説明

微生物における酵素活性の誘導および安定化

酵素活性を誘導し、かつ安定化させるための方法が提供される。選択に応じて、前記酵素は、酵素を作り出すことができる微生物に存在する。いくつかの実施形態では、前記酵素はニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、あるいはアスパラギナーゼIであり得る。誘導および/または安定化された活性を有する酵素または微生物を含む組成物が供給される。植物または植物の部分を誘導および/または安定化された活性を有する酵素または微生物にさらすことによって、植物の発達プロセスを遅らせる方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
微生物とそれらの酵素は種々の生成物の調製において生物触媒として利用されてきた。糖のエタノールへの発酵における酵母菌の作用は、即座に認識可能な例である。近年、酵素の使用が通常は当然であるとはみなされていない商業的な活動における微生物とそれらの酵素の使用に対しての関心が高まってきている。1つの例が、工業的プロセス、特に廃棄物の処理での微生物の使用である。
【0002】
実用的な生物学的触媒のためのキーエレメントである安定性は、多くの商業的用途でのニトリルヒドラターゼ及び/又はアミダーゼの使用に対して、重大な障害であった。酵素の安定性の改善については、固定化および化学的安定化剤が認知された方法であったが、現在の固定化および安定化技術は依然さらなる発展を必要としている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
酵素活性を誘導し、かつ安定化させるための方法が提供される。選択に応じて、前記酵素は、酵素を作り出すことができる微生物に存在する。いくつかの実施形態では、前記酵素はニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、あるいはアスパラギナーゼIであり得る。誘導および/または安定化された活性を有する酵素または微生物を含む組成物が供給される。植物または植物の部分を誘導および/または安定化された活性を有する酵素または微生物にさらすことによって、植物の発達プロセスを遅らせる方法も提供される。
【0004】
本発明の1以上の側面の詳細は、添付の図面および以下の詳細な説明で明らかにされる。他の特徴、目的、および利点は、詳細な説明、図面および特許請求の範囲の記載さから明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】アルギン酸カルシウムでの固定化によって提供されるニトリルヒドラターゼ活性に対する安定化効果を示すグラフである。
【図2】ポリアクリルアミドでの固定化によって提供されるニトリルヒドラターゼ活性に対する安定化効果を示すグラフである。
【図3】硬化された、ポリエチレンイミン架橋アルギン酸カルシウムまたはポリアクリルアミドでの固定化によって提供されるニトリルヒドラターゼ活性に対する安定化効果を示すグラフである。
【図4】グルタルアルデヒド架橋による固定化によって提供されるニトリルヒドラターゼ活性に対する安定化効果を示すグラフである。
【図5】アスパラギンで誘導されたロドコッカス種DAP96253細胞におけるアスパラギナーゼI活性を示すグラフである。
【図6】ブドウ糖、果糖、マルトース、マルトデキストリンを添加され、コバルトおよび尿素で誘導されたYEMEA上で増殖したロドコッカス種DAP96253細胞における、55℃でのニトリルヒドラターゼ活性に対する安定化効果を示すグラフである。
【図7】ブドウ糖、果糖、マルトース、マルトデキストリンを添加され、コバルトおよび尿素で誘導され、かつトレハロースで安定化されたYEMEA上で増殖したロドコッカス種DAP96253細胞における、55℃でのニトリルヒドラターゼ活性に対する安定化効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書において使用される、単数形「ある(a)」、「ある(an)」、「その/当該(the)」は、文脈上明確に別段の指定がない限り、複数の対象を包含するものとする。
【0007】
本明細書全体を通して、用語「含む」またはその文法上の変化形は、述べられた要素、整数、またはステップ、あるいは要素群、整数群、ステップ群を含むが、他の要素、整数、またはステップ、あるいは要素群、整数群、ステップ群を排除しないことを意味するものと理解されたい。
【0008】
本明細書においては、トレハロース、および選択に応じてアミド含有アミノ酸を含む培地および組成物の使用によって、微生物における酵素活性を誘導し、安定化させる方法が提供される。通常、ニトリルヒドラターゼを生成する微生物は、多数の有用な酵素の生成を誘導するために使用される。例えば、本明細書においては、ニトリルヒドラターゼを生成する微生物においてニトリルヒドラターゼ活性、アミダーゼ活性、アスパラギナーゼI活性、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された酵素活性を誘導する方法であって、トレハロースおよび、選択に応じて1以上のアミド含有アミノ酸を含む培地中で前記ニトリルヒドラターゼを生成する微生物を培養するステップを含む、方法が提供される。
【0009】
さらに、ニトリルヒドラターゼ、アスパラギナーゼI、およびアミダーゼなどの各種酵素の安定化を改善する方法が提供される。例えば、酵素または該酵素を生成可能な微生物における所望の活性を安定化させる方法であって、前記酵素または該酵素を生成可能な微生物と、トレハロースおよび1以上のアミド含有アミノ酸を含む組成物とを接触させるステップを含み、前記酵素は、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、およびアスパラギナーゼIからなる群から選択される、方法が提供される。
【0010】
商業的に有用なレベルの酵素活性を経時的に維持し得る生体無毒化触媒(特に、ニトリルヒドラターゼおよびアミダーゼのような酵素を含むもの)が提供される。前記生体無毒化触媒は、特に、本明細書に記載するように、生体触媒の酵素活性がそれらの環境によって誘導され、安定化され得ることを特徴とする。
【0011】
本明細書に記載する方法は、実用的な生体無毒化触媒において有用なレベルと安定性の両方を有する酵素活性を誘導するために用いられ得る。前記方法は、(限定しないが)グラム陽性微生物を含む微生物からアスパラギナーゼIをより高いレベルで誘導し、そのようなアスパラギナーゼI活性の安定度を改善する能力によってさらに特徴付けられる。
【0012】
本明細書において、酵素活性とは、通常は、ある化合物から他の化合物への変換のようなプロセスにおける触媒として作用する酵素の能力を指す。同様に、本明細書において参照される所望の活性には、1種以上の微生物によって能動的に発現されている1種以上の酵素の活性が含まれ得る。特に、ニトリルヒドラターゼは、ニトリル(またはシアノヒドリン)から対応するアミド(またはヒドロキシ酸)への加水分解を触媒する。アミダーゼは、アミドから対応する酸またはヒドロキシ酸への加水分解を触媒する。同様に、アスパラギナーゼIなどのアスパラギナーゼ酵素は、アスパラギンからアスパラギン酸への加水分解を触媒する。
【0013】
活性は、酵素または細胞の質量当りの「単位」で(典型的には細胞の乾燥重量に基づく質量に基づくもの、例えば単位/mg cdw)表すことができる。「単位」は、通常、時間の関数として、定められた条件の組の下で特定の量のある化合物を異なる化合物へ変換する能力を指す。選択に応じて、1「単位」のニトリルヒドラターゼ活性は、pH7.0、温度30℃で、細胞の重量(乾燥重量)1mgにつき1分間あたり1μmolのアクリルニトリルをその対応するアミドに変換する能力に関連するものとすることができる。同様に、1「単位」のアミダーゼ活性を、pH7.0、温度30℃で、細胞の重量(乾燥重量)1mgにつき1分間あたり1μmolのアクリルアミドをその対応する酸へ変換する能力に関連するものとすることができる。さらに、1「単位」のアスパラギナーゼI活性を、pH7.0、温度30℃で、細胞の重量(乾燥重量)1mgにつき1分間あたり、1μmolのアスパラギンをその対応する酸へ変換する能力に関連するものとすることができる。
【0014】
前記方法は、有害なニトリル(例えばアクリロニトリル)を環境に導入することなく、微生物の誘導と安定化を達成することができる点で特に有利である。以前は、特定の微生物における特定の酵素活性の誘導には、化学的誘導物質の添加が必要であると考えられていた。例えば、ロドコッカス・ロドクラウスおよびシュードモナス・クロロラフィスにおけるニトリルヒドラターゼ活性の誘導において、アセトニトリル、アクリロニトリル、アクリルアミドなどの有害な化学物質の添加が通常必要であった。トレハロースおよび、選択に応じて1以上のアミド含有アミノ酸およびそれらの誘導体などの非毒性の培地添加物を用いて、ニトリルヒドラターゼを生成する微生物において高い酵素活性を誘導し、安定化できることが発見された。選択に応じて、アスパラギン、グルタミン、またはそれらの組み合わせを誘導物質として使用し、例えばアセトニトリル、アクリロニトリル、アクリルアミドなどの有害化学物質を完全排除することができる。従って、商業的に有用な酵素や微生物を生成するための安全な方法、および例えば廃棄物流を無毒化する方法などにおけるそれらの使用が提供される。微生物の酵素活性を誘導し、安定化させるより安全な方法は、米国特許7,531,343号明細書および同7,531,344号明細書に記載されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0015】
好ましくは、開示された方法は、本明細書に記載する改変された培地、固定化、および安定化技術を用いて、多種の酵素、および当該酵素を生成可能な微生物の製造および安定性を有意に増加させる。例えば、トレハロース、および選択に応じてアミド含有アミノ酸、またはそれらの誘導体を含む培地を使用して、誘導および安定性を高めることができる。
【0016】
本明細書に記載する方法で使用するためのニトリルヒドラターゼを生成する微生物としては、以下に限定されないが、シュードモナス属、ロドコッカス属、ブレビバクテリウム属、シュードノカルジア属、ノカルジア属、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された細菌が挙げられる。選択に応じて、ニトリルヒドラターゼを生成する微生物は、ロドコッカス属である。選択に応じて、ロドコッカス属の微生物は、ロドコッカス・ロドクラウスDAP96622、ロドコッカス種DAP96253、またはそれらの組み合わせである。典型的な微生物としては、以下に限定されないが、シュードモナス・クロロラフィス(ATCC43051)(グラム陽性)、シュードモナス・クロロラフィス(ATCC13985)(グラム陽性)、ロドコッカス・エリスロポリス(ATCC47072)(グラム陽性)、およびブレビバクテリウム・ケトグルタミカム(ATCC21533)(グラム陽性)などが挙げられる。ノカルジア属およびシュードノカルジア属の例は、欧州特許第0790310号;Collins and Knowles J.Gen.Microbiol.129:711−718(1983); Harper Biochem.J.165:309−319(1977);Harper Int.J.Biochem.17:677−683(1985);Linton and Knowles J Gen.Microbiol.132:1493−1501(1986);およびYamaki et al.,J.Ferm.and Bioeng.83:474−477(1997)などに記載されている。
【0017】
微生物、特にニトリルヒドラターゼを生成する微生物において所望の酵素活性を誘導するために、当該微生物を培養する方法が提供される。いくつかの実施形態では、前記方法は、トレハロース、および選択に応じてアミド含有アミノ酸、またはそれらの誘導体を含む培地においてトリルヒドラターゼを生成する微生物を培養するステップを含む。選択に応じて、好ましくはアスパラギン、グルタミン、またはそれらの組み合わせを含む、トレハロース、および選択に応じてアミド含有アミノ酸、またはそれらの誘導体を添加した培地を用いて、ニトリル無毒化活性を誘導する方法が提供される。特に、前記方法は、培地において前記微生物を培養するステップと、選択に応じて、培養された微生物または当該微生物から生成された酵素を回収するステップとを含む。
【0018】
開示される方法は、望ましい酵素活性を誘導するために特に有用である。本明細書に記載するものを含めた多くの種類の微生物が、各種の活性を有する各種酵素を作り出すことができる。当分野で一般的に理解されるように、微生物培養で誘導される酵素活性の種類は、使用される微生物の株、使用される培養方法、および培地で使用される添加物によって変化し得る。本明細書に開示する方法および組成物により、トレハロースおよび、選択に応じてアミド含有アミノ酸、またはそれらの誘導体を使用することで、各種酵素活性を誘導することができる。選択に応じて、開示された方法および組成物により、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、およびアスパラギナーゼIからなる群から選択された1種以上の酵素の誘導が可能となる。
【0019】
いくつかの実施形態では、開示された方法および組成物により、ニトリルヒドラターゼおよびアミダーゼ両方を同時に誘導することが可能となる。これは、例えば、ニトリルを含有する廃棄物流の処理などの産業上の利用のために有用である。このような処理には、ニトリルをアミドに変換する第1の処理と、アミドを酸に変換する第2の処理とが必要である。ニトリルヒドラターゼとアミダーゼとを同時に作り出す能力によって、各酵素を別々に調製する必要がなくなり、1つの処理ステップで行うことが可能となる。
【0020】
提示された方法において、酵素の誘導および安定化は、有害なニトリルを用いることなく達成することができる。ニトリルヒドラターゼ活性などの多種の酵素活性の誘導では、従来はアセトニトリル、アクリロニトリル、コハク酸ニトリルなどのニトリル類の添加が行われていた。さらに、多種の誘導が望ましい場合(すなわち、1つの酵素において2種以上のニトリルを分解する活性の誘導)、有害なニトリル類を2種以上含めることが通常必要であった。本明細書に開示する方法では、トレハロースおよび/または1種以上のアミド含有アミノ酸またはその誘導体を酵素誘導物質および安定化剤として使用するため、1種または複数種の酵素の誘導の促進のために有害な化学物質が不要となる。特に、本明細書に記載する方法は、培地または混合物中においてトレハロースおよび/または1種以上のアミド含有アミノ酸またはその誘導体を用いることにより、多数種の誘導および安定化が可能である点で有利である。従って、本明細書の方法は特に、複数のニトリル含有化合物を分解する活性を有する酵素または微生物を調製するために特に有用である。さらに、前記方法は、1つのC≡N部分を有するニトリル、ジニトリル(2つのC≡N部分を有する化合物)、または多数のニトリル部分を有する化合物(例えばアクロレインシアノヒドリン)などの各種ニトリルまたはアミドを無毒化する能力を提供する。そのような酵素または微生物を、本明細書において多重誘導型と称する。
【0021】
開示された方法によって酵素活性誘導のための有害な化学物質の必要はなくなるが、そのような誘導物質のさらなる使用が排除されることはない。例えば、1種以上のニトリルを用いて特定の活性の発達を助けることができる。コハク酸ニトリルおよびコバルトを付加された培地は、例えばニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、およびアスパラギナーゼIを含む酵素の誘導のために有用であり得る。しかし、ニトリルを使用することが酵素活性の誘導に必要不可欠ではない。ニトリルおよび他の有害な化学物質の使用はたしかに好ましいものではないが、選択に応じてそのような使用も可能である。
【0022】
選択に応じて、前記方法および組成物は、既知の方法を用いて可能な程度より高いレベルで望ましい活性を誘導する能力を特徴とする。本明細書に記載の方法を用いて、誘導されたニトリルヒドラターゼを生成する微生物は、ニトリルを含有する化合物を含む培地で誘導されたときの同じ酵素の活性と同等またはより高いレベルの酵素活性を有する。例えば、誘導されたニトリルヒドラターゼを生成する微生物は、ニトリルを含有する化合物を含む培地で誘導されたときの同じ酵素の活性より少なくとも5%高いレベルの酵素活性を有する。選択に応じて、生成されるニトリルヒドラターゼ活性は、ニトリルを含有する化合物を含む培地で誘導された同じ微生物で生成される活性より、少なくとも10%、少なくとも12%、または少なくとも15%高いレベルである。
【0023】
排水の処理のための酵素の商業的使用は、各種酵素の他の商業的使用と同様に、誘導された活性の不安定性によって通常制限される。例えば、新鮮な細胞は、25℃では通常24時間以内にそれらの初期の活性の少なくとも50%を失うことになる。しがって、細胞を触媒として使用するときには、その細胞は必要時に作り出さなければならず、将来の使用に備えて保存しておくことはできない。ニトリルヒドラターゼ活性は、ニトリル含有化合物の添加によって安定化させることができるが、この場合も同様に、望ましくない有害な化学物質の使用が必要となる。ここに開示する方法および組成物は、この問題を解決する。例えば、誘導されたニトリルヒドラターゼ活性を有する細胞は最大1年間にわたって存続可能な酵素活性を有するように、有害な化学物質を必要とすることなく安定化させることができる。したがって、開示された方法および組成物は、酵素または該酵素を生成可能な微生物を安定化させ、該酵素の活性を、通常の有用な活性期間を大幅に超えて延長させる。
【0024】
したがって、酵素または該酵素を生成可能な微生物における所望の活性を安定化させる方法が提供される。そのような方法は、酵素または該酵素を生成可能な微生物を、トレハロースおよび、選択に応じて1種以上のアミド含有アミノ酸に接触させるステップを含む。トレハロースおよび1種以上のアミド含有アミノ酸またはそれらの誘導体は、例えば、微生物の培養時に微生物に加えるか、あるいは微生物または酵素を含む混合物中に加えることができる。選択に応じて、酵素または該酵素を生成可能な微生物の望ましい活性を安定化させ、その所望の活性が、25℃の温度で少なくとも30日後に、酵素または該酵素を生成可能な微生物によって示された初期の活性の少なくとも約50%のレベルで維持されるようにさせる。
【0025】
付着、捕捉、および架橋などの固定化方法によってさらなる安定化を達成し、もって酵素活性を使用できる期間を延ばすことができる。したがって、この方法は、微生物を少なくとも部分的に固定化するステップをさらに含む。酵素または該酵素を生成可能な微生物を固定化することによって安定化が得られる。例えば、誘導された微生物自体または微生物から回収された酵素を、誘導された活性の安定化手段として基体に固定化することができる。選択に応じて、ニトリルヒドラターゼ生成微生物を、少なくとも部分的に固定する。選択に応じて、酵素または微生物を少なくとも部分的に基体の表面に捕捉、または配置させる。これによって、誘導された活性(例えば触媒活性)を有する固定化された材料を、触媒を反応培地中において反応状態に維持すると同時に、触媒と目的の材料との反応および望ましい生成物の回収を容易にするような形で提示することが可能となる。
【0026】
酵素または微生物の付着のために通常有用な基質を用いることができる。選択に応じて、該基質はアルギン酸またはその塩を含む。アルギン酸は、β−D−マンヌロン酸(M)残基と、そのC−5エピマーであるα−L− グルロン酸(G)残基のホモポリマーブロックのそれぞれが(1-4)結合した直鎖状のコポリマーであって、2種の残基が互いに共有結合して異なる配列またはブロックを形成している。モノマーは、連続したG残基(Gブロック)、連続したM残基(Mブロック)、交互配置されたMG両残基(MGブロック)、またはランダムに配列されたブロックのホモポリマーブロックの形であらわれ得る。選択に応じて、アルギン酸カルシウムを基質として用いる。アルギン酸カルシウムは、例えばポリエチレンイミンなどと架橋されて、硬化アルギン酸カルシウムを形成することができる。さらに、そのような固定化技術の説明は、Bucke,”Cell Immobilization in Calcium Alginate,” Methods in Enzymology,vol.135,Part B(ed.K.Mosbach)pp.175−189(1987)に記載されており、同文献は参照により本明細書に組み入れられる。ポリエチレンイミン架橋アルギン酸カルシウムを用いた固定化の安定化効果は図1に示されており、さらに実施例2で説明する。
【0027】
選択に応じて、基質はアミド含有ポリマーを含む。1以上のアミド基を含む任意のポリマーを用いることができる。選択に応じて、該基質はポリアクリルアミドポリマーを含む。ポリアクリルアミドを用いた固定化の安定化効果は図2に示されており、さらに実施例3で説明する。
【0028】
安定化は、架橋によってさらに達成することができる。例えば、誘導された微生物が化学的に架橋されて、細胞の凝集体を形成することができる。選択に応じて、誘導された微生物はグルタルアルデヒドを用いて架橋される。例えば、微生物を脱イオン水とグルタルアルデヒドの混合物に懸濁し、その後最大限の軟凝集が達成されるまでポリエチレンイミンを加えることができる。架橋された微生物(典型的には多数の細胞で形成された粒子の形態)を、簡単な濾過によって回収することができる。そのような技術のさらなる説明は、Lopez−Gallego,et al.,J.Biotechnol.119:70−75(2005)に記載されており、同文献は参照により本明細書に組み入れられる。グルタルアルデヒド架橋を用いた固定化の安定化効果は図4に示されており、さらに実施例5で説明する。
【0029】
選択に応じて、該微生物を、古典的なブラウン運動の状態のままにしておくのでなくカプセル化することができる。そのようなカプセル化は、微生物の回収、保存、および再利用を容易にし、かつ一般的に該微生物の基質への付着を含む。そのような付着によって、上述のように該微生物の安定化を促進することができ、あるいは、単に誘導された微生物または酵素の取り扱いの容易さを増すことができる。
【0030】
微生物は、吸着、静電結合、共有結合などの一般的に認識されている微生物の固定化のための任意の方法によって固定化することができる。通常、微生物は固体基体上に固定化され、この固体の基体は該微生物を混合物または溶液(例えば無毒化反応混合物)から回収するのを助ける。適切な固体基体としては、以下に限定されないが、粒状活性炭、堆肥、木材または木材製品(例えば紙、木材チップ、木材ナゲット、破砕パレット、または木材)、金属または金属酸化物粒子(例えば、アルミナ、ルテニウム、酸化鉄)、イオン交換樹脂、DEAEセルロース、DEAE−セファデックス(登録商標)ポリマー、セラミックビーズ、架橋ポリアクリルアミドのビーズ、キューブ、プリル、またはその他のゲルフォーム、アルギン酸ビーズ、κ−カラギーナンキューブ、ならびに固有の磁気能力により水溶液から回収できる固体粒子などが挙げられる。触媒の形状は(特定の物体の所望の動的特性が、触媒の活性に影響を及ぼす体積/表面積の関係と一体化される点で)可変である。選択に応じて、誘導される微生物は、ポリエチレンイミン架橋されたアルギン酸ビーズに固定化されるか、またはポリアクリルアミド系ポリマーに固定化される。
【0031】
また、ここに開示する方法において使用できるとともに、生物濾過器などの各種装置の製造に使用できる組成物も提供される。選択に応じて、該組成物は、(a)トレハロースおよび、選択に応じて1以上のアミド含有アミノ酸またはそれらの誘導体を含む栄養培地と、(b)酵素を生成可能な1種以上の微生物と、(c)1種以上の酵素とを含む。選択に応じて、前記酵素は、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼI、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。選択に応じて、前記1種以上の微生物は、シュードノカルジア属、ノカルジア属、シュードモナス属、ロドコッカス属、ブレビバクテリウム属、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された細菌を含む。例えば、前記微生物は、ロドコッカス属である。選択に応じて、ロドコッカス属の微生物は、ロドコッカス・ロドクラウスDAP96622、ロドコッカス種DAP96253、またはそれらの組み合わせである。選択に応じて、前記微生物は少なくとも部分的に固定化される。
【0032】
本明細書に記載するように、開示される組成物および方法は、トレハロースの使用を含む。提示される方法で使用される培地または組成物におけるトレハロースの濃度は、少なくとも1グラム/リットル(g/L)であり得る。選択に応じて、トレハロース濃度は、1g/L〜50g/L、または1g/L〜10g/Lの範囲内である。選択に応じて、培地中のトレハロースの濃度は少なくとも4g/Lである。
【0033】
選択に応じて、提示される方法で使用される培地または組成物は、1種以上のアミド含有アミノ酸またはその誘導体をさらに含む。アミド含有アミノ酸は、例えば、アスパラギン、グルタミン、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。例えば、アミド含有アミノ酸は、天然の形態のアスパラギン、無水アスパラギン、アスパラギン一水和物、天然の形態のグルタミン、無水グルタミン、および/またはグルタミン一水和物(それぞれのL−異性体またはD−異性体の形態で)を含み得る。
【0034】
培地中のアミド含有アミノ酸またはその誘導体の濃度は、培養の望ましい最終的な結果に応じて変えることができる。例えば、培養は、特定の酵素活性を有する微生物を生成する目的で行われ得る。選択に応じて、培養は、培養された微生物から特定の酵素を形成し、回収する目的で行われ得る。選択に応じて、培養は、培養された微生物から同一のまたは異なる活性および機能を有する複数種の酵素を形成し、回収する目的で行われ得る。
【0035】
成長培地または混合物に添加されるアミド含有アミノ酸およびその誘導体の量は、通常、培地または混合物の全重量に対して最大10000ppm(すなわち、1重量%)であり得る。しかし、本発明の方法は、より少ない量の添加によっても酵素活性が誘導され得る点で特に有益である。選択に応じて、前記1以上のアミド含有アミノ酸は、少なくとも50ppmの濃度で存在する。他の例では、アミド含有アミノ酸およびその誘導体の濃度は、50ppm〜5000ppm、100ppm〜3000ppm、200ppm〜2000ppm、250ppm〜1500ppm、500ppm〜1250ppm、または500ppm〜1000ppmの範囲である。
【0036】
選択に応じて、トレハロースおよびアミド含有アミノ酸またはその誘導体は、栄養的完全培地に添加される。適切な栄養的完全培地は、通常、微生物にその成長のために必要な栄養を供給できる成長培地であり、炭素および/または窒素源は最小限しか含まない。1つの特定の例は、市販のR2A寒天培地であり、これは一般的には、寒天、酵母抽出物、プロテオースペプトン、カゼイン加水分解物、ブドウ糖、可溶性デンプン、ピルビン酸ナトリウム、リン酸水素二カリウム、および硫酸マグネシウムから構成される。栄養的完全液体培地の別の例は、Yeast Extract Malt Extract Agar(YEMEA)培地であり、これはブドウ糖、麦芽抽出物、酵母抽出物からなる(が、特に寒天は除く)。当分野で公知のあらゆる栄養的完全培地を、開示した方法のために用いることができ、上述の培地は例示の目的で記載したにすぎない。そのような栄養的完全培地は、本明細書に記載する組成物に含めることができる。
【0037】
選択に応じて、開示された組成物および培地は、さらなる添加物を含み得る。一般的には、他の添加物または栄養物は、細胞の増殖をより増加させ、細胞量をより増加させ、または増殖を加速させるのを助けるのに有用なものである。例えば、該組成物および培地は、栄養的完全培地中に既に存在する炭水化物源に加えて、炭水化物源を含み得る。
【0038】
上述のように、大半の培地は、一般的には炭水化物成分(例えばブドウ糖)をある程度含むが、追加の炭水化物源を含めるのは有用であり得る。提供される過剰な炭水化物の種類は、所望の培地のもたらす結果に応じて決めることができる。例えば、マルトースやマルトデキストリンのような炭水化物を追加すると、アスパラギナーゼIの誘導が改善し、ニトリルヒドラターゼの安定性が改善することが分かった。
【0039】
選択に応じて、該組成物および培地は、コバルトをさらに含む。コバルトまたはその塩は、混合物または培地に追加することができる。例えば、培地にコバルト(例えば塩化コバルト)を追加するのは、培養された微生物によって生成される酵素の量を増やすのに特に有用であり得る。コバルトまたはその塩は、例えば、コバルト濃度が最大100ppmとなるように培地に添加することができる。コバルトは、例えば、5ppm〜100ppm、10ppm〜75ppm、10ppm〜50ppm、または10ppm〜25ppmの濃度で存在し得る。
【0040】
選択に応じて、該組成物および培地は、尿素をさらに含む。尿素またはその塩は、混合物または培地に追加することができる。尿素またはその塩は、例えば、尿素濃度が最大10g/Lとなるように培地に添加することができる。尿素は、例えば、5g/L〜100g/L、10g/L〜75g/L、10g/L〜50g/L、または10g/L〜25g/Lの濃度で存在し得る。選択に応じて、尿素は7.5g/Lの濃度で存在する。
【0041】
該組成物および培地は、さらに別の成分も含み得る。例えば、他の適切な培地の成分としては、綿タンパク質、マルトース、マルトデキストリン、およびその他の市販の炭水化物類などの市販の添加物が挙げられる。選択に応じて、培地はマルトースまたはマルトデキストリンをさらに含む。マルトースまたはマルトデキストリンは、例えば、マルトースまたはマルトデキストリンの濃度が少なくとも1g/Lとなるように培地に添加され得る。選択に応じて、マルトースまたはマルトデキストリンは、の濃度で存在し得る。
【0042】
選択に応じて、該組成物および培地は、あらゆるニトリル含有化合物を含まないものである。ニトリル化合物は、従来は、2以上のニトリル化合物に対して酵素活性を誘導するために培地に必要であった。本明細書に記載する組成物は、完全に安全なトレハロースおよび/またはアミド含有アミノ酸またはその誘導体を使用することによってこれを達成しており、したがって培地はあらゆるニトリル含有化合物を含まないものとなり得る。
【0043】
提供される方法および組成物において使用するために各種微生物を培養することができる。通常、本明細書に記載するように酵素活性を生成可能な任意の微生物を用いることができる。選択に応じて、該微生物は、ニトリルヒドラターゼを生成可能なものである。
【0044】
本明細書に記載される、ニトリルヒドラターゼ生成微生物は、ニトリルヒドラターゼを生成可能なものであると認められるが、1種以上の他の酵素も生成可能な微生物を指すものとする。さらに、大半の微生物は種々の酵素を生成可能であり、そのような生成は、多くの場合微生物の環境によって決まる。したがって、ここで使用するための微生物はニトリルヒドラターゼ生成微生物として開示され得るが、そのような表現は、ニトリルヒドラターゼを生成するそのような微生物の既知の能力を指したものに過ぎず、その微生物をニトリルヒドラターゼの生成のみに限定しない。一方、ニトリルヒドラターゼ生成微生物は、少なくともニトリルヒドラターゼを生成可能な(すなわち、ニトリルヒドラターゼを生成可能であるか、またはニトリルヒドラターゼおよび1種以上の他の酵素を生成可能な)微生物である。
【0045】
多数のニトリルヒドラターゼ生成微生物が当分野で知られている。例えば、ノカルジア属[特開昭54−129190号公報参照]、ロドコッカス属[特開平2−000470号公報参照]、リゾビウム属[特開平5−236977号公報参照]、クレブシエラ属[特開平5−030982号公報参照]、エロモナス属[特開平5−030983号公報参照]、アグロバクテリウム属[特開平8−154691号公報参照]、桿菌属[特開平8−187092号公報参照]、シュードノカルジア属[特開平8−056684号公報参照]、およびシュードモナス属に属する細菌は、使用できるニトリルヒドラターゼ生成微生物の非限定的な例である。選択に応じて、ニトリルヒドラターゼ生成微生物は、ロドコッカス属の細菌を含む。
【0046】
さらに特定の微生物の例としては、以下に限定されないが、ノカルジア種、ロドコッカス種、ロドコッカス・ロドクラウス、クレブシエラ種、エロモナス種、シトロバクタ・フロインディ、アグロバクテリウム・リゾゲネス、アグロバクテリウム・チュメファシエンス、キサントバクター・フラブス、ルウィニア・ニグリフルエンス(Erwinia nigrifluens)、エンテロバクター種、ストレプトマイセス種、リゾビウム種、リゾビウム・ロティ(Rhizobium loti)、リゾビウム・レグミノサーラム(Rhizobium legminosarum)、リゾビウム・メリオティ(Rhizobium merioti )、カンジダ・ギリエルモンディ、パンテアアグロメランス、クレブシエラ・ニューモニエ亜種ニューモニエ、アグロバクテリウム・ラジオバクター、バチルス・スミシイ(Bacillus smithii)、シュードノカルディア・サーモフィラ(Pseudonocardia thermophila)、シュードモナス・クロロラフィス、シュードモナス・エリスロポリス、ブレビバクテリウム・ケトグルタミカム、ロドコッカス・エリスロポリス、およびシュードノカルディア・サーモフィラ(Pseudonocardia thermophila)などが挙げられる。選択に応じて、使用される微生物は、例えば、ロドコッカス種DAP96253およびDAP96255、ならびにロドコッカス・ロドクラウスDAP96622、およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0047】
選択に応じて、該微生物は形質転換体を含み得る。具体的には、該形質転換体は、ある遺伝子を含むことが知られている微生物からクローン化されたニトリルヒドラターゼ遺伝子が挿入され、発現される任意の宿主であり得る。例えば、米国特許第5,807,730号には、MT−10822菌株(FERM BP−5785)に対する宿主としての大腸菌の使用について記載されている。当然ながら、他の種類の遺伝子組換え細菌も、その細菌がここに開示するように1種以上の酵素を生成可能である限り、ここで使用することができる。
【0048】
所定の属に属するすべての種が同じ種類の酵素の活性および/または産生を示すわけではない。したがって、望ましい活性を示すことが可能な株を含むことが一般に知られている属を有するが、望ましい活性を通常示さないことが一般に知られている1以上の種を有することが可能である。したがって、宿主の微生物は、望ましい特性を有することは特に知られていないが、望ましい活性を生成可能な菌株を有することが知られている属の菌株を含み得る。そのような菌株は、望ましい活性を生じるのに有用な1種以上の遺伝子をそれ自身に導入することができる。そのような菌株の非限定的な例としては、ロドコッカス・エクイおよびロドコッカス・グロベルラスPWD1が挙げられる。
【0049】
微生物は、既存の微生物源から選択されたものであり得るか、または新たに単離された微生物を含み得る。選択に応じて、微生物は、トレハロースおよび/または1種以上のアミド含有アミノ酸またはその誘導体の存在下で株を増殖させることによって有用な微生物株を単離し特定することができる。該微生物は、既存の微生物源から単離、選択、または取得することができ、あるいはニトリルの混合物、ニトリルとアミド化合物の混合物、またはアミドの混合物を本発明による多重誘導の後に対応するアミドおよび/または酸へと無毒化する能力に基づいて、将来の微生物源からスクリーニングすることができる。微生物が有用であるか否かを判別するアッセイは当分野で周知である。例えば、ニトリルヒドラターゼまたはアミダーゼ活性は、遊離アンモニアの検出によって判別することができる。参照により本明細書に組み入れられる、Fawcett and Scott,“A Rapid and Precise Method for the Determination of Urea,”J.Clin.Pathol.13:156−9(1960)を参照されたい。
【0050】
微生物は、最適なバイオマスを達成するべく培養され、回収され得る。特定の実施例では、例えば寒天プレート上で培養される場合、微生物は24時間以上、通常は6日間以下の期間培養することができる。発酵槽で培養される場合、微生物は、1時間〜48時間、1時間〜20時間、または16時間〜23時間、最小培地中で培養されるのが好ましい。より大きいバイオマスが必要な場合は、微生物はより長い期間発酵槽中で培養することができる。培養期間の終わりに、培養された微生物は、一般的には、例えば掻き落とし、遠心分離、濾過、または当業者に公知の他の方法によって回収され濃縮される。
【0051】
微生物は、さらに特定の条件の下で培養することができる。例えば、培養は、3.0〜11.0のpH、好ましくは6.0〜8.0のpHで実行するのが好ましい。培養が行われる温度は、4℃〜55℃が好ましく、15℃〜37℃がより好ましい。さらに、溶解酸素分圧は選択的に0.1%〜100%の範囲、好ましくは4%〜80%の範囲、より好ましくは4%〜30%の範囲である。溶解酸素分圧はモニタリングされ、環境空気、純粋酸素、過酸化物、および選択に応じて他の酸素を放出する組成物の形態で酸素を供給することによって望ましい範囲に維持される。
【0052】
本明細書に記載する方法によれば、微生物増殖のステップと酵素活性誘導のステップとを別々にすることも可能である。例えば、酵素活性を誘導するために必要な補充物を含まない第1の培地上に1種以上の微生物を増殖させることが可能である。このような第1の培地は微生物用の増殖期培地と称されることがある。第2の段階(すなわち誘導期)で、培養された微生物は酵素活性の誘導に必要な補充物を含む第2の培地に移され得る。本明細書に記載のように、このような第2の培地はトレハロース、および/または1種以上のアミド含有アミノ酸またはその誘導体を優先的に含むものとなる。
【0053】
同様に、誘導用補充物は望ましい微生物の培養中にいつでも加えることができる。例えば、微生物の培養を開始する前に、培地に、トレハロースおよび/またはアミド含有アミノ酸またはその誘導体を補充することができる。あるいは、該微生物に望ましい活性を誘導するため、微生物をその増殖のための所定量の時間培地上で培養することができ、該微生物に望ましい活性を誘導するため、トレハロースおよび/またはアミド含有アミノ酸またはその誘導体を1回以上の所定の回数添加することができる。さらに、トレハロースおよび/またはアミド含有アミノ酸またはその誘導体を、成長培地に(または以前に増殖させた微生物を含む別の混合物に)添加して、微生物の増殖が完了した後に微生物中の望ましい活性を誘導することができる。
【0054】
ニトリルを対応するアミドまたは酸に変換することによってニトリルの混合物を無毒化する方法が提供される。選択に応じて、該方法は、ニトリル分解微生物の培地をニトリル混合物に適用するステップと、ニトリルを対応するアミドに変換するのに十分な時間をかけて、トレハロースおよび/またはアミド含有アミノ酸またはその誘導体で微生物を多重誘導するステップとを含む。あるいは、該方法は、ニトリルを対応するアミドに変換するのに十分な時間をかけて、多重誘導された微生物をニトリルの混合物に適用するステップを含む。
【0055】
微生物を廃棄物流に適用する場合、微生物は、増殖期(活発に分裂している)か、静止期(活発に分裂していない)であり得る。該方法が、活発に増殖している微生物の培地の適用をする場合、その適用条件は、細菌の成長が支援または維持されるようなものが好ましい。該方法が、活発に分裂していない微生物の培地の適用をする場合、その適用条件は、酵素活性が支援されるようなものが好ましい。
【0056】
選択に応じて、開示された方法および組成物は、高濃度のニトリル、シアノヒドリン(類)、または酵素による分解を受ける他の化学物質を通常含む廃棄物を有する製造プラントからの廃棄物流を処理するために用いることができる。例えば、ニトリル生成プラントからの水性の廃棄物流においてニトリル化合物の混合物またはニトリルおよびアミド化合物の混合物を無毒化する方法が提供される。さらに、本発明は、アクリロニトリルがアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)の製造において使用されるABSの製造における廃棄物流の処理のために使用することができる。
【0057】
また、空気、蒸気、エアロゾル、および水または水溶液などの廃物流中のニトリル化合物の混合物またはニトリルおよびアミド化合物の混合物の無毒化において使用できる生物濾過器が提供される。例えば、揮発性のニトリル化合物が存在する場合、その揮発性物質は、それらが見出された固体または水性溶液から放出され、その揮発性物質を生物濾過器に捕捉するようなステップが実行されるべきである。一旦捕捉されれば、揮発性物質は、本明細書に記載する微生物の純粋な培養物または抽出物で無毒化することができる。
【0058】
さらに、多重誘導され、ニトリル化合物の混合物、ニトリルおよびアミド化合物の混合物、またはアミド化合物の混合物を無毒化できる微生物の培養物を含むキットが提供される。該微生物は、活発に分裂しているものであるか、凍結乾燥されたものであり得、ニトリルおよび/またはアミド化合物を含む水溶液に直接添加できる。選択に応じて、該キットは、誘導された凍結乾燥サンプルを含む。該微生物はまた、ここに記載するように固体基体上に固定化され得る。他のキットの構成要素としては、例えば、本明細書に記載する微生物を誘導するための誘導用補充物質の混合物を、当業者に周知のバイアルやパッケージング要素などの他のキットの要素とともに挙げることができる。
【0059】
植物または植物の部分を1種以上の酵素または該酵素を生成する微生物にさらすステップを含む植物発達プロセスを遅らせる方法も提供される。選択に応じて、植物発達プロセスを遅らせるために使用される微生物は、例えばトレハロース、アミド含有アミノ酸、コバルト、尿素、またはそれらの混合物を含む本明細書に記載の誘導および/または安定化剤で処理される。例として、植物発達プロセスを遅らせる方法であって、植物または植物の部分を1種以上の酵素にさらすステップを含み、前記酵素は、1種以上の細菌により、トレハロースおよび選択に応じて1種以上のアミド含有アミノ酸を含む培地において前記1種以上の細菌を培養することによって生成され、前記酵素は、前記植物発達プロセスを遅らせるのに十分な量で前記植物または植物の部分にさらされる、方法が提供される。
【0060】
選択に応じて、該方法は、ロドコッカス種、シュードモナス・クロロラフィス、ブレビバクテリウム・ケトグルタミカム、およびそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の細菌に植物または植物の部分をさらすステップを含む、植物発達プロセスを遅らせる方法に係る。前記1種以上の細菌は、トレハロースおよび選択に応じて1種以上のアミド含有アミノ酸またはその誘導体を含む培地中で培養され、前記植物発達プロセスを遅らせるのに十分な量で前記植物または植物の部分にさらされる。この提供される方法は、例えば、果実/野菜の熟成または花の老化を遅らせ、果実、野菜、または花の品質保持期間を延ばし、それによってそのような植物産物の輸送、配送、および販売を促進するために用いることができる。植物の発達プロセスを遅らせる方法は、米国特許出願公開第2008/0236038号に記載されており、同文献は参照により本明細書に組み入れられる。
【0061】
選択に応じて、該方法は、1種以上の酵素または細菌からの抽出物に植物または植物の部分をさらすステップを含む。該酵素または抽出物は、植物発達プロセスを遅らせるのに十分な量で前記植物または植物の部分にさらされる。例えば、植物発達プロセスを遅らせる方法であって、植物または植物の部分を1種以上の細菌の酵素抽出物にさらすステップを含み、前記細菌は、トレハロースおよび選択に応じて1種以上のアミド含有アミノ酸を含む培地中で培養され、前記酵素抽出物は、前記植物発達プロセスを遅らせるのに十分な量で前記植物または植物の部分にさらされる、方法が提供される。
【0062】
本明細書において使用される、植物または植物の部分を1種以上の上記細菌にさらす、とは、例えば、無傷の細菌細胞、細菌細胞ライセート、および酵素活性を有する細菌抽出物(すなわち「酵素抽出物」)にさらすことを包含する。細菌細胞を含む細胞からライセートおよび酵素抽出物を調製する方法は、公知である。ここに開示される方法で使用される1種以上の細菌は、本明細書においては「触媒」と呼ばれることもある。
【0063】
本明細書において使用される「植物」または「植物の部分」とは、無傷の植物および、以下に限定されないが、果実、野菜、花、種子、葉、殻果、胚、花粉、胚珠、枝、穀粒、穂、穂軸、殻、柄、根、根端、葯などを含むあらゆる植物の部分を含むように広義に定義される。植物の部分は、例えば、果実、野菜、または花であり得る。選択に応じて、植物の部分は果実、特に、後述するようなクリマクテリック型果実である。
【0064】
本発明の方法は、エチレン生合成の増加に通常関連する植物発達プロセスなどの、植物発達プロセスを遅らせることに関連する。「植物発達プロセス」とは、以下に限定されないが、果実の熟成、野菜の熟成、花の老化、落葉、種子発芽などを含む、植物または植物の部分の成長または発達プロセスを意味するものとする。選択に応じて、植物発達プロセスは、果実または野菜の熟成、花の老化、または落葉であり、より具体的には、果実または野菜の熟成である。本明細書で定義される「植物の発達プロセスを遅らせる」およびその文法上の変化形は、目的の植物発達プロセス、または特定の植物発達プロセスに通常関連する植物または植物の部分に対する表現形または遺伝形質の変化を、減速、中断、停止または阻害することを指す。例えば、植物発達プロセスが果実の熟成である場合、果実の熟成の遅れには、熟成プロセスに関連する変化(例えば色の変化、果皮(すなわち子房壁)の軟化、糖質量の増加、香りの変化、果実の通常の劣化/変敗、および上述のような消費者にとっての果実の望ましさの低下)を阻害することを含み得る。当業者であれば、果実の熟成が生ずるのに必要な時間の長さは、例えば果実の種類や利用される特定の保存条件(例えば温度、湿度、風通しなど)によって変化することを理解されよう。したがって、「果実の熟成を遅らせる」は、1〜90日間の遅れ、特に1〜30日間の遅れ、とりわけ5〜30日間の遅れを構成し得る。果実の熟成、野菜の熟成、花の老化、および落葉などの植物発達プロセスにおける遅れを評価する方法は、当業者の通常の能力の範囲内であって、例えば、未処置の植物または植物の部分における植物発達プロセスの比較に基づくものであり得る。選択に応じて、ここに開示された方法によって生じた植物発達プロセスの遅れは、未処置の植物または植物の部分、または植物発達プロセスを遅延させる1種以上の薬剤で処置した植物または植物の部分に対して相対評価することができる。例えば、ここに開示された方法によって生ずる果実の熟成の遅れを、未処置の果実または本明細書に記載するような抗熟成剤で処置した果実の果実熟成時間と比較することができる。
【0065】
1種以上の細菌は、植物発達プロセスを遅らせるのに十分な量で植物または植物の部分にさらされる。植物または植物の部分を1種以上の細菌に「さらすこと」には、細菌を植物または植物の部分に提示するあらゆる方法が含まれる。間接的な曝露方法には、例えば植物または植物の部分の概ね近傍に細菌または細菌の混合物を配置すること(すなわち間接的な曝露)が含まれる。選択に応じて、細菌が、より近くでの接触か直接の接触を通して植物または植物の部分をさらされてもよい。さらにまた、本明細書に定められるような本発明の1種以上の細菌の「十分な」量とは、さまざまな要因、すなわち、以下に限定されないが、該方法で利用される細菌、植物または植物の部分に細菌がさらされる形式(例えば、先に述べたように、無傷の細菌細胞、細胞ライセート物、または酵素抽出物など)、細菌が植物または植物の部分にさらされる手段、およびさらされる時間などによって決まる。当業者は、通常の実験を通して植物発達プロセスを遅らせるのに必要な1種以上の細菌の十分な量を決定することができる。
【0066】
1種以上の細菌は、適当な誘導剤への曝露またはそれによる処置によって「誘導」され、望ましい特徴(例えば、果物の熟成のような植物発達プロセスを遅らせる能力)を示す。誘導剤には、以下に限定されないが、トレハロース、アスパラギン、グルタミン、コバルト、尿素、またはそれらのあらゆる混合物が含まれる。選択に応じて、細菌は誘導剤のアスパラギン、より詳細には、トレハロース、アスパラギン、コバルト、および尿素を含む誘導剤の混合物に曝露されるか、それで処理される。誘導剤は、望ましい細胞の培養中にいつでも添加することができる。
【0067】
特定のメカニズムに限定する意図はないが、細菌の「誘導」により、上述のように1種以上の酵素(例えば、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、および/またはアスパラギナーゼなど)の産生(または産生量の増加)が生じ得、これらの1種以上の酵素の誘導は、関心対象の植物発達プロセスの遅れにおいて一定の役割を果たし得る。「ニトリルヒドラターゼ」、「アミダーゼ」、および「アスパラギナーゼ」は、限定されないが、細菌、真菌、植物、および動物など各種生物の細胞に存在する酵素のファミリーを含む。そのような酵素はよく知られており、酵素の各クラスはすでに認識されている酵素活性を有する。
【0068】
植物発達プロセスを遅らせる方法は、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼまたはそれらの混合物からなる群から選択された1種以上の酵素に植物または植物の部分をさらすステップを含み、前記1種以上の酵素は、前記植物発達プロセスを遅らせるのに十分な量または酵素活性レベルで前記植物または植物の部分にさらされる。例えば、1種以上の上記酵素(すなわちニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、および/またはアスパラギナーゼ)を生成する、生成するべく誘導される、または生成するべく遺伝子組換え処理された細胞全体を、細胞発達プロセスを遅らせる方法で用いてもよい。あるいは、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、および/またはアスパラギナーゼを、上述の任意の細胞から単離、精製、または半精製し、より単離された形で植物または植物の部分にさらすこともできる。例えば、Goda et al.,J.Biol.Chem.276:23480−5(2001);Nagasawa et al.,Eur.J.Biochem.267:138−144(2000);Soong et al.,Appl.Environ.Microiol.66:1947−52(2000);Kato et al.,Eur.J.Biochem.263:662−70(1999)を参照されたい。これらの文献は、参照によりその内容全体が本明細書に組み入れられる。選択に応じて、1種類の細胞が、2種以上の酵素を生成する(または誘導されるか、遺伝子組換えされて生成する)ことを可能とし得る。そのような細胞は、本明細書に開示する方法での使用に適している。
【0069】
ここに開示する方法は、あらゆる植物および植物の部分の植物発達プロセスを遅らせるために使用することができる。選択に応じて、該方法は熟成を遅らせることに係り、植物の部分は、果実(クリマクテリック型または非クリマクテリック型)、野菜、または熟成を受ける植物の他の部分である。当業者であれば、クリマクテリック型果実は果実の熟成時にエチレンの急な放出を示すが、非クリマクテック型果実は通常、熟成プロセス中にエチレン生合成の有意な上昇を示すことはないと考えられている。典型的な果物、野菜、および他の植物生成物としては、以下に限定されないが、リンゴ、アプリコット、ビリバ、パンノキの実、チェリモヤ、フェイジョア、イチジク、グァバ、パラミツ、キーウィ、バナナ、桃、アボカド、リンゴ、カンタロープ、マンゴー、マスクメロン、ネクタリン、柿、サポーテ、トゲバンレイシ、オリーブ、パパイア、パッションフルーツ、西洋ナシ、プラム、トマト、シシトウガラシ、ブルーベリー、カカオ、カシュー、キュウリ、グレープフルーツ、レモン、ライム、トウガラシ、サクランボ、オレンジ、ブドウ、パイナップル、イチゴ、スイカ、タマリロ、およびナッツ類が挙げられる。
【0070】
選択に応じて、該方法は、花の老化、しおれ、離脱、または花弁閉鎖を遅らせるために用いられる。ここではあらゆる花を用いることができる。典型的な花として、以下に限定しないが、バラ、カーネーション、ラン、スベリヒユ、アオイ、およびベゴニアが挙げられる。切花、特にバラおよびカーネーションのような商業的に重要な切花は、特に関心の対象となる。選択に応じて、エチレン感受性の花がこの方法で使用される。エチレン感受性の花としては、以下に限定されないが、アルストロメリア属、アネモネ属、アンスリウム属、キンギョソウ属、アスター属、アスティルベ属、カトレア属、シンビジウム属、ダリア属、デンドロビウム属、ナデシコ属、トルコギキョウ属、フリージア属、ガーベラ属、カスミソウ属、アヤメ属、レンリソウ属、ユリ属、リモニウム属、ネリネ属、バラ属、ハシドイ属、チューリップ属、および百日草属の花が挙げられる。代表的なエチレン感受性の花には、ヒガンバナ科、ネギ科、スズラン科、キスゲ科、ヒヤシンス科、ユリ科、ラン科、ザクロソウ科、サボテン科、キキョウ科、ナデシコ科、ベンケイソウ科、リンドウ科、アオイ科、イソマツ科、スベリヒユ科、ナス科、リュウゼツラン科、ツルボラン科、クサスギカズラ科、シュウカイドウ科、スイカズラ科、マツムシソウ科、トウダイグサ科、マメ科、シソ科、フトモモ科、アカバナ科、ユキノシタ科、およびクマツヅラ科の花も含まれる。例えば、Van Doorn,Annals of Botany 89:375−383(2002);Van Doorn,Annals of Botany 89:689−693(2002);およびElgar,“Cut Flowers and Foliage − Cooling Requirements and Temperature Management”ウェブサイトhortnet.co.nz/publications/hortfacts/hf305004.htm(1998)(最終アクセスは、2007年3月20日)などを参照されたい。これらの文献は、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる。落葉を遅らせる方法も、ここに開示される。植物、果物、野菜、および花の産業には、植物発達プロセス(例えば成熟、老化と離脱)を制御する方法に対してかなりの商業的な関心が存在する。
【0071】
植物発達プロセス、特にエチレン生合成の増加と一般に関連するプロセス(例えば、果物/野菜の熟成、花の老化、および落葉)を遅らせる他の既知の方法と、ここに開示する方法のいずれかとを組み合わせることができることを、当業者は理解されよう。さらに、前述したように、エチレン生成の増加は、病原菌による植物または植物の部分への攻撃の間にも観察された。したがって、該方法は、病原体に対する植物の反応の改善にも用途があり得る。
【0072】
通常、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼまたはそれらの任意の組み合わせを生成できる、または生成するべく誘導され得る、あらゆる細菌、真菌、植物、または動物の細胞がここで使用され得る。ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、および/またはアスパラギナーゼは特定の生物の細胞(例えば、細菌、真菌、植物または動物の細胞)から構成的に生成され得るか、あるいは、細胞が、適当な誘導剤で「誘導」された後にのみ、望ましい酵素または酵素群を生成し得る。「構成的に」は、本発明の少なくとも1つの酵素が特定の種類の細胞で絶えず産生される、すなわち発現されることを意味するものとする。しかし、前述のように、他の種類の細胞は、対象の植物発達プロセスを遅らせるために十分な量または酵素の活性レベルでニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、および/またはアスパラギナーゼを発現するべく「誘導される」必要があり得る。つまり、本発明の酵素は、適当な誘導剤への暴露またはそれによる処置の後にのみ、生成(または十分なレベルで生成)され得る。そのような誘導剤は公知であり、以前に概説してある。例えば、一種以上の細菌が、アスパラギン、グルタミン、コバルト、尿素またはその任意の混合物(特にアスパラギン、コバルト、および尿素の混合物)のような誘導剤で処理される。さらに、「Induction and Stabilization of Enzymatic Activity in Microorganisms」という表題の米国特許第7,531,343号および第7,531,344号(それらの内容全体は参照により本明細書に組み入れられる)中で開示されるように、アスパラギナーゼI活性は、アミド含有アミノ酸またはその誘導体を補充した培地中においてロドコッカス・ロドクラウスDAP96622(グラム陽性菌)またはロドコッカス種DAP96253(グラム陽性菌)で誘導され得る。ロドコッカスの他の株も、アミド含有アミノ酸またはその誘導体を利用してアスパラギナーゼI酵素活性を示すように、優先して誘導され得る。
【0073】
アスパラギンの存在下でアスパラギナーゼIを生成するシュードモナス・クロロラフィス(ATCC登録番号43051)、およびこれもアスパラギナーゼ活性を作り出すことが判明しているグラム陽性菌のブレビバクテリウム・ケトグルタミカム(ATCC登録番号21533)も、開示された方法で用いられる。ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、および/またはアスパラギナーゼを発現する、真菌細胞(例えばフザリウム属の細胞など)、植物細胞、および動物細胞が、細胞全体としてまたは1種以上の上記酵素がそこから単離される源として、ここに使われてもよい。
【0074】
種々の生物に由来するいくつかのニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、およびアスパラギナーゼのヌクレオチドおよびアミノ酸配列が、一般公開されている配列データベースに開示されている。代表的な当該分野で既知のニトリルヒドラターゼと脂肪族アミダーゼの非限定的なリストは、表1ならびに表2、および配列表に記載されている。表1および表2に記載の「タンパク質スコア」は、質量分光データに基づく単離されたタンパク質の識別のパーセンテージ信頼区間(%Confid.Interval)の概要を提供する。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
選択に応じて、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、および/またはアスパラギナーゼを発現するべく遺伝子組換えされた宿主細胞が、植物発達プロセスを遅らせるために、植物または植物の部分にさらされ得る。具体的には、1種以上の酵素を発現するトランスジェニック細胞を作り出すべく、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、またはアスパラギナーゼをコードするポリヌクレオチド(または各々ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼまたはアスパラギナーゼをコードする複数のポリヌクレオチド)を、標準的な分子生物学技術によって宿主細胞に導入することができる。本明細書では、用語「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド作成物」、「ヌクレオチド」、または「ヌクレオチド作成物」は、DNAを含むポリヌクレオチドまたはヌクレオチドに制限する意図で用いられていない。ポリヌクレオチドおよびヌクレオチドが、リボヌクレオチドと、リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの組合せとを包含し得ることは、当業者には理解されよう。そのようなデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドには、天然に存在する分子と合成類似物の両方が含まれる。本明細書に記載するポリヌクレオチドは、一本鎖の形態、二本鎖の形態などを含むがこれらに限らずあらゆる形態の配列を含む。
【0078】
望ましい酵素活性(すなわち、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、またはアスパラギナーゼ活性)を保持するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの変異形と断片も、ここで使用され得る。「断片」によって、ポリヌクレオチドの部分を意味するものとし、それ故、断片は、対応するタンパク質の部分をコードするものでもある。酵素のヌクレオチド配列の断片であるポリヌクレオチドは、通常、少なくとも10、15、20、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、800、900、1000、1100、1200、1300、または1400個の隣接しあうヌクレオチド群か、完全長酵素ポリヌクレオチド配列において存在する全ヌクレオチドの数までのヌクレオチド群を含むことになる。ポリヌクレオチド断片は望ましい酵素の活性を有するポリペプチドをコードして、通常、少なくとも15、25、30、50、100、150、200、または250個の隣接しあうアミノ酸群をコードするか、あるいは、完全長酵素アミノ酸配列において存在する全アミノ酸の数までのアミノ酸群を含むことになる。「変異形」は、実質的に類似した配列を意味するものとする。通常、特定の酵素配列の変異形は、標準的な配列アライメントプログラムで決定した参照酵素配列に対する配列同一性が、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上である。本明細書に記載する変異形ポリヌクレオチドは、望ましい酵素活性を有するポリペプチドをコードする。
【0079】
トランスジェニック細胞の作製の文脈にて用いられるとき、用語「導入」は、宿主細胞(特に大腸菌のような微生物)に、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、および選択に応じてアスパラギナーゼをコードするポリヌクレオチドを提示することを意味するものとする。選択に応じて、該ポリヌクレオチドは、その配列が宿主細胞に内部アクセスできる形(宿主細胞のゲノムへのその潜在的挿入を含む)で提示される。ここに開示する方法は、配列を宿主細胞に導入するために特定のプロトコルに依存することはなく、そのためには該ポリヌクレオチドが少なくとも1つの宿主細胞の内部にアクセスできさえすればよい。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する方法は、よく知られており、安定的トランスフェクション法、一時的トランスフェクション法、およびウイルス媒介法などがある。「安定的トランスフェクション」は、宿主細胞に導入されるポリヌクレオチド作成物が宿主のゲノムに統合されて、その子孫に受け継がれることが可能となることを意味するものとする。「一時的トランスフェクション」または「一時的発現」は、ポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されるが、宿主のゲノムに統合されないことを意味するものとする。
【0080】
さらにまた、例えば、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼまたはアスパラギナーゼヌクレオチド配列は、例えば宿主細胞に導入のためのプラスミドに含まれてもよい。対象となる典型的プラスミドは、定められたクローン化部位、複製開始点、および選択マーカーを有するベクターを含む。プラスミドは、転写および翻訳開始配列と、転写および翻訳終止配列を更に含んでいてもよい。プラスミドは、少なくとも1つの独立した終止配列と、真核生物、原核生物、またはその両方(例えば、シャトルベクター)でカセットの複製を可能にする配列と、原核生物および真核生物の両方の系のための選択マーカーとを含んでいる汎用発現カセットを有することもできる。ベクターは、原核生物、真核生物、最適にはその両方における複製と統合に適したものである。クローン化、パッケージング、発現の系および方法の概略の説明については、Giliman and Smith,Gene 8:81−97(1979);Roberts et al.,Nature 328:731−734(1987);Berger and Kimmel,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology,Vol.152(Academic Press,Inc.,San Diego,California)(1989);Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Vols.1−3(2d ed;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York)(1989);およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Current Protocols(Greene Publishing Associates,Inc.,and John Wiley & Sons,Inc.,New York;1994 Supplement)(1994)などを参照されたい。1種以上の酵素を発現するトランスジェニック宿主細胞を、細胞全体として、または1種以上の酵素を単離できる生物源として、開示された方法で使用してもよい。
【0081】
実施例
[実施例1:ニトリルヒドラターゼおよびアミダーゼの誘導]
ロドコッカス種株DAP96253におけるニトリルヒドラターゼ活性およびアミダーゼ活性の誘導を、複数の種類の誘導物質(1000ppm)を用いて評価した。10ppmのコバルトおよび7.5g/Lの尿素を含み、アクリルニトリル、アスパラギン、またはグルタミンを補充したYEMEA培地において、3種の異なるサンプルを培養した。各サンプルにおける特定のニトリルヒドラターゼ活性と特定のアミダーゼ活性を評価した。単位/mg cdw(細胞の乾燥重量)で活性度をあらわした結果を下記の表3に示す。ニトリルヒドラターゼ活性の1単位は、pH7.0、温度30℃で、細胞の重量(乾燥重量)1mgにつき1分間あたり1μmolのアクリルニトリルをその対応するアミドに変換する能力に関連するものである。アミダーゼ活性の1単位は、pH7.0、温度30℃で細胞の重量(乾燥重量)1mgにつき1分間あたりに1μmolのアクリルアミドをその対応する酸に変換する能力に関連するものである。
【表3】

【0082】
表3に見られるように、ニトリルヒドラターゼ活性の誘導物質としてのアスパラギンまたはグルタミンの使用は、そのような活性を誘導するアクリルニトリルの能力を上回る。さらに誘導物質としてグルタミンを使うと、結果的に、アクリルニトリルの使用から生じたアミダーゼ活性よりおよそ37%大きいアミダーゼ活性が生じ、アスパラギンはアクリルニトリルよりおよそ74%大きい活性を生じさせた。
【0083】
[実施例2:アルギン酸カルシウム固定化を用いたニトリルヒドラターゼ活性の安定化]
培地においてアスパラギンを用いてニトリルヒドラターゼ活性を誘導された細胞の相対安定度を評価するべく試験を行った。ロドコッカス種DAP96253株を、標準的な培地を単独で用いて、またはアスパラギンを補充した標準的な培地を用いて培養した。細胞を培養物から回収して、アルギン酸カルシウムビーズ(直径2〜3mm)で固定した。ビーズを準備するため、25グラム(g)の4%アルギン酸ナトリウム溶液(5mMのTRIS−HCl−pH7.2の24ミリリットル(ml)中にアルギン酸ナトリウムを1g)準備し、25ミリグラムのナトリウム・メタ過ヨウ素酸塩を、その中に溶解した(25℃で1時間、すなわちアルギン酸がすべて溶解するまで攪拌した)。固定化のための細胞は、50mMのTRIS−HClに懸濁して最終容量50mlとし、その細胞溶液を攪拌しながらアルギン酸混合物に添加した。その混合物を27G皮下針によって500mlの0.1MCaCl2内に押し出すことによって、ビーズを形成した。ビーズはCaCl2溶液で1時間硬化させ、水で洗浄した。
【0084】
4種のサンプルを、評価のために調製した:サンプル1−細胞をアスパラギンなしで培養した細胞でビーズを形成し、ビーズを含む混合物にアスパラギンを添加した;サンプル2−細胞をアスパラギンとともに培養した細胞でビーズを形成し、ビーズを含む混合物にもアスパラギンを添加した;サンプル3−細胞をアスパラギンとともに培養した細胞でビーズを形成し、ビーズを含む混合物にアクリルニトリルとアセトニトリルの混合物を添加した;およびサンプル4−細胞をアクリルニトリルとアセトニトリルの混合物とともに培養した細胞でビーズを形成し、ビーズを含む混合物にアスパラギンを添加した。サンプル3と4において、アクリルニトリルおよびアセトニトリルは、それぞれ500ppmの濃度で加えた。サンプル1−4のそれぞれにおいて、アスパラギンは1000ppmの濃度で加えた。
【0085】
固定化された細胞を、およそ150時間にわたって維持し、残りのニトリルヒドラターゼ活性について定期的に評価した。試験の結果を図1に示す。安定化された活性の評価のために等量の細胞を試験し、時刻0における全細胞の等量のアリコートの活性を100%として設定した。触媒の等量のアリコートを、適切な温度でインキューベートした。適切な時間に、インキュベーションから全てのアリコートを取り出し、酵素活性を決定した。最初の10時間、サンプルは2時間おきに評価した。10時間目から60時間は、サンプルは4時間おきに評価し、その後サンプルは12時間おきに評価した。
【0086】
図1から分かるように、アルギン酸カルシウムにおける誘導細胞の固定化により、有害なニトリル含有化合物を用いて達成可能な安定度レベルに非常に類似したニトリルヒドラターゼ活性の安定化が得られるが、不利な点(例えば、健康や規制面の問題)はない。
【0087】
[実施例3:ポリアクリルアミド固定化を使用したニトリルヒドラターゼの安定化]
培地においてアスパラギンを用いてニトリルヒドラターゼ活性を誘導された細胞の相対安定度を評価するべく試験を行った。ロドコッカス種DAP96253株を、アスパラギンを補充した標準的な培地を用いて培養した。細胞を培養物から回収して、架橋ポリアクリルアミドキューブ(2.5mm×2.5mm×1mm)で固定した。ポリアクリルアミド溶液を調製し、望ましい細胞の負荷を加えた。細胞とともにポリアクリルアミドを架橋させてゲルを形成し、それを上述のキューブに切断した。その他の既知の安定化材は、ポリアクリルアミドには加えなかった。2種のサンプルを、評価のために調製した:サンプル1−(40mLの細胞懸濁液あたり1gの細胞を含む懸濁液で作製した)低い細胞負荷のキューブ;およびサンプル2−(40mLの細胞懸濁液あたり4gの細胞を含む懸濁液で調作製した)高い細胞負荷のキューブ。
【0088】
固定化された細胞を、およそ150日間にわたって維持し、残りのニトリルヒドラターゼ活性について定期的に評価した。試験の結果を図2に示す。安定化された活性の評価のために等量の細胞を試験し、時刻0における全細胞の等量のアリコートの活性を100%として設定した。触媒の等量のアリコートを、適切な温度でインキューベートした。適切な時間に、インキュベーションから全てのアリコートを取り出し、酵素活性を決定した。最初の10時間、サンプルは2時間おきに評価した。10時間から60時間は、サンプルは4時間おきに評価した。5日から40日まで、サンプルは12時間おきに評価した。40日から576日まで、サンプルは平均して10日おきに評価した。
【0089】
図2から分かるように、ポリアクリルアミドを用いて安定化された細胞は、誘導の150時間後にも活性を維持した。さらに、低濃度で負荷されたポリアクリルアミド固定化細胞は、誘導のおよそ45時間後に依然として初期活性の50%を示し、高濃度で負荷されたポリアクリルアミド固定化細胞は誘導のおよそ80時間後に依然として初期活性の50%を示した。
【0090】
[実施例4:アルギン酸カルシウムまたはポリアクリルアミド固定化を使用したニトリルヒドラターゼの安定化]
培地においてアスパラギンを用いてニトリルヒドラターゼ活性を誘導された細胞の相対安定度を評価するべく試験を行った。試験は特に、ポリアクリルアミドまたはアルギン酸カルシウムでの固定化により付与される安定化を比較した。ロドコッカス種DAP96622株を、アスパラギンを補充した標準的な培地を用いて培養してニトリルヒドラターゼ活性を誘導した。細胞を培養物から回収して固定化した。
【0091】
試験サンプル1は、実施例3に記載の方法を用いて、ポリアクリルアミドキューブ(2.5mm×2.5mm×1mm)においてアスパラギン誘導細胞を固定化することによって作製した。比較として、アクリルニトリルを用いて別に誘導された細胞も、評価のためにポリアクリルアミドキューブに固定化した。
【0092】
試験サンプル2は、実施例2に記載の方法を用いて、アルギン酸カルシウムビーズ(直径2−3mm)においてアスパラギン誘導細胞を固定化することによって作製した。比較例として、誘導用補充物としての実際のニトリル含有排水(NSB/WWCBと表記)を用いて、1つのサンプルを作製した。誘導物質として、アクリロニトリル製造の廃棄物流に存在する主要なニトリルとアミドを含有する(硫酸アンモニウムも含むが、シアン化水素は意図的に除去してある)合成混合物(FC w/AMS w/o HCNと表記)を用いて、第2比較例を作製した。
【0093】
固定化された細胞を、およそ576日間にわたって維持し、残りのニトリルヒドラターゼ活性について定期的に評価した。試験の結果を図3に示す。安定化された活性の評価のために等量の細胞を試験した。時刻0における全細胞の等量のアリコートの活性を100%として設定した。触媒の等量のアリコートを、適切な温度でインキューベートした。適切な時間に、インキュベーションから全てのアリコートを取り出し、酵素活性を決定した。最初の10時間、サンプルは2時間おきに評価した。10時間目から60時間は、サンプルは4時間おきに評価した。5日から40日まで、サンプルは12時間おきに評価した。40日から576日まで、サンプルは平均して10日おきに評価した。
【0094】
[実施例5:グルタルアルデヒド固定化を使用したニトリルヒドラターゼの安定化]
培地においてアスパラギンを用いてニトリルヒドラターゼ活性を誘導された細胞の相対安定度を評価するべく試験を行った。試験は特に、グルタルアルデヒド架橋を介した固定化により付与される安定化を比較した。ロドコッカス種DAP96253株、およびロドコッカス・ロドクラウスDAP96622株を、別々に、ニトリルヒドラターゼ活性を誘導するべくアスパラギンを補充した標準的な培地を用いて培養した。本明細書に記載するように、細胞は培養物から回収し、グルタルアルデヒドを用いて架橋させた。
【0095】
固定化された細胞を、およそ576日間にわたって維持し、残りのニトリルヒドラターゼ活性について定期的に評価した。試験の結果を図4に示す。安定化された活性の評価のために等量の細胞を試験した。時刻0における全細胞の等量のアリコートの活性を100%として設定した。触媒の等量のアリコートを、適切な温度でインキューベートした。適切な時間に、インキュベーションから全てのアリコートを取り出し、酵素活性を決定した。最初の10時間、サンプルは2時間おきに評価した。10時間目から60時間は、サンプルは4時間おきに評価した。5日から40日まで、サンプルは12時間おきに評価した。40日から576日まで、サンプルは平均して10日おきに評価した。
【0096】
図4から分かるように、グルタルアルデヒド架橋を介して固定化された両方の菌株は、上述の他の安定化方法の場合と比較していくぶん小さめの初期活性を示した。しかし、グルタルアルデヒド架橋を介して固定化された両方の菌株は、576日後に65%もの活性を維持する優れた長期の安定化を示した。
【0097】
[実施例6:ニトリルヒドラターゼ生成微生物の増殖に対するアスパラギンおよびグルタミンの影響]
各種ニトリルヒドラターゼ生成微生物の相対的増殖を評価した。7.5g/Lの尿素および10ppmの(塩化コバルトとして提供された)コバルトを含み、アスパラギン(ASN)、グルタミン(GLN)、またはアスパラギンとグルタミンの両方を補充されたYEMEA培地上で、すべての株を増殖させた。アスパラギンおよびグルタミンは、3.8mMの濃度で加えた。増殖温度は26℃〜30℃の範囲であった。増殖度は目視検査によって評価し、以下のスケールで等級分けした:(−)増殖が確認できない;(+/−)かすかな増殖;(+)わずかな増殖;(++)良好な増殖;(+++)非常に良好な増殖:(++++)最高度の増殖。結果は、下記の表4に示す。
【0098】
【表4】

【0099】
[実施例7:ニトリルヒドラターゼおよびアミダーゼ生成に対するアスパラギンおよびグルタミンの影響]
各種ニトリルヒドラターゼ生成微生物におけるニトリルヒドラターゼおよびアミダーゼ生成の誘導を評価した。7.5g/Lの尿素および10ppmの(塩化コバルトとして提供された)コバルトを含み、アスパラギン(ASN)、グルタミン(GLN)、またはアスパラギンとグルタミンの両方を補充されたYEMEA培地上で、すべての株を増殖させた。アスパラギンおよびグルタミンは、3.8mMの濃度で加えた。比較として、補充物を加えていない酵素生成物も試験した。増殖温度は26℃〜30℃の範囲であった。細胞の乾燥重量mgあたりの単位で表されたニトリルヒドラターゼレベルを評価し、結果を表5に示す。細胞の乾燥重量mgあたりの単位で表されたアミダーゼレベルを評価し、結果を表6に示す。
【0100】
【表5】

【0101】
【表6】

【0102】
[実施例8:アスパラギナーゼI生成に対するアスパラギンおよびグルタミンの影響]
各種ニトリルヒドラターゼ生成微生物におけるアスパラギナーゼI生成の誘導を評価した。7.5g/Lの尿素および10ppmの(塩化コバルトとして提供された)コバルトを含み、アスパラギン(ASN)、グルタミン(GLN)、またはアスパラギンとグルタミンの両方を補充されたYEMEA培地上で、すべての株を増殖させた。アスパラギンおよびグルタミンは、3.8mMの濃度で加えた。比較として、アクリルニトリル(AN)、アクリルアミド(AMD)、またはアクリルニトリルおよびアクリルアミドを補充した場合の酵素生成も試験した。増殖温度は26℃〜30℃の範囲であった。細胞の乾燥重量mgあたりの単位で表されたアスパラギナーゼIレベルを評価し、結果を表7に示す。
【0103】
【表7】

【0104】
[実施例9:ロドコッカス種DAP96253細胞におけるアスパラギナーゼI活性の誘導]
ロドコッカス種DAP96253を、20リットル分の発酵のための接種源として二相培地を使って増殖させた。培地/炭水化物(YEMEA、ブドウ糖、またはマルトースのいずれか)の補充追加を、プロテオースペプトン3(PP3)に代えて綿実加水分解物を含んだ改変R2A培地に対して行った。アスパラギン(0.15Mの溶液)の追加を、t=10時間目から開始し連続的に1000μl/分の速度で行った。発酵操作の終了時に、細胞乾燥重量1ミリグラムにつき159単位のアクリルニトリル特異的ニトリルヒドラターゼ、細胞乾燥重量1ミリグラムにつき22単位のアミダーゼ、および圧縮湿重量16g/lの細胞が生成された。生成された各種酵素の量を図5に示す。同図にみられるように、DAP96253細胞によって、細胞乾燥重量1ミリグラムにつき159単位のニトリルヒドラターゼ、22単位のアクリルアミダーゼ、および16単位のアスパラギナーゼIが産生された。
【0105】
[実施例10:ロドコッカス種DAP96253細胞におけるアスパラギナーゼI生成に対する培地組成物の影響]
使用された誘導物質に基づくアスパラギナーゼI活性に対する影響を評価するべく試験を行った。具体的には、誘導物質としてアスパラギン、グルタミン、スクシノニトリルとイソバレロニトリルを用いて(いずれも、それぞれ1000ppmずつ添加)、試験を行った。表8で分かるように、アスパラギンは細胞乾燥重量1mgにつき24.6単位のアスパラギナーゼI活性を誘導することができた。グルタミンまたはスクシノニトリルも、アスパラギナーゼI活性を誘導する能力を示した。マルトースをYEMEAに加えると、より高いアスパラギナーゼI活性が得られた。培地にコバルト(5−50ppm)を含めた場合も、ブドウ糖またはマルトースのいずれと結合させたときも改善が得られた。
【0106】
【表8】

【0107】
[実施例11:ニトリルヒドラターゼの安定性に対するトレハロースの影響]
培地でトレハロースを用いてニトリルヒドラターゼ活性を誘導された細胞におけるニトリルヒドラターゼの安定性を評価するべく試験を行った。試験では、培地へのトレハロースの追加により得られる安定化を特に比較した。ロドコッカス種DAP96253株をいろいろな培養条件の下で増殖させ、トレハロース(細胞および脂質結合)のレベルを測定した。トレハロースのレベルは、下記の表9に示す。トレハロースおよびマルトースの両方が培地に加えられるとき、最大レベルの細胞トレハロースが達成される。
【0108】
【表9】

G:ブドウ糖補充(4g/L)YEMEA;F:果糖補充(4g/L)YEMEA;M:マルトース補充(4g/L)YEMEA;MD:マルトデキストリン補充(4g/L)YEMEA;Co:コバルト(50mg/L);U:尿素(7.5g/L);Asn:アスパラギン(1g/L);Tre:トレハロース(4g/L)
【0109】
さらに、図6および図7に見られるように、ニトリルヒドラターゼ活性は、トレハロースの存在下で増殖されたロドコッカス種DAP96253株細胞で安定化される。試験された全増殖条件の下で、トレハロースを組み入れることにより熱安定性が大幅に向上し、したがって、ロドコッカス種DAP96253株細胞に存在するニトリルヒドラターゼの実効半減期が長くなった。
【0110】
ロドコッカス種DAP96253株細胞において高レベルのトレハロースを得るために使用された培地は、1リットルにつき4グラムのトレハロース含めたものであったが、タンパク質または細胞を安定化させる際には、1リットルにつき100グラムを上回る濃度のトレハロースを用いてもよい。
【0111】
トレハロースを補充したタンパク質が回収後も安定化されたことが以前に立証された。さらに、凍結乾燥させた細胞または乾燥させた細胞は、トレハロースの追加によって回収後も状態改善された。本明細書に記載するように、トレハロースの細胞レベルならびに培地でのレベルを上昇させることによって、タンパク質は合成からタンパク質回収までの期間に安定化された。このことにより、合成時から回収時までのトレハロース保護と該タンパク質の安定化の利益が得られた。さらにトレハロースの培地への追加は細胞安定性を改善した。このことは、ニトリルヒドラターゼなどの酵素が固定される基質としてロドコッカス細胞を使用する場合重要となる。このように、タンパク質と、触媒プラットホームになるタンパク質生成細胞とが同時に安定化される。
【0112】
ここに開示する方法および組成物のために使用できる、それらとともに使用できる、それらの準備のために使用できる材料、組成物、および構成要素が開示され、あるいはここに開示する方法および組成物の産物が開示される。これらのおよび他の材料が本明細書に開示されている。そして、これらの材料の組合せ、部分集合、相互作用、群などが開示されるとき、これらの化合物の独立したまたは集合的な異なる組合せと順列のそれぞれに対する特定の参照がここに明示的に記載されているとは限らないが、それぞれが特に本発明の想定するところであり、本明細書に記載されたものとなることを理解されたい。例えば、ある方法が開示され説明されており、その方法を含む多数の分子に対してなされ得る多数の改変について述べられている場合、その方法のあらゆる組合せと順列のそれぞれ、および可能な改変は、特にそれとは反対の断りがない限り、本発明の具体的に想定するところとなる。同様に、これらのあらゆる部分集合または組合せは、本発明が特に想定しここに開示されたものとする。この概念は、限定されないが、ここに開示する組成物を用いる方法における各ステップを含む、本明細書に開示するあらゆる側面に当てはまる。このように、各種追加の実行可能なステップが存在する場合、これらの追加のステップのそれぞれは、ここに開示する方法のあらゆる特定のステップまたはステップの組合せとともに実行することが可能で、そのような組合せまたは組合せの部分集合のそれぞれは、特に想定されたものであり、ここに開示されたとみなされるべきであることを理解されたい。
【0113】
本明細書に引用される出版物およびそれらで引用されている材料は、参照によりその全内容が具体的に本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリルヒドラターゼを生成する微生物においてニトリルヒドラターゼ活性、アミダーゼ活性、アスパラギナーゼI活性、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された酵素活性を誘導する方法であって、
トレハロースおよび1以上のアミド含有アミノ酸を含む培地中で前記ニトリルヒドラターゼを生成する微生物を培養するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記ニトリルヒドラターゼを生成する微生物は、ロドコッカス属、ブレビバクテリウム属、シュードモナス属、シュードノカルジア属、ノカルジア属、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された細菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酵素活性は、ニトリルヒドラターゼ活性を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ニトリルヒドラターゼを生成する微生物は、ロドコッカス属の細菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ニトリルヒドラターゼを生成する微生物は、ロドコッカス・ロドクラウスDAP96622、ロドコッカス種DAP96253、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された細菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記トレハロースは、培地1リットル当たり少なくとも4グラムの濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記トレハロースは、培地1リットル当たり少なくとも1グラム乃至10グラムの濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1以上のアミド含有アミノ酸は、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン誘導体、グルタミン誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アミド含有アミノ酸は、アスパラギンおよびアスパラギン誘導体を含み、
前記アスパラギンおよびアスパラギン誘導体は、天然の形態のアスパラギン、無水アスパラギン、アスパラギン一水和物、およびそれらのL−異性体およびD−異性体を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アミド含有アミノ酸は、グルタミンおよびグルタミン誘導体を含み、
前記グルタミンおよびグルタミン誘導体は、天然の形態のグルタミン、無水グルタミン、グルタミン一水和物、およびそれらのL−異性体およびD−異性体を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記1以上のアミド含有アミノ酸は、アスパラギンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記1以上のアミド含有アミノ酸は、少なくとも50ppmの濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1以上のアミド含有アミノ酸は、200ppm乃至2000ppmの濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記1以上のアミド含有アミノ酸は、50ppm乃至5000ppmの濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記培地には、ニトリルを含有する化合物が存在しない、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記誘導されたニトリルヒドラターゼを生成する微生物は、ニトリルを含有する化合物を含む培地で誘導されたときの同じ酵素の活性と同じかそれより大きい酵素活性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記誘導されたニトリルヒドラターゼを生成する微生物は、ニトリルを含有する化合物を含む培地で誘導されたときの同じ酵素の活性より少なくとも5%大きい酵素活性を有する請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記培地が、コバルトをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記培地は、尿素をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記培地は、マルトースまたはマルトデキストリンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ニトリルヒドラターゼを生成する微生物は、少なくとも部分的に固定化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
酵素または該酵素を生成可能な微生物における所望の活性を安定化させる方法であって、
前記酵素または該酵素を生成可能な微生物と、トレハロースおよび1以上のアミド含有アミノ酸を含む組成物とを接触させるステップを含み、
前記酵素は、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、およびアスパラギナーゼIからなる群から選択される、方法。
【請求項23】
前記トレハロースは、1リットル当たり少なくとも4グラムの濃度で存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記トレハロースは、1リットル当たり少なくとも1グラム乃至10グラムの濃度で存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記1以上のアミド含有アミノ酸は、少なくとも50ppmの濃度で存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記1以上のアミド含有アミノ酸は、50ppm乃至5000ppmの濃度で存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記1以上のアミド含有アミノ酸は、200ppm乃至2000ppmの濃度で存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記アミド含有アミノ酸は、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン誘導体、グルタミン誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記アミド含有アミノ酸は、アスパラギンおよびアスパラギン誘導体を含み、
前記アスパラギンおよびアスパラギン誘導体は、天然の形態のアスパラギン、無水アスパラギン、アスパラギン一水和物、およびそれらのL−異性体およびD−異性体を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記アミド含有アミノ酸は、グルタミンおよびグルタミン誘導体を含み、
前記グルタミンおよびグルタミン誘導体は、天然の形態のグルタミン、無水グルタミン、グルタミン一水和物、およびそれらのL−異性体およびD−異性体を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記酵素または該酵素を生成可能な微生物における所望の活性が25℃の温度で少なくとも30日間後に、前記酵素または該酵素を生成可能な微生物によって示された初期の活性の少なくとも50%のレベルで維持されるように、前記所望の活性が安定化される、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記微生物は、ロドコッカス属、ブレビバクテリウム属、シュードモナス属、シュードノカルジア属、ノカルジア属、およびそれらの組み合わせから選択された細菌を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記微生物は、ロドコッカス−ロドクラウスDAP96622、ロドコッカス種DAP96253、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された細菌を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物には、ニトリルを含有する化合物が存在しない、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物は、コバルト、尿素、マルトース、マルトデキストリン、およびそれらの組み合わせをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項36】
前記微生物は、少なくとも部分的に固定化されている、請求項22に記載の方法。
【請求項37】
組成物であって、
(a)トレハロースおよび1以上のアミド含有アミノ酸を含む栄養培地と、
(b)ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼI、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された1種以上の酵素を生成可能な1種以上の微生物と、
(c)ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼI、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された1種以上の酵素とを含む、組成物。
【請求項38】
前記1種以上の微生物は、ロドコッカス属、ブレビバクテリウム属、シュードモナス属、シュードノカルジア属、ノカルジア属、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された細菌を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記トレハロースは、培地1リットル当たり少なくとも4グラムの濃度で存在する、請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
前記トレハロースは、培地1リットル当たり少なくとも1グラム乃至10グラムの濃度で存在する、請求項37に記載の組成物。
【請求項41】
前記1以上のアミド含有アミノ酸は、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン誘導体、グルタミン誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項37に記載の組成物。
【請求項42】
前記アミド含有アミノ酸は、アスパラギンおよびアスパラギン誘導体を含み、
前記アスパラギンおよびアスパラギン誘導体は、天然の形態のアスパラギン、無水アスパラギン、アスパラギン一水和物、およびそれらのL−異性体およびD−異性体を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項43】
前記アミド含有アミノ酸は、グルタミンおよびグルタミン誘導体を含み、
前記グルタミンおよびグルタミン誘導体は、天然の形態のグルタミン、無水グルタミン、グルタミン一水和物、およびそれらのL−異性体およびD−異性体を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項44】
前記1以上のアミド含有アミノ酸は、アスパラギンを含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項45】
前記1以上のアミド含有アミノ酸は、少なくとも50ppmの濃度で存在する、請求項37に記載の組成物。
【請求項46】
前記1以上のアミド含有アミノ酸は、200ppm乃至2000ppmの濃度で存在する、請求項37に記載の組成物。
【請求項47】
前記1種以上の微生物は、ロドコッカス属から選択される細菌を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項48】
前記1種以上の微生物は、ロドコッカス−ロドクラウス、ロドコッカス種DAP96253、ブレビバクテリウム・ケトグルタリカム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された細菌を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項49】
前記1種以上の微生物は、少なくとも部分的に固定化されている、請求項37に記載の組成物。
【請求項50】
前記培地が、コバルトをさらに含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項51】
前記培地は、尿素をさらに含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項52】
前記培地には、ニトリルを含有する化合物が存在しない、請求項37に記載の組成物。
【請求項53】
前記培地は、マルトースまたはマルトデキストリンをさらに含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項54】
植物の発達プロセスを遅らせる方法であって、
植物または植物の部分を1種以上の酵素にさらすステップを含み、
前記酵素は、1種以上の細菌により、トレハロースおよび1以上のアミド含有アミノ酸を含む培地において前記細菌を培養することによって生成され、
前記酵素は、前記植物の発達プロセスを遅らせるのに十分な量で前記植物または植物の部分にさらされる、方法。
【請求項55】
植物の発達プロセスを遅らせる方法であって、
植物または植物の部分を、1種以上の細菌の酵素抽出物にさらすステップを含み、
前記細菌は、トレハロースおよび1以上のアミド含有アミノ酸を含む培地において培養され、
前記酵素抽出物は、前記植物の発達プロセスを遅らせるのに十分な量で前記植物または植物の部分にさらされる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−517777(P2013−517777A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550196(P2012−550196)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2011/022278
【国際公開番号】WO2011/091374
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(512192956)ジョージア ステイト ユニヴァーシティー リサーチ ファウンデーション インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】