説明

微粒子一酸化チタン組成物およびその製造方法

【課題】安全性に優れた黒色顔料として利用できる微粒子一酸化チタン組成物を工業的規模で提供する。
【解決手段】二酸化チタンと、酸化マグネシウムと、金属マグネシウムとの混合物を、内圧上昇時に内部の気体を外部に放出できる機能を有する閉鎖系容器中において、不活性気流中650〜800℃で焼成する工程を経て、X線回折プロファイルにおいて、主ピークとして一酸化チタンのピークを有し、比表面積が30〜50m/gである微粒子一酸化チタン組成物を製造する。金属マグネシウムとしては、粒径100〜500μmの粒状であることが好ましく、また、二酸化チタンと、金属マグネシウムとの比率としては、チタン(Ti)とマグネシウム(Mg)とのモル比でMg/Ti=1.1〜1.4であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子一酸化チタン組成物およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、安全性に優れた黒色顔料として利用できる微粒子一酸化チタン組成物およびその量産可能な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク、塗料、アイシャドーなどの化粧料などの黒色顔料としては、カーボンブラックが使用されているが、カーボンブラックは、工業的規模で製造する際に発癌性物質である3,4−ベンツピレンが混入する可能性があるので、安全性面で問題があり、また、嵩密度が大きいため、他の顔料との混合性・分散性に問題があった。
【0003】
そこで、そのような黒色顔料として低次金属酸化物、とりわけ、二酸化チタンを出発原料とする一酸化チタン(TiO)が期待されているが、現在までのところ、微粒子状の一酸化チタンは、工業的規模では得られていない。これは、以下に示すように、微粒子状の一酸化チタンを製造することが難しいことに基づいている。すなわち、一酸化チタンの工業的生産は、二酸化チタン(TiO)を還元することによって行われるが、ここで、これまでの一酸化チタンを工業的に製造するための二酸化チタンの還元方法を例示すると、次の各種方法がある。
【0004】
1.二酸化チタン粉体を水素気流中で高温焼成する水素還元法(例えば、特許文献1)
2.二酸化チタン粉体をアンモニア(+水素)気流中で高温焼成するアンモニア還元法(例えば、特許文献2)
3.金属チタン粉体と二酸化チタン粉体を均一に混合した後、還元雰囲気で高温焼成する金属チタン粉体との均一化反応(例えば、特許文献3)
4.二酸化チタンを水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化物と共に還元焼成する方法(例えば、特許文献4)
【0005】
しかしながら、これらの方法は、それぞれ下記のような問題点を有している。
【0006】
1)水素還元法:この方法は、水素気流中高温で還元処理するため、安全性面での問題が大きく、また、生成する一酸化チタンも、1000℃以上の高温では焼結が進行してしまうため、微粒子状のものを得ることが困難であり、また、それより低い温度では未還元の二酸化チタンの混入割合が大きくなる。
【0007】
2)アンモニア還元法:この方法は、高温雰囲気で分解反応により生成するアクティブな水素、窒素、ラジカルによる還元処理方法であるため、その還元処理により生じる酸素空孔が窒素に置換された、酸窒化チタン(TiO)が生成する。また、アンモニアの分解が約500℃から開始されるため、その生成物は、未還元の二酸化チタンとの混合物となる。
【0008】
3)金属チタンとの均一化反応:この方法による場合、酸化物は超微粒子状の粉体を入手することが可能であるが、金属チタンは酸化物に比べて大きい粒子径のものしか得られないため、結果的に微粒子状の一酸化チタンを得ることが難しい。また、完全な均一化反応を達成することができず、複数の結晶相の混合物となってしまう。
【0009】
4)水素化物による還元反応:この方法は、気体の水素と比較して取り扱いに優れた水素化物であるから、安全性は高いものの、数百℃程度から水素化物の分解が始まるため、還元力が弱く、未還元の二酸化チタンとの混合物となることが避けられない。
【0010】
従って、工業的規模で微粒子状の一酸化チタンを得ることは難しく、微粒子一酸化チタン組成物を工業的規模で製造することはいまだ行われていない。
【0011】
【特許文献1】特開昭61−56710号公報
【特許文献2】特開平5−25812号公報
【特許文献3】特開昭59−199530号公報
【特許文献4】特開平5−193942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような事情に鑑み、微粒子一酸化チタンを主材とする微粒子一酸化チタン組成物を工業的規模で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、金属マグネシウムによる還元反応を利用して、X線回折プロファイルにおいて、主ピークとして一酸化チタンのピークを有し、比表面積が30〜50m/gの微粒子一酸化チタン組成物を得て、上記課題を解決したものである。
【0014】
上記微粒子一酸化チタン組成物の工業的規模での製造は、二酸化チタンと、酸化マグネシウムと、金属マグネシウムとの混合物を、内圧上昇時に内部の気体を外部に放出することができる機能を有する閉鎖系容器中において、不活性気流中650〜800℃で焼成する工程を経て微粒子一酸化チタン組成物を製造することによって達成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の微粒子一酸化チタン組成物は、安全性が高く、かつ、カーボンブラックに比べて、分散性や他の顔料との混合性がよいので、インク、塗料などへの安全性の高い黒色顔料として、さらには、アイシャドー、まゆずみ、毛髪着色料などの化粧料への安全性の高い黒色顔料として利用でき、また、NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスター特性、すなわち、温度上昇に伴なって抵抗が小さくなる特性を有し、電子部品・装置などのデバイスへの応用も考えられる。
【0016】
また、本発明の方法によれば、上記微粒子一酸化チタン組成物を安全にかつ工業的規模で製造(量産)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の微粒子一酸化チタン組成物を得るにあたって、二酸化チタンとしては、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、アモルファス二酸化チタンなどのいずれも用いることができるが、反応性の高さから、特にアナターゼ型二酸化チタン、アモルファス二酸化チタンが好ましい。
【0018】
そして、粒径の小さい微粒子一酸化チタン組成物を得るには、二酸化チタンも粒径の小さいものほど好ましく、例えば、比表面積の測定値から球形換算した平均一次粒径で100nm以下のものが好ましく、また、取扱い性を考慮すると、上記のような平均一次粒径で100nm以下で10nm以上のものが好ましい。
【0019】
酸化マグネシウムは、前記のような還元反応により二酸化チタンから生成する微粒子一酸化チタンなどの焼結を防止するためのものであって、その使用量としては、酸化マグネシウムの粒径によっても異なるが、二酸化チタン100質量部に対して30質量部以上、特に30〜50質量部が好ましい。つまり、酸化マグネシウムは、生成する微粒子一酸化チタンなどの表面を被覆できる量以上であればよいが、過剰に使用すると、その後の酸洗浄時に要する酸性溶液の使用量が増加するので、上記の範囲で使用するのが好ましい。
【0020】
金属マグネシウムは、粒径が小さすぎると、反応が急激に進行して操作上危険性が高くなるので、粒径が篩のメッシュパスで100〜500μmの粒状のものが好ましく、特に150〜300μmの粒状のものが好ましい。ただし、金属マグネシウムは、すべて上記粒径範囲になくても、その80質量%以上、特に90質量%以上が上記範囲内にあればよい。
【0021】
二酸化チタンに対する金属マグネシウムの量は、還元力に影響を与え、金属マグネシウムの量が少なすぎると、還元不足で目的とする微粒子一酸化チタン組成物が得られにくくなり、多すぎると、還元がいきすぎたり、未反応の金属マグネシウムが残存することになり、経済的でなくなるので、マグネシウム(Mg)とチタン(Ti)のモル比でMg/Ti=1.1〜1.4が好ましい。すなわち、Mgの比率が上記より高くなると、過還元により、一酸化チタンよりさらに酸化価数の小さい「TiO」などの生成の要因になり、また、未反応の金属マグネシウムが多くなって経済的でなく、Mgの比率が上記より低くなると、還元力が不足して、目的とする微粒子一酸化チタン組成物が得られなくなるおそれがある。
【0022】
微粒子一酸化チタン組成物を生成させるための金属マグネシウムによる還元反応(以下、簡略化して、「上記還元反応」または「還元反応」という場合がある)時の温度は、650〜800℃が好ましく、特に680℃以上、700℃以下が好ましい。650℃は金属マグネシウムの溶融温度であり、上記還元反応時の温度がこれより低いと、二酸化チタンの還元反応が充分に生じない。また、上記還元反応時の温度を800℃より高くしても、反応自体に問題はないが、高温にしたことによる効果の増加が得られず、安全性面での低下が生じるおそれがある。反応時間は、上記還元反応時の温度によるが、通常、30〜90分程度、特に30〜60分程度が好ましい。
【0023】
上記還元反応を行う際の反応容器としては、容器内部の圧力が上昇したときに容器内部の気体を外部に放出して容器内部の圧力を下げる機能を有する閉鎖系容器を使用する。このように、内圧上昇時に容器内部の気体を外部に放出する機能を有する容器を用いるのは、金属マグネシウムの溶融がはじまると、還元反応が急激に進行し、それに伴って温度が上昇して、容器内部の気体が膨張し、それによって、容器の破裂が生じて危険を招くことから、容器内部の圧力が上昇したときに容器内部の気体を外部に放出して容器内部の圧力を下げ、安全性を確保しようということに基づいている。
【0024】
また、反応容器を閉鎖系容器としているのは、反応物が外部に飛び散らないようにするためであり、この閉鎖系とは完全に密閉化していてもよいし、また、完全に密閉化されていなくても、反応物が外部に飛び散らない程度に閉鎖されていればよいという意味である。また、この閉鎖系とは、必要時に閉鎖系になっていればよいという意味であって、当然、反応原料の充填や反応物の取出しにあたっては、その閉鎖系が解除できるものである。
【0025】
上記還元反応は、不活性気体中で行うが、これは不活性ガスにより金属マグネシウムや還元生成物と酸素との接触を防ぎ、それらの酸化を防ぐためであり、その不活性気体としては、例えば、窒素、アルゴンなどを用い得るが、経済性を考慮すると窒素ガス単独の方が好ましい。
【0026】
得られた反応物は、反応容器から取り出し、最終的には室温まで冷却した後、塩酸水溶液などの酸溶液で洗浄して、金属マグネシウムの酸化によって生じた酸化マグネシウムや生成物の焼結防止のため反応当初から含まれていた酸化マグネシウムを除去する。この酸洗浄に関しては、pH0.5以上、特にpH1.0以上、温度は90℃以下で行うのが好ましい。これは酸性が強すぎたり温度が高すぎるとチタンまでが溶出してしまうおそれがあるためである。そして、その酸洗浄後、アンモニア水などでpHを5〜6に調整した後、濾過または遠心分離により固形分を分離し、その固形分を乾燥した後、粉砕して微粒子一酸化チタン組成物を得る。
【0027】
本発明の微粒子一酸化チタン組成物は、前記のように、X線回折装置を用いての測定で得られたプロファイル(X線回折プロファイル)において、主ピークとして一酸化チタンのピークを有している。一酸化チタンの標準サンプルのピークは、2θ=37.181°(I=54.7%)、43.200°(I=100.0%)、62.746°(I=43.9%)、75.247°(I=13.3%)および79.227°(I=11.1%)に現われるが、本発明の微粒子一酸化チタン組成物における一酸化チタンのピークも、上記一酸化チタンの標準サンプルのピーク位置またはその近傍に現われる。
【0028】
本発明において、その対象を微粒子一酸化チタンとせず、微粒子一酸化チタン組成物としているのは、その製造方法の関係上、未反応の二酸化チタンがわずかに残存し、それが分離しがたく、一酸化チタン中に混入してくるからである。
【0029】
本発明の微粒子一酸化チタン組成物において、主材となるのは、もちろん、一酸化チタンであるが、その一酸化チタンの量は、X線回折プロファイルのピーク面積からの換算で微粒子一酸化チタン組成物中90質量%以上である。そして、本発明の微粒子一酸化チタン組成物中に残存する未反応の二酸化チタンは、その量が少ないので、特性にほとんど影響を与えることはないが、少ないほど好ましく、微粒子一酸化チタン組成物中、5質量%未満、つまり、一酸化チタンが95質量%以上であることが好ましい。なお、本発明において、上記X線回折プロファイルを求めるためのX線回折分析は、スペクトリス社製のX線回折装置「X‘Pert PRO(商品名)」により、CuKα線を用いて印加電圧45kV,印加電流40mAで、θ−2θ法で行ったものである。
【0030】
本発明の微粒子一酸化チタン組成物は、上記のようにX線回折プロファイルにおいて主ピークとして一酸化チタンのピークを有することに加えて、比表面積が30〜50m/gであることを要件としている。このような比表面積値は上記一酸化チタン組成物が微粒子状であるということを表すものである。粒子サイズを表すには、粒径で表すのがより直接的であるが、本発明の微粒子一酸化チタン組成物はナノメーターオーダーの非常に微細なものなので、二次粒子化するのを完全に防止することができず、粒径を測定した場合、一次粒子の粒径のみならず、二次粒子化したものの粒径を測定してしまう可能性があり、正確さを欠くからである。なお、本発明において、上記比表面積の測定は、ユアサアイオニクス社製のマルチソーブ16(商品名)を用い、窒素・アルゴン混合ガスを用いたBET法で液体窒素温度(−195.8℃)で行ったものである。
【0031】
そして、本発明において、その比表面積として30〜50m/gを要件としているのは、比表面積が30m/gより小さい場合は、所望とする微粒子(粒径では50nm以下の微粒子)に達しておらず、比表面積が50m/gより大きい場合は原料である二酸化チタンの粒径がさらに小さいため、還元による焼結が進行し、比表面積は大きいものの、実質的に焼結体となり微粒子ではなくなる可能性が高いためである。
【実施例】
【0032】
つぎに、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は実施例に例示のものに限られることはない。なお、以下において、溶液や分散液の濃度を示す%や一酸化チタンや二酸化チタンの量を示す%は質量%である。
【0033】
実施例1
比表面積の測定値から球径換算した平均一次粒径10nmのアナターゼ型二酸化チタン;300gと、微粒子酸化マグネシウム〔協和化学工業社製MF−150、比表面積118m/g〕;245gを小型V型混合機(容量10リットル、回転速度;50rpm)で30分間混合した後、ピンミル〔コロプレックス160Z(商品名),ホソカワミクロン社製、回転速度;14,000rpm、粉砕速度;150g/min〕で粉砕混合を行った混合粉体を得た。この混合粉体を「混合粉体A」とする。
【0034】
つぎに、この混合粉体A;209gに金属マグネシウム(関東金属社製MG45、篩のメッシュパス換算粒径:150〜300μm);42gを加え、上記のV型混合機の槽内を窒素置換した状態で30分間混合処理して混合粉体を得た。この混合粉体を「混合粉体B」とする。なお、上記混合粉体A中の二酸化チタンに対して加えた金属マグネシウムの量は、チタン(Ti)とマグネシウム(Mg)とのモル比でMg/Ti=1.2であった。
【0035】
つぎに、この混合粉体B;200gをステンレス鋼製容器(容器本体外寸:200mm×200mm×50mm・フタ(蓋)内寸:204mm×204mm×45mm)に入れ、金属ベルトを持つ連続還元焼成炉にて最高温度650℃×1時間で焼成した。この燃成は、窒素ガスを酸素濃度が100ppm以下になるように流速50〜100リットル/分で流しながら、昇温(室温〜680℃);約1時間、降温(680〜室温);約5時間の条件下で行った。なお、上記ステンレス鋼製容器は、加熱により容器内部の気体(窒素)が膨張して圧力が上昇したときに、フタがその圧力によって持ち上がり、容器内部の気体を外部に放出し、容器内部の圧力が低下すると、フタの自重で容器本体を覆うので、内圧上昇時に容器内部の気体を外部に放出できる機能を有する閉鎖系容器に該当するものである。
【0036】
上記のようにして得られた焼成物を、1リットルの水に分散し、5%希塩酸を徐々に添加し、pHを1以上、温度を70〜80℃に保った状態で洗浄した後、2%アンモニア水にてpH6に調整し、分散液を凝集状態にして、濾過した。その濾過固形分を水中に400g/リットルに再分散し、もう一度、前記と同様に酸洗浄、アンモニア水でのpH調整をした後、濾過した。このように酸洗浄−アンモニア水によるpH調整を2回繰り返した後、濾過物をイオン交換水に固形分換算で500g/リットルで分散させ、60℃での加熱攪拌とpH6への調整をした後、吸引濾過装置で濾過し、さらに等量のイオン交換水で洗浄し、設定温度;105℃の熱風乾燥機にて乾燥して微粒子一酸化チタン組成物を得た。
【0037】
上記のようにして得られた微粒子一酸化チタン組成物について、前記のスペクトリス社製のX線回折装置を用いてX線回折分析を行った。得られたX線回折プロファイルを図1に示す。上記X線回折分析は、前記のように、CuKα線を用い、印加電圧45kV、印加電流40mAの条件下で、θ−2θ法で行ったものである。
【0038】
図1に示すように、実施例1の微粒子一酸化チタン組成物は、主ピークとして一酸化チタンのピークを有していて、この図1のX線回折プロファイルからも、実施例1の生成物が一酸化チタンを主材とするものであることが確認された。そして、この実施例1の微粒子一酸化チタン組成物における一酸化チタンの量は、上記X線回折プロファイルのピーク面積からの換算値で98%以上であった。
【0039】
また、上記のようにして得られた実施例1の微粒子一酸化チタン組成物について、比表面積の測定を行ったところ、比表面積は44.7m/gであった。なお、この比表面積の測定は、前記のように、ユアサアイオニクス社製のマルチソーブ16(商品名)を用い、窒素・アルゴン混合ガスを用いた液体窒素温度(−195.8℃)で行ったものである。
【0040】
実施例2
混合粉体Aを調製する際の二酸化チタンとしてアモルファス二酸化チタン(メタチタン酸を洗浄した後、105℃に乾燥し、粉砕して調製したもの)を使用した以外は、実施例1と同様の処理を行って、微粒子一酸化チタン組成物を得た。
【0041】
このようにして得られた実施例2の微粒子一酸化チタン組成物についても、実施例1と同様にX線回折分析を行った。得られたX線回折プロファイルを図2に示す。
【0042】
図2に示すように、この実施例2の微粒子一酸化チタン組成物も、主ピークとして一酸化チタンのピークを有するが、二酸化チタンのピーク位置(2θ=25.3°)にブロードなピークを有することから、未反応の二酸化チタンが混入しているものと考えられる。
【0043】
ただし、この実施例2の微粒子一酸化チタン組成物について、X線回折プロファイルのピーク面積から一酸化チタンの量を求めたところ、一酸化チタンの量は95%以上あって、上記未反応の二酸化チタンの量は5%未満にすぎず、この実施例2の微粒子一酸化チタン組成物も、一酸化チタンを主材とするものであることが明らかであった。
【0044】
また、この実施例2の微粒子一酸化チタン組成物についても、実施例1と同様に比表面積を測定したところ、比表面積は47.7m/gであった。
【0045】
実施例3
混合粉体Bを調製する際に、Mg/Ti=1.1モル比になるように金属マグネシウムを加えた以外は、実施例1と同様の処理を行って、微粒子一酸化チタン組成物を得た。
【0046】
このようにして得られた実施例3の微粒子一酸化チタン組成物についても、実施例1と同様にX線回折分析を行った。得られたX線回折プロファイルを図3に示す。
【0047】
図3に示すように、この実施例3の微粒子一酸化チタン組成物も、主ピークとして一酸化チタンのピークを有するが、二酸化チタンのピーク位置にブロードなピークを有することから、未反応の二酸化チタンが混入しているものと考えられる。
【0048】
ただし、この実施例3の微粒子一酸化チタン組成物について、X線回折プロファイルのピーク面積から一酸化チタンの量を求めたところ、一酸化チタンの量は95%以上あって、上記未反応の二酸化チタンの量は5%未満にすぎず、この実施例3の微粒子一酸化チタン組成物も、一酸化チタンを主材とするものであることが明らかであった。
【0049】
また、この実施例3の微粒子一酸化チタン組成物についても、実施例1と同様に比表面積を測定したところ、比表面積は49.3m/gであった。
【0050】
実施例4
混合粉体Bを調製する際に、Mg/Ti=1.4モル比になるように金属マグネシウムを加えた以外は、実施例1と同様の処理を行って、微粒子一酸化チタン組成物を得た。
【0051】
このようにして得られた実施例4の微粒子一酸化チタン組成物についても、実施例1と同様にX線回折分析を行った。得られたX線回折プロファイルを図4に示す。
【0052】
図4に示すように、この実施例4の微粒子一酸化チタン組成物も、主ピークとして一酸化チタンのピークを有していて、この実施例4の微粒子一酸化チタン組成物も、一酸化チタンを主材とするものであることが確認された。そして、この実施例4の微粒子一酸化チタン組成物における一酸化チタンの量は、上記X線回折プロファイルのピーク面積からの換算値で98%以上であった。
【0053】
また、この実施例4の微粒子一酸化チタン組成物についても、実施例1と同様に比表面積を測定したところ、比表面積は35.1m/gであった。
【0054】
比較例1
混合粉体Bをフタを付けないステンレス鋼製容器に入れ(つまり、混合粉体Bをステンレス鋼製容器の容器本体に入れ、フタをせずに)、かつ連続焼成炉ではなくバッチ式焼成炉中で焼成を行うこと以外は、実施例1と同様に焼成処理をしようとしたが、炉内に焼成粉体が飛散したため、焼成を中止した。
【0055】
比較例2
混合粉体Bを入れるステンレス鋼製容器のフタに直径5mmの孔を9個あけ、容器本体に混合粉体Bを入れた後、上記の孔付きフタをし、かつ連続焼成炉ではなくバッチ式焼成炉中で焼成を行った以外は、実施例1と同様の焼成処理をした。
【0056】
上記のようにして得られた比較例2の粉体について、実施例1と同様にX線回折分析を行った。得られたX線回折プロファイルを図5に示す。
【0057】
図5に示すように、この比表面積の粉体は、2θ=18.2°および35.2°に、スピネル〔マグネシウム・チタニウム酸化物:Mg(MgTi)O〕のピークが認められ、一酸化チタンに相当するピークも若干シフトしたものが共存しているものの、プロードな状態となっていて、目的とする微粒子一酸化チタン組成物は得られなかった。
【0058】
比較例3
焼成最高温度を600℃×1時間とした以外は、実施例1と同様の焼成処理を行った。
【0059】
しかしながら、得られた粉体は灰色の粉体であって、黒色顔料として使用できるような黒色度を持つ粉体は得られなかった。これは焼成時の温度が低かったため、二酸化チタンの還元が充分に進行しなかったためであると考えられる。
【0060】
比較例4
混合粉体Aの調製に際し、アナターゼ型二酸化チタンに代えて、メタチタン酸を使用した以外は、実施例1と同様の焼成処理を行った。
【0061】
上記のようにして得られた比較例4の粉体について、実施例1と同様にX線回折分析を行った。得られたX線回折プロファイルを図6に示す。
【0062】
図6に示すように、この比較例4の粉体は2θ=18.2°および35.2°に、強いスピネルのピークが認められ、不純物としての混入割合が高いことが明白であり、目的とする微粒子一酸化チタン組成物は得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1の微粒子一酸化チタン組成物のX線回折プロファイルである。
【図2】実施例2の微粒子一酸化チタン組成物のX線回折プロファイルである。
【図3】実施例3の微粒子一酸化チタン組成物のX線回折プロファイルである。
【図4】実施例4の微粒子一酸化チタン組成物のX線回折プロファイルである。
【図5】比較例2の粉体のX線回折プロファイルである。
【図6】比較例4の粉体のX線回折プロファイルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折プロファイルにおいて、主ピークとして一酸化チタンのピークを有し、比表面積が30〜50m/gであることを特徴とする微粒子一酸化チタン組成物。
【請求項2】
二酸化チタンと、酸化マグネシウムと、金属マグネシウムとの混合物を、内圧上昇時に内部の気体を外部に放出できる機能を有する閉鎖系容器中において、不活性気流中650〜800℃で焼成する工程を経て、請求項1記載の微粒子一酸化チタン組成物を製造することを特徴とする微粒子一酸化チタン組成物の製造方法。
【請求項3】
金属マグネシウムが、粒径100〜500μmの粒状である請求項2記載の微粒子一酸化チタン組成物の製造方法。
【請求項4】
二酸化チタンと、金属マグネシウムとの比率が、チタン(Ti)とマグネシウム(Mg)とのモル比でMg/Ti=1.1〜1.4である請求項2または3記載の微粒子一酸化チタン組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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