説明

微小部品の整列装置および整列方法

【課題】整列板の振動源として超音波振動子を用いた実用的な微小部品の整列装置を提供すること。
【解決手段】微小部品を所定方向に向けて収容することのできる多数の透孔11を整列配置して備え、かつ下面に易剥離性表面を持つ整列板12、整列板12の周縁部から上方に伸びるように形成された枠体13、整列板12の下面に接触下に配置された上面が粘着性を示す粘着シート14、粘着シート14の下面に接触下に配置された支持板15、そして支持板15の下面に配置された超音波振動子16、16を含む微小部品の整列装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、チップ型電子部品に代表される微小なサイズの部品を整列させるため有利に用いることができる微小部品の整列装置、そして前記の整列装置を用いた微小部品の整列方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、チップ型電子部品(微小電子部品)の端部に電極層を形成する工程においては、例えば、多数のチップ型電子部品を、粘着シートの粘着面に各々の電子部品がその一方の端部にて粘着固定された状態にて整列配置し、そして粘着シートを支持しながら各々の電子部品の他方の端部を所定の厚みに塗布された導電性ペースト中に浸漬することにより、多数の電子部品に同時に電極層が形成されている。
【0003】
このように、多数のチップ型電子部品に同時に電極層を形成するため、粘着シートの粘着面に多数の電子部品を整列配置する装置(以下、整列装置という)が用いられている。このような整列装置は、チップ型電子部品に代表される微小電子部品に限らず、例えば、多数の精密機械部品(微小部品)を、粘着シートの粘着面に整列配置された状態にて同時に表面処理(例えば、塗装)するために用いることもできる。
【0004】
特許文献1には、例えば、上面に粘着面が設けられた保持治具、この保持治具の上方にスペーサを介して前記保持治具と間隔をあけて配置されている、多数の整列穴(透孔)を有する整列板、そして整列板の周縁部から上方に伸びるように形成された枠部(枠体)を備えるチップ型電子部品の整列保持装置(整列装置)が開示されている。そして前記の保持治具としては、例えば、金属板のような硬質板(支持板)の上面に粘着ラバー(粘着シート)を貼り付けたものが用いられている。
【0005】
同文献の整列装置では、その整列板を振動あるいは揺動させることにより、整列板の上面に供給された多数のチップ型電子部品を、整列板の透孔に収容して整列配置させると共に、透孔に収容された各々の電子部品の一方の端部(底部)を粘着シートに粘着固定させる。そして、多数のチップ型電子部品が整列配置された粘着シートから整列板(および枠体)を分離したのち、粘着シート及び支持板(保持治具)を支持しながら、粘着シートに粘着固定された各々の電子部品の他方の端部を所定の厚みに塗布された導電性ペースト中に浸漬することにより、多数の電子部品に同時に電極層が形成される。
【0006】
一般に、このような公知の整列装置においては、整列板を機械的に振動させる(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−347656号公報
【特許文献2】特開平8−72819号公報(段落番号[0010]、第1−2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように、従来の整列装置では、整列板の透孔に微小部品(チップ型電子部品)を収容させるために整列板を機械的に振動させる。このような機械的な振動はその振幅が大きいため、前記のように整列板を機械的に振動させた場合に、整列板の上面に供給された微小部品が別の微小部品、整列板の透孔の開口周縁部、あるいは枠体の内側面に強く衝突して、微小部品に大きな衝撃が付与され易い。このような衝撃は、直ちに微小部品に破損を生じさせるものではないが、なるべく小さいことが望ましい。また、微小部品のサイズが小さくなると、大きな衝撃が付与された微小部品が整列板の上を飛び跳ねるように移動することがあるため、微小部品を整列板の透孔に収容するために必要な時間、すなわち微小部品を整列するために必要な時間が長くなる傾向にある。
【0008】
本発明の課題は、整列板の振動源として超音波振動子を用いた実用的な微小部品の整列装置、および前記整列装置を用いた実用的な微小部品の整列方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、先ず前記の特許文献1の整列装置の整列板の振動源として超音波振動子を用いることについて検討した。その結果、整列板の下面に超音波振動子を付設することは整列板とこの整列板の下側にある粘着シート(保持治具を構成する粘着ラバー)との間隔が非常に小さいために困難であり、また粘着シートの下面に備えられている支持板(保持治具を構成する硬質板)の下面には超音波振動子を付設することは可能であるが、超音波振動子にて発生させた超音波振動が、支持板から粘着シートに伝達した際に粘着シートの上面(粘着シートの上面とこの上面に接触配置している空気との界面)にて反射されてしまうため、整列板に超音波振動を付与することが困難であることも判明した。
【0010】
ここで、前記のように支持板の下面に超音波振動子を付設した上で、整列板と粘着シートとを互いに接触(密着)させ、前記の粘着シートの上面に接触する空気を排除することにより、超音波振動子にて発生させた超音波振動を、支持板、そして粘着シートを介して整列板に良好に伝達させ、整列板の上面に供給された微小部品を整列板の透孔に収容して整列配置させることができる。しかしながら、整列板が粘着シートに粘着固定されているため、この粘着シートから、粘着シートに粘着固定された微小部品を脱落させることなく整列板を分離することが難しい。
【0011】
そして本発明者は、更に検討を進め、下面に易剥離性表面を持つ整列板を用いて、粘着シートの上面の粘着面に、前記整列板の易剥離性表面を接触させて両者を互いに十分に密着させることにより、超音波振動の整列板への良好な伝達と、そして粘着シートからの整列板の分離との両者を実現可能とする実用的な整列装置および整列方法を提供できることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
従って、本発明は、微小部品を所定方向に向けて収容することのできる多数の透孔を整列配置して備え、かつ下面に易剥離性表面を持つ整列板、整列板の周縁部から上方に伸びるように形成された枠体、整列板の下面に接触下に配置された上面が粘着性を示す粘着シート、粘着シートの下面に接触下に配置された支持板、そして支持板の下面に配置された超音波振動子を含む微小部品の整列装置にある。
【0013】
本発明の微小部品の整列装置の好ましい態様は、次の通りである。
a)枠体と整列板とが互いに分離可能に構成されている。
b)支持板の下面にマグネットが固定されている。
c)超音波振動子がランジュバン型超音波振動子である。
【0014】
本発明はまた、下記の(1)〜(4)の工程を含む微小部品の整列方法にもある。
(1)微小部品を所定方向に向けて収容することのできる多数の透孔を整列配置して備え、かつ下面に易剥離性表面を持つ整列板、整列板の周縁部から上方に伸びるように形成された枠体、整列板の下面に接触下に配置された上面が粘着性を示す粘着シート、粘着シートの下面に接触下に配置された支持板、そして支持板の下面に配置された超音波振動子を含む整列装置を用意する工程。
(2)整列板の上面に多数の微小部品を供給する工程。
(3)超音波振動子に電気エネルギーを付与して超音波振動子にて超音波振動を発振させ、この超音波振動を粘着シートを介して整列板に伝達することにより、整列板の上面に供給された微小部品を整列板の透孔に収容すると共に、透孔に収容された微小部品の底部を粘着シートに粘着固定させる工程。
(4)上面に微小部品が整列配置された粘着シートから、枠体と整列板とを分離する工程。
【0015】
本発明の微小部品の整列方法の好ましい態様は、次の通りである。
a)超音波振動子に付与する電気エネルギーの大きさを調節することにより、整列板を1乃至10μmの範囲内の振幅にて超音波振動させる。
b)微小部品が微小電子部品である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の微小部品の整列装置および整列方法は、超音波振動子にて発生させた超音波振動の整列板への良好な伝達と、微小部品が整列配置された粘着シートからの整列板の分離との両者を可能とする実用的なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
先ず、本発明の微小部品の整列装置を、添付の図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明の微小部品の整列装置の構成例を示す斜視図である。但し、図1に示す整列装置10は、基台19に設置されているモータ20の回転軸20aに固定された支持台21から上方へと伸びる一対の支柱22、22に支持された状態にて記入してある。また、図2は、図1に示す装置の側面図であり、そして図3は、図2に示す装置を図の左側から見た図である。そして図4及び図5は、それぞれ図1に示す整列装置10の拡大図及び分解斜視図である。
【0019】
図1〜図5に示す本発明の微小部品の整列装置10は、微小部品を所定方向に向けて収容することのできる多数の透孔11、11、〜を整列配置して備え、かつ下面に易剥離性表面を持つ整列板12、整列板12の周縁部から上方に伸びるように形成された枠体13、整列板12の下面に接触下に配置された上面が粘着性を示す粘着シート14、粘着シート14の下面に接触下に配置された支持板15、そして支持板15の下面に配置された超音波振動子16、16などから構成されている。
【0020】
この整列装置10の構成の理解を容易とするため、先ず整列装置10を用いた微小部品の整列方法(本発明の微小部品の整列方法)について、添付の図6を参照しながら説明する。
【0021】
本発明の微小部品の整列方法は、下記(1)〜(4)の工程を実施することからなる。
(1)例えば、チップ型電子部品(微小部品)を所定方向に向けて収容することのできる多数の透孔11、11、〜を整列配置して備え、かつ下面に易剥離性表面を持つ整列板12、整列板12の周縁部から上方に伸びるように形成された枠体13、整列板12の下面に接触下に配置された上面が粘着性を示す粘着シート14、粘着シート14の下面に接触下に配置された支持板15、そして支持板15の下面に配置された超音波振動子16、16を含む整列装置10を用意する工程(図6(A)参照)。
(2)整列板12の上面に多数のチップ型電子部品17を供給する工程(図6(B)参照)。
(3)超音波振動子16、16に、例えば、交流電源18にて発生させた電気エネルギーを付与して各々の超音波振動子16にて超音波振動を発振させ、この超音波振動を粘着シート14を介して整列板12に伝達することにより、整列板12の上面に供給された電子部品17を整列板12の透孔11に収容すると共に、透孔11に収容された電子部品17の底部を粘着シート14に粘着固定させる工程(図6(C)参照)。
(4)上面に電子部品17が整列配置された粘着シート14から、枠体13と整列板12とを分離する工程(図6(C)及び図6(D)参照)。
【0022】
そして前記の特許文献1の整列装置を用いる場合と同様にして、前記の図6(A)に示す粘着シート14を支持しながら、粘着シート14に粘着固定された各々のチップ型電子部品17の粘着シート14の側とは逆側の端部を所定の厚みに塗布された導電性ペースト中に浸漬することにより、多数の電子部品17、17、〜に同時に電極層を形成することができる。
【0023】
なお、上記の本発明の微小部品の整列方法には、前記(2)の工程の前に、予め超音波振動子16、16に電気エネルギーを付与して各々の超音波振動子16にて超音波振動を発振させておき、次に前記(2)の整列板12の上面に多数のチップ型電子部品(微小部品)17を供給する工程を実施し、そして前記(3)の工程を実施する方法、すなわち上記(2)の工程の前後を通じて超音波振動子16、16にて超音波振動を継続的に発振させる方法も含まれる。
【0024】
次に、本発明の微小部品の整列装置の構成について、添付の図1〜図5を参照しながら詳しく説明する。
【0025】
図1〜図5に示す整列装置10の整列板12には、直径が0.2mmで、長さが0.4mmの円柱状のチップ型電子部品を所定方向に向けて収容することのできる多数の透孔11、11、〜が形成されている。整列板12の各々の透孔11の直径は、前記の円柱状のチップ型電子部品が、その長さ方向を上下方向に一致させて(所定方向に向けて)収容されるように、前記の電子部品の直径よりも大きく、電子部品の長さよりも小さな値に設定される。そして各々の透孔11の長さ、すなわち整列板12の厚みは、通常、チップ型電子部品の頂部が整列板12の上面から突き出ないように、チップ型電子部品の長さよりも大きな値に設定される。透孔11に収容されたチップ型電子部品の頂部が整列板12の上面から突き出ていると、整列板12の上面に供給された前記とは別の電子部品の移動が妨げられるからである。
【0026】
整列板12は、例えば、アルミニウム、あるいはステンレススチールに代表される金属材料から形成される。整列板には、微小部品を所定方向に向けて収容することのできる多数の透孔が形成される。
【0027】
整列板12の透孔のサイズは、微小部品が所定方向に向けられて収容されるように、整列対象の微小部品のサイズに応じて設計される。整列板の透孔のサイズ(例えば、円柱形の透孔であれば、その直径や長さ)は、公知の整列装置の場合と同様にして設計することができる。
【0028】
そして、整列板12は、その下面に易剥離性表面を備えている。これにより、前記の図6(C)に示すように上面にチップ型電子部品(微小部品)17が整列配置された粘着シート14から、枠体13と整列板12とを、電子部品17が粘着シート14に粘着固定された状態のまま分離することが可能になる。
【0029】
前記のようにチップ型電子部品(微小部品)が整列配置された粘着シート14から整列板12を分離する際に、粘着シート14と整列板12とが強固に粘着されていると、両者を分離する際に粘着シート14及び/又は整列板12が大きく湾曲する。このため、粘着シート14に粘着固定された電子部品が、整列板12の透孔11の内面に接触して粘着シート14から脱落することがある。
【0030】
そして本発明の整列装置の整列板が備える易剥離性表面とは、前記のように粘着シートと整列板とを分離する際に、粘着シート及び/又は整列板に、粘着シートに粘着固定された微小部品(例、チップ型電子部品)を脱落させるほどの大きな湾曲を生じさせない状態にて、粘着シートの上面(粘着面)から容易に剥離できる表面であることを意味する。
【0031】
整列板の易剥離性表面の剥離性は、例えば、粘着シート及び整列板の各々の弾性率、粘着シートの上面(粘着面)を形成する材料、あるいは粘着シートと微小部品との粘着力などの様々な条件に依存する。このため、整列板が備える易剥離性表面を定量的に定義することは困難である。しかしながら、例えば、微小部品が粘着固定された粘着シートと、各種材料から形成された整列板とを分離する実験を行なうことにより、易剥離性表面を形成するのに適した材料を容易に選定することができる。
【0032】
易剥離性表面は、例えば、粘着シートに対して小さな粘着力を示す材料から形成することが簡便である。このような材料の代表例としては、剥離紙の剥離面を構成するシリコーン樹脂やポリオレフィン樹脂、あるいはフッ素樹脂が挙げられる。整列板の全体を、前記のポリオレフィン樹脂あるいはフッ素樹脂から形成することもできる。
【0033】
また、易剥離性表面として、整列板の下面に、粘着シートと整列板との粘着力を低下させる材料(油脂、ワックスなど)を塗布し、この塗布膜の表面を用いることもできる。
【0034】
さらに、例えば、下面に微細な凹凸が形成された整列板、あるいは透孔と透孔との間隔が小さな値に設定された整列板を用いることにより、粘着シートと整列板との接触面積、すなわち粘着力を小さくすることができるため、このような整列板の下面を易剥離性の表面として用いることもできる。
【0035】
図4に示すように、前記の整列板12の上面には、整列板12の周縁部から上方に伸びるように形成された枠体13が配置される。この枠体13は、整列板12の上面に供給されたチップ型電子部品(微小部品)が整列板12の周縁外側から落下することを防止する。枠体13は、例えば、アルミニウムあるいはステンレススチールに代表される金属材料から形成される。なお、前記枠体13と整列板12とは一体に形成されていてもよい。
【0036】
一方、前記の整列板12の下面には、上面が粘着性を示す粘着シート14が、両者が互いに接触した状態にて配置される。このように、粘着シート14を整列板12の下面に接触下に配置することにより、両者の間から超音波振動の伝達を妨げる空気を排除することができる。このため、各々の超音波振動子16にて発生させた超音波振動が、粘着シート14を介して整列板12に十分に伝達するようになる。
【0037】
粘着シート14としては、公知の整列装置の場合と同様の粘着シート、例えば、前記の特許文献1に記載の保持治具の粘着ラバー、あるいは表面に粘着剤が塗布された樹脂フィルムなどを用いることができる。粘着シート14としては、粘着性シリコーンゴムから形成された粘着シート(例えば、シンエツ粘着プレート:HSP、信越ポリマー(株)製)を用いることが好ましい。
【0038】
このように、整列装置10においては、下面に易剥離性表面を持つ整列板12を用い、この整列板12の易剥離性表面を粘着シート14の上面(粘着面)に接触させて両者を互いに十分に密着させることにより、超音波振動の整列板12への良好な伝達と、そして粘着シート14からの整列板12の分離との両者を可能としている。
【0039】
そして、粘着シート14の下面には、粘着シート14の下面と接触した状態にて支持板15が配置される。このように、支持板15を粘着シート14の下面に接触下に配置することにより、各々の超音波振動子16にて発生させた超音波振動を、支持板15、そして粘着シート14を介して整列板12に十分に伝達させることができる。支持板15は、例えば、アルミニウムあるいはステンレススチールに代表される金属材料から形成される。
【0040】
支持板15の下面には、例えば、接着剤やボルトなどを用いて、超音波振動子が配置固定される。超音波振動子としては、例えば、圧電振動子やランジュバン型超音波振動子に代表される電歪振動子、あるいは磁歪振動子などの公知の超音波振動子を用いることができる。超音波振動子としては、発生する超音波振動の振幅が大きいことから、ランジュバン型超音波振動子を用いることが好ましい。
【0041】
図3に示すように、整列装置10の各々の超音波振動子16としては、圧電振動子23a及び23bを上部金属部材24aと下部金属部材24bとで挟んだ状態にてボルト締めしてなる公知のランジュバン型超音波振動子が用いられている。各々のランジュバン型超音波振動子16には、交流電源(超音波発振器)18が電気的に接続される。図3に示すように、交流電源18は、予め整列装置10に備え付けられていることが好ましい。
【0042】
ランジュバン型超音波振動子(超音波振動子)16が備える圧電振動子23a、23bの各々は、円環状の圧電体の上下の各々の表面に電極層が付設された構成を有している。圧電振動子23a、23bの各々の圧電体は、例えば、その厚み方向に且つ互いに逆向きの方向に分極処理される。そして、ランジュバン型超音波振動子の前記ボルトは、各々の円環状の圧電振動子の中央を圧電振動子に非接触に貫通した状態にて、上側金属部材24aと下側金属部材24bとを互いに締め付けて固定している。
【0043】
このため、例えば、図3に示すように各々のランジュバン型超音波振動子16の圧電振動子23aの上下の各々の表面に付設された電極層の間に、交流電源18にて発生させた電気エネルギー(交流電圧)を付与すると、圧電振動子23aが超音波振動を発振し、その一方で、前記のように上側金属部材24a及び下側金属部材24bが前記ボルトを介して互いに電気的に接続されているため、前記の電気エネルギーが圧電振動子23bにも付与されて、圧電振動子23bもまた超音波振動を発振する。このように圧電振動子23a、23bの各々にて超音波振動子を発振させることにより、各々のランジュバン型超音波振動子16にて、例えば、5μm程度の振幅を持つ超音波振動を発振させることができる。
【0044】
そして、各々のランジュバン型超音波振動子16にて発振した超音波振動は、支持板15、そして粘着シート14を介して整列板12に伝達し、これにより整列板12が超音波振動する。整列板12が超音波振動すると、整列板12とその上面に供給されたチップ型電子部品(微小部品)との摩擦抵抗が大幅に低減するため、この電子部品は整列板12の上面を滑るように移動して整列板12の透孔11に収容されると共に、その底部が粘着シート14に粘着固定される。
【0045】
整列板12に付与する超音波振動の周波数、すなわち各々の超音波振動子(ランジュバン型超音波振動子16)にて発振させる超音波振動の周波数は、15乃至70kHzの範囲内にあることが好ましい。超音波振動の周波数が15kHz未満であると整列装置にて騒音が発生し易く、そして70kHzを超えると超音波振動子にて発生させた超音波振動が、粘着シートの内部にて大きく損失して整列板に伝達し難くなる。
【0046】
また、各々の超音波振動子にて発振させる超音波振動の振幅(すなわち超音波振動子に付与する電気エネルギーの大きさ)を調節することにより、整列板を1乃至10μmの範囲内の振幅にて超音波振動させることが好ましい。整列板の超音波振動の振幅が1μm未満であると、整列板とその上面に供給される微小部品(チップ型電子部品)との摩擦抵抗が増加するため、整列板上における微小部品の移動が不十分になる。その一方で、整列板の超音波振動の振幅が10μmを超えると、整列板から微小部品に大きな衝撃が付与され、この微小部品が整列板の上を飛び跳ねるように移動するようになるため、微小部品を整列板の透孔に収容するために必要な時間、すなわち微小部品を整列するために必要な時間が長くなる傾向にある。
【0047】
そして、本発明の整列装置には、微小部品を整列するために必要な時間を短くするため、整列装置を、例えば、整列板の表面に平行な軸を中心として揺動させる装置(以下、揺動駆動装置という)が備えられていることが好ましい。
【0048】
例えば、図1〜図3に示す整列装置10には、基台19の上に設置されているモータ20、このモータ20の回転軸20aに固定された支持台21、そして支持台21から上方へと伸びる、整列装置10を支持する一対の支柱22、22からなる揺動駆動装置が備えられている。
【0049】
この揺動駆動装置のモータ20を駆動して、その回転軸20aの正転及び逆転を繰り返すことにより、整列装置10の整列板12は、モータの回転軸20aを中心に揺動する。そして、前記のように整列板に超音波振動を付与しながら整列板を揺動させることにより、チップ型電子部品(微小部品)が整列板12の表面を滑るように往復する移動を繰り返すため、電子部品を整列するために必要な時間を短くすることができる。また、電子部品が整列板12の上面を広範囲に移動するため、電子部品の整列板12の透孔11の内部への充填率(整列の作業を終了した際に内部に電子部品が収容されている透孔11の数/整列板12が備える透孔11の全数)を高くすることができる。
【0050】
図7は、本発明の微小部品の整列装置の別の構成例を示す断面図である。
【0051】
図7の整列装置70の構成は、その整列板72が備える透孔71、71、〜の形状が異なること以外は図1〜図5に示す整列装置10と同様である。
【0052】
図7に示すように、整列板72の各々の透孔71の粘着シート14の側の開口の径を大きな値に設定することにより、整列板72の下面(易剥離性表面)と粘着シート14の上面との接触面積、すなわち粘着力を小さくすることができるため、粘着シート14から整列板72を分離することが容易になる。このように、整列板の透孔の形状を工夫することにより、この整列板の下面を易剥離性表面として用いることができる。
【0053】
同様に、整列板の下面と粘着シートの上面との接触面積を小さくするため、例えば、透孔と透孔との間隔を小さな値に設定した整列板を、その下面を易剥離性の表面として用いることができる。
【0054】
図8は、本発明の微小部品の整列装置の更に別の構成例を示す断面図であり、そして図9は、図8の整列装置80の底面図である。
【0055】
図8及び図9に示す整列装置80の構成は、整列板12及び支持板15の各々が金属材料に代表される導電性材料から形成され、かつ粘着シート14が樹脂材料に代表される絶縁性材料から形成されていること、各々の超音波振動子86として矩形の圧電振動子板が用いられていること、そして支持板15に付設された電極端子35と、整列板12に付設された電極端子32との間に直流電源88が電気的に接続されていること以外は図1〜図5に示す整列装置10と同様である。
【0056】
図8及び図9に示すように、超音波振動子86として圧電振動子(前記の矩形の圧電振動子板)を用いると装置構成が簡単になり、また装置のサイズ(高さ)を小さくすることができる。
【0057】
そして前記の直流電源88にて発生させた直流電圧を、電極端子32及び電極端子35の各々を介して整列板12及び支持板15の間に付与すると、両者が静電力により互いに引き合うため、整列板12、粘着シート14、および支持板15を十分に密着させることができる。このため、超音波振動子86、86にて発生させた超音波振動を、支持板15、そして粘着シート14を介して整列板12に効率良く伝達させることができる。
【0058】
このように、本発明の整列装置においては、整列板及び支持板の各々が導電性材料から形成され、かつ粘着シートが絶縁性材料から形成されており、そして前記整列板と支持板との間に直流電源が電気的に接続されていることが好ましい。
【0059】
図10は、本発明の微小部品の整列装置の更に別の構成例を示す断面図である。
【0060】
図10の整列装置100の構成は、粘着シート104が、例えば、アルミニウムなどの金属材料に代表される導電性材料から形成された導電性シート104a、および導電性シート104aの上下の各々の面に備えられている、例えば、粘着性樹脂材料に代表される絶縁性材料から形成された絶縁性粘着層104bからなり、そして前記の導電性シート104aと、整列板12及び支持板15の各々との間に直流電源88が電気的に接続されていること以外は図8の整列装置80と同様である。
【0061】
図10に示すように、粘着シート104の上下の各々に粘着層104bが備えられていると、整列板12と粘着シート104、そして粘着シート104と支持板15とを、それぞれ十分に密着させることができるため、超音波振動子86、86にて発生させた超音波振動を、支持板15、そして粘着シート104を介して整列板12に効率良く伝達させることができる。
【0062】
また、前記の直流電源88にて発生させた直流電圧を、電極端子32、電極端子34、および電極端子35の各々を介して導電性シート104aと整列板12及び支持板15の各々との間に付与すると、導電性シート104aと整列板12及び支持板15の各々とが静電力により互いに引き合うため、整列板12、粘着シート104、および支持板15を十分に密着させることができる。このため、超音波振動子86、86にて発生させた超音波振動を、支持板15、そして粘着シート104を介して整列板12に効率良く伝達させることができる。
【0063】
このように、本発明の整列装置においては、整列板及び支持板の各々が導電性材料から形成され、かつ粘着シートが導電性シートと、この導電性シートの上下の各々の面に備えられた絶縁性粘着層からなり、そして前記の導電性シートと、整列板及び支持板の各々との間に直流電源が電気的に接続されていることが好ましい。
【0064】
図11は、本発明の微小部品の整列装置の更に別の構成例を示す断面図であり、そして図12は、図11の整列装置110の底面図である。
【0065】
図11及び図12に示す整列装置110の構成は、整列板12及び支持板15の各々が、例えば、軟磁性を示すステンレススチールに代表される磁性材料から形成されていること、そして支持板15の下面の超音波振動子16、16が固定されていない表面領域にマグネット(例えば、電磁石)119、119、〜が固定されていること以外は図1〜図5に示す整列装置10と同様である。
【0066】
この整列装置110の支持板15の下面に固定された各々の電磁石(マグネット)119を駆動すると、整列板12及び支持板15の各々が磁力によって電磁石119の側に引き寄せられるため、整列板12、粘着シート14、および支持板15を十分に密着させることができる。このため、超音波振動子16、16にて発生させた超音波振動を、支持板15、そして粘着シート14を介して整列板12に効率良く伝達させることができる。
【0067】
このように、本発明の整列装置においては、整列板及び支持板の各々が磁性材料からなり、そして支持板の下面の超音波振動子が固定されていない表面領域にマグネットが固定されていることが好ましい。
【0068】
図13は、本発明の微小部品の整列装置の更に別の構成例を示す断面図である。
【0069】
図13の整列装置130の構成は、粘着シート134が、例えば、軟磁性を示すステンレススチールに代表される磁性材料から形成された磁性シート134a、および磁性シート134aの上下の各々の面に備えられた粘着層134b、134bから構成されていること以外は図11及び図12に示す整列装置110と同様である。
【0070】
この整列装置130の支持板の下面に固定された各々の電磁石(マグネット)119を駆動すると、整列板12、磁性シート134a、および支持板15の各々が磁力によって電磁石119の側に引き寄せられるため、整列板12、粘着シート134、および支持板15を十分に密着させることができる。このため、超音波振動子16、16にて発生させた超音波振動を、支持板15、そして粘着シート134を介して整列板12に効率良く伝達させることができる。
【0071】
このように、本発明の整列装置においては、整列板及び支持板の各々が磁性材料からなり、かつ粘着シートが、磁性材料からなる磁性シートと、この磁性シートの上下の各々の面に備えられた粘着層からなり、そして支持板の下面の超音波振動子が固定されていない表面領域にマグネットが固定されていることが好ましい。
【0072】
図14は、本発明の微小部品の整列装置の更に別の構成例を示す断面図であり、そして図15は、図14の整列装置140の底面図である。
【0073】
図14及び図15に示す整列装置140の構成は、各々の超音波振動子146として円形の圧電振動子板が用いられていること、支持板15の内部にヒータ149が備えられていること、そして前記のヒータ149に、電極端子35、35を介して交流電源(あるいは直流電源)148が電気的に接続されている以外は図1〜図5に示す整列装置10と同様である。
【0074】
図14及び図15に示すように、各々の超音波振動子146として用いる圧電振動子(前記の円形の圧電振動子板)の形状に特に制限はない。但し、円形あるいは矩形の圧電振動子は、その製造が容易である利点を有している。
【0075】
そして前記の交流電源148にて発生させた交流電圧を付与してヒータ149を作動させることにより、粘着シート14が加熱され、その粘着力が大きくなるため、整列板12と粘着シート14とを十分に密着させることができる。このため、超音波振動子146、146にて発生させた超音波振動を、支持板15、そして粘着シート14を介して整列板12に効率良く伝達させることができる。
【0076】
このように、本発明の整列装置においては、支持板がその内部にヒータを備え、そして前記のヒータに直流電源あるいは交流電源が電気的に接続されていることが好ましい。
【0077】
図16は、本発明の微小部品の整列装置の更に別の構成例を示す断面図である。
【0078】
図16の整列装置160の構成は、粘着シート164が、内部にヒータ149を備える(例えば、金属材料製の)発熱シート164a、および前記発熱シート164aの上下の各々に備えられた粘着層164bからなり、そして前記のヒータ149に、電極端子34、34を介して交流電源148が電気的に接続されていること以外は図1〜図5に示す整列装置10と同様である。
【0079】
そして前記の交流電源148にて発生させた交流電圧を付与してヒータ149を作動させることにより、粘着シート164の各々の粘着層164bが加熱され、その粘着力が大きくなるため、整列板12、粘着シート164、および支持板15を十分に密着させることができる。このため、超音波振動子146、146にて発生させた超音波振動を、支持板15、そして粘着シート164を介して整列板12に効率良く伝達させることができる。
【0080】
このように、本発明の整列装置においては、粘着シートが、内部にヒータを備える発熱シート及び発熱シートの上下の各々に備えられた粘着層からなり、そして前記のヒータに交流電源もしくは直流電源が電気的に接続されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の微小部品の整列装置の構成例を示す斜視図である。但し、図1に示す整列装置10は、基台19の上に設置されているモータ20の回転軸20aに固定された支持台21から上方へと伸びる一対の支柱22、22に支持された状態にて記入してある。
【図2】図1に示す装置の側面図である。
【図3】図2に示す装置を図の左側から見た図である。
【図4】図1に示す整列装置10の拡大図である。
【図5】図4の整列装置10の分解斜視図である。但し、図4に示す交流電源18は記入していない。
【図6】本発明の微小部品の整列方法を示す図である。
【図7】本発明の微小部品の整列装置の別の構成例を示す断面図である。但し、この図に示す整列装置70の超音波振動子16、16及び交流電源18の各々は、断面として記入していない。
【図8】本発明の微小部品の整列装置の更に別の構成例を示す断面図である。但し、この図に示す整列装置80の電極端子32、35、超音波振動子86、86、および電源18、88の各々は、断面として記入していない。
【図9】図8の整列装置80の底面図である。
【図10】本発明の微小部品の整列装置の更に別の構成例を示す断面図である。但し、この図に示す整列装置100の電極端子32、34、35、超音波振動子86、86、および電源18、88の各々は、断面として記入していない。
【図11】本発明の微小部品の整列装置の更に別の構成例を示す断面図である。但し、この図に示す整列装置110の超音波振動子16、16、マグネット119、119、〜、および交流電源18の各々は、断面として記入していない。
【図12】図11の整列装置110の底面図である。
【図13】本発明の微小部品の整列装置の更に別の構成例を示す断面図である。但し、この図に示す整列装置130の超音波振動子16、16、マグネット119、119、〜、および交流電源18の各々は、断面として記入していない。
【図14】本発明の微小部品の整列装置の更に別の構成例を示す断面図である。但し、この図に示す整列装置140の電極端子35、35、超音波振動子146、146、および交流電源18、148の各々は、断面として記入していない。
【図15】図14の整列装置140の底面図である。
【図16】本発明の微小部品の整列装置の更に別の構成例を示す断面図である。但し、この図に示す整列装置160の電極端子34、34、超音波振動子146、146、および交流電源18、148の各々は、断面として記入していない。
【符号の説明】
【0082】
10 整列装置
11 透孔
12 整列板
13 枠体
14 粘着シート
15 支持板
16 超音波振動子
17 チップ型電子部品(微小部品)
18 交流電源
19 基台
20 モータ
20a 回転軸
21 支持台
22 支柱
23a、23b 圧電振動子
24a、24b 金属部材
32、34、35 電極端子
70 整列装置
71 透孔
72 整列板
80 整列装置
86 超音波振動子
88 直流電源
100 整列装置
104 粘着シート
104a 導電性シート
104b 粘着層
110 整列装置
119 マグネット
130 整列装置
134 粘着シート
134a 磁性シート
134b 粘着層
140 整列装置
146 超音波振動子
148 交流電源
149 ヒータ
160 整列装置
164 粘着シート
164a 発熱シート
164b 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小部品を所定方向に向けて収容することのできる多数の透孔を整列配置して備え、かつ下面に易剥離性表面を持つ整列板、該整列板の周縁部から上方に伸びるように形成された枠体、該整列板の下面に接触下に配置された上面が粘着性を示す粘着シート、該粘着シートの下面に接触下に配置された支持板、そして該支持板の下面に配置された超音波振動子を含む微小部品の整列装置。
【請求項2】
枠体と整列板とが互いに分離可能に構成されている請求項1に記載の整列装置。
【請求項3】
支持板の下面にマグネットが固定されている請求項1に記載の整列装置。
【請求項4】
超音波振動子がランジュバン型超音波振動子である請求項1に記載の整列装置。
【請求項5】
下記の工程を含む微小部品の整列方法:
(1)微小部品を所定方向に向けて収容することのできる多数の透孔を整列配置して備え、かつ下面に易剥離性表面を持つ整列板、該整列板の周縁部から上方に伸びるように形成された枠体、該整列板の下面に接触下に配置された上面が粘着性を示す粘着シート、該粘着シートの下面に接触下に配置された支持板、そして該支持板の下面に配置された超音波振動子を含む整列装置を用意する工程;
(2)整列板の上面に多数の微小部品を供給する工程;
(3)超音波振動子に電気エネルギーを付与して該超音波振動子にて超音波振動を発振させ、この超音波振動を粘着シートを介して整列板に伝達することにより、整列板の上面に供給された微小部品を整列板の透孔に収容すると共に、透孔に収容された微小部品の底部を粘着シートに粘着固定させる工程;そして、
(4)上面に微小部品が整列配置された粘着シートから、枠体と整列板とを分離する工程。
【請求項6】
超音波振動子に付与する電気エネルギーの大きさを調節することにより、整列板を1乃至10μmの範囲内の振幅にて超音波振動させる請求項5に記載の整列方法。
【請求項7】
微小部品が微小電子部品である請求項5に記載の整列方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−173415(P2009−173415A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15312(P2008−15312)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(502257890)株式会社プロデュース (24)
【出願人】(394000493)ヒーハイスト精工株式会社 (76)
【Fターム(参考)】