微細気泡発生装置
【課題】気泡径100μm以下の微細な気泡を数多く発生させることができるとともに、旋回流の脈動を抑制することによって、安定して微細気泡を得ることが可能な旋回流式の微細気泡発生装置を提供する。
【解決手段】軸線Lに沿って延びて軸線Lに直交する断面が円形をなす内部空間12を有する装置本体11と、内部空間12の前記断面がなす円形の接線方向に向けて延設されて内部空間12内に液体を導入する液体導入部16と、軸線L方向一方側に開口して内部空間12から前記液体を吐出する吐出口13と、を備えた微細気泡発生装置10であって、 吐出口13には、外部からの液体の流入を防止するための逆流防止プラグ30が配設されており、この逆流防止プラグ30の少なくとも一部が吐出口13よりも外側に位置するように構成されていることを特徴とする。
【解決手段】軸線Lに沿って延びて軸線Lに直交する断面が円形をなす内部空間12を有する装置本体11と、内部空間12の前記断面がなす円形の接線方向に向けて延設されて内部空間12内に液体を導入する液体導入部16と、軸線L方向一方側に開口して内部空間12から前記液体を吐出する吐出口13と、を備えた微細気泡発生装置10であって、 吐出口13には、外部からの液体の流入を防止するための逆流防止プラグ30が配設されており、この逆流防止プラグ30の少なくとも一部が吐出口13よりも外側に位置するように構成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水等の液体中に微細気泡(例えば気泡径100μm以下)を発生させる微細気泡発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前述の微細気泡発生装置は、例えば、製品等の洗浄工程(マイクロバブル洗浄、キャビテーション洗浄)や、廃液処理工程(加圧浮上式油分分離)等に広く使用されている。特に、金属製品等の洗浄においては、洗浄液等を使用することなく洗浄可能なため、環境対策として期待されている。
従来、前述の微細気泡発生装置としては、例えば特許文献1−3に開示されているように、旋回流を利用したものが提案されている。
【0003】
旋回流式の微細気泡発生装置510においては、図11に示すように、装置本体511の内部空間512に液体導入部516を通じて液体を導入し、この液体を旋回させて渦(旋回流)を形成する。すると、渦(旋回流)の中心部の圧力が低下し、外部からの給気がなくても溶存空気が渦芯となって空洞が発生する。そして、装置本体511から吐出口513を通じて吐出される際に、急激に流路断面積が大きくなることによって流れにせん断力が作用するとともに圧力変動が生じ、この圧力変動の作用によって微細な気泡が発生することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−205228号公報
【特許文献2】特開2003−126665号公報
【特許文献3】特開2003−181258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、旋回流式の微細気泡発生装置においては、気泡の数を増やすために外部から空気を供給した場合、給気量が多くなると微細気泡が発生せず、気泡の径が大きくなってしまう。また、気泡の径を小さくするために、給気量を少なくすると、気泡の数が減少してしまうことになる。
また、旋回流式の微細気泡発生装置においては、運転条件によっては、渦(旋回流)の渦芯が、吐出口近傍において軸線方向に振動する、いわゆる脈動現象を生じ、これに伴って発生する気泡の大きさ(気泡径)が大きく変動し、安定して微細気泡を発生できなくなることがあった。
このように、従来の旋回流式の微細気泡発生装置では、気泡径100μm以下の微細な気泡を数多く安定して発生させることは困難であった。
【0006】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、気泡径100μm以下の微細な気泡を数多く発生させることができるとともに、旋回流の脈動を抑制することによって、安定して微細気泡を得ることが可能な旋回流式の微細気泡発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、図11に示すように、吐出口513から液体が吐出される際に渦(旋回流)の中心部に向けて液体の逆流が発生しており、この逆流現象によって脈動が発生するとの知見を得た。さらに、この逆流部分で寸法の大きな気泡が発生していることが観察された。
【0008】
本発明は、かかる知見に基いてなされたものであって、本発明に係る微細気泡発生装置は、軸線に沿って延びて該軸線に直交する断面が円形をなす内部空間を有する装置本体と、前記内部空間の前記断面がなす円形の接線方向に向けて延設されて前記内部空間内に液体を導入する液体導入部と、前記軸線方向一方側に開口して前記内部空間から前記液体を吐出する吐出口と、を備えた微細気泡発生装置であって、前記吐出口には、外部からの液体の流入を防止するための逆流防止プラグが配設されており、この逆流防止プラグの少なくとも一部が前記吐出口よりも外側に位置するように構成されていることを特徴としている。
【0009】
この構成の微細気泡発生装置においては、吐出口に、外部からの液体の逆流を防止するための逆流防止プラグが設けられているので、吐出口において渦(旋回流)の中心部に向けて液体の逆流が防止され、脈動の発生を抑制することができる。これにより、微細気泡を安定して発生させることが可能となる。また、この逆流防止プラグの少なくとも一部が前記吐出口よりも外側に位置するように構成されているので、逆流の発生を確実に防止できるとともに、発生した微細気泡が逆流防止プラグの外周面に沿って吐出されることになり、微細気泡同士の合体・合一による気泡の粗大化を抑制することができる。
【0010】
ここで、前記吐出口に対向する前記軸線方向他方側には、前記軸線に沿って延びる軸部が設けられ、前記装置本体の内周面と前記軸部の外周面との間に環状の空間が画成され、前記液体導入部が、前記軸部が設けられた部分に開口されており、前記逆流防止プラグが、前記軸部に固定されている構成を採用することが好ましい。
この場合、液体導入部から導入された液体が軸部の外周面と装置本体の内周面の間の環状の空間を流動することによって、旋回流を容易に発生、発達させることが可能となる。また、前記逆流防止プラグを、軸部に固定することによって、逆流防止プラグの位置を安定させることができるととともに、この微細気泡発生装置の構造を簡単なものとすることができる。
【0011】
また、前記軸部には、前記内部空間に気体を導入する気体導入部が設けられており、この気体導入部が、前記軸部の外周面に開口させられていることが好ましい。
この場合、装置本体の内部空間に気体が導入されることにより、微細気泡の発生量を大幅に増加させることができる。また、気体導入部が軸部の外周面に開口させられていることから、導入された気体は旋回流によってせん断力を受けた状態で液体中に混入することになり、発生する気泡の微細化を図ることができる。
【0012】
さらに、前記吐出口は、前記軸線方向一方側に向かうにしたがい漸次拡径するように構成され、前記逆流防止プラグは、前記軸線方向内他方側に向かうにしたがい漸次縮径するように構成されていることが好ましい。
この場合、吐出口と逆流防止プラグとによって画成される吐出流路が前記装置本体の前記軸線方向外方に向かうにしたがい漸次広がる方向に向けて形成されることになり、発生した微細気泡同士の合体・合一を抑制することができる。また、吐出口の内周面の角度と、逆流防止プラグの外周面の角度を調整することで、前記吐出流路の断面積を容易に調整することが可能となる。
【0013】
また、前記吐出口の内周面と前記逆流防止プラグの外周面との間に吐出流路が画成され、該吐出流路には、その断面積が急激に変化する断面急変部が設けられていることが好ましい。
この場合、断面急変部によってせん断力と圧力変動が生じ、この圧力変動の作用によって気泡がさらに分断されることになり、より微細な気泡を安定して発生させることが可能となる。
【0014】
さらに、前記吐出口と前記逆流防止プラグとによって画成される吐出流路の断面積A1と、前記液体導入部の断面積A2との比A1/A2が、0.4≦A1/A2≦1.0の範囲内にあることが好ましい。
この場合、装置本体の内部空間内の圧力及び液体の流量が確保され、さらに安定して微細気泡を発生させることができる。
【0015】
また、前記逆流防止プラグが前記軸線方向に移動可能とされており、前記逆流防止プラグが前記軸線方向を変更することにより、前記吐出口と前記逆流防止プラグとによって画成される吐出流路の断面積A1を調整可能な構成とされていることが好ましい。
この場合、逆流防止プラグの軸線方向位置を変更することで、前記吐出口と前記逆流防止プラグとによって画成される吐出流路の断面積A1を調整でき、微細気泡を安定して発生させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、気泡径100μm以下の微細な気泡を数多く発生させることができるとともに、旋回流の脈動を抑制することによって、安定して微細気泡を得ることが可能な旋回流式の微細気泡発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態である微細気泡発生装置において、逆流防止プラグを抜いた状態を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態である微細気泡発生装置において、逆流防止プラグを挿入した状態を示す説明図である。
【図3】図2におけるX方向矢視図である。
【図4】図2におけるY方向矢視図である。
【図5】本発明の実施形態である微細気泡発生装置における吐出流路を示す拡大説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態である微細気泡発生装置における吐出流路を示す拡大説明図である。
【図7】本発明の他の実施形態である微細気泡発生装置における吐出流路を示す拡大説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態である微細気泡発生装置を示す説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態である微細気泡発生装置を示す説明図である。
【図10】実施例2の結果を示すグラフである。
【図11】従来の旋回式の微細気泡発生装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。図1から図5に本発明の実施形態である旋回流式の微細気泡発生装置10を示す。
本実施形態である微細気泡発生装置10は、軸線Lに沿って延びる円筒状の内部空間12を有する装置本体11を備えている。
【0019】
この装置本体11の軸線L方向一方側(図1及び図2において左側)の端部には、液体を内部空間12から外部へと吐出する吐出口13が開口させられている。また、装置本体11には、図3及び図4に示すように、内部空間12に開口するとともに軸線Lに直交する断面において内部空間12がなす円形の接線方向に向けて延設された液体導入管16が設けられている。本実施形態では、液体導入管16は、装置本体11の軸線L方向他方側(図1及び図2において右側)に設けられている。
【0020】
吐出口13は、内部空間12から外部へと向かうにしたがい漸次拡径するようなテーパ孔とされており、本実施形態では、図5に示すように、急激に内径が変化する複数のステップ部14が設けられている。ここで、吐出口13がなすテーパ孔のテーパ角αは、0°≦α≦45°の範囲に設定されている。
【0021】
また、装置本体11の軸線L方向他方側(図1及び図2において右側)の端部には、軸線Lに沿って延びる軸部20が設けられている。この軸部20の外径は、装置本体11の内部空間12の内径よりも一段小さくされており、軸部20の外周面と内部空間12の内周面とによって、環状の空間21が画成されている。
【0022】
この軸部20には、内部空間12に対して気体を導入する気体導入部23が設けられている。この気体導入部23は、軸線Lに沿って延びて軸線L方向他方側に開口する気体導入管23と、この気体導入管23に連通され、径方向外側に向けて延びて軸部20の外周面に開口する給気孔25と、を備えている。本実施形態では、図4に示すように、4つの給気孔25が周方向に等間隔(90°間隔)に配設されている。
【0023】
また、軸部20の軸線L方向一方側端面には、軸線Lに沿って延びる嵌合孔26が穿設されており、この嵌合孔26に、軸線Lに沿って延びる支持軸28の一端が固定されている。
【0024】
そして、この支持軸28には、吐出口13に挿入される逆流防止プラグ30が配設されている。
逆流防止プラグ30は、軸線L方向他方側に向かうにしたがい漸次外径が小さくなる円錐台状をなしており、そのテーパ角βは、0°≦β≦45°の範囲に設定されている。本実施形態では、逆流防止プラグ30のテーパ角βは、吐出口13がなすテーパ孔のテーパ角αよりも大きく(α<β)されている。
【0025】
この逆流防止プラグ30は、支持軸28に沿って軸線L方向に移動可能とされており、図2に示すように、吐出口13内に挿入されて使用される。このとき、逆流防止プラグ30の少なくとも一部が吐出口13よりも外側に位置させられている。つまり、吐出口13の軸線L方向一方側端から逆流防止プラグ30の一部が軸線L方向一方側に向けて突出させられているのである。
このように逆流防止プラグ30が吐出口13に挿入されることによって、逆流防止プラグ30の外周面と吐出口13の内周面との間に、リング状の吐出流路31が画成されることになる。
【0026】
この吐出流路31においては、逆流防止プラグ30のテーパ角βが、吐出口13がなすテーパ孔のテーパ角αよりも大きく(α<β)されていることから、吐出流路31の径方向の幅が軸線L方向一方側に向かうにしたがい漸次狭くなるように構成されている。また、本実施形態では、図5に示すように、吐出口13には、急激に内径が変化する複数のステップ部14が設けられていることから、逆流防止プラグ30の外周面と吐出口13の内周面とによって画成される吐出流路31には、軸線Lに直交する断面における断面形状が軸線L方向において急激に変化する断面急変部32が画成されることになる。
【0027】
ここで、この吐出流路31の軸線Lに直交する断面における断面積A1と、液体導入管16の断面積A2との比A1/A2が、0.4≦A1/A2≦1.0の範囲内に設定されている。なお、吐出流路31の軸線Lに直交する断面における断面積A1は、吐出流路31中における最小の断面積のことである。
また、本実施形態においては、逆流防止プラグ30を軸線L方向に移動させることによって、吐出流路31の軸線Lに直交する断面における断面積A1を調整することが可能である。
【0028】
次に、本実施形態である微細気泡発生装置10の作用について説明する。
図2に示すように、逆流防止プラグ30を吐出口13に挿入した状態で、水(液体)を、液体導入管16から装置本体11の内部空間12へと導入する。また、気体導入部23から空気を装置本体11の内部空間12へと導入する。
すると、液体導入管16から導入された液体は、軸部20の外周面と内部空間12の内周面との間の環状の空間21内を流動し、旋回流が発生、発達することになる。また、気体導入部23によって軸部20の外周面から導入された空気は、この旋回流のせん断力によって分断され、微細気泡が発生することになる。
【0029】
このように微細気泡を有する旋回流が、軸部18の周りに渦芯を形成し発達しながら内部空間12内を軸線L方向一方側(図2において左側)へと進行していき、逆流防止プラグ30と吐出口13とによって画成された吐出流路31を通過していく。ここで、吐出流路31では、逆流防止プラグ30のない場合において観察された外部から吐出口への大きな逆流(図11参照)を生じず、また、吐出流路31の入口31aと出口31bの断面急変部が画成されているので、より大きなせん断流れを生じ、微細気泡が発生することになる。さらに、この吐出流路31に、軸線Lに直交する断面における断面形状が軸線L方向において急激に変化する断面急変部32が画成されているので、この断面急変部32によって圧力変動が生じ、この圧力変動作用によって微細気泡が発生することになる。
【0030】
そして、この吐出流路31から装置本体11の外部へと旋回流が放出されることになる。このとき、断面積の小さな吐出流路31から外部に放出された際にも、流速の大きく異なるせん断流れが生じることになり、微細気泡が発生することになる。
このように、旋回流のせん断及び圧力変動の作用によって、気泡径100μm以下の微細な気泡が数多く発生させられることになる。なお、気泡径は、写真撮影による読取、レーザを用いた測定装置等によって測定可能である。また、気泡径と浮上速度、気泡径と溶解速度の関係から、観察によって凡その気泡径を推定することも可能である。
【0031】
上述のような構成とされた本実施形態である微細気泡発生装置10によれば、吐出口13に逆流防止プラグ30が挿入されているので、旋回流を装置本体11から放出した際に吐出口13において旋回流の中心部に向けての液体の逆流が防止される。これにより、旋回流の脈動の発生を抑えることができ、気泡径100μm以下の微細気泡を安定して発生させることができる。
また、逆流防止プラグ30は、その一部が吐出口13よりも軸線L方向一方側に突出して配置されているので、逆流の発生を確実に防止して脈動を抑制可能であるとともに、発生した微細気泡が逆流防止プラグ30の外周に沿って吐出されることになり、微細気泡同士の合体・合一による気泡の粗大化を防止することができる。
【0032】
さらに、本実施形態では、装置本体11の軸線L方向他方側に、軸線Lに沿って延びる軸部20が設けられ、装置本体11の内周面と軸部20の外周面との間に環状の空間21が画成されており、液体導入管16がこの軸部20が設けられた部分に開口されているので、液体導入管16から導入された液体が、この環状の空間21を通じて流動することによって旋回流が発生・発達し易く、旋回流を安定して発生させることができる。
【0033】
また、軸部20の軸線L方向一方側端面に、軸線Lに沿って延びる嵌合孔26が穿設され、この嵌合孔26に軸線Lに沿って延びる支持軸28の一端が固定されており、この支持軸28に逆流防止プラグ30が配設されているので、逆流防止プラグ30を確実に支持してその位置を安定させることができるととともに、この微細気泡発生装置10の構造を簡単なものとすることができる。
【0034】
また、軸部20に、内部空間12に対して気体を導入する気体導入部23が設けられており、この気体導入部23が、軸線Lに沿って延びて軸線L方向他方側に開口する気体導入管23と、この気体導入管23に連通され、径方向外側に向けて延びて軸部20の外周面に開口する給気孔25と、を備えているので、装置本体11の内部空間12に気体が導入されることにより、微細気泡の発生量を大幅に増加させることができる。また、給気孔25が軸部20の外周面に開口させられていることから、導入された気体は旋回流によってせん断力を受けた状態で液体中に混入することになり、発生する気泡のさらなる微細化を図ることができる。
【0035】
また、吐出口13が装置本体11の軸線L方向一方側に向かうにしたがい漸次拡径するように構成され、逆流防止プラグ30が装置本体11の軸線L方向他方側に向かうにしたがい漸次縮径するように構成されているので、吐出口13の内周面と逆流防止プラグ30の外周面とによって画成される吐出流路31が、軸線L方向一方側に向かうにしたがい漸次広がる方向に向けて形成されることになる。これにより、発生した微細気泡が吐出流路31に沿って広がるように放出されることになり、微細気泡同士の合体・合一を抑制することができる。
【0036】
さらに、吐出口13に、急激に内径が変化する複数のステップ部14が設けられており、逆流防止プラグ30の外周面と吐出口13の内周面とによって画成される吐出流路31に軸線Lに直交する断面における断面形状が軸線L方向において急激に変化する断面急変部32が画成されているので、断面急変部32によってせん断力と圧力変動が生じ、このせん断流れと圧力変動の作用によって気泡を分断することが可能となり、より微細な気泡を安定して発生させることができる。
【0037】
また、吐出口13と逆流防止プラグ30とによって画成される吐出流路31の断面積A1と、液体導入管16の断面積A2との比A1/A2が、0.4≦A1/A2≦1.0の範囲内に設定されているので、装置本体11の内部空間12内に導入される水(液体)の圧力及び流量が確保され、安定して微細気泡を発生させることができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、逆流防止プラグ30を軸線L方向に移動させることによって吐出流路31の軸線Lに直交する断面における断面積A1を調整することが可能な構成とされているので、状況に応じて吐出流路31の断面積を変更することができ、微細気泡をさらに安定して発生させることが可能となる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、軸部の嵌合孔に嵌入された支持軸によって逆流防止プラグを支持する構成として説明したが、これに限定されることはなく、逆流防止プラグを装置本体の外部から支持するように構成したものであってもよい。
【0040】
また、本実施形態では、図5に示すように、吐出口13の内周面にステップ部14を設けて断面急変部32を画成するものとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば、図6に示すように、逆流防止プラグ130の外周面にステップ部114を設けて断面急変部132を画成するものとしてもよいし、図7に示すように、吐出口213の内周面及び逆流防止プラグ230の外周面の両方にそれぞれステップ部214、215を設けて断面急変部232を画成するものとしてもよい。
【0041】
さらに、吐出口の形状は、テーパ型に限定されることはなく、図8に示すような円筒孔状をなす吐出口313であってもよい。
また、逆流防止プラグの形状は、テーパ型に限定されることはなく、図9に示すように、吐出口413の外部に円板状をなす逆流防止プラグ430が配設されていてもよい。この場合、液体は、中心の渦芯に気泡を巻き込んで旋回しながら、逆流防止プラグ430によって流れの向きが直角に変わるため、吐出口413の出口の角で大きなせん断力を生じ、また、逆流防止プラグ430と装置本体411との隙間から流体が噴出することになる。このため、廻りの流体の吐出口への逆流を生じず、急拡大流れとなり、急激なせん断流れと圧力降下を伴い、気泡が微細化される。
【0042】
また、本実施形態では、液体導入管を一つだけ設けたものとして説明したが、これに限定されることはなく、液体導入管を多数設けてもよい。
さらに、給気孔を円周方向に4つ設けたものとして説明したが、これに限定されることはなく、給気孔の数や配置に制限はない。但し、軸部の外周面に開口するように設けることにより、前述のように気泡の微細化を図ることが可能となる。
【実施例1】
【0043】
次に、本発明の効果を確認すべく、水道水を用いて行った比較実験結果について説明する。前述した本発明の実施形態である微細気泡発生装置を用いて、逆流防止プラグの挿入位置(軸線L方向位置)を変動させて吐出流路の断面積A1を変化させ、気泡の発生状態を観察した。その結果を、表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
比較例は、逆流防止プラグを吐出口から抜き出した位置(図1の状態)で気泡を発生させたものである。この場合、脈動が頻繁に発生し、脈動の発生に伴って粗大な気泡が間歇的に発生した。微細気泡を安定して発生させることはできなかった。
一方、逆流防止プラグを吐出口に挿入した(図2の状態)本発明例1−10においては、脈動の発生が抑制され、気泡が比較的安定して発生した。
【0046】
ここで、A1/A2>1.0とされた本発明例9、10では、脈動が抑制されるが気泡径が若干大きくなる傾向にある。また、A1/A2<0.4とされた本発明例1−3では、流量低下及び圧力損失が大きく微細気泡の発生効率が若干低下することになる。吐出流路の断面積A1と液体導入管の断面積A2との比を0.4≦A1/A2≦1.0の範囲内とした本発明例4−8においては、特に微細気泡を安定して発生させることが可能であることが確認された。
【実施例2】
【0047】
次に、前述の本発明例5の条件において、発生した気泡の大きさ(直径)を測定した結果について説明する。
気泡を発生させた状態で写真撮影し、気泡の寸法を測定した。結果を図10に示す。
気泡の寸法を測定した結果、平均38.4μm、標準偏差26.8μmとなり、気泡径100μm以下の微細気泡を安定して発生可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
10 微細気泡発生装置
11 装置本体
12 内部空間
13 吐出口
16 液体導入管(液体導入部)
20 軸部
23 気体導入部
28 支持軸
30 逆流防止プラグ
31 吐出流路
32 断面急変部
【技術分野】
【0001】
本発明は、水等の液体中に微細気泡(例えば気泡径100μm以下)を発生させる微細気泡発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前述の微細気泡発生装置は、例えば、製品等の洗浄工程(マイクロバブル洗浄、キャビテーション洗浄)や、廃液処理工程(加圧浮上式油分分離)等に広く使用されている。特に、金属製品等の洗浄においては、洗浄液等を使用することなく洗浄可能なため、環境対策として期待されている。
従来、前述の微細気泡発生装置としては、例えば特許文献1−3に開示されているように、旋回流を利用したものが提案されている。
【0003】
旋回流式の微細気泡発生装置510においては、図11に示すように、装置本体511の内部空間512に液体導入部516を通じて液体を導入し、この液体を旋回させて渦(旋回流)を形成する。すると、渦(旋回流)の中心部の圧力が低下し、外部からの給気がなくても溶存空気が渦芯となって空洞が発生する。そして、装置本体511から吐出口513を通じて吐出される際に、急激に流路断面積が大きくなることによって流れにせん断力が作用するとともに圧力変動が生じ、この圧力変動の作用によって微細な気泡が発生することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−205228号公報
【特許文献2】特開2003−126665号公報
【特許文献3】特開2003−181258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、旋回流式の微細気泡発生装置においては、気泡の数を増やすために外部から空気を供給した場合、給気量が多くなると微細気泡が発生せず、気泡の径が大きくなってしまう。また、気泡の径を小さくするために、給気量を少なくすると、気泡の数が減少してしまうことになる。
また、旋回流式の微細気泡発生装置においては、運転条件によっては、渦(旋回流)の渦芯が、吐出口近傍において軸線方向に振動する、いわゆる脈動現象を生じ、これに伴って発生する気泡の大きさ(気泡径)が大きく変動し、安定して微細気泡を発生できなくなることがあった。
このように、従来の旋回流式の微細気泡発生装置では、気泡径100μm以下の微細な気泡を数多く安定して発生させることは困難であった。
【0006】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、気泡径100μm以下の微細な気泡を数多く発生させることができるとともに、旋回流の脈動を抑制することによって、安定して微細気泡を得ることが可能な旋回流式の微細気泡発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、図11に示すように、吐出口513から液体が吐出される際に渦(旋回流)の中心部に向けて液体の逆流が発生しており、この逆流現象によって脈動が発生するとの知見を得た。さらに、この逆流部分で寸法の大きな気泡が発生していることが観察された。
【0008】
本発明は、かかる知見に基いてなされたものであって、本発明に係る微細気泡発生装置は、軸線に沿って延びて該軸線に直交する断面が円形をなす内部空間を有する装置本体と、前記内部空間の前記断面がなす円形の接線方向に向けて延設されて前記内部空間内に液体を導入する液体導入部と、前記軸線方向一方側に開口して前記内部空間から前記液体を吐出する吐出口と、を備えた微細気泡発生装置であって、前記吐出口には、外部からの液体の流入を防止するための逆流防止プラグが配設されており、この逆流防止プラグの少なくとも一部が前記吐出口よりも外側に位置するように構成されていることを特徴としている。
【0009】
この構成の微細気泡発生装置においては、吐出口に、外部からの液体の逆流を防止するための逆流防止プラグが設けられているので、吐出口において渦(旋回流)の中心部に向けて液体の逆流が防止され、脈動の発生を抑制することができる。これにより、微細気泡を安定して発生させることが可能となる。また、この逆流防止プラグの少なくとも一部が前記吐出口よりも外側に位置するように構成されているので、逆流の発生を確実に防止できるとともに、発生した微細気泡が逆流防止プラグの外周面に沿って吐出されることになり、微細気泡同士の合体・合一による気泡の粗大化を抑制することができる。
【0010】
ここで、前記吐出口に対向する前記軸線方向他方側には、前記軸線に沿って延びる軸部が設けられ、前記装置本体の内周面と前記軸部の外周面との間に環状の空間が画成され、前記液体導入部が、前記軸部が設けられた部分に開口されており、前記逆流防止プラグが、前記軸部に固定されている構成を採用することが好ましい。
この場合、液体導入部から導入された液体が軸部の外周面と装置本体の内周面の間の環状の空間を流動することによって、旋回流を容易に発生、発達させることが可能となる。また、前記逆流防止プラグを、軸部に固定することによって、逆流防止プラグの位置を安定させることができるととともに、この微細気泡発生装置の構造を簡単なものとすることができる。
【0011】
また、前記軸部には、前記内部空間に気体を導入する気体導入部が設けられており、この気体導入部が、前記軸部の外周面に開口させられていることが好ましい。
この場合、装置本体の内部空間に気体が導入されることにより、微細気泡の発生量を大幅に増加させることができる。また、気体導入部が軸部の外周面に開口させられていることから、導入された気体は旋回流によってせん断力を受けた状態で液体中に混入することになり、発生する気泡の微細化を図ることができる。
【0012】
さらに、前記吐出口は、前記軸線方向一方側に向かうにしたがい漸次拡径するように構成され、前記逆流防止プラグは、前記軸線方向内他方側に向かうにしたがい漸次縮径するように構成されていることが好ましい。
この場合、吐出口と逆流防止プラグとによって画成される吐出流路が前記装置本体の前記軸線方向外方に向かうにしたがい漸次広がる方向に向けて形成されることになり、発生した微細気泡同士の合体・合一を抑制することができる。また、吐出口の内周面の角度と、逆流防止プラグの外周面の角度を調整することで、前記吐出流路の断面積を容易に調整することが可能となる。
【0013】
また、前記吐出口の内周面と前記逆流防止プラグの外周面との間に吐出流路が画成され、該吐出流路には、その断面積が急激に変化する断面急変部が設けられていることが好ましい。
この場合、断面急変部によってせん断力と圧力変動が生じ、この圧力変動の作用によって気泡がさらに分断されることになり、より微細な気泡を安定して発生させることが可能となる。
【0014】
さらに、前記吐出口と前記逆流防止プラグとによって画成される吐出流路の断面積A1と、前記液体導入部の断面積A2との比A1/A2が、0.4≦A1/A2≦1.0の範囲内にあることが好ましい。
この場合、装置本体の内部空間内の圧力及び液体の流量が確保され、さらに安定して微細気泡を発生させることができる。
【0015】
また、前記逆流防止プラグが前記軸線方向に移動可能とされており、前記逆流防止プラグが前記軸線方向を変更することにより、前記吐出口と前記逆流防止プラグとによって画成される吐出流路の断面積A1を調整可能な構成とされていることが好ましい。
この場合、逆流防止プラグの軸線方向位置を変更することで、前記吐出口と前記逆流防止プラグとによって画成される吐出流路の断面積A1を調整でき、微細気泡を安定して発生させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、気泡径100μm以下の微細な気泡を数多く発生させることができるとともに、旋回流の脈動を抑制することによって、安定して微細気泡を得ることが可能な旋回流式の微細気泡発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態である微細気泡発生装置において、逆流防止プラグを抜いた状態を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態である微細気泡発生装置において、逆流防止プラグを挿入した状態を示す説明図である。
【図3】図2におけるX方向矢視図である。
【図4】図2におけるY方向矢視図である。
【図5】本発明の実施形態である微細気泡発生装置における吐出流路を示す拡大説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態である微細気泡発生装置における吐出流路を示す拡大説明図である。
【図7】本発明の他の実施形態である微細気泡発生装置における吐出流路を示す拡大説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態である微細気泡発生装置を示す説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態である微細気泡発生装置を示す説明図である。
【図10】実施例2の結果を示すグラフである。
【図11】従来の旋回式の微細気泡発生装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。図1から図5に本発明の実施形態である旋回流式の微細気泡発生装置10を示す。
本実施形態である微細気泡発生装置10は、軸線Lに沿って延びる円筒状の内部空間12を有する装置本体11を備えている。
【0019】
この装置本体11の軸線L方向一方側(図1及び図2において左側)の端部には、液体を内部空間12から外部へと吐出する吐出口13が開口させられている。また、装置本体11には、図3及び図4に示すように、内部空間12に開口するとともに軸線Lに直交する断面において内部空間12がなす円形の接線方向に向けて延設された液体導入管16が設けられている。本実施形態では、液体導入管16は、装置本体11の軸線L方向他方側(図1及び図2において右側)に設けられている。
【0020】
吐出口13は、内部空間12から外部へと向かうにしたがい漸次拡径するようなテーパ孔とされており、本実施形態では、図5に示すように、急激に内径が変化する複数のステップ部14が設けられている。ここで、吐出口13がなすテーパ孔のテーパ角αは、0°≦α≦45°の範囲に設定されている。
【0021】
また、装置本体11の軸線L方向他方側(図1及び図2において右側)の端部には、軸線Lに沿って延びる軸部20が設けられている。この軸部20の外径は、装置本体11の内部空間12の内径よりも一段小さくされており、軸部20の外周面と内部空間12の内周面とによって、環状の空間21が画成されている。
【0022】
この軸部20には、内部空間12に対して気体を導入する気体導入部23が設けられている。この気体導入部23は、軸線Lに沿って延びて軸線L方向他方側に開口する気体導入管23と、この気体導入管23に連通され、径方向外側に向けて延びて軸部20の外周面に開口する給気孔25と、を備えている。本実施形態では、図4に示すように、4つの給気孔25が周方向に等間隔(90°間隔)に配設されている。
【0023】
また、軸部20の軸線L方向一方側端面には、軸線Lに沿って延びる嵌合孔26が穿設されており、この嵌合孔26に、軸線Lに沿って延びる支持軸28の一端が固定されている。
【0024】
そして、この支持軸28には、吐出口13に挿入される逆流防止プラグ30が配設されている。
逆流防止プラグ30は、軸線L方向他方側に向かうにしたがい漸次外径が小さくなる円錐台状をなしており、そのテーパ角βは、0°≦β≦45°の範囲に設定されている。本実施形態では、逆流防止プラグ30のテーパ角βは、吐出口13がなすテーパ孔のテーパ角αよりも大きく(α<β)されている。
【0025】
この逆流防止プラグ30は、支持軸28に沿って軸線L方向に移動可能とされており、図2に示すように、吐出口13内に挿入されて使用される。このとき、逆流防止プラグ30の少なくとも一部が吐出口13よりも外側に位置させられている。つまり、吐出口13の軸線L方向一方側端から逆流防止プラグ30の一部が軸線L方向一方側に向けて突出させられているのである。
このように逆流防止プラグ30が吐出口13に挿入されることによって、逆流防止プラグ30の外周面と吐出口13の内周面との間に、リング状の吐出流路31が画成されることになる。
【0026】
この吐出流路31においては、逆流防止プラグ30のテーパ角βが、吐出口13がなすテーパ孔のテーパ角αよりも大きく(α<β)されていることから、吐出流路31の径方向の幅が軸線L方向一方側に向かうにしたがい漸次狭くなるように構成されている。また、本実施形態では、図5に示すように、吐出口13には、急激に内径が変化する複数のステップ部14が設けられていることから、逆流防止プラグ30の外周面と吐出口13の内周面とによって画成される吐出流路31には、軸線Lに直交する断面における断面形状が軸線L方向において急激に変化する断面急変部32が画成されることになる。
【0027】
ここで、この吐出流路31の軸線Lに直交する断面における断面積A1と、液体導入管16の断面積A2との比A1/A2が、0.4≦A1/A2≦1.0の範囲内に設定されている。なお、吐出流路31の軸線Lに直交する断面における断面積A1は、吐出流路31中における最小の断面積のことである。
また、本実施形態においては、逆流防止プラグ30を軸線L方向に移動させることによって、吐出流路31の軸線Lに直交する断面における断面積A1を調整することが可能である。
【0028】
次に、本実施形態である微細気泡発生装置10の作用について説明する。
図2に示すように、逆流防止プラグ30を吐出口13に挿入した状態で、水(液体)を、液体導入管16から装置本体11の内部空間12へと導入する。また、気体導入部23から空気を装置本体11の内部空間12へと導入する。
すると、液体導入管16から導入された液体は、軸部20の外周面と内部空間12の内周面との間の環状の空間21内を流動し、旋回流が発生、発達することになる。また、気体導入部23によって軸部20の外周面から導入された空気は、この旋回流のせん断力によって分断され、微細気泡が発生することになる。
【0029】
このように微細気泡を有する旋回流が、軸部18の周りに渦芯を形成し発達しながら内部空間12内を軸線L方向一方側(図2において左側)へと進行していき、逆流防止プラグ30と吐出口13とによって画成された吐出流路31を通過していく。ここで、吐出流路31では、逆流防止プラグ30のない場合において観察された外部から吐出口への大きな逆流(図11参照)を生じず、また、吐出流路31の入口31aと出口31bの断面急変部が画成されているので、より大きなせん断流れを生じ、微細気泡が発生することになる。さらに、この吐出流路31に、軸線Lに直交する断面における断面形状が軸線L方向において急激に変化する断面急変部32が画成されているので、この断面急変部32によって圧力変動が生じ、この圧力変動作用によって微細気泡が発生することになる。
【0030】
そして、この吐出流路31から装置本体11の外部へと旋回流が放出されることになる。このとき、断面積の小さな吐出流路31から外部に放出された際にも、流速の大きく異なるせん断流れが生じることになり、微細気泡が発生することになる。
このように、旋回流のせん断及び圧力変動の作用によって、気泡径100μm以下の微細な気泡が数多く発生させられることになる。なお、気泡径は、写真撮影による読取、レーザを用いた測定装置等によって測定可能である。また、気泡径と浮上速度、気泡径と溶解速度の関係から、観察によって凡その気泡径を推定することも可能である。
【0031】
上述のような構成とされた本実施形態である微細気泡発生装置10によれば、吐出口13に逆流防止プラグ30が挿入されているので、旋回流を装置本体11から放出した際に吐出口13において旋回流の中心部に向けての液体の逆流が防止される。これにより、旋回流の脈動の発生を抑えることができ、気泡径100μm以下の微細気泡を安定して発生させることができる。
また、逆流防止プラグ30は、その一部が吐出口13よりも軸線L方向一方側に突出して配置されているので、逆流の発生を確実に防止して脈動を抑制可能であるとともに、発生した微細気泡が逆流防止プラグ30の外周に沿って吐出されることになり、微細気泡同士の合体・合一による気泡の粗大化を防止することができる。
【0032】
さらに、本実施形態では、装置本体11の軸線L方向他方側に、軸線Lに沿って延びる軸部20が設けられ、装置本体11の内周面と軸部20の外周面との間に環状の空間21が画成されており、液体導入管16がこの軸部20が設けられた部分に開口されているので、液体導入管16から導入された液体が、この環状の空間21を通じて流動することによって旋回流が発生・発達し易く、旋回流を安定して発生させることができる。
【0033】
また、軸部20の軸線L方向一方側端面に、軸線Lに沿って延びる嵌合孔26が穿設され、この嵌合孔26に軸線Lに沿って延びる支持軸28の一端が固定されており、この支持軸28に逆流防止プラグ30が配設されているので、逆流防止プラグ30を確実に支持してその位置を安定させることができるととともに、この微細気泡発生装置10の構造を簡単なものとすることができる。
【0034】
また、軸部20に、内部空間12に対して気体を導入する気体導入部23が設けられており、この気体導入部23が、軸線Lに沿って延びて軸線L方向他方側に開口する気体導入管23と、この気体導入管23に連通され、径方向外側に向けて延びて軸部20の外周面に開口する給気孔25と、を備えているので、装置本体11の内部空間12に気体が導入されることにより、微細気泡の発生量を大幅に増加させることができる。また、給気孔25が軸部20の外周面に開口させられていることから、導入された気体は旋回流によってせん断力を受けた状態で液体中に混入することになり、発生する気泡のさらなる微細化を図ることができる。
【0035】
また、吐出口13が装置本体11の軸線L方向一方側に向かうにしたがい漸次拡径するように構成され、逆流防止プラグ30が装置本体11の軸線L方向他方側に向かうにしたがい漸次縮径するように構成されているので、吐出口13の内周面と逆流防止プラグ30の外周面とによって画成される吐出流路31が、軸線L方向一方側に向かうにしたがい漸次広がる方向に向けて形成されることになる。これにより、発生した微細気泡が吐出流路31に沿って広がるように放出されることになり、微細気泡同士の合体・合一を抑制することができる。
【0036】
さらに、吐出口13に、急激に内径が変化する複数のステップ部14が設けられており、逆流防止プラグ30の外周面と吐出口13の内周面とによって画成される吐出流路31に軸線Lに直交する断面における断面形状が軸線L方向において急激に変化する断面急変部32が画成されているので、断面急変部32によってせん断力と圧力変動が生じ、このせん断流れと圧力変動の作用によって気泡を分断することが可能となり、より微細な気泡を安定して発生させることができる。
【0037】
また、吐出口13と逆流防止プラグ30とによって画成される吐出流路31の断面積A1と、液体導入管16の断面積A2との比A1/A2が、0.4≦A1/A2≦1.0の範囲内に設定されているので、装置本体11の内部空間12内に導入される水(液体)の圧力及び流量が確保され、安定して微細気泡を発生させることができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、逆流防止プラグ30を軸線L方向に移動させることによって吐出流路31の軸線Lに直交する断面における断面積A1を調整することが可能な構成とされているので、状況に応じて吐出流路31の断面積を変更することができ、微細気泡をさらに安定して発生させることが可能となる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、軸部の嵌合孔に嵌入された支持軸によって逆流防止プラグを支持する構成として説明したが、これに限定されることはなく、逆流防止プラグを装置本体の外部から支持するように構成したものであってもよい。
【0040】
また、本実施形態では、図5に示すように、吐出口13の内周面にステップ部14を設けて断面急変部32を画成するものとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば、図6に示すように、逆流防止プラグ130の外周面にステップ部114を設けて断面急変部132を画成するものとしてもよいし、図7に示すように、吐出口213の内周面及び逆流防止プラグ230の外周面の両方にそれぞれステップ部214、215を設けて断面急変部232を画成するものとしてもよい。
【0041】
さらに、吐出口の形状は、テーパ型に限定されることはなく、図8に示すような円筒孔状をなす吐出口313であってもよい。
また、逆流防止プラグの形状は、テーパ型に限定されることはなく、図9に示すように、吐出口413の外部に円板状をなす逆流防止プラグ430が配設されていてもよい。この場合、液体は、中心の渦芯に気泡を巻き込んで旋回しながら、逆流防止プラグ430によって流れの向きが直角に変わるため、吐出口413の出口の角で大きなせん断力を生じ、また、逆流防止プラグ430と装置本体411との隙間から流体が噴出することになる。このため、廻りの流体の吐出口への逆流を生じず、急拡大流れとなり、急激なせん断流れと圧力降下を伴い、気泡が微細化される。
【0042】
また、本実施形態では、液体導入管を一つだけ設けたものとして説明したが、これに限定されることはなく、液体導入管を多数設けてもよい。
さらに、給気孔を円周方向に4つ設けたものとして説明したが、これに限定されることはなく、給気孔の数や配置に制限はない。但し、軸部の外周面に開口するように設けることにより、前述のように気泡の微細化を図ることが可能となる。
【実施例1】
【0043】
次に、本発明の効果を確認すべく、水道水を用いて行った比較実験結果について説明する。前述した本発明の実施形態である微細気泡発生装置を用いて、逆流防止プラグの挿入位置(軸線L方向位置)を変動させて吐出流路の断面積A1を変化させ、気泡の発生状態を観察した。その結果を、表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
比較例は、逆流防止プラグを吐出口から抜き出した位置(図1の状態)で気泡を発生させたものである。この場合、脈動が頻繁に発生し、脈動の発生に伴って粗大な気泡が間歇的に発生した。微細気泡を安定して発生させることはできなかった。
一方、逆流防止プラグを吐出口に挿入した(図2の状態)本発明例1−10においては、脈動の発生が抑制され、気泡が比較的安定して発生した。
【0046】
ここで、A1/A2>1.0とされた本発明例9、10では、脈動が抑制されるが気泡径が若干大きくなる傾向にある。また、A1/A2<0.4とされた本発明例1−3では、流量低下及び圧力損失が大きく微細気泡の発生効率が若干低下することになる。吐出流路の断面積A1と液体導入管の断面積A2との比を0.4≦A1/A2≦1.0の範囲内とした本発明例4−8においては、特に微細気泡を安定して発生させることが可能であることが確認された。
【実施例2】
【0047】
次に、前述の本発明例5の条件において、発生した気泡の大きさ(直径)を測定した結果について説明する。
気泡を発生させた状態で写真撮影し、気泡の寸法を測定した。結果を図10に示す。
気泡の寸法を測定した結果、平均38.4μm、標準偏差26.8μmとなり、気泡径100μm以下の微細気泡を安定して発生可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
10 微細気泡発生装置
11 装置本体
12 内部空間
13 吐出口
16 液体導入管(液体導入部)
20 軸部
23 気体導入部
28 支持軸
30 逆流防止プラグ
31 吐出流路
32 断面急変部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びて該軸線に直交する断面が円形をなす内部空間を有する装置本体と、前記内部空間の前記断面がなす円形の接線方向に向けて延設されて前記内部空間内に液体を導入する液体導入部と、前記軸線方向一方側に開口して前記内部空間から前記液体を吐出する吐出口と、を備えた微細気泡発生装置であって、
前記吐出口には、外部からの液体の流入を防止するための逆流防止プラグが配設されており、この逆流防止プラグの少なくとも一部が前記吐出口よりも外側に位置するように構成されていることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記吐出口に対向する前記軸線方向他方側には、前記軸線に沿って延びる軸部が設けられ、前記装置本体の内周面と前記軸部の外周面との間に環状の空間が画成されており、
前記液体導入部が、前記軸部が設けられた部分に開口され、
前記逆流防止プラグが、前記軸部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記軸部には、前記内部空間に気体を導入する気体導入部が設けられており、この気体導入部が、前記軸部の外周面に開口させられていることを特徴とする請求項2に記載の微細気泡発生装置。
【請求項4】
前記吐出口は、前記軸線方向一方側に向かうにしたがい漸次拡径するように構成され、前記逆流防止プラグは、前記軸線方向内他方側に向かうにしたがい漸次縮径するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項5】
前記吐出口の内周面と前記逆流防止プラグの外周面との間に吐出流路が画成され、該吐出流路には、その断面積が急激に変化する断面急変部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項6】
前記吐出口と前記逆流防止プラグとによって画成される吐出流路の断面積A1と、前記液体導入部の断面積A2との比A1/A2が、0.4≦A1/A2≦1.0の範囲内にあることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項7】
前記逆流防止プラグが前記軸線方向に移動可能とされており、前記逆流防止プラグが前記軸線方向を変更することにより、前記吐出口と前記逆流防止プラグとによって画成される吐出流路の断面積A1を調整可能な構成とされていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項1】
軸線に沿って延びて該軸線に直交する断面が円形をなす内部空間を有する装置本体と、前記内部空間の前記断面がなす円形の接線方向に向けて延設されて前記内部空間内に液体を導入する液体導入部と、前記軸線方向一方側に開口して前記内部空間から前記液体を吐出する吐出口と、を備えた微細気泡発生装置であって、
前記吐出口には、外部からの液体の流入を防止するための逆流防止プラグが配設されており、この逆流防止プラグの少なくとも一部が前記吐出口よりも外側に位置するように構成されていることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記吐出口に対向する前記軸線方向他方側には、前記軸線に沿って延びる軸部が設けられ、前記装置本体の内周面と前記軸部の外周面との間に環状の空間が画成されており、
前記液体導入部が、前記軸部が設けられた部分に開口され、
前記逆流防止プラグが、前記軸部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記軸部には、前記内部空間に気体を導入する気体導入部が設けられており、この気体導入部が、前記軸部の外周面に開口させられていることを特徴とする請求項2に記載の微細気泡発生装置。
【請求項4】
前記吐出口は、前記軸線方向一方側に向かうにしたがい漸次拡径するように構成され、前記逆流防止プラグは、前記軸線方向内他方側に向かうにしたがい漸次縮径するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項5】
前記吐出口の内周面と前記逆流防止プラグの外周面との間に吐出流路が画成され、該吐出流路には、その断面積が急激に変化する断面急変部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項6】
前記吐出口と前記逆流防止プラグとによって画成される吐出流路の断面積A1と、前記液体導入部の断面積A2との比A1/A2が、0.4≦A1/A2≦1.0の範囲内にあることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項7】
前記逆流防止プラグが前記軸線方向に移動可能とされており、前記逆流防止プラグが前記軸線方向を変更することにより、前記吐出口と前記逆流防止プラグとによって画成される吐出流路の断面積A1を調整可能な構成とされていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−207734(P2010−207734A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57142(P2009−57142)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
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