱可塑性ポリマーシェル及び約17重量%から約40重量%までの前記ポリマーシェルに閉じ込められた噴射剤を含み、かつISO13319:2000に従って約17μmから約35μmまでの体積平均直径を有する熱発泡性微小球の使用。
【請求項12】
少なくとも一種のアクリルエステルモノマー又はメタクリルエステルモノマーを含むエチレン性不飽和モノマー及び少なくとも一種のハロゲン化ビニリデンモノマーを重合することにより得られたコポリマーからつくられた熱可塑性ポリマーシェル、及び約17重量%から約40重量%までの前記ポリマーシェルに閉じ込められた噴射剤を含む熱発泡性微小球であって、前記発泡性微小球がISO13319:2000に従って約17μmから約35μmまでの体積平均直径を有することを特徴とする熱発泡性微小球。
【請求項13】
前記エチレン性不飽和モノマーがアクリロニトリルを含む、請求項12記載の熱発泡性微小球。
【請求項14】
ISO13319:2000に従って約19μmから約35μmまでの体積平均直径を有する請求項12から13のいずれか1項記載の熱発泡性微小球。
【請求項15】
約19重量%から約40重量%までの噴射剤を含む請求項12から14のいずれか1項記載の熱発泡性微小球。
【請求項16】
前記発泡剤がイソブタンを含む、請求項12から15のいずれか1項記載の熱発泡性微小球。

【公表番号】特表2007−521410(P2007−521410A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517018(P2006−517018)
【出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000835
【国際公開番号】WO2004/113613
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(595024087)アクゾ ノーベル エヌ.ブイ. (38)
【Fターム(参考)】