説明

微細セル構造を有する発泡防塵材

【課題】優れた防塵性を有しているとともに、0.10〜0.20mmといった更なる微小なクリアランスに対しても追従可能な優れた柔軟性を有する防塵材を提供する。
【解決手段】本発明の発泡防塵材は、厚さが0.1〜1.0mmの発泡体により構成された防塵材であって、該発泡体が、平均セル径が10〜65μmの微細セル構造、0.1mmの厚さに圧縮したときの対反発荷重が0.010〜0.100MPaとなる特性、及び0.01〜0.050g/cm3の見掛け密度を有していることを特徴とする。前記発泡体は、独立気泡構造又は半連続半独立気泡構造を有していることが好ましい。また、発泡体の片面又は両面に、粘着層を有していてもよい。該粘着層は、フィルム層を介して、発泡体上に形成されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡防塵材、および該発泡防塵材が用いられた防塵構造に関し、さらに詳細には、優れた防塵性を有するとともに、微小なクリアランスに対しても良好に追従することができる発泡防塵材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置に固定された画像表示部材や、いわゆる「携帯電話」や「携帯情報端末」等に固定されたカメラやレンズなどの光学部材を、所定の部位(固定部など)に固定する際に、防塵材が使用されている。このような防塵材としては、低発泡で且つ独立気泡構造を有する微細セルウレタン系発泡体や高発泡ウレタンを圧縮成形したものの他、独立気泡を有する発泡倍率30倍程度のポリエチレン系発泡体などが使用されていた。具体的には、例えば、密度0.3〜0.5g/cm3のポリウレタン系発泡体からなるガスケット(特許文献1参照)や、平均気泡径が1〜500μmの発泡構造体からなる電気・電子機器用シール材(特許文献2参照)などが使用されている。
【0003】
また、従来、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置に装着された画像表示部材や、いわゆる「携帯電話」や「携帯情報端末」等に装着されたカメラやレンズなどの光学部材において、防塵材が使用される部分のクリアランス(clearance;すきま、間隔)は、十分に大きく、そのため、防塵材をあまり圧縮しなくても使用することが可能であった。従って、防塵材の持つ圧縮反発力について特に気にする必要がなかった。
【0004】
しかしながら、近年、光学部材(画像表示装置、カメラ、レンズなど)が装着(セット)される製品が薄型化されていくにつれ、防塵材が使われる部分のクリアランスが減少していく傾向にある。また、最近になって、従来使用されていた防塵材がその反発力の大きさゆえに使用できない状況が発生しつつある。そのため、優れた防塵性を発揮できるとともに、微小なクリアランスに対しても追従可能な優れた柔軟性を有している防塵材が求められている。
【0005】
なお、例えば、上記ガスケット(特許文献1参照)(すなわち、密度0.3〜0.5g/cm3のポリウレタン系発泡体からなるガスケット)では、発泡倍率を抑えることで液晶表示画面のガタツキを防止するとしているが、柔軟性や緩衝性が十分ではない。
【0006】
また、上記電気・電子機器用シール材(特許文献2参照)(すなわち、平均気泡径が1〜500μmの発泡構造体からなる電気・電子機器用シール材)では、発泡材としての圧縮反発力について言及されていない。
【0007】
さらに、特開2005−97566号公報(特許文献3)には、優れた防塵性を有しているとともに、微小なクリアランスに対しても追従可能な優れた柔軟性を有している防塵材、及び該防塵材が用いられている防塵構造を提供することについて示されているが、0.10〜0.20mmといった更なる微小なクリアランスにおいては柔軟性や緩衝性は十分ではない。
【0008】
【特許文献1】特開2001−100216号公報
【特許文献2】特開2002−309198号公報
【特許文献3】特開2005−97566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、優れた防塵性を有しているとともに、0.10〜0.20mmといった更なる微小なクリアランスに対しても追従可能な優れた柔軟性を有している防塵材を提供することにある。
【0010】
また、従来は微粘着の片面接着テープとの貼り合わせの際に、貼り合わせた後に微粘着の片面粘着テープとの接着力を向上させるために熱処理する必要があった。
【0011】
従って、本発明の他の目的は、微細セル構造を有することで微粘着の片面接着テープとの粘着力が向上し、微粘着の片面粘着テープとの接着力を向上させるための熱処理工程を省くことのできる防塵材を提供することにある。
【0012】
さらに、発泡部材用キャリアテープに対しても、その搬送時や打ち抜き加工時においては十分な接着力により発泡部材を保持することが必要であった。
【0013】
従って、本発明の他の目的は、微細セル構造を有することでキャリアテープとの粘着力が向上し搬送時や打抜き加工時に発泡部材のずれを防ぐことが可能な防塵材を提供することにある。さらにまた、発泡部材とキャリアテープとの初期貼着性においても、十分な初期貼着性を発揮する防塵材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、防塵体を構成する発泡体として、厚さが0.1〜1.0mmであって、平均セル径が10〜65μmの微細セル構造、0.1〜0.2mmの厚さに圧縮したときの対反発荷重が0.010〜0.100MPaとなる特性、及び0.01〜0.05g/cm3の見掛け密度を有している発泡体を用いると、優れた防塵性を発揮することができるとともに、微小なクリアランスに対しても良好に追従することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明は、厚さ0.1〜1.0mmの発泡体により構成された防塵材であって、該発泡体が、平均セル径が10〜65μmの微細セル構造、0.1mmの厚さに圧縮したときの対反発荷重が0.010〜0.100MPaとなる特性、及び0.01〜0.050g/cm3の見掛け密度を有していることを特徴とする発泡防塵材を提供する。
【0016】
前記発泡体の平均セル径は、10〜50μmであることが好ましい。
【0017】
前記発泡体は、独立気泡構造又は半連続半独立気泡構造を有していることが好ましい。発泡体の片面又は両面に、粘着層を有していてもよく、該粘着層は、フィルム層を介して、発泡体上に形成されていることが好ましい。また、粘着層は、アクリル系粘着剤により形成されていてもよい。
【0018】
このような発泡体は、熱可塑性ポリマーに高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成されていることが好ましい。また、このような発泡体は、熱可塑性ポリマーからなる未発泡成形物に高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成されていてもよく、さらに溶融した熱可塑性ポリマーに不活性ガスを加圧状態下で含浸させた後、減圧とともに成形に付して形成されていてもよい。さらにまた、発泡体は、減圧後、さらに加熱することにより形成されていることが好ましい。
【0019】
不活性ガスとしては、二酸化炭素を好適に用いることができ、含浸時の不活性ガスは、超臨界状態であることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、前記発泡防塵材をスライスすることにより得られ、厚さが0.2〜0.4mmである発泡防塵材を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の発泡防塵材によれば、前記構成を有しているので、優れた防塵性を有しているとともに、0.10〜0.20mmといった更なる微小なクリアランスに対しても追従可能な優れた柔軟性を有している。
また、前記構成を有しているので、片面粘着テープや、キャリアテープとの粘着性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[発泡防塵材を構成する発泡体]
本発明の発泡防塵材[発泡体により構成された防塵材(シール材)]は、厚さが0.1〜1.0mmであり、平均セル径が10〜65μmの微細セル構造、0.1mmの厚さに圧縮したときの対反発荷重が0.010〜0.100MPaとなる特性、及び0.01〜0.050g/cm3の見掛け密度を有している発泡体により構成されている。このように、発泡体の平均セル径の上限を65μm以下(好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらにより好ましくは30μm以下)とすることにより、防塵性を高めるとともに、遮光性を良好とすることができ、一方、発泡体の平均セル径の下限を10μm以上(好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上)とすることにより、クッション性(衝撃吸収性)を良好とすることができる。
【0023】
また、発泡体の0.1mmに圧縮した時の対反発荷重(0.1mm圧縮時の反発力)の上限を0.100MPa以下(好ましくは0.080MPa以下、さらに好ましくは0.050MPa以下)とすることにより、狭いクリアランスにおいても、発泡防塵材の反発による不具合の発生を防止することができ、一方、発泡体の0.1mmに圧縮した時の対反発荷重の下限を0.010MPa以上(好ましくは0.015MPa以上、さらに好ましくは0.020MPa以上)とすることにより、優れた防塵性を確保することができる。
【0024】
さらに、防塵材を構成する発泡体の厚さは、通常0.1〜1.0mm(好ましくは0.2〜0.5mm)である。厚さが1.0mmを超えると0.1mm圧縮時の対反発荷重が高くなる場合があり、また厚さが0.1mm未満であると、防塵性が低下する場合がある。
【0025】
さらにまた、発泡体の見掛け密度の上限を0.05g/cm3以下(好ましくは0.04g/cm3以下)とすることにより、柔軟性を高めることができ、一方、発泡体の見掛け密度の下限を0.01g/cm3以上(好ましくは0.02g/cm3以上)とすることにより、優れた防塵性を確保することができる。
【0026】
このような発泡体としては、前記特性を有していれば、その組成や、気泡構造などは特に制限されないが、例えば、気泡構造としては、独立気泡構造、半連続半独立気泡構造(独立気泡構造と連続気泡構造とが混在している気泡構造であり、その割合は特に制限されない)が好ましく、特に、発泡体中に独立気泡構造部が80%以上(なかでも90%以上)となっている気泡構造が好適である。
【0027】
本発明の発泡防塵材において、発泡体を製造する方法としては、物理的方法、化学的方法等、発泡成形に通常用いられる方法が採用できる。一般的な物理的方法は、クロロフルオロカーボン類または炭化水素類などの低沸点液体(発泡剤)をポリマーに分散させ、次に加熱し発泡剤を揮発させることにより気泡を形成させるものである。また化学的方法は、ポリマーベースに添加された化合物(発泡剤)の熱分解により生じたガスによりセルを形成し、発泡体を得る方法である。最近の環境問題などに鑑みると、物理的手法が好ましい。
【0028】
なお、このような発泡体の製造には、天然ゴムまたは合成ゴム(クロロプレンゴム、エチレン、プロピレン、ターポリマーなど)、加硫剤、発泡剤、充填剤などの構成成分を、バンバリーミキサーや加圧ニーダなどの混練り機で混練したのち、カレンダ、押し出し機、コンベアベルトキャスティングなどにより連続的に混練しつつ、シーツ状、ロッド状に成型し、これを加熱して加硫、発泡させ、さらに必要によりこの加硫発泡体を所定形状に裁断加工する方法や、天然ゴムまたは合成ゴム、加硫剤、発泡剤、充填剤などの構成成分を、ミキシングロールで混練し、この混練組成物をバッチ式により、型で加硫、発泡ならびに成形する方法などを使用することができる。
【0029】
特に本発明では、セル径が小さく且つセル密度の高い発泡体が得られることから、高圧の不活性ガスを発泡剤として用いる方法、例えば、熱可塑性ポリマーに、高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て、発泡体を形成する方法が好ましい。特に、発泡剤として二酸化炭素を用いると、不純物の少ないクリーンな発泡体を得ることができ、好ましい。前述のような物理的方法による発泡方法では、発泡剤として用いられる物質の可燃性や毒性、及びオゾン層破壊などの環境への影響が懸念される。また、化学的方法による発泡方法では、発泡ガスの残渣が発泡体中に残存するため、特に低汚染性の要求が高い電子機器用途においては、腐食性ガスやガス中の不純物による汚染が問題となる。なお、これらの物理的発泡方法及び化学的発泡方法では、いずれにおいても微細な気泡構造を形成することは難しく、特に300μm以下の微細気泡を形成することは極めて困難であるといわれている。
【0030】
このように、本発明では、発泡体の製造方法としては、高圧の不活性ガスを発泡剤として用いる方法を利用した製造方法が好適であり、前述ように、熱可塑性ポリマーに、高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て、発泡体を形成する方法を好適に採用することができる。なお、不活性ガスを含浸させる際には、予め成形した未発泡成形物に不活性ガスを含浸させてもよく、また、溶融した熱可塑性ポリマーに不活性ガスを加圧状態下で含浸させてもよい。従って、具体的には、発泡体の製造方法としては、例えば、熱可塑性ポリマーに高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成される方法、熱可塑性ポリマーからなる未発泡成形物に高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成される方法、または溶融した熱可塑性ポリマーに不活性ガスを加圧状態下で含浸させた後、減圧とともに成形に付して形成される方法が好適である。
【0031】
(熱可塑性ポリマー)
本発明において、発泡体(樹脂発泡体)の素材である熱可塑性ポリマーとしては、熱可塑性を示すポリマーであって、高圧ガスを含浸可能なものであれば特に制限されない。このような熱可塑性ポリマーとして、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン又はプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと他のエチレン性不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール等)との共重合体などのオレフィン系重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系重合体;6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロンなどのポリアミド;ポリアミドイミド;ポリウレタン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリフッ化ビニル;アルケニル芳香族樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ビスフェノールA系ポリカーボネートなどのポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンスルフィドなどが挙げられる。
【0032】
また、前記熱可塑性ポリマーには、常温ではゴムとしての性質を示し、高温では熱可塑性を示す熱可塑性エラストマーも含まれる。このような熱可塑性エラストマーとして、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチレンなどのオレフィン系エラストマー;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体、それらの水素添加物ポリマーなどのスチレン系エラストマー;熱可塑性ポリエステル系エラストマー;熱可塑性ポリウレタン系エラストマー;熱可塑性アクリル系エラストマーなどが挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、例えば、ガラス転移温度が室温以下(例えば20℃以下)であるため、防塵材又はシール材としたとき柔軟性及び形状追随性に著しく優れる。
【0033】
熱可塑性ポリマーは単独で又は2種以上混合して使用できる。また、発泡体の素材(熱可塑性ポリマー)として、熱可塑性エラストマー、熱可塑性以外の熱可塑性ポリマー、熱可塑性エラストマーと熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性ポリマーとの混合物の何れを用いることもできる。
【0034】
前記熱可塑性エラストマーと熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性ポリマーとの混合物として、例えば、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系エラストマーとポリプロピレン等のオレフィン系重合体との混合物などが挙げられる。熱可塑性エラストマーと熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性ポリマーとの混合物を用いる場合、その混合比率は、例えば、前者/後者=1/99〜99/1程度(好ましくは10/90〜90/10程度、さらに好ましくは20/80〜80/20程度)である。
【0035】
(不活性ガス)
本発明で用いられる不活性ガスとしては、上記熱可塑性ポリマーに対して不活性で且つ含浸可能なものであれば特に制限されず、例えば、二酸化炭素、窒素ガス、空気等が挙げられる。これらのガスは混合して用いてもよい。これらのうち、発泡体の素材として用いる熱可塑性ポリマーへの含浸量が多く、含浸速度の速い二酸化炭素が好適である。
【0036】
熱可塑性ポリマーに含浸させる際の不活性ガスは超臨界状態であるのが好ましい。超臨界状態では、熱可塑性ポリマーへのガスの溶解度が増大し、高濃度の混入が可能である。また、含浸後の急激な圧力降下時には、前記のように高濃度であるため、気泡核の発生が多くなり、その気泡核が成長してできる気泡の密度が気孔率が同じであっても大きくなるため、微細な気泡を得ることができる。なお、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.4MPaである。
【0037】
発泡体を形成する際、熱可塑性ポリマーに、必要に応じて添加剤を添加してもよい。添加剤の種類は特に限定されず、発泡成形に通常使用される各種添加剤を用いることができる。このような添加剤として、例えば、気泡核剤、結晶核剤、可塑剤、滑剤、着色剤(顔料、染料等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、補強剤、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、加硫剤、表面処理剤などが挙げられる。添加剤の添加量は、気泡の形成等を損なわない範囲で適宜選択でき、通常の熱可塑性エラストマー等の熱可塑性ポリマーの成形に用いられる添加量を採用できる。なお、添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0038】
前記滑剤は熱可塑性ポリマーの流動性を向上させるとともに、ポリマーの熱劣化を抑制する作用を有する。本発明において用いられる滑剤としては、熱可塑性ポリマーの流動性の向上に効果を示すものであれば特に制限されず、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックスなどの炭化水素系滑剤;ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、硬化ヒマシ油、ステアリン酸ステアリルなどのエステル系滑剤などが挙げられる。なお、このような滑剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
滑剤の添加量としては、例えば、熱可塑性ポリマー100重量部に対して、0.5〜10重量部(好ましくは0.8〜8重量部、より好ましくは1〜6重量部)である。添加量が10重量部を超えると、流動性が高くなりすぎて発泡倍率が低下するおそれがある。また、0.5重量部未満であると、流動性の向上が図れず、発泡時の延伸性が低下して発泡倍率が低下するおそれがある。
【0040】
また前記収縮防止剤は、発泡体の気泡膜の表面に分子膜を形成して発泡剤ガスの透過を効果的に抑制する作用を有する。本発明において用いられる収縮防止剤としては、発泡剤ガスの透過を抑制する効果を示すものであれば特に限定されず、例えば、脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸のアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、バリウム、亜鉛、鉛の塩など);脂肪酸アミド[脂肪酸の炭素数12〜38程度(好ましくは12〜22程度)の脂肪酸アミド(モノアミド、ビスアミドのいずれであってもよいが、微細セル構造を得るためにはビスアミドが好適に用いられる。)、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ラウリン酸ビスアミドなど]等が挙げられる。なお、このような収縮防止剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0041】
収縮防止剤の添加量としては、例えば、熱可塑性ポリマー100重量部に対して、0.5〜10重量部(好ましくは0.7〜8重量部、さらに好ましくは1〜6重量部)である。添加量が10重量部を超えると、セル成長過程においてガス効率を低下させてしまうため、セル径は小さいものが得られるものの未発泡部分も多くなり、発泡倍率が低下するおそれがある。また、0.5重量部未満であると、被膜の形成が十分ではなく、発泡時にガス抜けが発生して、収縮がおこり、発泡倍率が低下するおそれがある。
【0042】
なお、添加剤としては、特に制限されないが、例えば前記滑剤と前記収縮防止剤を組み合わせて用いてもよい。例えば、ステアリン酸モノグリセリドなどの滑剤と、エルカ酸アミド、ラウリン酸ビスアミドなどの収縮防止剤を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(発泡体の製造)
熱可塑性ポリマーに、高圧の不活性ガスを含浸させることにより、発泡体を製造する方法としては、具体的には、熱可塑性ポリマーに、不活性ガスを高圧下で含浸させるガス含浸工程、該工程後に圧力を低下させて樹脂を発泡させる減圧工程、及び必要に応じて加熱により気泡を成長させる加熱工程を経て形成する方法などが挙げられる。この場合、前述のように、予め成形した未発泡成形物を不活性ガスに含浸させてもよく、また、溶融した熱可塑性ポリマーに不活性ガスを加圧状態下で含浸させた後、減圧の際に成形に付してもよい。これらの工程は、バッチ方式、連続方式の何れの方式で行ってもよい。
【0044】
バッチ方式によれば、例えば以下のようにして発泡体を形成できる。すなわち、まず、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用してポリオレフィン樹脂、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性ポリマーを押し出すことにより、未発泡成形物(発泡体成形用樹脂シート等)を形成する。或いは、ローラ、カム、ニーダ、バンバリ型の羽根を設けた混練機を使用して、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性ポリマーを均一に混練しておき、これを熱板のプレス機を用いてプレス成形し、熱可塑性ポリマーを基材樹脂として含む未発泡成形物(発泡体成形用樹脂シート等)を形成する。そして、得られた未発泡成形物を耐圧容器中に入れ、高圧の不活性ガスを導入し、該不活性ガスを未発泡成形物中に含浸させる。この場合、未発泡成形物の形状は特に限定されず、ロール状、板状等の何れであってもよい。また、高圧の不活性ガスの導入は連続的に行ってもよく不連続的に行ってもよい。十分に高圧の不活性ガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、基材樹脂中に気泡核を発生させる。気泡核はそのまま室温で成長させてもよく、また、必要に応じて加熱することによって成長させてもよい。加熱の方法としては、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの公知乃至慣用の方法を採用できる。このようにして気泡を成長させた後、冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化する。
【0045】
一方、連続方式によれば、例えば以下のようにして発泡体を形成できる。すなわち、熱可塑性ポリマーを単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して混練しながら高圧の不活性ガスを注入し、十分にガスを熱可塑性ポリマー中に含浸させた後、押し出して圧力を解放し(通常、大気圧まで)、発泡と成形とを同時に行い、場合によっては加熱することにより気泡を成長させる。気泡を成長させた後、冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化する。
【0046】
前記ガス含浸工程における圧力は、例えば6MPa以上(例えば6〜100MPa程度)、好ましくは8MPa以上(例えば8〜100MPa程度)である。圧力が6MPaより低い場合には、発泡時の気泡成長が著しく、気泡径が大きくなりすぎて、前記範囲の小さな平均セル径(平均気泡径)を得ることができず、防塵効果が低下する。これは、圧力が低いとガスの含浸量が高圧時に比べて相対的に少なく、気泡核形成速度が低下して形成される気泡核数が少なくなるため、1気泡あたりのガス量が逆に増えて気泡径が極端に大きくなるからである。また、6MPaより低い圧力領域では、含浸圧力を少し変化させるだけで気泡径、気泡密度が大きく変わるため、気泡径及び気泡密度の制御が困難になりやすい。
【0047】
ガス含浸工程における温度は、用いる不活性ガスや熱可塑性ポリマーの種類等によって異なり、広い範囲で選択できるが、操作性等を考慮した場合、例えば、10〜350℃程度である。例えば、シート状などの未発泡成形物に不活性ガスを含浸させる場合の含浸温度は、バッチ式では10〜200℃程度、好ましくは40〜200℃程度である。また、ガスを含浸させた溶融ポリマーを押し出して発泡と成形とを同時に行う場合の含浸温度は、連続式では60〜350℃程度が一般的である。なお、不活性ガスとして二酸化炭素を用いる場合には、超臨界状態を保持するため、含浸時の温度は32℃以上、特に40℃以上であるのが好ましい。
【0048】
前記減圧工程において、減圧速度は、特に限定されないが、均一な微細気泡を得るため、好ましくは5〜300MPa/秒程度である。また、前記加熱工程における加熱温度は、例えば、40〜250℃程度、好ましくは60〜250℃程度である。
【0049】
上記の平均セル径(平均気泡径)、0.1mmに圧縮した時の対反発荷重(0.1mm圧縮時の反発力)及び見掛け密度は、用いる不活性ガス及び熱可塑性ポリマーや熱可塑性エラストマーの種類、用いる添加剤などに応じて、例えば、ガス含浸工程における温度、圧力、時間などの操作条件、減圧工程における減圧速度、温度、圧力などの操作条件、減圧後の加熱温度などを適宜選択、設定することにより調整することができる。
【0050】
[発泡防塵材]
本発明の発泡防塵材(発泡シール材)は、前述のような特定の特性を有している発泡体から構成されている。発泡防塵材は、発泡体単独の形態であっても、その機能が有効に発揮された発泡防塵材とすることができるが、発泡体の片面または両面に他の層又は基材(特に、粘着層など)が設けられている形態の発泡防塵材であってもよい。例えば、発泡体の片面または両面に粘着層を有している形態の発泡防塵材とすると、光学部材等の部材又は部品を被着体へ固定ないし仮止めすることができるようになる。従って、本発明の発泡防塵材としては、発泡防塵材を構成する発泡体の少なくとも一方の面(片面または両面)に、粘着層を有していることが好ましい。
【0051】
前記粘着層を形成する粘着剤としては、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤など)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知の粘着剤を適宜選択して用いることができる。また、粘着剤は、ホットメルト型粘着剤であってもよい。粘着剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、粘着剤は、エマルジョン系粘着剤、溶剤系粘着剤、オリゴマー系粘着剤、固系粘着剤などのいずれの形態の粘着剤であってもよい。
【0052】
粘着剤としては、被着体への汚染防止などの観点から、アクリル系粘着剤が好適である。
【0053】
粘着層は、公知乃至慣用の形成方法を利用して形成することができ、例えば、所定の部位又は面上に粘着剤を塗布する方法(塗布方法)、剥離ライナーなどの剥離フィルム上に、粘着剤を塗布して粘着層を形成した後、該粘着層を、所定の部位又は面上に転写する方法(転写方法)などが挙げられる。なお、粘着層の形成に際しては、公知乃至慣用の塗布方法(流延方法、ロールコーター方法、リバースコータ方法、ドクターブレード方法など)を適宜利用することができる。
【0054】
粘着層の厚みとしては、通常、2〜100μm(好ましくは10〜100μm)程度である。粘着層は、薄層であるほど、端部のゴミや埃の付着を防止する効果が高いため、厚みは薄い方が好ましい。なお、粘着層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。
【0055】
また、粘着層は、他の層(下層)を介して、発泡体上に形成されていてもよい。このような下層としては、例えば、基材層(特に、フィルム層)や、他の粘着層の他、中間層、下塗り層などが挙げられる。
【0056】
さらにまた、粘着層が発泡体の一方の面(片面)にのみ形成されている場合、発泡体の他方の面には、他の層が形成されていてもよく、例えば、他の種類の粘着層や、基材層などが挙げられる。
【0057】
本発明の発泡防塵材の形状や厚みなどとしては、特に制限されず、用途などに応じて適宜選択することができるが、0.10〜0.20mmといった更なる微小なクリアランスに対しても追従可能な優れた柔軟性を得る観点からは、例えば、発泡防塵材の厚みとしては、0.1〜1.0mm(好ましくは0.2〜0.5mm、より好ましくは0.3〜0.4mm)程度の範囲から選択することが好ましい。
【0058】
発泡防塵材や発泡防塵材を構成する発泡体は、所望の形状や厚みなどを有するように加工が施されていてもよい。例えば、発泡防塵材をスライスすることにより、所望の厚さ有する発泡防塵材を得ることができる。より具体的には、例えば、厚さが0.4mmを超える発泡防塵材をスライスすることにより、厚さが0.2〜0.4mmである発泡防塵材を得ることができる。
【0059】
また、発泡防塵材としては、通常、用いられる装置に合わせた種々の形状に加工されて、製品化される。
【0060】
本発明の発泡防塵材は、前述のような特性を有しているので、気泡が非常に微細であり、また、0.1mmに圧縮した時の対反発荷重(0.1mm圧縮時の反発力)が低く柔軟性が良好であり、且つ見掛け密度が低い。すなわち、セル径(気泡径)を小さく保持させたまま、微小なクリアランスに対応可能な優れた柔軟性を発現させており、そのため、本来必要な防塵性能を保持したまま、更なる微小なクリアランスに対しても良好に追従することができる。しかも、高発泡であり、軽量である。
【0061】
また、発泡体が熱可塑性エラストマー等の熱可塑性ポリマーからなるため柔軟性に優れるとともに、発泡剤として二酸化炭素等の不活性ガスを用いるので、従来の物理発泡法及び化学発泡法と異なり、有害物質が発生したり汚染物質が残存することがなくクリーンである。そのため、特に電子機器等の内部に用いる防塵材としても好適に利用できる。
【0062】
従って、本発明の発泡防塵材は、各種部材又は部品(例えば、光学部材など)を、所定の部位に取り付ける(装着する)際に用いられる防塵材として有用である。特に、発泡防塵材は、小型の部材又は部品(例えば、小型の光学部材など)を、薄型化の製品に装着する際であっても好適に用いることができる。
【0063】
発泡防塵材を利用して取付(装着)可能な光学部材としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置に装着される画像表示部材(特に、小型の画像表示部材)や、いわゆる「携帯電話」や「携帯情報端末」等の移動体通信の装置に装着されるカメラやレンズ(特に、小型のカメラやレンズ)などが挙げられる。
【0064】
また、本発明の発泡防塵材は、トナーカートリッジからトナーが漏れることを防ぐ際の防塵材としても用いることができる。
【0065】
(光学部材を有する構造体)
本発明の光学部材を有する構造体(光学部材が所定の部位に取り付けられている構造体)では、光学部材が、前記発泡防塵材を介して所定の部位に取り付けられている(装着されている)。このような構造体としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置(特に、小型の画像表示部材が光学部材として装着されている画像表示装置)や、カメラやレンズ(特に、小型のカメラ又はレンズ)が光学部材として装着されている、いわゆる「携帯電話」や「携帯情報端末」等の移動体通信の装置などが挙げられる。前記構造体は、従来より薄型化の製品であってもよく、その厚みや形状などは特に制限されない。
【0066】
(防塵構造)
本発明の防塵構造(光学部材を所定の部位に取り付ける際の防塵構造)は、光学部材が、前記発泡防塵材を介して取り付けられている構造を有している。防塵構造としては、光学部材を、所定の部位に取り付ける(装着する)際に、前記発泡防塵材が用いられていれば、他の構造は特に制限されない。従って、光学部材や、該光学部材を取り付ける所定の部位などは特に制限されず、適宜選択することが可能であり、例えば、光学部材としては、前述のような光学部材などが挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、発泡体の平均セル径(平均気泡径)、見掛け密度は、以下の方法により求めた。
【0068】
(平均セル径)
デジタルマイクロスコープ(商品名「VHX−500」キーエンス株式会社製)により、発泡体気泡部の拡大画像を取り込み、画像解析ソフト(商品名「Win ROOF」三谷商事株式会社製)を用いて、画像解析することにより、平均セル径(μm)を求めた。
【0069】
(見掛け密度)
100mm×100mmの打抜き刃型にて発泡体を打抜き、打抜いた試料の寸法を測定する。また、測定端子の直径(φ)20mmである1/100ダイヤルゲージにて厚みを測定する。これらの値から発泡体の体積を算出した。
次に、発泡体の重量を最小目盛り0.01g以上の上皿天秤にて測定する。これらの値より発泡体の見掛け密度(g/cm3)を算出した。
【0070】
(実施例1)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:45重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:55重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「旭♯35」旭カーボン株式会社製):10重量部、ステアリン酸モノグリセリド:1重量部、及び脂肪酸アミド(ラウリン酸ビスアミド):1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ポリマー全量に対して6重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、発泡体を得た。この発泡体において、平均セル径は40μm、見掛け密度は0.03g/cm3であった。
【0071】
(実施例2)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:45重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:55重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「旭♯35」旭カーボン株式会社製):10重量部、ステアリン酸モノグリセリド:1重量部、及び脂肪酸ビスアミド(エルカ酸アミド):1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ポリマー全量に対して6重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、発泡体を得た。この発泡体において、平均セル径は50μm、見掛け密度は0.03g/cm3であった。
【0072】
(実施例3)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:47重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:53重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「旭♯35」旭カーボン株式会社製):10重量部、ステアリン酸モノグリセリド:1重量部、及び脂肪酸ビスアミド(ラウリン酸ビスアミド):1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ポリマー全量に対して6重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、発泡体を得た。この発泡体において、平均セル径は60μm、見掛け密度は0.03g/cm3であった。
【0073】
(実施例4)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:45重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:55重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「旭♯35」旭カーボン株式会社製):10重量部、ステアリン酸モノグリセリド:1重量部、及び脂肪酸ビスアミド(ラウリン酸ビスアミド):2重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ポリマー全量に対して6重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、発泡体を得た。この発泡体において、平均セル径は30μm、見掛け密度は0.04g/cm3であった。
【0074】
(比較例1)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:45重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:55重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「旭♯35」旭カーボン株式会社製):10重量部、及びステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ポリマー全量に対して6重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、発泡体を得た。この発泡体において、平均セル径は70μm、見掛け密度は0.05g/cm3であった。
【0075】
(比較例2)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:60重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:40重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「旭♯35」旭カーボン株式会社製):10重量部、及びステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ポリマー全量に対して6重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、発泡体を得た。この発泡体において、平均セル径は80μm、見掛け密度は0.03g/cm3であった。
【0076】
(比較例3)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:50重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:50重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「旭♯35」旭カーボン株式会社製):10重量部、ステアリン酸モノグリセリド:1重量部、及び脂肪酸アミド(エルカ酸アミド):2重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ポリマー全量に対して6重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、発泡体を得た。この発泡体において、平均セル径は150μm、見掛け密度は0.03g/cm3であった。
【0077】
(評価)
実施例及び比較例に係る発泡体について、防塵性を下記の(防塵性指標測定方法)により評価した。また、気密性を、発泡体内外の差圧(30%圧縮時の差圧)を測定することにより評価し、さらに、0.1mmに圧縮した時の対反発荷重(0.1mm圧縮時反発応力)も測定した。さらにまた、実施例及び比較例に係る発泡体について、引張強度及びヤング率を測定した。これらの評価結果を表1に示した。
【0078】
(発泡体内外の差圧の測定方法)
枠形状に打ち抜き加工をした実施例及び比較例(厚さ0.3mm、幅4mm、一辺の長さが56mmの正方形状、開口部は一辺の長さが52mmの正方形状)を30%圧縮し、発泡体内外の差圧(30%圧縮時の差圧)を測定した。
【0079】
差圧の測定には、図1に示す防塵性評価試験装置を使用した。図1において、1aは防塵性評価試験装置の概略構成、1bは防塵性評価試験装置の断面の概略構成、11は天井板、12はスペーサー、13は両面テープ(枠形状の両面粘着テープ、基材レスタイプ、厚さ:80μm)、14は発泡体(枠形状に打ち抜き加工をした実施例及び比較例の発泡体)、15は評価用箱体、16aは管継ぎ手を介して定量ポンプに接続する貫通孔、16bは管継ぎ手を介して差圧計に接続する貫通孔、16cは管継ぎ手を介してニードルバルブに接続する貫通孔、17は開口部(一辺の長さが52mmの正方形状)、18は空間部を示す。該防塵性評価試験装置は、略四角形の平板状の天井板11と評価用箱体15とをねじ止めすることによって、内部に略直方体状の密閉可能な空間部18を形成することができる。なお、開口部17は、該空間部18の開口部である。また、天井板11は、開口部となる平面視四角形(台形)の切り込みを有する。
【0080】
天井板11の開口部17に対向する下面には、開口部17より大きい四角形平板状のスペーサー12が、開口部17の全面に対向するように取り付けられる。そして、該スペーサー12の下面の開口部17に対向する位置には、開口部17とほぼ同じ大きさの窓部を有する発泡体14が、両面テープ13を介して取り付けられる。このため、天井板11をねじ止めすることによって、発泡体14は、スペーサー12と開口部17の周縁部とによって厚さ方向に圧縮される。発泡体14の圧縮率は、スペーサー12の厚さを調整することにより、30%圧縮に調整された。
【0081】
従って、天井板11と評価用箱体15とをねじ止めすることによって、評価用箱体15内の空間部18は、発泡体14、両面テープ13及びスペーサー12によって密閉される。
【0082】
このような防塵性評価試験装置を使用して、発泡体を30%の圧縮率に圧縮し、貫通孔16aに管継ぎ手を介して定量ポンプを接続し、貫通孔16bに管継ぎ手を介して差圧計を接続し、貫通孔16cは管継ぎ手を介してニードルバルブを接続し、ニードルバルブを閉じた状態で、吸引速度:0.5L/minで定量ポンプによる吸引を行い、差圧を差圧計で測定した。
【0083】
(防塵性指標の計測方法)
枠形状に打ち抜き加工をした実施例及び比較例(厚さ0.3mm又は0.5mm、幅4mm、一辺の長さが56mmの正方形状、開口部は一辺の長さが52mmの正方形状)について、前記防塵性評価試験装置により、通過した直径0.5μm以上の粒子の割合[防塵性指標(%)]を求めた。
【0084】
具体的には、上記の(発泡体内外の差圧の測定方法)と同様に、枠形状に打ち抜き加工をした実施例及び比較例の発泡体を防塵性評価試験装置に圧縮率30%でセットし、該枠形状に打ち抜き加工をした実施例及び比較例の発泡体セットした防塵性評価試験装置を、粉塵箱体内に配置し、密閉した。なお、貫通孔16bは管継ぎ手を介してパーティクルカウンタに接続している。
次に、粉塵箱体に接続した粉塵供給装置及び、粉塵箱体に接続したパーティクルカウンタを用いて、密閉した粉塵箱体内の直径0.5μm以上の粒子のパーティクルカウント値(数)が100000付近でほぼ一定になるように制御し、雰囲気粒子個数P0を求めた。
次に、貫通孔16cのニードルバルブを閉じた状態で、貫通孔16aから、吸引速度:0.5L/min、30分間の定量ポンプによる吸引を行い、吸引後、防塵性評価試験装置の空間部18の直径0.5μm以上の粒子の数をパーティクルカウンタで測定することにより、発泡体通過粒子個数Pfを求めた。
そして、以下の式により、防塵性指標(%)を計測した。
防塵性指標(%)=(P0−Pf)/P0×100
0:雰囲気粒子個数 Pf:発泡体通過粒子個数
【0085】
(0.1mmに圧縮した時の対反発荷重)
JIS K 6767に記載されている発泡体の圧縮硬さ測定方法に準じて測定した。具体的には、上記防塵性指標が100%(0.5μm以上の粒子について透過なし)である最小厚みの発泡体を直径20mmの円形状に切り出した試験片を、圧縮速度2.54mm/minで0.1mmまで圧縮したときの応力(N)を単位面積(1m2)当たりに換算して、0.1mm圧縮時の対反発荷重(0.1mm圧縮時反発応力)(Pa)とした。
なお、防塵性指標が100%である場合の発泡体の厚みについて、実施例1〜4においては厚みが0.3mmであり、比較例1〜3においては0.5mmであった。
【0086】
(引張強度)
JIS K 6767の引張強度の項に基づいて、厚さ0.3mmに加工した実施例及び比較例の引張強度(MPa)を測定した。
【0087】
(ヤング率)
JIS K 7127に基づいて、厚さ0.3mmに加工した実施例及び比較例のヤング率(N/cm2)を測定した。
【0088】
(クリアランス追従性評価方法)
図2に示されるような治具に、実施例及び比較例の発泡体をセットし、上面側のアクリル板の変形の状態を目視にて観察した。具体的には、厚さ20mmのアクリル板の左右の端部に、厚さ0.1mmのスペーサーを設置し、前記スペーサーで挟まれた中央部にの発泡体を設置し、この上面に、厚さ10mmのアクリル板を設置して、両端のスペーサー部において、上面側のアクリル板(厚さ10mm)側から荷重をかけて圧縮し、その際の上面側のアクリル板の変形の有無を目視で観察した。そして、変形がみられない場合を良好(○)、変形がみられる場合を不良(×)と評価した。
なお、実施例及び比較例の発泡体の厚みについては、上記の防塵性指標が100%となる厚みを採用した。ゆえに、発泡体の厚みは、実施例1〜4については0.3mmであり、比較例1〜3については0.5mmである。
【0089】
(180°ピール剥離力)
23±2℃、50±5RH%の雰囲気にて各測定材料を24時間以上保管してから(前処理条件:参考JIS Z 0237)、幅:30mm×長さ:120mmとした発泡体に、幅:20mm×長さ:120mmの片面粘着テープ(商品名「No.31C」日東電工株式会社製)、又はキャリアテープ(商品名「ECT755」日東電工株式会社製)を2kgローラーで1往復させる方法で圧着し、30分間放置して評価用サンプル(対片面粘着テープ評価用サンプル、又は対キャリアテープ評価用サンプル)とした。
次に、評価用サンプルを、評価用サンプルの発泡体側の面から支持板(厚さ:2mmのベークライト板、住友ベークライト株式会社製)に、評価用サンプルの発泡体側の面が測定時に、支持板からの浮き、剥がれがないように強粘着力を発揮する両面粘着テープ(商品名「No.500」日東電工株式会社製)を介して、貼り付けた。
そして、片面粘着シート又はキャリアテープの発泡体からの剥離に要する力を剥離角度180度にて測定し、180°ピール剥離力評価(粘着力評価)とした。
対片面粘着テープ評価用サンプルの評価(片面接着テープの接着力の評価)は、万能引張圧縮試験機(商品名「TCM−1kNB」ミネベア社製)を用いて、引張速度:300mm/minにて測定した。
対キャリアテープ評価用サンプルの評価(キャリアテープの接着力の評価)は、高速剥離試験機テスター産業株式会社製)を用いて、引張速度:10m/minにて測定した。
【0090】
【表1】

【0091】
表1から明らかなように、実施例に係る発泡体は、0.1mmに圧縮した際に優れた防塵性が発揮されていることが確認された。また、厚さ0.3mmの発泡体を、0.1mmの厚みに圧縮しても良好な柔軟性が発揮されるため、例えば、光学部材を所定の部位に接着する際に、光学部材と所定の部位との間の隙間が非常に狭くても(例えば0.1mm程度)、光学部材に変形を与えることはない。さらに、実施例に係る発泡体は、比較例に係る発泡体に比べて、引張強度が改善されているため、例えば、所定の部位に装着する際に、発泡体の破壊やちぎれが生じることはない。
【0092】
また、実施例に係る発泡体は、比較例に係る発泡体に比べて、180°ピール剥離力が向上しているため、例えば微粘着な片面粘着テープを貼り合わせる際に、熱処理等の工程を省くことができる。また発泡部材用キャリアテープに対しても、その搬送時や打抜き加工においてもずれを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】防塵性評価試験装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】クリアランス追従性の評価方法を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1a 防塵性評価試験装置の概略構成
1b 防塵性評価試験装置の断面の概略構成
11 天井板
12 スペーサー
13 両面テープ
14 発泡体
15 評価用箱体
16a 貫通孔
16b 貫通孔
16c 貫通孔
17 開口部
18 空間部
2 クリアランス追従性評価治具
21a 厚さ10mmのアクリル板
21b 厚さ20mmのアクリル板
22 厚さ0.1mmのスペーサー
23 発泡体
a 荷重方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ0.1〜1.0mmの発泡体により構成された防塵材であって、該発泡体が、平均セル径が10〜65μmの微細セル構造、0.1mmの厚さに圧縮したときの対反発荷重が0.010〜0.100MPaとなる特性、及び0.01〜0.050g/cm3の見掛け密度を有していることを特徴とする発泡防塵材。
【請求項2】
平均セル径が、10〜50μmである請求項1記載の発泡防塵材。
【請求項3】
発泡体が、独立気泡構造又は半連続半独立気泡構造を有している請求項1又2記載の発泡防塵材。
【請求項4】
発泡体の片面又は両面に、粘着層を有している請求項1〜3の何れかの項に記載の発泡防塵材。
【請求項5】
粘着層が、フィルム層を介して、発泡体上に形成されている請求項4記載の発泡防塵材。
【請求項6】
粘着層が、アクリル系粘着剤により形成されている請求項4又は5記載の発泡防塵材。
【請求項7】
発泡体が、熱可塑性ポリマーに高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成されている請求項1〜6何れかの項に記載の発泡防塵材。
【請求項8】
熱可塑性ポリマーからなる未発泡成形物に高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成されている請求項7記載の発泡防塵材。
【請求項9】
溶融した熱可塑性ポリマーに不活性ガスを加圧状態下で含浸させた後、減圧とともに成形に付して形成されている請求項7記載の発泡防塵材。
【請求項10】
発泡体が、減圧後、さらに加熱することにより形成されている請求項7〜9の何れかの項に記載の発泡防塵材。
【請求項11】
不活性ガスが、二酸化炭素である請求項7〜10の何れかの項に記載の発泡防塵材。
【請求項12】
含浸時の不活性ガスが、超臨界状態である請求項7〜11の何れかの項に記載の発泡防塵材。
【請求項13】
請求項1〜12何れかの項に記載されている発泡防塵材をスライスすることにより得られ、厚さが0.2〜0.4mmである発泡防塵材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−91556(P2009−91556A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230446(P2008−230446)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】