説明

微粒化装置及び微粒化処理システム

【課題】微粒化処理の効率を向上させることができる微粒化装置及び微粒化処理システムの提供。
【解決手段】微粒化装置30は、シリンダ部50と微粒化ノズル部100を備える。シリンダ部50はシリンダ本体60とシリンダ補助管70を有する。シリンダ本体60は、加圧室130から微粒化ノズル部100に原料流体を加圧吐出するための、微粒化ノズル部100と加圧室130を連通する第1連通孔64と、投入槽10からシリンダ部50内に原料流体を吸入するための、投入槽10と吸液通路84を連通する第2連通孔66を有する。シリンダ補助管70は、シリンダ本体60内に固定されて、吸液通路84に直接連通する。プランジャ13は、シリンダ補助管70に固定された高圧シールを押し退けて加圧室130に送り込まれると、加圧室130に取り込まれた原料流体を加圧する。微粒化ノズル部100は加圧吐出された原料流体に含まれる物質を微粒化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、化学、薬品等の各業界で扱われる物質を微粒化する装置に関し、より詳細には、原料流体に高い圧力を与える加圧器(ポンプなど)を用いて、原料流体に含まれる物質を微粒化する装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
流体に高い圧力を与える加圧器(ポンプなど)として、3連型のプランジャ式ポンプが知られている(例えば、特許文献1)。従来の微粒化処理システムでは、プランジャ式ポンプを用いて、原料流体を微粒化装置のシリンダ部に吸入して、微粒化装置の微粒化ノズル部に加圧吐出することにより、原料流体に含まれる物質は微粒化されていた。
【0003】
プランジャ式ポンプは、クランクケースに回転自在に支持されたクランク軸に、コンロッドを介して連結された3つのプランジャを有する。クランク軸の回転に伴って、各プランジャが往復運動することにより、プランジャ式ポンプはシリンダ部に吸入された原料流体を加圧する。具体的には、原料流体の吸入行程において、プランジャがシリンダ部内から引き出されるにつれて、原料流体が、シリンダ部と投入槽を連通する第1連通孔に設けられた吸入用の逆止弁を介して投入槽からシリンダ部に吸入され、かつ、原料流体の吐出行程において、プランジャがシリンダ部内に押し込まれるにつれて、原料流体が加圧されて、シリンダ部と微粒化ノズル部を連通する第2連通孔に設けられた吐出用の逆止弁を介してシリンダ部から微粒化ノズル部に吐出される。なお、原料流体の吸入行程では吐出用の逆止弁は閉塞されており、原料流体の吐出行程では吸入用の逆止弁は閉塞されている。この機構により、原料流体には数MPa〜数百MPa程度の高圧が与えられて、原料流体に含まれる物質は、微粒化ノズル部内に設けられた微粒化ノズルの特性に応じて、所望の粒度に微粒化される。
【0004】
原料を変える場合には、投入から排出まで、先の原料流体が接触したすべての部材を洗浄することで、コンタミレス化が図られる。これにより、次の原料流体に含まれる物質が、先の原料流体に含まれる物質と混ざるといった問題は生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3423915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の微粒化処理システムの高圧ポンプは、多くの部材を有するため、各部材の洗浄には多くの手間が掛かる。特に、吸入用の逆止弁と吐出用の逆止弁は、原料流体の性質に依存して、いくつかの問題を抱えている。
【0007】
吸入用の逆止弁は、弁座、スプリングポスト、スプリング、弁体を有する。弁座は、第1連通孔の投入槽側に設けられる。スプリングポストは、第1連通孔のシリンダ部側に設けられる。スプリングは、スプリングポストに固定された一端を有する。弁体は、金属製の球体であり、スプリングの他端でスプリングにより支持される。原料流体の吐出行程において、吸入用の逆止弁のスプリングは、弁体を弁座に押し付けて、原料流体がシリンダ部から投入槽に逆流することを防ぐ。
【0008】
このような構成をとる吸入用の逆止弁において、原料流体の性質に依存して、次の問題が生じる:(1)原料流体の粘性が高いもしくは固形分、繊維、粉体が含まれるスラリー流体の場合には、原料流体が吸入用の逆止弁の動作不良を招き、かつ、吸入用の逆止弁の洗浄に大きな手間がかかる;(2)原料流体に含まれる物質の粒度が大きいと、その物質により弁体と弁座の間に隙間が常に形成されて吸入用の逆止弁の動作不良を招き、原料流体の吐出行程において、原料流体がシリンダ部から投入槽に逆流してしまう;(3)弁体の度重なる開閉運動により、高圧流体が吸入用の逆止弁に高速で逆流する。その際、高速流により吸入用の逆止弁が破損する可能性がある。また、原料流体に含まれる物質の比重が大きいと、比重の大きい物質が投入槽の底に沈降沈殿するので、撹拌器を用いて、投入槽内で攪拌する必要があり、また、投入槽内で物質の分布を均一にする必要がある。
【0009】
同様に、吐出用の逆止弁は、弁座、スプリングポスト、スプリング、弁体を有する。弁座は、第2連通孔のシリンダ部側に設けられる。スプリングポストは、第2連通孔の微粒化ノズル部側に設けられる。スプリングは、スプリングポストに固定された一端を有する。弁体は、金属製の球体であり、スプリングの他端でスプリングにより支持される。原料流体の吸入行程において、吐出用の逆止弁のスプリングは、弁体を弁座に押し付けて、原料流体が微粒化ノズル部からシリンダ部に逆流することを防ぐ。
【0010】
このような構成をとる吐出用の逆止弁において、原料流体の性質に依存して、次の問題が生じる:(1)原料流体の粘性が高いもしくは固形分、繊維、粉体が含まれるスラリー流体の場合には、原料流体が吐出用の逆止弁内の動作不良を引き起こし、かつ、吐出用の逆止弁の洗浄に大きな手間がかかる;(2)原料流体に含まれる物質の粒度が大きいと、その物質により弁体と弁座の間に隙間が常に形成されて吐出用の逆止弁の動作不良を招き、原料流体の吸入行程において、原料流体が微粒化ノズル部からシリンダ部に逆流してしまう;(3)弁体の度重なる開閉運動により、高圧流体が吐出用の逆止弁に高速で逆流する。その際、高速流により吐出用の逆止弁が破損する可能性がある。
【0011】
本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、従来の微粒化装置と比較して、洗浄し易く、製造コストを低減し、微粒化処理の効率を向上させることができる微粒化装置及びその微粒化装置を含んだ微粒化処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、第1中空部と、前記第1中空部に開口する第1開口部と、前記第1中空部の内方に突出するように前記第1中空部に固定される高圧シールと、を有するシリンダ補助管と、前記シリンダ補助管を収納し、かつ、開口端と、閉塞端と、前記シリンダ補助管と前記閉塞端の間に形成されて前記第1中空部に連通する加圧室と、を有する第2中空部と、前記第2中空部に開口する第2開口部と、前記第2中空部にて前記第1開口部と前記第2開口部を連通する吸液通路と、を有するシリンダ本体と、前記加圧室に連通する微粒化ノズルと、を備え、プランジャは、前記開口端から前記シリンダ本体に導入されて、前記第1中空部と前記加圧室内を往復運動し、原料流体が前記吸液通路と前記第1中空部を介して外部から前記加圧室内に取り込まれた状態において、前記プランジャが前記高圧シールを押し退けながら前記加圧室内に送り込まれると、前記加圧室が前記第1中空部と遮断され、これにより、原料流体は前記加圧室内で加圧されて、前記微粒化ノズルに吐出され、前記加圧吐出された原料流体に含まれる物質は、前記微粒化ノズル内で微粒化され、原料流体が前記加圧室から吐出された状態において、前記加圧室は前記加圧吐出された原料流体の一部により前記微粒化ノズルと遮断されて真空状態を維持し、前記プランジャが前記高圧シールから離れて前記第1中空部内に引き込まれると、原料流体は前記吸液通路と前記第1中空部を介して外部から前記加圧室内に取り込まれることを特徴とする微粒化装置を提供する。
【0013】
また、上記の目的を達成するために、本発明は、第1中空部と、前記第1中空部に開口する第1開口部と、前記第1中空部の内方に突出するように前記第1中空部に固定される高圧シールと、を有するシリンダ補助管と、前記シリンダ補助管を収納し、かつ、開口端と、閉塞端と、前記シリンダ補助管と前記閉塞端の間に形成されて前記第1中空部に連通する加圧室と、を有する第2中空部と、前記第2中空部に開口する第2開口部と、前記第2中空部にて前記第1開口部と前記第2開口部を連通する吸液通路と、を有するシリンダ本体と、前記加圧室に連通する微粒化ノズルと、前記第2開口部を介して前記第2中空部に連通する、原料流体を前記シリンダ本体に投入するための投入槽と、前記微粒化ノズルに連通する、微粒化処理された原料流体を貯蔵するための貯蔵槽と、前開口端から前記シリンダ本体に導入されて、前記第1中空部と前記加圧室内を往復運動するプランジャと、を備え、原料流体が前記吸液通路と前記第1中空部を介して前記投入槽から前記加圧室内に取り込まれた状態において、前記プランジャが前記高圧シールを押し退けながら前記加圧室内に送り込まれると、前記加圧室が前記第1中空部と遮断され、これにより、原料流体は前記加圧室内で加圧されて、前記微粒化ノズルに吐出され、前記加圧吐出された原料流体に含まれる物資は、前記微粒化ノズル内で微粒化されて、前記貯蔵槽に貯蔵され、原料流体が前記加圧室から吐出された状態において、前記加圧室は前記加圧吐出された原料流体の一部により前記微粒化ノズルと遮断されて真空状態を維持し、前記プランジャが前記高圧シールから離れて前記第1中空部内に引き込まれると、原料流体は前記吸液通路と前記第1中空部を介して前記投入槽から前記加圧室内に取り込まれることを特徴とする微粒化処理システムを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、微粒化装置及び微粒化処理システムには、吸入用の逆止弁と吐出用の逆止弁を設ける必要がないので、構成部材が簡略化され、かつ、逆止弁が吸入孔(又は吐出孔)を完全に閉塞した状態(又は完全に閉塞しない状態)で動作しなくなるという事態が発生しない利点がある。それゆえ、微粒化装置及び微粒化処理システムは、製造コストを低減し、かつ、洗浄をし易く、微粒化処理の効率を向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る微粒化処理システムの概念平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る微粒化装置の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る微粒化装置のシリンダ部のシリンダ本体の拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る微粒化装置のシリンダ部のシリンダ補助管の斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る微粒化装置のシリンダ部のシリンダ補助管の拡大断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る微粒化装置の微粒化ノズル部の拡大断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る微粒化装置における原料流体の吸入行程前半を説明する図である。
【図8】本発明の実施形態に係る微粒化装置における原料流体の吸入行程後半を説明する図である。
【図9】本発明の実施形態に係る微粒化装置における原料流体の吐出行程前半を説明する図である。
【図10】本発明の実施形態に係る微粒化装置における原料流体の吐出行程後半を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1乃至10を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1に示すように、微粒化処理システムは、駆動装置1、投入槽10、貯蔵槽11、微粒化装置30a,30b,30cから構成される。なお、X−Y平面は水平面であり、Z方向はX−Y平面に垂直な鉛直方向である。
【0018】
駆動装置1はクランク軸2,2,2とモータ3を備える。クランク軸2,2,2は、クランクケース4,4,4に回転自在に支持されたクランク部5,5,5と、回転方向で120度位相を互いにずらして配置されたクランクピン6a,6b,6cと、から構成される。モータ3はクランク軸2,2,2を回転する。
【0019】
クランク軸2,2,2は、クランクピン6a,6b,6cにそれぞれ連結されたコンロッド7a,7b,7cを介して、ヨーク付きピストン軸8a,8b,8cに連結される。
【0020】
クランク軸2,2,2が矢印R方向に回転すると、コンロッド7a,7b,7cの揺動により、ピストン軸8a,8b,8cは矢印S方向に往復運動する。ピストン軸8a,8b,8cの先端には、後述するプランジャ(ピストン)13(図2参照)がそれぞれ一体に結合されている。
【0021】
微粒化装置30a,30b,30cは、シリンダ部50a,50b,50cと微粒化ノズル部100a,100b,100cからそれぞれ構成される。シリンダ部50a,50b,50cは、高圧チューブ120a,120b,120cを介して微粒化ノズル部100a,100b,100cにそれぞれ接続される。シリンダ部50a,50b,50cには、原料流体を微粒化装置30a,30b,30cに投入するための投入槽10が、管20を介して連通される。微粒化ノズル部100a,100b,100cには、微粒化された原料生成物(試料)を貯蔵するための貯蔵槽11が、管21を介して連通される。
【0022】
コンロッド7a,7b,7cをクランクピン6a,6b,6cにそれぞれ偏心連結することにより、ピストン13が微粒化装置30a,30b,30cに投入された原料流体を加圧吐出するタイミングをずらして、微粒化処理の効率を向上させることができる。
【0023】
次に、図2乃至5を参照しながら、微粒化装置30の構成を詳細に説明する。最初にシリンダ部50の構成を説明し、次に微粒化ノズル部100の構成を説明する。なお、微粒化装置30a,30b,30cはすべて同一の構造をとる。
【0024】
図2に示すように、シリンダ部50は、水平方向に配置され、プランジャ13がシリンダ部50内から引き出されるにつれて、原料流体を投入槽10から管20を介して吸入して、プランジャ13がシリンダ部50内に押し込まれるにつれて、吸入された原料流体を微粒化ノズル部100に高圧チューブ120を介して加圧吐出する。
【0025】
シリンダ部50は、シリンダ本体60、シリンダ補助管70、固定具90を有する。図3に示すように、シリンダ本体60は、ステンレスからなり、中空部61、段差部62、雌ねじ部63、第1連通孔64、挿入孔65、第2連通孔66、雄ねじ部67を有する。中空部61は、シリンダ部50の微粒化ノズル側(+X側)で閉塞し、シリンダ部50のプランジャ側(−X側)で開口している。また、中空部61は、シリンダ部50の微粒化ノズル部側(+X側)の第1径と、第1径より大きいシリンダ部50のプランジャ側(−X側)の第2径を有する。段差部62は、中空部61の第1径が第2径に変化する箇所に形成されている。
【0026】
雌ねじ部63は、シリンダ部50の微粒化ノズル部側(+X側)の上面(+Z側)に形成されて、高圧チューブ120にカラー131を介して固定されたナット130の雄ねじ部130aに螺合される。また、雌ねじ部63は、雌ねじ部63と第1連通孔64を連通する開口63aを底面中央部に有し、かつ、底面中央部から底面周縁部に向けて傾斜するバンク部63bを有する。バンク部63bは、例えば、約60°の頂角を有する。第1連通孔64は中空部61と雌ねじ部63を連通する。高圧チューブ120がシリンダ部50に固定されると、第1連通孔64は中空部61と高圧チューブ120を連通する。
【0027】
挿入孔65は、シリンダ部50のプランジャ側(−X側)の上面(+Z側)に形成される。管20は、挿入孔65に挿入されてシリンダ部50に固定される。挿入孔65に挿入されるべき管20の下端部には、パッキン22b,22bが上下位置に嵌着されている。第2連通孔66は、中空部61の段差部62の近傍に形成されて、中空部61と挿入孔65を連通する。管20がシリンダ部50に固定されると、第2連通孔66は管20と中空部61を連通する。雄ねじ部67は、シリンダ本体60の後端凸部(−X側)の外周面に形成されている。
【0028】
図2に示すように、シリンダ補助管70は、ステンレスからなり、シリンダ本体60の中空部61に収納される。図4及び5に示すように、シリンダ補助管70は、前端部71、固定シール72、バンク部73、円筒部74、後端部75、パッキン76、フランジ部77、中空部78、4つの吸液孔79(図には2つの吸液孔のみ示している)、高圧シール受部80、高圧シール81、軸受シール82、軸受83を有する。前端部71は、中空部61の第1径より大きく、かつ、中空部61の第2径より小さい外径を有する円環71aと、円環71aの中央部から延出する、中空部61の第1径と同じ外径を有する突起71bを有する。シリンダ補助管70がシリンダ本体60に収納された状態において、突起71bは中空部61の内周面に当接し、かつ、円環71aの周縁面71cは中空部61の段差部62に圧接する。
【0029】
固定シール72は、プラスチックからなり、突起71bを囲むように円環71aの周縁面71cに形成された円形溝に固定される。シリンダ補助管70がシリンダ本体60に収納された状態において、固定シール72は中空部61の段差部62に圧接する。バンク部73は、突起71bの延出方向とは反対の方向に、前端部71の円環71aから延出する。バンク部73は、円環71aから延出するにつれて小さくなる外径を有する。シリンダ補助管70がシリンダ本体60に収納された状態において、シリンダ本体60の第2連通孔66の開口面は、シリンダ補助管70の前端部71の円環71aの上側面とバンク部73の上側面に対向する。
【0030】
円筒部74は、バンク部73から延出して、バンク部73が円筒部74に接する面の径と同じ外径を有する。後端部75は、円筒部74から延出して、中空部61の第2径と同じ外径を有する。シリンダ補助管70がシリンダ本体60に収納された状態において、後端部75は中空部61の内周面に当接する。パッキン76は、ゴムからなり、バンク部73側の後端部75の側面に形成された円形溝に固定される。シリンダ補助管70がシリンダ本体60に収納された状態において、パッキン76は中空部61の内周面に圧接する。フランジ部77は後端部75から外方に延出する。シリンダ補助管70がシリンダ本体60に収納された状態において、フランジ部77は中空部60の開口端に圧接する。
【0031】
中空部78は、一体的に連結された前端部71、バンク部73、円筒部74、後端部75、フランジ部77を貫通する。中空部78は、前領域78a、中領域78b、後領域78cに区画される。前領域78aは、前端部71、バンク部73、円筒部74の前部を貫通する。中領域78bは、円筒部74の後部を貫通する。4つの吸液孔79は、周方向に互いに90°離れるように、円筒部74の側面に形成される。シリンダ補助管70がシリンダ本体60に収納された状態において、各吸液孔79は、中空部61の内周面、第2連通孔66の開口面、前端部71の円環71aの側面、バンク部73の側面、円筒部74の側面に囲まれた吸液通路84と、中空部78の中領域78bとを連通する。前領域78aと中領域78bの境界付近には、中空部78に延出する円環突起78dが形成されている。後領域78cは、後端部75とフランジ部77を貫通する。後領域78cは、前領域78aの径と同じ径を有する。中領域78bの前部は、円環突起78dの内径と同じ径を有する。中領域78bの後部は、中領域78bの前部から後領域78cに向かうにつれて、大きくなる径を有する。
【0032】
高圧シール受部80は略円筒状に形成される。高圧シール受部80は、前領域78aの径と同じ値の外径と、プランジャ13の径より大きい(円環突起78dの内径と同じ)第1内径と、プランジャ13の径と同じ第2内径を有する。高圧シール受部80は、前端部71側から中空部78に挿入されて、中空部78の内周面と円環突起78dに固定される。このとき、高圧シール受部80の第1内径を有する第1円環面は円環突起78dの円環面に当接し、高圧シール受部80の外周面は中空部78の内周面に当接する。高圧シール81は、ナイロン、ポリエチレンなどの熱可塑性のプラスチックからなり、円錐台筒状に形成される。高圧シール81は、円環状に形成された第1面(−X側)を有し、かつ、同心の二重円環状に形成された第2面(+X側)を有する。第1面は、プランジャ13の径より大きい内径と、前領域78aの径と同じ外径を有する。断面視において、高圧シール81の側部は、第1面から第2面に進むにつれて途中で二股に分かれて、内側円環81aと外側円環81bを形成する。内側円環81aは、第2面に近づくにつれて内方に延出する。第2面の内側円環は、プランジャ13の径より小さい内径を有する。外側円環81bは、第2面に近づくにつれて外方に延出する。第2面の外側円環は、前領域78aの径より僅かに大きい外径を有する。高圧シール81は、前端部71側から中空部78に挿入されて、中空部78の内周面と高圧シール受部80に固定される。このとき、高圧シール81の第1面は高圧シール受部80の第2内径を有する第2円環面に当接し、高圧シール81の外周面は中空部78の内周面に圧接する。
【0033】
軸受シール82は、プラスチックからなり、円筒状に形成される。軸受シール82は、プランジャ13の径と同じ内径と、後領域78cの径と同じ外径を有する。軸受シール82は、後端部75側から中空部78に挿入されて、後領域78cの前端(+X側)に固定される。このとき、軸受シール82の外周面は中空部78の内周面に当接する。軸受83は、ジルコニアなどのセラミック又はプラスチックからなり、略円筒状に形成される。軸受83は、プランジャ13の径と同じ内径と、後領域78cの径と同じ外径を有する。軸受83は、後端部75側から中空部78に挿入されて、後領域78cの後端(−X側)に固定される。このとき、軸受83は軸受シール82に当接し、軸受83の外周面は中空部78の内周面に当接する。
【0034】
図2に示すように、固定具90は、ステンレスからなり、キャップ状に形成される。固定具90は、雌ねじ部91が形成された内周面を有する。シリンダ補助管70をシリンダ本体60に挿入して、固定具90の雌ねじ部91をシリンダ本体60の雄ねじ部67に螺合することにより、シリンダ補助管70はシリンダ本体60に固定される。固定具90の閉塞端92は、内方に窪んだ円環部92aを有する。円環部92aは、プランジャ13の径より僅かに大きい内径を有する。
【0035】
プランジャ13は、ピストン軸8に一体に連結されて、クランク軸2の回転に伴ってシリンダ部50内を往復運動する。固定具90を用いてシリンダ補助管70をシリンダ本体60に固定した構成において、プランジャ13は、中空部78の中領域78bに位置する左死点(−X側)Aまで、固定具90の円環部92aを介してシリンダ補助管70の中空部78に導入される(図9参照)。このとき、プランジャ13は、軸受シール82と軸受83の内周面に当接する。この状態で、プランジャ13が左死点Aから右死点(+X側)Cに移動する行程(吐出行程)において、プランジャ13は、軸受シール82と軸受83の内周面上を摺動しながら、高圧シール受部80を介して高圧シール81の内側円環81aに接触する。プランジャ13は、シリンダ部50に更に押し込まれると、内側円環81aを押しのけて高圧シール80内を通過する(図10参照)。プランジャ13が高圧シール80の第2面に到達する位置は、シリンダ部50における吸液工程Iから加圧吐出工程Dに(又は加圧吐出工程Dから吸液工程Iに)変化する変化点Bに対応する。プランジャ13は、シリンダ部50に更に押し込まれると、高圧シール受部80、高圧シール81の内側円環81a、軸受シール82、軸受83の内周面を摺動しながら、中空部61の前領域(加圧室130)に位置する右死点Cに到達する(図7参照)。
【0036】
この状態で、プランジャ13が右死点Cから左死点Aに移動する行程(吸入行程)において、プランジャ13は、高圧シール受部80、高圧シール81の内側円環81a、軸受シール82、軸受83の内周面を摺動しながら、シリンダ本体60の中空部61の前領域(加圧室130)から退却して変化点Bに到達する(図8参照)。プランジャ13は、シリンダ部50から更に引き出されると、軸受シール82と軸受83の内周面を摺動しながら、高圧シール受部80と高圧シール81から退却して左死点Aに到達する。プランジャ13が高圧シール81から退却すると、内側円環81aは元の形状に戻り、プランジャ13の移動路内に突出する。ここで、吸液工程Iは、原料流体が投入槽10からプランジャ部50に吸入される工程であり、吸入行程後半におけるプランジャ13の変化点Bから左死点Aへの移動行程に対応する。また、加圧吐出工程Dは、原料流体が高圧チューブ120を介してプランジャ部50から微粒化ノズル部100に加圧吐出される工程であり、吐出行程後半におけるプランジャ13の変化点Bから右死点Cへの移動行程に対応する。なお、プランジャ13の移動に伴い、原料流体が、シリンダ部50と高圧チューブ120を介して、投入槽10から微粒化ノズル部100に移動して、微粒化ノズル部100で原料流体に含まれる物質が微粒化される様子は、後に詳細に説明する。
【0037】
図6に示すように、微粒化ノズル部100は、ケース101、第1サポート金具102、第2サポート金具103、第1ノズルホルダ104、第2ノズルホルダ105、オリフィス106、4本のノックピン107(図には2本のノックピンのみ示している)、固定用袋ナット108を有する。ケース101は、ステンレスからなり、中空部101a、段差部101b、雄ねじ部101c、雌ねじ部101d、4つの挿入孔101e(図には2つの挿入孔のみ示している)を有する。中空部101aは、ケース101を貫通して、ケース101のシリンダ部側(+Z側)の第1径と、第1径より大きいケース101の貯蔵槽側(−Z側)の第2径を有する。段差部101bは、中空部101aの第1径が第2径に変化する箇所に形成されている。雄ねじ部101cは、ケース101のシリンダ部側(+Z側)の端部に形成される。雌ねじ部101dは、ケース101の貯蔵槽側(−Z側)の中空部101aの内周面に形成される。4つの挿入孔101eは、ケース101のシリンダ部側(+Z側)の端部に形成される。
【0038】
第1サポート金具102は、ステンレスからなり、雌ねじ部102a、中空部102b、4つの挿入孔102cを有する。雌ねじ部102aは、第1サポート金具102のシリンダ部側(+Z側)の端部に形成されて、高圧チューブ120にカラー133を介して固定されたナット132の雄ねじ部132aに螺合される。また、雌ねじ部102aは、雌ねじ部102aと中空部102bを連通する開口102a1を底面中央部に有し、かつ、底面中央部から底面周縁部に向けて傾斜するバンク102a2を有する。バンク部102a2は、例えば、約60°の頂角を有する。中空部102bは、第1サポート金具102を貫通して、高圧チューブ120の内径とほぼ同じ径(例えば、2.2mm)を有する。4つの挿入孔102cは、第1サポート金具102のシリンダ部側(+Z側)の端部下面に形成される。第1サポート金具102の貯蔵槽側(−Z側)の端面は、先端に向かうにつれて先細りするテーパー状に形成される。
【0039】
第2サポート金具103は、ステンレスからなり、雄ねじ部103a、中空部103b、螺合孔103cを有する。雄ねじ部103aは、第2サポート金具103のシリンダ部側(+Z側)の端部に形成される。中空部103bは、第2サポート金具103を貫通して、第1サポート金具102の中空部102b、第1ノズルホルダ104の細孔104a、第2ノズルホルダ105の細孔105a、オリフィス106の噴射口106aの径より極めて大きい径を有する。螺合孔103cは、第2サポート金具103の貯蔵槽側(−Z側)の端部に形成される。管21は、螺合孔103cに螺合されて第2サポート金具103に固定される。第2サポート金具103のシリンダ部側(+Z側)の端部は突出しており、その端面は先端に向かうにつれて先細りするテーパー状に形成される。
【0040】
第1ノズルホルダ104は、ステンレスよりも硬い素材(例えば、タングステンカーバイドなどの超硬合金)からなり、細孔104aを有する。細孔104aは、第1ノズルホルダ104を貫通して、第1サポート金具102の中空部102bの径の約2倍の径(例えば、4.0mm)を有する。第1ノズルホルダ104のシリンダ部側(+Z側)の端面は、第1サポート金具102の貯蔵槽側(−Z側)の端面よりも僅かに広角のテーパ角を有する。
【0041】
同様に、第2ノズルホルダ105は、ステンレスよりも硬い素材(例えば、タングステンカーバイドなどの超硬合金)からなり、細孔105aを有する。細孔105aは、第2ノズルホルダ105を貫通して、第1サポート金具101の中空部101aの径の約2倍の径(例えば、4.0mm)を有する。第2ノズルホルダ105の貯蔵槽側(−Z側)の端面は、第2サポート金具103のシリンダ部側(+Z側)の端面よりも僅かに広角のテーパ角を有する。
【0042】
オリフィス106は、超硬質素材(例えば、ダイヤモンド等)からなり、2つの噴射口106aを有する。各噴射口106aは、第1ノズルホルダ104の細孔104aと第2ノズルホルダ105の細孔105aの半径より小さい径(例えば、0.13mm)を有する。4本のノックピン107は、ケース101の4つの挿入孔101eと第1サポート金具102の4つの挿入孔102cに挿入されて、第1サポート金具102をケース101に取り付けるときに、ケース101に対する第1サポート金具102の回り止めに使用される。固定用袋ナット108は、ステンレスからなり、キャップ状に形成される。固定用袋ナット108は、雌ねじ部108aが形成された内周面と、開口108bが形成された端部を有する。
【0043】
次に、微粒化ノズル部100の組立方法を説明する。オリフィス106が、所定の位置に設定されるように、ケース101の中空部101aに挿入される。次に、第1ノズルホルダ104が、オリフィス106に接触するまで、第1径を有する端部から中空部101aに挿入され、かつ、第2ノズルホルダ105が、オリフィス106に接触するまで、第2径を有する端部から中空部101aに挿入される。そして、4本のノックピン107をケース101の4つの挿入孔101eと第1サポート金具102の4つの挿入孔102cに挿入しながら、第1サポート金具102がケース101の中空部101aに挿入される。最後に、第1サポート金具102を固定用袋ナット108の開口108bに貫通させて、ケース101の雄ねじ部101cを固定用袋ナット108の雌ねじ部108aに螺合することにより、第1サポート金具102がケース101に固定され、かつ、第2サポート金具103の雄ねじ部103aをケース101の雌ねじ部101dに螺合しながら、第2サポート金具103をケース101の中空部101aに挿入することにより、第2サポート金具103がケース101に固定される。
【0044】
このとき、第1サポート金具102と第1ノズルホルダ104の接触面には、テーパシール構造が形成されているので、第1ノズルホルダ104の先端角部が第1サポート金具102の端面に密着して、隙間が確実に塞がれて、密着性が維持される。同様に、第2サポート金具103と第2ノズルホルダ105の接触面には、テーパシール構造が形成されているので、第2ノズルホルダ105の先端角部が第2サポート金具103の端面に密着して、隙間が確実に塞がれて、密着性が維持される。
【0045】
このような構成により、原料流体が、高圧チューブ120から微粒化ノズル部100に導入されて、第1サポート金具102の中空部102b、第1ノズルホルダ104の細孔104a、オリフィス106の噴射口106aを通過すると、流速が上昇して、噴射口106aから超高速流体として噴射される。第2サポート金具103の中空部103bの内部は大気圧であるため、原料流体が第2ノズルホルダ105の細孔105aを介して中空部103b内に達すると、噴射口106aから噴射された超高速流体に加わる圧力は瞬時に降下する。このとき、中空部103b内が原料流体で満たされていると、複数の超高速流体によるジェット流と旋回流が発生する。また、超高速流体が瞬時に減圧されるので、中空部103b内でキャビテーション現象が生じる。したがって、中空部103b内では、複数の超高速流により誘起されたキャビテーションと旋回流との相互作用によって大きなせん断力が生じて、これにより、原料流体に含まれる物質が微粒化される。
【0046】
図2に示すように、高圧チューブ120は、ステンレスからなり、第1直線部121、第2直線部122、第1直線部121を第2直線部122に接続する湾曲部123を有する。第1直線部121、第2直線部122、湾曲部123は一体に接続されている。高圧チューブ120は、例えば、2.1mmの内径と6.35mmの外径を有する。高圧チューブ120は、ナット130とカラー131を用いて、テーパシール構造によりシリンダ部50に固定され、ナット132とカラー133を用いて、テーパシール構造により微粒化ノズル部100に固定される。
【0047】
第1直線部121は、雄ねじ部121bとバンク部121cを外周面に形成した端部121aを有する。バンク部121cは、例えば、約58°〜59°の頂角を有する。バンク部121cがナット130から突出するように、第1直線部121をナット130に挿入した状態で、カラー131を一方の方向に回しながらナット130に導入すると、第1直線部121の雄ねじ部121bがカラー131の内周面に形成された雌ねじ部131aに螺合される。この状態で、ナット130を他方の方向に回しながらシリンダ本体60の雌ねじ部63に導入すると、雌ねじ部63がナット130の外周面に形成された雄ねじ部130aに螺合される。このように、第1直線部121をシリンダ本体60に嵌合すると、第1直線部121のバンク部121cと開口端121dの境目に形成された角部が、雌ねじ部63の底面中央部に密着して、隙間が確実に塞がれて、密閉性が維持される。
【0048】
同様に、第2直線部122は、雄ねじ部122bとバンク部122cを外周面に形成した端部122aを有する。バンク部122cは、例えば、約58°〜59°の頂角を有する。バンク部122cがナット132から突出するように、第2直線部122をナット132に挿入した状態で、カラー133を一方の方向に回しながらナット132に導入すると、第2直線部122の雄ねじ部122bがカラー133の内周面に形成された雌ねじ部133aに螺合される。この状態で、ナット132を他方の方向に回しながら第1サポート金具102の雌ねじ部102aに導入すると、雌ねじ部102aがナット132の外周面に形成された雄ねじ部132aに螺合される。このように、第2直線部122を微粒化ノズル部100に嵌合すると、第2直線部122のバンク部122cと開口端122dの境目に形成された角部が、雌ねじ部102aの底面中央部に密着して、隙間が確実に塞がれて、密閉性が維持される。
【0049】
次に、図7乃至10を参照して、プランジャ13の移動に伴い、原料流体が、シリンダ部50と高圧チューブ120を介して、高圧の状態で、投入槽10から微粒化ノズル部100に移動して、微粒化ノズル部100で原料流体に含まれる物質が微粒化される様子を詳細に説明する。
【0050】
図7に示すように、プランジャ13が右死点Cから−X方向に移動して変化点Bに達する行程(吸入行程の前半)において、シリンダ部50内に取り込まれた原料流体の大部分は、プランジャ13によりシリンダ部50から高圧で吐出されて、高圧チューブ120を介して微粒化ノズル部100に移動しているため、シリンダ本体60の中空部61の前領域の内周面とシリンダ補助管70で囲まれた空間(加圧室)130には、原料流体はほとんど残っていない。このとき、高圧チューブ120内には、僅かに原料流体が残っているため、加圧室130は密閉されて真空状態になっている。例えば、内径2.1mmの高圧チューブ120を使用した場合、約0.75ccの原料流体が高圧チューブ120内に残っている。プランジャ13は、原料流体に150MPa程度の高圧を付与可能な駆動力で引かれているため、加圧室130が真空状態であっても、加圧室130から容易に退却できる。また、高圧チューブ120から微粒化ノズル部100にわたって連続して残っている原料流体は、通常、150MPa程度の高い圧力でシリンダ部50から吐出されており、プランジャ13が後退する工程では、高圧チューブ120から微粒化ノズル部100にわたって連続して残っている原料流体は、差圧が−0.1MPa程度である真空圧力で引かれるため、シリンダ部50に戻る量は僅かである。このように、吸入行程の前半では、プランジャ13は、加圧室130内の真空状態を保ちながら、加圧室130から退却する。
【0051】
図8に示すように、プランジャ13が変化点Bから−X方向に移動して左死点Aに達する行程(吸入行程の後半、吸液工程I)において、プランジャ13が、高圧シール80を通過する時点では加圧室130はほぼ真空状態であるが、高圧シール81を通過すると、加圧室130は、シリンダ補助管70の中空部78の前領域78aと中領域78bを介して吸液通路84と連通する。それゆえ、原料流体は、加圧室130の真空状態に引き込まれて、投入槽10から加圧室130内に取り込まれて、加圧室130は原料流体により満たされる。
【0052】
図9に示すように、プランジャ13が左死点Aから+X方向に移動して変化点Bに達する行程(吐出行程の前半)において、プランジャ13が、高圧シール80を通過するまでは、プランジャ13に占められる体積の増加によって、余分な原料流体が投入槽側に押し戻される。この逆流により、投入槽10内で比重の大きい物質が攪拌されるため、投入槽10内に攪拌器を設置する必要がなくなる。この逆流には、プランジャ13のストローク全体のうち、僅かなストロークを使用しているので、逆流する原料流体の量は僅かであり、吐出効率に与える影響は小さい。そして、プランジャ13が変化点Bに達すると、加圧室130はプランジャ13により吸液通路84と遮断されて、原料流体は加圧室130に流れない。
【0053】
図10に示すように、プランジャ13が変化点Bから+X方向に移動して右死点Cに達する行程(吐出行程の後半、加圧吐出工程D)において、シリンダ部50内に取り込まれた原料流体は、プランジャ13により加圧室130で加圧されて、第1連通孔64と高圧チューブ120を介して、加圧室130から微粒化ノズル部100に吐出される。原料流体が、微粒化ノズル部100に吐出されて、超高速流体としてオリフィス106の噴射口106aから噴射されると、中空部103bにおいて、複数の超高速流により誘起されたキャビテーションと旋回流との相互作用によって大きなせん断力が生じる。これにより、原料流体に含まれる物質は微粒化される。また、第1連通孔64が加圧室130の上部(+Z側)に設置されているので、原料流体とともに加圧室130内に取り込まれた空気の泡を加圧室130の外部に排出することができ、プランジャ13の前進後退時に空気の圧縮、膨張による加圧不良という現象を防止することができる。
【0054】
このように、微粒化装置30は吸入用の逆止弁と吐出用の逆止弁をシリンダ部50に設けていないので、構成部材が簡略化され、かつ、逆止弁が吸入孔(又は吐出孔)を完全に閉塞した状態(又は完全に閉塞しない状態)で動作しなくなるという事態が発生しない利点がある。また、シリンダ部50と微粒化ノズル部100は容易に分解可能である。それゆえ、微粒化装置30は、製造コストを低減し、かつ、洗浄をし易く、微粒化処理の効率を向上させられる。このように、使用者は、微粒化装置のメンテナンスをし易いので、微粒化装置のメンテナンスを行う際に、従来行われていた専門家によるメンテナンスの必要が最低限にでき、微粒化装置の維持費を低減できる。
【0055】
また、微粒化装置30において、加圧室130の密閉/開放に寄与する高圧シール81は、シリンダ本体60から容易に取り出せるシリンダ補助管70に収納されているので、高圧シール81をシリンダ本体60の中空部61の内周面に直接設ける場合と比較して、使用者は高圧シール81の取り替え作業及び高圧シール81を取り外した洗浄作業を容易に行える。つまり、一連の微粒化処理を行っている際に原料を変える段取り変えの際に、保守部品としてシリンダ補助管20を予備として持ち、シリンダ補助管20を交換して使用すれば、洗浄作業時間を短くでき、作業段取り変えの時間が短くなり、効率良く作業ができる。
【0056】
なお、特許第4121499号に開示されているように、投入槽とシリンダ部を連通する連通孔の開口面をプランジャの側面で直接閉塞する微粒化装置が知られているが、この従来の微粒化装置と比較して、微粒化装置30は、プランジャ13の側面が第2連通孔66の開口端部に引っかかり、プランジャ13の側面に設けられたパッキン等が破壊されるのを防ぐことができるという利点を有する。
【0057】
次に、微粒化装置30の変形例を説明する。
【0058】
原料流体に含まれる物質は、固体に限定されず液体であってもよい。物質として液体と液体を選択した場合、微粒化装置では乳化が行われる。なお、物質として固体と液体を選択した場合、微粒化装置では分散、解砕、破砕、又は混練が行われる。
【0059】
駆動装置1として、クランク軸の回転によるプランジャ式ポンプの代わりに、空圧駆動によるプランジャ式ポンプ、油圧駆動によるプランジャ式ポンプ、又はモータ直動によるプランジャポンプを使用してもよい。
【0060】
プランジャ13の数は3つに限定されず、処理目的や設置場所に応じて、プランジャの数は1つ、2つ、又は4つ以上であってもよい。
【0061】
原料流体に加圧する圧力は150MPaに限定されず、処理目的に応じて、例えば、数MPa〜数百MPaまで適宜変更可能である。
【0062】
シリンダ本体60の第1連通孔64の径、高圧チューブ120の内径、第1サポート金具102の中空部102bの径、第1ノズルホルダ104の細孔104aの径、オフィス106の噴射口106aの径、第2ノズルホルダ105の細孔105aの径、第2サポート金具103の中空部103bの径は、処理目的に応じて適宜変更可能である。
【0063】
オリフィス106の噴射口106aの数は2つに限定されず、処理目的に応じて適宜変更可能である。
【0064】
高圧シール81は、シリンダ本体60から容易に取り出せるのであれば、シリンダ補助管70を省略してシリンダ本体60に直接設けてもよい。
【0065】
上述のように噴射口106aのノズル特性に応じて噴射口106aから噴射した原料流体を、中空部103bで瞬時に減圧することにより誘起されるキャビテーションと高速旋回流の相互作用により、原料流体に含まれる物質を微粒化する微粒化ノズル部100の代わりに、内部に設けられた穴部のノズル特性に応じて超高圧の原料流体を高速流に変換して、その高速流の流路を屈曲させて、その屈曲部に高速流を衝突させることにより、原料流体に含まれる物質を微粒化する微粒化ノズル部を使用してもよい。また、噴射口のノズル特性に応じて噴射口から噴射した原料流体を、中空部で瞬時に減圧させて、原料流体中にキャビテーションと高速旋回流を誘起させるとともに、その中空部を屈曲させて、キャビテーションと高速旋回流を誘起された原料流体を屈曲部に衝突させる微粒化ノズル部を使用してもよい。
【0066】
その他にも、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲において、微粒化装置を適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は以下の産業分野で利用可能である。
【0068】
・食品産業:乳脂肪の微粒化(乳化)、香料の乳化・分散、高カロリー乳剤の乳化、細胞破砕、滅菌等
・医薬品産業:細胞破砕、菌類からの有用成分の抽出、乳化製剤の調製等
・化粧品産業:乳液の調製、顔料の分散、乳化剤無添加乳液の調製、リポソームの調製
・化学品産業:乳化重合製品の製造、トナーの分散、水性塗料の調製、有機・無機粉体の湿式分散及び破砕
・電子部品産業:有機・無機粉体の湿式分散及び破砕
・冶金産業:無機粉体の湿式分散及び破砕
・環境産業:水処理、汚泥処理
・電池産業:有機・無機粉体の湿式分散及び破砕
以上のように、本発明は様々な産業分野での用途が考えられる有益な発明である。
【符号の説明】
【0069】
10 投入槽
11 貯蔵層
13 プランジャ
20 管
21 管
50 シリンダ部
60 シリンダ本体
61 中空部
62 段差部
64 第1連通孔
66 第2連通孔
70 シリンダ補助管
71 前端部
73 バンク部
74 円筒部
75 後端部
78 中空部
79 吸液孔
81 高圧シール
84 吸液通路
90 固定具
100 微粒化ノズル部
101 ケース101、
102 第1サポート金具
103 第2サポート金具
104 第1ノズルホルダ
105 第2ノズルホルダ
106 オリフィス
108 固定用袋ナット108
120 高圧チューブ
130 加圧室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1中空部と、前記第1中空部に開口する第1開口部と、前記第1中空部の内方に突出するように前記第1中空部に固定される高圧シールと、を有するシリンダ補助管と、
前記シリンダ補助管を収納し、かつ、開口端と、閉塞端と、前記シリンダ補助管と前記閉塞端の間に形成されて前記第1中空部に連通する加圧室と、を有する第2中空部と、前記第2中空部に開口する第2開口部と、前記第2中空部にて前記第1開口部と前記第2開口部を連通する吸液通路と、を有するシリンダ本体と、
前記加圧室に連通する微粒化ノズルと、
を備え、
プランジャは、前記開口端から前記シリンダ本体に導入されて、前記第1中空部と前記加圧室内を往復運動し、
原料流体が前記吸液通路と前記第1中空部を介して外部から前記加圧室内に取り込まれた状態において、前記プランジャが前記高圧シールを押し退けながら前記加圧室内に送り込まれると、前記加圧室が前記第1中空部と遮断され、これにより、原料流体は前記加圧室内で加圧されて、前記微粒化ノズルに吐出され、
前記加圧吐出された原料流体に含まれる物質は、前記微粒化ノズル内で微粒化され、
原料流体が前記加圧室から吐出された状態において、前記加圧室は前記加圧吐出された原料流体の一部により前記微粒化ノズルと遮断されて真空状態を維持し、前記プランジャが前記高圧シールから離れて前記第1中空部内に引き込まれると、原料流体は前記吸液通路と前記第1中空部を介して外部から前記加圧室内に取り込まれることを特徴とする微粒化装置。
【請求項2】
第1中空部と、前記第1中空部に開口する第1開口部と、前記第1中空部の内方に突出するように前記第1中空部に固定される高圧シールと、を有するシリンダ補助管と、
前記シリンダ補助管を収納し、かつ、開口端と、閉塞端と、前記シリンダ補助管と前記閉塞端の間に形成されて前記第1中空部に連通する加圧室と、を有する第2中空部と、前記第2中空部に開口する第2開口部と、前記第2中空部にて前記第1開口部と前記第2開口部を連通する吸液通路と、を有するシリンダ本体と、
前記加圧室に連通する微粒化ノズルと、
前記第2開口部を介して前記第2中空部に連通する、原料流体を前記シリンダ本体に投入するための投入槽と、
前記微粒化ノズルに連通する、微粒化処理された原料流体を貯蔵するための貯蔵槽と、
前開口端から前記シリンダ本体に導入されて、前記第1中空部と前記加圧室内を往復運動するプランジャと、
を備え、
原料流体が前記吸液通路と前記第1中空部を介して前記投入槽から前記加圧室内に取り込まれた状態において、前記プランジャが前記高圧シールを押し退けながら前記加圧室内に送り込まれると、前記加圧室が前記第1中空部と遮断され、これにより、原料流体は前記加圧室内で加圧されて、前記微粒化ノズルに吐出され、
前記加圧吐出された原料流体に含まれる物質は、前記微粒化ノズル内で微粒化されて、前記貯蔵槽に貯蔵され、
原料流体が前記加圧室から吐出された状態において、前記加圧室は前記加圧吐出された原料流体の一部により前記微粒化ノズルと遮断されて真空状態を維持し、前記プランジャが前記高圧シールから離れて前記第1中空部内に引き込まれると、原料流体は前記吸液通路と前記第1中空部を介して前記投入槽から前記加圧室内に取り込まれることを特徴とする微粒化処理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−279904(P2010−279904A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135503(P2009−135503)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(502313325)
【Fターム(参考)】