説明

微粒子塗布面形成方法及び機能膜形成方法

【課題】基板や微粒子に対して表面処理を行ったり、分散剤を用いることなく微粒子が凝集していない微粒子塗布面や機能膜を形成できる微粒子塗布面形成方法及び機能膜形成方法を得ること。
【解決手段】複数の微粒子2が分散配置された微粒子塗布面を基板1上に形成する微粒子塗布面形成方法であって、粒径が微粒子2よりも小さい複数の微粒子3と、複数の微粒子2とを分散媒に分散させた懸濁液を基板1上に塗布する微粒子塗布工程と、基板1上で凝集した微粒子3と微粒子3の凝集体の合間に分散配置された微粒子2とをドライエッチングして、微粒子3の凝集体を基板1上から除去するドライエッチング工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集の無い微粒子塗布面を基板上に形成する微粒子塗布方法及び機能膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板や誘電体基板などの基板表面に対して微粒子を塗布する方法として、微粒子を適当な分散媒中に分散させて、懸濁液を基板の表面に塗布するスピンコーティングや液体浸漬法、微粒子を気流に乗せて噴霧するスプレーコーティング、静電噴霧などの方法がある。
【0003】
ここで、微粒子の粒径がナノメートルからミクロンオーダである場合、体積に対する表面積の割合が増加してエネルギー的に不安定な状態になるため、微粒子は分散媒中や微粒子塗布後の基板表面において表面積を減らすように凝集を生じてしまう。このような微粒子の凝集を防止する方法として、基板表面に微粒子を吸着する官能基を形成し、官能基に吸着された微粒子以外を除去して凝集を防止する方法(例えば、特許文献1参照。)や、分散媒中に分散剤を添加して微粒子間に反発力や立体障害を持たせ、微粒子の凝集を防ぐ方法(例えば、特許文献2参照。)などが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−155218号公報(図1)
【特許文献2】特開2004−353017号公報(0001段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の微粒子の凝集防止方法では、基板や微粒子に対しての表面処理や分散剤の添加が必要であるため、微粒子表面には不純物が残留し、膜の純度や微粒子の特性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、基板や微粒子に対して表面処理を行ったり、分散剤を用いることなく微粒子が凝集していない微粒子塗布面や機能膜を形成できる微粒子塗布面形成方法及び機能膜形成方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数の第1の微粒子が分散配置された微粒子塗布面を基板上に形成する微粒子塗布面形成方法であって、粒径が第1の微粒子よりも小さい複数の第2の微粒子と、複数の第1の微粒子とを分散媒に分散させた懸濁液を基板上に塗布する微粒子塗布工程と、基板上で凝集した第2の微粒子と第2の微粒子の凝集体の合間に分散配置された第1の微粒子とをドライエッチングして、第2の微粒子の凝集体を基板上から除去するドライエッチング工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板や微粒子に対して表面処理を行ったり、分散剤を使用したりすることなく微粒子を塗布するため、微粒子表面に不純物が残留せず、膜の純度や微粒子の特性を保つことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかる微粒子塗布面形成方法の工程図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態2にかかる機能膜形成方法の工程図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態3にかかる機能膜形成方法の工程図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態4にかかる機能膜形成方法の工程図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態5にかかる機能膜形成方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる微粒子塗布方法及び機能膜形成方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる微粒子塗布面形成方法の工程図である。まず、微粒子塗布面を形成する基板1を用意する(図1(a))。そして、粒径が大きい微粒子2と小さい微粒子3とを分散媒に分散させ、懸濁液を基板1上に塗布する。分散媒が揮発すると基板1の表面には微粒子2、3が残留する(図1(b))。次に、微粒子2、3をエッチング可能なエッチングガス4を用いて、基板1上に塗布された微粒子2、3のエッチングを行う(図1(c))。エッチングでは、粒径の小さい微粒子3の方が体積に対する表面積の割合が大きく、粒径の小さい微粒子3が優先的にエッチングされる。粒径の小さい微粒子3が全てエッチングされた時点でエッチングを終了する(図1(d))。
【0012】
粒径の小さい微粒子3の方が凝集しやすいため、粒径の異なる微粒子2、3を混在させて基板1上に塗布することで、図1(b)に示すように、基板1上には凝集した粒径の小さい微粒子3(凝集体)の間に粒径の大きい微粒子2を分散して塗布することができる。また、ドライエッチングによって粒径が小さい微粒子3を優先して除去することで、基板1上には粒径の大きい微粒子2のみが分散して残留するため、基板1や微粒子2、3に表面処理を施したり、分散剤を使用したりすることなく、凝集の無い微粒子塗布面が得られる。また、分散剤を使用していないため、分散剤の効果が現れにくい粒径100nm以下の微粒子を用いる場合でも凝集の無い微粒子塗布面を得られる。さらに、微粒子2、3の混在比を変えることによって微粒子2が分散する間隔を調整することができる。
【0013】
微粒子2、3としては、ドライエッチングによってエッチング可能な材料を適用可能であり、シリコン、ゲルマニウム、炭化ケイ素などの半導体微粒子、シリカ、窒化シリコン、酸化チタン、高分子粒子などの誘電体微粒子を用いることができる。これらは、微粒子2、3として適用できる材料の一例を示しており、これらの材料に限定されるものではない。
【0014】
凝集した粒径の小さい微粒子の中に、粒径の大きい微粒子が分散することを利用するため、粒径の小さい微粒子3の凝集体が、粒径の大きい微粒子2と同程度の大きさであることが好ましい。特に、粒径の小さい微粒子3の粒径が、粒径の大きい微粒子2の粒径の1/2以下であることが好ましい。微粒子2、3として、直径数nmから数μm程度の微粒子を用いることができることは実験的に確認済みであるが、凝集した粒径の小さい微粒子の中に、粒径の大きい微粒子が分散させられるのであれば、この範囲外の粒径の微粒子を微粒子2、3として用いることも可能である。
【0015】
微粒子2、3の形状は特に限定されることは無く、球状、鱗片状、立方体状、不定形状などの任意の形状とすることができる。特に、微粒子2、3の形状が不定形状であったり、また複数の形状を混在させたりすることで、塗布した微粒子間の充填率が小さくなり(微粒子間の隙間が大きくなり)、結果として微粒子の凝集を解除しやすくなるため好ましい。
【0016】
微粒子2、3の塗布方法は、公知のコーティング方法を適用できる。例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、沈降、インクジェット印刷、静電噴霧、電解めっき法、無電解めっき法などを適用できる。微粒子2、3は、上記の手法によって基板1上に均一かつ緻密に塗布することが好ましい。
【0017】
微粒子2、3の分散媒は、微粒子2、3と反応しないものを塗布方法に応じて適宜選択すればよい。一例を挙げると、炭化水素系分散媒、エーテル系分散媒、極性分散媒、純水などを用いることができる。
【0018】
微粒子2、3のドライエッチング方法は、プラズマを用いた反応性ドライエッチングを適用できる。エッチングガス4は、微粒子2、3をドライエッチング可能なガスを使用する。一例として、シリコン微粒子のエッチングを行う場合は、フロン系ガス、SFガス、ハロゲン系ガス、水素ガス又はこれらの混合ガスなどを適用できる。また、希釈ガスとしてアルゴンやヘリウムなどの不活性ガスを添加しても良く、エッチングレートを制御するために酸素ガスなどを添加しても良い。
【0019】
ドライエッチングの終了時間は、別途測定した微粒子2、3のエッチングレートから見積もることができる。また、パーティクルカウンタを用いて微粒子2、3を観測し、粒径の小さい微粒子3が観測できなくなった時点を終了時間とすることもできる。
【0020】
分散剤を使用しないため、使用原材料の低減を図ることができる。また、基板表面に官能基を修飾させる表面処理は不要であるため、エネルギー使用量を低減し、生産工程における環境負荷を低減できる。
【0021】
実施の形態2.
図2は、本発明の実施の形態2にかかる機能膜形成方法の工程図である。本実施の形態においては、実施の形態1と同様にして形成した微粒子塗布面に機能膜5を形成する。機能膜5の形成には、蒸着法、スパッタリング法、化学輸送法などを適用できる。微粒子2を機能膜5中に混在させる必要がある場合は、特に低圧での化学輸送法を用いて形成した機能膜5を適用することが好ましく、特に0.1〜1000Paでの化学輸送法を用いて形成した機能膜5を適用することで、微粒子2の全面を機能膜5で被覆できる。なお、化学輸送法での機能膜5の形成時に圧力が低すぎたり、高すぎたりすると成膜不良の原因となる。微粒子2に半球状に付着させる必要がある場合は、蒸着法、スパッタリング法を用いて形成した機能膜5を適用することで、微粒子上部のみ機能膜5を被覆できる。
【0022】
このように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の手法で得られた凝集の無い微粒子塗布面に機能膜5を形成することで、微粒子を含む機能膜5の純度を高くできる。すなわち、微粒子2の塗布に分散剤の使用や表面処理を行わないため、分散剤などの不純物を含まない機能膜5を形成できる。また、微粒子2、3のドライエッチングを行う成膜装置と同じ成膜装置を用いて連続して機能膜5を形成することで、塗布面形成後に生じる微粒子塗布面の汚染を防ぐことができる。このようにして作製した機能膜5では不純物を含まないため、機能膜5中での微粒子2の特性低下を防ぐことができる。一例として、微粒子2、3、機能膜5ともにシリコン膜を用いることで、シリコン微粒子とシリコン膜を足し合わせた膜厚の高純度シリコン膜を、短時間、少エネルギーで形成することができる。
【0023】
実施の形態3.
図3は、本発明の実施の形態3にかかる機能膜形成方法の工程図である。本実施の形態においては、微粒子2、3と同時にエッチング可能な基板6を用いて、微粒子2、3と同時に基板6のドライエッチングを行う点で実施の形態2と相違する。一例として、微粒子2、3にシリコンを用い、エッチングガス4として水素ガスを用いる場合には、シリコン基板やガラス基板などを基板6として適用できる。
【0024】
本実施の形態では、微粒子2、3が基板6に対してマスクとして作用するため、基板6の微粒子2、3が塗布されていない部分がエッチングされ、微粒子塗布面の凹凸が大きくなる。本実施の形態は、特に、微粒子2を含む機能膜5をテクスチャ付き太陽電池や反射防止膜として使用する場合に好ましい。凹凸が大きい微粒子塗布面に形成した機能膜5をテクスチャ付き太陽電池に適用することで、変換効率を高め、省エネルギー性を高めることができる。また、粒径の小さい微粒子3が全てエッチングされてから一定時間エッチングを続けることで、さらに微粒子塗布面の凹凸を大きくできる。
【0025】
実施の形態4.
図4は、本発明の実施の形態4にかかる機能膜形成方法の工程図である。本実施の形態においては、微粒子2、3と同時にエッチング可能な機能膜7を基板1の表面に形成する工程をさらに有する点で実施の形態2と相違する。一例として、微粒子2、3にシリコンを用い、エッチングガス4にCFガスを用いる場合は、シリコン膜やSiO膜、窒化シリコン膜などを機能膜7として適用できる。
【0026】
本実施の形態では、微粒子2、3のドライエッチング時に機能膜7はドライエッチングされるが、基板1はドライエッチングされない。このため、ドライエッチングできない基板であっても微粒子塗布面の凹凸を大きくできる。また、ドライエッチング時に基板1にダメージが加わることを防止できる。
【0027】
実施の形態5.
図5は、本発明の実施の形態5にかかる機能膜形成方法の工程図である。本実施の形態においては、微粒子2、3と同時にドライエッチング不可能な保護膜8を形成する工程を、微粒子2、3の塗布前にさらに有する点で実施の形態3と相違する。一例として、微粒子2、3にシリコンを用い、エッチングガス4にSFガスを用いる場合は、窒化シリコン膜や金属膜などを保護膜8として適用できる。
【0028】
本実施の形態においては、微粒子2、3のドライエッチング時に基板6がダメージを受けたり、基板6に凹凸が生じたりすることを保護膜8によって防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明にかかる微粒子塗布面形成方法及び機能膜形成方法は、基板表面に凝集させることなく微粒子を分散配置できる点で有用であり、特に、成膜速度の遅い膜の高速成膜法としてや、テクスチャ付き太陽電池の製造工程や反射防止膜としての使用する膜の製造工程への適用に適している。
【符号の説明】
【0030】
1、6 基板
2、3 微粒子
4 エッチングガス
5、7 機能膜
8 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の微粒子が分散配置された微粒子塗布面を基板上に形成する微粒子塗布面形成方法であって、
粒径が該第1の微粒子よりも小さい複数の第2の微粒子と、複数の前記第1の微粒子とを分散媒に分散させた懸濁液を前記基板上に塗布する微粒子塗布工程と、
前記基板上で凝集した第2の微粒子と該第2の微粒子の凝集体の合間に分散配置された前記第1の微粒子とをドライエッチングして、前記第2の微粒子の凝集体を前記基板上から除去するドライエッチング工程と、
を有することを特徴とする微粒子塗布面形成方法。
【請求項2】
前記ドライエッチング工程において、前記第1及び第2の微粒子とともに前記基板をドライエッチングすることを特徴とする請求項1記載の微粒子塗布面形成方法。
【請求項3】
前記微粒子塗布工程の前処理として、前記ドライエッチング工程において前記第1及び第2の微粒子とともにドライエッチング可能な膜を前記基板上に形成する工程を有することを特徴とする請求項1記載の微粒子塗布面形成方法。
【請求項4】
前記微粒子塗布工程の前処理として、前記ドライエッチング工程においてドライエッチングされない膜を前記基板上に形成する工程を有することを特徴とする請求項1記載の微粒子塗布面形成方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の微粒子塗布面形成方法を用いた機能膜形成方法であって、
前記ドライエッチング工程の後処理として、前記第1の微粒子を被覆する機能膜を形成する工程を有することを特徴とする機能膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−121002(P2012−121002A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275639(P2010−275639)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】