説明

微粒子状ホウ素化合物、それよりなるオレフィン重合用触媒成分およびその製造方法

【課題】オレフィン重合用触媒成分などとして用いる際に、溶液状態で使用しなくても、定常的な供給および供給装置の安定運転を可能にすることができるホウ素化合物、及び、該ホウ素化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】下記式(1)〜(3)から選ばれた一種以上のホウ素化合物を芳香族炭化水素系溶媒に溶解後、脂肪族炭化水素系溶媒中に析出させる微粒子状ホウ素化合物の製造方法、及び、下記式(1)〜(3)から選ばれた一種以上のホウ素化合物を、その最大粒径が50μm以下になるように粉砕する微粒子状ホウ素化合物の製造方法。
(1) BQ123
(2) G+(BQ1234-
(3) (L−H)+(BQ1234-
Bは3価のホウ素原子、Q1〜Q4はハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基又は2置換アミノ基、G+は無機又は有機のカチオン、Lは中性ルイス塩基、(L−H)+はブレンステッド酸である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合用触媒成分として有用な粒径が制御されたホウ素化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既に、遷移金属化合物(例えばメタロセン錯体や非メタロセン錯体)と特定のホウ素化合物を用いてなるオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィン重合体を製造する方法については多くの報告がなされている。近年は市販もされている該ホウ素化合物は通常、粒径が数百μm〜数mmという粒径の大きな粒子を含む固体であり、トルエンにはある程度は可溶であるが、飽和炭化水素を含む多くの溶媒には溶解度は低い。そこで従来は、あまり高くない濃度の溶液として用いたり、あるいは溶解し切らない量の該ホウ素化合物を容器内に固体のまま投入したりして、使用されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(フェニル)ボレートをトルエンに懸濁させ、そこへビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチルを加えて、Cp*2Zr(C64)B(C653《ここで、Cp*はη5−ペンタメチルシクロペンタジエニル基を表す。》を単離し、これをオレフィン重合用触媒として用いて、オレフィン重合体を製造する方法が開示されている。その方法において、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(フェニル)ボレートは触媒調合用反応容器内でトルエン中に懸濁液として事前に準備されており、そこへメタロセン錯体を加えて触媒を調整している。
【0004】
また、特許文献2には、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとジメチルシリルビス(4,5,6,7−テトラハイドロインデニル)ジルコニウムジメチルをトルエン中で混合し、均一な触媒溶液に調整し、オレフィン重合用触媒として、1300バールの高圧重合装置でオレフィン重合体を製造する方法が開示されている。その方法において、固体のN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが触媒調整に用いられているが、トルエン中でメタロセン錯体とともに混合することにより、重合に使用する前に均一な触媒溶液が準備され、その後、その溶液が重合反応器へ高圧ポンプで連続的に供給されている。
【0005】
また、特許文献3には、重合に使用する前に別な容器で、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドのトルエン溶液に、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液を加え、さらに、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液を加えて、均一な触媒溶液を得た後、その触媒溶液を高温高圧重合用反応器に供給する方法が開示されている。
【0006】
以上のように従来は、連続的に反応装置へ該ホウ素化合物を供給する場合には、別の容器中での非連続的な均一触媒溶液調整工程を経ていたり、あまり濃度の高くない溶液として用いられたりしていた。
【0007】
特許文献4には、該ホウ素化合物の製造方法、及び着色している粗生成ホウ素化合物の精製方法が記載されている。該精製方法によれば、エーテル類、アルコール類、ケトン類やハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒に溶解した粗生成ホウ素化合物を、水または脂肪族炭化水素溶媒により再析出させる方法が開示されているが、得られるホウ素化合物の粒径についての記載はない。
【0008】
【特許文献1】特表平1−502036号公報
【特許文献2】米国特許5,408,017号明細書
【特許文献3】特開平7−157508号公報
【特許文献4】国際公開第94/00459号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況に鑑み本発明が解決しようとする課題、即ち本発明の目的は、オレフィン重合用触媒成分などとして用いる際に、溶液状態で使用しなくても、定常的な供給および供給装置の安定運転を可能にすることができるホウ素化合物を提供すること、および該ホウ素化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち本発明は、下記(1)〜(3)から選ばれた一種以上のホウ素化合物を芳香族炭化水素系溶媒に溶解させた後、脂肪族炭化水素系溶媒中に析出させて得られる微粒子状ホウ素化合物、下記(1)〜(3)から選ばれた一種以上のホウ素化合物を、その最大粒径が50μm以下になるように粉砕して得られる微粒子状ホウ素化合物、下記(1)〜(3)から選ばれた一種以上のホウ素化合物であって、その最大粒径が10μm以下である微粒子状ホウ素化合物、上記微粒子状ホウ素化合物よりなるオレフィン重合用触媒成分、並びに、下記(1)〜(3)から選ばれた一種以上のホウ素化合物を芳香族炭化水素系溶媒に溶解させた後、脂肪族炭化水素系溶媒中に析出させる微粒子状ホウ素化合物の製造方法にかかるものである。
(1)一般式 BQ123で表されるホウ素化合物
(2)一般式 G+(BQ1234-で表されるホウ素化合物
(3)一般式 (L−H)+(BQ1234-で表されるホウ素化合物
(上記各一般式においてそれぞれ、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1〜Q4はハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基または2置換アミノ基であり、それらは同じであっても異なっていても良い。G+は無機または有機のカチオンであり、Lは中性ルイス塩基であり、(L−H)+はブレンステッド酸である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オレフィン重合用触媒成分として有用な微粒子状ホウ素化合物およびその製造方法が提供され、オレフィン重合用触媒の調合装置やオレフィン重合用反応装置への多量の該ホウ素化合物の連続的な供給が可能となる。さらには、該微粒子状ホウ素化合物は特に工業的製造装置、例えばオレフィン重合反応装置で使用する際、溶液状態で使用しなくても、定常的な供給を可能とし、供給装置、例えば高圧ポンプの安定運転を可能とできるなど、本発明の利用価値はすこぶる大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
【0013】
本発明の微粒子状ホウ素化合物は、下記(1)〜(3)から選ばれた一種以上のホウ素化合物である。
(1)一般式 BQ123で表されるホウ素化合物
(2)一般式 G+(BQ1234-で表されるホウ素化合物
(3)一般式 (L−H)+(BQ1234-で表されるホウ素化合物
(上記各一般式においてそれぞれ、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1〜Q4はハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基または2置換アミノ基であり、それらは同じであっても異なっていても良い。G+は無機または有機のカチオンであり、Lは中性ルイス塩基であり、(L−H)+はブレンステッド酸である。)
【0014】
一般式 BQ123で表されるホウ素化合物(1)において、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1〜Q3はハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基または2置換アミノ基であり、それらは同じであっても異なっていても良い。Q1〜Q3は好ましくは、ハロゲン原子、1〜20個の炭素原子を含む炭化水素基、1〜20個の炭素原子を含むハロゲン化炭化水素基、1〜20個の炭素原子を含む置換シリル基、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ基または2〜20個の炭素原子を含むアミノ基であり、より好ましいQ1〜Q3はハロゲン原子、1〜20個の炭素原子を含む炭化水素基、または1〜20個の炭素原子を含むハロゲン化炭化水素基である。さらに好ましくはQ1〜Q4は、それぞれ少なくとも1個のフッ素原子を含む炭素原子数1〜20のフッ素化炭化水素基であり、特に好ましくはQ1〜Q4は、それぞれ少なくとも1個のフッ素原子を含む炭素原子数6〜20のフッ素化アリール基である。
【0015】
一般式 BQ123で表されるホウ素化合物(1)の具体例としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等が挙げられるが、最も好ましくは、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0016】
一般式 G+(BQ1234-で表されるホウ素化合物(2)において、G+は無機または有機のカチオンであり、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1〜Q4は上記の(1)におけるQ1〜Q3と同様である。
【0017】
一般式 G+(BQ1234-で表されるホウ素化合物(2)の具体例としては、無機のカチオンであるG+には、フェロセニウムカチオン、アルキル置換フェロセニウムカチオン、銀陽イオンなどが、有機のカチオンであるG+には、トリフェニルメチルカチオンなどが挙げられる。G+として特に好ましくはカルベニウムカチオンであり、最も好ましくはトリフェニルメチルカチオンである。(BQ1234-には、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0018】
これらの具体的な組み合わせとしては、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどを挙げることができるが、最も好ましくは、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0019】
また、一般式(L−H)+(BQ1234-で表されるホウ素化合物(3)においては、Lは中性ルイス塩基であり、(L−H)+はブレンステッド酸であり、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1〜Q4は上記の(1)におけるQ1〜Q3と同様である。
【0020】
一般式(L−H)+(BQ1234-で表されるホウ素化合物(3)の具体例としては、ブレンステッド酸である(L−H)+には、トリアルキル置換アンモニウム、N,N−ジアルキルアニリニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアリールホスホニウムなどが挙げられ、(BQ1234-には、前述と同様のものが挙げられる。
【0021】
これらの具体的な組み合わせとしては、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることができるが、最も好ましくは、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、もしくは、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0022】
本発明の微粒子状ホウ素化合物として好ましくは、上記(2)または(3)のホウ素化合物であり、特に好ましくはトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。最も好ましくはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0023】
本発明においては、上記の微粒子状ホウ素化合物の形状、粒子性状、粒径、粒度分布等に特に制限はないが、その粒径が小さいほうが、上記の微粒子状ホウ素化合物を溶媒に懸濁もしくはスラリー化した状態で反応装置に供給する際や粉末状態で供給する際に、供給装置(例えばポンプ)に詰まるおそれが低減し、また配管内での沈降速度が遅くなる傾向にあるので好ましい。
【0024】
ここで、本発明において溶媒に懸濁もしくはスラリー化した状態とは、固体が溶媒に完全には溶解せず、固体粒子が溶媒中に分散している状態をいう。本発明においては、懸濁状態とスラリー化状態とは特に区別して扱わない。
【0025】
かかる微粒子状ホウ素化合物としては、上述のホウ素化合物であって、その最大粒径が50μm以下である微粒子状ホウ素化合物が挙げられる。かかる微粒子状ホウ素化合物は、例えばオレフィン重合用触媒成分として使用する際、溶液状態で使用しなくとも懸濁もしくはスラリー化した状態で使用するか、もしくは例えば粉末状態で使用することにより、大量スケールで実施する工業生産に使用する場合においても供給装置(例えばポンプ)に詰まるなどの障害が無く、定常的な供給及び供給装置の安定運転が可能である。かかる微粒子状ホウ素化合物の最大粒径として好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、最大粒径として特に好ましくは5μm以下である。
【0026】
かかる微粒子状ホウ素化合物を製造する方法としては、微粒子状ホウ素化合物の最大粒径が50μm以下となる方法であれば特に制限はなく、例えば上記のホウ素化合物を芳香族炭化水素系溶媒に溶解させた後、脂肪族炭化水素系溶媒中に析出させる方法などを例示できる。
【0027】
かかる芳香族炭化水素系溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、フルオロベンゼン、o−ジフルオロベンゼン、m−ジフルオロベンゼン、p−ジフルオロベンゼン、1,2,3−トリフルオロベンゼン、1,2,4−トリフルオロベンゼン、1,3,5−トリフルオロベンゼン、1,2,3,4−テトラフルオロベンゼン、1,2,4,5−テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,3,4−テトラクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ペンタクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、ブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、p−ジブロモベンゼン、1,2,3−トリブロモベンゼン、1,2,4−トリブロモベンゼン、1,3,5−トリブロモベンゼン、1,2,3,4−テトラブロモベンゼン、1,2,4,5−テトラブロモベンゼン、ペンタブロモベンゼン、ヘキサブロモベンゼン等を挙げることができる。好ましくはトルエンである。
【0028】
通常、該ホウ素化合物の溶液の濃度は、飽和溶解度のものが望ましい。濃度を上げるために、溶液の温度を高めに設定することも好ましくされる。
【0029】
また、上記の脂肪族炭化水素系溶媒の具体例としては、ペンタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、ヘキサン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、石油エーテル(石油ベンジン)、ミネラルオイル(パラフィンオイル)、リグロイン(ミネラルスピリッツ)等が例示され、好ましくはヘキサンまたはヘプタンである。
【0030】
芳香族炭化水素系溶液から微粒子状ホウ素化合物を脂肪族炭化水素系溶媒中に析出させる方法としては、一般に、撹袢した大量の脂肪族炭化水素系溶媒中に溶液を滴下する方法がある。その際の滴下速度は、液量に応じて任意に設定することができる。
【0031】
また、滴下時の攪拌方法としては、公知の攪拌翼を用いて攪拌する方法、分散効率に優れた各種分散機器(例えば、ホモジナイザー、ラインミキサー、超音波照射器等)を用いる方法等が挙げられるが、特に制限はなく公知の何れの方法も適用できる。場合によっては、攪拌を全く行なわなくてもよい。
【0032】
脂肪族炭化水素系溶媒の使用量は、特に制限はなく芳香族炭化水素溶媒に溶解させたホウ素化合物を析出させるために必要な量の脂肪族炭化水素溶媒を用いればよい。具体的には、体積比又は重量比にしてホウ素化合物の芳香族炭化水素溶液に対して脂肪族炭化水素溶媒を、0.1倍から1000倍の量にして用いればよい。より好ましくは1倍から100倍、さらに好ましくは1倍から10倍の量を用いればよい。得られた微粒子状ホウ素化合物は、さらに脂肪族炭化水素系溶媒で洗浄を行うこともある。
【0033】
以上のようにして得られた微粒子状ホウ素化合物は、最大粒径が10μm以下のものも得ることができ、トルエン等の芳香族化合物を実質的に含有していない。
【0034】
またかかる微粒子状ホウ素化合物を製造する方法としては、粉砕によりその最大粒径を50μm以下に微粒子化する方法も挙げられる。粉砕の方法としては、該ホウ素化合物の最大粒径を50μm以下に微粒子化できる粉砕方法であれば特に制限はなく、一般的な粉砕機を用いて、回分式粉砕方法、連続式粉砕方法、あるいは、同時に分級を行う閉回路式粉砕方法のいずれをも用いることができる。
【0035】
かかる粉砕機の具体例としては、ジョージクラッシャー、ジャイレトリクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロールクラッシャー、リングローラーミル、ボールベアリングミル、ボウルミル、エッジランナー、スタンプミル、ハンマーミル、ケージミル、ピンミル、ディスインテグレーター、ディスメンブレーター、カッターミル、フェザーミル、振動ロッドミル、エロフォールミル、カスケードミル、ハドセルミル、ターボミル、ミクロシクロマート、ハリケーンミル、ポットミル、コンパウンドミル、コンパートメントミル、コニカルボールミル、超臨界ミル、ラジアルミル、タワーミル、円形振動ミル、ディスクミル、ハイスイングボールミル、遠心ボールミル、サンドグラインダー、アトマイザー、パルペライザー、スーパーミクロンミル、ジェット粉砕機、コロイドミル、乳鉢等を挙げることができる。
【0036】
粉砕方法は、ホウ素化合物が乾燥した状態で行なう乾式粉砕方法でも良く、粉砕機の種類によっては溶媒または分散媒を用いる湿式粉砕方法でも良い。湿式粉砕を行う場合の溶媒または分散媒として好ましいものは、脂肪族炭化水素系溶媒である。かかる脂肪族炭化水素系溶媒としては、既に述べた脂肪族炭化水素系溶媒と同様のものを用いることができる。
【0037】
粉砕によって、微粒子状ホウ素化合物の粒径を制御する方法としては、乾式粉砕を行う場合においても、湿式粉砕を行う場合においても、特に制限はなく、微粒子状ホウ素化合物の最大粒径を50μm以下にするように、粉砕の条件を選択して、粉砕を行えばよい。粉砕の条件として、例えば、粉砕時間、粉砕温度、粉砕機の振動数、回転数、粉砕機に適用する気体または液体の流量、流速、また湿式粉砕を行う場合は、ホウ素化合物のスラリーのスラリー濃度等を挙げることが出来るが、これらの条件に限定されることはない。同様に粉砕の条件を選択することにより、微粒子状ホウ素化合物の最大粒径を30μm以下、10μm以下、もしくは5μm以下に制御することもできる。
【0038】
粉砕時間は数分以上に設定すればよく、その上限は特にない。粉砕時間が長い方が微粒子状ホウ素化合物の粒径は小さくなりやすく、かつ、その最大粒径はより小さくなる。しかし、ある程度の粉砕時間を越えると、粒径は収束し、その変化が観測されなくなってくるので、粒径が収束したと判断できるようになれば、それ以上の時間を掛けて粉砕を継続しなくてもよく、例えば、10分〜30日の範囲で設定すればよい。
【0039】
粉砕温度に、特に制限はなく、粉砕することによってホウ素化合物の温度が上昇する場合があるが、粉砕中のホウ素化合物が−10℃からホウ素化合物の融点以下になっておればよい。好ましくは、0〜100℃、より好ましくは0〜50℃である。
【0040】
粉砕機の種類として例えばボールミル粉砕機のように振動を与えて粉砕する粉砕機の場合、条件の一つとして容器の振動数が挙げられる。この振動数も、特に制限はなく、粉砕機の性能の範囲で設定すればよい。例えば100回/分から10万回/分の範囲を取ることができる。
【0041】
粉砕機の種類として例えばハンマーミル粉砕機のように回転するハンマーを用いて粉砕する粉砕機の場合、条件の一つとしてハンマーの回転数が挙げられる。この回転数も、特に制限はなく、粉砕機の性能の範囲で設定すればよく、例えば100回/分から10万回/分の範囲を取ることができる。
【0042】
粉砕機の種類として例えばジェットミル粉砕機のように物質を気体、または、液体の流れに乗せて物質同士を衝突させて粉砕する粉砕機の場合、使用する気体、または、液体の流量、及び、流速は、特に制限はなく、微粒子状ホウ素化合物の最大粒径が50μm以下にできるような流量、流速であればよく、流量としては、例えば0.1リットル/秒〜1000リットル/秒の範囲を取ることができ、流速としては、例えば0.1メートル/秒〜1000メートル/秒の範囲を取ることができる。
【0043】
湿式粉砕を行う場合に用いるホウ素化合物のスラリーのスラリー濃度も、特に制限はなく、ホウ素化合物の最大粒径が50μm以下にできるようなスラリー濃度であればよい。例えば、0.01グラム/リットル〜1000グラム/リットルであり、好ましくは、0.1グラム/リットル〜500グラム/リットルであり、さらに好ましくは1グラム/リットル〜300グラム/リットルである。
【0044】
以上のようにして製造された微粒子状ホウ素化合物は、溶媒中に懸濁もしくはスラリー化した状態で反応装置に供給する方法や、粉末状態で供給する方法により、供給装置の安定運転及び定常的な供給を実現できる。オレフィンの重合に使用する際、スラリー化に用いる溶媒は通常の重合反応に用いられる溶媒を使用すればよく、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、使用に問題がなければベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、クロロホルム、ジクロルメタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒などが例示される。また、湿式粉砕により製造された微粒子状ホウ素化合物の場合は、用いた溶媒または分散媒のスラリーとして用いることができる。
【0045】
上記の微粒子状ホウ素化合物を溶媒に懸濁もしくはスラリー化した状態で供給する際に、例えば配管内で該ホウ素化合物が沈積しないように、懸濁もしくはスラリー化した状態での該ホウ素化合物の沈降速度が配管内流速よりも遅いことが好ましい。
【0046】
上記の微粒子状ホウ素化合物を溶媒に懸濁もしくはスラリー化した状態で供給する方法において、溶媒に懸濁もしくはスラリー化に用いる溶媒としては、微粒子状ホウ素化合物の使用に際し問題とならない溶媒であれば特に限定されないが、炭化水素溶媒が好ましく使用される。炭化水素溶媒としては、飽和炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒のいずれを使用しても構わないが、オレフィン重合の分野では臭気などの問題から飽和炭化水素溶媒が好ましい。飽和炭化水素溶媒としては、ブタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ドデカン、流動パラフィン等を、芳香族炭化水素溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
【0047】
上記の微粒子状ホウ素化合物を溶媒に懸濁もしくはスラリー化した状態で供給する方法においては、懸濁もしくはスラリー化した状態での該ホウ素化合物の沈降速度が配管内流速よりも遅くなるよう、粘度の高い溶媒を用いることが好ましい。溶媒の粘度として好ましくは、0.8cp(センチポアズ)以上であり、より好ましくは1.4〜1200cpであり、さらに好ましくは1.6〜50cpである。かかる高粘度溶媒の具体例としては、ドデカン、各種の流動パラフィンなどや、これらと他の溶媒との混合溶媒が挙げられる。流動パラフィンとしては例えば2〜2000cp程度のさまざまな粘度の市販されているものを使用できる。なお、ここでいう粘度は20℃における粘度をいう。
【0048】
上記の微粒子状ホウ素化合物を溶媒に懸濁もしくはスラリー化した状態で供給する方法において、配管を用いる際の配管の管径には特に制限はないが、0.5〜100mm、好ましくは1〜50mm、さらに好ましくは1.5〜30mmである。
【0049】
上記の微粒子状ホウ素化合物を溶媒に懸濁もしくはスラリー化した状態で供給する方法において、上記の微粒子状ホウ素化合物を溶媒に懸濁もしくはスラリー化した状態でのホウ素化合物と溶媒との使用量の比には特に制限はない。上記の微粒子状ホウ素化合物はトルエンなどの芳香族炭化水素溶媒にはある程度は溶解するが、溶解し切らずに懸濁もしくはスラリー化した状態で用いる該方法によれば、より小さい容積で多量のホウ素化合物を供給することが可能となる。また、上記の微粒子状ホウ素化合物は飽和炭化水素溶媒への溶解度は低く、溶液に含まれる該ホウ素化合物は少量であるが、該方法により、多量の該ホウ素化合物を小さい容積で供給することが可能となる。芳香族炭化水素溶媒を用いる場合、上記のホウ素化合物と溶媒との使用量の比は、溶媒容積に対するホウ素化合物のモル数として、2〜800ミリモル/リットルで供給することが可能であり、より好ましくは6〜500ミリモル/リットル、さらに好ましくは10〜300ミリモル/リットルで供給可能である。飽和炭化水素溶媒を用いる場合には、0.0001〜800ミリモル/リットルで供給することが可能であり、より好ましくは0.001〜500ミリモル/リットルで供給可能である。
【0050】
上記の微粒子状ホウ素化合物を溶媒に懸濁もしくはスラリー化した状態で反応装置に供給する方法において、反応装置とは、上記の微粒子状ホウ素化合物を用いる反応に供する装置であり、例えば、メタロセン錯体や非メタロセン錯体などの遷移金属化合物に上記の微粒子状ホウ素化合物を大スケールで連続的に供給し反応させる触媒調合装置や、オレフィン重合用反応装置などが挙げられる。中でも、工業的には長時間、連続的に上記の微粒子状ホウ素化合物を供給する必要があるオレフィン重合用反応装置に好適に適用される。
【0051】
オレフィン重合用反応装置としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素を溶媒として用いる溶媒重合またはスラリー重合、無溶媒・高温高圧下で行う高圧イオン重合、ガス状のモノマー中での気相重合などに用いる反応装置が挙げられる。好ましくは、シクロヘキサン等の溶媒を用いて重合体が溶融する120〜250℃、5〜50kg/cm2の条件下でオレフィンの重合を行う高温溶液重合法や、少なくとも300kg/cm2G以上の圧力および少なくとも130℃以上の温度で重合を実施する高圧イオン重合法によるオレフィン重合用反応装置である。さらに好適には、かなりの長時間連続的に供給する必要のある高圧イオン重合法によるオレフィン重合用反応装置に適用することができ、本発明のメリットはすこぶる大きい。
【0052】
上記の微粒子状ホウ素化合物を溶媒に懸濁もしくはスラリー化した状態で供給する方法においては、上記の微粒子状ホウ素化合物を溶媒に懸濁もしくはスラリー化した状態で連続的に反応装置に供給する際に、ポンプを用いて配管を通して反応装置へ供給することが好適にされる。
【0053】
本発明の微粒子状ホウ素化合物を溶媒に懸濁もしくはスラリー化した状態で供給する方法をオレフィン重合用触媒調合装置やオレフィン重合用反応装置に用いる場合、あるいは、本発明の微粒子状ホウ素化合物をオレフィン重合用触媒成分として用いる場合のオレフィン重合用触媒としては、(A)遷移金属化合物および(B)ホウ素化合物とを用いてなるオレフィン重合用触媒、または(A)遷移金属化合物、(B)ホウ素化合物および(C)有機アルミニウム化合物とを用いてなるオレフィン重合用触媒が挙げられる。
【0054】
ここで(A)遷移金属化合物としては、オレフィン重合活性を示す種々のものが使用可能であり、メタロセン錯体や非メタロセン錯体が例示される。具体例としては、ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(tert−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビスインデニルジルコニウムジクロライド、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリルビスインデニルジルコニウムジクロライド、ジメチルシリルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリルビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリルビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(tert−ブチルアミド)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジルコニウムジクロライドなど、およびこれらの化合物のジルコニウムをチタニウムに変更した化合物、さらにそれらも含めジクロライドをジメチルもしくはジベンジルに変更した化合物も挙げることができる。また他には、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,2−ジメチルエチレンジイミノニッケルジブロマイド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,2−ジメチルエチレンジイミノパラジウムジブロマイドなども同様に例示できる。
【0055】
(C)有機アルミニウム化合物としては、分子内に炭素−アルミニウム結合を有する化合物であり、一般にオレフィン重合の分野で用いられているものが使用可能である。具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサンなどが挙げられる。
【0056】
各触媒成分の使用量は、化合物(C)/化合物(A)のモル比が0.1〜10000で、好ましくは5〜2000、化合物(B)/化合物(A)のモル比が0.01〜100で、好ましくは0.5〜10の範囲にあるように、各成分を用いることが望ましい。
【0057】
重合に適用できるオレフィンとしては、炭素原子数2〜20個からなるオレフィン類、特にエチレン、炭素原子数3〜20のα−オレフィン、炭素原子数4〜20のジオレフィン類等を用いることができ、同時に2種類以上のモノマーを用いることもできる。オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1等の直鎖状オレフィン類、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、5−メチル−2−ペンテン−1等の分岐オレフィン類、ビニルシクロヘキサン等が例示されるが、本発明は上記化合物に限定されるべきものではない。共重合を行う時のモノマーの組み合わせの具体例としては、エチレンとプロピレン、エチレンとブテン−1、エチレンとヘキセン−1、エチレンとオクテン−1、プロピレンとブテン−1等が例示されるが、これらの組み合わせに限定されるべきものではない。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例における重合体の性質は、下記の方法によって測定した。
【0059】
(1)密度は、JIS K−6760に従って求めた。ただし、密度(アニール無)と記載した密度の値は、JIS K−6760においてアニーリング処理をせずに測定した値であり、密度(アニール有)と記載した密度の値はアニーリング処理をした測定値である。単位:g/cm3
【0060】
(2)α−オレフィン含有量:赤外分光光度計(日本分光工業社製 IR−810)を用いて、エチレンとα−オレフィンの特性吸収より求め、1000炭素当たりの短鎖分岐数(SCB)として表した。
【0061】
(3)共重合体の融点:セイコーSSC−5200を用いて、以下の条件により求めた。
昇温:40℃から150℃(10℃/分)、5分間保持
冷却:150℃から10℃(5℃/分)、10分間保持
測定:10℃から160℃(5℃/分)
【0062】
(4)極限粘度[η]:ウベローデ型粘度計を用い、130℃でテトラリン溶液中で測定した。
【0063】
(5)分子量及び分子量分布:ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフ(ウォーターズ社製 150,C)を用い、以下の条件により求めた。
カラム:TSK gel GMH−HT
測定温度:145℃ 設定
測定濃度:10mg/10ml−オルトジクロルベンゼン
【0064】
(6)メルトフローレート(MFR)は、JIS K−6760に規定された方法に従い、190℃にて測定した。単位:g/10分
【0065】
(7)ホウ素化合物の粒子径:ホウ素化合物を光学顕微鏡で観察し、その像より長軸径を測定して求めた。
【0066】
実施例1 (溶媒析出法によるホウ素化合物の調整)
攪拌機及び温度計を備えた500mlの円筒型フラスコに、室温下でN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(旭硝子(株)製市販品、最大粒径:数mm)4.3gを採取し、トルエン290mlを加えた。その後、攪拌しながら、80℃まで昇温し、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを完全に溶解させた。一方、マグネチックスターラーを備えた100mlの円筒型フラスコに、ヘキサン60mlを加えた。ここに、先に調製した80℃のN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液5mlを加えた。ただちに、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが微粒子状で析出した。光学顕微鏡で観察した粒子径は、2〜3μmであり、10μm以上の粒子は観察されなかった。
【0067】
実施例2 (溶媒析出法によるホウ素化合物の調整)
攪拌機及び温度計を備えた500mlの円筒型フラスコに、室温下でN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(旭硝子(株)製市販品、最大粒径:数mm)4.03gを採取し、トルエン339mlを加えた。その後、攪拌しながら、80℃まで昇温し、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを完全に溶解させた。一方、攪拌機を備えた5リットルの円筒型フラスコに、ヘキサン2205gを加えた。ここに、先に調製した80℃のN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート/トルエン溶液を全量加えた。ただちに、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが微粒子状で析出した。粒子径は、2〜3μmであり、10μm以上の粒子は観察されなかった。
【0068】
比較例
マグネチックスターラーを備えた50mlの円筒型フラスコに、室温下でN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(旭硝子(株)製市販品、最大粒径:数mm)2.0gを採取し、アセトン20mlを加え、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを完全に溶解させた。
一方、攪拌機を備えた1リットルの円筒型フラスコに、室温下で水500gを加え、撹袢を実施し、先に調製したN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのアセトン溶液を全量加えた。ただちに、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが析出したものの、形状は不均一であり、粒子径が1μm以下の微粒子、数十μmの針状結晶、数十μm〜数mmの粒子が観察された。
【0069】
実施例3 (乾式粉砕)
内容積265mlの円筒型金属容器(金属材質:SUS316L)に、直径約5〜6mmの金属球(材質:SUS316L)約350gを加え、そこへN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(旭硝子(株)製市販品、最大粒径:数mm)10.3gを採取した。容器を密閉後、小型振動ボールミル粉砕機(吉田製作所(株)製1042特殊型)に設置し、室温下、振動数1700回/分で14時間、振動、粉砕させた。微粒子状のN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート 9.7gが得られた。回収率は94.2%であった。粒子径は、2〜3μmであり、10μm以上の粒子は観察されなかった。
【0070】
実施例4 (湿式粉砕)
内容積265mlの円筒型金属容器(材質:SUS316L)に、直径約5〜6mmの金属球(材質:SUS316L)約370gを加え、そこへN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(旭硝子(株)製市販品、最大粒径:数mm)10.0gを採取し、続いてヘプタン100mlを加えた。容器を密閉後、小型振動ボールミル粉砕機(吉田製作所(株)製1042特殊型)に設置し、室温下、振動数1700回/分で14時間、振動、粉砕させた。微粒子状のN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートがヘプタンスラリーで得られた。粒子径は、2〜3μmであり、10μm以上の粒子は観察されなかった。
【0071】
参考例 (遷移金属化合物・ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドの合成)
(1)1−ブロモ−3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノールの合成
窒素雰囲気下、撹拌機を備えた500ml4つ口フラスコ中で、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール20.1g(123mmol)をトルエン150mlに溶かし、続いてtert−ブチルアミン25.9ml(18.0g、246mmol)を加えた。この溶液を−70℃に冷却し、そこへ臭素10.5ml(32.6g、204mmol)を加えた。この溶液を−70℃に保ち、2時間撹拌した。その後、室温まで昇温し、1回につき、10%希塩酸100mlを加えて、3回洗浄した。洗浄後得られる有機層を、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、エバポレーターを使用して溶媒を除去した後、シリカゲルカラムを用いて精製し、無色のオイルである1−ブロモ−3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノール 18.4g(75.7mmol)を得た。収率は、62%であった。
【0072】
(2)1−ブロモ−3−tert−ブチル−2−メトキシ−5−メチルベンゼンの合成
窒素雰囲気下、撹拌機を備えた100ml4つ口フラスコ中で、上記(1)で合成した1−ブロモ−3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノール13.9g(57.2mmol)をアセトニトリル40mlに溶かし、続いて水酸化カリウム3.8g(67.9mmol)を加えた。さらに、ヨウ化メチル17.8ml(40.6g、286mmol)を加え、12時間撹拌を続けた。その後、エバポレーターで溶媒を除去し、残さにヘキサン40mlを加え、ヘキサン可溶分を抽出した。抽出は3回繰り返した。抽出分から溶媒を除去し、淡黄色のオイルである1−ブロモ−3−tert−ブチル−2−メトキシ−5−メチルベンゼン 13.8g(53.7mmol)を得た。収率は、94%であった。
【0073】
(3)(3−tert−ブチル−2−メトキシ−5−メチルフェニル)クロロジメチルシランの合成
テトラヒドロフラン(31.5ml)、ヘキサン(139ml)及び上記(2)で合成した1−ブロモ−3−tert−ブチル−2−メトキシ−5−メチルベンゼン(45g)からなる溶液に、−40℃で、n−ブチルリチウムの1.6モル/リットルのヘキサン溶液(115ml)を20分かけて滴下した。得られた混合物を−40℃にて1時間保温した後、テトラヒドロフラン(31.5ml)を滴下した。
ジクロロジメチルシラン(131g)及びヘキサン(306ml)からなる溶液中に、−40℃で、上で得た混合物を滴下した。得られた混合物を室温まで2時間かけて昇温し、更に室温にて12時間撹拌した。
反応混合物から減圧下にて溶媒及び余剰のジクロロジメチルシランを留去し、残さからヘキサンを用いてヘキサン可溶分を抽出し、得られたヘキサン溶液から溶媒を留去して、淡黄色オイル状の(3−tert−ブチル−2−メトキシ−5−メチルフェニル)クロロジメチルシラン 41.9gを得た。収率は、84%であった。
【0074】
(4)(3−tert−ブチル−2−メトキシ−5−メチルフェニル)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランの合成
上記(3)で合成した(3−tert−ブチル−2−メトキシ−5−メチルフェニル)クロロジメチルシラン(5.24g)及びテトラヒドロフラン(50ml)からなる溶液中に、−35℃にて、テトラメチルシクロペンタジエニル リチウム(2.73g)を添加し、2時間かけて室温まで昇温し、更に室温にて10時間撹拌した。
得られた反応混合物から減圧下に溶媒を留去し、残さから、ヘキサンを用いてヘキサン可溶分を抽出し、得られたヘキサン溶液から減圧下に溶媒を留去して、黄色オイル状の(3−tert−ブチル−2−メトキシ−5−メチルフェニル)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シラン 6.69gを得た。収率は、97%であった。
【0075】
(5)ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドの合成
上記(4)で合成した(3−tert−ブチル−2−メトキシ−5−メチルフェニル)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シラン(10.04g)とトルエン(100ml)とトリエチルアミン(6.30g)とからなる溶液に、−70℃で、n−ブチルリチウムの1.63モル/リットルのヘキサン溶液(19.0ml)を滴下し、その後、2時間かけて室温まで昇温し、更に室温で12時間保温した。
窒素雰囲気下に0℃で、四塩化チタニウム(4.82g)のトルエン溶液(50ml)に、上で得られた混合物を滴下し、その後、1時間かけて室温まで昇温した後、10時間加熱還流した。
反応混合物を濾過し、濾液から溶媒を留去し、残さをトルエン−ヘキサン混合溶媒から再結晶して、橙色柱状結晶のジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド 3.46gを得た。収率は、27%であった。
スペクトルデータは次のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3) δ 0.57(s,6H)、1.41(s,9H)、2.15(s,6H)、2.34(s,6H)、2.38(s,3H)、7.15(s,1H)、7.18(s,1H)
13C−NMR(CDCl3) δ 1.25、14.48、16.28、22.47、31.25、36.29、120.23、130.62、131.47、133.86、135.50、137.37、140.82、142.28、167.74
マススペクトル(CI、m/e)458

【0076】
実施例5
内容積1リットルの攪拌翼付オートクレーブ型反応装置を用いてエチレンとブテン−1を連続的に反応器内に供給し重合を行った。重合条件を全圧力を800kg/cm2Gに、ブテン−1濃度を29mol%、水素濃度を0.12mol%に設定した。ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドのヘキサン溶液(0.7μmol/g)を、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(35μmol/g)を、更にヘプタンと流動パラフィン(エッソ石油(株)製クリストール202。18℃における粘度=130cp)の混合液(体積比ヘプタン:流動パラフィン=1:4。)中に分散させたN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(トルエンとヘプタンを用いた溶媒析出法により微粒子化したもの。粒子径は、2〜3μmであり、10μm以上の粒子は観察されないもの。1.2μmol/g)をそれぞれ別々の容器に準備し、それぞれを300g/時間、360g/時間、及び、750g/時間の供給速度で、管径3.175mmの配管を通して反応器に連続的に供給した。重合反応温度が230℃に、Al原子とTi原子のモル比が60に、ホウ素原子とTi原子の比が4.4になるようにした。その結果、融点が90.6℃、分子量(Mw)が64000、分子量分布(Mw/Mn)が1.7であるエチレン−ブテン−1共重合体を1時間当たり、Ti原子1モル当たり10ton製造した。
【0077】
実施例6
内容積1リットルの攪拌翼付オートクレーブ型反応装置を用いてエチレンとブテン−1を連続的に反応器内に供給し重合を行った。重合条件を全圧力を800kg/cm2Gに、ブテン−1濃度を45.9mol%に設定した。ヘプタンと流動パラフィン(エッソ石油(株)製クリストール202)の混合液(体積比ヘプタン:流動パラフィン=1:4)中にジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドを溶解させ(0.066μmol/g)、該液中にN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(トルエンとヘプタンを用いた溶媒析出法により微粒子化したもの。粒子径は、2〜3μmであり、10μm以上の粒子は観察されないもの。)を分散させ(0.4μmol/g)、ホウ素原子とTi原子の比が6.0となるように調整した。この混合懸濁溶液とトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(5.47μmol/g)とをそれぞれ別々の容器に準備し、それぞれを323g/時間、及び、240g/時間の供給速度で、管径3.175mmの配管を通して反応器に連続的に供給した。重合反応温度が205℃に、Al原子とTi原子のモル比が61.7になるようにした。その結果、密度(アニール無)が0.873、MFRが6.8、分子量(Mw)が72000、分子量分布(Mw/Mn)が1.7であるエチレン−ブテン−1共重合体を1時間当たり、Ti原子1モル当たり98.4ton製造した。
【0078】
実施例7
内容積1リットルの攪拌翼付オートクレーブ型反応装置を用いてエチレンとブテン−1を連続的に反応器内に供給し重合を行った。重合条件を全圧力を800kg/cm2Gに、ブテン−1濃度を47.0mol%に設定した。ヘプタンと流動パラフィン(エッソ石油(株)製クリストール202)の混合液(体積比ヘプタン:流動パラフィン=1:4)中にジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドを溶解させ(0.066μmol/g)、該液中にN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(トルエンとヘプタンを用いた溶媒析出法により微粒子化したもの。粒子径は、2〜3μmであり、10μm以上の粒子は観察されないもの。)を分散させ(0.4μmol/g)、ホウ素原子とTi原子の比が6.0となるように調整した。この混合懸濁溶液とトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(5.47μmol/g)とをそれぞれ別々の容器に準備し、それぞれを373g/時間、及び、283g/時間の供給速度で、管径3.175mmの配管を通して反応器に連続的に供給した。重合反応温度が206℃に、Al原子とTi原子のモル比が63.3になるようにした。その結果、密度(アニール無)が0.867、融点が42.6℃、MFRが11.8であるエチレン−ブテン−1共重合体を1時間当たり、Ti原子1モル当たり106.3ton製造した。
【0079】
実施例8
内容積1リットルの攪拌翼付オートクレーブ型反応装置を用いてエチレンとブテン−1を連続的に反応器内に供給し重合を行った。重合条件を全圧力を800kg/cm2Gに、ブテン−1濃度を43.9mol%に設定した。ヘプタンと流動パラフィン(エッソ石油(株)製クリストール202)の混合液(体積比ヘプタン:流動パラフィン=1:4)中にジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドを溶解させ(0.066μmol/g)、該液中にN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(トルエンとヘプタンを用いた溶媒析出法により微粒子化したもの。粒子径は、2〜3μmであり、10μm以上の粒子は観察されないもの。)を分散させ(0.4μmol/g)、ホウ素原子とTi原子の比が6.0となるように調整した。この混合懸濁溶液とトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(5.47μmol/g)とをそれぞれ別々の容器に準備し、それぞれを290g/時間、及び、270g/時間の供給速度で、管径3.175mmの配管を通して反応器に連続的に供給した。重合反応温度が205℃に、Al原子とTi原子のモル比が77.2になるようにした。その結果、MFRが13.3であるエチレン−ブテン−1共重合体を1時間当たり、Ti原子1モル当たり104.5ton製造した。
【0080】
実施例9
内容積1リットルの攪拌翼付オートクレーブ型反応装置を用いてエチレンとヘキセン−1を連続的に反応器内に供給し重合を行った。重合条件を全圧力を796kg/cm2Gに、ヘキセン−1濃度を29.7mol%に設定した。ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドと、トリイソブチルアルミニウムが混合されたヘプタン溶液(該錯体、及び、トリイソブチルアルミニウムの濃度はそれぞれ、0.37μmol/g、及び、18.5μmol/gで、Al原子とTi原子のモル比が50である)を、更に湿式粉砕により微粒子化したN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(最大粒径20μm以下)のヘプタン/流動パラフィン(エッソ石油(株)製クリストール202)混合液(体積比でヘプタン:流動パラフィン=1:4)への懸濁液(0.71μmol/g)をそれぞれ別々の容器に準備し、それぞれを246g/時間、及び、484g/時間の供給速度で、管径3.175mmの配管を通して反応器に連続的に供給した。重合反応温度が210℃に、ホウ素原子とTi原子の比が3.6になるようにした。その結果、MFRが3.8、密度(アニール無)が0.889であるエチレン−ヘキセン−1共重合体を1時間当たり、Ti原子1モル当たり28ton製造した。
【0081】
実施例10
内容積1リットルの攪拌翼付オートクレーブ型反応装置を用いてエチレンとヘキセン−1を連続的に反応器内に供給し重合を行った。重合条件を全圧力を796kg/cm2Gに、ヘキセン−1濃度を31.6mol%に設定した。ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドと、トリイソブチルアルミニウムが混合されたヘプタン溶液(該錯体、及び、トリイソブチルアルミニウムの濃度はそれぞれ、2μmol/g、及び、200μmol/gで、Al原子とTi原子のモル比が100である)を、更に湿式粉砕により微粒子化したN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(最大粒径20μm以下)の流動パラフィン(エッソ石油(株)製クリストール202(18℃における粘度=130cp):出光石油化学製IPソルベント2028(19℃における粘度=3.2cp)=60:40(体積%)の混合物)懸濁液(7.0μmol/g)をそれぞれ別々の容器に準備し、それぞれを90g/時間、及び、195g/時間の供給速度で、管径3.175mmの配管を通して反応器に連続的に供給した。重合反応温度が220℃に、ホウ素原子とTi原子の比が7.6になるようにした。その結果、MFRが5.8、密度(アニール無)が0.888、融点が69.8℃、SCBが32.6であるエチレン−ヘキセン−1共重合体を1時間当たり、Ti原子1モル当たり11ton製造した。
【0082】
実施例11
内容積1リットルの攪拌翼付オートクレーブ型反応装置を用いてエチレンとヘキセン−1を連続的に反応器内に供給し重合を行った。重合条件を全圧力を796kg/cm2Gに、ヘキセン−1濃度を31.1mol%に設定した。ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドと、トリイソブチルアルミニウムが混合されたヘプタン溶液(該錯体、及び、トリイソブチルアルミニウムの濃度はそれぞれ、0.37μmol/g、及び、18.5μmol/gで、Al原子とTi原子のモル比が50である)を、更に湿式粉砕により微粒子化したN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(最大粒径20μm以下)の流動パラフィン(エッソ石油(株)製クリストール202:出光石油化学製IPソルベント2028=60:40(体積%)の混合物)懸濁液(1.39μmol/g)をそれぞれ別々の容器に準備し、それぞれを745g/時間、及び、1235g/時間の供給速度で、管径3.175mmの配管を通して反応器に連続的に供給した。重合反応温度が247℃に、ホウ素原子とTi原子の比が6.22になるようにした。その結果、MFRが55、密度(アニール無)が0.886であるエチレン−ヘキセン−1共重合体を1時間当たり、Ti原子1モル当たり13ton製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(3)から選ばれた一種以上のホウ素化合物を芳香族炭化水素系溶媒に溶解させた後、脂肪族炭化水素系溶媒中に析出させて得られることを特徴とする微粒子状ホウ素化合物。
(1)一般式 BQ123で表されるホウ素化合物
(2)一般式 G+(BQ1234-で表されるホウ素化合物
(3)一般式 (L−H)+(BQ1234-で表されるホウ素化合物
(上記各一般式においてそれぞれ、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1〜Q4はハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基または2置換アミノ基であり、それらは同じであっても異なっていても良い。G+は無機または有機のカチオンであり、Lは中性ルイス塩基であり、(L−H)+はブレンステッド酸である。)
【請求項2】
下記(1)〜(3)から選ばれた一種以上のホウ素化合物を、その最大粒径が50μm以下になるように粉砕させて得られることを特徴とする微粒子状ホウ素化合物。
(1)一般式 BQ123で表されるホウ素化合物
(2)一般式 G+(BQ1234-で表されるホウ素化合物
(3)一般式 (L−H)+(BQ1234-で表されるホウ素化合物
(上記各一般式においてそれぞれ、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1〜Q4はハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基または2置換アミノ基であり、それらは同じであっても異なっていても良い。G+は無機または有機のカチオンであり、Lは中性ルイス塩基であり、(L−H)+はブレンステッド酸である。)
【請求項3】
下記(1)〜(3)から選ばれた一種以上のホウ素化合物であって、その最大粒径が10μm以下であることを特徴とする微粒子状ホウ素化合物。
(1)一般式 BQ123で表されるホウ素化合物
(2)一般式 G+(BQ1234-で表されるホウ素化合物
(3)一般式 (L−H)+(BQ1234-で表されるホウ素化合物
(上記各一般式においてそれぞれ、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1〜Q4はハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基または2置換アミノ基であり、それらは同じであっても異なっていても良い。G+は無機または有機のカチオンであり、Lは中性ルイス塩基であり、(L−H)+はブレンステッド酸である。)
【請求項4】
1〜Q4が、それぞれ少なくとも1個のフッ素原子を含む炭素原子数1〜20のフッ素化炭化水素基である請求項1〜3いずれかに記載の微粒子状ホウ素化合物。
【請求項5】
1〜Q4が、それぞれ少なくとも1個のフッ素原子を含む炭素原子数6〜20のフッ素化アリール基である請求項1〜3いずれかに記載の微粒子状ホウ素化合物。
【請求項6】
ホウ素化合物が、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、またはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである請求項1〜3いずれかに記載の微粒子状ホウ素化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の微粒子状ホウ素化合物よりなることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分。
【請求項8】
下記(1)〜(3)から選ばれた一種以上のホウ素化合物を芳香族炭化水素系溶媒に溶解させた後、脂肪族炭化水素系溶媒中に析出させることを特徴とする微粒子状ホウ素化合物の製造方法。
(1)一般式 BQ123で表されるホウ素化合物
(2)一般式 G+(BQ1234-で表されるホウ素化合物
(3)一般式 (L−H)+(BQ1234-で表されるホウ素化合物
(上記各一般式においてそれぞれ、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1〜Q4はハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基または2置換アミノ基であり、それらは同じであっても異なっていても良い。G+は無機または有機のカチオンであり、Lは中性ルイス塩基であり、(L−H)+はブレンステッド酸である。)
【請求項9】
1〜Q4が、それぞれ少なくとも1個のフッ素原子を含む炭素原子数1〜20のフッ素化炭化水素基である請求項8に記載の微粒子状ホウ素化合物の製造方法。
【請求項10】
1〜Q4が、それぞれ少なくとも1個のフッ素原子を含む炭素原子数6〜20のフッ素化アリール基である請求項8に記載の微粒子状ホウ素化合物の製造方法。
【請求項11】
ホウ素化合物が、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、またはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである請求項8に記載の微粒子状ホウ素化合物の製造方法。

【公開番号】特開2006−321810(P2006−321810A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199125(P2006−199125)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【分割の表示】特願2003−161726(P2003−161726)の分割
【原出願日】平成9年12月19日(1997.12.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】