説明

微生物検出物品

本開示は、液体試料中の微生物を検出するための物品を提供する。この物品は微多孔性膜及びバリア層を含み、試料と検出試薬との間の接触を選択的に調節する。使用方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願第61/291,245号(2009年12月30日出願)の利益を請求するものであり、参照によりこの開示内容全体が本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
表面が、細菌、真菌、酵母、ウイルス又は他の微小な生物、すなわち、「微生物」、で汚染されてしまうと、病気(罹患)、時には死(死亡)に至ることがある。これは特に、食品加工工場及び保健医療施設(例えば、病院)における表面が微生物で汚染されてしまうときに当てはまる。
【0003】
食品加工工場においては、表面(例えば、固体表面、装置表面、保護布など)が汚染されることがある。そのような汚染は、肉又は他の食品によってもたらされることがあり、また、汚染が肉又は他の食品に付着することがある。保健医療施設では、微生物は、感染した個人から、ないしは別の方法で、表面(例えば、固体表面、装置表面、衣類など)上に放出されることがある。いったん表面が微生物で汚染されると、汚染された表面との接触により、微生物は、別の表面、個人、装置、食品、又はこれらに類するものなどの他の場所に容易にかつ直ちに移動することがある。
【0004】
周知のように、特定の環境における微生物汚染及び微生物の移動は、重大な健康上のリスクを呈することがある。例えば、汚染された食品加工工場から出た食品は、その後食され、病気、及び場合によっては死亡を引き起こすことがある。リステリア・モノサイトゲネス、サルモネラ・エンテリディティス、及び大腸菌O157:H7などの微生物には、特に関心が向けられている。
【0005】
保健医療施設において微生物汚染が懸念されているが、それはこのような施設の一部の患者が、多くの場合、病原性微生物による感染症に苦しみ、それゆえに病原性微生物をこのような施設に持ち込むからである。更に、このような施設にいる人(例えば、患者)の多くは病気であり、免疫学的に危険にさらされ得る。これらの個人は、それゆえに、汚染性微生物による感染から病気になる危険が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、微生物の検出に使用される物品及び方法に関する。詳細には、本開示は、限られた時間で微生物の増殖を可能にし、その後、層の1つを再配置又は取り外して微生物を検出試薬に曝すのに使用できる、多層検出物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本開示は、試料中の微生物の検出又は計数のための物品を提供する。この物品は、ベース部材と、微多孔性膜と、カバーシートと、バリア層と、を含んでよい。ベース部材は、上方主表面及び下方主表面を有する自立型水不透過性基材を含んでよい。ベース部材の上方主表面は、冷水可溶性ゲル化剤を含む第1乾燥コーティングを含んでよい。カバーシートは、検出試薬を含む第2乾燥コーティングを含んでよい。バリア層は、微多孔性膜とカバーシートとの間に流体バリアを形成するように構成してよい。微多孔性膜は、ベース部材とバリア層との間に配置してよい。
【0008】
上記実施形態のいずれにおいても、物品は更にスペーサを含んでよい。スペーサは開口を有してよい。スペーサは、ベース部材に結合され試料受容穴を形成できる。
【0009】
上記実施形態のいずれにおいても、カバーシートはベース部材に取り付けられてよい。上記実施形態のいずれにおいても、微多孔性膜はベース部材に取り付けられてよい。上記実施形態のいずれにおいても、バリア層はベース部材に取り付けられてよい。上記実施形態のいずれにおいても、バリア層はベース部材に着脱可能に取り付けられてよい。
【0010】
上記実施形態のいずれにおいても、微多孔性膜は、ポリエーテルスルホン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、酢酸セルロース、混合セルロースエステル、ポリフッ化ビニリデン、ニトロセルロース、セラミックス、これら任意のものの誘導体、及びこれら任意のものの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される材料を含んでよい。
【0011】
上記実施形態のいずれにおいても、微多孔性膜は浸透境界部を更に含んでよい。上記実施形態のいずれにおいても、物品は栄養培地を更に含んでよい。上記実施形態のいずれにおいても、物品は選択剤を更に含んでよい。上記実施形態のいずれにおいても、物品は複数の検出試薬を更に含んでよい。上記実施形態のいずれにおいても、少なくとも2つの複数の検出試薬は、少なくとも2種類の微生物を識別することができる。
【0012】
上記実施形態のいずれにおいても、カバーシートは冷水可溶性ゲル化剤を更に含んでよい。
【0013】
別の態様では、本開示は、試料中の微生物の有無を検出する方法を提供する。この方法は、微生物含有の疑いがある液体試料、及び検出物品を準備する工程を含んでよい。検出物品は、ベース部材と、微多孔性膜と、カバーシートと、微多孔性膜とカバーシートとの間に流体バリアを形成するバリア層と、を含んでよい。ベース部材は、冷水可溶性ゲル化剤を含む第1乾燥コーティングを含んでよい。カバーシートは、検出試薬を含む第2乾燥コーティングを含んでよい。微多孔性膜は、ベース部材とバリア層との間に配置されてよい。この方法は、所定の量の試料を第1乾燥コーティングと接触させる工程を更に含んでよい。この方法は、微多孔性膜を試料と接触させる工程を更に含んでよい。この方法は、物品を第1の時間培養する工程を更に含んでよい。この方法は、バリア層を再配置し、カバーシートと微多孔性膜との間の接触をもたらす工程を更に含んでよい。この方法は、物品を第2の時間培養し、微生物増殖の有無の兆候を観察する工程を更に含んでよい。
【0014】
この方法の上記実施形態のいずれにおいても、バリア層を再配置する工程は、物品からバリア層を取り外す工程を含んでよい。
【0015】
この方法の上記実施形態のいずれにおいても、物品は、ベース部材と共に試料受容穴を形成するスペーサを更に含んでよい。これらの実施形態では、所定の量の試料を第1乾燥コーティングと接触させる工程は、試料を試料受容穴に移す工程を含んでよい。
【0016】
この方法の上記実施形態のいずれにおいても、方法は、栄養素、選択剤、検出試薬、又はこれら任意のものの2つ以上の組み合わせと、試料を混合する工程を更に含んでよい。
【0017】
この方法の上記実施形態のいずれにおいても、第1の時間は約1時間〜約48時間であってよい。
【0018】
この方法の上記実施形態のいずれにおいても、第2の時間は約15分間〜約96時間であってよい。
【0019】
この方法の上記実施形態のいずれにおいても、第1乾燥コーティングの少なくとも一部は複数の検出試薬を含んでよい。これらの実施形態では、微生物増殖の兆候を観察する工程は、2種類以上の微生物を検出し、区別する工程を含んでよい。
【0020】
この方法の上記実施形態のいずれにおいても、微生物増殖の有無の兆候を観察する工程は、少なくとも1種類の微生物を計数する工程を含んでよい。この方法の上記実施形態のいずれにおいても、微生物増殖の有無の兆候を観察する工程は、物品の画像を得る工程を含んでよい。この方法の上記実施形態のいずれにおいても、微生物増殖の有無の兆候を観察する工程は、画像を印刷する、表示する、又は解析する工程を更に含んでよい。
【0021】
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で、特定の利点をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかしながら、同じ又は他の状況下において、他の実施形態もまた好ましいことがある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0022】
本明細書で使用するとき、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上の」は、同じ意味で使用される。したがって、例えば、「a」(ある)微生物を含む試料は、その試料が「1種類以上の」微生物を含み得ることを意味するものと解釈され得る。
【0023】
「及び/又は」という用語は、記載した要素の一部若しくは全て、又は記載した要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0024】
また本明細書において、端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、など)が包含される。
【0025】
本発明の上述の「課題を解決するための手段」は、本発明の開示される各実施形態又は全ての実施を記載することを目的としていない。以下の説明により、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願のいくつかの箇所で、実施例の一覧として説明を提供するが、実施例は種々の組み合わせにて使用することが可能である。それぞれの事例において、列挙される一覧は代表的な群としてのみ役立つものであり、限定的な一覧として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明について、以下に示す図面を参照して更に説明することにするが、図面において、同様の構造が複数の図を通じて同様の参照符号によって参照される。
【図1a】本開示による微多孔性膜を備える検出物品の一実施形態の分解組立側面図。
【図1b】図1aの検出物品の平面図。
【図1c】図1aの検出物品の一部断面図である平面斜視図。
【図2】本開示による膜支持材料に結合された微多孔性膜を備える検出物品の一実施形態の分解組立側面図。
【図3a】本開示によるスペーサ及び微多孔性膜を備える検出物品の一実施形態の分解組立側面図。
【図3b】図3aの検出物品の平面図。
【図3c】図3aの検出物品の一部断面図である平面斜視図。
【図4】本開示による膜支持材料に結合されたスペーサ及び微多孔性膜を備える検出物品の一実施形態の分解組立側面図。
【図5】本開示による液体試料中の微生物の検出方法の一実施形態のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の任意の実施形態について詳細に説明する前に、理解されたいこととして、本発明はその用途において、以下の説明に記載する構成要素又は添付の図面に示す構成要素の構造の細部及び構成に限定されるものではない。本発明には他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施又は実行することが可能である。更に、本明細書で使用される専門語句及び専門語は説明を目的としたものであり、本発明を限定するものとして見なされるべきではない点は理解されるべきである。「含む、有する(including)」、「備える、有する、含む(comprising)」、「含有する、含む(containing)」、又は「有する(having)」及びそれらの変化形を本明細書において使用することは、これらの後に記載する要素及びその等価物、並びに付加的な要素を包含することを意図したものである。特に規定又は限定しない限り、用語「支持される(supported)」及び「結合される(coupled)」、並びにそれらの変化形は、広義に用いられており、直接的な支持及び結合と間接的な支持及び結合との両方を包含する。他の実施形態が利用されてもよく、また、構造的又は論理的な変更が、本開示の範囲から逸脱することなくなされ得ることを理解されたい。更に、「前」、「後」、「上」、「下」等の用語は、各要素を互いの関連において述べるためにのみ用いられ、決して装置の特定の向きを記載するものではなく、装置の必要な又は要求される向きを指示又は示唆するものでもなく、本明細書で述べられる発明が使用時にどのように使用、取り付け、表示、又は配置されるかを特定するものでもない。
【0028】
本開示は概して、液体試料中の微生物を検出するための方法及び物品を目的とする。多層検出物品は、i)増殖している微生物の検出試薬及び/又は選択剤への曝露を制御するよう構成される再配置可能な又は取り外し可能なバリア層、並びにii)液体試料中に存在する微生物、及びその後代と、バリア層との間の直接的接触を阻止する微多孔性膜、を提供する。微生物とバリア層との間の直接的接触を阻止することにより、バリア層が再配置される又は物品から取り外されるとき、物品内を微生物が広がる、及び/又は物品から微生物を除去する可能性を排除する。
【0029】
本開示の発明多層物品は、微生物の検出に必要な時間を減らすため、比較的高濃度の検出試薬の使用を可能にする。物品中にバリア層が存在することにより、第1の培養時間中に、微生物の検出試薬への(微生物に対して抑制的な又は毒性を持つ場合がある量で存在し得る)曝露を阻止する。第1の培養時間後、バリア層を再配置又は取り外し、それにより微生物(存在する場合)を検出試薬に曝す。本開示の物品は、同様に、バリア層により第1の培養時間中の微生物との接触から隔離し得る、任意の溶菌剤及び/又は選択剤を含んでよい。
【0030】
本発明の物品及び方法は、拡散性検出試薬の使用を可能にする。従来の物品(例えば、寒天ペトリ皿)で用いられるとき、拡散性検出試薬(例えば、以下で説明する、加水分解されて水溶性の検出可能な生成物になる発色性又は蛍光性酵素基質)は、検出デバイスを通じて大きな着色又は蛍光ゾーンとして側方に広がり得る。これらのゾーンは、2つ以上の微生物コロニーを部分的に重ならせる場合があり、このゾーンが1つだけのコロニーにより生成されたのか、又は2つ以上のコロニーにより生成されたのかの判定を困難にする。拡散性検出試薬への曝露前に微生物の増殖が可能な物品を提供することにより、ユーザーは、微生物が試薬に曝される時間を減らすことができ、これにより指示薬の拡散を最小限にし、対応する着色又は蛍光ゾーンの寸法を小さくする。したがって、従来の物品及び方法と比較して、本発明の物品及び方法は2つ以上の微生物コロニーの分割能を改善する。
【0031】
別段に定義されていない限り、本明細書において使用されている全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者に共通に理解されるものと同じ意味を有している。本明細書に記載されているものと類似した又は等価な方法及び材料が、本発明を実施する際に使用され得るが、例示的な好適な方法及び材料が以下に記載されている。例えば、3つ以上の工程を含む方法が記載され得る。そのような方法において、規定の目標を達成するために全ての工程が必要ではないが、本発明は、これらの別個の目標を達成するために、独立した工程を用いることを企図するものである。全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参照文献の開示内容は、引用によって全てが本明細書に組み込まれる。加えて、材料、方法、及び例は、単に例示的なものであり、限定を意図したものではない。
【0032】
本明細書で使用するとき「対象微生物」は、検出される特定の微生物(すなわち、微生物の種)又は特定の微生物群(例えば、特定の属の微生物、大腸菌、抗生物質耐性菌)を指す。
【0033】
試料及び微生物
本発明の1つの態様は、非常に様々な表面上に存在する生物を検出するのに使用してもよいものである。本発明のデバイス及び方法は、試料中の微生物の有無を検出することが望ましい様々な用途で使用してよい。これらの試料として、食品試料(例えば、原材料、工程内食品材料、最終製品)、表面(例えば、環境表面、食品加工表面、装置)、水(例えば、表面水、プロセス水)、及び飲料(例えば、生乳、殺菌牛乳、ジュース)が挙げられるが、これらには限定されない。試料は、固体、半固体、ゼラチン状、又は液体の材料から、単独又は種々の組み合わせから実質的に構成される。本発明のデバイス、及び本発明の方法は、対象とする1つ以上の微生物の存在を、定性的又は定量的に測定するために使用できる。
【0034】
検出する対象の代表的な医療検体は、黄色ブドウ球菌(「S. aureus」)である。これは、幅広い感染症を引き起こす病原体である。これらの感染症には、皮膚小膿瘍及び創傷感染などの表層病巣、心内膜炎、肺炎、及び敗血症などの全身性で命にかかわる状態、並びに、食中毒及び毒素性ショック症候群などの中毒症が挙げられる。いくつかの菌株(例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、すなわちMRSA)は、ごく一部の選ばれた抗生物質を除く全てに耐性がある。
【0035】
対象を食品加工領域内で検出するための代表的な検体は、リステリア属のメンバーである。リステリアは、グラム陽性棹状菌として分類され、リステリア・モノサイトゲネス、L.イノキュア、L.ウェルシメリ(L. welshimeri)、L.シーリゲリー(L. seeligeri)、L.イバノビイ(L. ivanovii)、及びL.グライイ(L. grayi)の種からなる。これらの中で、L.モノサイトゲネスは、多くのヒトリステリア症の症例の原因となっており、免疫不全者、妊娠女性、高齢者、及び新生児は、感染の感受性が高い。リステリア症の最も一般的な症状は、敗血症、髄膜炎、及び流産である。
【0036】
分析目的のために特に対象となる他の微生物には、原核及び真核生物、特にグラム陽性細菌、グラム陰性細菌、真菌、マイコプラズマ、及び酵母が挙げられる。特に関連性のある生物としては、腸内細菌科若しくは球菌科、又はブドウ球菌属の種、連鎖球菌種、シュードモナス種、腸球菌種、サルモネラ菌種、レジオネラ菌種、赤痢菌種、エルニシア種、エンテロバクター種、エシェリキア種、バチルス種、ビブリオ種、クロストリジウム種、コリネバクテリア種、並びにアスペルギルス種、フサリウム種、及びカンジダ種のメンバーが挙げられる。特に悪性の生物には、黄色ブドウ球菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの耐性菌株を包含する)、表皮ブドウ球菌、肺炎球菌、ストレプトコッカス・アガラクチア、化膿レンサ球菌、エンテロコッカス・フィカリス、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、バンコマイシン中等度耐性黄色ブドウ球菌(VISA)、炭疽菌、緑膿菌、大腸菌、クロコウジカビ、アスペルギルス・フミガータス、アスペルギルス・クラバタス、フザリウム・ソラニ、フザリウム・オキシスポラム、フザリウム・クラミドスポラム(F. chlamydosporum)、コレラ菌、腸炎ビブリオ(V. parahemolyticus)、サルモネラ・コレラスイス、チフス菌、ネズミチフス菌、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラタ、カンジダ・クルセイ、エンテロバクター・サカザキ、大腸菌O157、ESBL含有微生物、及び多剤耐性グラム陰性桿菌(MDR)が挙げられる。
【0037】
検出物品
本開示は、試料中の微生物の有無を検出するための物品を提供する。図1aは、本開示による検出物品100の一実施形態の分解組立側面図を示す。物品は、水不透過性第1基材112と、第1基材112に接着された任意の第1接着層114と、第1乾燥コーティング116と、を含むベース部材110を備える。
【0038】
第1基材112は、好ましくは自立型であり、実質的に吸水しない。第1基材112に好適な材料の非限定例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、又はポリスチレンフィルムが挙げられる。その他の好適な材料としては、防水(例えば、ポリマー)コーティングを含む紙又は厚紙材料が挙げられる。第1基材112は、基材112を通して細菌コロニーを視察することを望むか否かにより、透明、半透明、又は不透明であってよい。参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第4,565,783号に記載されるように、細菌コロニーの数え上げを促進するために、第1基材112は、その上に正方形の格子パターンが印刷されてもよい。第1基材112の作製に用いられる材料は、微生物に対して比較的不活性でなければならず、好ましくは無菌化プロセス(例えば、エチレンオキシド滅菌)に適合しなくてはならない。
【0039】
いくつかの実施形態では、ベース部材110は、第1基材112の主表面に接着された任意の第1接着層114を更に含んでよい。第1接着層114は非水溶性であってよく、微生物の増殖に対して非阻害的でなければならず、無菌化プロセスが用いられる場合は、この無菌化プロセスに耐えることができなくてはならない。好ましくは、第1接着層114は、接着層114でコーティングされた第1基材112を通して細菌コロニーを視察できるように、濡れたときに十分に透明である。いくつかの実施形態では、第1接着層114は、例えば、粘着性を強めた高感圧性イソオクチルアクリレート/アクリル酸コポリマー接着剤(96重量%イソオクチルアクリレート及び4重量%アクリル酸)などの感圧性接着剤を含んでよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、第1基材112は、基材112の主表面全体を覆う第1接着層114を含んでよい。いくつかの実施形態では、第1基材112は、基材112の主表面の一部のみを覆う第1接着層114を含んでよい。
【0041】
第1乾燥コーティング116は、米国特許第4,565,783号に記載されるような冷水可溶性ゲル化剤(例えば、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム)を含み、この特許は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。所望により、乾燥コーティング116は、栄養培地、選択剤、検出試薬、又はこれら任意の2つ以上の組み合わせを更に含んでよい。栄養培地、選択剤、及び/又は検出試薬は、ゲル化剤を実質的に妨げてはならず、通常は検出される微生物に基づいて選択される。好適な栄養素、選択剤、及び微生物を検出する検出試薬の非限定例は、米国特許第4,575,783号、同第5,089,413号、同第5,443,963号、同第5,462,860号、同第5,601,998号、同第5,635,367号、同第5,681,712号、及び同第5,364,766号に見出すことができ、参照することによりこれらのそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる。第1乾燥コーティング116中の栄養培地、選択剤及び/又は検出試薬の量は、所定量の液体試料と接触するとき、これらが微生物の増殖及び/又は検出を促進するように準備される。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1乾燥コーティング116(例えば、所望により乾燥粉末化栄養素、選択剤及び/又は検出試薬を伴う乾燥粉末ゲル化剤)を、例えば米国特許第4,565,783号に記載されるように、コーティング116を第1接着層114に接着させることにより、第1基材112に結合してよい。いくつかの実施形態では、第1乾燥コーティング116を、例えば米国特許第4,565,783号に記載されるように、所望により乾燥粉末化栄養素、選択剤及び/又は検出試薬と共にゲル化剤を含む液体混合物を第1基材112又は第1接着層114上にコーティングし、続いてこの混合物を乾燥することにより、第1基材112に結合してよい。いくつかの実施形態では、第1基材112は、基材112の主表面全体を覆う第1乾燥コーティング116を含んでよい。いくつかの実施形態では、第1基材112は、基材112の主表面の一部のみを覆う第1乾燥コーティング116を含んでよい。
【0043】
再度図1aを参照すると、物品100は微多孔性膜150を更に含む。いくつかの実施形態では、微多孔性膜150又はその一部は、ベース部材110に結合される。図示した実施形態では、微多孔性膜150は、両面接着テープ130のストリップを介してベース部材110に結合されるが、当業者は他の結合手段(例えば、接着剤、熱接合、超音波溶接)も好適であり得ることを認識するだろう。所望により、微多孔性膜150は、ベース部材110及び/又はカバーシート120の周囲境界部を超えて延びるタブ領域151を備えてよい。
【0044】
微多孔性膜150は、当該技術分野において既知である様々な透水性微多孔性膜材料のうちのいずれかを含んでよく、例えば、セルロース系膜(例えば、酢酸セルロース、混合セルロースエステル、ニトロセルロース)、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ナイロン、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、セラミックス、これら任意のものの誘導体、及びこれら任意のものの2つ以上の組み合わせが挙げられる。微多孔性膜150の公称孔径は、検出される微生物に応じて選択される。例えば、約0.05μm〜約1.2μm(例えば、0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.45μm、0.8μm、又は1.2μm)、好ましくは約0.2μm〜約0.45μmの公称孔径を用いて、細菌を検出できる。いくつかの実施形態では、約0.05μm〜約3μm(例えば、0.45μm、0.8μm、1.2μm、又は3μm)、好ましくは約0.45μm〜約1.2μmの公称孔径を用いて、酵母及び/又はカビを検出できる。
【0045】
任意の実施形態では、微多孔性膜150は、ベース部材110上に堆積された液体試料中の微生物が移動してバリア層140に接触することを防ぐための、バリアを形成するように構成しなくてはならない。いくつかの実施形態では、これは、微多孔性膜150の外側縁部に又は外側縁部を超えて液体試料が広がることができないように、試料の量を選択する及び/又は微多孔性膜150を必要な大きさにすることで達成できる。いくつかの実施形態では(図1に示されるような)、微多孔性膜150は、ベース部材110の寸法と少なくとも同一の広がりを持つ大きさにしてよい。上述のように、微多孔性膜150をベース部材110と結合させることにより、有利に膜150を適切な位置に保ち、試料とバリア層140との間の直接的接触を回避することができる。
【0046】
微多孔性膜150は、液体の、微多孔性膜150の選択部分への側方浸透を制限するため、任意の側方浸透境界部153を更に含んでよい。浸透境界部153は、例えば、微多孔性膜を横断して及び/又は通過して水性試料が移動することを制限するために、処理された(例えば、組成物が適用された)微多孔性膜150の領域を含む。例えば、疎水性組成物(例えば、ろう)を円状(図1b参照)に適用し、例えば、微多孔性膜150に浸透させることができる。組成物は、微多孔性膜150を通って水性液体が側方拡散するのを実質的に防ぐバリアを形成できる。したがって、浸透境界部153の一側面上の領域で微多孔性膜150と接触する液体試料が、微多孔性膜150を通過し浸透境界部の反対側の領域に側方に広がることを実質的に防ぐ。
【0047】
物品100はバリア層140を更に含む。いくつかの実施形態では、図1に示されるように、バリア層140は微多孔性膜150に着脱可能に結合される。バリア層140は、両面接着テープ130のストリップを介して微多孔性膜150に結合されてよい。好ましくは、バリア層140は脱離手段(例えば、穿孔145)を更に備え、物品100からのバリア層140の脱離及び取り外しを容易にする。所望により、バリア層140は、ベース部材110及び/又はカバーシート120の周囲境界部を超えて延びるタブ領域141を備えてよい。
【0048】
バリア層140を微多孔性膜150に取り付けるために、別の結合手段(例えば、接着剤、熱接合、超音波溶接)が好適であり得ることが認識される。また、微多孔性膜がベース部材110とバリア層140との間に配置されるのであれば、バリア層140をベース部材110に直接結合してよいことも認識される。代替の実施形態では、米国特許第5,118,750号(参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるものなどの特定の低粘着接着剤混合物を、両面接着テープ130の少なくとも片方で用い、バリア層と微多孔性膜150及びカバーシート120の両方との間に着脱可能な取り付け部を形成してよい。更に別の代替の実施形態(図示せず)では、バリア層140は、物品100に接種する前及び/又は後に、微多孔性膜150とカバーシート120との間に緩く配置されてよい。
【0049】
バリア層140は、耐水性であるべきである。バリア層140は、好ましくは、バリア層140の下に位置する物体の観察を可能にするために透明であり、細菌、水及び水蒸気に対して実質的に不透過性である。通常、バリア層140はベース部材110と同じ特性を有してよい。バリア層140について代表的な材料には、例えば、ポリプロピレンフィルム(例えば、1.6ミル(0.04mm)の二軸延伸ポリプロピレン(BOPP))又はポリエチレンフィルムが挙げられる。バリア層140は、バリア層140をつかみ、物品110から取り外すのを容易にする任意の延長部(タブ141)を備えて示される。
【0050】
物品100はカバーシート120を更に含む。カバーシート120は、好ましくはベース部材110に(直接又は間接)結合される。図示した実施形態では、カバーシート120は、両面接着テープ130のストリップを介してバリア層140に結合される。カバーシート120を微多孔性膜バリア層140に取り付けるために、別の結合手段(例えば、接着剤、熱接合、超音波溶接)が好適であり得ることが認識される。また、微多孔性膜がベース部材110とカバーシート120との間に配置されるのであれば、カバーシート120をベース部材110に直接結合してよいことも認識される。カバーシート120は、水不透過性第2基材122と、任意の第2接着層124と、第2乾燥コーティング126と、を含む。第2乾燥コーティング126は、微生物を検出する検出試薬を含む。
【0051】
検出試薬を、肉眼で及び/又は自動検出器を用いて検出してよい。自動検出器は画像システムを含んでよい。検出試薬は、発色性、蛍光性、又は発光性であってよい。任意の実施形態では、所定量の液体試料と接触すると、検出試薬は対象微生物を検出するのに十分な濃度に達する。液体試料中の高濃度検出試薬は対象微生物の増殖を阻害もするが、有利には、第2乾燥コーティング126中の検出試薬の量を十分に多くして、対象微生物の存在を迅速に検出してよい。いくつかの実施形態では、第2乾燥コーティング126中の検出試薬の量は、対象微生物の増殖を実質的に阻害するものの、対象微生物の検出に十分である。第2乾燥コーティング126中の比較的大量の検出試薬により、その比較的大量の検出試薬が実質的に微生物の増殖を阻害する場合があるが、比較的少量の検出試薬よりも迅速な対象微生物の検出を可能にする。
【0052】
検出試薬は、存在する微生物の種類に非特異的な指示薬であってよく、又は存在する微生物の種類に特異的な指示薬であってよい。非特異的検出試薬の非限定例としては、pH指示薬(例えば、アゾベンゼンpH指示薬(例えば、メチルレッド)、スルホンフタレインpH指示薬(例えば、ブロモクレゾールパープル、クロロフェノールレッド、ブロモチモールブルー、ブロモクレゾールブルー)、及びアントラキノン(anthroquinone)pH指示薬(例えば、アリザリンレッドs3,4−ジヒドロキシ−9,10−ジオキソ−2−アントラセンスルホン酸ナトリウム塩一水和物))及び酸化還元指示薬(例えば、トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)、3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT)、2,3−ビス[2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル(sulfopheny)]−2H−テトラゾリウム−5−カルボキシアニリド分子内塩(XTT)、ニトロブルーテトラゾリウム)が挙げられる。
【0053】
検出試薬は、存在する微生物の種類に特異的な指示薬であってよい。特異的検出試薬としては、例えば、特定の微生物又は微生物群に関連する酵素(例えば、グリコシダーゼ、プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、ホスファターゼ、エステラーゼ、その他同種のもの)の基質が挙げられる。
【0054】
検出試薬は、着色沈殿の形成が可能であってよい。本開示の方法及びデバイスに組み込んでよい様々な染料が周知であり、5−ブロモ−4−クロロインドリルホスフェート又はこの化合物の二ナトリウム塩、5−ブロモ−4−クロロインドリルピラノシド又はこの化合物の二ナトリウム塩、例えば5−ブロモ−4−クロロ−3インドリル−β−D−グルクロン酸、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−β−D−ガラクトシド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルコピラノシド、6−クロロ−3−インドリルホスフェート、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない、インドリル含有染料を含む。
【0055】
好ましくは、着色沈殿は青色である。青色沈殿を作る基質として、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−N−アセチル−β−D−ガラクトサミニド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−N−アセチル−β−D−グルコサミニド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−β−D−セロビオシド、5−ブロモ−4−クロロ−3−β−D−フコピラノシド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−α−D−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−β−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−α−D−グルコピラノシド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−β−D−グルコピラノシド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−β−D−グルクロン酸、シクロヘキシルアンモニウム塩、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−β−D−グルクロン酸、ナトリウム塩、及び5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−β−D−キシロピラノシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
染料は、特定の種類の細菌内に存在する特定の酵素の基質として働くことができる。例えば、エステラーゼの基質である青色沈殿生成染料としては、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルブチラート、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルカプリレート、及び5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルパルミテートが挙げられるが、これらに限定されない。ホスファターゼの基質としては、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルホスフェートジ(2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール)塩、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルホスフェート二ナトリウム塩、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルホスフェート及びp−トルイジン塩、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルホスフェート及びカリウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
グリコシダーゼの基質である発色性染料としては、3−インドキシル−β−D−ガラクトピラノシド、3−インドキシル−β−D−グルコピラノシド、3−インドキシル−β−D−グルクロン酸シクロヘキシルアンモニウム塩、及び3−インドキシル−β−D−グルクロン酸ナトリウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。ホスファターゼ(phophatase)のその他の発色性基質としては、3−インドキシルホスフェートジ(2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール)塩、及び3−インドキシルホスフェート二ナトリウム塩、3−インドキシルホスフェートp−トルイジン塩が挙げられるが、これらに限定されない。スルファターゼの基質としては、3−インドキシルサルフェートカリウム塩が挙げられるが、これに限定されない。
【0058】
グリコシダーゼ、エステラーゼ、ホスファターゼ、及びスルファターゼに対するマゼンタ色を出す沈殿性染料としては、グリコシダーゼの基質としての5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシル−N−アセチル−β−D−グルコサミニド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシル−β−D−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシル−β−D−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシル−β−D−グルコピラノシド、及び5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシル−β−グルクロン酸、シクロヘキシルアンモニウム塩;エステラーゼの基質として働く5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシルブチラート、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシルカプリレート、及び5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシルパルミテート;ホスファターゼに対して5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシルホスフェート、p−トルイジン塩、及びスルファターゼの基質として働く5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシルサルフェート、カリウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
グリコシダーゼ、エステラーゼ、及びホスファターゼに対するサーモン色を出す沈殿性染料としては、グリコシダーゼに対する6−クロロ−3−インドキシル−β−ガラクトピラノシド、6−クロロ−3−インドキシル−β−D−グルコピラノシド、及び6−クロロ−3−インドキシル−β−D−グルクロン酸、シクロヘキシルアンモニウム塩;エステラーゼに対する6−クロロ−3−インドキシルブチラート、6−クロロ−3−インドキシルカプリレート、及び6−クロロ−3−インドキシルパルミテート;並びにホスファターゼに対する6−クロロ−3−インドキシルホスフェート、p−トルイジン塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
紫色を出す発色性基質としては、5−ヨード−3−インドキシル−β−D−ガラクトピラノシドが挙げられ、緑色を出す発色性基質としては、N−メチル−インドキシル−β−D−ガラクトピラノシドが挙げられる。
【0061】
その他の沈殿性染料としては、4,6−ジクロロ−N−アセチルインドール−3−オル、6−クロロインドリル−β−D−ガラクトシドペンタアセテート、6−クロロインドリル−β−D−ガラクトシド、6−クロロインドキシル(chloroindoxy)−1,3−ジアセテート、5−クロロ−2−カルボキシフェニルグリシンナトリウム塩、4−クロロアントラニル酸、メチル[6−クロロ−N−アセチルインドール−3−イル−(2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド)]ウロナート、6−クロロインドリル−β−D−グルコピラノシドウロナートモノシクロヘキシルアンモニウム塩、Sadlerら(J.Am Chem.Soc.78:1251〜1255,1956)により報告されるクロロインジゴ類、並びに4,6−ジクロロインドリル−β−D−グルクロニド、6,7−ジクロロインドリル−β−D−グルクロニド、6,7−ジクロロインドリル−β−D−グルクロニド、4,6,7−トリクロロインドリル−β−D−グルクロニド、4,6−ジクロロインドリル−β−D−ガラクトシド、6,7−ジクロロインドリル−β−D−ガラクトシド、及び4,6,7−トリクロロインドリル−β−D−ガラクトシドが挙げられる。
【0062】
好適な検出試薬としては更に、非沈殿性指示染料(すなわち、ヒドロゲル中に拡散可能な水溶性染料)が挙げられる。非沈殿性指示染料としては、pH指示薬(例えば、本明細書に記載するアゾベンゼンpH指示薬、スルホンフタレインpH指示薬、及びアントラキノン(anthroquinone)pH指示薬)が挙げられる。また、非沈殿性指示染料としては、酵素と反応して水溶性染料(例えば、それぞれ加水分解されてp−ニトロフェノールとなり得るp−ニトロフェニルホスフェート又はp−ニトロフェニル−β−D−グルコシド)を放出する発色性酵素基質、及び、酵素と反応して水溶性蛍光染料(例えば、それぞれ加水分解されてp−ニトロフェノールとなり得る4−メチルウンベリフェリルホスフェート又は4−メチルウンベリフェリル−β−D−グルコシド)を放出する蛍光性酵素基質も挙げられる。
【0063】
従来の物品及び方法(例えば、寒天ペトリ皿法)で非沈殿性染料を用いる際の問題点は、指示染料が典型的には寒天内に混合され、全増殖期間中、微生物が染料と反応できることである。この比較的長い指示染料への曝露期間は、水溶性生成物の著しい側方拡散を可能にし、2つ以上のコロニーを部分的に重ならせる、大きいゾーンの指示染料を招くことがある。したがって従来の方法では、操作者は、どのコロニー(1つ又は複数)が指示染料と反応したのかを区別できない場合がある。
【0064】
一方、本開示の方法(以下に記載)は、微生物(存在する場合)が検出試薬と反応できない第1の培養時間を含む。本開示の方法は、微生物(存在する場合)が検出試薬に曝される第2の培養時間を更に含む。第2の培養時間を比較的短くできる(例えば、約15分間、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約6時間、約8時間、又は約10時間)ため、非沈殿性指示染料にとって、液体試料及び冷水可溶性ゲル化剤から形成されたゲルを通って実質的に拡散する十分な時間がない。有利には、指示試薬をヒドロゲル中で微生物とより長い時間(例えば、18時間、24時間、36時間、又は48時間)培養する場合、これによりコロニー付近から遠く離れて拡散する水溶性指示試薬の使用を可能にする。
【0065】
第2基材122は、好ましくは透明又は半透明であって基材122を通して細菌コロニーの視察又は画像取得が可能であり、実質的に吸水しない。第2基材122に好適な材料の非限定例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、又はポリスチレンフィルムが挙げられる。その他の好適な材料として、防水(例えば、ポリマー)コーティングを含む紙又は厚紙材料が挙げられる。第2基材122の作製に用いられる材料は、微生物に対して比較的不活性でなければならず、好ましくは無菌化プロセス(例えば、エチレンオキシド滅菌)に適合しなくてはならない。
【0066】
いくつかの実施形態では、カバーシート120は、第2基材122に接着された任意の第2接着層124を更に含んでよい。第2接着層124は非水溶性であってよく、微生物の増殖に対して非阻害的でなければならず、無菌化プロセスが用いられる場合は、この無菌化プロセスに耐えることができなくてはならない。好ましくは、第2接着層124は、カバーシート110を通して細菌コロニーの視察又は画像取得ができるように、濡れたときに十分に透明である。いくつかの実施形態では、第2接着層124は、例えば、粘着性を強めた高感圧性イソオクチルアクリレート/アクリル酸コポリマー接着剤(96重量%イソオクチルアクリレート及び4重量%アクリル酸)などの感圧性接着剤を含んでよい。
【0067】
第2乾燥コーティング126は検出試薬を含む。所望により、第2乾燥コーティング126は、米国特許第4,565,783号に記載されるような冷水可溶性ゲル化剤(例えば、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム)、栄養素、溶菌剤、選択剤、又はこれら任意の2つ以上の組み合わせを更に含んでよい。栄養素、選択剤、及び/又は溶菌剤は、通常は検出される微生物に基づいて選択される。好適な栄養素、選択剤、及び微生物を検出する検出試薬の非限定例は、米国特許第4,575,783号、同第5,089,413号、同第5,443,963号、同第5,462,860号、同第5,601,998号、同第5,635,367号、同第5,681,712号、及び同第5,364,766号に見出すことができ、参照することによりこれらのそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる。
【0068】
任意の溶菌剤は、微生物を部分的に又は完全に溶解でき、微生物の内部成分(例えば、酵素)の検出を可能にする。溶菌剤としては、界面活性剤、酵素(例えば、リゾチーム、リソスタフィン)及びバクテリオファージが挙げられる。
【0069】
いくつかの実施形態では、第2乾燥コーティング126を、例えば米国特許第4,565,783号に記載されるように、コーティング126を第2接着層124に接着させることにより第2基材122に結合してよい。いくつかの実施形態では、第2乾燥コーティング126を、例えば米国特許第4,565,783号に記載されるように、所望によりゲル化剤(例えば、冷水可溶性ゲル化剤)、栄養素、選択剤、及び/又は溶菌試薬と共に検出試薬を含む液体混合物を第2基材122又は第2接着層124上にコーティングし、続いてこの混合物を乾燥することにより、第2基材122に結合してよい。
【0070】
第2乾燥コーティング126は、所定量の液体試料と接触すると、対象微生物を検出するのに十分であるが、同時に対象微生物の増殖を阻害する濃度に達する検出試薬を含んでよい。いくつかの実施形態では、第2乾燥コーティング126中の検出試薬の量は、対象微生物の検出に十分であるが、同時に対象微生物の増殖を実質的に阻害する。
【0071】
図1bは、図1aの検出物品100の平面図を示す。この図は、カバーシート120、バリア層のタブ領域141、及び微多孔性膜のタブ領域151を示す。この図はまた、任意の浸透境界部153、及び物品100の縁部に沿って整列する両面接着テープ130により形成されたヒンジ領域105も示す。
【0072】
図1cは、図1aの物品100の平面斜視図を示す。物品100は、第1基材112と、任意の第1接着層114と、第1乾燥コーティング116と、を含むベース部材110を備える。図1cに更に示されるのは、微多孔性膜150、バリア層140、及び、第2基材122と、任意の第2接着層124と、第2乾燥コーティング126と、を含むカバーシート120である。上述のように、微多孔性膜150は浸透境界部153を含む。
【0073】
図2は、本開示による検出物品200の別の実施形態の分解組立側面図を示す。上述のように、物品200は、ベース部材210、バリア層240、及びカバーシート220を備える。物品200は、微多孔性膜250を備える膜支持材料255を更に含む。
【0074】
膜支持材料255は、ベース部材210とバリア層240との間に配置される。いくつかの実施形態では、膜支持材料255は、ベース部材210及び/又はバリア層240に(例えば、両面接着テープ230を介して)結合される。上述のように、膜支持材料250は、別の手段によりベース部材210及び/又はバリア層240に結合されてよい。
【0075】
膜支持材料255は、微多孔性膜250を支持するように構成される。膜支持材料255は、好ましくは自立型であり、実質的に吸水しない。膜支持材料255に好適な材料の非限定例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、又はポリスチレンフィルムが挙げられる。その他の好適な材料としては、防水(例えば、ポリマー)コーティングを含む紙又は厚紙材料が挙げられる。膜支持材料255は、透明、半透明、又は不透明であってよい。膜支持材料255は、バリア層240が物品200から取り外されると、ベース部材210から微多孔性膜250を通ってカバーシート220まで流体連通を可能にする開口257を更に含む。所望により、膜支持材料255は、ベース部材210及び/又はカバーシート220の周囲境界部を超えて延びるタブ領域251を備えてよい。
【0076】
開口257は、例えば、円形、正方形、矩形、六角形、八角形、楕円形、又は不整形などの任意の形状であってよい。
【0077】
微多孔性膜250は、開口257と同一の広がりを持つ大きさにしてよい。いくつかの実施形態では、微多孔性膜250は開口257より小さい。いくつかの実施形態では、図2に示されるように、微多孔性膜250は開口257より大きい。微多孔性膜を必要な大きさにして、所定量の液体試料を分配するのに好適な領域を提供できる。例えば、1ミリリットルの試料を分配するために、微多孔性膜250は約20cm〜約30cmであってよい。例えば、5ミリリットルの試料を分配するために、微多孔性膜250は約45cmであってよい。
【0078】
結合により膜支持材料255と微多孔性膜250との間の液体試料の移動を防ぐように、微多孔性膜250は膜支持材料255に(好ましくは接着剤により)結合される。したがって、微多孔性膜250の一方の主表面からもう一方の主表面への液体の移動は、実質的に、膜250を通過する液体の移動を必要とする。
【0079】
図3aは、本開示による検出物品300の別の実施形態の分解組立側面図を示す。本明細書に記載するように、物品300は、カバーシート320、バリア層、及び微多孔性膜350を備える。本明細書に記載するように、バリア層340及び微多孔性膜350は、それぞれ任意のタブ領域341及び351を更に含む。本明細書に記載するように、微多孔性膜350は、任意の浸透バリア353を更に含む。
【0080】
この実施形態では、本明細書に記載するように、ベース部材310は、基材312、任意の接着層314、及び乾燥コーティング316を含む。ベース部材は、スペーサ318を更に含む。開口319を含むスペーサ318は、非水溶性材料から作製されるべきである。開口319の壁部は、ベース部材310と共に所定の寸法及び形状の試料受容穴を形成し、物品300に堆積された液体試料の量を制限する。所望の容量、例えば、1ミリリットル、2ミリリットル、3ミリリットル、5ミリリットル、又はそれ以上の穴を形成するために、スペーサ318は十分に厚く、開口319は十分に大きくあるべきである。独立気泡ポリエチレン発泡体又はポリスチレン発泡体は、スペーサ318に好適な材料であるが、疎水性(非濡れ性)であり、微生物に対して不活性であり、好ましくは無菌化プロセスに耐えることができる任意の材料が使用され得る。スペーサ318は、例えば米国特許第4,565,783号に記載される接着剤により、ベース部材310に結合できる。
【0081】
いくつかの実施形態では、微多孔性膜350は、開口319の形状、寸法、及び位置と一致する浸透境界部353を伴って、物品300中で構成されてよい。いくつかの実施形態では、浸透境界部353で囲まれた微多孔性膜350の面積は、開口319の面積より大きくてよい。これらの実施形態では、浸透境界部353は、試料の液体が微多孔性膜350内を過度に拡散するのを防ぐことができる。
【0082】
使用中、微多孔性膜350の少なくとも一部が開口319を覆うように、微多孔性膜350を配置しなくてはならない。好ましくは、使用中、微多孔性膜350は、微多孔性膜350が開口319を実質的に覆うように配置される。いくつかの実施形態では、微多孔性膜350の面積は開口319の面積より大きく、微多孔性膜350は開口319の外辺部を超えて広がる。
【0083】
いくつかの実施形態では、図3aに示されるように、ベース部材310、微多孔性膜350、バリア層340、及びカバーシート320を互いに結合してよい。例えば、両面接着テープ330の個々の断片でこれらを互いに結合してよい。しかし、上述の他の結合手段は好適であり得る。
【0084】
図3bは、図3aの検出物品300の平面図を示す。この図は、カバーシート320、バリア層のタブ領域341、及び微多孔性膜のタブ領域351を示す。図3bはまた、任意の浸透境界部353、開口319、及び物品300の縁部に沿って整列した両面接着テープ330により形成されたヒンジ領域305も示す。図3bの開口319の形状は円形であるが、他の形状の開口319は好適であり得る。例えば、開口319は、正方形、楕円形、矩形、六角形、八角形であってよく、又は不整形であってよい。
【0085】
図3cは、図3aの物品300の平面斜視図を示す。物品300は、第1基材112、任意の第1接着層114、第1乾燥コーティング316、及びスペーサ318を含む、ベース部材310を備える。図3cに更に示されるのは、微多孔性膜350、バリア層340、及び、第2基材322と、任意の第2接着層324と、第2乾燥コーティング326と、を含むカバーシート320である。
【0086】
図4は、本開示による検出物品400の別の実施形態の分解組立側面図を示す。全て本明細書に記載するように、物品400は、バリア層440、カバーシート420、及び微多孔性膜450を支持する膜支持材料455を備える。本明細書に記載するように、物品は、開口419を有するスペーサ418を含むベース部材410を更に備える。
【0087】
微多孔性膜450の面積が開口419と同一の広がりを持つように、微多孔性膜450を物品400中で構成してよい。いくつかの実施形態では、微多孔性膜450の面積は開口419の面積より小さくてよい。いくつかの実施形態では、微多孔性膜450の面積は開口419の面積より小さくてよい。
【0088】
使用中、微多孔性膜450の少なくとも一部が開口419を覆うように、微多孔性膜450を配置しなくてはならない。好ましくは、使用中、微多孔性膜450は、微多孔性膜450が開口419を実質的に覆うように配置される。いくつかの実施形態では、微多孔性膜450の面積は開口419の面積より大きく、微多孔性膜450は開口419の外辺部を超えて広がる。
【0089】
微生物の検出方法
本開示は、液体試料中の微生物の検出方法を提供する。この方法は、微生物含有の疑いがある液体試料、及び本明細書に記載される検出物品の任意の実施形態を準備する工程を含む。物品は、冷水可溶性ゲル化剤を含む第1乾燥コーティングを含むベース部材と、微多孔性膜と、検出試薬を含む第2乾燥コーティングを含むカバーシートと、微多孔性膜とカバーシートとの間に流体バリアを形成する取り外し可能なバリア層と、を備える。微多孔性膜は、ベース部材とバリア層との間に配置される。この方法の更なる工程は図5に示される。
【0090】
所望により、液体試料を栄養素と混合、又は栄養素で希釈して、微生物の増殖を促進してよい(図示せず)。所望により、液体試料を選択剤若しくは検出試薬と混合、又は選択剤若しくは検出試薬で希釈してよい(図示せず)。いくつかの実施形態では、液体試料を、栄養素、選択剤、及び検出試薬の任意の組み合わせと混合、又は栄養素、選択剤、及び検出試薬の任意の組み合わせで希釈してよい。いくつかの実施形態では、検出物品が、栄養素、選択剤、及び/又は検出試薬を含まないとき、栄養素、選択剤、及び/又は検出試薬を液体試料に加えることができる。いくつかの実施形態では、検出物品が、栄養素、選択剤、及び/又は検出試薬を含む場合でも、栄養素、選択剤、及び/又は検出試薬を液体試料に加えることができる。
【0091】
方法は、所定の量の液体試料をベース部材と接触させるプロセス581を更に含む。最初は、ベース部材の第1乾燥コーティングが曝される。これは、例えば、物品(例えば、図1a及び1cの物品100参照)を比較的水平な表面上に置き、微多孔性膜を持ち上げて第1乾燥コーティングを曝すことにより達成できる。微多孔性膜は、存在する場合、タブ領域に掴まれてよい。
【0092】
微多孔性膜を持ち上げて第1乾燥コーティングを曝した後、所定量(例えば、1mL、2mL、3mL、5mL)の液体試料を第1乾燥コーティング上に移す(例えば、注ぐ、又はピペットを使う)ことにより、第1乾燥コーティングを接触させる。いくつかの実施形態では、第1乾燥コーティングを含むベース部材に結合されるスペーサ中の開口により形成された試料受容穴に、液体試料を堆積してよい。
【0093】
方法は、微多孔性膜を試料と接触させるプロセス582を更に含む。微多孔性膜を液体試料と接触させることにより、少なくとも一部の液体試料を微多孔性膜に移動させ、水和領域を形成する。微多孔性膜の液体試料との接触は、例えば、持ち上げて乾燥コーティングを曝した微多孔性膜を単に降ろすことにより達成できる。プロセス582は、所望により、接種材料を塗り広げるデバイス(例えば、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能なPETRIFILMプレートの接種に用いられるコンラージ棒)を用いて、第1乾燥コーティング及び微多孔性膜の選択部分(例えば、予め測定した領域)全体に液体試料を広げる工程を更に含んでよい。
【0094】
方法は、物品を第1の時間培養するプロセス583を更に含む。最初の培養は、微生物の増殖を促進する条件(すなわち、時間、温度)をもたらす。当業者は、検出される微生物に応じて培養温度を選択できることを認識するであろう。例えば、酵母又はカビを検出する場合、第1の培養温度は、典型的には室温付近(約23℃)〜約32℃であってよい。例えば、バクテリアを検出する場合、第1の培養温度は、典型的には室温付近〜約45℃であってよい。
【0095】
本開示によれば、第1の培養時間は約1時間と短くてよい。いくつかの実施形態では、第1の培養は、約4時間未満(例えば、約2時間未満、約3時間未満、又は約4時間未満)である。いくつかの実施形態では、第1の培養時間は、約8時間未満(例えば、約5時間未満、約6時間未満、約7時間未満、又は約8時間未満)である。いくつかの実施形態では、第1の培養は、約12時間未満(例えば、約9時間、約10時間、約11時間、又は約12時間)である。いくつかの実施形態では、第1の培養時間は、約15時間以下(例えば、約13時間未満、約14時間未満、又は約15時間未満)である。いくつかの実施形態では、第1の培養時間は、最大48時間(例えば、約24時間未満、約36時間未満、又は約48時間未満)である。
【0096】
方法は、バリア層を再配置するプロセス584を更に含む。バリア層を再配置し、微多孔性膜の水和領域の少なくとも一部と、第2乾燥コーティングの少なくとも一部との間に接触をもたらす。好ましくは、バリア層を再配置し、微多孔性膜の全水和領域と、第2乾燥コーティングとの間に接触をもたらす。例えば、バリア層をねじる又は折り畳むことによりバリア層を再配置し、水和領域と第2乾燥コーティングとの間に接触をもたらしてよい。好ましい実施形態では、バリア層を検出物品から取り外し(すなわち、バリア層は物品中に緩く挿入されている、又は物品に着脱可能に取り付けられている)、微多孔性膜の水和領域と第2乾燥コーティングとの間に接触をもたらすことができる。
【0097】
微多孔性膜の水和領域と第2乾燥コーティングとの間の接触により第2乾燥コーティングを水和し、それにより、第2乾燥コーティング中の検出試薬、溶菌剤、又は選択剤の、微生物、微生物の成分、及び/又は微生物の代謝副産物との相互作用が可能になる。相互作用により、検出可能なシグナルをもたらすことができる。
【0098】
方法は、物品を第2の時間培養するプロセス585を更に含む。いくつかの実施形態では、第2の時間の培養温度は第1の時間で用いた温度と同じであってよい。いくつかの実施形態では、第2の時間の培養温度は第1の時間で用いた温度と異なってよい。有利には、第2の時間の培養温度を第1の時間で用いた温度より高くして、それにより検出可能なシグナルを得るのに必要な時間を短くしてよい。
【0099】
本開示によれば、第2の培養時間は、検出可能なシグナルを得るのに十分な時間でなくてはならない。いくつかの実施形態では、第2の培養時間は、好ましくは第1の培養時間より短い。上記第1の培養時間のうち任意のものと組み合わせて、第2の培養時間は約15分間と短くてよい。上記第1の培養時間のうち任意のものと組み合わせて、第2の培養は約30分間未満である。上記第1の培養時間のうち任意のものと組み合わせて、第2の培養時間は、4時間以下(例えば、約1時間以下、約2時間以下、約3時間以下、又は約4時間以下)である。上記第1の培養時間のうち任意のものと組み合わせて、第2の培養は、8時間以下(例えば、約5時間以下、約6時間以下、約7時間以下、又は約8時間以下)である。上記第1の培養時間のうち任意のものと組み合わせて、第2の培養時間は、12時間以下(例えば、約9時間以下、約10時間以下、約11時間以下、又は約12時間以下)である。上記第1の培養時間のうち任意のものと組み合わせて、第2の培養時間は、最大約96時間(例えば、約48時間以下、72時間以下、約96時間以下)である。
【0100】
方法は、微生物増殖の有無の兆候を観察するプロセス586を更に含む。この兆候は、肉眼及び/又は計器(例えば、画像システム)で観察可能であってよく、両タイプ(手動及び自動)の検出が本開示により想到される。
【0101】
微生物増殖の兆候の特性は、通常、物品中の検出試薬(又は複数の検出試薬)に依存する。例えば、特定の検出試薬(例えば、酵素基質)は、病原菌又はその成分と相互作用すると、検出可能な着色又は蛍光生成物を産生する。例えば、特定の検出試薬(例えば、pH指示薬)は、微生物の酸性又は塩基性代謝産物の存在下で、検出可能な色又は蛍光の変化をもたらす。例えば、特定の検出試薬(例えば、多糖類又はポリペプチドポリマー)は、天然状態では比較的不透明であり、微生物又はその成分により分解されると比較的透明になる。
【0102】
いくつかの実施形態では、微生物増殖が存在する兆候には、検出可能な微生物コロニーの存在を含む。微生物コロニーを肉眼で検出してよい。微生物コロニーを画像システムを用いて検出してよい。微生物コロニーを検出するための好適なシステムは、例えば、国際公開第2005/024047号、米国特許出願公開第2004/0101954号及び同第2004/0102903号、並びに、2009年6月15日に出願された米国特許出願第61/187,107号(代理人整理番号65250US002)に記載されており、参照することによりこれらのそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる。好適な画像システムの非限定例としては、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能なPETRIFILM Plate Reader(PPR)、Spiral Biotech(Norwood,MA)から入手可能なPETRISCAN Colony Counter、並びに、Synbiosis(Cambridge,U.K.)から入手可能なPROTOCOL及びACOLYTEプレートスキャナーが挙げられる。
【0103】
いくつかの実施形態では、微生物増殖が存在する兆候には、非肉眼的に検出可能な微生物コロニーを伴う、肉眼又は計器で検出された反応の存在を含む。
【0104】
上記実施形態のいずれにおいても、方法は微生物を計数する工程を更に含んでよい。いくつかの実施形態では、物品中の分離したコロニー数を数えることにより、微生物を計数してよい。いくつかの実施形態では、物品中の非肉眼的に検出可能なコロニーを伴う、別個の反応(例えば、着色ゾーン、蛍光ゾーン、透明ゾーン)の数を数えることにより、微生物を計数してよい。微生物を計数する工程は、微生物を計数する画像システムを使用する工程を含んでよい。
【0105】
微生物増殖の有無の兆候を観察する工程は、物品の画像を得る工程を含んでよい。微生物増殖の有無の兆候を観察する工程は、画像を印刷する、表示する、又は解析する工程を更に含んでよい。
【0106】
本発明は、以下の非制限的な実施例の参照により更に説明される。他に指定のない限り、全ての部及び百分率は重量部として表される。
【実施例】
【0107】
特に記載のない限り、実施例に記載される部、百分率、比率などは全て、重量による。使用した溶媒及びその他試薬は、特に記載のない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)より入手した。
【0108】
(実施例1)
微多孔性膜支持材料の調製
非水溶性接着剤(96重量%イソオクチルアクリレート及び4重量%アクリル酸)の薄層でコーティングした二軸延伸ポリプロピレン(BOPP、1.6ミル(0.04mm)厚)フィルムから、環状ガスケットをダイカットした。このガスケットの外径は約52.5mmであり、ガスケットの内径は約45mmであった。
【0109】
BOPP(0.04mm厚)の矩形シート(約75mm×95mm)から円形孔(直径約44mm)をダイカットした。ナイロン膜フィルター(47mm、公称孔径0.45mm、Alltech Associates(Deerfield,IL)から入手)を、BOPPシートの接着剤をコーティングした側の孔の上部中央に置いた。ガスケットの接着剤側を、膜フィルターの外縁部の上部中央におき、フィルター及びBOPPシートを押しつけて、膜フィルターの縁部とBOPPシートを密封した。
【0110】
検出物品の調製
以下のようにベース部材を調製した。米国特許第4,565,783号に記載されるように、一方の主表面上にシリコーン接着剤を含むプラスチックフィルム(Applied Biosystems(Foster City,CA)のMicroamp Optical Adhesive Film、パーツ番号4311971)を、Meyprogat Guar(M150)及びStandard Methods Nutrients Brothを2:1の割合で混合したもので粉末コーティング(接着剤面側)した。Standard Methods Nutrients Brothの組成は、表1に記載されている。粉末のコーティング重量は、約8グレイン/24平方インチ(20.1mg/cm)であった。片面上の非水溶性接着剤の薄層及び約5cmの円形開口を有する発泡体スペーサ(ポリスチレンキャップライナー発泡体、0.5mm厚、American Fuji Seal Inc.(Bardstown,KY))を、ベース部材のコーティング側に積層した。
【0111】
【表1】

【0112】
カバーシートを調製した。転写接着剤の薄層を有するMicroamp Optical Adhesive Filmを、Standard Methods Nutrients Brothと0.2% wt/wtのトリフェニルテトラゾリウムクロライドの混合物で粉末コーティングした。この混合物のコーティング重量は、約8グレイン/24平方インチ(20.1mg/cm)であった。
【0113】
多層検出物品を以下のように調製した。ベース部材を、コーティング側を上にして水平面に置いた。微多孔性膜支持材料を、ガスケット側をベース部材から離れた側にしてベース部材上に置いた。膜を、栄養素フィルムのスペーサ中の円形開口の上部中央に置いた。BOPP(約75mm×95mm×厚さ0.4mm)のバリア層を膜層の上部に置いた。カバーシートを、カバーシートのコーティング側をバリア層に向けて、バリア層の上部に置いた。次に、この4層積層フィルムを片側に沿ってステープル留めした。
【0114】
(実施例2)
片側に接着剤の薄層を含まないBOPPフィルムで膜支持材料を作製した以外は、実施例1のように検出物品を作製した。
【0115】
(実施例3)
検出物品に黄色ブドウ球菌ATCC 6538(100CFU/mL溶液を1mL)を接種し、37℃で6時間培養した。次に、バリアフィルムを取り外し、37℃で接種後24時間まで培養を継続した。個々の赤色コロニーがベース部材を通して見えた。増殖している赤みがかった領域もカバーシートを通して見えたが、ベース部材を通して見た際と同じ程度には、コロニーははっきりと区別されなかった。液体試料により微多孔性膜の濡れが観察された。デジタルカメラでコロニーの写真を撮った。
【0116】
(実施例4)
実施例2の検出物品に、100コロニー形成単位の黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)を接種し、37℃で培養した。それぞれ培養6時間及び8時間後、個々の物品をインキュベーターから取り出し、バリアフィルムを取り外した。バリアフィルムを取り外した後、物品を37℃で接種後24時間まで培養した。赤色コロニーが物品中に観察された。
【0117】
(実施例5)
実施例1の検出物品に、100コロニー形成単位(CFU)の緑膿菌(ATCC 9027)を接種し、37℃でそれぞれ6〜8時間培養した。バリアフィルムを取り外し、37℃で接種後24時間まで培養を継続した。赤色コロニーが物品中に観察された。
【0118】
実施例6〜7並びに比較例C−1及びC−2
実施例2のように検出物品を作製し、シュードモナス・フラギ(ATCC 51821)を約100コロニー形成単位の濃度で接種した(実施例6)。実施例2のように第2の検出物品を作製し、ミクロバクテリウム・エステラロマチカム(ATCC 51822)を約100コロニー形成単位の濃度で接種した(実施例7)。比較のため、3M PETRIFILM Aerobic Countプレート(3M Company(St.Paul,MN)から入手可能)にも、シュードモナス・フラギ及びミクロバクテリウム・エステラロマチカム(それぞれ比較例C−1及びC−2)を各プレートあたり約100コロニー形成単位の濃度で接種した。
【0119】
試料を28℃で6時間培養した。次に、実施例6及び7からバリアフィルムを取り外し、28℃で培養を継続した。接種20時間後、例えば6及び7ではコロニーがかすかに見えたが、比較例C−1及びC−2では見えなかった。接種24時間後、例えば6及び7ではコロニーがはっきりと見えたが、比較例C−1及びC−2では見えなかった。接種48時間後、比較例C−1及びC−2においてコロニーが観察された。これらの実施例は、細胞が検出試薬(TTC)に曝される前に一定期間増殖を起こさせると、検出時間がより短くなり得ることを示す。
【0120】
これで、本発明について、本発明者が予見したいくつかの特定の実施形態に関連して説明した。これらの実施形態に関しては、有用な説明が利用可能である。本発明の想像上の修正形態がそれでもなお、現在は予見されない修正形態を含めて、それらの等価物をなし得る。したがって、本発明の範囲は、本明細書に記載した細部及び構造によってではなく、以下の「特許請求の範囲」及びその等価物によってのみ限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の微生物の検出又は計数のための物品であって、
上方主表面及び下方主表面を有する自立型水不透過性基材を含むベース部材であって、前記上方主表面は冷水可溶性ゲル化剤を含む第1乾燥コーティングを含む、ベース部材と、
微多孔性膜と、
検出試薬を含む第2乾燥コーティングを含むカバーシートと、
前記微多孔性膜と前記カバーシートとの間に流体バリアを形成するように構成されたバリア層と、を含み、
前記微多孔性膜が、前記ベース部材と前記バリア層との間に配置される、物品。
【請求項2】
開口を有するスペーサを更に含み、前記スペーサが前記ベース部材に結合され、前記スペーサ及び前記ベース部材が試料受容穴を形成する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記カバーシートが、前記ベース部材に取り付けられる、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記微多孔性膜が、前記ベース部材に取り付けられる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記バリア層が、前記ベース部材に取り付けられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記バリア層が、前記ベース部材に着脱可能に取り付けられる、請求項5に記載の物品。
【請求項7】
前記微多孔性膜が、ポリエーテルスルホン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、酢酸セルロース、混合セルロースエステル、ポリフッ化ビニリデン、ニトロセルロース、セラミックス、これらの任意のものの誘導体、及びこれらの任意のものの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記微多孔性膜が、試料封じ込めゾーンを更に備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
栄養培地を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
選択剤を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
複数の検出試薬を更に含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
少なくとも2つの前記複数の検出試薬が、少なくとも2種類の微生物を識別する、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記カバーシートが、冷水可溶性ゲル化剤を更に含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の物品。
【請求項14】
溶菌剤を更に含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の物品。
【請求項15】
前記検出試薬が、非沈殿性検出試薬を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の物品。
【請求項16】
試料中の微生物の有無を検出する方法であって、
微生物含有の疑いがある液体試料と、
検出物品であって、
冷水可溶性ゲル化剤を含む第1乾燥コーティングを含むベース部材と、
微多孔性膜と、
検出試薬を含む第2乾燥コーティングを含むカバーシートと、
前記微多孔性膜と前記カバーシートとの間に流体バリアを形成するバリア層と、を含み、
前記微多孔性膜が、前記ベース部材と前記バリア層との間に配置される、検出物品と、を準備する工程と、
所定の量の前記試料を前記第1乾燥コーティングと接触させる工程と、
前記微多孔性膜を前記試料と接触させる工程と、
前記物品を第1の時間培養する工程と、
前記バリア層を再配置し、前記カバーシートと前記微多孔性膜との間の接触をもたらす工程と、
前記物品を第2の時間培養する工程と、
微生物増殖の有無の兆候を観察する工程と、を含む、方法。
【請求項17】
前記バリア層を再配置する工程が、前記物品から前記バリア層を取り外す工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記物品が、前記ベース部材と共に試料受容穴を形成するスペーサを更に含み、所定の量の前記試料を前記第1乾燥コーティングと接触させる工程が、前記試料を前記試料受容穴に移す工程を含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記試料を、栄養素、選択剤、検出試薬、又はこれらの任意のものの2つ以上の組み合わせと混合する工程を更に含む、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の時間が、約1時間〜約48時間である、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の時間が、約4時間〜約6時間である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の時間が、約15分間〜約96時間以下である、請求項16〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の時間が、約15分間〜約6時間である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の時間が、約2時間〜約4時間である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記第1乾燥コーティングの少なくとも一部が複数の検出試薬を含み、微生物増殖の兆候を観察する工程が、2種類以上の微生物を検出し、区別する工程を含む、請求項16〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
微生物増殖の有無の兆候を観察する工程が、少なくとも1種類の微生物を計数する工程を含む、請求項16〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
微生物増殖の有無の兆候を観察する工程が、前記物品の画像を得る工程を含む、請求項16〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
微生物増殖の有無の兆候を観察する工程が、前記画像を印刷する、表示する、又は解析する工程を更に含む、請求項27に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−516177(P2013−516177A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547299(P2012−547299)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/062509
【国際公開番号】WO2011/082305
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】