微小管集合構造体及びその製造方法
【課題】多糖類と改質剤で形成された、多数の管状構造が集合してなる耐水性が付与された微小管集合構造体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤とで形成された微小管状体の集合体である微小管集合構造体、及び前記多糖類と改質剤とを含有する多糖類と改質剤との含有液を収容した容器を冷媒に挿入することにより、冷媒液面の鉛直上方向に前記多糖類と改質剤の含有液中の溶媒を凍結成長させ、その後に凍結した溶媒を除去することを特徴とする耐水性が付与された微小管集合構造体の製造方法。
【解決手段】主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤とで形成された微小管状体の集合体である微小管集合構造体、及び前記多糖類と改質剤とを含有する多糖類と改質剤との含有液を収容した容器を冷媒に挿入することにより、冷媒液面の鉛直上方向に前記多糖類と改質剤の含有液中の溶媒を凍結成長させ、その後に凍結した溶媒を除去することを特徴とする耐水性が付与された微小管集合構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は耐水性が付与された微小管集合構造体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、特定の物質で管構造が形成され、しかもその管構造が軸線方向に長い空孔を形成してなる構造である耐水性が付与された微小管集合構造体及びその簡易な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1では、トリアセチルセルロースのクロロホルム溶液と水とによるW/Oエマルションをガラス製基板の表面に薄膜状に展開し、ガラス製基板上に展開されたW/Oエマルションの薄膜を飽和水蒸気中に置くことにより、高揮発性のクロロホルムを蒸発させてエマルション内に鋳型としての水滴を形成し、この水滴の周囲にトリアセチルセルロースを沈澱させ、その後に溶媒(クロロホルム)及び水を蒸発させることで、トリアセチルセルロースのハニカムフィルムを作成でき、更に加水分解することでセルロースのハニカムフィルムが得られることが報告されている(非特許文献1の第18頁左欄の「Experimental Part」欄、第18頁右欄の「Result and Discussion」欄及び第20頁右欄の「Conclusion」欄を参照)。
【0003】
特許文献1には、「微生物セルロースからなるハニカム状多孔質体」及び「孔径が10nm〜1000μm、厚みが0.1〜10μmである、微生物セルロースからなるハニカム多孔質体」が記載されている(特許文献1の特許請求範囲における請求項1及び請求項3参照)。
【0004】
非特許文献1により得られたセルロースからなるフィルム状のハニカム構造体は、作成原理上、孔の軸線方向長さが数mm以上となるような長い空孔を作成することは困難である。
【0005】
また、特許文献1により得られるセルロースからなるハニカム状多孔質体も、特許文献1の発明の詳細な説明における発明を実施するための最良の形態に記載されている通り、多孔質体の高さもしくは厚み(ハニカム状多孔質体の貫通孔の長さ)は0.1〜10μmの範囲の値しかとれず、孔の軸線方向長さが数mm以上となるような長い空孔は作成できない。
【0006】
特許文献2には、「シリカゾルのpHの調整及び不純物の除去を行う前処理ステップと、前処理が終了してから所定時間経過後に、試料を一定方向で冷媒に挿入して凍結させることによってハニカム形状を形成する一方向凍結ステップとを有し、前記一方向凍結ステップで、試料を冷媒に挿入する挿入速度を制御することにより、凍結後に得られるハニカム開孔径を制御することを特徴とするシリカゲルの製造方法」及び「凍結ゲル化法によって一体成型されるシリカゲルであって、ハニカム形状を有し、壁面の比表面積が800〜900m2/gで、ハニカム開孔径が5〜50μmであることを特徴とするシリカゲル」が記載されている(特許文献2の特許請求の範囲における請求項1及び請求項5参照)。
【0007】
特許文献3には、「シリカ粒子を含むコロイダルシリカ水溶液が充填された容器を冷媒に挿入し、急冷させて上記コロイダルシリカ水溶液中の水分を一方向へ細く柱状に凍結成長させ、その後水分を乾燥除去して、シリカ成分から成りかつ互いに略平行に略貫通した細孔を有する略ハニカム構造のナノポーラスシリカを製造することを特徴とするナノポーラスシリカの製造方法。」及び「請求項1〜9のいずれかに記載のナノポーラスシリカの製造方法により得られたことを特徴とするナノポーラスシリカ。」が記載され、その「ナノポーラスの細孔長/細孔径が10000以上であること」も記載されている(特許文献3の特許請求の範囲における請求項1、請求項10及び請求項11参照)。
【0008】
特許文献2及び3によりシリカで形成されたハニカム構造体が知られており、これらの方法によれば原理上、長い空孔を有するハニカム構造体を作成できるが、多糖類例えばセルロースにより形成された長い空孔を持つハニカム構造体は未だ知られていない。更に、このようなシリカで形成されたハニカム構造体は脆いという問題点がある。
【0009】
また、多糖類により形成された長い空孔を持つハニカム構造体は、耐水性が弱いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−325534号
【特許文献2】特開2004−307294号
【特許文献3】特開2009−46341号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「Fabrication of Honeycomb-Patterned Cellulose Films」 W. Kasai, T. Kondo; Macromol. Biosci., 2004, 4, 17.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明の課題は、多糖類と改質剤との混合物から作成された、耐水性が付与された多数の管状構造が集合してなる微小管集合構造体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
(1) 主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との混合物から作成されることを特徴とする微小管状体の集合体である微小管集合構造体、
(2) 主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との混合物を収容した容器を冷媒に挿入することにより、冷媒液面の鉛直上方向に前記多糖類と改質剤との混合物含有液中の溶媒を凍結成長させ、その後に凍結した溶媒を除去することを特徴とする上記(1)に記載の微小管集合構造体、
(3) 改質剤が、カップリング剤及び/又は耐水化剤であること特徴とする上記(1)又は(2)に記載の微小管集合構造体、
(4) カップリング剤及び/又は耐水化剤が、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、置換無水コハク酸系化合物、2−オキセタノン系化合物、ロジン系化合物、ポリアミンエピハロヒドリン樹脂、及び脂肪酸ビスアミド系化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(3)に記載の微小管集合構造体、
(5) 前記シート状コンホメーションを取れる多糖類が、1位の水酸基がそのイス型構造のエカトリアルにあってグリコシド結合し、かつ、2,3,4位のいずれかの水酸基がそのイス型構造のエカトリアルにあってグリコシド結合してなる、上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の微小管集合構造体、
(6) 多糖類が、アニオン性セルロース、カチオン性セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、グルコマンナン、アガロース、キチン、アルギン酸、及びアラビアガムから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の微小管集合構造体、
(7) 主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との含有液を収容した容器を冷媒に挿入することにより、冷媒液面の鉛直上方向に前記多糖類と改質剤との含有液中の溶媒を凍結成長させ、その後に凍結した溶媒を除去することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の微小管集合構造体の製造方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明によると、耐水性が付与された微小な管が集合してなる微小管集合構造体を提供すること、及びこの耐水性が付与された微小管集合構造体を容易に製造する方法を提供するという技術的効果が奏される。ここで耐水性とは微小管集合構造体が水と接したときに容易にその構造が崩壊しない耐性を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施例1で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図2】図2は、実施例2で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図3】図3は、実施例3で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図4】図4は、実施例7で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図5】図5は、実施例12で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図6】図6は、実施例14で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図7】図7は、実施例15で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図8】図8は、実施例16で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図9】図9は、実施例17で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図10】図10は、実施例18で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図11】図11は、実施例19で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図12】図12は、実施例20で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図13】図13は、実施例21で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図14】図14は、実施例22で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図15】図15は、実施例23で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図16】図16は、実施例24で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図17】図17は、実施例25で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図18】図18は、実施例26で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図19】図19は、実施例27で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図20】図20は、実施例28で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図21】図21は、実施例29で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図22】図22は、実施例30で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図23】図23は、実施例31で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図24】図24は、実施例32で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図25】図25は、比較例1で製造された耐水性が付与されていない微小管集合構造体のSEM写真である。
【図26】図26は、比較例2で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図27】図27は、比較例3で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図28】図28は、比較例4で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図29】図29は、比較例5で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図30】図30は、比較例6で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図31】図31は、比較例7で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図32】図32は、比較例8で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図33】図33は、比較例9で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図34】図34は、比較例10で製造された耐水性が付与されていない微小管集合構造体のSEM写真である。
【図35】図35は、比較例11で製造された耐水性が付与されていない微小管集合構造体のSEM写真である。
【図36】図36は、比較例12で製造された耐水性が付与されていない微小管集合構造体のSEM写真である。
【図37】図37は、比較例13で製造された耐水性が付与されていない微小管集合構造体のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明に係る微小管集合構造体は、主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との混合物から形成させる。
【0017】
上記多糖類は、例えば、
(1) ピラノース構造を取り、1位の水酸基がそのイス型構造のエカトリアルにあってグリコシド結合し、かつ、
(2) ピラノース構造を取り、2,3,4位のいずれかの水酸基がそのイス型構造のエカトリアルにあってグリコシド結合する
コンホメーションをとることができる単糖が主鎖を構成するものが挙げられる。
【0018】
以下、上記単糖を具体的に説明するが、これに限定されない。
【0019】
前記単糖は、例えばグルコピラノース、ガラクトピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルロン酸、グルコサミン等が挙げられる。これら単糖は、架橋化合物となっていてもよい。
【0020】
グルコピラノースである式(1)に示されるβ−D−グルコピラノース及び式(2)に示されるβ−L−グルコピラノースが上記(1)の条件を満たすとき、2,3,4位のいずれの水酸基も上記(2)の条件を満たすことができる。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0021】
【化1】
【0022】
【化2】
【0023】
式(5)に示されるβ−D−ガラクトピラノース及び式(6)に示されるβ−L−ガラクトピラノースが上記(1)の条件を満たすとき、2,3位の水酸基が上記(2)の条件を満たすことができ、式(7)に示されるα−D−ガラクトピラノース及び式(8)に示されるα−L−ガラクトピラノースが上記(1)の条件を満たすとき、4位の水酸基のみが上記(2)の条件を満たすことができる。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0024】
【化3】
【0025】
【化4】
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
式(9)に示されるβ−D−マンノピラノース及び式(10)に示されるβ−L−マンノピラノースが上記(1)の条件を満たすとき、3,4位の水酸基が上記(2)の条件を満たすことができ、式(11)に示されるα−D−マンノピラノース及び式(12)に示されるα−L−マンノピラノースが上記(1)の条件を満たすとき、2位の水酸基のみが上記(2)の条件を満たすことができる。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
【化9】
【0032】
【化10】
【0033】
式(13)に示されるβ−D−グロピラノース及び式(14)に示されるβ−L−グロピラノースが上記(1)の条件を満たすとき、2位の水酸基のみが上記(2)の条件を満たすことができ、式(15)に示されるα−D−グロピラノース及び式(16)に示されるα−L−グロピラノースが上記(1)の条件を満たすとき、3,4位の水酸基が上記(2)の条件を満たすことができる。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0034】
【化11】
【0035】
【化12】
【0036】
【化13】
【0037】
【化14】
【0038】
グルクロン酸はグルコピラノースの6位がカルボン酸に酸化された構造であり、ピラノースの環の立体化学はグルコピラノースと同一である。これらの光学異性体及び1位の構造異性体を表す名称及び構造は、対応するそれと同一である。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0039】
マンヌロン酸はマンノピラノースの6位がカルボン酸に酸化された構造であり、ピラノースの環の立体化学はマンノピラノースと同一である。これらの光学異性体及び1位の構造異性体を表す名称及び構造は、対応するそれと同一である。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0040】
グルロン酸はグロピラノースの6位がカルボン酸に酸化された構造であり、ピラノースの環の立体化学はグロピラノースと同一である。これらの光学異性体及び1位の構造異性体を表す名称及び構造は、対応するそれと同一である。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0041】
アミノ糖であるN−アセチルグルコサミンはグルコピラノースの2位水酸基がアセトアミド基に置換された構造であり、ピラノースの環の立体化学はグルコピラノースと同一である。これらの光学異性体及び1位の構造異性体を表す名称及び構造は、対応するそれと同一である。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0042】
架橋化合物である3,6−アンヒドロ−α−L−ガラクトースは、α−L−ガラクトースの3位と6位の水酸基が縮合、環化したものであり、ピラノースの環の立体化学は、α−L−ガラクトースと同一である。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0043】
本発明における多糖類の主鎖を構成する単糖は、例示に限定されるものではなく、上記(1)及び(2)の条件を同時に満たすものであれば使用することができる。
【0044】
本発明における多糖類は、上記(1)及び(2)を同時に満たすコンホメーションをとることができる単糖から構成させる多糖、及びその誘導体である。
【0045】
上記多糖としては、
1位及び4位水酸基が主鎖を担う結合に使用されるβ−D−グルコピラノースから構成されるセルロース、キサンタンガム、
1位及び4位水酸基が主鎖を担う結合に使用されるβ−D−グルコピラノース及びβ−D−マンノピラノースから構成されるグルコマンナン、
1位及び4位水酸基が主鎖を担う結合に使用されるβ−D−マンノピラノースから構成されるグアーガム、
1位及び3位水酸基が主鎖を担う結合に使用されるβ−D−ガラクトピラノースから構成されるアラビアガム、
1位及び3位水酸基が主鎖を担う結合に使用されるβ−D−ガラクトース、及び1位及び4位水酸基が主鎖を担う結合に使用される3,6−アンヒドロ−α−L−ガラクトースから構成されるアガロース、
1位及び4位水酸基が主鎖を担う結合に使用されるβ−D−マンヌロン酸及びα−L−グルロン酸から構成されるアルギン酸
1位及び4位水酸基が主鎖を担う結合に使用されるβ−D−N−アセチルグルコサミンから構成されるキチン
等を挙げることができる。
【0046】
その他、多糖として、キシログルカン、ヒアルロン酸、キトサン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸B、コンドロイチン硫酸C、コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸E、ケラタン硫酸(ケラト硫酸)、カラギーナン、グルクロノキシラン、アラビノキシラン、ローカストビーンガム(イナゴマメガム、カロブガム)、フェヌグリークガム等を挙げることができる。
【0047】
多糖の誘導体としては、アニオン性セルロース、カチオン性セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、アセチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルグアーガム、酸化グアーガム、リン酸化グアーガム、カチオン変性グアーガム、両性グアーガム等を挙げることができる。前記アニオン性セルロースとしては、例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(以下、TEMPOと略することがある。)でセルロースを酸化してなるTEMPO酸化セルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。カチオン性セルロースは例えばヒドロキシエチルセルロースにアルカリ性条件下で、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド又は3−クロル−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを反応させて得ることができる。これらの内、アニオン性及び/又はカチオン性を有するものは、それらの塩類であってもよい。アニオン性を有するものの塩類としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩等が挙げられる。カチオン性を有するものの塩類としては、塩酸塩、硫酸塩等の無機塩類、蟻酸塩、酢酸塩等の有機酸塩類が挙げられる。
【0048】
上記改質剤としてはカップリング剤及び耐水化剤等が挙げられる。ここでカップリング剤としてはシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等が、耐水化剤としては、置換無水コハク酸系化合物、2−オキセタノン系化合物、ロジン系化合物、ポリアミンエピハロヒドリン樹脂、脂肪酸ビスアミド系化合物等が挙げられる。これらの改質剤は単独で用いることもできるが、必要に応じて複数の改質剤を用いることもできる。また必要に応じて上記改質剤以外の添加剤も併用することができる。また触媒担体として利用する場合は触媒を、吸着材として利用する場合は各種吸着剤といったように各種の機能性物質を併用することにより、微小管集合構造体にそれらの機能を付与することもできる。
【0049】
上記シラン系カップリング剤としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3―アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0050】
上記チタネート系カップリング剤として、化合物名としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、(テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジオクチルパイロホスフェートチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、イソプロピルトリス(ドデシルベンゼンスルフォニル)チタネート等が挙げられ、市販品としては、例えば、味の素ファインテクノ株式会社のプレンアクト(登録商標)シリーズ、例えば、プレンアクト−KR TTS、プレンアクト−KR 46B、プレンアクト−KR 55、プレンアクト−KR 41B、プレンアクト−KR 38S、プレンアクト−KR 138S、プレンアクト−KR 238S、プレンアクト−338X、プレンアクト−KR 44、プレンアクト−KR 9SA等が挙げられる。
【0051】
また、上記のシラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤以外のカップリング剤として、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤を挙げることができる。
上記の改質剤の中でもカップリング剤、特に、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤は耐水性に加え、微小管集合構造体の弾性も向上するために好ましい。
【0052】
尚、これらシラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤が水に溶けない、もしくは溶けにくい場合、酸やアルカリ、アミン系の物質等を併用して加水分解を行って水に対する溶解性を向上させることが好ましい。
【0053】
上記の置換無水コハク酸系化合物は、オレフィンやアルケニル基を有する脂肪酸誘導体に無水マレイン酸を熱付加させた物質である。例えば炭素数18のα−オレフィンの無水マレイン酸付加物、炭素数16のα−オレフィンの無水マレイン酸付加物、炭素数18の内部異性化されたオレフィンの無水マレイン酸付加物、炭素数16の内部異性化されたオレフィンの無水マレイン酸付加物、プロピレンテトラマーの無水マレイン酸付加物、ブチレントリマーの無水マレイン酸付加物、オレイン酸エチルの無水マレイン酸付加物などが挙げられる。
【0054】
上記の2−オキセタノン系化合物は、おもに脂肪酸ハロゲン化物から得られるケテンの2量体あるいは多量体である。例えば炭素数16の直鎖アルキルケテンダイマー、炭素数18の直鎖アルキルケテンダイマー、炭素数20の直鎖アルキルケテンダイマー、炭素数18の分岐アルキルケテンダイマー、オレイン酸由来のアルケニルケテンダイマー、アルカンモノカルボン酸ハロゲン化物とアルカンジカルボン酸ジハロゲン化物の混合物から得られるアルキルケテンオリゴマーなどが挙げられる。
【0055】
上記のロジン系化合物は、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン及びこれらロジンの変性物であり、これらは単独あるいは2種以上の混合物として用いられる。このロジンの変性物としては、一部あるいは実質的に完全に水素化されたもの、不均化されたもの、重合化されたものなどが挙げられる。また、これらロジン系物質に、α,β―不飽和カルボン酸を付加反応した強化ロジンもロジン系物質に含まれる。ここで用いられるα,β―不飽和カルボン酸の代表的なものは、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和二塩基酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和一塩基酸等が挙げられ、これらは1種又は2種以上併用して用いられる。さらにロジンとグリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステル、ロジンとエポキシ化合物との反応生成物も上記ロジン系物質に包含される。
【0056】
上記のポリアミンエピハロヒドリン樹脂としては、ポリアルキレンポリアミン類にエピクロロヒドリンやエピブロモヒドリン等のエピハロヒドリンを反応させて得られる樹脂、ポリアルキレンポリアミン類とジカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミドアミン樹脂にエピハロヒドリンを反応させて得られる樹脂、ポリアルキレンポリアミン類とジカルボン酸類と尿素化合物とを反応させて得られるポリアミドアミン尿素樹脂にエピハロヒドリンを反応させて得られる樹脂等が挙げられる。
【0057】
上記の脂肪酸ビスアミド系化合物は、例えば、炭素数6〜24のモノカルボン酸及び/又は炭素数6〜24のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物とエピハロヒドリンとの反応物が挙げられる。
【0058】
この発明に係る微小管集合構造体は、前記、主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との混合物により、微小な管が形成され、しかもその管が集合した構造となっている。
【0059】
微小管集合構造体における管の平均開口径は、通常0.1〜100μmである。なお、微小管集合構造体における管の開口径の測定はSEMにより行うことができる。
【0060】
この管の開口形状は、この微小管集合構造体を製造する条件によって、多角形、楕円形、円形等のように様々な形状を採りえる。典型的には、この管の開口形状は、四角形、五角形、六角形等の多角形状である。
【0061】
この管の軸線方向長さは、この発明の方法によると、理論的には、無制限である。この管の軸線方向長さが無制限であることは、理想的には、管の端部から軸線方向に沿って観察すると管の端部における開口から管の他端部における開口まで、開口が複数に分割されずにそのまま貫通していることを意味する。したがって、この発明に係る理想的な微小管集合構造体は、言わばストローを束ねた状態であると形容することができる。
【0062】
一方、いわゆる多孔体と称されるものは、その表面に開口する凹部があり、その凹部が多孔体の内部に存在する空孔と貫通孔をもって連絡し、前記空孔と他の空孔とが貫通孔をもって連絡し、空孔同士が孔でもって連絡し、その空孔が他の表面に開口する凹部と貫通孔をもって連絡するという形式で貫通孔が形成されることがある。従来から知られている多孔体に形成される貫通孔は、多孔体の表面に形成される貫通孔の開口部から他の表面に形成される開口部までの軸線が存在しない。したがって、この発明に係る微小管集合構造体は、軸線を有する管を有するという点において、従来の多孔体と区別される。
【0063】
このような特殊な管構造を有する微小管集合構造体は、この発明の方法によって製造することができる。
【0064】
この発明に係る微小管集合構造体の製造方法は、前記、主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との混合物を含有する多糖類と改質剤との混合物含有液を収容した容器を冷媒に挿入することにより、冷媒液面の鉛直上方向に前記多糖類含有液中の溶媒を凍結成長させ、その後に溶媒を除去することを特徴とする。
【0065】
ここで改質剤が多糖類や溶媒との反応性がある場合や、改質剤が溶媒によって加水分解等の反応をする場合、それらの反応は微小管集合構造体の製造中のいずれの工程で起きても良い。
このような反応が起きうる工程としては、改質剤が溶媒と接触する工程、改質剤が多糖類と接触する工程、多糖類と改質剤との混合物含有液を収容した容器を冷媒に挿入する工程、溶媒を除去する工程、溶媒を除去した後などが挙げられる。
【0066】
また、多糖類同士が反応し架橋体等になり得る場合、もしくは多糖類と改質剤の反応が起きうる場合や改質剤同士が反応して架橋体等になり得る場合は、例えば溶媒を除去した後の微小管集合構造体に加熱処理をすることで反応を促進することもできる。反応を促進する方法は加熱処理に限らず、例えば反応触媒などを利用することもできる。また、反応を促進する工程は溶媒を除去した後に限らず、反応促進操作を行える工程があれば、製造中のいずれの段階でも構わない。
【0067】
上記多糖類と改質剤との混合物含有液における多糖類の含有濃度は、多糖類の種類によって含有濃度上限値及び含有濃度下限値が相違するが、いずれの多糖類であっても共通して適正であるとされる含有濃度範囲は、通常、0.1質量%以上25質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上15質量%以下である。多糖類の含有濃度が前記上限値を超えると、多糖類の種類にもよるが、分散液の粘度が高くなるために均質な濃度の分散液が得られにくい、微小管の壁が厚くなり十分な開口が得られないといった不都合を生じることがある。前記下限値未満の含有濃度であると微小管の壁が薄くなり、微小管同士に貫通孔ができることがある。
【0068】
上記多糖類と改質剤との混合物含有液における多糖類と改質剤の適正な使用比率は、多糖類:改質剤=0.1〜25:0.001〜25であり、好ましくは、1〜10:0.01〜10である。多糖類の比率が前記上限値を超えると、耐水性が悪いといったような不都合を生じることがある。前記下限値未満の含有濃度であると微小管の壁が薄くなり、微小管同士に貫通孔ができることがある。
【0069】
また、上記多糖類と改質剤の混合物含有液における改質剤の濃度は、改質剤の種類によって含有濃度上限値及び含有濃度下限値が相違するが、いずれの改質剤であっても通常0.001〜25質量%以下であり、好ましくは0.001質量%以上15質量%以下である。改質剤の含有濃度が上記上限値を超えると、改質剤の種類にもよるが、分散液の粘度が高くなり均質な濃度の分散液が得られなかったり、微小管構造集合体が形成されなかったりする場合がある。改質剤前の含有濃度が上記下限値未満の含有濃度であると耐水性の向上効果が小さくなる。
【0070】
前記多糖類と改質剤との混合物含有液を収容する容器は、冷媒中に挿入され、しかも徐々に挿入されるのであるから、容器における冷媒中に浸漬している部分と容器における冷媒直上の部分とで生じる温度差によって破損を生じさせない程度の物理特性例えば膨張率を有し、また、軸線方向の長さのある微小管を形成することができるように所定長さの高さを有する有底の形状であればよい。また、この容器の形状は、微小管集合構造体の用途に応じて、決定されることもできる。
【0071】
この発明における多糖類と改質剤との混合物含有液の溶媒としては、多糖類と改質剤とを均質に分散あるいは溶解し、且つ凝固点を有するものであれば特に制限はなく、通常、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、t-ブタノール、酢酸、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル等の極性溶媒が挙げられる。この中でも、入手容易で安価であるという点で水が好適である。これら溶媒は一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0072】
この発明における冷媒としては、多糖類と改質剤との混合物含有液の溶媒を凍結できる温度においても凍らない液体(不凍液)であれば特に制限はなく、通常、水、食塩水、エチレングリコール、四塩化炭素、アセトニトリル、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル、液体窒素、液体水素、液体ヘリウム等が挙げられる。この中でも、入手容易で安価な上、比較的低温においても凍らないという点で液体窒素が好適である。また、冷媒としては液体のみならず、冷却装置等により冷却された空間(例えば多糖類と改質剤との混合物含有液を凍結できる温度にまで冷却された空気)も用いることができる。
【0073】
これら冷媒を冷却する手段として、寒剤及び/又は冷却装置を利用してもよい。寒剤としては、氷、食塩と氷の混合物、酢酸ナトリウムと氷との混合物、塩化カルシウムと氷との混合物、塩化アンモニウムと氷との混合物、硝酸アンモニウムと氷との混合物、塩化アンモニウムと硝酸カリウムと氷との混合物、臭化ナトリウムと氷との混合物、塩化ナトリウムと氷との混合物、塩化カリウムと氷との混合物、塩化マグネシウムと氷との混合物、塩化亜鉛と氷との混合物、ドライアイス等が挙げられる。これら寒剤の使用方法としては、冷媒とは接触せずに冷媒容器などを介して間接的に冷却する方法、冷媒に直接混合する方法を適宜選択する必要がある。冷却装置としては、投げ込み型冷却器等が挙げられる。冷却装置は、直接冷媒と接触してもよい。
【0074】
多糖類と改質剤との混合物含有液と冷媒の温度に特に制限はなく、多糖類と改質剤との混合物含有液の温度は多糖類と改質剤との混合物含有液の溶媒の凝固点よりも高く、多糖類と改質剤との混合物含有液の溶媒の沸点よりも低ければよい。また、冷媒の温度は多糖類と改質剤との混合物含有液の溶媒を凍結できる温度ならば特に制限はない。例えば水を溶媒として用いた場合、多糖類と改質剤との混合物含有液の温度は水の凝固点である0℃よりも高く、水の沸点である100℃よりも低ければよく、冷媒は水の凝固点である0℃よりも低ければよい。
【0075】
この発明の方法においては、多糖類と改質剤との混合物含有液を収容する容器を冷媒中に徐々に浸漬していくのであり、そのときの浸漬していく速度に特に制限はないが、通常、3〜300μm/秒が好適である。より好ましくは、10〜100μm/秒である。凍結速度が遅すぎる場合には生産性の面で不適当である。また、凍結速度が早過ぎる場合には貫通孔の直線性が損なわれるといった不都合を生じることがある。
【0076】
この発明の方法では、多糖類と改質剤との混合物含有液を収容する容器を冷媒に徐々に浸漬していくと、冷媒に浸漬した容器内において、冷媒に浸漬した部分より上部から冷媒に浸漬した底部にかけて、冷媒に浸漬する前の多糖類と改質剤との混合物含有液温度から冷媒温度の範囲の温度勾配が生じる。
【0077】
本発明の方法は、次のような原理により本発明の効果が得られるものと推測している。
始めに、多糖類と改質剤との混合物含有液を収容する容器底部が冷媒に接触すると、溶媒が凝固点以下に冷却されることにより、溶媒が凝固した多数の結晶核が生ずる。
【0078】
そして、多糖類と改質剤との混合物含有液を収容する容器を徐々に冷媒中に浸漬していくと、生成した結晶核から冷媒液面の鉛直上方向に柱状結晶が成長する。溶質である多糖類と改質剤は、柱状結晶の成長に伴いその外周部に押しやられ、壁状に集合していく。
【0079】
特に含有液の成分である多糖類の主鎖を構成する単糖が、ピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なる場合、シート状コンホメーションをとることができ、柱状結晶の周囲に押し集められた多糖類は膜状に積層する。
【0080】
例えばセルロースは、「セルロースの科学」朝倉書店 磯貝明 編において、D−グルコピラノースがβ−1,4結合で連なる構造をしており、一方の2位水酸基と他方の6位水酸基、及び/又は一方の3位水酸基と他方の5位の酸素原子が水素結合で結合することで、隣り合う単糖同士が強固に固定された直線かつ平面状のコンホメーションをとることが記されている。この構造が長く連なることから、一分子は一直線上に張られたリボン状になっていると形容することができる。また、このリボン状の一分子が、面を約45°傾けた状態で、横方向約0.5nm間隔、縦方向約0.6nm間隔で並行に束ねられ、セルロースミクロフィブリルとしての結晶構造が形作られており、この形状は、同一面に隣り合う分子間に存在する親水性の水素結合、及び面間に存在する疎水的なファンデルワールス力によるものであることが記されている。
【0081】
このように、セルロースは親水性及び疎水性の相互作用を有することから、このセルロースは緻密な膜状構造、積層構造、更には本発明に係る微小管の壁を形成することができると考えられる。
【0082】
セルロース以外でも本発明に係る多糖類のようにシート状コンホメーションをとり得る多糖類であれば、そのような多糖類は、本発明に係る工程に供されて処理されると、膜状構造、積層構造、更には本発明に係る微小管の壁を形成できると考えられる。
【0083】
一方、澱粉は、D−グルコピラノースがα−1,4結合で連なる構造をしているおり、隣り合う単糖同士が水素結合を形成することがなく、比較的フレキシブルに様々なコンホメーションを取り得る。常温では澱粉粒は6コの単糖で1つのピッチを形成する螺旋構造をとる分子が二分子で二重螺旋を作り、それらが更に集まって巨大な塊状態になっている。この澱粉粒は熱水中では溶解してしまうことから、その相互作用は弱いことが伺える。
【0084】
それゆえに澱粉は、本発明における工程に供されて処理されるとしても、平面的なコンホメーションをとり得ず、膜状構造、積層構造も形成できない。
【0085】
多糖類と改質剤との混合物含有液を収容する容器を冷媒中に完全に浸漬すると、多糖類と改質剤との混合物含有液中の溶媒が凝固し、凝固した縦長の柱状結晶の周囲に多糖類分子が壁体のように集約された状態になる。この時の改質剤の存在状態の詳細は不明であるが、大部分は多糖類分子と共に柱状結晶の周囲に集約された状態になっていると推測される。この状態を溶媒が水の場合で例えると、霜柱のような氷の柱一本一本の周囲に多糖類分子と改質剤により壁体が形成された有様であり、換言すると、多糖類分子と改質剤との集合によって多数の管状壁体が形成され、それら多数の管状壁体における縦長の孔中に氷が充填された有様である。このような状態になったものを、仮に管状壁体凝固体と称する。
【0086】
この発明の方法では、得られた管状壁体凝固体を冷媒から取り出し、凝固した溶媒を除去すると、この発明に係る微小管集合構造体が得られる。
【0087】
凝固した溶媒の除去方法としては、柱状結晶の周囲に集約された多糖類と改質剤との構造が損なわれなければ、どのような溶媒除去方法を採用してもよい。例えば凍結乾燥を用いれば溶媒が昇華するため、溶媒の融解、多糖類と改質剤との再分散を抑えられるため好適である。また、多糖類と改質剤とが分散しないような非親和性の溶媒に一旦凍結置換すれば、風乾又は熱乾してもよい。
【0088】
また、上記のように改質剤が、多糖類分子と共に柱状結晶の周囲に集約された状態にならず、凝固した溶媒中に分布している場合でも、凝固した溶媒を除去する工程において、改質剤よりも溶媒を優先的に除去する方法をとることによって、前記の微小管集合構造体を製造することができる。
溶媒を優先的に除去する方法としては、例えば、改質剤が溶媒よりも昇華しにくい場合は凍結乾燥などの方法が採用される。この際、一部の改質剤が溶媒と共に除去されたとしても、得られた微小管集合構造体の耐水性が実用的な範囲において付与されていれば良い。
かくしてこの発明の方法により、この発明に係る微小管集合構造体が製造される。
【0089】
この微小管集合構造体は、既に説明したように、軸線の長い微小な管が集合した構造を有する。
【0090】
この微小管集合構造体は、その特殊な構造の故に、例えば触媒や医薬品の担体、吸着剤、分離剤、フィルター、複合用材料、化粧品、医薬等の分野に使用されることができる。
【0091】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【実施例1】
【0092】
(製造例1:酸化パルプ(TEMPO酸化セルロース)の製造)
撹拌装置を備えた5L容ガラス製容器に、セルロースである針葉樹晒クラフトパルプをカナディアンスタンダードフリーネス400に調整した、濃度1.5質量%である水分散液4000gを投入し、5L容ガラス製容器の内容物を緩やかに撹拌し、N−オキシル化合物である2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシルの水溶液(濃度0.6質量%)125gと触媒であるハロゲン化アルカリ金属塩として臭化ナトリウムの水溶液(濃度6.0質量%)125gとを加えてセルローススラリーとした。
このセルローススラリーに次亜塩素酸ナトリウム水溶液(塩素濃度8質量%)320gを投入し、室温で5L容ガラス製容器の内容物を撹拌しつつ内容物のpHが10.5を保持するように30質量%水酸化ナトリウム水溶液を断続的に5L容ガラス製容器内に滴下した。次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入した後に約90分が経過した時点で5L容ガラス製容器の内容物のpHが殆ど変化しなくなったことを確認した上で内容物の撹拌を停止し、その停止時点をもってTEMPO酸化反応の終了時点とした。
それまでに滴下した30質量%水酸化ナトリウム水溶液の全量は24gであった。TEMPO酸化反応後時点におけるセルローススラリーを200メッシュのナイロン製濾布で濾過した後、残存する水溶性薬品を除去するために濾過物を5L容ガラス製容器に投入し、約3000gのイオン交換水を加えて5L容ガラス製容器の内容物を撹拌し、200メッシュのナイロン製濾布で前記内容物を濾過する操作を3回繰り返した。濾過残渣として、濃度が4.1質量%であるTEMPO酸化セルロースのスラリー1230gを得た。
なお、TEMPO酸化セルロースのスラリーの濃度は110℃で2時間加熱乾燥した後の残存物の重量から求めた。
TAPPI STANDARD METHOD T237 cm−98に準じた方法で測定したTEMPO酸化セルロースのスラリーのカルボン酸量は対パルプ乾燥重量1gあたり1.2meqだった。
【0093】
(実施例1)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.4gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤としてテトラエトキシシラン(和光純薬工業株式会社製)1.6gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がテトラエトキシシラン換算で1.0質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填した。この試験管を28μm/秒の速度で液体窒素の中に挿入し、氷晶柱を作成した。その試験管内に形成された氷晶柱を、凍結状態を維持したまま容器ごと切断して長さ10mmの円柱片を切り出した。円柱片を−10℃、1mmHg以下の条件下に72時間保持することにより、凍結状態を維持したまま水を除去(凍結乾燥)した。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。乾燥物の切断面のSEM観察結果を図1に示す。
図1によると、この乾燥物は、開口断面が明確な稜を有してはいないが多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0094】
(実施例2)
200ml容ビーカーにイオン交換水89.9gに氷酢酸0.1gを加え、マグネティックスターラーにより撹拌を行った。ここに撹拌下、改質剤としてテトラエトキシシラン(和光純薬工業株式会社製)10gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水104gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のテトラエトキシシランを溶解した水溶液16gを加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がテトラエトキシシラン換算で1.0質量%濃度、酢酸が0.01質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図2に示す。
図2によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0095】
(実施例3)
実施例1において、改質剤としてテトラエトキシシランの代わりに3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−403」)を用いた以外は実施例1と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図3に示す。
図3によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0096】
(実施例4)
200ml容ビーカーにイオン交換水99gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)1.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水119.8gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にビニルトリメトキシシランを添加した水溶液を0.16g加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.001質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0097】
(実施例5)
200ml容ビーカーにイオン交換水99gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)1.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.4gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にビニルトリメトキシシランを添加した水溶液を1.6g加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.01質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0098】
(実施例6)
200ml容ビーカーにイオン交換水99gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)1.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水116gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にビニルトリメトキシシランを添加した水溶液を4.0g加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.025質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0099】
(実施例7)
200ml容ビーカーにイオン交換水99gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)1.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水112gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にビニルトリメトキシシランを添加した水溶液を8.0g加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.05質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図4に示す。
図4によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0100】
(実施例8)
200ml容ビーカーにイオン交換水99gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)1.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水104gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にビニルトリメトキシシランを添加した水溶液を16.0g加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.1質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0101】
(実施例9)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水119.6gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)0.4gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.25質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0102】
(実施例10)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水119.2gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)0.8gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.5質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0103】
(実施例11)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.8gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)1.2gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.75質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0104】
(実施例12)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.4gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)1.6gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で1.0質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図5に示す。
図5によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0105】
(実施例13)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水116gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)4.0gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で2.5質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0106】
(実施例14)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水112gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)8.0gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で5.0質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図6に示す。
図6によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状や楕円状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0107】
尚、上記の実施例4〜6、8〜11、13については開口断面のSEM観察を行っていないが、これらはSEM観察において微小管集合構造体と確認できた実施例7、12、14の改質剤量を変えたものであり、SEM観察より簡易なCCDの観察により同様に微小管集合構造体となっていることが確認できたため、SEM観察は行わなかった。
【0108】
(実施例15)
実施例1において、改質剤としてテトラエトキシシランの代わりに3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製「Z−6044」)を用いた以外は実施例1と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図7に示す。
図7によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0109】
(実施例16)
実施例1において、改質剤としてテトラエトキシシランの代わりに3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製「Z−6030」)を用いた以外は実施例1と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図8に示す。
図8によると、この乾燥物は、開口断面が明確な稜を有してはいないが多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0110】
(実施例17)
実施例1において、改質剤としてテトラエトキシシランの代わりに3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製「Z−6062」)を用いた以外は実施例1と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図9に示す。
図9によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0111】
(実施例18)
実施例1において、改質剤としてテトラエトキシシランの代わりにメチルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製「Z−6366」)を用いた以外は実施例1と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図10に示す。
図10によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0112】
(実施例19)
実施例1において、改質剤としてテトラエトキシシランの代わりにフェニルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製「Z−6124」)を用いた以外は実施例1と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図11に示す。
図11によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0113】
(実施例20)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー25gとイオン交換水72.5gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤として置換無水コハク酸系化合物(星光PMC株式会社製「AS−1523」)の10質量%濃度水分散物2.5gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、耐水化剤が置換無水コハク酸系化合物換算で0.25質量%濃度となる乳白色でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図12に示す。
図12によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状や楕円形である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0114】
(実施例21)
実施例20において改質剤として無水コハク酸系化合物の10質量%濃度水分散物の代わりに、ロジン系化合物(星光PMC株式会社製「CC−1401」)の10質量%濃度水分散物を用いた以外は実施例20と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図13に示す。
図13によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状や楕円形である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0115】
(実施例22)
実施例20において改質剤として無水コハク酸系化合物の10質量%濃度水分散物の代わりに、2−オキセタノン系化合物(星光PMC株式会社製「AD−1645」)の10質量%濃度水分散物を用いた以外は実施例22と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図14に示す。
図14によると、この乾燥物は、開口断面が明確な稜を有してはいないが楕円形である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0116】
(実施例23)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー25gとイオン交換水72.5gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤として脂肪酸ビスアミド系化合物(星光PMC株式会社製「PT−8104」)の10質量%濃度水分散物2.5gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、耐水化剤が脂肪酸ビスアミド系化合物換算で0.25質量%濃度となる乳白色でゼリー状の水分散液を得た。この水分散物を更にホモジナイザーにて10,000rpmで10分間撹拌し、得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図15に示す。
図15によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0117】
(実施例24)
実施例23において改質剤として脂肪酸ビスアミド系系化合物の10質量%濃度水分散物の代わりに、ポリアミンエピハロヒドリン樹脂(星光PMC株式会社製「WS−4030」)の10質量%濃度水分散物を用いた以外は実施例16と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図16に示す。
図16によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状や楕円状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0118】
(実施例25)
50ml容ビーカーにイオン交換水45gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、改質剤としてチタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ株式会社製「プレンアクトKR−ET」)5.0gを加え、チタネート系カップリング剤が分散した乳白色の溶液を得た。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.4gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にチタネート系カップリング剤を添加した水溶液を1.6gを加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がプレンアクトKR−ET換算で0.1質量%濃度となる微乳白色でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図17に示す。
図17によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0119】
(実施例26)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.4gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、改質剤としてチタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ株式会社製「プレンアクトKR−ET」)1.6gを加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がプレンアクトKR−ET換算で1.0質量%濃度となる乳白色でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図18に示す。
図18によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0120】
(実施例27)
50ml容ビーカーにイオン交換水45gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、改質剤としてチタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ株式会社製「プレンアクトKR−44」)5.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.4gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にチタネート系カップリング剤を添加した水溶液を1.6gを加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がプレンアクトKR−44換算で0.1質量%濃度となるほぼ透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図19に示す。
図19によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0121】
(実施例28)
10ml溶ビーカーに改質剤としてチタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ株式会社製「プレンアクトKR−38S」)10.0gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、ジメチルエタノールアミン5.0gを加え、ビーカーの内容物を均一になるまで混合した。
別の50ml容ビーカーにイオン交換水42.5gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、上記のチタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ株式会社製「プレンアクトKR−44」)とジメチルエタノールアミンの混合物7.5gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.4gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にチタネート系カップリング剤とジメチルエタノールアミンを添加した水溶液を1.6gを加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がプレンアクトKR−38S換算で0.1質量%濃度となるほぼ透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図20に示す。
図20によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状や楕円形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0122】
(実施例29)
1L容ビーカーにイオン交換水999gを加え、マグネティックスターラーによる攪拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBMー1003」)1.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。グルコマンナン(清水化学(株)製「レオレックスRS」)1.0gを、上記ビニルトリメトキシシラン水溶液99gで希釈し、グルコマンナンが1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.1質量%濃度となる淡黄色で透明なゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図21に示す。
図21によると、この乾燥物は、開口断面が楕円形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0123】
(実施例30)
実施例29において、グルコマンナンの代わりにグアーガムを用いた以外は実施例29と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図22に示す。
図22によると、この乾燥物は、開口断面が楕円状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0124】
(実施例31)
実施例29において、グルコマンナンの代わりにキサンタンガム(三晶(株)製「KELZAN」)を用いた以外は実施例29と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図23に示す。
図23によると、この乾燥物は、開口断面が明確な稜を有してはいないが多角形状や菱形である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0125】
(実施例32)
100mL容ビーカーにイオン交換水89gを加え、マグネティックスターラーによる攪拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBMー1003」)1.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。アラビアガム(三栄薬品貿易(株)製「アラビアガム末」)10.0gを、上記ビニルトリメトキシシラン水溶液90gで希釈し、アラビアガムが10.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で1.0質量%濃度となる透明な水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図24に示す。
図24によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0126】
(比較例1)
製造例1で得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー61gとイオン交換水64gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更にイオン交換水125gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、1.0質量%濃度のほぼ無色透明でゼリー状のTEMPO酸化セルロースの微細化物の水分散液を得た。得られたTEMPO酸化セルロースの微細化物の水性分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填した。この試験管を28μm/秒の速度で液体窒素の中に挿入し、氷晶柱を作成した。
その試験管内に形成された氷晶柱を、凍結状態を維持したまま容器ごと切断して長さ10mmの円柱片を切り出した。円柱片を−10℃、1mmHg以下の条件下に72時間保持することにより、凍結状態を維持したまま水を除去(凍結乾燥)した。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図25に示す。
図25によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0127】
(比較例2)
1L容ビーカーにイオン交換水999gを加え、マグネティックスターラーによる攪拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBMー1003」)1gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。デキストリン1.0gを、上記ビニルトリメトキシラン水溶液99gに分散させた後に糊化させ、デキストリンが1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.1質量%濃度となる水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図26に示す。
図26によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、単に多孔質であることが認められる微小多孔質体であった。
【0128】
(比較例3)
比較例2において、デキストリンの代わりにヒドロキシエチルスターチを用いた以外は比較例2と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図27に示す。
図27によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、単に多孔質であることが認められる微小多孔質体であった。
【0129】
(比較例4)
比較例2において、デキストリンの代わりにリン酸エステル化澱粉を用いた以外は比較例2と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図28に示す。
図28によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、単に多孔質であることが認められる微小多孔質体であった。
【0130】
(比較例5)
比較例2において、デキストリンの代わりに酸化澱粉を用いた以外は比較例2と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図29に示す。
図29によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、層状構造を持つ微小多孔質体であった。
【0131】
(比較例6)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の水分散液の代わりに濃度を1.0質量%に希釈したデキストリンの水溶液を用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図30に示す。
図30によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、単に多孔質であることが認められる微小多孔質体であった。
【0132】
(比較例7)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の水分散液の代わりにヒドロキシエチルスターチの1.0質量%水分散液を糊化させたものを用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図31に示す。
図31によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、単に多孔質であることが認められる微小多孔質体であった。
【0133】
(比較例8)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の代わりにリン酸エステル化澱粉の1.0質量%水分散液を糊化させたものを用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図32に示す。
図32によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、単に多孔質であることが認められる微小多孔質体であった。
【0134】
(比較例9)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の代わりに酸化澱粉の1.0質量%水分散液を糊化させたものを用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図33に示す。
図33によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、単に多孔質であることが認められる微小多孔質体であった。
【0135】
(比較例10)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の水分散液の代わりに濃度を1.0質量%に希釈したグルコマンナン(清水化学(株)製 商品名「レオレックスRS」)の水溶液(この水溶液は、この発明における多糖類含有液に相当する。)を用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図34に示す。
図34によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状や楕円形である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0136】
(比較例11)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の水分散液の代わりに濃度を1.0質量%に希釈したグアーガムの水溶液(このグアーガムの水溶液は、この発明における多糖類含有液に相当する。)を用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図35に示す。
図35によると、この乾燥物は、開口断面が楕円状である管状体が多数集合してなる微小管集合構造体であった。
【0137】
(比較例12)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の水分散液の代わりに濃度を1.0質量%に希釈したキサンタンガム(三晶(株)製 商品名「KELZAN」)の水溶液(この発明における多糖類含有液に相当する。)を用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図36に示す。
図36によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0138】
(比較例13)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の水分散液の代わりに濃度を10.0質量%に希釈したアラビアガム(三栄薬品貿易(株)製 商品名「アラビアガム末」)の水溶液を用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図37に示す。
図37によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0139】
上記、実施例および比較例で得られた構造体について以下の方法にて耐水性及び弾性についても評価を行った。
【0140】
(耐水性評価)
13.5ml容ガラス製容器に実施例および比較例で得られた長さ1cmの円柱片の乾燥物およびイオン交換水8mlを入れ、蓋をして5分間静置した。静置後、ガラス製容器を30回振り、円柱片の状態を目視観察し、以下のように評価を行った。結果を表1〜3に示す。
円柱片が完全に崩壊しているものを「×」、円柱片が僅かに崩壊しているものを「△」、円柱片が殆ど崩壊していないものを「○」、円柱片が全く崩壊していないものを「◎」とした。「◎」、「○」、「△」、「×」の順に耐水性が優れることを示す。
【0141】
(弾性評価)
下記の方法により微小管集合構造体の弾性を評価した。尚、弾性は微小管集合構造体が外部からの力により変形しても、塑性変形せずに、元の形に戻ることを意味する。
直径約1cmの円柱片を軸線方向が水平になるように置き、上部からの圧縮により、その高さが0.4cmになるまで変形させ、その後、圧縮から解放した。解放後に円柱片の高さがほぼ元の高さに戻っている場合(高さが約1cmまで戻っている場合)を「○」、変形した量の半分程度戻っている場合(高さが約0.7cmまで戻っている場合)を「△」、変形したまま高さが回復しないもの(高さがほぼ圧縮した状態の0.4cmとなる場合)を「×」として評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0142】
(構造体の形状)
それぞれの円柱片の断面をSEMにより形状観察し、以下のように評価を行った。結果を表1〜3に示す。
微小管集合構造体になっているものを「○」、微小管集合構造体ではなく、多孔質体等になっているものを「×」とした。SEM観察を行わなかったものを「−」とした。
【0143】
実施例1〜19のTEMPO酸化セルロースと改質剤であるシラン系カップリング剤の混合物から作成された構造体は、いずれも微小管集合構造体となった。
また、これら実施例1〜19の微小管集合構造体は、比較例1の酸化セルロース単独からなる微小管構造集合体に比べて耐水性、弾性が優れていた。
【0144】
実施例20〜22のTEMPO酸化セルロースと改質剤である置換無水コハク酸系化合物、2−オキセタノン系化合物、ロジン系化合物からなる耐水化剤の混合物から作成された構造体は、いずれも微小管集合構造体となった。
また、これら実施例20〜22の微小管集合構造体は、比較例1の酸化セルロース単独からなる微小管構造集合体に比べて耐水性が優れていた。
【0145】
実施例23〜24のTEMPO酸化セルロースと改質剤であるポリアミンエピハロヒドリン樹脂、脂肪酸ビスアミド系化合物からなる耐水化剤の混合物から作成された構造体は、いずれも微小管集合構造体となった。
また、これら実施例23〜24の微小管集合構造体は、比較例1の酸化セルロース単独からなる微小管集合構造体にくらべて耐水性、弾性が優れていた。
【0146】
実施例25〜28のTEMPO酸化セルロースと改質剤であるチタネート系カップリング剤の混合物から作成された構造体は、いずれも微小管集合構造体となった。
また、これら実施例25〜28の微小管集合構造体は、比較例1の酸化セルロース単独からなる微小管集合構造体に比べて耐水性、弾性が優れていた。
【0147】
実施例29〜31のグルコマンナン、グアーガム、キサンタンガムと改質剤であるシラン系カップリング剤の混合物から作成された構造体は、いずれも微小管集合構造体となった。また、これら実施例29〜31の微小管集合構造体は、それぞれの対応する多糖類単独からなる比較例10〜12の微小管構造集合体に比べて耐水性、弾性が優れていた。
【0148】
実施例32のアラビアガムと改質剤であるシラン系カップリング剤の混合物から作成されれた構造体は、微小管集合構造体となった。また、アラビアガム単独からなる比較例13の微小管集合構造体に比べて耐水性が優れていた。
【0149】
また、比較例2〜9に示すように多糖類が本発明の要件を満たさない場合、いずれも構造体は微小管集合構造体とはならなかった。
【0150】
【表1】
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0153】
主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤とで形成された耐水性が付与された微小管状体の集合体であるから、(1)ピラノース骨格における水酸基をさらに別の基に誘導することにより、或いは(2)微小な管を多数備えていることを利用することにより、触媒担体、吸着剤、分離剤、フィルター、複合化材、医薬品の担体、音を吸収する吸音材、衝撃を緩和する衝撃緩衝材、油を吸収する吸油材等に利用することができる。
【技術分野】
【0001】
この発明は耐水性が付与された微小管集合構造体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、特定の物質で管構造が形成され、しかもその管構造が軸線方向に長い空孔を形成してなる構造である耐水性が付与された微小管集合構造体及びその簡易な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1では、トリアセチルセルロースのクロロホルム溶液と水とによるW/Oエマルションをガラス製基板の表面に薄膜状に展開し、ガラス製基板上に展開されたW/Oエマルションの薄膜を飽和水蒸気中に置くことにより、高揮発性のクロロホルムを蒸発させてエマルション内に鋳型としての水滴を形成し、この水滴の周囲にトリアセチルセルロースを沈澱させ、その後に溶媒(クロロホルム)及び水を蒸発させることで、トリアセチルセルロースのハニカムフィルムを作成でき、更に加水分解することでセルロースのハニカムフィルムが得られることが報告されている(非特許文献1の第18頁左欄の「Experimental Part」欄、第18頁右欄の「Result and Discussion」欄及び第20頁右欄の「Conclusion」欄を参照)。
【0003】
特許文献1には、「微生物セルロースからなるハニカム状多孔質体」及び「孔径が10nm〜1000μm、厚みが0.1〜10μmである、微生物セルロースからなるハニカム多孔質体」が記載されている(特許文献1の特許請求範囲における請求項1及び請求項3参照)。
【0004】
非特許文献1により得られたセルロースからなるフィルム状のハニカム構造体は、作成原理上、孔の軸線方向長さが数mm以上となるような長い空孔を作成することは困難である。
【0005】
また、特許文献1により得られるセルロースからなるハニカム状多孔質体も、特許文献1の発明の詳細な説明における発明を実施するための最良の形態に記載されている通り、多孔質体の高さもしくは厚み(ハニカム状多孔質体の貫通孔の長さ)は0.1〜10μmの範囲の値しかとれず、孔の軸線方向長さが数mm以上となるような長い空孔は作成できない。
【0006】
特許文献2には、「シリカゾルのpHの調整及び不純物の除去を行う前処理ステップと、前処理が終了してから所定時間経過後に、試料を一定方向で冷媒に挿入して凍結させることによってハニカム形状を形成する一方向凍結ステップとを有し、前記一方向凍結ステップで、試料を冷媒に挿入する挿入速度を制御することにより、凍結後に得られるハニカム開孔径を制御することを特徴とするシリカゲルの製造方法」及び「凍結ゲル化法によって一体成型されるシリカゲルであって、ハニカム形状を有し、壁面の比表面積が800〜900m2/gで、ハニカム開孔径が5〜50μmであることを特徴とするシリカゲル」が記載されている(特許文献2の特許請求の範囲における請求項1及び請求項5参照)。
【0007】
特許文献3には、「シリカ粒子を含むコロイダルシリカ水溶液が充填された容器を冷媒に挿入し、急冷させて上記コロイダルシリカ水溶液中の水分を一方向へ細く柱状に凍結成長させ、その後水分を乾燥除去して、シリカ成分から成りかつ互いに略平行に略貫通した細孔を有する略ハニカム構造のナノポーラスシリカを製造することを特徴とするナノポーラスシリカの製造方法。」及び「請求項1〜9のいずれかに記載のナノポーラスシリカの製造方法により得られたことを特徴とするナノポーラスシリカ。」が記載され、その「ナノポーラスの細孔長/細孔径が10000以上であること」も記載されている(特許文献3の特許請求の範囲における請求項1、請求項10及び請求項11参照)。
【0008】
特許文献2及び3によりシリカで形成されたハニカム構造体が知られており、これらの方法によれば原理上、長い空孔を有するハニカム構造体を作成できるが、多糖類例えばセルロースにより形成された長い空孔を持つハニカム構造体は未だ知られていない。更に、このようなシリカで形成されたハニカム構造体は脆いという問題点がある。
【0009】
また、多糖類により形成された長い空孔を持つハニカム構造体は、耐水性が弱いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−325534号
【特許文献2】特開2004−307294号
【特許文献3】特開2009−46341号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「Fabrication of Honeycomb-Patterned Cellulose Films」 W. Kasai, T. Kondo; Macromol. Biosci., 2004, 4, 17.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明の課題は、多糖類と改質剤との混合物から作成された、耐水性が付与された多数の管状構造が集合してなる微小管集合構造体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
(1) 主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との混合物から作成されることを特徴とする微小管状体の集合体である微小管集合構造体、
(2) 主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との混合物を収容した容器を冷媒に挿入することにより、冷媒液面の鉛直上方向に前記多糖類と改質剤との混合物含有液中の溶媒を凍結成長させ、その後に凍結した溶媒を除去することを特徴とする上記(1)に記載の微小管集合構造体、
(3) 改質剤が、カップリング剤及び/又は耐水化剤であること特徴とする上記(1)又は(2)に記載の微小管集合構造体、
(4) カップリング剤及び/又は耐水化剤が、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、置換無水コハク酸系化合物、2−オキセタノン系化合物、ロジン系化合物、ポリアミンエピハロヒドリン樹脂、及び脂肪酸ビスアミド系化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(3)に記載の微小管集合構造体、
(5) 前記シート状コンホメーションを取れる多糖類が、1位の水酸基がそのイス型構造のエカトリアルにあってグリコシド結合し、かつ、2,3,4位のいずれかの水酸基がそのイス型構造のエカトリアルにあってグリコシド結合してなる、上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の微小管集合構造体、
(6) 多糖類が、アニオン性セルロース、カチオン性セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、グルコマンナン、アガロース、キチン、アルギン酸、及びアラビアガムから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の微小管集合構造体、
(7) 主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との含有液を収容した容器を冷媒に挿入することにより、冷媒液面の鉛直上方向に前記多糖類と改質剤との含有液中の溶媒を凍結成長させ、その後に凍結した溶媒を除去することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の微小管集合構造体の製造方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明によると、耐水性が付与された微小な管が集合してなる微小管集合構造体を提供すること、及びこの耐水性が付与された微小管集合構造体を容易に製造する方法を提供するという技術的効果が奏される。ここで耐水性とは微小管集合構造体が水と接したときに容易にその構造が崩壊しない耐性を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施例1で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図2】図2は、実施例2で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図3】図3は、実施例3で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図4】図4は、実施例7で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図5】図5は、実施例12で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図6】図6は、実施例14で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図7】図7は、実施例15で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図8】図8は、実施例16で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図9】図9は、実施例17で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図10】図10は、実施例18で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図11】図11は、実施例19で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図12】図12は、実施例20で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図13】図13は、実施例21で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図14】図14は、実施例22で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図15】図15は、実施例23で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図16】図16は、実施例24で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図17】図17は、実施例25で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図18】図18は、実施例26で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図19】図19は、実施例27で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図20】図20は、実施例28で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図21】図21は、実施例29で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図22】図22は、実施例30で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図23】図23は、実施例31で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図24】図24は、実施例32で製造された微小管集合構造体のSEM写真である。
【図25】図25は、比較例1で製造された耐水性が付与されていない微小管集合構造体のSEM写真である。
【図26】図26は、比較例2で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図27】図27は、比較例3で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図28】図28は、比較例4で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図29】図29は、比較例5で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図30】図30は、比較例6で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図31】図31は、比較例7で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図32】図32は、比較例8で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図33】図33は、比較例9で製造された微小多孔質体のSEM写真である。
【図34】図34は、比較例10で製造された耐水性が付与されていない微小管集合構造体のSEM写真である。
【図35】図35は、比較例11で製造された耐水性が付与されていない微小管集合構造体のSEM写真である。
【図36】図36は、比較例12で製造された耐水性が付与されていない微小管集合構造体のSEM写真である。
【図37】図37は、比較例13で製造された耐水性が付与されていない微小管集合構造体のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明に係る微小管集合構造体は、主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との混合物から形成させる。
【0017】
上記多糖類は、例えば、
(1) ピラノース構造を取り、1位の水酸基がそのイス型構造のエカトリアルにあってグリコシド結合し、かつ、
(2) ピラノース構造を取り、2,3,4位のいずれかの水酸基がそのイス型構造のエカトリアルにあってグリコシド結合する
コンホメーションをとることができる単糖が主鎖を構成するものが挙げられる。
【0018】
以下、上記単糖を具体的に説明するが、これに限定されない。
【0019】
前記単糖は、例えばグルコピラノース、ガラクトピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルロン酸、グルコサミン等が挙げられる。これら単糖は、架橋化合物となっていてもよい。
【0020】
グルコピラノースである式(1)に示されるβ−D−グルコピラノース及び式(2)に示されるβ−L−グルコピラノースが上記(1)の条件を満たすとき、2,3,4位のいずれの水酸基も上記(2)の条件を満たすことができる。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0021】
【化1】
【0022】
【化2】
【0023】
式(5)に示されるβ−D−ガラクトピラノース及び式(6)に示されるβ−L−ガラクトピラノースが上記(1)の条件を満たすとき、2,3位の水酸基が上記(2)の条件を満たすことができ、式(7)に示されるα−D−ガラクトピラノース及び式(8)に示されるα−L−ガラクトピラノースが上記(1)の条件を満たすとき、4位の水酸基のみが上記(2)の条件を満たすことができる。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0024】
【化3】
【0025】
【化4】
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
式(9)に示されるβ−D−マンノピラノース及び式(10)に示されるβ−L−マンノピラノースが上記(1)の条件を満たすとき、3,4位の水酸基が上記(2)の条件を満たすことができ、式(11)に示されるα−D−マンノピラノース及び式(12)に示されるα−L−マンノピラノースが上記(1)の条件を満たすとき、2位の水酸基のみが上記(2)の条件を満たすことができる。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
【化9】
【0032】
【化10】
【0033】
式(13)に示されるβ−D−グロピラノース及び式(14)に示されるβ−L−グロピラノースが上記(1)の条件を満たすとき、2位の水酸基のみが上記(2)の条件を満たすことができ、式(15)に示されるα−D−グロピラノース及び式(16)に示されるα−L−グロピラノースが上記(1)の条件を満たすとき、3,4位の水酸基が上記(2)の条件を満たすことができる。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0034】
【化11】
【0035】
【化12】
【0036】
【化13】
【0037】
【化14】
【0038】
グルクロン酸はグルコピラノースの6位がカルボン酸に酸化された構造であり、ピラノースの環の立体化学はグルコピラノースと同一である。これらの光学異性体及び1位の構造異性体を表す名称及び構造は、対応するそれと同一である。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0039】
マンヌロン酸はマンノピラノースの6位がカルボン酸に酸化された構造であり、ピラノースの環の立体化学はマンノピラノースと同一である。これらの光学異性体及び1位の構造異性体を表す名称及び構造は、対応するそれと同一である。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0040】
グルロン酸はグロピラノースの6位がカルボン酸に酸化された構造であり、ピラノースの環の立体化学はグロピラノースと同一である。これらの光学異性体及び1位の構造異性体を表す名称及び構造は、対応するそれと同一である。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0041】
アミノ糖であるN−アセチルグルコサミンはグルコピラノースの2位水酸基がアセトアミド基に置換された構造であり、ピラノースの環の立体化学はグルコピラノースと同一である。これらの光学異性体及び1位の構造異性体を表す名称及び構造は、対応するそれと同一である。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0042】
架橋化合物である3,6−アンヒドロ−α−L−ガラクトースは、α−L−ガラクトースの3位と6位の水酸基が縮合、環化したものであり、ピラノースの環の立体化学は、α−L−ガラクトースと同一である。それゆえに、これらは上記単糖に該当する。
【0043】
本発明における多糖類の主鎖を構成する単糖は、例示に限定されるものではなく、上記(1)及び(2)の条件を同時に満たすものであれば使用することができる。
【0044】
本発明における多糖類は、上記(1)及び(2)を同時に満たすコンホメーションをとることができる単糖から構成させる多糖、及びその誘導体である。
【0045】
上記多糖としては、
1位及び4位水酸基が主鎖を担う結合に使用されるβ−D−グルコピラノースから構成されるセルロース、キサンタンガム、
1位及び4位水酸基が主鎖を担う結合に使用されるβ−D−グルコピラノース及びβ−D−マンノピラノースから構成されるグルコマンナン、
1位及び4位水酸基が主鎖を担う結合に使用されるβ−D−マンノピラノースから構成されるグアーガム、
1位及び3位水酸基が主鎖を担う結合に使用されるβ−D−ガラクトピラノースから構成されるアラビアガム、
1位及び3位水酸基が主鎖を担う結合に使用されるβ−D−ガラクトース、及び1位及び4位水酸基が主鎖を担う結合に使用される3,6−アンヒドロ−α−L−ガラクトースから構成されるアガロース、
1位及び4位水酸基が主鎖を担う結合に使用されるβ−D−マンヌロン酸及びα−L−グルロン酸から構成されるアルギン酸
1位及び4位水酸基が主鎖を担う結合に使用されるβ−D−N−アセチルグルコサミンから構成されるキチン
等を挙げることができる。
【0046】
その他、多糖として、キシログルカン、ヒアルロン酸、キトサン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸B、コンドロイチン硫酸C、コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸E、ケラタン硫酸(ケラト硫酸)、カラギーナン、グルクロノキシラン、アラビノキシラン、ローカストビーンガム(イナゴマメガム、カロブガム)、フェヌグリークガム等を挙げることができる。
【0047】
多糖の誘導体としては、アニオン性セルロース、カチオン性セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、アセチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルグアーガム、酸化グアーガム、リン酸化グアーガム、カチオン変性グアーガム、両性グアーガム等を挙げることができる。前記アニオン性セルロースとしては、例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(以下、TEMPOと略することがある。)でセルロースを酸化してなるTEMPO酸化セルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。カチオン性セルロースは例えばヒドロキシエチルセルロースにアルカリ性条件下で、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド又は3−クロル−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを反応させて得ることができる。これらの内、アニオン性及び/又はカチオン性を有するものは、それらの塩類であってもよい。アニオン性を有するものの塩類としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩等が挙げられる。カチオン性を有するものの塩類としては、塩酸塩、硫酸塩等の無機塩類、蟻酸塩、酢酸塩等の有機酸塩類が挙げられる。
【0048】
上記改質剤としてはカップリング剤及び耐水化剤等が挙げられる。ここでカップリング剤としてはシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等が、耐水化剤としては、置換無水コハク酸系化合物、2−オキセタノン系化合物、ロジン系化合物、ポリアミンエピハロヒドリン樹脂、脂肪酸ビスアミド系化合物等が挙げられる。これらの改質剤は単独で用いることもできるが、必要に応じて複数の改質剤を用いることもできる。また必要に応じて上記改質剤以外の添加剤も併用することができる。また触媒担体として利用する場合は触媒を、吸着材として利用する場合は各種吸着剤といったように各種の機能性物質を併用することにより、微小管集合構造体にそれらの機能を付与することもできる。
【0049】
上記シラン系カップリング剤としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3―アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0050】
上記チタネート系カップリング剤として、化合物名としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、(テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジオクチルパイロホスフェートチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、イソプロピルトリス(ドデシルベンゼンスルフォニル)チタネート等が挙げられ、市販品としては、例えば、味の素ファインテクノ株式会社のプレンアクト(登録商標)シリーズ、例えば、プレンアクト−KR TTS、プレンアクト−KR 46B、プレンアクト−KR 55、プレンアクト−KR 41B、プレンアクト−KR 38S、プレンアクト−KR 138S、プレンアクト−KR 238S、プレンアクト−338X、プレンアクト−KR 44、プレンアクト−KR 9SA等が挙げられる。
【0051】
また、上記のシラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤以外のカップリング剤として、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤を挙げることができる。
上記の改質剤の中でもカップリング剤、特に、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤は耐水性に加え、微小管集合構造体の弾性も向上するために好ましい。
【0052】
尚、これらシラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤が水に溶けない、もしくは溶けにくい場合、酸やアルカリ、アミン系の物質等を併用して加水分解を行って水に対する溶解性を向上させることが好ましい。
【0053】
上記の置換無水コハク酸系化合物は、オレフィンやアルケニル基を有する脂肪酸誘導体に無水マレイン酸を熱付加させた物質である。例えば炭素数18のα−オレフィンの無水マレイン酸付加物、炭素数16のα−オレフィンの無水マレイン酸付加物、炭素数18の内部異性化されたオレフィンの無水マレイン酸付加物、炭素数16の内部異性化されたオレフィンの無水マレイン酸付加物、プロピレンテトラマーの無水マレイン酸付加物、ブチレントリマーの無水マレイン酸付加物、オレイン酸エチルの無水マレイン酸付加物などが挙げられる。
【0054】
上記の2−オキセタノン系化合物は、おもに脂肪酸ハロゲン化物から得られるケテンの2量体あるいは多量体である。例えば炭素数16の直鎖アルキルケテンダイマー、炭素数18の直鎖アルキルケテンダイマー、炭素数20の直鎖アルキルケテンダイマー、炭素数18の分岐アルキルケテンダイマー、オレイン酸由来のアルケニルケテンダイマー、アルカンモノカルボン酸ハロゲン化物とアルカンジカルボン酸ジハロゲン化物の混合物から得られるアルキルケテンオリゴマーなどが挙げられる。
【0055】
上記のロジン系化合物は、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン及びこれらロジンの変性物であり、これらは単独あるいは2種以上の混合物として用いられる。このロジンの変性物としては、一部あるいは実質的に完全に水素化されたもの、不均化されたもの、重合化されたものなどが挙げられる。また、これらロジン系物質に、α,β―不飽和カルボン酸を付加反応した強化ロジンもロジン系物質に含まれる。ここで用いられるα,β―不飽和カルボン酸の代表的なものは、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和二塩基酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和一塩基酸等が挙げられ、これらは1種又は2種以上併用して用いられる。さらにロジンとグリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステル、ロジンとエポキシ化合物との反応生成物も上記ロジン系物質に包含される。
【0056】
上記のポリアミンエピハロヒドリン樹脂としては、ポリアルキレンポリアミン類にエピクロロヒドリンやエピブロモヒドリン等のエピハロヒドリンを反応させて得られる樹脂、ポリアルキレンポリアミン類とジカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミドアミン樹脂にエピハロヒドリンを反応させて得られる樹脂、ポリアルキレンポリアミン類とジカルボン酸類と尿素化合物とを反応させて得られるポリアミドアミン尿素樹脂にエピハロヒドリンを反応させて得られる樹脂等が挙げられる。
【0057】
上記の脂肪酸ビスアミド系化合物は、例えば、炭素数6〜24のモノカルボン酸及び/又は炭素数6〜24のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物とエピハロヒドリンとの反応物が挙げられる。
【0058】
この発明に係る微小管集合構造体は、前記、主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との混合物により、微小な管が形成され、しかもその管が集合した構造となっている。
【0059】
微小管集合構造体における管の平均開口径は、通常0.1〜100μmである。なお、微小管集合構造体における管の開口径の測定はSEMにより行うことができる。
【0060】
この管の開口形状は、この微小管集合構造体を製造する条件によって、多角形、楕円形、円形等のように様々な形状を採りえる。典型的には、この管の開口形状は、四角形、五角形、六角形等の多角形状である。
【0061】
この管の軸線方向長さは、この発明の方法によると、理論的には、無制限である。この管の軸線方向長さが無制限であることは、理想的には、管の端部から軸線方向に沿って観察すると管の端部における開口から管の他端部における開口まで、開口が複数に分割されずにそのまま貫通していることを意味する。したがって、この発明に係る理想的な微小管集合構造体は、言わばストローを束ねた状態であると形容することができる。
【0062】
一方、いわゆる多孔体と称されるものは、その表面に開口する凹部があり、その凹部が多孔体の内部に存在する空孔と貫通孔をもって連絡し、前記空孔と他の空孔とが貫通孔をもって連絡し、空孔同士が孔でもって連絡し、その空孔が他の表面に開口する凹部と貫通孔をもって連絡するという形式で貫通孔が形成されることがある。従来から知られている多孔体に形成される貫通孔は、多孔体の表面に形成される貫通孔の開口部から他の表面に形成される開口部までの軸線が存在しない。したがって、この発明に係る微小管集合構造体は、軸線を有する管を有するという点において、従来の多孔体と区別される。
【0063】
このような特殊な管構造を有する微小管集合構造体は、この発明の方法によって製造することができる。
【0064】
この発明に係る微小管集合構造体の製造方法は、前記、主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との混合物を含有する多糖類と改質剤との混合物含有液を収容した容器を冷媒に挿入することにより、冷媒液面の鉛直上方向に前記多糖類含有液中の溶媒を凍結成長させ、その後に溶媒を除去することを特徴とする。
【0065】
ここで改質剤が多糖類や溶媒との反応性がある場合や、改質剤が溶媒によって加水分解等の反応をする場合、それらの反応は微小管集合構造体の製造中のいずれの工程で起きても良い。
このような反応が起きうる工程としては、改質剤が溶媒と接触する工程、改質剤が多糖類と接触する工程、多糖類と改質剤との混合物含有液を収容した容器を冷媒に挿入する工程、溶媒を除去する工程、溶媒を除去した後などが挙げられる。
【0066】
また、多糖類同士が反応し架橋体等になり得る場合、もしくは多糖類と改質剤の反応が起きうる場合や改質剤同士が反応して架橋体等になり得る場合は、例えば溶媒を除去した後の微小管集合構造体に加熱処理をすることで反応を促進することもできる。反応を促進する方法は加熱処理に限らず、例えば反応触媒などを利用することもできる。また、反応を促進する工程は溶媒を除去した後に限らず、反応促進操作を行える工程があれば、製造中のいずれの段階でも構わない。
【0067】
上記多糖類と改質剤との混合物含有液における多糖類の含有濃度は、多糖類の種類によって含有濃度上限値及び含有濃度下限値が相違するが、いずれの多糖類であっても共通して適正であるとされる含有濃度範囲は、通常、0.1質量%以上25質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上15質量%以下である。多糖類の含有濃度が前記上限値を超えると、多糖類の種類にもよるが、分散液の粘度が高くなるために均質な濃度の分散液が得られにくい、微小管の壁が厚くなり十分な開口が得られないといった不都合を生じることがある。前記下限値未満の含有濃度であると微小管の壁が薄くなり、微小管同士に貫通孔ができることがある。
【0068】
上記多糖類と改質剤との混合物含有液における多糖類と改質剤の適正な使用比率は、多糖類:改質剤=0.1〜25:0.001〜25であり、好ましくは、1〜10:0.01〜10である。多糖類の比率が前記上限値を超えると、耐水性が悪いといったような不都合を生じることがある。前記下限値未満の含有濃度であると微小管の壁が薄くなり、微小管同士に貫通孔ができることがある。
【0069】
また、上記多糖類と改質剤の混合物含有液における改質剤の濃度は、改質剤の種類によって含有濃度上限値及び含有濃度下限値が相違するが、いずれの改質剤であっても通常0.001〜25質量%以下であり、好ましくは0.001質量%以上15質量%以下である。改質剤の含有濃度が上記上限値を超えると、改質剤の種類にもよるが、分散液の粘度が高くなり均質な濃度の分散液が得られなかったり、微小管構造集合体が形成されなかったりする場合がある。改質剤前の含有濃度が上記下限値未満の含有濃度であると耐水性の向上効果が小さくなる。
【0070】
前記多糖類と改質剤との混合物含有液を収容する容器は、冷媒中に挿入され、しかも徐々に挿入されるのであるから、容器における冷媒中に浸漬している部分と容器における冷媒直上の部分とで生じる温度差によって破損を生じさせない程度の物理特性例えば膨張率を有し、また、軸線方向の長さのある微小管を形成することができるように所定長さの高さを有する有底の形状であればよい。また、この容器の形状は、微小管集合構造体の用途に応じて、決定されることもできる。
【0071】
この発明における多糖類と改質剤との混合物含有液の溶媒としては、多糖類と改質剤とを均質に分散あるいは溶解し、且つ凝固点を有するものであれば特に制限はなく、通常、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、t-ブタノール、酢酸、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル等の極性溶媒が挙げられる。この中でも、入手容易で安価であるという点で水が好適である。これら溶媒は一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0072】
この発明における冷媒としては、多糖類と改質剤との混合物含有液の溶媒を凍結できる温度においても凍らない液体(不凍液)であれば特に制限はなく、通常、水、食塩水、エチレングリコール、四塩化炭素、アセトニトリル、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル、液体窒素、液体水素、液体ヘリウム等が挙げられる。この中でも、入手容易で安価な上、比較的低温においても凍らないという点で液体窒素が好適である。また、冷媒としては液体のみならず、冷却装置等により冷却された空間(例えば多糖類と改質剤との混合物含有液を凍結できる温度にまで冷却された空気)も用いることができる。
【0073】
これら冷媒を冷却する手段として、寒剤及び/又は冷却装置を利用してもよい。寒剤としては、氷、食塩と氷の混合物、酢酸ナトリウムと氷との混合物、塩化カルシウムと氷との混合物、塩化アンモニウムと氷との混合物、硝酸アンモニウムと氷との混合物、塩化アンモニウムと硝酸カリウムと氷との混合物、臭化ナトリウムと氷との混合物、塩化ナトリウムと氷との混合物、塩化カリウムと氷との混合物、塩化マグネシウムと氷との混合物、塩化亜鉛と氷との混合物、ドライアイス等が挙げられる。これら寒剤の使用方法としては、冷媒とは接触せずに冷媒容器などを介して間接的に冷却する方法、冷媒に直接混合する方法を適宜選択する必要がある。冷却装置としては、投げ込み型冷却器等が挙げられる。冷却装置は、直接冷媒と接触してもよい。
【0074】
多糖類と改質剤との混合物含有液と冷媒の温度に特に制限はなく、多糖類と改質剤との混合物含有液の温度は多糖類と改質剤との混合物含有液の溶媒の凝固点よりも高く、多糖類と改質剤との混合物含有液の溶媒の沸点よりも低ければよい。また、冷媒の温度は多糖類と改質剤との混合物含有液の溶媒を凍結できる温度ならば特に制限はない。例えば水を溶媒として用いた場合、多糖類と改質剤との混合物含有液の温度は水の凝固点である0℃よりも高く、水の沸点である100℃よりも低ければよく、冷媒は水の凝固点である0℃よりも低ければよい。
【0075】
この発明の方法においては、多糖類と改質剤との混合物含有液を収容する容器を冷媒中に徐々に浸漬していくのであり、そのときの浸漬していく速度に特に制限はないが、通常、3〜300μm/秒が好適である。より好ましくは、10〜100μm/秒である。凍結速度が遅すぎる場合には生産性の面で不適当である。また、凍結速度が早過ぎる場合には貫通孔の直線性が損なわれるといった不都合を生じることがある。
【0076】
この発明の方法では、多糖類と改質剤との混合物含有液を収容する容器を冷媒に徐々に浸漬していくと、冷媒に浸漬した容器内において、冷媒に浸漬した部分より上部から冷媒に浸漬した底部にかけて、冷媒に浸漬する前の多糖類と改質剤との混合物含有液温度から冷媒温度の範囲の温度勾配が生じる。
【0077】
本発明の方法は、次のような原理により本発明の効果が得られるものと推測している。
始めに、多糖類と改質剤との混合物含有液を収容する容器底部が冷媒に接触すると、溶媒が凝固点以下に冷却されることにより、溶媒が凝固した多数の結晶核が生ずる。
【0078】
そして、多糖類と改質剤との混合物含有液を収容する容器を徐々に冷媒中に浸漬していくと、生成した結晶核から冷媒液面の鉛直上方向に柱状結晶が成長する。溶質である多糖類と改質剤は、柱状結晶の成長に伴いその外周部に押しやられ、壁状に集合していく。
【0079】
特に含有液の成分である多糖類の主鎖を構成する単糖が、ピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なる場合、シート状コンホメーションをとることができ、柱状結晶の周囲に押し集められた多糖類は膜状に積層する。
【0080】
例えばセルロースは、「セルロースの科学」朝倉書店 磯貝明 編において、D−グルコピラノースがβ−1,4結合で連なる構造をしており、一方の2位水酸基と他方の6位水酸基、及び/又は一方の3位水酸基と他方の5位の酸素原子が水素結合で結合することで、隣り合う単糖同士が強固に固定された直線かつ平面状のコンホメーションをとることが記されている。この構造が長く連なることから、一分子は一直線上に張られたリボン状になっていると形容することができる。また、このリボン状の一分子が、面を約45°傾けた状態で、横方向約0.5nm間隔、縦方向約0.6nm間隔で並行に束ねられ、セルロースミクロフィブリルとしての結晶構造が形作られており、この形状は、同一面に隣り合う分子間に存在する親水性の水素結合、及び面間に存在する疎水的なファンデルワールス力によるものであることが記されている。
【0081】
このように、セルロースは親水性及び疎水性の相互作用を有することから、このセルロースは緻密な膜状構造、積層構造、更には本発明に係る微小管の壁を形成することができると考えられる。
【0082】
セルロース以外でも本発明に係る多糖類のようにシート状コンホメーションをとり得る多糖類であれば、そのような多糖類は、本発明に係る工程に供されて処理されると、膜状構造、積層構造、更には本発明に係る微小管の壁を形成できると考えられる。
【0083】
一方、澱粉は、D−グルコピラノースがα−1,4結合で連なる構造をしているおり、隣り合う単糖同士が水素結合を形成することがなく、比較的フレキシブルに様々なコンホメーションを取り得る。常温では澱粉粒は6コの単糖で1つのピッチを形成する螺旋構造をとる分子が二分子で二重螺旋を作り、それらが更に集まって巨大な塊状態になっている。この澱粉粒は熱水中では溶解してしまうことから、その相互作用は弱いことが伺える。
【0084】
それゆえに澱粉は、本発明における工程に供されて処理されるとしても、平面的なコンホメーションをとり得ず、膜状構造、積層構造も形成できない。
【0085】
多糖類と改質剤との混合物含有液を収容する容器を冷媒中に完全に浸漬すると、多糖類と改質剤との混合物含有液中の溶媒が凝固し、凝固した縦長の柱状結晶の周囲に多糖類分子が壁体のように集約された状態になる。この時の改質剤の存在状態の詳細は不明であるが、大部分は多糖類分子と共に柱状結晶の周囲に集約された状態になっていると推測される。この状態を溶媒が水の場合で例えると、霜柱のような氷の柱一本一本の周囲に多糖類分子と改質剤により壁体が形成された有様であり、換言すると、多糖類分子と改質剤との集合によって多数の管状壁体が形成され、それら多数の管状壁体における縦長の孔中に氷が充填された有様である。このような状態になったものを、仮に管状壁体凝固体と称する。
【0086】
この発明の方法では、得られた管状壁体凝固体を冷媒から取り出し、凝固した溶媒を除去すると、この発明に係る微小管集合構造体が得られる。
【0087】
凝固した溶媒の除去方法としては、柱状結晶の周囲に集約された多糖類と改質剤との構造が損なわれなければ、どのような溶媒除去方法を採用してもよい。例えば凍結乾燥を用いれば溶媒が昇華するため、溶媒の融解、多糖類と改質剤との再分散を抑えられるため好適である。また、多糖類と改質剤とが分散しないような非親和性の溶媒に一旦凍結置換すれば、風乾又は熱乾してもよい。
【0088】
また、上記のように改質剤が、多糖類分子と共に柱状結晶の周囲に集約された状態にならず、凝固した溶媒中に分布している場合でも、凝固した溶媒を除去する工程において、改質剤よりも溶媒を優先的に除去する方法をとることによって、前記の微小管集合構造体を製造することができる。
溶媒を優先的に除去する方法としては、例えば、改質剤が溶媒よりも昇華しにくい場合は凍結乾燥などの方法が採用される。この際、一部の改質剤が溶媒と共に除去されたとしても、得られた微小管集合構造体の耐水性が実用的な範囲において付与されていれば良い。
かくしてこの発明の方法により、この発明に係る微小管集合構造体が製造される。
【0089】
この微小管集合構造体は、既に説明したように、軸線の長い微小な管が集合した構造を有する。
【0090】
この微小管集合構造体は、その特殊な構造の故に、例えば触媒や医薬品の担体、吸着剤、分離剤、フィルター、複合用材料、化粧品、医薬等の分野に使用されることができる。
【0091】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【実施例1】
【0092】
(製造例1:酸化パルプ(TEMPO酸化セルロース)の製造)
撹拌装置を備えた5L容ガラス製容器に、セルロースである針葉樹晒クラフトパルプをカナディアンスタンダードフリーネス400に調整した、濃度1.5質量%である水分散液4000gを投入し、5L容ガラス製容器の内容物を緩やかに撹拌し、N−オキシル化合物である2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシルの水溶液(濃度0.6質量%)125gと触媒であるハロゲン化アルカリ金属塩として臭化ナトリウムの水溶液(濃度6.0質量%)125gとを加えてセルローススラリーとした。
このセルローススラリーに次亜塩素酸ナトリウム水溶液(塩素濃度8質量%)320gを投入し、室温で5L容ガラス製容器の内容物を撹拌しつつ内容物のpHが10.5を保持するように30質量%水酸化ナトリウム水溶液を断続的に5L容ガラス製容器内に滴下した。次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入した後に約90分が経過した時点で5L容ガラス製容器の内容物のpHが殆ど変化しなくなったことを確認した上で内容物の撹拌を停止し、その停止時点をもってTEMPO酸化反応の終了時点とした。
それまでに滴下した30質量%水酸化ナトリウム水溶液の全量は24gであった。TEMPO酸化反応後時点におけるセルローススラリーを200メッシュのナイロン製濾布で濾過した後、残存する水溶性薬品を除去するために濾過物を5L容ガラス製容器に投入し、約3000gのイオン交換水を加えて5L容ガラス製容器の内容物を撹拌し、200メッシュのナイロン製濾布で前記内容物を濾過する操作を3回繰り返した。濾過残渣として、濃度が4.1質量%であるTEMPO酸化セルロースのスラリー1230gを得た。
なお、TEMPO酸化セルロースのスラリーの濃度は110℃で2時間加熱乾燥した後の残存物の重量から求めた。
TAPPI STANDARD METHOD T237 cm−98に準じた方法で測定したTEMPO酸化セルロースのスラリーのカルボン酸量は対パルプ乾燥重量1gあたり1.2meqだった。
【0093】
(実施例1)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.4gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤としてテトラエトキシシラン(和光純薬工業株式会社製)1.6gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がテトラエトキシシラン換算で1.0質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填した。この試験管を28μm/秒の速度で液体窒素の中に挿入し、氷晶柱を作成した。その試験管内に形成された氷晶柱を、凍結状態を維持したまま容器ごと切断して長さ10mmの円柱片を切り出した。円柱片を−10℃、1mmHg以下の条件下に72時間保持することにより、凍結状態を維持したまま水を除去(凍結乾燥)した。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。乾燥物の切断面のSEM観察結果を図1に示す。
図1によると、この乾燥物は、開口断面が明確な稜を有してはいないが多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0094】
(実施例2)
200ml容ビーカーにイオン交換水89.9gに氷酢酸0.1gを加え、マグネティックスターラーにより撹拌を行った。ここに撹拌下、改質剤としてテトラエトキシシラン(和光純薬工業株式会社製)10gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水104gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のテトラエトキシシランを溶解した水溶液16gを加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がテトラエトキシシラン換算で1.0質量%濃度、酢酸が0.01質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図2に示す。
図2によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0095】
(実施例3)
実施例1において、改質剤としてテトラエトキシシランの代わりに3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−403」)を用いた以外は実施例1と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図3に示す。
図3によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0096】
(実施例4)
200ml容ビーカーにイオン交換水99gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)1.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水119.8gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にビニルトリメトキシシランを添加した水溶液を0.16g加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.001質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0097】
(実施例5)
200ml容ビーカーにイオン交換水99gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)1.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.4gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にビニルトリメトキシシランを添加した水溶液を1.6g加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.01質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0098】
(実施例6)
200ml容ビーカーにイオン交換水99gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)1.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水116gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にビニルトリメトキシシランを添加した水溶液を4.0g加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.025質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0099】
(実施例7)
200ml容ビーカーにイオン交換水99gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)1.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水112gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にビニルトリメトキシシランを添加した水溶液を8.0g加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.05質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図4に示す。
図4によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0100】
(実施例8)
200ml容ビーカーにイオン交換水99gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)1.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水104gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にビニルトリメトキシシランを添加した水溶液を16.0g加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.1質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0101】
(実施例9)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水119.6gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)0.4gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.25質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0102】
(実施例10)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水119.2gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)0.8gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.5質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0103】
(実施例11)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.8gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)1.2gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.75質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0104】
(実施例12)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.4gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)1.6gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で1.0質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図5に示す。
図5によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0105】
(実施例13)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水116gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)4.0gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で2.5質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。
【0106】
(実施例14)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水112gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−1003」)8.0gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で5.0質量%濃度となるほぼ無色透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図6に示す。
図6によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状や楕円状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0107】
尚、上記の実施例4〜6、8〜11、13については開口断面のSEM観察を行っていないが、これらはSEM観察において微小管集合構造体と確認できた実施例7、12、14の改質剤量を変えたものであり、SEM観察より簡易なCCDの観察により同様に微小管集合構造体となっていることが確認できたため、SEM観察は行わなかった。
【0108】
(実施例15)
実施例1において、改質剤としてテトラエトキシシランの代わりに3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製「Z−6044」)を用いた以外は実施例1と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図7に示す。
図7によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0109】
(実施例16)
実施例1において、改質剤としてテトラエトキシシランの代わりに3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製「Z−6030」)を用いた以外は実施例1と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図8に示す。
図8によると、この乾燥物は、開口断面が明確な稜を有してはいないが多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0110】
(実施例17)
実施例1において、改質剤としてテトラエトキシシランの代わりに3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製「Z−6062」)を用いた以外は実施例1と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図9に示す。
図9によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0111】
(実施例18)
実施例1において、改質剤としてテトラエトキシシランの代わりにメチルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製「Z−6366」)を用いた以外は実施例1と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図10に示す。
図10によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0112】
(実施例19)
実施例1において、改質剤としてテトラエトキシシランの代わりにフェニルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製「Z−6124」)を用いた以外は実施例1と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図11に示す。
図11によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0113】
(実施例20)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー25gとイオン交換水72.5gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤として置換無水コハク酸系化合物(星光PMC株式会社製「AS−1523」)の10質量%濃度水分散物2.5gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、耐水化剤が置換無水コハク酸系化合物換算で0.25質量%濃度となる乳白色でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図12に示す。
図12によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状や楕円形である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0114】
(実施例21)
実施例20において改質剤として無水コハク酸系化合物の10質量%濃度水分散物の代わりに、ロジン系化合物(星光PMC株式会社製「CC−1401」)の10質量%濃度水分散物を用いた以外は実施例20と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図13に示す。
図13によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状や楕円形である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0115】
(実施例22)
実施例20において改質剤として無水コハク酸系化合物の10質量%濃度水分散物の代わりに、2−オキセタノン系化合物(星光PMC株式会社製「AD−1645」)の10質量%濃度水分散物を用いた以外は実施例22と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図14に示す。
図14によると、この乾燥物は、開口断面が明確な稜を有してはいないが楕円形である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0116】
(実施例23)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー25gとイオン交換水72.5gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更に改質剤として脂肪酸ビスアミド系化合物(星光PMC株式会社製「PT−8104」)の10質量%濃度水分散物2.5gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、耐水化剤が脂肪酸ビスアミド系化合物換算で0.25質量%濃度となる乳白色でゼリー状の水分散液を得た。この水分散物を更にホモジナイザーにて10,000rpmで10分間撹拌し、得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図15に示す。
図15によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0117】
(実施例24)
実施例23において改質剤として脂肪酸ビスアミド系系化合物の10質量%濃度水分散物の代わりに、ポリアミンエピハロヒドリン樹脂(星光PMC株式会社製「WS−4030」)の10質量%濃度水分散物を用いた以外は実施例16と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図16に示す。
図16によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状や楕円状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0118】
(実施例25)
50ml容ビーカーにイオン交換水45gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、改質剤としてチタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ株式会社製「プレンアクトKR−ET」)5.0gを加え、チタネート系カップリング剤が分散した乳白色の溶液を得た。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.4gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にチタネート系カップリング剤を添加した水溶液を1.6gを加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がプレンアクトKR−ET換算で0.1質量%濃度となる微乳白色でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図17に示す。
図17によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0119】
(実施例26)
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.4gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、改質剤としてチタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ株式会社製「プレンアクトKR−ET」)1.6gを加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がプレンアクトKR−ET換算で1.0質量%濃度となる乳白色でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図18に示す。
図18によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0120】
(実施例27)
50ml容ビーカーにイオン交換水45gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、改質剤としてチタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ株式会社製「プレンアクトKR−44」)5.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.4gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にチタネート系カップリング剤を添加した水溶液を1.6gを加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がプレンアクトKR−44換算で0.1質量%濃度となるほぼ透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図19に示す。
図19によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0121】
(実施例28)
10ml溶ビーカーに改質剤としてチタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ株式会社製「プレンアクトKR−38S」)10.0gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、ジメチルエタノールアミン5.0gを加え、ビーカーの内容物を均一になるまで混合した。
別の50ml容ビーカーにイオン交換水42.5gを加え、マグネティックスターラーによる撹拌下、上記のチタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ株式会社製「プレンアクトKR−44」)とジメチルエタノールアミンの混合物7.5gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。
製造例1により得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー40gとイオン交換水118.4gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、上記のイオン交換水にチタネート系カップリング剤とジメチルエタノールアミンを添加した水溶液を1.6gを加えて解繊処理を続け、TEMPO酸化セルロースの微細化物が1.0質量%濃度、改質剤がプレンアクトKR−38S換算で0.1質量%濃度となるほぼ透明でゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図20に示す。
図20によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状や楕円形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0122】
(実施例29)
1L容ビーカーにイオン交換水999gを加え、マグネティックスターラーによる攪拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBMー1003」)1.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。グルコマンナン(清水化学(株)製「レオレックスRS」)1.0gを、上記ビニルトリメトキシシラン水溶液99gで希釈し、グルコマンナンが1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.1質量%濃度となる淡黄色で透明なゼリー状の水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図21に示す。
図21によると、この乾燥物は、開口断面が楕円形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0123】
(実施例30)
実施例29において、グルコマンナンの代わりにグアーガムを用いた以外は実施例29と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図22に示す。
図22によると、この乾燥物は、開口断面が楕円状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0124】
(実施例31)
実施例29において、グルコマンナンの代わりにキサンタンガム(三晶(株)製「KELZAN」)を用いた以外は実施例29と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図23に示す。
図23によると、この乾燥物は、開口断面が明確な稜を有してはいないが多角形状や菱形である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0125】
(実施例32)
100mL容ビーカーにイオン交換水89gを加え、マグネティックスターラーによる攪拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBMー1003」)1.0gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。アラビアガム(三栄薬品貿易(株)製「アラビアガム末」)10.0gを、上記ビニルトリメトキシシラン水溶液90gで希釈し、アラビアガムが10.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で1.0質量%濃度となる透明な水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図24に示す。
図24によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0126】
(比較例1)
製造例1で得られたTEMPO酸化セルロースのスラリー61gとイオン交換水64gとを家庭用ジューサーミキサーにより解繊処理を行い、スラリーが半透明なゼリー状になることを確認した後、更にイオン交換水125gをこのスラリーに加えて解繊処理を続け、1.0質量%濃度のほぼ無色透明でゼリー状のTEMPO酸化セルロースの微細化物の水分散液を得た。得られたTEMPO酸化セルロースの微細化物の水性分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填した。この試験管を28μm/秒の速度で液体窒素の中に挿入し、氷晶柱を作成した。
その試験管内に形成された氷晶柱を、凍結状態を維持したまま容器ごと切断して長さ10mmの円柱片を切り出した。円柱片を−10℃、1mmHg以下の条件下に72時間保持することにより、凍結状態を維持したまま水を除去(凍結乾燥)した。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図25に示す。
図25によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0127】
(比較例2)
1L容ビーカーにイオン交換水999gを加え、マグネティックスターラーによる攪拌下、改質剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBMー1003」)1gを加え、ビーカーの内容物が透明になることを確認した。デキストリン1.0gを、上記ビニルトリメトキシラン水溶液99gに分散させた後に糊化させ、デキストリンが1.0質量%濃度、改質剤がビニルトリメトキシシラン換算で0.1質量%濃度となる水分散液を得た。得られた水分散液を、外径12mm、内径10mm、長さ120mmのポリプロピレン製の試験管に充填し、実施例1と同様にして氷晶柱の作成、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を110℃で1時間加熱し、円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図26に示す。
図26によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、単に多孔質であることが認められる微小多孔質体であった。
【0128】
(比較例3)
比較例2において、デキストリンの代わりにヒドロキシエチルスターチを用いた以外は比較例2と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図27に示す。
図27によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、単に多孔質であることが認められる微小多孔質体であった。
【0129】
(比較例4)
比較例2において、デキストリンの代わりにリン酸エステル化澱粉を用いた以外は比較例2と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図28に示す。
図28によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、単に多孔質であることが認められる微小多孔質体であった。
【0130】
(比較例5)
比較例2において、デキストリンの代わりに酸化澱粉を用いた以外は比較例2と同様にして円柱片の乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図29に示す。
図29によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、層状構造を持つ微小多孔質体であった。
【0131】
(比較例6)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の水分散液の代わりに濃度を1.0質量%に希釈したデキストリンの水溶液を用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図30に示す。
図30によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、単に多孔質であることが認められる微小多孔質体であった。
【0132】
(比較例7)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の水分散液の代わりにヒドロキシエチルスターチの1.0質量%水分散液を糊化させたものを用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図31に示す。
図31によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、単に多孔質であることが認められる微小多孔質体であった。
【0133】
(比較例8)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の代わりにリン酸エステル化澱粉の1.0質量%水分散液を糊化させたものを用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図32に示す。
図32によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、単に多孔質であることが認められる微小多孔質体であった。
【0134】
(比較例9)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の代わりに酸化澱粉の1.0質量%水分散液を糊化させたものを用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図33に示す。
図33によると、この乾燥物は、管状体の形成が認められず、単に多孔質であることが認められる微小多孔質体であった。
【0135】
(比較例10)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の水分散液の代わりに濃度を1.0質量%に希釈したグルコマンナン(清水化学(株)製 商品名「レオレックスRS」)の水溶液(この水溶液は、この発明における多糖類含有液に相当する。)を用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図34に示す。
図34によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状や楕円形である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0136】
(比較例11)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の水分散液の代わりに濃度を1.0質量%に希釈したグアーガムの水溶液(このグアーガムの水溶液は、この発明における多糖類含有液に相当する。)を用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図35に示す。
図35によると、この乾燥物は、開口断面が楕円状である管状体が多数集合してなる微小管集合構造体であった。
【0137】
(比較例12)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の水分散液の代わりに濃度を1.0質量%に希釈したキサンタンガム(三晶(株)製 商品名「KELZAN」)の水溶液(この発明における多糖類含有液に相当する。)を用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図36に示す。
図36によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0138】
(比較例13)
比較例1において、濃度が1.0質量%であるTEMPO酸化セルロースの微細化物の水分散液の代わりに濃度を10.0質量%に希釈したアラビアガム(三栄薬品貿易(株)製 商品名「アラビアガム末」)の水溶液を用いた以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。得られた乾燥物の切断面のSEM観察結果を図37に示す。
図37によると、この乾燥物は、開口断面が多角形状である管状体が集合してなる微小管集合構造体であった。
【0139】
上記、実施例および比較例で得られた構造体について以下の方法にて耐水性及び弾性についても評価を行った。
【0140】
(耐水性評価)
13.5ml容ガラス製容器に実施例および比較例で得られた長さ1cmの円柱片の乾燥物およびイオン交換水8mlを入れ、蓋をして5分間静置した。静置後、ガラス製容器を30回振り、円柱片の状態を目視観察し、以下のように評価を行った。結果を表1〜3に示す。
円柱片が完全に崩壊しているものを「×」、円柱片が僅かに崩壊しているものを「△」、円柱片が殆ど崩壊していないものを「○」、円柱片が全く崩壊していないものを「◎」とした。「◎」、「○」、「△」、「×」の順に耐水性が優れることを示す。
【0141】
(弾性評価)
下記の方法により微小管集合構造体の弾性を評価した。尚、弾性は微小管集合構造体が外部からの力により変形しても、塑性変形せずに、元の形に戻ることを意味する。
直径約1cmの円柱片を軸線方向が水平になるように置き、上部からの圧縮により、その高さが0.4cmになるまで変形させ、その後、圧縮から解放した。解放後に円柱片の高さがほぼ元の高さに戻っている場合(高さが約1cmまで戻っている場合)を「○」、変形した量の半分程度戻っている場合(高さが約0.7cmまで戻っている場合)を「△」、変形したまま高さが回復しないもの(高さがほぼ圧縮した状態の0.4cmとなる場合)を「×」として評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0142】
(構造体の形状)
それぞれの円柱片の断面をSEMにより形状観察し、以下のように評価を行った。結果を表1〜3に示す。
微小管集合構造体になっているものを「○」、微小管集合構造体ではなく、多孔質体等になっているものを「×」とした。SEM観察を行わなかったものを「−」とした。
【0143】
実施例1〜19のTEMPO酸化セルロースと改質剤であるシラン系カップリング剤の混合物から作成された構造体は、いずれも微小管集合構造体となった。
また、これら実施例1〜19の微小管集合構造体は、比較例1の酸化セルロース単独からなる微小管構造集合体に比べて耐水性、弾性が優れていた。
【0144】
実施例20〜22のTEMPO酸化セルロースと改質剤である置換無水コハク酸系化合物、2−オキセタノン系化合物、ロジン系化合物からなる耐水化剤の混合物から作成された構造体は、いずれも微小管集合構造体となった。
また、これら実施例20〜22の微小管集合構造体は、比較例1の酸化セルロース単独からなる微小管構造集合体に比べて耐水性が優れていた。
【0145】
実施例23〜24のTEMPO酸化セルロースと改質剤であるポリアミンエピハロヒドリン樹脂、脂肪酸ビスアミド系化合物からなる耐水化剤の混合物から作成された構造体は、いずれも微小管集合構造体となった。
また、これら実施例23〜24の微小管集合構造体は、比較例1の酸化セルロース単独からなる微小管集合構造体にくらべて耐水性、弾性が優れていた。
【0146】
実施例25〜28のTEMPO酸化セルロースと改質剤であるチタネート系カップリング剤の混合物から作成された構造体は、いずれも微小管集合構造体となった。
また、これら実施例25〜28の微小管集合構造体は、比較例1の酸化セルロース単独からなる微小管集合構造体に比べて耐水性、弾性が優れていた。
【0147】
実施例29〜31のグルコマンナン、グアーガム、キサンタンガムと改質剤であるシラン系カップリング剤の混合物から作成された構造体は、いずれも微小管集合構造体となった。また、これら実施例29〜31の微小管集合構造体は、それぞれの対応する多糖類単独からなる比較例10〜12の微小管構造集合体に比べて耐水性、弾性が優れていた。
【0148】
実施例32のアラビアガムと改質剤であるシラン系カップリング剤の混合物から作成されれた構造体は、微小管集合構造体となった。また、アラビアガム単独からなる比較例13の微小管集合構造体に比べて耐水性が優れていた。
【0149】
また、比較例2〜9に示すように多糖類が本発明の要件を満たさない場合、いずれも構造体は微小管集合構造体とはならなかった。
【0150】
【表1】
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0153】
主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤とで形成された耐水性が付与された微小管状体の集合体であるから、(1)ピラノース骨格における水酸基をさらに別の基に誘導することにより、或いは(2)微小な管を多数備えていることを利用することにより、触媒担体、吸着剤、分離剤、フィルター、複合化材、医薬品の担体、音を吸収する吸音材、衝撃を緩和する衝撃緩衝材、油を吸収する吸油材等に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との混合物から作成されることを特徴とする微小管状体の集合体である微小管集合構造体。
【請求項2】
主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との混合物を収容した容器を冷媒に挿入することにより、冷媒液面の鉛直上方向に前記多糖類と改質剤との混合物含有液中の溶媒を凍結成長させ、その後に凍結した溶媒を除去することを特徴とする請求項1に記載の微小管集合構造体。
【請求項3】
改質剤が、カップリング剤及び/又は耐水化剤であること特徴とする請求項1又は2に記載の微小管集合構造体。
【請求項4】
カップリング剤及び/又は耐水化剤が、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、置換無水コハク酸系化合物、2−オキセタノン系化合物、ロジン系化合物、ポリアミンエピハロヒドリン樹脂、及び脂肪酸ビスアミド系化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の微小管集合構造体。
【請求項5】
前記シート状コンホメーションを取れる多糖類が、1位の水酸基がそのイス型構造のエカトリアルにあってグリコシド結合し、かつ、2,3,4位のいずれかの水酸基がそのイス型構造のエカトリアルにあってグリコシド結合してなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の微小管集合構造体。
【請求項6】
多糖類が、アニオン性セルロース、カチオン性セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、グルコマンナン、アガロース、キチン、アルギン酸、及びアラビアガムから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の微小管集合構造体。
【請求項7】
主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との含有液を収容した容器を冷媒に挿入することにより、冷媒液面の鉛直上方向に前記多糖類と改質剤との含有液中の溶媒を凍結成長させ、その後に凍結した溶媒を除去することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小管集合構造体の製造方法。
【請求項1】
主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との混合物から作成されることを特徴とする微小管状体の集合体である微小管集合構造体。
【請求項2】
主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との混合物を収容した容器を冷媒に挿入することにより、冷媒液面の鉛直上方向に前記多糖類と改質剤との混合物含有液中の溶媒を凍結成長させ、その後に凍結した溶媒を除去することを特徴とする請求項1に記載の微小管集合構造体。
【請求項3】
改質剤が、カップリング剤及び/又は耐水化剤であること特徴とする請求項1又は2に記載の微小管集合構造体。
【請求項4】
カップリング剤及び/又は耐水化剤が、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、置換無水コハク酸系化合物、2−オキセタノン系化合物、ロジン系化合物、ポリアミンエピハロヒドリン樹脂、及び脂肪酸ビスアミド系化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の微小管集合構造体。
【請求項5】
前記シート状コンホメーションを取れる多糖類が、1位の水酸基がそのイス型構造のエカトリアルにあってグリコシド結合し、かつ、2,3,4位のいずれかの水酸基がそのイス型構造のエカトリアルにあってグリコシド結合してなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の微小管集合構造体。
【請求項6】
多糖類が、アニオン性セルロース、カチオン性セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、グルコマンナン、アガロース、キチン、アルギン酸、及びアラビアガムから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の微小管集合構造体。
【請求項7】
主鎖を構成する単糖がピラノース構造を取り、そのイス型構造のエカトリアルにある水酸基どうしの結合で連なるシート状コンホメーションを取れる多糖類と改質剤との含有液を収容した容器を冷媒に挿入することにより、冷媒液面の鉛直上方向に前記多糖類と改質剤との含有液中の溶媒を凍結成長させ、その後に凍結した溶媒を除去することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小管集合構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2012−167218(P2012−167218A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30310(P2011−30310)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】
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