説明

微生物によるゲラニルゲラニオール及びその類縁化合物の製造方法

【解決手段】ゲラニルゲラニオール及びその類縁化合物を生産することのできる酵母菌(子嚢菌酵母類、不完全菌酵母類)、細菌、放線菌、糸状菌を培地に培養し、ゲラニルゲラニオール及びその類縁化合物を菌体内外に生成蓄積せしめ、これらを採取することを特徴とする、ゲラニルゲラニオール及びその類縁化合物の製造方法。
【効果】本発明によれば、テルペン類、カロチノイド類、ステロイド類の生合成中間体として有用なゲラニルゲラニオール、ファルネソール、ネロリドール生産能を有する微生物を利用して、大量にかつ安価にゲラニルゲラニオール及びその類縁化合物を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を利用するゲラニルゲラニオール及びその類縁化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲラニルゲラニオール、ファルネソールは、生物ではゲラニルゲラニルピロリン酸、ファルネシルピロリン酸がフォスファターゼによって加水分解を受けることにより生成すると考えられる。ゲラニルゲラニルピロリン酸は、ゲラニルゲラニオールのピロリン酸エステルで、イソペンテニルピロリン酸とファネシルピロリン酸の縮合または3分子のイソペンテニルピロリン酸とジメチルアリールピロリン酸の縮合により得られる。ゲラニルゲラニルピロリン酸は、環化反応によりジベレリンなどのジテルペンへ、尾部と尾部で縮合してフィトエンを生成したのちカロチノイドへ、またイソペンテニルピロリン酸と頭部と尾部で縮合してポリプレニルピロリン酸などへと代謝される。一方、ファルネシルピロリン酸はイソペンテニルピロリン酸とゲラニルピロリン酸の縮合または2分子のイソペンテニルピロリン酸とジメチルアリールピロリン酸の縮合により生じ、環化反応によりセスキテルペンに、尾部と尾部との縮合によりスクアレンになったのち、ステロイド及びトリテルペンに、またイソペンテニルピロリン酸と頭部と尾部で縮合してポリプレニルピロリン酸やドリコールに代謝される。また、Ras タンパク質やGタンパク質などある種のタンパク質のシステインと結合してプレニル化タンパク質に代謝される。このように、ゲラニルゲラニオール、ゲラニルゲラニルピロリン酸、及びこれらの前駆体であるファルネシルピロリン酸、ファルネソール、ゲラニルピロリン酸、ゲラニオールなどの一連のゲラニルゲラニオール誘導体は、テルペン類、カロチノイド類、ステロイド類の生合成中間体として中心的な化合物である。また、ゲラニルゲラニオールおよびその類縁化合物は香料、抗腫瘍活性を有するタキサン類の製造(特願平8-227481号) 、養毛剤(特願平8-180449号) 、骨粗鬆症治療剤(特願平9-294089号) など、重要な用途がある。
【0003】
上記のようなゲラニルゲラニオール誘導体に関し、これまで、トウダイグサ科に属する植物細胞を光照射下で培養してゲラニルゲラニオール及び/又はゲラニルゲラニルピロリン酸を生産させた例(特開平9−238692号公報)、Saccharomyces cerevisie のerg 変異株がファルネソールを分泌生産する例 [Curr.Genet., 18, 41-46 (1990)] の報告があるが、自然界にゲラニルゲラニオールやファルネソール生産菌が存在するという報告はない。前記従来技術のうち、植物細胞による例では培養に光照射が必要である上、培地成分が高価で量産が困難である。また、erg 変異株による例では、酵母の生育に必要なエルゴステロールを合成することができないため自然界に存在することは難しく、またエルゴステロール要求性であることから培地中に高価なエルゴステロールを添加しなければならない。これに対し、植物細胞に比べ増殖速度が速く、かつ特別な成分を加えずとも安価な培地で生育できるゲラニルゲラニオールやファルネソールを生産する野性株が存在すれば、上記有用物質の中間体の量産が可能となって、産業上非常に有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、ゲラニルゲラニオール及びその類縁化合物を生産することのできる微生物を用いて、大量にかつ安価にゲラニルゲラニオール及びその類縁化合物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するべく検討を重ねた結果、属種が同定されている微生物を中心に広くスクリーニングした結果、ゲラニルゲラニオール、ファルネソール、ネロリドールを生産することのできる酵母菌(子嚢菌酵母類、不完全菌酵母類)、細菌、放線菌、糸状菌を見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のいずれかの属に属するゲラニルゲラニオール及び/又はファルネソール生産菌を培地に培養し、ゲラニルゲラニオール及び/又はファルネソールを菌体内外に生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする、ゲラニルゲラニオール/又はファルネソールの製造方法である。
【0006】
サッカロミセス(Saccharomyces)属
サッカロミコシス(Saccharomycopsis) 属
サッカロミコデス(Saccharomycodes)属
シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属
ヴィッカーハミア(Wickerhamia) 属
デバリオミセス(Debaryomyces)属
ハンゼヌラ (Hansenula)属
ハンゼニアスポーラ(Hanseniaspora)属
リポミセス(Lypomyces)属
ピキア(Pichia)属
クロッケラ(Kloeckera) 属
キャンジダ(Candida) 属
ザイゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces) 属
オガタエア(Ogataea) 属
クライシア(Kuraishia) 属
コマガタエラ (Komagataella) 属
ヤロウヴィア (Yarrowia) 属
ウィリオプシス(Williopsis) 属
ナカザワエア(Nakazawaea )属
クリベロマイセス(Kluyveromyces)属
トルラスポーラ(Torulaspora)属
シテロマイセス(Citeromyces) 属
ウォルトマイセス(Waltomyces)属
バチルス (Bacillus) 属
スタフィロコッカス(Staphylococcus)属
シュードモナス(Pseudomonas) 属
マイクロコッカス(Micrococcus)属
エキシグオバクテリウム(Exiguobacterium) 属
ムコール(Mucor)属
アンブロジオザイマ(Ambrosiozyma)属
シストフィロバシジウム(Cystofilobasidium)属
メトシュニコヴィア(Metschnikowia)属
トリコスポロン(Trichosporon)属
キサントフィロミセス(Xanthophyllomyces)属
ブレラ(Bullera)属
フェロミセス(Fellomyces)属
フィロバシジウム(Filobasidium)属
ホルテルマンニア(Holtermannia)属
ファフィア(Phaffia)属
ロドトルラ(Rhodotorula)属
スポリジオボラス(Sporidiobolus)属
スポロボロミセス(Sporobolomyces)属
ジゴアスカス(Zygoascus)属
ハロフェラックス(Haloferax)属
ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属
ロイコスポリジウム(leucosporidium)属
ミキソザイマ(Myxozyma)属
トリコスポリエラ(Trichosporiella)属
アルカリゲネス(Alcaligenes)属
【0007】
本発明はまた、以下のいずれかの属に属するネロリドール生産菌を培地に培養し、ネロリドールを菌体内外に生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする、ネロリドールの製造方法である。
【0008】
サッカロミセス(Saccharomyces)属
クリプトコッカス(Cryptococcus)属
カンジダ(Candida) 属
ストレプトマイセス(Streptomyces)属
ノカルディア(Nocardia) 属
シストフィロバシジウム(Cystofilobasidium)属
ロドトルラ(Rhodotorula)属
ウィロプシス(Willopsis)属
ハロフェラックス(Haloferax)属
以下に本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、テルペン類、カロチノイド類、ステロイド類の生合成中間体として有用なゲラニルゲラニオール、ファルネソール、ネロリドール生産能を有する微生物を利用して、大量にかつ安価にゲラニルゲラニオール及びその類縁化合物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では微生物を用いる発酵法によってゲラニルゲラニオール及びその類縁化合物を製造する。本発明にいう、ゲラニルゲラニオールの類縁化合物とは、ゲラニルゲラニルピロリン酸、及びこれらの合成に関連し生成するゲラニルゲラニルモノリン酸、ファルネシルピロリン酸、ファルネシルモノリン酸、ファルネソール、ゲラニルピロリン酸、ゲラニルモノリン酸、ゲラニオール、ネロリドール、ゲラニルリナロール、リナロールなどをいう。
【0011】
本発明においてゲラニルゲラニオールの生産に使用する微生物は、サッカロミセス(Saccharomyces)属、サッカロミコシス(Saccharomycopsis) 属、サッカロミコデス(Saccharomycodes)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、ヴィッカーハミア(Wickerhamia) 属、デバリオミセス(Debaryomyces)属、ハンゼヌラ (Hansenula)属、ハンゼニアスポーラ(Hanseniaspora)属、ピキア(Pichia)属、クロッケラ(Kloeckera) 属、キャンジダ(Candida) 属、ザイゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces) 属、オガタエア(Ogataea) 属、クライシア(Kuraishia) 属、コマガタエラ (Komagataella) 属、ヤロウヴィア(Yarrowia) 属、ウィリオプシス(Williopsis) 属、ナカザワエア(Nakazawaea )属、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、又はトルラスポーラ(Torulaspora)属、ブレラ(Bullera)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ウィロプシス(Willopsis)属、クロッケラ (Kloeckera)属、スポロボロミセス(Sporobolomyces)属のいずれかの属に属する酵母、あるいはムコール(Mucor)属に属する糸状菌、ハロフェラックス(Haloferax)属に属する始原菌、アルカリゲネス(Alcaligenes)属に属する細菌であって、ゲラニルゲラニオールを生産する能力のある菌株であればよい。
【0012】
ゲラニルゲラニオール生産菌を以下に具体的に列挙する。
(1) サッカロミセス(Saccharomyces )属;Saccharomyces cerevisiae ATCC 12341, IFO 0565, IFO 0222, IFO 0216, ATCC 9080, IFO 1346, ATCC 204660, IFO 0538, IFO 0210 、Saccharomyces ellipsoideus 京都大学保存株4102、Saccharomycessake 協会2 号、Saccharomyces rosei IFO 0252、Saccharomyces kluyveri IFO 1892
(2) サッカロミコシス(Saccharomycopsis) 属;Saccharomycopsis fibuligera IFO 0106, IFO 1665, IFO 1774, IFO 0107
(3) サッカロミコデス(Saccharomycodes)属;Saccharomycodes ludwigii IFO 0339
(4) シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属;Schizosaccharomyces octosporus IAM 4842, Schizosaccharomyces pombe IFO0346
(5) ヴィッカーハミア(Wickerhamia) 属;Wickerhamia fluorescens IFO 1116
(6) デバリオミセス(Debaryomyces)属;Debaryomyces hansenii var.fabryi IFO 0794 、Debaryomyces castellii IFO1359 、Debaryomyces vanrijiae var.vanrijiae JCM 2169
(7) ハンゼヌラ (Hansenula)属;Hansenula polymorpha 京都大学保存株4327
(8) ハンゼニアスポーラ(Hanseniaspora)属;Hanseniaspora valbyensis IFO 0115
(9) ピキア(Pichia)属;Pichia membranaefaciens IFO 0128、Pichia aganobii 京都大学保存株4261、Pichia naganishii IFO 1670 、Pichia silvicola IFO 0807 、Pichia anomala IFO 0118, IFO 0569, IFO 0707
(10) クロッケラ(Kloeckera) 属;Kloeckera japonica IFO 0151
(11) キャンジダ(Candida) 属;Candida krusei IFO 0013、Candida kefyr IFO 0706、Candida tenuis IFO 0716、Candida solani IFO 0762 、Candida glabrata IFO 0005, IFO 0622 、Candida albicans IFO 1060 、Candida zeylanoides IFO 0719、Candida catenulata IFO 0720 、Candida cariosilignicola IFO 1910 、Candida stellata IFO 0701、Candida utilis IFO0619
(12) ザイゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces) 属;Zygosaccharomyces rouxii IFO 0487、Zygosaccharomyces japanicus IFO 0595
(13) オガタエア(Ogataea) 属;Ogataea glucozyma IFO 1472 、 Ogataea polymorpha IFO 1475
(14) クライシア(Kuraishia) 属;Kuraishia capsulata IFO 0974
(15) コマガタエラ (Komagataella) 属;Komagataella pastoris IFO 0948
(16) ヤロウヴィア (Yarrowia) 属;Yarrowia lopolytica IFO 0717
(17) ウィリオプシス(Williopsis) 属;Williopsis saturnus var. saturnus IFO 0125, IFO 0941、Williopsis saturnus IFO 0895
(18) ナカザワエア(Nakazawaea )属;Nakazawaea holstii IFO 0980
(19) クリベロマイセス(Kluyveromyces)属;Kluyveromyces marxianus IFO 0617, IFO 0288、Kluyveromyces thermotolerans IFO 0662 、Kluyveromyces lactis IFO 0648
(20) トルラスポーラ(Torulaspora)属;Torulaspora delbrueckii IFO 0422
(21) クリプトコッカス(Cryptococcus)) 属;Cryptococcus humicolus IFO 1527
(22) ムコール(Mucor)属;Mucor javanicus IFO 4570
(23) ブレラ(Bullera)属;Bullera pseudoalba IFO 10179
(24) ロドトルラ(Rhodotorula)属;Rhodotorula minuta IFO 0715、Rhodotorula rubra IFO 0870
(25) スポロボロミセス(Sporobolomyces)属;Sporobolomyces salmonicolor IFO 0374
(26) ハロフェラックス(Haloferax)属;Haloferax volcanii IFO 14742
(27) アルカリゲネス(Alcaligenes)属;Alcaligenes faecalis IFO 13111
【0013】
本発明において、ファルネソール生産に使用することのできる微生物としては、サッカロミセス(Saccharomyces)属、サッカロミコシス(Saccharomycopsis) 属、サッカロミコデス(Saccharomycodes)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、ヴィッカーハミア(Wickerhamia) 属、デバリオミセス(Debaryomyces)属、ハンゼニアスポーラ(Hanseniaspora)属、リポミセス(Lypomyces)属、ピキア(Pichia)属、カンジダ(Candida) 属、オガタエア(Ogataea) 属、クライシア(Kuraishia) 属、コマガタエラ (Komagataella) 属、ヤロウヴィア (Yarrowia) 属、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属、トルラスポーラ(Torulaspora)属、ザイゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces) 属、ウィリオプシス(Williopsis) 属、シテロマイセス(Citeromyces) 属、ウォルトマイセス(Waltomyces)属、又はクリプトコッカス(Cryptococcus)属のいずれかの属に属する酵母、あるいはバチルス (Bacillus) 属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、シュードモナス(Pseudomonas) 属、マイクロコッカス(Micrococcus)属、エキシグオバクテリウム(Exiguobacterium) 属のいずれかの属に属する細菌、あるいはムコール(Mucor)属に属する糸状菌、アンブロジオザイマ(Ambrosiozyma)属、シストフィロバシジウム(Cystofilobasidium)属、メトシュニコヴィア(Metschnikowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、キサントフィロミセス(Xanthophyllomyces)属、ブレラ(Bullera)属、フェロミセス(Fellomyces)属、フィロバシジウム(Filobasidium)属、ホルテルマンニア(Holtermannia)属、ファフィア(Phaffia)属、スポリジオボラス(Sporidiobolus)属、スポロボロミセス(Sporobolomyces)属、ジゴアスカス(Zygoascus)属、ロイコスポリジウム(leucosporidium)属、ミキソザイマ(Myxozyma)属、トリコスポリエラ(Trichosporiella)属、ハロフェラックス(Haloferax)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属等に属する微生物であって、ファルネソールを生産する能力のある菌株であればよい。
【0014】
ファルネソール生産菌を以下に具体的に列挙する。
(1) サッカロミセス(Saccharomyces)属;Saccharomyces cerevisiae IFO 1346, ATCC 204660, IFO 0258, IFO 0262, IFO 0538, IFO 0565, IFO 0210, IFO 2347、Saccharomyces unisporus IFO 0215、Saccharomyces sake 協会2 号、Saccharomyces ellipsoideus 京都大学保存株 4102 、Saccharomyces rosei IFO 0252、Saccharomyces logos 京都大学保存株 4101 、Saccharomyces dairensis IFO 0285、Saccharomyces bayanus IFO 0539, IFO 0613、Saccharomyces kluyveri IFO 1892 、Saccharomyces paradoxus IFO 0259
(2) サッカロミコデス(Saccharomycodes)属;Saccharomycodes ludwigii IFO 0339
(3) シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属;Schizosaccharomyces pombe IFO 0346, IFO 0358,IFO 0638、Schizosaccharomyces octosporus IAM 4842
(4) ハンゼニアスポーラ(Hanseniaspora)属;Hanseniaspora valbyensis IFO 0115
(5) デバリオミセス(Debaryomyces)属;Debaryomyces hansenii IFO 0023、Debaryomyces hansenii var.fabryi IFO 0749 、Debaryomyces castellii IFO 1359 、Debaryomyces vanrijiae var. vanrijiae JCM 2169
(6) リポミセス(Lypomyces)属;Lypomyces starkeyi IFO 0678
(7) ピキア(Pichia)属;Pichia aganobii 京都大学保存株 4261 、Pichia naganishii IFO 1670、Pichia
anomala IFO 0118, IFO 0569, IFO 0963, IFO 707, IFO 0146
(8) カンジダ(Candida) 属;Candida utilis IFO 0626, IFO 0619、Candida albicans IFO 0579, IFO 1060、Candida zeylanoides IFO 0719、Candida glabrata IFO 0005, IFO 0622, IFO 0741、Candida cariosilignicola IFO 1910 、Candida stellata IFO 0701 、Candida solani IFO 0762、Candida intermedia IFO 0761、Candida krusei IFO 0941、Candida tenuis IFO 0716
(9) ヴィッカーハミア(Wickerhamia) 属;Wickerhamia fluoresces IFO 1116
(10) クライシア(Kuraishia) 属;Kuraishia capsulata IFO 0974
(11) コマガタエラ (Komagataella) 属;Komagataella pastoris IFO 0948
(12) オガタエア(Ogataea) 属;Ogataea glucozyma IFO 1472 、Ogataea polymorpha IFO 1475
(13) ヤロウヴィア (Yarrowia) 属;Yerrowia lopolytica IFO 0717
(14) クリベロマイセス(Kluyveromyces)属;Kluyveromyces marxianus IFO 0288, IFO 0617、Kluyveromyces thermotolerans IFO 0662 、Kluyveromyces lactis IFO 0648
(15) トルラスポーラ(Torulaspora)属;Torulaspora delbrueckii IFO 0422
(16) ザイゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces) 属;Zygosaccharomyces rouxii IFO 0487, IFO 0686、Zygosaccharomyces japanicus IFO 0595、Zygosaccharomyces fermentati IFO 0021
(17) ウィリオプシス(Williopsis) 属;Williopsis saturnus var. saturnus IFO 0941、Williopsis californica IFO 0800、Willopsis saturnus IFO 0895
(18) シテロマイセス(Citeromyces) 属;Citeromyces matritensis IFO 0954
(19) ウォルトマイセス(Waltomyces)属;Waltomyces lipoder IFO 0673
(20) クリプトコッカス(Cryptococcus)) 属;Cryptococcus humicolus IFO 1527
(21) バチルス (Bacillus) 属;Bacillus amyloliquefaciens IFO 3022、Bacillus pumilus IFO 3030
(22) スタフィロコッカス(Staphylococcus)属;Staphylococcus epidermidis IFO 3762
(23) シュードモナス(Pseudomonas) 属;Pseudomonas sp. 京都大学保存株 876
(24) マイクロコッカス(Micrococcus)属;Micrococcus luteus IFO 3067
(25) エキシグオバクテリウム(Exiguobacterium)属;Exiguobacterium acetylicum IFO 12146
(26) ムコール(Mucor)属;Mucor javanicus IFO 4570
(27) アンブロジオザイマ(Ambrosiozyma)属;Ambrosiozyma platypodis IFO 10752
(28) シストフィロバシジウム(Cystofilobasidium)属;Cystofilobasidium infirmominiatum IFO 1057
(29) ロイコスポリジウム(leucosporidium)属;Leucosporidium scottii IFO 1924
(30) メトシュニコヴィア(Metschnikowia)属;Metschnikowia lunata IFO 1605
(31) ミキソザイマ(Myxozyma)属;Myxozyma lipomycoides IFO 10351
(32) トリコスポロン(Trichosporon)属;Trichosporon pullulans IFO 1232
(33) キサントフィロミセス(Xanthophyllomyces)属;Xanthophyllomyces dendrorhous IFO 10130
(34) ブレラ(Bullera)属;Bullera pseudoalba IFO 10179
(35) フェロミセス(Fellomyces)属;Fellomyces penicillatus IFO 10119
(36) フィロバシジウム(Filobasidium)属;Filobasidium capsuligenum IFO 1185、Filobasidium uniguttulatum IFO 0699
(37) クロッケラ(Kloeckera) 属;Kloeckera corticis IFO 0633
(38) ホルテルマンニア(Holtermannia)属;Holtermannia corniformis IFO 10742
(39) ファフィア(Phaffia)属;Phaffia rhodozyma ATCC 66270
(40) サッカロミコシス(Saccharomycopsis) 属;Saccharomycopsis fermentans IFO 10772
(41) スポリジオボラス(Sporidiobolus)属;Sporidiobolus samonicolar IFO 1035
(42) スポロボロミセス(Sporobolomyces)属;Sporobolomyces salmonicolor IFO 0374
(43) トリコスポリエラ(Trichosporiella)属;Trichosporiella flavificans IFO 1573
(44) ジゴアスカス(Zygoascus)属;Zygoascus hellenicus IFO IFO 10184
(45) ハロフェラックス(Haloferax)属;Haloferax volcanii IFO 14742
(46) ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属;Brevibacterium linens IFO 12171
【0015】
本発明においてネロリドールの生産に使用する微生物は、サッカロミセス(Saccharomyces)属、カンジダ(Candida) 属又はクリプトコッカス(Cryptococcus)に属する酵母、あるいはストレプトマイセス(Streptomyces)属又はノカルディア(Nocardia) 属に属する放線菌、シストフィロバシジウム(Cystofilobasidium)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ウィロプシス(Willopsis)属、ハロフェラックス(Haloferax)属等に属する微生物であって、ネロリドールを生産する能力のある菌株であればよい。
【0016】
ネロリドール生産菌を以下に具体的に列挙する。
(1) ノカルディア(Nocardia) 属;Norcadia asteroides IFO 3384 、Norcadia fusca IFO 14340
(2) ストレプトマイセス(Streptomyces)属;Streptomyces gardneri IFO 12865
(3) サッカロミセス(Saccharomyces)属;Saccharomyces unisporus IFO 0215 、Saccharomyces cerevisiae IFO 0210 、Saccharomyces ellipsoideus 京都大学保存株 4102
(4) カンジダ(Candida) 属;Candida glabrata IFO 0005, IFO 0741、Candida solani IFO 0762,Candida krusei IFO 0941
(5) クリプトコッカス(Cryptococcus)属;Cryptococcus humicolus IFO 1527
(6) シストフィロバシジウム(Cystofilobasidium)属;Cystofilobasidium infirmominiatum IFO 1057
(7) ロドトルラ(Rhodotorula)属;Rhodotorula minuta IFO 0715,Rhodotorula rubra IFO 0870
(8) ウィロプシス(Willopsis)属;Williopsis californica IFO 0800
(9) ハロフェラックス(Haloferax)属;Haloferax volcanii IFO 14742
【0017】
その他に、本発明で用いることのできるゲラニルゲラニオール、ファルネソール、及び/又はネロリドール生産菌としては、ディポダスカス(Dipodascus)属、イサチェンキア(Issatchenkia)属、モルチエレラ(Mortierella)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ツカムレラ(Tsukamurella)属、ヤマダザイマ(Yamadazyma)属、ベンシントニア(Bensingtonia)属、ボツリオザイマ(Botryozyma)属、ブレタノミセス(Brettanomyces)属、クラビスポラ(Clavispora)属、デッケラ(Dekkera)属、エレマスカス(Eremascus)属、エレモテシウム(Eremothecium)属、エリスロバシジウム(Erythrobasidium)属、クロッケラスポラ(Kloeckeraspora)属、ココバエラ(Kockovaella)属、コダマエア(Kodamaea)属、クルツマノミセス(Kurtzmanomyces)属、ロデロミセス(Lodderomyces)属、マラセジア(Malassezia)属、マラキア(Mrakia)属、ナドソニア(Nadsonia)属、パシソレン(Pachysolen)属、サツニスポラ(Saturnispora)属、シゾブラストスポリオン(Schizoblastosporion)属、スポロパシダミア(Sporopachydermia)属、ステファノアスカス(Stephanoascus)属、ステリグマトミセス(Sterigmatomyces)属、ステリグマトスポリジウム(Sterigmatosporidium)属、シンポジオミセス(Sympodiomyces)属、シンポジオミコシス(Sympodiomycopsis)属、トリゴノプシス(Trigonopsis)属、ツチヤエア(Tsuchiyaea)属、ジゴザイマ(Zygozyma)属、アシクロコニジウム(Aciculoconidium)属等に属するものが挙げられる。
【0018】
次に本発明で用いる微生物の培養について説明する。微生物を培養する培地としては通常、これらの微生物が生育し得る培地であれば良く、具体的には、酵母菌(子嚢菌酵母類、不完全菌酵母類)の場合、YM培地、KY培地、F101培地等が、細菌・放線菌の場合、KB培地等が例示される。炭素源としては菌体が資化し生育できる炭素化合物であればいずれでも使用可能である。
【0019】
窒素源としては、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機窒素源、酵母エキス、ペプトン、肉エキスなどの有機窒素源を使用することができる。これらの他に、必要に応じて、無機塩類、金属塩、ビタミンなどを添加することもできる。
【0020】
培養は、微生物の種類によって異なるが、通常は、温度20〜40℃、より好ましくは25〜35℃でpH5〜9で行うことが好ましい。また、微生物の種類に応じて嫌気下でも好気下でもいずれも行うことができるが、増殖速度が速いことから好気下での振盪培養や回転培養が好ましい。
【0021】
但し、培養条件は、用いる微生物や培地組成などに応じてゲラニルゲラニオール及びその類縁化合物の生産量が最大になるように設定することが重要であることは当然である。また、ゲラニルゲラニオール及びその類縁化合物(以下、ゲラニルゲラニオール類という)の生産量を増大させたり、生成物質の菌体外への分泌を促進させるには、培地に糖類及び/又は油脂類を添加するとよい。
【0022】
糖類としては、例えばグルコース、シュクロースを用いることができ、油脂類としては、例えば大豆油、魚油、アーモンド油、オリーブ油等を用いることができる。糖類の添加量は培地に対して例えば1%〜10%、好ましくは2%〜7%であり、油脂類の添加量は培地に対して例えば0.01%以上、好ましくは1%以上とすればよい。なお、本明細書では、添加割合を示すときに用いる(%)はw/v(%)を意味する。
【0023】
さらに、ゲラニルゲラニオール類の生産量を上げるためには、培地中にエルゴステロールとともにスクアレン合成酵素阻害剤を添加すればよい。スクアレン合成酵素阻害剤としては、BSM-187745(Toxiocology and applied pharmacology 145, 91-98 (1987))、SQAD、ゼラゴシック酸などが挙げられ、1〜20mg/L で用いればよい。
【0024】
本発明においてゲラニルゲラニオール類を生産する工程はバッチ式でも、また、バイオリアクターを用いた連続式でも可能である。微生物菌体はそのままゲラニルゲラニオール類の生産に供してもよいし、破砕菌体、菌体培養液、粗酵素、精製酵素等の菌体処理物としてもよい。また、培養菌体又は該菌体処理物は、固定化法で固定化してもよい。かかる菌体又は菌体処理物を培養することによって、ゲラニルゲラニオール類を菌体中又は培養上清中に生成蓄積せしめ、これを採取する。
【0025】
培養上清画分からゲラニルゲラニオール類を採取するには、遠心分離にて菌体を除去した後、得られた上清に塩化マグネシウムを含む緩衝液とアルカリフォスファターゼを加えて処理した後、ペンタン、メタノール等の溶剤にて抽出する。また、培養菌体画分からゲラニルゲラニオール類を採取するには、遠心分離にて集菌した菌体を破砕し、これに塩化マグネシウムを含む緩衝液とアルカリフォスファターゼを加えて処理した後、ペンタン、メタノール等の溶剤にて抽出する。また、上記の溶剤抽出法に、クロマトグラフィー等公知の精製方法を適宜併用することもできる。
【0026】
抽出の際、アルカリフォスファターゼを使用すると、菌体または培養液中にファルネソール、ゲラニルゲラニオールの前駆体として存在するファルネシルピロリン酸、ゲラニルゲラニルピロリン酸を加水分解させ、ファルネソール及びゲラニルゲラニオールの生産量を挙げるのに有効である。フォスファターゼは大腸菌由来のアルカルフォスファターゼが好ましいが、その他、ポテト酸性フォスファターゼ、子牛腸壁フォスファターゼなどを用いてもよい。また、ほとんどの微生物は、内在性フォスファターゼを有することから、若干の生産量は低下するが、フォスファターゼ処理をすることなく、有機溶媒抽出してもよい。なお、本発明の製造方法においてはゲラニルゲラニオール類の検出及び定量は、市販のガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(GC/MS)により行い、内部標準の1−ウンデカノールに対するピーク面積比により定量する。
【実施例】
【0027】
以下に代表的な実施例を示し本発明の具体的な説明を行うが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
〔実施例1〕(ゲラニルゲラニオール類生産菌のスクリーニング)
(1) 菌株
ATCC、IAM、IFO、JCMより購入した菌株及び京都大学清水研究室より入手した菌株約930株についてゲラニルゲラニオール類生産菌をスクリーニングした。
【0028】
(2) 菌株保存
菌株保存は以下の3通りを適宜行なった。
1 グリセロールストック
液体培養液900μlにオートクレーブ滅菌した50%グリセロール(ナカライ製)300μl を加え、−80℃と−20℃で保存した。−20℃保存菌体は一週間後にプレートに蒔き保存できていることを確認した。
【0029】
2 凍結乾燥
液体培養液2mlを2mlエッペンドルフチューブに入れて遠心し(6000rpm 、5分)、菌体を集めた。110 ℃、20分オートクレーブ滅菌した20%スキムミルク(森永乳業製)溶液150μl を加えて菌体を懸濁させた。乾熱滅菌したパスツールピペットを用いて懸濁液を凍結乾燥用ガラス管に入れ、−80℃冷凍庫で凍結させた。凍結乾燥機(Labconco製Lyph Lock 1L)で一晩十分に乾燥させてからハンドバーナー(Prince製GB20001)で封印した。Tesler coil(若井田理学製WTC−100型)を用い封印が確実であるかどうか確かめた。
【0030】
3 パラフィン重層
液体培養液と同じ培地組成の2%アガースラントを作製した。液体培養液よりディスポループを用いて菌をストリークした。室温に一週間おいて十分に菌が生えたことを確認してからオートクレーブ滅菌にした流動パラフィン(ナカライ製)を深さ1cm程度になるよう加え4℃にて保存した
【0031】
(3) 液体培地の調製
酵母菌培養にはYM培地(Difco 製) 、あるいは以下のようにして調製したKY培地、F101培地を用いた。細菌・放線菌については、KB培地を用いた。プレートは同培地に終濃度2%のバクトアガー(Difco製)を加え作製した。
【0032】
KY培地
以下を1Lの脱イオン水に加え、2N水酸化ナトリウム溶液でpH5.5に調整した後、脱イオン水で1Lにし、オートクレーブした。
Malt Extract (Difco製) 5g
Yeast Extract (Difco製) 5g
【0033】
F101培地
角切りしたジャガイモ200gを500ml の脱イオン水に入れ、30分間沸騰後、ガーゼで不溶化物を除去した。以下を加え、脱イオン水で1Lにし、オートクレーブした。
Yeast Extract (Difco製) 30g
グルコース (ナカライ製) 15g
シュクロース (ナカライ製) 15g
【0034】
KB培地
以下を1Lの脱イオン水に加え、2N水酸化カリウム溶液でpH7.0に調整し後、脱イオン水で1Lにし、オートクレーブした。
Bactotryptone (Difco製) 5g
Yeast Extract (Difco製) 5g
グルコース(ナカライ製) 1g
KH2PO4 (ナカライ製) 0.7g
K2HPO4 (ナカライ製) 0.3g
【0035】
(4) 液体培養
上記培地をそれぞれ用い、バッフル付き100ml容三角フラスコに培地20mlを入れ、モルトン栓をし、121℃、1.2 気圧にて15分間オートクレーブ滅菌を行った。これにスラントより一白金耳植菌し、30℃、130rpmで3日間回転培養した。
【0036】
(5) 上清画分からのゲラニルゲラニオール類の抽出
培養液2.5ml を18φmm×125mm 試験管に入れ、ベックマン製遠心分離器GP centrifugeで1000rpm 、5分遠心し、上清を新しい18φmm×125mm 試験管に移した。6mM の塩化マグネシウムを含むトリス塩酸緩衝液(pH8.0) 0.5ml 、大腸菌アルカリフォスファターゼ(宝酒造製)5 μl (2ユニット)を加え、65℃で30分加熱した。氷上で十分に冷却してからペンタン2ml 、メタノール1ml を加え、十分に混合後、ベックマン製遠心分離器GP centrifugeで1000rpm 、5分遠心し、上清を別の新しい試験管に移した。ドラフト内でペンタン・メタノール溶媒を蒸発させた後、300ml のペンタンに再溶解し、GC/MS 用バイアル瓶に詰めた。
【0037】
(6) 菌体画分からのゲラニルゲラニオール類の抽出
1 細菌・放線菌の場合
液体培養液10mlを50mlコーニングチューブに入れ、ベックマン製冷却遠心機(Avant J25-I)で6000rpm 、5分遠心分離し菌体を集めた。菌体を脱イオン水0.5ml に懸濁させた後、10mlスピッツ管に移し、東海電機製超音波細胞破砕機UC W-201で破砕した(条件:10℃、1分破砕−30秒停止を20分間繰り返す)。18φmm×125mm 試験管に移し、6mM の塩化マグネシウムを含むトリス塩酸緩衝液(pH8.0)0.5mlを加え、(5) と同様にしてフォスファターゼ処理、抽出を行なった。
【0038】
2 酵母の場合
液体培養液2.5ml を18φmm×125mm 試験管に入れ、ベックマン製遠心分離器GPcetrifugeで1000rpm 、5 分間遠心し、菌体を集めた。6mM の塩化マグネシウムを含むトリス塩酸緩衝液(pH8.0)0.5mlを加え、菌体を懸濁させた後、破砕用ガラスチューブに移した。等量のガラズビーズ(シグマ製 acid washed425φ-600μm)を加え、安井機械製Multi-Beads Schocker MB-200 で破砕した(条件:室温、2500rpm, 20 分) 。 18 φmm×125mm 試験管に全量移し、(5) と同様にフォスファターゼ処理、抽出を行った。
【0039】
(7) ゲラニルゲラニオール類の分析
アジレント社(Agilent)製HP6890/5973 GC/MSシステムを用い以下の条件で分析した。
1 インレット温度: 250 ℃
2 ディテクター温度:260 ℃
3 MSゾーン温度
MS Quad: 150℃
MS Source: 230℃
4 スキャンパラメーター
Low Mass: 35
High Mass: 200
Threshold: 40
5 インジェクションパラメーター
モード:自動インジェクション
サンプル量:2 μl
洗浄回数:メタノールで3回、ヘキサンで2回
スプリット比:1:20
カラム:アジレント社(Agilent)製HP-5MS
(0.25mm×30M、フィルム厚0.25μm)
キャリアーガス:ヘリウム1.0ml/min
ソルベントディレイ:2 min
オーブン昇温条件:115℃、1.5分保持
70/分で250℃まで昇温、2分保持
70/分で300℃まで昇温、7分保持
ポストタイム 0
内部標準:1−ウンデカノール/エタノール溶液(1μl/ml)を各バイアルに10μl添加
注入口ライナー:スプリット/スプリットレスライナー
解析:TIC を取り込んだ後、69マスをセレクションし、1−ウンデカノール(RT=3.39min)、ネロリドール(RT=3.86min)、ファルネソール(RT=4.23min)、ゲラニルゲラニオール(RT=5.78min)のピーク面積を積分した。内部標準のウンデカノールに対するピーク面積比より定量した。
【0040】
(8) 結果
供試菌中、子嚢菌酵母類162株のうちの約1/3、不完全菌酵母類73株のうちの約一割に ゲラニルゲラニオール及び/又はファルネソール生産菌を、また放線菌95株のうち3株にネロリドール生産菌を確認できた。表1にゲラニオ−ルのみを生産する菌株、表2にゲラニオールとファルネソールを生産する菌株、表3にファルネソールのみを生産する菌株、表4にネロリドールのみを生産する菌株をその生産量とともにそれぞれ示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】


【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
〔実施例2〕(培養条件の検討)
実施例1において、ゲラニオゲラニオール生産が多かった上位2株Hanseniaspora valbyensis IFO 0115株、Saccharomycodes ludwigii IFO 0339株、及びゲラニルゲラニオールとファルネソールの生産量が共に多かったCandida glabrata IFO 0005株について、培養日数、培地組成、ファスファターゼ処理の有無による生産量の変化を表5(培養上清画分)、表6(菌体画分)に示す。いずれの株もファルネソール、ゲラニオゲラニオールの生産は培養時間とともに増加し、培地に5%グルコースを添加すると菌体画分中の生産量が増加する。さらに、1%大豆油を添加した場合、Candida glabrataでは分泌が促進される。このように、微生物種によって差はあるものの、5%グルコースと1%大豆油を含む培地を用いることによりファルネソールとゲラニルゲラニオールの生産量、分泌量を増やすことが可能である。また、フォスファターゼ処理の有無で比較すると、上清画分ではフォスファターゼ処理しない方が検出量が多く、菌体画分では逆にフォスファターゼ処理すると検出量が多くなる傾向にあることから、ファルネシルピロリン酸、ゲラニルピロリン酸が菌体画分に存在していると考えられる。
【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
〔実施例3〕(培養条件の検討)
実施例1において試験した菌株のうちの数種について、YM培地にて培養した場合と、YM培地に5%グルコースと1%大豆油を添加した培地で培養した場合の生産量をそれぞれ表7、表8に示す。5%グルコースと1%大豆油を添加した培地では、生産量が大幅に上昇した。
【0049】
【表7】

【0050】
【表8】

【0051】
〔実施例4〕(培養条件の検討)
表9、10に示す各菌株を、YM培地又はYM培地に5グルコース、1%大豆油を添加した培地に、それぞれエルゴステロール 4mg/L及びスクアレン合成阻害剤(SQAD)を0 〜20mg/Lを添加した培地にて培養し、同様にしてネロリドール、ゲラニルゲラニオール、ファルネソールの各生産量を調べた。結果を表9、10に併せて示す。
【0052】
また、表11、12示す各菌株を、YM培地に1%大豆油、6%グルコース、エルゴステロール 4mg/L及びスクアレン合成阻害剤(SQAD)を0 mg/L又は20mg/Lを添加した培地にて培養し、同様にしてネロリドール、ゲラニルゲラニオール、ファルネソールの各生産量を調べた。結果を表11(培養上清画分)、表12(菌体画分)に示す。大豆油、グルコース、スクアレン合成阻害剤の添加によって、生産量が増加することがわかる。
【0053】
【表9】


【0054】
【表10】


【0055】
【表11】


【0056】
【表12】


【0057】
〔実施例5〕(培地条件の検討)
ファルネソールが検出されたバクテリアに関し、KB培地に1%大豆油、4mg/L エルゴステロール、スクアレン合成阻害剤(SQAD)を0 又は20mg/Lを添加した培地にてそれぞれ培養し、同様にしてネロリドール、ゲラニルゲラニオール、ファルネソールの各生産量を調べた。結果を表13に示す。バクテリアの場合も酵母と同様に、スクアレン合成阻害剤の添加によって生産量が増大することがわかる。
【0058】
【表13】

【0059】
〔実施例6〕
以下の表14に示す培養日数、培養温度、培地等の培養条件により、実施例1と同様の培養手順により種々の菌体を培養し、菌体画分及び上清画分からゲラニルゲラニオール類縁体を抽出し、分析した。その結果を表14に示す。なお、LBO−SSI培地、YPDO−SSI培地、YMO−SSI培地、YMOL−SSI培地、及びHVO−SSI培地は以下のようにして調製した。
【0060】
LBO−SSI培地
以下を脱イオン水1Lに溶解し、オートクレーブ滅菌した。滅菌後、十分に培地が冷えてからフィルター滅菌したスクアレン合成阻害剤SQAD水溶液(2.5mg/ml)を20mg/Lになるように添加した。
Yeast Extract (Difco製) 5g
Bactopeptone (Difco製) 10g
NaCl(ナカライ製) 5g
グルコース(ナカライ製) 50g
大豆油(ナカライ製) 10ml
エルゴステロール溶液 200μl(2% エルゴステロール、50% タージトールを含むエタノール溶液)
【0061】
YPDO−SSI培地
以下を脱イオン水1Lに溶解し、オートクレーブ滅菌した。滅菌後、十分に培地が冷えてからフィルター滅菌したスクアレン合成阻害剤SQAD水溶液(2.5mg/ml)を20mg/Lになるように添加した。
Yeast Extract (Difco製) 10g
Bactopeptone (Difco製) 20g
グルコース(ナカライ製) 50g
大豆油(ナカライ製) 10ml
エルゴステロール溶液 200μl(2% エルゴステロール、50% タージトールを含むエタノール溶液)
【0062】
YMO−SSI培地
YM 培地 (Difco社製)に以下を添加し、脱イオン水で1Lにしオートクレーブ滅菌した。滅菌後、フィルター滅菌したスクアレン合成酵素阻害剤SQAD(エーザイ社製、2.5mg/ml-水溶液)を20mg/Lになるよう添加した。
グルコース(ナカライ製) 50g
大豆油(ナカライ製) 10ml
エルゴステロール (ナカライ製) 4mg(20mg/50%エタノール、50%タージトール溶液200μl添加)
【0063】
YMOL−SSI培地
YMO培地に10mlのオリーブオイル(ナカライ製)を添加し、YMO−SSIと同様にして調製した。
【0064】
HVO−SSI培地
以下を脱イオン水1Lに溶解し、オートクレーブ滅菌した。滅菌後、十分に培地が冷えてからフィルター滅菌したスクアレン合成阻害剤SQAD水溶液(2.5mg/ml)を20mg/Lになるように添加した。
NaCl(ナカライ製) 156g
MgCl2・6H2O(ナカライ製) 13g
MgSO4・7H2O(ナカライ製) 20g
CaCl2・2H2O(ナカライ製) 1g
KCl(ナカライ製) 4g
NaHCO3(ナカライ製) 0.2g
KBr(ナカライ製) 0.5g
Yeast Extract (Difco製) 5g
グルコース(ナカライ製) 50g
大豆油(ナカライ製) 10ml
エルゴステロール溶液 200μl(2% エルゴステロール、50% タージトールを含むエタノール溶液)
【0065】
【表14】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンゼニアスポーラ(Hanseniaspora)属に属するゲラニルゲラニオール及び/又はファルネソール生産菌を培地に培養し、ゲラニルゲラニオール及び/又はファルネソールを菌体内外に生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする、ゲラニルゲラニオール及び/又はファルネソールの製造方法。
【請求項2】
上記ハンゼニアスポーラ属に属するゲラニルゲラニオール及び/又はファルネソール生産菌は、Hanseniaspora valbyensis IFO 0115であることを特徴とする請求項1記載のゲラニルゲラニオール及び/又はファルネソールの製造方法。

【公開番号】特開2007−181472(P2007−181472A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101999(P2007−101999)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【分割の表示】特願2001−376173(P2001−376173)の分割
【原出願日】平成13年12月10日(2001.12.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】