説明

微生物検査システム

【課題】システムを容易かつ安価に構築することができて、データの改竄の有無や検査結果について検証や確認などを行うことが可能で、検査結果の透明性・客観性を有する微生物検査システムを提供すること。
【解決手段】試料Wを載置する第1のステージ11と、拡大光学系12を備え試料Wの一部を拡大して撮像する第1の撮像装置13と、撮影光学系14を備え外部画像を撮像する第2の撮像装置15と、拡大映像信号18と外部映像信号19と並列に入力し、いずれか一方の映像信号を選択して出力する映像信号切替装置21と、を備え、第1のステージ11と第1の撮像装置13とが、相対的にステップ走査するように設けられ、映像信号切替装置21が、ステップ走査中であるときには、外部映像信号19を選択して出力し、停止中であるときには、第1の撮像装置13から出力する拡大映像信号18を選択して出力するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や衛生の関連分野で検査対象物の試料から微生物の識別を行う微生物検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の食品の安心・安全に対する関心が高まり、食品関連企業には徹底した食品衛生が求められるようになっており、微生物学的な衛生評価は、微生物検査により実施されるため、微生物検査のニーズが増加している。微生物検査は、衛生の関連分野でニーズが増加している。
【0003】
微生物検査は元来、培養法で行われてきたが、陽性確定に至るまでに2〜8日間ほどの長い時間がかかっていた。しかし、食品の関連分野では、製品の出荷または包装前に検査結果を判定できる迅速な食品衛生微生物検査法が求められている。そこで、検査対象物の拡大映像を撮影し該拡大映像から微生物の迅速かつ正確な識別を行う微生物検査方法が開発され実施されている。
【0004】
この微生物検査方法は、顕微鏡等の拡大光学系を用いて検査対象物を保持した試料の拡大映像を観察し、検査対象物中の微生物の有無、形状、大きさ、種類、数量、コロニーの有無、数量などを識別するものであり、映像を保存することにより何度でも確認することができてかつ検査証拠として残すことができる。なお、ここで、微生物とは、肉眼では判別することができないが、顕微鏡で拡大することで観察できる大きさの生物を指称し、細菌、ウイルス、真菌などが含まれる。
【0005】
細菌の形態を光学顕微鏡で観察するためには、無染色のままではコントラストが悪いので、観察を容易にするため、通常観察に先立って染色する。染色を行うと、検査材料中の細菌の有無や菌量などが容易に識別できる。例えば、グラム染色、ドナー法による胞子染色、ヨード染色、グルコット染色、チールネルゼン染色、オルセイン染色、蛍光染色、メチレンブルー染色法、マカライトグリーン染色法、FISH法による染色等、さまざまな色素を用いた染色法が開発され利用されている。
【0006】
最近、特殊試薬による微生物の染色が研究され、蛍光顕微鏡による直接微生物カウント法が開発され正確な微生物量モニタリングが可能となり、非常に短時間で正確な微生物量の定量ができるようになった。具体的には、検査対象物(液)に含まれる微生物などをメンブレンフィルタで捕捉し、捕捉した微生物をATP化学発光に基づいて蛍光染色し、蛍光顕微鏡を用いて微生物と微生物以外のものと自動識別して表示する微生物検査システムが一般的に使用されている。この微生物検査システムは、試料拡大用の顕微鏡光学系と、X軸及びY軸方向に自由に移動できる試料搭載用の可動ステージとを備え、制御及び画像処理用の専用コンピュータがこれらと専用インターフェイスで接続される構成が一般的に使用されている(特許文献1参照)。さらに、詳述すると、この微生物検査システムは、検査対象物の試料を載置するX−Yステージと、拡大光学系を備え試料を拡大して撮像する撮像装置とを有し、撮像装置を走査移動し試料を複数に分割したコマについて拡大撮影する調節を行い、さらに、X−Yステージを走査移動し拡大撮影位置を間欠移動することを繰り返し、試料の拡大映像から微生物の識別を行うと共に該拡大映像を記憶する構成である。
【0007】
この他に、ATP化学発光を自動検出する微生物検査システム(特許文献2参照)や、蛍光を自動検出する微生物検査システム(特許文献3参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−44707号公報、図1、図9
【特許文献2】特開平11−137293号公報
【特許文献3】特許第4029983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の一般的な微生物検査システム(特許文献1に記載された構成のもの)は、高い制御性と高速な画像処理を必要とするが、専用のコンピュータを利用したシステム構成であり、大変高価なものであった。さらに、この微生物検査システムは、コマ移動時にも拡大映像を表示装置に表示し記憶装置に記憶するので、表示された拡大映像を視覚認識して微生物の識別を行う際に、コマ移動時の拡大映像が流れる状態に表示され、画像が乱れた状態になるから、大変目障りであった。さらに、こうした拡大映像が流れる状態で静止拡大画像と交番表示されるから、仮に画像改竄があったとしても該画像改竄が何処に存在するか不明であり、微生物検査の透明性・客観性の質を保証することに欠けているきらいがあった。
【0010】
しかしながら、食の安全・安心に対する消費者の関心が高まるにつれ、従来は微生物検査システムを導入していなかった中小製造業者でも微生物検査システムを設備することへの対応を迫られるようになってきており、システムが高価であることが設備導入に大きな障害となっている。
【0011】
一方、検査の元データを一般性がない専用形式で保存・記録すると、第三者によるデータの改竄の有無や検査結果の検証や消費者自身による確認などを行うことが不可能である。消費者が望む検査の透明性・客観性の質を保証することが必須となってきている。
【0012】
本発明は、上述した点に鑑み案出されたもので、その目的とするところは、システムを容易かつ安価に構築することができて、データの改竄の有無や検査結果についてユーザによる検証や確認などを行うことが可能で、消費者が望む検査結果の透明性・客観性を有する微生物検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の微生物検査システムは、検査対象物の試料を載置するステージと、拡大光学系を備え前記試料を拡大して撮像する第1の撮像装置とを有し、前記ステージと前記第1の撮像装置のいずれか一方又は両方の走査移動により、前記試料を複数に分割したコマについて拡大撮影し得るように調節を行い、さらに、拡大撮影位置を間欠移動することを繰り返し、前記試料の拡大映像から微生物の識別を行うと共に該拡大映像を記憶する微生物検査システムにおいて、前記第1の撮像装置から出力する拡大映像信号を入力する拡大映像信号入力部と、外部映像信号を入力する外部映像信号入力部と、前記拡大撮影位置を移動するステップ走査中であるか停止中であるかの動作状態を判別し得る判別信号を入力する判別信号入力部と、入力した映像信号を出力する映像信号出力部とを有する映像信号切替装置を備え、該映像信号切替装置は、前記判別信号により前記ステージがステップ走査中であると判別したときには前記外部映像信号入力部より入力する外部映像信号を選択して前記映像信号出力部より出力し、また前記ステージが停止中であると判別したときには前記第1の撮像装置から出力する拡大映像信号を選択して前記映像信号出力部より出力するように構成されている、ことを特徴とする。
【0014】
上記構成の外部映像信号入力部には、撮影光学系を備え外部画像を撮像する第2の撮像装置が接続される。第2の撮像装置により撮像される映像又は情報は、表示装置に表示され、又はデータ記録紙に記録された映像又は情報である。この映像又は情報は、検査時間の連続性を判定できる時間情報又は画像改竄が困難な情報を含む画像又はテキストの情報であるのが良い。
又は、上記構成の外部映像信号入力部に、汎用コンピュータの映像又は情報が入力されるようになっていても良い。この映像又は情報は、汎用コンピュータの表示装置をみて選択され、可能であれば、公的機関がサービスしている認証情報であるのが好ましく、その他、検査時間の連続性を判定できる時間情報又は画像改竄が困難な情報を含ませた映像又は情報であるのが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、拡大光学系を備えた第1の撮像装置は、例えば蛍光顕微鏡とビデオカメラとの組み合わせからなる。拡大光学系を備えた第1の撮像装置は、ステージと第1の撮像装置とが次の撮像箇所へ移動するための相対的なステップ走査を行っていないときの検査対象物の1コマの撮像信号(静止映像の信号)を映像信号切替装置に入力するだけでなく、ステージと第1の撮像装置とが相対的なステップ走査を行っているときの1コマの撮像信号(移動映像の信号)についても映像信号切替装置に入力する。
一方、撮影光学系を備えた第2の撮像装置は、通常のビデオカメラを適用できる。第2の撮像装置は、撮影位置に置かれる検査対象物以外の任意の被撮影物の画像を撮像できて、この撮像信号を、第1の撮像装置から出力する拡大映像信号と並列に映像信号切替装置に入力する。第2の撮像装置は、撮影位置に置かれる検査対象物以外の任意の被撮影物の画像を撮像する具体例として、例えば、アナログ時計の表示面、携帯機器の表示装置に映される各種認証映像、偽造が困難なQRコード等の映像を撮像することが好ましい。
映像信号切替装置は、ステージと第1の撮像装置とが相対的なステップ走査の動作停止中であるときには第1の撮像装置から出力する拡大映像信号を出力し、該ステップ走査の動作中であるときには、第2の撮像装置からの外部映像信号を出力する。
【0016】
従って、映像信号切替装置に、映像を記憶できる適宜の記憶装置又は汎用コンピュータを接続すると、この記憶装置に、ステージと第1の撮像装置とが相対的なステップ走査を停止中であるときには第1の撮像装置から出力する拡大映像信号を記憶でき、ステップ走査中であるときには、第2の撮像装置の外部映像信号を記憶でき、これにより、検査対象の映像と、検査対象外の映像とを交互にかつ画像の切れ目なく記憶することができる。そこで、外部映像検査対象外の映像として、検査時間の連続性を判定できる時間情報、或いは画像改竄が困難な情報を含ませて、第2の撮像装置で撮影すると、記憶装置に記憶される映像は、検査対象物の映像について改竄が困難なものとなる。
【0017】
上記構成によれば、映像信号切替装置の映像信号出力部には、低コストのパーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータや汎用性のある記憶装置を接続でき、汎用コンピュータに予めインストールされたソフトウエアにより画像解析して微生物検査を行うことができるから、システムをユーザにより容易かつ安価に構築することができて、データの改竄の有無や検査結果について透明性・客観性を有する微生物検査システムを構築することができ、検査結果の検証や確認なども消費者が望むような状態で行うことが可能となる。
【0018】
上記構成の第2の撮像装置が、サービスを利用した時刻認証などの時間経過の連続性を判定できる情報又はサービスを利用したQRコードの表示等の画像改竄が困難な情報を含ませた映像を表示する表示装置の該映像を撮像する構成であることが好ましく、または上記構成の映像信号切替装置が、サービスを利用した時刻認証などの時間経過の連続性を判定できる情報又はQRコードの表示等の画像改竄が困難な情報を含ませた映像を、外部映像信号に係る映像に含ませ得る構成であることが好ましい。さらには、拡大画像とデータ記録用紙の画像において、画像特徴量が大きく異なるようにしておけば、画像解析の際の対象画像の検出が容易になり、汎用コンピュータでの処理時間が短縮される。
【0019】
拡大映像信号は暗くて見にくいと共に該拡大映像信号を見ただけでは検査対象物が何であるか分からないことが多い。これに対し、外部映像信号として、QRコードと共に、検査対象物の名称、検査日、検査官等の認識可能な情報を撮影することで、メディアに記憶される認識可能な映像として記録することができる。これによって、記憶したメディアの数が多く蓄積された時に、汎用コンピュータや映像再生機などで映像を映し検査対象物の名称、検査日、検査官等の認識可能な情報を確認することにより、メディアの選択を正しく容易に行うことができる。なお、画像を用いているので、確認には必ずしもコンピュータを用いなくてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下のような優れた効果を有する微生物検査システムを提供することができる。
(1)映像信号切替装置の出力側に低コストの汎用コンピュータや汎用記憶装置を接続できるから、微生物検査システムをユーザにより容易かつ安価に設備することができ、製品の出荷前または包装前までの迅速な微生物検査が行えるので、市場に微生物を含む製品を流通させてしまうことを未然に回避できる。
(2)映像信号切替装置の出力側に接続した記憶装置で微生物検査の映像を記憶したメディアは汎用コンピュータで記録された映像を見ることができ、第2の撮像装置で撮影した検査対象外の映像が、検査時間の連続性を判定できる時間情報、或いは画像改竄が困難な情報を含んでいれば、メディアに記憶された映像は、データが改竄され難いので、データの改竄の有無についての透明性・客観性を担保できる。
(3)映像信号切替装置の出力側に接続した記憶装置で微生物検査の映像を記憶したメディアは汎用コンピュータで記録された映像を見ることができるので、そして、データが改竄され難いので、オリジナルのメディアに記憶された映像が第三者又は消費者の立会いの下でコピーされ、該コピーされたメディアを第三者又は消費者が入手できれば、検査結果について第三者による検証や確認などを行うことが可能であり、消費者が望む検査結果についての透明性・客観性を担保できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態に係る微生物検査システムの概略のブロック図である。
【図2】図1の微生物検査システムの第1のステージの制御装置の動作を説明するためのフロー図である。
【図3】図1の微生物検査システムの映像信号切替装置の動作を説明するためのフロー図である。
【図4】第2の実施形態に係る微生物検査システムの概略のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る微生物検査システムについて図面を参照して説明する。
【0023】
〔第1の実施形態〕
図1に示すように、微生物検査システム1Aは、第1のステージ(請求項1のステージ)11と、拡大光学系12を備えた第1の撮像装置13と、撮影光学系14を備えた第2の撮像装置15と、第2のステージ16に載置され第2の撮像装置15により撮像される映像又は情報を表示する表示手段17と、映像信号切替装置21と、を備えてなる。
この実施形態では、拡大光学系12を備えた第1の撮像装置13として蛍光顕微鏡が用いられ、また撮影光学系14を備えた第2の撮像装置15として市販のビデオカメラが用いられることが好ましい。また、第1のステージ11はX−Yテーブル装置が採用され、第2のステージ16には単なる固定台が採用される。第2のステージ16に載置される表示手段17は、情報を記録した紙、時刻を表示する時計、映像又は情報を表示する表示装置や携帯端末等のいずれであっても良い。
【0024】
この実施形態では、微生物検査システム1Aは、映像信号切替装置21の映像信号出力部21eに接続された記憶装置22を含み、さらに、記憶装置22で記憶した記録メディア23の検査映像を見るためのパーソナルコンピュータシステム24を含んでいる。
以下、さらに詳述する。
【0025】
第1のステージ11は、テーブル部11aと、台部11bとを備えてなる。検査対象物を保持した試料Wはテーブル部11aのほぼ中央に載置する。台部11bは、X軸方向走査用モータ(不図示)と、Y軸方向走査用モータ(不図示)と、制御部(不図示)とを備えてなる。制御部は、ROMに格納されている第1のX−Y軸駆動用ソフトウエアに基づいて、X軸方向走査用モータとY軸方向走査用モータを検査開始の初期位置に駆動制御する。この構成により、台部11bは、テーブル部11a上の試料Wの最初の撮像位置に拡大光学系12の撮影ポイントが合致するように、テーブル部11aをX−Y方向に移動し停止する。
【0026】
第1のステージ11の制御部(不図示)は、テーブル部11a上の試料Wの最初の撮像位置に拡大光学系12の撮影ポイントが合致したら、連係信号を拡大光学系12に出力する。拡大光学系12は、用意されたソフトウエアに基づいて第1の撮像装置13の映像を評価しつつ、テーブル部11a上の試料Wのほぼ全面を、1コマの面積が所定の大きさとなるように升目状に分割したコマ分について、所定の拡大倍率の拡大撮影し得るように、正確なピント合わせを自動的に行うようになっている。なお、ピント合わせは、人為操作で行うように構成されても良い。
【0027】
拡大光学系12は、正確なピント合わせを終えたら、第1のステージ11の制御部に連係信号を出力し、制御部は、ROMに格納されている第2のX−Y軸駆動用ソフトウエアに基づいて第1のステージ11を駆動するようになっている。
これにより、第1のステージ11は、微小時間内に撮像位置を1コマ分ステップ移動して必要時間停止することを、所定の経路で順次繰り返し該試料Wのほぼ全面に対応する拡大映像が得られるようにテーブル部11aをX−Y軸方向に移動制御される。
さらに、制御部は、第2のX−Y軸駆動用ソフトウエアの実行中に、判別信号20aを映像信号切替装置21の第1の判別信号入力部21cに出力する。この判別信号20aは、二値信号で足りる。この実施形態では、第2のX−Y軸駆動用ソフトウエアの実行中に、テーブル部11aのステップ走査を停止した時点で判別信号20aである「1」(=電圧ハイ)を出力し、また、テーブル部11aのステップ走査を開始した時点で「0」(=電圧ロー)を出力するように構成されている。
【0028】
なお、拡大光学系12が光学顕微鏡である場合は、蛍光染色した微生物を含む試料Wに励起光を照射し標的微生物を強く蛍光標識させる光源部と、特定波長を選択するフィルタを備えた蛍光フィルタブロック切り換え部と、対物レンズを切り換えるレンズ切り換え部とを備え、異なる特定波長を有する複数の励起光を順次、蛍光染色した微生物を含む試料Wに照射し、蛍光フィルタブロック切り換え部を順次切り換えることにより、各励起光に応じて得られる蛍光をそれぞれ検出できる。
【0029】
撮影光学系14を備えた第2の撮像装置15は、撮影位置に置かれる検査対象物以外の任意の被撮影物の画像を撮像し、この撮像信号19を、第1の撮像装置13から出力する拡大映像信号18と並列に映像信号切替装置21に入力する。
【0030】
この実施形態では、第2の撮像装置15は、第2のステージ16に載置され表示手段17が表示する映像又は情報を撮像し、この撮像信号を、映像信号切替装置21に入力する。表示手段17が表示する映像又は情報は、第1の撮像装置13から出力する拡大映像信号18の改竄が困難となる映像又は情報であることが好ましく、例えば、時間経過の連続性を判定できる情報として、アナログ時計の表示面やサービスを利用した時刻認証などを撮影したり、携帯機器の表示装置に映されるサービスを利用した各種認証の映像、画像改竄が困難な情報を含ませた情報として、偽造が困難なQRコード等の映像やQRコードを表示したパンフレットなどを撮影するようにするのがよい。
【0031】
映像信号切替装置21は、拡大映像信号入力部21aと、外部映像信号入力部21bと、第1の判別信号入力部21cと、第2の判別信号入力部(請求項1の判別信号入力部)21dと、映像信号出力部21eとを有している。
映像信号切替装置21は、第1の撮像装置13から出力する拡大映像信号18を拡大映像信号入力部21aより入力すると共に、第2の撮像装置15から出力する外部映像信号19を外部映像信号入力部21bより入力し、さらに、第1のステージ11から出力する判別信号20aを第1の判別信号入力部21cより入力し該判別信号20aに基づいて映像信号出力部21eより映像信号を出力開始・終了を行うと共に、第1のステージ11から出力する判別信号20bを第2の判別信号入力部21dより入力し、該判別信号20bに基づいて拡大映像信号18と外部映像信号19のいずれかを選択して映像信号出力部21eより出力する。
【0032】
すなわち、映像信号切替装置21は、二値信号である判別信号20aが「1」であるときに映像信号を映像信号出力部21eより出力開始するようになっていて、拡大映像信号18と外部映像信号19の出力の切替えについて、映像信号切替判定のための二値信号である判別信号20bが「1」であるときは、拡大映像信号入力部21aより入力した拡大映像信号18を映像信号出力部21eより出力し、また、判別信号20bが「0」であるときは、外部映像信号入力部21bより入力した外部映像信号19を映像信号出力部21eより出力するように構成されている。
これにより、映像信号切替装置21は、第1のステージ11がステップ走査停止中であるときには第1の撮像装置13から出力する拡大映像信号18を出力し、また第1のステージ11がステップ走査中であるときには、第2の撮像装置15からの外部映像信号19を出力する。なお、拡大映像信号18と外部映像信号19の出力の切替えについて、フレーム画面の同期を取って出力の切替えを行う。
【0033】
拡大映像信号18と外部映像信号19の出力の切替えは、フレーム画面の同期を取って行う。拡大映像信号18と外部映像信号19は、汎用の記憶装置で記憶できる規格統一された信号であって、映像信号切替装置21によって切替えられ出力部より出力される信号も同一であり(特に信号変換しない)、映像信号切替装置21の出力部に接続される一般に市販されているDVD装置、HD装置、青色レーザを用いた光ディスク、その他市販の各種の記憶装置に記憶される信号である。
【0034】
従って、映像信号切替装置21に、映像を記憶できる適宜の記憶装置22を接続すると、この記憶装置22は、第1のステージ11と第1の撮像装置13とが相対的なステップ走査の動作停止中であるときには第1の撮像装置13から出力する拡大映像信号18を記憶でき、該ステップ走査の動作中であるときには、第2の撮像装置15の外部映像信号19を記憶でき、これにより、検査対象の映像と、検査対象外の映像とを交互にかつ画像の切れ目なく記憶することができる。そこで、検査対象外の映像として、検査時間の連続性を判定できる時間情報、或いは画像改竄が困難な情報を含ませて、第2の撮像装置15で撮影すると、記憶装置22の記録メディア23に記憶される映像は、検査対象物の映像について改竄が困難なものとなる。
【0035】
パーソナルコンピュータシステム24は、拡大映像を画像解析して微生物検査を行うソフトウエアがインストールされており、該ソフトウエアにより、映像信号切替装置21に接続された記憶装置22から取り出し自身の記憶装置24bに移し換えた記録メディア23に記憶された拡大映像を画像解析して微生物検査を行うことができる。
【0036】
パーソナルコンピュータシステム24において、拡大画像を解析するソフトウエアは、各1コマの拡大映像に関して微生物か否かを識別するための特徴情報を自動で算出する1コマ判定用のソフトウエア部分と、全コマの拡大映像に関してそれぞれ1フレームをピックアップし全コマを正しく配列した全面映像として微生物か否かを識別するための特徴情報を自動で算出する全コマ判定用のソフトウエア部分と選択できる構成であることが好ましい。これにより、パーソナルコンピュータシステム24をユーザにより容易かつ安価に構築することができて、データの改竄の有無や検査結果について透明性・客観性を有する微生物検査システムを構築することができ、検査結果の検証や確認なども消費者が望むような状態で行うことが可能となる。
【0037】
図1のブロック図と、図2及び図3のフロー図を参照して、上記構成の微生物検査システム1Aの動作を簡単に説明する。なお、図2及び図3のフロー図は、動作の一例に過ぎないものである。
(1)染色した検査対象物を保持した試料Wをテーブル部11aのほぼ中央に載置し、第1のステージ11の台部11bに備える検査開始スイッチ(不図示)をオンする。すると、拡大光学系12及び台部11bに備える制御部(不図示)が図2のフロー図に示すように動作すると共に、映像信号切替装置21が図3のフロー図に示すように動作する。
(2)まず、拡大光学系12を備えた第1の撮像装置13が動作し(S1)、検査対象物を保持した試料Wの撮影し、拡大映像信号18を映像信号切替装置21の拡大映像信号入力部21aに入力する(図1参照)。また、撮影光学系14を備えた第2の撮像装置15が動作し(S1)、第2のステージ16に載置され表示手段17が表示する映像又は情報を撮像し、外部映像信号19を映像信号切替装置21の外部映像信号入力部21bに入力する(図1参照)。しかし、この時点では、映像信号切替装置21は、第1の判別信号入力部21cに録画開始・終了を判別するための判別信号20aを入力していないので、映像信号出力部21eから映像信号を出力しない。
(3)拡大光学系12は、予め設定された拡大倍率となるようにレンズを駆動し(S2)、ピント合わせを行う(S3)。
(4)制御部は、第1のX−Y軸駆動用ソフトウエアに基づいて第1のステージ11を駆動し、拡大光学系12の試料Wの拡大撮影位置を初期位置へ移動し(S4)、ステップ走査回数を“0”として記憶し(S5)、判別信号20aを映像信号切替装置21へ出力し検査を開始し(S6)、判定信号20bとして二値信号の「1」とする(S7)。
(5)映像信号切替装置21は、録画開始・終了を判別するための判別信号20aとして二値信号の「1」及び映像信号切替判定のための判定信号20bとして二値信号の「1」を入力すると(S21でYES,S23でYES)、拡大映像信号18を映像信号出力部21eから出力する(S24)。
(6)制御部は、撮影時間をカウントし(S8)、X秒が経過したら(S9でYES)、二値信号の判定信号20bを「1」から「0」に切り替える(S11)。
(7)映像信号切替装置21は、入力する判定信号20bが「1」から「0」に切り替わることにより(S23でNO)、外部映像信号19を映像信号出力部21eから出力する(S25)。
(8)制御部は、第2のX−Y軸駆動用ソフトウエアに基づいて第1のステージ11を駆動し、拡大光学系12による試料Wの拡大撮影位置を次の撮影位置へステップ走査し(S12)、ステップ走査を終了すると、ステップ走査回数に“1”をプラスカウントし(S13)、二値信号の判定信号20bを「0」から「1」に切り替える(S11)。
(9)映像信号切替装置21は、入力する判定信号20bが「0」から「1」に切り替わることにより(S23でYES)、拡大映像信号18を映像信号出力部21eから出力する(S24)。
(10)制御部は、ステップ走査回数が最終回数になる前までは(S10でNO)、その後もS8〜S14を反復する。これに対応して、映像信号切替装置21は、映像信号出力部21eから拡大映像信号18と外部映像信号19とを交互に出力する。すなわち、映像信号切替装置21は、判別信号20bにより第1のステージ11が移動中であると判別したときには外部映像信号入力部21bより入力する外部映像信号19を選択して出力し、また第1のステージ11が移動停止中であると判別したときには第1の撮像装置13から出力する拡大映像信号18を選択して出力する。
(11)そして、制御部は、ステップ走査回数が最終回数になったときは(S10でYES)、判別信号20aとして二値信号の「0」を映像信号切替装置21へ出力し(S15)、その後、終了になる。また、映像信号切替装置21も、判別信号20aの入力により、映像信号出力部21eからの撮像信号の出力を終了する。
【0038】
上記構成によれば、微生物検査システム1Aは、拡大光学系12の接眼レンズを通して第1のステージ11に載置した検査対象物を保持した試料Wの拡大映像を直に観察することができると共に、映像信号切替装置21の映像信号出力部21eに接続した記憶装置22で記録メディア23に拡大映像を記憶し、この記録メディア23に記憶した拡大映像をパーソナルコンピュータシステム24の表示装置24aに表示し、拡大画像を解析するソフトウエアの助けを借りて、検査対象物中の微生物の有無、形状、大きさ、種類、数量、コロニーの有無、数量などの微生物の識別検査を行うことができ、映像の保存により検査結果を何度でも確認することができかつ証拠として残すことができる。
【0039】
上記構成によれば、映像信号切替装置21の映像信号出力部21eには、低コストのパーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータ24や汎用性のある記憶装置22を接続でき、汎用コンピュータに予めインストールされたソフトウエアにより画像解析して微生物検査を行うことができるから、微生物検査システムをユーザにより容易かつ安価に構築することができて、データの改竄の有無や検査結果について透明性・客観性を有する微生物検査システムを構築することができ、検査結果の検証や確認なども消費者が望むような状態で行うことが可能となる。
【0040】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態に係る微生物検査システム1Bは、拡大映像信号入力部21aと、外部映像信号入力部21bと、第2の外部映像信号入力部21fと、第1の判別信号入力部21cと、第2の判別信号入力部21dと、映像信号出力部21eと、を有する映像信号切替装置21を備えている。そして、映像信号切替装置21は、拡大映像信号入力部21aに、第1のステージ11に載置され第1の撮像装置13で撮影された検査対象物を保持した試料Wの拡大映像信号18を入力し、また第2の外部映像信号入力部21fに、パーソナルコンピュータシステム24の表示装置24aに表示された映像に係る外部映像信号19Bを入力し、さらに判別信号20bを第2の判別信号入力部21dより入力し、映像信号切替装置21が、判別信号20bに基づいて、第1のステージ11が移動中であると判別したときには第2の外部映像信号入力部21fより入力する外部映像信号19Bを選択して出力し、また第1のステージ11が移動停止中であると判別したときには第1の撮像装置13から出力する拡大映像信号18を選択して出力する。なお、外部映像信号入力部21bは、第2の外部映像信号入力部21fと選択的に使用でき、第1の実施形態と同様に、ビデオカメラで撮影した外部映像信号19Aを入力し得る。
【0041】
そして、映像信号切替装置21の映像信号出力部21eより出力する映像信号(拡大映像信号18と外部映像信号19のいずれか)は、パーソナルコンピュータシステム24の記憶装置24bの内部ディスク又は外部ディスク(記憶メディア23)に記憶される。ここで、表示装置24aには上述したように映像信号19Aとなる映像が表示されているので、映像信号切替装置21の映像信号出力部21eより出力する拡大映像信号18と外部映像信号19Aを表示装置24aで同時に表示するためにはマルチスクリーンとする。
【0042】
第2の実施形態に係る微生物検査システム1Bについて、他の構成は、第1の実施形態に係る微生物検査システム1Aと同一であるので対応する構成要素について同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
パーソナルコンピュータシステム24の表示装置の表示画面を選択して、映像信号切替装置21から出力される外部映像信号19Aに、連続番号や時間の経過、QRコードの表示等の画像改竄が困難な情報を含ませた映像が合成して表示される構成とすると、改竄が困難なものとなるので好ましい。
【0044】
〔その他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含まれるものである。
【0045】
微生物検査としては、蛍光顕微鏡による蛍光画像の特徴から判別する微生物検査やFISH法による微生物検査、マイクロコロニー法による微生物検査、蛍光染色法によるものなど、どのような方法でも構わない。
【0046】
第1の実施形態では、第1のステージ11は、撮像位置を1コマ分ステップ移動して必要時間停止することを、所定の経路で順次繰り返し該試料Wのほぼ全面に対応する拡大映像が得られるようにテーブル部11aをX−Y軸方向に移動制御される構成としたが、この構成に限定されるものでなく、例えば、
(1)可動ステージの駆動台がテーブルをX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動制御するように構成され、かつ、制御部のROMにZ軸駆動用ソフトウエアが格納されていて、制御部が、Z軸駆動用ソフトウエアに基づいて、第1の撮像装置の映像を評価しつつ必要に応じてテーブルをZ軸方向に移動制御しテーブル部11a上の試料Wの一部に関し所望倍率の拡大映像を得られ、かつ正確なピント合わせを得られるように構成、
(2)可動ステージの駆動台がテーブルをθ回転するように構成され、かつ、拡大光学系12がテーブルの半径方向に移動する構成、
(3)試料を載置するステージを移動不能に備え、拡大光学系を備えた第1の撮像装置をX−Y−Z軸方向に移動制御される構成、
とする場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0047】
第2の実施形態では、第2の外部映像信号入力部21fに、パーソナルコンピュータシステム24の表示装置24aに表示された映像に係る外部映像信号19Bを、記憶装置24bから第2の外部映像信号入力部21fに入力する構成であるが、第2の外部映像信号入力部21fに入力する外部映像信号19Bは、情報端末がパーソナルコンピュータシステムであることに限定されない。例えばPHSあるいは携帯電話などの適宜の情報端末から出力する外部映像信号を第2の外部映像信号入力部21fに入力する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0048】
1A、1B 微生物検査システム
W 試料
11 第1のステージ(ステージ)
12 拡大光学系
13 第1の撮像装置
14 撮影光学系
15 第2の撮像装置
17 表示手段
18 拡大映像信号
19、19A 外部映像信号
20b 判別信号
21 映像信号切替装置
21a 拡大映像信号入力部
21b 外部映像信号入力部
21d 第2の判別信号入力部(判別信号入力部)
21e 映像信号出力部
21f 第2の外部映像信号入力部
24 パーソナルコンピュータシステム(情報端末)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の試料を載置するステージと、拡大光学系を備え前記試料を拡大して撮像する第1の撮像装置とを有し、前記ステージと前記第1の撮像装置のいずれか一方又は両方の走査移動により、前記試料を複数に分割したコマについて拡大撮影し得るように調節を行い、さらに、拡大撮影位置を間欠移動することを繰り返し、前記試料の拡大映像から微生物の識別を行うと共に該拡大映像を記憶する微生物検査システムにおいて、
前記第1の撮像装置から出力する拡大映像信号を入力する拡大映像信号入力部と、外部映像信号を入力する外部映像信号入力部と、前記拡大撮影位置を移動するステップ走査中であるか停止中であるかの動作状態を判別し得る判別信号を入力する判別信号入力部と、入力した映像信号を出力する映像信号出力部とを有する映像信号切替装置を備え、
該映像信号切替装置は、前記判別信号により前記ステージがステップ走査中であると判別したときには前記外部映像信号入力部より入力する外部映像信号を選択して前記映像信号出力部より出力し、また前記ステージが停止中であると判別したときには前記第1の撮像装置から出力する拡大映像信号を選択して前記映像信号出力部より出力するように構成されている、
ことを特徴とする微生物検査システム。
【請求項2】
前記映像信号切替装置の外部映像信号入力部に、撮影光学系を備え外部画像を撮像する第2の撮像装置が接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載の微生物検査システム。
【請求項3】
前記第2の撮像装置により撮像される映像又は情報を表示する表示手段を含むことを特徴とする請求項2に記載の微生物検査システム。
【請求項4】
前記映像信号切替装置の第2の外部映像信号入力部に、情報端末の映像が入力されるように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の微生物検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−161955(P2010−161955A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5207(P2009−5207)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成20年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(508236240)公立大学法人公立はこだて未来大学 (16)
【出願人】(000151944)株式会社東和電機製作所 (16)
【出願人】(000173511)財団法人函館地域産業振興財団 (32)
【出願人】(391026106)株式会社電制 (12)
【Fターム(参考)】