説明

微細パターン形成用インキ組成物

【課題】各種電子部品として所望される画像を、凸版反転印刷法により正確に形成するとともに、基材への付着性、シール強度、耐湿性に優れる微細パターン形成用インキ組成物を提供する。
【解決手段】ブランケット2表面に形成された均一なインキ塗膜3を凸版4に押圧して押圧部を凸版に転写させて除去することによって、ブランケット表面に画像を形成した後、これを被印刷基材5に転写する凸版反転印刷法に用いられる微細パターン形成用インキ組成物であって、樹脂成分、粒状成分、有機溶剤、及び表面エネルギー調整剤を含有し、前記樹脂成分がビニル系共重合体を含有し、さらに該ビニル系共重合体がアルコキシシリル基を含有することを特徴とする微細パターン形成用インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子部品などの微細パターンを必要とする印刷物を凸版反転印刷法により作製する際に好適に使用できる微細パターン形成用インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置のカラーフィルター、有機EL素子、有機トランジスタ、回路基板等の、微細なパターンを必要とする電子部品のパターン形成は、現在、フォトレジスト法が広く使用されている。しかしながら、このフォトレジスト法では、塗布、露光、現像等の長工程を経るため、莫大な設備投資を要し、昨今要求される低製造コスト化には必ずしも最適ではない。特に、カラー液晶表示装置に用いられるカラーフィルターを製造する方法としては、RGBの3色及びブラックマトリックスに対して、各色ごとに、夫々の工程を経るため、低製造コスト化に不適であった。このような欠点を解消する方法として、印刷方式によりパターンを形成する方法が注目されている。
【0003】
印刷方式により微細なパターンを形成する方法として凸版反転印刷法を用いて製造する方法が提案されている。(特許文献1、2参照)。
【0004】
この凸版反転印刷法とは、図1(a)に示すように、まずインキ塗布装置1により剥離性を有するブランケット2の表面に均一な厚みのインキ塗膜3を形成する。ついで、図1(b)に示すように、表面に均一なインキ塗膜3が形成されたブランケット2の表面を凸版3に押圧、接触させ、凸版4の凸部の表面に、ブランケット2表面上のインキ塗膜3の一部を付着、転移させる。これによりブランケット2の表面に残ったインキ塗膜3には印刷パターン(画像)が形成されることになる。ついで、図1(c)に示すように、この状態のブランケット2をガラス板、プラスチックシートなどの被印刷基材5の表面に押圧して、ブランケット2上に残ったインキ塗膜3を転写し、この被印刷基材5上に転写されたインキ塗膜3を乾燥する方法である。
【0005】
例えば、カラーフィルター製造の場合、4色同時パターニングが可能であり、各色ごとの露光、現像工程が不要であるなどにより、短工程によって製造が行え、低製造コスト及び低設備コスト化が実現できる。凸版反転印刷法に求められるインキは、ブランケット表面上に均一な厚さのインキ塗膜が形成され、このインキ塗膜が凸版と接触することにより忠実な印刷パターン(画像)がブランケット上に形成され、さらに、ブランケットから被印刷基材に印刷パターン(画像)が完全に転写される必要があり、これら要求に対応するインキ組成物が求められている。
【0006】
前記要求に対応するためには、インキ組成物のレオロジーコントロールが不可欠である。特にインキ塗膜3が凸版と接触することにより印刷パターン(画像)がブランケット上に形成される過程において、インキ組成物中の樹脂成分が、インキ塗膜3のレオロジーに与える影響は大きく、忠実な印刷パターンを形成するためには、適正な樹脂成分を選択することが重要である。
【0007】
また、各種電子部品としての機能を果たすためには、上記パターニング性能に加えて、基材への付着性、耐湿性、膜硬度等の各種耐性が必要であり、これら性能を具える微細パターン形成用インキ組成物が求められている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−56405号公報
【特許文献2】特開2005−128346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、各種電子部品として所望される画像を、凸版反転印刷法により正確に形成するとともに、基材への付着性、シール強度、耐湿性に優れる微細パターン形成用インキ組成物を提供することにある。
【0010】
ここで凸版反転印刷法に好適なインキ組成物とは、ブランケット表面上に均一な厚さのインキ塗膜が形成され、このインキ塗膜と凸版が接触することにより忠実な印刷パターン(画像)がブランケット上に形成されるものである。さらに、ブランケットから被印刷基材に印刷パターン(画像)が完全に転写されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため、本発明は、ブランケット表面に形成された均一なインキ塗膜を凸版に押圧して押圧部を凸版に転写させて除去することによって、ブランケット表面に画像を形成した後、これを被印刷基材に転写する凸版反転印刷法に用いられる微細パターン形成用インキ組成物であって、樹脂成分、粒状成分、有機溶剤及び表面エネルギー調整剤を含有し、前記樹脂成分が、アルコキシシリル基を有するビニル系共重合体を含有することを特徴とする微細パターン形成用インキ組成物を提供する。
【0012】
本発明は、第二に、前記したアルコキシシリル基がエトキシシリル基である微細パターン形成用インキ組成物を提供する。本発明は、第三に、前記したビニル系共重合体がアルコキシシリル基含有のラジカル重合性化合物を構成成分として重合してなる共重合体である微細パターン形成用インキ組成物を提供する。本発明は、第四に、前記したビニル系共重合体を構成する全単量体を質量換算で100%としたときに、前記アルコキシシリル基含有のラジカル重合性化合物の割合が50質量%以下である微細パターン形成用インキ組成物を提供する。本発明は、第五に、前記したビニル系共重合体がアルコキシシリル基及びエポキシ基を有する共重合体である微細パターン形成用インキ組成物を提供する。
【0013】
本発明は、第六に、前記したビニル系共重合体のTgが25℃未満である微細パターン形成用インキ組成物を提供する。本発明は、第七に、前記したビニル系共重合体が、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシルメタアクリレートから選ばれる1種以上の単量体を構成成分として重合してなる共重合体である微細パターン形成用インキ組成物を提供する。本発明は、第八に、前記したビニル系共重合体の重量平均分子量が1,000〜20,000である微細パターン形成用インキ組成物を提供する。本発明は、第九に、前記した有機溶剤が、25℃における蒸気圧が20×10Pa(15mmHg)以上のエステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、及びカーボネート系溶剤、から選ばれる1種以上の速乾性有機溶剤、及び、25℃における蒸気圧が0.4×10Pa(0.03mmHg)以上、20×10Pa(15mmHg)未満のエステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、及びカーボネート系溶剤、から選ばれる1種以上の遅乾性有機溶剤を含有する微細パターン形成用インキ組成物を提供する。
【0014】
本発明は、第十に、前記した粒状成分が、樹脂成分及び有機溶剤に溶解しない有機顔料、無機顔料、無機透明粒子、金属微粉末から選ばれる1種以上であり、該粒状成分と樹脂成分の固形分比率が、容積比で1:5〜2:1である微細パターン形成用インキ組成物を提供する。本発明は、第十一に、前記した表面エネルギー調整剤が、フッ素系界面活性剤である微細パターン形成用インキ組成物を提供する。本発明は、第十二に、前記したインキ組成物の25℃に於ける粘度が、0.5mPa・s〜10.0mPa・sである微細パターン形成用インキ組成物を提供する。本発明は、第十三に、前記したインキ組成物の表面エネルギーが、15mN/m〜30mN/mである微細パターン形成用インキ組成物を提供する。
【0015】
本発明は、第十四に、前記第一〜第十三の何れかに記載の微細パターン形成用インキ組成物を使用して、凸版反転印刷法により得られたことを特徴とする印刷物を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の微細パターン形成用インキ組成物は、ブランケット表面に形成された均一なインキ塗膜を凸版に押圧して押圧部を凸版に転写させて除去することによって、ブランケット表面に画像を形成した後、これを被印刷基材に転写する凸版反転印刷法に用いられる微細パターン形成用インキ組成物であって、樹脂成分、粒状成分、有機溶剤、及び表面エネルギー調整剤を含有し、前記樹脂成分がビニル系共重合体を含有し、さらに該ビニル系共重合体がアルコキシシリル基を必須成分として有することで、凸版反転印刷法で正確にパターニングされたインキ膜を形成することができるとともに、基材への付着性、シール強度、耐湿性に優れたインキ膜を得ることができる。そのため、例えば、カラーフィルター、導電回路パターン、絶縁膜パターン形成用等の電子部品作製に広く適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明は、ブランケット表面に形成された均一なインキ塗膜を凸版に押圧して押圧部を凸版に転写させて除去することによって、ブランケット表面に画像を形成した後、これを被印刷基材に転写する凸版反転印刷法に用いられる微細パターン形成用インキ組成物であって、樹脂成分、粒状成分、有機溶剤、及び表面エネルギー調整剤を含有し、前記樹脂成分が、アルコキシシリル基を構成成分として有するビニル系共重合体を含有することを特徴としている。
【0018】
本発明の微細パターン形成用インキ組成物に含まれるビニル系共重合体は、アルコキシシリル基を構成成分として含有することで、凸版反転印刷法で正確にパターニングすることができ、さらに基材への付着性、シール強度、耐湿性に優れたインキ膜を形成することに寄与する。
【0019】
前記した官能基のビニル系共重合体への導入方法としては、特に限定されず、目的の官能基を含有したラジカル重合性化合物(単量体)を必須成分として重合しても、先に合成したビニル系共重合体に後から官能基修飾をしても良いが、導入が容易であることから、目的の官能基を含有した単量体を構成成分として重合する方が好ましい。
【0020】
本発明の微細パターン形成用インキ組成物に用いるビニル系共重合体を形成するアルコキシシリル基を有する単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。中でもエトキシシリル基を有する単量体は、貯蔵安定性を向上させる点で好ましい。
【0021】
前記したビニル系共重合体を構成する全単量体を質量換算で100%としたときに、前記アルコキシシリル基を有するラジカル重合性化合物の割合が50質量%以下であると、凸版反転印刷法でのパターニング性が特に良好であるため好ましい。アルコキシシリル基を有するラジカル重合性化合物の割合が50質量%を超えると、パターニング性が劣る傾向にあるとともに、インキ塗膜が白化する傾向がある。
【0022】
また本発明の微細パターン形成用インキ組成物に含まれるビニル系共重合体は、アルコキシシリル基を有する単量体の他に、エポキシ基を有する単量体を構成成分とすると、膜硬度が向上して好ましい。
【0023】
エポキシ基を有する単量体としては、例えば、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基を有する単量体が挙げられる。
【0024】
本発明の微細パターン形成用インキ組成物に用いるビニル系共重合体を構成するその他の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート〔ラウリル(メタ)アクリレート〕、オクタデシル(メタ)アクリレート〔ステアリル(メタ)アクリレート〕等のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
【0025】
メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、p−ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p−ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル;
【0026】
ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等の3級アミノ基を有する単量体類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノn−ブチル、イタコン酸モノn−ブチル、クロトン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート等のカルボキシル基を有する単量体類; 2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、脂肪酸変性グリシジルメタクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等の水酸基を有するアリル化合物;リシノール酸等の水酸基を有する不飽和脂肪酸類;リシノール酸アルキル等の水酸基を有する不飽和脂肪酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、第3級カルボン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基を有する単量体;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体が挙げられる。
【0027】
本発明の微細パターン形成用インキ組成物に含まれるビニル系共重合体は、Tgが25℃未満であることが好ましく、より好ましくは0℃未満である。前記ビニル系共重合体のTgが25℃以上であると微細パターンの再現性に劣る傾向がある。
【0028】
本発明において、ビニル系共重合体のTg(ガラス転移温度)は、以下の方法により求められたものを使用する。
【0029】
下記のFoxの式で計算した絶対温度(K)表示のガラス転移温度(TgK)を摂氏温度(℃)に換算した数値を、本発明におけるガラス転移温度(Tg)とする。
100/TgK=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+W4/Tg4・・・
式中、W1、W2、W3、W4・・・は各種成分の質量分率(質量%)を示す。式中、Tg1、Tg2、Tg3、Tg4・・・は各モノマー成分のホモポリマーの絶対温度(K)表示のガラス転移温度を示す。ここで、上記各モノマー成分のホモポリマーの絶対温度(K)表示のガラス転移温度(Tg1、Tg2、Tg3、Tg4・・・)は、ポリマーハンドブック第2版、(J,Brandrup・E,H,Immergut編)に記載の値を使用した。
【0030】
前記単量体の中でも、ビニル系共重合体のTgを25℃未満にするために、ホモポリマーのTgが0℃以下のアクリル酸アルキルエステル及び/またはエーテル基を有するアクリル酸エステルを必須の構成成分とすることが好ましい。中でもホモポリマーのTgが0℃以下のアクリル酸アルキルエステルは、特にホモポリマーのTgが低いため好ましい。
【0031】
ホモポリマーのTgが0℃以下のアクリル酸アルキルエステルとしては、例えばエチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシルメタアクリレートが挙げられる。
【0032】
本発明に用いるビニル系共重合体は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の、従来より公知の種々の反応方法によって合成することが出来る。この際には、公知慣用の重合開始剤、界面活性剤及び消泡剤を併用することも出来る。
【0033】
ビニル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は1,000〜20,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは4,000〜10,000の範囲である。前記ビニル系共重合体のMwが1,000未満の場合では、硬化後の塗膜硬度が低いため実用性に劣り、20,000を超えると微細パターンの再現性に劣る傾向がある。
【0034】
本発明に用いるビニル系共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置を用いて、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(分散度)が1、実際は1.10以下である単分散の標準ポリスチレンを使用して作成した較正曲線により、測定した試料に分子量を割り当てるものである。重量平均分子量(Mw)は下記の計算式により算出される。なお、重量平均分子量はデータ処理装置により検出したものを使用する。
【0035】
重量平均分子量(Mw)=Σ(Wi×Mi)/W=Σ(Hi×Mi)/ΣHi
式中、W:高分子の総重量
Wi:i番目の高分子の重量
Mi:i番目の溶出時間における分子量
Ni:分子量Miの個数
Hi:i番目の溶出時間における高さ
である。
【0036】
測定装置および測定条件を下記に示す。
(測定装置:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
(使用カラム):
東ソー(株)製 TSKgel G2000HXL(カラム1)
東ソー(株)製 TSKgel G3000HXL(カラム2)
東ソー(株)製 TSKgel G4000HXL(カラム3)
東ソー(株)製 TSKgel G5000HXL(カラム4)
東ソー(株)製 ガードカラムHXL−H(カラム6)
カラム接続:(カラム6)、(カラム4)、(カラム3)、(カラム2)、(カラム1)を順に接続したものを使用する。
【0037】
(検出器:RI(示差屈折計))
データ処理:東ソー(株)製マルチステーション−8020
標準ポリスチレンの調製:分子量の異なる5種または6種の標準ポリスチレンを、各々10mg秤量し、テトラヒドロフラン(以下、THFと略称する。)100mlで溶解する。溶解は20℃で実施し、24時間静置後使用する。
試料の調製:試料(固形分)80mgを秤量し、THF20mlで溶解する。
【0038】
(測定条件)
カラム温度:40℃
溶媒:THF
流量:1ml/分
試料注入量:100μl
【0039】
本発明の微細パターン形成用インキ組成物は、前記のビニル系共重合体に加えて、必要に応じてポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、カルド系樹脂、(ブロック)イソシアネート系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上の樹脂を併用することができる。これら樹脂としては、各種電子部品に要求される耐熱性、耐熱水性、耐アルカリ性、耐酸性などの物性を満足させるため、硬化性樹脂であることが好ましい。
【0040】
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、ラジカル型紫外線硬化型樹脂、カチオン型紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などが使用できる。なかでも、熱硬化性樹脂であることが好ましい。使用される樹脂は、硬化システムに応じて、それぞれに最適な樹脂を選択できる。例えば、熱硬化システムを利用する場合、電子部品に用いられる一般的な熱硬化性樹脂が使用できる。
【0041】
これらの樹脂の代表的なものを以下に例示する。ポリエステル系樹脂としては、「25X1892(DIC製)」などが挙げられる。エポキシ系樹脂としては、「エピクロン840(DIC製)」、「jER828」、「jER834」、「jER1001(何れもジャパンエポキシレジン社製)」、メラミン系樹脂としては、「メランX81(日立化成工業社製)」、「サイメル303」、「サイメル325」、「サイメル370(何れも日本サイテックインダストリーズ社製)」、ベンゾグアナミン系樹脂としては、「ユーバン21R(三井化学社製)」、(ブロック)イソシアネート系樹脂としては、「バーノックDB980K(DIC製)」などが挙げられる。
【0042】
また、顔料を予め分散剤、有機溶剤などに分散させた顔料分散体に含まれる分散剤も、粒状成分の結着剤として機能する場合がある。このため、一般的に用いられている顔料分散剤も、本発明の微細パターン形成用インキ組成物中に含有させることができる。
【0043】
本発明の微細パターン形成用インキ組成物に用いる有機溶剤としては、本発明のインキ組成物中に含有される樹脂を溶解することができるものであればよく、任意の溶剤を使用することができる。なかでも、前記した、Tgが25℃未満のビニル系共重合体、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、カルド系樹脂、(ブロック)イソシアネート系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上を溶解することができる有機溶剤であることが好ましい。また、粒状成分、樹脂成分、および有機溶剤の配合比率は、ブランケット表面に均一なインキ塗膜を形成できるような範囲に設定することが好ましい。
【0044】
また、本発明の微細パターン形成用インキ組成物は、有機溶剤として、以下に示す速乾性有機溶剤及び遅乾性有機溶剤を含有することが好ましい。速乾性有機溶剤及び遅乾性有機溶剤を含有することで、ブランケット表面上のインキ塗膜がパターン形成に適正な乾燥性を保持し、さらに印刷後のブランケット表面の乾燥性も適正な状態に保たれるため、繰り返し印刷することが可能となる。
【0045】
速乾性有機溶剤としては、25℃における蒸気圧が20×10Pa(15mmHg)以上の溶剤のいずれか1つ以上が用いられ、この速乾性有機溶剤が、全インキ組成物中、5.0〜90.0質量%含有されることが好ましい。より好ましくは20.0〜80.0質量%、さらに好ましくは30.0〜70.0質量%である。速乾性有機溶剤の含有量が5.0質量%未満では、ブランケット上でのインキ塗膜の乾燥が不十分となりやすく、微細パターンの再現性に劣る場合がある。一方で90.0質量%を超えると、ブランケット上でインキ塗膜が乾燥しすぎて凸版または被印刷基材へ転写しにくくなる場合がある。
【0046】
これら速乾性有機溶剤は、樹脂の溶解性、顔料分散系への親和性を考慮し、それぞれに応じた溶剤が選択されるが、例として、次に挙げられるものが用いられる。エステル系溶剤として、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、アルコール系溶剤として、メタノール、エタノール、2−プロパノール等、炭化水素系溶剤として、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン等、ケトン系溶剤として、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等、カーボネート系溶剤として、ジメチルカーボネート等が挙げられる。また、これらは、系内の複数種類の有機溶剤の混合物であってもよく、系の異なる複数種類の有機溶剤の混合物であってもよい。なかでも、酢酸イソプロピルや、2―プロパノール、およびジメチルカーボネートが、その蒸発速度や表面張力から見て好ましい。
【0047】
遅乾性有機溶剤としては、25℃における蒸気圧が0.4×10Pa(0.3mmHg)以上20×10Pa(15mmHg)未満の溶剤のいずれか1つ以上が用いられ、この遅乾性有機溶剤が、全インキ組成物中、5.0〜90.0質量%含有されることが好ましい。より好ましくは5.0〜70.0質量%、さらに好ましくは10.0〜40.0質量%である。前記の遅乾性有機溶剤の含有量が5.0質量%未満では、ブランケット上のインキ塗膜が乾燥しすぎて凸版に転写できにくくなる場合がある。一方で90.0質量%を超えるとブランケット上でのインキ塗膜の乾燥が不十分となりやすく、微細パターンの再現性に劣る場合がある。
【0048】
これら遅乾性有機溶剤は、樹脂の溶解性、顔料分散系への親和性を考慮し、それぞれに応じた溶剤が選択されるが、例として、次に挙げられるものが用いられる。エステル系溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)、3メトキシ−3−メチルーブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート(EEP)等、アルコール系溶剤として、1−ブタノール、3メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール等、エーテル系溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル等、炭化水素系溶剤として、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、オクタン、ノナン、デカン等、カーボネート系溶剤としてジエチルカーボネート等が挙げられる。また、これらは、系内の複数種類の有機溶剤の混合物であってもよく、系の異なる複数種類の有機溶剤の混合物であってもよい。なかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、および、ジエチルカーボネートが、その蒸発速度や表面張力から見て好ましい。
【0049】
本発明の微細パターン形成用インキ組成物は、前記した樹脂成分と相溶しない、有機顔料、無機顔料、無機透明粒子、金属微粉末から選ばれる1種以上の粒状成分を含有する。
【0050】
粒状成分はパターン化された膜に、着色性、透明性、絶縁性、導電性、耐候性、耐熱性等の必要な機能を付与するために用いられる。
【0051】
本発明の微細パターン形成用インキ組成物が、例えば、カラーフィルター製造に用いられる場合、粒状成分としては、カラーフィルター用顔料として用いることができる公知の顔料が挙げられるが、色純度と色濃度が高く、透明性の高いものが好まれている。すなわち、顔料の分散性が高いほどこれらの特性が発揮されやすいため、必要に応じて顔料への表面処理や、分散時に顔料分散剤や界面活性剤等の助剤を加えることができる。これらの顔料には、例えば、赤、緑及び青の各色で使用できる顔料として次のものが挙げられる。顔料の種類は、カラーインデックス(C.I.)No.で示す。
【0052】
まず、赤色顔料として、97、122、123、149、168、177、180、192、208、209、215、254等が、緑色顔料として7、36、58等が、青色顔料として、15、15:1、15:3、15:6、22、60、64等が挙げられる。墨顔料として、カーボンブラック、黒鉛、チタンブラック等が挙げられる。また、これら赤、緑及び青顔料の色調整及びインキの流動性を改善するために、次に挙げる顔料を必要量添加することができる。例えば、黄顔料として、17、83、109、110、128、150等が、紫顔料として、19、23、122等が、白顔料として、18、21、27、28等が、橙顔料として、38、43等が挙げられる。
【0053】
これらの顔料は無機透明粒子と併用することもできる。無機透明粒子としては、例えばシリカ、フッ化マグネシウム、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム等が挙げられる。中でもシリカ、フッ化マグネシウムが好ましく用いられる。
【0054】
また本発明の微細パターン形成用インキ組成物が、例えば、電子機器に用いられるプリント配線等の製造に用いられる場合、膜に導電性を付与するために、粒状成分としては、ニッケル、銅、金、銀、アルミニウム、クロム、白金、パラジウム、タングステン、モリブデン等の単体、これら2種以上の金属からなる合金、あるいはこれら金属の化合物で良好な導電性を有するもの等が挙げられる。特に、銀粉末は、安定した導電性を実現し易く、また熱伝導特性も良好なため好ましい。
【0055】
さらに、該粒状成分と樹脂成分の固形分比率は、容積比で1:5〜2:1であることが好ましい。カラーフィルター作製用インキ組成物の場合、さらに好ましくは1:5〜1:1で、導電性インキ組成物の場合、さらに好ましくは1:1〜2:1である。この比率は、ブランケット表面のインキ塗膜に凸版により画像が形成された時点でも同じである。配合する樹脂によっても異なるが、粒状成分に対して必要以上の樹脂成分が存在すると、画線がビリついたりするなどシャープな画像が得られず好ましくない。一方、粒状成分に対しての樹脂成分が不足すると、ブランケット表面のインキ塗膜が凸版または被印刷基材へ転写しないなどの不具合が生じて好ましくない。尚、樹脂成分には、顔料分散体に含まれる顔料分散剤や、無機透明粒子、金属微粉末とともに導入される樹脂も含む。
【0056】
本発明の微細パターン形成用インキ組成物に含まれる表面エネルギー調整剤はフッ素系界面活性剤であることが好ましい。
【0057】
表面エネルギー調整剤は、ブランケット表面にインキ組成物が均一に良好に塗布できるように、インキ組成物の表面エネルギーをブランケットの表面の表面エネルギーよりも小さくするために添加されるものである。この表面エネルギー調整剤には、フッ素系界面活性剤の1種または2種以上が用いられ、全インキ組成物中0.05〜5.0質量%含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0質量%含有される。これによりブランケットへのインキ塗工時に、塗工された塗膜の平滑性が向上し、より均一な塗膜が得られる。
【0058】
表面エネルギー調整剤の具体的なものとしては、メガファック F−470、メガファック F−472、メガファック F−482(以上、商品名:DIC製)、メガファック EXP.TF−1303、メガファック EXP.TF−1159(以上、固形分30%のフッ素系界面活性剤:DIC製)等の1種以上が用いられる。
【0059】
本発明の微細パターン形成用インキ組成物は、前記した成分の他、インキ膜転写性向上剤、消泡剤、被印刷基材への接着付与剤などの各種添加剤を適宜配合することができる。
【0060】
インキ膜転写性向上剤は、ブランケット表面上に形成された均一な厚さのインキ塗膜が凸版と接触し、凸版の凸部の表面にブランケット表面上のインキ塗膜の一部を付着、転移させる際に、及びブランケット上に形成された印刷パターン(画像)を被印刷基材に完全に転写する際に、ブランケットからのインキ膜の転写性を向上させる目的で添加される。このインキ膜転写性向上剤にはシリコーンオイルの一種または二種以上が用いられ、全インキ組成物中0.05〜5.0質量%含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0質量%含有される。これによりブランケットからのインキ膜の転写性が向上して、ブランケット上にインキ残が残るのを防ぐ。またこれにより、ブランケット上のインキ塗膜の一部を凸版へ付着、転移させる速度、及びブランケット上の印刷パターン(画像)を被印刷基材へ転写させる速度の向上が図れる。
【0061】
また、顔料と無機透明粒子は、単体以外に、顔料を予め分散剤、有機溶剤に分散させた顔料分散体であっても良い。例えば、青色顔料15:6の場合には、EXCEDIC BLUE 0565(DIC製)が使用できる。これ以外の顔料では、EXCEDIC RED 0759、EXCEDIC YELLOW 0599、EXCEDIC GREEN 0358、EXCEDIC YELLOW 0648、UK9−1231(DIC製)、チタンブラック分散液BT−1CA、BT−1DE(三菱マテリアル社製)などを使用することができる。無機透明粒子では、NANOBYK−3650(ビックケミージャパン社製)、IPA−ST、IPA−ST−ZL(日産化学工業社製)、フッ化マグネシウム分散液(シーアイ化成社製)などを使用することができる。
【0062】
本発明の微細パターン形成用インキ組成物の製造は、粒状成分、樹脂成分、および有機溶剤を、ビーズミルなどの一般的な分散機を用いて分散し、これにさらに樹脂、有機溶剤および表面エネルギー調整剤などの各種添加剤を混合後、粗大粒子を濾過して行われる。
【0063】
本発明の微細パターン形成用インキ組成物にあっては、上述の組成を有するものであるが、その物性も重要な因子である。この物性としては、まず温度が25℃におけるインキ粘度が、0.5mPa・s〜10.0mPa・sの範囲内にあることが好ましい。これは、ブランケットへインキ組成物を均一に塗布するために、塗布装置からのインキ吐出性を鑑みて決定されたものである。この範囲よりも高い粘度の場合、塗工装置からのインキ吐出が不均一になりやすく、ブランケット上に分断されて塗工される不具合や、塗工されたインキ塗膜が不均一となりやすい。インキ組成物の粘度の測定は、市販のコーンプレート型回転粘度計(例えば、東機産業(株)製TV−20Lなど)によって行われる。
【0064】
次に、インキ組成物の表面エネルギーも重要な因子である。インキ組成物の表面エネルギーは、15〜30mN/mの範囲に調整することが好ましい。この範囲より高い表面エネルギーの場合、ブランケットへのインキレベリング性が悪く、ブランケット上でインキがはじいたりするなど均一なインキ塗膜が得られにくくなる。表面エネルギーの測定は、市販の自動表面張力計(例えば、協和界面化学(株)製CBYP−A3など)を用いて行われる。
【0065】
さらに、ブランケットに対する膨潤量も重要である。この膨潤量は100mg/cm以下、好ましくは40〜90mg/cmの範囲とされる。この膨潤量とは、インキ組成物をブランケットに塗布した際に、インキ組成物中に含まれる有機溶剤がブランケット表面に浸透し、ブランケットの表面がこの浸透した有機溶剤で膨潤する度合いを示すものである。この値は、インキ組成物中の有機溶剤が凸版と接触するまでの間にブランケット表面に吸収される量に関係するとともに、ブランケットの表面がこの吸収された有機溶剤によって膨潤し、適切なインキ塗膜の剥離性、転移性を得るためにも関係する。
【0066】
この膨潤量の具体的な測定法は、面積50cm、厚さ0.5mmのブランケット材にインキ塗膜が10μmになるように、バーコーターを用いて塗布し、1分後に粘着紙などを用いて剥がし取る。この塗布、拭き取りの操作を同じブランケット材に対して10回繰り返し、最終的なブランケット材の重量増加から膨潤量を算出し、これをブランケット材の体積で除して膨潤量とするものである。この膨潤量が100mg/cmを超えると、ブランケット表面のシリコーンゴム層とこれを支える支持層との間で剥離が生じ、平滑性が失われたりして良好な画像が得られにくくなる。
【0067】
また、ブランケットの表面材料は通常シリコーンゴムから構成されており、このシリコーンゴムに対してインキ組成物が良好に付着し、均一なインキ塗膜が形成されるために、ブランケット表面に対する接触角が35°以下とすることが望ましく、好ましくは25〜35°とされる。接触角の測定は、市販の自動接触角計(例えば、協和界面化学(株)製CA−W150など)を用いて行われる。
【実施例】
【0068】
以下、合成例、比較合成例、実施例、比較例を用いて、本発明を具体的に示す。これらの例中、「部」は質量部、「%」は質量パーセントを意味するものとする。
【0069】
(合成例1)
攪拌機、温度計、冷却管および窒素導入管を装備した4つ口フラスコに、n−ブタノール409部、酢酸ノルマルプロピル409部を仕込み、窒素気流下で100℃に昇温した後、2−エチルヘキシルアクリレート550部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン450部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(以下、TBPEHと略称する。)70部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃にて7時間反応させて、不揮発分55%、重量平均分子量6600の重合体(B−1)の溶液を得た。
【0070】
(合成例2)
合成例1と同様の4つ口フラスコに、n−ブタノール409部、酢酸ノルマルプロピル409部を仕込み、窒素気流下で100℃に昇温した後、グリシジルメタクリレート250部、2−エチルヘキシルアクリレート600部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン150部及びTBPEH70部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃にて7時間反応させて、不揮発分55%、重量平均分子量7100の重合体(B−2)の溶液を得た。
【0071】
(合成例3)
合成例1と同様の4つ口フラスコに、n−ブタノール409部、酢酸ノルマルプロピル409部を仕込み、窒素気流下で100℃に昇温した後、グリシジルメタクリレート400部、2−エチルヘキシルアクリレート450部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン150部及びTBPEH120部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃にて7時間反応させて、不揮発分55%、重量平均分子量5200の重合体(B−3)の溶液を得た。
【0072】
(合成例4)
合成例1と同様の4つ口フラスコに、n−ブタノール409部、酢酸ノルマルプロピル409部を仕込み、窒素気流下で100℃に昇温した後、グリシジルメタクリレート400部、2−エチルヘキシルアクリレート450部、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン150部及びTBPEH120部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃にて7時間反応させて、不揮発分55%、重量平均分子量5300の重合体(B−4)の溶液を得た。
【0073】
(比較合成例1)
合成例1と同様の4つ口フラスコに、n−ブタノール409部、酢酸ノルマルプロピル409部を仕込み、窒素気流下で100℃に昇温した後、ベンジルメタクリレート450部、2−エチルヘキシルアクリレート550部及びTBPEH120部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃にて7時間反応させて、不揮発分55%、重量平均分子量5300の重合体(B−5)の溶液を得た。
【0074】
(比較合成例2)
合成例1と同様の4つ口フラスコに、n−ブタノール409部、酢酸ノルマルプロピル409部を仕込み、窒素気流下で100℃に昇温した後、グリシジルメタクリレート450部、2−エチルヘキシルアクリレート550部及びTBPEH120部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃にて7時間反応させて、不揮発分55%、重量平均分子量4500の重合体(B−6)の溶液を得た。
【0075】
(比較合成例3)
合成例1と同様の4つ口フラスコに、n−ブタノール409部、酢酸ノルマルプロピル409部を仕込み、窒素気流下で100℃に昇温した後、ベンジルメタクリレート870部、ブチルアクリレート130部及びTBPEH70部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃にて7時間反応させて、不揮発分55%、重量平均分子量8000の重合体(B−7)の溶液を得た。
【0076】
(実施例1)
BT−1DE(チタンブラック顔料分散液)66.0部、合成例1で得たビニル系共重合体(B−1)6.6部、酢酸イソプロピル(溶剤)13.6部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)3.8部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(溶剤)10.0部、メガファック EXP. TF−1159(表面エネルギー調整剤)0.4部、変性シリコーン 0.2部、を分散攪拌機で攪拌し、微細パターン形成用インキ組成物を調製した。
【0077】
前記した微細パターン形成用インキ組成物を用いて、ガラス基板上に、凸版反転印刷法により、膜厚1μmで線幅20μmのストライプパターンを印刷した。さらに同微細パターン形成用インキ組成物を密閉容器に入れて40℃で7日間静置させた後に、同様の手順で凸版反転印刷法により印刷して、作製直後のインキの印刷パターン品質と比較した。
【0078】
(実施例2〜4)
実施例1と同様にして、表2に示す組成比により、実施例2〜5用の微細パターン形成用インキ組成物を調製し、同様に凸版反転印刷法により印刷した。
【0079】
(比較例1〜3)
実施例1と同様にして、表2に示す組成比により、比較例1〜3用インキ組成物を調製し、同様に凸版反転印刷法により印刷した。
【0080】
(印刷パターン品質の評価方法)
微細パターン形成用インキの印刷物のパターン形状を顕微鏡にて観察し、以下の基準に従って評価をした。
○:パターンの直線性に優れる。パターンの線幅が版設計値通りに形成されている。
△:パターンの一部でエッジが不鮮明で、直線性がやや劣る。
×:パターンエッジの不鮮明さ、直線性の欠陥、断線あり。パターンの線幅が版設計値よりも5μm以上太い、または細い。
【0081】
(基材への付着性の評価方法)
微細パターン形成用インキをガラス基板上に、膜厚が1μmになるように、スピンコーターにて塗布し、250℃にて30分間加熱(基本焼成)してインキ塗板を作製した。該インキ塗板を用いてJISK5600−5−6付着性(クロスカット法)の手順で試験を実施し、以下の基準に従って評価をした。
○:すべての格子の目にも剥がれがない。
△:一部の格子の目に塗膜の剥がれがある。
×:全面的に塗膜の剥がれがある。
【0082】
(シール強度の評価方法)
上記基材への付着性の評価と同様にしてインキ塗板を作製した。該インキ塗板上にシール剤を塗布し、ガラスキャピラリーを立て、さらに焼成した。その後、動摩擦力計にてSPEED:10mm/sec、LOAD CEL:100Nの条件下、ガラスキャピラリーを引き倒す方式により、強度の測定を行った。リファレンスとしてガラス板にシール剤のみを塗布した場合の強度を測定した。リファレンスの強度に対する、インキ塗板上の強度の割合を算出して、リファレンスとの相対強度とした。
【0083】
(耐湿性の評価方法)
上記基材への付着性の評価と同様にして作製したインキ塗板を用いて、120℃、飽和水蒸気下、24hrの条件でプレッシャークッカーテストを行った。プレッシャークッカーテスト後のインキ塗板で、上記の基板への付着性の評価を行った。
【0084】
(膜硬度の評価方法)
上記基材への付着性の評価と同様にして作製したインキ塗板を用いて、JISK5600−5−4引っかき硬度(鉛筆法)の手順で試験を実施した。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
表1、2中の略号は以下の通りである。
・BT−1DE:色材濃度25%(チタンブラック比重:4.0)、顔料分散剤濃度2.5%のチタンブラック分散液(三菱マテリアル社製)
・IPAc:酢酸イソプロピル
・PGMAc:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・PNP:プロピレングリコールモノプロピルエーテル
・メガファック EXP.TF−1159:固形分30%のフッ素系表面エネルギー調整剤(DIC社製)
・尚、樹脂成分の比重は何れも、1.2である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の微細パターン形成用インキ組成物は、凸版反転印刷法で正確にパターニングされたインキ膜を形成するとともに、基材への付着性、シール強度、耐湿性に優れたインキ膜を得ることができ、カラーフィルター、導電回路パターン、絶縁膜パターン等、各種電子部品の作製に広く適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明における凸版反転印刷法の一例を模式的に示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0090】
1 インキ塗布装置
2 ブランケット
3 インキ塗膜
4 凸版
5 被印刷基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランケット表面に形成された均一なインキ塗膜を凸版に押圧して押圧部を凸版に転写させて除去することによって、ブランケット表面に画像を形成した後、これを被印刷基材に転写する凸版反転印刷法に用いられる微細パターン形成用インキ組成物であって、樹脂成分、粒状成分、有機溶剤及び表面エネルギー調整剤を含有し、前記樹脂成分が、アルコキシシリル基を有するビニル系共重合体を含有することを特徴とする微細パターン形成用インキ組成物。
【請求項2】
前記したアルコキシシリル基がエトキシシリル基である請求項1に記載の微細パターン形成用インキ組成物。
【請求項3】
前記したビニル系共重合体が、アルコキシシリル基含有のラジカル重合性化合物を構成成分として重合してなる共重合体である請求項1又は2に記載の微細パターン形成用インキ組成物。
【請求項4】
前記したビニル系共重合体を構成する全単量体を質量換算で100%としたときに、前記アルコキシシリル基含有のラジカル重合性化合物の割合が50質量%以下である請求項1〜3の何れかに記載の微細パターン形成用インキ組成物。
【請求項5】
前記したビニル系共重合体が、アルコキシシリル基及びエポキシ基を有する共重合体である請求項1〜4の何れかに記載の微細パターン形成用インキ組成物。
【請求項6】
前記したビニル系共重合体のTgが、25℃未満である請求項1〜5の何れかに記載の微細パターン形成用インキ組成物。
【請求項7】
前記したビニル系共重合体が、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシルメタアクリレートから選ばれる1種以上の単量体を構成成分として重合してなる共重合体である請求項1〜6の何れかに記載の微細パターン形成用インキ組成物。
【請求項8】
前記したビニル系共重合体の重量平均分子量が1,000〜20,000である請求項1〜7の何れかに記載の微細パターン形成用インキ組成物。
【請求項9】
前記した有機溶剤が、25℃における蒸気圧が20×10Pa(15mmHg)以上のエステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、及びカーボネート系溶剤、から選ばれる1種以上の速乾性有機溶剤、及び、25℃における蒸気圧が0.4×10Pa(0.03mmHg)以上、20×10Pa(15mmHg)未満のエステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、及びカーボネート系溶剤、から選ばれる1種以上の遅乾性有機溶剤を含有する請求項1〜8の何れかに記載の微細パターン形成用インキ組成物。
【請求項10】
前記した粒状成分が、樹脂成分及び有機溶剤に溶解しない有機顔料、無機顔料、無機透明粒子、金属微粉末から選ばれる1種以上であり、該粒状成分と樹脂成分の固形分比率が、容積比で1:5〜2:1である請求項1〜9の何れかに記載の微細パターン形成用インキ組成物。
【請求項11】
前記した表面エネルギー調整剤が、フッ素系界面活性剤である請求項1〜10の何れかに記載の微細パターン形成用インキ組成物。
【請求項12】
25℃に於ける粘度が、0.5mPa・s〜10.0mPa・sである請求項1〜11の何れかに記載の微細パターン形成用インキ組成物。
【請求項13】
表面エネルギーが、15mN/m〜30mN/mである請求項1〜12の何れかに記載の微細パターン形成用インキ組成物。
【請求項14】
請求項1〜13の何れかに記載の微細パターン形成用インキ組成物を使用して、凸版反転印刷法により得られたことを特徴とする印刷物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−68816(P2011−68816A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222470(P2009−222470)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】