説明

微細化香辛料含有組成物

【課題】香辛料の香辛味成分を濃厚に保持し、また低粘度であるにも拘らず水不溶性の微細化香辛料が均質に懸濁し、保存中に香辛料が沈殿することのない微細化香辛料含有組成物を得る。また上記微細化香辛料含有組成物を、香辛料原料として添加使用し、香辛料特有の香辛味豊かな調味料を得る。また非常に滑らかな食感を有する水不溶性の香辛料を含有する調味料を得る。
【解決手段】水や食酢、液糖、アルコール等の水性液体に香辛料を懸濁して、該香辛料を水性液体と接触状態、あるいは水性液体に懸濁する状態にて、磨砕、ホモジナイザー、スタティックミキサー等で微細化して平均粒子径が1.0μm以下である微細化香辛料含有組成物を得る。この組成物を用いて、ウスターソース類、焼そばソース、ドレッシング類、たれ類、タルタルソースなどの調味料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香辛料の香辛味成分を濃厚に保持し、また0.9Pa・s以下の低粘度の状態においても水不溶性の微細化香辛料が均質に懸濁し、保存中に香辛料が沈殿することのない微細化香辛料含有組成物、及び該微細化香辛料を含有する調味料の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香辛料をホモジナイズ処理等によって、その粒子径を100μm以下に微細化し、これを香辛料原料として添加し、カレーやシチューなどの液体状乃至ペースト状のルウ食品を得る方法(特許文献1参照)が知られている。
【0003】
また香辛料を中心粒径が約53〜90μmに微細化し、これを香辛料原料として添加しルウを得る方法(特許文献2参照)が知られている。
しかしながら、これらの方法では香辛料の香辛味成分の抽出が十分でなく、更に粘性の低い調味料等においては、保存中に香辛料が沈殿する大きな欠点を有する。
【特許文献1】特開平09−206036号公報
【特許文献2】特開平10−327823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、香辛料の香辛味成分を濃厚に保持し、また低粘度であるにも拘わらず水不溶性の微細化香辛料が均質に懸濁し、保存中に香辛料が沈殿することのない微細化香辛料含有組成物を得ること、また上記微細化香辛料含有組成物を、香辛料原料として添加使用し、香辛料特有の香辛味豊かな調味料を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、水や食酢、液糖、酒類等の水性液体に香辛料を懸濁して、該香辛料を湿式微細化するときは、香辛料の平均粒子径を1.0μm以下に微細化できること、また、この微細化香辛料を添加使用した液体状乃至ペースト状の調味料は、その香辛味成分を濃厚に保持し、また、低粘度(0.1Pa・s以下)であるにも拘わらず該調味料に水不溶性の微細化香辛料を均質に懸濁し、保存中に香辛料が沈殿することを防止できること、また、該微細化香辛料は、カレールー、シチュールー、ウスターソース類、焼そばソース、マヨネーズ、ケチャップ、ドレッシング類、たれ類、トマトソース、ホワイトソース、カレーソース、グレービーソース、マスタードソース、ミートソース、ピッツァソース及びタルタルソース等の液体状乃至ペースト状の調味料の香辛料原料として好適であることを知り、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、以下に示す微細化香辛料含有組成物及びその製造法並びに該組成物を添加使用する調味料の製造法である。
(1)平均粒子径が1.0μm以下である微細化香辛料を水性液体に均質に含有してなる微細化香辛料含有組成物。
(2)平均粒子径が1.0μm以下である微細化香辛料を水性液体に均質に含有し、粘度が0.9Pa・s以下である微細化香辛料含有組成物。
(3)水性液体に香辛料を添加し、湿式微細化して該香辛料を平均粒子径が1.0μm以下である香辛料とすることを特徴とする微細化香辛料含有組成物の製造法。
(4)水性液体に香辛料を添加し、湿式磨砕した後ホモジナイズして該香辛料を平均粒子径が1.0μm以下である香辛料とすることを特徴とする微細化香辛料含有組成物の製造法。
(5)香辛料を添加使用する調味料の製造法において、該香辛料として、水性液体に平均粒子径が1.0μm以下である微細化香辛料を均質に含有する微細化香辛料含有組成物を使用することを特徴とする調味料の製造法。
(6)調味料が、カレールー、シチュールー、ウスターソース類、焼そばソース、マヨネーズ、ケチャップ、ドレッシング類、たれ類、トマトソース、ホワイトソース、カレーソース、グレービーソース、マスタードソース、ミートソース、ピッツァソース又はタルタルソースである上記(5)に記載の調味料の製造法。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、香辛料の香辛味成分を濃厚に保持し、また低粘度であるにも拘わらず水不溶性の微細化香辛料が均質に懸濁し、保存中に香辛料が沈殿することのない微細化香辛料含有組成物が得られる。また上記微細化香辛料含有組成物を、香辛料原料として添加使用し、香辛料特有の香辛味豊かな調味料が容易に得られる。また、非常に滑らかな食感を有する調味料が容易に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いられる香辛料としては、アサフェティダ、アジョワン、アニスウコン、オールスパイス、オレガノ、カルダモン、カレーリーフ、キャラウェイ、クミン、グリーンペッパー、クローブ、ペッパー、コリアンダー、サフラン、山椒、紫蘇、シナモン、ジンジャー、八角、セージ、タイム、ターメリック、タデ、タラゴン、ディル、レッドペッパー、ナツメグ、ガーリック、バニラ、パプリカ、フェヌグリーク、フェンネル、ブラックペッパー、ペパーミント、ポピー・シード、ホワイトペッパー、マージョラム、マスタード、ミョウガ、ローズマリー、ローリエ、ワサビ、五香粉、ガラムマサラ、カレー粉、七味唐辛子及びチリパウダー等が挙げられる。これらは、単独で又は併用してもよい。
【0009】
水性液体としては、水、食酢、醤油、酒類(アルコール含有水、みりん、清酒、ワイン、焼酎、ブランデー等)、果汁などの1種または2種以上、あるいはこれに食塩、糖類(液糖、水飴、グルコース、砂糖等)、アミノ酸、増粘剤、有機酸、タンパク加水分解物、だし(節類の熱水抽出液など)、化学調味料、水溶性フレーバー、エキス類、着色料(カラメルなど)、糊料などの1種または2種以上を添加溶解したものが挙げられる。
【0010】
香辛料を湿式微細化する手段としては、水性液体に香辛料を添加し、香辛料を水性液体と接触しつつ、あるいは香辛料を水性液体に懸濁した状態にて、ホモジナイザー、コミトロール、マスコロイダー(登録商標、増幸産業社製)、ホモミキサー、ロールクラッシャー、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、スタティックミキサー及びナノマイザー(登録商標、吉田機械興業社製)等で微細化する手段が挙げられる。
本発明において湿式微細化することは極めて重要であって、乾式微細化、すなわち水と接触させることなく大気中あるいは他の気体中で微細化(粉砕)するときは、該微細化の際に香辛料の有用な香辛味成分が逸散し、香辛味成分の濃厚な調味料を得ることができなくなるので好ましくない。
【0011】
これらの微細化手段は単独でもよいが、2種以上組合せて使用することが好ましい。すなわち、湿式磨砕とホモジナイズを併用する、あるいは湿式磨砕、ホモジナイズ及びスタティックミキサーを使用することが好ましい。このように2種以上組合せて使用すると、容易に原料香辛料の平均粒子径を1.0μm以下の範囲に調製することが可能となるので好ましい。なお、ホモジナイズは、処理圧力50MPa以上の高圧ホモジナイズが好ましい。
この微細化香辛料は、粘度が0.9Pa・s以下である水性液体において均質に懸濁し、その懸濁状態が安定である特徴を有する。
【0012】
本発明において、平均粒子径が1.0μm以下とすることは重要であって、これよりも大きい値であるときは、香辛料の香辛味成分を濃厚に保持する微細化香辛料含有組成物を得ることが難しくなる。また低粘度である水性液体に香辛料を均質に懸濁し、その懸濁状態を安定に保持することが難しくなる。
【0013】
本発明において得られた微細化香辛料含有組成物は、カレールー、シチュールー、ウスターソース類、焼そばソース、マヨネーズ、ケチャップ、ドレッシング類、たれ類、トマトソース、ホワイトソース、カレーソース、グレービーソース、マスタードソース、ミートソース、ピッツァソース及びタルタルソース等の通常の調味料の製造法において、香辛料原料として好適に用いることができる。
【0014】
なお、本発明でいう平均粒子径とは、水性液体に懸濁した香辛料の粒子径の平均値を、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば島津製作所社製SALD−200V ER)を用いて、通常の平均粒子径の測定法により測定した値を意味する。
【実施例1】
【0015】
(焼そばソースの製造と焼そばの調理)
(1)微細化香辛料含有組成物の調製
平均粒子径8.1μmの香辛料混合物1部(シナモン0.1部、クローブ0.2部、セージ0.2部、タイム0.1部、ブラックペッパー0.3部及びレッドペッパー0.1部)を、焼そばソースの原料である水8部と食酢1部との混合液(水性液体)に懸濁して、この懸濁液をマスコロイダーで磨砕処理し、処理圧力90MPaで高圧ホモジナイザー処理して、そしてスタティックミキサーで処理し、平均粒子径0.7μmの香辛料を均質に懸濁含有する調味液(微細化香辛料含有組成物)を得た。
(2)容器詰焼そばソースの製造
糖類40部、食塩10部、調味料7部、食酢4部、エキス類3部、カラメル2部、糊料1部及び水23部に、上記微細化香辛料含有組成物10部を加えた後、混合攪拌して加熱殺菌し、500mlペットボトルに充填して、粘度が0.9Pa・sの容器詰焼そばソースを製造した。この焼そばソースは、香辛料特有の香辛味が濃厚に感じられ、室温で3ヶ月静置しても容器の底部に水不溶性の香辛料の沈殿は観察されなかった。
(3)焼そばの調理
熱したフライパンに油3部を入れて十分に油を馴染ました後、麺92部及び実施例1で製造した容器詰め焼そばソース5部を入れて焼そばを調理した。調理した焼そばは、麺に均一に味が絡み、香辛料の香りと後味の優れた焼そばであった。
【実施例2】
【0016】
(即席焼そば調味液の製造と即席焼そばの調理)
(1)微細化香辛料含有組成物の調製
平均粒子径8.2μmの香辛料混合物0.4部(ブラックペッパー0.2部及びホワイトペッパー0.2部)を即席焼そば調味液の原料である水3.2部と食酢0.4部との混合液に懸濁して、この懸濁液をマスコロイダーで磨砕処理し、処理圧力90MPaで高圧ホモジナイザー処理して、そしてスタティックミキサーで処理し、平均粒子径0.7μmの香辛料懸濁液(微細化香辛料含有組成物)を得た。
(2)即席焼そばソースの製造
調味料23部、食塩11部、エキス類5部、アルコール3部、ニンニク2部、糖類1部、糊料1部及び水50部に、上記実施例2の微細化香辛料含有組成物4部を加えた後、混合攪拌して加熱殺菌し、20ml容のミニパックに包装して、粘度が0.4Pa・sの即席焼そばソースを製造した。この即席焼そばソースは、香辛料特有の香辛味が濃厚に感じられ、500mlペットボトルに充填して室温で3ヶ月静置したところ、低粘度(0.4Pa・s)であるにも拘わらず、容器の底部に水不溶性の香辛料の沈殿は観察されなかった。
(3)即席焼そばの調理
即席焼そばの麺82部を入れた発泡スチロール製の容器に熱湯を十分に注ぎ蓋をして密封し、3分後にこのお湯を捨てた。そして上記即席焼そばソース20ml(18部)を加えて、即席焼そばを調理した。この即席焼そばは、麺に均一に味が絡み、香辛料特有の香りと後味が非常に優れ、麺の揚げ油の臭いが抑えられた即席焼そばであった。
【実施例3】
【0017】
(生ハンバーグの製造とハンバーグの調理)
(1)微細化香辛料含有組成物の調製
平均粒子径8.2μmの香辛料混合物1部(ブラックペッパー0.4部及びナツメグ0.6部)を生ハンバーグの原料である水8部と食酢1部との混合液に懸濁して、この懸濁液をマスコロイダーで磨砕処理し、処理圧力90MPaで高圧ホモジナイザー処理し、そして最後にスタティクミキサーで処理して、平均粒子径0.7μmで粘度が0.1Pa・sの香辛料懸濁液(微細化香辛料含有組成物)を得た。この微細化香辛料含有組成物は、香辛料特有の香辛味を濃厚に有していた。また、この組成物は500mlペットボトルに充填して室温で3ヶ月静置したところ、低粘度(0.1Pa・s)であるにも拘わらず、容器の底部に沈殿は観察されなかった。
(2)生ハンバーグの製造
合挽き肉300部、タマネギ100部、鶏卵50部、パン粉10部及びウスターソース5部に、上記実施例3の微細化香辛料含有組成物10部を加えて混合撹拌して成形し、生ハンバーグを製造した。
(3)ハンバーグの調理
上記生ハンバーグをフライパンで加熱調理した。このハンバーグは、畜肉の臭みが抑えられ香辛料特有の香りと味の非常に優れたハンバーグであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1.0μm以下である微細化香辛料を水性液体に均質に含有してなる微細化香辛料含有組成物。
【請求項2】
平均粒子径が1.0μm以下である微細化香辛料を水性液体に均質に含有し、粘度が0.9Pa・s以下である微細化香辛料含有組成物。
【請求項3】
水性液体に香辛料を添加し、該香辛料を湿式微細化して平均粒子径が1.0μm以下である香辛料とすることを特徴とする微細化香辛料含有組成物の製造法。
【請求項4】
水性液体に香辛料を添加し、該香辛料を湿式磨砕した後ホモジナイズして平均粒子径が1.0μm以下である香辛料とすることを特徴とする微細化香辛料含有組成物の製造法。
【請求項5】
香辛料を添加使用する調味料の製造法において、該香辛料として、水性液体に平均粒子径が1.0μm以下である微細化香辛料を均質に含有する微細化香辛料含有組成物を使用することを特徴とする調味料の製造法。
【請求項6】
調味料が、カレールー、シチュールー、ウスターソース類、焼そばソース、マヨネーズ、ケチャップ、ドレッシング類、たれ類、トマトソース、ホワイトソース、カレーソース、グレービーソース、マスタードソース、ミートソース、ピッツァソース又はタルタルソースである請求項5に記載の調味料の製造法。