微粒子を分析するためのシステムおよび方法
微粒子を分析するためのシステムおよび方法が提供される。流線中において実質的に直線上に順序付けされる複数の微粒子を有する液体を、外部から制御して、第一および第二の方向のフローを提供することができ、その場合、一般に、第一の方向は第二の方向とは反対である。液体が第一のフロー方向に流れる間に計測区域またはその近くで複数の微粒子のなかから標的微粒子を計測することができる。フロー方向を反転させ、かつ第二の方向に流れる間に計測区域で計測することができる。微粒子は、少なくとも一つのサイクル中、直線上の同一の順序を実質的に保持しており、サイクルは、第一の方向への移動、次いで第二の方向への移動によって規定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35USC§119(e)の下、全内容が参照により本明細書に組み入れられる2007年4月12日出願の米国特許出願第60911361号の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、微粒子を分析するためのシステムおよび方法に関し、特に、フローストリーム中の微粒子を分析するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
一部の科学機器は、小さな微粒子を高い微粒子処理率で分析するように構成されている。フローサイトメトリーは、移動する流体のストリーム中に懸濁した微視的微粒子を計数し、検査し、選別するために使用することができる分析ツールの一例である。微粒子は生細胞を含んでもよく、したがって、方法は、生物学、病理学、免疫学および医学を含む生命科学の多くの分野で使用される。最新のサイトメータの処理能力は、微粒子の分析を1秒あたり何千をも超えて行うものであり得、したがって、細胞認識、成長または他の性質を伴う複雑な実験を行う際に速やかな結果を提供する。
【発明の概要】
【0004】
概要
一般に、一つの態様にしたがって、微粒子分析器(PA)が記載される。PAは、一つまたは複数の微粒子を順方向および逆方向の両フロー方向で計測することを可能にする。PAは、いくつかの態様において、長期間、微粒子の順序を維持する。一定量の流体内で、たとえば流体を毛管内で前後に振動させることにより、微粒子の流線(「プラグ」)を形成させることができ、そのプラグを、分析のために計測区域に通して振動させるように制御することができる。
【0005】
一つの一般的な局面において、方法が提供される。方法の一つの態様において、方法は、装置を提供することを含む。装置は、複数の微粒子を中に有する液体を含み、微粒子は、液体の流線中において実質的に直線上に順序付けされ、液体は、第一の方向のフローおよび第一の方向とは実質的に反対である第二の方向のフローを提供するように外部から制御可能である。方法はさらに、液体を第一のフロー方向に流す間に、計測区域またはその近くで複数の微粒子のなかから一つまたは複数の標的微粒子を計測することを含む。方法はまた、液体を第二のフロー方向に流す間に、計測区域またはその近くで複数の微粒子のなかから一つまたは複数の標的微粒子を計測することを含む。微粒子は、少なくとも一つのサイクル中に計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持しており、そのサイクルは、第一の方向への移動、次いで第二の方向への移動によって規定される。
【0006】
本明細書で使用する、一つまたは複数の標的微粒子を「計測する」とは、そのような微粒子に関連する一つまたは複数の定性的(たとえば標識の存在または不在)または定量的局面または特徴を検出または決定することを意味する。
【0007】
方法の一つの態様において、微粒子は、二つ以上のサイクル中、直線上の同一の順序を実質的に保持している。一つの実施態様において、サイクルの数は少なくとも5サイクルである。代替実施態様において、サイクルの数は少なくとも10サイクルである。別の実施態様において、サイクルの数は少なくとも100サイクルである。さらに別の実施態様において、サイクルの数は少なくとも1000サイクルである。
【0008】
一つの態様は、各サイクル中に一つまたは複数の微粒子が計測されることを提供する。
【0009】
代替態様において、微粒子は生物学的細胞であり、いくつかの場合において、細胞は酵母細胞である。
【0010】
一つの態様において、計測区域はレーザまたはカメラの焦点または焦点面である。
【0011】
一つの態様において、計測は、一つまたは複数の標的微粒子からの散乱光を計測することを含む。代替態様において、計測は、一つまたは複数の標的微粒子の写真画像を捕捉することを含む。
【0012】
様々な実施態様において、方法は、第一のフロー方向で多数の微粒子を計測したのち、フロー方向を反転させ、逆の順序で多数の微粒子を計測することをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施態様において、微粒子の一つまたは複数は標識されている。例示的な実施態様において、標識は蛍光標識である。
【0014】
一つの態様において、装置は、計測区域より生じるエネルギーを計測区域の遠位にある検出器へと導くように構成された毛管導波管を含み、液体が毛管導波管内に閉じ込められる。例示的な毛管導波管は非晶質フルオロポリマーで構成されている。
【0015】
一つの態様において、エネルギーは電磁エネルギーまたは音響エネルギーである。
【0016】
別の態様において、装置は、エネルギーを毛管導波管の第一端から毛管導波管の第二端まで反射するように構成された反射光学部品をさらに含む。一つの実施態様において、装置は、エネルギーを毛管導波管内から毛管導波管の外にある媒体へと伝達するカプラをさらに含む。一つの態様において、媒体は、エネルギーをカプラから検出器へと誘導する光ファイバであり、光ファイバは検出器と光学的に連絡している。
【0017】
いくつかの態様は、微粒子を選択的に加えるか、または複数の微粒子のなかから微粒子を選択的に除去することをさらに含む。一つの代替態様において、微粒子を加える、または除去することは、アクチュエータによって制御可能でありかつ流線と斜めに合流するクロスフロー流体を提供することを含む。一つの態様において、クロスフロー流体は、一つまたは複数の標的微粒子と同じまたは異なる微粒子を含む。
【0018】
代替態様において、方法は、複数の微粒子の環境条件を制御することをさらに含む。環境条件は、一つの態様にしたがって、温度、pH、塩度、光条件、磁場への曝露、医薬化合物、利用可能な酸素、発酵性糖および非発酵性糖、脂質、またはポリペプチドへの曝露のうちの一つまたは複数である。
【0019】
一つの態様において、方法は、第一の方向および第二の方向における標的微粒子の計測から細胞集団平衡方程式を決定することをさらに含み、微粒子は細胞である。
【0020】
一つの態様において、方法は、第一の方向および第二の方向における標的微粒子の計測から細胞分配関数を決定することをさらに含み、微粒子は細胞である。
【0021】
代替態様は、計測することが、液体のフロー軸に対して直交する伝搬軸を有する光ビームを提供すること、計測信号を受けるように適合された検出器を提供すること、および光ビームと標的微粒子または標的微粒子の表面に付着した部分との間の相互作用から生じる計測信号を検出することを含むことを提供する。態様の一つの変形において、光ビームはレーザから出力される。別の変形において、検出器は電荷結合素子またはアレイであり、別の変形において、検出器はカメラである。特定の態様は、計測信号が、減衰、波長シフト、コリメーション、またはモード構造のうちの一つまたはすべてを含むことを提供する。
【0022】
一つの態様で、装置は、流体流を提供するように適合された毛管を含み、液体は毛管内に含まれる。様々な実施態様において、毛管は約0.010mm〜約1cmの内径を有する。
【0023】
一つまたは複数の態様の様々な実施態様において、第一および第二の方向にフローを提供するための外部からの制御性は、ポンプを提供し、毛管の出力端と入口端との間に振動性圧力差を提供するようにポンプを制御することによって達成される。ポンプは入口および出口を含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されている。入口は毛管の入力端に接続され、出口は毛管の出力端に接続されている。態様の一つの変形において、ポンプは容積型ポンプ(positive displacement pump)である。
【0024】
一つの態様において、方法はサイトメトリー法である。
【0025】
いくつかの実施態様において、毛管はガス透過性毛管であり、流体の状態は、ガスをガス透過性毛管に通して流体に導入することによって変更可能である。いくつかの場合において、ガスは、酸素、二酸化炭素、および窒素のうちの一つまたは複数である。
【0026】
いくつかの実施態様において、装置は、複数の微粒子を毛管内に保持しながら緩衝溶液を毛管に導入することを可能にする一つまたは複数の個別に制御可能な緩衝液ポンプをさらに含む。
【0027】
いくつかの態様は、装置が、多孔性毛管と毛管内の流体との間で溶質交換を可能にするように構成された多孔性毛管をさらに含むことを提供する。
【0028】
一般に、一つの局面にしたがって、一つまたは複数の微粒子を分析するためのシステムが提供される。一つの態様において、システムは、流体流のために構成された管腔を有しかつ流体の屈折率よりも小さい屈折率を有する毛管であって、計測区域中の一つまたは複数の微粒子より散乱または放出するエネルギーを計測区域の遠位に位置する信号収集アセンブリへと誘導するように構成された毛管を含む。システムは、計測区域にエネルギーを付与するエネルギー源、および一つまたは複数の微粒子を計測区域にかけて前後に移動させるために毛管の端部に選択可能な圧力を加えるように構成されたポンプシステムをさらに含む。
【0029】
システムの一つの変形において、エネルギーはレーザからの光エネルギーである。
【0030】
システムの一つの変形において、毛管は中空孔導波管である。
【0031】
さらに別の変形において、システムは、毛管に固着されたカプラをさらに含み、このカプラが、毛管からの流体流を、流体を毛管から離して流す管に提供し、かつエネルギーを、毛管からエネルギー導管へと伝達するようにする。いくつかの態様において、エネルギー導管は、光エネルギーをカプラから光検出器に伝達する光ファイバ導波管である。
【0032】
一般に、別の局面にしたがって、細胞を選別するための方法が提供される。一つの態様において、方法は、毛管を提供することを含み、その毛管は、複数の細胞を含む液体をその中に含み、細胞は、液体の流線中において実質的に順序付けされ、液体は、第一の方向のフローを毛管に沿っておよび第一の方向とは実質的に反対である第二の方向のフローを毛管に沿って提供するように外部から制御される。方法は、細胞が第一のフロー方向に流れる間に、計測区域またはその近くで複数の細胞のなかから一つまたは複数の標的細胞を計測することをさらに含む。方法は、細胞が第二のフロー方向に流れる間に、計測区域またはその近くで複数の細胞のなかから一つまたは複数の標的細胞を計測することをさらに含む。方法は、一つまたは複数の標的細胞を含む液体を選択可能な方向に選択可能に導くように構成されたフロースイッチを提供することをさらに含む。一つまたは複数の標的細胞は、第一のフロー方向のフローおよび第二のフロー方向のフロー中、毛管内で実質的に直線上に順序付けされたままである。
【0033】
いくつかの態様において、毛管は導波管毛管である。
【0034】
いくつかの態様において、計測区域はレーザまたはカメラの焦点または焦点面である。
【0035】
いくつかの態様において、計測は、標的細胞からの散乱光を検出することを含む。
【0036】
代替態様において、計測は、標的細胞の写真画像を捕捉することを含む。
【0037】
いくつかの場合において、方法は、多数の細胞が第一のフロー方向で順に計測されたのち、フロー方向を反転させたところで多数の細胞が逆の順序で計測されることを提供し、いくつかの場合において、複数の細胞のうちの一つまたは複数の細胞が、一つまたは複数の細胞に関連する標識によって特有に識別可能である。
【0038】
様々な実施態様において、標識は蛍光分子であり、いくつかの実施態様において、標識はラマン活性化合物であり、計測することは、標識のラマンスペクトルを計測することを含む。
【0039】
方法の一つの態様において、標的細胞を計測することは、液体のフロー軸に対して直交する伝搬軸を有する光ビームを提供すること、計測信号を受けるように適合された検出器を提供すること、および光ビームと標的細胞または標的細胞に付着した標識との間の相互作用から生じる計測信号を検出することを含む。
【0040】
いくつかの態様において、光ビームはレーザからの出力である。
【0041】
いくつかの態様において、検出器は電荷結合素子またはアレイである。
【0042】
一つの態様において、検出器はカメラである。
【0043】
一つの態様において、検出は、減衰、波長シフト、コリメーション、スペクトル性またはモード構造を計測する検出を含む。
【0044】
いくつかの場合において、計測信号を検出することは、標的細胞からの散乱光を検出することを含む。
【0045】
方法の様々な実施態様において、液体は、流体流を提供するように構成された毛管内に含まれる。いくつかの態様において、毛管は0.010mm〜1.0cmの内径を有する。
【0046】
いくつかの態様において、第一および第二の方向へフローを提供することは、ポンプを提供することによって達成される。ポンプは入口および出口を含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されている。さらに、方法は、入口を毛管の入力端に接続し、出口を毛管の出力端に接続すること、および毛管の出力端と入口端との間に振動性圧力差を提供するようにポンプを制御して、液体を実質的に反対の方向に流すことを含む。
【0047】
一つの態様において、ポンプは容積型ポンプである。
【0048】
一つの態様において、複数の細胞は、分光学的に検出可能な部分を細胞に付着させることによって区別される。いくつかの実施態様において、分光学的に検出可能な部分は、蛍光またはラマン活性分子、ポリペプチド、無機クラスタまたは結晶である。代替態様において、分光学的に検出可能な部分はナノ結晶である。
【0049】
いくつかの場合において、標的細胞は細胞サイズに基づいて区別可能であり、いくつかの態様において、方法はサイトメトリー法である。
【0050】
さらに別の一般的な局面において、システムが提供される。システムの一つの態様において、システムは、少なくとも二つの端部を有する毛管と、毛管内に含まれ、懸濁した微粒子をその流体流線中に含む流体と、選択可能な圧力を毛管の端部に加えるように構成されたポンプシステムと、流体内の計測区域で一つまたは複数の標的微粒子を検出するように構成された信号収集アセンブリとを含む。ポンプシステムは、一つまたは複数の標的微粒子を計測区域にかけて前後に移動させるように制御可能であり、信号収集アセンブリは、一つまたは複数の微粒子が計測区域にかけて前後に移動するときに一つまたは複数の標的微粒子からの信号を記録するように適合されており、微粒子は、前後移動中に計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持している。
【0051】
一つのシステム代替態様において、毛管は導波管毛管である。いくつかの場合において、毛管は0.010mm〜1.0cmの内径を有する。
【0052】
一つの態様において、ポンプシステムは容積型ポンプを含む。
【0053】
一つの態様において、信号収集アセンブリは電荷結合素子またはアレイを含む。代替態様において、信号収集アセンブリは、計測区域またはその近くで標的微粒子の画像を収集するように適合されたカメラを含む。一つの態様において、計測区域はレーザまたはカメラの焦点または焦点面である。
【0054】
一つの実施態様において、信号は、ビーム減衰、波長シフト、コリメーションまたはモード構造の一つまたはすべてを含む。別の実施態様において、信号は、標的微粒子からの散乱光を含む。
【0055】
代替態様において、システムは、サイトメトリーに適合されたシステムである。
【0056】
さらに別の一般的な局面において、細胞集団動態を特性決定するための方法が提供される。一つの態様において、方法は、毛管に含まれる液体を提供することを含み、液体は複数の生物学的細胞を含み、細胞は液体の流線中において実質的に順序付けされる。方法は、制御可能な圧力を毛管に提供して、液体を第一のフロー方向および第一のフロー方向とは実質的に反対である第二のフロー方向に流すことをさらに含む。方法は、第一のフロー方向に流れる間に、複数の生細胞のなかからの一つまたは複数の標的細胞の生理学的または形態学的特徴を計測区域で計測することをさらに含む。方法は、第二のフロー方向に流れる間に、複数の生細胞のなかからの一つまたは複数の標的細胞の生理学的または形態学的特徴を計測区域で計測することをさらに含む。方法は、一つまたは複数の標的細胞の計測された生理学的または形態学的特徴からのデータを使用して細胞集団動態を特性決定することをさらに含む。計測中、複数の生物学的細胞の直線上の順序は実質的に変化のないままである。
【0057】
一つの態様において、第一および第二の方向のフローを提供するように適合された圧力源を提供することは、ポンプを提供することを含む。ポンプは入口および出口を含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されている。入口は毛管の入力端に接続され、出口は毛管の出力端に接続されている。方法は、毛管の出力端と入口端との間に振動性圧力差を提供するようにポンプを制御して、液体を第一および第二のフロー方向に交互に流すことをさらに含む。
【0058】
いくつかの場合において、一つまたは複数の標的細胞の生理学的または形態学的特徴を計測することは、単一細胞成長速度関数または分裂速度関数を計測することを含む。
【0059】
一つの態様において、方法は、液体の特性を変化させることにより、細胞のための動的環境を提供することをさらに含む。様々な代替態様において、特性は、温度、pH、塩度、光条件、磁場への曝露、化合物、利用可能な酸素、発酵性糖および非発酵性糖、脂質、またはポリペプチドへの曝露のうちの一つまたは複数を含む。
【0060】
一つの態様において、方法はサイトメトリー法である。
【0061】
一般に、さらに別の局面にしたがって、細胞成長を評価するための方法が提供される。一つの態様において、方法は、生細胞を含む液体を提供することを含み、細胞はその液体の流線中において実質的に直線上に順序付けされ、液体は、第一のフロー方向および第一のフロー方向とは実質的に反対である第二のフロー方向のフローを提供するように外部から制御可能である。第一のフロー方向に流れる間に、液体内の一つまたは複数の標的細胞のサイズが計測区域で計測される。第二のフロー方向に流れる間に、液体内の一つまたは複数の標的細胞のサイズが計測区域で計測される。細胞は、少なくとも一つのサイクル中に計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持しており、サイクルは、第一の方向への移動、次いで第二の方向への移動によって規定される。
【0062】
方法の一つの実施態様において、液体は毛管に含まれる。
【0063】
一つの態様において、第一および第二の方向のフローを提供するように適合された圧力源を提供することは、ポンプを提供することを含む。ポンプは入口および出口を含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されている。方法は、入口を、液体を含む毛管の入力端に接続し、出口を毛管の出力端に接続すること、および毛管の出力端と入口端との間に振動性圧力差を提供するようにポンプを制御して、液体を第一の方向および第二の方向に交互に流すことをさらに含む。
【0064】
いくつかの場合において、計測区域はカメラまたはレーザの焦点または焦点面である。
【0065】
一つの態様において、計測区域はレーザの焦点または焦点面であり、一つまたは複数の標的細胞のサイズを計測することは、電荷結合素子アレイ上の計測区域からの散乱放射線のパターンを検出すること、およびパターンに基づいて一つまたは複数の標的細胞のサイズを計算することを含む。
【0066】
一つの態様において、方法は、液体の特性を変化させることにより、生細胞のための動的環境を提供することをさらに含む。いくつかの場合において、特性は、温度、pH、塩度、光条件、磁場への曝露、化合物、利用可能な酸素、発酵性糖および非発酵性糖、脂質、またはポリペプチドへの曝露のうちの一つまたは複数を含む。
【0067】
方法の一つの態様において、方法はサイトメトリー法である。
【0068】
さらに別の一般的な局面において、化合物に対する細胞の応答を評価するための方法が提供される。一つの態様において、方法は、液体流線中において実質的に順序付けされる複数の細胞を含む液体を提供すること、液体内に化合物を提供すること、液体が第一のフロー方向に流れる間に液体内の標的細胞を計測すること、フロー方向を反転させ、かつ液体が第一のフロー方向とは反対の第二の方向に流れる間に標的細胞を計測すること、および計測に基づいて応答を評価することを含む。微粒子は、少なくとも一つのサイクル中に計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持しており、サイクルは、第一の方向への移動、次いで第二の方向への移動によって規定される。
【0069】
一つの態様において、化合物は医薬化合物である。
【0070】
一つの態様において、化合物は抗体または抗体断片である。
【0071】
いくつかの場合において、応答を評価することは、標的細胞への化合物の共有結合または非共有結合を検出することを含む。
【0072】
例示的な態様において、方法はサイトメトリー法である。
【0073】
さらに別の一般的な局面において、方法が提供される。方法は、一つの態様にしたがって、液体の流線中において実質的に連続的に順序付けされる複数の微粒子を中に有する、第一の方向および第二の反対方向のフローを提供するように外部から制御可能である液体を提供することと、第一のフロー方向に流れる間に複数の微粒子のなかから標的微粒子を計測区域またはその近くで計測することと、液体を第二の方向に流すことと、標的微粒子を計測区域またはその近くで計測することとを含む。微粒子の連続した順序は、計測のあいだ、第一および第二のフロー方向のフロー中、実質的に変化しないままである。標的微粒子は、第一のフロー方向で標的微粒子を計測し、フロー方向を反転させ、第一のフロー方向とは反対の方向で標的微粒子を計測するプロセスを繰り返すことにより、繰り返し計測される。標的微粒子は細胞であり、計測区域はレーザまたはカメラの焦点または焦点面である。計測は、標的微粒子からの散乱光を計測すること、または標的微粒子の写真画像を捕捉することを含む。微粒子の一つまたは複数は蛍光タグで標識されている。計測することは、液体のフロー軸に対して直交する伝搬軸を有する光ビームを提供することを含む。方法は、計測信号を受けるように適合された検出器を提供すること、および光ビームと標的微粒子または標的微粒子の表面に付着した部分との間の相互作用から生じる計測信号を検出することをさらに含む。光ビームはレーザから出力され、検出器は電荷結合素子もしくはアレイまたはカメラであり、計測信号は、減衰、波長シフト、コリメーションまたはモード構造の一つまたはすべてを含む。液体は、流体流を提供するように適合された毛管内に含まれ、毛管は直径0.010mm〜1.0cmである。第一および第二の方向にフローを提供するように外部から制御可能であることは、ポンプを提供することによって達成される。ポンプは入口および出口を含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されている。方法は、入口を毛管の入力端に接続し、出口を毛管の出力端に接続すること、および毛管の出力端と入口端との間に振動性圧力差を提供するようにポンプを制御することをさらに含み、ポンプは容積型ポンプである。この態様において、方法はサイトメトリー法である。
【0074】
現在のフローサイトメトリー技術に対する本システムおよび方法の利点は、個々の細胞または個々の細胞のセットをリアルタイムで追跡し、それらの生理学的状態の単一細胞成長、分裂および分配関数を抽出する能力を含む。さらなる利点は、とりわけ、大きな試料の場合の微粒子特性の計測における誤差の有意な減少、多数の標的種の細胞成長の「リアルタイム」モニタリング、実験をうまく実施するために必要な細胞集団サイズの減少および選別された細胞集団の純度の向上を含む。
【0075】
断りない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明に記載されるものと同様または均等である方法および材料を本発明の実施または試験で使用することができるが、適当な方法および材料を以下に説明する。加えて、材料、方法および例は、説明のためのものであり、限定的であることを意図したものではない。本明細書で挙げるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。矛盾がある場合、本明細書が、定義を含め優先する。
【0076】
本発明の一つまたは複数の態様の詳細を添付図面および以下の詳細な説明で述べる。他の特徴、目的および利点が、図面および詳細な説明ならびに特許請求の範囲から明らかになると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】一つの態様の微粒子分析器(PA)の概略図である。
【図1A】毛管導波管を含むPAの一つの態様である。
【図2】一つの態様のPAの簡略化部品、および時間に対する検出器応答のグラフを示す。
【図2A】左は、細胞順序を維持しながら新たな流体を毛管に導入するためのポンプシステムの例示的な態様であり、右は、一つの態様の、各ポンプ行程の最後での溶質濃度を示すシミュレーションである。
【図3】一つの態様の選別PAの概略図である。
【図4】時間に対する微粒子(酵母細胞)の面積を示すチャートである。
【図5】多孔性毛管を含むPAの一つの態様である。
【図6】3、6および10ミクロン微粒子の微粒子サイズに対する度数を示すチャートである。
【図7】事象数に対する微粒子サイズを示す三つ一組のチャートである。
【図8】検出された微粒子を反復およびポンプ始動からの時間の関数としてプロットする二つ一組のチャートである。
【図9】検出された微粒子を反復およびポンプ始動からの時間の関数としてプロットするチャートである。
【図9A】約70分間にわたって追跡した四つの酵母細胞のプラグのPAデータのチャートである。
【図9B】個別に識別可能な微粒子を計測する効果を示す仮想チャートを示す。
【図9C】一つのサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D603酵母細胞のPAデータを示す。
【図9D】一つのサッカロマイセス・セレビシエD603酵母細胞のPAデータを示す。
【図10】検出された微粒子に関して、反復に対するピーク高さをプロットするチャートである。
【図11】PA装置中で検出された前方散乱チャネル数に対する度数のヒストグラムである。
【図12】PA装置からの、時間に対する流体速度のプロットである。
【図13】15μm微粒子の追跡を時間的に示すプロットである。
【図14】PA装置中の二つのポンプ行程の間で微粒子が移動する相対距離の分布を示す。
【図15】PA装置からの微粒子混合物の追跡を示す。
【図16】毛管伸縮に関する微粒子速度プロファイルを示す。
【図17】PA装置における、時間に対する流体容量移動のプロットである。
【図18】PA装置からのCHO細胞の追跡を示すプロットである。
【図19】一つの態様の、分析された微粒子および流量の関数としての所望の作動範囲を示す。
【図20】毛管導波管PAを使用した側方散乱ピーク高さ信号の分布を示すチャートである。
【図21】テフロン毛管導波管を有するPAを使用して収集した6μm微粒子からの緑色蛍光の分布のチャートである。
【0078】
各図を通じて同種の参照記号が同種の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
例示的な態様の詳細な説明
微粒子分析器(PA)が記載される。一般に、PAは、液体のストリーム中の微粒子の懸濁液を二つ以上の方向に流すように構成された装置であってよく、フローの特定の領域において微粒子を分析するように構成された機器を含むことができる。一つの態様において、PAは、微粒子流の特定の挙動を利用することができる。特に、流線流体中で微粒子を順序付けすることができ、流体のフロー方向にかかわらず微粒子の順序が維持される二相流現象である、以下に説明するSegre-Silberberg効果をPAは利用することができる。いくつかの態様において、検出機器は、流線の近くに適切に配置されて、選択された微粒子または微粒子群(一般には微粒子の「プラグ」という)の計測を可能にする。
【0080】
一般に、PAは、微粒子を第一の方向で計測区域に通して流し、流体のフロー方向を反転させ、微粒子を第二の方向で計測区域に通して流すことにより、単一微粒子またはプラグに関して多数の計測を記録することができる。振動性流体動中、流線内の微粒子の順序は実質的に保存され得る。いくつかの実施態様において、一つまたは複数の標的微粒子の変化、たとえば細胞の成長または分裂を一定期間にわたってモニタリングすることができる。
【0081】
Segre Silberberg効果
流体中に懸濁され、ポアズイユのフローに供された希釈微粒子は、それらを含む管内で平衡半径に蓄積することができる。この現象はSegre Silberberg効果として知られている(Segre Silberberg, 1961, 1962)。有意な微粒子対管半径比の微粒子の実質すべてが、フロー内の同じ流線上で自己組織化することができ、したがって、フローの方向から独立して同じ速度を有することができる。
【0082】
流れる液体中の微粒子は、Flift=kΩsUsに等しい「揚力」Fliftを受けることができる。式中、kは比例定数であり、Ωsは、微粒子の角速度と平衡半径における微粒子の角速度との間の差として定義される角すべり速度であり、Usは、微粒子と流体との間の並進すべり速度である(Joseph et al., 2002)。理論モデルに対する数値解は、微粒子に対する揚力が、中心線上の微粒子が壁に向けて押され、壁の近くの微粒子が中心線に向けて押されるようなやり方で発生することを示唆する。したがって、一般に、力が反対方向に等しい定常状態半径方向位置(すなわち、実質的に、管内の流体の断面の中心からの位置)が存在し得る。
【0083】
揚力と対抗するものが、フロー内のランダムな熱力である。揚力と熱力との平衡が、微粒子が特定の流線中に留まるのか、流線を横切ってフロー内の隣接する流線に達し、ひいてはその速度を変化させるのかを決定する。流線内でフローの中心線から半径方向に微粒子を見いだす確率はフォッカー・プランク方程式によって表される。
[1]
式中、uはフローの平均速度であり、zは軸方向の距離であり、Dは拡散係数であり、rは半径方向の距離であり、Fliftは、半径方向位置rにおける微粒子に対する揚力である。
【0084】
フォッカー・プランク方程式の無次元化形態は以下のように記される。
[2]
式中、
であり、uはフローの平均速度であり、Lは、半径方向距離rに対して直交する長さスケールであり、Rは管半径であり、Fcharは、揚力F(x)で計られる特徴的力である。
【0085】
無次元群
は、熱変動と課された揚力との間の平衡を記述するペクレ数である。大きなペクレ数、すなわち、1よりもずっと大きいペクレ数の場合、系は、揚力に抗しながら細胞を押すのに十分なエネルギーを欠き、したがって、微粒子は流線を横切ることができない。小さなペクレ数、すなわち、1よりもずっと小さいペクレ数の場合、系は、揚力に打ち勝つのに十分な熱エネルギーを有し、微粒子は流線を横切って他の流線に入ることができる。Fcharを、球形微粒子が壁に付着しているときに受ける力に等しいと設定すると、ペクレ数は以下のように表すことができる。
[3]
式中、aは細胞半径であり、ρは流体密度であり、kBはボルツマン定数であり、Tは絶対温度である(Leighton and Acrivos, 1988)。
【0086】
細胞集団平衡方程式
細胞集団は、それぞれが別々に集団全体の性質に寄与する個々の細胞で構成される。細胞の状態は、細胞を構成する各成分の量の定量的表現からなる、いわゆる生理学的状態ベクトルによって定量的に表すことができる。したがって、細胞集団の状態は、これらの細胞状態が細胞集団内でどのように分布しているかを記述する密度関数によって決定することができる。細胞集団の状態が環境条件に応じて時間とともにどのように変化するのかを予想することが可能であるならば、特定の細胞タイプを徹底的に理解することができる。環境条件の例は、温度、pH、塩度、光条件、磁場への曝露、医薬化合物、利用可能な酸素、発酵性糖および非発酵性糖、脂質、ポリペプチド、または水性化合物への曝露を含むが、これらに限定されない。水性化合物の例は、環境汚染物質、栄養素、薬物(たとえば医薬化合物)および分泌物を含むが、これらに限定されない。このような理解は、適用目的に最適な生産性にとって最良な条件を決定するための強固な基礎を提供することができる。
【0087】
そのような記述を提供することができる定量的フレームワークは一般に集団平衡方程式からなる。これらの方程式は、細胞集団内の状態の分布を反映する密度関数の時間進化を記述することができる。しかし、一つの問題は、大部分の細胞系に関して方程式のパラメータが未知であるということである。一般に、パラメータは、三つの基本的な生理学的関数、すなわち速度関数、分裂速度および分配関数からなることができる。速度関数は、生理学的状態ベクトルが時間とともにどのように変化するかの成長速度(rate)または速度(velocity)を記述することができ、細胞の状態および細胞環境に依存する。
【0088】
分裂速度は、所与の生理学的状態で細胞が分裂する速度を表すことができ、分配関数は、細胞が細胞分裂時にその構成成分をどのように分配するのかを記述することができる。これら三つの関数の実験的決定は、いわゆる「逆」問題の解を伴うため、非常に困難な作業である。この手法においては、一般にはフローサイトメトリーまたは顕微鏡検査法で得られる細胞集団データから、集団平衡方程式のパラメータに反映される個々の細胞の性質を抽出する。
【0089】
この手法は、全系が個々の時点におけるスナップショットとしての計測値によって表される、流体力学におけるオイラー参照フレームに類似している。対照的に、ラグランジュ参照フレームでは、個々の微粒子を時間的に追跡して、個々の成分の寄与の和として全細胞集団の性質の記述を与える。
【0090】
図1は、一つの態様のPA100の概略図である。PA100は、毛管105、光源110、光検出器115、毛管端部130、135に圧力を供給するポンプシステム120およびPA100の電子的および機械的局面を制御することができる主制御装置140を含む。一つの特定の態様において、主制御装置140はコンピュータ、たとえばパーソナルコンピュータである。図1は、個別にA、B、Cなどと標識された微粒子150を含む流体145で充填された毛管105を示す。各微粒子は、たとえばサイズ、形状、スペクトル性、微粒子に付着した標識もしくは微粒子の他の特徴または微粒子に付着した他の成分によって区別することができる。一つの態様において、微粒子は、微粒子そのもののラマンスペクトルまたは微粒子に付着した標識のラマンスペクトルに基づいて区別することができる。別の態様において、微粒子は、微粒子そのものの蛍光スペクトルまたは微粒子に付着した標識の蛍光スペクトルに基づいて区別することができる。
【0091】
一般に、毛管105は、流体流を支持する管腔である。いくつかの態様において、毛管105は、円柱形のガラス管、たとえば内径100μmのガラス毛管である。市販の毛管を用いるようないくつかの場合において、毛管製造工程は、毛管の引っ張り強さを高めることができる保護ポリマーコーティングを加えることを含む。このコーティングは、たとえばポリマーコーティングの一部をブタン炎で焼去することにより、毛管105の計測区域から除去することができる。
【0092】
毛管105の寸法は、PAの設計考慮事項および他の要因にしたがって選択することができる。たとえば、内径は、高い微粒子直径対内径比を達成するように選択されてもよく、それが、いくつかの状況においては、Segre-Silberberg効果を最大限にすることができる。
【0093】
一般に、ポンプヘッドの圧力に影響しないような、すなわち、毛管の長さにわたる圧力降下が、ポンプが送り出すことができる最大圧力未満になるような内径の毛管を選択することが望ましい。好ましい態様において、100μm内径が、誘発されるSegre-Silberberg効果の大きさと、圧力降下と、ビームプロファイルの均一さとの間で良好な妥協を提供する。毛管105全体にわたるレーザ強さの均一さは、微粒子から位置非依存性信号強さを得るために重要であることがある。毛管の長さは、ポンプヘッドにおける圧力を考慮することによって選択することができる。好ましい態様において、毛管長さは75cmである。この長さは、適当なポンプシステムの圧力限界に近く、約25cmの順序付けされた細胞のプラグを支持する。
【0094】
一般に、毛管105中の微粒子150は、適切なサイクル数または期間、流体145を前後に移動させる(流体を振動させる)ことによって順序付けすることができる。いくつかの態様において、サイクルの数は、たとえば、5サイクル、10サイクル、100サイクルまたは1000サイクルであってもよい。いくつかの場合において、微粒子は、一つのサイクルの流体前後動中に順序付けすることができる。流体145の前後動は、先に説明したように、Segre-Silberberg効果にしたがって微粒子を流体145内で不連続な流線155へと組織化させることができる。
【0095】
一般に、流体は、ポンプシステム120を介して毛管端部130、135に適切な圧力を加えることにより、振動的に移動させることができる。いくつかの態様において、「圧力」は、正圧および負圧の両方を含むことを意味する。適当なポンプシステム120は、たとえば、耐圧ホース121を介して毛管端部130および135それぞれに取り付けられたポンプ入口側およびポンプ出口側を有する容積型ポンプを含むことができる。いくつかの態様において、ポンプはGlobal FIA MilliGAT (商標)ポンプ(Fox Island, WA)である。いくつかの態様において、ポンプシステム120は、毛管105に加えられる静圧源を含むことができ、流体動は、毛管の端部130、135に取り付けられたベント(図1には示さず)を開閉することによって達成することができる。ベントの開閉は、圧力を毛管の片側から逃がすことができ、より低圧に向かう流体動を誘発する。
【0096】
いくつかの態様において、ポンプシステム120は、手動で制御することができる。他の態様において、ポンプシステム120は、以下に説明される、流体145の移動ならびに光源110および検出器115システムの機能を自動化する組み込まれたパッケージの一部としての制御システム140によって制御することができる。そのようなパッケージは、たとえば、制御システム140上で作動するソフトウェアプログラムで具現化され得る。
【0097】
一般に、「計測区域」160は、微粒子150の特性決定が起こる区域である。一つの態様において、計測区域160は、毛管105内の流体145の断面に実質的に等しい。いくつかの態様において、計測区域160は、流体145の特定の区域に焦点を合わせることができ、全断面積を含まない。たとえば、計測区域160は、流体145内の一つの特定の流線に焦点を合わせることができる。そのような態様において、特定の流線内の微粒子150だけが特性決定され得る。
【0098】
一般に、計測区域160は、光源110の出力から形成される焦点面であり得る。一つの態様において、光源110は、図1に示すようにレーザ光ビーム165を形成するレーザである。一般に、一つまたは複数の光学要素170、175を使用して、計測区域160のパラメータ、たとえばフィールドサイズおよび形状を制御することができる。一般に、光学要素170、175は、図1に示すように光ビーム165を面160に集束させることもできるし、または、毛管105または流線155内の点に集束させることもできる(図1には示さず)。光学要素175は、両側に、または光が毛管105に入る側に対して斜めに配置され、散乱光または画像計測区域160を検出器115に向けて送ることができる。簡潔に示すために、二つの光学要素170、175が図1に示されている。しかし、多数の光学部品を使用して、所与の実験に必要な所望の計測区域パラメータを達成することができることが理解されよう。同様に、多数の光源110を使用して、毛管105内に含まれる流体145および微粒子150を調査することができる。一つの態様において、ビームホモジナイザユニットを光学要素170に組み込むことにより、均一なレーザビームプロファイルを作成することができる。ビームホモジナイザは、一連のビームエクスパンダおよびコリメータを使用して均一な強さの長方形のビームを生成することができる。
【0099】
一般に、検出器115は、光エネルギーを収集し、それを、制御システム140によって処理することができる電気信号に変換するための装置であり得る。いくつかの態様において、検出器115は、フォトダイオード、電荷結合素子または他の類似したタイプの光検出器であり得る。いくつかの態様において、検出器115は、計測区域160のビデオまたは静止フレーム画像を収集することができるカメラであり得る。この状況において、光源110は、「白い」光を提供することができ、光学要素170、175は、計測区域160をカメラレンズに撮像するように構成された顕微鏡対物レンズを含むことができる。いくつかの態様において、光源110は、たとえばダイオードレーザの出力に類似した狭帯域の波長を放出して、微粒子の特定のスペクトル特徴を調査したり、波長バンドの範囲で光学吸収を有する標識を励起したりすることができる。さらに他の態様において、多数の検出器115(関連する収集光学要素175を有する)が、ビーム165伝搬軸を外れた計測区域160からの散乱放射線を捕捉するように包囲する、または配置することができる。たとえば、検出器115を毛管105の背後および/または側方に配置することができる。検出器115は、微粒子上の標識として使用される分子または無機クラスタ、たとえば蛍光ナノ結晶などから蛍光を収集するように適合させることができる。
【0100】
一般に、微粒子計測および検出は、光学、すなわち電磁ベースのモダリティの使用に制限されない。PAのいくつかの態様において、音響発生器および検出器を使用して、計測区域160を通過するときの微粒子150を検出することもできる。そのような態様は、サイトメトリーの当業者によって知られ、認識されるような無線周波数(FR)、高調波および超音波装置を含むが、それらに限定されない。
【0101】
一般に、微粒子の検出は、蛍光部分によって標識された微粒子からの蛍光を検出すること、CCD装置115上で光散乱パターンを識別すること、および一般にサイトメトリーに適用可能である他の検出法を含むことができる。
【0102】
一般に、PAは、計測区域160から遠位の信号検出を可能にする部品を含むことができる。一つの実施態様において、図1Aを参照すると、導波管PA175は毛管導波管180を含む。毛管導波管180は、微粒子からの散乱光を毛管導波管180に沿う方向に「誘導」することを可能にする適当な管腔であり得る。例示的な毛管導波管180材料は、非晶質フルオロポリマーをはじめとするフッ素含有ポリマー、たとえばDuPontが販売するテフロン(登録商標)AFを含む。
【0103】
テフロン(登録商標) AFから構築された毛管導波管180は、ポリマーの屈折率が水よりも低いという特有の光学特性を有する。したがって、水を充填されたテフロン(登録商標) AF毛管導波管(たとえば、Random Technologies Inc. (San Francisco, CA)によって販売されるものは、液体コア導波管のような挙動を示し、光ファイバとして機能する。さらには、材料そのものが、UVおよび可視光に対して実質的に透過性である。したがって、レーザを毛管導波管180の軸に対して垂直に照射することができ、個々の細胞が計測区域188を通過して流れるとき、直交散乱光を約30°の円錐中に収集し、毛管導波管の遠位端に誘導することができる。
【0104】
導波管PA175は、ポンプ185、配管185a、185b、コネクタT187a、187bおよび毛管導波管180を含む回路中で流体を循環させることができる、関連する配管185a、185bを備えたポンプシステム185を含む。一つの実施態様において、流体は、ポンプ185から配管187を介してコネクタT187aにポンピングされる。コネクタT187aおよび187bは、それらの中に流体を流すように構成され、毛管導波管180からの光をそれらに通して伝搬させるのに十分なほど透明である。例示的なT(「カプラ」パーツ番号P-713)がUpchurch Scientific, Oak Harbor, WAから市販されている。流体は、コネクタT187aから毛管導波管180の中に連続し、遠位端に向かって(すなわち、コネクタT187bに向かって)移動する。微粒子は、計測区域188を通過し、光照射野に遭遇したとき、光を散乱させることができる。散乱光は、導波管の分野で公知であるように、内反射することができる。流体は、導波管180の遠位端に向けて連続し、コネクタT187bに達すると、配管185aを通過してポンプ185に戻り、そこで循環を続けることができる。
【0105】
計測区域188またはその近くの微粒子から散乱する光は、内反射を受けることができ、毛管導波管180によって端部に向けて送られ得る。コネクタT187a、187bは、光が導波管180の外に伝搬し、別の物体の中に伝搬することを許すカプラとして働く。いくつかの実施態様において、検出器は、できるだけ多くの光を捕捉するために、コネクタTに隣接して配置され得る(図1Aには示さず)。他の実施態様において、さらなる導波管、たとえばソリッドコア光ファイバ導波管191をコネクタT187aに結合して、光を他の光学または電気光学部品に向けて送ることもできる。図1Aは、光を波長にしたがって分けることができる光学部品192に向けて光を送り、微粒子のスペクトル分析においてより大きな多用性を可能にする光ファイバ191を示す。一連の光電子増倍管193が、上記のように、選択された波長を検出することができる。
【0106】
光学部品192の一つの態様は、光ファイバスプリッタ(たとえば、Fiber Optic Network Technology Co. (Surrey, British Columbia, Canada)によって供給されるものの使用を含み、それは、必要な光学要素の数を減らすことができる。これらのスプリッタは、光ファイバ191からの光の個々の波長をろ波し、光を別個のPMT193に送ることができる。光ファイバスプリッタの使用は、信号を、設置されたスプリッタの総数で割ることを要する場合がある。各細胞から収集される光の合計量は、導波管毛管の一端にミラー189、たとえば放物面鏡を設置して、検出器へと反対方向に散乱した光を反射して光ファイバコレクタに戻すことによって倍増させることができる。さらなるオプションとして、光ファイバを毛管の両端に接続し、相応に分割することもできる。
【0107】
一般に、導波管PA175は、他のPA実施態様で求められる光学要素および光学アラインメントの数を減らすことができる。
【0108】
次に、PAの作動局面のいくつかを説明する。一般に、再び図1を参照すると、上記のように、ランダムに分散した微粒子150を含む流体試料145を毛管に導入することができる。計測区域160よりも上の微粒子150 (実線の円)は、毛管端部130に加えられる圧力が端部135の圧力よりも大きいとき、それぞれの流線155に沿って下流の地点(破線の円)まで移動することができる。流体の振動は、一定数の前後動サイクルののち、上記Segre Silberberg効果にしたがって、微粒子150を実質的に順序付けすることができる。その後、微粒子150は、他の微粒子に対してその流線内位置および流線間位置を保持するはずである。微粒子150を各流線155中に順序付けすることは、計測区域160もしくはその近くまたは毛管105内の他の場所で達成することができることが理解されよう。
【0109】
特定のプラグ、すなわち微粒子150の群は、それが検出システム(たとえば検出システム115)によって個別に計測され得る計測区域160にプラグを通すように制御システム140によって制御され得る。
【0110】
図1に示す微粒子150を参照すると、フローが下向きである状態で、「B」微粒子が最初に計測されたのち、二つの「A」微粒子が計測され、次いで「B」微粒子が計測される等である。PAシステム100は、フロー方向を反転させることにより、微粒子の反復計測を実施することができる。そして、微粒子がB、A、A、Bの順で計測区域を横切るとき、計測は「上」向きのフローで進むことができる。微粒子プラグの前後動は無限に継続し、微粒子150の相対順序を維持することができる。このようにして、PAを使用して、個々の標的微粒子または微粒子150のプラグに対して多数の計測を実施することができる。
【0111】
一般に、いくつかの状況において、前記説明におけるように全プラグを計測することが望まれない(または不要である)場合がある。事実、いくつかの場合において、微粒子のプラグのうち一つの選択された微粒子だけを繰り返し計測することが有利である可能性がある。十分なフロー制御を備えたポンプシステム120は、毛管内の微量の液体を移動させることができ、したがって、選択された微粒子の非常に小さな位置変化を生じさせることができる。したがって、再び図1を参照すると、B-A-A-Bプラグからの「A」微粒子の一つを「選抜」し、その「A」微粒子を計測区域160にかけて振動させることにより、繰り返し分析することができる。
【0112】
図2は、PAシステム100の簡略化部品、および時間に対する検出器応答の対応する例示的グラフを示す。図2の左側(「スキャン1」)は、毛管(図2には示さず)内に含まれた流線155内の微粒子「A」および「B」を示す。他の部品は、図面の簡略化のために省略されている。スキャン1に関する下部分には、時間に対する検出器応答の例示的なチャート210が示され、ライン215がスキャンのデータ点を表している。微粒子150が、指示されたフロー方向の場合に計測区域160を通過するとき、検出器応答を計測することができる。この例においては、応答は、微粒子Bの場合よりも微粒子Aの場合の方が小さい。これは、たとえば、微粒子Aが微粒子Bよりも小さい場合に生じ得る。スキャン2に示すようにフロー方向が反転すると、検出器応答は、微粒子Aの場合よりも微粒子Bの場合の方が大きい。
【0113】
微粒子150は、一つの流線155中に移動することができ、いくつかの場合において、微粒子150は、フロー方向に対して実質的に垂直な方向に拡散することができる。たとえば図2のスキャン2における微粒子Aの位置は、スキャン1のあいだのその元の位置からの軸方向移動によって変化している。検出装置がその検出において軸方向寸法に沿って不均質であるならば、フロー方向以外の方向への拡散が有意になり得る。二つの微粒子が互いを越えて拡散するほどに微粒子間距離が小さいならば、軸方向の拡散が有意になり得る。一般に、PA中の微粒子拡散は、毛管105中の微粒子150の濃度を調節することによって制御することができる。これは、毛管105中の微粒子間の平均軸方向距離を変化させる効果を有し得る。
【0114】
PAシステム100は、個々の細胞または個々の細胞のセットの細胞成長をモニタリングすることによって細胞集団動態を計測するために使用することができる(たとえば、以下の実験部を参照)。本明細書で使用する「細胞集団動態」とは、細胞集団の細胞の一つまたは複数の生理学的または形態学的特徴における時間的変化をいう。流体パラメータ、すなわち温度、栄養素レベル、酸素含量または他の要因を制御することにより、細胞成長、アポトーシスまたは他の形態の細胞死および他の生理学的機能を環境の関数として研究することができる。
【0115】
一般に、PAを使用して、個々の細胞に対する特定の化学物質、たとえば薬剤の効果をモニタリングすることができる。一つの態様において、細胞または細胞プラグを計測区域の領域に限局化し、一つまたは複数の薬物に曝露することができる。薬物の効果は、一定の期間、細胞または細胞プラグを振動させて計測区域に通し、薬物の影響下にある細胞の適切な局面を計測することにより、特定の成長状態(たとえば細胞周期における位置)中にモニタリングすることができる。
【0116】
例示的な態様において、細胞の懸濁液を含む流体に化合物を加えることにより、薬学的研究を実施することができる。細胞は、細胞株、寿命、サイズおよび他のパラメータに関して実質的に均質であることもできるし、細胞は、いくつかの異なる株の混合物であることもできる。PAは、個々の細胞に対する化合物の効果のモニタリングおよび一つまたは複数の細胞における効果の他の細胞に対する比較を可能にする。たとえば、図1を参照すると、流体内の化合物の「A」細胞に対する効果を、「B」細胞に対する効果および同じく「C」細胞に対する効果と比較することができる。計測は、上記のように流体を計測区域にかけて前後に振動させることにより、現実的に何回でも繰り返すことができる。
【0117】
別の態様において、PAは、流体内の抗体/抗原の多数の組み合わせに関して細胞抗体/抗原結合を認識するために使用することができる。たとえば、細胞の表面に付着または潜在的に付着したいくつかの異なる抗体を有する細胞培養物を調製することができる。PAは、当技術分野で周知である蛍光法を使用して、たとえば蛍光標識された抗体および/または抗原を使用して、抗原/抗体結合をモニタリングすることができる。計測区域を通過する標識された抗体/抗原複合体を有する細胞は、高い精度で非標識細胞から区別することができ、細胞のライフサイクルの特定部分を通してモニタリングすることができる。
【0118】
PAの一つの実施態様は、PAが作動しているとき、進行中であり得る計測を乱すことなく、細胞外液を交換する能力を含む。図2A左を参照すると、毛管の各端は、弁およびポンプシステムを含むことができる。図示するように「下」向きにポンピングしているとき、下弁を作動させ、流体を廃棄物受け器に向けて送ることができ、上弁をポンプ側に作動させることができる。次いで、ポンプをオンにして、流体を下方向に移動させることができる。同様に、「上」向きにポンピングするためには、上弁を作動させて流体を廃棄物受け器に向けて送ることができ、下弁をポンプ側に作動させることができる。このようにして、各ポンプ行程中、新鮮な媒体の一定した供給を絶えず毛管に導入することができる。
【0119】
図2Aの右側は、前記PA実施態様の、各行程の最後の溶質濃度のシミュレーションを示す。行程ゼロは初期状態に対応する。細胞は流体の最大速度よりもゆっくりと動くことができるため、流体が交換される間、微粒子は毛管中に保持される。したがって、新鮮な流体の先端が毛管の端部に達するならば、細胞は毛管中に留まることができる。
【0120】
一般に、広い範囲のサイズに関して、微粒子は、中心線から壁までの距離の約55〜75%の潜在的な半径方向位置の範囲に閉じ込められ得る。したがって、微粒子は、流体の放物線軌道速度プロファイルの先端よりも低い速度で移動することができ、微粒子は、流体の先端よりも遅れ得る。行程容量が、新鮮な流体の速度プロファイルの先端が毛管の端部に達するところにセットされるならば、微粒子は毛管中に保持され得る。この状況において、毛管は、Aris-Taylor分散と呼ばれる分散を示す層流反応器としてモデル化され得る。これは、振動中の各行程の入口で新鮮な媒体を絶えず導入することによってシミュレーションすることができる。したがって、図2A (右)に示すように、はじめ溶質を含まない毛管を与えられると、振動流スキームは、微粒子を毛管中に閉じ込めながら毛管の内容物の99%を10行程内に交換することができる。この手法は、システム中の流体の所要量を20mLから100μL未満に減らすことができる。
【0121】
一般に、毛管がペルフルオロポリマーのようなガス透過性材料で形成されているならば、流体内のガス濃度は、毛管上に流されるガス混合物を調節することによって制御することができる。たとえばテフロンAFは、大きなガス透過性を有する。一つの実施態様において、非酸素ガスを導波管上に流すことにより、たとえばガス管190から窒素ガスを毛管180上に吹き付けることにより、流体中に嫌気条件を得ることができる。別の実施態様において、二酸化炭素を導波管に吹き付けて、毛管中の流体のpHを調節することができる。
【0122】
一般に、毛管(たとえば毛管105および180)の温度は、公知の方法によって制御することができる。一つの実施態様において、たとえばガス管190を使用して温かいまたは冷たいガスを毛管上に吹き付けることができる。別の実施態様において、毛管に対し、加熱または冷却することができる熱伝導性ジャケットを装着することができる。そのような実施態様において、検出システムおよび光源との間の見通しを許すために、毛管のセクションを開放状態に残すこともできる。さらに別の実施態様において、流体の流路が、所望の温度に加熱または冷却される熱浴を含むことができる。
【0123】
一つの一般的な局面で、PAシステムは、微粒子を選別するように構成され得る。選別機構は、検出された微粒子の経路を計測結果にしたがって変えることができる組み込まれたフロースイッチを含むことができる。たとえば、細胞が計測されたのち、大きな細胞が一つの方向に流れ、より小さな細胞が異なる方向に流れるように細胞の経路を変えるフロースイッチをアクティブにすることができる。所与の微粒子信号に曖昧さがあるならば、微粒子が再び計測区域を通過するように流体を逆流させることができる。そして、微粒子の第二、第三および第四の計測を実施してそのサイズをより正確に計測することができる。
【0124】
図3は、一つの態様の選別PA300の簡略図である。この場合、選別PA300は、微粒子追跡および選別モードで使用することができる。いくつかの実施態様において、選別PA300は、図1に示すPAシステム100の要素を含むことができる。明瞭に示すために、図1の要素すべてが図3に示されているわけではない。選別PA300は、所望の計測技術を実施するために、毛管305、計測区域360、検出システム315および光学部品370を含む。毛管305は、細胞をその下向き経路から異なる経路、この態様では管330に経路変更することができる、一般に306で示すクロスフロー部または交差部を有することができる。管310は、交差部306で流体を毛管305に加えるために使用することができる。管310からの流体圧の適用は、適当な時期に、たとえば、流体の速度を考慮しながら、検出器315から信号を受けたのち、微粒子が計測区域360から交差部306までの距離を移動するために要する時間の量にフローを開始させるために、制御システム340によって制御され得る。
【0125】
たとえば、図3を参照すると、流線307および306上のそれぞれ「A」および「B」細胞を、計測区域360を通過するときに検出することができる。計算された時間遅延ののち、制御システム340は、「A」細胞が検出されるときフロースイッチ315を介して流体圧を管310に加えることができる。計算された時間遅延は、計測区域360から交差部306への「A」微粒子の移動時間に一致することができる。より大きな細胞集団(すなわち、たとえばB、CおよびD細胞を含むことができる集団)内の実質すべての「A」は、管330へと逸らされ、容器325中に収集され得、B細胞(および、あるならば他の細胞)は、それらの流線経路306に沿って移動し続け、別個の容器320に収集され得る。この例における「A」細胞の検出は、たとえば、光ビーム365を流線307上の点に集束させることによって達成することができる。または、「A」細胞は、先に記載したように焦点面360を通過することによって検出可能であるマーカで標識され得る。
【0126】
すべての態様において、選別PAは、実質的に無限の選別能力を可能にする多数の交差部および選別モダリティを含むことができる。
【0127】
選別PAの一つの態様において、微粒子は、微粒子履歴に基づいて選別することができる。微粒子履歴に基づく選別は、不連続的な時点における性質のみに基づくのではなく、特定の履歴(たとえば成長または分裂)を有する細胞のような微粒子の選択を可能にする。
【0128】
そのような態様の一つの実施態様は、流体経路上、毛管内で細胞が振動させられる区域に対して遠位に配置された低角「Y」弁の使用を含む。選別が望まれる場合、Y弁を作動させ、微粒子のプラグを選別毛管中にポンピングすることができる。この実施態様において、液体の流量を計測して、二つの異なる方法により、すなわち1)前進散乱ピーク幅をピーク高さと比較して速度を抽出する方法、または2)たとえば軸方向に既知の距離を挟んで配置された二つのレーザビームを使用し、ビームごとの微粒子到達時間を計測することによって微粒子の速度を計時する方法により、各微粒子の速度の計算を可能にする。微粒子が第一のビームを横切ると、タイマーが始動し、微粒子が第二のビームを横切ると、タイマーが停止する。二つのビームの間の距離は既知であるため、微粒子速度を計算することができる。いずれかの方法で各微粒子の速度を計算することができ、各微粒子がY弁に到達する時を正確に決定することが可能になり、そのときにY弁を適切にアクティブにすることができる。
【0129】
選別PA中の選別される微粒子の「純度」に影響を与え得る一つの変数は、毛管中の微粒子間の距離およびシステムの流量である。これら二つのパラメータを調節することにより、プラグから微粒子を選別するための時間のウィンドウを延ばすことができ、所望の微粒子を単離する確率が高められる。微粒子間の距離は、選別が起こる区域の手前で狭い毛管を使用することによって増すことができる。
【0130】
一つの態様において、選別オプションは、サイクルまたは実験中に微粒子のプラグに微粒子を加える、または微粒子のプラグから微粒子を除去することを可能にする。この態様において、図3を参照すると、毛管305の一端に圧力を加えることにより、細胞のプラグを選別交差部306に向けて移動させることができる。選択された微粒子が交差部306に達すると、主毛管305中のフローを停止させ、スイッチ315をアクティブにして、管310からクロスフローを発生させて、それにより、選択された微粒子のみをプラグから除去することができる。そして、クロスフローを停止させることができる。そして、主毛管305内のフロー方向を反転させてプラグを逆に移動させ(この場合、計測区域360に向けて)、除去された微粒子なしで、プラグに対して継続的な計測を実施することができるようにする。
【0131】
いくぶん類似したやり方で、サイクルまたは実験中に微粒子をプラグに加えることができる。たとえば、管310は、プラグに加えるための微粒子の濃縮物を含むことができる。管310からの一つまたは複数の微粒子は、プラグを選別交差部306に移動させ、プラグを停止させ、管310からクロスフローを開始させることにより、主毛管305中のプラグに加えることができる。クロスフローは、一つまたは複数の微粒子を交差部306区域に導入することができ、その時点でクロスフローを停止させ、プラグを一つまたは複数の加えられた微粒子とともに計測区域360に向けて逆に移動させることができる。
【0132】
上記態様の一つの実施態様において、さらなる検出システムを交差部306 (図3には示さず)またはその近くに配置することができる。検出システムは、本明細書に記載する検出システムおよび他の検出システムのいずれであってもよい。さらなる検出システムの一つの目的は、微粒子をプラグから除去する、またはプラグに加えるためにクロスフローをアクティブにする前に、選択された微粒子が実際に選別区域(すなわち交差部306)内にあるということを立証することができることである。同様に、検出システムは、プラグが交差部306から引き離される前に微粒子がプラグに加えられたことを立証するために使用することもできる。一つの態様において、レーザビームを毛管305に対して直角に交差部306に集束させることができる。検出器、たとえば電気光学検出器を毛管305の反対側に配置すると、蛍光、散乱または微粒子からの他の信号を検出することができる。別の態様において、カメラを交差部306に近接して配置して、微粒子が交差部306に接近または進入するときの微粒子の画像を捕捉することもできる。
【0133】
上記態様の一つの実施態様において、導波管毛管が使用される。この実施態様において、第一の光源を使用して計測区域を作成し、第二の光源を使用して、微粒子がクロスフロー交差部、たとえば交差部306に到達したとき微粒子を検出することができる。いくつかの態様において、第一および第二の光源は異なる光出力を生成する。たとえば、第一の光源は、第一の波長で作動するレーザであり得、第二の光源は、第二の波長で作動するレーザであり得る。導波管毛管は、たとえば図1Aに示すように、いずれか(または両方の)光源からの散乱光を、導波管毛管の外に位置する検出機器に誘導することができる。いくつかの場合において、ビームスプリッタを使用して第一および第二の光源からの光を分けて、別個の検出器を使用して二つの光源からの光を個別に検出することができるようにすることが有利である可能性がある。
【0134】
多くの場合、価値の高い治療用ペプチドからエタノールのような廉価な日用薬品にまで及ぶ多数の有用な生成物を製造するために細胞培養物が使用される。細胞培養物生産性の最適化は、製造プロセスの目標であり得、経済の活力にとって重要であり得る。一般に、一つの態様にしたがって、PAは、細胞を計数し、選別し、単離するために使用することができる。いくつかの場合において、選別PAは、高純度の細胞(または他の微粒子)集団を生成することができる。PAの一つの態様において、細胞は、所望の株、サイズ、生存度または他の差別的特徴にしたがって特性決定し、単離することができる。
【0135】
上記態様および実施態様のいずれにおいても、プラグおよび微粒子の選別、追加および除去は、最大限の効率のためにコンピュータ制御され得る。
【0136】
一つの一般的な局面において、PAの主制御装置(たとえば図1の主制御装置140)は、PA微粒子追跡、検出および制御を可能にするコンピュータハードウェアおよびソフトウェアを含むことができる。一般に、ソフトウェアは、流量制御システム、検出装置、光源および収集アセンブリ(選別された微粒子を収集するための)をはじめとするPAの様々な機能および動作局面を制御する実行可能な命令を含むことができる。
【0137】
たとえば、一連の微粒子が計測区域を通過するときそれらを識別するために、パーソナルコンピュータ上で動作可能である一つまたは複数のソフトウェアプログラムが、毛管内のフロー振動、光源、検出器および他の装置を制御することができる。一つの態様において、PAは、未知の微粒子から検出された信号を既知の微粒子応答のライブラリと比較して、未知の微粒子の決定を実施することを可能にするソフトウェアパッケージを含む。一つのそのような態様において、既知の応答のライブラリは、既知の細胞形態の形状および/またはサイズを含み、未知の細胞の特定の構造的特徴を既知の細胞と比較することによって未知の細胞を特性決定することを可能にする。
【0138】
一般に、コンピュータプログラムは、微粒子が計測区域160を前後に通過するときの微粒子の順序を追跡することができる。微粒子、たとえば成長または分裂を起こしている細胞の性質における変化をプログラムによって追跡することができる。細胞分裂の場合、その前のスキャンにおいて信号が不在であったかもしれないところに新たな信号が出現することがあるため、新たな微粒子(たとえば、娘細胞の誕生)を検出することができる。ソフトウェアプログラムは、各微粒子信号が計測区域160を順方向および逆方向の両フロー方向に横切るとき、その微粒子信号を追跡することができる。
【0139】
PAソフトウェアは、ビジュアルプログラミング言語、たとえばNational Instruments Corporationから市販されているLabVIEWで開発することができる。例示的なPAソフトウェア態様は、以下の機能の一つまたは複数を実行することができる。以下の機能は提示される順序で実施される必要がなく、記載される各ステップが二回以上繰り返されてもよいということが理解されよう。一つの態様において、ソフトウェアは、主制御装置、たとえば図1に示す主制御装置140上に記憶され得る。別の態様において、PAソフトウェアは、遠隔に、たとえばネットワークまたは遠隔コンピューティングシステム上に記憶されてもよい。
【0140】
PAソフトウェアプログラムは、各光電子増倍管からの増幅信号を100kHzの周波数および16ビットの分解能でデジタル化することができる。そして、プログラムは、事象が起こったときを検出し、タイムスタンプおよび微粒子からのスリットスキャンを記憶することができる。データ取得速度は、毎秒20細胞の事象速度で1事象あたり60個のデータ点を生成するのに十分であり得る。データは、ASCIIフォーマットで記憶することができ、1事象あたり約500バイトを消費することができる。三つのPMT上、毎分2行程で3時間光散乱を検出する、1行程あたり細胞300個の予想される細胞追跡実験の場合、1実験あたりの全ファイルサイズは約162MBであり得る。このファイルサイズは、従来のFCSフローサイトメトリーデータファイルで実施されているような標準化ファイルフォーマットを使用してデータを2進形態で記憶することによって減らすことができる。
【0141】
事象検出と同時に、システム中の流量を0〜40μL/分の範囲で12.5Hzの速度および15ビットの分解能で取得し、ディスクにストリーミングすると、予想される実験の過程で2MBのファイルサイズを生成することができる。実験の過程で、各行程の流量を積分して合計ポンピング容量を得ることができる。稼働中、ソフトウェアは、理想的な振動挙動からの逸脱に関して各後続行程の大きさを修正することができる。
【0142】
ひとたびデータが取得されると、分析アルゴリズムは単一微粒子データを抽出することができる。例示的なアルゴリズムの第一のステップは、隣接する行程ごとに各微粒子が同じ方向にレーザを横切る時間を比較することであり得る。行程間で、微粒子がレーザを横切る時間は、規定可能な時間ウィンドウ内に収まることができ、したがって、第一レベルの分類を提供する。微粒子横断時間の差の分布および行程の全長に基づき、時間だけに基づいて最大125個の微粒子を単離することができる。実験内で分析することができる微粒子の総数をさらに増すために、実際の細胞集団の光散乱性が計測可能な範囲で変化し、それらの性質が計器のデータ取得速度よりもずっと遅い速度で変化するという事実を使用する。したがって、隣接する細胞が二つの行程の間の時間ウィンドウ内に収まるならば、それらの細胞は、行程間の30秒ではわずかしか変化しないと考えられるその光散乱性に基づいて互いに区別することができる。したがって、潜在的に分析することができる細胞の数は、時間ウィンドウの数と光散乱ウィンドウの数との積である。適切なアルゴリズムを用いると、単一の実験で少なくとも何百もの特有の細胞を分析することが可能であり、それが、細胞集団の挙動に関する情報をもたらし得る。
【0143】
ひとたび個々の細胞が分析アルゴリズムから識別されるならば、それらの細胞の波形を、信号のピーク高さ、幅および面積に関して分析することができる。また、個々の波形が記憶されるため、対象のデータに依存して、ピークスキュー、ディップ指数などのようなさらなるパラメータを抽出することができる。個々の波形から抽出されるパラメータは、どのようなものであれ、集団平衡方程式の枠の中で分析することができる。具体的には、時間に対する性質変化の導関数は、細胞の速度変化関数であり得る。
【0144】
長円形の細胞をも時間的に追跡することができる。実に、細胞が少なくとも分裂の開始の間に追跡することができるという可能性は高い。したがって、分裂速度関数は、ある特定の時点における細胞の性質を記録することによって計算することができる。分裂の間に細胞を完全に追跡することができるならば、分裂直後に娘細胞および親細胞の性質を観察することができ、それにより、分配関数に関する情報を得ることができる。さらには、微粒子がレーザを横切る時間にポンピングされる累積容量の時間に対する導関数は微粒子の密度に比例し得る。したがって、システム中の微粒子ごとに一つの細胞密度を計算することができる。
【0145】
ソフトウェアのデータ処理ステップが完了すると、ユーザは、データを表示するためのいくつかのオプションを提示され得る。一つの態様において、ユーザは、集団平衡方程式の個々の関数をプロットし、対象のパラメータに関する個々の細胞の性質の時間過程ならびに変動の手段および係数に関するシステムの集団データを相関させることができる。また、ユーザは、集団平衡方程式の取得された速度、分配および分裂関数ならびにユーザ入力性質分布を使用し、全細胞集団が時間とともにどのように挙動するのかをシミュレートすることができるシミュレーションオプションを与えられ得る。
【0146】
本明細書に記載される主題および機能動作の態様は、デジタル電子回路で、または本明細書で開示された構造およびそれらの構造的均等物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェアもしくはハードウェアで、またはそれらの一つまたは複数の組み合わせで実施することができる。本明細書に記載される主題の態様は、一つまたは複数のコンピュータプログラム製品、すなわち、データ処理装置によって実行される、またはデータ処理装置の動作を制御するための有形のプログラムキャリア上にコード化されたコンピュータプログラム命令の一つまたは複数のモジュールとして実施することができる。有形のプログラムキャリアは、コンピュータまたはコンピュータ読み取り可能媒体によって実行されるために適当なレシーバ装置に送信するための情報をコード化するように生成される伝搬信号、たとえば人工的に生成された信号、たとえば機械生成電気、光学または電磁信号であり得る。コンピュータ読み取り可能媒体は、機械読み取り可能な記憶装置、機械読み取り可能な記憶基板、メモリ装置、機械読み取り可能な伝搬信号を実施する組成物またはそれらの一つまたは複数の組み合わせであり得る。
【0147】
用語「データ処理装置」は、プログラム可能プロセッサ、コンピュータまたは多数のプロセッサもしくはコンピュータをはじめとする、データを処理するためのすべての装置、素子および機械を包含する。装置は、ハードウェアに加えて、対象のコンピュータプログラムのための実行環境を作成するコード、たとえばプロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステムまたはそれらの一つまたは複数の組み合わせを構成するコードを含むことができる。
【0148】
記載された特徴は、有利には、データ記憶システム、少なくとも一つの入力装置および少なくとも一つの出力装置からデータおよび命令を受け、それらにデータおよび命令を送信するように結合された少なくとも一つのプログラム可能プロセッサを含むプログラム可能なシステム上で実行可能である一つまたは複数のコンピュータプログラムで実施され得る。コンピュータプログラムは、一定の活動を実行する、または一定の結果を生じさせるためにコンピュータ中で直接的または間接的に使用することができる命令のセットである。コンピュータプログラムは、コンパイルまたは翻訳言語を含む任意の形態のプログラム言語で書くことができ、任意の形態で、たとえば独立型プログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチンもしくはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとして展開することができる。
【0149】
命令のプログラムを実行するのに適したプロセッサは、例として、汎用および専用のマイクロプロセッサならびに任意の種類のコンピュータの唯一のプロセッサまたは多数のプロセッサの一つを含む。一般に、プロセッサは、読み取り専用メモリまたはランダムアクセスメモリまたは両方から命令およびデータを受ける。コンピュータの必須要素は、命令を実行するためのプロセッサならびに命令およびデータを記憶するための一つまたは複数のメモリである。一般に、コンピュータはまた、データファイルを記憶するための一つまたは複数の大容量記憶装置を含む、またはそれと通信するために動作的に結合される。そのような装置は、磁気ディスク、たとえば内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスク、磁気光学ディスクならびに光学ディスクを含む。コンピュータプログラム命令およびデータを具現化するのに適した記憶装置は、あらゆる形態の不揮発性メモリ、たとえば半導体メモリ装置、たとえばEPROM、EEPROMおよびフラッシュメモリ装置、磁気ディスク、たとえば内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスク、磁気光学ディスクならびにCR-ROMおよびDVD-ROMディスクを含む。プロセッサおよびメモリは、ASIC (特定用途向け集積回路)によって補足され得るか、またはASICに組み込まれ得る。プロセッサおよびメモリは、専用論理回路によって補足され得るか、または専用論理回路に組み込まれ得る。
【0150】
ユーザとの対話を提供するために、本明細書に記載される主題の態様は、情報をユーザに表示するための表示装置、たとえばCRT (陰極線管)またはLCD (液晶表示)モニタならびにユーザがコンピュータに入力を提供することができるキーボードおよびポインティング装置、たとえばマウスまたはトラックボールを有するコンピュータ上で実施され得る。他の種類の装置を使用してユーザとの対話を提供することもできる。たとえば、ユーザからの入力は、音響、音声または触覚入力をはじめとする任意の形態で受けることができる。
【0151】
コンピューティングシステムはクライアントおよびサーバを含むことができる。クライアントおよびサーバは一般に、互いに離れており、通常、通信ネットワークを介して対話する。クライアントとサーバとの関係は、それぞれのコンピュータ上で稼働し、互いにクライアント−サーバ関係を有するコンピュータプログラムによって発生する。
【0152】
一つの一般的な局面において、PAは、集団平衡方程式を決定するために使用することができるデータを収集するための分析ツールであり得る。これらの方程式は、全体としての集団に関して特定の標的細胞を計測するハイスループット容量および能力によって、細胞集団レベルでの単細胞生物の生物学的複雑さへの有意な洞察を提供することができる。細胞培養物は、互いに独立して、しかし環境に依存して活動する細胞の複雑な分布を表すことができる。その結果、集団平衡方程式によって、培養物が環境の変化に基づいてどのように変化するのかを数学的に詳述することが可能である。たとえば、Fredrickson et al., 1967、Ramkrishna, 2000を参照すること。モデルは、一階数部分積分微分方程式であり得る。一つの手法において、モデルは、細胞の生理学的組成の状態空間内の培養物に関する標準平衡方程式からなることができる。細胞成長または細胞分裂とも知られる状態空間内の細胞流および分裂中の細胞の内部組成の分配による細胞数変化速度を考慮しなければならない。これは以下のように表すことができる。
[4]
式中、n(x,t)は細胞数であり、r(x,t)は単一細胞成長速度関数を表し、Γ(x,t)は分裂速度関数であり、P(x,y,t)は、状態yの細胞の状態xの細胞への分配の確率を表す。この方程式は、確率分布変化、すなわち
が、状態x、すなわち
にある細胞流によるものである、または細胞が娘細胞誕生、すなわち2Γ(y,t)または母細胞分裂、すなわちP(x,y,t)n(y,t)によって分布を再編成するからであるという概念を表す。
【0153】
一つの一般的な局面において、PAは、集団平衡方程式の速度関数を決定することを可能にするデータを収集するために使用することができる。細胞の分裂速度および分配関数は、たとえば、PA検出システムがモニタリングする、観察可能なものであり得る形態学的変化を観察することによって決定することができる。有糸分裂によって作製された長円形の細胞もまた、振動する流体中、Segre-Silberberg効果にしたがって挙動し、平衡半径、すなわち流線に沿って存在し得る。たとえば、Li et al, 2004を参照すること。
【0154】
いくつかのPA態様において、光電子増倍管をPAシステム中で検出器として使用することができ、その応答を、レーザビーム強さプロファイルと細胞の断面積とのコンボリューションと考慮することができる。前置増幅器が検出システムの一部として存在するならば、それから収集される波形は、縦軸がフローと整合しているならば、細胞形態の解釈を直接反映することができる。しかし、毛管中で十分に発達したフローのせいで、縦軸を有する細胞は、フローストリーム中で縦軸に沿って整合せず、代わりに回転し得る。Melamed, 1994を参照すること。
【0155】
いくつかの場合において、計測頻度が細胞成長の時間スケールよりも大きく、分裂する細胞の多数の波形が収集されることがある。この状況においては、平均波形を計算すると、真の細胞形態をより正確に反映することができる。有糸分裂および細胞質分裂中の形態学的変化が観察可能であるため、この手法は、細胞の分裂速度関数および分配関数の決定を可能にする。Block et al., (1990)を参照すること。
【0156】
集団平衡方程式の速度関数は、PAを使用して決定することができる。一つの実施態様において、酵母細胞の懸濁液(たとえば約2μL、5×105微粒子mL-1)を分析することができる。PAは、懸濁液中の細胞の数(たとえば1000)を追跡し、時間とともに起こる形態学的変化を計測することができる。この情報を使用して、上記集団平衡方程式の速度関数を解くことができる。一つの態様において、細胞のプラグ中の細胞ごとに、図4に示すものに類似した曲線を、たとえば20秒ごとに一回のオーダーの計測頻度で生成することができる。図4は、選択された酵母細胞に関する、時間に対する細胞成長(μm2単位で計測)のプロットを示す。一つの手法において、速度関数は、時間に対する対象の性質の導関数を求めて解くことによって得ることができる。一つの態様において、速度関数は、Srienc F, Dien BS., "Kinetics of the cell cycle of Saccharomyces cerevisiae," Ann. N.Y. Acad. Sci. 665:59-71 (1992)およびKromenaker SJ, Srienc F., "Cell-cycle dependent polypeptide accumulation by producer and non-producer murine hybridoma cell lines: a population analysis," Biotechnol. Bioeng., 38:665-677 (1991)に開示された方法にしたがって決定することができる。
【0157】
一つの一般的な局面において、PAは、流線を越えて微粒子を追跡し、微粒子が近隣の微粒子よりも速く移動するのか遅く移動するのかを決定することができる。たとえば、一つの流線中の小さな細胞は急速に成長する可能性があり、その細胞サイズが、それがもはやその現在の流線中には留まらない点に達すると、その細胞は流線を横切って別の流線に入る可能性がある。その区域における細胞間の相対距離の軌道、すなわち転位を追跡することにより、細胞成長をモニタリングすることができる。
【0158】
PAのいくつかの態様において、微粒子が計測区域を通過するときの微粒子同士の検出の間に経過する時間の量から微粒子間の相対位置を推測することができる。他の態様において、たとえば計測区域を撮像する写真技術を使用して、微粒子間の空間を視覚的に識別することができる。
【0159】
一つの一般的な局面において、様々な微粒子を懸濁させる流体、たとえば流体145の特性をPA実験の過程で変化させて、微粒子の順序を乱すことなく、構成成分、たとえば医薬生成物を加える、または除去することができる。一つの態様において、PA毛管は、PAの作動前または作動中に薬剤、溶液または他の添加物を加えることができる注入口を有することができる。他の態様において、毛管は、溶液または固体を流体145に加えるフロースイッチまたはレザバーに接続することができる。流体への構成成分の添加は、コンピュータ制御されてもよく、または手作業の注入に適合されてもよい。これらの態様は、PAシステムを、たとえば、微粒子または異なる微粒子の群に対する薬剤の効果を時間的に研究することができる薬剤の連続試験で使用することを可能にする。
【0160】
一般に、PA流体は、微粒子の一局面に影響を与える可能性があり、特定の実験で有用であり得る任意のタイプの刺激または条件に供され得る。たとえば、PA毛管中の流体は、特定の光、熱、磁気、放射線および他の条件に曝露されてもよい。これらおよび他の条件が微粒子に及ぼす影響をPAによって計測することができる。
【0161】
一般に、PAは、図5に示すように、両端で多孔性毛管に接続するフローセルを含むことができ、フローセルの内部との溶質の交換を可能にする。
【0162】
一つの一般的な局面において、PAは、ある細胞セットに関する細胞成長を並行振とうフラスコ実験で実施される細胞成長と比較することによってフローセルの多孔性領域中の質量移動の効率を決定するために使用することができる。たとえば、媒体中の限定成分が細胞を静止状態に至らしめることができる。そのような状態に達する速度は、同じ条件下では、毛管中で成長する細胞および振とうフラスコ中で成長する細胞に関して同じであるはずである。多孔性毛管を介して成長制限成分が供給される場合に成長段階を有意に延ばすことができるという指示は、効率的な質量移動にとって良好な試験であり得る。実験的試験条件は、質量移動および成長速度を考慮するモデルで評価することができる。さらなる試験手法は、毒性および細胞損傷性薬品を多孔性膜に通して投与することを含むことができる。ここでもまた、毛管中で観察される速度を、別個のバッチ実験から得られる速度と比較することができる。上記の拡散混合設計を用いて同様の実験を実施することができる。
【0163】
実験部
以下の実験は、実験を実施するために記載される方法および結果を含め、詳細な説明の一部とみなされ、特許請求の範囲およびPAの発明範囲に関して非限定的である。
【0164】
実験1 細胞成長および単一細胞追跡
直径300μmのシリコン管材を使用して、長さ7cm、内径100μmの石英ガラス毛管材をシリンジポンプ中の0.5μLシリンジに取り付けた。毛管材およびシリンジポンプは垂直に取り付けた。顕微鏡対物レンズ(倍率×40)を、毛管へのその焦点距離にほぼ等しい距離に配置した。340×280画素顕微鏡カメラを、カスタム画像処理MATLABプログラムおよびポンプ制御アルゴリズムを作動させるコンピュータに接続した。次に、SD最少培地中104細胞mL-1の細胞濃度のYPH-399a酵母細胞の懸濁液を毛管に装填した。制御アルゴリズムによってシリンジポンプをアクティブにして、細胞が計測区域を通過するまで流体を一方向に押した。次に、細胞が画像ウィンドウを反対方向に通過するまでポンプを逆動させた。このサイクルを室温で繰り返し、細胞の画像を5分ごとに記録した。
【0165】
図4は、画像しきい値(1ミクロン)を使用して細胞サイズを不連続的に計算することによって画像から抽出された単一細胞成長速度r(x,t)を示す。カメラは有限露光時間を有し、したがって、微粒子の速度は、ぶれのない画像が取得されるように十分に小さく維持した。記載されたシステムの場合、ペクレ数は0.5であった。したがって、拡散が有意であり、細胞が毛管壁に達し、それに付着することが可能となり、さらなる計測を阻止した。この制限にもかかわらず、実験は、フロー方向を反転することにより、懸濁液中の同じ細胞を多数回分析することができることを示した。細胞の移動を制御するのには簡単な制御アルゴリズムで十分であり、細胞成長を維持するのには毛管中の栄養素移送で十分であった。
【0166】
実験2 細胞順序の維持
この実験は、多くの細胞を同時に観察することができることを示す。細胞の順序を長期間にわたって維持することができるならば、これは、実験的に実現することができる。順方向および逆方向のフローの間に細胞の懸濁液の順序を維持することができることを実験的に示すために、ペクレ数が106のオーダーになるようにフローの速度を増大させるシステムを設計した。したがって、半径方向の拡散は最小であると予想され、各微粒子はその平衡半径に沿ってのみ位置すると予想された。
【0167】
流体の正確な反復可能ポンピングが、装置のもっとも重要な局面であり得る。マイクロリットルスケール量の流体の正確な反復可能ポンピングを保証するために、GlobalFIA製の市販品「Milli-GAT」ポンプを使用した。「Milli-GAT」容積型連続シリンジポンプは、広い範囲の流量にわたって10nLまでの精度で双方向流が可能であった。ポンプの入口および出口を閉ループで毛管の各端部に接続した。
【0168】
この場合、微粒子の速度のせいで、ビデオカメラ−顕微鏡システムを使用することはできなかった。代わりに、Ortho Cytoflurograph 50Hフローサイトメータを改造して、長さ75cm、内径100μmの毛管を含めた。この長さの毛管は溶液5.9μLを保持することができる。波長632nmのレーザービームを毛管の中間点に集束させた。または、波長488nmのレーザービームを使用することもできる。
【0169】
次に、微粒子の懸濁液を毛管に通して流した。各微粒子がレーザビームを通過するとき、光が散乱し、それを、二つの場所にある光電子増倍管、すなわち、レーザービーム軸から<8°の小さな角度にある光電子増倍管(微粒子サイズに比例する前方散乱)およびレーザビーム軸に対して直交する光電子増倍管(微粒子粒状度に比例する側方散乱)で収集した。異なる波長の光を側方散乱信号から分割することができ、微粒子の蛍光を計測することができる。側方および前方の両散乱の光電子増倍管信号を増幅し、電圧信号に変換した。信号の形状は、レーザビーム強さと微粒子断面積とのコンボリューションである。続いて、前方散乱電圧信号をデータ取得PCIカードによって100KHzの周波数でデジタル化し、カスタムLABVIEWデータ分析プログラムによってリアルタイムで分析した。
【0170】
微粒子の相対順序が長期間にわたって維持されることを試験するために、1.05g/Lショ糖溶液中10μmポリスチレンビーズの希釈溶液(104微粒子mL-1)を毛管に装填した。次に、Milli-GATポンプによって流体1μLを2μLs-1で60分間に202行程振動させた。ポンプを移動させるコマンドが発された時に対する各微粒子がレーザを横切る時間、ピーク高さおよび各微粒子のスリットスキャンをカスタムLABVIEWプログラムによって記録した。図8aは、長期間にわたって連続10個の微粒子が容易に識別されたことを示す。図中の直線は、実験開始時に平衡位置の近くにあり、その後、実験の過程にわたってそれらの場所に留まった微粒子の特性を示す。曲線は、はじめに平衡位置から遠く離れた位置にあった微粒子を示す。実験の過程で、それらの微粒子は平衡位置に移動する。予想されるように、「上」向きのスキャンは「下」向きのスキャンの鏡像である。さらには、時間とともに微粒子が早めの時期に「下」向き、のちに「上」向きに検出ウィンドウを横切ることを見ることは興味深い。これは、ポリスチレンビーズが、ビーズと担体溶液との密度差のせいで時間とともに沈降することを示すことができる。したがって、いくつかの実施態様において、PAは、微粒子の沈降速度を計測するために使用することができ、したがって、単一細胞密度を実験的に測定することができる。
【0171】
小さめのペクレ数で、微粒子は、より広い範囲の半径方向位置にわたって拡散することができると予想される。したがって、微粒子は、ランダムなプロセスで異なる時期に調査(interrogation)ポイントを横切ることができると考えられる。これは、図9に示すように微粒子レイノルズ数が0.25に低下したとき観察される。この図では、図8のより高レイノルズ数のフローと比較した場合、各微粒子がレーザを横切る時間が時間とともに有意に変化することに注目することが重要である。
【0172】
これらの実験において、θ方向へのレーザビーム強さは不均質であるため、図8Bに示す囲みの中の微粒子に関し、同じ微粒子の反復計測は、図10に示すように、同一のピーク高さをもたらさなかった。
【0173】
実験3 ビームの均質性
微粒子の光散乱性を一貫して計測する場合に、レーザビームの均質性が重要な考慮事項になることがある。この場合、レーザビームは、約120μm×5μmの楕円に形成した。楕円内で、レーザビーム強さはガウス分布を示し、楕円の中心でピーク強さが生じるものであった。レーザビームが毛管と交差すると、毛管の湾曲が楕円をより小さな約90μm×5μmの楕円に圧縮する。レーザビーム強さの不均質な形状は、いくつかの場合において、計測の精度に影響を与える。たとえば、同一量の蛍光体を有する二つの微粒子が同じ場所、同じレーザ強さでレーザビームと交差するならば、それらの微粒子が発する信号は同一であるはずである。他方、二つの微粒子が二つの異なる場所、二つの異なるレーザ強さで交差するならば、得られる信号は異なり得る。
【0174】
この効果は、微粒子の平衡半径がガウスレーザビームと交差するときに示される。平衡半径が減少すると、平衡半径にかかるレーザビーム強さの変動もまた減少する。この効果は、均一なポリスチレン微小球の懸濁液を装置に流すことによって実験的に計測することができる。たとえば、Shapiro, (1985)を参照すること。同じフローレイノルズ数の場合、より大きな微粒子は、より小さな微粒子よりも小さな平衡半径を有する。たとえば、Matas et al, (2004)を参照すること。したがって、前方散乱信号ピーク高さの標準偏差は、3、6および10μmの微粒子に関して図6に示すように、より大きな微粒子の場合により小さくなり得る。
【0175】
図6が示すように、レーザビーム強さの変動にもかかわらず、3および10μmの微粒子を区別するのに十分なサイズ差があった。毛管中の細胞の順序を維持することができることを実験的に試験するために、3μm微粒子と10μm微粒子との混合物を毛管に装填した。毛管中の微粒子の混合物は、交互に表れる微粒子サイズの特有の「バーコード」を生じさせた。
【0176】
次に、上記ポンピング装置を使用して、5 psigで3秒間、順方向のフローを開始させたのち、5 psigで3秒間、逆流させた。このプロセスを約50スキャン継続した。図7に示すように、3回のスキャンに関して59個の微粒子の特有のバーコードが保存された。予想されたように、反対方向に実施されたスキャンの場合、順序は逆転している。
【0177】
微粒子の相対順序付けが長期間にわたって維持されることを試験するために、1.05g/Lショ糖溶液中10μmポリスチレンビーズの希釈溶液(104微粒子mL-1)を毛管に装填した。MilliGAT (商標)ポンプによって流体1μLを2μLs-1で60分間に202行程振動させた。ポンプを始動させるためのコマンドが発された時に対する微粒子がレーザを横切る各時間、ピーク高さおよび各微粒子のスリットスキャンをカスタムLABVIEWプログラムによって記録した。
【0178】
実験4 多数の生細胞の追跡
図9Aは、約70分間にわたって追跡された四つの酵母細胞のプラグに関するPAデータのチャートである。この実験の場合、サッカロマイセス・セレビシエD603細胞の株を、30℃の振とうフラスコ中、YPD培地中で成長させた。次いで、細胞を新鮮なYPD培地で希釈し、毛管にポンピングした。チャートは、ポンプがアクティブになって、プラグを第一および第二の方向に移動させた時点からの時間(チャート縦座標)の関数として計測された、計測区域における個々の酵母細胞の時間的な検出(チャート横座標)を示す。データは、流体が計測区域にかけて前後に振動する間に細胞が実質的にその相対位置を維持することを示す。この実験手法の一つの態様において、各細胞を標識または他のマーカで標識して、プラグ内の個々の細胞の追跡を可能にすることもできる。
【0179】
図9Bは、個別に識別可能な微粒子(この場合、微粒子は生細胞である)を計測する効果を示す仮想チャートを示す。図9B中のデータ点は、たとえば、特定の波長で蛍光を発する標識で各細胞を標識することにより、PAシステムによって特有に識別することができる四つの異なる細胞を表すことができる。図9B中の各点は、特定の細胞を識別するための形状、すなわち正方形、三角形、円および菱形を有する。この仮想例において、一連の三角形に対応する細胞は、たとえば成長している可能性があり、したがって、その細胞は、一つの流線から別の流線への移行を起こしている可能性がある。これは、その細胞をプラグ中の他の細胞に対して減速(または加速)させることができる。図9Bは、変化中の細胞(一連の三角形)が、隣接する細胞(一連の正方形および円形)に対して順序を変更されているが、それでもなお、PAが細胞の位置を追跡できることを示す。いくつかの態様において、細胞移行が起こった領域に対応する曲線の特性を使用して、細胞特性、たとえば成長速度および集団平衡方程式を推測することができる。
【0180】
図9Cおよび9Dは、単一のサッカロマイセス・セレビシエD603酵母細胞に関するPAデータを示す。図9D中のデータは、実験で使用された光学検出器システムのミスアラインメントによる可能性がある、ランダムに変化するピーク高さを示す。
【0181】
実験5 検出点における空間変化
微粒子を探るためにレーザビームが使用される場合、そのビームは、計測区域を構成する楕円の各軸に沿ってガウス分布的強さを有することができる。いくつかの実施態様において、レーザ強さがわずかしか変化しない、ガウスビームの概ね中央部分(たとえば中央1/8)だけを使用することが有利である可能性がある。ビームをより大きな幅に拡大することにより、ビームのより少ない部分しか使用することができないが、ビームは、より均質になり得る。
【0182】
約5μm×760μmの楕円形レーザフィールドを100μm毛管に集束させて、図11に示すヒストグラムを反映する信号変動を有する同じ細胞の反復計測を可能にした。幅寸法におけるビームのさらなる拡大が、これらのピークの変動のより小さい係数を生じさせると予想される。
【0183】
実験6 ポンピング考慮事項
いくつかの態様において、時間の関数として流速を計測する高感度フローセンサをフローストリームと並列に配置することができる。この計測は、ストリーム中の流体および微粒子の正確なポンピングおよび制御のための基礎を提供することができる。上下方向への再現性振動速度パターンが図12Aに示されている。
【0184】
フローセンサ計測は、それぞれが実質的に同一である40の重なり合うポンプ行程トレースを示す図12Bに示すように、ポンピングが実際に非常に再現性のあるものであることを明らかにした。いくつかの実施態様において、ポンプ停止後の流体の緩和時間を減らすことができる2ポンプシステムにより、より小さい流体量を供給することもできる。この遅い緩和は、流体の圧縮性による圧力緩和の遅延によるものであり得る。
【0185】
実験7 ポリスチレン微粒子
直径6、10、15および20μmの単分散ポリスチレン微粒子を使用してPAシステムの再現性を試験した。図13は、200nLにほぼ等しいポンプ行程長を使用しての1時間にわたる15μm微粒子の追跡データを示す。データは、流体の放物線軌道速度プロファイルが原因で異なる流線中に移動する(すなわち速度を変える)微粒子によって示される、微粒子が半径方向には有意に拡散しないことを示す。隣接する行程の間の差を定量化するために、相対距離を測定し、それらの距離の度数分布関数を決定した。半径方向距離における微粒子のランダムな拡散から予想される分布を、Segre-Silberberg効果が明白に表れることを示すモンテカルロシミュレーション(図14)で計算した。おそらくはランダムな拡散のせいで、実験距離は予想分布よりもずっと狭く分布している。より高い流体速度の場合、理論的には特定の流線へのより良い集束の可能性が予想されるため、実験的に決定される分布はさらに狭くなると予想することができる。実験的に決定される分布は、原点を中心とせず、プラス時の方向にシフトしている。これは、軌道をわずかに傾かせる微粒子沈降速度のせいである可能性がある。この傾きは、流体の密度を微粒子密度の値まで増すことによって除去することができる。PAの一つの態様において、微粒子集団の密度分布は、沈降速度を表す軌道の傾きに基づいて決定することができる。
【0186】
図13および14のデータはまた、レーザビーム中での出現に基づいて時間的に追跡することができる微粒子の最大数を推定するための基礎を提供することができる。二つの微粒子の間の最小距離は、二つの行程の間で微粒子が移動することができる最大距離である。この例におけるこの距離は2mmである。25cmに及ぶ順序付けされた細胞のプラグ中ですべての微粒子が等しく離間していると仮定すると、これは、タイミング情報のみに基づいて125個の微粒子を追跡することができることを意味する。追跡中に微粒子を識別するのに役立つさらなる基準がある可能性がある。
【0187】
実験8 微粒子混合物
PAを使用して、図15Aに提示するような微粒子の混合物を追跡した。17個の微粒子の混合物は、四つの10μm微粒子および13個の20μm微粒子からなるものであった。図15Bは、この微粒子密度(この場合、1.05g/L)での追跡が、タイミング情報に基づくだけでは、より不明瞭になることを示す。しかし、計測される信号に反映されるような個々の微粒子性質を考慮に入れるならば、個々の微粒子軌跡の識別が可能である。10μm微粒子からの光散乱信号と20μm微粒子からの光散乱信号とは有意に異なる。10μm微粒子の信号強さにしたがって追跡データを選抜するならば、これらの微粒子を20μm微粒子から明確に区別することができる。対応する軌跡が図15Bに示されている。
【0188】
この例は、より高密度の集団の順序付けされた細胞セクションにおける個々の微粒子の軌跡をいかにして決定することができるのかを示すのに有用であるが、この手法を細胞集団にまで拡張する方法をも示す。細胞特性が計測可能範囲にわたって異なる実際の細胞集団において、追跡を容易にすることが有利である可能性がある。追跡は、プラグのセクション中の隣接する細胞が互いに十分に異なる限り、可能なはずである。
【0189】
実験9 セクション間の流体流
フローセルが、毛管中の溶質の交換を可能にするための多孔性中空ファイバに隣接するガラス毛管からなる態様において、流体流が毛管中で乱れないことを保証することが必要である場合がある。毛管中の乱流は細胞の順序付けを破壊するおそれがある。二つの直径が正確に合致しない場合に関してガラス毛管と多孔性領域との接合部の流体力学シミュレーションを実施した。図16は、毛管/多孔性領域接合部における、毛管が拡大する場合(a)および毛管が収縮する場合(b)の、選択された流線の速度プロファイルを示す。流線の大部分は無傷のままであり、壁の近くのいくらかがわずかに異なる挙動を示す。この領域は、毛管壁から半径の0.6倍またはそれを超える距離にある対象の流線に影響を与えないと予想される。レイノルズ数10の場合でシミュレーションを実施すると、流線がなおも層状であり、微粒子の位置に影響を与えないと予想されることが示された。実際の実験はより低い値を有する可能性がある。2300よりも大きいレイノルズ数の場合に有意な乱流を認めることができた。したがって、ガラス領域と多孔性領域との間の不完全な接合による乱流が微粒子順序付けに影響を与える可能性は低い。
【0190】
実験10 微粒子沈降速度
上述したように、PAは、計測された沈降速度からの微粒子集団の密度分布の決定を可能にする。微粒子の密度が流体媒体よりも高いならば、微粒子は、流体の振動中に沈降すると予想される。同様に、密度が流体よりも低いならば、微粒子は上昇すると予想される。ポンピングされた容量として表される毛管中の真の距離として微粒子の位置が決定されるならば、このような効果を実現することができる。この距離は、速度情報を使用して微粒子の時間座標を容量に変換することによって得ることができる。速度情報は、上記のようにフローセンサによって提供され得、図17に示すように、圧力緩和期間中に検出される微粒子は活動的なポンピング中に検出される微粒子よりもずっとゆっくりと移動することができるため、速度情報は重要になることがある。
【0191】
実験11 細胞対の追跡
細胞分裂を起こす細胞は、分裂が進むにつれ、微粒子の対に見えると予想することができる。いくつかの場合において、細胞分裂が起こるとき、細胞成分の分配関数を決定することが可能である。図18は、緩衝溶液中に懸濁したCHO細胞に関するPAデータを示す。この実験において、細胞対を70分間スキャンした。二つのモードの相対的大きさは70分間にわたり実質的に一定のままであり、その間、1分に一回、一つのスキャンを記録した。データは、長円形の微粒子が実際にその縦軸に沿って配向すること、および細胞対を追跡するためのPA装置を使用するスリットスキャンによる二つの細胞部分の推定が可能なはずであることを示唆する。
【0192】
実験12 微粒子干渉
Segre-Silberberg効果にしたがって、異なる半径の微粒子は、放物線軌道速度プロファイルに曝露されると、それぞれの平衡半径に移動することができる。各平衡半径は対応する軸速度を有するため、異なる半径の微粒子は異なる速度を有し、したがって、放物線流に曝露されると、異なる軸方向距離を移動することができる。したがって、異なるサイズの微粒子は、互いを横切り、相互作用する微粒子の平衡半径に干渉する潜在性を有する。これは、細胞の集団を考える場合、細胞サイズが一定の範囲の細胞サイズに分布しているため、特に当てはまる。
【0193】
微粒子サイズ分布が、提案された単一細胞追跡計測の動作をどのようにもたらすことができるかの二つの可能性がある。第一の可能性は、横断事象が起こるならば、微粒子が半径面中の異なる場所にあるという事実のために、それらの事象が完全に可逆性であるということである。したがって、微粒子は、互いを横切ることができると考えられるが、微粒子の最終軸方向位置を乱さないと考えられる。第二の可能性は、横断事象が、相互作用する微粒子の最終軸方向位置の可逆性変化を生じさせるかどうかということである。これが真であるならば、横断事象を排除しなければならない。最悪ケースシナリオとして、第二の可能性が、起こりうる唯一の可能性であるとみなされ、分析することができる細胞の最大数が計算される。まず、細胞の最悪ケースの懸濁液を反映するため、一方の微粒子が第二の微粒子の二倍の大きさである二つの微粒子(r1=10μm、r2=13μm)が計器中に存在するシステムを考案する。
【0194】
次に、システムの流量を与えられた数値シミュレーションから、これら二つの微粒子それぞれの平衡半径および速度を計算した(33,50)。次いで、二つの細胞の間の計算された速度差により、微粒子間の最小初期距離を計算して、行程の最後に、二つの微粒子が互いに離間した一つの微粒子直径になるようにする。この誘導中、行程長およびポンピング時間を含むすべての項が省略されて、これを可能なすべての行程長に適用可能にする。次に、最小距離で離間した微粒子で毛管を充填することにより、この絶対最悪ケースシナリオにおける細胞の上限を計算する。結果は図19に示されている。このプロットで見てとれるように、最悪ケースシナリオの場合でさえ、集団の挙動を正確に反映するかなりの数の細胞を分析することができる。図19に見られるように、異なるサイズの微粒子が互いに横切るとき、その横断事象は可逆性であり、各微粒子がレーザを横切る時間の有意な変動につながらず、したがって、追跡に影響を与えないと思われる。
【0195】
実験13 毛管導波管を使用するPA
毛管導波管として使用するためのテフロンAF毛管の適性を試験するために、2μmポリスチレンビーズを毛管にポンピングした。毛管の遠位端を光ファイバに近接させて配置することにより、光を毛管の遠位端からコア直径1mmのPMMA光ファイバケーブルに伝送した。光ファイバの他端は、散乱光の量が計測される光電子増倍管の中に向けた。図20は、2μmポリスチレンビーズからの側方散乱(SSC)ピーク高さ信号の分布を示す。変動係数(CV、標準偏差/平均×100)により、高質な信号ほどより小さなCVを有するとして信号の質を評価した。従来の集光光学部品を備えた市販のGuavaサイトメータからSSC信号を収集し、二つの異なるビーム幅で集束させた488nmの光で照射されたテフロンAF導波管を使用して収集されたSSC信号と比較した。テフロンAF毛管を使用して収集された信号は、Guavaサイトメータと比較した場合、有意に低下したCV値を示した。さらなるビーム拡大が、わずかに改善されたCVを生じさせた。
【0196】
導波管PA蛍光検出
テフロン毛管導波管を使用するPA中で、蛍光色素Bodipy (Alignflow Plus, Invitogen, Carlsbad CA)を含む6ミクロンポリスチレン微粒子を検出した。図21は、微粒子から検出された緑色蛍光の分布のチャートである。データは、たとえば調査用レーザビームに対して斜めに蛍光を計測することにより、従来のサイトメトリー光学部品を使用する市販のGuavaサイトメータを使用する同じ微粒子と比較される。微粒子を約10mWの488nmレーザビームで励起した。515nmカットオフフィルタを使用して、微粒子から直接散乱した488nm光をろ波した。
【0197】
本発明の態様のいくつかを説明した。しかし、本発明の真意および範囲を逸することなく様々な改変を加えることができることが理解されよう。たとえば、多数のレーザビームを使用し、所与の計測区域に向けて送って、計測における分光学的な融通性を提供することができる。または、多数の計測区域を、毛管内に垂直に「積み重ねた」層として構成することもできる。この態様は、たとえば、特有の光励起性を有する蛍光標識のための多数の検出シナリオを提供することができる。さらには、二次的な計測区域が、毛管に沿って、フロースイッチののち、たとえば図3の交差部305に存在して、一次流体流から除去されない微粒子に対してさらなる微粒子分析を実施することができるようにすることもできる。
【0198】
検出装置は、当技術分野で公知である光学構成を使用して、前方または側方散乱ではなく「後方散乱」構造に構成することもできる。記載された方法を使用して追跡することができる細胞の数は限定されず、好ましい態様において、PAは、何千もの細胞を追跡することができる。毛管の向きは垂直として一般に説明したが、毛管は、水平軸に沿って流れることができるように構成されてもよい。
【0199】
したがって、他の態様が添付の特許請求の範囲内である。
【0200】
参考文献
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35USC§119(e)の下、全内容が参照により本明細書に組み入れられる2007年4月12日出願の米国特許出願第60911361号の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、微粒子を分析するためのシステムおよび方法に関し、特に、フローストリーム中の微粒子を分析するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
一部の科学機器は、小さな微粒子を高い微粒子処理率で分析するように構成されている。フローサイトメトリーは、移動する流体のストリーム中に懸濁した微視的微粒子を計数し、検査し、選別するために使用することができる分析ツールの一例である。微粒子は生細胞を含んでもよく、したがって、方法は、生物学、病理学、免疫学および医学を含む生命科学の多くの分野で使用される。最新のサイトメータの処理能力は、微粒子の分析を1秒あたり何千をも超えて行うものであり得、したがって、細胞認識、成長または他の性質を伴う複雑な実験を行う際に速やかな結果を提供する。
【発明の概要】
【0004】
概要
一般に、一つの態様にしたがって、微粒子分析器(PA)が記載される。PAは、一つまたは複数の微粒子を順方向および逆方向の両フロー方向で計測することを可能にする。PAは、いくつかの態様において、長期間、微粒子の順序を維持する。一定量の流体内で、たとえば流体を毛管内で前後に振動させることにより、微粒子の流線(「プラグ」)を形成させることができ、そのプラグを、分析のために計測区域に通して振動させるように制御することができる。
【0005】
一つの一般的な局面において、方法が提供される。方法の一つの態様において、方法は、装置を提供することを含む。装置は、複数の微粒子を中に有する液体を含み、微粒子は、液体の流線中において実質的に直線上に順序付けされ、液体は、第一の方向のフローおよび第一の方向とは実質的に反対である第二の方向のフローを提供するように外部から制御可能である。方法はさらに、液体を第一のフロー方向に流す間に、計測区域またはその近くで複数の微粒子のなかから一つまたは複数の標的微粒子を計測することを含む。方法はまた、液体を第二のフロー方向に流す間に、計測区域またはその近くで複数の微粒子のなかから一つまたは複数の標的微粒子を計測することを含む。微粒子は、少なくとも一つのサイクル中に計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持しており、そのサイクルは、第一の方向への移動、次いで第二の方向への移動によって規定される。
【0006】
本明細書で使用する、一つまたは複数の標的微粒子を「計測する」とは、そのような微粒子に関連する一つまたは複数の定性的(たとえば標識の存在または不在)または定量的局面または特徴を検出または決定することを意味する。
【0007】
方法の一つの態様において、微粒子は、二つ以上のサイクル中、直線上の同一の順序を実質的に保持している。一つの実施態様において、サイクルの数は少なくとも5サイクルである。代替実施態様において、サイクルの数は少なくとも10サイクルである。別の実施態様において、サイクルの数は少なくとも100サイクルである。さらに別の実施態様において、サイクルの数は少なくとも1000サイクルである。
【0008】
一つの態様は、各サイクル中に一つまたは複数の微粒子が計測されることを提供する。
【0009】
代替態様において、微粒子は生物学的細胞であり、いくつかの場合において、細胞は酵母細胞である。
【0010】
一つの態様において、計測区域はレーザまたはカメラの焦点または焦点面である。
【0011】
一つの態様において、計測は、一つまたは複数の標的微粒子からの散乱光を計測することを含む。代替態様において、計測は、一つまたは複数の標的微粒子の写真画像を捕捉することを含む。
【0012】
様々な実施態様において、方法は、第一のフロー方向で多数の微粒子を計測したのち、フロー方向を反転させ、逆の順序で多数の微粒子を計測することをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施態様において、微粒子の一つまたは複数は標識されている。例示的な実施態様において、標識は蛍光標識である。
【0014】
一つの態様において、装置は、計測区域より生じるエネルギーを計測区域の遠位にある検出器へと導くように構成された毛管導波管を含み、液体が毛管導波管内に閉じ込められる。例示的な毛管導波管は非晶質フルオロポリマーで構成されている。
【0015】
一つの態様において、エネルギーは電磁エネルギーまたは音響エネルギーである。
【0016】
別の態様において、装置は、エネルギーを毛管導波管の第一端から毛管導波管の第二端まで反射するように構成された反射光学部品をさらに含む。一つの実施態様において、装置は、エネルギーを毛管導波管内から毛管導波管の外にある媒体へと伝達するカプラをさらに含む。一つの態様において、媒体は、エネルギーをカプラから検出器へと誘導する光ファイバであり、光ファイバは検出器と光学的に連絡している。
【0017】
いくつかの態様は、微粒子を選択的に加えるか、または複数の微粒子のなかから微粒子を選択的に除去することをさらに含む。一つの代替態様において、微粒子を加える、または除去することは、アクチュエータによって制御可能でありかつ流線と斜めに合流するクロスフロー流体を提供することを含む。一つの態様において、クロスフロー流体は、一つまたは複数の標的微粒子と同じまたは異なる微粒子を含む。
【0018】
代替態様において、方法は、複数の微粒子の環境条件を制御することをさらに含む。環境条件は、一つの態様にしたがって、温度、pH、塩度、光条件、磁場への曝露、医薬化合物、利用可能な酸素、発酵性糖および非発酵性糖、脂質、またはポリペプチドへの曝露のうちの一つまたは複数である。
【0019】
一つの態様において、方法は、第一の方向および第二の方向における標的微粒子の計測から細胞集団平衡方程式を決定することをさらに含み、微粒子は細胞である。
【0020】
一つの態様において、方法は、第一の方向および第二の方向における標的微粒子の計測から細胞分配関数を決定することをさらに含み、微粒子は細胞である。
【0021】
代替態様は、計測することが、液体のフロー軸に対して直交する伝搬軸を有する光ビームを提供すること、計測信号を受けるように適合された検出器を提供すること、および光ビームと標的微粒子または標的微粒子の表面に付着した部分との間の相互作用から生じる計測信号を検出することを含むことを提供する。態様の一つの変形において、光ビームはレーザから出力される。別の変形において、検出器は電荷結合素子またはアレイであり、別の変形において、検出器はカメラである。特定の態様は、計測信号が、減衰、波長シフト、コリメーション、またはモード構造のうちの一つまたはすべてを含むことを提供する。
【0022】
一つの態様で、装置は、流体流を提供するように適合された毛管を含み、液体は毛管内に含まれる。様々な実施態様において、毛管は約0.010mm〜約1cmの内径を有する。
【0023】
一つまたは複数の態様の様々な実施態様において、第一および第二の方向にフローを提供するための外部からの制御性は、ポンプを提供し、毛管の出力端と入口端との間に振動性圧力差を提供するようにポンプを制御することによって達成される。ポンプは入口および出口を含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されている。入口は毛管の入力端に接続され、出口は毛管の出力端に接続されている。態様の一つの変形において、ポンプは容積型ポンプ(positive displacement pump)である。
【0024】
一つの態様において、方法はサイトメトリー法である。
【0025】
いくつかの実施態様において、毛管はガス透過性毛管であり、流体の状態は、ガスをガス透過性毛管に通して流体に導入することによって変更可能である。いくつかの場合において、ガスは、酸素、二酸化炭素、および窒素のうちの一つまたは複数である。
【0026】
いくつかの実施態様において、装置は、複数の微粒子を毛管内に保持しながら緩衝溶液を毛管に導入することを可能にする一つまたは複数の個別に制御可能な緩衝液ポンプをさらに含む。
【0027】
いくつかの態様は、装置が、多孔性毛管と毛管内の流体との間で溶質交換を可能にするように構成された多孔性毛管をさらに含むことを提供する。
【0028】
一般に、一つの局面にしたがって、一つまたは複数の微粒子を分析するためのシステムが提供される。一つの態様において、システムは、流体流のために構成された管腔を有しかつ流体の屈折率よりも小さい屈折率を有する毛管であって、計測区域中の一つまたは複数の微粒子より散乱または放出するエネルギーを計測区域の遠位に位置する信号収集アセンブリへと誘導するように構成された毛管を含む。システムは、計測区域にエネルギーを付与するエネルギー源、および一つまたは複数の微粒子を計測区域にかけて前後に移動させるために毛管の端部に選択可能な圧力を加えるように構成されたポンプシステムをさらに含む。
【0029】
システムの一つの変形において、エネルギーはレーザからの光エネルギーである。
【0030】
システムの一つの変形において、毛管は中空孔導波管である。
【0031】
さらに別の変形において、システムは、毛管に固着されたカプラをさらに含み、このカプラが、毛管からの流体流を、流体を毛管から離して流す管に提供し、かつエネルギーを、毛管からエネルギー導管へと伝達するようにする。いくつかの態様において、エネルギー導管は、光エネルギーをカプラから光検出器に伝達する光ファイバ導波管である。
【0032】
一般に、別の局面にしたがって、細胞を選別するための方法が提供される。一つの態様において、方法は、毛管を提供することを含み、その毛管は、複数の細胞を含む液体をその中に含み、細胞は、液体の流線中において実質的に順序付けされ、液体は、第一の方向のフローを毛管に沿っておよび第一の方向とは実質的に反対である第二の方向のフローを毛管に沿って提供するように外部から制御される。方法は、細胞が第一のフロー方向に流れる間に、計測区域またはその近くで複数の細胞のなかから一つまたは複数の標的細胞を計測することをさらに含む。方法は、細胞が第二のフロー方向に流れる間に、計測区域またはその近くで複数の細胞のなかから一つまたは複数の標的細胞を計測することをさらに含む。方法は、一つまたは複数の標的細胞を含む液体を選択可能な方向に選択可能に導くように構成されたフロースイッチを提供することをさらに含む。一つまたは複数の標的細胞は、第一のフロー方向のフローおよび第二のフロー方向のフロー中、毛管内で実質的に直線上に順序付けされたままである。
【0033】
いくつかの態様において、毛管は導波管毛管である。
【0034】
いくつかの態様において、計測区域はレーザまたはカメラの焦点または焦点面である。
【0035】
いくつかの態様において、計測は、標的細胞からの散乱光を検出することを含む。
【0036】
代替態様において、計測は、標的細胞の写真画像を捕捉することを含む。
【0037】
いくつかの場合において、方法は、多数の細胞が第一のフロー方向で順に計測されたのち、フロー方向を反転させたところで多数の細胞が逆の順序で計測されることを提供し、いくつかの場合において、複数の細胞のうちの一つまたは複数の細胞が、一つまたは複数の細胞に関連する標識によって特有に識別可能である。
【0038】
様々な実施態様において、標識は蛍光分子であり、いくつかの実施態様において、標識はラマン活性化合物であり、計測することは、標識のラマンスペクトルを計測することを含む。
【0039】
方法の一つの態様において、標的細胞を計測することは、液体のフロー軸に対して直交する伝搬軸を有する光ビームを提供すること、計測信号を受けるように適合された検出器を提供すること、および光ビームと標的細胞または標的細胞に付着した標識との間の相互作用から生じる計測信号を検出することを含む。
【0040】
いくつかの態様において、光ビームはレーザからの出力である。
【0041】
いくつかの態様において、検出器は電荷結合素子またはアレイである。
【0042】
一つの態様において、検出器はカメラである。
【0043】
一つの態様において、検出は、減衰、波長シフト、コリメーション、スペクトル性またはモード構造を計測する検出を含む。
【0044】
いくつかの場合において、計測信号を検出することは、標的細胞からの散乱光を検出することを含む。
【0045】
方法の様々な実施態様において、液体は、流体流を提供するように構成された毛管内に含まれる。いくつかの態様において、毛管は0.010mm〜1.0cmの内径を有する。
【0046】
いくつかの態様において、第一および第二の方向へフローを提供することは、ポンプを提供することによって達成される。ポンプは入口および出口を含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されている。さらに、方法は、入口を毛管の入力端に接続し、出口を毛管の出力端に接続すること、および毛管の出力端と入口端との間に振動性圧力差を提供するようにポンプを制御して、液体を実質的に反対の方向に流すことを含む。
【0047】
一つの態様において、ポンプは容積型ポンプである。
【0048】
一つの態様において、複数の細胞は、分光学的に検出可能な部分を細胞に付着させることによって区別される。いくつかの実施態様において、分光学的に検出可能な部分は、蛍光またはラマン活性分子、ポリペプチド、無機クラスタまたは結晶である。代替態様において、分光学的に検出可能な部分はナノ結晶である。
【0049】
いくつかの場合において、標的細胞は細胞サイズに基づいて区別可能であり、いくつかの態様において、方法はサイトメトリー法である。
【0050】
さらに別の一般的な局面において、システムが提供される。システムの一つの態様において、システムは、少なくとも二つの端部を有する毛管と、毛管内に含まれ、懸濁した微粒子をその流体流線中に含む流体と、選択可能な圧力を毛管の端部に加えるように構成されたポンプシステムと、流体内の計測区域で一つまたは複数の標的微粒子を検出するように構成された信号収集アセンブリとを含む。ポンプシステムは、一つまたは複数の標的微粒子を計測区域にかけて前後に移動させるように制御可能であり、信号収集アセンブリは、一つまたは複数の微粒子が計測区域にかけて前後に移動するときに一つまたは複数の標的微粒子からの信号を記録するように適合されており、微粒子は、前後移動中に計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持している。
【0051】
一つのシステム代替態様において、毛管は導波管毛管である。いくつかの場合において、毛管は0.010mm〜1.0cmの内径を有する。
【0052】
一つの態様において、ポンプシステムは容積型ポンプを含む。
【0053】
一つの態様において、信号収集アセンブリは電荷結合素子またはアレイを含む。代替態様において、信号収集アセンブリは、計測区域またはその近くで標的微粒子の画像を収集するように適合されたカメラを含む。一つの態様において、計測区域はレーザまたはカメラの焦点または焦点面である。
【0054】
一つの実施態様において、信号は、ビーム減衰、波長シフト、コリメーションまたはモード構造の一つまたはすべてを含む。別の実施態様において、信号は、標的微粒子からの散乱光を含む。
【0055】
代替態様において、システムは、サイトメトリーに適合されたシステムである。
【0056】
さらに別の一般的な局面において、細胞集団動態を特性決定するための方法が提供される。一つの態様において、方法は、毛管に含まれる液体を提供することを含み、液体は複数の生物学的細胞を含み、細胞は液体の流線中において実質的に順序付けされる。方法は、制御可能な圧力を毛管に提供して、液体を第一のフロー方向および第一のフロー方向とは実質的に反対である第二のフロー方向に流すことをさらに含む。方法は、第一のフロー方向に流れる間に、複数の生細胞のなかからの一つまたは複数の標的細胞の生理学的または形態学的特徴を計測区域で計測することをさらに含む。方法は、第二のフロー方向に流れる間に、複数の生細胞のなかからの一つまたは複数の標的細胞の生理学的または形態学的特徴を計測区域で計測することをさらに含む。方法は、一つまたは複数の標的細胞の計測された生理学的または形態学的特徴からのデータを使用して細胞集団動態を特性決定することをさらに含む。計測中、複数の生物学的細胞の直線上の順序は実質的に変化のないままである。
【0057】
一つの態様において、第一および第二の方向のフローを提供するように適合された圧力源を提供することは、ポンプを提供することを含む。ポンプは入口および出口を含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されている。入口は毛管の入力端に接続され、出口は毛管の出力端に接続されている。方法は、毛管の出力端と入口端との間に振動性圧力差を提供するようにポンプを制御して、液体を第一および第二のフロー方向に交互に流すことをさらに含む。
【0058】
いくつかの場合において、一つまたは複数の標的細胞の生理学的または形態学的特徴を計測することは、単一細胞成長速度関数または分裂速度関数を計測することを含む。
【0059】
一つの態様において、方法は、液体の特性を変化させることにより、細胞のための動的環境を提供することをさらに含む。様々な代替態様において、特性は、温度、pH、塩度、光条件、磁場への曝露、化合物、利用可能な酸素、発酵性糖および非発酵性糖、脂質、またはポリペプチドへの曝露のうちの一つまたは複数を含む。
【0060】
一つの態様において、方法はサイトメトリー法である。
【0061】
一般に、さらに別の局面にしたがって、細胞成長を評価するための方法が提供される。一つの態様において、方法は、生細胞を含む液体を提供することを含み、細胞はその液体の流線中において実質的に直線上に順序付けされ、液体は、第一のフロー方向および第一のフロー方向とは実質的に反対である第二のフロー方向のフローを提供するように外部から制御可能である。第一のフロー方向に流れる間に、液体内の一つまたは複数の標的細胞のサイズが計測区域で計測される。第二のフロー方向に流れる間に、液体内の一つまたは複数の標的細胞のサイズが計測区域で計測される。細胞は、少なくとも一つのサイクル中に計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持しており、サイクルは、第一の方向への移動、次いで第二の方向への移動によって規定される。
【0062】
方法の一つの実施態様において、液体は毛管に含まれる。
【0063】
一つの態様において、第一および第二の方向のフローを提供するように適合された圧力源を提供することは、ポンプを提供することを含む。ポンプは入口および出口を含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されている。方法は、入口を、液体を含む毛管の入力端に接続し、出口を毛管の出力端に接続すること、および毛管の出力端と入口端との間に振動性圧力差を提供するようにポンプを制御して、液体を第一の方向および第二の方向に交互に流すことをさらに含む。
【0064】
いくつかの場合において、計測区域はカメラまたはレーザの焦点または焦点面である。
【0065】
一つの態様において、計測区域はレーザの焦点または焦点面であり、一つまたは複数の標的細胞のサイズを計測することは、電荷結合素子アレイ上の計測区域からの散乱放射線のパターンを検出すること、およびパターンに基づいて一つまたは複数の標的細胞のサイズを計算することを含む。
【0066】
一つの態様において、方法は、液体の特性を変化させることにより、生細胞のための動的環境を提供することをさらに含む。いくつかの場合において、特性は、温度、pH、塩度、光条件、磁場への曝露、化合物、利用可能な酸素、発酵性糖および非発酵性糖、脂質、またはポリペプチドへの曝露のうちの一つまたは複数を含む。
【0067】
方法の一つの態様において、方法はサイトメトリー法である。
【0068】
さらに別の一般的な局面において、化合物に対する細胞の応答を評価するための方法が提供される。一つの態様において、方法は、液体流線中において実質的に順序付けされる複数の細胞を含む液体を提供すること、液体内に化合物を提供すること、液体が第一のフロー方向に流れる間に液体内の標的細胞を計測すること、フロー方向を反転させ、かつ液体が第一のフロー方向とは反対の第二の方向に流れる間に標的細胞を計測すること、および計測に基づいて応答を評価することを含む。微粒子は、少なくとも一つのサイクル中に計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持しており、サイクルは、第一の方向への移動、次いで第二の方向への移動によって規定される。
【0069】
一つの態様において、化合物は医薬化合物である。
【0070】
一つの態様において、化合物は抗体または抗体断片である。
【0071】
いくつかの場合において、応答を評価することは、標的細胞への化合物の共有結合または非共有結合を検出することを含む。
【0072】
例示的な態様において、方法はサイトメトリー法である。
【0073】
さらに別の一般的な局面において、方法が提供される。方法は、一つの態様にしたがって、液体の流線中において実質的に連続的に順序付けされる複数の微粒子を中に有する、第一の方向および第二の反対方向のフローを提供するように外部から制御可能である液体を提供することと、第一のフロー方向に流れる間に複数の微粒子のなかから標的微粒子を計測区域またはその近くで計測することと、液体を第二の方向に流すことと、標的微粒子を計測区域またはその近くで計測することとを含む。微粒子の連続した順序は、計測のあいだ、第一および第二のフロー方向のフロー中、実質的に変化しないままである。標的微粒子は、第一のフロー方向で標的微粒子を計測し、フロー方向を反転させ、第一のフロー方向とは反対の方向で標的微粒子を計測するプロセスを繰り返すことにより、繰り返し計測される。標的微粒子は細胞であり、計測区域はレーザまたはカメラの焦点または焦点面である。計測は、標的微粒子からの散乱光を計測すること、または標的微粒子の写真画像を捕捉することを含む。微粒子の一つまたは複数は蛍光タグで標識されている。計測することは、液体のフロー軸に対して直交する伝搬軸を有する光ビームを提供することを含む。方法は、計測信号を受けるように適合された検出器を提供すること、および光ビームと標的微粒子または標的微粒子の表面に付着した部分との間の相互作用から生じる計測信号を検出することをさらに含む。光ビームはレーザから出力され、検出器は電荷結合素子もしくはアレイまたはカメラであり、計測信号は、減衰、波長シフト、コリメーションまたはモード構造の一つまたはすべてを含む。液体は、流体流を提供するように適合された毛管内に含まれ、毛管は直径0.010mm〜1.0cmである。第一および第二の方向にフローを提供するように外部から制御可能であることは、ポンプを提供することによって達成される。ポンプは入口および出口を含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されている。方法は、入口を毛管の入力端に接続し、出口を毛管の出力端に接続すること、および毛管の出力端と入口端との間に振動性圧力差を提供するようにポンプを制御することをさらに含み、ポンプは容積型ポンプである。この態様において、方法はサイトメトリー法である。
【0074】
現在のフローサイトメトリー技術に対する本システムおよび方法の利点は、個々の細胞または個々の細胞のセットをリアルタイムで追跡し、それらの生理学的状態の単一細胞成長、分裂および分配関数を抽出する能力を含む。さらなる利点は、とりわけ、大きな試料の場合の微粒子特性の計測における誤差の有意な減少、多数の標的種の細胞成長の「リアルタイム」モニタリング、実験をうまく実施するために必要な細胞集団サイズの減少および選別された細胞集団の純度の向上を含む。
【0075】
断りない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明に記載されるものと同様または均等である方法および材料を本発明の実施または試験で使用することができるが、適当な方法および材料を以下に説明する。加えて、材料、方法および例は、説明のためのものであり、限定的であることを意図したものではない。本明細書で挙げるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。矛盾がある場合、本明細書が、定義を含め優先する。
【0076】
本発明の一つまたは複数の態様の詳細を添付図面および以下の詳細な説明で述べる。他の特徴、目的および利点が、図面および詳細な説明ならびに特許請求の範囲から明らかになると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】一つの態様の微粒子分析器(PA)の概略図である。
【図1A】毛管導波管を含むPAの一つの態様である。
【図2】一つの態様のPAの簡略化部品、および時間に対する検出器応答のグラフを示す。
【図2A】左は、細胞順序を維持しながら新たな流体を毛管に導入するためのポンプシステムの例示的な態様であり、右は、一つの態様の、各ポンプ行程の最後での溶質濃度を示すシミュレーションである。
【図3】一つの態様の選別PAの概略図である。
【図4】時間に対する微粒子(酵母細胞)の面積を示すチャートである。
【図5】多孔性毛管を含むPAの一つの態様である。
【図6】3、6および10ミクロン微粒子の微粒子サイズに対する度数を示すチャートである。
【図7】事象数に対する微粒子サイズを示す三つ一組のチャートである。
【図8】検出された微粒子を反復およびポンプ始動からの時間の関数としてプロットする二つ一組のチャートである。
【図9】検出された微粒子を反復およびポンプ始動からの時間の関数としてプロットするチャートである。
【図9A】約70分間にわたって追跡した四つの酵母細胞のプラグのPAデータのチャートである。
【図9B】個別に識別可能な微粒子を計測する効果を示す仮想チャートを示す。
【図9C】一つのサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D603酵母細胞のPAデータを示す。
【図9D】一つのサッカロマイセス・セレビシエD603酵母細胞のPAデータを示す。
【図10】検出された微粒子に関して、反復に対するピーク高さをプロットするチャートである。
【図11】PA装置中で検出された前方散乱チャネル数に対する度数のヒストグラムである。
【図12】PA装置からの、時間に対する流体速度のプロットである。
【図13】15μm微粒子の追跡を時間的に示すプロットである。
【図14】PA装置中の二つのポンプ行程の間で微粒子が移動する相対距離の分布を示す。
【図15】PA装置からの微粒子混合物の追跡を示す。
【図16】毛管伸縮に関する微粒子速度プロファイルを示す。
【図17】PA装置における、時間に対する流体容量移動のプロットである。
【図18】PA装置からのCHO細胞の追跡を示すプロットである。
【図19】一つの態様の、分析された微粒子および流量の関数としての所望の作動範囲を示す。
【図20】毛管導波管PAを使用した側方散乱ピーク高さ信号の分布を示すチャートである。
【図21】テフロン毛管導波管を有するPAを使用して収集した6μm微粒子からの緑色蛍光の分布のチャートである。
【0078】
各図を通じて同種の参照記号が同種の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
例示的な態様の詳細な説明
微粒子分析器(PA)が記載される。一般に、PAは、液体のストリーム中の微粒子の懸濁液を二つ以上の方向に流すように構成された装置であってよく、フローの特定の領域において微粒子を分析するように構成された機器を含むことができる。一つの態様において、PAは、微粒子流の特定の挙動を利用することができる。特に、流線流体中で微粒子を順序付けすることができ、流体のフロー方向にかかわらず微粒子の順序が維持される二相流現象である、以下に説明するSegre-Silberberg効果をPAは利用することができる。いくつかの態様において、検出機器は、流線の近くに適切に配置されて、選択された微粒子または微粒子群(一般には微粒子の「プラグ」という)の計測を可能にする。
【0080】
一般に、PAは、微粒子を第一の方向で計測区域に通して流し、流体のフロー方向を反転させ、微粒子を第二の方向で計測区域に通して流すことにより、単一微粒子またはプラグに関して多数の計測を記録することができる。振動性流体動中、流線内の微粒子の順序は実質的に保存され得る。いくつかの実施態様において、一つまたは複数の標的微粒子の変化、たとえば細胞の成長または分裂を一定期間にわたってモニタリングすることができる。
【0081】
Segre Silberberg効果
流体中に懸濁され、ポアズイユのフローに供された希釈微粒子は、それらを含む管内で平衡半径に蓄積することができる。この現象はSegre Silberberg効果として知られている(Segre Silberberg, 1961, 1962)。有意な微粒子対管半径比の微粒子の実質すべてが、フロー内の同じ流線上で自己組織化することができ、したがって、フローの方向から独立して同じ速度を有することができる。
【0082】
流れる液体中の微粒子は、Flift=kΩsUsに等しい「揚力」Fliftを受けることができる。式中、kは比例定数であり、Ωsは、微粒子の角速度と平衡半径における微粒子の角速度との間の差として定義される角すべり速度であり、Usは、微粒子と流体との間の並進すべり速度である(Joseph et al., 2002)。理論モデルに対する数値解は、微粒子に対する揚力が、中心線上の微粒子が壁に向けて押され、壁の近くの微粒子が中心線に向けて押されるようなやり方で発生することを示唆する。したがって、一般に、力が反対方向に等しい定常状態半径方向位置(すなわち、実質的に、管内の流体の断面の中心からの位置)が存在し得る。
【0083】
揚力と対抗するものが、フロー内のランダムな熱力である。揚力と熱力との平衡が、微粒子が特定の流線中に留まるのか、流線を横切ってフロー内の隣接する流線に達し、ひいてはその速度を変化させるのかを決定する。流線内でフローの中心線から半径方向に微粒子を見いだす確率はフォッカー・プランク方程式によって表される。
[1]
式中、uはフローの平均速度であり、zは軸方向の距離であり、Dは拡散係数であり、rは半径方向の距離であり、Fliftは、半径方向位置rにおける微粒子に対する揚力である。
【0084】
フォッカー・プランク方程式の無次元化形態は以下のように記される。
[2]
式中、
であり、uはフローの平均速度であり、Lは、半径方向距離rに対して直交する長さスケールであり、Rは管半径であり、Fcharは、揚力F(x)で計られる特徴的力である。
【0085】
無次元群
は、熱変動と課された揚力との間の平衡を記述するペクレ数である。大きなペクレ数、すなわち、1よりもずっと大きいペクレ数の場合、系は、揚力に抗しながら細胞を押すのに十分なエネルギーを欠き、したがって、微粒子は流線を横切ることができない。小さなペクレ数、すなわち、1よりもずっと小さいペクレ数の場合、系は、揚力に打ち勝つのに十分な熱エネルギーを有し、微粒子は流線を横切って他の流線に入ることができる。Fcharを、球形微粒子が壁に付着しているときに受ける力に等しいと設定すると、ペクレ数は以下のように表すことができる。
[3]
式中、aは細胞半径であり、ρは流体密度であり、kBはボルツマン定数であり、Tは絶対温度である(Leighton and Acrivos, 1988)。
【0086】
細胞集団平衡方程式
細胞集団は、それぞれが別々に集団全体の性質に寄与する個々の細胞で構成される。細胞の状態は、細胞を構成する各成分の量の定量的表現からなる、いわゆる生理学的状態ベクトルによって定量的に表すことができる。したがって、細胞集団の状態は、これらの細胞状態が細胞集団内でどのように分布しているかを記述する密度関数によって決定することができる。細胞集団の状態が環境条件に応じて時間とともにどのように変化するのかを予想することが可能であるならば、特定の細胞タイプを徹底的に理解することができる。環境条件の例は、温度、pH、塩度、光条件、磁場への曝露、医薬化合物、利用可能な酸素、発酵性糖および非発酵性糖、脂質、ポリペプチド、または水性化合物への曝露を含むが、これらに限定されない。水性化合物の例は、環境汚染物質、栄養素、薬物(たとえば医薬化合物)および分泌物を含むが、これらに限定されない。このような理解は、適用目的に最適な生産性にとって最良な条件を決定するための強固な基礎を提供することができる。
【0087】
そのような記述を提供することができる定量的フレームワークは一般に集団平衡方程式からなる。これらの方程式は、細胞集団内の状態の分布を反映する密度関数の時間進化を記述することができる。しかし、一つの問題は、大部分の細胞系に関して方程式のパラメータが未知であるということである。一般に、パラメータは、三つの基本的な生理学的関数、すなわち速度関数、分裂速度および分配関数からなることができる。速度関数は、生理学的状態ベクトルが時間とともにどのように変化するかの成長速度(rate)または速度(velocity)を記述することができ、細胞の状態および細胞環境に依存する。
【0088】
分裂速度は、所与の生理学的状態で細胞が分裂する速度を表すことができ、分配関数は、細胞が細胞分裂時にその構成成分をどのように分配するのかを記述することができる。これら三つの関数の実験的決定は、いわゆる「逆」問題の解を伴うため、非常に困難な作業である。この手法においては、一般にはフローサイトメトリーまたは顕微鏡検査法で得られる細胞集団データから、集団平衡方程式のパラメータに反映される個々の細胞の性質を抽出する。
【0089】
この手法は、全系が個々の時点におけるスナップショットとしての計測値によって表される、流体力学におけるオイラー参照フレームに類似している。対照的に、ラグランジュ参照フレームでは、個々の微粒子を時間的に追跡して、個々の成分の寄与の和として全細胞集団の性質の記述を与える。
【0090】
図1は、一つの態様のPA100の概略図である。PA100は、毛管105、光源110、光検出器115、毛管端部130、135に圧力を供給するポンプシステム120およびPA100の電子的および機械的局面を制御することができる主制御装置140を含む。一つの特定の態様において、主制御装置140はコンピュータ、たとえばパーソナルコンピュータである。図1は、個別にA、B、Cなどと標識された微粒子150を含む流体145で充填された毛管105を示す。各微粒子は、たとえばサイズ、形状、スペクトル性、微粒子に付着した標識もしくは微粒子の他の特徴または微粒子に付着した他の成分によって区別することができる。一つの態様において、微粒子は、微粒子そのもののラマンスペクトルまたは微粒子に付着した標識のラマンスペクトルに基づいて区別することができる。別の態様において、微粒子は、微粒子そのものの蛍光スペクトルまたは微粒子に付着した標識の蛍光スペクトルに基づいて区別することができる。
【0091】
一般に、毛管105は、流体流を支持する管腔である。いくつかの態様において、毛管105は、円柱形のガラス管、たとえば内径100μmのガラス毛管である。市販の毛管を用いるようないくつかの場合において、毛管製造工程は、毛管の引っ張り強さを高めることができる保護ポリマーコーティングを加えることを含む。このコーティングは、たとえばポリマーコーティングの一部をブタン炎で焼去することにより、毛管105の計測区域から除去することができる。
【0092】
毛管105の寸法は、PAの設計考慮事項および他の要因にしたがって選択することができる。たとえば、内径は、高い微粒子直径対内径比を達成するように選択されてもよく、それが、いくつかの状況においては、Segre-Silberberg効果を最大限にすることができる。
【0093】
一般に、ポンプヘッドの圧力に影響しないような、すなわち、毛管の長さにわたる圧力降下が、ポンプが送り出すことができる最大圧力未満になるような内径の毛管を選択することが望ましい。好ましい態様において、100μm内径が、誘発されるSegre-Silberberg効果の大きさと、圧力降下と、ビームプロファイルの均一さとの間で良好な妥協を提供する。毛管105全体にわたるレーザ強さの均一さは、微粒子から位置非依存性信号強さを得るために重要であることがある。毛管の長さは、ポンプヘッドにおける圧力を考慮することによって選択することができる。好ましい態様において、毛管長さは75cmである。この長さは、適当なポンプシステムの圧力限界に近く、約25cmの順序付けされた細胞のプラグを支持する。
【0094】
一般に、毛管105中の微粒子150は、適切なサイクル数または期間、流体145を前後に移動させる(流体を振動させる)ことによって順序付けすることができる。いくつかの態様において、サイクルの数は、たとえば、5サイクル、10サイクル、100サイクルまたは1000サイクルであってもよい。いくつかの場合において、微粒子は、一つのサイクルの流体前後動中に順序付けすることができる。流体145の前後動は、先に説明したように、Segre-Silberberg効果にしたがって微粒子を流体145内で不連続な流線155へと組織化させることができる。
【0095】
一般に、流体は、ポンプシステム120を介して毛管端部130、135に適切な圧力を加えることにより、振動的に移動させることができる。いくつかの態様において、「圧力」は、正圧および負圧の両方を含むことを意味する。適当なポンプシステム120は、たとえば、耐圧ホース121を介して毛管端部130および135それぞれに取り付けられたポンプ入口側およびポンプ出口側を有する容積型ポンプを含むことができる。いくつかの態様において、ポンプはGlobal FIA MilliGAT (商標)ポンプ(Fox Island, WA)である。いくつかの態様において、ポンプシステム120は、毛管105に加えられる静圧源を含むことができ、流体動は、毛管の端部130、135に取り付けられたベント(図1には示さず)を開閉することによって達成することができる。ベントの開閉は、圧力を毛管の片側から逃がすことができ、より低圧に向かう流体動を誘発する。
【0096】
いくつかの態様において、ポンプシステム120は、手動で制御することができる。他の態様において、ポンプシステム120は、以下に説明される、流体145の移動ならびに光源110および検出器115システムの機能を自動化する組み込まれたパッケージの一部としての制御システム140によって制御することができる。そのようなパッケージは、たとえば、制御システム140上で作動するソフトウェアプログラムで具現化され得る。
【0097】
一般に、「計測区域」160は、微粒子150の特性決定が起こる区域である。一つの態様において、計測区域160は、毛管105内の流体145の断面に実質的に等しい。いくつかの態様において、計測区域160は、流体145の特定の区域に焦点を合わせることができ、全断面積を含まない。たとえば、計測区域160は、流体145内の一つの特定の流線に焦点を合わせることができる。そのような態様において、特定の流線内の微粒子150だけが特性決定され得る。
【0098】
一般に、計測区域160は、光源110の出力から形成される焦点面であり得る。一つの態様において、光源110は、図1に示すようにレーザ光ビーム165を形成するレーザである。一般に、一つまたは複数の光学要素170、175を使用して、計測区域160のパラメータ、たとえばフィールドサイズおよび形状を制御することができる。一般に、光学要素170、175は、図1に示すように光ビーム165を面160に集束させることもできるし、または、毛管105または流線155内の点に集束させることもできる(図1には示さず)。光学要素175は、両側に、または光が毛管105に入る側に対して斜めに配置され、散乱光または画像計測区域160を検出器115に向けて送ることができる。簡潔に示すために、二つの光学要素170、175が図1に示されている。しかし、多数の光学部品を使用して、所与の実験に必要な所望の計測区域パラメータを達成することができることが理解されよう。同様に、多数の光源110を使用して、毛管105内に含まれる流体145および微粒子150を調査することができる。一つの態様において、ビームホモジナイザユニットを光学要素170に組み込むことにより、均一なレーザビームプロファイルを作成することができる。ビームホモジナイザは、一連のビームエクスパンダおよびコリメータを使用して均一な強さの長方形のビームを生成することができる。
【0099】
一般に、検出器115は、光エネルギーを収集し、それを、制御システム140によって処理することができる電気信号に変換するための装置であり得る。いくつかの態様において、検出器115は、フォトダイオード、電荷結合素子または他の類似したタイプの光検出器であり得る。いくつかの態様において、検出器115は、計測区域160のビデオまたは静止フレーム画像を収集することができるカメラであり得る。この状況において、光源110は、「白い」光を提供することができ、光学要素170、175は、計測区域160をカメラレンズに撮像するように構成された顕微鏡対物レンズを含むことができる。いくつかの態様において、光源110は、たとえばダイオードレーザの出力に類似した狭帯域の波長を放出して、微粒子の特定のスペクトル特徴を調査したり、波長バンドの範囲で光学吸収を有する標識を励起したりすることができる。さらに他の態様において、多数の検出器115(関連する収集光学要素175を有する)が、ビーム165伝搬軸を外れた計測区域160からの散乱放射線を捕捉するように包囲する、または配置することができる。たとえば、検出器115を毛管105の背後および/または側方に配置することができる。検出器115は、微粒子上の標識として使用される分子または無機クラスタ、たとえば蛍光ナノ結晶などから蛍光を収集するように適合させることができる。
【0100】
一般に、微粒子計測および検出は、光学、すなわち電磁ベースのモダリティの使用に制限されない。PAのいくつかの態様において、音響発生器および検出器を使用して、計測区域160を通過するときの微粒子150を検出することもできる。そのような態様は、サイトメトリーの当業者によって知られ、認識されるような無線周波数(FR)、高調波および超音波装置を含むが、それらに限定されない。
【0101】
一般に、微粒子の検出は、蛍光部分によって標識された微粒子からの蛍光を検出すること、CCD装置115上で光散乱パターンを識別すること、および一般にサイトメトリーに適用可能である他の検出法を含むことができる。
【0102】
一般に、PAは、計測区域160から遠位の信号検出を可能にする部品を含むことができる。一つの実施態様において、図1Aを参照すると、導波管PA175は毛管導波管180を含む。毛管導波管180は、微粒子からの散乱光を毛管導波管180に沿う方向に「誘導」することを可能にする適当な管腔であり得る。例示的な毛管導波管180材料は、非晶質フルオロポリマーをはじめとするフッ素含有ポリマー、たとえばDuPontが販売するテフロン(登録商標)AFを含む。
【0103】
テフロン(登録商標) AFから構築された毛管導波管180は、ポリマーの屈折率が水よりも低いという特有の光学特性を有する。したがって、水を充填されたテフロン(登録商標) AF毛管導波管(たとえば、Random Technologies Inc. (San Francisco, CA)によって販売されるものは、液体コア導波管のような挙動を示し、光ファイバとして機能する。さらには、材料そのものが、UVおよび可視光に対して実質的に透過性である。したがって、レーザを毛管導波管180の軸に対して垂直に照射することができ、個々の細胞が計測区域188を通過して流れるとき、直交散乱光を約30°の円錐中に収集し、毛管導波管の遠位端に誘導することができる。
【0104】
導波管PA175は、ポンプ185、配管185a、185b、コネクタT187a、187bおよび毛管導波管180を含む回路中で流体を循環させることができる、関連する配管185a、185bを備えたポンプシステム185を含む。一つの実施態様において、流体は、ポンプ185から配管187を介してコネクタT187aにポンピングされる。コネクタT187aおよび187bは、それらの中に流体を流すように構成され、毛管導波管180からの光をそれらに通して伝搬させるのに十分なほど透明である。例示的なT(「カプラ」パーツ番号P-713)がUpchurch Scientific, Oak Harbor, WAから市販されている。流体は、コネクタT187aから毛管導波管180の中に連続し、遠位端に向かって(すなわち、コネクタT187bに向かって)移動する。微粒子は、計測区域188を通過し、光照射野に遭遇したとき、光を散乱させることができる。散乱光は、導波管の分野で公知であるように、内反射することができる。流体は、導波管180の遠位端に向けて連続し、コネクタT187bに達すると、配管185aを通過してポンプ185に戻り、そこで循環を続けることができる。
【0105】
計測区域188またはその近くの微粒子から散乱する光は、内反射を受けることができ、毛管導波管180によって端部に向けて送られ得る。コネクタT187a、187bは、光が導波管180の外に伝搬し、別の物体の中に伝搬することを許すカプラとして働く。いくつかの実施態様において、検出器は、できるだけ多くの光を捕捉するために、コネクタTに隣接して配置され得る(図1Aには示さず)。他の実施態様において、さらなる導波管、たとえばソリッドコア光ファイバ導波管191をコネクタT187aに結合して、光を他の光学または電気光学部品に向けて送ることもできる。図1Aは、光を波長にしたがって分けることができる光学部品192に向けて光を送り、微粒子のスペクトル分析においてより大きな多用性を可能にする光ファイバ191を示す。一連の光電子増倍管193が、上記のように、選択された波長を検出することができる。
【0106】
光学部品192の一つの態様は、光ファイバスプリッタ(たとえば、Fiber Optic Network Technology Co. (Surrey, British Columbia, Canada)によって供給されるものの使用を含み、それは、必要な光学要素の数を減らすことができる。これらのスプリッタは、光ファイバ191からの光の個々の波長をろ波し、光を別個のPMT193に送ることができる。光ファイバスプリッタの使用は、信号を、設置されたスプリッタの総数で割ることを要する場合がある。各細胞から収集される光の合計量は、導波管毛管の一端にミラー189、たとえば放物面鏡を設置して、検出器へと反対方向に散乱した光を反射して光ファイバコレクタに戻すことによって倍増させることができる。さらなるオプションとして、光ファイバを毛管の両端に接続し、相応に分割することもできる。
【0107】
一般に、導波管PA175は、他のPA実施態様で求められる光学要素および光学アラインメントの数を減らすことができる。
【0108】
次に、PAの作動局面のいくつかを説明する。一般に、再び図1を参照すると、上記のように、ランダムに分散した微粒子150を含む流体試料145を毛管に導入することができる。計測区域160よりも上の微粒子150 (実線の円)は、毛管端部130に加えられる圧力が端部135の圧力よりも大きいとき、それぞれの流線155に沿って下流の地点(破線の円)まで移動することができる。流体の振動は、一定数の前後動サイクルののち、上記Segre Silberberg効果にしたがって、微粒子150を実質的に順序付けすることができる。その後、微粒子150は、他の微粒子に対してその流線内位置および流線間位置を保持するはずである。微粒子150を各流線155中に順序付けすることは、計測区域160もしくはその近くまたは毛管105内の他の場所で達成することができることが理解されよう。
【0109】
特定のプラグ、すなわち微粒子150の群は、それが検出システム(たとえば検出システム115)によって個別に計測され得る計測区域160にプラグを通すように制御システム140によって制御され得る。
【0110】
図1に示す微粒子150を参照すると、フローが下向きである状態で、「B」微粒子が最初に計測されたのち、二つの「A」微粒子が計測され、次いで「B」微粒子が計測される等である。PAシステム100は、フロー方向を反転させることにより、微粒子の反復計測を実施することができる。そして、微粒子がB、A、A、Bの順で計測区域を横切るとき、計測は「上」向きのフローで進むことができる。微粒子プラグの前後動は無限に継続し、微粒子150の相対順序を維持することができる。このようにして、PAを使用して、個々の標的微粒子または微粒子150のプラグに対して多数の計測を実施することができる。
【0111】
一般に、いくつかの状況において、前記説明におけるように全プラグを計測することが望まれない(または不要である)場合がある。事実、いくつかの場合において、微粒子のプラグのうち一つの選択された微粒子だけを繰り返し計測することが有利である可能性がある。十分なフロー制御を備えたポンプシステム120は、毛管内の微量の液体を移動させることができ、したがって、選択された微粒子の非常に小さな位置変化を生じさせることができる。したがって、再び図1を参照すると、B-A-A-Bプラグからの「A」微粒子の一つを「選抜」し、その「A」微粒子を計測区域160にかけて振動させることにより、繰り返し分析することができる。
【0112】
図2は、PAシステム100の簡略化部品、および時間に対する検出器応答の対応する例示的グラフを示す。図2の左側(「スキャン1」)は、毛管(図2には示さず)内に含まれた流線155内の微粒子「A」および「B」を示す。他の部品は、図面の簡略化のために省略されている。スキャン1に関する下部分には、時間に対する検出器応答の例示的なチャート210が示され、ライン215がスキャンのデータ点を表している。微粒子150が、指示されたフロー方向の場合に計測区域160を通過するとき、検出器応答を計測することができる。この例においては、応答は、微粒子Bの場合よりも微粒子Aの場合の方が小さい。これは、たとえば、微粒子Aが微粒子Bよりも小さい場合に生じ得る。スキャン2に示すようにフロー方向が反転すると、検出器応答は、微粒子Aの場合よりも微粒子Bの場合の方が大きい。
【0113】
微粒子150は、一つの流線155中に移動することができ、いくつかの場合において、微粒子150は、フロー方向に対して実質的に垂直な方向に拡散することができる。たとえば図2のスキャン2における微粒子Aの位置は、スキャン1のあいだのその元の位置からの軸方向移動によって変化している。検出装置がその検出において軸方向寸法に沿って不均質であるならば、フロー方向以外の方向への拡散が有意になり得る。二つの微粒子が互いを越えて拡散するほどに微粒子間距離が小さいならば、軸方向の拡散が有意になり得る。一般に、PA中の微粒子拡散は、毛管105中の微粒子150の濃度を調節することによって制御することができる。これは、毛管105中の微粒子間の平均軸方向距離を変化させる効果を有し得る。
【0114】
PAシステム100は、個々の細胞または個々の細胞のセットの細胞成長をモニタリングすることによって細胞集団動態を計測するために使用することができる(たとえば、以下の実験部を参照)。本明細書で使用する「細胞集団動態」とは、細胞集団の細胞の一つまたは複数の生理学的または形態学的特徴における時間的変化をいう。流体パラメータ、すなわち温度、栄養素レベル、酸素含量または他の要因を制御することにより、細胞成長、アポトーシスまたは他の形態の細胞死および他の生理学的機能を環境の関数として研究することができる。
【0115】
一般に、PAを使用して、個々の細胞に対する特定の化学物質、たとえば薬剤の効果をモニタリングすることができる。一つの態様において、細胞または細胞プラグを計測区域の領域に限局化し、一つまたは複数の薬物に曝露することができる。薬物の効果は、一定の期間、細胞または細胞プラグを振動させて計測区域に通し、薬物の影響下にある細胞の適切な局面を計測することにより、特定の成長状態(たとえば細胞周期における位置)中にモニタリングすることができる。
【0116】
例示的な態様において、細胞の懸濁液を含む流体に化合物を加えることにより、薬学的研究を実施することができる。細胞は、細胞株、寿命、サイズおよび他のパラメータに関して実質的に均質であることもできるし、細胞は、いくつかの異なる株の混合物であることもできる。PAは、個々の細胞に対する化合物の効果のモニタリングおよび一つまたは複数の細胞における効果の他の細胞に対する比較を可能にする。たとえば、図1を参照すると、流体内の化合物の「A」細胞に対する効果を、「B」細胞に対する効果および同じく「C」細胞に対する効果と比較することができる。計測は、上記のように流体を計測区域にかけて前後に振動させることにより、現実的に何回でも繰り返すことができる。
【0117】
別の態様において、PAは、流体内の抗体/抗原の多数の組み合わせに関して細胞抗体/抗原結合を認識するために使用することができる。たとえば、細胞の表面に付着または潜在的に付着したいくつかの異なる抗体を有する細胞培養物を調製することができる。PAは、当技術分野で周知である蛍光法を使用して、たとえば蛍光標識された抗体および/または抗原を使用して、抗原/抗体結合をモニタリングすることができる。計測区域を通過する標識された抗体/抗原複合体を有する細胞は、高い精度で非標識細胞から区別することができ、細胞のライフサイクルの特定部分を通してモニタリングすることができる。
【0118】
PAの一つの実施態様は、PAが作動しているとき、進行中であり得る計測を乱すことなく、細胞外液を交換する能力を含む。図2A左を参照すると、毛管の各端は、弁およびポンプシステムを含むことができる。図示するように「下」向きにポンピングしているとき、下弁を作動させ、流体を廃棄物受け器に向けて送ることができ、上弁をポンプ側に作動させることができる。次いで、ポンプをオンにして、流体を下方向に移動させることができる。同様に、「上」向きにポンピングするためには、上弁を作動させて流体を廃棄物受け器に向けて送ることができ、下弁をポンプ側に作動させることができる。このようにして、各ポンプ行程中、新鮮な媒体の一定した供給を絶えず毛管に導入することができる。
【0119】
図2Aの右側は、前記PA実施態様の、各行程の最後の溶質濃度のシミュレーションを示す。行程ゼロは初期状態に対応する。細胞は流体の最大速度よりもゆっくりと動くことができるため、流体が交換される間、微粒子は毛管中に保持される。したがって、新鮮な流体の先端が毛管の端部に達するならば、細胞は毛管中に留まることができる。
【0120】
一般に、広い範囲のサイズに関して、微粒子は、中心線から壁までの距離の約55〜75%の潜在的な半径方向位置の範囲に閉じ込められ得る。したがって、微粒子は、流体の放物線軌道速度プロファイルの先端よりも低い速度で移動することができ、微粒子は、流体の先端よりも遅れ得る。行程容量が、新鮮な流体の速度プロファイルの先端が毛管の端部に達するところにセットされるならば、微粒子は毛管中に保持され得る。この状況において、毛管は、Aris-Taylor分散と呼ばれる分散を示す層流反応器としてモデル化され得る。これは、振動中の各行程の入口で新鮮な媒体を絶えず導入することによってシミュレーションすることができる。したがって、図2A (右)に示すように、はじめ溶質を含まない毛管を与えられると、振動流スキームは、微粒子を毛管中に閉じ込めながら毛管の内容物の99%を10行程内に交換することができる。この手法は、システム中の流体の所要量を20mLから100μL未満に減らすことができる。
【0121】
一般に、毛管がペルフルオロポリマーのようなガス透過性材料で形成されているならば、流体内のガス濃度は、毛管上に流されるガス混合物を調節することによって制御することができる。たとえばテフロンAFは、大きなガス透過性を有する。一つの実施態様において、非酸素ガスを導波管上に流すことにより、たとえばガス管190から窒素ガスを毛管180上に吹き付けることにより、流体中に嫌気条件を得ることができる。別の実施態様において、二酸化炭素を導波管に吹き付けて、毛管中の流体のpHを調節することができる。
【0122】
一般に、毛管(たとえば毛管105および180)の温度は、公知の方法によって制御することができる。一つの実施態様において、たとえばガス管190を使用して温かいまたは冷たいガスを毛管上に吹き付けることができる。別の実施態様において、毛管に対し、加熱または冷却することができる熱伝導性ジャケットを装着することができる。そのような実施態様において、検出システムおよび光源との間の見通しを許すために、毛管のセクションを開放状態に残すこともできる。さらに別の実施態様において、流体の流路が、所望の温度に加熱または冷却される熱浴を含むことができる。
【0123】
一つの一般的な局面で、PAシステムは、微粒子を選別するように構成され得る。選別機構は、検出された微粒子の経路を計測結果にしたがって変えることができる組み込まれたフロースイッチを含むことができる。たとえば、細胞が計測されたのち、大きな細胞が一つの方向に流れ、より小さな細胞が異なる方向に流れるように細胞の経路を変えるフロースイッチをアクティブにすることができる。所与の微粒子信号に曖昧さがあるならば、微粒子が再び計測区域を通過するように流体を逆流させることができる。そして、微粒子の第二、第三および第四の計測を実施してそのサイズをより正確に計測することができる。
【0124】
図3は、一つの態様の選別PA300の簡略図である。この場合、選別PA300は、微粒子追跡および選別モードで使用することができる。いくつかの実施態様において、選別PA300は、図1に示すPAシステム100の要素を含むことができる。明瞭に示すために、図1の要素すべてが図3に示されているわけではない。選別PA300は、所望の計測技術を実施するために、毛管305、計測区域360、検出システム315および光学部品370を含む。毛管305は、細胞をその下向き経路から異なる経路、この態様では管330に経路変更することができる、一般に306で示すクロスフロー部または交差部を有することができる。管310は、交差部306で流体を毛管305に加えるために使用することができる。管310からの流体圧の適用は、適当な時期に、たとえば、流体の速度を考慮しながら、検出器315から信号を受けたのち、微粒子が計測区域360から交差部306までの距離を移動するために要する時間の量にフローを開始させるために、制御システム340によって制御され得る。
【0125】
たとえば、図3を参照すると、流線307および306上のそれぞれ「A」および「B」細胞を、計測区域360を通過するときに検出することができる。計算された時間遅延ののち、制御システム340は、「A」細胞が検出されるときフロースイッチ315を介して流体圧を管310に加えることができる。計算された時間遅延は、計測区域360から交差部306への「A」微粒子の移動時間に一致することができる。より大きな細胞集団(すなわち、たとえばB、CおよびD細胞を含むことができる集団)内の実質すべての「A」は、管330へと逸らされ、容器325中に収集され得、B細胞(および、あるならば他の細胞)は、それらの流線経路306に沿って移動し続け、別個の容器320に収集され得る。この例における「A」細胞の検出は、たとえば、光ビーム365を流線307上の点に集束させることによって達成することができる。または、「A」細胞は、先に記載したように焦点面360を通過することによって検出可能であるマーカで標識され得る。
【0126】
すべての態様において、選別PAは、実質的に無限の選別能力を可能にする多数の交差部および選別モダリティを含むことができる。
【0127】
選別PAの一つの態様において、微粒子は、微粒子履歴に基づいて選別することができる。微粒子履歴に基づく選別は、不連続的な時点における性質のみに基づくのではなく、特定の履歴(たとえば成長または分裂)を有する細胞のような微粒子の選択を可能にする。
【0128】
そのような態様の一つの実施態様は、流体経路上、毛管内で細胞が振動させられる区域に対して遠位に配置された低角「Y」弁の使用を含む。選別が望まれる場合、Y弁を作動させ、微粒子のプラグを選別毛管中にポンピングすることができる。この実施態様において、液体の流量を計測して、二つの異なる方法により、すなわち1)前進散乱ピーク幅をピーク高さと比較して速度を抽出する方法、または2)たとえば軸方向に既知の距離を挟んで配置された二つのレーザビームを使用し、ビームごとの微粒子到達時間を計測することによって微粒子の速度を計時する方法により、各微粒子の速度の計算を可能にする。微粒子が第一のビームを横切ると、タイマーが始動し、微粒子が第二のビームを横切ると、タイマーが停止する。二つのビームの間の距離は既知であるため、微粒子速度を計算することができる。いずれかの方法で各微粒子の速度を計算することができ、各微粒子がY弁に到達する時を正確に決定することが可能になり、そのときにY弁を適切にアクティブにすることができる。
【0129】
選別PA中の選別される微粒子の「純度」に影響を与え得る一つの変数は、毛管中の微粒子間の距離およびシステムの流量である。これら二つのパラメータを調節することにより、プラグから微粒子を選別するための時間のウィンドウを延ばすことができ、所望の微粒子を単離する確率が高められる。微粒子間の距離は、選別が起こる区域の手前で狭い毛管を使用することによって増すことができる。
【0130】
一つの態様において、選別オプションは、サイクルまたは実験中に微粒子のプラグに微粒子を加える、または微粒子のプラグから微粒子を除去することを可能にする。この態様において、図3を参照すると、毛管305の一端に圧力を加えることにより、細胞のプラグを選別交差部306に向けて移動させることができる。選択された微粒子が交差部306に達すると、主毛管305中のフローを停止させ、スイッチ315をアクティブにして、管310からクロスフローを発生させて、それにより、選択された微粒子のみをプラグから除去することができる。そして、クロスフローを停止させることができる。そして、主毛管305内のフロー方向を反転させてプラグを逆に移動させ(この場合、計測区域360に向けて)、除去された微粒子なしで、プラグに対して継続的な計測を実施することができるようにする。
【0131】
いくぶん類似したやり方で、サイクルまたは実験中に微粒子をプラグに加えることができる。たとえば、管310は、プラグに加えるための微粒子の濃縮物を含むことができる。管310からの一つまたは複数の微粒子は、プラグを選別交差部306に移動させ、プラグを停止させ、管310からクロスフローを開始させることにより、主毛管305中のプラグに加えることができる。クロスフローは、一つまたは複数の微粒子を交差部306区域に導入することができ、その時点でクロスフローを停止させ、プラグを一つまたは複数の加えられた微粒子とともに計測区域360に向けて逆に移動させることができる。
【0132】
上記態様の一つの実施態様において、さらなる検出システムを交差部306 (図3には示さず)またはその近くに配置することができる。検出システムは、本明細書に記載する検出システムおよび他の検出システムのいずれであってもよい。さらなる検出システムの一つの目的は、微粒子をプラグから除去する、またはプラグに加えるためにクロスフローをアクティブにする前に、選択された微粒子が実際に選別区域(すなわち交差部306)内にあるということを立証することができることである。同様に、検出システムは、プラグが交差部306から引き離される前に微粒子がプラグに加えられたことを立証するために使用することもできる。一つの態様において、レーザビームを毛管305に対して直角に交差部306に集束させることができる。検出器、たとえば電気光学検出器を毛管305の反対側に配置すると、蛍光、散乱または微粒子からの他の信号を検出することができる。別の態様において、カメラを交差部306に近接して配置して、微粒子が交差部306に接近または進入するときの微粒子の画像を捕捉することもできる。
【0133】
上記態様の一つの実施態様において、導波管毛管が使用される。この実施態様において、第一の光源を使用して計測区域を作成し、第二の光源を使用して、微粒子がクロスフロー交差部、たとえば交差部306に到達したとき微粒子を検出することができる。いくつかの態様において、第一および第二の光源は異なる光出力を生成する。たとえば、第一の光源は、第一の波長で作動するレーザであり得、第二の光源は、第二の波長で作動するレーザであり得る。導波管毛管は、たとえば図1Aに示すように、いずれか(または両方の)光源からの散乱光を、導波管毛管の外に位置する検出機器に誘導することができる。いくつかの場合において、ビームスプリッタを使用して第一および第二の光源からの光を分けて、別個の検出器を使用して二つの光源からの光を個別に検出することができるようにすることが有利である可能性がある。
【0134】
多くの場合、価値の高い治療用ペプチドからエタノールのような廉価な日用薬品にまで及ぶ多数の有用な生成物を製造するために細胞培養物が使用される。細胞培養物生産性の最適化は、製造プロセスの目標であり得、経済の活力にとって重要であり得る。一般に、一つの態様にしたがって、PAは、細胞を計数し、選別し、単離するために使用することができる。いくつかの場合において、選別PAは、高純度の細胞(または他の微粒子)集団を生成することができる。PAの一つの態様において、細胞は、所望の株、サイズ、生存度または他の差別的特徴にしたがって特性決定し、単離することができる。
【0135】
上記態様および実施態様のいずれにおいても、プラグおよび微粒子の選別、追加および除去は、最大限の効率のためにコンピュータ制御され得る。
【0136】
一つの一般的な局面において、PAの主制御装置(たとえば図1の主制御装置140)は、PA微粒子追跡、検出および制御を可能にするコンピュータハードウェアおよびソフトウェアを含むことができる。一般に、ソフトウェアは、流量制御システム、検出装置、光源および収集アセンブリ(選別された微粒子を収集するための)をはじめとするPAの様々な機能および動作局面を制御する実行可能な命令を含むことができる。
【0137】
たとえば、一連の微粒子が計測区域を通過するときそれらを識別するために、パーソナルコンピュータ上で動作可能である一つまたは複数のソフトウェアプログラムが、毛管内のフロー振動、光源、検出器および他の装置を制御することができる。一つの態様において、PAは、未知の微粒子から検出された信号を既知の微粒子応答のライブラリと比較して、未知の微粒子の決定を実施することを可能にするソフトウェアパッケージを含む。一つのそのような態様において、既知の応答のライブラリは、既知の細胞形態の形状および/またはサイズを含み、未知の細胞の特定の構造的特徴を既知の細胞と比較することによって未知の細胞を特性決定することを可能にする。
【0138】
一般に、コンピュータプログラムは、微粒子が計測区域160を前後に通過するときの微粒子の順序を追跡することができる。微粒子、たとえば成長または分裂を起こしている細胞の性質における変化をプログラムによって追跡することができる。細胞分裂の場合、その前のスキャンにおいて信号が不在であったかもしれないところに新たな信号が出現することがあるため、新たな微粒子(たとえば、娘細胞の誕生)を検出することができる。ソフトウェアプログラムは、各微粒子信号が計測区域160を順方向および逆方向の両フロー方向に横切るとき、その微粒子信号を追跡することができる。
【0139】
PAソフトウェアは、ビジュアルプログラミング言語、たとえばNational Instruments Corporationから市販されているLabVIEWで開発することができる。例示的なPAソフトウェア態様は、以下の機能の一つまたは複数を実行することができる。以下の機能は提示される順序で実施される必要がなく、記載される各ステップが二回以上繰り返されてもよいということが理解されよう。一つの態様において、ソフトウェアは、主制御装置、たとえば図1に示す主制御装置140上に記憶され得る。別の態様において、PAソフトウェアは、遠隔に、たとえばネットワークまたは遠隔コンピューティングシステム上に記憶されてもよい。
【0140】
PAソフトウェアプログラムは、各光電子増倍管からの増幅信号を100kHzの周波数および16ビットの分解能でデジタル化することができる。そして、プログラムは、事象が起こったときを検出し、タイムスタンプおよび微粒子からのスリットスキャンを記憶することができる。データ取得速度は、毎秒20細胞の事象速度で1事象あたり60個のデータ点を生成するのに十分であり得る。データは、ASCIIフォーマットで記憶することができ、1事象あたり約500バイトを消費することができる。三つのPMT上、毎分2行程で3時間光散乱を検出する、1行程あたり細胞300個の予想される細胞追跡実験の場合、1実験あたりの全ファイルサイズは約162MBであり得る。このファイルサイズは、従来のFCSフローサイトメトリーデータファイルで実施されているような標準化ファイルフォーマットを使用してデータを2進形態で記憶することによって減らすことができる。
【0141】
事象検出と同時に、システム中の流量を0〜40μL/分の範囲で12.5Hzの速度および15ビットの分解能で取得し、ディスクにストリーミングすると、予想される実験の過程で2MBのファイルサイズを生成することができる。実験の過程で、各行程の流量を積分して合計ポンピング容量を得ることができる。稼働中、ソフトウェアは、理想的な振動挙動からの逸脱に関して各後続行程の大きさを修正することができる。
【0142】
ひとたびデータが取得されると、分析アルゴリズムは単一微粒子データを抽出することができる。例示的なアルゴリズムの第一のステップは、隣接する行程ごとに各微粒子が同じ方向にレーザを横切る時間を比較することであり得る。行程間で、微粒子がレーザを横切る時間は、規定可能な時間ウィンドウ内に収まることができ、したがって、第一レベルの分類を提供する。微粒子横断時間の差の分布および行程の全長に基づき、時間だけに基づいて最大125個の微粒子を単離することができる。実験内で分析することができる微粒子の総数をさらに増すために、実際の細胞集団の光散乱性が計測可能な範囲で変化し、それらの性質が計器のデータ取得速度よりもずっと遅い速度で変化するという事実を使用する。したがって、隣接する細胞が二つの行程の間の時間ウィンドウ内に収まるならば、それらの細胞は、行程間の30秒ではわずかしか変化しないと考えられるその光散乱性に基づいて互いに区別することができる。したがって、潜在的に分析することができる細胞の数は、時間ウィンドウの数と光散乱ウィンドウの数との積である。適切なアルゴリズムを用いると、単一の実験で少なくとも何百もの特有の細胞を分析することが可能であり、それが、細胞集団の挙動に関する情報をもたらし得る。
【0143】
ひとたび個々の細胞が分析アルゴリズムから識別されるならば、それらの細胞の波形を、信号のピーク高さ、幅および面積に関して分析することができる。また、個々の波形が記憶されるため、対象のデータに依存して、ピークスキュー、ディップ指数などのようなさらなるパラメータを抽出することができる。個々の波形から抽出されるパラメータは、どのようなものであれ、集団平衡方程式の枠の中で分析することができる。具体的には、時間に対する性質変化の導関数は、細胞の速度変化関数であり得る。
【0144】
長円形の細胞をも時間的に追跡することができる。実に、細胞が少なくとも分裂の開始の間に追跡することができるという可能性は高い。したがって、分裂速度関数は、ある特定の時点における細胞の性質を記録することによって計算することができる。分裂の間に細胞を完全に追跡することができるならば、分裂直後に娘細胞および親細胞の性質を観察することができ、それにより、分配関数に関する情報を得ることができる。さらには、微粒子がレーザを横切る時間にポンピングされる累積容量の時間に対する導関数は微粒子の密度に比例し得る。したがって、システム中の微粒子ごとに一つの細胞密度を計算することができる。
【0145】
ソフトウェアのデータ処理ステップが完了すると、ユーザは、データを表示するためのいくつかのオプションを提示され得る。一つの態様において、ユーザは、集団平衡方程式の個々の関数をプロットし、対象のパラメータに関する個々の細胞の性質の時間過程ならびに変動の手段および係数に関するシステムの集団データを相関させることができる。また、ユーザは、集団平衡方程式の取得された速度、分配および分裂関数ならびにユーザ入力性質分布を使用し、全細胞集団が時間とともにどのように挙動するのかをシミュレートすることができるシミュレーションオプションを与えられ得る。
【0146】
本明細書に記載される主題および機能動作の態様は、デジタル電子回路で、または本明細書で開示された構造およびそれらの構造的均等物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェアもしくはハードウェアで、またはそれらの一つまたは複数の組み合わせで実施することができる。本明細書に記載される主題の態様は、一つまたは複数のコンピュータプログラム製品、すなわち、データ処理装置によって実行される、またはデータ処理装置の動作を制御するための有形のプログラムキャリア上にコード化されたコンピュータプログラム命令の一つまたは複数のモジュールとして実施することができる。有形のプログラムキャリアは、コンピュータまたはコンピュータ読み取り可能媒体によって実行されるために適当なレシーバ装置に送信するための情報をコード化するように生成される伝搬信号、たとえば人工的に生成された信号、たとえば機械生成電気、光学または電磁信号であり得る。コンピュータ読み取り可能媒体は、機械読み取り可能な記憶装置、機械読み取り可能な記憶基板、メモリ装置、機械読み取り可能な伝搬信号を実施する組成物またはそれらの一つまたは複数の組み合わせであり得る。
【0147】
用語「データ処理装置」は、プログラム可能プロセッサ、コンピュータまたは多数のプロセッサもしくはコンピュータをはじめとする、データを処理するためのすべての装置、素子および機械を包含する。装置は、ハードウェアに加えて、対象のコンピュータプログラムのための実行環境を作成するコード、たとえばプロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステムまたはそれらの一つまたは複数の組み合わせを構成するコードを含むことができる。
【0148】
記載された特徴は、有利には、データ記憶システム、少なくとも一つの入力装置および少なくとも一つの出力装置からデータおよび命令を受け、それらにデータおよび命令を送信するように結合された少なくとも一つのプログラム可能プロセッサを含むプログラム可能なシステム上で実行可能である一つまたは複数のコンピュータプログラムで実施され得る。コンピュータプログラムは、一定の活動を実行する、または一定の結果を生じさせるためにコンピュータ中で直接的または間接的に使用することができる命令のセットである。コンピュータプログラムは、コンパイルまたは翻訳言語を含む任意の形態のプログラム言語で書くことができ、任意の形態で、たとえば独立型プログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチンもしくはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとして展開することができる。
【0149】
命令のプログラムを実行するのに適したプロセッサは、例として、汎用および専用のマイクロプロセッサならびに任意の種類のコンピュータの唯一のプロセッサまたは多数のプロセッサの一つを含む。一般に、プロセッサは、読み取り専用メモリまたはランダムアクセスメモリまたは両方から命令およびデータを受ける。コンピュータの必須要素は、命令を実行するためのプロセッサならびに命令およびデータを記憶するための一つまたは複数のメモリである。一般に、コンピュータはまた、データファイルを記憶するための一つまたは複数の大容量記憶装置を含む、またはそれと通信するために動作的に結合される。そのような装置は、磁気ディスク、たとえば内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスク、磁気光学ディスクならびに光学ディスクを含む。コンピュータプログラム命令およびデータを具現化するのに適した記憶装置は、あらゆる形態の不揮発性メモリ、たとえば半導体メモリ装置、たとえばEPROM、EEPROMおよびフラッシュメモリ装置、磁気ディスク、たとえば内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスク、磁気光学ディスクならびにCR-ROMおよびDVD-ROMディスクを含む。プロセッサおよびメモリは、ASIC (特定用途向け集積回路)によって補足され得るか、またはASICに組み込まれ得る。プロセッサおよびメモリは、専用論理回路によって補足され得るか、または専用論理回路に組み込まれ得る。
【0150】
ユーザとの対話を提供するために、本明細書に記載される主題の態様は、情報をユーザに表示するための表示装置、たとえばCRT (陰極線管)またはLCD (液晶表示)モニタならびにユーザがコンピュータに入力を提供することができるキーボードおよびポインティング装置、たとえばマウスまたはトラックボールを有するコンピュータ上で実施され得る。他の種類の装置を使用してユーザとの対話を提供することもできる。たとえば、ユーザからの入力は、音響、音声または触覚入力をはじめとする任意の形態で受けることができる。
【0151】
コンピューティングシステムはクライアントおよびサーバを含むことができる。クライアントおよびサーバは一般に、互いに離れており、通常、通信ネットワークを介して対話する。クライアントとサーバとの関係は、それぞれのコンピュータ上で稼働し、互いにクライアント−サーバ関係を有するコンピュータプログラムによって発生する。
【0152】
一つの一般的な局面において、PAは、集団平衡方程式を決定するために使用することができるデータを収集するための分析ツールであり得る。これらの方程式は、全体としての集団に関して特定の標的細胞を計測するハイスループット容量および能力によって、細胞集団レベルでの単細胞生物の生物学的複雑さへの有意な洞察を提供することができる。細胞培養物は、互いに独立して、しかし環境に依存して活動する細胞の複雑な分布を表すことができる。その結果、集団平衡方程式によって、培養物が環境の変化に基づいてどのように変化するのかを数学的に詳述することが可能である。たとえば、Fredrickson et al., 1967、Ramkrishna, 2000を参照すること。モデルは、一階数部分積分微分方程式であり得る。一つの手法において、モデルは、細胞の生理学的組成の状態空間内の培養物に関する標準平衡方程式からなることができる。細胞成長または細胞分裂とも知られる状態空間内の細胞流および分裂中の細胞の内部組成の分配による細胞数変化速度を考慮しなければならない。これは以下のように表すことができる。
[4]
式中、n(x,t)は細胞数であり、r(x,t)は単一細胞成長速度関数を表し、Γ(x,t)は分裂速度関数であり、P(x,y,t)は、状態yの細胞の状態xの細胞への分配の確率を表す。この方程式は、確率分布変化、すなわち
が、状態x、すなわち
にある細胞流によるものである、または細胞が娘細胞誕生、すなわち2Γ(y,t)または母細胞分裂、すなわちP(x,y,t)n(y,t)によって分布を再編成するからであるという概念を表す。
【0153】
一つの一般的な局面において、PAは、集団平衡方程式の速度関数を決定することを可能にするデータを収集するために使用することができる。細胞の分裂速度および分配関数は、たとえば、PA検出システムがモニタリングする、観察可能なものであり得る形態学的変化を観察することによって決定することができる。有糸分裂によって作製された長円形の細胞もまた、振動する流体中、Segre-Silberberg効果にしたがって挙動し、平衡半径、すなわち流線に沿って存在し得る。たとえば、Li et al, 2004を参照すること。
【0154】
いくつかのPA態様において、光電子増倍管をPAシステム中で検出器として使用することができ、その応答を、レーザビーム強さプロファイルと細胞の断面積とのコンボリューションと考慮することができる。前置増幅器が検出システムの一部として存在するならば、それから収集される波形は、縦軸がフローと整合しているならば、細胞形態の解釈を直接反映することができる。しかし、毛管中で十分に発達したフローのせいで、縦軸を有する細胞は、フローストリーム中で縦軸に沿って整合せず、代わりに回転し得る。Melamed, 1994を参照すること。
【0155】
いくつかの場合において、計測頻度が細胞成長の時間スケールよりも大きく、分裂する細胞の多数の波形が収集されることがある。この状況においては、平均波形を計算すると、真の細胞形態をより正確に反映することができる。有糸分裂および細胞質分裂中の形態学的変化が観察可能であるため、この手法は、細胞の分裂速度関数および分配関数の決定を可能にする。Block et al., (1990)を参照すること。
【0156】
集団平衡方程式の速度関数は、PAを使用して決定することができる。一つの実施態様において、酵母細胞の懸濁液(たとえば約2μL、5×105微粒子mL-1)を分析することができる。PAは、懸濁液中の細胞の数(たとえば1000)を追跡し、時間とともに起こる形態学的変化を計測することができる。この情報を使用して、上記集団平衡方程式の速度関数を解くことができる。一つの態様において、細胞のプラグ中の細胞ごとに、図4に示すものに類似した曲線を、たとえば20秒ごとに一回のオーダーの計測頻度で生成することができる。図4は、選択された酵母細胞に関する、時間に対する細胞成長(μm2単位で計測)のプロットを示す。一つの手法において、速度関数は、時間に対する対象の性質の導関数を求めて解くことによって得ることができる。一つの態様において、速度関数は、Srienc F, Dien BS., "Kinetics of the cell cycle of Saccharomyces cerevisiae," Ann. N.Y. Acad. Sci. 665:59-71 (1992)およびKromenaker SJ, Srienc F., "Cell-cycle dependent polypeptide accumulation by producer and non-producer murine hybridoma cell lines: a population analysis," Biotechnol. Bioeng., 38:665-677 (1991)に開示された方法にしたがって決定することができる。
【0157】
一つの一般的な局面において、PAは、流線を越えて微粒子を追跡し、微粒子が近隣の微粒子よりも速く移動するのか遅く移動するのかを決定することができる。たとえば、一つの流線中の小さな細胞は急速に成長する可能性があり、その細胞サイズが、それがもはやその現在の流線中には留まらない点に達すると、その細胞は流線を横切って別の流線に入る可能性がある。その区域における細胞間の相対距離の軌道、すなわち転位を追跡することにより、細胞成長をモニタリングすることができる。
【0158】
PAのいくつかの態様において、微粒子が計測区域を通過するときの微粒子同士の検出の間に経過する時間の量から微粒子間の相対位置を推測することができる。他の態様において、たとえば計測区域を撮像する写真技術を使用して、微粒子間の空間を視覚的に識別することができる。
【0159】
一つの一般的な局面において、様々な微粒子を懸濁させる流体、たとえば流体145の特性をPA実験の過程で変化させて、微粒子の順序を乱すことなく、構成成分、たとえば医薬生成物を加える、または除去することができる。一つの態様において、PA毛管は、PAの作動前または作動中に薬剤、溶液または他の添加物を加えることができる注入口を有することができる。他の態様において、毛管は、溶液または固体を流体145に加えるフロースイッチまたはレザバーに接続することができる。流体への構成成分の添加は、コンピュータ制御されてもよく、または手作業の注入に適合されてもよい。これらの態様は、PAシステムを、たとえば、微粒子または異なる微粒子の群に対する薬剤の効果を時間的に研究することができる薬剤の連続試験で使用することを可能にする。
【0160】
一般に、PA流体は、微粒子の一局面に影響を与える可能性があり、特定の実験で有用であり得る任意のタイプの刺激または条件に供され得る。たとえば、PA毛管中の流体は、特定の光、熱、磁気、放射線および他の条件に曝露されてもよい。これらおよび他の条件が微粒子に及ぼす影響をPAによって計測することができる。
【0161】
一般に、PAは、図5に示すように、両端で多孔性毛管に接続するフローセルを含むことができ、フローセルの内部との溶質の交換を可能にする。
【0162】
一つの一般的な局面において、PAは、ある細胞セットに関する細胞成長を並行振とうフラスコ実験で実施される細胞成長と比較することによってフローセルの多孔性領域中の質量移動の効率を決定するために使用することができる。たとえば、媒体中の限定成分が細胞を静止状態に至らしめることができる。そのような状態に達する速度は、同じ条件下では、毛管中で成長する細胞および振とうフラスコ中で成長する細胞に関して同じであるはずである。多孔性毛管を介して成長制限成分が供給される場合に成長段階を有意に延ばすことができるという指示は、効率的な質量移動にとって良好な試験であり得る。実験的試験条件は、質量移動および成長速度を考慮するモデルで評価することができる。さらなる試験手法は、毒性および細胞損傷性薬品を多孔性膜に通して投与することを含むことができる。ここでもまた、毛管中で観察される速度を、別個のバッチ実験から得られる速度と比較することができる。上記の拡散混合設計を用いて同様の実験を実施することができる。
【0163】
実験部
以下の実験は、実験を実施するために記載される方法および結果を含め、詳細な説明の一部とみなされ、特許請求の範囲およびPAの発明範囲に関して非限定的である。
【0164】
実験1 細胞成長および単一細胞追跡
直径300μmのシリコン管材を使用して、長さ7cm、内径100μmの石英ガラス毛管材をシリンジポンプ中の0.5μLシリンジに取り付けた。毛管材およびシリンジポンプは垂直に取り付けた。顕微鏡対物レンズ(倍率×40)を、毛管へのその焦点距離にほぼ等しい距離に配置した。340×280画素顕微鏡カメラを、カスタム画像処理MATLABプログラムおよびポンプ制御アルゴリズムを作動させるコンピュータに接続した。次に、SD最少培地中104細胞mL-1の細胞濃度のYPH-399a酵母細胞の懸濁液を毛管に装填した。制御アルゴリズムによってシリンジポンプをアクティブにして、細胞が計測区域を通過するまで流体を一方向に押した。次に、細胞が画像ウィンドウを反対方向に通過するまでポンプを逆動させた。このサイクルを室温で繰り返し、細胞の画像を5分ごとに記録した。
【0165】
図4は、画像しきい値(1ミクロン)を使用して細胞サイズを不連続的に計算することによって画像から抽出された単一細胞成長速度r(x,t)を示す。カメラは有限露光時間を有し、したがって、微粒子の速度は、ぶれのない画像が取得されるように十分に小さく維持した。記載されたシステムの場合、ペクレ数は0.5であった。したがって、拡散が有意であり、細胞が毛管壁に達し、それに付着することが可能となり、さらなる計測を阻止した。この制限にもかかわらず、実験は、フロー方向を反転することにより、懸濁液中の同じ細胞を多数回分析することができることを示した。細胞の移動を制御するのには簡単な制御アルゴリズムで十分であり、細胞成長を維持するのには毛管中の栄養素移送で十分であった。
【0166】
実験2 細胞順序の維持
この実験は、多くの細胞を同時に観察することができることを示す。細胞の順序を長期間にわたって維持することができるならば、これは、実験的に実現することができる。順方向および逆方向のフローの間に細胞の懸濁液の順序を維持することができることを実験的に示すために、ペクレ数が106のオーダーになるようにフローの速度を増大させるシステムを設計した。したがって、半径方向の拡散は最小であると予想され、各微粒子はその平衡半径に沿ってのみ位置すると予想された。
【0167】
流体の正確な反復可能ポンピングが、装置のもっとも重要な局面であり得る。マイクロリットルスケール量の流体の正確な反復可能ポンピングを保証するために、GlobalFIA製の市販品「Milli-GAT」ポンプを使用した。「Milli-GAT」容積型連続シリンジポンプは、広い範囲の流量にわたって10nLまでの精度で双方向流が可能であった。ポンプの入口および出口を閉ループで毛管の各端部に接続した。
【0168】
この場合、微粒子の速度のせいで、ビデオカメラ−顕微鏡システムを使用することはできなかった。代わりに、Ortho Cytoflurograph 50Hフローサイトメータを改造して、長さ75cm、内径100μmの毛管を含めた。この長さの毛管は溶液5.9μLを保持することができる。波長632nmのレーザービームを毛管の中間点に集束させた。または、波長488nmのレーザービームを使用することもできる。
【0169】
次に、微粒子の懸濁液を毛管に通して流した。各微粒子がレーザビームを通過するとき、光が散乱し、それを、二つの場所にある光電子増倍管、すなわち、レーザービーム軸から<8°の小さな角度にある光電子増倍管(微粒子サイズに比例する前方散乱)およびレーザビーム軸に対して直交する光電子増倍管(微粒子粒状度に比例する側方散乱)で収集した。異なる波長の光を側方散乱信号から分割することができ、微粒子の蛍光を計測することができる。側方および前方の両散乱の光電子増倍管信号を増幅し、電圧信号に変換した。信号の形状は、レーザビーム強さと微粒子断面積とのコンボリューションである。続いて、前方散乱電圧信号をデータ取得PCIカードによって100KHzの周波数でデジタル化し、カスタムLABVIEWデータ分析プログラムによってリアルタイムで分析した。
【0170】
微粒子の相対順序が長期間にわたって維持されることを試験するために、1.05g/Lショ糖溶液中10μmポリスチレンビーズの希釈溶液(104微粒子mL-1)を毛管に装填した。次に、Milli-GATポンプによって流体1μLを2μLs-1で60分間に202行程振動させた。ポンプを移動させるコマンドが発された時に対する各微粒子がレーザを横切る時間、ピーク高さおよび各微粒子のスリットスキャンをカスタムLABVIEWプログラムによって記録した。図8aは、長期間にわたって連続10個の微粒子が容易に識別されたことを示す。図中の直線は、実験開始時に平衡位置の近くにあり、その後、実験の過程にわたってそれらの場所に留まった微粒子の特性を示す。曲線は、はじめに平衡位置から遠く離れた位置にあった微粒子を示す。実験の過程で、それらの微粒子は平衡位置に移動する。予想されるように、「上」向きのスキャンは「下」向きのスキャンの鏡像である。さらには、時間とともに微粒子が早めの時期に「下」向き、のちに「上」向きに検出ウィンドウを横切ることを見ることは興味深い。これは、ポリスチレンビーズが、ビーズと担体溶液との密度差のせいで時間とともに沈降することを示すことができる。したがって、いくつかの実施態様において、PAは、微粒子の沈降速度を計測するために使用することができ、したがって、単一細胞密度を実験的に測定することができる。
【0171】
小さめのペクレ数で、微粒子は、より広い範囲の半径方向位置にわたって拡散することができると予想される。したがって、微粒子は、ランダムなプロセスで異なる時期に調査(interrogation)ポイントを横切ることができると考えられる。これは、図9に示すように微粒子レイノルズ数が0.25に低下したとき観察される。この図では、図8のより高レイノルズ数のフローと比較した場合、各微粒子がレーザを横切る時間が時間とともに有意に変化することに注目することが重要である。
【0172】
これらの実験において、θ方向へのレーザビーム強さは不均質であるため、図8Bに示す囲みの中の微粒子に関し、同じ微粒子の反復計測は、図10に示すように、同一のピーク高さをもたらさなかった。
【0173】
実験3 ビームの均質性
微粒子の光散乱性を一貫して計測する場合に、レーザビームの均質性が重要な考慮事項になることがある。この場合、レーザビームは、約120μm×5μmの楕円に形成した。楕円内で、レーザビーム強さはガウス分布を示し、楕円の中心でピーク強さが生じるものであった。レーザビームが毛管と交差すると、毛管の湾曲が楕円をより小さな約90μm×5μmの楕円に圧縮する。レーザビーム強さの不均質な形状は、いくつかの場合において、計測の精度に影響を与える。たとえば、同一量の蛍光体を有する二つの微粒子が同じ場所、同じレーザ強さでレーザビームと交差するならば、それらの微粒子が発する信号は同一であるはずである。他方、二つの微粒子が二つの異なる場所、二つの異なるレーザ強さで交差するならば、得られる信号は異なり得る。
【0174】
この効果は、微粒子の平衡半径がガウスレーザビームと交差するときに示される。平衡半径が減少すると、平衡半径にかかるレーザビーム強さの変動もまた減少する。この効果は、均一なポリスチレン微小球の懸濁液を装置に流すことによって実験的に計測することができる。たとえば、Shapiro, (1985)を参照すること。同じフローレイノルズ数の場合、より大きな微粒子は、より小さな微粒子よりも小さな平衡半径を有する。たとえば、Matas et al, (2004)を参照すること。したがって、前方散乱信号ピーク高さの標準偏差は、3、6および10μmの微粒子に関して図6に示すように、より大きな微粒子の場合により小さくなり得る。
【0175】
図6が示すように、レーザビーム強さの変動にもかかわらず、3および10μmの微粒子を区別するのに十分なサイズ差があった。毛管中の細胞の順序を維持することができることを実験的に試験するために、3μm微粒子と10μm微粒子との混合物を毛管に装填した。毛管中の微粒子の混合物は、交互に表れる微粒子サイズの特有の「バーコード」を生じさせた。
【0176】
次に、上記ポンピング装置を使用して、5 psigで3秒間、順方向のフローを開始させたのち、5 psigで3秒間、逆流させた。このプロセスを約50スキャン継続した。図7に示すように、3回のスキャンに関して59個の微粒子の特有のバーコードが保存された。予想されたように、反対方向に実施されたスキャンの場合、順序は逆転している。
【0177】
微粒子の相対順序付けが長期間にわたって維持されることを試験するために、1.05g/Lショ糖溶液中10μmポリスチレンビーズの希釈溶液(104微粒子mL-1)を毛管に装填した。MilliGAT (商標)ポンプによって流体1μLを2μLs-1で60分間に202行程振動させた。ポンプを始動させるためのコマンドが発された時に対する微粒子がレーザを横切る各時間、ピーク高さおよび各微粒子のスリットスキャンをカスタムLABVIEWプログラムによって記録した。
【0178】
実験4 多数の生細胞の追跡
図9Aは、約70分間にわたって追跡された四つの酵母細胞のプラグに関するPAデータのチャートである。この実験の場合、サッカロマイセス・セレビシエD603細胞の株を、30℃の振とうフラスコ中、YPD培地中で成長させた。次いで、細胞を新鮮なYPD培地で希釈し、毛管にポンピングした。チャートは、ポンプがアクティブになって、プラグを第一および第二の方向に移動させた時点からの時間(チャート縦座標)の関数として計測された、計測区域における個々の酵母細胞の時間的な検出(チャート横座標)を示す。データは、流体が計測区域にかけて前後に振動する間に細胞が実質的にその相対位置を維持することを示す。この実験手法の一つの態様において、各細胞を標識または他のマーカで標識して、プラグ内の個々の細胞の追跡を可能にすることもできる。
【0179】
図9Bは、個別に識別可能な微粒子(この場合、微粒子は生細胞である)を計測する効果を示す仮想チャートを示す。図9B中のデータ点は、たとえば、特定の波長で蛍光を発する標識で各細胞を標識することにより、PAシステムによって特有に識別することができる四つの異なる細胞を表すことができる。図9B中の各点は、特定の細胞を識別するための形状、すなわち正方形、三角形、円および菱形を有する。この仮想例において、一連の三角形に対応する細胞は、たとえば成長している可能性があり、したがって、その細胞は、一つの流線から別の流線への移行を起こしている可能性がある。これは、その細胞をプラグ中の他の細胞に対して減速(または加速)させることができる。図9Bは、変化中の細胞(一連の三角形)が、隣接する細胞(一連の正方形および円形)に対して順序を変更されているが、それでもなお、PAが細胞の位置を追跡できることを示す。いくつかの態様において、細胞移行が起こった領域に対応する曲線の特性を使用して、細胞特性、たとえば成長速度および集団平衡方程式を推測することができる。
【0180】
図9Cおよび9Dは、単一のサッカロマイセス・セレビシエD603酵母細胞に関するPAデータを示す。図9D中のデータは、実験で使用された光学検出器システムのミスアラインメントによる可能性がある、ランダムに変化するピーク高さを示す。
【0181】
実験5 検出点における空間変化
微粒子を探るためにレーザビームが使用される場合、そのビームは、計測区域を構成する楕円の各軸に沿ってガウス分布的強さを有することができる。いくつかの実施態様において、レーザ強さがわずかしか変化しない、ガウスビームの概ね中央部分(たとえば中央1/8)だけを使用することが有利である可能性がある。ビームをより大きな幅に拡大することにより、ビームのより少ない部分しか使用することができないが、ビームは、より均質になり得る。
【0182】
約5μm×760μmの楕円形レーザフィールドを100μm毛管に集束させて、図11に示すヒストグラムを反映する信号変動を有する同じ細胞の反復計測を可能にした。幅寸法におけるビームのさらなる拡大が、これらのピークの変動のより小さい係数を生じさせると予想される。
【0183】
実験6 ポンピング考慮事項
いくつかの態様において、時間の関数として流速を計測する高感度フローセンサをフローストリームと並列に配置することができる。この計測は、ストリーム中の流体および微粒子の正確なポンピングおよび制御のための基礎を提供することができる。上下方向への再現性振動速度パターンが図12Aに示されている。
【0184】
フローセンサ計測は、それぞれが実質的に同一である40の重なり合うポンプ行程トレースを示す図12Bに示すように、ポンピングが実際に非常に再現性のあるものであることを明らかにした。いくつかの実施態様において、ポンプ停止後の流体の緩和時間を減らすことができる2ポンプシステムにより、より小さい流体量を供給することもできる。この遅い緩和は、流体の圧縮性による圧力緩和の遅延によるものであり得る。
【0185】
実験7 ポリスチレン微粒子
直径6、10、15および20μmの単分散ポリスチレン微粒子を使用してPAシステムの再現性を試験した。図13は、200nLにほぼ等しいポンプ行程長を使用しての1時間にわたる15μm微粒子の追跡データを示す。データは、流体の放物線軌道速度プロファイルが原因で異なる流線中に移動する(すなわち速度を変える)微粒子によって示される、微粒子が半径方向には有意に拡散しないことを示す。隣接する行程の間の差を定量化するために、相対距離を測定し、それらの距離の度数分布関数を決定した。半径方向距離における微粒子のランダムな拡散から予想される分布を、Segre-Silberberg効果が明白に表れることを示すモンテカルロシミュレーション(図14)で計算した。おそらくはランダムな拡散のせいで、実験距離は予想分布よりもずっと狭く分布している。より高い流体速度の場合、理論的には特定の流線へのより良い集束の可能性が予想されるため、実験的に決定される分布はさらに狭くなると予想することができる。実験的に決定される分布は、原点を中心とせず、プラス時の方向にシフトしている。これは、軌道をわずかに傾かせる微粒子沈降速度のせいである可能性がある。この傾きは、流体の密度を微粒子密度の値まで増すことによって除去することができる。PAの一つの態様において、微粒子集団の密度分布は、沈降速度を表す軌道の傾きに基づいて決定することができる。
【0186】
図13および14のデータはまた、レーザビーム中での出現に基づいて時間的に追跡することができる微粒子の最大数を推定するための基礎を提供することができる。二つの微粒子の間の最小距離は、二つの行程の間で微粒子が移動することができる最大距離である。この例におけるこの距離は2mmである。25cmに及ぶ順序付けされた細胞のプラグ中ですべての微粒子が等しく離間していると仮定すると、これは、タイミング情報のみに基づいて125個の微粒子を追跡することができることを意味する。追跡中に微粒子を識別するのに役立つさらなる基準がある可能性がある。
【0187】
実験8 微粒子混合物
PAを使用して、図15Aに提示するような微粒子の混合物を追跡した。17個の微粒子の混合物は、四つの10μm微粒子および13個の20μm微粒子からなるものであった。図15Bは、この微粒子密度(この場合、1.05g/L)での追跡が、タイミング情報に基づくだけでは、より不明瞭になることを示す。しかし、計測される信号に反映されるような個々の微粒子性質を考慮に入れるならば、個々の微粒子軌跡の識別が可能である。10μm微粒子からの光散乱信号と20μm微粒子からの光散乱信号とは有意に異なる。10μm微粒子の信号強さにしたがって追跡データを選抜するならば、これらの微粒子を20μm微粒子から明確に区別することができる。対応する軌跡が図15Bに示されている。
【0188】
この例は、より高密度の集団の順序付けされた細胞セクションにおける個々の微粒子の軌跡をいかにして決定することができるのかを示すのに有用であるが、この手法を細胞集団にまで拡張する方法をも示す。細胞特性が計測可能範囲にわたって異なる実際の細胞集団において、追跡を容易にすることが有利である可能性がある。追跡は、プラグのセクション中の隣接する細胞が互いに十分に異なる限り、可能なはずである。
【0189】
実験9 セクション間の流体流
フローセルが、毛管中の溶質の交換を可能にするための多孔性中空ファイバに隣接するガラス毛管からなる態様において、流体流が毛管中で乱れないことを保証することが必要である場合がある。毛管中の乱流は細胞の順序付けを破壊するおそれがある。二つの直径が正確に合致しない場合に関してガラス毛管と多孔性領域との接合部の流体力学シミュレーションを実施した。図16は、毛管/多孔性領域接合部における、毛管が拡大する場合(a)および毛管が収縮する場合(b)の、選択された流線の速度プロファイルを示す。流線の大部分は無傷のままであり、壁の近くのいくらかがわずかに異なる挙動を示す。この領域は、毛管壁から半径の0.6倍またはそれを超える距離にある対象の流線に影響を与えないと予想される。レイノルズ数10の場合でシミュレーションを実施すると、流線がなおも層状であり、微粒子の位置に影響を与えないと予想されることが示された。実際の実験はより低い値を有する可能性がある。2300よりも大きいレイノルズ数の場合に有意な乱流を認めることができた。したがって、ガラス領域と多孔性領域との間の不完全な接合による乱流が微粒子順序付けに影響を与える可能性は低い。
【0190】
実験10 微粒子沈降速度
上述したように、PAは、計測された沈降速度からの微粒子集団の密度分布の決定を可能にする。微粒子の密度が流体媒体よりも高いならば、微粒子は、流体の振動中に沈降すると予想される。同様に、密度が流体よりも低いならば、微粒子は上昇すると予想される。ポンピングされた容量として表される毛管中の真の距離として微粒子の位置が決定されるならば、このような効果を実現することができる。この距離は、速度情報を使用して微粒子の時間座標を容量に変換することによって得ることができる。速度情報は、上記のようにフローセンサによって提供され得、図17に示すように、圧力緩和期間中に検出される微粒子は活動的なポンピング中に検出される微粒子よりもずっとゆっくりと移動することができるため、速度情報は重要になることがある。
【0191】
実験11 細胞対の追跡
細胞分裂を起こす細胞は、分裂が進むにつれ、微粒子の対に見えると予想することができる。いくつかの場合において、細胞分裂が起こるとき、細胞成分の分配関数を決定することが可能である。図18は、緩衝溶液中に懸濁したCHO細胞に関するPAデータを示す。この実験において、細胞対を70分間スキャンした。二つのモードの相対的大きさは70分間にわたり実質的に一定のままであり、その間、1分に一回、一つのスキャンを記録した。データは、長円形の微粒子が実際にその縦軸に沿って配向すること、および細胞対を追跡するためのPA装置を使用するスリットスキャンによる二つの細胞部分の推定が可能なはずであることを示唆する。
【0192】
実験12 微粒子干渉
Segre-Silberberg効果にしたがって、異なる半径の微粒子は、放物線軌道速度プロファイルに曝露されると、それぞれの平衡半径に移動することができる。各平衡半径は対応する軸速度を有するため、異なる半径の微粒子は異なる速度を有し、したがって、放物線流に曝露されると、異なる軸方向距離を移動することができる。したがって、異なるサイズの微粒子は、互いを横切り、相互作用する微粒子の平衡半径に干渉する潜在性を有する。これは、細胞の集団を考える場合、細胞サイズが一定の範囲の細胞サイズに分布しているため、特に当てはまる。
【0193】
微粒子サイズ分布が、提案された単一細胞追跡計測の動作をどのようにもたらすことができるかの二つの可能性がある。第一の可能性は、横断事象が起こるならば、微粒子が半径面中の異なる場所にあるという事実のために、それらの事象が完全に可逆性であるということである。したがって、微粒子は、互いを横切ることができると考えられるが、微粒子の最終軸方向位置を乱さないと考えられる。第二の可能性は、横断事象が、相互作用する微粒子の最終軸方向位置の可逆性変化を生じさせるかどうかということである。これが真であるならば、横断事象を排除しなければならない。最悪ケースシナリオとして、第二の可能性が、起こりうる唯一の可能性であるとみなされ、分析することができる細胞の最大数が計算される。まず、細胞の最悪ケースの懸濁液を反映するため、一方の微粒子が第二の微粒子の二倍の大きさである二つの微粒子(r1=10μm、r2=13μm)が計器中に存在するシステムを考案する。
【0194】
次に、システムの流量を与えられた数値シミュレーションから、これら二つの微粒子それぞれの平衡半径および速度を計算した(33,50)。次いで、二つの細胞の間の計算された速度差により、微粒子間の最小初期距離を計算して、行程の最後に、二つの微粒子が互いに離間した一つの微粒子直径になるようにする。この誘導中、行程長およびポンピング時間を含むすべての項が省略されて、これを可能なすべての行程長に適用可能にする。次に、最小距離で離間した微粒子で毛管を充填することにより、この絶対最悪ケースシナリオにおける細胞の上限を計算する。結果は図19に示されている。このプロットで見てとれるように、最悪ケースシナリオの場合でさえ、集団の挙動を正確に反映するかなりの数の細胞を分析することができる。図19に見られるように、異なるサイズの微粒子が互いに横切るとき、その横断事象は可逆性であり、各微粒子がレーザを横切る時間の有意な変動につながらず、したがって、追跡に影響を与えないと思われる。
【0195】
実験13 毛管導波管を使用するPA
毛管導波管として使用するためのテフロンAF毛管の適性を試験するために、2μmポリスチレンビーズを毛管にポンピングした。毛管の遠位端を光ファイバに近接させて配置することにより、光を毛管の遠位端からコア直径1mmのPMMA光ファイバケーブルに伝送した。光ファイバの他端は、散乱光の量が計測される光電子増倍管の中に向けた。図20は、2μmポリスチレンビーズからの側方散乱(SSC)ピーク高さ信号の分布を示す。変動係数(CV、標準偏差/平均×100)により、高質な信号ほどより小さなCVを有するとして信号の質を評価した。従来の集光光学部品を備えた市販のGuavaサイトメータからSSC信号を収集し、二つの異なるビーム幅で集束させた488nmの光で照射されたテフロンAF導波管を使用して収集されたSSC信号と比較した。テフロンAF毛管を使用して収集された信号は、Guavaサイトメータと比較した場合、有意に低下したCV値を示した。さらなるビーム拡大が、わずかに改善されたCVを生じさせた。
【0196】
導波管PA蛍光検出
テフロン毛管導波管を使用するPA中で、蛍光色素Bodipy (Alignflow Plus, Invitogen, Carlsbad CA)を含む6ミクロンポリスチレン微粒子を検出した。図21は、微粒子から検出された緑色蛍光の分布のチャートである。データは、たとえば調査用レーザビームに対して斜めに蛍光を計測することにより、従来のサイトメトリー光学部品を使用する市販のGuavaサイトメータを使用する同じ微粒子と比較される。微粒子を約10mWの488nmレーザビームで励起した。515nmカットオフフィルタを使用して、微粒子から直接散乱した488nm光をろ波した。
【0197】
本発明の態様のいくつかを説明した。しかし、本発明の真意および範囲を逸することなく様々な改変を加えることができることが理解されよう。たとえば、多数のレーザビームを使用し、所与の計測区域に向けて送って、計測における分光学的な融通性を提供することができる。または、多数の計測区域を、毛管内に垂直に「積み重ねた」層として構成することもできる。この態様は、たとえば、特有の光励起性を有する蛍光標識のための多数の検出シナリオを提供することができる。さらには、二次的な計測区域が、毛管に沿って、フロースイッチののち、たとえば図3の交差部305に存在して、一次流体流から除去されない微粒子に対してさらなる微粒子分析を実施することができるようにすることもできる。
【0198】
検出装置は、当技術分野で公知である光学構成を使用して、前方または側方散乱ではなく「後方散乱」構造に構成することもできる。記載された方法を使用して追跡することができる細胞の数は限定されず、好ましい態様において、PAは、何千もの細胞を追跡することができる。毛管の向きは垂直として一般に説明したが、毛管は、水平軸に沿って流れることができるように構成されてもよい。
【0199】
したがって、他の態様が添付の特許請求の範囲内である。
【0200】
参考文献
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置を提供する工程であって、前記装置が、複数の微粒子を中に有する液体を含み、前記微粒子が、前記液体の流線中において実質的に直線上に順序付けされ、前記液体が、第一の方向のフローおよび前記第一の方向とは実質的に反対である第二の方向のフローを提供するように外部から制御可能である、工程と、
前記液体を前記第一のフロー方向に流す間に、計測区域またはその近くで前記複数の微粒子のなかから一つまたは複数の標的微粒子を計測する工程と、
前記液体を前記第二のフロー方向に流す間に、計測区域またはその近くで前記複数の微粒子のなかから一つまたは複数の標的微粒子を計測する工程と
を含む方法であって、
前記微粒子が、少なくとも一つのサイクル中に計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持しており、前記サイクルが、前記第一の方向への移動、次いで前記第二の方向への移動によって規定される、
方法。
【請求項2】
微粒子が、二つ以上のサイクル中、直線上の同一の順序を実質的に保持している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
サイクルの数が少なくとも5サイクルである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
サイクルの数が少なくとも10サイクルである、請求項2記載の方法。
【請求項5】
サイクルの数が少なくとも100サイクルである、請求項2記載の方法。
【請求項6】
サイクルの数が少なくとも1000サイクルである、請求項2記載の方法。
【請求項7】
各サイクル中に一つまたは複数の微粒子が計測される、請求項2記載の方法。
【請求項8】
微粒子が生物学的細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
細胞が酵母細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
計測区域がレーザまたはカメラの焦点または焦点面である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
計測が、一つまたは複数の標的微粒子からの散乱光を計測することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
計測が、一つまたは複数の標的微粒子の写真画像を捕捉することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
第一のフロー方向で多数の微粒子を計測したのち、前記フロー方向を反転させ、かつ逆の順序で前記多数の微粒子を計測する工程をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項14】
微粒子の一つまたは複数が標識されている、請求項1記載の方法。
【請求項15】
標識が蛍光標識である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
装置が、計測区域より生じるエネルギーを前記計測区域の遠位にある検出器へと導くように構成された毛管導波管を含み、液体が前記毛管導波管内に閉じ込められる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
毛管導波管が非晶質フルオロポリマーで構成されている、請求項16記載の方法。
【請求項18】
エネルギーが電磁エネルギーまたは音響エネルギーである、請求項16記載の方法。
【請求項19】
装置が、エネルギーを毛管導波管の第一端から前記毛管導波管の第二端まで反射するように構成された反射光学部品をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
装置が、エネルギーを毛管導波管内から前記毛管導波管の外にある媒体へと伝達するカプラをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項21】
媒体が、エネルギーをカプラから検出器へと誘導する光ファイバであり、前記光ファイバが前記検出器と光学的に連絡している、請求項20記載の方法。
【請求項22】
微粒子を選択的に加えるかまたは複数の微粒子のなかから微粒子を選択的に除去する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
微粒子を加えるかまたは除去する工程が、アクチュエータによって制御可能でありかつ流線と斜めに合流するクロスフロー流体を提供することを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
クロスフロー流体が、一つまたは複数の標的微粒子と同じまたは異なる微粒子を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
複数の微粒子の環境条件を制御する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項26】
環境条件が、温度、pH、塩度、光条件、磁場への曝露、医薬化合物、利用可能な酸素、発酵性糖および非発酵性糖、脂質、またはポリペプチドへの曝露のうちの一つまたは複数である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
第一の方向および第二の方向における標的微粒子の計測から細胞集団平衡方程式を決定する工程をさらに含む方法であって、微粒子が細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項28】
第一の方向および第二の方向における標的微粒子の計測から細胞分配関数を決定する工程をさらに含む方法であって、微粒子が細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
計測する工程が、
液体のフロー軸に対して直交する伝搬軸を有する光ビームを提供することと、
計測信号を受けるように適合された検出器を提供することと、
前記光ビームと標的微粒子または前記標的微粒子の表面に付着した部分との間の相互作用から生じる計測信号を検出することと
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項30】
光ビームがレーザからの出力である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
検出器が電荷結合素子またはアレイである、請求項29記載の方法。
【請求項32】
検出器がカメラである、請求項29記載の方法。
【請求項33】
計測信号が、減衰、波長シフト、コリメーション、またはモード構造のうちの一つまたはすべてを含む、請求項29記載の方法。
【請求項34】
装置が、流体流を提供するように適合された毛管を含み、液体が前記毛管内に含まれる、請求項1記載の方法。
【請求項35】
毛管が約0.010mm〜約1cmの内径を有する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
第一および第二の方向のフローを提供するための外部からの制御性が、
毛管の入力端に接続されている入口と前記毛管の出力端に接続されている出口とを含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されているポンプを提供することと、
前記毛管の前記出力端と前記入口端との間に振動性圧力差を提供するように前記ポンプを制御することと
によって達成される、請求項1または2記載の方法。
【請求項37】
ポンプが容積型ポンプ(positive displacement pump)である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
サイトメトリー法である、請求項1記載の方法。
【請求項39】
毛管がガス透過性毛管であり、かつ流体の状態が、ガスを前記ガス透過性毛管に通して前記流体に導入することによって変更可能である、請求項16記載の方法。
【請求項40】
装置が、複数の微粒子を毛管内に保持しながら緩衝溶液を前記毛管に導入することを可能にする一つまたは複数の個別に制御可能な緩衝液ポンプをさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項41】
ガスが酸素、二酸化炭素、および窒素のうちの一つまたは複数である、請求項39記載の方法。
【請求項42】
装置が、多孔性毛管と前記毛管内の流体との間での溶質交換を可能にするように構成されている多孔性毛管をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項43】
流体流のために構成された管腔を有しかつ流体の屈折率よりも小さい屈折率を有する毛管であって、計測区域中の一つまたは複数の微粒子より散乱または放出するエネルギーを前記計測区域の遠位に位置する信号収集アセンブリへと誘導するように構成された前記毛管と、
前記計測区域にエネルギーを付与するエネルギー源と、
前記一つまたは複数の微粒子を前記計測区域にかけて前後に移動させるために前記毛管の端部に選択可能な圧力を加えるように構成されたポンプシステムと
を含む、一つまたは複数の微粒子を分析するためのシステム。
【請求項44】
エネルギーがレーザからの光エネルギーである、請求項43記載のシステム。
【請求項45】
毛管が中空孔導波管である、請求項43記載のシステム。
【請求項46】
毛管に固着されたカプラをさらに含むシステムであって、前記カプラが、前記毛管からの流体流を、流体を前記毛管から離して流す管に提供し、かつエネルギーを、前記毛管からエネルギー導管へと伝達するようにする、請求項43記載のシステム。
【請求項47】
エネルギー導管が、光エネルギーをカプラから光検出器に伝達する光ファイバ導波管である、請求項46記載のシステム。
【請求項48】
毛管を提供する工程であって、前記毛管が、複数の細胞を含む液体を中に含み、前記細胞が、前記液体の流線中において実質的に順序付けされ、前記液体が、第一の方向のフローを前記毛管に沿っておよび前記第一の方向とは実質的に反対である第二のフロー方向のフローを前記毛管に沿って提供するように外部から制御可能である、工程と、
前記細胞が前記第一のフロー方向に流れる間に、計測区域またはその近くで複数の細胞のなかから一つまたは複数の標的細胞を計測する工程と、
前記細胞が前記第二のフロー方向に流れる間に、計測区域またはその近くで複数の細胞のなかから一つまたは複数の標的細胞を計測する工程であって、前記一つまたは複数の標的細胞は、第一のフロー方向のフローおよび前記第二のフロー方向のフロー中、前記毛管内で実質的に直線上に順序付けされたままである、工程と、
前記一つまたは複数の標的細胞を含む前記液体を選択可能な方向に選択可能に導くように構成されたフロースイッチを提供する工程と
を含む、細胞を選別するための方法。
【請求項49】
計測が、標的細胞からの散乱光を検出することを含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
複数の細胞のうちの一つまたは複数の細胞が、前記一つまたは複数の細胞に関連する標識によって特有に識別可能である、請求項48記載の方法。
【請求項51】
標識が蛍光分子である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
標識がラマン活性化合物であり、かつ計測する工程が、前記標識のラマンスペクトルを計測することを含む、請求項50記載の方法。
【請求項53】
標的細胞を計測する工程が、
液体のフロー軸に対して直交する伝搬軸を有する光ビームを提供することと、
計測信号を受けるように適合された検出器を提供することと、
前記光ビームと前記標的細胞または前記標的細胞に付着した標識との間の相互作用から生じる計測信号を検出することと
を含む、請求項48記載の方法。
【請求項54】
第一および第二の方向のフローを提供することが、
毛管の入力端に接続されている入口と前記毛管の出力端に接続されている出口とを含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されているポンプを提供することと、
前記毛管の前記出力端と前記入口端との間に振動性圧力差を提供するように前記ポンプを制御して、液体を実質的に反対の方向に流すことと
によって達成される、請求項48記載の方法。
【請求項55】
ポンプが容積型ポンプである、請求項54記載の方法。
【請求項56】
複数の細胞が、分光学的に検出可能な部分を前記細胞に付着させることによって区別される、請求項48記載の方法。
【請求項57】
分光学的に検出可能な部分がナノ結晶である、請求項56記載の方法。
【請求項58】
標的細胞が細胞サイズに基づいて区別可能である、請求項48記載の方法。
【請求項59】
少なくとも二つの端部を有する毛管と、
懸濁した微粒子をその流体流線中に含む、前記毛管内に含まれた流体と、
選択可能な圧力を前記毛管の端部に加えるように構成されたポンプシステムと、
前記流体内の計測区域で一つまたは複数の標的微粒子を検出するように構成された信号収集アセンブリと
を含むシステムであって、
前記ポンプシステムが、前記一つまたは複数の標的微粒子を前記計測区域にかけて前後に移動させるように制御可能であり、かつ前記信号収集アセンブリが、前記一つまたは複数の微粒子が前記計測区域にかけて前後に移動するときに前記一つまたは複数の微粒子からの信号を記録するように適合されており、かつ前記微粒子が、前後移動中に前記計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持している、
システム。
【請求項60】
サイトメトリーに適合されたシステムである、請求項59記載のシステム。
【請求項61】
毛管に含まれる液体を提供する工程であって、前記液体が、複数の生物学的細胞を含み、前記細胞が、前記液体の流線中において実質的に順序付けされる、工程と
前記液体を第一のフロー方向および前記第一のフロー方向とは実質的に反対である第二のフロー方向に流すように、制御可能な圧力を前記毛管に提供する工程と、
前記第一のフロー方向に流れる間に、複数の生細胞のなかからの一つまたは複数の標的細胞の生理学的または形態学的特徴を計測区域で計測する工程と、
前記第二のフロー方向に流れる間に、前記複数の生細胞のなかからの一つまたは複数の標的細胞の生理学的または形態学的特徴を計測区域で計測する工程であって、計測中、前記複数の生物学的細胞の直線上の順序は実質的に変化のないままである、工程と、
前記一つまたは複数の標的細胞の計測された生理学的または形態学的特徴からのデータを使用して細胞集団動態を特性決定する工程と
を含む、細胞集団動態を特性決定するための方法。
【請求項62】
第一および第二の方向のフローを提供するように適合された圧力源を提供することが、
毛管の入力端に接続されている入口と前記毛管の出力端に接続されている出口とを含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されているポンプを提供することと、
前記毛管の前記出力端と前記入口端との間に振動性圧力差を提供するように前記ポンプを制御して、液体を前記第一および第二のフロー方向に交互に流すことと
を含む、請求項61記載の方法。
【請求項63】
一つまたは複数の標的細胞の生理学的または形態学的特徴を計測する工程が、単一細胞成長速度関数または分裂速度関数を計測することを含む、請求項61記載の方法。
【請求項64】
液体の特性を変化させることによって細胞のための動的環境を提供する工程をさらに含む、請求項61記載の方法。
【請求項65】
特性が、温度、pH、塩度、光条件、磁場への曝露、化合物、利用可能な酸素、発酵性糖および非発酵性糖、脂質、またはポリペプチドへの曝露のうちの一つまたは複数を含む、請求項63記載の方法。
【請求項66】
生細胞を含む液体を提供する工程であって、前記細胞が、前記液体の流線中において実質的に直線上に順序付けされ、前記液体が、第一のフロー方向のフローおよび前記第一のフロー方向とは実質的に反対である第二のフロー方向のフローを提供するように外部から制御可能である、工程と、
前記第一のフロー方向に流れる間に、前記液体内の一つまたは複数の標的細胞のサイズを計測区域で計測する工程と、
前記第二のフロー方向に流れる間に、前記液体内の一つまたは複数の標的細胞のサイズを計測区域で計測する工程と
を含む、細胞成長を評価するための方法であって、
前記細胞が、少なくとも一つのサイクル中に前記計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持しており、前記サイクルが、前記第一の方向への移動、次いで前記第二の方向への移動によって規定される、
方法。
【請求項67】
液体流線中において実質的に順序付けされる複数の細胞を含む液体を提供する工程と、
前記液体内に化合物を提供する工程と、
前記液体が第一のフロー方向に流れる間に、前記液体内の標的細胞を計測する工程と、
前記フロー方向を反転させ、かつ前記液体が前記第一のフロー方向とは反対の第二の方向に流れる間に前記標的細胞を計測する工程であって、微粒子が、少なくとも一つのサイクル中に計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持しており、前記サイクルが、前記第一の方向への移動、次いで前記第二の方向への移動によって規定される、工程と、
前記計測に基づいて応答を評価する工程と
を含む、化合物に対する細胞の応答を評価するための方法。
【請求項68】
化合物が医薬化合物である、請求項67記載の方法。
【請求項69】
化合物が抗体または抗体断片である、請求項67記載の方法。
【請求項70】
応答を評価する工程が、標的細胞への化合物の共有結合または非共有結合を検出することを含む、請求項67記載の方法。
【請求項71】
サイトメトリー法である、請求項67記載の方法。
【請求項1】
装置を提供する工程であって、前記装置が、複数の微粒子を中に有する液体を含み、前記微粒子が、前記液体の流線中において実質的に直線上に順序付けされ、前記液体が、第一の方向のフローおよび前記第一の方向とは実質的に反対である第二の方向のフローを提供するように外部から制御可能である、工程と、
前記液体を前記第一のフロー方向に流す間に、計測区域またはその近くで前記複数の微粒子のなかから一つまたは複数の標的微粒子を計測する工程と、
前記液体を前記第二のフロー方向に流す間に、計測区域またはその近くで前記複数の微粒子のなかから一つまたは複数の標的微粒子を計測する工程と
を含む方法であって、
前記微粒子が、少なくとも一つのサイクル中に計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持しており、前記サイクルが、前記第一の方向への移動、次いで前記第二の方向への移動によって規定される、
方法。
【請求項2】
微粒子が、二つ以上のサイクル中、直線上の同一の順序を実質的に保持している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
サイクルの数が少なくとも5サイクルである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
サイクルの数が少なくとも10サイクルである、請求項2記載の方法。
【請求項5】
サイクルの数が少なくとも100サイクルである、請求項2記載の方法。
【請求項6】
サイクルの数が少なくとも1000サイクルである、請求項2記載の方法。
【請求項7】
各サイクル中に一つまたは複数の微粒子が計測される、請求項2記載の方法。
【請求項8】
微粒子が生物学的細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
細胞が酵母細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
計測区域がレーザまたはカメラの焦点または焦点面である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
計測が、一つまたは複数の標的微粒子からの散乱光を計測することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
計測が、一つまたは複数の標的微粒子の写真画像を捕捉することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
第一のフロー方向で多数の微粒子を計測したのち、前記フロー方向を反転させ、かつ逆の順序で前記多数の微粒子を計測する工程をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項14】
微粒子の一つまたは複数が標識されている、請求項1記載の方法。
【請求項15】
標識が蛍光標識である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
装置が、計測区域より生じるエネルギーを前記計測区域の遠位にある検出器へと導くように構成された毛管導波管を含み、液体が前記毛管導波管内に閉じ込められる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
毛管導波管が非晶質フルオロポリマーで構成されている、請求項16記載の方法。
【請求項18】
エネルギーが電磁エネルギーまたは音響エネルギーである、請求項16記載の方法。
【請求項19】
装置が、エネルギーを毛管導波管の第一端から前記毛管導波管の第二端まで反射するように構成された反射光学部品をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
装置が、エネルギーを毛管導波管内から前記毛管導波管の外にある媒体へと伝達するカプラをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項21】
媒体が、エネルギーをカプラから検出器へと誘導する光ファイバであり、前記光ファイバが前記検出器と光学的に連絡している、請求項20記載の方法。
【請求項22】
微粒子を選択的に加えるかまたは複数の微粒子のなかから微粒子を選択的に除去する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
微粒子を加えるかまたは除去する工程が、アクチュエータによって制御可能でありかつ流線と斜めに合流するクロスフロー流体を提供することを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
クロスフロー流体が、一つまたは複数の標的微粒子と同じまたは異なる微粒子を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
複数の微粒子の環境条件を制御する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項26】
環境条件が、温度、pH、塩度、光条件、磁場への曝露、医薬化合物、利用可能な酸素、発酵性糖および非発酵性糖、脂質、またはポリペプチドへの曝露のうちの一つまたは複数である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
第一の方向および第二の方向における標的微粒子の計測から細胞集団平衡方程式を決定する工程をさらに含む方法であって、微粒子が細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項28】
第一の方向および第二の方向における標的微粒子の計測から細胞分配関数を決定する工程をさらに含む方法であって、微粒子が細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
計測する工程が、
液体のフロー軸に対して直交する伝搬軸を有する光ビームを提供することと、
計測信号を受けるように適合された検出器を提供することと、
前記光ビームと標的微粒子または前記標的微粒子の表面に付着した部分との間の相互作用から生じる計測信号を検出することと
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項30】
光ビームがレーザからの出力である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
検出器が電荷結合素子またはアレイである、請求項29記載の方法。
【請求項32】
検出器がカメラである、請求項29記載の方法。
【請求項33】
計測信号が、減衰、波長シフト、コリメーション、またはモード構造のうちの一つまたはすべてを含む、請求項29記載の方法。
【請求項34】
装置が、流体流を提供するように適合された毛管を含み、液体が前記毛管内に含まれる、請求項1記載の方法。
【請求項35】
毛管が約0.010mm〜約1cmの内径を有する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
第一および第二の方向のフローを提供するための外部からの制御性が、
毛管の入力端に接続されている入口と前記毛管の出力端に接続されている出口とを含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されているポンプを提供することと、
前記毛管の前記出力端と前記入口端との間に振動性圧力差を提供するように前記ポンプを制御することと
によって達成される、請求項1または2記載の方法。
【請求項37】
ポンプが容積型ポンプ(positive displacement pump)である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
サイトメトリー法である、請求項1記載の方法。
【請求項39】
毛管がガス透過性毛管であり、かつ流体の状態が、ガスを前記ガス透過性毛管に通して前記流体に導入することによって変更可能である、請求項16記載の方法。
【請求項40】
装置が、複数の微粒子を毛管内に保持しながら緩衝溶液を前記毛管に導入することを可能にする一つまたは複数の個別に制御可能な緩衝液ポンプをさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項41】
ガスが酸素、二酸化炭素、および窒素のうちの一つまたは複数である、請求項39記載の方法。
【請求項42】
装置が、多孔性毛管と前記毛管内の流体との間での溶質交換を可能にするように構成されている多孔性毛管をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項43】
流体流のために構成された管腔を有しかつ流体の屈折率よりも小さい屈折率を有する毛管であって、計測区域中の一つまたは複数の微粒子より散乱または放出するエネルギーを前記計測区域の遠位に位置する信号収集アセンブリへと誘導するように構成された前記毛管と、
前記計測区域にエネルギーを付与するエネルギー源と、
前記一つまたは複数の微粒子を前記計測区域にかけて前後に移動させるために前記毛管の端部に選択可能な圧力を加えるように構成されたポンプシステムと
を含む、一つまたは複数の微粒子を分析するためのシステム。
【請求項44】
エネルギーがレーザからの光エネルギーである、請求項43記載のシステム。
【請求項45】
毛管が中空孔導波管である、請求項43記載のシステム。
【請求項46】
毛管に固着されたカプラをさらに含むシステムであって、前記カプラが、前記毛管からの流体流を、流体を前記毛管から離して流す管に提供し、かつエネルギーを、前記毛管からエネルギー導管へと伝達するようにする、請求項43記載のシステム。
【請求項47】
エネルギー導管が、光エネルギーをカプラから光検出器に伝達する光ファイバ導波管である、請求項46記載のシステム。
【請求項48】
毛管を提供する工程であって、前記毛管が、複数の細胞を含む液体を中に含み、前記細胞が、前記液体の流線中において実質的に順序付けされ、前記液体が、第一の方向のフローを前記毛管に沿っておよび前記第一の方向とは実質的に反対である第二のフロー方向のフローを前記毛管に沿って提供するように外部から制御可能である、工程と、
前記細胞が前記第一のフロー方向に流れる間に、計測区域またはその近くで複数の細胞のなかから一つまたは複数の標的細胞を計測する工程と、
前記細胞が前記第二のフロー方向に流れる間に、計測区域またはその近くで複数の細胞のなかから一つまたは複数の標的細胞を計測する工程であって、前記一つまたは複数の標的細胞は、第一のフロー方向のフローおよび前記第二のフロー方向のフロー中、前記毛管内で実質的に直線上に順序付けされたままである、工程と、
前記一つまたは複数の標的細胞を含む前記液体を選択可能な方向に選択可能に導くように構成されたフロースイッチを提供する工程と
を含む、細胞を選別するための方法。
【請求項49】
計測が、標的細胞からの散乱光を検出することを含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
複数の細胞のうちの一つまたは複数の細胞が、前記一つまたは複数の細胞に関連する標識によって特有に識別可能である、請求項48記載の方法。
【請求項51】
標識が蛍光分子である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
標識がラマン活性化合物であり、かつ計測する工程が、前記標識のラマンスペクトルを計測することを含む、請求項50記載の方法。
【請求項53】
標的細胞を計測する工程が、
液体のフロー軸に対して直交する伝搬軸を有する光ビームを提供することと、
計測信号を受けるように適合された検出器を提供することと、
前記光ビームと前記標的細胞または前記標的細胞に付着した標識との間の相互作用から生じる計測信号を検出することと
を含む、請求項48記載の方法。
【請求項54】
第一および第二の方向のフローを提供することが、
毛管の入力端に接続されている入口と前記毛管の出力端に接続されている出口とを含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されているポンプを提供することと、
前記毛管の前記出力端と前記入口端との間に振動性圧力差を提供するように前記ポンプを制御して、液体を実質的に反対の方向に流すことと
によって達成される、請求項48記載の方法。
【請求項55】
ポンプが容積型ポンプである、請求項54記載の方法。
【請求項56】
複数の細胞が、分光学的に検出可能な部分を前記細胞に付着させることによって区別される、請求項48記載の方法。
【請求項57】
分光学的に検出可能な部分がナノ結晶である、請求項56記載の方法。
【請求項58】
標的細胞が細胞サイズに基づいて区別可能である、請求項48記載の方法。
【請求項59】
少なくとも二つの端部を有する毛管と、
懸濁した微粒子をその流体流線中に含む、前記毛管内に含まれた流体と、
選択可能な圧力を前記毛管の端部に加えるように構成されたポンプシステムと、
前記流体内の計測区域で一つまたは複数の標的微粒子を検出するように構成された信号収集アセンブリと
を含むシステムであって、
前記ポンプシステムが、前記一つまたは複数の標的微粒子を前記計測区域にかけて前後に移動させるように制御可能であり、かつ前記信号収集アセンブリが、前記一つまたは複数の微粒子が前記計測区域にかけて前後に移動するときに前記一つまたは複数の微粒子からの信号を記録するように適合されており、かつ前記微粒子が、前後移動中に前記計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持している、
システム。
【請求項60】
サイトメトリーに適合されたシステムである、請求項59記載のシステム。
【請求項61】
毛管に含まれる液体を提供する工程であって、前記液体が、複数の生物学的細胞を含み、前記細胞が、前記液体の流線中において実質的に順序付けされる、工程と
前記液体を第一のフロー方向および前記第一のフロー方向とは実質的に反対である第二のフロー方向に流すように、制御可能な圧力を前記毛管に提供する工程と、
前記第一のフロー方向に流れる間に、複数の生細胞のなかからの一つまたは複数の標的細胞の生理学的または形態学的特徴を計測区域で計測する工程と、
前記第二のフロー方向に流れる間に、前記複数の生細胞のなかからの一つまたは複数の標的細胞の生理学的または形態学的特徴を計測区域で計測する工程であって、計測中、前記複数の生物学的細胞の直線上の順序は実質的に変化のないままである、工程と、
前記一つまたは複数の標的細胞の計測された生理学的または形態学的特徴からのデータを使用して細胞集団動態を特性決定する工程と
を含む、細胞集団動態を特性決定するための方法。
【請求項62】
第一および第二の方向のフローを提供するように適合された圧力源を提供することが、
毛管の入力端に接続されている入口と前記毛管の出力端に接続されている出口とを含み、入口および出口の両方に正圧または負圧を提供するように適合されているポンプを提供することと、
前記毛管の前記出力端と前記入口端との間に振動性圧力差を提供するように前記ポンプを制御して、液体を前記第一および第二のフロー方向に交互に流すことと
を含む、請求項61記載の方法。
【請求項63】
一つまたは複数の標的細胞の生理学的または形態学的特徴を計測する工程が、単一細胞成長速度関数または分裂速度関数を計測することを含む、請求項61記載の方法。
【請求項64】
液体の特性を変化させることによって細胞のための動的環境を提供する工程をさらに含む、請求項61記載の方法。
【請求項65】
特性が、温度、pH、塩度、光条件、磁場への曝露、化合物、利用可能な酸素、発酵性糖および非発酵性糖、脂質、またはポリペプチドへの曝露のうちの一つまたは複数を含む、請求項63記載の方法。
【請求項66】
生細胞を含む液体を提供する工程であって、前記細胞が、前記液体の流線中において実質的に直線上に順序付けされ、前記液体が、第一のフロー方向のフローおよび前記第一のフロー方向とは実質的に反対である第二のフロー方向のフローを提供するように外部から制御可能である、工程と、
前記第一のフロー方向に流れる間に、前記液体内の一つまたは複数の標的細胞のサイズを計測区域で計測する工程と、
前記第二のフロー方向に流れる間に、前記液体内の一つまたは複数の標的細胞のサイズを計測区域で計測する工程と
を含む、細胞成長を評価するための方法であって、
前記細胞が、少なくとも一つのサイクル中に前記計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持しており、前記サイクルが、前記第一の方向への移動、次いで前記第二の方向への移動によって規定される、
方法。
【請求項67】
液体流線中において実質的に順序付けされる複数の細胞を含む液体を提供する工程と、
前記液体内に化合物を提供する工程と、
前記液体が第一のフロー方向に流れる間に、前記液体内の標的細胞を計測する工程と、
前記フロー方向を反転させ、かつ前記液体が前記第一のフロー方向とは反対の第二の方向に流れる間に前記標的細胞を計測する工程であって、微粒子が、少なくとも一つのサイクル中に計測区域を通過するとき、直線上の同一の順序を実質的に保持しており、前記サイクルが、前記第一の方向への移動、次いで前記第二の方向への移動によって規定される、工程と、
前記計測に基づいて応答を評価する工程と
を含む、化合物に対する細胞の応答を評価するための方法。
【請求項68】
化合物が医薬化合物である、請求項67記載の方法。
【請求項69】
化合物が抗体または抗体断片である、請求項67記載の方法。
【請求項70】
応答を評価する工程が、標的細胞への化合物の共有結合または非共有結合を検出することを含む、請求項67記載の方法。
【請求項71】
サイトメトリー法である、請求項67記載の方法。
【図1】
【図1A】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図1A】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2010−524004(P2010−524004A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503282(P2010−503282)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/060285
【国際公開番号】WO2008/128213
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(507197708)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/060285
【国際公開番号】WO2008/128213
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(507197708)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ (8)
【Fターム(参考)】
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