説明

微小組織反復圧迫装置

【課題】 本発明は、動物の末梢神経又は血管などの束状で連続性のある微小組織に対して反復的に圧迫し、微小外力による障害の病態を解析することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、固定器で固定され、微小組織に圧力を加える圧迫器と、圧迫器に対する空気圧の供給をリリーフ弁を使用して持続的に行うコンプレッサーと、コンプレッサーから供給された空気圧を検出する圧力センサと、圧力センサで検出した値を元に圧迫器に供給する圧力を調節する圧レギュレータと、圧迫器への空気圧の供給又は解除を切り替える電磁バルブと、電磁バルブの開閉を制御するプログラム式コントローラと、プログラム式コントローラに動作を自動化するためのプログラムを転送するとともに、圧力センサの値を圧トランスデューサにより信号を変換したデータを解析してモニタに表示するコンピュータとからなる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の末梢神経や血管などの束状で連続性のある微小組織に対して反復的に圧迫し、微小外力による障害の病態を解析するための微小組織反復圧迫装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微小外力による末梢神経等の障害を病態生理学的に理解するための実験として、兎などの動物が使用される。兎を静脈麻酔により沈静させ、大腿部を展開して坐骨神経に圧迫などの刺激を加えることで、神経活動の変化を測定することができる。
【0003】
末梢神経等の微小組織に対して圧迫するものとして、末梢神経圧迫用チャンバーという装置も開発されている。
【0004】
また、特許文献1に記載されているように、イヌ又はネコの電気生理学的方法による神経疾患及び運動疾患の検査又は診断を行う際の記録電極及び刺激装置の設置を容易にし、安定した記録を行うことを可能にする発明も公開されている。
【特許文献1】特開2004−267657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来では、末梢神経等の微小組織に対して持続的な圧迫のみしか行っておらず、微小組織を反復的に圧迫した際にどのような障害があるか解析する手段が存在しなかった。
【0006】
そこで、本発明は、動物の末梢神経や血管などの束状で連続性のある微小組織に対して反復的に圧迫し、微小外力による障害の病態を解析するための微小組織反復圧迫装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、中央に差込孔13dを有する上部材13と、前記上部材13の下側に連結され、内側に上面が空き下面が膨張可能なシリコンゴム14eを有する中部材14と、前記中部材14の下側に取外可能にで連結され、微小組織17を置くための凹部15dを設けた下部材15とからなり、前記上部材13に取り付けた接続部材12を通じて、前記中部材14に空気圧を送り込むことによりシリコンゴム14eを膨張させ、前記下部材15の凹部15dに置いた微小組織17に圧力を加えることを特徴とする圧迫器2の構成及び固定器で固定され微小組織に圧力を加える圧迫器2と、前記圧迫器に対する空気圧の供給をリリーフ弁を使用して持続的に行うコンプレッサー4と、前記コンプレッサー4から供給された空気圧を検出する圧力センサ6と、前記圧力センサ6で検出した値を元に前記圧迫器2に供給する圧力を調節する圧レギュレータ7と、前記圧迫器2への空気圧の供給又は解除を切り替える電磁バルブ8と、前記電磁バルブ8の開閉を制御するプログラム式コントローラ9と、前記プログラム式コントローラ9に動作を自動化するためのプログラムを転送するとともに、前記圧力センサ6の値を圧トランスデューサ11により信号を変換したデータを解析してモニタ表示10iするコンピュータ10とからなることを特徴とする微小組織反復圧迫装置1の構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上の構成であるから以下の効果が得られる。第1に、動物の末梢神経や血管などの束状で連続性のある微小組織を切断することなく反復的に圧迫することができ、それに伴う障害の評価が可能となる。
【0009】
第2に、空気圧を利用して、規則的なサイクルで、一定の部位に対し定量的な圧迫を加えるに際して、限られたスペースの中で他の機器と干渉することなく、圧迫以外の刺激を与えずに圧迫することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明である微小組織反復圧迫装置は、動物の末梢神経や血管などの束状で連続性のある微小組織に対して反復的に圧迫し、微小外力による障害の病態を解析するという目的を、固定器で固定され、微小組織に圧力を加える圧迫器と、前記圧迫器に対する空気圧の供給をリリーフ弁を使用して持続的に行うコンプレッサーと、前記コンプレッサーから供給された空気圧を検出する圧力センサと、前記圧力センサで検出した値を元に前記圧迫器に供給する圧力を調節する圧レギュレータと、前記圧迫器への空気圧の供給又は解除を切り替える電磁バルブと、前記電磁バルブの開閉を制御するプログラム式コントローラと、前記プログラム式コントローラに動作を自動化するためのプログラムを転送するとともに、前記圧力センサの値を圧トランスデューサにより信号を変換したデータを解析してモニタに表示するコンピュータとからなる構成とすることで実現した。
【実施例1】
【0011】
以下に、添付図面に基づいて、本発明である微小組織反復圧迫装置について詳細に説明する。図1は、本発明である微小組織反復圧迫装置の全体図であり、図2は、本発明である微小組織反復圧迫装置の構成を示すブロック図である。
【0012】
微小組織反復圧迫装置1は、固定器で固定され、微小組織に圧力を加える圧迫器2と、前記圧迫器2に対する空気圧の供給をリリーフ弁5を使用して持続的に行うコンプレッサー4と、前記コンプレッサー4から供給された空気圧を検出する圧力センサ6と、前記圧力センサ6で検出した値を元に前記圧迫器に供給する圧力を調節する圧レギュレータ7と、前記圧迫器2への空気圧の供給又は解除を切り替える電磁バルブ8と、前記電磁バルブ8の開閉を制御するプログラム式コントローラ9と、前記プログラム式コントローラ9に動作を自動化するためのプログラムを転送するとともに、前記圧力センサ6の値を圧トランスデューサ11により信号を変換したデータを解析してモニタ10jに表示するコンピュータ10とからなることを特徴とする。
【0013】
微小組織反復圧迫装置1は、圧迫器2、コンプレッサー4、圧力センサ6、圧レギュレータ7、電磁バルブ8、プログラム式コントローラ9及びコンピュータ10からなり、各機器の連動により反復圧迫を実現し、圧迫中及び圧迫後の末梢神経等の電気生理学的及び組織学的変化を測定することができる。
【0014】
微小組織反復圧迫装置1は、空気圧を利用し、一定の部位に定量的に、かつ、規則的なサイクルで、圧迫が可能であり、限られたスペースの中で他の機器と干渉せずに、圧迫以外の刺激を与えない仕組みを有する。
【0015】
圧迫器2は、末梢神経や血管などの微小組織に対し、空気圧により圧力を加える機器である。尚、圧迫器2は、固定器3で固定することにより、一定の部位に安定した圧迫が可能となる。
【0016】
固定器3は、マグネットベース付ユニバーサルアームを改造したもので、元々付いていたゲージ取付器具を外して、ステンレス製の支柱を取り付ける。先端に圧迫器2をネジで固定すると、圧迫器2自身の荷重による影響を受けずに支持が可能である。
【0017】
コンプレッサー4は、ボンベ等により他の機器に圧縮空気を供給するための機器であり、制御圧力が0.49〜0.69メガパスカルのもの等が使用される。尚、リリーフ弁5を追加することで、コンプレッサー4が常時オンとなるように調整することができる。
【0018】
リリーフ弁5は、圧力が所定の値になると自動的に開閉する弁である。微小組織反復圧迫装置1においては、0.49メガパスカル以下でコンプレッサー4が常時オンとなるように設定して持続的に空気圧の供給を行う。
【0019】
圧力センサ6は、コンプレッサー4から圧迫器2に供給される空気圧を検出する。圧力センサ6で検出した情報は、圧トランスデューサ11で変換され、圧レギュレータ7やコンピュータ10に送られる。
【0020】
圧トランスデューサ11は、アナログ信号をデジタル信号に変換する機器であり、圧力センサ6で感知した空気圧の情報を、コンピュータ10などで扱える電気的な信号に変換する。
【0021】
圧レギュレータ7は、微小組織反復圧迫装置1において必要とする圧力が0.05メガパスカル以下であるため、圧力センサ6の値を確認しながら圧迫器2へ供給する空気圧の量を精密に調整する。
【0022】
電磁バルブ8は、プログラム式コントローラ9の信号により圧縮空気の流れを切り替えることができる弁である。電磁バルブ8の弁を切り替えて、圧縮空気を圧迫器2に送ったり、圧迫器2中の空気を外部に放出18fしたりする。
【0023】
プログラム式コントローラ9(PLC)は、電磁バルブ8の開閉を制御する機器である。プログラム式コントローラ9により、圧迫持続時間、解除時間及び反復回数の設定を行うことができる。
【0024】
コンピュータ10は、微小組織反復圧迫装置1の使用前においては、プログラム式コントローラ9に制御を設定するプログラムを転送し、使用中においては、圧力センサ6から取得した値を解析してモニタ10jに表示する。尚、転送用のコンピュータ10と、解析用のコンピュータ10は、別々にしても良いし、同一にしても良い。
【0025】
図2に示すように、コンプレッサー4で生成した圧縮空気は、電磁バルブ8及び圧レギュレータ7を介して圧迫器2に空気圧供給18され、同時に圧力センサ6が空気圧の量を検出する。
【0026】
圧力センサ6で検出された空気圧の量を元に、圧レギュレータ7が空気圧を適正な量に圧力調整18aして圧迫器2に供給する。コンプレッサー4で供給する空気圧に比べ、圧迫器2に必要な空気圧は小さいため、圧レギュレータ7により減圧する。
【0027】
圧迫器2で圧迫及び解除を定期的に繰り返す場合には、電磁バルブ8を開閉18bさせて、圧縮空気の供給を行ったり止めたりする。電磁バルブ8の動作は、プログラム式コントローラ9に設定された内容に従い制御される。
【0028】
プログラム式コントローラ9に設定する内容は、コンピュータ10でラダープログラム10eが作成され、コンピュータ10からRS232C等のインタフェース10aを介して転送18cする。
【0029】
ラダープログラム10eは、プログラム式コントローラ9の動作手順を指定するプログラムであり、電磁バルブ8を開いて圧迫を持続する時間、電磁バルブ8を閉じて圧迫を解除する時間及び開閉を繰り返す回数などを指定する。
【0030】
作成したラダープログラム10eは、コンピュータ10の記憶装置に保存されるので、微小組織反復圧迫装置1を使用する前に、あらかじめプログラム式コントローラ9に転送18cしておく。
【0031】
また、コンピュータ10では、圧力センサ6で検出した空気圧を圧トランスデューサ11で信号変換18dした変換データ10gをインタフェース10aを介して記憶装置10bに取り込む。
【0032】
コンピュータ10の記憶装置10bには、あらかじめ解析プログラム10fが保存されており、中央処理装置10c(CPU)が、解析プログラム10fを実行して変換データ10gをデータ解析10hする。
【0033】
データ解析10hにより演算処理及び編集処理が行われたデータは、出力装置10dにより表やグラフ等としてモニタ10jにモニタ表示10iされる。圧迫及び解除の状況をコンピュータ10で確認しつつ微小組織の圧迫を行うことができる。
【0034】
図3は、本発明である微小組織反復圧迫装置の圧迫器の斜視図であり、図4は、本発明である微小組織反復圧迫装置の圧迫器の平面図及び断面図である。尚、符号2aは、圧迫器2の平面図であり、符号2bは、圧迫器2をA−A’で切断した正面の断面図であり、符号2cは、圧迫器2をB−B’で切断した側面の断面図である。
【0035】
圧迫器2は、中央に上から下までに貫通する差込孔13dを穿設した直方体状の上部材13と、前記上部材13の下側にネジで連結され、内側に上面が空き下面が膨張可能なシリコンゴム14eを有する直方体状の中部材14と、前記中部材14の下側に取外可能にネジで連結され、微小組織を置くための凹部15dを設けた直方体状の下部材15とからなり、前記上部材13に取り付けた接続部材12を通じて、前記中部材14に空気圧を送り込むことによりシリコンゴム14eを膨張させ、前記下部材15に置いた微小組織に圧力を加えることを特徴とする。
【0036】
圧迫器2は、外周面の中央部に凹部が形成されている接続部材12、上部材13、中部材14及び下部材15からなり、材質は、使用時に生体及び測定データに影響の少ないアクリル板であり、形状は、周囲のスペースを考慮して、1辺が約20ミリメートル程度の略直方体状である。
【0037】
接続部材12は、圧縮空気を供給する管などを圧迫器2に接続する部分であり、上面の注入口12aを入口とし、差込口12cの下面を出口とする孔である気道12bを有する管状の部材である。
【0038】
接続部材12は、平面図2aに示すように、上から見ると円状であり、断面図2b又は断面図2cに示すように、差込口12cが上部材13を貫通するように嵌め込まれており、注入口12aから入った圧縮空気は、気道12bを通って中部材14に送られる。
【0039】
上部材13は、アクリル板を材料とする直方体状の部材であり、中央に接続部材12を嵌め込むための円状の差込孔13dを有する。上部材13は、接続部材12を圧迫器2に固定するとともに、下側にある中部材14の上面に蓋をする。
【0040】
上部材13の四隅には、上部材13から中部材14にかけてネジ16を通すためのネジ穴が4つ空いており、更に、上部材13の一端中央及び反対端中央には、上部材13から下部材15にかけてネジ16aを通すためのネジ穴も2つ空いている。
【0041】
上部材13は、平面図2aに示すように、上から見ると長方形状であり、断面図2b及び断面図2cに示すように、中央が貫通している。また、中部材14の気室14fに蓋をするように載せられる。尚、平面図2a、断面図2b及び断面図2cでは、ネジ16及びネジ16aを外した状態である。
【0042】
中部材14は、供給された圧縮空気が入るスペースを有する部分であり、アクリル板を材料とした内部が中空の直方体状の部材である。上面から下面に貫通する長方形型の孔が空いているが、下面は内側に張られたシリコンゴム14eにより塞がれる。
【0043】
中部材14の1つの側面にはネジ16bを通すためのネジ穴が2つ並んで空いており、固定器3に接続することができる。尚、ネジ16bが入るスペースを確保するために、中部材14には突出部14gを設けてある。
【0044】
また、中部材14の突出部14gの隣りの両側面に設けられた孔14o及び孔14pは、中部材14の内側に張られるシリコンゴム14eを固定する杭状の部材を埋め込むために設けられる。
【0045】
中部材14は、平面図2aに示すように、上から見ると上部材13の下に隠れており、突出部14gのみが出た状態である。また、断面図2b及び断面図2cに示すように、上部材13の下側には、シリコンゴム14eで囲まれた気室14fがあり、接続部材12の気道12bと繋がる。
【0046】
下部材15は、アクリル板を材料とした直方体状の部材であり、上面に一端中央から反対端中央にかけて半円柱状又は台形状に窪んだ凹部15dを有する。凹部15dに末梢神経などの微小組織17を通し、中部材14のシリコンゴム14eを膨張させて圧迫する。
【0047】
下部材15は、平面図2aに示すように、上から見ると上部材13及び中部材14の下に隠れている。また、断面図2bに示すように、上面中央に凹部15dがあり、断面図2cに示すように、凹部15dは一端から他端に横に貫通する。
【0048】
図5は、本発明である微小組織反復圧迫装置の圧迫器の上部材の平面図、正面図及び側面図であり、図6は、本発明である微小組織反復圧迫装置の圧迫器の中部材の平面図、正面図及び側面図であり、図7は、本発明である微小組織反復圧迫装置の圧迫器の下部材の平面図、正面図及び側面図である。
【0049】
図5において、符号13aは、上部材13の平面図であり、符号13bは、上部材13の正面図であり、符号13cは、上部材13の側面図である。
【0050】
上部材13は、平面図13aに示すように、中央に円形の差込孔13dが空けられ、四隅に上部材13と中部材14を接続するためのネジ16を通すネジ穴13e、13g、13h及び13jが空けられる。
【0051】
ネジ穴13eとネジ穴13gの中間にはネジ穴13fが空けられ、ネジ穴13hとネジ穴13jの中間には、ネジ穴13iが空けられる。ネジ穴13f及びネジ穴13iは、上部材13から下部材15まで続く穴であり、下部材15の取外しに使用するネジ16を通す。
【0052】
また、正面図13b及び側面図13cに示すように、中央の差込孔13dは、接続部材12を嵌め込んで、接続部材12の気道12bを中部材14の気室14fに繋ぐため、上面から下面に貫通する。
【0053】
ネジ穴13e、13g、13h及び13jは、ネジ16を中部材14に届かせるため、上面から下面に貫通し、ネジ穴13f及びネジ穴13iも、ネジ16aを下部材15に届かせるため上面から下面に貫通する。
【0054】
図6において、符号14aは、中部材14の平面図であり、符号14bは、中部材14の正面図であり、符号14cは、中部材14の左側面図であり、符号14dは、中部材14の右側面図である。
【0055】
中部材14は、平面図14aに示すように、1つの側面にネジ16bを通す空間である突出部14gが存在するが、突出部14gを除いた部分においては、中央に空けられた略長方形状の孔に沿ってシリコンゴム14eが取り付けられ、シリコンゴム14eの内側は、中空の気室14fとなる。
【0056】
上部材13と同様に、突出部14gを除いた中部材14の四隅には、上部材13のネジ穴13e、13g、13h及び13jと繋がるネジ穴14h、14j、14k及び14mが空けられる。また、ネジ穴13f及びネジ穴13iと繋がるネジ穴14i及びネジ穴14lも空けられる。
【0057】
正面図14b、左側面図14c及び右側面図14dに示すように、突出部14gを除いた中央のシリコンゴム14eを取り付ける孔は、下面でシリコンゴム14eを膨張させるため、上面から下面に貫通する。
【0058】
ネジ穴14h、14j、14k及び14mは、ネジ16を下部材15まで届かせないので、貫通はさせないが、ネジ穴14i及びネジ穴14lは、ネジ16aを下部材15まで届かせるため、上面から下面に貫通する。
【0059】
正面図14bに示すように、シリコンゴム14eには、中間の高さの位置に溝14nが設けられ、中部材14には、突出部14gの隣面である正面側に孔14o、背面側に孔14pが空けられる。孔14o及び孔14pに棒状の部材を嵌め込み、溝14nに引っ掛けることで、シリコンゴム14eを中部材14に固定する。
【0060】
左側面図14cに示すように、突出部14gには、ネジ穴14q及びネジ穴14rが空けられる。突出部14gにおいて、固定器3に接続し、ネジ16bで留めることにより、圧迫器2を固定することができる。
【0061】
図7において、符号15aは、下部材15の平面図であり、符号15bは、下部材15の正面図であり、符号15cは、下部材15の側面図である。
【0062】
下部材15は、平面図15aに示すように、中央を縦断する凹部15dが設けられ、ネジ穴13f及びネジ穴14iと繋がるネジ穴15eと、ネジ穴13i及びネジ穴14lと繋がるネジ穴15fが空けられる。
【0063】
正面図15b及び側面図15cに示すように、凹部15dは、半円状又は逆台形状に凹んでおり、中部材14の下側に取り付けた際に隙間が出来るため、末梢神経などの微小組織17を凹部15dに通すことができる。
【0064】
凹部15dは、中部材14のシリコンゴム14eの下側に位置するため、シリコンゴム14eを空気圧で膨張させることにより、凹部15dに置いた微小組織17を圧迫することができる。
【0065】
ネジ穴15e及びネジ穴15fは、上面から下面に貫通しており、ネジ16aを緩めることで下部材15を取り外すことができる。ネジ固定式にして着脱可能とすることで、圧迫する微小組織17が、束状の有連続組織であっても、切断を行わずに設置することができる。
【0066】
図8は、本発明である微小組織反復圧迫装置の圧迫器のシリコンゴムの正面図である。シリコンゴム14eは、シリコン製を略直方体の箱状に成形した上面が空いた部材である。内部は中空の気室14fであり、4つの側面には、溝14nが各側面に渡って設けられる。
【0067】
下面の膨張面14sは、空気圧による変形性と繰返し使用の耐久性を考慮して、約0.5ミリメートルの厚さの薄い膜状になっており、気室14fに圧縮空気が送り込まれ、空気圧が掛かることで、風船状に膨らむ。
【0068】
シリコンゴム14eは、2液常温硬化型であり、中部材14に対して下面と気室14f用の型を用意し、中部材14と型との間に混合した2液を充填し、十分に脱気してからオーブンで硬化させることにより成形する。
【0069】
図9は、本発明である微小組織反復圧迫装置の圧迫器で組織を圧迫した状態を示す図である。符号2dは、圧迫を解除した状態であり、符号2eは、微小組織17を圧迫した状態である。
【0070】
解除2dにおいては、気室14fに空気圧供給18がされないため、シリコンゴム14eの膨張面14sは直線状であり、微小組織17に圧力は掛からない。
【0071】
圧迫2eにおいては、注入口12aから気室14fに空気圧供給18され、シリコンゴム14eの膨張面14sに空気圧が掛かって膨張18eし、下側に湾曲するので、微小組織17に圧力が掛かる。
【0072】
プログラム式コントローラ9により圧迫時間、解除時間及び反復回数を設定して、圧迫2eと解除2dを周期的に繰り返すことにより、末梢神経などの微小組織17の反復圧迫が可能となる。
【0073】
図10は、本発明である微小組織反復圧迫装置の反復圧迫の波形を示すグラフである。グラフ19は、縦軸に圧力、横軸に時間を取り、圧迫と解除の反復を波形19aとして表したものである。
【0074】
反復の設定は、1秒間の圧迫2eと0.5秒間の解除2dを繰り返すようにしてあり、波形19aを見ると、この設定においては再現性が良く、圧迫圧が持続することを示している。
【実施例2】
【0075】
絞扼性神経障害の初期病態解明のため、短時間圧迫条件下における圧迫強度と神経複合活動電位(CNAP)の変化の関係につき、実験を行った。尚、実験動物として日本白色家兎(12週齢)の雄(約3.0キログラム)を用いた。
【0076】
微小組織反復圧迫装置1を使用して兎の大腿部における坐骨神経を圧迫し、圧迫器2に負荷する圧力(圧迫器圧)と、実際に神経に加わっている圧力(神経圧迫圧)の関係を調べた。
【0077】
圧迫器圧と神経圧迫圧の比(圧迫器圧:神経圧迫圧)は、それぞれ平均(150:39.81)、(200:79.62)、(300:122.59)であった。
【実施例3】
【0078】
実験動物として日本白色家兎(12週齢)の雄2羽を用い、静脈麻酔にて沈静した後、大腿部で坐骨神経を展開し、本発明である微小組織反復圧迫装置1を大腿中央部に装着した。
【0079】
圧迫条件を、圧迫器2の内圧が200mmHgで、30分間持続的に圧迫する持続圧迫と、30秒間圧迫した後に1秒間解除するサイクルを60回行って計30分間圧迫する反復圧迫とし、それぞれが神経へ与える影響を比較した。
【0080】
圧迫経過中に、坐骨神経の微小組織反復圧迫装置1に挟んだ近位部と遠位部に電極を取り付け、近位部側を刺激した際に、遠位部側に見られる神経活動電位の変化につき検討した。
【0081】
結果、圧迫中の神経活動電位の振幅は、持続圧迫、反復圧迫ともにほぼ同等に低下した。解除後は、反復圧迫において神経活動電位の振幅の回復が遷延した。
【0082】
以上のように、本発明である微小組織反復圧迫装置1は、動物の末梢神経や血管などの束状で連続性のある微小組織を切断することなく反復的に圧迫することができ、それに伴う障害の評価が可能となる。
【0083】
また、空気圧を利用して、規則的なサイクルで、一定の部位に対し定量的な圧迫を加えるに際して、限られたスペースの中で他の機器と干渉することなく、圧迫以外の刺激を与えずに圧迫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明である微小組織反復圧迫装置の全体図である。
【図2】本発明である微小組織反復圧迫装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明である微小組織反復圧迫装置の圧迫器の斜視図である。
【図4】本発明である微小組織反復圧迫装置の圧迫器の平面図及び断面図である。
【図5】本発明である微小組織反復圧迫装置の圧迫器の上部材の平面図、正面図及び側面図である。
【図6】本発明である微小組織反復圧迫装置の圧迫器の中部材材の平面図、正面図及び側面図である。
【図7】本発明である微小組織反復圧迫装置の圧迫器の下部材の平面図、正面図及び側面図である。
【図8】本発明である微小組織反復圧迫装置の圧迫器のシリコンゴムの正面図である。
【図9】本発明である微小組織反復圧迫装置の圧迫器で組織を圧迫した状態を示す図である。
【図10】本発明である微小組織反復圧迫装置の反復圧迫の波形を示すグラフである。
【符号の説明】
【0085】
1 微小組織反復圧迫装置
2 圧迫器
2a 平面図
2b 断面図
2c 断面図
2d 解除
2e 圧迫
3 固定器
4 コンプレッサー
5 リリーフ弁
6 圧力センサ
7 圧レギュレータ
8 電磁バルブ
9 プログラム式コントローラ
10 コンピュータ
10a インタフェース
10b 記憶装置
10c 中央処理装置
10d 出力装置
10e ラダープログラム
10f 解析プログラム
10g 変換データ
10h データ解析
10i モニタ表示
10j モニタ
11 圧トランスデューサ
12 接続部材
12a 注入口
12b 気道
12c 差込口
13 上部材
13a 平面図
13b 正面図
13c 側面図
13d 差込孔
13e ネジ穴
13f ネジ穴
13g ネジ穴
13h ネジ穴
13i ネジ穴
13j ネジ穴
14 中部材
14a 平面図
14b 正面図
14c 左側面図
14d 右側面図
14e シリコンゴム
14f 気室
14g 突出部
14h ネジ穴
14i ネジ穴
14j ネジ穴
14k ネジ穴
14l ネジ穴
14m ネジ穴
14n 溝
14o 孔
14p 孔
14q ネジ穴
14r ネジ穴
14s 膨張面
15 下部材
15a 平面図
15b 正面図
15c 側面図
15d 凹部
15e ネジ穴
15f ネジ穴
16 ネジ
16a ネジ
16b ネジ
17 微小組織
18 空気圧供給
18a 圧力調整
18b 開閉
18c 転送
18d 信号変換
18e 膨張
18f 放出
19 グラフ
19a 波形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に差込孔を有する上部材と、前記上部材の下側に連結され、内側に上面が空き下面が膨張可能なシリコンゴムを有する中部材と、前記中部材の下側に取り外し可能に連結され、微小組織を置くための凹部を設けた下部材とからなり、前記上部材に取り付けた接続部材を通じて、前記中部材に空気圧を送り込むことによりシリコンゴムを膨張させ、前記下部材の凹部に置いた微小組織に圧力を加えることを特徴とする圧迫器。
【請求項2】
固定器で固定され微小組織に圧力を加える請求項1に記載の圧迫器と、前記圧迫器に対する空気圧の供給をリリーフ弁を使用して持続的に行うコンプレッサーと、前記コンプレッサーから供給された空気圧を検出する圧力センサと、前記圧力センサで検出した値を元に前記圧迫器に供給する圧力を調節する圧レギュレータと、前記圧迫器への空気圧の供給又は解除を切り替える電磁バルブと、前記電磁バルブの開閉を制御するプログラム式コントローラと、前記プログラム式コントローラに動作を自動化するためのプログラムを転送するとともに、前記圧力センサの値を圧トランスデューサにより信号を変換したデータを解析してモニタに表示するコンピュータとからなることを特徴とする微小組織反復圧迫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−296650(P2006−296650A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121178(P2005−121178)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年3月3日から4日 国立大学法人大阪大学主催の「平成16年度 大阪大学総合技術研究会」において文書をもって発表
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)