説明

微生物による代謝工学および産物形成の改善のための方法および手段

本発明は、生化学、分子生物学および微生物学の領域に関する。より詳しくは、本発明は、糸状体微生物または低G+Cグラム陽性細菌による、代謝工学および産物形成の改善のための方法および手段に関する。本発明は、DasRおよびDasR結合部位が、微生物中の遺伝子の発現の制御において、重要かつ普遍的な役割を果たすことを開示している。この発見に基づいて、本発明は、目的遺伝子の発現を調節するための方法、代謝を制御するための方法、不要な発現を減少させるための方法などのような、多数の有用な適用を提供する。さらに、本発明はまた、前記方法を確立するために使用可能な方法、たとえば特定の遺伝子に動作可能に連結したDasR結合部位が、前記遺伝子によってコードされたタンパク質(必要または不要タンパク質)の発現の増加または減少を得るように改変された微生物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学、分子生物学および微生物学の領域に関する。より詳しくは、本発明は、糸状体微生物または低G+Cグラム陽性細菌による、代謝工学および産物形成を改善する方法および手段に関する。
【背景技術】
【0002】
糸状体微生物は、抗生物質、抗がん剤、抗真菌剤および酵素のような産物の工業生産者として広く使用されている(Bennett、1998;Demain、1991;Hopwoodら、1995)。これらの微生物には、真核糸状体真菌(子嚢菌)および原核放線菌(たとえばアミコラトプシス(Amycolatopsis)、ノカルディア(Nocardia)、サーモビフィド(Thermobifido)およびストレプトミセス(Streptomyces))が含まれる。抗生物質および酵素の市場資本は、合計で、それぞれ年間280および20億ドルである。土壌居住放線菌ストレプトミセス コエリカラー(Streptomyces coelicolor)は、細菌発達および構成物産出の研究に対する重要なモデル系を構築している(Locci、1986)。ストレプトミセスコロニーは、気中胞子形成菌糸とは異なる栄養菌糸の網を形成する(Chater、1998)。これらの形態形成は、栄養制限に際して変化する、複雑な、空間的広がりのある、そして一時的な遺伝的にプログラムされたスキームによって制御される(Schauerら、1998;Willeyら、1991)。放線菌は、ポリサッカライドセルロース、キシランおよびキチンからなる、真核植物、真菌および昆虫の有機化合物のリサイクリングおよび栄養化における主要な主役であり、地球上のもっとも豊富な炭素供給源である(Hodgson、2000)。したがって、これらはまた、再生可能な供給源に対する我々の探求において、重要な役割を果たしている。興味深いことに、放線菌のゲノム配列の研究によって、驚くべき多数の潜在性抗生物質生合成クラスターと、工業的に可能性のある新規酵素が明らかになり、したがって、薬物および酵素を含む、天然産物の直接的発見に対する新たな挑戦が提示される(Hopwood、2003)。たとえば、選択的増殖条件が、エンジイン型抗がん抗生物質のために、正常休眠生合成クラスターを誘導可能である、新規スクリーニング技術が確立された(Zazopoulosら、2003)。
【0003】
細菌における広範囲な規制には、異なる細胞工程の遺伝子、オペロンおよびレギュロンの発現を調整する、多様活性転写因子の存在が含まれる(Martinez-AntonioおよびCollado-Vides、2003)。大腸菌(Escherichia coli)は、その遺伝子のおよそ半分を共に調節する7つの包括的な転写因子を持つ。もっとも目立つものは、約200の標的遺伝子を直接制御している、環状AMPレセプタータンパク質Crpである(BrucknerおよびTitgemeyer、2002;Gossetら、2004;Zhangら、2005)。Crpは、遺伝的調節因子のパラダイムを表しており、到達したテキストブック状態を持つその特性および大腸菌内の他の炭素供給源のCrp−cAMP仲介調節がおそらく、遺伝子発現を調整する機構を例示するためのもっとも古典的な例である。そのような多様調節の覆いを取り除くことが、本発明者らの細菌の生活様式の理解のために重要であり、炭素触媒カタボライトリプレッション(CCR)におけるCrpの役割の説明以来、炭素利用に専念した研究者らは、他の微生物における状況を議論するために、このモデルをいつも参照する。したがって、代謝物制御タンパク質CcpAは同様に、低G+Cグラム陽性細菌における包括的な調節因子であり、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)中、300以上の遺伝子を制御する(Morenoら、2001;TitgemeyerおよびHillen、2002)。CcpAは、CCR、解糖、窒素同化、およびリン酸代謝に関与する遺伝子を制御する(BrucknerおよびTitgemeyer、2002)。
【0004】
今まで、放線菌における炭素利用の研究は、広範囲の制御因子を発見できず、個々の糖鎖レギュロンを制御している特定の調節因子の例が得られただけである(HindleおよびSmith、1994;Parcheら、1999;van Wezelら、1997)。興味深いことに、放線菌は、エネルギーを多くの糖鎖特異的ABCトランスポーターに提供するためのマスタースイッチとしてMsiKを用いて、CCRから基質誘導へのシフトを全体的に調節するために、制御因子/センサー要素の他のカテゴリーに特権を与えた(Hurtubiseら、1995;Schlosserら、1997;Schlosserら、1999;Schlosserら、2000)。しかしながら、炭化水素代謝に関連した小数の遺伝子の上流を同定した保存調節モチーフが、炭素制御に専念したリサーチコミュニティーに興味を引きつけ、おそらく広範囲の制御因子が存在するであろうという考えを維持した(Nothaftら、2003;Rigaliら、2004;Studholmeら、2004)。へリックス−ターン−へリックスGntRファミリーの本発明者らのコンピュータ解析(Rigaliら、2002)によって最近、DasR(SCO5231)が、特にN−アセチルグルコサミンの取り込みに対するホスホトランスフェラーゼ系(PTSNag)を調節すると予測する、新規シス/トランス調節コードを同定された(Rigaliら、2004)。
【発明の開示】
【0005】
本発明者らは、タンパク質DasRが、微生物における多重工程に関与する調節マスタースイッチであることを開示する。
【0006】
第一の実施形態において、本発明は、DasR結合部位コンセンサス配列を、候補配列と比較すること、および少なくとも5.0のマトリックススコアを持つ候補配列を選択することを含む、発現がDasR−様タンパク質によって制御される遺伝子を同定するための方法を提供する。
【0007】
DasRタンパク質は、放線菌において高い相同性を示している。これらのDasRタンパク質のすべてが、DNA結合モチーフ、好ましくは、へリックス−ターン−へリックスDNA結合モチーフを含む。図14は、放線菌のDasR相同物のアライメントを示している。DNA結合モチーフは、大体タンパク質の最初の80アミノ酸中に存在する(もっとも重要な形跡が、図14にて、へリックス−ターン−へリックスドメインに関して、HTHによって示唆されている)。図20は、10の異なる放線菌からの、DasR結合モチーフのアライメントを表している。タンパク質の第二の部分(およそ80〜255)が、他のGntR−型転写制御因子のエフェクター結合ドメイン(EBD)に対して相同性を持ち、したがってグルコサミン−6−Pの結合が発生することが予想される場所である。
【0008】
DasR−様タンパク質は典型的に、好ましくは、放線菌から得た/由来したDasRタンパク質またはその機能的等価物および/または機能的断片であり、DasRタンパク質は、以上で概略した特徴を含み、すなわちDNA結合ドメイン、EBDを含み、およびたとえば、(コンセンサス)DasR結合部位へ結合可能である。DasRタンパク質の例は、図14(AまたはBまたはC)にて示されているDasRタンパク質である。当業者には、たとえばストレプトミセス コエリカラー(Streptomyces coelicolor)からのDasRタンパク質を、たとえば、点変異または(小)欠損を導入することによって、以上で概略した特徴を明らかに変更することなしに改変可能であることが明らかである。したがって、DasR−様タンパク質は、おそらく、前記DasR−様タンパク質の(コンセンサス)DasR結合部位(またはDasR標的部位:語句は本明細書で互換的に使用される)への結合をあきらかに干渉しない変異を含む、好ましくは、たとえば、ストレプトミセス クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)、ストレプトミセス アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトミセス グリセウス(Streptomyces griseus)、ストレプトミセス スカビエス(Streptomyces scabies)、ストレプトミセス種139またはサーモビフィド フスカ(Thermobifido fusca)から得た、DasRタンパク質である。ストレプトコッカス クラブリゲルスDasR配列が、本発明者らによって決定され、核酸配列ならびにアミノ酸配列を図19に描写している。したがって、また他の実施形態において、本発明は、図19Bにて描写されたようなタンパク質をコードしている単離または組換え核酸を提供する。好ましい実施形態において、前記核酸は、図19Aにて描写されたような核酸である。
【0009】
種々の他の放線菌中のDasRのDNA結合モチーフ間の違いの程度を確立するために、本発明者らは、いくつかの他の放線菌からのdasRの相当する部分のDNA配列を決定し、アミノ酸配列(図20)を導き出した。このことは、放線菌dasR遺伝子のDNA結合モチーフおよびそれらの遺伝子産物が非常に高く保存されており、すべての放線菌中で、同一の結合部位に結合することを示している。したがって、他の好ましい実施形態において、DasRのDNA結合モチーフは、図20にて提供されるコンセンサス配列のものと一致する。
【0010】
図14AまたはBより、DasR−様タンパク質が、放線菌から由来するだけでなく、ストレプトコッカス(Streptococcus)のような低G+Cグラム陽性細菌からも由来可能であることが明らかである。さらに、図14Cより、本発明にしたがった方法または手段を、ストレプトミセス コエリカラーにて同定されたものであるDasR相同物で実施/提供可能でもあることが明らかである。したがって、語句DasR−様タンパク質は、放線菌からのDasRタンパク質のみでなく、低G+Cグラム陽性細菌の、または任意の言及した有機体にて同定されたDasR相同物も含む。
【0011】
放線菌中のDasR結合部位(dre)に対するコンセンサス配列は、NN(T/A)GG(T/A)(C/G)(A/G)N(A/T)(C/A)(A/C)Nであり、(すべての公知のDasR結合部位の80%以上で発生する)もっとも高く保存されたヌクレオチドに下線を引いている。好ましい実施形態において、コンセンサス配列は、(A/T)N(T/A)GGTCANACANである。より好ましい実施形態において、放線菌中のDasR結合部位は、ACTGGTCACACA(G/C)である。Nは任意のヌクレオチド(G、A、TまたはC)であり、たとえば(T/A)のような、丸括弧間の2つのヌクレオチドは、言及されたヌクレオチドの1つが存在することを意味する。特定の例において、TまたはAである。
【0012】
放線菌中のDasR結合部位に対するコンセンサス配列をまた、他の細菌、好ましくはグラム陽性細菌における部位を探すために使用する。バチルス(Bacillis)種に対する同定されたコンセンサス配列は、(A/G)N(T/A)(G/T)(G/A)T(C/A)TA(G/T)A(C/T)(C/A)(A/T)N(T/C)であり、ラクトコッカス(Lactococcus)種に対しては、A(T/A)(T/C)(G/A)(G/A)TATATA(C/T)(C/T)(A/G)(A/T)Tであり、リステリア(Literia)種に対しては、A(T/C)(T/C)(G/T)(G/A)T(A/C)TA(T/G)A(C/T)(C/A)(A/G)(A/G)Tであり、ストレプトコッカス(Streptococcus)種に対しては、(A/T)(T/A)T(G/A)(G/T)(A/C)TA(T/G)N(C/A)(C/T)A(A/T)(T/A)である。再び、Nは任意のヌクレオチド(G、A、TまたはC)でありえ、たとえば(A/G)のような、丸括弧間の2つのヌクレオチドは、言及されたヌクレオチドの1つが存在することを意味する。特定の例において、AまたはGである。したがって本発明は、DasR結合部位コンセンサス配列を候補配列と比較すること、および少なくとも5.0のマトリックススコアを持つ候補配列を選別することを含む、発現がDasR−様タンパク質によって制御される遺伝子を同定するための方法を提供し、前記遺伝子は、好ましくは、相当する同定されたDasR結合部位コンセンサス配列との組合せで、放線菌、バチルス、ラクトコッカス、リステリアまたはストレプトコッカス中に存在する。
【0013】
好ましくは、発現がDasR−様タンパク質によって制御される候補遺伝子を、位置加重マトリックスを用いて決定する。マトリックススコアを、Rigaliら、2004によって、また本発明の物質および方法にて記述された方法にしたがって決定する。簡単に記すと、公知のDasR結合部位の組を、標的有機体、たとえばストレプトミセス コエリカラーにおける第一検索を実施するために使用する。これによって結果として新規部位となり、実験的に検証される。得られた公知の標的を使用して、位置加重マトリックスを構築し、これを、標的有機体の完全なレギュロンを予想するために使用する。
【0014】
好ましい実施形態において、候補配列は、少なくとも7.0のマトリックススコアを持つ。より好ましくは、スコアは9.0と等しいか、より高い。試験した9以上のスコアを持つすべての標的が、DasRによって結合されるとわかった。
【0015】
またより好ましい実施形態において、本発明にしたがった方法にはさらに、前記選択された候補配列の発現が、実際にDasRによって制御されるかどうかを試験することが含まれる。これはたとえば、DasR−様タンパク質の、前記選択された、同定された候補配列への結合を試験することによって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
DasR結合部位は典型的に、目的遺伝子の上流に局在する。表2は、目的遺伝子の転写開始部位に対する、DasR結合部位の位置を示している。より詳しくは、非限定的解釈にて、DasR結合部位が、目的遺伝子のプロモーターの上流に局在する場合、前記目的遺伝子の転写における活性化の役割をもつ可能性がある。反対に、DasR結合部位がプロモーターと重なる場合、またはその下流に局在する場合、前記目的遺伝子の転写のリプレッサーとして機能する可能性がある。しかしながら、いくつかの証明されたDasR結合部位が、目的遺伝子の内部で見つかった。この1つの例が、S.オリバセオビリジス(S.olivaceoviridis)(Genbank Q8GBT8)の標的遺伝子malX2である。この場合、dre部位(ACTGGTCTACACCACC)は、S.コエリカラーmalX2(ACTGGTCTACACCAGT;表2中#3、マトリックススコア16.2)のものとほとんど同一であるが、転写開始部位のnt位置+36〜+51間で局在する。DasRのこの部位への結合は、二本鎖オリゴヌクレオチド上のEMSAによって証明された。したがって、DasR結合部位が、目的遺伝子の上流および内部両方で機能的でありうることが明らかである。
【0017】
上記方法にて、本発明者らは、主要および二次代謝のためのレギュロンを含む、200以上の遺伝子が、DasRによって直接制御されることを、(新規および限定的DasR結合部位位置加重マトリックスを用いることによって)確立した。これらの遺伝子は、表2にて記述した約130転写ユニットから由来する。同定された遺伝子は、(表1Bにて要約した)糖またはアミノ糖代謝に関連した遺伝子、またはポリサッカライド分解に関与する遺伝子のような、異なる遺伝子のカテゴリーまたは遺伝子に属する。DasR標的のリストにはまた、転写因子も含まれ、したがって、DasR標的がまた、間接転写制御にも関与すると結論づけられる。DasRによって制御/調節される遺伝子の多様性は大きく、したがって、本発明者らは、DasRを、微生物における遺伝子発現の調節におけるマスタースイッチであると考える。
【0018】
今や本発明者らが、DasRおよびDasR結合部位が、微生物における遺伝子発現の制御において、そのような重要かつ普遍的役割を果たすことを開示しているから、本発明は、目的遺伝子の発現を制御するための方法、代謝を制御するための方法、望まない発現を減少させるための方法などのような、多数の有用な適用を提供する。さらに、本発明はまた、前記方法を確立するために利用可能な方法を提供し、たとえば、特定の遺伝子と動作可能に結合するDasR結合部位を、前記遺伝子によってコードされた(必要または不要タンパク質である)タンパク質の発現の増加または減少を得るために改変し得る。方法および手段の他の例が以下の記述で提供されるであろう。
【0019】
1つの実施形態において、本発明は、微生物に、前記目的遺伝子と動作可能に結合したDas−結合部位、またはその産物が前記目的遺伝子の発現に関与する遺伝子と動作可能に結合したDasR−結合部位への、DasR−様タンパク質の結合を干渉可能な化合物を提供することを含む、DasR−様タンパク質を含む微生物中の、目的遺伝子の発現を調節するための方法を提供する。
【0020】
目的遺伝子の発現を調節するための前記方法は、目的遺伝子の発現を増加させるための方法、または目的遺伝子の発現を減少させるための方法でありうる。これは、とりわけ、前記目的遺伝子の発現が望ましいか、または望ましくないか、に依存する。目的遺伝子の発現が望まれる場合、発現は好ましく増加し、目的遺伝子の発現が望まれない(すなわち望まない)場合、発現が好ましく減少される。DasR−様タンパク質の、DasR−結合部位への結合を干渉可能な前記化合物の活性が結果として、前記タンパク質と前記部位間の結合の増加、または減少となるに違いなく、DasR−様タンパク質のDasR結合部位への結合に際して、前記目的遺伝子の発現が、抑制されるか、または活性化されるかに依存する。表2(ならびに表4)より、遺伝子の発現が、DasR−様タンパク質のDasR−結合部位への結合に際して抑制されること(たとえば、表2の#1、3、5または7)、およびDasR−様タンパク質のDasR−結合部位への結合に際して、他の遺伝子の発現が活性化されること(たとえば表2の#13)が明らかである。正しい活性経路を決定するためのすべての必要な情報が、本明細書で提示されている。さらに、特定の遺伝子またはオペロンの発現が活性化される、または抑制されるかどうかにおける情報が、マイクロアレイアプローチを用いることによって展開される。そのような実験の1つの例が、DasR−様タンパク質を含む微生物中の遺伝子の発現の、DasR−様タンパク質、(ヌル)変異体を含む微生物中の遺伝子の発現に対する比較である。他の例は、誘導体分子(たとえばグルコサミン−6−P)の存在する状態、または存在しない状態で増殖したDasR−様タンパク質を含む微生物中の遺伝子の発現の比較である。また他の例は、ChIP−オン−チップアプローチと呼ばれるものを利用することであり、DasR−様タンパク質結合DNA断片がマイクロアレイにハイブリッド形成される。これは、DasRによって直接結合した標的を同定する。
【0021】
後に、より詳細に議論するように、DasR−様タンパク質を含む微生物は、DasR−様タンパク質を含む微生物、または前記タンパク質をコードしている核酸から前記DasR−様タンパク質を発現可能な有機体である。さらに、前記微生物は、DasR−様タンパク質を発現可能な性質によっての有機体でありえ、またはDasR−様タンパク質を産出するように遺伝的に改変された微生物でありうる。さらに、(内因性)DasR−様タンパク質をすでに発現可能な微生物に、よりDasR−タンパク質の産出を可能にするさらなる核酸を、提供することも可能である。そのようなDasR−様タンパク質をコードしているさらなる核酸は、内因性DasRをコードしてよく、または異種DasR−様タンパク質をコードし得る。
【0022】
すでに以上で概説したように、DasR−様タンパク質のDasR−結合部位への結合を干渉可能な化合物は結果として、DasR−様タンパク質の前記結合部位への結合の増加、または減少となり、すなわち干渉が、前記タンパク質と前記結合部位間の結合を増加させる、または結合を減少させると読むことが理解されなければならない。
【0023】
またすでに以上で概説したように、DasR−調節遺伝子は非常に多様であり、たとえば代謝工程に関与する遺伝子、ならびに転写因子である遺伝子の範囲であり得る。さらに、有機体中の多数の工程が、(酵素)反応のカスケードと呼ばれるものを含む。したがって、DasR−結合部位は、特定の目的遺伝子と動作可能に連結してよく(すなわち直接末端産物)、またはDasR−結合部位は、その産物が前記目的遺伝子の発現に関与する遺伝子に動作可能に連結し得る(たとえば、カスケード中の中間体、または目的遺伝子の遺伝子発現に関与する転写因子)。したがって、本発明にしたがった方法は、目的遺伝子の発現を直接調節可能であり、または本発明にしたがった方法は、目的遺伝子の発現を間接的に調節可能である。
【0024】
直接調節には、目的遺伝子が、単一転写ユニットまたは座であるか、または目的遺伝子がオペロンの一部分である状況が含まれる。
【0025】
間接調節にはまた、DasR−様タンパク質が、調節因子(タンパク質または核酸)の発現を制御し、それによって調節因子が他の遺伝子の発現を調節可能である状況が含まれる。前記調節因子は、標的遺伝子または標的オペロンまたは標的レギュロンの発現を調節することの元であり得る。本発明のこの部分は、表2がまた16の転写因子(#27、31、46、51、56、62、67、71、77、81、84、105、119、129、130および131)を含むという発見によって支持され、大規模なレベルのDasRによる間接転写調節を支持している。
【0026】
DasR−様タンパク質のDasR−結合部位への結合を干渉可能な化合物を微生物に提供し得る多数の方法が存在する。これはまた、(本明細書以下でより詳細に議論される)化合物の型に依存する。DasR−様タンパク質のDasR−結合部位への結合を干渉可能である化合物が、たとえば前記微生物によって(たとえばエンドサイトーシスまたはファゴサイトーシスを介して、または膜を通しての活発な輸送を介して)微生物によって取り込まれる、低分子量および/または化学化合物である場合、前記化合物は、前記微生物の環境(たとえば増殖培地)に単純に加えられる。DasR−様タンパク質のDasR−結合部位への結合を干渉可能である化合物が核酸(DNAまたはRNA)である場合、前記微生物に好ましくは、任意のよく知られている技術で、前記核酸を(たとえば、トランスフェクション、形質導入または形質転換を介して)提供する。
【0027】
すでに言及したように、DasR−様タンパク質のDasR−結合部位への結合を干渉可能な化合物は、性質上非常に多様であり、たとえば、低(化学)分子、金属またはイオン、γ−ブチロラクトンのような、またはペプチド由来のシグナル伝達化合物、非リボソームペプチド、タンパク質または核酸でありうる。好ましい実施形態の1つにおいて、前記化合物は、遺伝的化合物、すなわち核酸(DNAまたはRNA)である。好適な核酸の1つの例は、dasR核酸、すなわち、DasR−様タンパク質(またはその機能的断片または誘導体)をコードしている核酸である。より好ましくは、そのようなdasR核酸は、強力な、または誘導可能なプロモーターの制御下である。DasR−結合部位と動作可能に連結した目的遺伝子の発現が、通常DasR−様タンパク質の結合に際して活性化される場合、より(たとえば過剰発現DasR)の存在が、前記目的遺伝子の発現をさらに誘導/増加/活性化可能である。DasR−結合部位と動作可能に連結した目的遺伝子の発現が通常、DasR−様タンパク質の結合に際して抑制される場合、および前記目的遺伝子の発現が結果として不要な産物となる場合、より(たとえば過剰発現DasR)の存在が、前記目的遺伝子の発現をさらに低減/減少/抑制可能であり、不要な産物の量は、少なくとも部分的に(さらに)減少する。好適な核酸の第二の例は、変異タンパク質DasR−様タンパク質、たとえば、DasR−結合部位に対する結合能力が減少したDasR−様タンパク質、またはDasR−結合部位に対する結合能力が改善されたDasR−様タンパク質、またはもはや誘導因子と呼ばれるものによって活性化されないDasR−様タンパク質(たとえば、エフェクター結合ドメイン中変異したか、または欠損しているDasR−様タンパク質)をコードしている核酸である。図14にて提供された情報に基づいて、当業者は簡単に、特定の結果を得るためにどのDasRタンパク質の部分を改変可能であるかを決定可能である。たとえば、DNA結合部位中の変異(欠損、挿入、(点)変異)が、そのような改変されたDasR−様タンパク質のDasR−結合配列への結合能力において効果を持ちうる。提供された変異の効果は、結合アッセイによって簡単に試験される。好適な核酸の第三の例は、(DasR−タンパク質結合能力が減少したか、増加したかのいずれかである)改変されたDasR−結合部位を含む核酸である。好ましくは、そのような核酸は、通常目的遺伝子の前に存在するDasR−結合部位が、改変された結合部位と交換される方法で、特定の微生物のゲノム内に配置される。さらに、その発現がDasRによって調節されない目的遺伝子を、遺伝子の上流または内部に、(改変した)DasR−結合部位を含むように改変可能である。場合によっては、関連微生物にさらに、(タンパク質として、または前記DasR−様タンパク質をコードしている核酸として)DasR−様タンパク質が提供され、前記遺伝子の発現がここでDasRによって制御される。(改変)DasR−結合部位の利用には典型的に、相同組換え工程が含まれる。相同組換えを得るための技術が、当業者に公知であり、したがって、さらなる詳細は前記主題においては提供しない。好適な核酸の第四の例は、改変dasRプロモーターを提示している核酸である。DasRの内因性の発現は自動制御される。DasRタンパク質が、特定の量で存在する場合、DasRの量が特定の閾値レベル以下であるまで、その固有の発現が自己抑制される。DasR−プロモーターを、自動制御されないプロモーターへ改変することによって、利用可能なDasRタンパク質の量が増加し、したがって、特に前記遺伝子と動作可能に連結したDasR結合部位へのDasR−様タンパク質の結合に際して増加する目的遺伝子の発現が増加する。そのような核酸の利用に、好ましくは、本来提示されたdasRプロモーターが、改変dasRプロモーターに対して(少なくとも部分的に)交換される、組換え工程が含まれることが、当業者に明らかである。好適な核酸の第五の例は、第三の例に関連し、さらなる、または欠損DasR結合部位に対してアレンジされる核酸が含まれる。目的遺伝子と動作可能に連結したさらなるDasR結合部位の導入は、とりわけ、DasR結合に際して活性化される遺伝子発現の場合に有用であり、DasR結合部位の欠損は、たとえば、DasR結合に際して抑制されるが、その発現が望まれる遺伝子発現の場合に有用である。
【0028】
DasR−様タンパク質のDasR−結合部位への結合を干渉可能な非常に有用な化合物のまた他の例は、誘導因子である。そのような誘導因子は、目的遺伝子の発現が、DasR−様タンパク質の、目的遺伝子に動作可能に連結したDasR結合部位への結合に際して抑制される場合に、非常に有用である。好ましくは、そのような誘導因子は、糖の誘導体である。実験部分内で開示するように、グルコサミン−6−リン酸(語句グルコサミン−6−Pは本明細書で互換的に使用される)が、DasR−抑制遺伝子発現の非常に強力な誘導因子である。好ましい実施形態において、N−アセチルグルコサミン(またはその誘導体または多重体)を微生物の環境に加え、前記N−アセチルグルコサミンが、前記微生物内への伝達に際して、グルコサミン−6−リン酸へ変換される。そのような誘導因子の利用は、それが微生物の遺伝的操作をまったく含まず、単純に、外部からの操作(すなわち、N−アセチルグルコサミンまたはその誘導体または多重体の添加)からなるので、非常に利点がある。
【0029】
本発明者らは、N−アセチルグルコサミンに対する2つの潜在的トランスポーター、すなわち近接遺伝子nagE1およびnagE2を同定した。実験部分で記述したように、これらの遺伝子の変異体が構築され、nagE2が、N−アセチルグルコサミンに対するトランスポーターをコードしている遺伝子であることが明らかである。この発見によって、DasR−様タンパク質のDasR−結合部位への結合を干渉可能なより有用な化合物が提供される。たとえば、本発明の任意の方法にて使用されるようなDasR−様タンパク質を含む微生物は、(機能的な)NagE2を産出不能であり、前記微生物は、外部に提供された、および/または形成/産出されたN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)へ応答可能ではなく、DasRが活性のままである(DasR抑制遺伝子の場合、DasRは結合したままである)。他の例において、GlcNAcトランスポーターの量が増加し、これはたとえば、微生物に、前記GlcNAcトランスポーターをコードしている核酸(好ましくはnagE2)を提供することによって得られる。この場合、さらにGlcNAcが細胞内に輸送され、結果として、さらにグルコサミン−6−リン酸が産出される。結果として、DasR−抑制発現が減少し、発現が通常抑制される遺伝子の発現が増加する。また他の例において、GlcNAc−輸送をコードしている遺伝子を、GlcNAcの変異体のみを細胞内に輸送するように変異させる。
【0030】
DasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を干渉可能な化合物のまた他の例は、DasR、またはDasR結合部位いずれかへ結合する抗体(またはその断片、たとえば結合部分)の利用であり、したがって、少なくとも部分的に、DasRのDasR結合部位への結合を阻害する。
【0031】
DasR−様タンパク質のDasR−結合部位への結合を干渉可能な任意の上記化合物を場合によって混合し得ることが、当業者に対して明らかである。
【0032】
すでに記述したように、その発現が、DasRによって調節された遺伝子の種類は非常に多様である。DasRによって調節される異なるカテゴリーの遺伝子の要約に関して、また図1Bを参照のこと。そのような遺伝子の1つの群は、代謝工程に関与する遺伝子である。したがって、また他の実施形態において、本発明は、その産物が、代謝経路の一部である遺伝子に動作可能に連結したDasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を調節することを含む、DasR−様タンパク質を含む微生物中の代謝を制御するための方法を提供する。好ましい実施形態において、その産物が代謝経路の一部である遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を、前記微生物に、前記DasR−結合部位への前記DasR−様タンパク質の結合を干渉可能な化合物を提供することによって調節する。
【0033】
その産物が代謝経路の一部分である遺伝子の動作可能に連結した、DasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を干渉可能な化合物が、(すでに以上で議論したような)特徴において非常に多様であり、たとえば低(化学)分子、金属またはイオン、γ−ブチロラクトンのような、またはペプチド由来のシグナル伝達分子、非リボソームペプチド、またはタンパク質または核酸でありうる。1つの好ましい実施形態において、前記化合物は、遺伝的化合物、すなわち核酸である。好適な核酸の例はすでに以上で記述している。そのような代謝遺伝子の発現が、前記遺伝子と動作可能に連結した、DasR結合部位へのDasRタンパク質の結合に際して減少する場合、(以上で議論したように)グルコサミン−6−リン酸のような誘導因子を利用することも可能である。
【0034】
その産物が、代謝経路の一部である(または代謝に関与する)前記特定の遺伝子の発現が、前記特定の遺伝子と動作可能に連結したDasR結合部位へのDasRの結合に際して、抑制されるか、または活性化されるかどうかに依存して、当業者が、前記特定の遺伝子の前で、DasRタンパク質とDasR結合部位間の結合が、増加するまたは減少する、さらにそれ以上でなければならないか決定することが可能であり、本明細書は、どのようにして結合を増加させる、または減少させるかの多数の例を提供している。
【0035】
その産物が、代謝経路の一部である遺伝子の例を、表2にて非限定的に言及している。1つの例が、グルタミン酸/グルタミン代謝に関与する遺伝子に関する。表4にて要約している。これらの遺伝子は、Glu/Glnの合成または分解に関与する酵素をコードしているが、またリボソームによって合成されたポリペプチドへのGluまたはGlnアミノ酸の取り込みを特定する、コドンの転写に必要であるtRNA分子もコードしている。
【0036】
第二の例には、N−アセチルグルコサミンおよび関連分子の代謝が含まれる。N−アセチルグルコサミンに対する経路は、図5にて示したような、グルタミン酸の経路に関連する。例には、ポリマーキチンをN−アセチルグルコサミンへ変換するキチン分解遺伝子(たとえば、表2中#7、11、12、14、19、23、25、26)、N−アセチルグルコサミンを細胞内へ輸送するPTS(たとえば表2中#1、2、3、5)、および代謝遺伝子nagK、nagA(#10オペロン)、およびnagB(#15)が含まれる。
【0037】
グルタミン酸およびN−アセチルグルコサミン代謝に関連する他の核酸は、RNAリボザイムであり、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)中のglmS遺伝子を処理し(Winklerら、2004)、したがって、放線菌のような他のグラム陽性細菌中で珍しくはない。glmS遺伝子は、DasRによる制御の標的であり(表2中86)、その遺伝子産物GlmSは、グルコサミン−6−Pを形成するために、グルタミンおよびフルクトース−6−Pを利用する。glmS転写物の処理は、mRNAの活性化のために必要とされる。おもしろいことに、リボザイムは、GlmS酵素の代謝産物である、グルコサミン−6−Pによって活性化される。本発明者らは本明細書で、グルコサミン−6−PがまたDasRの誘導因子分子であることを示した。Winklerらによるさらなるデータが、リボザイムが、代謝状態に応答し、グルコサミン−6−P濃度の上昇に対する応答で、glmS遺伝子を抑制することを示した。
【0038】
第三の例は、解糖に関与する酵素(たとえば、ホスホフルクトキナーゼ、表2中#74、また表8中フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ、フルクトース−1−リン酸キナーゼおよびホスホエノールピルビン酸シンターゼを参照のこと)およびアセチル−CoA形成または処理(たとえばアセトアセチル−CoAシンターゼ、#12表2、アセチル−CoAデヒドロゲナーゼ、表2中#25、およびアセトアセチル−CoAチオラーゼ(ThiL、DasRによる活性化、図4))のような、エネルギー供給に関する。アセチルCoAは、TCA回路の重大な開始化合物である。驚くべきことに、DasRがまた、NADHデヒドロゲナーゼのサブユニットをコードしているnuoオペロンの制御を直接介して、エネルギー供給を制御する(表2中#104、2つのDasR結合部位)。この酵素は、エレクトロン輸送(酸化還元)連鎖の第一である。
【0039】
表2に対して言及した多くの例がまた、低G+Cグラム陽性細菌中に存在する標的遺伝子を意味する、表4〜7および9の一部でもある。したがって、代謝改変アプローチをまた、バチルス、ラクトコッカス、ラクトバチルス、ストレプトコッカスおよびリステリアを含む、この重要なクラスの細菌に類似の様式で適用する。
【0040】
本発明にしたがって影響をうけうる代謝工程または経路は、アミノ酸代謝、ペプチドグリカン分解または合成、脂肪酸生合成、代謝物の輸送、細胞外ポリサッカライドの分解(好ましくはグルコース、フルクトース、ガラクトース、N−アセチルグルコサミン、グルコサミン、マンノースまたはキトビオース、またはこれらの組合せのポリマー)または窒素代謝である。
【0041】
好ましい実施形態において、本発明は、その産物が、代謝経路の一部である遺伝子に動作可能に連結したDasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を制御することを含む、DasR−様タンパク質を含む微生物中の代謝を制御するための方法を提供し、そこで、前記遺伝子の発現が結果として、前記微生物中の、解糖へ、またはから、またはクエン酸(TCA)回路へ、またはから指向する相当する産物の存在となる。
【0042】
本発明者らは、サーモビフィド フスカ(Thermobifido fusca)中のそのような代謝制御のとくに驚くべき例を同定し、そこでは、解糖のすべての段階が、DasR−様タンパク質によって制御されている(図17および表9)。したがって、たとえば、DasRの活性が、前記微生物中の解糖およびTCA回路の制御を可能にすることが、当業者に対して明らかである。
【0043】
本発明者らによって同定される他のDasR−制御遺伝子には、抗生物質または抗生物質クラスター(商業的な面から見て魅力のある)酵素などが含まれる。
【0044】
したがって、本発明は、また他の実施形態において、前記目的産物をコードしている遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位、または前記目的産物の産出に関与する遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を干渉可能な化合物を、前記微生物に提供することを含む、DasR−様タンパク質を含む微生物中の目的産物の発現を得るための方法を提供する。
【0045】
前記目的産物をコードしている遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位、または前記目的産物の産出に関与する遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を干渉することは、結合が少なくとも部分的に阻害されることでありえ、または結合が少なくとも部分的に増加されることでありうる。「少なくとも部分的に(at least in part)」は、化合物を加えない状態と、前記化合物を加えた状態間で、検出可能な差が存在することを意味する。好ましい実施形態において、DasR結合部位へのDasR−様タンパク質の結合が、本質的に完全に阻害されるか、または結合が本質的に不可逆性である。
【0046】
目的産物をコードしている遺伝子と動作可能に連結したDasR結合部位とDasRタンパク質間の結合に影響を与えることが可能な異なる化合物がすでに以上で議論されており、遺伝的化合物(すなわち、核酸、場合によって、相当する微生物のゲノム中に安定に統合された、または前記微生物中エピソーム核酸として存在する)、またはタンパク質またはホルモン−様シグナル伝達低分子、またはたとえば低分子量(化学)化合物が含まれる。他の好ましい実施形態において、前記化合物は、DasR−調節工程の誘導因子である。そのような誘導因子は、DasR−抑制発現の場合にとりわけ有用である。そのような誘導因子の例は、グルコサミン−6−リン酸またはその機能的等価物または機能的断片である。好ましくは、N−アセチルグルコサミン(またはその誘導体または多重体)を、前記目的産物の産出のために使用する微生物の培地に提供する。
【0047】
好適な化合物は、前記目的産物に相当する遺伝子の発現が、前記遺伝子に動作可能に連結したDasR結合部位へのDasR−タンパク質の結合に際して、活性化されるか、または抑制されるかどうかの事実に依存して選択される。発現が結合に際して活性化される場合、DasRタンパク質の、関連する遺伝子と動作可能に連結した結合部位への結合を、発現を増強または改善または得るために、改善することが望ましい。これはたとえば、関連する遺伝子と動作可能に連結したDasR結合部位を加えることによって、またはDasRとのその相互作用を改善するために結合部位(より高いマトリックススコア)に変異導入することによって、または改善された結合能力を持つDasRを加えることによって、などで達成される。DasRの結合に際して発現が抑制される場合、前記結合部位へのDasRの結合を減少させ、したがって抑制から前記発現を開放すことが望ましい。これはたとえば、関連するDasR結合部位の欠損または変異導入によって達成される。
【0048】
好ましい実施形態において、前記目的産物は二次代謝物である。二次代謝物の例を、表3にて提供しており、クラブラン酸またはブチロラクトン類のような化合物が含まれる。
【0049】
クラブラン酸は、ペニシリンを不活性化可能なベータ−ラクタマーゼ−型酵素、および他のベータ−ラクタム−型抗生物質の非常に重要な阻害剤である。したがって、クラブラン酸はしばしば、患者がペニシリン耐性細菌に感染していると予想される時に、ペニシリンのようなベータ−ラクタム抗生物質との組合せで、患者に投与される。したがって、本発明の方法をまた、クラブラン酸の発現を増加させるために使用する。
【0050】
DasRはまた、S.ビルギニアエ(S. virginiae)中のbarBのような、ホルモン−様γ−ブチロラクトン類の生合成に関与する(表3)。これらのγ−ブチロラクトン類は、放線菌における抗生物質産出および形態形成を制御する重大なシグナル伝達化合物である(Horinouchi、2002;BeppuおよびHorinouchi、1991;HorinouchiおよびBeppu、1993;HorinouchiおよびBeppu、1992)。たとえば、A−因子が、S.グリセウス(S. griseus)におけるストレプトマイシン産出を制御する。したがって、他の実施形態において、本発明は、シグナル伝達分子の制御を間接的に介して、抗生物質産出を間接的に調節するための方法を提供する。
【0051】
また他の好ましい実施形態において、前記目的産物は抗生物質、酵素、潜在性遺伝子クラスターからの産物、抗がん剤または農業化合物である。酵素の例は、セルラーゼ、ペクチナーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、キチナーゼ、マンナーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、ラッカーゼ、または糖イソメラーゼである。抗生物質の例は、(ストレプトミセス トヨカエンシス(Streptomyces toyocaensis)およびアミロカトプシス オリエンタリス(Amylocatopsis orientalis)によって産出される)バンコマイシン、(ストレプトミセス ロセオスポルス(Streptomyces roseosporus)によって産出される)ダプトマイシンおよび(ストレプトミセス トヨカエンシスによって産出される)テイコプラニン−様化合物A47934、(ストレプトミセス ベネズエラ(Streptomyces venezuelae)によって産出される)クロラムフェニコール、(ストレプトミセス グリセウス(Streptomyces griseus)によって産出される)ストレプトマイシン、(ストレプトミセス スフェロイド(Streptomyces spheroides)によって産出される)ノボビオシンを含むグリコペプチド抗生物質、および抗生物質産出のためのよく研究されたモデルクラスター、すなわちストレプトミセス コエリカラー(Streptomyces coelicolor)のアクチノルホジンおよびウンデシルプロジギオシンである。後者の2つはそれぞれ、経路特異的活性化因子遺伝子actII−ORF4(表2中#27)およびredZ(表2中#129)によって制御される。また、アクチノルホジン生合成酵素ActVA4は、DasRのない状態で強く活性化される(図4)。抗生物質生合成に関連した公知の配列の本発明者らの解析に基づいて、本発明者らは驚くべきことに、すべての公知の抗生物質生合成クラスターの半分が、DasRによって調節されており、したがって、DasR制御発現を介した干渉によって、抗生物質産出を改変するための非常に有用な方法が提供される。
【0052】
さらに、本発明者らはまた、アクチノルホジン生合成クラスターが、(間接的に)DasRの制御下であることを開示している。図4Bにて開示されたように、DasRヌル変異体が、SCO5074(デヒドラターゼ)として指定される多量の(分泌されたタンパク質の総量のおよそ95%)タンパク質を分泌する。このデヒドラターゼは、アクチノルホジン生合成クラスターの一部であり、このデヒドラターゼは、分泌された抗生物質を調整する。したがって、本発明はさらに、産出/分泌されたアクチノルホジンの量を制御(好ましくは増加)するための手段および方法を提供する。
【0053】
糸状体微生物ならびに低G+Cグラム陽性細菌両方が、本発明にしたがった方法を適用可能な微生物の例である。しかしながら、たとえば、目的産物の発現を得るための方法にてこれらの微生物を用いることは、不要な産物の産出が付随する。これらの不要な産物のいくつかが現在、DasRによって調節されることが知られており、したがって、本発明はまた他の実施形態において、前記微生物に、前記不要な産物をコードしている遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位、または不要な産物の産出に関与する遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を干渉可能な化合物を提供することを含む、DasR−様タンパク質を含む微生物中の不要な産物の産出を少なくとも部分的に減少させるための方法を提供する。
【0054】
前記不要な産物をコードしている遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位、または前記不要な産物の産出に関与する遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位への、DasR−様タンパク質の結合を干渉することは、結合が少なくとも部分的に阻害されることでありえ、または結合が少なくとも部分的に増加することであり得る。「少なくとも部分的に(at least in part)」は、化合物を加えない状態と、前記化合物を加えた状態間で、検出可能な差が存在することを意味する。好ましい実施形態において、結合が、本質的に完全に阻害されるか、または結合が本質的に不可逆性である。
【0055】
好ましくは、DasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合は、前記微生物に、前記不要な産物をコードしている遺伝子と動作可能に連結した、または前記不要な産物の産出に関与する遺伝子と動作可能に連結した、増加量のDasR−結合部位を提供することによって、少なくとも部分的に増加する。また他の好ましい実施形態において、DasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合は、前記微生物に、本来前記不要な産物をコードしている遺伝子と動作可能に連結した、または前記不要な産物の産出に関与する遺伝子と動作可能に連結した、微生物中の少なくとも1つのDasR結合部位を除去することによって、少なくとも部分的に減少する。
【0056】
本明細書で開示したように、いくつかのプロテアーゼの発現が、DasR−様タンパク質によって調節される。例を表2で提供している。#60(メタロペプチダーゼ)または#109(ペプチダーゼ)。本方法を、目的タンパク質様産物を産出するために使用する場合、言及したペプチダーゼの発現が同時に影響を受けうる。
【0057】
好ましい実施形態において、前記不要な産物は、不要な副産物または不要なシャント産物である。
【0058】
本発明にしたがった任意の方法を場合によっては組み合わせることが可能であることが、当業者に対して明らかである。たとえば、代謝を制御するための方法を、不要な産物の産出を少なくとも部分的に減少するための方法と組み合わせる。好ましい実施形態において、本発明は、目的産物の発現を得るための方法の、不要な産物の産出を少なくとも部分的に減少させるための方法との組合せを提供し、したがって、本発明は、不要な産物をコードしている遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位、または不要な産物の産出に関与する遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を干渉可能な化合物を前記微生物に提供することをさらに含む、以上で記述したようなDasR−様タンパク質を含む微生物中の目的産物の発現を得るための方法を提供する。
【0059】
たとえば、目的産物が、その発現が、前記遺伝子の前で、DasRによるDasR結合部位への結合に際して抑制される遺伝子によってコードされている場合、この目的産物の発現は、誘導因子を提供することによって少なくとも部分的に増加する。同時に不要な産物が発現し、その存在がたとえば、前記目的産物の単離/精製を干渉する場合、この不要な産物が、DasRタンパク質の関連DasR結合部位への結合に際して活性化される場合、この結合部位はたとえば、DasRタンパク質の前記関連DasR結合部位への結合を少なくとも部分的に阻害するように遺伝的に改変する。本発明に基づいて、目的産物および不要な産物のDasR調節の種々の状況がおそらく、本明細書で記述したオプションの任意の1つを介して解決され得ることが、当業者に明らかである。
【0060】
その発現が、DasRによって調節(活性化または抑制いずれか)される遺伝子の例を、表2にて概説している。本発明がまた、これらの遺伝子の産物の特定の特徴に基づいた方法を提供することが当業者に対して明らかである。さらに、本発明者らは、DasRの存在しない状態が、結果として、特定の増殖培地上の異常な増殖性質となることも観察した。以下の記述部分によって、表2にて示した結果に基づく利用、ならびにDasRヌル変異体での観察に基づく利用の例を提供している。
【0061】
1つの例は、DasR(DasRヌル変異体に関する実験部分を参照のこと)が存在しないこと、またはDasRの増強された発現によって、結果として、異常な増殖性質となる、という観察である。たとえば、グルコース上でのDasRヌル変異体増殖が、結果として糸状体細菌の断片化された増殖となる。液体培養液中、DasRが存在しないことにより結果として、分岐が増強され(図16)、一方で、多コピープラスミドを用いるDasRの発現が、分岐を減少させる。さらに、本発明者らは、細胞骨格またはペプチドグリカンに関連する遺伝子を同定した。したがって、本発明はさらに、DasR−調節遺伝子の発現を変更することを含む、増殖中の断片化および/または分岐性質が変更された糸状体微生物を得るための方法を提供する。ほとんどの糸状体微生物(たとえば放線菌)のみが固体培地上で胞子を形成し、一方で液体培養液中の増殖は、植物菌糸体の形成に制限される。これは典型的には、高い生理学的活性を示しているもっとも外側に指向した区画をもつ、菌糸の複雑なネットワークの形成に発達し、とりわけ結果としてペレット形成となり、結果として増殖速度の減少、およびバイオマスのユニットあたりの望む産物の低収率となる。さらに、それらの糸状形態のために、生物技術的に興味深い放線菌の高濃度の発酵がしばしば、非常に粘着性であり、結果として、たとえば通気および混合の問題によって、低バイオマス蓄積となる。本予測より、水中培地中の菌糸体の断片化が刺激されること、菌糸体の分岐が減少されること、および一般的に培養液の粘着度が減少すること、が望ましい。
【0062】
他の例は、同定されたDasR調節遺伝子のいくつかが、タンパク質分泌および/またはタンパク質ホールディングに関与する遺伝子であるという発見に基づいている。例としては、secE(表2中#102)およびsecY(表2中#100)であり、これらは、Sec分泌系の必須の膜成分である。事実、大培養中の分泌された総タンパク質の繰り返し測定によって、DasRの活性コピーが存在しない状態で、分泌されたタンパク質の総量が50%まで減少したことが明らかになった。したがって、本発明はまた、タンパク質分泌および/またはタンパク質ホールディングに関与する遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を干渉可能な化合物を前記微生物に提供することを含む、DasR−様タンパク質を含む微生物中の、タンパク質分泌および/またはタンパク質ホールディングを調節するための方法を提供する。
【0063】
また他の例は、同定されたDasR調節遺伝子のいくつかが、銅、鉄または亜鉛のような、金属イオンの輸送に関与する遺伝子であるという発見に基づいている。関連遺伝子はたとえば、cutC−型銅ホメオスタシス遺伝子(表2中#30)、および鉄の取り込みを制御する鉄調節遺伝子desR(表2中#62)である。したがって、本発明は、前記金属イオンの輸送に関与する遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を干渉可能な化合物を前記微生物に提供することを含む、DasR−様タンパク質を含む微生物中の金属イオンの輸送を調節するための方法を提供する。
【0064】
他の例は、同定されたDasR調節遺伝子のいくつかが、糖の輸送に関与する遺伝子であるという発見に基づいている。非限定例を、PTS遺伝子(nagE1、nagE2、malX2、ptsH、ptsI、crr、#1、2、3、5)、ABCトランスポーター(たとえば表2中#4、8、17、22、33、53、66、111および122)、および放線菌におけるABCトランスポーターに対する不変ATPaseであり、それらの輸送活性に対して必須であるMsiK(#38)を含んで、表Iにて提供している。これらの例のうち、PTS、MsiKおよび種々のABCトランスポーターが、実験的に検証された。したがって、本発明は、糖の輸送に関与する遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を干渉可能な化合物を前記微生物に提供することを含む、DasR−様タンパク質を含む微生物中の、糖の輸送を調節するための方法も提供する。たとえば、PTSNAGによるN−アセチルグルコサミン、およびABCトランスポーターNgcEFG(表2中#33)によるキトビオース。DasR−抑制MsiKは、多くのABCトランスポーターの活性に必要であり、たとえば、セルビオース(CebEFG)、マルトース(MalEFG)およびキシロビオース(BxlEFG)に対して必要である。
【0065】
また他の例は、DasRヌル変異体中の抗生物質の産出が、いくつかの培地発達が増強され、他で完全に無効化されるという、培地依存発達を示したという発見に基づいている。したがって、本発明は、dasR遺伝子を機能的に改善することを含み、さらに特定の抗生物質に対して好適な糖供給源を選別することを含む、(糸状体)微生物中の抗生物質産出に影響を与えるための方法も提供する。特定の抗生物質との組合せでの、好適な糖供給源が、図11で提供されている。
【0066】
本発明の任意の方法において、DasR−様タンパク質を含む微生物は、DasR−様タンパク質、または前記DasR−様タンパク質を、前記タンパク質をコードしている核酸から発現可能な有機体である。さらに、前記微生物は、前記DasR−様タンパク質を発現可能な性質によってである有機体であってよく、またはDasR−様タンパク質を産出するために遺伝的に改変された微生物であってよい。さらに、よりDasR−タンパク質の産出を可能にするさらなる核酸を、DasR−様タンパク質をすでに発現可能な微生物に提供することも可能である。そのようなDasR−様タンパク質の追加核酸は、すでに存在している、内因性DasRをコードしている核酸と同一であってよく、異種であってもよい。好ましい実施形態において、DasR−様タンパク質を含む微生物を、DasR−様タンパク質をコードしている核酸を微生物に提供することによって得る。より好ましくは、前記DasR−様タンパク質は異種である。DasR−様タンパク質をコードしている核酸を、したがって任意の公知の方法によって微生物に提供し得る。さらに、前記核酸は、前記微生物中で、エピソーム要素として存在してよく、または前記微生物のゲノム内に統合されてよい。
【0067】
さらに、前記目的遺伝子は、内生遺伝子、ならびに外因性遺伝子であってよく、したがって、本発明の方法はさらに、目的遺伝子をコードしている核酸を、DasR−様を含む有機体に提供することを含みうる。
【0068】
本発明の任意の方法にて使用する微生物は、好ましくは海洋または土壌起源からの細菌である。好ましい実施形態において、前記微生物は糸状微生物である。糸状体微生物の例は、子嚢菌、バシド菌または放線菌である。好適な放線菌の例は、ストレプトミセス(Streptomyces)、ノカルディア(Nocardia)、サーモビフィド(Thermobifido)、アミコラトプシス(Amycolatopsis)、プラノビスポラ(Planobispora)、ストレプトベルティシリウム(Streptoverticillium)、フォードコッカス(Rhodococcus)、またはコリネバクテリウム(Corynebacterium)である。
【0069】
本発明のまた他の実施形態において、微生物は、バチルス、ラクトバチルス、ラクトコッカス、ストレプトコッカスまたはリステリアのような、低G+Cグラム陽性細菌である。驚くべきことに、本発明者らは本発明において、コア遺伝子クラスターnagA−nagB−dasR(およびdre要素)がまた、バチルス、ラクトコッカス、リステリアおよびストレプトコッカスを含む、低G+Cグラム陽性間で広範囲に広がることを開示している。バチルスのDNAのG+C含量(43%)が、ストレプトミセスのG+C含量(72〜73%)よりも約30%低いけれども、組織のみが保存されているのではなく、dre部位の配列も保存されている。バチルス サブチリスおよびバチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)のdre部位を表5にて要約しており、ラクトコッカス ラクティスのものを表6に、ストレプトコッカス種のものを表7に、リステリア インノクア(Listeria innocua)およびリステリア モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)のものを表8にて要約している。
【0070】
低G+Cグラム陽性細菌は、たとえば多くの日常製品の産出で重要であり、これらの細菌はしばしばプロバイオティクスとして使用される。
【0071】
表4〜7より、これらの細菌においてまた、糖取り込み、代謝またはバクテリオシン産出のような工程が、本明細書で記述された任意の方法によって影響を受けることが明らかである。
【0072】
驚くべきことに、本発明は、dasR変異体が、抗生物質の産出の強力な増強を示したという発見も開示している。さらに、表3にて同定したように、多数の抗生物質(クラスター)が、DasRの制御下である。潜在性抗生物質(クラスター)がまた、DasRの制御下であることがわかった(表3)。本発明はしたがって、前記抗生物質をコードしている遺伝子と動作可能に結合したDasR−結合部位、または前記抗生物質の産出に関与する遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位への、DasR−様タンパク質の結合を干渉可能な化合物を、前記微生物に提供することを含む、DasR−様タンパク質を含む微生物中の抗生物質の発現を調節する、得るまたは増加させるための方法を提供する。好ましくは、そのような方法を、抗生物質の発現を得るため、または増加させるために使用する。より好ましくは、前記抗生物質は、潜在性抗生物質または潜在性抗生物質クラスターの一部である。好ましい実施形態において、DasR−様タンパク質のDasR−結合部位への結合を干渉可能な前記化合物は、N−アセチルグルコサミンまたはその誘導体または多重体である。
【0073】
また他の実施形態において、本発明は、活性化DasR−抑制潜在性遺伝子(クラスター)を提供し、そこで、前記潜在性遺伝子(クラスター)が、前記遺伝子(クラスター)と動作可能に連結したDasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合に影響を与えることによって活性化される。前記タンパク質と前記結合部位間の結合に影響を与えることによって結果として、結合が減少、または増加/改善され得る。好ましい実施形態において、前記遺伝子(クラスター)は、抗生物質遺伝子(クラスター)である。
【0074】
関連結合部位へのDasRの結合が結果として、たとえば抗生物質産出のレベルの抑制となる場合、前記抗生物質の産出がたとえば、前記抗生物質と動作可能に連結したDasR結合部位に変異導入することによって達成される。変異導入は好ましくは、DasRタンパク質がもはや、前記結合部位へ十分結合可能ではないものである。また他の実施形態において、(グルコサミン−6−Pへ変換される)N−アセチルグルコサミンのような誘導因子を、抑制を軽減するために使用する。
【0075】
本発明はまた、少なくとも1つのDasR調節遺伝子の発現が改変されるような方法で、遺伝子工学によって生産された微生物を提供する。
【0076】
1つの好適な例は、上記したような、活性化潜在性クラスターを含む微生物、たとえば、前記クラスターに動作可能に結合したDasR結合部位が、前記クラスターが、DasR−様タンパク質の結合が増加、または減少するように変異導入された微生物である。
【0077】
他の例は、DasR−様タンパク質に対する変異導入結合部位を含む微生物である。前記結合部位は、DasR−様タンパク質の結合が増加、または減少するように変異導入される。または、前記結合部位が、(たとえば、その発現がほとんど望まれない遺伝子を特異的に抑制するために)遺伝子が異なる抑制因子タンパク質によって制御されるように改変され得る。当業者は、種々のDNA結合タンパク質が、特定の微生物中で天然に存在しない結合部位のみを認識するように存在することに気がついている。そのようなタンパク質の例は、(tetOオペレーターを認識する)TetRまたは(真核ゲルプロモーターを認識する)Gal4である。
【0078】
また他の例は、DasR−様タンパク質の変異体を含む微生物である。たとえば、結合能力が改善した、または結合能力が減少した変異体、またはグルコサミン−6−P(または同様の化合物)による誘導に不感受性のDasRの変異体。他の例は、本質的に非機能的な変異体、たとえばDasR−様タンパク質のヌル変異体である。また他の例は、エフェクター結合ドメイン(の部分)が変異導入(たとえば欠損)されたDasR−様タンパク質である。
【0079】
他の例は、増加したDasRの発現を含む微生物である。これはたとえば、微生物に、DasRに対する(過剰)発現カセットを提供することによって達成される。そのようなカセットには、同種または異種dasR遺伝子が含まれうる。微生物がすでに、DasRをコードするために遺伝的情報を含む場合、前記微生物中のDasRの自己調節を改善することがまたオプションである。
【0080】
2つの他の例は、本質的に栄養増殖し、二次代謝物のレベルの変更を産出する微生物、または本質的に栄養増殖し、潜在性遺伝子クラスターから産物を産出する微生物である。
【0081】
好ましくは、任意の言及した微生物が、(たとえば、酵素または抗生物質のような)増加量の目的産物を産出する。
【0082】
より好ましくは、本発明にしたがった微生物は、海洋または土壌起源からの細菌である。他の好ましい実施形態において、前記微生物は糸状体微生物である。糸状体微生物の例は、子嚢菌、バシド菌または放線菌である。好適な放線菌の例は、ストレプトミセス(Streptomyces)、ノカルディア(Nocardia)、サーモビフィド(Thermobifido)、アミコラトプシス(Amycolatopsis)、プラノビスポラ(Planobispora)、ストレプトベルティシリウム(Streptoverticillium)、フォードコッカス(Rhodococcus)、またはコリネバクテリウム(Corynebacterium)である。
【0083】
本発明のまた他の実施形態において、微生物は、バチルス、ラクトコッカス、ストレプトコッカスまたはリステリアのような、低G+Cグラム陽性細菌である。
【0084】
本発明の任意の方法を、DasR−様タンパク質をコードしている核酸、ならびにDasR−結合部位と動作可能に連結した核酸をすでに含む微生物で開始することが便利であるけれども、本方法を、前記核酸を含まない微生物で使用することも可能である。したがって、本発明はさらに、前記目的産物をコードしている核酸、またはDasR−様タンパク質に対する結合部位を持つ前記目的産物の産出に関与するタンパク質をコードしている核酸を提供することを含む、DasR−様タンパク質を含む微生物中の、目的産物の発現を調節するための方法を提供し、そこで、前記結合部位は、前記核酸に動作可能に連結する。好ましい実施形態において、前記微生物にはさらに、DasR−様タンパク質をコードしている核酸が提供される。
【0085】
また他の実施形態において、本発明は、DasR−制御遺伝子の発現を調節するための変異導入DasR−結合部位の利用、またはDasR−制御遺伝子の発現を調節するための変異導入DasR−様タンパク質の利用、またはDasR−制御遺伝子の発現を調節するためのDasRの利用、またはDasR−制御遺伝子の発現を調節するためのDasR−誘導因子の利用を提供する。
【0086】
本明細書で記述された任意の方法にはさらに、精製段階、たとえば目的遺伝子の産物の精製、または(酵素または抗生物質のような)目的産物の精製が含まれうる。さらに、本発明にしたがった方法を、小規模基準、または大規模基準で実施し得る。
【0087】
また他の実施形態において、本発明は、前記微生物にN−アセチルグルコサミンまたはその誘導体または多重体を提供することを含む、微生物中の二次代謝物の産出を得る、または改善するための方法を提供する。前記二次代謝物は、公知または未知の二次代謝物であってよく、したがって前記方法は、スクリーニング法、たとえば新規薬物の同定のためのスクリーニング法の一部でありうる。好ましい実施形態において、前記二次代謝物は抗生物質である。また他の好ましい実施形態において、本発明は、前記有機体に、N−アセチルグルコサミンまたはその誘導体または多重体を提供することを含む、微生物中の潜在性(抗生物質)クラスターからの発現を喚起する、または増強するための方法を提供する。他の好ましい実施形態において、利用した微生物は、DasR−様タンパク質を含む。また他の好ましい実施形態において、N−アセチルグルコサミンまたはその誘導体または多重体を、前記微生物の増殖培地に加える。また他の好ましい実施形態において、前記N−アセチルグルコサミンまたはその誘導体または多重体を、少なくとも10mM、または好ましくはそれ以上の濃度で、前記増殖培地に加える。
【0088】
また他の好ましい実施形態において、使用した微生物は糸状体微生物、好ましくは子嚢菌、バシド菌、または放線菌である。好適な放線菌の例は、ストレプトミセス(Streptomyces)、ノカルディア(Nocardia)、サーモビフィド(Thermobifido)、アミコラトプシス(Amycolatopsis)、プラノビスポラ(Planobispora)、ストレプトベルティシリウム(Streptoverticillium)、フォードコッカス(Rhodococcus)、またはコリネバクテリウム(Corynebacterium)である。
【0089】
また他の実施形態において、本発明は、微生物中の潜在性(たとえば抗生物質)クラスターを喚起する、または増強するための、N−アセチルグルコサミンまたはその誘導体または多重体の利用を提供する。
【0090】
本発明は、本発明を限定していない、以下の記述にてより詳細に説明されるであろう。
【実施例】
【0091】
実験の部
材料および方法
細菌株 大腸菌DH5αおよびBL21(DE3)を、サブクローニングおよびDasR過剰発現実験のために利用した。S.コエリカラー(S. coelicolor)M145、M510(M145 ΔredD)、M511(M145 ΔactII−IV)およびM512(M145 ΔactII−IV ΔredD)(FlorianoおよびBibb、1996)およびストレプトミセス リビダンス(Streptomyces lividans)1326は、John Innes Centre株コレクションより入手し、ストレプトミセス アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)NRRL8165(MA−4680)、ストレプトミセス ヒグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)ATCC27438、ストレプトミセス リモサス(Streptomyces limosus)ATCC19778、ストレプトミセス リモサス(Streptomyces rimosus)ATCCD10970、ストレプトミセス ロセオスポラス(Streptomyces roseosporus)ATCC31568およびストレプトミセス ベネズエラ(Streptomyces venezuelae)ACTT15439は、ATCC株コレクションから入手し、ストレプトミセス アクリミシニ(Streptomyces acrimycini)DSM40540、ストレプトミセス シナモネンシス(Streptomyces cinnamonensis)DSM40467、ストレプトミセス クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)NRRL3585、ストレプトミセス コリヌス(Streptomyces collinus)DSM40733およびストレプトミセス グリセウス(Streptomyces griseus)NRRL B2682は、DSMZ株コレクションより入手した。dasR変異体BAP29(ΔdasR::accC4)は、通常の手順(Nothaftら、2003)にしたがって、プラスミドpWHM3を用いて、アパラマイシン耐性遺伝子カセットによる、遺伝子のコード領域の置換によって作製した。同様の戦略を用いて、ptsH(BAP1)、crr(BAP2)、ptsI(BAP3)、nagE1(BAP4)、nagE2(BAP5)およびnagE1/E2(BAP6)に対するノックアウト変異体を作製した。BAP1〜3はすでに発行されている(Nothaftら、2003)。S.コエリカラー株を、完全培地(TSB、Difco)または最少培地(van Wezelら、2005)として、デキストロースを含まないトリプシン大豆ブロスを用いて、28℃にて増殖させた。大腸菌培養液は、Luria−Bertaniブロス(LB)中で、37℃にて増殖させた。変異体の表現系特性化を、テキスト(Kieserら、2000)にて示されたような種々の炭素供給源を含む、最少培地寒天プレート上で実施した。ActおよびRedの定量化を、先に記述された(Martinez-Costaら、1996)ように実施した。
【0092】
DNaseIフットプリンティング S.コエリカラーcrr遺伝子(SCO1390)の開始に関連した−202/+8領域に相当する222−bp DNA断片を、DNaseIフットプリンティングのために選択した。DNA断片を、PCRによってクロモソームDNAから増幅した。50fmolの32P末端標識化プローブを、関連タンパク質(DasR−(His)6および/またはBSA)およびDNaseI(0.4μg/ml)とともに、記述された(Sambrookら、1989)ようにインキュベートした。
【0093】
算定予測 多重アライメントおよび位置加重マトリックスを先に記述された(Rigaliら、2004)ように、Tartget Explorer自動化ツール(http://trantor.bioc.columbia.edu/Target_Explorer/)(Sosinskyら、2003)によって産出した。加重マトリックスを「DasR4」として描写した。
【0094】

【0095】
マトリックスDasR4によってスキャンされた配列によって得た最小スコアは、−38.55であり、最大スコアは17.25である。現在の実験検証にしたがって、DasR−結合部位は、16ヌクレオチドの配列として定義され、DasR4マトリックスによってスキャンされた場合、6より大きな(そして17.25までの)間を含むスコアを得る。具体的に、−2,97のみのスコアを持つ正しく、実験的に検証されたDasR−結合部位が、NADP−特異的グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードしているgdhAの上流で見られた。
【0096】
顕微鏡 菌糸体と胞子の薄い切片の解析のための透過型電子顕微鏡(TEM)を、フィリップス(Philips)EM410透過型電子顕微鏡(Mahrら、2000)で実施した。位相差顕微鏡を、Zeiss標準25位相差顕微鏡、および5メガピクセルデジタルカメラを用いて産出した。
【0097】
糖取り込み 20μM N−[14C]アセチル−D−グルコサミン(6.2mCi mmol-1)の菌糸内への取り込みアッセイを、記述された(Nothaftら、2003)ように実施した。
【0098】
タンパク質精製およびウェスタンブロット 組換え体ヒスチジン−タグDasRの精製(Rigaliら、2004)およびHPrおよびIIACrrに対して産出された抗体でのウェスタンブロット解析は、他で記述されている(Nothaftら、2003)。
【0099】
RT−PCR RNAをS.コエリカラーM145およびBAP29の菌糸体から単離した。50mMグリセロールを含む最少培地培養液を、胞子で植菌し、0.6のOD550(指数増殖)まで増殖させた。N−アセチルグルコサミンを0.5%にて加え、試料を0、15、30および60分後に得た。RT−PCR解析を、Superscript III一段階RT−PCR Kit(インビトロジェン(Invitrogen))にて実施した。逆転写なしでのRT−PCRsを、残余DNAが存在しないことに対する対照として使用した。半定量解析のために、試料を18〜35サイクルの間の3サイクル間隔で得、不飽和PCR産物形成を比較した(van Wezelら、2005)。データを、3回の独立した実験で検証した。
【0100】
図21Bにて記述したRT−PCR実験のために使用したオリゴヌクレオチドは、

であった。
【0101】
二次元ゲル電気泳動およびタンパク質スポット同定 S.コエリカラーM145およびBAP29の菌糸体を、50mMグリセロールを含む最少培地中で増殖させ、指数期内の異なる時間点で回収し、洗浄し、20mM HEPES、pH7.5および50mM MgSO4中で再懸濁し、超音波処理し、細胞残骸を遠心後に除去した。DNAおよびRNAを、DNaseおよびRNase処理によって削除した。タンパク質抽出物を、水に対して4℃にて2回透析し、続いて、6M固体尿素および2Mチオ尿素、TritonX−100(2.5%(v/v))、IPG緩衝液(0.5%(v/v))、DTT(25mM)およびブロモフェノールブルーを添加した。膜タンパク質を1時間、65.000gでの超遠心によって除去した。1.5mgの細胞質タンパク質画分を、IPGPhorユニット(アマシャム/ファルマシア(Amersham/Pharmacia))上24−cm IPGストリップ上に適用した。IPGストリップを、12.5%ポリアクリルアミドゲルにかけ、Ettan DALT IIシステム(アマシャム/ファルマシア)上で作動した。ゲルをPhastGel Blue Rで染色し、スキャンした。プロテオームパターンを、独立した実験から由来した2つのゲルセットを用いて比較した。タンパク質強度を、TINAソフトウェア(Raytest)とともに、密度グレースケール解析によって解析した。タンパク質スポットを切り出し、トリプシンによるゲル内消化にかけ、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC−MS/MS)によって解析した(Marvin-Guyら、2005)。
【0102】
電子移動度ゲルシフトアッセイ(EMSA) EMSAを、ALF発現シークエンサーにて、蛍光プローブ(10nM)で実施した(Fileeら、2001)。精製DasR(3μM)および1000−倍過剰の非特異的DNAを反応混合液中で使用した。予想されたシス−活性エレメントを、actII−ORF4のプロモーター領域からとった。

crr

およびcrp

の公知のシス−活性エレメント上流をそれぞれ、陽性および陰性対照として使用した。16nt dre部位に下線を引いている。
【0103】
酵素活性 キチナーゼ活性を、基質としてカルボキシメチルキチン−Remazol Brilliant Violet 5R(Loewe Biochemica GmbH,Germany)で比色分析アッセイを用いて、すでに記述された(Zhangら、2002)ように測定した。D−Ala−D−Alaアミノペプチダーゼ測定を、基質としてD−Ala−パラニトロアニリドで実施した(Cheggourら、2000)。BCAタンパク質アッセイ(ピアス(Pierce))を、タンパク質濃度を測定するために使用した。
【0104】
広範囲抗生物質活性アッセイ 希釈胞子懸濁液の試料(1μl)を、1%GlcNAcを含む、または含まない状態の、0.5%マンニトールを含む最小培地プレート上にスポットし、28℃にて3日間インキュベートした。バイオアッセイのために、本発明者らは、500μlのバチルス サブチリス(Bacillus subtilis)一晩培養液(OD600〜1)を、10mlの溶解軟栄養素寒天(SNA)に植菌し、混合液を、一辺12cmの正方形ペトリ皿内に注いだ。プレートを2時間、4℃にて維持し、SNAを凝固させ、産出された抗生物質の拡散を可能にし、ついで30℃にて一晩インキュベートした。
【0105】
実験の部
結果
DasRレギュロンの予測
S.コエリカラーゲノムを、DasRオペレーター部位の発生に関して精査可能にするために、本発明者らは、PTS酵素IIA(IIACrr)および酵素I(EI)をコードしているcrr−ptsIオペロンのdre上で、DNaseIフットプリンティングを実施した(図1A)。保護配列(TGTGGTCTAGACCTCT)は、crrの開始に関連した、位置−130〜−115に相当し、由来DasR結合部位コンセンサス配列に対して、16のうち13bp一致を有した(以下を参照のこと)。本情報を、すでに本発明者らが検証した、標的遺伝子のdre部位を決定するために使用した(表1および(Rigaliら、2004))。本トレーニングセットを用いて、本発明者らは、精密な位置加重マトリックス(「DasR4」、物質および方法を参照のこと)を構築し、結果として、完全S.コエリカラーゲノムをスキャンするために使用した、アライメントマトリックスとなった。
【0106】
ゲノムスキャンによって、200以上の候補遺伝子を示している、131転写ユニットに対して、160dre部位が明らかになった。約40%の標的遺伝子が、中心サッカライド成分として、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)とともに、糖またはアミノ糖代謝に関連している。GlcNAcとの関係がまた、細胞壁関連ペプチダーゼの同定に連結する。予想されたDasRレギュロンにはさらに、グルタミン/グルタミン酸アミノ酸代謝に関連した遺伝子を含む、窒素代謝のための遺伝子が含まれる。標的のリストにはまた、16の転写因子(表2中、#27、31、46、51、56、62、67、71、77、81、84、105、119、129、130および131)が含まれ、DasRによる間接転写制御の大規模なレベルを示唆している。
【0107】
dasR変異体の表現系
dasRヌル変異体(BAP29)を、インビボでのDasRの役割を研究するために、アパラマイシン耐性カセット(aacC4)による、ほとんどのコード領域(765のうちnt14〜635)の置換によって構築した。
【0108】
S.コエリカラーのdasR変異体は、培地依存発達を示し、いくつかの培地では発達が増加し、一方他の培地では、完全に無効になった。図11にて要約している。このことは、DasRの機能が、使用した炭素および窒素供給源に依存していることを強力に示唆している。
【0109】
驚くべきことに、dasR変異体は、抗生物質産出の強力な増強を示した(図2A)。株M145(pFT241 dasR+)中のDasRの過剰産出が結果として、反転、非芽胞形成バルド(bld)表現系となった(図2B)。凍結走査電子顕微鏡(cryo−SEM)によるdasR変異体のより詳しい検査によって、dasR変異体中で胞子がほとんど完全に存在しないこと、および試料調製の間に簡単に気中菌糸体が崩壊したことが示された(図2C)。S.コエリカラーM145およびBAP29の交差切片のTransmission EMによる高解析度の解析によって、M145が正常の胞子を産出した一方で、dasR変異体が、これは胞子壁に近いより小さいか、またはより大きな空洞を持つ、多くの胞子(およそ30%)を産出したことが明らかになり(図2D、矢印で示した空洞)、胞子壁からの細胞質膜の大規模な分離を示唆している。さらに、胞子形態が、明らかにより異質であり、一方で、野生型胞子は典型的には、0.6×0.8μmの大きさを持つ一方で、dasR変異体が、胞子サイズにおいて、普通ではない強い変動を示した(長さにして0.5〜1.4μm、しかし0.8μmの同一幅)。さらに、多くの変異体胞子が、気中菌糸体のものと同様の厚さを持ち、典型的な厚さの胞子壁を作製できない。これらの発見は、dasRが、前駆体N−アセチルグルコサミンの代謝に関する遺伝子を含む、ペプチドグリカンの生涯に関与する遺伝子を制御するという、本発明者らのコンピュータ予測(表2)とよく連結している。
【0110】
DasRおよび発達の制御
DasRはどのようにして発達へのスイッチを制御するのだろうか。dasRレギュロン中のpts遺伝子の導入によって、本発明者らは、少なくとも1つの関連性が、PTSのDasR−調節制御を介してであることを提案することが許される。先の発行物(Nothaftら、2003)において、本発明者らは、個々のptsノックアウト変異体、すなわちBAP1(ΔptsH、HPrに対する遺伝子)、BAP2(Δcrr、IIACrrに対する遺伝子)、およびBAP3(ΔptsI、酵素I(EI)に対する遺伝子)に対して正常であるが、停滞した発達を記述した。PTS変異体のより詳細な表現系解析によって、結局、すべてのpts変異体が、培地上で胞子を産出可能である一方で、形態形成が、マンニトールおよびアラビノースの存在下で増殖した場合にもっとも強い差を持って、異なる複合および最小培地寒天プレート上で明らかに遅延したことが明らかになった。株を、SFMまたはR2YE寒天プレート上で、5日間増殖させた。図3Aにて示したように、crr変異体BAP2が、SFM上で白色気中菌糸体を産出するが、これらの条件下では胞子を産出できず、一方、ptsH(BAP1)またはptsI(BAP3)の欠損が、灰色着色胞子の産出を可能にした。
【0111】
興味深いことに、R2YE寒天プレート上で、すべての3つのPTS変異体が、栄養増殖性停止(baldまたはbld表現型と呼ばれる)を示している。
【0112】
本発明者らは、早期気中増殖に対する鍵となる発達σ因子である(Chaterら、1989)、WhiGタンパク質の(BAP2およびBAP3中の)発現パターンまたは(BAP1中の)改変パターンが、親株M145におけるものからは強く異なったことを、これらの変異体のプロテオミクススクリーンにて発見した。whiGの発現を確立するために、その転写を、すべての3つの変異体、およびM145において解析した。興味深いことに、whiG転写が、BAP2およびBAP3変異体にて強く減少し(図3B)、whiG変異体が、特徴的な非胞子形成表現系をもつので、それらが完全胞子形成を失敗することに関する可能性のある説明を提供している。
【0113】
したがって、本発明者らは、DasRが、栄養センサーとして働き、PTSの制御を介してこれを翻訳し、順にwhiGを制御し、pts変異体の発達停止に関して、たいがい、少なくとも1つまたはそれ以上の他の早期発達遺伝子を制御することを提案している。ホスホトランスフェラーゼWI、HPrおよびIIACrrが、他の細菌では、種々の、しかしいつも炭素関連の応答のために使用される、可逆代謝物依存リン酸化を介して、完全なシグナル伝達経路を提供するということは注目に値する(BruckneおよびTithemeyer,2002)。
【0114】
プロテオーム解析
DasRの効果の査定を得るために、本発明者らは、BAP29およびその親M145のタンパク質プロファイルを比較した。タンパク質抽出物を、グリセロール(中性炭素供給源)の存在下での菌糸体増殖から調製し、二次元ゲル電気泳動で解析した。クーマシーブリリアントブルー染色ゲル上の約4%のタンパク質スポットは、2倍以上まで強度が変化し、8つが質量分析によって同定された(図4A)。M145とBAP29間の11のもっとも顕著な差を解析し、これらのうち、質量分析によって本発明者らは、9つのタンパク質を確実に同定した(図4A)。2つのタンパク質、すなわち多重糖インポートタンパク質MsiKおよびNagA(N−アセチルグルコサミン−6−P−デアセチラーゼ)が、本発明者らのコンピュータスクリーンにて予想された。nagAおよびmsiKのみが表2に含まれ、予想dre部位を含んだ。他は、中心および二次代謝に関連し得る(以下および図5を参照のこと)。msiKプロモーター領域中のDasRのdreへの結合が、EMSAによって示された(以下を参照のこと)。ポリサッカライド−分解計の誘導因子の取り込みにおけるMsiKの役割にしたがって、これらの酵素的蓄積(約100の遺伝子)がまた、dasR欠損によって影響を受けるべきである(議論を参照のこと)。他の7つの遺伝子のdre上流の欠損が、DasRによるこれらの遺伝子の間接制御を示唆している。プロテオーム解析によって同定されたタンパク質に関連した代謝経路の可視化によって、GlcNAcおよびグルタミン酸代謝周辺にもっとも引きつけられることが明らかになり、以上で示した、コンピュータ内およびインビトロデータとよく一致する(図5)。
【0115】
DasRは、放線菌における二次代謝および抗生物質産出を制御する
興味深いことに、dasR変異体において両方がアップレギュレートされる、本発明者らのプロテオミクススクリーンにて同定された2つの標的、すなわちActVA4およびGpsIが、dasR変異体におけるブルーγ−アクチノルホジンの産出の活性化に早期によく相関する、抗生物質γ−アクチノルホジンの産出に関与する(bibb、2005)(図2A)。GpsIは、ppGpp前駆体を合成するグアノシンペンタホスフェート(pppGpp)シンターゼである。逼迫因子ppGppが、actII−ORF4転写を活性化することにおいて、原因的な役割を持つ(Heskethら、2001)。BAP29中の多量のGpsIが、ppGpp前駆体のプールの増加を示唆し、したがって、アクチノルホジンの早期および増強産出を示唆している。ActVA4の機能は未知であるが、しかし遺伝子が、アクチノルホジン産出に関連するクラスター(20遺伝子)中に含まれ、転写活性因子actII−ORF4に依存している(Ariasら、1999)。表2からしたがうように、actII−ORF4は、予想DasR標的遺伝子間で特徴づけられる。精製DasRの本遺伝子のdre上流への直接結合が、DasRタンパク質が、actII−ORF4プロモーター領域にて見られるdre要素を含む二本鎖オリゴヌクレオチドに直接結合するという本発明者らの発見によって検証される(図9)。このことは、実際にDasRが、この刺激的な化合物の合成のための、経路−特異的活性因子遺伝子に結合することによる、アクチノルホジン産出を制御することを証明しており、DasRが、子嚢菌における抗生物質産出の制御において重大な役割を果たすことを示唆している。
【0116】
おもしろいことに、一次ゲル電気泳動による、dasR変異体が存在しない状態での分泌タンパク質と、その親S.コエリカラーM145の比較が、1つの単一タンパク質が、dasR変異体中で、異常に高く過剰発現したことを示した(図4B)。このタンパク質は、質量分析によって、SCO5074として同定された。本タンパク質は最近、アクチノルホジン生合成クラスターの一部としてみられ、分泌抗生物質のテイリングに対してもっとも関与する可能性がある分泌デヒドラターゼである(Hesketh & Chater 2003;Taguchiら、2000)。遺伝子産物は、たいがい、アクチノルホジン前駆体中のアルコールの環化−脱水を補助して、ピラン環を与え、この反応は自然発生的に進行するが、有さない場合にはきわめて効果が低い。Taguchiら、(2000)にて記述されたように、actVI−ORF3崩壊変異体は、親と比べて少ない(約半分の)アクチノルホジンを産出する。このことは、野生型株が青色色素を産出する一方で、dasR変異体が、紫/すみれ色色素を産出し、たいがいSCO5074の極端な過剰発現によるアクチノルホジンの変異体である、という本発明者らの観察と一致する。また非常に興味深いことに、以上で記述した新規バイオインフォマティクス技術を用いて、本発明者らは、抗生物質の調節および/または産出に関与する多くの遺伝子のdre部位上流を同定した。これらの標的を、表3にて要約している。
【0117】
酵素産出の制御
16の予測遺伝子にて、キチン−関連(chi)遺伝子が、キチナーゼ、キチン結合タンパク質、(キト−オリゴサッカライドをGlcNAcとキトビオースに変換する)細胞外β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、および(キトビオースをGlcNAcに加水分解する)細胞内β−N−アセチルグルコサミニダーゼを含む、潜在的DasR標的の大きなサブセットを構築する。これを検証するために、本発明者らは、誘導(キチン)または抑制(グリセロール、グリセロール+GlcNAc、およびグルコース+キチン)下増殖した、BAP29およびM145の総キチン分解活性を測定した。図6Aにて描写したように、本発明者らは、細胞をグルコースが存在する状態、またはしない状態で、キチン上で増殖させた時に、BAP29におけるキチン分解活性が強く減少したことを観察した。同様の観察が、総β−N−アセチルグルコサミニダーゼ活性をアッセイしたときに得られた(図6A)。
【0118】
地球上で1つの、しかしもっとも豊富な炭素供給源であり、N−アセチルグルコサミンのポリマーである、キチンの利用に必要である、キチン分解系に関して、DasRとchi遺伝子間の予想されるシス−トランス関係を検証するために、7つの試料を選択した。いくつかは低い結合効率であったが、陽性DNA−DasR相互作用が、すべての試験したプロモーターに関して観察された(図9)。3つのキチナーゼ遺伝子の転写を、GlcNAcの取り込みを含む(グリセロールおよびGlcNAc)、または含まない(グリセロール)条件下の培養培地から単離したRNA上で、RT−PCRによってモニタした(図6B)。解析した遺伝子は、chiI(SCO1444)、chiF(SCO7263)、および推定分泌β−N−アセチルグルコサミニダーゼをコードしているSCO6300であった。広範囲キチン分解活性から推定されるように、基礎発現が、グリセロール上にのみ培養培地中の、3つすべての遺伝子で観察された。chiIおよびSCO6300に関して、M145とBAP29間の転写レベルに有意な差はなかった。おもしろいことに、chiF転写は、DasRに完全に依存しており、一方で、本発明者らは、BAP29からのRNA調製において任意の転写物を検出できず、野生型のRNA試料中で、強力なchiF転写が存在した。これらのデータは、GlcNAc輸送のための遺伝子と、それに続く細胞内異化作用に対する機能の抑制とは反対に、DasRが、キチン分解系を正に制御していることを示唆している(以下を参照のこと)。
【0119】
他の細胞外酵素も、DasRによって制御される(図7)。実際、本発明者らは、キチン分解系に加えて、マンナナーゼ、α−アミラーゼ、キシラナーゼの活性が、DasRに依存することを発見した(図7)。これらのポリサッカライド−分解系のすべてが、事実、dasRによる基質誘導とグルコース制御両方において影響を持ち、酵素分泌に対する制御機構におけるその重要な位置を強調している。
【0120】
糖輸送のDasR−仲介制御
多くの予想DasR標的が、炭素供給源の運命に関与したので(表2)、本発明者らは、糖輸送におけるdasR変異導入の効果を解析した。輸送アッセイによって、GlcNAcのPTS−仲介内部化が、BAP29において構成的になり、一方で、親M145において、取り込みがGlcNAcによって誘導されたことが明らかになった(図8A)。これは、普遍PTSホスホトランスフェラーゼHPrおよびIIACrrの構成タンパク質レベルと相関し(図8A)、PTSペルメアーゼ複合体(IIBGlcNAc、IICGlcNAc、IIACrr、EI、HPr)をコードしているそれぞれの遺伝子(malX2、nagE2、crr−ptsIおよびptsH、図8C)のRT−PCRによって支持された。
【0121】
以上で示したように、コンピュータによる予測およびプロテオーム解析によって、DasRに対する標的として、普遍ATPase MsiKをコードしているmsiK(SCO4240)が同定された(図4)。DNA結合実験によって、DasRが、msiKプロモーター領域中に存在するdreに直接結合することが示され(図9)、これは、DasRが、セルビオース、トレハロース、マルトース、キシロビオース、キトビオース、およびおそらく他のさらに20〜30の炭化水素の取り込みのためのものを含む、MsiK−依存ABC型(ATP−結合カセット)輸送の制御に関与することを示している(Bertramら、2004)。MsiKのDasR−依存制御の明らかな結果として、DasRが、糖オペロン誘導因子の能力を間接的に制御し、したがって、すべての細胞外糖ヒドロラーゼの発現に影響を与える。これは、キチン分解系に加えて、マンナナーゼ、α−アミラーゼ、キシラナーゼがDasRに依存するという本発明者らの発見と非常に相関する(7)。
【0122】
DasR−依存ペプチドグリカン関連タンパク質
dasR変異体中の観察された細胞壁異常(図2D)が、ペプチドグリカン−関連ペプチダーゼをコードしているいくつかの遺伝子が、潜在的DasR標的のリスト(表2)内に含まれているという発見によって、少なくとも部分的に説明される。事実、部位は、五員dppAオペロンの71bp上流(SCO6486−6490)で予測された。dppAそれ自身は、バチルス サブチリスのDppA(DppABsu)に30%同一および50%類似の、推定二核亜鉛依存、D−特異的アミノペプチダーゼ(pfam 04951)をコードし(Cheggourら、2000)、DppABsuは、D−Ala−D−AlaおよびD−Ala−Gly−Gly基質上で唯一活性である。DppABsuの生理学的役割はおそらく、ペプチドグリカン生合成において必要とされる、D−Ala−D−Alaジペプチドを加水分解することによる、栄養欠如に対する適合である(Cheggourら、2000)。dppAオペロンの他のorf(SCO6489)にはまた、ペプチドグリカン前駆体またはペプチドグリカン分解産物異化に関与する。SCO6489の予測遺伝子産物は、ペプチドグリカンのテトラペプチド部位中の二塩基アミノ酸とC−末端D−アラニン間のペプチド結合を加水分解する(Templinら、1999)大腸菌からのLdcA(L,D−カルボキシペプチダーゼA)に、32%同一、および47%類似である。大腸菌内のldcAの不活性化によって結果として、ペプチドグリカンの総架橋が劇的に減少する。
【0123】
DasRが、dppAオペロンの発現を制御するかどうか査定するために、本発明者らは、精製His−タグ化DasRと、dppAの193bp上流に相当する断片で、DNA結合実験を実施した。EMSAsを用いた解析によって、弱いが、有意なDasRのdppAプロモーターとの相互作用が確立された(図9)。dppAの発現におけるDasRに対する調節の役割をさらに検証するために、細胞内D−Ala−D−Alaアミノペプチダーゼ活性を、変異体BAP29にて測定し、親株S.コエリカラーM145と比較した。両方の株を、種々の炭素供給源を含むMM中で24時間増殖させた(図10)。本発明者らは、キチン中で増殖したM145間の総D−ala−D−Alaアミノペプチダーゼ活性における実質的な変化を検出できなかった。しかしながら、グルコース+キチンにおいて、本発明者らは、M145と比べて、変異体BAP29において、平均85%の活性の減少を測定した。グリセロールおよびグリセロール+GlcNAcにおいて、dasR変異体は、それぞれ約70%および33%増加した活性を持ち、したがって、反対の効果が明らかになっている。これらの実験によって、DasRが、培養液の条件にしたがって、dppA活性を制御しており、したがって、ペプチドグリカン前駆体生合成のために必要なD−Ala−D−Alaプールを調節することが示されている。
【0124】
DasRと中央代謝
予想dre部位のリストにおける多数のN−アセチルグルコサミン関連遺伝子を考慮して、本発明者らは、nag代謝遺伝子の制御におけるDasRのインパクトを調査した。EMSAsを、精製DasRタンパク質と、nagB(グルコサミン−6−Pイソメラーゼ)に対する予想dre部位およびnagKAオペロン(GlcNAcキナーゼ、およびGlcNAc−6−Pデアセチラーゼ)を含むDNAを用いて実施した。両方の場合で、DasR−dre複合体が示され得た(図9)。これは、NagA(図4)における本発明者らのプロテオーム解析、およびdasR変異体で構造的に発現する、nagBのRT−PCR解析と一致する(図8C)。DasRレギュロンはさらに、アミノ糖およびグルタミン/グルタミン酸代謝を含む、窒素代謝に対する遺伝子の制御を介して、N−アセチルグルコサミンの運命に焦点を当てる。本発明者らのプロテオーム解析によって、反対の反応を触媒する、標的としてグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GdhA;完全にDasRに依存する)、およびホスホセリン アミノトランスフェラーゼ(SCO4366、抑制される)が明らかになった(Altermann and Klaenhammer,2005)(図4&5)。NagAによってN−アセチルグルコサミンから遊離する酢酸が、アセチル−CoAシンターゼ(SCO3563の強力なdre部位上流であり、EMSAによって確認される)によって、TCA回路の前駆体である、アセチル−CoAに変換される。アセチル−CoAは、二者択一的に、チオレート(ThiL、プロテオミクスによって検出された標的、図4)によって、アセトアセチル−CoAに変換されて、脂肪酸代謝に入る。このことは、順番に、Gln(アンチコドンCUG)およびGlu(アンチコドンCUC)に対するすべての主要なtRNAを含むオペロン中の少なくとも2つの遺伝子、tRNAGln−tRNAGlu−tRNAGlu−tRNAGln−tRNAGlu−が、DasRによって調節されることが予想され、一方で最初の3つがそうではないので、転写レベルで、異常な型の制御までよく広がり得、このことはDasRによるtRNA利用性の微調整を示唆している。tRNA存在量のレベルでのそのような制御を支持する証拠は、Glu−tRNAGlnアミノトランスフェラーゼの予想dre部位上流の存在に由来する(表2)。
【0125】
したがって、関連したすべての対処段階のほとんど完全な制御をもつ、細胞エネルギーバランス、およびトライアングルGlcNAc−Gln/Glu−アセチル−CoA周辺の回転のために重要な、DasRレギュロンの超制御コアネットワークの図が明らかになる。したがって、DasRは、中央代謝の制御において、とりわけ顕著な役割を果たし、代謝工業技術に対する非常に魅力ある標的である。N−アセチルグルコサミンおよびグルタミン酸代謝に関するすべての標的を、表4にて強調している。
【0126】
驚くべきことに、本発明者らのサーモビフィド フスカ(Thermobifido fusca)ゲノムの解析によって、それぞれの酵素コード遺伝子の上流に局在する非常に信頼性のあるdre配列で、事実解糖のそれぞれの単独の段階が、DasRによって制御されることが示された(表9および図17)。この意味合いは、この工業的に関連する放線菌において、解糖を介したフラックスが、DasRの発現の増強または減少(または不活性化)によって簡単に制御され得るということを意味するので、本当に困難である。
【0127】
グルコサミン−6−PはDasRのエフェクターである
きわめて重要な質問は、なにがDasRを調節するエフェクター分子であるか、である。本明細書で示したように、DasRに対する多くの標的が、N−アセチルグルコサミンの産出(キチン分解系)、輸送(PTSGlcNAc)、および代謝(フルクトース6−Pを介した解糖)に関する。本発明者らはしたがって、アミノ糖代謝周辺に引かれる中間体分子周辺の誘導因子を探した。dasRのnagBおよびcrrプロモーターの結合を干渉するための化合物の能力を試験する、結合干渉実験を設定した。これらの化合物は、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン−6−P、グルコサミン−6−P、グルタミン酸、グルタミン、アセチル−CoA、およびフルクトース6−Pであった。これらの結合干渉実験により、nagB(図12)およびcrrプロモーター領域(示していない)とのDasRの複合体の形成を防止した唯一の試験化合物であったので、誘導因子/エフェクター分子として、グルコサミン−6−Pが同定された。グルコサミン−6−PがDasRのエフェクターとして働くという発見が、(GlcNAc)n細胞外分解、N−アセチルグルコサミン輸送および細胞内代謝、脂質および窒素代謝、解糖、およびペプチドグリカン合成間の代謝岐路でのその中心的位置によって説明される(図13)。
【0128】
N−アセチルグルコサミンは、NagE2トランスポーターによって輸送される
N−アセチルグルコサミンに対する2つの潜在的トランスポーター、すなわち近接遺伝子nagE1(SCO2906)およびnagE2(SCO2907)が、S.コエリカラーゲノム上で同定された。変異体を、全遺伝子をアパラマイシン耐性カセットaacC4で置換することによって、両方の遺伝子に対して作製した。二重変異体をまた産出した(BAP6)。これを実施するために使用した方法は、先に記述された(Nothaftら、2003)ように、pWHM3を用いることによってであった。輸送遺伝子nagE1(BAP4)、nagE2(BAP5)、または両方(BAP6)に関して欠損した変異体を、N−アセチルグルコサミン(1%w/v)の存在する状態またはしない状態で、R2YE寒天プレート上にプレートした。寒天プレート上の他の株として、S.コエリカラーM145(すべての変異体の親)、dasR変異体BAP29およびpts変異体ptsH(BAP1)、crr(BAP2)、およびptsI(BAP3)を使用した。pts変異体の表現系に関して、図3A)を参照のこと。おもしろいことに、nagE2(またはnagE2およびnagE1)がない状態で、N−アセチルグルコサミンの添加が、発達に何らかの効果も持たず、一方で、nagE1変異体および親株S.コエリカラーM145が、増殖状態にて停止することになる。このことは、実際にnagE2が、N−アセチルグルコサミンのトランスポーターであり、DasR制御系に対する誘導体分子の輸送にとって必須であることを証明した。
【0129】
明らかに、NagE2の活性に(正にまたは負に)影響を与えることが、ストレプトミセス細胞内へ導入された誘導因子分子の量に強い影響を持ち、したがって、DasR制御系に強く影響を与える。
【0130】
DasRレギュロンのフルスケール
本発明者らは本発明書で、約200の標的を記述している一方(表2)、正確な数字は、疑いもなくずっと大きく、たとえば、本発明者らは、擬陽性を避けるために、非常に制限されたdre位置加重マトリックスを使用したが、本発明者らは、そのようにすることによって、多くの正確なdre部位があいまいになったという証拠をもつ。さらに、本発明者らは、予想されたDasR標的のリスト中、少なくとも8つの転写因子遺伝子を同定した。DasRは、多くの検出/輸送要素、およびGlu−とGln−tRNAsの発現を制御する。このことは、DasRが、多様な環境の変化に受容的でありえ、たいがい転写レベルおよび翻訳レベル両方で、多くの他のレギュロンを支配することを示唆している。このDasRによる多重レベル制御を、表13で要約している。
【0131】
レギュロンの絶対的サイズに加えて、広範囲活性調節物に対する必要条件はさらに、単独活性転写因子と呼応して働くべきであるということである(Morenoら、2001)。実際、DasRは、chi−関連遺伝子を制御し、これはまたChiS/ChiR二要素系によって(Kormanecら、2000)、そして最近同定された第三の未知のDNA−結合タンパク質によって(Fujiiら、2005)調節され、このことはキチン分解系の多重−パートナー制御を示唆している。他の例は、PTSの調節における本発明者らの研究から発生し、そこで本発明者らは、DasRに加えて、また、ROK−ファミリー調節物をコードしている(Titgemeyerら、1994)、SCO6008が、pts遺伝子の活性化に必要であることを発見した。
【0132】
広く広がったDasRレギュロンは、新規スクリーニング手順のための標的である
おもしろいことに、DasR調節ネットワークが、S.アベルミチリス(S. avermitilis)およびS.スカビエス(S. scabies)にて非常に保存されており、S.コエリカラーにて予想されるdre部位の75%以上が、S.アベルミチリス中のオーソロガス遺伝子の上流でみられ、提示された予測のための、強力な系統発生議論を提供する。他の放線菌におけるdasRレギュロンの強力な保存がまた、DasRは、このクラスの細菌中の天然産物と酵素に関する多くの遺伝子を制御し得ることも示している。DasRレギュロンの保存が、DasRタンパク質の高い保存によって強調される(図14)。
【0133】
S.クラブリゲルス(S. clavuligerus)中のクラブラン酸産出の予想された制御を考慮して(表3)、本発明者らは、遺伝子の開始に関連するnt位置で、S.コエリカラーdasRの−50/−30および+900/+920領域とマッチするオリゴヌクレオチドを用いて、PCRによって、dasR遺伝子をクローン化した。クローンを配列決定し、予想される遺伝子産物は、単一アミノ位置で異なり、すなわちS.クラブリゲルスDasR中Asn55、およびS.コエリカラーDasR中Asp55であった。これに基づいて、S.クラブリゲルス中のDasR結合部位が、S.コエリカラー中のものと非常に類似していることが明らかである。相当する核酸およびアミノ酸配列を図19にて開示している。
【0134】
驚くべきことに、本発明者らは最近、コア遺伝子クラスターnagA−nagB−dasR(およびdre要素)がまた、バチルス、ラクトコッカス、リステリアおよびストレプトコッカスを含む、低G+Cグラム陽性間で広く広がっていることを発見した。バチルスのDNAのG+C含量(43%)が、放線菌のもの(72〜73%)よりも約30%低いけれども、組織が保存されているだけでなく、dre部位の配列も保存されている。バチルス サブチリスおよびバチルス ハロドゥランス(Bacillus halodurans)のdre部位を表5にて要約しており、ストレプトコッカス種のものを表7で、ラクトコッカス ラクティスのものを表6で、そしてリステリア インノキュアおよびリステリア モノサイトジェネス(Listeria monocytogenes)のものを表8で要約している。これらの種におけるDasR結合部位に関する由来コンセンサス配列が、図15中、カートーン(cartoon)にて要約されている。
【0135】
このことから、本発明者らは、そのような分岐微生物中のそれらの存在が、DasR制御系が、少なくとも50億年の進化で残っていることを意味するので、DasRコアレギュロンが、非常に重要なコンセプトであると結論づけた。遺伝的改変による以外の外部からの、多くの工業的および医学的に関連する化合物(酵素、抗生物質、抗がん剤、農業化合物、および他の二次代謝物)の発現を制御可能にするので、DasRの活性を操作するためのツールを発見することがしたがって、非常に重要である。これはたとえば、個々の株操作が選択肢ではないので、新規のスクリーニング戦略を設定するための必須条件である。誘導因子(とりわけ、N−アセチルグルコサミンおよび誘導体)の添加が、広範囲の天然産物の発現を誘引し、または少なくとも増強し、これは、より簡単なスクリーニングを可能にする。明白な例は、封じられて、したがって活性に基づくスクリーニングアッセイによって同定不可能である、潜在性クラスターの制御である。本発明者らは、抗生物質生合成クラスターが、DasRの活性の除去または減少によって活性化されることを示し、また本発明者らは、誘導体の添加が、これらのクラスターを軽減し、したがって新規のスクリーニング手順の可能性を押し上げることを予想している。
【0136】
ActおよびRed産出におけるDasRの効果の詳細な解析
以上で示したように、発達を可能にする培地(たとえばマンニトール−含有固体培地)上、dasR変異体が、着色抗生物質アクチノルホジン(Act)およびウンデシルプロジギオシン(Red)の増強した産出を示した。dasR変異体中の抗生物質産出における相対的増加を、固体褐色培養液のスペント寒天(炭素供給源添加なしのMM)中のActおよびRed濃度を決定することによって定量した。これらの条件下、S.コエリカラーが唯一寒天上で増殖し、DasA寒天ラーゼの誘導によって可能となる(Buttnerら、1987)。顕微鏡測定によって、ActおよびRed産出が、それぞれ3.2(±0.2)および3.9(±0.3)の因子(三回の独立した実験の平均)によって、BAP29中で一定に増強した。図4で示したように、dasR変異体による増強されたAct産出のさらなる支持にて、M145およびBAP29の細胞外画分の初期プロテオーム解析によって、アクチノルホジンの立体特異的ピラン環形成に関与する分泌タンパク質、SCO5074によってコードされたdasR変異体、すなわちActVI−ORF3(HeskethおよびChater、2003;Ichinoseら、1999)、保存仮想細胞質タンパク質、SCO5079の産物、ActVA−ORF4(Caballeroら、1991)中で強力にアップレギュレートされたactクラスター中の遺伝子によってコードされた2つのタンパク質が同定された。
【0137】
本発明者らは、それぞれactおよびred遺伝子クラスターの転写活性化因子をコードしている、actII−ORF4とredZの推定dre部位上流を観察した(dre部位に関して、表2を参照のこと)。actII−ORF4のdre部位上流(転写開始部位に対してnt位置−59/−44)が、プロモーターのカノニカル−35〜−10配列の間に正確に存在し、位置は、DasRが、転写抑制因子として機能すべきであることを示唆している。redZのdre部位上流(転写開始部位に対してnt位置−201/186)が、redZプロモーターの−35配列の50bp上流周辺に存在する。
【0138】
精製His6−タグ化DasRおよび二本鎖オリゴヌクレオチドプローブでの電気泳動移動ゲルシフトアッセイ(EMSAs)によって、redZおよびactII−ORF4の予想dre部位への、そして陽性対照(crr−ptsIのdre部位)への直接結合が示され、一方で、DasRはdre要素への類似性を欠く、したがって陰性対照として使用した、crrのシス活性要素に結合しなかったことが示された(図21A)。DasRがcrr断片に結合した場合、遊離鋳型は見られなかったが、一方で、50%以上のredZプローブが結合し、約10%のみのactII−ORF4 dre部位が結合した。したがって、本発明者らは、それらの「統計学的強度」に相当する結合効果を持つ、予想dre部位へのDasRタンパク質の直接結合を確立した。
【0139】
actII−ORF4、redZおよびredDの制御におけるDasRの役割をさらに、MMマンニトール寒天プレート上、30時間(植物増殖)、42時間(気中増殖の開始)および72時間(気中増殖および胞子)で増殖させた、親株(M145)およびdasR変異体(BAP29)から回収したRNA試料上の、半定量的RT−PCTによって査定した。RT−PCR解析によって、dasR変異体中、すべての時間点で、actII−ORF4の転写の強力な増強と、個別の、しかし有意に増強したredZの転写が明らかになった(図21B)。明らかに、DasR−依存転写抑制の程度が、DNA−タンパク質相互作用の強度に関するだけでなく、プロモーターコンセンサス配列に関するdre部位の相対的な位置づけがまた、重要な因子でもある。先に、redZの増強された発現によって、redD転写が誘導され、bldA変異体中の抗生物質産出におけるブロックをバイパスしていることが示されている(Guthrieら、1998)。実際、redZの増強した発現が、red経路−特異的活性因子遺伝子redDの発現の明らかな増強にて反映された。結論として、redクラスターの公知の活性因子遺伝子が、DasRによって負に制御され、これは、dasR変異体中のRedの産出の増強を説明している。actクラスターに対して、DasRは、actII−ORF4のプロモーター領域への結合に対する転写活性因子AtrA、およびそのインビボ活性の調節を介して、または遺伝子不活性化を介してのいずれかで、DasRの不活性化と競合し、結果としてAct産出の増強となる。
【0140】
N−アセチルグルコサミンが、抗生物質産出を開放するために、DasRを標的とする、さらなる証拠
生理学的および化学的差違の開始に対する、環境の栄養状態の初期検出からのシグナル伝達カスケードが、以下の段階を少なくとも含むべきである。(1)細胞外シグナルの利用性および検出、(2)細胞内への「シグナル伝達栄養素」の輸送、(3)誘導体分子へのそれらの細胞内改変、(4)チェックポイントである、広範囲調節物へのその結合、(5)情報の、経路特異的活性因子へのシグナル伝達、および(6)発達および抗生物質産出へのスイッチ。本発明者らの実験によって、DasRによって制御されるGlcNAcセンサーカスケードが、栄養素に対する直接の応答において、抗生物質産出を誘引する、広範囲の系であることが示唆される。段階は、(1)GlcNAcの検出、(2)PTSGlcNAcを介した輸送、(3)NagAによるグルコサミン−6−Pへの変換、(4)シグナル伝達物質のDasRへの結合、であり、したがってactII−ORF4およびredZにおけるその抑制活性を阻害し、アクチノルホジンおよびウンデシルプロジジオシンの生合成に対する経路を活性化する。
【0141】
DasRレギュロンの新規に広がった特性から推定される制御経路からの論争で(図22)、本発明者らは、DasR−依存輸送およびPTSを介したGlcNAcのリン酸化が、S.コエリカラーにおけるアクチノルホジンおよびウンデシルプロジジオシン生合成を誘引するための決定的なシグナルでありうると予想した。この仮説を、GlcNAcの存在する状態またはしない状態でのMM寒天プレート上で、S.コエリカラーM510(ΔredD)、M511(ΔactII−ORF4)、およびM512(ΔredD、ΔactII−ORF4)をプレートすることによって試験した。それぞれの経路特異的活性因子の欠損の結果として、S.コエリカラーM510は、赤色着色ウンデシルプロジジオシンを産出不能であり、M511は青色着色アクチノルホジンを産出できず、一方で、M512はいずれの抗生物質も産出しない。これらの株によって、本発明者らは、それらの着色がpH依存であり、生合成誘導体が、種々の色を示すので(Bystrykhら、1996、Ichinoseら、1999)、必要な対照である、それぞれの抗生物質を特異的にモニタ可能である。いずれの株も、単独炭素供給源として、寒天でのMM上、5日間増殖させた場合、有意な量のアクチノルホジンまたはウンデシルプロジジオシンを産出しなかった。GlcNAc(10mM)が存在する場合、ActまたはRedの産出が、それぞれS.コエリカラーM510およびM511において誘導された(図22)。着色抗生物質は、予想されたように、M512に関して観察されなかった(示していない)。したがって、飢餓条件下、ActおよびRedの産出が、GlcNAcのレベルの増加に対する応答で、そしてDasRの存在しない状態によっての両方で誘導される。
【0142】
薬物ディスカバリーのためのGlcNAcの適用
抗生物質産出のGlcNAc−仲介制御が、放線菌において、より広く広がる現象であるのか。このことを査定するために、本発明者らは、指標株としてバチルス サブチリスを用いて、種々の放線菌の総抗細菌活性(殺菌および静菌)におけるGlcNAcの効果を評価した。試験した株を、GlcNAc(1%)の存在する状態または存在しない状態で、マンニトール(0.5%)を含む最少培地上にスポットした。おもしろいことに、抗生物質産出の増殖阻害ゾーン指標が、ストレプトミセス クラブリゲルス(セファマイシンの産出物)、(キロマイシンを産出する)ストレプトミセス コリヌス、ストレプトミセス グリセウス(ストレプトマイシン産出物)、(ヒグロマイシンを産出する)ストレプトミセス ヒグロスコピクス、(オキシテトラシクリンを産出する)ストレプト0マイセス リモサス、およびストレプトミセス ベネズエラ(クロラムフェニコール、メチマイシン)に関して、非常に大きかった(図23)。N−アセチルグルコサミンは、ストレプトミセス アクリマイシニ、ストレプトミセス アベルミティリス、ストレプトミセス シンナモネンシス、ストレプトミセス リモサスおよびストレプトミセス リビダンスにおける、B.サブチリスに対する抗生活性に影響を与えたように見えなかった。興味深いことに、本発明者らは、ストレプトミセス ロセオスポルス(Streptomyces reseosporus)にて抑制効果を観察した。これらの結果によって、GlcNAcによる(そしてDasRを介した)抗生物質産出の救済が、放線菌中での共通の制御機構であることが示唆されている。
【0143】
DasRが、放線菌における潜在性二次代謝物クラスターをサイレンスすることにおいて役割を果たすかどうかを査定するために、本発明者らは、今まで研究した唯一の潜在性クラスターである、仮想I型ポリケチド(SCO6278−6288)に対する予想抗生物質生合成クラスターの発現レベルを解析した。この生合成経路の誘導は、経路特異的活性化因子、KasO(SCO6280)に依存し、順に、γ−ブチロラクトン(SCB1)結合タンパク質ScbRによって抑制される(Takanoら、2005)。kasOの抑制は、SCB1の産出によって救済される。dasRがないことによってこのクラスターの潜在的「覚醒」を試験するために、本発明者らは、MMマンニトール寒天プレート上で、30時間(植物増殖)、42時間(気中増殖の開始)、および72時間(気中増殖および胞子)増殖した、親株(M145)およびdas変異体(BAP29)から回収したRNA試料上で、半定量RT−PCRを実施した。おもしろいことに、kasO転写物が、BAP29の30時間および72時間RNA試料中で検出されたが、任意の試料において、M145では見られなかった(図24)。kasOの誘導の結果としてたいがい、生合成クラスターの最後のORFであり、推定I型ポリケチドシンターゼをコードしている、SCO6273の転写が、劇的に増加した(図24)。SCO6273の発現の増強が、栄養増殖間でのみ観察された。dre部位は、kasOの推測上流に存在せず、DasRとこの潜在性クラスター間のシス−トランス相互作用は、調査中である。
【0144】
細胞壁溶解の制御におけるDasRの関与
キチンは、GlcNAcの保存の主要な形態であり、地球上で第二のもっとも豊富なポリマーであり、それ自体は土壌−住居細菌にとって非常に重要なものである。GlcNAcは、富N−およびC−供給源であり、その代謝産物酢酸、アンモニアおよびフルクトース−6−Pが、主要な一次代謝経路の交差にて存在する。このことは、異なる型のキチン含有基質をコロニー化可能である選択的利点を強調する(Saitoら、2003、Schrempf、2001)。本発明者らの実験によって、GlcNAcが反対のシグナル、すなわち栄養−富条件下、拡大(増殖および発達阻止)、および栄養が限定された条件下、増殖停止と続く発達(抗生物質産出、胞子形成)を提供可能である。GlcNAcの2つの主要な供給源、キチンおよび細菌固有の細胞壁が存在し、これらは反対の応答を誘引し得る。細菌キチナーゼは主に、キト−オリゴサッカライド、およびキチンからのN,N’−ジアセチルキトビオース(GlcNAc)2を産出し、GlcNAcはほとんど産出されない。また、dasR変異体は、親株と比べて、5倍低いキチン分解活性を持つが(Colsonら、2007)、抗生物質を過剰産出し、これはキチナーゼがシグナルを産出しないことを示唆している。「GlcNAc効果」が、より高い濃度(>5mM)でのみ観察された。おそらく、たいがい天然の供給源が、細菌細胞壁の自己消化でありうる。多量のGlcNAcが、プログラムされた細胞溶解後、局所で蓄積することが発見され、一般的栄養制限が、栄養菌糸の消費にて、気中菌糸体の発達を必要とする時である(Miguelezら、2000)。本発明者らが、栄養検出、細胞壁溶解およびタンパク質分解および二次代謝(とりわけ抗生物質産出における)がすべてDasRの機能に連結していることを示しているので、抗生物質経路特異的活性因子とともに、ペプチドグリカン前駆体の異化に関与する遺伝子の単一レギュロン内で、非常に示唆的なクラスタリングが存在する。
【0145】
放線菌によって産出された多数の二次代謝物と、それらの産出を誘引する広範囲調節機構における相対的に制限された知識間の対比が、多くが、有機体それ自身から学習することによる、薬物ディスカバリーに関して得られることを暗示している。本発明者らは、抗生物質産出に対する栄養ストレスからのシグナル伝達カスケードを提案する。本発明者らの推定された経路が、GlcNAcが放線菌に対する重要なシグナル分子として提案され、生息環境の栄養状態を決定可能である。PTSGlcNAcによって輸送されるシグナルが、グルコサミン−6−Pに代謝され、DasRを不活性化し、順に抗生物質産出および栄養富条件下での発達の抑制に関連する。PTSGlcNAcに加えて、DasRが、多くのよりABC糖トランスポーターを制御し、種々のこれらの機能が現在調査中である。抗生物質産出が、DasR−仲介制御系を干渉することによって覚醒および/または増強可能であるという発見が、新規の天然産物のディスカバリーにて指向される、スクリーニングプログラムに対する新たな見通しをひらく。考えられる限りでは、数千の株の可能性を産出することは、GlcNAcの添加によって促進され、本発明者らは、多くの場合で、ヒットおよびミス間の差を作り出すという強力な証拠を持っている。これは、(MDR−およびXDR−マイコバクテリウム チューベルクローシス、メチシリン耐性スタフィロコッカス アウレウス(MRSA)、およびバンコマイシン耐性塩テロコッカス ファエカリス(Enterococcus faecalis)(VRE)のような)再発性多剤耐性株によって引き起こされる感染性疾患、また特定のがんの処置のための薬物のディスカバリーにて目指されるスクリーニング手順の成功率を改善する。
【0146】













【0147】
【表1】

【0148】
【表2】







【0149】
【表3】





【0150】
【表4】

【0151】
【表5】



【0152】
【表6】

【0153】
【表7】







【0154】
【表8】



【0155】
【表9】



【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1A】DasR結合部位の同定およびDasRレギュロンの予測を示す図である。crr−ptsI領域内のDasR結合部位のDNaseIフットプリント法(crrの開始点に対して−202/+8のnt位置)の結果を示す図である。crr−ptsIプロ−ブをDNaseI(0.4μ/ml)と一緒にインキュベートし、精製したDasRの量を増加させた(レーン2〜7中、それぞれ0、10、20、40、60、または80pmolのDasR)。追加対照群:レーン1はDasR含有、DNaseI非含有のプローブである。レーン8は、DNaseIおよび非特異的なタンパク質(BSA)350pmol有りのプローブである。ACGTは、DNA配列レーンである。crr−ptsIプローブのDNA配列はDasR保護配列(“フットプリント”と示した)を表す。DasRコンセンサス(標的部位の下)に一致する配列を黒で強調し、crr翻訳開始コドンをグレーで強調した。
【図1B】DasR結合部位の同定およびDasRレギュロンの予測を示す図である。DasRによって制御されていることが示された、および/または予測される遺伝子の分類および数を示す円グラフである。
【図2A】成長および抗生物質産生に対するdasRの効果を示す図である。S.コエリカラー(S. coelicolor)M145およびそのdasR変異株BAP29による、GlcNAcを含む、または含まない最小寒天プレートにおける抗生物質産生を示す図である。GlcNAcの存在は、S.コエリカラー(S. coelicolor)M145への色素性抗生物質アクチノロージンおよびウンデシルプロジギオシンの誘導に必要であるが、一方、発現はdasR変異株で構成的である。後者は、(i)ActV4Aは変異株において増大される(図4)、および(ii)アクチノロージン産生のための経路特異的活性遺伝子actII−ORF4、およびウンデシルプロジギオシン産生のための経路特異的活性遺伝子redZのDasR結合dre上流の同定という、本発明者らの発見に一致する。予想外に、GIcNAcを含む最小培地で成長したdasR変異株は今までのところ未同定である緑色色素の発現を示している。
【図2B】成長および抗生物質産生に対するdasRの効果を示す図である。DasRの過剰発現は成長停止を引き起こす。左は、対照プラスミドpUWL−KSを有するS.コエリカラー(S. colicolor)M145である。右は、過剰発現したdasRプラスミドを有する同株である(300℃で4日間培養した)。DasR過剰発現株では気菌糸がほとんど欠如している(白色)ことに注意されたい。
【図2C】成長および抗生物質産生に対するdasRの効果を示す図である。S.コエリカラー(S. colicolor)M145およびdasR変異株BAP29の、気菌糸および胞子の走査電子顕微鏡写真である。書き込みの見出しはDasR変異株の異常な胞子を示す。棒線は5μmを示す。
【図2D】成長および抗生物質産生に対するdasRの効果を示す図である。左は、M145の透過電子顕微鏡写真、右はBAP29の透過電子顕微鏡写真である。矢印は細胞壁と細胞膜との間の空隙を示す。FDは完全分離を示し、IDは不完全分離を示す。
【図3A】PTSによる成長制御を示す図である。正確な成長にはPTS系が不可欠である。菌株をSFMまたはR2YE寒天プレート上で5日間培養した。SFM上では、crr変異株BAP2は白色の気中菌糸体を産生したが、それらの条件下では胞子を産生することはできなかった。一方、ptsHが欠失(BAP1)またはptsIが欠失(BAP3)していると、グレーに着色された胞子が多少産生された。興味深いことに、R2YE寒天プレート上では、3種のPTS変異株全てにおいて成長停止が見られた(いわゆる、baldまたbld表現型)。
【図3B】PTSによる成長制御を示す図である。PTSによりwhiGの転写が制御されることを示す図である。本図は、半定量的RT−PCR法によって得られた増幅産物含有の1%寒天・ゲルを示す。野生株およびPTS変異株BAP1(ΔHPr)、BAP2(ΔIIAcrr)、およびBAP3(ΔEI)の対数増殖した菌糸体から全mRNAを調製した。本図では、ホスホトランスフェラーゼIIAcrrおよびEI欠乏菌株においてwhiG−mRNA濃度が減少したことが示されている。結果は、指数増殖期中の異なる時点で採取した菌糸体により、3連で再現された。標準対照として16S rRNAを検出した。
【図3C】PTSによる成長制御を示す図である。HPrによる、WhiGの翻訳後修飾の制御を示す図である。S.コエリカラー(S. coelicolor)M145(wt)、およびそのpts変異株(それぞれ、Hprキナーゼ、酵素IIA(Crr)または酵素Iの遺伝子が欠損している)由来の全抽出タンパク質について二次元ゲル電気泳動を行った。WhiGタンパク質の周りの領域をクローズアップして示す。予想されたように、非常に低下した転写(3B)の結果として、酵素IIAおよび酵素Iが欠乏している変異株におけるWhiGタンパク質濃度が非常に低い。意外にも、WhiGと比べ分子量は小さいが同じ等電点を有するいくつかのバンドが、HPr変異株では見られず、このことはWhiGの翻訳後修飾におけるHPrの関与を強く示している。修飾の正確な性質は不明であるが、影響が質量に対してのみで、pIには影響しないことを考えると、本発明者らは、このことはWhiG前タンパク質の加工に起因すると考える。
【図4A】プロテオーム解析によるDasR標的の同定を示す図である。強度がDasRに依存するタンパク質スポットのクローズアップ図である(2倍より大きい)。矢印は、質量分析によって同定されたタンパク質スポットを強調している。1、ThiL(SCO5399)、アセトアセチル−CoA チオラーゼ;2、GdhA(SCO4683)、グルタミン酸脱水素酵素;3、SCO5520、Δ−1−ピロリン−5−カルボン酸デヒドロゲナーゼ;4、ActV−A4(SCO5079)、アクチノロージン生合成経路の一員(機能不明);5、MsiK(SCO4240)、多糖取り込みタンパク質;6、Gpsl(SCO5737)、グアノシン5リン酸シンテターゼ;7、SCO4366、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ;8、NagA(SCO4284)、N−アセチルグルコサミン−6−リン酸脱アセチル化酵素;9、GalT(SCO3138)、ガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ。タンパク質:ThiL(SCO5399)、アセトアセチル−CoA チオラーゼ;GdhA(SCO4683)、グルタミン酸脱水素酵素;SCO5520、Δ−1−ピロリン−5−カルボン酸デヒドロゲナーゼ;MsiK(SCO4240)、多糖取り込みタンパク質;Gpsl(SCO5737)、グアノシン5リン酸シンテターゼ;SCO4366、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ;NagA(SCO4284)、N−アセチルグルコサミン−6−リン酸脱アセチル化酵素;9、GalT(SCO3138)、ガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ。
【図4B】プロテオーム解析によるDasR標的の同定を示す図である。S.コエリカラー(S. coelicolor) M145およびそのdasR変異株BAP29の液体培養の使用済み培地から分離した分泌タンパク質を示す一次元のPAGEゲルの図である。Mは分子サイズ標識(nkDa)を示す。SCO5074として同定されActVI−ORF3としても知られる単一タンパク質がdasR変異株BAP29において強く過剰発現していることに注意されたい。
【図5】N−アセチルグルコサミン関連の酵素反応およびグルコサミン−6−Pの中心位置の略図である。DasR標的の同定が示されている。矢印は、dasR変異株における促進(太い矢印)または阻害(細い矢印)を示す。細胞外キチンは加水分解されて一度細胞内に組み込まれると、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)に転換され、それは次いでNagKによりGlcNAc−6−Pにリン酸化される。NagAはGlcNAc−6−Pを脱アセチル化してGlcN−6−Pにする。GlcN−6−Pは、窒素代謝、TCA回路、ペプチドグリカン前駆体合成、およびNagBを介した解糖(GlcN−6−Pからフルクト−ス−6−リン酸(Fru−6−P)への転換)の間の中心位置を占める。本略図は、グルコサミン−6−P、DasRレギュロンのエフェクター分子の中心位置を強調している。大きい縦の矢印は、dasRに制御される、細胞外(多)糖類から解糖およびTCA回路に向かう流れを強調している。関係する経路はKEGGデータベースで検索することができる。(http://www.genome.ad.jp/kegg/pathway.html)。
【図6A】DasRがキチン関連遺伝子を活性化することを示す図である。さまざまな炭素供給源が補充される最小培地で48時間培養した後の、BAP29、M145間の広範囲のキナーゼ、細胞外および細胞内6−N−アセチルグルコサミダーゼ活性の比較を示す図である。活性は、誘導条件下での親株M145に対する百分率(%)で表されている。
【図6B】DasRがキチン関連遺伝子を活性化することを示す図である。chiI、chiF、およびSCO6300に対するRT−PCRの結果を示す。
【図7】DasRが主な多糖類分解系の発現を制御することを示す図である。酵素活性を、特異的な分解活性に起因するコロニーの周りにできる透明帯の大きさとして測定した。左がM145、右がdasR変異株BAP29の結果である。一番上は、キシラナーゼ活性測定、真ん中はマンナナーゼ活性測定、一番下は、α−アミラーゼ活性測定の結果である。CCRはグルコースによって誘導される炭素カタボライト抑制、SIはキシラン(一番上)、マンナン(真中)、およびデンプン(一番下)によって誘導される基質誘導を表す。dasR欠損下ではキシラナーゼ発現が誘導されないが、一方マンナナーゼおよびα−アミラーゼ活性は過剰発現することに注意されたい。CCR条件下においては、全ての系でグルコース抑制の促進が見られる。
【図8A】DasRがN−アセチルグルコサミンレギュロン遺伝子を抑制することを示す図である。GlcNAcの取り込みに対するdasR欠失の影響を示す図である。左は、グリセロール培養培地における取り込み、右は、グリセロールおよび誘導物質(GlcNAc)培養培地における取り込みを示す。発現はBAP29において構成的であることに注意されたい。
【図8B】DasRがN−アセチルグルコサミンレギュロン遺伝子を抑制することを示す図である。HPr(上)およびIIACrr(下)のウェスタンブロットを示す図であり、これらのPTSタンパク質の誘導性はDasRにより制御されることが示されている。
【図8C】DasRがN−アセチルグルコサミンレギュロン遺伝子を抑制することを示す図である。半定量的RT−PCRによるcrr(IIACrrに対する)、nagE2(IICGlcNAcに対する)、malX2(IIBGlcNAcに対する)、nagB、およびchiFの転写解析を示す図である。対照として16S rRNAを用いた。
【図9】DasRと種々の標的遺伝子とのシス/トランス相関を示す図である。電気泳動ゲルシフトアッセイ(EMSA)により、コンピュータで予測されたDasRの標的への結合が実証されることが示されている。上は、10nMの蛍光プローブを用いて行った、100倍の過剰非特異的DNAの存在下で精製DasR無し(上部のプロット)および精製DasR有り(3μM、下部のプロット)での、EMSAの結果、下は、体積10μl、10pmolのdre−含有DNA、100倍の過剰非特異的DNAの条件下で、4μgの精製DasR無し(−)または有り(+)で実施したEMSAの結果を示す。DasR−dre複合体は1×TAE緩衝液中の1%寒天ロース・ゲル上で分解した。dre部位を示すが、ここでPXlnAおよびPcrpは負の制御として機能し、Pcrrは正の制御として機能する。
【図10】DppA活性測定の結果を示す図である。S.コエリカラー(S.coelicolor) M145およびBAP29(ΔdasR)によるDppA(D−Ala−D−Alaアミノペプチダ−ゼ)産生を、DppAの細胞内活性として測定した。培養物を、さまざまな(組み合わせの)炭素源、すなわちグリセロ−ル、グリセロ−ル+N−アセチルグルコサミン、キチン、またはグルコ−ス+キチンを含有する液体NM培地で24時間培養した。
【図11】ストレプトミセス コエリカラーにおける抗生物質産生に対する糖類の影響およびDasRの影響を示す図である。Actはアクチノロ−ジン(青色色素)、Redはウンデシルプロジギオシン(赤色色素)、greenは未知の新規化合物を示す。Deuは培養物の成長段階を表す(balはbald/栄養表現型、whiは白色/気菌糸、spoは胞子形成を示す)。
【図12】DasRによるDNA結合がグルコサミン−6−Pによって阻害されることを示す図である。本図は、nagBプロモーターに結合するDasRのEMSAの結果を示す。10nMの蛍光プローブ、3μMの精製DasR、および500倍の過剰非特異的DNAを用いてEMSAを行った。プロット1は、nagBプロモーター(DasRは加えず)についての制御実験、プロット2〜5は、DasRおよび50mM、100mM、150mM、および200mMのGlcNAc(左側のパネル、影響は見られず)、ならびにGlcN−6−P(右側のパネル、dre部位からDasRが放出)が存在する場合のnagBプロモーターについての制御実験を示す。
【図13】DasRによる炭素源利用の包括的制御モデルである。本モデルは、土壌中の豊富な多糖類性の炭素源(セルロース、キシラン、キチンなど)が、細胞外加水分解酵素によって分解されて各々の単糖および二糖になることを例証している。N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)はPTSによって、PEP→酵素I(EI、ptslによってコードされている)→HPr(ptsH)→EIIACrr(crr)と移され、次々にGlcNAc特異的なパーミアーゼEIIBCのEIIBタンパク質をリン酸化する、順次的なホスホリル基を経て運ばれる。DasRは、PTSGlcNAcの全ての遺伝子のレプレッサーとして機能する。他の分解産物は、2つの糖特異的な膜タンパク質、特異的な、細胞外かつ脂質支持された糖結合タンパク質で構成されるABC−パーミアーゼによって運ばれる。これらのABC系(40を上回ると予測される)は、DasRによって調節される普遍的なATPase MsiK(多糖取り込みタンパク質)により補助される。代謝酵素NagAおよびNagB(両遺伝子ともDasRにより制御される)は、GlcNAc−6−Pをグルコサミン−6−P(GlcN−6−P)およびフルクトース−6−Pに変換させる。GlcN−6−PはDasRに対するエフェクターとして供給され、したがってpts遺伝子およびmsiKの遺伝子発現を引き起こす。nagB、およびdppAオペロン(D−Ala−D−Alaアミノペプチダーゼ)に対するDasR媒介制御は、細胞壁合成の調節におけるその役割を示唆する。shは糖加水分解遺伝子、srは、ABCパーミアーゼおよび関連する細胞外の糖加水分解酵素をコードするオペロンの特異的な調節因子に対する遺伝子を示す。架空のクロモソーム上の黄色の円および赤色の囲みは、それぞれDasR応答配列、および糖特異的な調節因子応答配列を示す。
【図14A】グラム陽性細菌由来のDasR相同体の配列を示す図である。放線菌類由来のDasR相同体を示す図である。重層に含まれる相同体は下記由来のタンパク質である。Scoel、ストレプトミセス コエリカラー(Streptomyces coelicolor)(SCO5231);Sclav、ストレプトミセス クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus);Saver、ストレプトミセス アヴェルミティリス(Streptomyces avermitilis)(SAV3023);Sgris、ストレプトミセス グリセウス(Streptomyces griseus)(BAB79296);Sscab、ストレプトミセス スカビエス(Streptomyces scabies);S139、ストレプトミセス種(Streptomyces species)139(AAN04228);Tfusc、サーモビフィド フスカ(Thermobifido fusca)(AAZ54592)。
【図14B】グラム陽性細菌由来のDasR相同体の配列を示す図である。高G+Cおよび低G+Cグラム陽性細菌由来のDasR様タンパク質の比較を示す図である。興味深いことに、S.コエリカラー(S. coelicolor)DasRはバチルス サブチリス(Bacillus subtilis)GntR型タンパク質CAB15508と約40%同一である。追加のタンパク質は下記由来のものである。Ceffi、コリネバクテリウム エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)(BAC19131);Lmono、リステリア モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)(AAT03756);Sther、ストレプトコッカス サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)(AAV62475);Bsubt、バチルス サブチリス(CAB15508)。第2のDasR相同体(指定DasR2)がストレプトミセス コエリカラー(Streptomyces coelicolor)(SCO0530)に見られたので累積に含めた。唯一の既知標的はABCトランスポーターオペロンSCO531−532−533のすぐ上流に位置している。
【図14C】グラム陽性細菌由来のDasR相同体の配列を示す図である。遺伝子SCO5231−5235間、およびSCO530−534間の類似性は、遺伝子重複事象を強く示唆している。
【図15】ストレプトミセス(Streptomyces)、バチルス(Bacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、リステリア(Listeria)およびストレプトコッカス(Streptococcus)由来のコンセンサス配列を示す図である。本図は、Logo software(Crooksら、2004)を用いて作成した。それぞれの生物中の全予測DasR結合部位のヌクレオチドについて、大きい文字は高度の保存を示し、小さい文字は低度の保存を示す。これらの予測の為に、本発明者らはS.コエリカラー(S. coelicolor)由来のコンセンサスDasR結合配列を用いて、低G+Cグラム陽性細菌中のptsおよびnag遺伝子上流の相同配列を探索した。次いで、得られたコンセンサス配列を用いてストレプトミセス、バチルス、ラクトコッカス、リステリアおよびストレプトコッカスに存在する推定DasR結合部位の新規鋳型を構築した。
【図16】ストレプトミセス コエリカラーM145およびそのdasR変異株の液体培養TSB培地における形態および分岐を示す図である。ストレプトミセス コエリカラーM145(上の写真)が典型的な偶発的分岐を示しているのに対し、dasR遺伝子が欠失していると分岐が非常に増加する結果となる(下の写真)。このことは、dasRの発現レベルを変更することによって、形態の制御に重要であり、故に大規模な発酵における成長の具合を改良するための手段である分岐頻度を測定することができることを示唆している。棒線=10μm。
【図17】サーモビフィド フスカ(Thermobifido fusca)における、DasRによる解糖および関連経路の完全制御を示す図である。オキサロ酢酸までの解糖および関連経路のほとんど全ての段階がDasRによって直接制御されていることが予測される。それぞれの遺伝子についてのデータベース参照番号を示す。解糖のすべての単一段階がDasR依存的であることが予測されることに注意されたい。
【図18】N−アセチルグルコサミンがNagE22(SCO2907)によって輸送されることを示す図である。輸送遺伝子nagE1(SCO2906)、nagE2(SCO2907)、または両者を欠失した変異株を、N−アセチルグルコサミン(1%w/v)含有、または非含有のR2YE寒天プレート上で平板培養した。寒天プレート上の他の菌株は、S.コエリカラー(S. coelicolor)M145(全ての変異株の親株)、dasR変異株BAP29、ならびにpts変異株ptsH(BAP1)、crr(BAP2)、およびptsI(BAP3)である。pts変異株の表現型については、図3Aも参照されたい。面白いことに、nagE2(またはnagE2とnagE1)が欠如していると、N−アセチルグルコサミンを加えても成長に影響を及ぼさないが、一方nagE1変異株および親株のS.コエリカラー(S. coelicolor )M145では増殖状態が停止する。このことは、実際にnagE2がN−アセチルグルコサミンのトランスポーターであり、DasR制御系の誘導因子を取り込むために必須であることを証明している。
【図19A】S.クラブリゲルス(S. clavuligerus)dasR/DarRの核酸配列およびアミノ酸配列を示す図である。dasRの核酸配列を示す図である。
【図19B】S.クラブリゲルス(S. clavuligerus)dasR/DarRの核酸配列およびアミノ酸配列を示す図である。DasRのアミノ酸配列を示す図である。
【図20】さまざまなストレプトミセス種から得たDasRのヘリックス−ターン−ヘリックスDNA結合モチーフに対応するタンパク質配列のアラインメントを示す図である。SamboはS.アムボファシエンス(S. ambofaciens)、SaverはS.アベルミチリス(S. avermitilis)、ScinnはS.シンナモネウス(S. cinnamoneus)、ScoelはS.コエリカラー(S. coelicolor)、ScollはS.コリヌス(S. collinus)、SdiasはS.ジアスタトクロモゲネス(S. diastatochromogenes)、SgranはS.グラナチカラー(S. granaticolor)、SgoldはS.ゴールデニエンシス(S. goldeniensis)、SgrisはS.グリセウス(S. griseus)、SlimoはS.リモサス(S. limosus)、SveneはS.ベネズエラ(S. venezuelae)を示す。アミノ酸番号は、S.コエリカラー(S. coelicolor)DasR(SCO5231)のアミノ酸配列に対応している。配列上部の記号HTHは、ヘリックス−ターン−ヘリックスDNA結合のサインを示す。
【図21A】DasRがActおよびRed経路特異的活性化因子の発現を抑制することを示す図である。電気泳動移動度シフトアッセイにより、DasRがactII−ORF4およびredZの予測上流のdre部位と相互作用することが示されている。crr−ptsIオペロン(PTSの酵素EIIAおよび酵素EIをコードしている)、actII−ORF4、およびredZの上流に発見されたdre部位を包括するDNAプローブを、His標識した精製DasRの存在下(+)または非存在下(−)でインキュベートした。実験的に確認されたcrr−pysIオペロン(Rigaliら、2004)の上流のdre部位、およびS.コエリカラー(S. coelicolor)のcrpの予測シス作用因子(Derouauxら、2004)をそれぞれ陽性対照、陰性対照として用いた。
【図21B】DasRがActおよびRed経路特異的活性化因子の発現を抑制することを示す図である。ActおよびRed経路特異的活性化因子の、半定量的RT−PCRによる転写解析の結果を示す図である。DasRはactII−ORF4およびredZの転写発現を直接的に抑制している。試料は、MMマンニトール寒天プレート上で培養したS.コエリカラー(S. coelicolor)M145およびdasR変異株から、30時間後(栄養増殖)、42時間後(気中増殖)の開始)、72時間後(気中増殖および胞子)に採取した。vは栄養菌糸、aは気菌糸、sは胞子を示す。
【図22】S.コエリカラー(S. coelicolor)におけるアクチノロージンおよびウンデシルプロジギオシン産生に関するN−アセチルグルコサミン依存性情報伝達カスケードを示す図である。N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)は細胞質に入り、続いて、細胞内の一般PTSタンパク質EI、HPr、およびEIIA、ならびにGlcNAc特異的なEIIBおよびEIIC組成物で構成されるGlcNAc特異的なホスホエノールピルビン酸依存性ホスホトランスフェラーゼ系を経由してリン酸化される。N−アセチルグルコサミン−6−リン酸(GlcNAc)はさらにNagA、GlcN−6P脱アセチル化酵素によって脱アセチル化される。結果生じたグルコサミン−6−リン酸(GlcN−6P)は、DasRのDNA結合能を阻害し、その結果、それぞれアクチノロージンおよびウンデシルプロジギオシン生合成群の経路特異的な転写活性化因子をコードしているactII−ORF4およびredZの転写抑制を低下させることができるDasRのアロステリックエフェクターとして知られている。推定される抗生物質の生合成情報伝達カスケードの支持のもと、GlcNAcはS.コエリカラー(S. coelicolor)のそれぞれΔredD(M510)およびΔactII−ORF4(M511)変異株におけるActおよびRed産生を引き起こす。
【図23】放線菌類の間でのGlcNAc依存性の抗生物質誘導経路の保存を示す図である。放線菌を0.5%マンニトール単独含有(左側のパネル)、または1%GlcNAcを加えた(右側のパネル)MM寒天プレート上で培養し、B.サブチリス(B. subtilis)を含有するオーバーレイを当てて、抗生物質産生によって引き起こされる増殖阻害を可視できるようにした。試験した放線菌は、ストレプトミセス リビダンス(Streptomyces lividans)1326(1326)、ストレプトミセス ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)(hygro)、ストレプトミセス コリヌス(Streptomyces collinus)(colli)、ストレプトミセス ロセオスポルス(Streptomyces roseosporus)(roseo)、ストレプトミセス シンナモネシス(Streptomyces cinnamonensis)(cinna)、ストレプトミセス ベネズエラ(Streptomyces venezuelae)(venez)、ストレプトミセス クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)(clavu)、ストレプトミセス リモサス(Streptomyces rimosus)(rimos)、ストレプトミセス グリセウス(Streptomyces griseus)(grise)、ストレプトミセス アクリミシニ(Streptomyces acrimycini)(acrim)、ストレプトミセス リモサス(Streptomyces limosus)(limos)、およびストレプトミセス アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)(averm)である。正確な学名は、物質と方法の項を参照されたい。
【図24】DasRがI型ポリケチド「潜在性」群の発現を抑制することを示す図である。半定量的RT−PCRによるS.コエリカラー(S. coelicolor)(SCO6273〜SCO6288)の潜在性I型ポリケチド群の転写分析の結果を示す図である。dasRの不活性化により、栄養増殖中に、潜在性経路特異的な活性化遺伝子、kasO(SCO6280)の転写「覚醒」が起こり、続いて推定I型ポリケチドシンターゼをコードしているSCO6273の転写が促進される。試料は、MMマンニトール寒天プレート上で培養したS.コエリカラー(S. coelicolor) M145およびdasR変異株BAP29から、30時間後(栄養増殖)、42時間後(気中増殖の開始)、72時間後(気中増殖および胞子)に採取した。vは栄養菌糸、aは気菌糸、sは胞子を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物に、目的遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位、またはその産物が該目的遺伝子の発現に関与する遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を干渉可能である化合物を提供することを含む、DasR−様タンパク質を含む前記微生物における、目的遺伝子の発現を調節するための方法。
【請求項2】
前記化合物が遺伝的化合物である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が、DasR−調節工程の誘導因子である請求項1記載の方法。
【請求項4】
その産物が代謝経路の一部である遺伝子に動作可能に連結したDasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を制御することを含む、DasR−様タンパク質を含む微生物における代謝を制御するための方法。
【請求項5】
前記DasR−結合部位への前記DasR−様タンパク質の結合を干渉可能な化合物を、前記微生物に提供することを含む請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が遺伝的化合物である請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が、DasR−調節代謝工程の誘導因子である請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記産物の存在が、前記微生物における、解糖へ、または解糖からの代謝フラックスを制御する請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記産物の存在が、前記微生物における、クエン酸(TCA)回路へ、またはクエン酸回路からの代謝フラックスを制御する請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
目的産物をコードしている遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位、または該目的産物の産出に関与する遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位への、DasR−様タンパク質の結合を干渉可能な化合物を、前記微生物に提供することを含む、DasR−様タンパク質を含む微生物において目的産物の発現を得るための方法。
【請求項11】
前記DasR−様タンパク質の前記DasR−結合部位への結合が、前記微生物に前記化合物を提供することによって、少なくとも部分的に阻害される請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記DasR−様タンパク質の前記DasR−結合部位の結合が、前記微生物に前記化合物を提供することよって、少なくとも部分的に増加する請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が遺伝的化合物である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、DasR−調節工程の誘導物である請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記誘導物が、グルコサミン−6−リン酸またはその機能的等価物または機能的断片である請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記目的産物が、二次的代謝物である請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記目的産物が抗生物質、潜在性遺伝子クラスターからの産物、抗腫瘍薬剤または農業化合物である請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記目的産物が酵素である請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記酵素が、プロテアーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、キチナーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、モノキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、ラッカーゼ、または糖イソメラーゼである請求項18記載の方法。
【請求項20】
不要産物をコードしている遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位、または不要産物の産出に関与する遺伝子と動作可能に連結したDasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を干渉可能な化合物を、微生物に提供することを含む、DasR−様タンパク質を含む前記微生物中の不要産物の産出を少なくとも部分的に減少させるための方法。
【請求項21】
前記化合物が、前記DasR−様タンパク質と前記DasR−結合部位間の結合を少なくとも部分的に増加させることが可能である請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記化合物が、前記DasR−様タンパク質と前記DasR−結合部位間の結合を少なくとも部分的に減少させることが可能である請求項20記載の方法。
【請求項23】
DasR−様タンパク質のDasR−結合部位への結合が、前記不要産物をコードしている遺伝子と動作可能に連結した、または前記不要産物の産出に関与する遺伝子と動作可能に連結した、増加量のDasR−結合部位を前記微生物に提供することによって、少なくとも部分的に増加する請求項20または21記載の方法。
【請求項24】
DasR−様タンパク質のDasR−結合部位への結合が、本来前記不要産物をコードしている遺伝子と動作可能に連結した、または前記不要産物の産出に関与する遺伝子と動作可能に連結した、前記微生物中の少なくとも1つのDasR結合部位を取り除くことによって、少なくとも部分的に減少する請求項20または21記載の方法。
【請求項25】
前記不要産物が、不要副産物または不要シャント産物である請求項20〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
さらに、前記微生物に、不要産物をコードしている遺伝子と動作可能に連結した、または不要産物の産出に関与する遺伝子と動作可能に連結した、DasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を干渉可能な化合物を提供することを含む請求項10〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
さらに、DasR−様タンパク質をコードしている核酸を前記微生物に提供することを含む請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記DasR−様タンパク質が、異種である請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記微生物が、糸状体微生物である請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記糸状体微生物が、子嚢菌、バシド菌または放線菌である請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記放線菌が、ストレプトミセス(Streptomyces)、ノカルディア(Nocardia)、サーモビフィド(Thermobifido)、アミコラトプシス(Amycolatopsis)、プラノビスポラ(Planobispora)、ストレプトベルティシリウム(Streptoverticillium)、フォードコッカス(Rhodococcus)、またはコリネバクテリウム(Corynebacterium)である請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記微生物が、低G+Cグラム陽性細菌である請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記低G+Cグラム陽性細菌が、バチルス(Bacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)またはリステリア(Listeria)である請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記潜在性遺伝子クラスターが、前記遺伝子クラスターに動作可能に連結したDasR−結合部位へのDasR−様タンパク質の結合を減少することによって活性化される活性化DasR−抑制潜在性遺伝子クラスター。
【請求項35】
前記遺伝子クラスターが、抗生物質遺伝子クラスターである請求項34記載の活性化潜在性遺伝子クラスター。
【請求項36】
請求項34または35記載の活性化潜在性クラスターを含む微生物。
【請求項37】
DasR−様タンパク質に対する変異結合部位を含む微生物。
【請求項38】
DasR−様タンパク質の変異体を含む微生物。
【請求項39】
DasR−様タンパク質のヌル変異体である請求項38記載の微生物。
【請求項40】
増加したDasRの発現を含む微生物。
【請求項41】
本質的に植物にて増殖し、二次代謝物のレベルの変化を産出する微生物。
【請求項42】
本質的に植物にて増殖し、潜在性遺伝子クラスターから産物を産出する微生物。
【請求項43】
DasR−様タンパク質に対する結合部位を持つ、前記目的産物をコードしている核酸、または前記目的産物の産出に関与するタンパク質をコードしている核酸を提供することを含み、前記結合部位が、前記核酸と動作可能に連結する、微生物を含むDasR−様タンパク質中の目的産物の発現を調節するための方法。
【請求項44】
前記微生物がさらに、DasR−様タンパク質をコードしている核酸を含む請求項43記載の方法。
【請求項45】
DasR−制御遺伝子の発現を調節するための変異導入DasR−結合部位の利用。
【請求項46】
DasR−制御遺伝子の発現を調節するための変異導入DasR様−タンパク質の利用。
【請求項47】
DasR−制御遺伝子の発現を調節するためのDasRの利用。
【請求項48】
DasR−制御遺伝子の発現を調節するためのDasR−誘導物の利用。
【請求項49】
微生物に、N−アセチルグルコサミンまたはその誘導体またはマルチマーを提供することを含む、前記微生物中の、二次代謝物、好ましくは抗生物質を得るため、またはその産出を改善するための方法。
【請求項50】
前記微生物が、糸状体微生物、好ましくは子嚢菌、バシド菌または放線菌である請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記放線菌が、ストレプトミセス(Streptomyces)、ノカルディア(Nocardia)、サーモビフィド(Thermobifido)、アミコラトプシス(Amycolatopsis)、プラノビスポラ(Planobispora)、ストレプトベルティシリウム(Streptoverticillium)、フォードコッカス(Rhodococcus)、またはコリネバクテリウム(Corynebacterium)である請求項50記載の方法。

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3BC】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図9】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14A】
image rotate

【図14B】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19A】
image rotate

【図19B】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14C】
image rotate

【図15】
image rotate

【図22】
image rotate


【公表番号】特表2009−526548(P2009−526548A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555178(P2008−555178)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050061
【国際公開番号】WO2007/094667
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508245600)ユニベルジテイト レイデン (1)
【出願人】(508246054)ユニヴァーシティ オブ リージ (1)
【出願人】(508246021)フリートリッヒ−アレキサンダー−ウニベルジテート エアランゲン−ニュールンベルグ (1)
【Fターム(参考)】