説明

微細気泡発生浴槽

【課題】消費電力を抑えるとともに、白濁、肌の保湿効果などの効能を安定して実現することのできる微細気泡発生浴槽を提供すること。
【解決手段】浴槽3内の湯水2を吸い込み、気体溶解装置11において湯水に空気を溶解させ、空気の溶解した湯水を浴槽内に送り出し、湯水に溶解した空気が圧力の低下により析出して湯水中に微細気泡を発生させる微細気泡発生浴槽1において、ポンプの動作を制御する制御部17を備え、制御部は、ポンプの定常運転に対応する定常モードが設定され、定常運転モードでは、湯水中の溶存酸素濃度の時間による減少挙動があらかじめ設定され、この減少挙動に基づいてポンプによる湯水の循環量を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽内で湯水中に微細気泡を発生させる微細気泡発生浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽内の湯水をポンプによって循環させながら、浴槽から取り出した湯水を気体溶解装置に送り込み、空気を溶解させ、空気の溶解した湯水を浴槽内に送り出す微細気泡発生浴槽が知られている。微細気泡発生浴槽では、湯水に溶解した空気が浴槽内で析出し、湯水中に微細気泡が発生する。微細気泡は、浴槽内の湯水を白濁させ、牛乳風呂のような趣を与え、また、肌の保湿効果などがあり、温泉に匹敵する入浴の効能をもたらす。本出願人もこれまでに微細気泡発生浴槽について数多くの提案をし、また、実際に提供してきている。
【0003】
ところで、下記特許文献1に記載した、本出願人が提案するような微細気泡発生浴槽では、湯水の循環を行うポンプは常時運転されるのが一般的である。このため、白濁、肌の保湿効果などの効能に要求される以上のものが得られても、ポンプは運転し続けるので、無駄な消費電力が大きくなっていることが指摘される。
【0004】
また、たとえばポンプの駆動電圧を回転数などに応じて制御することによって、ポンプに備えたモータの特性に起因するポンプの個体のばらつきを低減させることは可能であるが、浴槽を設置する環境の違いや、湯水の噴射口の径などをはじめとする微細気泡発生浴槽の全体におけるばらつきは、そのようなポンプの運転制御によって低減させることはできない。このため、入浴により得られる効能が安定して実現されにくいおそれがあることが指摘される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−313464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、消費電力を抑えるとともに、白濁、肌の保湿効果などの効能を安定して実現することのできる微細気泡発生浴槽を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の特徴を有している。
【0008】
第1の発明は、浴槽内の湯水を吸い込み、気体溶解装置において湯水に空気を溶解させ、空気の溶解した湯水を浴槽内に送り出し、湯水に溶解した空気が圧力の低下により析出して湯水中に微細気泡を発生させる微細気泡発生浴槽において、ポンプの動作を制御する制御部を備え、制御部は、ポンプの定常運転に対応する定常モードが設定され、定常運転モードでは、湯水中の溶存酸素濃度の時間による減少挙動があらかじめ設定され、この減少挙動に基づいてポンプによる湯水の循環量を変化させることを特徴としている。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明の特徴において、制御部には、また、ポンプの運転開始時に対応する起動モードも設定され、起動モードでは、ポンプによる湯水の循環量が、定常モードよりも大きく設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記第1の発明によれば、制御部は、定常モードでは、あらかじめ設定された、湯水中の溶存酸素濃度の時間による減少挙動に基づいてポンプによる湯水の循環量を変化させるので、白濁、肌の保湿効果などの要求される効能に対応して微細気泡が浴槽内の湯水中に存在しているときはポンプを停止または実質的な停止状態にすることができる。このため、ポンプの常時運転が解消され、無駄な消費電力を十分に削減することができる。また、効能に対応する十分な微細気泡が、定常状態において浴槽内の湯水中に存在し、入浴により得られる上記効能が安定して実現される。
【0011】
上記第2の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、制御部は、起動モードでは、浴槽内の湯水中に発生させる微細気泡の気泡量を急速に増加させ、白濁、肌の保湿効果などの入浴の効能が得られる定常状態に早く到達させることができる。待ち時間が短くなり、入浴者の満足度が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の微細気泡発生浴槽の一実施形態を示した構成図である。
【図2】図1に示した制御部によるポンプの動作制御の原理について示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示した微細気泡発生浴槽1において、湯水2を貯留する浴槽3は、側面部に湯水の吸込口4と吐出口5を備えている。浴槽3は、また、上面部を形成するフランジ部6に空気吸込口7を備えている。浴槽3の吸込口4は、配水管8を介してポンプ9の吸い込み側9aに接続されている。ポンプ9の吐出側9bは、流入管10を介して気体溶解装置11の吸い込み側である噴射口11aに接続されている。気体溶解装置11の吐出側である流出口11bは、流出管12を介して圧力開放部となるベンチュリ13の一端に接続され、ベンチュリ13の他端は、配水管14を介して吐出口5に接続されている。空気吸込口7は、空気配管15を介して流入管10に連通している。空気配管15の途中には逆止弁16が設けられている。
【0014】
微細気泡発生浴槽1では、ポンプ9の作動によって浴槽3内の湯水2を吸込口4から吸い込み、配水管8および流入管10を通じて気体溶解装置11に送り出す。気体溶解装置11において湯水2は、噴射口11aから気体溶解装置11に備えたタンク内に噴出し、タンク内に貯留していた空気または空気吸込口7から吸い込まれる浴室内の空気と混合され、湯水2中に空気が溶解する。所定の濃度に空気が溶解した湯水2は、流出口11bから流出し、流出管12および配水管14を経て吐出口5から浴槽3内に送り出される。空気が溶解した湯水2は、浴槽3内に貯留する湯水2と混合され、このときまたはベンチュリ13を経た後、湯水2中に溶解した空気が、圧力の低下にともない浴槽3やベンチュリ13内で析出して微細気泡が発生する。
【0015】
浴槽3内の湯水2は、ポンプ9の作動によって循環し、この循環が繰り返されて浴槽3内の湯水2の気泡量が増加し、浴槽3内の湯水2は微細気泡によって白濁し、牛乳風呂のような趣を与える。
【0016】
このような微細気泡発生浴槽1に用いられるポンプ9については、特に制限はなく、たとえば遠心ポンプを利用したものなどが例示される。また、気体溶解装置11についても特に制限はなく、本出願人が提案している、上記特許文献1に記載したものを含め、湯水2中に空気を溶解させることができる限り、任意のものを採用することができる。
【0017】
そして、微細気泡発生浴槽1は、ポンプ9の作動および停止を行う制御部17を備え、制御部17は、ポンプ9に電気的に接続されている。制御部17は、たとえばON/OFFのスイッチ入力などによって、ポンプ9の作動、停止を切り換え、微細気泡発生浴槽1の作動と停止を実現するものである。
【0018】
また、制御部17には、ポンプ9の運転に関し、定常モードと起動モードの2種類の運転モードが設定されている。
【0019】
定常モードは、浴槽3内の湯水2中に存在している微細気泡の気泡量が、白濁、肌の保湿効果などの要求される効能に対応する基準値以上となる、ポンプ9の定常運転に対応する運転モードである。この定常モードでは、湯水2中に溶解している酸素、すなわち、溶存酸素(Dissolved Oxygen:DO)の濃度に関し、その時間による減少挙動があらかじめ設定されている。溶存酸素濃度の時間による減少挙動は、微細気泡発生浴槽1の設計時などに実験やシミュレーションなどから導出され、微細気泡発生浴槽1の製造時に制御部17に設定されるものであり、溶存酸素濃度の時間に対する減少割合などとして設定される。そして、制御部17は、あらかじめ設定されたその減少挙動に基づいてポンプ9による湯水2の循環量を変化させる。
【0020】
具体的には、制御部17には、図2に示したように、白濁、肌の保湿効果などの要求される効能の実現のために必要とされる、浴槽3内の湯水2中に発生している微細気泡の気泡量に関する基準値として、湯水2中の溶存酸素濃度の最低値が採用されている。定常モードでは、湯水2中の溶存酸素濃度がこの必要最低濃度以上となるように、あらかじめ設定された溶存酸素濃度の時間に対する減少割合に基づいて、ポンプ9のON/OFFを切り換える。すなわち、ポンプ9の起動によって浴槽3内の湯水2中の溶存酸素濃度が必要最低濃度を超えた後、制御部17は、ポンプ9に印加する電圧を下げ、ポンプ9を停止、または湯水2中に新たな微細気泡がほとんど発生しない、実質的に停止している状態にして、湯水2の循環量を0またはほぼ0とする。このときの湯水2中の溶存酸素濃度は、制御部17に設定することのできるポンプ9の起動時の運転時間などに対応して決定されるものであり、起動時のポンプ9の運転時間と湯水2中の溶存酸素濃度の関係も制御部17にはあらかじめ設定することができる。
【0021】
ポンプ9の印加電圧が低電圧のときには、浴槽3中の湯水2の循環量は0またはほぼ0に近いため、湯水2中に新たに微細気泡が発生することはほとんどなく、時間の経過とともに湯水2中の溶存酸素濃度は所定の割合で減少する。この所定の溶存酸素濃度の減少割合が、上記のとおり、制御部17に設定されており、制御部17は、ポンプ9の運転をタイマー制御する。すなわち、湯水2中の溶存酸素濃度が必要最低濃度となるまでの間、制御部17は、ポンプ9の停止または実質的に停止した状態を継続させる。湯水2中の溶存酸素濃度がほとんど必要最低濃度にまで低減される時間が経過した後には、制御部17は、印加電圧を高電圧に切り換え、ポンプ9に湯水2の循環を行わせる。このときのポンプ9の動作もタイマー制御され、所定時間ポンプ9が作動する。
【0022】
ポンプ9の作動にともない浴槽3内の湯水2中に微細気泡が発生し、気泡量が増加する。これにともない浴槽3内の湯水2中の溶存酸素濃度も増加する。所定時間経過後は、上記起動後の状態と同様に制御部17は、印加電圧を低電圧とし、ポンプ9を停止または実質的な停止状態にする。以降、定常モードでは、上記と同様な印加電圧制御およびタイマー制御によるポンプ9の動作制御が行われる。
【0023】
このように、微細気泡発生浴槽1では、あらかじめ設定された、湯水2中の溶存酸素濃度の時間による減少挙動に基づいてポンプ9による湯水2の循環量を変化させるので、定常モードでは、白濁、肌の保湿効果などの要求される効能に対応して微細気泡が浴槽3内の湯水2中に存在しているときはポンプ9を停止または実質的な停止状態にすることができる。このため、ポンプ9の常時運転が解消され、定常モードは、いわゆる省エネモードであり、無駄な消費電力を十分に削減することができる。また、効能に対応する十分な微細気泡が、定常状態において浴槽3内の湯水2中に存在し、湯水2中の溶存酸素濃度は必要最低濃度を下回りにくく、入浴により得られる上記効能が安定して実現される。
【0024】
なお、定常モードにおけるポンプ9の印加電圧の大きさや作動時間は、ポンプ9の能力、浴槽3の大きさなどを考慮して適宜に調整可能であり、微細気泡発生浴槽1の製造時に制御部17に設定することができる。
【0025】
また、湯水2中の溶存酸素濃度の時間による減少挙動は、水温、軟水または硬水などの水質などによって変化するものであるが、一般的には、水温が高いときなどの減少割合の最も大きい場合の減少挙動を制御部17に設定することができる。こうすることによって、どのような場合にも、定常モードでは、必ず湯水2中の溶存酸素濃度が必要最低濃度を下回りにくくなり、入浴に得られる効能がより安定して実現される。
【0026】
制御部17に設定された起動モードは、図2に示したように、浴槽3内の湯水2中に微細気泡が存在していない状態から白濁、肌の保湿効果などの要求される効能の実現のために必要とされる、微細気泡が浴槽3内の湯水2中に存在している状態にする運転モードである。
【0027】
起動モードでは、ポンプ9に高電圧を印加し、一定時間高電圧を印加し続ける。起動モードにおける印加電圧は、定常モードにおいてポンプ9を所定時間作動させ、湯水2中の溶存酸素濃度を上昇させるときの印加電圧よりも高く設定されている。このため、起動モードでのポンプ9による湯水2の循環量は、定常モードにおける湯水2の循環量より大きくなる。このように大きな湯水2の循環量としてポンプ9を連続的に作動させると、浴槽3内の湯水2中に発生する微細気泡の気泡量が急速に増加し、入浴の効能が得られる、湯水2中の溶存酸素が必要最低濃度に速く到達する。定常状態となるまでの所要時間が短縮され、待ち時間が少なくなり、入浴者の満足度が高まる。
【0028】
起動モードにおけるポンプ9の印加電圧の大きさや作動時間も、上記定常モードと同様に、ポンプ9の能力、浴槽3の大きさなどを考慮して適宜に調整可能であり、微細気泡発生浴槽1の製造時に制御部17に設定することができる。
【0029】
以上のとおりにポンプ9の動作を制御する制御部17については、一般には、組み込んだコンピュータに対応するソフトウエアとして実現することができる。この場合、制御部17の構成が簡略化され、制御部17を安価に実現することが可能となる。もちろん、ハードウエアとして構成することも可能であり、制御部17の構成については様々な態様が可能とされる。
【符号の説明】
【0030】
1 微細気泡発生浴槽
2 湯水
3 浴槽
9 ポンプ
11 気体溶解装置
17 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽内の湯水をポンプによって吸い込み、循環させながら、気体溶解装置において湯水に空気を溶解させ、空気の溶解した湯水を浴槽内に送り返し、湯水に溶解した空気が圧力の低下により析出して湯水中に微細気泡を発生させる微細気泡発生浴槽において、ポンプの動作を制御する制御部を備え、制御部は、ポンプの定常運転に対応する定常モードが設定され、定常運転モードでは、湯水中の溶存酸素濃度の時間による減少挙動があらかじめ設定され、この減少挙動に基づいてポンプによる湯水の循環量を変化させることを特徴とする微細気泡発生浴槽。
【請求項2】
制御部には、また、ポンプの運転開始時に対応する起動モードも設定され、起動モードでは、ポンプによる湯水の循環量が、定常モードよりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生浴槽。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−220972(P2010−220972A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74681(P2009−74681)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】